説明

対物レンズ及び光ピックアップ装置

【課題】高NAのレンズにおいて成形時の不具合を抑制できる対物レンズ及び光ピックアップ装置を提供する。
【解決手段】対物レンズOBJが厚肉フランジ部FTを有するので、図2を参照して、第1の型10の第1のフランジ部転写面11bに、厚肉フランジ部形成部11cをゲート部GTに接続するように形成する事ができ、これによりゲート部GTの断面積を増大することでゲートシール時間が最適化され、十分な圧力を加えることができるようになり、エアの抜けを有効に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対物レンズに関し、特に光ピックアップ装置に用いられると好適なNA0.75以上の対物レンズ及び光ピックアップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
波長400nm程度の青紫色半導体レーザを用いて、情報の記録及び/又は再生(以下、「記録及び/又は再生」を「記録/再生」と記載する)を行える高密度光ディスクシステムが既に市販されている。一例として、NA0.85、光源波長405nmの仕様で情報記録/再生を行う光ディスク、いわゆるBlu−ray Disc(以下、BDという)では、DVD(NA0.6、光源波長650nm、記憶容量4.7GB)と同じ大きさである直径12cmの光ディスクに対して、1層あたり23〜27GBの情報の記録が可能である。
【0003】
ところで、光ピックアップ装置に用いる対物レンズを成形によって形成すれば大量生産が可能であり、低コスト化を図ることができる。特許文献1には、金型によりレンズに対応するキャビティを形成し、かかるキャビティ内にゲートと呼ばれる樹脂流入口から溶融したプラスチック樹脂を流し込んでレンズを形成する、いわゆる射出成形によりプラスチックレンズを製造する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−84080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、従来のDVD用の光ピックアップ装置に用いる対物レンズの場合、NA0.6程度であるためフランジ厚に対して軸上レンズ厚が比較的薄く、特許文献1に開示された射出成形技術で製造が可能である。ところが、BD用の光ピックアップ装置に用いる対物レンズの場合、NA0.75程度であるためフランジ厚に対して軸上レンズ厚が比較的厚くなって半球形に近くなり、キャビティ内に射出する樹脂総量が増大する。樹脂総量が増大すると、狭いゲートから樹脂を注入する際にキャビティ内の最大肉厚部まで圧力が十分伝わる前にゲートがシールしてしまい、キャビティ内のエアを押し出すことができず、その結果空気溜まりができてしまい、所望の光学面を得ることができないという不具合が生じる。これに対し、フランジ厚を全体的に厚くすれば、ゲートも厚くすることができる為圧力を十分に伝えることができるが、対物レンズのトラッキング・フォーカシング制御に不利となる重量増を招くという問題が生じる。また、フランジ厚を全体的に厚くするのに伴い、軸上レンズ厚を厚くすると、光ディスクとの干渉を回避するためのワーキングディスタンスの減少を招くという問題が生じる。
【0006】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、高NAのレンズにおいて成形時の不具合を抑制できる対物レンズ及び光ピックアップ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の対物レンズは、500nm以下の波長の光束を光ディスクの情報記録面に集光することによって、情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置において用いられる対物レンズにおいて、
前記対物レンズのNAは0.75以上であり、
前記対物レンズは、光学面の周囲にフランジ部を有し、前記フランジ部の一部は、それ以外の部位よりも光軸方向の厚みが大きな厚肉フランジ部となっており、前記対物レンズを光軸方向から見たときに前記厚肉フランジ部は最大有効径よりも光軸側に張り出しており、更に以下の式を満たすことを特徴とする。
【0008】
0.9≦d/f≦1.2 (1)
但し、d(mm)は、前記対物レンズの軸上レンズ厚を表し、f(mm)は、前記500nm以下の波長の光束における前記対物レンズの焦点距離を表す。
【0009】
本発明によれば、前記フランジ部の一部が、それ以外の部位よりも光軸方向の厚みが大きな厚肉フランジ部となっており、前記対物レンズを光軸方向から見たときに前記厚肉フランジ部は最大有効径よりも光軸側に張り出している。また、かかる厚肉フランジ部に対応する比較的断面積の大きな厚肉フランジ部形成部を介してゲートを設けることでゲートを厚くすることができる。前記ゲートから対物レンズの素材を金型内に注入することで、BD用の光ピックアップ装置に用いるような軸上レンズ厚が大きな対物レンズであっても、キャビティ内のエアをスムーズに排出する為に十分な圧力を加えることができ、精度良く光学面を形成することができる。また、厚肉フランジ部以外のフランジ部の厚さは従来と同様であるため、重量増を最小限に抑えることができる。また、厚肉フランジ部以外のフランジ部の厚さを抑えることが出来るため、軸上レンズ厚を厚くする必要がなく、結果として、軸上レンズ厚を小さな値に抑えることが可能となる為ワーキングディスタンスの減少を招く恐れもない。
