説明

密閉式混練機

【課題】混練機本体1に連設され被混練物が投入されるホッパー11内に、油圧シリンダ15・15により昇降自在にされたフローティングウェイト6を備える密閉式混練機において、煩雑な作業を必要とすることなくフローティングウェイト6の停止位置を変更可能な構成を提供する。
【解決手段】フローティングウェイト6の昇降位置を連続的に検出可能なリニアスケール40と、フローティングウェイト6の昇降位置を設定する位置設定器51と、リニアスケール40の位置検出信号及び位置設定器51の設定値に基づき前記フローティングウェイト6の昇降位置を制御する制御装置50と、を備える。この制御装置50は、前記位置検出信号が位置設定値に一致したときに、電磁方向切換弁25に停止信号を送って油圧シリンダ15・15の動作を停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被混練物を混練室内で混練する密閉式混練機に関し、特に、被混練物を混練室に押し込むためのフローティングウェイトを昇降させる構成の密閉式混練機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の密閉式混練機は例えば特許文献1に開示されており、この特許文献1では、フローティングウェイトを下降させて混練室側へ押し込むための油圧シリンダを設けるとともに、油圧側と空圧側との間で圧力変換する空油圧変換器を混練機本体とは別置に設け、前記油圧シリンダの油圧側と空油圧変換器の油圧側とを接続した構成となっている。この密閉式混練器は、空油圧変換器のエア圧によってウェイトにクッション機能を適度に発揮させながら、フローティングウェイトを下降させることで被混練物を徐々に混練室内に導き、被混練物をスムーズに混練することができる。
【0003】
また上記の密閉式混練機は、前記の油圧シリンダの進退を切り換える電磁方向切換弁と、昇降されるフローティングウェイトの移動を監視するON/OFF式のリミットスイッチが設けられており、ウェイトが下限位置に達するとリミットスイッチからの信号に応じて電磁方向切換弁を切り換え、ウェイトの下降を停止するように構成されている。
【特許文献1】特開平9−206581号公報(図1、段落番号0023、等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような密閉式混練機においては、近年の被混練物材料の多様化等の事情により、ウェイト位置を様々な位置で固定して混練したり、押込み時や混練時にウェイトの押付け圧を任意に制御したりする新しい混練方法のニーズが強くなってきている。
【0005】
しかしながら特許文献1の密閉式混練機では、リミットスイッチからのON/OFF信号でフローティングウェイトの位置を検出しているために、ウェイト位置を変更するためにはリミットスイッチの位置を変更しなければならず、その手間が煩雑であった。
【0006】
また、上記の密閉式混練機においては、密閉式混練機の周囲に空油圧変換器を設置しなければならず、大きな設置スペースが必要となっていた。また、上記の密閉式混練機では、空油圧変換器の空圧側へのエア供給を変化させることでウェイトの押付け圧を変更させることは理論上可能であるものの、ウェイト押付け圧を大きく変化させる制御を行おうとすると大容量のエアの給排が必要となり、圧力変化にも時間が掛かってしまうので、所定の混練時間内に圧力制御を行うことは事実上困難であった。
【0007】
また、密閉式混練機としてはエアシリンダによりフローティングウェイトを下降させるタイプのものも従来から知られているが、大きなエアシリンダが必要となって、設備コスト及びスペース上の観点から改善の余地があった。また、ウェイトの昇降のために大容量のエアが必要となってしまい、ランニングコストが増大し、省エネルギ上の観点からも好ましいといえなかった。更には、圧縮流体であるエアを使用しての位置制御であるので、ウェイトの位置を良好な精度で様々な位置に制御することは困難であり、また、上記の特許文献1と同様に、所定の混練時間内にウェイトの押付け圧を大きく変化させる制御も困難であった。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0009】
