説明

射出成形機

【課題】射出成形機の納入後の初期運転においても計量動作を円滑に行うことを可能とし、また、所定期間の初期運転以降の成形運転においては、スクリュを高速回転させても円滑な計量動作を保証することができるようにすること。
【解決手段】加熱シリンダ内に回転並びに前後進可能に配設されたスクリュを有するインラインスクリュ式の射出成形機において、射出成形機の納入先で始めて成形運転が行われる際には、成形運転の開始から所定の期間が経過するまでの間は、計量工程におけるスクリュ回転速度を低く規制して成形運転を実行させる、スクリュ回転速度規制運転モードによって成形運転を実行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インラインスクリュ式の射出成形機に係り、特に、射出成形機の納入先で始めて成形運転が行われる際に生じ易い、計量動作不安定に起因する不都合を排除するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
インラインスクリュ式の射出成形機は、出荷前には精緻な位置合わせ調整を行い、また、樹脂を投入して行う試験運転によって射出成形機の性能確認および成形動作の正常動作確認を行った上で、射出成形機を使用する納入先に納品される。
【0003】
ところが、射出成形機の納入先で始めて成形運転が行われる際に、計量工程でスクリュをいきなり高速回転させると、計量動作が円滑に行われないケースが生じることがままあり、このことはスクリュ径が大きいほど(スクリュおよび加熱シリンダの全長が長く、加熱シリンダの径が大きいほど)、生じ易い傾向にある。射出成形機の納入直後から、成形サイクル短縮のために、計量工程のスクリュ回転速度を高速に設定することはしばしば行われるが、このようにした場合には、用いる原料樹脂の種別やスクリュ径の如何などの条件にもよるが、計量動作不安定が数時間、場合によっては1日程度継続することがあり、この計量動作不安定の期間の成形品はほぼ不良品となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、射出成形機の納入直後から、計量工程のスクリュ回転速度を高速に設定して連続成形運転を行うと、計量動作が円滑に行われず、時間の経過とともに計量時間が徐々に短くなっていく傾向を示す。計量動作が円滑に行われないと、すなわち、スクリュ回転の移送作用に基づくノズル方向に向かうスクリュ山間における樹脂の推進流と、スクリュ前部と後部の圧力差によって発生する反ノズル方向に逆流するスクリュ山間における樹脂の背圧流と、推進流と背圧流の混合作用により生じるスクリュ山に略直角な面における樹脂の横の流れと、スクリュ山を超えて後ろにリークする樹脂の漏れの流れとが、それぞれ所期の挙動を示さないと、望まれぬ樹脂の滞留などが生じて、樹脂の温度が上昇し過ぎたり、樹脂密度の分布が不均一になったりするため、成形品の品質は不良となる。
【0005】
このような納入先での初期運転時における高速回転によって、計量不安定となる要因は定かではないが、加熱シリンダの内周面と樹脂が望ましい状態になじんでいないことが、1つの要因ではないかと推察される。つまり、インラインスクリュ式の射出成形機では、スクリュ外周面の面粗度(表面粗さ)はごく微細に仕上げられているのに対し(鏡面に仕上げられているのに対し)、加熱シリンダはその内周面に沿って樹脂を円滑に移送するために(すなわち、樹脂とある程度の摺動抵抗をもたせるようにするために)、加熱シリンダ側の内周面の面粗度は、スクリュ外周面よりも粗く仕上げられている。ところが、このように加熱シリンダの内周面の面粗度をスクリュ外周面よりも粗くしているにもかかわらず、製造から間がたっていない状態では、加熱シリンダの内周面の微小な凹凸(金属の微細な凹凸)が剥き出しのままで、このような状態では、スクリュを高速回転させると、樹脂と加熱シリンダの内周面とが十分な摩擦挙動を発現できないのではないかと(加熱シリンダの内周面の状態が樹脂との良好な摺動抵抗を発現する状態に遷移していないのではないかと)、推察される。