【0010】
請求項2に記載の対物レンズは、500nm以下の波長の光束を光ディスクの情報記録面に集光することによって、情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置において用いられる対物レンズにおいて、
前記対物レンズのNAは0.75以上であり、
前記対物レンズは、光学面の周囲にフランジ部を有し、前記フランジ部は、光軸方向のいずれか少なくとも一方の側に周方向に延びる輪帯部を有し、前記輪帯部は前記フランジ部から前記光学面にわたって形成された厚肉フランジ部によって寸断されており、更に以下の式を満たすことを特徴とする。
【0011】
0.9≦d/f≦1.2 (1)
但し、d(mm)は、前記対物レンズの軸上レンズ厚を表し、f(mm)は、前記500nm以下の波長の光束における前記対物レンズの焦点距離を表す。
【0012】
本発明によれば、前記フランジ部が、光軸方向のいずれか少なくとも一方の側に周方向に延びる輪帯部を有し、前記輪帯部は前記フランジ部から前記光学面にわたって形成された厚肉フランジ部によって寸断されている。また、かかる厚肉フランジ部に対応する比較的断面積の大きな厚肉フランジ部形成部を介してゲートを設けることでゲートを厚くすることができる。前記ゲートから対物レンズの素材を金型内に注入することで、BD用の光ピックアップ装置に用いるような軸上レンズ厚が大きな対物レンズであっても、キャビティ内のエアをスムーズに排出する為に十分な圧力を加えることができ、精度良く光学面を形成することができる。また、厚肉フランジ部以外のフランジ部の厚さは従来と同様であるため、重量増を最小限に抑えることができる。また、厚肉フランジ部以外のフランジ部の厚さを抑えることが出来るため、軸上レンズ厚を厚くする必要がなく、結果として、軸上レンズ厚を小さな値に抑えることが可能となる為ワーキングディスタンスの減少を招く恐れもない。
【0013】
請求項3に記載の対物レンズは、請求項2に記載の発明において、前記光軸方向のいずれか少なくとも一方の側に周方向に延びる溝を有し、前記溝も前記厚肉フランジ部によって寸断されていることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の対物レンズは、請求項2又は3に記載の発明において、前記溝部は、前記光学面のうち曲率半径が小さい光学面に近い側に形成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の対物レンズは、請求項1〜4のいずれかに記載の発明において、前記厚肉フランジ部は、ゲート近傍に設けられていることを特徴とする。
【0016】
請求項6に記載の対物レンズは、請求項1〜5のいずれかに記載の発明において、前記厚肉フランジ部の肉厚をΔ(mm)としたときに、以下の式を満たすことを特徴とする。
【0017】
2.0≦d/Δ≦5.0 (2)
請求項7に記載の対物レンズは、請求項1〜6のいずれかに記載の発明において、前記フランジ部の最小肉厚をt(mm)としたときに、以下の式を満たすことを特徴とする。
【0018】
5.0<d/t≦8.0 (3)
請求項8に記載の対物レンズは、請求項1〜7のいずれかに記載の発明において、前記対物レンズは樹脂素材から形成されていることを特徴とする。
【0019】
請求項9に記載の光ピックアップ装置は、請求項1〜8のいずれかに記載の対物レンズを有することを特徴とする。光ピックアップ装置は、500nm以下の波長の光束を射出する光源と、対物レンズを有する集光光学系と、光検出器を有する。集光光学系は、対物レンズの他に、コリメータ等のカップリングレンズを有していてもよい。
【0020】
本明細書において、対物レンズとは、光ピックアップ装置において光ディスクに対向する位置に配置され、光源から射出された光束を光ディスクの情報記録面上に集光する機能を有する光学系を指す。対物レンズは、単玉のレンズであることが好ましい。また、対物レンズは、ガラスレンズであってもプラスチックレンズであっても、又は、ガラスレンズの上に光硬化性樹脂、UV硬化性樹脂、又は熱硬化性樹脂などで光路差付与構造を設けたハイブリッドレンズであってもよい。プラスチックレンズに一体的に光路差付与構造を形成しても良い。また、対物レンズは、屈折面が非球面であることが好ましい。また、対物レンズは、光路差付与構造が設けられるベース面が非球面であることが好ましい。光ピックアップ装置は、少なくとも500nm以下(好ましくは、350nm以上、450nm以下)の波長の光源(半導体レーザ等)を用いるものであると好ましい。また、対物レンズは、像側の開口数が0.75以上(好ましくは、0.75以上、0.9以下)である。対物レンズは、光学面とフランジ部とを有する。フランジ部とは、光学面の周囲で略光軸直交方向に延在した輪帯部を有し、対物レンズを保持するために用いられる部位をいう。このフランジ部の輪帯部が、厚肉フランジ部によって周方向において寸断される。本明細書で、フランジ部及び厚肉フランジ部の肉厚とは、光軸方向の厚さをいう。
