説明

対基板作業システム

【課題】実用性の高い対基板作業システムを提供する。
【解決手段】回路基板が、配列された複数の作業機の上流側に配置されたものから下流側に配置されたものにわたって搬送され、回路基板に作業が順次実行される対基板作業システムにおいて、複数の作業機のうちの1つが停止した場合に、その1つの作業機の停止時間である作業停止想定時間Tを、制御装置内に記憶されている作業停止時間に基づいて推定(S2)し、作業停止想定時間が第1閾時間Aを超えた場合には、複数の作業機のうちの停止作業機より上流側の全ての作業機である上流側作業機での回路基板の搬送を停止(S4)し、作業停止想定時間が第2閾時間(B−(T+TN1+TN2))を超えた場合には、上流側作業機での回路基板の搬送を停止し、上流側作業機による作業を停止(S6)するように構成する。この構成により、復旧時の生産への影響と廃棄回路基板の抑制とのバランスを図ることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の作業機によって回路基板に対する作業を実行する対基板作業システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
対基板作業システムには、配列された複数の作業機を備え、回路基板がそれら複数の作業機の上流側に配置されたものから下流側に配置されたものにわたって搬送されつつ、その回路基板に対してそれら複数の作業機の各々による作業が順次実行されるように構成されたものがある。このようなシステムでは、最も上流側に位置する作業機に未実装の回路基板が搬入され、最も下流側に位置する作業機から実装済みの回路基板が搬出されるように構成することが可能であり、電子部品の実装が完了した回路基板を生産することが可能となっている。
【0003】
このような対基板作業システムでは、回路基板上へのクリームはんだ,接着剤の塗布作業を行う装置,回路基板上への電子部品の実装作業を行う装置等の種々の作業機が設けられており、それら各種の作業機には、作業に用いられるクリームはんだ,接着剤,電子部品等が収容されている。これらクリームはんだ,接着剤,電子部品等は、一定期間内に使用しないと酸化等の影響により品質が低下する虞があり、それらの使用期間を管理することが望ましい。このため、下記特許文献1に記載のシステムでは、各種作業機内に収容されているクリームはんだ,接着剤,電子部品等の使用期間が所定の期間を過ぎた場合にオペレータにその旨を報知するように構成されており、品質の低下したクリームはんだ等の回路基板への塗布等を防止することが可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−310750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献に記載のシステムでは、回路基板上に塗布,装着等される前のクリームはんだ,接着剤,電子部品等の使用期間を管理し、品質の低下したクリームはんだ等の使用を防止することで、生産された回路基板の品質の向上を図っている。しかしながら、複数の作業機によって構成される対基板作業システムでは、複数の作業機のうちの1台でも故障等により作動が停止すると、システム内のその作動が停止した作業機より上流側に、生産完了前の回路基板が留まることになる。このような場合に、作業機の停止時間がある程度長くなると、回路基板上に塗布されたクリームはんだ,接着剤等の乾き,回路基板上に装着された電子部品等の酸化が生じる虞があり、回路基板の品質が低下する虞がある。このように、複数の作業機によって構成される対基板作業システムは、種々の問題を抱え、実用性を改善する余地が多分に残されたものとなっている。本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、実用性の高い対基板作業システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本願の請求項1に記載の対基板作業システムは、配列された複数の作業機を備え、回路基板がそれら複数の作業機の上流側に配置されたものから下流側に配置されたものにわたって搬送されつつ、その回路基板に対してそれら複数の作業機の各々による作業が順次実行されることで、その回路基板に対する作業を実行する対基板作業システムであって、前記複数の作業機のうちの1つのものの作業が停止した場合に、その1つのものの作業が停止した理由毎に、その作業が停止していた作業停止時間を累積的に記憶する作業停止時間記憶部と、前記複数の作業機のうちの1つのものの作業が停止した場合に、その1つのものの作業が停止すると想定される時間である作業停止想定時間を、その1つのものの作業が停止した理由に応じて前記作業停止時間記憶部に記憶されている前記作業停止時間に基づいて推定する作業停止時間推定部と、前記作業停止想定時間が第1閾時間を超えた場合には、前記複数の作業機のうちの作業が停止している作業機より上流側に配置された全ての作業機である上流側作業機での回路基板の搬送を停止し、前記作業停止想定時間が前記第1閾時間より長い第2閾時間を超えた場合には、前記上流側作業機での回路基板の搬送を停止するとともに、前記上流側作業機による作業を停止する作業停止時対処部を有する制御装置とを備えるように構成される。
