説明

寝返り管理システム

【課題】寝たきりの老人や患者の体位の変化を定期的に検出して、その個人に応じた寝返りの状態を確実に管理することで褥瘡の予防に繋げることができる寝返り管理システムを提供する。
【解決手段】寝台フレームの下方に設置された送受信アンテナ20と、体位を特定するために当該体位を構成する少なくとも2以上の部位に装着され、送受信アンテナ20から発信される電波を受信して起電した際に、識別番号を送信するチップマイコン及び当該識別番号の送信に起因して超音波を発信する超音波圧電素子を有する測定センサ30と、測定センサ30から発信される超音波を受信する超音波マイク40と、超音波マイク40から送信される超音波情報及び送受信アンテナ20から送信される識別番号を含む識別情報に基づいて、部位に装着された各測定センサ30の時間変化に伴う体位の変化を検出するための位置情報を測定する測定通信機器50とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定時間内における体位の変化を検出することで寝返りの状態を管理する寝返り管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
高齢化が進むに近年において、寝たきりの老人や患者の介護・看護の場面が急増している。このような介護・看護の現場では、寝たきりの老人や患者に発生する褥瘡が重要な問題となっている。褥瘡とは、寝たきりの老人や患者が1日の大半をベッドで過ごすことにより、腰・肩・踵などの体重がかかる部分が圧迫され、血行障害を起こし、皮膚に壊れ傷ができる、いわゆる床ずれを言う。この褥瘡は、一旦発生すると発赤に始まり、真皮に至る潰瘍から脂肪層、筋、骨に至る深い潰瘍へと容易に悪化しやすい創傷で治り難く悪化を止めるには、例えば、壊死組織を除去するなどの重度の治療を要する。このため、褥瘡の予防は介護や看護を行う施設にとって重い責任となってのしかかっており、又各施設では看護婦や介護士などにとっても作業負担が大きかった。
【0003】
一方、褥瘡を予防する対策として、例えば、患者の体動を検出して、検出された体動に応じてエアーマットなどを制御する床ずれ防止システムが提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、無圧ベッドや圧力変位ベッドなどの体圧分散器具は全患者を対象者として使用するには高価に過ぎる上、完全に褥瘡を予防する対策にはなり得なかった。また、たんぱく質などの栄養補給又はおむつ交換などを行うことにより、褥瘡が軽減される効果も認められてはいるが、単独では完全に褥瘡を予防することはできなかった。
【0004】
このため、強制的に寝返りさせることで体位交換を頻繁かつ定期的に行い、体重で圧迫される部位を変化させることが、最大かつ基本の対策であると言われている。一般的に、体位変換の頻度は2時間間隔で行われているが、褥瘡の罹り安さには個人差が大きく、頻繁に体位変換が必要なケースもある。
【0005】
上述のような状況から、各施設では看護婦や介護士が、夜昼に関わらず体位交換という重労働を強いられている現状がある。この場合、特に夜勤時は負担が大きくなる傾向があり、例えば、急患や患者の様態の急変が発生した時など体位交換が忘れられることも起こりえるため、確実に実施することは困難である。また、患者自身が寝返りをすることによる体位変化があった場合でも、定期的な体位交換によって元の体位に戻してしまうような事態も発生し得る。さらに、個人差に対応したきめ細かい体制を可能とするシステムを構築するには、体位交換や寝返りに関する詳しい実態把握が望まれるところであるが、人手によってその実態を常時監視するには実務上の限界がある。
【0006】