【0021】
また、対物レンズをプラスチックレンズとする場合は、環状オレフィン系の樹脂材料等の脂環式炭化水素系重合体材料を使用するのが好ましい。また、当該樹脂材料は、波長405nmに対する温度25℃での屈折率が1.50乃至1.60の範囲内であって、−5℃から70℃の温度範囲内での温度変化に伴う波長405nmに対する屈折率変化率dN/dT(℃-1)が−20×10-5乃至−5×10-5(より好ましくは、−10×10-5乃至−8×10-5)の範囲内である樹脂材料を使用するのがより好ましい。
【0022】
また、対物レンズは、以下の条件式(1)を満たすと好ましい。
【0023】
0.9≦d/f≦1.2 (1)
但し、d(mm)は、対物レンズの軸上レンズ厚を表し、f(mm)は、500nm以下の波長の光束における対物レンズの焦点距離を表す。
【0024】
以下の式を満たすと更に好ましい。
【0025】
0.9≦d/f<1.1 (1’)
BDのような短波長、高NAの光ディスクに対応させる場合、対物レンズにおいて、非点収差が発生しやすくなり、偏心コマ収差も発生しやすくなるという課題が生じるが、条件式(1)及び(1’)を満たすことにより非点収差や偏心コマ収差の発生を抑制しつつ、ワーキングディスタンスを長めに確保することが可能となる。
【0026】
対物レンズの厚肉フランジ部の肉厚をΔ(mm)としたときに、以下の式を満たすと好ましい。
【0027】
2.0≦d/Δ≦5.0 (2)
対物レンズのフランジ部の最小肉厚をt(mm)としたときに、以下の式を満たすと好ましい。
【0028】
5.0<d/t≦8.0 (3)
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、高NAのレンズにおいて成形時の不具合を抑制できる対物レンズを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本実施の形態にかかる対物レンズを、成形金型を用いて成形する工程を示す図である。
【図2】本実施の形態にかかる対物レンズを成形する成形金型の拡大図である。
【図3】比較例にかかる対物レンズを成形する成形金型の拡大図である。
【図4】(a)は、本実施の形態にかかる対物レンズOBJを光軸方向から見た図、(b)は光軸直交方向に見た図である。
【図5】(a)は、比較例にかかる対物レンズOBJを光軸方向から見た図、(b)は光軸直交方向に見た図である。
【図6】(a)は、別な実施の形態にかかる対物レンズOBJを光軸方向から見た図、(b)は(a)の対物レンズをVIB−VIB線で切断して矢印方向に見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は、BD用光ピックアップ装置に用いるNA0.85のレンズを、成形金型を用いて成形する工程を示す図である。図2は、本実施の形態にかかる成形金型の拡大図である。成形金型は、第1の型10と第2の型20とを含み、両者が型締めされた状態で複数のキャビティを形成するようになっている。尚、図1におけるキャビティ形状は概略的である。光ピックアップ装置は一般的なもので足りるため、ここでは省略する。
【0032】
図2に示すように、第1の型10は、対物レンズの第1の光学面(光ピックアップ装置に取り付けた状態で光源側となる)を転写形成するための第1の光学転写面11aと、その周囲に続くフランジ部の光源側面(輪帯部)を転写形成するための第1のフランジ部転写面11bを有する。更に第1の型10には、第1のフランジ部転写面11bに接続するようにしてゲート部(入口流路)GTが形成されており、また第1のフランジ部転写面11bは、周方向の一部のみが陥没したごとき厚肉フランジ部形成部11cをゲート部GTに接続するように設けている。
【0033】
一方、第2の型20は、対物レンズの第2の光学面(光ピックアップ装置に取り付けた状態で光ディスク側となる)を転写形成するための第2の光学転写面21aと、その周囲に続くフランジ部の光ディスク側側面を転写形成するための第2のフランジ部転写面21bを有する。
【0034】
図3は、比較例である成形金型の図2と同様な断面図である。比較例である成形金型において、第2の型20の形状は同じであるが、第1の型10’は、第1のフランジ部転写面11bが厚肉フランジ部形成部11cを含まず、全周一様な厚さとなっている点が異なる。即ち、フランジ部の輪帯部が厚肉フランジ部によって寸断されることがない。
【0035】
次に、本実施の形態にかかる対物レンズの成形方法について説明する。まず、図1(a)に示すように、第2の型20に対向するようにして第1の型10をセットする。更に第1の型10と第2の型20とを不図示のヒータにより加熱することにより、光学転写面11a、21aを所定温度まで加熱する。
