説明

射出成形用樹脂組成物

【課題】成形品とした際に低温での衝撃強度に優れ、フローマークも発生しない射出成形用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリプロピレン系樹脂(I)70〜90重量部に対して、160℃で測定した溶融張力が50〜300mNであるエチレン−α−オレフィン共重合体(II)5〜25重量部、高圧ラジカル重合で製造された低密度ポリエチレン(III)5〜25重量部(ただし、(I)+(II)+(III)=100重量部)を含んでなることを特徴とする射出成形用樹脂組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形品とした際の低温での衝撃強度に優れ、フローマークの発生しない射出成形用樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン系樹脂は、剛性、硬度および耐熱性などに優れており、射出成形法によって容易に所望形状にすることができ、しかも安価であるので広範な用途、例えば家電製品のハウジング、フィルム、容器、自動車内装、フェンダー、バンパー、サイドモール、マッドガード、ミラーカバーなどの自動車外装、一般雑貨などに広く利用されている。
【0003】
またこのような種々用途に応じて、ポリプロピレン系樹脂にポリエチレンあるいはゴム成分たとえばポリイソブチレン、ポリブタジエン、非晶性あるいは低結晶性エチレン・プロピレン共重合体(EPR)などを配合し、耐衝撃性を改善したポリプロピレン組成物も知られている。またゴム成分の配合により低下する剛性を補うために、ポリプロピレンに、ゴム成分とともにタルクなどの無機充填材を添加したポリプロピレン組成物も知られている。(例えば特許文献1参照。)
そして、このようなポリプロピレン系樹脂あるいはポリプロピレン組成物を射出成形する際には、樹脂を溶融状態で射出するので、得られる射出成形品には通常、溶融樹脂の流れ方向にしたがってフローマークが発生している。射出成形品たとえば自動車内外装部品などにおいて、このフローマークが目立つと、外観が劣るのでその商品価値が低下してしまうという課題があった。
【0004】
また、近年、自動車の燃費向上、家電製品のユニバーサルデザイン化のための軽量化を目的として、ポリプロピレン系樹脂製品の発泡成形による軽量化の要求が強まってきている。
【0005】
また、ポリプロピレン系樹脂の射出成形品の衝撃強度を改良するため、エチレンとのプロピレンのブロック共重合体を用いること、またポリプロピレン系樹脂にポリエチレンやエチレン−プロピレンゴムを配合することが知られている。ポリプロピレン系樹脂にポリエチレンを配合した組成物、ポリプロピレン系樹脂にポリエチレンおよびエチレン−プロピレンゴムを配合した組成物は、ポリプロピレン系樹脂の衝撃強度を改良し、さらに衝撃白化、折り曲げ白化を改良するため広く使われている。
【0006】
しかし、射出成形品においてはポリプロピレン系樹脂とポリエチレンの流動性の違い、結晶化温度の違いにより成形品表面に樹脂の流れ模様であるフローマークが発生し成形品外観がはなはだしく阻害されているのが現状である。特に、軽量化を目的とした射出発泡成形を実施した場合は、さらにフローマークが目立つことが問題となっている。
【0007】
そして、その外観改良対策として造粒時の混練強化が行われているが目立った改善はなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−124520号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は従来使用されていた樹脂組成物の欠点である射出成形品の外観を改良した樹脂組成物を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリプロピレン系樹脂に、高溶融張力を有するエチレン−α−オレフィン共重合体と高圧ラジカル重合法で製造された低密度ポリエチレンを配合した樹脂組成物が、成形品とした際に低温での衝撃強度に優れ、フローマークも発生しない射出成形用樹脂組成物となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、ASTM D−1238により測定温度230℃で測定したMFRが30g/10分以上150g/10分未満であるポリプロピレン系樹脂(I)70〜90重量部、160℃で測定した溶融張力が50mNを超え、300mN以下であるエチレン−α−オレフィン共重合体(II)5〜25重量部、及び高圧ラジカル重合で製造された低密度ポリエチレン(III)5〜25重量部(ただし、(I)+(II)+(III)=100重量部である)を含んでなる射出成形用樹脂組成物に関するものである。
【0012】
以下、本発明に関し、詳細に説明する。
【0013】
本発明の射出成形用樹脂組成物は、ASTM D−1238により測定温度230℃で測定したMFRが30g/10分以上150g/10分未満であるポリプロピレン系樹脂(I)70〜90重量部に対して、160℃で測定した溶融張力が50mNを超え、300mN以下であるエチレン−α−オレフィン共重合体(II)5〜25重量部、高圧ラジカル重合で製造された低密度ポリエチレン(III)5〜25重量部を含んでなる樹脂組成物である。
【0014】
本発明の射出成形用樹脂組成物を構成するポリプロピレン系樹脂(I)としては、プロピレン単独重合体もしくはプロピレン−エチレンブロック共重合体の範疇に属するものであれば如何なる制限を受けることなく用いることが可能であり、一般に市販されているものでもよい。このようなプロピレン−エチレンブロック共重合体は、たとえば高結晶性ポリプロピレン成分と、ゴム成分とからなり、該ゴム成分が、エチレン単独重合体ブロックと、プロピレンとエチレンとがランダムに共重合したブロックからなるものが好ましい。その中でもゴム成分が5〜25重量%であるものが好ましく、特に5〜20重量%であるものが好ましい。なお、該高結晶性ポリプロピレン成分は、64℃のn−デカン不溶成分として定義することができ、ゴム成分は、64℃のn−デカン可溶成分として定義することが可能である。
【0015】
そして、プロピレン−エチレンブロック共重合体中のゴム成分である64℃のn−デカン可溶成分及び高結晶性ポリプロピレン成分である64℃のn−デカン不溶成分は、試料(プロピレン−エチレンブロック共重合体)5gを、沸騰n−デカン200cc中に5時間浸漬して溶解した後、64℃まで冷却して、析出した固相をG4ガラスフィルターで濾過した後、乾燥して測定した固相重量から可溶成分及び不溶成分を算出して求めることができる。
【0016】
上記のようなプロピレン−エチレンブロック共重合体成分は、エチレン、プロピレン以外のα−オレフィン、たとえば1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−ヘキサデセン、4−メチル−1−ペンテンなどα−オレフィン、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキサン、ビニルノルボルナンなどのビニル化合物;酢酸ビニルなどのビニルエステル;無水マレイン酸などの不飽和有機酸またはその誘導体などから導かれる単位を含有していてもよい。