【特許文献1】特開2004−049388号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような事情に鑑み、寝たきりの老人や患者を看護又は介護する際の労働負担を軽減させると共に、寝たきりの老人や患者の体位の変化を定期的に検出して、その個人に応じた寝返りの状態を確実に管理することで褥瘡の予防に繋げることができる寝返り管理システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、所定時間内における体位の変化を検出することで寝返りの状態を管理する寝返り管理システムであって、前記体位を保持する寝台を構成するフレームの下方に設置されており、所定の範囲内において電波を発信すると共に、当該電波を介して所定のセンサとの間で非接触方式により情報を送受信する受信アンテナと、前記体位を特定するために当該体位を構成する少なくとも2以上の部位に装着され、少なくとも前記受信アンテナから発信される電波を受信して起電した際に自身に付与された識別番号を送信するチップマイコン及び当該識別番号の送信に起因して超音波を発信する超音波圧電素子を有する測定センサと、前記測定センサから発信される超音波を受信して当該超音波に関する超音波情報を出力する超音波マイクと、前記受信アンテナ及び前記超音波マイクと接続されており、前記超音波マイクから送信される超音波情報及び前記受信アンテナから送信される識別番号を含む識別情報に基づいて、前記部位に装着された各測定センサの時間変化に伴う体位の変化を検出するための位置情報を測定する測定通信機器とを具備することを特徴とする寝返り管理システムにある。
【0009】
かかる第1の態様では、体位を特定するために2以上の部位に装着された測定センサが、寝台に設置されている受信アンテナから発信される電波を受信して起電した際に識別番号が送信されると共に、超音波が発信される。そして、超音波を受信した超音波マイクから送信される超音波情報及び識別番号を受信した受信アンテナから送信される識別情報に基づいて、部位に装着された各測定センサの時間変化に伴う体位の変化を検出するための位置情報が測定される。これにより、各寝台において寝たきりの老人や患者の体位の変化を定期的に検出して、その個人に応じた寝返りの状態を確実に管理することができるため、褥瘡の予防に繋げることが可能となる。
【0010】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記測定通信機器は、前記受信アンテナを介して受信された識別番号の受信タイミングと前記超音波マイクを介して受信された超音波の受信タイミングとの時間差に基づいて、前記部位に設置された各測定センサと前記超音波マイクとの間の距離を算出して各部位の位置情報を測定することで各部位の位置情報の変化から体位の変化を検出することを特徴とする寝返り管理システムにある。
【0011】
かかる第2の態様では、受信アンテナを介して受信された識別番号の受信タイミングと超音波マイクを介して受信された超音波の受信タイミングとの時間差に基づいて、部位に設置された各測定センサと超音波マイクとの間の距離を算出して各部位の位置情報を測定することで各部位の位置情報の変化から体位の変化が検出される。これにより、寝たきりの老人や患者の体位の変化を確実に検出することができるため、褥瘡の予防に繋げることが可能となる。
【0012】
本発明の第3の態様は、第1又は2の態様において、前記超音波マイクは、所定の空間を形成するように鉛直方向に段差を設けて複数箇所に設置されており、当該空間に存在する各部位に前記測定センサを装着した場合に、前記測定通信機器は、各測定センサに関する識別情報及び複数の前記超音波マイクで構成された空間で発信される超音波に基づいて測定される位置情報から各部位で検出される体位の変化を三次元データとして検出することを特徴とする寝返り管理システムにある。
【0013】
かかる第3の態様では、各測定センサに関する識別情報及び複数の超音波マイクで構成された空間で発信される超音波に基づいて測定される位置情報から各部位で検出される体位の変化が三次元データとして検出される。これにより、寝たきりの老人や患者の体位の変化を三次元データとして確実に検出することができるため、褥瘡の予防に繋げることが可能となる。
【0014】
本発明の第4の態様は、第1〜3の何れかの態様において、前記測定センサに予め設定されている起動情報に基づいて、前記識別番号の送信タイミング及び前記超音波の発信タイミングが各測定センサごとに制御されることを特徴とする寝返り管理システムにある。
【0015】
かかる第4の態様では、各測定センサごとに識別番号の送信タイミング及び超音波の発信タイミングが制御される。これにより、例えば、各測定センサからの情報発信を制御しながら、寝たきりの老人や患者の体位の変化を定期的に検出することができる。
【0016】