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、射出成形機の納入後の初期運転においても計量動作を円滑に行うことを可能とし、また、所定期間の初期運転以降の成形運転においては、スクリュを高速回転させても円滑な計量動作を保証することができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記した目的を達成するため、加熱シリンダ内に回転並びに前後進可能に配設されたスクリュを有するインラインスクリュ式の射出成形機において、射出成形機の納入先で始めて成形運転が行われる際には、成形運転の開始から所定の期間が経過するまでの間は、計量工程におけるスクリュ回転速度を低く規制して成形運転を実行させる、スクリュ回転速度規制運転モードによって成形運転を実行させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、射出成形機の納入先で始めて成形運転が行われる際には、成形運転の開始から所定の期間が経過するまでの間は、計量工程におけるスクリュ回転速度を低く規制して成形運転を実行させる、スクリュ回転速度規制運転モードによって成形運転を実行させるようにしている。このようなスクリュ回転速度規制運転モードにより、スクリュ回転速度を低く規制して計量動作を実行させると、製造から間がたっておらず加熱シリンダの内周面の金属の微小な凹凸が剥き出しの状態であっても、スクリュの回転速度が低速であるので、加熱シリンダの内周面と樹脂は、円滑な計量動作を保証するに足るに十分な摩擦挙動を発現し、良品の成形品を成形できる正常な計量動作を行うことができる。つまり、スクリュ回転速度規制運転モードによる成形運転では、スクリュを高速回転できないので計量工程期間の短縮を図ることができないものの、成形品の品質は確保することができる。そして、スクリュ回転速度規制運転モードによる成形運転を所定期間行うことで、加熱シリンダの内周面の金属の微小な凹凸に樹脂薄膜が被着した状態となり、このような状態となると(特に、スクリュのコンプレッションゾーン(圧縮領域)に対応する加熱シリンダの内周面における金属の微小な凹凸に樹脂薄膜が被着した状態となると)、これ以後は、スクリュを高速回転させても円滑な計量動作を継続的に保証することが可能になることが、実験的に確認されている。このようになる所以は定かではないが、加熱シリンダの内周面の微小な凹凸に樹脂薄膜が被着すると、加熱シリンダの内周面の状態が計量に好適な面粗度に改善されて安定するのではないかと考えられることや、加熱シリンダの内周面に被着した樹脂薄膜が原料樹脂と良好な摺動抵抗を発現するのではないかと考えられることが、上記したような改善要因になっているのではないかとも推察される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。
図1および図2は、本発明の一実施形態(以下、本実施形態と記す)によるインラインスクリュ式の射出成形機に係り、図1は、本実施形態の射出成形機における射出系メカニズムの要部の構成を示す要部断正面図である。
【0010】
図1において、1はヘッドストック(加熱シリンダ保持ブロック)、2は、ヘッドストック1と所定距離をおいて対向配置された支持盤、3は、その両端をヘッドストック1と支持盤2に固定されて、ヘッドストック1と支持盤2とを連結した複数本の連結・ガイドバー、4は、連結・ガイドバー3に挿通・案内されて、ヘッドストック1と支持盤2との間を前後進可能な直動ブロック、5は、その基端部をヘッドストック1に固定された加熱シリンダ、6は、加熱シリンダ5の先端に取り付けられたノズル、7は、加熱シリンダ5の外周に巻装されたバンドヒータ、8は、加熱シリンダ5内に回転並びに前後進可能であるように配設されたスクリュ、9は、スクリュ8の基端部を固定・保持すると共に、直動ブロック4に軸受を介して回転可能に保持された回転体、10は、回転体9に固定された被動プーリ、11は、直動ブロック4に搭載された計量用サーボモータ、12は、計量用サーボモータ11の出力軸に固定され、計量用サーボモータ11の回転を図示せぬタイミングベルトを介して被動プーリ10に伝える駆動プーリである。
【0011】