【0017】
ポリプロピレン系樹脂(I)は、射出成形時の流動性が優れることから、ASTM D−1238により測定温度230℃で測定したMFRが30g/10分以上150g/10分未満のものを用いる。
【0018】
本発明の射出成形用樹脂組成物を構成するエチレン−α−オレフィン共重合体(II)は、エチレンと炭素数3〜8のα−オレフィンを共重合したものであり、160℃で測定した溶融張力が50mNを超え、300mN以下、好ましくは100〜300mNのエチレン−α−オレフィン共重合体である。
【0019】
このようなエチレン−α−オレフィン共重合体としては、例えば炭素数20を超える長鎖分岐を有するエチレン−α−オレフィン共重合体を挙げることができ、特表2001−515114号公報に開示されている。
【0020】
ここで、160℃で測定した溶融張力が50mN以下のエチレン−α−オレフィン共重合体である場合、得られる樹脂組成物は溶融張力が低く、射出発泡成形に供した場合、高発泡倍率を有する成形体を得ることが困難となる。一方、160℃で測定した溶融張力が300mNを越える場合、得られる樹脂組成物は混合性に劣るものとなり、得られる射出成形体はフローマークが発生し、製品外観に劣るものとなる。なお、本発明における160℃での溶融張力は、例えばバレル直径9.55mmの毛管粘度計(東洋精機製作所、(商品名)キャピログラフ)に、長さが8mm,直径が2.095mm、流入角が90°のダイスを装着し、温度160℃、ピストン降下速度10mm/分、延伸比47に設定し、引き取りに必要な荷重(mN)を測定することにより求めることができる。
【0021】
そして、エチレン−α−オレフィン共重合体(II)としては、射出発泡成形を行う際に特に高発泡倍率を有する成形体が得られる射出成形用樹脂組成物となることから、以下(A)〜(C)の特性を満足するエチレン−α−オレフィン共重合体であることが好ましい。
(A)JIS K6760に準拠して密度勾配管法により測定した密度(d)が920kg/m以上960kg/m以下である。
(B)190℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレート(MFR)が1g/10分以上20g/10分以下である。
(C)160℃で測定した溶融張力(MS160(mN))が30mNを越える。
【0022】
また、本発明におけるMS160は、長さが8mm,直径が2.095mmであるダイスを用い、流入角90°で、せん断速度10.8s−1、延伸比47、測定温度160℃の条件下で測定した値であり、最大延伸比が47未満の場合は、破断しない最高の延伸比で測定した値をMS160とした。また、本発明におけるMS190は測定温度が190℃以外はMS160と同条件で測定した。
【0023】
本発明におけるM/Mは、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によって標準ポリエチレン換算値である重量平均分子量(M)と数平均分子量(M)を測定することにより算出することが可能である。
【0024】
本発明の射出成形用樹脂組成物を構成するエチレン−α−オレフィン共重合体(II)は、エチレン−α−オレフィン共重合体の製造方法として知られている、例えばチーグラー・ナッタ触媒、クロム系触媒、メタロセン触媒等の重合触媒による低圧重合法等の方法により得られたものであってもよい。特に好ましい上記(A)〜(C)を満足するエチレン−α−オレフィン共重合体の製造方法としては、例えば後述する本願実施例の製造条件そのもの、あるいは条件因子の微調整によって任意に作り分けることが可能である。
【0025】
より具体的には、例えばメタロセン化合物として、2つのシクロペンタジエニル基が2種類以上の原子の連鎖からなる架橋基で架橋されているか、もしくは2個以上の原子の連鎖からなる架橋基で架橋されている架橋型ビスシクロペンタジエニルジルコニウム錯体(以下、成分(a)と記す。)と、架橋型(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウム錯体および/または架橋型(インデニル)(フルオレニル)ジルコニウム錯体(以下、成分(b)と記す。)を用いたメタロセン触媒の存在下に、エチレンを重合する、またはエチレンと炭素数3〜8のα−オレフィンを共重合する方法を用いることができる。
【0026】
成分(a)の具体例としては、例えば1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン−1,3−ジイル−ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、1,1−ジメチル−1−シラエタン−1,2−ジイル−ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、プロパン−1,3−ジイル−ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ブタン−1,4−ジイル−ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、シス−2−ブテン−1,4−ジイル−ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、1,1,2,2−テトラメチルジシラン−1,2−ジイル−ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド等のジクロライドおよび上記遷移金属化合物のジメチル体、ジエチル体、ジヒドロ体、ジフェニル体、ジベンジル体を例示することができる。
【0027】
成分(b)の具体例としては、例えばジフェニルメチレン(1−シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(2−トリメチルシリル−1−シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(1−シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(1−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(1−シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(1−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシランジイル(1−シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシランジイル(1−シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(1−インデニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(2−フェニル−1−インデニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(2−フェニル−1−インデニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド等のジクロライドおよび上記遷移金属化合物のジメチル体、ジエチル体、ジヒドロ体、ジフェニル体、ジベンジル体を例示することができる。また上記遷移金属化合物のジルコニウム原子をチタン原子またはハフニウム原子に置換した化合物も例示することもできる。
