説明

射出成形金型及び射出成形方法

【課題】射出成形金型を用いた成形品の製造において、製造工程を増加させずに、成形品の品質をより向上させること。
【解決手段】型閉じ及び型開きが可能な固定側金型2と可動側金型4との間に、型閉じ状態において形成されている成形空間へ射出した溶融樹脂を冷却して固化させ、可動側金型4に取り付けられている可動入れ子6の温度を、溶融樹脂のガラス転移点よりも高い温度に調節し、ガラス転移点よりも高い温度に調節した可動入れ子6を、溶融樹脂が射出された成形空間へ移動させて、固化させた状態の溶融樹脂を押圧することにより、ヒケ等の不整部分が形成された成形品に対し、固定側金型2と可動側金型4とを型閉じ状態としたままで、成形品のうち可動入れ子6で押圧される部分に形成された不整部分を整形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形金型を用いた成形品に発生するヒケ等の不整部分を整形して所望の面形状とする、射出成形金型及び射出成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一組の金型を型閉じ状態として形成した成形空間内に溶融樹脂を射出して成形品を形成する射出成形では、溶融樹脂が冷却されて固化する際に発生する収縮により、成形品の表面に不整部分(ヒケ等の凹凸)が形成される場合がある。
このような不整部分を整形する技術として、例えば、特許文献1に開示されているものがある。
【0003】
特許文献1に開示されている技術は、前工程で射出成形によって成形された成形品を、一組の金型(第一の金型、第二の金型)により挟み込んだ状態で加熱する加熱手段を有する射出成形品の成形装置及び成形方法である。
ここで、加熱手段は、第一の金型及び第二の金型に取り付けられたシーズヒーターやサーミスタ等により形成されており、金型全体を加熱する。
【0004】
そして、成形品を加熱する際には、金型を型開き状態として、加熱手段を作動させて第一の金型及び第二の金型を所定の温度まで加熱した後、これらの加熱した第一の金型及び第二の金型により成形品を加圧及び加熱して、不整部分を整形する。
また、従来では、特許文献1に開示されている技術以外にも、不整部分を整形する技術としては、例えば、成形品の成形条件を設定する際に、保圧工程における圧力を増加させる技術や、保圧工程における保圧時間を長くする技術、保圧工程における金型の温度を低くする技術等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005‐280208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された技術においては、上述したように、第一の金型及び第二の金型に加え、加熱手段やそれに付帯する設備等、多数の構成を必要とするため、一般的な構成の金型と比較して、構造が複雑となる。
これに加え、特許文献1に記載された技術においては、上述したように、前工程で射出成形された成形品に対し、加熱手段により加熱した第一の金型及び第二の金型を用いた二次加工を必要とするため、成形品の製造において、製造工程が増加する。
【0007】
また、上述した、保圧工程における、圧力・保圧時間・金型を設定する技術等を用いても、不整部分を減少させることは可能であるが、成形品の表面が所望の状態となるように不整部分を整形することは困難である。
また、上述したような、一般的な射出成形では、成形品の肉厚が増加するに伴い、ヒケの量が大きくなる傾向がある。このため、上記のような、保圧工程における、圧力・保圧時間・金型を設定する技術等を用いても、成形品の表面が所望の状態となるように不整部分を整形することは困難である。
【0008】
このように、従来の技術においては、製造工程を増加させずに、成形品の品質低下を十
分に抑制することが困難であった。
