説明

密閉式混練機及び混練ロータ

【課題】流動性能及びせん断性能の両方に優れた、密閉式混練機及び混練ロータを提供する。
【解決手段】円柱状のロータ10には、一つの長翼20と、二つの短翼(30、40)と、が形成されている。一対のロータ10を回転させた場合に、一方のロータ10における二つの短翼が、他方のロータ10の長翼20に対して、近接及び離反を交互に繰り返すように、二つの短翼が配置されており且つ、当該近接の状態では、二つの短翼によって、長翼20が挟まれる。また、一対のロータ10を回転させた場合に、一方のロータ10の第1末端部22と、他方のロータ10の第2末端部23とが、近接及び離反を交互に繰り返すように、長翼20が配置されており、且つ、当該近接の状態では、第1末端部22と第2末端部23とが、ロータ10の両軸心を結ぶ線上における回転方向に関して対向する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉式混練機及びその混練ロータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来の噛み合い型混練ロータが開示されている。この技術では、ロータの長翼の長さlと、ロータの軸方向長さLとの比l/Lを0.6以上としており、また、ロータの長翼端とロータ端との間の、軸方向長さaと、Lとの比a/Lを0.2以下としている。そのため、長翼による効率的な混練が可能になる。また、長翼の両端から材料の流れを分岐させることができるため、混練ムラがなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2803960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
密閉式混練機においては、流動性能(分配性能)及びせん断性能(分散性能)の両方が重要となる。しかし、従来の混練ロータにおいては、長翼のねじれ角度を大きくすると、流動性能(分配性)は高くなるが、せん断性能(分散性)については低下してしまう。
【0005】
(課題)
本発明が解決しようとする課題は、流動性能及びせん断性能の両方に優れた、密閉式混練機及び混練ロータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記の課題を解決するために、本発明に係る混練ロータは、密閉式混練機の噛み合い型の混練ロータであって、円柱状のロータを備える。
また、前記ロータの表面には、一つの長翼と、二つの短翼と、が形成され、前記ロータの回転方向に関する前記長翼の長さL4は、前記回転方向に関する前記ロータの全長L5の1/2よりも長く、前記ロータにおいて、(i)前記ロータの軸方向に関する前記長翼の長さL1と、前記軸方向に関する前記ロータの全長L2と、の比(L1/L2)が、0.6以上且つ1未満であり、且つ、(ii)前記長翼の一端から前記ロータの端までの、前記軸方向に関する距離xと、前記ロータの長さL2と、の比(x/L2)が、0超且つ0.2以下である。
前記密閉式混練機のチャンバーの内部において、一対の前記ロータを平行に配置して逆方向に回転させた場合に、(a)一方の前記ロータにおける二つの前記短翼が、他方の前記ロータの前記長翼に対して、前記ロータの回転方向に関して、近接及び離反を交互に繰り返すように、二つの前記短翼が配置されており、且つ、(b)当該近接の状態では、一方の前記ロータにおける二つの前記短翼によって、他方の前記ロータの前記長翼が、前記軸方向に関して挟まれ、
前記密閉式混練機のチャンバーの内部において、一対の前記ロータを平行に配置して逆方向に回転させた場合に、(A)一方の前記ロータにおける前記長翼の、前記回転方向に関して後方側の末端部と、他方の前記ロータにおける前記長翼の、前記回転方向に関して前方側の末端部とが、近接及び離反を交互に繰り返すように、前記長翼が配置されており、且つ、(B)当該近接の状態では、前記軸方向に垂直な一断面において、前記後方側の末端部と前記前方側の末端部とが、一対の前記ロータの両軸心を結ぶ線上における前記回転方向に関して対向する。
【0007】
この構成では、回転方向に関する長翼の長さL4は、回転方向に関するロータ全長L5の1/2よりも長く、また、一対の長翼の近接時に、末端部同士が、両軸心を結ぶ線上における回転方向に関して(すなわち、両軸心を結ぶ線に垂直な方向に関して)対向する。
これにより、一対の長翼の、対向する二つの末端部が、材料の漏れ流路を遮断するため、二つの末端部の間からの材料の漏れを少なくする(又は漏れをなくす)ことができるため、材料のせん断性能を高くすることができる。
また、一般的には、ねじれ角度を大きくすると、せん断性能は低下してしまうが、本構成では、材料のせん断性能を、一対の長翼の末端部によって高めることができるために、長翼のねじれ角度を大きくして流動性能を高くすると同時に、せん断性能を高く保つことができる。
以上のように、本構成により、流動性能及びせん断性能の両方に優れた混練ロータが得られる。
【0008】
なお、「長翼」とは、チップ部(混練翼頂部)の中心線の、軸方向に関する長さが、軸方向に関するロータの全長L2の1/2よりも長い混練翼のことであり、「短翼」とは、チップ部(混練翼頂部)の中心線の、軸方向に関する長さが、ロータの全長L2の1/2以下の混練翼のことである。
【0009】
「長翼の一端」とは、長翼の長手方向に関して、どちらの端であってもよい。また、長翼の一端及び他端において、ロータの端までの距離が同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0010】
一つのロータに形成された「二つの短翼」については、軸方向に関する長さが、同一であっても良いし、異なっていてもよい。
【0011】
本発明において、「密閉式混練機」とは、ゴム、プラスチックなどの材料をバッチ処理にて混練するものである。
【0012】
「チャンバー」とは、混練用のロータを収容する混練室のことである。チャンバー内部では、混練ロータによって、材料の混練が行なわれる。
【0013】
「一断面」に関して:上記の(B)のような一断面が、混練ロータに存在していればよく、ある一断面での近接状態において、(B)のようにならない断面(離反状態となる部分の断面)が存在していてもよい。
【0014】
(2)また、本発明に係る混練ロータにおいては、上記(1)の特徴に加えて、前記軸方向に対する、前記長翼のねじれ角度が、45度以上且つ61度以下であってもよい。
【0015】
この構成によると、混練ロータによる混合性能のばらつきを抑制することができる。
【0016】
(3)また、本発明に係る混練ロータにおいては、上記(1)又は(2)の特徴に加えて、前記軸方向に対する、前記長翼のねじれ角度が、50度以上且つ57度以下であってもよい。
【0017】
この構成によると、混練ロータによる混合性能のばらつきを、さらに抑制することができる。
【0018】
(4)上記の課題を解決するため、本発明に係る密閉式混練機は、上部に材料供給口が形成され、且つ、下部に材料排出口が形成され、且つ、当該材料供給口及び当該材料排出口を閉じることにより密閉状態となるチャンバーと、前記チャンバーの内部に収容され且つ平行に配置された、噛み合い型の一対の混練ロータと、を備える。
また、それぞれの前記混練ロータは、円柱状のロータを備え、それぞれの前記ロータの表面には、一つの長翼と、二つの短翼と、が形成され、それぞれの前記ロータにおいて、前記ロータの回転方向に関する前記長翼の長さL4は、前記回転方向に関する前記ロータの全長L5の1/2よりも長く、それぞれの前記ロータにおいて、(i)前記ロータの軸方向に関する前記長翼の長さL1と、前記軸方向に関する前記ロータの全長L2と、の比(L1/L2)が、0.6以上且つ1未満であり、且つ、(ii)前記長翼の一端から前記ロータの端までの、前記軸方向に関する距離xと、前記ロータの長さL2と、の比(x/L2)が、0超且つ0.2以下である。
一対の前記ロータを逆方向に回転させた場合に、(a)一方の前記ロータにおける二つの前記短翼が、他方の前記ロータの前記長翼に対して、前記ロータの回転方向に関して、近接及び離反を交互に繰り返すように、二つの前記短翼が配置されており、且つ、(b)当該近接の状態では、一方の前記ロータにおける二つの前記短翼によって、他方の前記ロータの前記長翼が、前記軸方向に関して挟まれ、
一対の前記ロータを逆方向に回転させた場合に、(A)一方の前記ロータにおける前記長翼の、前記回転方向に関して後方側の末端部と、他方の前記ロータにおける前記長翼の、前記回転方向に関して前方側の末端部とが、近接及び離反を交互に繰り返すように、前記長翼が配置されており、且つ、(B)当該近接の状態では、前記軸方向に垂直な一断面において、前記後方側の末端部と前記前方側の末端部とが、一対の前記ロータの両軸心を結ぶ線上における前記回転方向に関して対向する。
【0019】
この構成では、回転方向に関する長翼の長さL4は、回転方向に関するロータ全長L5の1/2よりも長く、また、一対の長翼の近接時に、末端部同士が、両軸心を結ぶ線上における回転方向に関して(すなわち、両軸心を結ぶ線に垂直な方向に関して)対向する。
