説明

封止部材の溶着方法および容器

【課題】製造設備も簡素で、使用する封止部材の自由度が高い筒状フィルムへの封止部材の溶着方法、および、生産性が高く、製造設備も簡素で、使用する封止部材の自由度が高く、機械的な強度も高く、軽くてコンパクトで、筒状フィルムと封止部材との溶着部からの水分侵入や内容品からの液体成分散逸のおそれの小さい容器を提供する。
【解決手段】少なくとも内面が溶着性を有する筒状フィルム2に、筒状フィルム2の一部を収容する溝状の凹み32,42を溶着面31,41に有する封止部材3,4を挿入して筒状フィルム2の溶着個所に配置し、筒状フィルム2の外側から溝状の凹み32,42に対応した凸条のシール部材で筒状フィルム2を凹み32,42に押し付け、凹み32,42で筒状フィルム2を引き延ばして封止部材3,4と気密に溶着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体、粘稠体、粉体、粒状体などの食品や工業薬品の包装材料やリチウムイオン電池、ニッケル水素電池などの2次電池の外装容器に用いることができる封止部材が溶着された容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な食品や工業薬品において封止部材が溶着された容器が採用されている。たとえば、接着剤やシール材の様な流動性のある材料を円筒形のカートリッジやラミネートチューブに充填して絞り出すことは一般的に行われている。
特許文献1には、プラスチックラミネートフィルムで筒状に成形した中間胴部と、この中間胴部の下端内面にインサートインジェクション成形手段により一体的に結合された底部と、この中間胴部の上端外面にインサートインジェクション成形手段により一体的に結合された環状部と、この環状部の上端面に結合された口部を有する上蓋とを有することを特徴とするプラスチック容器が提案されている。
しかし、インサートインジェクションによる成形方法は、高価な射出成形装置が必要であること、中間胴部を金型内にセットするので大型な金型が必要になること、金型の大きさの割には取り数が少なく生産性が低いこと、同一径の容器であっても容量(長さ)が異なる場合には異なる金型が必要になること、などの問題があり、生産性が低い割に、設備の負担が大きく、実用的ではなかった。
【0003】
この点を改良すべく、特許文献2には、軟質フィルムを丸めて筒状部材を製作する工程と、前記筒状部材の第1端部の内側に、軟質フィルムよりも硬質な底板部材を嵌込んで気密状に溶着するとともに、筒状部材の第2端部の内側に、軟質フィルムよりも硬質なリング部材を嵌込んで気密状に溶着する工程と、を備えたことを特徴とする軟質容器の製造方法が提案されている。
そして、(1)予め軟質フィルムを丸めて筒状部材を製作し、後から底板部材やリング部材を嵌込んで溶着する方法と、(2)底板部材と軟質フィルムとリング部材とをマンドレル固定し、底板部材とリング部材の外周面と軟質フィルムとを溶着するとともに、軟質フィルムの長さ方向の両側部同士を溶着する二つの製造方法が記載されている。
しかし、(1)の製造方法は、筒状部材の内径と底板部材やリング部材の外形を精密に制御する必要がある。さもないと溶着時に弛みが生じたり、筒状部材の先端部に底板部材やリング部材を内嵌装着できなかったりする場合がある。この点に配慮した(2)の製造方法は、軟質フィルムの重ね合わせ部分を溶着させるときに、受部材を突出させて軟質フィルムを背後から受け止めるために、マンドレルに対して出没自在な受部材を設ける必要があり、製造設備が複雑なものとなる。
【0004】
また、特許文献3には、筒状フィルムと封止部材の溶着に際し、マンドレルや受部材を使用せずに、封止部材の端部を筒状フィルム内面に当接させるような半径方向の力を封止部材に発生させるように、封止部材に対して封止部材の表面に直交する方向に引張力や押付力を作用させて筒状フィルムと封止部材を溶着する容器の製造方法が提案されている。
しかし、この製造方法は、封止部材がドーム状(凹状や凸状など)の形状でフレキシブルなものに限定されるという問題がある。
【0005】
そして、各種電子機器や電気自動車などに使用されるリチウムイオン二次電池などの電池を収納する外装容器には、金属容器が使用されている。しかし、金属容器は重く、嵩張り、包装工程も複雑で生産性に欠ける。また、電気自動車用のリチウム電池等は、車載する数が多いので、容器は軽くコンパクトであることが望まれている。