本発明の第5の態様は、第1〜3の何れかの態様において、前記受信アンテナが複数の寝台に設置されている場合に、前記測定通信機器は、各受信アンテナに対して通電するタイミング又は通電する間隔を制御することを特徴とする寝返り管理システムにある。
【0017】
かかる第5の態様では、受信アンテナに対して通電するタイミング又は通電する間隔が制御される。これにより、例えば、測定センサに対する起電時間を制御しながら、確実に個人に応じた寝返りの状態を管理することができる。
【0018】
本発明の第6の態様は、第1〜5の何れかの態様において、前記測定通信機器が複数設置されており、各々の測定通信機器を統一的に管理するホストコンピュータと接続されている場合に、少なくとも変化の有無、頻度、及び時間の何れかの要素から各測定通信機器で検出される体位の変化を視覚的に表示して寝返りの有無を管理することを特徴とする寝返り管理システムにある。
【0019】
かかる第6の態様では、少なくとも変化の有無、頻度、及び時間の何れかの要素から各測定通信機器で検出される体位の変化が視覚的に表示されて寝返りの有無が管理される。これにより、例えば、看護婦又は介護士が、寝たきりの老人や患者を看護又は介護する際の労働負担を軽減させることが可能となる。
【0020】
本発明の第7の態様は、第1〜6の何れかの態様において、前記ホストコンピュータには、体位の変化を管理するための条件が予め設定されており、各測定通信機器で検出される体位の変化が当該条件に適合するか否かを判断して、その結果に応じた指示又は警報を発信することを特徴とする寝返り管理システムにある。
【0021】
かかる第7の態様では、各測定通信機器で検出される体位の変化が、体位の変化を管理するための条件に適合するか否かが判断されて、その結果に応じた指示又は警報が発信される。これにより、例えば、老人や患者の体質などにより異なる個人データを条件として設定することができるため、その個人に応じた寝返りの状態をより確実に管理することができる。
【0022】
本発明の第8の態様は、第1〜7の何れかの態様において、前記体位に前記測定センサを組み込んだおむつが装着されている場合に、前記測定通信機器は、当該測定センサから送信又は発信されるデータの状態に基づいて糞尿の有無を検出することを特徴とする寝返り管理システムにある。
【0023】
かかる第8の態様では、おむつに装着されている測定センサから送信又は発信されるデータの状態に基づいて糞尿の有無が検出される。これにより、個人差が生じ易い糞尿の有無を確実に検出することができる。
【0024】
本発明の第9の態様は、第1〜8の何れかの態様において、前記体位を保持する寝台の下方部全体に受信アンテナを設置して、当該受信アンテナから発生される磁場を利用して前記測定センサと前記受信アンテナとの間で送受信できる情報の範囲が制御されることで、前記測定通信機器は、前記識別情報及び超音波情報の受信状態に基づいて体位の離床を検出することを特徴とする寝返り管理システムにある。
【0025】
かかる第9の態様では、受信アンテナから発生される磁場を利用して測定センサと受信アンテナとの間で送受信できる情報の範囲が制御されることで、識別情報及び超音波情報の受信状態に基づいて体位の離床が検出される。これにより、例えば、老人や患者の離床により生じる徘徊など危険を事前に防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、寝たきりの老人や患者の体位を特定する2以上の部位に測定センサを装着することで、各測定センサから送信される識別番号及び発信される超音波に基づいて、時間の変化に伴う体位の変化を個人に応じて自動的に検出することができるため、看護又は介護する際の労働負担を軽減させることができると共に、寝たきりの老人や患者の体位の変化を定期的に検出して、その個人に応じた寝返りの状態を確実に管理することができる。従って、寝たきりの老人や患者の褥瘡の予防に繋げることができる寝返り管理システムを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を用いて本発明を実施するための最良の形態について説明する。なお、本実施形態の説明は例示であり、本発明の構成は以下の説明に限定されない。
【0028】