【0028】
また、成分(a)に対する成分(b)の量は、特に制限はなく、0.0001〜100倍モルであることが好ましく、特に好ましくは0.001〜10倍モルである。
【0029】
そして、成分(a)と成分(b)を用いたメタロセン触媒としては、例えば成分(a)と成分(b)と有機アルミニウム化合物(以下、成分(c)と記す。)からなる触媒;成分(a)と成分(b)とアルミノオキサン(以下、成分(d)と記す。)からなる触媒;さらに成分(c)を含んでなる触媒;成分(a)と成分(b)とプロトン酸塩(以下、成分(e)と記す。)、ルイス酸塩(以下、成分(f)と記す。)または金属塩(以下、成分(g)と記す。)から選ばれる少なくとも1種類の塩からなる触媒;さらに成分(c)を含んでなる触媒;、成分(a)と成分(b)と成分(d)と無機酸化物(以下、成分(h)と記す。)からなる触媒;成分(a)と成分(b)と成分(h)と成分(e)、成分(f)、成分(g)から選ばれる少なくとも1種類の塩からなる触媒;さらに成分(c)を含んでなる触媒;成分(a)と成分(b)と粘土鉱物(以下、成分(i)と記す。)と成分(c)からなる触媒;成分(a)と成分(b)と有機化合物で処理された粘土鉱物(以下、成分(j)と記す。)からなる触媒を例示することができ、好ましくは成分(a)と成分(b)と成分(j)からなる触媒を用いることができる。
【0030】
ここで、成分(i)および成分(j)として用いることが可能な粘土鉱物としては、微結晶状のケイ酸塩を主成分とする微粒子を挙げることができ、粘土鉱物の大部分は、その構造上の特色として層状構造を成しており、層の中に種々の大きさの負電荷を有することが挙げられる。この点で、シリカやアルミナのような三次元構造を持つ金属酸化物と大きく異なる。これらの粘土鉱物は、一般に層電荷の大きさで、パイロフィライト、カオリナイト、ディッカイトおよびタルク群(化学式当たりの負電荷がおよそ0)、スメクタイト群(化学式当たりの負電荷がおよそ0.25から0.6)、バーミキュライト群(化学式当たりの負電荷がおよそ0.6から0.9)、雲母群(化学式当たりの負電荷がおよそ1)、脆雲母群(化学式当たりの負電荷がおよそ2)に分類されている。ここで示した各群には、それぞれ種々の粘土鉱物が含まれるが、スメクタイト群に属する粘土鉱物としては、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト等が挙げられる。また、上記粘土鉱物は複数混合して用いることもできる。
【0031】
成分(j)における有機化合物処理とは、粘土鉱物層間に有機イオンを導入し、イオン複合体を形成することをいう。有機化合物処理で用いられる有機化合物としては、N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン塩酸塩、N,N−ジメチル−n−エイコシルアミン塩酸塩、N,N−ジメチル−n−ドコシルアミン塩酸塩、N,N−ジメチルオレイルアミン塩酸塩、N,N−ジメチルベヘニルアミン塩酸塩、N−メチル−ビス(n−オクタデシル)アミン塩酸塩、N−メチル−ビス(n−エイコシル)アミン塩酸塩、N−メチル−ジオレイルアミン塩酸塩、N−メチル−ジベヘニルアミン塩酸塩、N,N−ジメチルアニリン塩酸塩を例示することができる。
【0032】
成分(a)と成分(b)と成分(j)からなる触媒は、有機溶媒中、成分(a)と成分(b)と成分(j)を接触させることによって得ることが可能であり、成分(a)と成分(j)の接触生成物に成分(b)を添加する方法;成分(b)と成分(j)の接触生成物に成分(a)を添加する方法;成分(a)と成分(b)の接触生成物に成分(j)を添加する方法;成分(j)に成分(a)と成分(b)の接触生成物を添加する方法を例示することができる。
【0033】
接触溶媒としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロペンタンもしくはシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエンもしくはキシレン等の芳香族炭化水素類、エチルエーテルもしくはn−ブチルエーテル等のエーテル類;塩化メチレンもしくはクロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、1,4−ジオキサン、アセトニトリルまたはテトラヒドロフランを例示することができる。
【0034】
接触温度については、0〜200℃の間で選択して処理を行うことが好ましい。
【0035】
各成分の使用量は、成分(j)1gあたり成分(a)が、0.0001〜100mmol、好ましくは0.001〜10mmolである。
【0036】
このようにして調製された成分(a)と成分(b)と成分(j)の接触生成物は、洗浄せずに用いても良く、また洗浄した後に用いても良い。また、成分(a)または成分(b)がジハロゲン体の時、さらに成分(c)を添加することが好ましい。また、成分(j)、重合溶媒およびオレフィン中の不純物を除去することを目的に成分(c)を添加することができる。
【0037】
本発明の樹脂組成物を構成するエチレン−α−オレフィン共重合体(II)を製造する際には、重合温度−100〜120℃で行うことが好ましく、特に生産性を考慮すると20〜120℃が好ましく、さらには60〜120℃の範囲で行うことが好ましい。また、重合時間は10秒〜20時間の範囲が好ましく、重合圧力は常圧〜300MPaの範囲で行うことが好ましい。重合性単量体としては、エチレンと炭素数3〜8のα−オレフィンであり、エチレンと炭素数3〜8のα−オレフィンである場合、エチレンと炭素数3〜8のα−オレフィンの供給割合として、エチレン/炭素数3〜8のα−オレフィン(モル比)が、1〜200、好ましくは3〜100、さらに好ましくは5〜50の供給割合を用いることができる。また、重合時に水素などを用いて分子量の調節を行うことも可能である。重合はバッチ式、半連続式、連続式のいずれの方法でも行うことが可能であり、重合条件を変えて2段階以上に分けて行うことも可能である。また、エチレン系共重合体は、重合終了後に従来既知の方法により重合溶媒から分離回収され、乾燥して得ることができる。
【0038】
重合はスラリー状態、溶液状態または気相状態で実施することができ、特に、重合をスラリー状態で行う場合にはパウダー粒子形状の整ったエチレン系共重合体を効率よく、安定的に生産することができる。また、重合に用いる溶媒は一般に用いられる有機溶媒であればいずれでもよく、具体的には例えばベンゼン、トルエン、キシレン、プロパン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ガソリン等が挙げられ、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のオレフィン自身を溶媒として用いることもできる。
【0039】
