説明

対象物の微細構造の改質方法

【課題】比較的簡単且つ安価で、対象とした微細構造又は微細材料の改質に適した方法を提供する。
【解決手段】対象物の材料上及び/又は材料内の微細構造の表面改質及び/又は体積修正の方法が開示される。始めに微細構造を材料上及び/又は材料内に生成し、そして材料の微細構造の相対構造寸法を減少させるべく、その次に材料の体積を収縮する。この発明の方法は、比較的簡単で低コストな態様で非常に細かい微細構造を製造するのに用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の材料上及び/又は材料内の微細構造の表面改質(Oberflachenmodifikation)及び/又は体積修正(volumenmodifikation)の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微細構造化された表面を有する対象物又は材料は、例えば光学要素や光学部品、規定の改質表面性質を有する材料、或いは機能的構成要素として用いられる。
【0003】
例えば、改質された微細構造表面は、例えばホログラムの形態としての光学構造、光散乱構造、例えばレンズアレイ、プリズム、或いは再帰反射構造等の光学部品の一部としての構造に採用される。規定の表面性質を有する構造は、例えば、湿潤性、電気特性、又は機械特性に対し特に且つ対象的に影響を与える構造である。湿潤性は、例えば「蓮の花効果(Lotusbluten-Effekt)」として知られ、電気又は機械特性は、例えばLCD、「ラボ・オン・チップ」やその他の構造のためにある。機械特性は、例えば摩擦係数のためにあり、即ち、当該微細構造を備える物品の静止及び/又は滑り摩擦係数に影響を与えるものである。
【0004】
体積修正材料又は体積修正対象物は、例えば、孔、通路及び/又は開口の形態としての様々な形態の微細構造を有する。その種の体積修正材料は、例えば、フィルタ、膜、電子部品、及びその他に用いられる。
【0005】
表面改質と体積修正との組み合わせは、直接法又は成形法により可能である。直接法は、例えば、レーザを用いたいわゆる直接構造化、X線リソグラフィ法又は特に電子ビームリソグラフィ法等のリソグラフィ法、マスキング法、エッチング法、及び、例えばダイアモンドを用いたスクラッチング法等の機械的な方法を伴う。また、金型を用いた押し付け加工も可能である。成形法は、例えば、機械的な工程又は硬化可能材料を用いた成形を伴い、硬化可能材料は、例えばUV注型用樹脂または同種のものとすることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した種類の直接法又は成形法による構造化された表面の生成は、技術的及び/又は商業的な影響によって制限されることが多い。したがって、微細構造のホログラフィ的な形成を制限する一般的に周知な要因としては、使用される光波長がある。非常に微細な構造を形成するためには、短波レーザ、及び複雑且つ多くの場合コスト高な試験設備及び材料が伴う。非常に微細な構造は、電子ビーム設備を用いて実施することができる。その点において用いられる電子線リソグラフィ手順により、例えば生チップに塗布される電子感受性ラッカー層に対する通常5〜50KeVの電子ビームを使用して、深さ0.1μm又はそれ未満の構造を製造することができる。その際、いわゆる近接効果は、生チップの半導体物質での電子散乱又は静電反発力によるビーム歪み現象に起因して、分解能制限作用を果たす。それはベルシュ効果として知られている。
【0007】
電子線リソグラフィでの制限要因は、非常にコスト高な設備の利用性や比較的長い書き込み時間はもとより、採用される電子感受性ラッカー層に起因する限界である。
【0008】
例えば、ある与えられた構造から出発し、その構造をより小さな寸法で使用するという要求がしばしば発生する。例えば1500線/mmとしたそのある与えられた構造を、例えば2000線/mmに変更し、即ち細密化する。さらなる例としては、規定の直径のナノチューブを有する膜の段階的製造である。ホログラフィ法の場合では、例えば、達成可能な構造の分解は、使用される光の波長によって制限される。近年ではまさに、「サブ波長構造」と称されるその分解以下の構造に対する関心は非常に高い。
【0009】
非常に小さな構造の使用は、適した原技術の利用性、コスト及び/又は時間的な制約の理由から、しばしば失敗する。
【0010】
これらの要因に鑑みて、本発明の目的は、比較的簡単且つ安価で、対象とした微細構造又は微細材料の改質に適した、本明細書の冒頭部分で示したような方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明によれば、その目的は請求項1の特徴により達成され、即ち、
a)対象物の材料及び/又は材料内の微細構造の生成と、
b)対象物の微細構造の構造寸法を減少させるための材料の体積収縮と、の方法ステップにより達成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る方法は、最初の方法ステップで適切な微細構造が生成され、そして該微細構造が、材料の体積収縮によりその寸法において減少されるという利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(実施例)
本発明に係る方法は、最初の方法ステップで適切な微細構造が生成され、そして該微細構造が、材料の体積収縮によりその寸法において減少されるという利点を有する。その状況において、体積収縮は、微細構造の相対的な輪郭(relativen Profilierung)を実質的に保ちつつ行われることが好ましい。
【0014】
本発明によれば、すべての通常の方法、特に、リソグラフィ法又は成形法により、対象物の材料及び/又は材料内に微細構造を生成することができる。成形法は、金型により行うことができる。また、金型による成形は、加圧による機械的及び/又は熱変形により行われ、或いは、媒体の注入により行われる。