これにより、一対の長翼の、対向する二つの末端部が、材料の漏れ流路を遮断するため、二つの末端部の間からの材料の漏れを少なくする(又は漏れをなくす)ことができるため、材料のせん断性能を高くすることができる。
また、一般的には、ねじれ角度を大きくすると、せん断性能は低下してしまうが、本構成では、材料のせん断性能を、一対の長翼の末端部によって高めることができるために、長翼のねじれ角度を大きくして流動性能を高くすると同時に、せん断性能を高く保つことができる。
以上のように、本構成により、流動性能及びせん断性能の両方に優れた密閉式混練機が得られる。
【0020】
なお、「長翼」、「長翼の一端」、「二つの短翼」、「密閉式混練機」、「チャンバー」、「一断面」に関しては上記と同様であるため、説明を省略する。
【0021】
(5)上記の課題を解決するために、本発明に係る混練ロータは、密閉式混練機の噛み合い型の混練ロータであって、円柱状のロータを備える。
また、前記ロータの表面には、一つの長翼と、二つの短翼と、が形成され、前記ロータの回転方向に関する前記長翼の長さL4は、前記回転方向に関する前記ロータの全長L5の1/2よりも長く、前記ロータにおいて、(i)前記ロータの軸方向に関する前記長翼の長さL1と、前記軸方向に関する前記ロータの全長L2と、の比(L1/L2)が、0.6以上且つ1未満であり、且つ、(ii)前記長翼の一端から前記ロータの端までの、前記軸方向に関する距離xと、前記ロータの長さL2と、の比(x/L2)が、0超且つ0.2以下である。
前記密閉式混練機のチャンバーの内部において、一対の前記ロータを平行に配置して逆方向に回転させた場合に、(a)一方の前記ロータにおける二つの前記短翼が、他方の前記ロータの前記長翼に対して、前記ロータの回転方向に関して、近接及び離反を交互に繰り返すように、二つの前記短翼が配置されており、且つ、(b)当該近接の状態では、一方の前記ロータにおける二つの前記短翼によって、他方の前記ロータの前記長翼が、前記軸方向に関して挟まれ、
前記密閉式混練機のチャンバーの内部において、一対の前記ロータを平行に配置して逆方向に回転させた場合に、(A)一方の前記ロータにおける前記長翼の、前記回転方向に関して後方側の末端部と、他方の前記ロータにおける前記長翼の、前記回転方向に関して前方側の末端部とが、近接及び離反を交互に繰り返すように、前記長翼が配置されており、且つ、(B)当該近接の状態では、前記軸方向に垂直な一断面において、一対の前記ロータの両軸心を結ぶ方向に関する、(i)一方の前記ロータにおける軸心と前記長翼の先端との距離D1、(ii)他方の前記ロータにおける軸心と前記長翼の先端との距離D2、及び(iii)前記両軸心間の距離D3が、D1+D2>D3の関係を満たす。
【0022】
この構成では、回転方向に関する長翼の長さL4は、回転方向に関するロータ全長L5の1/2よりも長く、また、両軸心を結ぶ方向に関する距離D1、D2、及びD3が、D1+D2>D3の関係を満たす。そのため、一対の混練ロータの重ね合わせ展開図において、一対の長翼の端部に、回転方向に関してオーバーラップする部分(回転方向に関して後方側の長翼の前端が、前方側の長翼の後端よりも、前方側に位置する部分)が生じる。
これにより、一対の長翼の、対向する二つの末端部が、材料の漏れ流路を遮断するため、二つの末端部の間からの材料の漏れを少なくする(又は漏れをなくす)ことができるため、材料のせん断性能を高くすることができる。
また、一般的には、ねじれ角度を大きくすると、せん断性能は低下してしまうが、本構成では、材料のせん断性能を、一対の長翼の末端部によって高めることができるために、長翼のねじれ角度を大きくして流動性能を高くすると同時に、せん断性能を高く保つことができる。
以上のように、本構成により、流動性能及びせん断性能の両方に優れた混練ロータが得られる。
【0023】
なお、「長翼」、「長翼の一端」、「二つの短翼」、「密閉式混練機」、「チャンバー」、「一断面」に関しては上記と同様であるため、説明を省略する。
【0024】
(6)上記の課題を解決するため、本発明に係る密閉式混練機は、上部に材料供給口が形成され、且つ、下部に材料排出口が形成され、且つ、当該材料供給口及び当該材料排出口を閉じることにより密閉状態となるチャンバーと、前記チャンバーの内部に収容され且つ平行に配置された、噛み合い型の一対の混練ロータと、を備える。
また、それぞれの前記混練ロータは、円柱状のロータを備え、それぞれの前記ロータの表面には、一つの長翼と、二つの短翼と、が形成され、それぞれの前記ロータにおいて、前記ロータの回転方向に関する前記長翼の長さL4は、前記回転方向に関する前記ロータの全長L5の1/2よりも長く、それぞれの前記ロータにおいて、(i)前記ロータの軸方向に関する前記長翼の長さL1と、前記軸方向に関する前記ロータの全長L2と、の比(L1/L2)が、0.6以上且つ1未満であり、且つ、(ii)前記長翼の一端から前記ロータの端までの、前記軸方向に関する距離xと、前記ロータの長さL2と、の比(x/L2)が、0超且つ0.2以下である。
一対の前記ロータを逆方向に回転させた場合に、(a)一方の前記ロータにおける二つの前記短翼が、他方の前記ロータの前記長翼に対して、前記ロータの回転方向に関して、近接及び離反を交互に繰り返すように、二つの前記短翼が配置されており、且つ、(b)当該近接の状態では、一方の前記ロータにおける二つの前記短翼によって、他方の前記ロータの前記長翼が、前記軸方向に関して挟まれ、
一対の前記ロータを逆方向に回転させた場合に、(A)一方の前記ロータにおける前記長翼の、前記回転方向に関して後方側の末端部と、他方の前記ロータにおける前記長翼の、前記回転方向に関して前方側の末端部とが、近接及び離反を交互に繰り返すように、前記長翼が配置されており、且つ、(B)当該近接の状態では、前記軸方向に垂直な一断面において、一対の前記ロータの両軸心を結ぶ方向に関する、(i)一方の前記ロータにおける軸心と前記長翼の先端との距離D1、(ii)他方の前記ロータにおける軸心と前記長翼の先端との距離D2、及び(iii)前記両軸心間の距離D3が、D1+D2>D3の関係を満たす。
【0025】
この構成では、回転方向に関する長翼の長さL4は、回転方向に関するロータ全長L5の1/2よりも長く、また、両軸心を結ぶ方向に関する距離D1、D2、及びD3が、D1+D2>D3の関係を満たす。そのため、一対の混練ロータの重ね合わせ展開図において、一対の長翼の端部に、回転方向に関してオーバーラップする部分(回転方向に関して後方側の長翼の前端が、前方側の長翼の後端よりも、前方側に位置する部分)が生じる。
これにより、一対の長翼の、対向する二つの末端部が、材料の漏れ流路を遮断するため、二つの末端部の間からの材料の漏れを少なくする(又は漏れをなくす)ことができるため、材料のせん断性能を高くすることができる。
また、一般的には、ねじれ角度を大きくすると、せん断性能は低下してしまうが、本構成では、材料のせん断性能を、一対の長翼の末端部によって高めることができるために、長翼のねじれ角度を大きくして流動性能を高くすると同時に、せん断性能を高く保つことができる。
以上のように、本構成により、流動性能及びせん断性能の両方に優れた密閉式混練機が得られる。
【0026】
なお、「長翼」、「長翼の一端」、「二つの短翼」、「密閉式混練機」、「チャンバー」、「一断面」に関しては上記と同様であるため、説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態に係る密閉式混練機の断面概略図である。
【図2】混練ロータを示す図であり、(a)は右側面図、(b)は正面図(A矢視図)、(c)は背面図(B矢視図)である。
【図3】混練ロータの混練部の展開平面図である。
【図4】(a)は第1混練ロータの混練部の展開平面図、(b)は第2混練ータの混練部の展開平面図、(c)は重ね合わせ展開図である。
【図5】(a)は第1混練ロータの右側面図、(b)は第2混練ロータの右側面図である。
【図6】第1混練ロータ及び第2混練ロータの、長翼近接状態を示す右側面図である。
【図7】(a)は図6の正面図、(b)は図6の背面図である。
【図8】長翼近接状態前後の、図4のG−G’位置における断面概略図である。
【図9】長翼近接状態(図8(b))の拡大断面概略図である。
【図10】実施例に係るΔG’の値を示すグラフである。
【図11】実施例に係る、混練材料の押出量を示すグラフである。
【図12】ビーズテストによる、ねじれ角度に対応する混合性能を示すグラフである。
【図13】変形例に係る一対の混練ロータの重ね合わせ展開図である。
【図14】比較例(従来例)に係る一対の混練ロータの重ね合わせ展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(全体構成)
以下、本発明の一つの実施形態について、図面を参照しつつ説明する。密閉式混練機80は、二軸のバッチ式ミキサであり、例えば、ゴム原料の混練に用いられる。密閉式混練機80は、ケーシング70、ドロップドア73、一対の混練ロータ(第1混練ロータ1、及び、第2混練ロータ5)、材料供給筒77、空気圧シリンダ78、及びフローティングウェイト74を有する。