本発明の観点によれば、以下のように構成する、密閉式混練機が提供される。混練機本体に連設され被混練物が投入されるホッパー内に、油圧シリンダにより昇降自在にされたフローティングウェイトを備える。前記フローティングウェイトの昇降位置を連続的に検出可能な位置検出装置と、前記フローティングウェイトの昇降位置を設定する位置設定手段と、前記位置検出装置の位置検出信号及び前記位置設定手段の設定値に基づき前記フローティングウェイトの昇降位置を制御する位置制御装置と、を備える。前記位置制御装置は、前記位置検出信号が前記位置設定値に一致したときに前記油圧シリンダの動作を停止させるべく停止信号を出力するように構成する。
【0010】
これにより、フローティングウェイトが任意の設定位置に到達したことを位置検出装置で検出し、これに基づいて油圧シリンダの動作を停止させてフローティングウェイトを停止させることができる。従って、混練室の容量を変更すべくフローティングウェイトの停止位置を変更したい場合でも、位置設定手段による設定だけで済み、(特許文献1でのリミットスイッチの取付位置の変更といった)煩雑な作業を省略することができる。また、油圧シリンダの動作停止によりフローティングウェイトの停止を実現しているため、前述したエアシリンダによる構成に比べてフローティングウェイトの位置制御の精度も良好で、設備スペース及びコストも低減でき、省エネルギな構成とすることができる。
【0011】
前記の密閉式混練機においては、前記位置設定手段は、フローティングウェイトの昇降位置の設定値を複数設定することが可能に構成されていることが好ましい。
【0012】
これにより、混練時におけるフローティングウェイトの位置の切換を極めて容易に行うことができる。
【0013】
前記の密閉式混練機においては、前記位置設定手段は、所定の運転条件に応じてフローティングウェイトの昇降位置の設定値を複数設定することが可能に構成されていることが好ましい。
【0014】
これにより、混練時におけるフローティングウェイトの位置を様々な運転条件に応じて容易に切り換えることができ、様々な混練方法にキメ細かく柔軟に対応することができる。
【0015】
前記の密閉式混練機においては、前記停止信号により油圧シリンダへの圧油の供給を停止させて前記油圧シリンダの動作を停止させる切換弁を備えていることが好ましい。
【0016】
これにより、特別な停止機構を設けることなく簡素な構成で、フローティングウェイトの設定位置での停止を実現することができる。
【0017】
前記の密閉式混練機においては、以下のように構成することが好ましい。前記油圧シリンダのフローティングウェイト加圧側に作用する圧油の圧力を検出する圧力センサと、前記油圧シリンダのフローティングウェイト加圧側に作用する圧油の圧力を設定する圧力設定器と、油圧源から油圧シリンダへ供給される圧油をタンク側へ逃がす遠隔作動リリーフ弁と、前記圧力センサの圧力検出信号及び圧力設定手段の圧力設定値に基づき前記遠隔作動リリーフ弁を制御する圧力制御装置と、を備える。この圧力制御装置は、前記圧力検出信号と前記圧力設定値とを一致させるように前記遠隔作動リリーフ弁への指令信号を出力するように構成されている。
【0018】
これにより、前記特許文献1の空油圧変換器を有する構成と異なり、リリーフ弁のリリーフ圧の調整でフローティングウェイトの押付け圧を変更できるから、大きな圧力変更を伴うウェイト押付け圧の制御も素早く行うことができる。また、フローティングウェイトの位置変更(のみ)を通じてウェイト押付け圧制御を行う構成に比べ、ウェイト押付け圧を直接的に応答性良く制御することができる。
【0019】
前記の密閉式混練機においては、前記圧力設定手段は、所定の運転条件に応じて圧力の設定値を複数設定することが可能に構成されていることが好ましい。
【0020】
これにより、混練時におけるウェイト押付け圧を様々な運転条件に応じて容易に切り換えることができ、様々な混練方法に柔軟にキメ細かく対応することができる。
【0021】
前記の密閉式混練機においては、前記油圧シリンダの油圧源としての油圧ポンプを駆動するモータを可変速モータとすることが好ましい。
【0022】
これにより、更にキメ細かく、ウェイトの移動速度及び圧油の上昇時間を調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、本発明の一実施形態に係る密閉式混練機の全体構成の例を、図1を参照して説明する。図1は密閉式混練機の全体構成を示す一部断面図である。
【0024】
図1に全体構成を示される密閉式混練機Xは例えばゴムや樹脂等の被混練物を混練するためのものであって、内部に混練室9を有する混練機本体としてのチャンバー1と、混練室9内の被混練物を混練する混練用ロータ4と、混練室9内に被混練物を所定の圧力をもって押し込むためのフローティングウェイト6と、を主要な構成として備えている。