本発明で用いる高圧ラジカル重合で製造された低密度ポリエチレン(III)としては、高圧ラジカル重合により製造された低密度ポリエチレンの範疇に属するものであれば如何なるものも用いることができ、該低密度ポリエチレンは一般的には高圧法低密度ポリエチレンと称されている。その中でも、特に射出発泡成形に供した際に高発泡倍率を有する成形体を得ることが可能となる射出成形用樹脂組成物となることから、ASTM D1238により測定温度190℃で測定したメルトフローレートが50g/10分以上300g/10分未満、さらに70g/10分以上300g/10分未満である高圧法低密度ポリエチレンであることが好ましい。また、該高圧法低密度ポリエチレンとしては、910〜935kg/m3の密度を有するものであることが好ましい。
【0040】
該高圧法低密度ポリエチレンは、一般に温度200〜300℃、圧力1,000〜2,000気圧の条件下に、エチレンを高圧ラジカル重合することによって製造される。また、エチレンとともに少量の酢酸ビニル、エチレンアクリレート等を共重合した共重合体であっても差しつかえない。
【0041】
本発明の射出成形用樹脂組成物は、ポリプロピレン系樹脂(I)70〜90重量部、エチレン−α−オレフィン共重合体(II)5〜25重量部、及び高圧法低密度ポリエチレン(III)5〜25重量部からなる(ただし、(I)+(II)+(III)=100重量部である)ものである。ここで、ポリプロピレン系樹脂(I)が70重量部未満である場合、エチレン−α−オレフィン共重合体(II)が25重量部を越える場合、又は、エチレン−α−オレフィン共重合体(III)が25重量部を越える場合、得られる樹脂組成物は耐熱性に劣るものとなる。ポリプロピレン系樹脂(I)が90重量部を越える場合、又はエチレン−α−オレフィン共重合体(II)が5重量部未満である場合、得られる樹脂組成物は、発泡成形に供した際の発泡性に劣るものとなる。また、高圧法低密度ポリエチレン(III)が5重量部未満である場合、得られる樹脂組成物は、低温での衝撃強度に劣るものとなるとともに、成形品とした際にフローマークが発生しやすいものとなり成形性に劣るものとなる。
【0042】
本発明の射出成形用樹脂組成物は、成形品とした際に特にフローマークが発生し難くなり成形性に優れる樹脂組成物となることから、ASTM D−1238により、測定温度230℃で測定したMFRが50g/10分以上200g/10分未満であることが好ましい。
【0043】
本発明の射出成形用樹脂組成物は、成形品とした際に特にフローマークが発生し難くなり成形性に優れる樹脂組成物となることから、ASTM D−1238により230℃、2.16kg荷重下で測定されるメルトフローレートが60g/10分で、190℃、巻取り速度10m/分で測定した溶融張力(MS190)が2〜20mNの範囲内であることが好ましい。
【0044】
本発明の射出成形用樹脂組成物は、射出発泡成形に供し、射出発泡成形体を得るために発泡剤を含有することも可能である。その際の発泡剤としては、公知の各種発泡剤が使用できる。発泡剤は溶剤型発泡剤、分解型発泡剤、あるいはガス状発泡剤のいずれであってもよい。
【0045】
溶剤型発泡剤、あるいはガス状発泡剤は、押出機のシリンダー部分から注入して溶融樹脂組成物に吸収ないし溶解させ、シリンダー中で蒸発して発泡剤として機能する物質であって、炭酸ガス、またはプロパン、ブタン、ネオペンタン、ヘプタン、イソヘキサン、ヘキサン、イソヘプタン、ヘプタン等の低沸点脂肪族炭化水素や、あるいはフロンガスで代表される低沸点のフッ素含有炭化水素等が使用される。
【0046】
分解型発泡剤は、樹脂組成物に予め配合されて押出機へ供給され、押出機のシリンダー温度条件下で発泡剤が分解して炭酸ガス、窒素ガス等の気体を発生する化合物であって、無機系の発泡剤であっても有機系の発泡剤であってもよく、また気体の発生を促す有機酸等を併用添加してもよい。
【0047】
分解型発泡剤の具体例として、次の化合物をあげることができる。
(a)無機系発泡剤:重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、クエン酸、クエン酸ナトリウムなど。
(b)有機系発泡剤:N,N′−ジニトロソテレフタルアミド、N,N′−ジニトロソペンタチレンテトラミン等のN−ニトロソ化合物;アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン、バリウムアゾジカルボキシレート等のアゾ化合物;ベンゼンスルフォニルヒドラジド、トルエンスルフォニルヒドラジド、p,p′−オキシビス(ベンゼンスルフェニルヒドラジド)、ジフェニルスルフォン−3,3′−ジスルフォニルヒドラジド等のスルフォニルヒドラジド化合物;カルシウムアジド、4,4′−ジフェニルジスルフォニルアジド、p−トルエンスルフォニルアジド等のアジド化合物など。
【0048】
これらの中では、重炭酸水素ナトリウム等の炭酸塩または炭酸水素塩が好ましく、さらに発泡助剤として有機カルボン酸を併用することが好ましい。炭酸塩または炭酸水素塩と有機カルボン酸との配合比は、炭酸塩または炭酸水素塩が65〜30重量部、有機カルボン酸が35〜70重量部の範囲が好ましい。
【0049】
発泡剤の添加量は、樹脂組成物100重量部に対して0.1〜6重量部、好ましくは0.5〜2重量部とするのが望ましい。この範囲内にあると、気泡径のより揃った射出発泡体が得られる。なお、発泡剤の添加量は射出発泡体の物性に応じて、発泡剤からの発生ガス量、望ましい発泡倍率等を考慮して選択される。
【0050】
また、本発明の樹脂組成物には、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、必要に応じて、さらに安定剤、滑剤、難燃剤、分散剤、充填剤、架橋剤、紫外線防止剤、酸化防止剤、着色剤などを含有していてもよい。他の熱可塑性樹脂と混合して用いることもできる。これらの例として、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン(L−LDPE)、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン系樹脂、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリスチレン、これらの無水マレイン酸グラフト物等を例示することができる。
【0051】
本発明の樹脂組成物の製造方法としては、通常の樹脂組成物とする際の方法を用いることができ、例えば溶融・混合方法として、押出混練、ロール混練など公知の方法を挙げることができ、該方法で溶融混練することにより得ることができる。
【0052】
本発明の樹脂組成物は、射出成形用として優れた特性を有する組成物となる。たとえばトリム、インパネ、コラムカバーなどの自動車内装用途、フェンダー、バンパー、サイドモール、マッドガード、ミラーカバーなどの自動車外装用途、家電製品の筐体、一般雑貨用途などに好適に利用することができる。上記のうちでも、剛性、耐熱性および耐衝撃性のいずれにも優れ、外観にも優れている特性を有効に利用しうる用途たとえばフェンダー、バンパー、サイドモール、マッドガード、ミラーカバーなどの自動車内外装部品として好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0053】