【0029】
ケーシング70は、密閉式混練機80の本体部であり、金属材料から成る。ケーシング70は、金属製の支持台によって支持されている。ケーシング70の内部には二つのチャンバー(混練室)70sが形成されている。それぞれのチャンバー70sは、円筒状に形成されている。
【0030】
ケーシング70の上部には、混練される材料を供給するための材料供給口71が形成されており、ケーシング70の下部には、混練された材料を排出するための材料排出口72が形成されている。材料排出口72は、混練ロータの軸方向D(図の矢印D方向参照)に沿って伸びるように形成されている。そして、ケーシング70の内部では、材料供給口71、二つのチャンバー70s、及び、材料排出口72が、互いに通じている。
【0031】
二つのチャンバー70sには、金属材料からなる一対の混練ロータが収容されている。一対の混練ロータは、図示しないモータから動力を与えられて、それぞれが逆方向に回転する(図1の矢印F、F’方向参照)。
【0032】
ドロップドア73は、金属材料から成り、ケーシング70の材料排出口72を塞ぐ蓋部材として機能する。ドロップドア73は、上下に移動できるように配置されており、材料排出口72の開放時には、ドロップドア73が下降し、材料排出口72を閉じるときには、ドロップドア73が上昇する。
【0033】
材料供給筒77は、ケーシング70の上方において、上下に沿って延びており、材料供給筒77の内部空間は材料供給口71に連続している。また、材料供給筒77には、ホッパー76が設けられている。フローティングウェイト74は、材料供給筒77の内部に配置されている。フローティングウェイト74は、ピストンロッド75の下端に固定されており、また、ピストンロッド75と共に、上下に移動できる。
【0034】
材料供給筒7の上方には空気圧シリンダ78が設けられている。空気圧シリンダ78の内部にはピストン78sが配置されており、ピストン78sは、ピストンロッド75の上端に固定されている。空気圧シリンダ78の作用でフローティングウェイト74が下降すると、ホッパー76から供給された被混練材料が、チャンバー70sの内部に供給される。
【0035】
(混練ロータ)
次に、一対の混練ロータ(第1混練ロータ1及び第2混練ロータ5)について説明する。一対の混練ロータは、ケーシング70の内部のチャンバー(混練室)70sに収容され、且つ平行に配置されている。また、一対の混練ロータは、噛み合い型のロータである。
【0036】
二つの混練ロータは、互いに異なる方向に回転する。具体的には、第1混練ロータ1は、回転方向F(図の矢印F方向参照)に回転し、第2混練ロータ5は、回転方向F’(図の矢印F’方向参照)に回転する。
【0037】
第1混練ロータ1は、円柱状のロータ10と、回転軸10jと、回転軸10kとを備える(図2、図5(a)参照)。ロータ10、回転軸10j、及び回転軸10kは金属製である。第2混練ロータ5も同様に、円柱状のロータ10と、回転軸10jと、回転軸10kとを備える(図5(b)参照)。
【0038】
第2混練ロータ5は、回転軸10j及び回転軸10kに対して、ロータ10が、第1混練ロータ1とは反対向きに(中翼40が回転軸10j側に配置され、短翼30が回転軸10k側に配置されるように)取り付けられたものである(図5参照)。この配置方向を除けば、第2混練ロータ5のロータ10、回転軸10j、及び回転軸10kの構造は、第1混練ロータ1のロータ10、回転軸10j、及び回転軸10kの構造と同一である。以下、主に第1混練ロータ1について説明し、第2混練ロータ5についての説明を省略する。また、第2混練ロータ5に関しては、第1混練ロータ1の説明中における「回転方向F」を、「回転方向F’」に置き換えればよい。
【0039】
円柱状のロータ10の表面には、三つの混練翼、すなわち、長翼20、及び、二つの短翼(短翼30及び中翼40)が形成されている。これらの混練翼によって、チップクリアランスを通過する被混練材料にせん断力が与えられる。チップクリアランスとは、混練翼の先端面として形成されたチップ部(混練翼頂部)と、チャンバー70sの内面との間の隙間のことである。
【0040】
また、これらの混練翼は、ロータ10の軸方向Dを中心として、ロータ10に対して螺旋状に配置されている。このように、混練翼が螺旋状に配置されているため(ねじれ配置になっているため)、二つの混練ロータの回転によって、被混練材料に、軸方向Dに沿った流れが生じる。
【0041】
図4(c)は、第1混練ロータ1の混練部(ロータ10)の展開図と、第2混練ロータ5の混練部(ロータ10)の展開図を、同位相で重ね合わせたもの(回転時に対向する部分同士を重ね合わせたもの)である。図4(c)に示された第1混練ロータ1及び第2混練ロータ5の形状は、それぞれ、図4(a)及び図4(b)の形状に対応している。
【0042】
なお、図4(c)のうち、第2混練ロータ5については、図4(b)とは鏡像の関係になっている。また、図4(c)において、第2混練ロータ5に含まれる部分については、符号に下線を付している。図3、図4(c)において、F1は回転方向Fに関して前方側を表わし、F2は後方側を表わす。
【0043】
また、図4(c)は、重ね合わせ展開図であり、また、図4(c)においては、第1混練ロータ1及び第2混練ロータ5の位相が一致しているため、この図では、回転方向F’が、回転方向Fに一致している。
【0044】
図7(a)は、図6の正面図(A矢視図)であり、図7(b)は、図6の背面図(B矢視図)である。すなわち、図7(a)、及び図7(b)のK矢視図が図6に相当する。
【0045】
図5(a)及び図5(b)は、それぞれ、図7(a)の状態において、第1混練ロータ1及び第2混練ロータ5を、K方向に沿って見た図に相当する。また、図5(a)及び図5(b)は、それぞれ、図7(b)の状態において、第1混練ロータ1及び第2混練ロータ5を、K方向に沿って見た図に相当する。また、図3乃至図7において、回転方向に関する位置と、位相を示す角度との関係は、各図で一致している。
以下、各混練翼について説明する。
【0046】
(長翼)
長翼20は、第1混練ロータ1の表面の展開平面図において直線状に形成されており、また、長翼20の、軸方向Dに対するねじれ角度θ1が、50度となっている(図3参照)。図3(左側:回転軸10j側、右側;回転軸10k側)において、長翼20は、左上から、右下へ延びるように形成されている。
【0047】
また、長翼20の翼頂部には、混練面としてのチップ部21が形成されている。チップ部21は、ロータ10の表面に対してほぼ平行に形成されている。
【0048】
さらに、長翼20の、回転方向Fに関して後方側(F2側)には、第1末端部22が形成されている(図2、図3、図4(c)、図5の破線円、及び、図9参照)。また、第1末端部22の先端には、第1先端22tが形成されている(図2の破線円、及び、図3の破線円で囲われた部分、並びに、図9参照)。なお、第1先端22tは第1末端部22に含まれ、第1先端22tよりも第1末端部22の方が広い。
【0049】
第1末端部22には、傾斜面29が形成されている。傾斜面29は、軸方向Dに対して傾いている。また、傾斜面29の法線方向は、軸方向Dに垂直な仮想平面に対して、回転軸10j側に傾いている。そのため、正面図(図2(b))では、傾斜面29が見えるが、背面図(図2(c))では、傾斜面29は見えない。なお、長翼に、傾斜面29が形成されていなくてもよい(後述する変形例参照)。
【0050】
長翼20の、回転方向Fに関して前方側(F1側)には、第2末端部23が形成されている(図2、図3、図4(c)、図5の破線円、及び、図9参照)。また、第2末端部23の先端には、第2先端23tが形成されている(図2の破線円、及び、図3の破線円で囲われた部分、並びに、図9参照)。なお、第2先端23tは第2末端部23に含まれ、第2先端23tよりも第2末端部23の方が広い。
【0051】
また、長翼20の、回転方向Fに関して前方側には、第1対向面24が形成されており、回転方向Fに関して後方側には、第2対向面25が形成されている(図3参照)。第1対向面24及び第2対向面25は、チップ部21と、ロータ10の表面との間に形成されている面(側面)である。
【0052】
長翼20においては、チップ部21の中心線の、軸方向Dに関する長さL1が、軸方向Dに関するロータ10の全長L2の1/2よりも長い(図3参照)。
【0053】
回転方向F(第2混練ロータ5においては、回転方向F’)に関する長翼20の長さL4は、回転方向Fに関するロータ10の全長L5(軸方向Dに垂直な断面における円周の長さ)の1/2よりも長い(図3参照)。すなわち、長翼20の、回転方向Fに関する両端の位相差が、180度よりも大きい。
【0054】
L1を、軸方向Dに関する長翼20の長さとし、L2を、軸方向Dに関するロータ10の全長とする。この場合に、(L1/L2)が、0.6以上且つ1未満となっている。