【0007】
また、請求項2に記載の対基板作業システムは、請求項1に記載の対基板作業システムにおいて、前記作業停止時間推定部は、前記複数の作業機のうちの1つのものの作業が停止した理由に応じて前記作業停止時間記憶部に記憶されている前記作業停止時間の平均値を利用して、前記作業停止想定時間を推定するように構成される。
【0008】
また、請求項3に記載の対基板作業システムは、請求項1または請求項2に記載の対基板作業システムにおいて、前記第2閾時間は、前記複数の作業機のうちの少なくとも1つのものによる作業が行われた回路基板が、回路基板に対する作業が完了されない場合に、不良品となると想定される時間から、当該対基板作業システム内で作業を行うために必要な時間を減じたものに設定されるように構成される。
【0009】
また、請求項4に記載の対基板作業システムは、請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の対基板作業システムにおいて、前記制御装置は、前記複数の作業機のうちの作業が停止していたものが復旧した場合に、その停止していたもの作業の実際の停止時間が前記第2閾時間を超えてしまった回路基板に対しては、前記上流側作業機による作業を再開せず、その実際の停止時間が前記第2閾時間以下である回路基板に対して、前記上流側作業機での搬送及び前記上流側作業機による作業を再開する作業復旧時対処部を有するように構成される。
【0010】
また、請求項5に記載の対基板作業システムは、請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載の対基板作業システムにおいて、回路基板が、前記複数の作業機の最も上流側に配置されたものに搬入されてから最も下流側に配置されたものから搬出されるまでに要する時間を、サイクルタイムと定義した場合において、前記第1閾時間は、前記サイクルタイムの1/5以上、かつ前記サイクルタイムの2倍以下に設定されるように構成される。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の対基板作業システムでは、システムを構成する複数の作業機のうちの1台の作業機が停止した場合に、その作業機の停止時間を推定し、推定された停止時間が第1閾時間を超える場合には、複数の作業機のうちの停止している作業機より上流側に位置する上流側作業機での回路基板の搬送を停止するように構成されている。これにより、システムがある程度の時間停止すると想定される場合に、システム内への新たな回路基板の投入を回避することが可能となり、不良品となる虞のある回路基板の数を少なくすることが可能となる。一方で、上流側作業機での回路基板の搬送が停止されても、上流側作業機による作業は継続されることから、システムが復旧した際の生産への影響をある程度抑えることが可能となる。
【0012】
さらに、請求項1に記載の対基板作業システムでは、推定された停止時間が第1閾時間より長い第2閾時間を超える場合には、上流側作業機での回路基板の搬送を停止するとともに、上流側作業機による作業をも停止するように構成されている。これにより、システムが長時間停止すると想定される場合には、システム内への新たな回路基板の投入を回避するだけでなく、システム内に留められている回路基板に対する作業を停止することが可能となる。推定された停止時間が第2閾時間を超えるような場合には、システム内に留められている回路基板上に既に塗布、若しくは装着されているクリームはんだ,電子部品等は相当劣化している可能性が高く、そのような回路基板へのクリームはんだ等の塗布,電子部品の装着を行うことは無駄である。したがって、請求項1に記載の対基板作業システムによれば、不良品となる虞のある回路基板の数を少なくするだけでなく、無駄なクリームはんだ,電子部品等の使用を抑制することが可能となる。
【0013】
また、請求項2に記載の対基板作業システムでは、作業機が停止した理由に応じて記憶されている停止時間の平均値を利用して、作業機の停止時間を推定するように構成されている。これにより、作業機の停止時間を適切に推定することが可能となり、回路基板の搬送の停止等の判断を好適に行うことが可能となる。
【0014】
また、請求項3に記載の対基板作業システムでは、第2閾時間が、生産完了前の回路基板が放置された場合に不良品となると想定される時間から、システム内で回路基板に対する作業を行うために必要な時間を減じたものに設定されている。つまり、そのように設定された第2閾時間を推定された停止時間が超える場合には、システムが復旧して上流側作業機による作業を再開したとしても、生産された回路基板は不良品である可能性が非常に高い。したがって、請求項4に記載の対基板作業システムによれば、作業機が停止した場合に、最も良いタイミングで、上流側作業機による作業をも停止することが可能となる。