図1は、本発明の一実施形態に係る寝返り管理システムのシステム構成の概略を示す概略図である。なお、本実施形態では、施設として病院を想定しており、看護婦が病院の寝台で寝たきりになっている患者を看護する場合を例示している。
【0029】
図示するように、寝返り管理システム10は、1つの寝台において、受信アンテナ20、測定センサ30、超音波マイク40、及び測定通信機器50を具備している。ここで、測定センサ30は、被測定者となる患者の体位の変化を確認する上でポイントとなる部位2箇所以上に装着される。図1に示す例では、肩、腰の左右それぞれに設置されている。この場合、測定センサ30は、患者の下着の上などから装着するようにすればよい。さらに、測定センサ30は、患者の糞尿の有無を確認する上でポイントとなる部位にも装着される。この場合、測定センサ30は、例えば、患者のおむつ内に装着するようにすればよい。このような測定センサ30は、受信アンテナ20から発信される電波に応じて情報の発信距離に限界が生じる。このような作用を利用して、患者の離床状態が検出されることになる。また、測定通信機器50は、例えば、各病室又は各寝台ごとに設置されるようにすればよい。図1に示す例では、測定通信機器50は各病室に設置されているハブ51を介して各寝台ごとに設置されており、寝台付近の電源52と接続されることでそれぞれ動作するようになっている。
【0030】
さらに、測定通信機器50は、ハブ51及びLAN(Local Area Network)53を介して、例えば、ナースセンターなどの介護・看護の基点となるセンターに設置されているホストコンピュータ60と接続されるようにしてもよい。これにより、受信アンテナ20から発信される電波を介して、該受信アンテナ20との間で非接触方式により情報を送信する測定センサ30を用いて寝たきりの老人や患者の所定時間内における体位の変化、糞尿の有無、及び体位の離床などの各種情報を検出することで、寝返りの状態を管理することもできる。また、例えば、ナースセンターでは、検出した各種情報又はそれに応じた指示をホストコンピュータ60に表示したり、検出した各種情報に応じて警報を出力したり、検出した各種情報に基づく各種報告書又は分析情報を出力したりすることも可能となる。
【0031】
ここで、寝返り管理システム10のシステム構成について具体的に説明する。図2は、本発明の一実施形態に係る寝返り管理システムのシステム構成を示すブロック図である。
【0032】
受信アンテナ20は、体位を保持する寝台を構成するフレームの下方に設置されており、所定の範囲内において電波を発信すると共に、その電波を介して所定のセンサとの間で非接触方式により情報を送受信する。ここでいう受信アンテナ20は、後述する測定通信機器50から通電があった際に起電する起電用のコイルとしても機能する。これにより、受信アンテナ20は、例えば、寝台上に存在する測定センサ30、すなわち寝台で寝ている患者に装着された測定センサ30に起電させて、その測定センサ30からの情報を受信することができる。
【0033】
測定センサ30は、体位を特定するために当該体位を構成する少なくとも2以上の部位に装着され、少なくとも受信アンテナ20から発信される電波を受信して起電した際に自身に付与された識別番号を送信するチップマイコン及びその識別番号の送信に起因して超音波を発信する超音波圧電素子を有する。さらに、チップマイコンには非接触通信用のコイルが電気的に接続されており、そのコイルが受信アンテナ20から発せられる電波を受信して起電した際に、起電をトリガとして識別番号が送信されると共に超音波が発信される。
【0034】
また、測定センサ30には予め外部に対して情報発信するための起動情報が設定されており、その起動情報に基づいて、識別番号の送信タイミング及び超音波の発信タイミングが制御されるようにすればよい。この起動情報は、例えば、チップマイコンに内部タイマーを有するようにすればよく、この内部タイマーに予め測定センサ30を作動させる電源の電源スイッチをオンにする時間を設定するようにすればよい。これにより、例えば、測定センサ30が複数箇所に装着される場合に、各測定センサ30からの情報発信に対して時間差を設けて制御することができるため、混信を防止することも可能となる。このような測定センサ30としては、例えば、患者に対して負担とならないサイズで且つ容易に外れないように取り付けることが可能なボタンサイズのICタグを想定している。本実施形態では、測定センサ30として、3〜5mm角のチップマイコンで構成されるセンサを想定している。また、糞尿の有無を検出するために装着する測定センサ30は、必ずしも、超音波を発信できるものでなくてもよく、受信アンテナ20に対する起電により自身が有するコイルに対する起電をトリガとして識別番号を送信することができるものであればよい。