また、aを、長翼20の一端(図3、図4(c)における長翼20の左端)、及び、ロータ10の端(長翼20の一端に近い方の端)の間の、軸方向Dに関する距離とすると、(a/L2)が、0超且つ0.2以下となっている。また、bを、長翼20の他端(図3、図4(c)における長翼20の右端)、及び、ロータ10の端(長翼20の他端に近い方の端)の間の、軸方向Dに関する距離とすると、a=bである。なお、aとbとは異なっていてもよい。
このため、長翼が短い場合に比べて、長翼20による、より効率的な混練が可能になる。また、長翼20の両端から材料の流れを分岐させることができるため、均一な混練が可能となる。
【0055】
(短翼)
次に、短翼30について説明する。短翼30は、第1混練ロータ1の表面の展開平面図において直線状に形成されており、また、短翼30の、軸方向Dに対するねじれ角度θ2が、50度となっている(図3参照)。図3において、短翼30は、長翼20とは異なり、右上から、左下へ延びるように形成されている。
【0056】
また、短翼30の翼頂部には、混練面としてのチップ部31が形成されている。チップ部31は、ロータ10の表面に対してほぼ平行に形成されている。
【0057】
さらに、短翼30の、回転方向Fに関して前方側には、対向面32が形成されている。対向面32は、チップ部31と、ロータ10の表面との間に形成されている面(側面)である。
【0058】
短翼30においては、チップ部31の中心線の、軸方向Dに関する長さL3が、ロータ10の全長L2の1/2以下である(図3参照)。
【0059】
(中翼)
次に、中翼40について説明する。中翼40は、第1混練ロータ1の表面の展開平面図において直線状に形成されており、また、中翼40の、軸方向Dに対するねじれ角度θ3が、50度となっている(図3参照)。図3において、短翼30は、長翼20と同様に、左上から、右下へ延びるように形成されている。
【0060】
また、中翼40の翼頂部には、混練面としてのチップ部41が形成されている。チップ部31は、ロータ10の表面に対してほぼ平行に形成されている。
【0061】
さらに、中翼40の、回転方向Fに関して後方側(翼長手方向の後方側端部)には、対向面42が形成されている。対向面42は、チップ部41と、ロータ10の表面との間に形成されている面(側面)である。
【0062】
中翼40においては、チップ部41の中心線の、軸方向Dに関する長さL3’が、ロータ10の全長L2の1/2以下である(図3参照)。また、L3’は、L3よりも長い。
【0063】
(詳細な翼配置について)
以下、チャンバー70sの内部において、一対の混練ロータを逆方向に(回転方向F及び回転方向F’に)回転させたときの、一対の混練ロータの噛み合い状態について説明しながら、各混練翼の相対的な位置関係についてより詳細に説明する。
【0064】
(近接A)
二つの混練ロータの回転に伴い、第1混練ロータ1のロータ10(一方のロータ)における二つの短翼(短翼30及び中翼40)が、第2混練ロータ5のロータ10(他方のロータ)の長翼20に対して、回転方向F(及び回転方向F’)に関して、近接及び離反を交互に繰り返す(図4(c)の、20度乃至120度付近参照)。この部分(第1混練ロータ1の二つの短翼、及び、第2混練ロータ5の長翼20)の近接(噛み合い)を、近接Aとする。
【0065】
近接Aでは、第1混練ロータ1の中翼40の対向面42と、第2混練ロータ5の長翼20の第1対向面24とが、回転方向に関して対向する。また、近接Aでは、第1混練ロータ1の短翼30の対向面32と、第2混練ロータ5の長翼20の第2対向面25とが、回転方向に関して対向する(図4(c)参照)。
【0066】
また、近接Aの状態では、第1混練ロータ1の二つの短翼によって、第2混練ロータ5の長翼20の中央部分(回転方向Fに関する中央部分)が、軸方向Dに関して挟まれる。
【0067】
(近接B)
また、二つの混練ロータの回転に伴い、第2混練ロータ5のロータ10(他方のロータ)の二つの短翼(短翼30および中翼40)が、第1混練ロータ1のロータ10(一方のロータ)の長翼20に対して、回転方向F(及び回転方向F’)に関して、近接及び離反を繰り返す(図4(c)の、200度乃至300度付近参照)。この部分(第2混練ロータ5の二つの短翼、及び、第1混練ロータ1の長翼20)の近接(噛み合い)を、近接Bとする。
【0068】
近接Bでは、第2混練ロータ5の中翼40の対向面42と、第1混練ロータ1の長翼20の第1対向面24とが、回転方向に関して対向する。また、近接Bでは、第2混練ロータ5の短翼30の対向面32と、第1混練ロータ1の長翼20の第2対向面25とが、回転方向に関して対向する(図4(c)参照)。
【0069】
また、近接Bの状態では、第2混練ロータ5の二つの短翼によって、第1混練ロータ1の長翼20の中央部分が、軸方向Dに関して挟まれる。
【0070】
(近接C)
また、二つの混練ロータの回転に伴い、第1混練ロータ1のロータ10(一方のロータ)の長翼20の、回転方向Fに関して後方側の第1末端部22と、第2混練ロータ5のロータ10(他方のロータ)における長翼20の、回転方向F’に関して前方側の第2末端部23とが、近接及び離反を交互に繰り返す(図4(c)の、320度乃至30度付近参照)。この部分(第1混練ロータ1の第1末端部22、及び、第2混練ロータ5の第2末端部23)の近接を、近接Cとする。図4(c)及び図6において破線円で囲われたC部分が、近接Cの近接部分である。
【0071】
(近接D)
また、二つの混練ロータの回転に伴い、第2混練ロータ5のロータ10(他方のロータ)の長翼20の、回転方向F’に関して後方側の第1末端部22と、第1混練ロータ1のロータ10(一方のロータ)における長翼20の、回転方向Fに関して前方側の第2末端部23とが、近接及び離反を交互に繰り返す(図4(c)の、130度乃至200度付近参照)。この部分(第2混練ロータ5の第1末端部22、及び、第1混練ロータ1の第2末端部23)の近接を、近接Dとする。
【0072】
また、近接A、近接B、近接C、及び近接Dは、回転方向F(及び回転方向F’)に沿った二つの混練ロータの回転に伴って、近接A、近接C、近接B、及び近接Dの順に行なわれる。また、近接A、近接C、近接B、及び近接Dは、混練ロータの回転に伴って、周期的に繰り返される。なお、本実施形態において、近接A、B、C及びDは、接触状態を示すものではなく、近接A、B、C及びDの状態において、二つの混練翼の間には、僅かな隙間が形成されている。
【0073】
(長翼近接状態について)
次に、図8及び図9を用いて、長翼近接状態について説明する。図8及び図9は、軸方向Dに垂直な一断面を示しており、この断面位置は、図4のG−G’位置、及び、図6のH−H位置に相当する。また、図9は、図8(b)の拡大図に相当する。
【0074】
ここで、D1を、一対のロータ10の両軸心を結ぶ方向M(図9の矢印M方向参照)に関する、第1混練ロータ1のロータ10(一方のロータ)における軸心と長翼20の先端(第1先端22t)との距離とする。D2を、方向Mに関する、第2混練ロータ5のロータ10(他方のロータ)における軸心と長翼20の先端(第2先端23t)との距離とする。D3を、両軸心間の距離とする。図9では、D1+D2>D3の関係が満たされている。
【0075】
上記のD1+D2>D3の関係が成立している状態では、一対の混練ロータの重ね合わせ展開図(図4(c))において、一対の長翼(第1混練ロータ1の長翼20、及び、第2混練ロータ5の長翼20)の両端部に、回転方向に関してオーバーラップする部分(図4(c)のE領域参照)が生じる。「オーバーラップ」とは、回転方向F(及び回転方向F’)に関して後方側の長翼(第2混練ロータ5の長翼20)の前端が、前方側の長翼(第1混練ロータ1の長翼20)の後端よりも、前方側に位置することをいう。なお、回転方向F(及び回転方向F’)に関して後方側の長翼(第1混練ロータ1の長翼20)の前端が、前方側の長翼(第2混練ロータ5の長翼20)の後端よりも、前方側に位置することも、同様に「オーバーラップ」に該当する。
【0076】
図4(c)において、LOLで示した長さが、オーバーラップ長である。また、図9(軸方向Dに垂直な一顔面)においては、オーバーラップ長がD1+D2−D3となる。「長翼近接状態」とは、D1+D2>D3の関係が成立し、且つ、(D1+D2−D3)が最大となる状態のことである。
【0077】
長翼近接状態の前後では、二つの混練ロータの回転に伴って、図8(a)、図8(b)、図8(c)、及び図8(d)の順に、一対の長翼20の位置関係が変化する。長翼近接状態は、二つの混練ロータの一回転につき、二度生じる。これらを、第1長翼近接状態、及び、第2長翼近接状態とする。
【0078】
図9では、D1+D2>D3の関係を、第1長翼近接状態(対向A及び近接C)の例で説明しているが、この関係は、第2長翼近接状態(対向B及び近接D)においても同様に成立する。そして、第2長翼近接状態においては、D1+D2>D3の式の、D1は、方向Mに関する、第2混練ロータ5のロータ10(他方のロータ)における軸心と長翼20の先端(第1先端22t)との距離であり、D2は、方向Mに関する、第1混練ロータ1のロータ10(一方のロータ)における軸心と長翼20の先端(第2先端23t)との距離となる。