【0025】
チャンバー1内には、2つの円形を横に並べて互いに一部接続した形状の断面を有する混練室9が形成されている。この混練室9の横方向中央部分の上部には供給口7が形成され、下部には排出口3が形成される。上側の供給口には前記フローティングウェイト6が配置され、下側の排出口3にはドロップドア2のドアトップ2aが配置される。混練室9は、前記チャンバー1の内壁、前記フローティングウェイト6の下部、ドロップドア2のドアトップ2aによって、前記の形状を呈するように密閉状に区画形成される。
【0026】
チャンバー1の上部には前記供給口7に接続させてホッパー11が設けられ、このホッパー11は被混練物の投入口10を備えている。一方、チャンバー1の下部に配設されたドロップドア2は、前記排出口3の閉鎖/開放をドア開閉機構8によって切り換えることが可能に構成されている。これにより、混練時は排出口3を閉鎖する一方、混練終了後は排出口3を開いて混練室9内の被混練物を排出することができる。
【0027】
また、密閉式混練機Xはラッチ5を備えており、このラッチ5は、混練時はドロップドア2をチャンバー1側に突き上げて被混練物の混練中の混練室9内の密閉性を保持する一方、混練終了後は、ラッチ5はドロップドア2から退避されてドロップドア2を開放可能にする構成となっている。
【0028】
前記混練室9内には回転する2本のロータ4が配置されており、各ロータ4は図示しない駆動モータにより回転駆動される。各ロータ4は前記駆動モータにより混練室9の内壁を掃くように回転駆動され、投入口10からホッパー11(混練機本体)に投入されてフローティングウェイト6の下降で供給口7から混練室9内に押し込まれるゴムや樹脂等を混練する。
【0029】
前記ホッパー11内には前記フローティングウェイト6が配置され、このフローティングウェイト6は上下方向に摺動自在とされている。フローティングウェイト6はロッド(軸部材)13を介して、ウェイト装置Yの一部を構成するコネクティングビーム14と一体的に連結されている。ウェイト装置Yはフローティングウェイト6の上下移動や被混練物に対する押付け圧の調整を行うためのものであり、コネクティングビーム14にフローティングウェイト6を一体化するとともに2つの油圧シリンダ15・15を連結して構成されている。2つの油圧シリンダ15・15は被混練物の投入口10を避けるように、ホッパー11を間に挟むように配置されている。
【0030】
次に、ウェイト装置Yの具体的な構成について説明する。図1および図2において、ウェイト装置Yは、その中央部に前記ロッド13をT字状に一体的に固着したコネクティングビーム14と、このコネクティングビーム14の両端に連結される2つの油圧シリンダ15・15と、を主要な構成として備えている。
【0031】
図2に示すように、前記2つの油圧シリンダ15・15は複動シリンダに構成されており、それぞれのシリンダ本体17内のシリンダ室にはピストン18が摺動自在に設置されている。上記シリンダ室の内部空間は、上記ピストン18によって2つの油圧室A・Bに区画されている。2つの油圧室A・Bのうち一方の油圧室Bは、フローティングウェイト6を下降させて被混練物を押し込む方向の油圧力を発生させるものであり、フローティングウェイト加圧側の圧力室となっている。他方の油圧室Aは、フローティングウェイト6を上昇させる方向の油圧力を発生させる圧力室である。これら油圧室A・Bには一例として図2に示すように、前記ウェイト装置Yの一部を構成する油圧回路が接続されている。
【0032】
前記ピストン18には、シリンダ本体17から伸退される可動ロッド19が連結されている。この可動ロッド19はシリンダ本体17から上方へ延出し、前記コネクティングビーム14の両端にそれぞれ連結されている。
【0033】
前記油圧シリンダ15の適宜位置には位置センサとしてのリニアスケール40が設けられている。このリニアスケール40は、油圧シリンダ15の可動ロッド19に設置された磁気スケールを読み取るアブソリュート型の磁気センサとして構成されており、可動ロッド19の位置(ひいては、フローティングウェイト6の位置)を連続的かつ無段階的に検出することが可能に構成されている。このリニアスケール40で読み取られたフローティングウェイト6のリニア位置の信号は、ウェイト装置Yの制御装置50へ送信される。
【0034】