【0035】
超音波マイク40は、測定センサ30から発信される超音波を受信してその超音波に関する超音波情報を出力する。この超音波マイク40は、後述する測定通信機器50と所定の回線を介して接続されており、測定センサ30から受信した超音波を超音波情報に変換して所定の回線を介して測定通信機器50に出力する。ここでいう超音波情報とは、少なくとも、超音波を受信したタイミング、すなわち受信時間を含む情報である。
【0036】
測定通信機器50は、受信アンテナ20及び超音波マイク40と接続されており、超音波マイク40から送信される超音波情報及び受信アンテナ20から送信される識別番号を含む識別情報に基づいて、部位に装着された各測定センサ30の時間変化に伴う体位の変化を検出するための位置情報を測定する。ここでいう識別情報とは、少なくとも、測定センサ30の識別番号および受信時間を含む情報である。
【0037】
具体的に、測定通信機器50は、受信アンテナ20を介して受信された識別番号の受信タイミングと超音波マイク40を介して受信された超音波の受信タイミングとの時間差に基づいて、部位に設置された各測定センサ30と超音波マイク40との間の距離を算出して各部位の位置情報を測定することで各部位の位置情報の変化から体位の変化を検出する。また、測定通信機器50は、超音波マイク40が、所定の空間を形成するように鉛直方向に段差を設けて複数箇所に設置されており、その空間に存在する各部位に測定センサ30を装着した場合に、各測定センサ30に関する識別情報及び複数の超音波マイク40で構成された空間で発信される超音波に基づいて測定される位置情報から各部位で検出される体位の変化を三次元データとして検出する。すなわち、図1に示すように、患者の肩、腰の左右それぞれに装着された4つの測定センサ30の位置の変化を検出することで、患者の体位の変化が検出される。また、三次元による位置の検出には、例えば、距離データに基づき三次元座標位置を演算することが可能な一般的な三次元演算技術を用いればよい。この場合、上述のような演算が可能な三次元演算機能を測定通信機器50又はホストコンピュータ60に導入して、測定通信機器50又はホストコンピュータ60の何れかで3次元データを検出できるようにすればよい。
【0038】
また、測定通信機器50は、受信アンテナ20が複数の寝台に設置されている場合に、各受信アンテナ20に対して通電するタイミング又は通電する間隔を制御する。このような制御により、例えば、受信アンテナ20が1つの病室に備わる複数の寝台に設置されている場合に、各受信アンテナ20に対する通電のタイミングを制御することで、各寝台上に存在する測定センサ30をそれぞれ起電させることができる。また、受信アンテナ20に対して通電する間隔を制御することにより、例えば、測定センサ30を定期的に起電させて時間帯ごとに変化する位置情報を検出することも可能となる。
【0039】
また、体位に測定センサ30を組み込んだおむつが装着されている場合に、その測定センサ30から送信又は発信されるデータの状態に基づいて糞尿の有無が検出される。さらに、体位を保持する寝台の下方部全体に受信アンテナ20を設置して、その受信アンテナ20から発生される磁場を利用して測定センサ30と受信アンテナ20との間で送受信できる情報の範囲を制御することで、識別情報及び超音波情報の受信状態に基づいて体位の離床が検出される。すなわち、図1に示す例では、通信可能な範囲を寝台上に限定することで、患者が寝台を離脱した場合に通信が途絶えることを利用して、離床の有無を検出することができる。
【0040】