この点を改善すべく、図6に示すような、アルミニウム箔などの金属箔と樹脂フィルムを積層した積層体Lからなる平袋や絞り成形した容器Pを用いて薄型軽量化が図られている。ところが、アルミラミネート包材も電池外装容器として用いる場合は、機械的な強度が不足する場合がある。また、ヒートシール部Hからの水分侵入や電解液の揮発の問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−278292号公報
【特許文献2】特開2002−104448号公報
【特許文献3】特表2007−537067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記背景に鑑みてなされたものであり、生産性が高く、製造設備も簡素で、使用する封止部材の自由度が高い筒状フィルムへの封止部材の溶着方法、および、生産性が高く、製造設備も簡素で、使用する封止部材の自由度が高く、機械的な強度も高く、軽くてコンパクトで、筒状フィルムと封止部材との溶着部からの水分侵入や内容品からの液体成分散逸のおそれの小さい容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の発明者は、封止部材を筒状フィルムに確実に高いシール強度で溶着することを検討した結果、筒状フィルムの溶着部に封止部材を配置し、筒状フィルムの外側から溝状の凹みに対応した凸条のシール部材で筒状フィルムを凹みに押し付け、凹みで筒状フィルムを引き延ばし、封止部材に密着させて溶着することが最適であるとの知見を得た。そして、この知見に基づき、筒状フィルムの一部を収容する凹みを溶着面に有する封止部材を用いて、この凹みで筒状フィルムを引き延ばして溶着する着想を得て本発明はなされたのである。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の封止部材の溶着方法を提供する。
(1) 少なくとも内面が溶着性を有する筒状フィルムに、前記筒状フィルムの一部を収容する溝状の凹みを溶着面に有する封止部材を挿入して前記筒状フィルムの溶着個所に配置し、前記筒状フィルムの外側から溝状の前記凹みに対応した凸条のシール部材で筒状フィルムを凹みに押し付け、前記凹みで前記筒状フィルムを引き延ばして前記封止部材と気密に溶着することを特徴とする封止部材の溶着方法。
(2) 前記筒状フィルムと前記封止部材の前記凹み以外の溶着面との間に隙間を存在させて前記封止部材を前記筒状フィルムの溶着個所に配置する(1)の封止部材の溶着方法。
(3) 前記筒状フィルムの一端を密閉し、他端に前記封止部材を、前記凹みの少なくとも一部を残して前記筒状フィルムに溶着し、前記凹みから内容品を充填した後、前記凹みを前記筒状フィルムに気密に溶着して、内容品が収納された包装体を構成する(1)または(2)の封止部材の溶着方法。
(4) 前記凹みで前記筒状フィルムが引き延ばされるときのひずみは、前記筒状フィルムが上降伏応力または0.2%耐力の荷重を受けたときのひずみより小さい(1)ないし(3)のいずれかの封止部材の溶着方法。
【0010】
また、本発明は、以下の容器を提供する。
(5) (1)ないし(4)のいずれかの封止部材の溶着方法により、少なくとも内面が溶着性を有する筒状フィルムの一端または両端に、前記筒状フィルムの一部を収容する凹みを溶着面に有する封止部材を気密に溶着して、前記凹みにより前記封止部材に溶着した前記筒状フィルムに凹部を形成したことを特徴とする容器。
(6) 前記封止部材が周縁に側壁を備え、側壁外面に前記筒状フィルムを溶着した(5)の容器。
(7) 前記筒状フィルムの両端に前記封止部材の凹みを対向させて溶着し、前記封止部材が存在しない前記筒状フィルムの中間部にも凹部を形成して、前記筒状フィルムの凹部を一端から他端まで連続する溝状に形成した(5)または(6)の容器。
(8) 前記筒状フィルムの少なくとも一端の前記封止部材が環状である(5)ないし(7)のいずれかの容器。
(9) 前記筒状フィルムおよび前記封止部材が気体遮断層を含む積層体である(5)ないし(8)のいずれかの容器。
【発明の効果】
【0011】
(1)の溶着方法によれば、特殊な装置を用いなくても、封止部材の凹みの溶着面に沿って、凹みの溝状に対応した凸条のシール部材で筒状フィルムを引き延ばして凹みを含む封止部材の溶着面全周に密着させて溶着することができる。
これにより、筒状フィルムが封止部材に対して弛んでいる場合であっても、弛みを封止部材の凹みで吸収するので、皺を発生させることなく、製造設備も簡素で生産性が高く、使用する封止部材の自由度が高い筒状フィルムへの封止部材の溶着方法が提供される。
【0012】