また、13は、支持盤2に搭載された射出用サーボモータ、14は、射出用サーボモータ13の出力軸に固定された駆動プーリ、15は、射出用サーボモータ13の回転を直線運動に変換するボールネジ機構、16は、支持盤2に軸受を介して回転可能に保持されたボールネジ機構15のネジ軸(ボールネジ機構15の回転部)、17は、ネジ軸16に螺合されて、ネジ軸16の回転でネジ軸16に沿って直線移動するボールネジ機構15のナット体(ボールネジ機構15の直動部)、18は、直動ブロック4に固定されると共に、ナット体17の端部を固定・保持したロードセルユニット、19は、ネジ軸16の端部に固定されて、射出用サーボモータ13の回転を駆動プーリ14および図示せぬタイミングベルトを介して伝えられる被動プーリである。
【0012】
なお、1aは、図示せぬホッパーの下部開口と連通するヘッドストック1の原料供給穴、5aは、原料供給穴1aと連通する加熱シリンダ5の原料供給穴である。また、25aは、後記するシステムコントローラ21からの指令に基づき、計量用サーボモータ11を駆動制御するモータドライバ、25bは、後記するシステムコントローラ21からの指令に基づき、射出用サーボモータ13を駆動制御するモータドライバである。
【0013】
図1に示す構成において、計量工程時には、後記するシステムコントローラ21からの指令に基づきモータドライバ25aによって、計量用サーボモータ11が所定方向に回転駆動され、これにより、駆動プーリ12、図示せぬタイミングベルト、被動プーリ10、回転体9を介して、スクリュ8が所定方向に回転駆動される。このスクリュ8の回転によって、図示せぬホッパーから原料供給穴1a、5aを通じて加熱シリンダ5の内部後端側に供給された原料樹脂が、混練・可塑化されつつ、スクリュ8のネジ送り作用によって前方に移送され、スクリュ8の前方側に溶融樹脂が貯えられる。スクリュ8の前方側に溶融樹脂が送り込まれるにつれてスクリュ8は後退するが、この際、後記するシステムコントローラ21からの指令に基づきモータドライバ25bによって、射出用サーボモータ13が圧力フィードバック制御で駆動制御されることにより、後記するような駆動伝達経路でスクリュ8が直線移動位置を制御されることで、スクリュ8には所定の背圧が付与される。そして、スクリュ8の先端側に1ショット分の溶融樹脂が貯えられた時点で、計量用サーボモータ11によるスクリュ8の回転駆動は停止される。
【0014】
一方、射出工程時には、計量が完了した後の適宜タイミングにおいて、後記するシステムコントローラ21からの指令に基づきモータドライバ25bによって、射出用サーボモータ13が速度フィードバック制御で駆動制御され、これにより、射出用サーボモータ13の回転が駆動プーリ14、図示せぬタイミングベルト、被動プーリ19を介してボールネジ機構15に伝えられ、ボールネジ機構15により回転運動が直線運動に変換されて、直線運動がロードセルユニット18、直動ブロック4、回転体9を介してスクリュ8に伝達されることで、スクリュ8が急速に前進駆動されて、スクリュ8の先端側に貯えられた溶融樹脂が型締め状態にある図示せぬ金型のキャビティ内に射出充填され、1次射出工程が実行される。1次射出工程に引き続く保圧工程では、後記するシステムコントローラ21からの指令に基づきモータドライバ25bによって、射出用サーボモータ13が圧力フィードバック制御で駆動制御され、これにより、設定された保圧力がスクリュ8から図示せぬ金型内の樹脂に付加される。
【0015】
本実施形態の射出成形機に備えられた後記するシステムコントローラ21には、射出成形機の納入先で初期成形運転が行われるときに自動的に発動して、成形運転の開始から所定の期間が経過すると自動的に発動が消滅する、スクリュ回転速度規制運転モードが設けられている。このスクリュ回転速度規制運転モードが発動している際には、計量工程のスクリュ回転速度の設定値は、スクリュ径毎にあらかじめ定められた上限規制値を超えた値に設定することが禁止されていて、スクリュ回転速度規制運転モードが発動している際に後記する表示装置23に表示される計量工程の運転条件設定画像においては、スクリュ回転速度は上限規制値以下の値のみが(すなわち、低速のスクリュ回転速度のみが)設定可能となっている。すなわち、スクリュ回転速度規制運転モードが発動している際に後記する表示装置23に表示される計量工程の運転条件設定画像では、例えば、射出成形機が現在スクリュ回転速度規制運転モードをとっている旨と、スクリュ回転速度の上限規制値とが表示されるようになっていて、これにより、射出成形機のオペレータ(作業者)が上限規制値の値を認識することで、計量工程のスクリュ回転速度を上限規制値以下の値に設定するようになっている。そして、スクリュ回転速度規制運転モードの発動が消滅すると、この旨を音声出力や表示によってオペレータに知らしめると共に、射出成形機の運転を一旦停止させ、これによって、オペレータが計量工程の運転条件設定画像を呼び出して、この計量工程の運転条件設定画像において、所望の値(通常は上限規制値を超えた値)のスクリュ回転速度を、これ以後実行される通常運転モードの計量工程のスクリュ回転速度として設定するようになっている。