【0036】
その後、図1(b)に示すように、第2の型20に対して第1の型10を相対的に接近させ密着させて、所定の保圧にて型締めを行った後、不図示のノズルからランナーLN及びゲート部GTを介して任意の圧力に加圧された状態で型温度よりも更に高温に加熱された樹脂を供給する(図1(c)参照)。
【0037】
次に、溶融した樹脂が転写面11a、11b、21a、21b及び厚肉フランジ部形成部11cの形状が転写した状態で固化するまで所定の時間待機して樹脂を冷却させる。
【0038】
その後、第1の型10と第2の型20とを相対的に移動させて型開きを行うと、対物レンズOBJを含む成形品が第1の型10に貼り付いた状態で露出する。かかる成形品から対物レンズOBJを分離することで、単体の対物レンズOBJが形成される。
【0039】
図4は、図2に示す成形金型により成形された対物レンズOBJを示す図であり、図5は、図3に示す成形金型により成形された対物レンズOBJ’を示す図である。まず、図5に示す比較例の対物レンズOBJ’においては、フランジ部FLの光軸方向厚さtが全周で均一となっている。即ち、フランジ部FLの輪帯部が厚肉フランジ部によって寸断されない形状である。しかるに、重量軽減やワーキングディスタンスを長くするためには、対物レンズOBJ’の軸上レンズ厚dに対する焦点距離fの比(d/f)を1.2以下とすることが望ましいが、そうすると肉厚tが薄くなりすぎ、樹脂の充填性が悪化することとなって高精度な光学面を形成できない。
【0040】
これに対し、図4に示す本実施の形態の対物レンズOBJにおいては、フランジ部FLの一部を厚肉フランジ部FTとしている。即ち、フランジ部FLの輪帯部FL1(第1の光学面S1側の面)が厚肉フランジ部FTによって寸断されている。より具体的には、対物レンズOBJは、第1の光学転写面11aにより転写成形された第1の光学面S1と、第1の光学面S1より曲率半径が大きく第2の光学転写面21aにより転写成形された第2の光学面S2と、第1のフランジ部転写面11b及び第2のフランジ部転写面21bにより転写成形されたフランジ部FLと、フランジ部FLにおける第1の光学面S1側に一部盛り上がるようにして、厚肉フランジ部形成部11cにより転写形成された厚肉フランジ部FTとを有している。厚肉フランジ部FTは、光軸直交方向に延在する光源側面FT1と、光源側面FT1に直交する平行な面FT2,FT3と、光源側面FT1の縁側に形成された面取り部FT4とを有している。光源側面FT1は第1の光学面S1に有効径内で接している。有効径内で接していることにより、厚肉フランジ部FTをより厚くすることができるため、樹脂注入時の圧力損失をより低減できる。
【0041】
ここで、対物レンズOBJの軸上レンズ厚をd(mm)、500nm以下の波長の光束における前記対物レンズOBJの焦点距離をf(mm)、対物レンズOBJの厚肉フランジ部FTの肉厚をΔ(mm)、対物レンズOBJのフランジ部FL(厚肉フランジ部FT以外)の肉厚をt(mm)としたときに、以下の式を満たす。
【0042】
0.9≦d/f≦1.2 (1)
2.0≦d/Δ≦5.0 (2)
5.0<d/t≦8.0 (3)
本実施の形態によれば、対物レンズOBJがフランジ部FLに厚肉フランジ部FTを有するので、図2を参照して、第1の型10の第1のフランジ部転写面11bに、厚肉フランジ部形成部11cをゲート部GTに接続するように形成する事ができ、これによりゲート部GTの断面積を増大することでゲートシール時間が最適化され、十分な圧力を加えることができるようになり、エアの抜けを有効に行うことができる。なお、第1の型10と第2の型20との間にエアベントと呼ぶエア抜き用の溝を設ければ、射出成形時にエアベントからキャビティ内に残存している空気が抜けるので、キャビティ内にエア溜まりが形成されることが抑制され、転写面に樹脂が精度良く密着することができる。エアベントを介して吸引ポンプで外部からエアを吸引すると、更にエア抜け性が向上する。
【0043】
ここで、金型の加工上、図4に示すように厚肉フランジ部FTは、対物レンズOBJを光軸方向に見たときに、第1の光学面S1の最大有効径Dよりも光軸側に張り出して第1の光学面S1と一体化する形となってしまうため、光ディスクに集光する光束の一部を遮ることとなるが、上記条件式(2)を満たすことにより、厚肉フランジ部FTで遮られる範囲は光学面の全有効面積と比較して小さく、遮光量は特に問題とはならない。
【0044】
本実施の形態では、厚肉フランジ部FTは1つとしたが複数個設けてもよい。かかる場合、図4に点線で示すように、光軸を挟んで対称の位置に配置するとバランスがとれて、重心位置が光軸上になり、対物レンズOBJのトラッキング・フォーカシング制御の駆動時に特に有効となる。
【0045】