(2)の溶着方法によれば、筒状フィルムに意図的に弛みを持たせて封止部材を筒状フィルムの溶着個所に配置するので、封止部材の筒状フィルムへの挿入が円滑であり、マンドレルなどの特殊な装置を用いる場合に比べて封止部材の配置が極めて容易である。そして、弛んだ筒状フィルムは、封止部材の凹みの溶着面に凹みの溝状に対応した凸条のシール部材で押し込み、引き延ばすことで、凹みに密着させ、気密に溶着することができる。
これにより、生産性がより高く、製造設備もより簡素な筒状フィルムへの封止部材の溶着方法が提供される。
【0013】
(3)の溶着方法によれば、筒状フィルムの一端を密閉し、他端に封止部材を、封止部材の凹みの少なくとも一部を残して筒状フィルムに溶着し、凹みから内容品を充填した後、凹みを筒状フィルムに気密に溶着して包装体を構成するので、特に充填口を設けなくとも容易に内容品が収納された包装体を形成することができる。
【0014】
(4)の溶着方法によれば、実質的に永久ひずみが発生することなく筒状フィルムを弾性変形させることができるので、延びた筒状フィルムが縮もうとする力で封止部材に確実に筒状フィルムを密着させた状態で溶着することができる。
【0015】
(5)の容器によれば、特殊な装置を用いなくても、封止部材の凹みの溶着面に沿って、凹みの溝状に対応した凸条のシール部材で筒状フィルムを引き延ばして封止部材の凹みに密着させて溶着することで、封止部材に筒状フィルムを密着させて溶着した容器が得られる。
これにより、生産性が高く、製造設備も簡素で、使用する封止部材の自由度が高く、封止部材との溶着部の筒状フィルムに皺や弛みのない容器が得られる。
【0016】
(6)の容器によれば、封止部材の側壁外面と筒状フィルムとを溶着できるので、封止部材が薄く軽量であっても幅の広い溶着面が得られる。
これにより、溶着強度が高く、溶着部からの水分侵入や内容品の水分散逸を抑えることができる。
【0017】
(7)の容器によれば、筒型の容器となるので、自立性が向上し、容器の剛性も高くなる。また、封止部材近傍の筒状フィルムに皺が入らないので、外観も良好となる。
【0018】
(8)の容器によれば、封止部材が環状であるので、この封止部材に充填口や注出口などの各種機能を有する別部材を嵌合や螺合により設けることができる。
これにより、さまざまな用途に適用可能な容器が得られる。
【0019】
(9)の容器によれば、筒状フィルムおよび封止部材が気体遮断層を含むので、水蒸気や酸素などの気体を遮断することができる。特に本発明においては、筒状フィルムが気体遮断層として金属箔を含む伸びにくい積層体であっても、封止部材に筒状フィルムを確実に密着させて溶着した容器が得られる。
これにより、筒状フィルムが金属箔を含む伸びにくい積層体であっても、簡素な製造設備で、高い生産性が得られ、しかも筒状フィルムに皺や弛みのない容器が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の容器の一例を示す斜視図である。
【図2】図1の本発明の容器に蓋が装着される様子を示す説明図である。
【図3】図1の本発明の容器の断面図である。
【図4】本発明の容器の他の一例で、電池外装に適用した一例を示す斜視図である。
【図5】図4の本発明の容器に溶着する封止部材の斜視図である。
【図6】従来の絞り成形した容器を用いた電池外装の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施の形態に基づいて、本発明を詳しく説明する。
図1は、一端に平らな封止部材と他端に環状の封止部材が溶着された本発明の容器において、環状の封止部材に注出入口を装着して蓋とした容器の斜視図である。
図2は、図1に示す容器に蓋としての第1の封止部材が装着される様子を示す説明図である。
図3は、図1に示す容器の断面図である。
図1〜図3において、符号1は本発明の容器、符号2は筒状フィルム、符号21は筒状フィルム2に設けられた凹部、符号3は蓋としての第1の封止部材、符号31は第1の封止部材3の溶着面、符号32は第1の封止部材3に設けられた凹み、符号33は第1の封止部材3に設けられた注出入口、符号4は底部材としての第2の封止部材、符号41は第2の封止部材4の溶着面、符号42は第2の封止部材4に設けられた凹みを示す。
【0022】
本発明の容器に用いる筒状フィルム2は、少なくとも内面に溶着性を有する必要がある。従って、インフレーション法による単層または多層のチューブであってもよいが、ラミネートフィルム等の可撓性基材を筒状に丸めて両端を溶着して筒状に成形されたものであると、様々な機能を付与することができるので好ましい。筒状フィルム2は、強靭であることが好ましく、強度が高いポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂などの二軸延伸フィルムが積層されたラミネートフィルムなどを用いることができる。容器に腰を持たせるために、筒状フィルム2に紙を積層してもよい。二軸延伸フィルムは、強度を上げるために複数積層されてもよい。
