説明

射出成形方法及び射出成形装置

【課題】厚肉又は棒状の樹脂成形品を寸法精度よく容易に製造可能な射出成形方法及び射出成形装置を提供する。
【解決手段】金型2とコア3との間に形成するキャビティ4に樹脂を射出し、満充填させた後、キャビティの内圧を所定の圧力以上に維持しながら、再度又は複数回、コアを後退させてキャビティを形成して樹脂を射出する。先にキャビティ内に充填された樹脂は金型に接している表面から順次凝固し、同時に、所定圧力下で新規な樹脂が連続的に補充され、凝固時の収縮によるヒケの発生を安定的に抑えることができる。これらの工程は、最終形状を形成するまで行われるため、厚肉等の樹脂成形品の寸法精度が著しく向上する。さらにコアを後退させることで、発泡剤を含有する樹脂内部での発泡を促進させる工程を組み合わせることもできる。また、さらにコアを前進させることで、発泡による過度の膨張を抑止し、製品密度を高める工程を組み合わせることもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚肉又は棒状の樹脂成形品を寸法精度よく容易に製造することができる射出成形方法及び射出成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、厚肉又は棒状の各種工業製品等の製造方法として、切削加工や射出成形等が用いられている。切削加工は、高精度の製品を得られるが、素材か鋳型により成形した上でフライス加工等を行うことから、設備費等の負担が大きく、生産性が悪いなどの問題がある。また、射出成形法による製造は、製品の軽量化や生産性向上という利点から切削加工の代替として利用されうるが、凝固収縮のためヒケが生じ易く、高精度の製品を得ることができないという問題がある。
【0003】
そこで、射出成形技術において、成形品の表面に生じるヒケを防止するため、種々の改良がなされている。例えば、特許文献1では、発泡剤等を含有した樹脂を金型内で冷却固化し、金型の可動部を移動させて溶融状態にある樹脂内部に発泡部を生じさせてヒケを防止する方法(コアバック)を開示している。この方法によれば、突出部のような肉厚偏差を生じさせる箇所を部分的に有する成形品であっても、ヒケの発生を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−288745号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1等に記載の改良技術の適用範囲は狭く、とりわけ厚肉又は棒状の樹脂成形品をこれらの技術で製造した場合には、成形収縮率のばらつきなどの要因により、修正なしで所望の寸法精度の樹脂製品を成形することはできず、成形テスト、型の再加工等の修正を繰り返し行わなければならないというのが現状である。
【0006】
そこで、本発明は、前記従来技術における問題点に鑑みてなされたものであって、厚肉等の樹脂成形品の寸法精度を向上させ、製造が容易な樹脂成形品の射出成形方法及び射出成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明は、金型とコアとの間に一般的な肉厚のキャビティを形成し、該キャビティ内に樹脂を射出して該キャビティ内へ樹脂を満充填し、該キャビティの内圧を所定の圧力以上に維持しながら、該コアを後退させてさらにキャビティを形成して樹脂を射出して成形することを特徴とする。また、上記射出成形方法において、前記2回目以降の射出工程を連続して行うこともできる。
【0008】
本発明によれば、先にキャビティ内に充填された樹脂は金型に接している表面から順次凝固し、同時に、所定圧力下で新規な樹脂が連続的に補充されることから、凝固時の収縮によるヒケの発生を安定的に抑えることができる。また、これらの工程は、最終形状を形成するまで行われるため、厚肉等の樹脂成形品の寸法精度が著しく向上する。
【0009】
具体的には、図1(a)に示す円柱状の設計形状に対し、従来工法では、図1(b)に示すように、プラスチック品は凝固時の収縮率が大きいため、凝固する過程で中央部に向け収縮変形が発生し、厚肉等の成形品については、特に収縮が顕在化して所望の設計形状とすることはできない。これに対し、本発明の工法によれば、図1(c)に示すように、高精度な成形が可能で、設計形状と同じ成型品が得られる。
【0010】