【0015】
また、請求項4に記載の対基板作業システムでは、システム復旧時に、実際の停止時間が第2閾時間を超えてしまった回路基板に対しては、上流側作業機による作業を再開せず、実際の停止時間が第2閾時間以下である回路基板に対して、上流側作業機での搬送及び上流側作業機による作業を再開するように構成されている。推定された停止時間が実際の停止時間と異なることは珍しくなく、例えば、推定された停止時間が第2閾時間を超えていても、実際の停止時間は第2閾時間を超えない場合がある。このような場合には、システム内に留められている回路基板に対して上流側作業による作業及び搬送を再開することで、生産途中の回路基板を、不良品である可能性の低い回路基板として完成させることが可能となる。これにより、生産途中の回路基板の無駄な廃棄を回避することが可能となる。
【0016】
また、請求項5に記載の対基板作業システムでは、第1閾時間が、サイクルタイムの1/2以上かつ2倍以下に設定されている。これにより、作業機が停止した場合に、上流側作業機での回路基板の搬送を適切なタイミングで停止させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例である対基板作業システムを示す斜視図である。
【図2】図1に示す対基板作業システムの備える電子部品装着装置を、上部カバーを取り外した状態で示す斜視図である。
【図3】図1に示す対基板作業実行システムの備える制御装置を示すブロック図である。
【図4】作業停止時対処プログラムを示すフローチャートである。
【図5】作業復旧時対処プログラムを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態として、本発明の実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。
【0019】
<対基板作業システムの構成>
図1に、対基板作業システム10を示す。図1に示すシステム10は、電子回路部品(以下、「電子部品」と略す場合がある)が実装された回路基板を生産するためのシステムであり、互いに隣接して配設された4台の電子部品装着装置(以下、「装着装置」と略す場合がある)12と、はんだ印刷機14と、リフロー炉16とから構成されている。装着装置12は、1つのシステムベース20と、そのシステムベース20の上に互いに隣接されて配設された2つの電子部品装着機(以下、「装着機」と略す場合がある)22とを含んで構成されている。つまり、8台の装着機22が順に並んで配列されている。そして、8台の装着機22のうちの最上流に配置された装着機22の上流側に、はんだ印刷機14が配置され、最下流に配置された装着機22の下流側に、リフロー炉16が配置されている。ちなみに、以下の説明において、装着機22,はんだ印刷機14,リフロー炉16の並ぶ方向をX軸方向とし、その方向に直角な水平の方向をY軸方向と称する。
【0020】
まず、装着装置12について説明する。4台の装着装置12は互いに略同じ構成であるため、4台の装着装置12のうちの1台を図2に示し、その1台の装着装置12を代表して説明する。ちなみに、図2は、装着装置12の外装部品の一部を取り除いた斜視図である。装着装置12の備える装着機22の各々は、主に、フレーム部40とそのフレーム部40に上架されたビーム部42とを含んで構成された装着機本体44と、回路基板をX軸方向に搬送するとともに設定された位置に固定する搬送装置46と、その搬送装置46によって固定された回路基板に対して作業を行う作業ヘッド48と、ビーム部42に配設されて作業ヘッド48を移動させる移動装置50と、フレーム部40の前方に配設され電子部品を供給する供給装置52とを備えている。
【0021】
搬送装置46は、2つのコンベア装置60,62を備えており、それら2つのコンベア装置60,62は、互いに平行、かつ、X軸方向に延びるようにフレーム部40のY軸方向での中央部に配設されている。2つのコンベア装置60,62の各々は、電磁モータ(図3参照)64によって各コンベア装置60,62に支持される回路基板をX軸方向に搬送するとともに、所定の位置において回路基板を固定的に保持する構造とされている。
【0022】
移動装置50は、XYロボット型の移動装置であり、作業ヘッド48を保持するスライダ70をX方向にスライドさせる電磁モータ(図3参照)72と、Y方向にスライドさせる電磁モータ(図3参照)74とを備えており、それら電磁モータ72,74の作動によって、作業ヘッド48を任意の位置に移動させることが可能となっている。
【0023】
作業ヘッド48は、回路基板に対して電子部品を装着する装着ヘッドであり、下端面に設けられた吸着ノズル76を有している。吸着ノズル76は、正負圧供給装置(図3参照)78を介して負圧エア,正圧エア通路に通じており、負圧にて電子部品を吸着保持し、僅かな正圧が供給されることで保持した電子部品を離脱する構造となっている。さらに、作業ヘッド48は、吸着ノズル76を昇降させるノズル昇降装置(図3参照)80を有しており、保持する電子部品の上下方向の位置を変更することが可能とされている。