この構成で、各油圧シリンダ15において油圧室Aへ圧油を供給すると、可動ロッド19が上方へ伸張してコネクティングビーム14を上昇させ、これによりフローティングウェイト6がホッパー11内を上昇する。一方、油圧室Bへ圧油を供給すると、可動ロッド19は下方へ退避してコネクティングビーム14を下降させ、これによりフローティングウェイト6は混練室9へ向かって下降する。
【0035】
次に、図2を参照して油圧回路を説明する。この油圧回路は、駆動モータ24により駆動されて圧油タンク20から作動油を吸引して供給管路22に吐出する油圧ポンプ(油圧源)23と、フローティングウェイト6の上昇/下降/停止を切り換えるための電磁方向切換弁25と、を有している。この駆動モータ24は、インバータ制御で駆動される可変速モータとされている。
【0036】
前記供給管路22には、当該供給管路22の圧力を連続的かつ無段階に遠隔制御可能な、パイロット作動型リリーフ弁(遠隔作動リリーフ弁)42が接続されている。このパイロット作動型リリーフ弁42のパイロット部のソレノイドに対しては、制御装置50からの圧力信号(指令信号)がアンプ53によって増幅され入力される。この構成で、制御装置50から圧力信号が入力されると、その電流値に応じた吸引力が前記ソレノイドに生じて弁体を押圧し、リリーフ弁42のリリーフ圧力を変更することができる。
【0037】
前記供給管路22は、以下に説明する電磁方向切換弁25のPポートに接続される。なお、この供給管路22には逆流防止のためのチェック弁38が備えられている。
【0038】
前記電磁方向切換弁25は、前記供給管路22に接続されるPポート、圧油タンク20に接続されるTポート、及び、前記2つの油圧シリンダ15・15の油圧室A・Bにそれぞれ接続されるAポート及びBポートを有しており、制御装置50が作動信号を送ってソレノイドを励磁/消磁することで、その弁体を各々の位置に切換可能とされている。
【0039】
電磁方向切換弁25のPポートには、前記供給管路22が前述のとおり接続される。また、Aポートには前記2つの油圧シリンダ15・15の油圧室Aが作動管路26を介して接続され、Bポートには同様に油圧シリンダ15・15の油圧室Bが作動管路27を介して接続される。
【0040】
電磁方向切換弁25のAポートに接続される作動管路26には、パイロットチェック弁33が配置されている。このパイロットチェック弁33は、通常時は油圧シリンダ15・15から電磁方向切換弁25へ向かう流れを阻止する一方、それと逆方向の流れを許容するように構成されている。ただし、このパイロットチェック弁33のパイロット管路がBポート側の作動管路27に接続されており、当該作動管路27の圧力が上昇すると上記パイロットチェック弁33が強制開弁されて、油圧シリンダ15・15から電磁方向切換弁25へ向かう流れを許容するようになっている。
【0041】
また、電磁方向切換弁25のBポートに接続される作動管路27には、パイロットチェック弁31が配置されている。このパイロットチェック弁31は前記のパイロットチェック弁33と同様に、通常時は油圧シリンダ15・15から電磁方向切換弁25へ向かう流れを阻止する一方、それと逆方向の流れを許容するように構成されている。ただし、このパイロットチェック弁31のパイロット管路がAポート側の作動管路26に接続されており、当該作動管路26の圧力が上昇すると上記パイロットチェック弁31が強制開弁されて、油圧シリンダ15・15から電磁方向切換弁25へ向かう流れを許容するようになっている。
【0042】
更に、作動管路27にはリリーフ弁32が接続されている。このリリーフ弁32は、通常時には弁バネによって、作動管路27と圧油タンク20との間を遮断する位置とされている。一方、作動管路27の圧力が異常上昇したときには、作動管路27から導入されるパイロット圧が弁体を弁バネに抗して押すことで、作動管路27と圧油タンク20とを連通し、圧油を逃がすように構成されている。
【0043】
また作動管路27には、当該作動管路27の圧力(ひいては、所謂ラム圧)を測定する圧力センサ34が接続され、この圧力センサ34の検出した圧力信号はウェイト装置Yの制御装置50に対し入力されるようになっている。更に前記作動管路27には、高圧の窒素ガスを封入したピストン式のアキュムレータ35が接続されており、当該作動管路27の圧力変動を吸収・緩衝できるように構成されている。
【0044】