さらに、樹脂が射出されて外周面(金型接触面)が連続的に形成されること、及び、表面樹脂温度より常に内部温度が高く、表面層に強化剤が浮きにくいことから、成形品の表面部に安定した樹脂スキン層が得られ、従来工法における成形と比較して外観(表面粗さ)を改善することができる。
【0011】
前記キャビティの内圧を所定に維持しながら、該キャビティ内に射出した樹脂の圧力に応じて前記コアを予め定めた圧力制御で後退させるように該樹脂を射出して成形することができる。これにより、より寸法精度の高い樹脂成形品を製造することができる。
【0012】
前記最後の射出工程後、さらに前記コアを後退させることで、発泡剤を含有する樹脂内部での発泡を促進させる工程を組み合わせることもできる。これにより、キャビティの内圧が急激に下がることで、樹脂内部に含有される発泡剤が膨張し、ヒケによる収縮を相殺して所望の設計形状が得られる。
【0013】
前記樹脂内部での発泡を促進させた後、前記コアを前進させる工程を組み合わせることもできる。これにより、樹脂が加圧されることで、発泡による過度の膨張が抑止され、製品密度を高めて寸法精度を安定させることが可能となる。
【0014】
上記射出成形方法において、内部が型彫りされた前記金型に沿わせるように前記コアを回転させながら後退させることもできる。これにより、単純な円柱体の樹脂製品だけでなく、複雑な輪郭形状の樹脂成形品の製造が可能となる。
【0015】
また、本発明は、射出成形装置であって、ゲート部を有する金型と、該金型に嵌合するように配設され、該ゲート部に接離可能なコアと、該金型と該コアとの間に形成されるキャビティへ、該ゲート部から樹脂を射出する手段と、該キャビティの内圧を測定する手段と、該コアが該ゲート部から離間する際に、該測定手段によって測定された内圧を所定の値以上に制御する手段を備えることを特徴とする。本発明によれば、上述の発明と同様に、凝固時の収縮によるヒケの発生を安定的に抑えることができると共に、厚肉等の樹脂成形品の寸法精度を著しく向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、厚肉又は棒状の樹脂成形品を寸法精度よく容易に製造することが可能な射出成形方法及び射出成形装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】従来工法と本発明の工法による射出成形品の比較図である。
【図2】本発明にかかる射出成形装置の第1の実施形態を示す概略断面図である。
【図3】本発明にかかる射出成形方法の各工程を示す図である。
【図4】本発明にかかる射出成形方法を示すフローチャートである意味。
【図5】本発明にかかる射出成形方法のサブ工程2を示すフローチャートである。
【図6】本発明にかかる射出成形方法のサブ工程3を示すフローチャートである。
【図7】本発明にかかる射出成形装置の第2の実施形態を示す概略断面図である。
【図8】図7の射出成形装置を用いた射出成形方法を示すフローチャートである。
【図9】本発明にかかる射出成形装置の第3の実施形態を示す概略断面図である。
【図10】図9の射出成形装置を用いた射出成形方法を示すフローチャートである。
【図11】従来の基本的な射出成形方法を説明するためのグラフである。
【図12】本発明において、より寸法精度の高い樹脂成形品を製造する方法を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
図2は、本発明にかかる射出成形装置の第1の実施形態を示し、この射出成形装置1は、ゲート部2aを有する金型2と、金型2に嵌合するように配設され、ゲート部2aに接離する方向に移動可能なコア3と、金型2とコア3との間に形成されるキャビティ4へ、ゲート部2aから樹脂を射出する手段(不図示)と、キャビティ4の内圧を測定するロードセル5と、ロードセル5により測定されたキャビティ4の内圧値が所定の値以上となるようにコア3の移動を制御するシリンダー6等で構成される。
【0020】
次に、上記射出成形装置1を用いた本発明にかかる射出成形方法について、図3及び図4を参照しながら説明する。尚、図3においては、図2に示した金型2とコア3のみを記載し、その他の構成部品の記載を省略している。
【0021】