【0015】
微細構造材料の金型からの分離は、エッチング、溶剤(Losemittel)、焼成、熱分解、及びその他によって機械的に行われ、即ち、あらゆる可能な方法を採用することができる。
【0016】
したがって、本発明の方法は、
−材料における微細構造の直接描画または成形、
−対応した構造寸法の減少を伴う、微細構造の相対的な輪郭を実質的に保ちながらの体積収縮、及び
−このように得られた対象物の、例えば、コンポーネント或いは当該減少した微細構造を成形するための金型としての使用。
【0017】
個々の関連する要求に応じて、最後に記載の方法ステップは、当該細かい微細構造を具体化すべく一度または複数回行うことができる。
【0018】
既に述べたように、個々の材料の構造化は、レーザ、エッチング又は溶剤を用いた部分域の溶出、金型の使用及びその他によって行うことができる。金型による成形は、通常、加圧による機械的及び/又は熱変形、後に固化を伴う媒体の注入、又は周知のリソグラフィ工程によって行われる。固化は、乾燥、例えばUV硬化等の化学的硬化、及びその他によって行われる。
【0019】
金型と材料との接触時間は、個々のシステムと、所望とされ且つ達成されるべき性質とに依存する。その接触時間は、<1秒から数日となり得る。金型は様々な材料から構成され得る。その材料には、金属、プラスチック材料、無機材料及びその他が関係し得る。金型の材料からの分離は、エッチング、例えば金型又は例えばフォトレジストの溶解による溶剤、又は焼成或いは熱分解によって、純粋に機械的に行うことができる。金型の材料からの分離時間は、使用されるシステムに依存する。一例として、硬化は、接触及び引き続く分離におけるUV放射及び制御熱分解により行われる。
【0020】
熱可塑性及び/又は熱硬化性材料、及び/又はエラストマーを、本発明の方法の材料として用いることができる。同様に、使用材料は、無充填の材料及び/又は充填材を充填した材料とすることができる。セラミック及び/又は金属材料も材料として使用することができる。同様に、材料として、天然材料及び/又は自然発生する物質から生成された材料も使用することができる。したがって、本発明の方法によって、一部は個々の工程手順との組み合わせである体積修正により区別されるすべての材料を使用することが可能である。また、体積膨張も可能である。したがって、本発明はそれに対しても関係している。
【0021】
本発明の方法においては、例えば複合材料等、上記で特定した材料の組み合わせを採用することも可能である。
【0022】
使用される充填材は、その充填材粒子の粒径が成形される微細構造の寸法よりも小さいことが望ましい。その点に関し、微細構造寸法:粒径の比率が、2:1及び≧100:1の間が望ましく、好ましくは、大きさの程度比(grossenordnungsmassig)>10:1であるということが証明された。
【0023】
「ナノ粒子」は市販されており、その粒径は、3から30nmの間である。そのようなナノ粒子は、例えば1000線/mmを有する正弦状の構造等の微細構造に用いることができる。
【0024】
粒径に加え、充填材粒子の形状も大きな影響力となり得る。そのため、本発明の方法において、細長い、繊維状、又は薄片状の形状の充填材粒子が用いられた場合、有利である。そのような最後に述べた種類の充填材粒子は、構造のより良好な成形を可能とさせることができ、必要に応じて、微細構造寸法:粒径の不利な比率と併用することもできる。成形作業において変形可能な充填材粒子も有利なものとすることができる。充填材粒子は、円形の形状とすることができる。充填材の使用もまた、微細構造における改質をもたらす。例えば、微細構造の構造化は、「重ね合わされた(uberlagerten)」ナノ構造により行うことができる。使用における特定の状況下では、それは有利且つ望ましいこととなり得る。
【0025】
本発明の方法において、好ましくは微細構造の相対的な輪郭を実質的に保ちつつでの構造の寸法を減少させるための材料の体積収縮は、物理的及び/又は化学的及び/又は生物学的な工程によって行うことができる。その点において、体積収縮は、熱収縮、水分及び/又は溶剤の放出を伴う乾燥工程、凝固工程、焼結工程、硬化工程、標的とした有機材料又はセラミックの炭化又は乾留によって行うことができる。同様に、体積膨張の場合、それ自体周知の膨潤工程を用いることも可能である。
【0026】
多くの技術的な材料に関連する目的とは、通常は収縮の度合いであって可能な限りわずかにするというものであるが、他方、本発明の方法は、多くの場合、高度合いの収縮を達成しようとするものであり、それは材料の一定の改質によって達成することができる。
【0027】
体積における変化の例を以下に示す。
−ポリカーボネートインジェクション成形 体積変化:約2%
−ポリエステル−硬化後無充填 体積変化:約3〜7%
−陶土(Tonerden) 体積変化:約5〜40%
−セラミック材料の炭化 体積変化:約5〜50%
(一部有機的に改質)
【0028】
本発明の方法により製造された対象物は、コンポーネント又は微細構造を成形するための金型として採用することができる。
【0029】
したがって、材料の用途は、例えば:
−光学要素又はその使用、
−衛生分野、製鉄及び鋼鉄産業、エレクトロニクス、電気工学、発電分野、生物学的用途、医療、診断、機械建造、及びその他のための表面改質特性を有する材料、
−例えばフィルタ、膜、生物学的用途、医療、診断、エレクトロニクス、及び光学要素等の技術的用途における、例えばナノチューブを有する、体積修正特性を有する材料、
−後の工程のための金型としての使用。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の材料及び/又は材料内の微細構造の表面改質及び/又は体積修正方法において、