【0016】
なお、スクリュ回転速度規制運転モードが発動している際に、後記する表示装置23に表示される計量工程の運転条件設定画像において、オペレータが計量工程のスクリュ回転速度として上限規制値を超える値(高速のスクリュ回転速度)を入力可能として、この上限規制値を超える値は、後記するシステムコントローラ21が、スクリュ回転速度規制運転モードの発動が消滅した後に用いる通常運転モードの計量工程のスクリュ回転速度として保持しておき、スクリュ回転速度規制運転モードをとっているときには、後記するシステムコントローラ21が、上限規制値を計量工程のスクリュ回転速度として自動的に設定するようにしてもよい。このようにすると、スクリュ回転速度規制運転モードの発動が消滅した後、成形運転を停止させることなく、先に保持しておいた上限規制値を超える値のスクリュ回転速度を、通常運転モードの計量工程のスクリュ回転速度として自動的に設定して、成形運転を途切れることなく継続実行させることが可能となる。
【0017】
上記したスクリュ回転速度規制運転モードでの計量動作は、すなわち、低速のスクリュ回転速度での計量動作は、加熱シリンダ5の内周面を樹脂になじませるための、いわば、なじませ運転動作と呼称されてもよいものであり、スクリュ回転速度規制運転モードでの計量工程のスクリュ回転速度の上記した上限規制値は、先にも述べたようにスクリュ径毎(すなわち射出成形機の種別毎)にあらかじめ定められている。本実施形態では、スクリュ径(スクリュ8の直径)に応じて定められたスクリュ回転速度の上限規制値は、スクリュ径が16mmの場合は275rpmに、スクリュ径が18mmの場合は250rpmに、スクリュ径が20mmの場合は225rpmに、スクリュ径が24mmの場合は175rpmに、スクリュ径が28mmの場合は150rpmに、スクリュ径が32mmの場合は125rpmに、スクリュ径が36mmの場合は125rpmに、スクリュ径が40mmの場合は100rpmに、スクリュ径が46mmの場合は100rpmに、スクリュ径が50mmの場合は75rpmに、スクリュ径が55mmの場合は75rpmに、スクリュ径が60mmの場合は75rpmに、スクリュ径が68mmの場合は50rpmに、スクリュ径が75mmの場合は50rpmに、スクリュ径が83mmの場合は50rpmに、スクリュ径が90mmの場合は50rpmに、スクリュ径が100mmの場合は40rpmに、スクリュ径が110mmの場合は40rpmに、それぞれ定められている。なお、上記の各スクリュ回転速度の上限規制値は、スクリュ周速に換算すると、何れ場合もスクリュ周速15m/min以下の値である。
【0018】
図2は、本実施形態の射出成形機の制御系の構成を簡略化して示すブロック図である。図2において、21は、射出成形機全体の制御を司るシステムコントローラ、22は、オペレータが各種の入力操作を行うための入力装置、23は、オペレータに各種の表示モードの画像を表示するための表示装置、24は、射出成形機の各部に配設された多数のセンサ(位置センサ、速度センサ、圧力センサ、回転量検出センサ、温度センサ、状態確認センサなど)よりなるセンサ群、25は、射出成形機の各部に配置されたモータやヒータやエアシリンダなどのアクチュエータを駆動制御するための多数のドライバ(モータドライバ、ヒータドライバ、エアバルブドライバなど)からなるドライバ群であり、ドライバ群25には、計量用サーボモータ11を駆動制御するためのモータドライバ25a、射出用サーボモータ13を駆動制御するためのモータドライバ25bが含まれている。
【0019】
また、システムコントローラ21内において、31は主制御部、32は運転条件設定格納部、33は測定値格納部、34は運転プロセス制御部、35は表示処理部、36はスクリュ回転速度規制運転モード制御部である。
【0020】