まず、ステップS1で金型2の型締めを行い、ステップS2でキャビティ4内にコア3をセットする(図3(a)の状態)。コア3のセットが完了したら(ステップS3;Yes)、ゲート部2aからキャビティ4内に樹脂を射出する(ステップS4、図3(b))。ステップS5で、キャビティ4の内圧が設定値以上であるか否かを判断し、設定値以上の場合(ステップS5;Yes)には、ステップS6でコア3の後退を開始する。このとき、キャビティ4内の樹脂は、金型2に接している表面から固化を開始する(図3(c)の状態)。一方、ステップS5においてキャビティ4の内圧が設定値より低い場合(ステップS5;No)には、ステップS4に戻ってゲート部2aからキャビティ4内に樹脂を射出し、以後この動作を繰り返す。
【0022】
ステップS6でコア3を後退させた後、ステップS7で、キャビティ4の内圧が設定値以上であるか否かを判断し、設定値以上の場合(ステップS7;Yes)には、ステップS8でコア3の後退を停止する。一方、ステップS7においてキャビティ4の内圧が設定値より低い場合(ステップS7;No)には、ステップS4に戻ってゲート部2aからキャビティ4内に樹脂を射出し、以後この動作を繰り返す。これにより、キャビティ4内の樹脂は、金型2に接している表面の固化を継続すると共に、ゲート部2aからキャビティ4の内部は溶融状態となり、コア3が後退しながら射出が継続される(図3(d)の状態)。
【0023】
ステップS8でコア3の後退を停止した後、ステップS9で、キャビティ4の内圧が設定値以上であるか否かを判断し、設定値以上の場合(ステップS9;Yes)には、ステップS10でコア3の停止位置であるか否かを判断し、停止位置であれば(ステップS10;Yes)、コア3の移動が停止し、射出が完了する(図3(e)の状態)。その後、ステップS11で必要に応じてサブ工程2に移行する。一方、ステップS9で、キャビティ4の内圧が設定値より低い場合(ステップS9;No)には、ステップS4に戻り、また、ステップS10でコア3の停止位置でない場合(ステップS10;No)にも、ステップS4に戻り、以後この動作を連続して複数回繰り返す。
【0024】
以上により、キャビティ4内に射出された樹脂は、金型2に接している表面から順次凝固し、同時に、所定圧力下で新規な樹脂が連続的に補充されるため、凝固時の収縮によるヒケの発生を安定的に抑えることができ、この状態が最終形状を形成するまで行われるため、寸法精度を著しく向上させた円柱状の樹脂成形品を得ることができる。
【0025】
次に、サブ工程2について、図3及び図5を参照しながら説明する。尚、この工程は、樹脂に発泡剤を含有させた場合に行うことができる。
【0026】
図3(e)の状態から、ステップS21において、コア3を高速で後退させ(図3(f)の状態)、ステップS22でコア3が停止位置にあるか否かを判断する。停止位置にある場合(ステップS22;Yes)には、コア3の後退を停止し、その後、ステップS23で必要に応じてサブ工程3に移行する。一方、ステップS22でコア3が停止位置にない場合(ステップS22;No)には、停止位置に来るまでコア3の後退を継続する。このコア3の高速後退により、キャビティ4内の樹脂の内部で発泡が促進され、樹脂が膨張し、ヒケによる樹脂の収縮を相殺して所望の設計形状を得ることができる。
【0027】
次に、サブ工程3について、図3及び図6を参照しながら説明する。
【0028】
図3(f)の状態から、ステップS31において、コア3を高速で微量前進させ(図3(g)の状態)、ステップS32でコア3が停止位置にあるか否かを判断する。停止位置にある場合(ステップS32;Yes)には、コア3の前進を停止し、処理を終了する。一方、ステップS32でコア3が停止位置にない場合(ステップS32;No)には、停止位置に来るまでコア3の前進を継続する。このコア3の高速微量前進により、キャビティ4の内部の樹脂が加圧され、発泡による過度の膨張が抑止され、製品密度を高めて寸法精度を安定させることができる。
【0029】
尚、上記実施の形態では、円柱状の樹脂成形品を製造する場合を説明したが、金型2の内部に所望の形状を型彫りし、コア3を金型2の内面に沿わせるように回転させながら上記各工程を行うことにより、円柱体の樹脂製品だけでなく、例えば、ねじのような螺旋部を有するような複雑な輪郭形状の樹脂成形品を製造することもできる。
【0030】
次に、本発明にかかる射出成形装置の第2の実施形態について、図7及び図8を参照しながら説明する。