ホストコンピュータ60は、測定通信機器50が複数箇所に設置されている場合に、各々の測定通信機器50を統一的に管理する。具体的には、少なくとも変化の有無、頻度、及び時間の何れかの要素から各測定通信機器50で検出される体位の変化を視覚的に表示して寝返りの有無を管理する。また、ホストコンピュータ60には、各患者ごとの体位の変化を管理するための条件が予め設定されており、各測定通信機器50で検出される体位の変化がその条件に適合するか否かが判断されて、結果に応じた指示又は警報が発信される。ここで設定される条件とは、例えば、患者の体質又は体型などにより異なる個人データである。これにより、例えば、ナースセンターでは、個々の患者の状態を統一的に監視することができるため、個々の患者の状態に応じたきめ細かい対応をとることも可能となる。さらに、ホストコンピュータ60では、患者の体位変化の状態に基づく体位変換の指示、糞尿を検出したことによるおむつ交換の指示、及び離床を検出したことによる警報などが行われる。これにより、患者の状態を常時監視する必要がなくなるため、看護婦などの労働負担を軽減させることもできる。
【0041】
次に、寝返り管理システム10にかかる制御手順について説明する。図3は、本発明の一実施形態に係る寝返り管理システムの制御手順を説明する概念図である。図4は、本発明の一実施形態に係る寝返り管理システムの制御手順を示すタイムチャートである。
【0042】
図3では、1つの測定通信機器50で各寝台ごとに設置されている受信アンテナ20に対する通電をそれぞれ制御する場合を例示している。ここで図3に示す例では、説明の便宜上、各寝台ごとの受信アンテナ20をそれぞれI、IIとして示している。そして、受信アンテナI上に存在する測定センサ30をそれぞれA1、B1、C1、D1、E1とし、受信アンテナIIに存在する測定センサ30をそれぞれA2、B2、C2、D2、E2として示している。ここで、測定センサE1およびE2は、内部タイマーを有しておらず、コイルへの起電と同時に電源がオンとなって識別番号を送信するセンサであり、糞尿の有無を検出するために装着されている。一方、それ以外の測定センサは、上述した測定センサ30に、少なくとも、内部タイマー及び内部タイマーを起動させる電源を有するセンサであり、患者の体位及び離床の有無を検出するために装着されている。以下、受信アンテナ20を受信アンテナI又はIIとし、測定センサ30を測定センサA1、B2、・・・、及びE2と称して説明する。
【0043】
図4に示すように、測定通信機器50からの通電により受信アンテナIが起電されると、まず、受信アンテナIが設置されている寝台上に存在する各測定センサA1〜E1に対して順次制御が行われる。
【0044】
具体的には、測定通信機器50からの通電により受信アンテナIが起電されると、各測定センサA1〜E1に内蔵されているコイルが同時に起電する。そして、コイルに対する起電がトリガとなって内部タイマーが内蔵されていない測定センサE1の電源がオンとなり、起電と同時に識別番号が送信される。一方、内部タイマーが内蔵されている各測定センサA1〜D1は、自身の内部タイマーに設定されている時間が経過したタイミングで電源スイッチがオンとなり、識別番号を送信すると共に超音波を発信する。図4に示す例では、測定センサA1−B1−C1−D1という順序で電源スイッチがオンとなるように内部タイマーの時間が設定されている。そして、送信された識別番号及び発信された超音波は、受信アンテナI又は超音波マイク40を介して受信されて、識別情報及び超音波情報として測定通信機器50に蓄積される。このような制御により、受信アンテナIが設置されている寝台に寝ている患者の体位の変化、糞尿の有無、及び離床の有無が検出される。
【0045】
そして、受信アンテナIに対する通電が終了すると、測定通信機器50は、受信アンテナIIに対して通電を行う。これにより、受信アンテナIIが起電されると、受信アンテナIIが設置されている寝台上に存在する各測定センサA2〜E2に対して順次制御が行われ、受信アンテナIと同様の制御が行われる。なお、図4に示す例では、まず、測定センサE2が動作した後に、測定センサA2−B2−C2−D2という順序で電源スイッチがオンとなるように制御される。そして、受信アンテナIと同様に、受信アンテナIIが設置されている寝台に寝ている患者の体位の変化、糞尿の有無、及び離床の有無が検出される。
【0046】
上述のような制御を受信アンテナI及び受信アンテナII間で交互に行うことにより、情報の混信を防止しながら、容易に各患者ごとに異なる体位の変化、糞尿の有無、及び離床の有無を定期的に検出することができる。