本発明の課題は、射出成形金型を用いた成形品の製造において、製造工程を増加させることなく、成形品の品質をより向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するため、本発明の一態様に係る射出成形金型(例えば、図1の射出成形金型1)は、型閉じ及び型開きが可能な一組の金型(例えば、図1の固定側金型2と可動側金型4)のうち一方に取り付けられている可動入れ子(例えば、図1の可動入れ子6)と、前記型閉じ状態において前記一組の金型間に形成され、且つ溶融樹脂が射出される成形空間を形成する成形空間形成部と、前記成形空間へ射出された前記溶融樹脂が固化した状態で、前記可動入れ子の温度を前記溶融樹脂のガラス転移点よりも高い温度に調節する温度調節部(例えば、図1の温度調節部30)と、前記温度調節部が前記可動入れ子の温度を前記ガラス転移点よりも高い温度に調節した状態で、前記溶融樹脂が射出された前記成形空間へ前記可動入れ子を移動させて固化した状態の前記溶融樹脂(例えば、図1の一次冷却工程で固化した状態の溶融樹脂R)を押圧する入れ子駆動部と、を備えることを特徴としている。
【0010】
このような構成により、型閉じ状態とした一組の金型間に形成された成形空間内に射出した後に固化させて、ヒケ等の不整部分が形成された樹脂に対し、一組の金型を型閉じ状態としたままで、固化した状態の溶融樹脂のうち可動入れ子で押圧される部分に形成された不整部分を整形することが可能となる。
これにより、射出成形金型を用いた成形品の製造において、不整部分が形成された状態で固化した状態の溶融樹脂に対し、射出成形金型から取り出した後の、切削等の二次加工を行わずに、可動入れ子で押圧される部分に形成された不整部分を整形した成形品を製造することが可能となる。
【0011】
このため、射出成形金型を用いた成形品の製造において、製造工程を増加させることなく、成形品の品質をより向上させることが可能となる。
また、本発明の一態様に係る射出成形金型は、前記温度調節部は、前記ガラス転移点よりも高い温度に調節された前記可動入れ子が固化した状態の前記溶融樹脂を押圧した状態で、前記可動入れ子の温度を前記ガラス転移点よりも低い温度に調節することを特徴としている。
【0012】
このような構成により、成形空間内に射出されて固化した状態の溶融樹脂のうち、可動入れ子で押圧されて不整部分を整形した部分を、効率的に冷却して固化させることが可能となる。
これにより、射出成形金型を用いた成形品の製造において、製造効率を向上させることが可能となる。
【0013】
また、本発明の一態様に係る射出成形金型は、前記可動入れ子のうち前記固化した状態の樹脂を押圧する部分の熱伝導率は、前記可動入れ子のその他の部分の熱伝導率よりも高いことを特徴としている。
このような構成により、可動入れ子のうち、固化した状態の溶融樹脂のうち可動入れ子で押圧される部分と対向して接触する部分を、可動入れ子のその他の部分よりも効率的に昇温させることが可能となる。
【0014】
これにより、射出成形金型を用いた成形品の製造において、不整部分の整形を効率的に行うことが可能となる。また、可動入れ子の昇温に要するコストを低減することが可能となる。
また、本発明の一態様に係る射出成形方法は、型閉じ及び型開きが可能な一組の金型間
に、前記型閉じ状態において形成されている成形空間へ溶融樹脂を射出する射出工程と、前記射出工程において前記成形空間へ射出された前記溶融樹脂を冷却して固化させる一次冷却工程と、前記一組の金型のうち一方に取り付けられている可動入れ子の温度を前記溶融樹脂のガラス転移点よりも高い温度に調節し、前記ガラス転移点よりも高い温度に調節した可動入れ子を前記溶融樹脂が射出された前記成形空間へ移動させて、前記一次冷却工程で固化した状態の前記溶融樹脂を押圧する整形工程と、を有することを特徴としている。
【0015】
このような構成により、型閉じ状態とした一組の金型間に形成された成形空間内に射出した後に固化させて、ヒケ等の不整部分が形成された樹脂に対し、一組の金型を型閉じ状態としたままで、固化した状態の溶融樹脂のうち可動入れ子で押圧される部分に形成された不整部分を整形することが可能となる。
これにより、射出成形金型を用いた成形品の製造において、不整部分が形成された状態で固化した状態の溶融樹脂に対し、射出成形金型から取り出した後の、切削等の二次加工を行わずに、可動入れ子で押圧される部分に形成された不整部分を整形した成形品を製造することが可能となる。
【0016】
このため、射出成形金型を用いた成形品の製造において、製造工程を増加させることなく、成形品の品質をより向上させることが可能となる。