主制御部31は、センサ群24からの情報、システムコントローラ21内の各部の動作状況などを監視・把握して、システムコントローラ21内の各部を統括制御する。
【0021】
運転条件設定格納部32には、入力設定された成形サイクルの各工程(型閉じ(型締め)、射出、冷却、計量、型開き、エジェクト前進、エジェクト後退の各工程)の運転制御条件が書き換え可能に格納されている。この運転条件設定格納部32に設定される計量工程のスクリュ回転速度は、射出成形機が先に述べたスクリュ回転速度規制運転モードをとっている際には、オペレータが入力設定した上限規制値以下の値、または、主制御部31が自動的に設定した上限規制値となっている。また、運転条件設定格納部32に設定される計量工程のスクリュ回転速度は、スクリュ回転速度規制運転モードが完了して射出成形機の運転モードが通常の運転モードとなった際には、スクリュ回転速度規制運転モードが完了した時点でオペレータが入力設定したスクリュ回転速度、または、通常の運転モード用のスクリュ回転速度の設定値としてオペレータがスクリュ回転速度規制運転モード時に先に入力しておき、主制御部31が保持していたスクリュ回転速度となっている。
【0022】
測定値格納部33には、センサ群24などにより射出成形機の各部の計測情報(位置情報、速度情報、圧力情報、回転角情報、回転速度情報、温度情報、状態確認情報など)がリアルタイムで取り込まれて格納される。また、射出成形機がスクリュ回転速度規制運転モードをとっているときは、測定値格納部33には、射出成形機の納入先で始めて成形運転が行われる際の成形運転の開始からの累積成形サイクル数(累積ショット数)と、射出成形機の納入先で始めて成形運転が行われる際の成形運転の開始からのスクリュ累積回転数(累積したスクリュ総回転数)と、射出成形機の納入先で始めて成形運転が行われる際の成形運転の開始からの累積計量時間(累積した計量工程時間の総時間)とが格納されるようになっている。これらの累積成形サイクル数、スクリュ累積回転数、累積計量時間は、主制御部31において監視されるようになっている。
【0023】
運転プロセス制御部34は、あらかじめ用意された各工程の運転制御プログラムと、運転条件設定格納部32に格納された各工程の運転条件の設定値とに基づき、測定値格納部33中の計測情報や各部からの状態確認情報や自身の計時情報を参照しつつ、ドライバ群25を駆動制御して、各工程の運転を実行させる。
【0024】
表示処理部35は、あらかじめ用意された各種の表示処理プログラムと、表示用固定データに基づき、必要に応じて、運転条件設定格納部32や測定値格納部33などの内容を参照して、各種の表示モードの画像を生成し、これを表示装置23に表示させる。
【0025】
スクリュ回転速度規制運転モード制御部36は、射出成形機の納入先で始めて成形運転が行われるときに、スクリュ回転速度規制運転モードを強制的に一度だけ発動させ、成形運転の開始から所定の期間が経過すると、スクリュ回転速度規制運転モードの発動を自動的に消滅(完了)させる制御を行う。スクリュ回転速度規制運転モード制御部36にこのような制御を行わせるため、本実施形態では、射出成形機の納入後に、納入先において射出成形機メーカー側のサービスマンが特定の操作を行うようになっており、この特定操作により、スクリュ回転速度規制運転モード制御部36が一度だけスクリュ回転速度規制運転モードを発動させ、スクリュ回転速度規制運転モードでの計量工程のスクリュ回転速度の設定値を、上限規制値以下の低速値に規制するようになっている。
【0026】
なお、本実施形態では、スクリュ回転速度規制運転モード制御部36がスクリュ回転速度規制運転モードを発動させてから、少なくとも累積成形サイクル数が所定サイクル数(例えば1千サイクル)に達するか、または、少なくともスクリュ累積回転数が所定回転数(例えば3万回転)に達するか、または、少なくとも累積計量時間が所定時間(例えば5千秒)に達すると、主制御部31からの指令で、スクリュ回転速度規制運転モード制御部36はスクリュ回転速度規制運転モードの発動を消滅(完了)させるようになっている。
【0027】