【0023】
筒状フィルム2となるラミネートフィルムは、少なくとも片面が溶着性を有することが必要であり、例えば二軸延伸フィルムなどからなる基材層の表面にシーラント層を積層したラミネートフィルムを用いることができる。シーラント層が厚くて十分な強度を有する場合は、シーラント層単体であってもよい。シーラント層を構成する樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などの溶着性を有するポリオレフィンを挙げることができる。
【0024】
筒状フィルム2は、酸素や水蒸気などの気体遮断性を付与するために、ポリ塩化ビニリデン層、エチレン−ビニルアルコール共重合体層や金属箔、金属蒸着層、金属酸化物などのセラミックを蒸着したセラミック蒸着層などの気体遮断層を設けることができる。金属箔や金属蒸着層に用いられる金属としては、例えばアルミニウムを用いることができる。セラミックとしては、アルミナ(酸化アルミニウム)やシリカ(酸化ケイ素)等が例示される。また、加飾のために印刷層や着色層を有していてもよい。
【0025】
特に本発明においては、筒状フィルムが気体遮断層として金属箔を含む伸びにくい積層体であっても、封止部材に筒状フィルムを確実に密着させて溶着した容器が得られる。
筒状フィルム2の厚さは特に制限されず、容器の大きさや剛性に応じて適宜な厚さを選択すればよい。通常は、30μm〜5mm程度が採用される。
これら各種の層の積層に際しては、接着剤を用いるドライラミネート、溶融樹脂を押し出して直接またはアンカー剤層を介して積層する押出ラミネート、押出ラミネートの溶融樹脂層で接着するフィルムサンドラミネートや加熱加圧して圧着する熱ラミネート等を用いることができる。
【0026】
筒状フィルム2となる可撓性基材がシーラント層を片面のみに有する場合は、シーラント層を内側にして両端を重ねて溶着するので、合掌シールとなる。また、可撓性基材がシーラント層を両面に有する場合は、合掌シールとすることもできるが、両端をオーバーラップさせて重なり部分を溶着して封筒貼りシールとすることができる。封筒貼りシールとする場合には、接合部が目立ちにくいので外観がよいが、マンドレル等の中子を受部材として用いる必要がある。また、可撓性基材が金属層を含む場合は、筒状フィルム2の内面や外面に可撓性基材の断面が露出するので、内容品によっては、この断面を樹脂層で覆うなどの端面処理が必要となることがある。
【0027】
筒状フィルム2には、封止部材3および4が挿入され、その周面で筒状フィルム2に溶着されて、容器の蓋や底部材となる。本形態においては、2つの封止部材3および4がそれぞれ筒状フィルム2の両端に溶着されるので、筒型の容器となる。筒型の容器の場合、筒状フィルム2の両端の封止部材3,4の凹み32,42を容器の長手方向(図1の上下方向)に対向させて溶着し、封止部材3,4が存在しない筒状フィルム2の中間部にも凹部21を形成して、筒状フィルム2の凹部21を一端から他端まで連続する溝状に形成してもよい。この様に構成することで、自立性が向上し、容器の剛性も高くなる。また、封止部材近傍の筒状フィルムに皺が入らないので、外観も良好となる。
【0028】
本発明においては、筒状フィルム2の一端を溶着して閉鎖し、他端に封止部材3を溶着した場合、チューブ型の容器となる。また、封止部材3,4は、容器の蓋や底部材として筒状フィルム2の端部に配置されるのみならず、筒状フィルム2の中間に配置されて、仕切り部材や形状保持部材としてもよい。
封止部材3,4は、その周面で筒状フィルム2に溶着される限り、その形状に制限はないが、概略、平面から見たとき(以下、「平面視」という場合がある。)の外周形状が、円形、長円形、楕円形であると筒状フィルム2との溶着が容易となる。そして、封止部材3,4の1つまたは2以上は、環状であってもよく、その場合の内周形状は、円形のみならず、任意の形状とすることができる。
【0029】
封止部材3,4は、その周面の一部を溝状に凹ませて、図1に示す凹み32,42が形成されている。凹み32,42は、筒状フィルム2の外側から溝状の凹み32,42に対応した凸条のシール部材を当接し、筒状フィルム2を凹み32,42に押し付け密着させて溶着するためのものである。