本発明の樹脂組成物を使用することで、通常の射出成形法において射出成形時にフローマークが発生しないことから、製品表面に高級感のある成形体を提供することができる。
【実施例】
【0054】
以下、実施例および比較例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。重合体、樹脂組成物および成形体の特性の測定および評価は、下記の方法によって行った。
【0055】
〜密度の測定〜
エチレン−α−オレフィン共重合体の密度(d)は、JIS K6760(1995)に準拠して密度勾配管法で測定した。
【0056】
〜溶融張力の測定〜
エチレン−α−オレフィン共重合体(II)および樹脂組成物の溶融張力は、バレル直径9.55mmの毛管粘度計(東洋精機製作所、商品名:キャピログラフ)に、長さが8mm,直径が2.095mm、流入角が90°のダイスを装着し測定した。MS160は、温度を160℃に設定し、巻取り速度10m/分、ピストン降下速度を10mm/分、延伸比を47に設定し、引き取りに必要な荷重(mN)をMS160とした。最大延伸比が47未満の場合、破断しない最高の延伸比での引き取りに必要な荷重(mN)をMS160とした。また、温度を190℃に設定し同様の方法で測定した荷重(mN)をMS190とした。
【0057】
〜外観(非発泡)〜
射出成形機にて成形温度210℃、金型温度40℃にて成形された円板(直径10cm×厚さ2mm)の外観(フローマーク)の良し悪しを目視により判断した。
【0058】
◎…フローマークなしあるいは極めて目立ちにくい
○…フローマーク目立ちにくい
△…フローマークやや目立つ
×…フローマーク目立つ
〜外観(発泡)〜
射出成形用樹脂組成物100質量部と発泡剤[炭酸水素ナトリウム,永和化成工業社製,セルボン]0.9質量部を、混練機にて温度200℃で混練し、得られた組成物を、温度210℃で射出成形(直径10cm×厚さ2mm)し、外観を評価した。
円板表面外観(フローマーク)の良し悪しを目視により判断した。
【0059】
◎…フローマークなしあるいは極めて目立ちにくい
○…フローマーク目立ちにくい
△…フローマークやや目立つ
×…フローマーク目立つ
〜プロピレン系樹脂(I)〜
プロピレン系樹脂(I)として、以下の市販のプロピレン−エチレンブロック共重合体を用いた。
【0060】
商品名 住友ノーブレン#AX674:住友化学株式会社製、MFR=65g/10分
商品名 住友ノーブレン#AX574:住友化学株式会社製、MFR=45g/10分
商品名 住友ノーブレン#AX564:住友化学株式会社製、MFR=28g/10分
〜エチレン−α−オレフィン共重合体〜
エチレン−α−オレフィン共重合体(II)として、以下の製造例1−11において調製したものを用いた。
【0061】
製造例1
(1)有機変性粘土の調製
10Lの反応器に工業用アルコール(日本アルコール販売社製(商品名)エキネンF−3)3L及び蒸留水3Lを入れ、濃塩酸100mL及びN−メチルジオレイルアミン585g(1.1mol:ライオン株式会社製(商品名)アーミンM2O)を添加し、45℃に加熱して合成ヘクトライト(Rockwood Additives社製(商品名)ラポナイトRDS)を1kg分散させた後、60℃に昇温させてその温度を保持したまま1時間攪拌した。このスラリーを濾別後、60℃の水50Lで2回洗浄し、85℃の乾燥機内で12時間乾燥させることにより1.5kgの有機変性粘土を得た。この有機変性粘土はジェットミル粉砕して、メジアン径を10.5μmとした。
(2)触媒懸濁液の調製
(1)で得られた有機変性粘土500gをヘキサン1.7リットルに懸濁させ、ジメチルシランジイルビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド6.97g(20.0mmol)、ジフェニルメチレン(1−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−tert−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド2.33g(3.53mmol)およびトリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(0.714M)2.8リットル(2mol)を添加して室温で6時間撹拌した。静置して上澄み液を除去、ヘキサンで触媒固体を2回洗浄し、ヘキサンを添加して最終的に100g/Lの触媒スラリーを得た。
(3)ポリエチレン系樹脂の製造
内容積540Lの重合器に、ヘキサンを145kg/時、エチレンを33.0kg/時、ブテン−1を1.0kg/時、水素を19NL/時およびポリマー生産量が30kg/時になるように(2)で調製した触媒懸濁液を連続的に供給し、全圧を3,000kPa、重合器内温を85℃に保ちながら連続的に重合反応を行った。重合器から連続的にスラリー抜き出し、未反応の水素、エチレン、ブテン−1を除去した後、分離、乾燥の工程を経てポリエチレン系樹脂粉末を得た。ポリエチレン系樹脂粉末を200℃に設定した50mm径の単軸押出機を使用して溶融混練し、ペレタイズすることでポリエチレン系樹脂ペレットを得た。得られたポリエチレン系樹脂ペレットの密度は950kg/m、MFRは4.0g/10分、160℃で測定した溶融張力は120mNであった。
【0062】
製造例2
(1)有機変性粘土の調製
10Lの反応器に工業用アルコール(日本アルコール販売社製(商品名)エキネンF−3)3L及び蒸留水3Lを入れ、濃塩酸100mL及びN,N−ジメチル−オクタデシルアミン330g(1.1mol:ライオン株式会社製(商品名)アーミンDM18D)を添加し、45℃に加熱して合成ヘクトライト(Rockwood Additives社製(商品名)ラポナイトRDS)を1kg分散させた後、60℃に昇温させてその温度を保持したまま1時間攪拌した。このスラリーを濾別後、60℃の水5Lで2回洗浄し、85℃の乾燥機内で12時間乾燥させることにより1.3kgの有機変性粘土を得た。この有機変性粘土はジェットミル粉砕して、メジアン径を10.5μmとした。
(2)マクロモノマー合成触媒の調製
(1)で得られた有機変性粘土500gをヘキサン1.7リットルに懸濁させ、ジメチルシランジイルビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド6.97g(20.0mmol)およびトリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(0.714M)2.8リットル(2mol)を添加して室温で6時間撹拌した。静置して上澄み液を除去、ヘキサンで触媒固体を2回洗浄し、ヘキサンを添加して最終的に100g/Lの触媒スラリーを得た。
(3)マクロモノマーの合成
内容積370Lの重合器に、ヘキサンを80kg/時で、エチレンを33kg/時で、ブテン−1を0.3kg/時で、トリイソブチルアルミニウムを液中の濃度が0.19mmol/kgヘキサンとなるように連続的に供給しながら、上記(2)で調製したマクロモノマー合成触媒を、マクロマー合成量が30kg/時になるように連続的に供給した。重合温度は85℃に制御した。重合器から連続的に抜き出したマクロモノマースラリーは、未反応の水素、エチレンを除去した後、内容積540Lの2段目の重合器に移送した。重合器から抜き出したマクロモノマーのMn=9,600であり、Mw/Mn=2.5であった。また、NMRによりマクロモノマーの末端構造を解析したところ、マクロモノマー1mol当たりの末端ビニル量(Z)は0.35molであった。