【0047】
また、1つの受信アンテナに対する通電は、他の受信アンテナにおける制御の終了を待って、15秒〜1分間隔で行われることが望ましい。図4に示す例では、受信アンテナIに対する通電は、受信アンテナIIに対する通電の終了後に行われている。
【0048】
そして、測定通信機器50では、蓄積した識別情報及び超音波情報を所定の時間蓄積しておき、所定の時間が経過した後、一括でホストコンピュータ60に送信するようにすればよい。図4に示す例では、識別情報及び超音波情報を5〜10分間蓄積しておき、5〜10分間隔でホストコンピュータ60に情報を一括して送信している。これにより、例えば、各病室ごとに測定通信機器50を設置した場合に、各病室ごとの患者に関する情報を効率的に管理することもできる。
【0049】
以上説明したように、本実施形態では、患者が寝るための寝台のフレームに受信アンテナ20を設置すると共に、患者の体位を検出するための部位に識別番号を送信及び超音波を発信することができる測定センサ30を装着することで、寝たきりの患者個人に応じた寝返りの状態を確実に検出して管理することができる。さらに、測定センサ30からの情報発信の有無により、患者の離床の有無を検出することもできる。また、測定センサ30を患者のおむつに装着することで、個人差が出易い糞尿の有無も確実に検出することができる。従って、患者ごとに異なる体位の変化、糞尿の有無、離床の有無の検出結果に基づいて、強制的な体位変換やおむつ交換などの各種指示、又は離床の発生などの警報を行うことができるため、時間の経過と共に変化する個々の患者の状態を確実に管理しながら、きめ細かい対応をとることも可能となる。
【0050】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明の基本的な構成は上述したものに限定されるものではない。
【0051】
上述した寝返り管理システム10は、単に医療施設や老人介護施設における利用に止まらない。例えば、在宅看護をする家庭にも、同様のシステムを適用するようにしてもよいし、訪問介護・看護サービスにおいては、インターネット等の通信環境を利用することで、施設やサービス会社等のシステムと連携させて、寝たきりになっている患者の寝返りの状態を遠隔地から柔軟に管理できるシステムとしてもよい。例えば、図5に示すように、図3に相当するLAN53をインターネット接続とすることで、上述のホストコンピュータ60に相当する管理コンピュータ70を施設やサービス会社のシステム100に具備させるようにしてもよい。この場合、管理コンピュータ70で遠隔地にいる患者の状態を管理することで、施設やサービス会社側は、その患者の状態に応じて適宜看護士を派遣するなど患者個人に応じた柔軟な対応を採ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施形態に係る寝返り管理システムのシステム構成の概略を示す概略図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る寝返り管理システムのシステム構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る寝返り管理システムの制御手順を説明する概念図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る寝返り管理システムの制御手順を示すタイムチャートである。
【図5】本発明の一実施形態に係る寝返り管理システムの変形構成を示す概略図である。
【符号の説明】
【0053】
20 受信アンテナ
30 測定センサ
40 超音波マイク
50 測定通信機器
51 ハブ
52 電源
53 LAN
60 ホストコンピュータ
70 管理コンピュータ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定時間内における体位の変化を検出することで寝返りの状態を管理する寝返り管理システムであって、
前記体位を保持する寝台を構成するフレームの下方に設置されており、所定の範囲内において電波を発信すると共に、当該電波を介して所定のセンサとの間で非接触方式により情報を送受信する受信アンテナと、