凹み32,42は、封止部材3,4に少なくとも一つ設ければよいが、二つ対向させて設けると、筒状フィルム2の外側から溝状の凹み32,42に対応した凸条のシール部材を当接し、筒状フィルム2を凹み32,42に押し込み溶着する際、二つのシール部材で封止部材3,4を挟むように押圧することができるので好ましい。
凹み32,42の大きさは、特に制限はないが、平面視、封止部材3,4の外周長のうち、凹み32,42の外周長が封止部材3,4の主溶着面31,41より短いことが好ましい。
【0030】
封止部材3,4は、平坦な板状でもよいが、図3に示すように、封止部材の溶着面31,41が周縁に側壁34,44を備えることが好ましい。これにより、側壁34,44の外面に溶着面31,41を設けて筒状フィルム2を溶着することができるので、封止部材が薄く軽量であっても幅の広い溶着面が得られる。幅の広い溶着面31,41と筒状フィルム2とを溶着することで、高い溶着強度が容易に実現できるので、溶着部からの水分侵入や内容品の液状成分散逸を抑えることができる。
また、封止部材3,4は、外側や内側に、注出入口部材などの容器に必要な機能を付与する別部材が突出して設けられていてもよい。さらには、封止部材3,4が環状である場合は、これらの別部材を嵌合や螺合により設けることができる。
封止部材3が環状である場合には、その開口部に別部材を設けることで、容器1の一端を閉鎖する蓋とすることができる。封止部材4が環状である場合には、その開口部に別部材を設けることで、容器1の他端を閉鎖する底部とすることができる。別部材は着脱可能でもよく、この場合は環状の封止部材3,4の開口部を再び開放して、内容物の取り出しや内部の洗浄などに利用することもできる。
図2および図3に、注出入口33を有する注出入口部材331を環状の封止部材3に嵌合して、容器1の一端を閉鎖する蓋とする例を示す。この注出入口部材331は、封止部材3に筒状フィルム2を溶着した後で取り付けることが可能である。これにより、突出した注出入口33が必要な容器1を製造する場合であっても、封止部材3に筒状フィルム2を溶着する際に注出入口33が邪魔にならず、また、注出入口33の形状や寸法を、注出入口部材331を交換するだけで、任意に変更することができる。なお、本形態の注出入口部材331は、封止部材3の凹み32に対応する位置に凹み332を有するが、封止部材3が内方に延出する縁部を有し、注出入口部材331が小さい場合は、注出入口部材331に凹み332がなくてもよい。
両端の封止部材3,4は、一方が蓋で他方が底でもよく、また、これらの区別がなくてもよい。筒状フィルム2の一面が底となり、両端の封止部材3,4が容器1の側面となってもよい。
【0031】
封止部材3,4は、材質に制限はなく、ガラス、金属や木材であってもよいが、その周面で筒状フィルム2に溶着が可能である必要がある。従って、封止部材3,4の少なくとも周面は、筒状フィルム2のシーラント層と溶着が可能な樹脂からなることが好ましく、封止部材3,4は、樹脂で射出成型することが好ましい。封止部材3,4が金属箔、蒸着層を有するフィルムや樹脂層からなる気体遮断層を含む積層体、あるいは加飾のために印刷層や金属層を含む積層体である場合は、これらの機能を付与する層(機能付与層)を射出する樹脂に接着させて成型するインモールド成型法を用いることが好ましい。機能付与層の樹脂と接着する面には、接着層を設けておくことが好ましい。
【0032】
インモールド成型に際して機能付与層の外面となる表面が、機能付与層がフィルムに積層されている場合はフィルムを外面とし、フィルムに積層されていない場合や機能付与層が外面となる場合は、オーバーコート層を積層することが好ましい。オーバーコート層としては、ワニスや樹脂層を用いることができる。オーバーコート層として筒状フィルム2のシーラント層と溶着可能な樹脂層を用いると封止部材の溶着面が周縁に側壁を備える場合に、オーバーコート層を側壁まで延設して筒状フィルム2と溶着できるので好ましい。射出する樹脂が筒状フィルム2のシーラント層と溶着可能である場合、筒状フィルム2と溶着する側壁部分には、オーバーコート層を設けなくてもよい。特にオーバーコート層がワニス等の溶着性に乏しい場合は、筒状フィルム2と溶着する側壁部分には、オーバーコート層を設けないことが好ましい。また、フィルムが外面となる場合にも、筒状フィルム2のシーラント層と溶着しやすくするために側壁部分に筒状フィルム2のシーラント層と溶着可能な樹脂からなるオーバーコート層を設けてもよい。
【0033】