【0079】
(対向A)
第1長翼近接状態では、第1混練ロータ1の長翼20の第1末端部22と、第2混練ロータ5の長翼20の第2末端部23と、が、一対のロータの両軸心を結ぶ線(図9の一点鎖線L参照)上におけるロータの回転方向、すなわち、直線Lに垂直な方向J(図の矢印J方向参照)に関して対向する(図9参照)。これを対向Aとする。対向Aは、近接Cに伴って行なわれる。
【0080】
(対向B)
第2長翼近接状態では、第2混練ロータ5の長翼20の第1末端部22と、第1混練ロータ1の長翼20の第2末端部23と、が、一対のロータの両軸心を結ぶ線(図9の一点鎖線L参照)上における回転方向、すなわち、直線Lに垂直な方向(図の矢印J方向参照)に関して対向する。これを対向Bとする。対向Bは、近接Dに伴って行なわれる。
【0081】
(効果)
次に、本実施形態に係る混練ロータ、及び密閉式混練機80により得られる効果について説明する。第1混練ロータ1は、密閉式混練機80の噛み合い型の混練ロータであって、円柱状のロータ10を備える。
また、ロータ10の表面には、一つの長翼20と、二つの短翼(30、40)と、が形成され、ロータ10の回転方向Fに関する長翼20の長さL4は、回転方向Fに関するロータ10の全長L5の1/2よりも長く、ロータ10において、(i)ロータ10の軸方向Dに関する長翼20の長さL1と、軸方向Dに関するロータ10の全長L2と、の比(L1/L2)が、0.6以上且つ1未満であり、且つ、(ii)長翼20の一端からロータ10の端までの、軸方向Dに関する距離aと、ロータ10の長さL2と、の比(a/L2)が、0超且つ0.2以下である。
密閉式混練機80のチャンバー70sの内部において、一対のロータ10(第1混練ロータ1のロータ10、及び、第2混練ロータ5のロータ10)を平行に配置して逆方向に回転させた場合に、(a)一方のロータ10(第1混練ロータ1のロータ10)における二つの短翼が、他方のロータ10(第2混練ロータ5のロータ10)の長翼20に対して、ロータ10の回転方向F(及び回転方向F’)に関して、近接及び離反を交互に繰り返すように、二つの短翼が配置されており、且つ、(b)当該近接の状態では、一方のロータ10における二つの短翼によって、他方のロータ10の長翼20が、軸方向Dに関して挟まれ、
密閉式混練機80のチャンバー70sの内部において、一対のロータ10を平行に配置して逆方向に回転させた場合に、(A)一方のロータ10(第1混練ロータ1のロータ10)における長翼20の、回転方向F(及び回転方向F’)に関して後方側の末端部(第1末端部22)と、他方のロータ10(第2混練ロータ5のロータ10)における長翼20の、回転方向F(及び回転方向F’)に関して前方側の末端部(第2末端部23)とが、近接及び離反を交互に繰り返すように、長翼20が配置されており、且つ、(B)当該近接の状態(第1長翼近接状態)では、軸方向Dに垂直な一断面(G−G’断面)において、第1混練ロータ1の第1末端部22と第2混練ロータ5の第2末端部23とが、一対のロータ10の両軸心を結ぶ線(直線L)上における回転方向F(方向J)に関して対向する。
【0082】
この構成では、回転方向に関する長翼20の長さL4は、回転方向に関するロータ10の全長L5の1/2よりも長く、また、一対の長翼20の近接時に、末端部同士(第1末端部22及び第2末端部23)が、両軸心を結ぶ線上における回転方向に関して(すなわち、両軸心を結ぶ線に垂直な方向に関して)対向する。
これにより、一対の長翼20の、対向する二つの末端部が、材料の漏れ流路を遮断するため、二つの末端部の間からの材料の漏れを少なくする(又は漏れをなくす)ことができるため、材料のせん断性能を高くすることができる。
また、本構成では、材料のせん断性能を、一対の長翼20の末端部によって高めることができるために、長翼20のねじれ角度を大きくして流動性能を高くすると同時に、せん断性能を高く保つことができる。
以上のように、本構成により、流動性能及びせん断性能の両方に優れた混練ロータが得られる。
【0083】
なお、ここでは、第1混練ロータ1により得られる効果について説明したが、第2混練ロータ5によっても同様の効果が得られる。第2混練ロータ5の場合には、上記の効果の説明中における回転方向Fを、回転方向F’に置き換えればよい。
【0084】
また、第1混練ロータ1においては、軸方向Dに対する、長翼20のねじれ角度が、50度(45度以上且つ61度以下)である。
【0085】
この構成によると、混練ロータによる混合性能のばらつきを抑制することができる。
【0086】
また、第1混練ロータ1においては、軸方向Dに対する、長翼20のねじれ角度が、50度(50度以上且つ57度以下)である。
【0087】
この構成によると、混練ロータによる混合性能のばらつきを、さらに抑制することができる。
【0088】
密閉式混練機80は、上部に材料供給口71が形成され、且つ、下部に材料排出口72が形成され、且つ、当該材料供給口71及び当該材料排出口72を閉じることにより密閉状態となるチャンバー70sと、チャンバー70sの内部に収容され且つ平行に配置された、噛み合い型の一対の混練ロータ(第1混練ロータ1、及び第2混練ロータ5)と、を備える。
また、それぞれの混練ロータは、円柱状のロータ10を備え、それぞれのロータ10の表面には、一つの長翼20と、二つの短翼(短翼30、及び中翼40)と、が形成され、それぞれのロータ10において、ロータ10の回転方向F(及び回転方向F)に関する長翼20の長さL4は、回転方向F(及び回転方向F’)に関するロータ10の全長L5の1/2よりも長く、それぞれのロータ10において、(i)ロータ10の軸方向Dに関する長翼20の長さL1と、軸方向Dに関するロータ10の全長L2と、の比(L1/L2)が、0.6以上且つ1未満であり、且つ、(ii)長翼20の一端からロータ10の端までの、軸方向Dに関する距離aと、ロータ10の長さL2と、の比(a/L2)が、0超且つ0.2以下である。
一対のロータ10を逆方向に回転させた場合に、(a)一方のロータ10(第1混練ロータ1のロータ10)における二つの短翼が、他方のロータ10(第2混練ロータ5のロータ10)の長翼20に対して、ロータ10の回転方向F(及び回転方向F’)に関して、近接及び離反を交互に繰り返すように、二つの短翼が配置されており、且つ、(b)当該近接の状態では、一方のロータ10における二つの短翼によって、他方のロータ10の長翼20が、軸方向Dに関して挟まれ、
一対のロータ10を逆方向に回転させた場合に、(A)一方のロータ10(第1混練ロータ1のロータ10)における長翼20の、回転方向F(回転方向F’)に関して後方側の末端部(第1末端部22)と、他方のロータ10(第2混練ロータ5のロータ10)における長翼20の、回転方向F(及び回転方向F’)に関して前方側の末端部(第2末端部23)とが、近接及び離反を交互に繰り返すように、長翼20が配置されており、且つ、(B)当該近接の状態(第1長翼近接状態)では、軸方向Dに垂直な一断面において、第1混練ロータ1の第1末端部22と第2混練ロータ5の第2末端部23とが、一対のロータ10の両軸心を結ぶ線(直線L)上における回転方向F(方向J)に関して対向する。
【0089】
この構成では、回転方向に関する長翼20の長さL4は、回転方向に関するロータ10の全長L5の1/2よりも長く、また、一対の長翼20の近接時に、末端部同士(第1末端部22及び第2末端部23)が、両軸心を結ぶ線上における回転方向に関して(すなわち、両軸心を結ぶ線に垂直な方向に関して)対向する。
これにより、一対の長翼20の、対向する二つの末端部が、材料の漏れ流路を遮断するため、二つの末端部の間からの材料の漏れを少なくする(又は漏れをなくす)ことができるため、材料のせん断性能を高くすることができる。
また、本構成では、材料のせん断性能を、一対の長翼20の末端部によって高めることができるために、長翼20のねじれ角度を大きくして流動性能を高くすると同時に、せん断性能を高く保つことができる。
以上のように、本構成により、流動性能及びせん断性能の両方に優れた密閉式混練機80が得られる。
【0090】
第1混練ロータ1は、密閉式混練機80の噛み合い型の混練ロータであって、円柱状のロータ10を備える。
また、ロータ10の表面には、一つの長翼20と、二つの短翼(30、40)と、が形成され、ロータ10の回転方向Fに関する長翼20の長さL4は、回転方向Fに関するロータ10の全長L5の1/2よりも長く、ロータ10において、(i)ロータ10の軸方向Dに関する長翼20の長さL1と、軸方向Dに関するロータ10の全長L2と、の比(L1/L2)が、0.6以上且つ1未満であり、且つ、(ii)長翼20の一端からロータ10の端までの、軸方向Dに関する距離aと、ロータ10の長さL2と、の比(a/L2)が、0超且つ0.2以下である。