ウェイト装置Yの制御装置50は、CPUやROMやRAMやタイマ回路等を備えるとともに、密閉式混練機Xの運転状況を監視するための各種センサ(前記圧力センサ34を含む)が接続されている。また、この制御装置50には位置設定器(位置設定手段)51と圧力設定器(圧力設定手段)52とが電気的に接続されている。この位置設定器51は例えばテンキー等を備えており、フローティングウェイト6の位置をテンキーから入力して設定することができる。また圧力設定器52も同様に、フローティングウェイト6の圧力をテンキーから入力して設定することができる。
【0045】
本実施形態では位置設定器51は、様々な運転条件(例えば、所定時間毎、所定圧力毎、所定バレル温度、所定冷却水温度、所定混練材料温度等、様々な運転条件ないし運転状況が考えられる)に応じて、前述のフローティングウェイト6の停止位置の設定値を複数設定可能に構成されている。同様に圧力設定器52も、上記と同じ様々な運転条件に応じて、フローティングウェイト6の押付け圧を複数設定可能に構成されている。これら設定器51・52により設定された複数の設定値は、制御装置50のRAM等(記憶手段)に記憶され、運転条件に従って適宜読み出されて使用される。
【0046】
以上の構成においてフローティングウェイト6を上昇させる場合、油圧回路の駆動モータ24を駆動して油圧ポンプ23から供給管路22に作動油を吐出させるとともに、前記制御装置50は上昇信号を電磁方向切換弁25に送って当該電磁方向切換弁25を切り換えて、AポートをPポートに接続し、BポートをTポートに接続する。すると、Pポートから作動管路26に供給された圧油はパイロットチェック弁33を通過して、2つの油圧シリンダ15・15の油圧室Aへ供給される。こうしてピストン18及び可動ロッド19が上方へ移動し、フローティングウェイト6が上昇する。ピストン18の上昇によって反対側の油圧室Bの圧油はシリンダ本体17から作動管路27へ排出され、排出された圧油は、強制開弁されるパイロットチェック弁31を通過して、電磁方向切換弁25のBポートからTポートを経由して圧油タンク20へ戻される。
【0047】
フローティングウェイト6が上限近傍まで上昇した状態が図2に示され、この状態で投入口10から被混練物が投入された後、フローティングウェイト6の下降動作が以下のように行われる。即ち、前記制御装置50は下降信号を電磁方向切換弁25へ送って当該電磁方向切換弁25を切り換え、AポートをTポートに接続し、BポートをPポートに接続する。すると、Pポートから作動管路27へ供給された圧油はパイロットチェック弁31を通過し、2つの油圧シリンダ15・15の油圧室Bへ供給される。こうしてピストン18及び可動ロッド19が下方へ移動し、フローティングウェイト6が下降する。ピストン18の上昇によって反対側の油圧室Aの圧油はシリンダ本体17から作動管路26へ排出され、強制開弁されるパイロットチェック弁33を通過した後、圧油は電磁方向切換弁25のAポートからTポートを経由して圧油タンク20へ戻される。
【0048】
以上のように、電磁方向切換弁25がAポート−Tポート間、Bポート−Pポート間をそれぞれ接続し、各油圧シリンダ15の油圧室B(加圧側の油圧室)に圧油を供給して可動ロッド19をシリンダ本体17内に退避させ、この可動ロッド19にコネクティングビーム14及びロッド13を介して連結されたフローティングウェイト6によって、混練室9内に被混練物を適度の押付け力をもって押し込む(押圧する)。こうして、混練室9内で回転するロータ4・4によって、被混練物の混練が行われる。
【0049】
ここで混練室9内の前記ロータ4・4は、被混練物の一部を混練室9内に導くとともに、残りを混練室9外に押し上げるように回転するため、フローティングウェイト6はこの押上げ力を受けて僅かに上昇しようとする。しかしながら、加圧側の油圧室Bに接続された作動管路27にはアキュムレータ35が接続されているため、フローティングウェイト6は上記の押上げを緩衝的に受け止めることができる(クッション作用)。このようにクッション機能を発揮させつつフローティングウェイト6を下降させることで、被混練物を徐々に混練室9内に導き、ロータ4の回転により混練することができる。
【0050】
また、上記のフローティングウェイト6の下降中においては、フローティング加圧側の油圧室Bの圧力が前記作動管路27の圧力として圧力センサ34により刻々と検出されており、この圧力信号が前記制御装置50へ入力されている。そして制御装置50は、前記圧力センサ34の検出圧力が前記圧力設定器52での設定圧力に応じた圧力となるように、パイロット作動型リリーフ弁42に指令信号をアンプ53を介して送る。この結果、供給管路22の圧力変更を通じてフローティングウェイト6の被混練物に対する押付け圧を容易に素早く変更することができる。