【0024】
供給装置52は、フレーム部40の前方側の端部に配設されており、フィーダ型の供給装置とされている。フィーダ型の供給装置52は、回路部品がテーピング化されたテープ化部品から電子部品を作業ヘッド48への供給位置に順次供給する構造とされており、テープ化部品が巻回された複数のテープフィーダ82と、それら複数のテープフィーダ82の各々を送り出す複数の送り装置(図3参照)84とを有している。
【0025】
また、本システム10の最上流に配置されるはんだ印刷機14は、回路基板上にクリームはんだを印刷するものであり、上記装着機22の搬送装置46と同じ構造の搬送装置(図3参照)86と、その搬送装置86に保持された回路基板上にクリームはんだを印刷する印刷装置(図3参照)88とを備えている。一方、システム10の最下流に配置されるリフロー炉16は、電子部品が装着された回路基板を熱することで、クリームはんだを溶かした後、電子部品を回路基板上に固定させる装置であり、上記装着機22の搬送装置46と同じ構造の搬送装置(図3参照)90と、ヒータ92とを備えている。
【0026】
また、対基板作業システム10は、図3に示すように、はんだ印刷機14,リフロー炉16,8台の装着機22の各々を制御する個別制御装置100を備えている。各個別制御装置100は、CPU,ROM,RAM等を備えたコンピュータを主体とするコントローラ102を備えている。さらに、装着機22の個別制御装置100は、電磁モータ64,72,74,正負圧供給装置78,ノズル昇降装置80,送り装置84の駆動源の各々に対応する複数の駆動回路104を、はんだ印刷機14の個別制御装置100は、搬送装置86,印刷装置88の駆動源の各々に対応する複数の駆動回路104を、リフロー炉16の個別制御装置100は、搬送装置90の駆動源に対応する駆動回路104とヒータ92に対応する制御回路105とを、それぞれ備えている。各コントローラ102には、各駆動回路104を介して各装着機22,はんだ印刷機14,リフロー炉16の駆動源が接続されており、各作業機18,はんだ印刷機14,リフロー炉16の搬送装置等の作動を制御することが可能とされている。また、制御回路105を介してリフロー炉16のヒータ92が接続されており、そのヒータ92の作動を制御することが可能とされている。
【0027】
また、対基板作業システム10は、全ての個別制御装置100を統括して制御する統括制御装置108を備えている。統括制御装置108は、各個別制御装置100のコントローラ102に接続されており、各コントローラ102と情報,指令等を送受信することが可能とされている。さらに、統括制御装置108には、赤外線による検知センサ106が接続されている。検知センサ106は、はんだ印刷機14の搬入口に設けられており、回路基板がはんだ印刷機14内に搬入されたことを検知する構造とされている。
【0028】
<対基板作業システムの制御>
上述した構成によって、対基板作業システム10では、回路基板が、最上流側に配置されたはんだ印刷機14から最下流側に配置されたリフロー炉16にわたって搬送されつつ、その回路基板に対してはんだ印刷機14,8台の装着機22,リフロー炉16、つまり、10台の作業機14,16,22の各々による作業が順次実行されることで、電子部品が実装された回路基板を生産することが可能となっている。詳しく言えば、はんだ印刷機14に電子部品が実装されていない回路基板が搬入されると、はんだ印刷機14の搬送装置86によって、その回路基板を作業位置まで搬送するとともに、その作業位置において回路基板を固定的に保持する。次に、はんだ印刷機14の印刷装置92によって、回路基板上にクリームはんだを印刷する。そして、クリームはんだ印刷後、搬送装置86によって、クリームはんだが印刷された回路基板を隣接する装着機22に搬送する。
【0029】
クリームはんだが印刷された回路基板が、はんだ印刷機14に隣接する装着機22内に搬入されると、その装着機22の搬送装置46によって、回路基板を作業位置まで搬送するとともに、その位置において回路基板を固定的に保持する。次に、移動装置50によって、作業ヘッド48を供給装置52上に移動させ、装着ヘッド48によって、供給装置52から供給される電子部品を吸着保持する。続いて、電子部品を吸着保持した状態の装着ヘッド48を、移動装置50によって回路基板上に移動させ、装着ヘッド48によって、電子部品が回路基板上に装着される。そして、搬送装置46によって、電子部品が装着された回路基板を下流側に隣接する装着機22に搬送する。
【0030】