密閉式混練機80のチャンバー70sの内部において、一対のロータ10(第1混練ロータ1のロータ10、及び、第2混練ロータ5のロータ10)を平行に配置して逆方向に回転させた場合に、(a)一方のロータ10(第1混練ロータ1のロータ10)における二つの短翼が、他方のロータ10(第2混練ロータ5のロータ10)の長翼20に対して、ロータ10の回転方向F(及び回転方向F’)に関して、近接及び離反を交互に繰り返すように、二つの短翼が配置されており、且つ、(b)当該近接の状態では、一方のロータ10における二つの短翼によって、他方のロータ10の長翼20が、軸方向Dに関して挟まれ、
密閉式混練機80のチャンバー70sの内部において、一対のロータ10を平行に配置して逆方向に回転させた場合に、(A)一方のロータ10(第1混練ロータ1のロータ10)における長翼20の、回転方向F(及び回転方向F’)に関して後方側の末端部(第1末端部22)と、他方のロータ10(第2混練ロータ5のロータ10)における長翼20の、回転方向F(及び回転方向F’)に関して前方側の末端部(第2末端部23)とが、近接及び離反を交互に繰り返すように、長翼20が配置されており、且つ、(B)当該近接の状態では、軸方向Dに垂直な一断面(G−G’断面)において、一対のロータ10の両軸心を結ぶ方向Mに関する、(i)一方のロータ10(第1混練ロータ1のロータ10)における軸心と長翼20の先端(第1先端22t)との距離D1、(ii)他方のロータ10(第2混練ロータ5のロータ10)における軸心と長翼20の先端(第2先端23t)との距離D2、及び(iii)両軸心間の距離D3が、D1+D2>D3の関係を満たす。
【0091】
この構成では、回転方向に関する長翼20の長さL4は、回転方向に関するロータ10の全長L5の1/2よりも長く、また、両軸心を結ぶ方向Mに関する距離D1、D2、及びD3が、D1+D2>D3の関係を満たす。そのため、一対の混練ロータの重ね合わせ展開図において、一対の長翼20の端部に、回転方向に関してオーバーラップする部分(回転方向に関して後方側の長翼20の前端が、前方側の長翼20の後端よりも、前方側に位置する部分;図4(c)のE)が生じる。
これにより、一対の長翼20の、対向する二つの末端部が、材料の漏れ流路を遮断するため、二つの末端部の間からの材料の漏れを少なくする(又は漏れをなくす)ことができるため、材料のせん断性能を高くすることができる。
また、本構成では、材料のせん断性能を、一対の長翼20の末端部によって高めることができるために、長翼20のねじれ角度を大きくして流動性能を高くすると同時に、せん断性能を高く保つことができる。
以上のように、本構成により、流動性能及びせん断性能の両方に優れた混練ロータが得られる。
【0092】
なお、ここでは、第1混練ロータ1により得られる効果について説明したが、第2混練ロータ5の効果についても同様に説明できる。第2混練ロータ5の場合には、上記の効果の説明中における回転方向Fを、回転方向F’に置き換えればよい。
【0093】
密閉式混練機80は、上部に材料供給口71が形成され、且つ、下部に材料排出口72が形成され、且つ、当該材料供給口71及び当該材料排出口72を閉じることにより密閉状態となるチャンバー70sと、チャンバー70sの内部に収容され且つ平行に配置された、噛み合い型の一対の混練ロータ(第1混練ロータ1、及び第2混練ロータ5)と、を備える。
また、それぞれの混練ロータは、円柱状のロータ10を備え、それぞれのロータ10の表面には、一つの長翼20と、二つの短翼(短翼30、及び中翼40)と、が形成され、それぞれのロータ10において、ロータ10の回転方向F(及び回転方向F’)に関する長翼20の長さL4は、回転方向F(及び回転方向F’)に関するロータ10の全長L5の1/2よりも長く、それぞれのロータ10において、(i)ロータ10の軸方向Dに関する長翼20の長さL1と、軸方向Dに関するロータ10の全長L2と、の比(L1/L2)が、0.6以上且つ1未満であり、且つ、(ii)長翼20の一端からロータ10の端までの、軸方向Dに関する距離aと、ロータ10の長さL2と、の比(a/L2)が、0超且つ0.2以下である。
一対のロータ10を逆方向に回転させた場合に、(a)一方のロータ10(第1混練ロータ1のロータ10)における二つの短翼が、他方のロータ10(第2混練ロータ5のロータ10)の長翼20に対して、ロータ10の回転方向F(及び回転方向F’)に関して、近接及び離反を交互に繰り返すように、二つの短翼が配置されており、且つ、(b)当該近接の状態では、一方のロータ10における二つの短翼によって、他方のロータ10の長翼20が、軸方向Dに関して挟まれ、
一対のロータ10を逆方向に回転させた場合に、(A)一方のロータ10(第1混練ロータ1のロータ10)における長翼20の、回転方向F(回転方向F’)に関して後方側の末端部(第1末端部22)と、他方のロータ10(第2混練ロータ5のロータ10)における長翼20の、回転方向F(及び回転方向F’)に関して前方側の末端部(第2末端部23)とが、近接及び離反を交互に繰り返すように、長翼20が配置されており、且つ、(B)当該近接の状態では、軸方向Dに垂直な一断面において、一対のロータ10の両軸心を結ぶ方向Mに関する、(i)一方のロータ10における軸心と長翼20の先端との距離D1、(ii)他方のロータ10における軸心と長翼20の先端との距離D2、及び(iii)両軸心間の距離D3が、D1+D2>D3の関係を満たす。
【0094】
この構成では、回転方向に関する長翼20の長さL4は、回転方向に関するロータ10の全長L5の1/2よりも長く、また、両軸心を結ぶ方向Mに関する距離D1、D2、及びD3が、D1+D2>D3の関係を満たす。そのため、一対の混練ロータの重ね合わせ展開図において、一対の長翼20の端部に、回転方向に関してオーバーラップする部分(回転方向に関して後方側の長翼20の前端が、前方側の長翼20の後端よりも、前方側に位置する部分;図4(c)のE)が生じる。
これにより、一対の長翼20の、対向する二つの末端部が、材料の漏れ流路を遮断するため、二つの末端部の間からの材料の漏れを少なくする(又は漏れをなくす)ことができるため、材料のせん断性能を高くすることができる。
また、本構成では、材料のせん断性能を、一対の長翼20の末端部によって高めることができるために、長翼20のねじれ角度を大きくして流動性能を高くすると同時に、せん断性能を高く保つことができる。
以上のように、本構成により、流動性能及びせん断性能の両方に優れた密閉式混練機80が得られる。
【0095】
また、両混練ロータにおける、混練翼の近接部分が少ないと、被混練材料が、混練翼によって削ぎ落とされることなく付着したまま、混練ロータの表面に残ってしまう。
本実施形態では、二つの混練ロータにおいて、混練翼同士が近接する箇所が、従来の混練ロータ(両長翼がオーバーラップしないもの)に比べて多くなる。具体的には、一方のロータ10の長翼20に着目すると、この長翼20は、他のロータ10の二つの短翼(短翼30及び中翼40)と二箇所で対向することに加え、この長翼20の第1末端部22及び第2末端部23において、他のロータ10の長翼20と、二箇所で対向する。すなわち、一つの長翼20には、四箇所の近接部分が存在する。
そのため、密閉式混練機80においては、被混練材料が、混練ロータの表面に部分的に付着したまま残り、混練ロータの表面を覆った状態で、ロータ10と共に回転することが抑制される。
【0096】
上記のように、密閉式混練機80においては、混練翼の近接部分が多い。そのため、混練翼の近接部分で、多くの被混練材料が混練ロータの表面から削ぎ落とされるため、混練ロータの表面の接触面(被混練材料と混練ロータとが接触する面)が、大きく露出することになる。また、混練翼の近接頻度が高いため、接触面が、被混練材料によって覆われる時間が少ない。そのため、密閉式混練機80により、優れた混練効果が得られる。
【実施例】
【0097】
(試験1)
次に、本発明に係る密閉式混練機の実施例について説明する。まず、本発明に係るロータを組み込んだ、密閉式混練機(神戸製鋼所製 BB−16)を用いて混練試験を行ない、混練後の材料の品質を評価した(試験1)。ここで、材料の品質については、材料のΔG’値を測定することにより評価した。ここで、ΔG’値とは、混練後の材料の小変形ひずみ時における貯蔵弾性率(未加硫ゴム組成物の粘弾性特性から得られる)と、混練後の材料の大変形ひずみ時における貯蔵弾性率との差のことであり、混練のフィラーの分散に関する品質を判断するために用いられる指標である。ΔG’値が小さいほど、混練後の材料の、フィラーの分散に関する品質が良い。
また、ΔG’は、シリカを配合したものと、シリカを配合しないものとの、横弾性係数の差である。
【0098】
(配合材料及びそのPHR)
以下、本試験において被混練材料として配合された材料と、そのPHRとを示す。
S−SBR: 96
BR: 30
シリカ: 80
シリカカップリング剤: 6.4
ZnO: 3.0
ステアリン酸: 2.0
AROMAオイル: 15
ゴム劣化防止剤 6PPD: 1.5
ANTIOZONANT WAX: 1.0
【0099】