また、本発明の一態様に係る射出成形方法は、前記整形工程において前記ガラス転移点よりも高い温度に調節した可動入れ子により前記一次冷却工程で固化した状態の前記溶融樹脂を押圧した状態で、前記押圧した溶融樹脂を前記成形空間で冷却する二次冷却工程を有し、前記二次冷却工程では、前記可動入れ子の温度を前記ガラス転移点よりも低い温度に調節することを特徴としている。
【0017】
このような構成により、成形空間内に射出されて固化した状態の溶融樹脂のうち、可動入れ子で押圧されて不整部分を整形した部分を、効率的に冷却して固化させることが可能となる。
これにより、射出成形金型を用いた成形品の製造において、製造効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】射出成形金型の概略構成を示す図であり、射出成形金型の断面図である。
【図2】不整部分を整形した状態の、射出成形金型の概略構成を示す図であり、射出成形金型の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を用いて、本発明に係る射出成形金型及び射出成形方法の、実施の形態(実施形態)を説明する。
(第一実施形態)
(構成)
まず、図1を用いて、第一実施形態における、射出成形金型の構成について説明する。
図1は、射出成形金型1の概略構成を示す図であり、射出成形金型1の断面図である。
図1中に示す射出成形金型1は、型閉じ及び型開きが可能な一組の金型が、型閉じ状態である場合において、一組の金型間に形成される成形空間(キャビティ)内に溶融樹脂を射出し、この射出した溶融樹脂を固化させて成形品を製造する装置である。なお、成形空間に関する説明は、後述する。
【0020】
ここで、第一実施形態では、一例として、成形品が、光の透過性を有しており、肉厚部分を有するプリズム形状である場合について説明する。これは、例えば、印刷機(プリン
ター)が備えるインクカートリッジに設けた、インク残量を検出するために光を透過させる部品である。このため、第一実施形態では、溶融樹脂材料として、透明な樹脂を用いる場合について説明する。なお、成形品及び溶融樹脂材料の構成は、上記の構成に限定するものではない。
【0021】
また、成形品を、上記のように、光を透過させる部品とする場合、この成形品には、少なくとも光の入射面や出射面を形成する面(機能面)が、所望の形状からの変化度合いが少ない面であることが要求される。これは、例えば、成形品の面(機能面)に、所望の形状として平面が設定されている場合に、この面(機能面)には、凹凸や表面粗さ等の変化度合いが少ない面であることが要求されることを意味している。
【0022】
なお、成形品が、上記のような、光を透過させる部品以外である場合、すなわち、例えば、外装部品である場合、目視可能な面(意匠面)が、所望の形状からの変化度合いが少ない面であることが要求される。これは、例えば、成形品の面(意匠面)に、所望の形状として文字等のデザインが設定されている場合に、この面には、設定されたデザインからの変化度合いが少ない表面形状を有する面であることが要求されることを意味している。
【0023】
射出成形金型1は、図1中に示すように、上述した一組の金型として、固定側金型2と、可動側金型4を備えている。これに加え、射出成形金型1は、可動入れ子6と、入れ子駆動部8と、入れ子制御部10を備えている。なお、図1中では、型閉じ状態の射出成形金型1を示している。
固定側金型2は、固定側取付け板12と、固定側型板14を備えている。
【0024】
固定側取付け板12は、ボルト等を用いて、射出成形金型1を保持するための固定盤(図示せず)に取り付けられている。
固定側型板14は、ボルト等を用いて、固定側取付け板12の固定盤と対向する面と反対側の面(図1中では、下側の面)に取り付けられており、その内部に、溶融樹脂が移動可能な樹脂通路(図示せず)を有している。
【0025】
樹脂通路の一端側は、固定側型板14の可動側金型4と対向する面(図1中では、下側の面)に開口、具体的には、後述する可動側開口部24と対向する位置に開口している。一方、樹脂通路の他端側は、図外の樹脂射出装置に連通している。
樹脂射出装置は、成形品の容積・形状等に応じて、溶融樹脂材料(固形樹脂材料等)を計量・可塑化し、この計量・可塑化した溶融樹脂を、樹脂通路へ射出する装置である。
【0026】