【0031】
この射出成形装置11は、ゲート部12aを有する金型12と、金型12に嵌合するように配設され、ゲート部12aに接離する方向に移動可能なコア13と、金型12とコア13との間に形成されるキャビティ14へ、ゲート部12aから樹脂を射出する手段(不図示)と、キャビティ14の内圧を測定する測定手段(不図示)と、測定手段によって測定されるキャビティ14の内圧が所定の値となるようにサーボ機構によって支持部16を介してコア13の移動を制御するエアシリンダ15と、支持部16に固着された検出部18と、フレーム17に固定された2つのリミットスイッチ19、20等で構成される。
【0032】
次に、上記射出成形装置11を用いた本発明にかかる射出成形方法について、図7及び図8を参照しながら説明する。
【0033】
まず、ステップS41で金型12の型締めを行い、ステップS42でキャビティ14内にコア13をセットし。検出部18によってリミットスイッチ19がONしたら(ステップS43;Yes)、ゲート部12aからキャビティ14内に樹脂を射出する(ステップS44)。ステップS45で、キャビティ14の内圧が設定値以上であるか否かを判断し、設定値以上の場合(ステップS45;Yes)には、ステップS46でコア13の後退を開始する。このとき、キャビティ14内の樹脂は、金型12に接している表面から固化を開始する。一方、ステップS45においてキャビティ14の内圧が設定値より低い場合(ステップS45;No)には、ステップS44に戻ってゲート部12aからキャビティ14内に樹脂を射出し、以後この動作を繰り返す。
【0034】
ステップS46でコア13を後退させた後、ステップS47で、キャビティ14の内圧が設定値以上であるか否かを判断し、設定値以上の場合(ステップS47;Yes)には、ステップS48でコア13の後退を停止する。一方、ステップS47においてキャビティ14の内圧が設定値より低い場合(ステップS47;No)には、ステップS44に戻ってゲート部12aからキャビティ14内に樹脂を射出し、以後この動作を繰り返す。これにより、キャビティ14内の樹脂は、金型12に接している表面の固化を継続すると共に、ゲート部12aからキャビティ14の内部は溶融状態となり、コア13が後退しながら射出が継続される。
【0035】
ステップS48でコア13の後退を停止した後、ステップS49で、キャビティ14の内圧が設定値以上であるか否かを判断し、設定値以上の場合(ステップS49;Yes)には、ステップS50で検出部18によってリミットスイッチ20がONしたか否かを判断し、リミットスイッチ20がONしたら(ステップS50;Yes)、コア13の移動が停止し、射出が完了する。その後、ステップS51で必要に応じて図5に示したサブ工程2に移行する。一方、ステップS49で、キャビティ14の内圧が設定値より低い場合(ステップS49;No)には、ステップS44に戻り、また、ステップS50でリミットスイッチ20がONしていない場合(ステップS50;No)にも、ステップS44に戻り、以後この動作を連続して複数回繰り返す。
【0036】
以上により、キャビティ14内に射出された樹脂は、金型12に接している表面から順次凝固し、同時に、所定圧力下で新規な樹脂が連続的に補充されるため、凝固時の収縮によるヒケの発生を安定的に抑えることができ、この状態が最終形状を形成するまで行われるため、寸法精度を著しく向上させた円柱状の樹脂成形品を得ることができる。
【0037】
次に、本発明にかかる射出成形装置の第3の実施形態について、図9及び図10を参照しながら説明する。
【0038】
この射出成形装置31は、ゲート部32aを有する金型32と、金型32に嵌合するように配設され、ゲート部32aに接離する方向に移動可能なコア33と、金型32とコア33との間に形成されるキャビティ34へ、ゲート部32aから樹脂を射出する手段(不図示)と、キャビティ34の内圧を測定する測定手段(不図示)と、測定手段によって測定されるキャビティ34の内圧が所定の値となるようにサーボ機構によって支持部36を介してコア33の移動を制御するエアシリンダ35と、エアシリンダ35に固定され、エアシリンダ35のピストン35aの接近を検知する2つの近接スイッチ39、40等で構成される。
【0039】
次に、上記射出成形装置31を用いた本発明にかかる射出成形方法について、図9及び図10を参照しながら説明する。