(4)ポリエチレン系樹脂の製造触媒の調製
ヘキサン21.2リットルに、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(0.714M)2.8リットル(2.0mol)およびジフェニルメチレン(1−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−tert−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド670g(1.0mol)を添加し、室温で1時間攪拌することによって触媒溶液を調製した。
(5)ポリエチレン系樹脂の製造
(3)で合成したマクロモノマーが移送された内容積540Lの2段目の重合器に、エチレンを2.5kg/時で、水素を20NL/時で連続的に供給しながら、(4)で調製した触媒溶液を、ポリエチレン系樹脂の製造量が32kg/時になるように連続的に供給した。重合温度は85℃に制御した。得られたポリエチレン系樹脂を含むスラリーを重合器から連続的に抜き出し、未反応の水素、エチレンを除去した後、分離、乾燥の工程を経てポリエチレン系樹脂粉末を得た。ポリエチレン系樹脂粉末を200℃に設定した50mm径の単軸押出機を使用して溶融混練し、ペレタイズすることでポリエチレン系樹脂ペレットを得た。得られたポリエチレン系樹脂ペレットの密度は955kg/m、MFRは4.0g/10分、160℃で測定した溶融張力は150mNであった。
【0063】
製造例3
製造例1[(3)ポリエチレン系樹脂の製造]において、水素供給量を19NL/時から12NL/時に変えたこと以外は、製造例1と同様に行なった。得られたポリエチレン系樹脂の密度は950kg/m、MFRは2.0g/10分、160℃で測定した溶融張力は170mNであった。
【0064】
製造例4
(1)有機変性粘土の調製
10Lの反応器に工業用アルコール(日本アルコール販売社製(商品名)エキネンF−3)3L及び蒸留水3Lを入れ、濃塩酸100mL及びN,N−ジメチル−オクタデシルアミン330g(1.1mol:ライオン株式会社製(商品名)アーミンDM18D)を添加し、45℃に加熱して合成ヘクトライト(Rockwood Additives社製(商品名)ラポナイトRDS)を1kg分散させた後、60℃に昇温させてその温度を保持したまま1時間攪拌した。このスラリーを濾別後、60℃の水5Lで2回洗浄し、85℃の乾燥機内で12時間乾燥させることにより1.3kgの有機変性粘土を得た。この有機変性粘土はジェットミル粉砕して、メジアン径を10.5μmとした。
(2)マクロモノマー合成触媒の調製
(1)で得られた有機変性粘土500gをヘキサン1.7リットルに懸濁させ、ジメチルシランジイルビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド6.97g(20.0mmol)およびトリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(0.714M)2.8リットル(2mol)を添加して室温で6時間撹拌した。静置して上澄み液を除去、ヘキサンで触媒固体を2回洗浄し、ヘキサンを添加して最終的に100g/Lの触媒スラリーを得た。
(3)マクロモノマーの合成
内容積370Lの重合器に、ヘキサンを80kg/時で、エチレンを33kg/時で、ブテン−1を0.6kg/時で、トリイソブチルアルミニウムを液中の濃度が0.19mmol/kgヘキサンとなるように連続的に供給しながら、(2)で調製したマクロモノマー合成触媒を、マクロマー合成量が30kg/時になるように連続的に供給した。重合温度は85℃に制御した。重合器から連続的に抜き出したマクロモノマースラリーは、未反応の水素、エチレン、ブテン−1を除去した後、内容積540Lの2段目の重合器に移送した。重合器から抜き出したマクロモノマーのMn=9,200であり、Mw/Mn=2.5であった。また、NMRによりマクロモノマーの末端構造を解析したところ、マクロモノマー1mol当たりの末端ビニル量(Z)は0.37molであった。
(4)ポリエチレン系樹脂の製造触媒の調製
ヘキサン21.2リットルに、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(0.714M)2.8リットル(2.0mol)およびジフェニルメチレン(1−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−tert−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド670g(1.0mol)を添加し、室温で1時間攪拌することによって触媒溶液を調製した。
(5)ポリエチレン系樹脂の製造
(3)で合成したマクロモノマーが移送された内容積540Lの2段目の重合器に、エチレンを2.5kg/時で、水素を20NL/時で連続的に供給しながら、(4)で調製した触媒溶液を、ポリエチレン系樹脂の製造量が32kg/時になるように連続的に供給した。重合温度は85℃に制御した。得られたポリエチレン系樹脂を含むスラリーを重合器から連続的に抜き出し、未反応の水素、エチレンを除去した後、分離、乾燥の工程を経てポリエチレン系樹脂粉末を得た。得られたポリエチレン系樹脂ペレットの密度は950kg/m、MFRは8.0g/10分、160℃で測定した溶融張力は100mNであった。
【0065】
製造例5
(1)有機変性粘土の調製
1Lのフラスコに工業用アルコール(日本アルコール販売社製(商品名)エキネンF−3)300mL及び蒸留水300mLを入れ、濃塩酸15.0g及びジメチルベヘニルアミン(ライオン株式会社製(商品名)アーミンDM22D)35.3g(100mmol)を添加し、45℃に加熱して合成ヘクトライト(Rockwood Additives社製(商品名)ラポナイトRDS)を100g分散させた後、60℃に昇温させてその温度を保持したまま1時間攪拌した。このスラリーを濾別後、60℃の水600mLで2回洗浄し、85℃の乾燥機内で12時間乾燥させることにより118gの有機変性粘土を得た。この有機変性粘土はジェットミル粉砕して、メジアン径を15μmとした。
(2)触媒懸濁液の調製
温度計と還流管が装着された300mLのフラスコを窒素置換した後に(1)で得られた有機変性粘土25.0gとヘキサンを108mL入れ、次いでジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(4,7−ジメチル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリドを0.4266g、及び20%トリイソブチルアルミニウム142mLを添加して60℃で3時間攪拌した。45℃まで冷却した後に上澄み液を抜き取り、200mLのヘキサンにて5回洗浄後、ヘキサンを200ml加えて触媒懸濁液を得た(固形重量分:9.74wt%)。