前記体位を特定するために当該体位を構成する少なくとも2以上の部位に装着され、少なくとも前記受信アンテナから発信される電波を受信して起電した際に自身に付与された識別番号を送信するチップマイコン及び当該識別番号の送信に起因して超音波を発信する超音波圧電素子を有する測定センサと、
前記測定センサから発信される超音波を受信して当該超音波に関する超音波情報を出力する超音波マイクと、
前記受信アンテナ及び前記超音波マイクと接続されており、前記超音波マイクから送信される超音波情報及び前記受信アンテナから送信される識別番号を含む識別情報に基づいて、前記部位に装着された各測定センサの時間変化に伴う体位の変化を検出するための位置情報を測定する測定通信機器とを具備することを特徴とする寝返り管理システム。
【請求項2】
請求項1において、前記測定通信機器は、前記受信アンテナを介して受信された識別番号の受信タイミングと前記超音波マイクを介して受信された超音波の受信タイミングとの時間差に基づいて、前記部位に設置された各測定センサと前記超音波マイクとの間の距離を算出して各部位の位置情報を測定することで各部位の位置情報の変化から体位の変化を検出することを特徴とする寝返り管理システム。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記超音波マイクは、所定の空間を形成するように鉛直方向に段差を設けて複数箇所に設置されており、当該空間に存在する各部位に前記測定センサを装着した場合に、前記測定通信機器は、各測定センサに関する識別情報及び複数の前記超音波マイクで構成された空間で発信される超音波に基づいて測定される位置情報から各部位で検出される体位の変化を三次元データとして検出することを特徴とする寝返り管理システム。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかの寝返り管理システムにおいて、前記測定センサに予め設定されている起動情報に基づいて、前記識別番号の送信タイミング及び前記超音波の発信タイミングが各測定センサごとに制御されることを特徴とする寝返り管理システム。
【請求項5】
請求項1〜3の何れかにおいて、前記受信アンテナが複数の寝台に設置されている場合に、前記測定通信機器は、各受信アンテナに対して通電するタイミング又は通電する間隔を制御することを特徴とする寝返り管理システム。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかにおいて、前記測定通信機器が複数設置されており、各々の測定通信機器を統一的に管理するホストコンピュータと接続されている場合に、少なくとも変化の有無、頻度、及び時間の何れかの要素から各測定通信機器で検出される体位の変化を視覚的に表示して寝返りの有無を管理することを特徴とする寝返り管理システム。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかにおいて、前記ホストコンピュータには、体位の変化を管理するための条件が予め設定されており、各測定通信機器で検出される体位の変化が当該条件に適合するか否かを判断して、その結果に応じた指示又は警報を発信することを特徴とする寝返り管理システム。
【請求項8】
請求項1〜7の何れかにおいて、前記体位に前記測定センサを組み込んだおむつが装着されている場合に、前記測定通信機器は、当該測定センサから送信又は発信されるデータの状態に基づいて糞尿の有無を検出することを特徴とする寝返り管理システム。
【請求項9】
請求項1〜8の何れかにおいて、前記体位を保持する寝台の下方部全体に受信アンテナを設置して、当該受信アンテナから発生される磁場を利用して前記測定センサと前記受信アンテナとの間で送受信できる情報の範囲が制御されることで、前記測定通信機器は、前記識別情報及び超音波情報の受信状態に基づいて体位の離床を検出することを特徴とする寝返り管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−325683(P2006−325683A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−150131(P2005−150131)
【出願日】平成17年5月23日(2005.5.23)
【出願人】(504246409)株式会社スーパー・フェイズ (6)
【Fターム(参考)】