【0040】
まず、ステップS61で金型32の型締めを行い、ステップS62でキャビティ34内にコア33をセットし。エアシリンダ35のピストン35aが近接スイッチ39に接近して近接スイッチ39がONしたら(ステップS63;Yes)、ゲート部32aからキャビティ34内に樹脂を射出する(ステップS64)。ステップS65で、キャビティ34の内圧が設定値以上であるか否かを判断し、設定値以上の場合(ステップS65;Yes)には、ステップS66でコア33の後退を開始する。このとき、キャビティ34内の樹脂は、金型32に接している表面から固化を開始する。一方、ステップS65においてキャビティ34の内圧が設定値より低い場合(ステップS65;No)には、ステップS64に戻ってゲート部32aからキャビティ34内に樹脂を射出し、以後この動作を繰り返す。
【0041】
ステップS66でコア33を後退させた後、ステップS67で、キャビティ34の内圧が設定値以上であるか否かを判断し、設定値以上の場合(ステップS67;Yes)には、ステップS68でコア33の後退を停止する。一方、ステップS67においてキャビティ34の内圧が設定値より低い場合(ステップS67;No)には、ステップS64に戻ってゲート部32aからキャビティ34内に樹脂を射出し、以後この動作を繰り返す。これにより、キャビティ34内の樹脂は、金型32に接している表面の固化を継続すると共に、ゲート部32aからキャビティ34の内部は溶融状態となり、コア33が後退しながら射出が継続される。
【0042】
ステップS68でコア33の後退を停止した後、ステップS69で、キャビティ34の内圧が設定値以上であるか否かを判断し、設定値以上の場合(ステップS69;Yes)には、ステップS70でエアシリンダ35のピストン35aが近接スイッチ39に接近して近接スイッチ40がONしたか否かを判断し、近接スイッチ40がONしたら(ステップS70;Yes)、コア33の移動が停止し、射出が完了する。その後、ステップS71で必要に応じて図5に示したサブ工程2に移行する。一方、ステップS69で、キャビティ34の内圧が設定値より低い場合(ステップS69;No)には、ステップS64に戻り、また、ステップS70で近接スイッチ40がONしていない場合(ステップS70;No)にも、ステップS64に戻り、以後この動作を連続して複数回繰り返す。
【0043】
以上により、キャビティ34内に射出された樹脂は、金型32に接している表面から順次凝固し、同時に、所定圧力下で新規な樹脂が連続的に補充されるため、凝固時の収縮によるヒケの発生を安定的に抑えることができ、この状態が最終形状を形成するまで行われるため、寸法精度を著しく向上させた円柱状の樹脂成形品を得ることができる。
【0044】
尚、上記実施の形態においては、エアシリンダ35によってコア33の移動を制御したが、他に油圧シリンダー・サーボモーター等で制御することもできる。
【0045】
次に、本発明に係る射出成形方法において、より寸法精度の高い樹脂成形品を製造する方法について、従来の射出成形方法と比較しながら説明する。
【0046】
まず、従来の基本的な射出成形方法について、図11を参照しながら説明する。尚、図11は、横軸に射出成形を開始してからの時間経過を、縦軸に射出成形機の成形圧力を示す。
【0047】
従来の方法は以下の通りである。
(1)射出成形機に投入された可塑性合成樹脂を円筒加熱シリンダーで溶かす。
(2)同時に、円筒内に設置したスクリューを回転させて合成樹脂を均一に可塑化させる。
(3)スクリューの回転で前方に集めた溶解した合成樹脂を、スクリューを前方に向け、高圧・高速で射出し、溶解合成樹脂を金型内へ送り込む。
(4)射出(保圧)工程は、大きく次の3段階に分かれる。
(a)一次段階として、射出成形機が有する能力の80〜90%の能力(射出圧力・速度)で射出する。
(b)二次段階として、射出成形機が有する能力の20〜40%の能力で射出する。
(c)三次段階として、射出成形機が有する能力の10〜30%の能力で射出する。
(5)保圧工程中に成形品は冷却され、一定時間経過後、製品と付帯物を取り出す。
【0048】
上記従来の射出成形方法では、製品の品質(寸法精度)の良否は、(4)(a)〜(c)の能力に関する数値や、さらに細分化した多段制御で行うことで左右される。
【0049】