以下、残りの7台の装着機22において、上述したクリームはんだ印刷機14に隣接する装着機22と同様の作業が順次行われることで、回路基板への電子部品の装着作業が完了する。そして、その装着作業の完了した回路基板がリフロー炉16内に搬入されると、リフロー炉16の搬送装置90によって回路基板を作業位置まで搬送するとともに、その位置において回路基板を固定的に保持する。続いて、ヒータ92によって、クリームはんだを溶かすことで、電子部品が回路基板上に固定される。その後に、搬送装置90によって、全ての実装作業の完了した回路基板がリフロー炉16から搬出されて、回路基板が生産される。
【0031】
なお、はんだ印刷機14には、電子部品が実装されていない回路基板が順次搬入されるようになっており、はんだ印刷機14でクリームはんだの印刷作業が終わって、作業位置からクリームはんだの印刷された回路基板が搬送されると、次の回路基板がその作業位置に順次搬送されるようになっている。このため、システム10内において、複数の生産途中の回路基板が搬送されることになる。
【0032】
このように、本システム10では、10台の作業機14,16,22の各々による作業が順次実行されることで、回路基板が生産される。このため、10台の作業機14,16,22のうちの1台でも作業が停止すると、その停止した作業機の下流側の作業機では、継続して回路基板に対する作業を実行し、回路基板の生産を完了することができるが、停止した作業機の上流側の作業機内には、生産途中の回路基板が留まることになる。このような場合に、作業機の停止時間がある程度長くなると、回路基板上に塗布されたクリームはんだの乾き、回路基板上に装着された電子部品等の酸化が生じる虞があり、回路基板の品質が低下する虞がある。このため、作業機がある程度長く停止するような場合には、システム内に新たに回路基板を投入することは望ましくなく、また、停止した作業機14,16,22の上流側に配置されている作業機(以下、「上流側作業機」という場合がある)による作業も無駄となる虞がある。一方で、作業機の停止時間が比較的短い場合に、システム内に新たな回路基板が投入されていなかったり、上流側作業機での作業を停止していたりすると、停止している作業機が復旧した際の生産性が低下する。
【0033】
このようなことに鑑みて、本システム10では、システムを構成する作業機14,16,22が停止した場合に、その停止した作業機の停止時間を推定し、その推定された停止時間に基づいて、上流側作業機での搬送、作業を停止させるか否かを判断している。詳しく説明すれば、10台の作業機14,16,22のうちのいずれかの作業機が停止した場合には、まず、その作業機の作業停止時間を推定する。統括制御装置108には、作業が停止した理由毎に作業停止時間が累積的に記憶されており、作業が停止した理由毎に作業停止時間の平均値が演算されている。
【0034】
具体的には、例えば、装着機22の搬送装置46の電磁モータ64に異常が発生し、その装着機22の作業が停止した場合の作業停止時間が累積的に記憶され、その記憶された作業停止時間の平均値Tが演算されている。また、例えば、装着機22の供給装置52のテープフィーダ82を交換する際に、その装着機22の作業が停止した場合の作業停止時間が累積的に記憶され、その記憶された作業停止時間の平均値Tが演算されている。作業機の停止理由は、作業機の各駆動源の異常、作業を行うために必要な情報処理の異常,クリームはんだ,電子部品等の補充,作業機の点検等、種々のものが採用されており、その理由毎に作業停止時間が累積的に記憶され、その記憶された作業停止時間の平均値が演算されている。
【0035】
このため、例えば、10台の作業機14等のうちの上流側から4番目の作業機、つまり、8台の装着機22のうちの3番目の装着機22の搬送装置46の電磁モータ64に異常が発生し、その装着機22の作業が停止した場合には、作業停止時間の平均値Tを、想定される作業停止時間(以下、「作業停止想定時間」という場合がある)Tとして推定する。なお、その停止した装着機22を、以下の説明において、第4作業機110と称し、その第4作業機110から上流に向かって順に、第3作業機112,第2作業機114,第1作業機116と称する場合がある。
【0036】
次に、その推定された作業停止想定時間Tが、第1閾時間としてのサイクルタイムAを超えているか否かが判定される。サイクルタイムAは、回路基板を生産するために必要とされる時間であり、回路基板が、はんだ印刷機14に搬入されてからリフロー炉16から搬出されるまでに要する時間である。本システム10でのサイクルタイムAは、机上でのシュミレーションによって設定されており、5分とされている。なお、はんだ印刷機14に搬入されてからリフロー炉16から搬出されるまでに要する時間を実際に複数回測定し、その測定値の平均時間をサイクルタイムとしてもよい。また、平均時間±σ(標準偏差)若しくは、平均時間±3σをサイクルタイムとしてもよい。
【0037】