a)前記対象物の前記材料及び/又は前記材料内の微細構造の生成と、
b)前記対象物の前記微細構造の構造寸法を減少させるための前記材料の体積収縮と、の方法ステップを特徴とする、対象物の材料及び/又は材料内の微細構造の表面改質及び/又は体積修正方法。
【請求項2】
体積収縮が、前記微細構造の相対的な輪郭を実質的に保ちつつ行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記微細構造が、リソグラフィ法によって前記対象物の前記材料及び/又は前記材料内に生成されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記微細構造が、直接法または成形法によって前記対象物の前記材料及び/又は前記材料内に生成されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記成形法が、金型によって行われることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記金型による成形が、加圧による機械的及び/又は熱変形により行われることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記金型による成形が、媒体の注入により行われることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記微細構造材料の前記金型からの分離が、エッチング、溶剤、焼成又は熱分解によって機械的に行われることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
熱可塑性及び/又は熱硬化性プラスチック材料及び/又はエラストマーが前記材料として用いられることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
充填材を充填した材料及び/又は無充填の材料が前記材料として用いられることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
セラミック及び/又は金属材料が前記材料として用いられることを特徴とする請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
天然材料及び/又は自然発生する物質から生成された材料が前記材料として用いられることを特徴とする請求項9または10に記載の方法。
【請求項13】
使用される前記充填材が、成形作業に用いられる前記微細構造の寸法よりも小さい粒径の粒子であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記微細構造寸法:粒径の比率が、2:1と≧100:1との間であって、好ましくは、大きさの程度比>10:1であることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
円形、細長い、繊維状、又は薄片状の充填材粒子が用いられることを特徴とする請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
好ましくは前記微細構造の相対的な輪郭を実質的に保ちつつ行われる前記構造寸法を減少させるための前記材料の体積収縮が、物理的及び/又は化学的及び/又は生物学的な工程により行われることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
体積収縮が熱収縮により行われることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
体積収縮が水分及び/又は溶剤の放出を伴う乾燥工程により行われることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項19】
体積収縮が凝固工程により行われることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項20】
体積収縮が焼結工程により行われることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項21】
体積収縮が硬化工程により行われることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項22】
体積収縮が炭化により行われることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項23】
体積収縮が乾留により行われることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項24】
a)及びb)の方法ステップが繰り返し実施されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記いずれか一項の請求項に記載の方法によって製造された対象物の、コンポーネント又は微細構造を成形するための金型としての使用。

【公表番号】特表2008−505758(P2008−505758A)
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−520718(P2007−520718)
【出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【国際出願番号】PCT/EP2005/007358
【国際公開番号】WO2006/005515
【国際公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(506151626)オーファウデー キネグラム アーゲー (30)
【Fターム(参考)】