次に、本発明に係る射出成形方法において、より寸法精度の高い樹脂成形品を製造する方法について説明する。
【0050】
まず、上記従来のステップ(1)〜(3)と同様のステップによって、溶解合成樹脂を金型内へ送り込み、その後、
(4)射出・保圧工程を1段階(1つの条件)で行う。すなわち、射出成形機が有する能力(射出圧力・速度)を一定(例えば、能力の90%)に保った状態で、溶解合成樹脂をキャビティ内へ、キャビティの容積が満たされるまで送り込む(図12参照)。この際、キャビティ内に射出した樹脂の圧力によってコアを一定の速度で後退させる。すなわち、キャビティの容積変化速度が一定になるように制御し、キャビティ容積は、射出・保圧工程の開始から終了まで増大方向に変化させる。
【0051】
本発明では、製品の品質(寸法精度)の良否は、キャビティ内の圧力と、キャビティの容積変化速度で制御する。尚、補助的手段として、成形品の内部で発泡させ、より品質を高めることができる。
【0052】
上記キャビティ内の圧力は、2MPa〜5MPaであり、例えば、キャビティの容積変化速度は、キャビティの容積が50ccの場合には、移動距離38mmを0.5秒〜3秒で移動するように設定する。ここで、キャビティ内の圧力とキャビティの容積変化速度とは、相関関係があり、これらの関係は、キャビティの容積によっても異なる。
【0053】
上記キャビティ内の圧力は、発泡現象を制御する目的で制御するが、発泡剤の特性によりキャビティ内の圧力が変化するため、使用する発泡剤の種類に合わせて圧力の設定値を変更する必要がある。
【符号の説明】
【0054】
1 射出成形装置
2 金型
2a ゲート部
3 コア
4 キャビティ
5 ロードセル
6 シリンダー
11 射出成形装置
12 金型
12a ゲート部
13 コア
14 キャビティ
15 エアシリンダ
16 支持部
17 フレーム
18 検出部
19、20 リミットスイッチ
31 射出成形装置
32 金型
32a ゲート部
33 コア
34 キャビティ
35 エアシリンダ
35a ピストン
36 支持部
39、40 近接スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型とコアとの間にキャビティを形成し、
該キャビティ内に樹脂を射出して該キャビティ内へ樹脂を満充填し、
該キャビティの内圧を所定の圧力以上に維持しながら、該コアを後退させて再度キャビティを形成して樹脂を射出して成形することを特徴とする射出成形方法。
【請求項2】
前記2回目以降の射出工程を連続して行うことを特徴とする請求項1に記載の射出成形方法。
【請求項3】
前記キャビティの内圧を所定に維持しながら、該キャビティ内に射出した樹脂の圧力に応じて前記コアを予め定めた圧力制御で後退させるように該樹脂を射出して成形することを特徴とする請求項1又は2に記載の射出成形方法。
【請求項4】
前記最後の射出工程後、さらに前記コアを後退させることで、発泡剤を含有する樹脂内部での発泡を促進させることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の射出成形方法。
【請求項5】
前記樹脂内部での発泡を促進させた後、前記コアを前進させることを特徴とする請求項4に記載の射出成形方法。
【請求項6】
内部が型彫りされた前記金型に沿わせるように前記コアを回転させながら後退させることを特徴とする請求項1乃至5に記載の射出成形方法。
【請求項7】
ゲート部を有する金型と、
該金型に嵌合するように配設され、該ゲート部に接離可能なコアと、
該金型と該コアとの間に形成されるキャビティへ、該ゲート部から樹脂を射出する手段と、
該キャビティの内圧を測定する手段と、
該コアが該ゲート部から離間する際に、該測定手段によって測定された内圧を所定の値以上に制御する手段を備えることを特徴とする射出成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−49268(P2013−49268A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−171828(P2012−171828)
【出願日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【出願人】(000151346)株式会社タツノ (167)
【Fターム(参考)】