なお、PHR(Parts per Hundred Rubber;重量部)とは、ゴム重量を100とした場合における、各種配合剤の重量のことをいう。S−SBRは、溶液重合スチレンブタジエンゴムであり、BRは、ブタジエンゴムである。
【0100】
(比較例について)
次に、試験1の比較例(従来例)について説明する。比較例に係る密閉式混練機では、図14の重ね合わせ展開図に示す、二つの混練ロータ(混練ロータ901及び混練ロータ905)を使用している。なお、本比較例に係る、混練ロータ901及び混練ロータ905のそれぞれにおいては、円柱状のロータ910の表面に、三つの混練翼(長翼920、短翼930、及び中翼940)が形成されている。
【0101】
図14の符号901、905、910、920、921、924、925、929、930、931、932、940、941、942を付した部分は、それぞれ、上記の実施形態において、符号1、5、10、20、21、24、25、29、30、31、32、40、41、42を付した部分に相当する。また、図14において、混練ロータ905に含まれる部分については、符号に下線を付している。
【0102】
比較例の、回転方向Fに係る長翼920の長さは、回転方向Fに関するロータ910の全長の1/2よりも短い。そして、比較例では、図14の破線円Nに示すように、一対の長翼920の両端部に、オーバーラップ部分がない。そして、このN部分が、材料の漏れ流路となってしまう。
【0103】
また、比較例に係る、それぞれの混練翼(長翼920、短翼930、及び中翼940)の、軸方向Dに対するねじれ角度は、上記の(試験1の)本発明に係るロータと同等となっている。また、比較例の一対の混練ロータにおいては、一方の混練ロータにおける長翼920を、他方の混練ロータにおける二つの短翼(短翼930及び中翼940)が軸方向Dに挟みながら、これら二つの短翼が、長翼に対して近接及び離反を繰り返すようになっている。
【0104】
図10においては、本実施例の混練ロータ(第1混練ロータ1及び第2混練ロータ5)を用いた場合の混練結果を実線で示し、比較例の混練ロータを用いた場合の混練結果を破線で示している。グラフの縦軸はΔG’値であり、横軸は、材料排出口72から排出された混練後の材料の温度(排出温度)である。
【0105】
混練試験の結果、図10に示すように、本実施例に係るΔG’の値は、155℃乃至160℃の温度範囲で、比較例のΔG’の値よりも低くなり、本発明により、比較例に比べて品質が向上することが分かった。
【0106】
なお、シリカを配合した被混練材料の混練では、混練された材料の温度が、例えば、140℃乃至160℃の範囲(高温範囲)で、シリカとゴムとを結合させるために配合されているシランカップリング剤が、シリカと反応する。したがって、この反応を効率的に起こすには、140℃乃至160℃程度の温度範囲で、シリカとシランカップリング剤とを均一に混練することが必要である。そして、混練ロータにおける、三つの混練翼(長翼、中翼、及び短翼)のねじれ角度を、45度以上且つ61度以下とすることにより、シリカとシランカップ剤との均一な混練が可能となる。
【0107】
また、本実施例ではシリカを配合しているが、他の配合材料(フィラーなど)を多量に含む材料における配合材料の分散性についても、本発明により良好な効果が得られる。
【0108】
(試験2)
次に、混練中の材料の、軸方向Dに関する押出量とねじれ角との関係を計算した。材料押出量は、密閉式混練機における、軸方向Dに関する材料の流動性能の指標であり、この値が大きいほど、流動性能が高くなり、材料の均一な混練が可能となる。材料押出量Qは、以下の式で表わされる。
Q=α・N−(β・ΔP/μ)−(γ・ΔP/μ)
Q:材料押出量
N:ロータ回転数[s−1
μ:粘度[Pa・s]
ΔP:圧力変化値[Pa]
α、β、γ:ロータ形状に関する係数
【0109】
図11は、本計算の結果を示しており、縦軸は、材料の押出量の相対値であり、横軸は、三つの混練翼(長翼、中翼、及び短翼)のねじれ角度である。試験の結果、図11に示すように、混練翼のねじれ角度が小さ過ぎる場合、及び、大き過ぎる場合に、押出量が小さくなる。また、材料の押出量は、ねじれ角度が43度以上且つ61度以下の範囲内で大きくなっており、この範囲で流動性能が高くなっていることが分かる。また、押出量は、ねじれ角度が47度乃至57度の範囲で更に大きくなっており、この範囲で流動性能が更に高くなっていることが分かる。なお、ねじれ角度が50度付近のときに、押出量は最大となった。
【0110】
(試験3)
次に、本発明に係る密閉式混練機を用いて、ビーズテストを行なった(試験3)。ビーズテストとは、模擬材料にビーズを入れビーズの分配状態(流動状態)を評価する試験である。また、この試験については、混練時間を、30s、及び40sとして実施した。
【0111】
本試験においても、試験1と同様に、使用した混練ロータにおいては、回転方向Fに係る長翼の長さが、ロータ10の全長の1/2よりも長い。そして、二つの混練ロータの、一対の長翼の両端部に、オーバーラップ部分が存在する。また、試験1と同様に、混練ロータとして、(i)長翼の両端にオーバーラップ部分が存在するように混練翼が配置されたものであって、且つ、(ii)二つの混練ロータの、各混練翼のねじれ角度(軸方向Dに対するねじれ角度)を、試験1のロータと同等としたものを使用して、混練試験を行なった。
【0112】
図12は、本試験の結果を示しており、縦軸は、模擬材料の中のビーズの個数の標準偏差を、平均値で除算したものであり、この数値が大きいほど、ビーズの数のばらつき(平均値からの偏り)が大きいことになる。なお、時間による影響を排除したねじれ角度の影響を把握するため、平均値で評価した。また、横軸は、三つの混練翼(長翼、中翼、及び短翼)のねじれ角度である。試験の結果、図12から分かるように、ねじれ角度が45度以上且つ61度以下のときに、標準偏差/平均値が小さくなっており、特に、50度以上57以上のときにそれが顕著であることが分かった。すなわち、ねじれ角度が50度以上且つ57度以下である場合に、混練ロータによる混合性能のばらつきが、特に効果的に抑制された。なお、図中の「ave 30s/40s」(二点鎖線)は、混練時間30s及び40sにおける「標準偏差/平均値」の平均値(ねじれ角度毎の相加平均値)である。
【0113】
(変形例)
次に、上記の実施形態の変形例について、図13を用いて説明する。なお、上記の実施形態と同様の部分については、図に同一の符号を付してその説明を省略する。図13は、変形例に係る一対の混練ロータの重ね合わせ展開図である。以下、上記の実施形態とは異なる部分を中心に説明し、上記の実施形態と同様の事項については、その説明を省略する。なお、符号201、205、220、221、222、222t、224、225を付した部分は、それぞれ、上記の実施形態において、符号1、5、20、21、22、22t、24、25を付した部分に相当する。また、図13において、第2混練ロータ205に含まれる部分については、符号に下線を付している。
【0114】
本変形例に係る一対の混練ロータ(符号第1混練ロータ201、及び第2混練ロータ205)においては、長翼220の形状が上記の長翼20とは異なる。具体的には、回転方向に関して前方側の末端部(第2末端部23)の形状については同様であるが、回転方向に関して後方側の末端部である、第1末端部222の形状が第1末端部22とは異なっており、長翼220には、傾斜面29が形成されていない。また、長翼220は、長翼20よりも長さ(軸方向Dに関する長さ)が短い。より詳細に説明すると、第1末端部22のうち、傾斜面29を含む先端部分がなくなっており、第1末端部222は、この分だけ第1末端部22よりも短い。混練ロータは、このようなものであってもよい。なお、図13のP−P’断面図は、上記のG−G’断面図(図9)と同一である。
【0115】
(他の実施形態について)
本発明の実施の形態は、上記の実施形態には限られない。例えば、上記の実施形態においては、回転軸10jと回転軸10kとの形状が異なるが、これらの回転軸の形状を同一としてもよい。すなわち、ロータ10を挟む二つの回転軸を、対称形状としてもよい。このような構成により、一対の混練ロータを、配置方向だけが異なる同一品とすることができ、組み立ての時間及びコストを低減できる。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明は、ゴムなどの材料を混練するための密閉式混練機に利用できる。
【符号の説明】
【0117】
1 第1混練ロータ
5 第2混練ロータ
10 ロータ
10j、10k 回転軸
20 長翼
21 チップ部
22 第1末端部
22t 第1先端
23 第2末端部
23t 第2先端
24 第1対向面
25 第2対向面
29 傾斜面
30 短翼
31 チップ部
32 対向面
40 中翼(短翼)
41 チップ部
42 対向面
70 ケーシング
70s チャンバー
71 材料供給口
72 材料排出口
73 ドロップドア
74 フローティングウェイト
75 ピストンロッド
76 ホッパー
77 材料供給筒