封止部材3,4を筒状フィルム2に挿入する際、筒状フィルム2を引き延ばして行ってもよいが、筒状フィルム2と封止部材3,4の凹み以外の溶着面との間に隙間を存在させて、弛みを持たせて封止部材3,4を筒状フィルム2の溶着個所に配置すると挿入作業が容易となり好ましい。特に、封止部材3,4が筒状フィルム2の中間に配置されて、仕切り部材や形状保持部材となる場合に好適である。また、筒状フィルム2が金属箔や二軸延伸フィルムなどの伸びにくい層を含む場合は、皺や弛みを発生させることなく筒状フィルム2への封止部材3,4の溶着が容易となる。また、筒状フィルム2が金属蒸着層、金属酸化物などのセラミックを蒸着したセラミック蒸着層などの気体遮断層を含む場合は、封止部材3,4より容器の収納部側の筒状フィルム2の蒸着層にクラックが入ることがないので、高い気体遮断性を確保することができる。
【0034】
筒状フィルム2を凹み32,42の周面に溶着するタイミングは、溶着面31,41の全体のうちで最初に凹み32,42の周面を溶着することができる。この溶着部分は、筒状フィルム2に対する封止部材3,4の位置決めとしても機能する。また、引き延ばされた筒状フィルム2の縮もうとする力で筒状フィルム2が凹み32,42以外の封止部材3,4の溶着面31,41(以下、「主溶着面」ということがある。)に密着するので、気密に溶着することが容易となる。
最初に筒状フィルム2を凹み32,42の周面に溶着すると、主溶着面31,41と筒状フィルム2とが未溶着のうちに凹み32,42の周面に筒状フィルム2を押し付けるため、筒状フィルム2の溶着部における全周を引き延ばすことになり、筒状フィルム2に発生するひずみが相対的に小さくなるので、筒状フィルム2が伸びにくい場合や伸ばすと蒸着層にクラックが入る恐れがある場合であっても容易に溶着することができる。
【0035】
また、封止部材3,4の凹み32,42以外の溶着面31,41の主溶着面を先に筒状フィルム2と溶着してから凹み32,42を筒状フィルム2に溶着することもできる。この場合、筒状フィルム2に発生するひずみが大きくなるので、筒状フィルム2が伸びやすい場合に好適である。筒状フィルム2が伸びにくい場合は、凹み32,42を大きくしたり、封止部材3,4の凹み以外の溶着面との間の隙間を小さくしたりする必要がある。そして、この場合、筒状フィルム2の一端を溶着し、あるいは封止部材4を筒状フィルム2と溶着し、溶着部あるいは封止部材4を底として筒状フィルム2の一端を閉鎖し、他端に封止部材3の凹み32の少なくとも一部を残して封止部材3の主溶着面31を先に筒状フィルム2と溶着し、未溶着の封止部材3の凹み32から内容品を充填して、その後に封止部材3の凹み32を筒状フィルム2と溶着し、密封することで、内容品が収納された包装体を構成することができる。
【0036】
また、最初に封止部材3の主溶着面の一部と筒状フィルム2とを溶着して位置決めし、次に凹み32,42の一部、好ましくは凹み32,42の中央付近と筒状フィルム2とを溶着して、最後に未溶着部を溶着することで、封止部材3,4の凹み32,42の境目の筒状フィルム2との溶着を確実なものとすることができる。この場合も、引き延ばされた筒状フィルム2の縮もうとする力で筒状フィルム2が凹み32,42以外の封止部材3,4の未溶着の主溶着面31,41に密着するので、気密に溶着することが容易となる。そして、最初に溶着する封止部材3,4の主溶着面31,41の一部と筒状フィルム2との長さによって、筒状フィルム2に発生するひずみの大きさを調整することができる。
筒状フィルム2が封止部材3,4の凹み32,42を溶着する際に封止部材3,4の主溶着面31,41の周面に沿って変位可能となるためには、主溶着面31,41の一部を先に筒状フィルム2と溶着した場合、その溶着部と凹み32,42との間が主溶着面31,41の周面に沿って未溶着であることが好ましい。このため、最初に位置決めで設ける溶着部としては、主溶着面31,41の周面に沿って凹み32,42から最も離れた位置が例示できる。例えば、封止部材に180°離して2つの凹みを設けた場合は、凹みから90°離れた位置を位置決め溶着し、1つの封止部材の凹みを1つのみ設けた場合は、凹みから180°離れた位置を位置決め溶着することが挙げられる。位置決め溶着をした後で凹みを溶着する際に、位置決め溶着部と凹みとの間の周面長をなるべく均等に配分することで、未溶着の筒状フィルム2を主溶着面31,41に密着させるときのひずみの偏りを抑制することができる。
【0037】
本発明においては、筒状フィルム2の外側から封止部材3,4の溝状の凹み32,42に対応した凸条のシール部材で筒状フィルム2を凹み32,42により応力を加える。このとき、封止部材3,4の凹み32,42の境目となる主溶着面31,41を先に筒状フィルム2と溶着してから凹み32,42を筒状フィルム2に溶着する場合以外は、主溶着面31,41の未溶着部が凹み32,42に通じていることにより、凹み32,42に向けて筒状フィルム2を押し付けたときに引き延ばされた筒状フィルム2の縮もうとする力、即ち、弾性変形における弾性で筒状フィルム2が封止部材3,4の凹み32,42以外の主溶着面31,41に密着する。