【0051】
更に、上記のフローティングウェイト6の下降動作の間、前記リニアスケール40の検出する位置信号が、前記制御装置50へ刻々と入力されている。そして、リニアスケール40で検出した位置が予め位置設定器51で設定された位置と等しくなると、制御装置50は電磁方向切換弁25へ停止信号を送って当該電磁方向切換弁25をクローズ位置へ切り換え、Aポート及びBポートをブロックする。この結果、油圧シリンダ15の油圧室A・Bに対する圧油の給排が停止されるので、フローティングウェイト6を位置設定器51で設定された位置で正確に停止させることができる。
【0052】
以上に示すように、本実施形態の密閉式混練機Xは、チャンバー1に連設され被混練物が投入されるホッパー11内に、油圧シリンダ15・15により昇降自在にされたフローティングウェイト6を備える。そして、前記フローティングウェイト6の昇降位置を連続的に検出可能なリニアスケール40と、前記フローティングウェイト6の昇降位置を設定する位置設定器51と、前記リニアスケール40の位置検出信号及び前記位置設定器51の設定値に基づき前記フローティングウェイト6の昇降位置を制御する制御装置50と、を備える。前記制御装置50は、リニアスケール40が出力する位置検出信号が位置設定器51による設定値に一致したときに、油圧シリンダ15・15の動作を停止させるべく、停止信号を出力する。
【0053】
これにより、フローティングウェイト6が任意の設定位置に到達したことをリニアスケール40で検出し、これに基づいて油圧シリンダ15の動作を停止させることができる。従って、例えば混練室9の容量を変更すべくフローティングウェイト6の停止位置を変更したい場合でも、位置設定器51による設定だけで済み、(特許文献1でのリミットスイッチの取付位置の変更といった)煩雑な作業を省略することができる。言い換えれば、フローティングウェイト6の昇降位置を極めて高い自由度をもって設定することができる。
【0054】
また、油圧シリンダ15の動作停止によりフローティングウェイト6の停止を実現しているため、従来技術のエアシリンダによる構成に比べ、フローティングウェイト6の位置制御の精度も良好である。また、大掛かりな構成の空油圧変換器を設置する必要もないため、既存の油圧シリンダ式の密閉式混練機への適用も容易である。
【0055】
また、本実施形態の密閉式混練機Xは、前記位置設定器51により複数の昇降位置を設定することが可能に構成されている。従って、混練時におけるフローティングウェイト6の位置の切換を極めて容易とすることができる。また、前記複数の昇降位置は、所定の運転条件に応じて設定することが可能に構成されている。従って、混練時におけるフローティングウェイト6の位置を様々な運転条件に応じて容易に切り換えることができ、様々な混練方法に柔軟に対応することができる。例えば、混練の進行状況や被混練物の材料等に応じてフローティングウェイト6の昇降位置のキメ細かなパターンを実現でき、また、その昇降位置の制御パターンも極めて容易に変更することができる。
【0056】
また、本実施形態の密閉式混練機Xは、制御装置50からの停止信号により油圧シリンダ15・15への圧油の供給を停止させて前記油圧シリンダ15・15の動作を停止させる電磁方向切換弁25を備えている。従って、特別な停止装置を設けることなく、簡素な構成でフローティングウェイト6の設定位置での停止を実現することができる。
【0057】
そして、本実施形態の密閉式混練機Xは、油圧シリンダ15・15のフローティングウェイト6加圧側(フローティングウェイト6を下降させる側)に作用する圧油の圧力を検出する圧力センサ34と、前記油圧シリンダ15のフローティングウェイト加圧側に作用する圧油の圧力を設定する圧力設定器52と、油圧ポンプ23から油圧シリンダ15・15へ供給する圧油を圧油タンク20側へ逃がすパイロット作動型のリリーフ弁42と、を備える。そして前記制御装置50は、前記圧力検出信号と前記圧力設定値とを一致させるように前記パイロット作動型リリーフ弁への指令信号を出力するように構成されている。従って、前述の特許文献1の空油圧変換器を有する構成と異なり、リリーフ弁42のリリーフ圧の調整でフローティングウェイト6の押付け圧を変更できるから、大きな圧力変更を伴うウェイト押付け圧の制御も素早く行うことができる。
【0058】