(3)重合
2Lのオートクレーブにヘキサンを1.2L、20%トリイソブチルアルミニウムを1.0mL、(2)で得られた触媒懸濁液を105mg(固形分13.1mg相当)加え、85℃に昇温後、分圧が0.90MPaになるようにエチレンガスを連続的に供給した。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで50.2gのポリマー(B1)を得た(活性:3,800g/g触媒)。このポリマーのMFRは9.9g/10分、密度は956kg/m、160℃で測定した溶融張力は90mNであった。
【0066】
製造例6
(1)有機変性粘土の調製
1Lのフラスコに工業用アルコール(日本アルコール販売社製(商品名)エキネンF−3)300mL及び蒸留水300mLを入れ、濃塩酸12.5g及びジメチルベヘニルアミン(ライオン株式会社製(商品名)アーミンDM22D)42.4g(120mmol)を添加し、45℃に加熱して合成ヘクトライト(Rockwood Additives社製(商品名)ラポナイトRDS)を100g分散させた後、60℃に昇温させてその温度を保持したまま1時間攪拌した。このスラリーを濾別後、60℃の水600mLで2回洗浄し、85℃の乾燥機内で12時間乾燥させることにより122gの有機変性粘土を得た。この有機変性粘土はジェットミル粉砕して、メジアン径を15μmとした。
(2)触媒懸濁液の調製
ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(4,7−ジメチル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド/0.4266gの代わりに、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4,7−トリメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド/0.4406gを用いた以外は、実施例5と同様に実施した(固形重量分:10.9wt%)。
(3)重合
2Lのオートクレーブにヘキサンを1.2L、20%トリイソブチルアルミニウムを1.0mL、(2)で得られた触媒懸濁液を86mg(固形分9.4mg相当)加え、65℃に昇温後、1−ブテンを17.5g加え、分圧が0.75MPaになるようにエチレン/水素混合ガスを連続的に供給した(エチレン/水素混合ガス中の水素の濃度:610ppm)。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで17.9gのポリマー(B2)を得た(活性:1,900g/g触媒)。このポリマーのMFRは5.0g/10分、密度は910kg/m、160℃で測定した溶融聴力は95mNであった。
【0067】
製造例7
(1)有機変性粘土の調製
1Lのフラスコに工業用アルコール(日本アルコール販売社製(商品名)エキネンF−3)300mL及び蒸留水300mLを入れ、濃塩酸17.5g及びジメチルベヘニルアミン(ライオン株式会社製(商品名)アーミンDM22D)49.4g(140mmol)を添加し、45℃に加熱して合成ヘクトライト(Rockwood Additives社製(商品名)ラポナイトRDS)を100g分散させた後、60℃に昇温させてその温度を保持したまま1時間攪拌した。このスラリーを濾別後、60℃の水600mLで2回洗浄し、85℃の乾燥機内で12時間乾燥させることにより132gの有機変性粘土を得た。この有機変性粘土はジェットミル粉砕して、メジアン径を15μmとした。
(2)触媒懸濁液の調製
温度計と還流管が装着された300mLのフラスコを窒素置換した後に(1)で得られた有機変性粘土25.0gとヘキサンを108mL入れ、次いでジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4,7−トリメチルインデニル)ジルコニウムジクロリドを0.4406g、及び20%トリイソブチルアルミニウム142mLを添加して60℃で3時間攪拌した。45℃まで冷却した後に上澄み液を抜き取り、200mLのヘキサンにて5回洗浄後、ヘキサンを200ml加えて触媒懸濁液を得た(固形重量分:12.4wt%)。
(3)重合
2Lのオートクレーブにヘキサンを1.2L、20%トリイソブチルアルミニウムを1.0mL、(2)で得られた触媒懸濁液を52mg(固形分6.4mg相当)加え、70℃に昇温後、1−ブテンを17.6g加え、分圧が0.80MPaになるようにエチレン/水素混合ガスを連続的に供給した(エチレン/水素混合ガス中の水素の濃度:590ppm)。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで61.8gのポリマー(B4)を得た(活性:9,700g/g触媒)。このポリマーのMFRは1.6g/10分、密度は930kg/m、160℃で測定した溶融張力は200mNであった。
【0068】
製造例8
(1)有機変性粘土の調製
(2)触媒懸濁液の調製
製造例6と同様に行った。
(3)重合
2Lのオートクレーブにヘキサンを1.2L、20%トリイソブチルアルミニウムを1.0mL、(2)で得られた触媒懸濁液を58mg(固形分7.0mg相当)加え、80℃に昇温後、1−ブテンを8.3g加え、分圧が0.85MPaになるようにエチレン/水素混合ガスを連続的に供給した(エチレン/水素混合ガス中の水素の濃度:850ppm)。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで49.0gのポリマー(B6)を得た(活性:7,000g/g触媒)。このポリマーのMFRは3.7g/10分、密度は939kg/m、160℃で測定した溶融張力は130mNであった。
【0069】
製造例9
(1)有機変性粘土の調製
(2)触媒懸濁液の調製
製造例6と同様に行った。
(3)重合
2Lのオートクレーブにヘキサンを1.2L、20%トリイソブチルアルミニウムを1.0mL、(2)で得られた触媒懸濁液を70mg(固形分8.4mg相当)加え、80℃に昇温後、1−ブテンを2.4g加え、分圧が0.90MPaになるようにエチレン/水素混合ガスを連続的に供給した(エチレン/水素混合ガス中の水素の濃度:750ppm)。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで63.0gのポリマー(B7)を得た(活性:7,500g/g触媒)。このポリマーのMFRは15.5g/10分、密度は954kg/m、160℃で測定した溶融張力は40mNであった。
【0070】
製造例10
(1)有機変性粘土の調製
(2)触媒懸濁液の調製
製造例6と同様に行った。
(3)重合
2Lのオートクレーブにヘキサンを1.2L、20%トリイソブチルアルミニウムを1.0mL、(2)で得られた触媒懸濁液を70mg(固形分8.4mg相当)加え、80℃に昇温後、分圧が0.90MPaになるようにエチレン/水素混合ガスを連続的に供給した(エチレン/水素混合ガス中の水素の濃度:550ppm)。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで58.8gのポリマー(B8)を得た(活性:7,000g/g触媒)。このポリマーのMFRは5.9g/10分、密度は959kg/m、160℃で測定した溶融張力は78mNであった。