この様に弾性変形による密着を発現するためには、筒状フィルム2が凹み32,42で筒状フィルム2が引き延ばされるときの伸び(ひずみ)は、筒状フィルム2が上降伏応力の荷重を受けたときのひずみより小さいことが好ましい。筒状フィルム2が上降伏応力を示さない場合は、凹み32,42で筒状フィルム2が引き延ばされるときの伸び(ひずみ)が、除荷時の永久ひずみが0.2%になる応力(0.2%耐力)の荷重を受けたときのひずみより小さいことが好ましい。これにより、降伏点に到達しない弾性変形可能な範囲で筒状フィルム2にひずみを加えることができ、筒状フィルム2の急激な塑性変形を抑制することができる。
【0038】
以上、本発明を好適な実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
例えば、封止部材3,4の溝状の凹み32,42は、主溶着面との稜線に丸みを持たせた平面視半円形の形状としたが、凹み32,42に対応した凸条のシール部材で筒状フィルム2を凹み32,42により応力を加えて密着させることができれば、U字状やV字状など任意の形状とすることができる。
【実施例】
【0039】
以下、図4および5を参照して、本発明の容器を電池外装に適用した実施例に基づいて、本発明を詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0040】
<筒状フィルム2>
15μmの二軸延伸6ナイロンフィルムの一面に12μmのアルミ箔からなる気体遮断層と60μmの無延伸PPフィルムからなるシーラント層を、ウレタン系接着剤を用いてドライラミネートして可撓性基材を得た。この可撓性基材を60mm×130mmの長方形に切り出した。長方形に切断した可撓性基材のシーラント層を内側にして短辺の両端10mm同士を重ねて溶着し、合掌シール部(図示せず。)を形成して筒状フィルム2を作製した。合掌シール部は、未溶着の筒状フィルム2に重なるように折癖を付けた。
【0041】
<封止部材3,4>
15μmの二軸延伸6ナイロンフィルムの一面に12μmのアルミ箔からなる気体遮断層を、アルミ箔およびナイロンフィルムの上に、それぞれ接着層およびオーバーコート層となる60μmの無延伸PPフィルムを、それぞれウレタン系接着剤を用いてドライラミネートで積層してインサート成型用フィルムを得た。
【0042】
得られたインサート成型用フィルム35,45を30mm×50mmの長方形に二枚切り出し、それぞれ中央に幅0.2mm、長さ25mmのスリットを設けた。このスリットに、電極となる厚さ0.2mmのアルミおよび銅にニッケルをメッキした二枚の幅25mmの金属板の長さ方向中央付近を樹脂で絶縁被覆し、スリットから内外に10mmずつ突出するように挿入して金属板36,46を有するインサート部材を作製した。金属板が気密に貫通可能なスリット37,47を有する、図5に示す封止部材3,4を成型するための金型内に接着層が押出機側となるようにインサート部材を装着して、接金型内にPPを射出して電極付封止部材3,4を作製した。
【0043】
電極付封止部材3,4のPP成型部分38,48は、金属板36,46、凹み32,42や稜線の丸みを無視して直方体として仮定したとき、いずれも縦14mm×横40mm×高さ7mmで、12mm×40mmの主面を底板として開口を有する箱形とし、底板および側壁外周の稜線を半径2mmに丸めて面取りした。底板、側壁および金属板を囲む壁の肉厚は、全て1mmとした。インサート成型用フィルム35,45は、2mmの幅で側壁外面に接着した。電極付の封止部材3,4の溝状の凹み32,42は、直径3mmの半円として対向する幅の短い側壁外面にそれぞれ設け、縁の稜線を半径2mmに丸めて面取りした。未接着のインサート成型用フィルム35,45を除去してトリミングし図5に示す封止部材3,4を作製した。
【0044】
<封止部材3,4の配置>
得られた電極付封止部材3,4のインサート成型用フィルム35,45同士を対向させて、その間に陽極材料や陰極材料などの発電要素を接続し、PP成型部分38,48が外側となるように筒状フィルム2の一端から挿入し、電極付封止部材3,4を筒状フィルム2の両端に配置した。筒状フィルム2のシール部は、電極付封止部材3,4の長い側壁外面中央に位置する様に、かつ電極付封止部材3,4の側壁外面に接着したインサート成型用フィルム35,45が幅1mmで筒状フィルム2と重なる様に配置した。
【0045】