また、エア供給圧を変化させてウェイト押付け圧制御を行う構成に比べ、ウェイト押付け圧を直接的に応答性良く制御することができる。また、パイロット作動型のリリーフ弁42によりウェイト押付け圧を遠隔操作することが可能で、現場でのウェイト押付け圧の確認や圧力調整の作業が不要となり、管理コストを大幅に抑制することができる。
【0059】
更に、本実施形態の密閉式混練機Xにおいては、前記圧力設定器52は、圧力を所定の運転条件に応じて変更すべく複数設定可能に構成されている。従って、混練時におけるウェイト押付け圧を様々な運転条件に応じて容易に切り換えることができ、様々な混練方法に柔軟に対応することができる。例えば、混練の進行状況や被混練物の材料等に応じて押付け圧のキメ細かな制御パターンを実現でき、また、その押付け圧の制御パターンも極めて容易に変更することができる。
【0060】
また、本実施形態の密閉式混練機Xでは、フローティングウェイト加圧側(作動管路27)にはアキュムレータ35が接続されている。これにより、フローティングウェイト6の下降時の所謂クッション作用をコンパクトかつ低コストな構成で付与することができる。
【0061】
また、本実施形態では、前記油圧ポンプ23の駆動モータ24が、インバータ制御式の可変速モータとされている。従って、駆動モータ24を制御装置50からの駆動信号により変速制御することにより、更にキメ細かく、フローティングウェイト6の移動速度及び圧油の上昇時間を調整することができる。
【0062】
以上に本発明の好適な実施形態を説明したが、以上の構成は例えば以下のように変更して実施することができる。
【0063】
制御装置50からの停止信号を電磁方向切換弁25に入力し、弁体をクローズ位置に切り換えることで油圧シリンダ15・15を停止させる構成に代えて、前記ロッド13に機械的なロック機構(図2の符号45)を設け、このロック機構45に対し前記制御装置50からの停止信号を入力することで、油圧シリンダ15やフローティングウェイト6を停止する構成に変更することができる。この機械的なロック機構45の例としては図3の要部平面断面図に示すように、上下移動不能に設けられるとともにロッド13を挟持可能な一対のブレーキ部材61・62と、この一対のブレーキ部材61・62がロッド13を締め付ける方向に付勢力を加える締付バネ63と、油圧が供給されることにより上記締付バネ63の付勢力に抗して前記一対のブレーキ部材61・62を締付解除方向に駆動可能な油圧シリンダ64と、制御装置50からの停止信号が入力されることにより前記油圧シリンダ64の圧油を排出するように切り換えられる図略の電磁弁と、を備える構成が考えられる。また、この機械的なロック機構45を、前記ロッド13ではなく可動ロッド19に備える構成に変更することもできる。
【0064】
位置センサ(位置検出装置)としてのリニアスケール40は、上述した磁力式のものに代えて、例えば超音波式のものや光学式のもの等に変更することができる。あるいは、ロータリエンコーダ又はポテンショメータ等の回転式センサと、可動ロッド19の直線運動を回転運動に変換する機構とを組み合わせたもの等に変更することができる。
【0065】
前記実施形態において前記リニアスケール40は可動ロッド19の進出量を検出することでフローティングウェイト6の昇降位置を取得しているが、これを、コネクティングビーム14やロッド13の位置を検出することでフローティングウェイト6の昇降位置を取得する構成に変更することができる。
【0066】
前記の窒素を封入したタイプのアキュムレータ35に代えて、ウェイトの位置エネルギに変換するタイプや、スプリングの弾性エネルギに変換するタイプ等、任意の油圧アキュムレータに変更することができる。
【0067】
前記実施形態においては、制御装置50からの停止信号により電磁方向切換弁25が切り換わることで、油圧シリンダ15・15への圧油の供給を停止させていたが、これを、別の方法で油圧シリンダ15・15への圧油供給を停止させる構成に変更することができる。
【0068】
前記実施形態では、前記駆動モータ24をインバータ制御式の可変速モータとしたが、他の方式の可変速モータに変更することができる。
【0069】
前記実施形態において、パイロット作動型リリーフ弁42を用いて圧力制御を行う場合、フローティングウェイト6の押付け圧を、上述のクッション作用を奏するように制御することができる。なお、この場合は、リリーフ弁をシリンダ押付力を調整できる位置に配置し、アキュムレータ35を省略することができる。例えば、図4に示すような構成としてもよい。すなわち、図4の油圧回路に示すように、図2の油圧回路からアキュムレータ35を省略する場合、パイロットチェック弁31を省略し、さらに、パイロット作動型リリーフ弁42をチェック弁38の電磁方向切換弁25側の供給管路22に接続する構成としてもよい。