そして、作業停止想定時間TがサイクルタイムA以下であると判定された場合には、比較的早く第4作業機110が復旧すると考えられることから、上流側作業機、つまり、第1作業機116〜第3作業機112での搬送装置の作動を維持するとともに、第1作業機116〜第3作業機112による作業も継続して行う。一方、作業停止想定時間TがサイクルタイムAを超えていると判定された場合には、作業停止想定時間Tが第1閾時間より長い第2閾時間を超えているか否かが判定される。ここで、第2閾時間は、生産完了前の回路基板が放置された場合に不良品となると想定される時間、つまり、生産完了前の回路基板がシステム内で滞留可能な基板滞留可能時間Bから、システム内で回路基板に対する作業を行うために必要な時間を減じた値に設定されている。具体的には、基板滞留可能時間Bとして、回路基板上にクリームはんだを印刷した場合に、印刷されたクリームはんだが乾燥すると想定される時間が設定されている。
【0038】
そして、作業停止想定時間Tが第2閾時間を超えていると判定された場合には、第1作業機116〜第3作業機112での搬送装置の作動を停止させるとともに、第1作業機116〜第3作業機112による作業も停止させる。第4作業機110が第2閾時間を超えて停止するような場合には、新たな回路基板にクリームはんだを印刷しても、その回路基板は不良品となる可能性が非常に高く、システム内への新たな回路基板の投入を回避するためである。さらに、システム内に留められた回路基板上に印刷されているクリームはんだは相当乾燥している可能性が高く、そのような回路基板へ電子部品の装着の無駄を省くためである。
【0039】
一方、作業停止想定時間Tが第2閾時間を超えていないと判定された場合には、第1作業機116〜第3作業機112での搬送装置の作動を停止させるが、第1作業機116〜第3作業機112による作業は継続して行う。これにより、不良品となる虞のある回路基板の数を少なくするとともに、第4作業機110が復旧した際の生産への影響をある程度抑えることが可能となる。
【0040】
そして、第4作業機110が復旧した場合には、第1作業機116〜第3作業機112での搬送装置、第1作業機116〜第3作業機112による作業の再開は、実際に第4作業機110が停止していた時間に基づいて判断される。詳しく言えば、実際の第4作業機110の実停止時間Tが、第2閾時間つまり、基板滞留可能時間Bから、システム内で回路基板に対して作業を行うために必要な対基板作業時間を減じた値を超えているか否かが判定される。この判定は、回路基板毎に行われ、対基板作業時間は、第1作業機116〜第3作業機112による作業が停止されていた場合には、判定される回路基板がシステム内に投入されてからの経過時間Tと、判定される回路基板が留まっている作業機での残りの作業に要する時間TN1と、判定される回路基板が留まっている作業機より下流側の全ての作業機での作業に要する時間TN2とを加えた値に設定されている。つまり、第1作業機116〜第3作業機112による作業が停止されていた場合には、実停止時間Tが下記式を満たしているか否かが判定される。
>B−(T+TN1+TN2
【0041】
また、第1作業機116〜第3作業機112による作業が行われていた場合には、判定される回路基板は、留まっている作業機での作業が完了していることから、対基板作業時間は、判定される回路基板がシステム内に投入されてからの経過時間Tと、判定される回路基板が留まっている作業機より下流側の全ての作業機での作業に要する時間TN2とを加えた値に設定されている。つまり、第1作業機116〜第3作業機112による作業が行われていた場合には、実停止時間Tが下記式を満たしているか否かが判定される。
>B−(T+TN2
【0042】
そして、実停止時間Tが上記式を満たしていると判定された場合、つまり、第2閾時間を超えていると判定された場合には、システム内に留まっている回路基板は不良品となる可能性が非常に高いと判断され、全ての作業機による作業が停止され、全ての作業機での搬送装置が作動される。これにより、システム内に留まっている回路基板は、生産途中の状態でシステム外に払い出され、廃棄される。一方、実停止時間Tが上記式を満たしていないと判定された場合、つまり、第2閾時間を超えていないと判定された場合には、システム内に留まっている回路基板は不良品となる可能性は低いと判断され、全ての作業機による作業が行われ、全ての作業機での搬送装置が作動される。これにより、システム内に留まっている回路基板は、生産が完了した状態でシステムから搬出される。なお、上記判定で用いられた実停止時間Tは、今後の作業停止想定時間Tの推定に利用するべく、統括制御装置108に記憶される。
【0043】
<制御プログラム>
上述した作業機停止時における上流側作業機での搬送、作業を停止させるか否かを判断は、図4にフローチャートを示す作業停止時対処プログラムが実行されることで行われる。また、停止していた作業機が復旧した際の上流側作業機での搬送、作業を再開させるか否かを判断は、図5にフローチャートを示す作業復旧時対処プログラムが実行されることで行われる。
【0044】