<封止部材3の溶着>
封止部材3のPP成型部分38の長い方の両側壁内面にそれぞれ幅35mmのステンレス板を受け部材として挿入して当接させ、筒状フィルム2の両外側から一対の幅10mmの板状の溶着部材で筒状フィルム2と封止部材3を挟み、加熱加圧して筒状フィルム2と封止部材3の両側壁の平坦部を溶着した。
筒状フィルム2の両外側から封止部材3の溝状の凹み32,32の溶着面に対応した幅10mmの平面視半円弧状の一対の溶着部材で筒状フィルム2と封止部材3の凹み32,32を挟み、溶着部材を凹み32,32に押し込んで、筒状フィルム2に応力を加えて凹み32,32に密着させ、加熱加圧して封止部材3の凹み32,32に溶着した。
筒状フィルム2の両外側から封止部材3のPP成型部分38の短い方の両側壁に凹み32,32の稜線の面取りに対応した平面視数字の3に似た形状の幅10mmの凸条のシール部材で筒状フィルム2と封止部材3を挟み、加熱加圧して筒状フィルム2と封止部材3の両側壁の両端凹凸部を溶着した。
【0046】
<封止部材4の溶着>
封止部材3と同様にして、筒状フィルム2と封止部材4の両側壁の平坦部を溶着し、容器1を作製した。
封止部材4の一方の凹み42と筒状フィルム2との隙間にノズルを挿し込み、容器1に電解液を注入した。
封止部材3と同様にして、筒状フィルム2を封止部材4の凹み42,42に溶着し、図4に示すように容器1を発電要素および電解液が収納された電池包材として適用した。
【符号の説明】
【0047】
1…容器、2…筒状フィルム、3…第1の封止部材、4…第2の封止部材、21…筒状フィルムの凹部、31…第1の封止部材の溶着面、32…第1の封止部材の凹み、33…注出入口、41…第2の封止部材の溶着面、42…第2の封止部材の凹み。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも内面が溶着性を有する筒状フィルムに、前記筒状フィルムの一部を収容する溝状の凹みを溶着面に有する封止部材を挿入して前記筒状フィルムの溶着個所に配置し、前記筒状フィルムの外側から溝状の前記凹みに対応した凸条のシール部材で筒状フィルムを凹みに押し付け、前記凹みで前記筒状フィルムを引き延ばして前記封止部材と気密に溶着することを特徴とする封止部材の溶着方法。
【請求項2】
前記筒状フィルムと前記封止部材の前記凹み以外の溶着面との間に隙間を存在させて前記封止部材を前記筒状フィルムの溶着個所に配置する請求項1に記載の封止部材の溶着方法。
【請求項3】
前記筒状フィルムの一端を密閉し、他端に前記封止部材を、前記凹みの少なくとも一部を残して前記筒状フィルムに溶着し、前記凹みから内容品を充填した後、前記凹みを前記筒状フィルムに気密に溶着して、内容品が収納された包装体を構成する請求項1または2に記載の封止部材の溶着方法。
【請求項4】
前記凹みで前記筒状フィルムが引き延ばされるときのひずみは、前記筒状フィルムが上降伏応力または0.2%耐力の荷重を受けたときのひずみより小さい請求項1ないし3のいずれかに記載の封止部材の溶着方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の封止部材の溶着方法により、少なくとも内面が溶着性を有する筒状フィルムの一端または両端に、前記筒状フィルムの一部を収容する凹みを溶着面に有する封止部材を気密に溶着して、前記凹みにより前記封止部材に溶着した前記筒状フィルムに凹部を形成したことを特徴とする容器。
【請求項6】
前記封止部材が周縁に側壁を備え、側壁外面に前記筒状フィルムを溶着した請求項5に記載の容器。
【請求項7】
前記筒状フィルムの両端に前記封止部材の凹みを対向させて溶着し、前記封止部材が存在しない前記筒状フィルムの中間部にも凹部を形成して、前記筒状フィルムの凹部を一端から他端まで連続する溝状に形成した請求項5または6に記載の容器。
【請求項8】
前記筒状フィルムの少なくとも一端の前記封止部材が環状である請求項5ないし7のいずれかに記載の容器。
【請求項9】
前記筒状フィルムおよび前記封止部材が気体遮断層を含む積層体である請求項5ないし8のいずれかに記載の容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−245763(P2012−245763A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121658(P2011−121658)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000224101)藤森工業株式会社 (292)
【Fターム(参考)】