【0070】
あるいは上記の実施形態において、パイロット作動型リリーフ弁42を、リリーフ圧力を遠隔操作不能な通常のリリーフ弁とし、フローティングウェイト6の位置制御のみを行う構成に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】密閉式混練機の全体構成を示す一部断面図。
【図2】密閉式混練機の油圧ウェイト装置の構成を示す油圧回路図。
【図3】変形例における機械的なロック機構の構成を示す要部平面図。
【図4】密閉式混練機の油圧ウェイト装置の他の構成を示す油圧回路図
【符号の説明】
【0072】
1 チャンバー(混練機本体)
6 フローティングウェイト
9 混練室
11 ホッパー
15 油圧シリンダ
25 電磁方向切換弁(切換弁)
40 リニアスケール(位置検出装置)
42 パイロット作動型リリーフ弁(遠隔作動リリーフ弁)
50 制御装置(位置制御装置、圧力制御装置)
51 位置設定器(位置設定手段)
52 圧力設定器(圧力設定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
混練機本体に連設され被混練物が投入されるホッパー内に、油圧シリンダにより昇降自在にされたフローティングウェイトを備える密閉式混練機において、
前記フローティングウェイトの昇降位置を連続的に検出可能な位置検出装置と、
前記フローティングウェイトの昇降位置を設定する位置設定手段と、
前記位置検出装置の位置検出信号及び前記位置設定手段の設定値に基づき前記フローティングウェイトの昇降位置を制御する位置制御装置と、を備え、
前記位置制御装置は、前記位置検出信号が前記位置設定値に一致したときに前記油圧シリンダの動作を停止させるべく停止信号を出力するように構成したことを特徴とする、密閉式混練機。
【請求項2】
請求項1に記載の密閉式混練機であって、
前記位置設定手段は、フローティングウェイトの昇降位置の設定値を複数設定することが可能に構成されていることを特徴とする密閉式混練機。
【請求項3】
請求項2に記載の密閉式混練機であって、
前記位置設定手段は、所定の運転条件に応じてフローティングウェイトの昇降位置の設定値を複数設定することが可能に構成されていることを特徴とする密閉式混練機。
【請求項4】
請求項1から請求項3までの何れか一項に記載の密閉式混練機であって、
前記停止信号により油圧シリンダへの圧油の供給を停止させて前記油圧シリンダの動作を停止させる切換弁を備えていることを特徴とする密閉式混練機。
【請求項5】
請求項1から請求項4までの何れか一項に記載の密閉式混練機であって、
前記油圧シリンダのフローティングウェイト加圧側に作用する圧油の圧力を検出する圧力センサと、
前記油圧シリンダのフローティングウェイト加圧側に作用する圧油の圧力を設定する圧力設定手段と、
油圧源から油圧シリンダへ供給される圧油をタンク側へ逃がす遠隔作動リリーフ弁と、
前記圧力センサの圧力検出信号及び圧力設定手段の圧力設定値に基づき前記遠隔作動リリーフ弁を制御する圧力制御装置と、を備え、
この圧力制御装置は、前記圧力検出信号と前記圧力設定値とを一致させるように前記遠隔作動リリーフ弁への指令信号を出力するように構成されていることを特徴とする、密閉式混練機。
【請求項6】
請求項5に記載の密閉式混練機であって、
前記圧力設定手段は、所定の運転条件に応じて圧力の設定値を複数設定することが可能に構成されていることを特徴とする密閉式混練機。
【請求項7】
請求項1から請求項6までの何れか一項に記載の密閉式混練機であって、
前記油圧シリンダの油圧源としての油圧ポンプを駆動するモータを可変速モータとしたことを特徴とする密閉式混練機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−54824(P2007−54824A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−186009(P2006−186009)
【出願日】平成18年7月5日(2006.7.5)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】