まず、作業停止時対処プログラムでは、ステップ1(以下、単に「S1」と略す。他のステップについても同様とする)において、10台の作業機14等のうちのいずれかの作業機が停止しているか否かが判断され、停止していると判断された場合には、S2において、作業停止想定時間Tが、統括制御装置108内に種々の理由毎に記憶されている停止時間に基づいて推定される。次に、S3において、その推定された作業停止想定時間TがサイクルタイムAを超えているか否かが判断され、作業停止想定時間TがサイクルタイムAを超えていると判断された場合には、S4において、上流側作業機での搬送装置の作動が停止させられる。
【0045】
続いて、S5において、作業停止想定時間Tが第2閾時間を超えているか否かが判断される。ここでの第2閾時間は、基板滞留可能時間Bからシステム内に回路基板が搬入されてからの経過時間Tと、判断対象の回路基板が留まっている作業機での残りの作業に要する時間TN1と、判断対象の回路基板が留まっている作業機より下流側の全ての作業機での作業に要する時間TN2とを減じた値である。統括制御装置108では、上記検知センサ106によってシステム内に回路基板が投入されたことを検知してからの時間が、回路基板毎に計測されており、経過時間Tとしてその計測時間が利用される。そして、作業停止想定時間Tが第2閾時間を超えていると判断された場合には、S6において、上流側作業機による作業が停止させられる。
【0046】
また、作業復旧時対処プログラムでは、S11において、停止していた作業機が復旧したか否かが判断され、復旧したと判断された場合には、S12において、実停止時間Tが統括制御装置108に記憶される。統括制御装置108では、作業機が停止してから復旧するまでの時間が計測されており、その計測時間が実停止時間Tとして統括制御装置108に記憶される。次に、S13において、作業機停止時に上流側作業機による作業を停止させていたか否かが判断され、上流側作業機による作業を停止させていたと判断された場合には、S14において、実停止時間Tが第2閾時間を超えているか否かが判断される。ここでの第2閾時間は、基板滞留可能時間Bから、経過時間Tと判断対象の回路基板が留まっている作業機での残りの作業に要する時間TN1と判断対象の回路基板が留まっている作業機より下流側の全ての作業機での作業に要する時間TN2と減じた値である。
【0047】
実停止時間Tがその第2閾時間を超えていると判断された場合には、S15において、全ての搬送装置が作動させられ、全ての作業機による作業は停止させられる。一方、実停止時間Tが第2閾時間を超えていないと判断された場合には、S16において、全ての搬送装置が作動させられ、全ての作業機による作業が行われる。
【0048】
また、S13において上流側作業機による作業を停止させていないと判断された場合には、S17において、実停止時間Tが第2閾時間を超えているか否かが判断される。ここでの第2閾時間は、基板滞留可能時間Bから、経過時間Tと判断対象の回路基板が留まっている作業機より下流側の全ての作業機での作業に要する時間TN2と減じた値である。実停止時間Tがその第2閾時間を超えていると判断された場合には、S15において、全ての搬送装置が作動させられ、全ての作業機による作業は停止させられる。一方、実停止時間Tが第2閾時間を超えていないと判断された場合には、S16において、全ての搬送装置が作動させられ、全ての作業機による作業が行われる。
【0049】
<統括制御装置の機能構成>
上記作業停止時対処プログラムおよび、作業復旧時対処プログラムを実行する統括制御装置108は、それの実行処理に鑑みれば、図3に示すような機能構成を有するものと考えることができる。図から解るように、統括制御装置108は、S12の処理を実行する機能部、つまり、実停止時間Tを記憶する機能部として、作業停止時間記憶部120を、S2の処理を実行する機能部、つまり、作業停止想定時間Tを推定する機能部として、作業停止時間推定部122を、S3〜S6の処理を実行する機能部、つまり、作業機停止時の上流側作業機での搬送装置および上流側作業機の作動を制御する機能部として、作業停止時制御部124を、S13〜S16の処理を実行する機能部、つまり、作業機復旧時の上流側作業機での搬送装置および上流側作業機の作動を制御する機能部として、作業復旧時制御部126を、それぞれ備えている。
【0050】
ちなみに、上記実施例において、対基板作業実行システム10は、対基板作業実行システムの一例であり、対基板作業実行システム10を構成するはんだ印刷機14,リフロー炉16,電子部品装着機22は、作業機の一例である。また、統括制御装置108は、制御装置の一例であり、その統括制御装置108の作業停止時間記憶部120,作業停止時間推定部122,作業停止時対処部124,作業復旧時対処部126は、作業停止時間記憶部,作業停止時間推定部,作業停止時対処部,作業復旧時対処部の一例である。
【0051】
なお、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することが可能である。具体的には、例えば、上記実施例では、作業停止時間推定部122は、作業停止時間記憶部120に記憶されている作業停止時間の平均値を作業停止想定時間Tとして推定しているが、その平均値±σ(標準偏差)若しくは、平均値±3σを作業停止想定時間Tとして推定することが可能である。