図6は、別な実施の形態にかかる対物レンズOBJを示す図である。本実施の形態においては、フランジ部FLは、輪帯部FL1上に第1の光学面S1側に周方向に延びる溝GVを有し、フランジ部FLの輪帯部FL1及び溝GVはフランジ部FLから第1の光学面S1にわたって形成された厚肉フランジ部FTによって寸断されている。従って本実施の形態の場合、フランジ部FLの最小肉厚tは、溝GVの底部で測定することとなる。なお、溝GVは第2の光学面S2側に形成しても良い。それ以外の構成((1)〜(3)式の関係を含む)については、上述した実施の形態と同様であるため説明を省略する。
【0046】
以上、本発明を実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定して解釈されるべきではなく、適宜変更・改良が可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0047】
OBJ 対物レンズ
FL フランジ部
FL1 輪帯部
FT 厚肉フランジ部
S1 第1の光学面
S2 第1の光学面
GV 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
500nm以下の波長の光束を光ディスクの情報記録面に集光することによって、情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置において用いられる対物レンズにおいて、
前記対物レンズのNAは0.75以上であり、
前記対物レンズは、光学面の周囲にフランジ部を有し、前記フランジ部の一部は、それ以外の部位よりも光軸方向の厚みが大きな厚肉フランジ部となっており、前記対物レンズを光軸方向から見たときに前記厚肉フランジ部は最大有効径よりも光軸側に張り出しており、更に以下の式を満たすことを特徴とする対物レンズ。
0.9≦d/f≦1.2 (1)
但し、d(mm)は、前記対物レンズの軸上レンズ厚を表し、f(mm)は、前記500nm以下の波長の光束における前記対物レンズの焦点距離を表す。
【請求項2】
500nm以下の波長の光束を光ディスクの情報記録面に集光することによって、情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置において用いられる対物レンズにおいて、
前記対物レンズのNAは0.75以上であり、
前記対物レンズは、光学面の周囲にフランジ部を有し、前記フランジ部は、光軸方向のいずれか少なくとも一方の側に周方向に延びる輪帯部を有し、前記輪帯部は前記フランジ部から前記光学面にわたって形成された厚肉フランジ部によって寸断されており、更に以下の式を満たすことを特徴とする対物レンズ。
0.9≦d/f≦1.2 (1)
但し、d(mm)は、前記対物レンズの軸上レンズ厚を表し、f(mm)は、前記500nm以下の波長の光束における前記対物レンズの焦点距離を表す。
【請求項3】
前記フランジ部は、光軸方向のいずれか少なくとも一方の側に周方向に延びる溝を有し、前記溝も前記厚肉フランジ部によって寸断されていることを特徴とする請求項2に記載の対物レンズ。
【請求項4】
前記輪帯部は、前記光学面のうち曲率半径が小さい光学面に近い側に形成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の対物レンズ。
【請求項5】
前記厚肉フランジ部は、ゲート近傍に設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の対物レンズ。
【請求項6】
前記厚肉フランジ部の肉厚をΔ(mm)としたときに、以下の式を満たすことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の対物レンズ。
2.0≦d/Δ≦5.0 (2)
【請求項7】
前記フランジ部の最小肉厚をt(mm)としたときに、以下の式を満たすことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の対物レンズ。
5.0<d/t≦8.0 (3)
【請求項8】
前記対物レンズは樹脂素材から形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の対物レンズ。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の対物レンズを有することを特徴とする光ピックアップ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−181913(P2012−181913A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−95270(P2012−95270)
【出願日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【分割の表示】特願2011−534144(P2011−534144)の分割
【原出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLU−RAY DISC
【出願人】(303000408)コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】