なお、樹脂通路は、固定側型板14内に設けた部分に連続させて、固定側取付け板12内に設けてもよい。この場合、樹脂通路の他端側は、固定側取付け板12に開口する。
可動側金型4は、可動側取付け板16と、スペーサーブロック18と、エジェクタープレート20と、可動側型板22を備えている。
可動側取付け板16は、図外の駆動機構に連結されており、駆動機構が発生する駆動力を用いて、上下方向(図1中における上下方向)へ移動可能に形成されている。なお、駆動機構とは、例えば、モーターの回転運動を用いた機械式のものや、油等の液体に圧力を加えた液圧式のものがある。
【0027】
スペーサーブロック18は、固化した成形品を取り出す際に、可動側開口部24内に突出させるエジェクターピン(図示せず)を変位させるための空間を、可動側金型4に確保するための板材である。ここで、スペーサーブロック18の厚さ(板厚)は、例えば、エジェクタープレート20の板厚と、エジェクターピンの可動側開口部24内への突出量と、これらに加える遊び分とを合計した値である。
【0028】
エジェクタープレート20は、可動側開口部24内へ突出可能なエジェクターピンを有している。このエジェクターピンは、可動側開口部24内に突出していない状態が通常の状態である。
なお、エジェクタープレート20の具体的な構成例としては、例えば、エジェクターピン及び公知のリターンピンが設けられた上側板材と、エジェクターピン及びリターンピンを押さえて固定するための下側板材を備えた構成がある。この場合、エジェクタープレート20を、射出成形金型1が有する公知のエジェクター装置により突き上げ(上昇させ)て、可動側開口部24内へエジェクターピンを突出させ、可動側開口部24内で固化させた成形品を取り出すこととなる。なお、エジェクタープレート20の構成は、上記の構成に限定するものではない。
【0029】
可動側型板22は、ボルト等を用いて、可動側取付け板16の可動盤と対向する面と反対側の面(図1中では、上側の面)に取り付けられており、その内部に、可動側開口部24と入れ子変位用空隙部26が設けられている。
可動側開口部24は、溶融樹脂を充填する空間であり、可動側型板22のうち、固定側型板14と対向する面(図1中では、上側の面)に開口している。
【0030】
入れ子変位用空隙部26は、可動入れ子6を内部に配置可能な空間であり、可動側開口部24と連続している。
可動入れ子6は、箱型に形成されており、入れ子変位用空隙部26内へ移動可能に配置されている。ここで、入れ子変位用空隙部26内における可動入れ子6の移動方向は、可動側開口部24へ近づく方向及び可動側開口部24から離れる方向である。なお、第一実施形態では、一例として、射出成形金型1の構成を、可動入れ子6を一つのみ備えた構成とする。
【0031】
また、可動入れ子6の一つの面は、可動側開口部24と対向している。
ここで、第一実施形態では、上述したように、成形品の構成を、肉厚部分を有するプリズム形状としている。
このため、第一実施形態では、可動側型板22及び可動入れ子6を、型閉じ及び型開きが可能な一組の金型、すなわち、固定側金型2と可動側金型4が型閉じ状態である場合において、固定側型板14のうち可動側開口部24と対向する面と、可動側開口部24の内壁面と、可動入れ子6のうち可動側開口部24と対向する面との間に形成される成形空間が、肉厚部分を有するプリズム形状に対応した形状となるように形成する。
【0032】
すなわち、第一実施形態では、固定側型板14のうち可動側開口部24と対向する面と、可動側開口部24の内壁面と、可動入れ子6のうち可動側開口部24と対向する面が、成形空間を形成する成形空間形成部を構成している。したがって、第一実施形態の射出成形金型1は、成形空間を形成する成形空間形成部を備えている。
ここで、第一実施形態では、成形品の面のうち、可動側開口部24内で可動入れ子6と対向する面を、所望の形状として平面が設定されている面、すなわち、凹凸や表面粗さ等の変化度合いが少ない面であることが要求される機能面とする。
【0033】
したがって、第一実施形態では、一例として、可動入れ子6のうち可動側開口部24と対向する面を、平坦面で形成した場合について説明する。