【0071】
製造例11
(1)有機変性粘土の調製
1Lのフラスコに工業用アルコール(日本アルコール販売社製(商品名)エキネンF−3)300mL及び蒸留水300mLを入れ、濃塩酸18.8g及びジメチルヘキサコシルアミン(MeN(C2653)、常法によって合成)49.1g(120mmol)を添加し、45℃に加熱して合成ヘクトライト(Rockwood Additives社製(商品名)ラポナイトRDS)を100g分散させた後、60℃に昇温させてその温度を保持したまま1時間攪拌した。このスラリーを濾別後、60℃の水600mLで2回洗浄し、85℃の乾燥機内で12時間乾燥させることにより140gの有機変性粘土を得た。この有機変性粘土はジェットミル粉砕して、メジアン径を14μmとした。
(2)触媒懸濁液の調製
温度計と還流管が装着された300mLのフラスコを窒素置換した後に(1)で得られた有機変性粘土25.0gとヘキサンを108mL入れ、次いでジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2、4,7−トリメチル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリドを0.4406g、及び20%トリイソブチルアルミニウム142mLを添加して60℃で3時間攪拌した。45℃まで冷却した後に上澄み液を抜き取り、200mLのヘキサンにて5回洗浄後、ヘキサンを200ml加えて触媒懸濁液を得た(固形重量分:12.0wt%)
(3)重合
2Lのオートクレーブにヘキサンを1.2L、20%トリイソブチルアルミニウムを1.0mL、(2)で得られた触媒懸濁液を75mg(固形分9.0mg相当)加え、80℃に昇温後、1−ブテンを8.3g加え、分圧が0.85MPaになるようにエチレン/水素混合ガスを連続的に供給した(エチレン/水素混合ガス中の水素の濃度:850ppm)。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで58.5gのポリマー(B9)を得た(活性:6,500g/g触媒)。このポリマーのMFRは4.0g/10分、密度は941kg/m、160℃で測定した溶融張力は120mNであった。
【0072】
さらに、比較目的のため、下記のエチレン−α−オレフィン共重合体を用いた。
【0073】
商品名 ペトロセン203:東ソー株式会社製、密度=919kg/m、MFR=8.0g/10分、MS160=50mN
商品名 ユメリット4540:宇部丸善ポリエチレン株式会社製、密度=944kg/m、MFR=3.9g/10分、MS160=12mN
〜高圧ラジカル重合により製造された低密度ポリエチレン(III)〜
高圧ラジカル重合により製造された低密度ポリエチレン(III)として、以下のものを用いた。
【0074】
商品名 ペトロセン209:(東ソー株式会社製、密度=924kg/m、MFR=45g/10分、MS160=3mN)
商品名 ペトロセン248:(東ソー株式会社製、密度=917kg/m、MFR=58g/10分、MS160=2mN)
商品名 ペトロセン249:(東ソー株式会社製、密度=916kg/m、MFR=70g/10分、MS160=1mN)
商品名 ペトロセン353:(東ソー株式会社製、密度=915kg/m、MFR=145g/10分、MS160=測定不可、1mN未満)
実施例1
市販のポリプロピレン系樹脂(商品名:住友ノーブレン#AX674、MFR=65g/10分、住友化学製)、エチレン−α−オレフィン共重合体の合成例1で得られたエチレン−α−オレフィン共重合体、高圧法低密度ポリエチレン(商品名:ペトロセン248、MFR=58g/10分)を80:10:10(重量%)の比率でドライブレンドを行い、これをプラコー社製50mm径単軸押出機にて溶融混合した。バレルの温度はC1;180℃、C2;200℃、C3;220℃、ダイヘッド;220℃とした。得られたポリプロピレン系樹脂組成物を、樹脂温度220℃、射出圧1000kg/cm 、金型温度40℃の条件下で射出成形した。得られた射出成形品の外観を評価した。結果を表2に示す。
【0075】
実施例2〜16
ポリプロピレン系樹脂、エチレン−α−オレフィン共重合体、高圧法低密度ポリエチレンを表1に記載されたものに変えた以外は実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。
【0076】
比較例1〜5
ポリプロピレン系樹脂、エチレン−α−オレフィン共重合体、高圧法低密度ポリエチレンを表2に記載されたものに変えた以外は実施例1と同様に行った。結果を表3に示す。
【0077】
【表1】

【0078】
【表2】

【0079】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ASTM D−1238により測定温度230℃で測定したMFRが30g/10分以上150g/10分未満であるポリプロピレン系樹脂(I)70〜90重量部、160℃で測定した溶融張力が50mNを超え、300mN以下であるエチレン−α−オレフィン共重合体(II)5〜25重量部、及び高圧ラジカル重合で製造された低密度ポリエチレン(III)5〜25重量部(ただし、(I)+(II)+(III)=100重量部)を含んでなることを特徴とする射出成形用樹脂組成物。
【請求項2】
ASTM D−1238により、測定温度230℃で測定したMFRが30g/10分以上200g/10分未満であることを特徴とする請求項1記載の射出成形用樹脂組成物。
【請求項3】
測定温度190℃で測定した溶融張力(MS190)が2〜30mNの範囲内であることを特徴とする請求項1または2に記載の射出成形用樹脂組成物。
【請求項4】
エチレン−α−オレフィン共重合体(II)が下記(A)〜(C)を満足するエチレン−α−オレフィン共重合体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の射出成形用樹脂組成物。
(A)JIS K6760に準拠して密度勾配管法により測定した密度(d)が920kg/m以上960kg/m以下である。
(B)190℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレート(MFR)が1g/10分以上30g/10分以下である。
(C)160℃で測定した溶融張力(MS160(mN))が30mNを超える。
【請求項5】
低密度ポリエチレン(III)がASTM D−1238により測定温度190℃で測定したMFRが50g/10分以上300g/10分未満である高圧ラジカル重合で製造された低密度ポリエチレンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の射出成形用樹脂組成物。

【公開番号】特開2012−92332(P2012−92332A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218286(P2011−218286)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】