【0052】
上記実施例では、第1閾時間をサイクルタイムAに設定しているが、そのサイクルタイムAの1/5以上、かつ、2倍以下に設定することが可能である。また、サイクルタイムAに依拠することなく第1閾時間を設定することも可能である。具体的には、例えば、サイクルタイムAの長さに関わらず、第1閾時間を2〜10分に設定することが可能である。
【0053】
上記実施例では、作業機として、はんだ印刷機14,リフロー炉16,電子部品装着機22が採用されているが、その他の種類の作業を実行可能なものを採用することが可能である。具体的には、回路基板上に接着剤を塗布するための作業機,はんだ・接着剤の印刷・塗布済みの回路基板,若しくは、電子部品装着済みの回路基板を検査するための作業機等を採用することが可能である。
【符号の説明】
【0054】
10:対基板作業システム 14:はんだ印刷機(作業機) 16:リフロー炉(作業機) 22:電子部品装着機(作業機) 108:統括制御装置(制御装置) 120:作業停止時間記憶部 122:作業停止時間推定部 124:作業停止時対処部 126:作業復旧時対処部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列された複数の作業機を備え、回路基板がそれら複数の作業機の上流側に配置されたものから下流側に配置されたものにわたって搬送されつつ、その回路基板に対してそれら複数の作業機の各々による作業が順次実行されることで、その回路基板に対する作業を実行する対基板作業システムにおいて、
当該対基板作業システムは、
前記複数の作業機のうちの1つのものの作業が停止した場合に、その1つのものの作業が停止した理由毎に、その作業が停止していた作業停止時間を累積的に記憶する作業停止時間記憶部と、
前記複数の作業機のうちの1つのものの作業が停止した場合に、その1つのものの作業が停止すると想定される時間である作業停止想定時間を、その1つのものの作業が停止した理由に応じて前記作業停止時間記憶部に記憶されている前記作業停止時間に基づいて推定する作業停止時間推定部と、
前記作業停止想定時間が第1閾時間を超えた場合には、前記複数の作業機のうちの作業が停止している作業機より上流側に配置された全ての作業機である上流側作業機での回路基板の搬送を停止し、前記作業停止想定時間が前記第1閾時間より長い第2閾時間を超えた場合には、前記上流側作業機での回路基板の搬送を停止するとともに、前記上流側作業機による作業を停止する作業停止時対処部を有する制御装置と
を備えた対基板作業システム。
【請求項2】
前記作業停止時間推定部は、
前記複数の作業機のうちの1つのものの作業が停止した理由に応じて前記作業停止時間記憶部に記憶されている前記作業停止時間の平均値を利用して、前記作業停止想定時間を推定するように構成された請求項1に記載の対基板作業システム。
【請求項3】
前記第2閾時間は、
前記複数の作業機のうちの少なくとも1つのものによる作業が行われた回路基板が、回路基板に対する作業が完了されない場合に、不良品となると想定される時間から、当該対基板作業システム内で作業を行うために必要な時間を減じたものに設定されている請求項1または請求項2に記載の対基板作業システム。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記複数の作業機のうちの作業が停止していたものが復旧した場合に、その停止していたもの作業の実際の停止時間が前記第2閾時間を超えてしまった回路基板に対しては、前記上流側作業機による作業を再開せず、その実際の停止時間が前記第2閾時間以下である回路基板に対して、前記上流側作業機での搬送及び前記上流側作業機による作業を再開する作業復旧時対処部を有する請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の対基板作業システム。
【請求項5】
回路基板が、前記複数の作業機の最も上流側に配置されたものに搬入されてから最も下流側に配置されたものから搬出されるまでに要する時間を、サイクルタイムと定義した場合において、
前記第1閾時間は、
前記サイクルタイムの1/5以上、かつ前記サイクルタイムの2倍以下に設定されている請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載の対基板作業システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−74086(P2013−74086A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211825(P2011−211825)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000237271)富士機械製造株式会社 (775)
【Fターム(参考)】