また、第一実施形態では、一例として、可動入れ子6のうち可動側開口部24と対向する部分(面)を、可動入れ子6のその他の部分よりも熱伝導率の高い金属で形成した場合について説明する。具体的には、可動入れ子6のうち可動側開口部24と対向する部分を銅(Cu)で形成し、可動入れ子6のその他の部分を鉄(Fe)で形成した場合について説明する。なお、可動入れ子6のうち可動側開口部24と対向する部分を形成する金属と、可動入れ子6のその他の部分を形成する金属との組み合わせは、上述した銅と鉄との組
み合わせに限定するものではない。
【0034】
また、可動入れ子6の内部には、流体(液体、気体)を循環可能な温度調節配管28が配置されている。
ここで、温度調節配管28内に流体を循環させる制御(流体の温度、流体の循環量、流体の循環タイミング等の制御)は、後述する温度調節部30により行う。
また、可動入れ子6内において、温度調節配管28を配置する位置は、例えば、可動入れ子6を可動側開口部24側から見て、温度調節配管28が可動入れ子6の中心付近に配置される位置とする。なお、可動入れ子6内における、温度調節配管28を配置する位置は、可動入れ子6を可動側開口部24側から見て、温度調節配管28が可動入れ子6の中心付近からオフセットした位置でもよい。
【0035】
入れ子駆動部8は、例えば、エアシリンダー、油圧シリンダー、モーター等を用いて形成されており、可動側型板22の側面(図1中では左側の面)に取り付けられている。なお、入れ子駆動部8の構成は、可動側型板22に内蔵されている構成としてもよい。
また、入れ子駆動部8は、後述する駆動量制御部32から入力された指令値に応じて、入れ子変位用空隙部26内で可動入れ子6を移動させる。ここで、入れ子変位用空隙部26内で可動入れ子6を移動させる制御(移動速度、移動量、移動タイミング、成形品へ加える押圧力等の制御)は、駆動量制御部32により行う。
【0036】
入れ子制御部10は、例えば、PC(Personal Computer)を用いて形成されており、温度調節部30と、駆動量制御部32を備えている。
温度調節部30は、成形空間内または可動入れ子6の温度を検出可能な温度センサー(図示せず)と、流体の加熱及び冷却が可能な温度変化部(図示せず)に接続されており、溶融樹脂材料のガラス転移点(熱変形温度)に応じて算出した温度を、指令値として温度変化部へ出力することにより、流体の温度を調節する。なお、温度調節部30には、予め、溶融樹脂材料のガラス転移点を記憶させておく。
【0037】
また、温度調節部30は、上記のように温度を調節した流体を、温度調節配管28内に循環させる。これは、例えば、可動入れ子6の温度が、上記のように温度を調節した流体の温度と近似するように、流体の循環量を制御して行う。
駆動量制御部32は、溶融樹脂が冷却されて固化する際に発生する収縮により、冷却されて固化した樹脂の表面に形成される不整部分(ヒケ等の凹凸)に応じて、入れ子変位用空隙部26内における可動入れ子6の移動量等を算出する。そして、この算出した値を指令値として、入れ子駆動部8へ出力する。
【0038】
ここで、駆動量制御部32には、予め、溶融樹脂材料の物性や成形品の形状寸法(肉厚等)に応じた、溶融樹脂が冷却されて固化する際に発生する不整部分の凹凸量を記憶させておく。そして、駆動量制御部32は、記憶させてある凹凸量に応じて、可動入れ子6の移動量等を算出する。
【0039】
(射出成形方法)
次に、図1を参照しつつ、図2を用いて、上述した構成の射出成形金型1を用いて、成形品を製造する工程について説明する。
第一実施形態では、成形品を製造する際に、射出工程と、保圧工程と、一次冷却工程と、整形工程と、二次冷却工程と、取り出し工程を含む、射出成形方法を用いる。
【0040】
(射出工程、保圧工程及び一次冷却工程)
以下、図1を参照して、射出工程、保圧工程及び一次冷却工程における射出成形金型1の動作を説明する。なお、以下の説明は、型閉じ及び型開きが可能な一組の金型、すなわ
ち、固定側金型2と可動側金型4が型開き状態である状態を前提とする。
射出工程では、まず、可動側金型4を固定側金型2側へ移動させて、可動側金型4と固定側金型2とを接触させ、図1中に示すように、固定側金型2と可動側金型4を型閉じ状態とする。
このとき、駆動量制御部32は、可動入れ子6の位置が、成形空間が成形品に応じた形状となる位置となるように、可動入れ子6の移動量を算出し、この算出した移動量を指令値として、入れ子駆動部8へ出力する。これにより、成形空間を、成形品に応じた形状とする。