上述したように本実施形態では、射出成形機の納入先で始めて成形運転が行われる際には、成形運転の開始から所定の期間が経過するまでの間は、計量工程におけるスクリュ回転速度を低く規制して成形運転を実行させる、スクリュ回転速度規制運転モードによって成形運転を実行させるようにしている。このスクリュ回転速度規制運転モードではスクリュ回転速度を低く規制して計量動作を実行させるので、製造から間がたっておらず加熱シリンダ5の内周面の金属の微小な凹凸が剥き出しの状態であっても、スクリュ8の回転速度が低速であるので、加熱シリンダ5の内周面と樹脂は、円滑な計量動作を保証するに足るに十分な摩擦挙動を発現し、良品の成形品を成形できる正常な計量動作を行うことができる。したがって、スクリュ回転速度規制運転モードによる成形運転では、スクリュ8を高速回転できないので計量工程期間の短縮を図ることができないものの、成形品の品質は確保することができる。そして、スクリュ回転速度規制運転モードによる成形運転を所定期間だけ実行することで、加熱シリンダ5の内周面の金属の微小な凹凸に樹脂薄膜が被着した状態となり、このような状態となると(特に、スクリュ8のコンプレッションゾーン(圧縮領域)に対応する加熱シリンダ5の内周面における金属の微小な凹凸に樹脂薄膜が被着した状態となると)、これ以後は、スクリュ8を高速回転させても円滑な計量動作を継続的に保証することが可能になることが、実験的に確認された。このようになる所以は定かではないが、加熱シリンダ5の内周面の微小な凹凸に樹脂薄膜が被着すると、加熱シリンダ5の内周面の状態が計量に好適な面粗度に改善されて安定するのではないかと考えられることや、加熱シリンダ5の内周面に被着した樹脂薄膜が原料樹脂と良好な摺動抵抗を発現するのではないかと考えられることが、上記したような改善要因になっているのではないかと推察される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態に係る射出成形機における、射出系メカニズムの要部の構成を示す要部断正面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る射出成形機における、制御系の構成を簡略化して示すブロック図である。
【符号の説明】
【0029】
1 ヘッドストック
1a 樹脂供給穴
2 支持盤
3 連結・ガイドバー
4 直動ブロック
5 加熱シリンダ
5a 樹脂供給穴
6 ノズル
7 バンドヒータ
8 スクリュ
9 回転体
10 被動プーリ
11 計量用サーボモータ
12 駆動プーリ
13 射出用サーボモータ
14 駆動プーリ
15 ボールネジ機構
16 ネジ軸
17 ナット体
18 ロードセルユニット
19 被動プーリ
21 システムコントローラ
22 入力装置
23 表示装置
24 センサ群
25 ドライバ群
25a モータドライバ
25b モータドライバ
31 主制御部
32 運転条件設定格納部
33 測定値格納部
34 運転プロセス制御部
35 表示処理部
36 スクリュ回転速度規制運転モード制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱シリンダ内に回転並びに前後進可能に配設されたスクリュを有するインラインスクリュ式の射出成形機において、
射出成形機の納入先で始めて成形運転が行われる際には、成形運転の開始から所定の期間が経過するまでの間は、計量工程におけるスクリュ回転速度を低く規制して成形運転を実行させる、スクリュ回転速度規制運転モードによって成形運転を実行させるコントローラを備えたことを特徴とする射出成形機。
【請求項2】
請求項1に記載の射出成形機において、
前記コントローラは、前記スクリュ回転速度規制運転モードによる成形運転を、少なくとも累積成形サイクル数が所定サイクル数に達するか、または、少なくともスクリュの累積回転数が所定回転数に達するか、または、少なくとも累積計量時間が所定時間に達するまで、実行させることを特徴とする射出成形機。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−166464(P2009−166464A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−10507(P2008−10507)
【出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【出願人】(000222587)東洋機械金属株式会社 (299)
【Fターム(参考)】