80 密閉式混練機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉式混練機(80)の噛み合い型の混練ロータ(1、5)であって、
円柱状のロータ(10)を備え、
前記ロータの表面には、一つの長翼(20)と、二つの短翼(30、40)と、が形成され、
前記ロータの回転方向に関する前記長翼の長さL4は、前記回転方向に関する前記ロータの全長L5の1/2よりも長く、
前記ロータにおいて、(i)前記ロータの軸方向に関する前記長翼の長さL1と、前記軸方向に関する前記ロータの全長L2と、の比(L1/L2)が、0.6以上且つ1未満であり、且つ、(ii)前記長翼の一端から前記ロータの端までの、前記軸方向に関する距離xと、前記ロータの長さL2と、の比(x/L2)が、0超且つ0.2以下であり、
前記密閉式混練機のチャンバーの内部において、一対の前記ロータを平行に配置して逆方向に回転させた場合に、(a)一方の前記ロータにおける二つの前記短翼が、他方の前記ロータの前記長翼に対して、前記ロータの回転方向に関して、近接及び離反を交互に繰り返すように、二つの前記短翼が配置されており、且つ、(b)当該近接の状態では、一方の前記ロータにおける二つの前記短翼によって、他方の前記ロータの前記長翼が、前記軸方向に関して挟まれ、
前記密閉式混練機のチャンバーの内部において、一対の前記ロータを平行に配置して逆方向に回転させた場合に、(A)一方の前記ロータにおける前記長翼の、前記回転方向に関して後方側の末端部と、他方の前記ロータにおける前記長翼の、前記回転方向に関して前方側の末端部とが、近接及び離反を交互に繰り返すように、前記長翼が配置されており、且つ、(B)当該近接の状態では、前記軸方向に垂直な一断面において、前記後方側の末端部と前記前方側の末端部とが、一対の前記ロータの両軸心を結ぶ線上における前記回転方向に関して、対向することを特徴とする混練ロータ。
【請求項2】
前記軸方向に対する、前記長翼のねじれ角度が、45度以上且つ61度以下であることを特徴とする請求項1に記載の混練ロータ。
【請求項3】
前記軸方向に対する、前記長翼のねじれ角度が、50度以上且つ57度以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の混練ロータ。
【請求項4】
上部に材料供給口(71)が形成され、且つ、下部に材料排出口(72)が形成され、且つ、当該材料供給口及び当該材料排出口を閉じることにより密閉状態となるチャンバー(70)と、
前記チャンバーの内部に収容され且つ平行に配置された、噛み合い型の一対の混練ロータ(1、5)と、を備え、
それぞれの前記混練ロータは、円柱状のロータ(10)を備え、
それぞれの前記ロータの表面には、一つの長翼(20)と、二つの短翼(30、40)と、が形成され、
それぞれの前記ロータにおいて、前記ロータの回転方向に関する前記長翼の長さL4は、前記回転方向に関する前記ロータの全長L5の1/2よりも長く、
それぞれの前記ロータにおいて、(i)前記ロータの軸方向に関する前記長翼の長さL1と、前記軸方向に関する前記ロータの全長L2と、の比(L1/L2)が、0.6以上且つ1未満であり、且つ、(ii)前記長翼の一端から前記ロータの端までの、前記軸方向に関する距離xと、前記ロータの長さL2と、の比(x/L2)が、0超且つ0.2以下であり、
一対の前記ロータを逆方向に回転させた場合に、(a)一方の前記ロータにおける二つの前記短翼が、他方の前記ロータの前記長翼に対して、前記ロータの回転方向に関して、近接及び離反を交互に繰り返すように、二つの前記短翼が配置されており、且つ、(b)当該近接の状態では、一方の前記ロータにおける二つの前記短翼によって、他方の前記ロータの前記長翼が、前記軸方向に関して挟まれ、
一対の前記ロータを逆方向に回転させた場合に、(A)一方の前記ロータにおける前記長翼の、前記回転方向に関して後方側の末端部と、他方の前記ロータにおける前記長翼の、前記回転方向に関して前方側の末端部とが、近接及び離反を交互に繰り返すように、前記長翼が配置されており、且つ、(B)当該近接の状態では、前記軸方向に垂直な一断面において、前記後方側の末端部と前記前方側の末端部とが、一対の前記ロータの両軸心を結ぶ線上における前記回転方向に関して、対向することを特徴とする密閉式混練機(80)。
【請求項5】
密閉式混練機(80)の噛み合い型の混練ロータ(1、5)であって、
円柱状のロータ(10)を備え、
前記ロータの表面には、一つの長翼(20)と、二つの短翼(30、40)と、が形成され、
前記ロータの回転方向に関する前記長翼の長さL4は、前記回転方向に関する前記ロータの全長L5の1/2よりも長く、
前記ロータにおいて、(i)前記ロータの軸方向に関する前記長翼の長さL1と、前記軸方向に関する前記ロータの全長L2と、の比(L1/L2)が、0.6以上且つ1未満であり、且つ、(ii)前記長翼の一端から前記ロータの端までの、前記軸方向に関する距離xと、前記ロータの長さL2と、の比(x/L2)が、0超且つ0.2以下であり、
前記密閉式混練機のチャンバーの内部において、一対の前記ロータを平行に配置して逆方向に回転させた場合に、(a)一方の前記ロータにおける二つの前記短翼が、他方の前記ロータの前記長翼に対して、前記ロータの回転方向に関して、近接及び離反を交互に繰り返すように、二つの前記短翼が配置されており、且つ、(b)当該近接の状態では、一方の前記ロータにおける二つの前記短翼によって、他方の前記ロータの前記長翼が、前記軸方向に関して挟まれ、
前記密閉式混練機のチャンバーの内部において、一対の前記ロータを平行に配置して逆方向に回転させた場合に、(A)一方の前記ロータにおける前記長翼の、前記回転方向に関して後方側の末端部と、他方の前記ロータにおける前記長翼の、前記回転方向に関して前方側の末端部とが、近接及び離反を交互に繰り返すように、前記長翼が配置されており、且つ、(B)当該近接の状態では、前記軸方向に垂直な一断面において、一対の前記ロータの両軸心を結ぶ方向に関する、(i)一方の前記ロータにおける軸心と前記長翼の先端との距離D1、(ii)他方の前記ロータにおける軸心と前記長翼の先端との距離D2、及び(iii)前記両軸心間の距離D3が、D1+D2>D3の関係を満たすことを特徴とする混練ロータ。
【請求項6】
上部に材料供給口(71)が形成され、且つ、下部に材料排出口(72)が形成され、且つ、当該材料供給口及び当該材料排出口を閉じることにより密閉状態となるチャンバー(70)と、
前記チャンバーの内部に収容され且つ平行に配置された、噛み合い型の一対の混練ロータ(1、5)と、を備え、
それぞれの前記混練ロータは、円柱状のロータ(10)を備え、
それぞれの前記ロータの表面には、一つの長翼(20)と、二つの短翼(30、40)と、が形成され、
それぞれの前記ロータにおいて、前記ロータの回転方向に関する前記長翼の長さL4は、前記回転方向に関する前記ロータの全長L5の1/2よりも長く、
それぞれの前記ロータにおいて、(i)前記ロータの軸方向に関する前記長翼の長さL1と、前記軸方向に関する前記ロータの全長L2と、の比(L1/L2)が、0.6以上且つ1未満であり、且つ、(ii)前記長翼の一端から前記ロータの端までの、前記軸方向に関する距離xと、前記ロータの長さL2と、の比(x/L2)が、0超且つ0.2以下であり、
一対の前記ロータを逆方向に回転させた場合に、(a)一方の前記ロータにおける二つの前記短翼が、他方の前記ロータの前記長翼に対して、前記ロータの回転方向に関して、近接及び離反を交互に繰り返すように、二つの前記短翼が配置されており、且つ、(b)当該近接の状態では、一方の前記ロータにおける二つの前記短翼によって、他方の前記ロータの前記長翼が、前記軸方向に関して挟まれ、
一対の前記ロータを逆方向に回転させた場合に、(A)一方の前記ロータにおける前記長翼の、前記回転方向に関して後方側の末端部と、他方の前記ロータにおける前記長翼の、前記回転方向に関して前方側の末端部とが、近接及び離反を交互に繰り返すように、前記長翼が配置されており、且つ、(B)当該近接の状態では、前記軸方向に垂直な一断面において、一対の前記ロータの両軸心を結ぶ方向に関する、(i)一方の前記ロータにおける軸心と前記長翼の先端との距離D1、(ii)他方の前記ロータにおける軸心と前記長翼の先端との距離D2、及び(iii)前記両軸心間の距離D3が、D1+D2>D3の関係を満たすことを特徴とする密閉式混練機(80)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−247412(P2010−247412A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−98660(P2009−98660)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【特許番号】特許第4542605号(P4542605)
【特許公報発行日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】