【0041】
可動側金型4及び可動入れ子6を移動させて、成形空間を成形品に応じた形状とした後、計量・可塑化した溶融樹脂を成形空間へ射出して、射出工程を終了し、保圧工程へ移行する。
ここで、射出工程では、温度調節配管28内に存在している流体の温度が、溶融樹脂材料のガラス転移点以上の温度である場合、温度調節部30は、溶融樹脂材料のガラス転移点よりも低い温度を算出し、この算出した温度を、指令値として温度変化部へ出力する。これに加え、温度調節部30は、上記のように温度を調節した流体を、温度調節配管28内に循環させる。
【0042】
保圧工程では、可動側金型4及び可動入れ子6の位置を保持して、成形空間において、射出工程で射出した溶融樹脂を保圧し、保圧工程を終了した後、一次冷却工程へ移行する。
一次冷却工程では、上記の保圧工程において、成形空間内へ射出した後に保圧している溶融樹脂を、固定側金型2及び可動側金型4との熱交換作用により冷却して固化させる。
【0043】
このとき、成形空間内において溶融樹脂が固化する際に発生する収縮により、一次冷却工程で固化した状態の樹脂の表面には、不整部分が形成される。なお、図1中では、一次冷却工程で固化した状態の溶融樹脂を、符号Rを付して示している。また、図1中では、一次冷却工程で固化した状態の溶融樹脂Rの表面に形成された不整部分のうち、可動入れ子6と対向する面に形成された不整部分(凹部)を、符号Aを付して示している。
【0044】
ここで、一次冷却工程の次工程である整形工程は、保圧工程を終了した時点から、予め設定した時間が経過した時点で行う。この経過時間は、溶融樹脂材料の物性や成形品の形状寸法に応じて異なる値となる。
なお、第一実施形態では、一例として、保圧工程を終了した直後から、整形工程を開始する場合について説明する。
【0045】
(整形工程)
以下、図1を参照しつつ、図2を用いて、整形工程における射出成形金型1の動作を説明する。
整形工程では、一次冷却工程で固化した状態の溶融樹脂Rに対し、温度を調節した可動入れ子6を押し付けて、不整部分Aを整形する。
ここで、可動入れ子6に対する温度の調節は、上述した保圧工程及び一次冷却工程において、溶融樹脂材料のガラス転移点よりも低い温度に調節した流体を昇温することにより行う。
【0046】
このとき、温度調節部30は、溶融樹脂材料のガラス転移点よりも高い温度を算出し、この算出した温度を指令値として温度変化部へ出力する。これに加え、温度調節部30は、可動入れ子6の温度が、上記のように温度を調節した流体の温度と近似するように、流体の循環量を制御して行う。
ここで、温度調節部30に記憶させてある溶融樹脂材料のガラス転移点が、例えば、8
0[℃]である場合は、流体の温度を、ガラス転移点よりも20[℃]程度高い温度である100[℃]程度に調節する。これに加え、可動入れ子6の温度が、100[℃]程度となるように、流体の循環量を制御する。
【0047】
なお、温度調節部30は、溶融樹脂材料のガラス転移点よりも低い温度(80[℃]未満)に調節されている流体の温度を、100[℃]程度に調節する際に、例えば、100[℃]程度を目標として流体が昇温するように、指令値を算出する。これ以外にも、例えば、120[℃]程度を目標として流体が昇温するように指令値を算出して、流体を急速に昇温させ、流体の温度が100[℃]程度となった時点で、流体の昇温が停止するように、指令値を算出してもよい。
【0048】
さらに、駆動量制御部32は、成形空間内において、一次冷却工程で固化した状態の溶融樹脂Rの表面に形成される不整部分Aに応じて、入れ子変位用空隙部26内における、可動側開口部24側への可動入れ子6の移動量等を算出し、この算出した値を指令値として、入れ子駆動部8へ出力する。
ここで、駆動量制御部32に記憶させてある凹凸量の最大値が、例えば、20[μm]程度である場合は、可動側開口部24側への可動入れ子6の移動量を、10[μm]程度と算出する。
【0049】
また、駆動量制御部32は、一次冷却工程で固化した状態の溶融樹脂Rに対して、上記のように温度を調節した可動入れ子6を押し付ける押圧時間を算出し、この算出した押圧時間の間、可動入れ子6を上記の移動量だけ移動させる。これにより、上記の溶融樹脂Rに、可動入れ子6を押し付ける。
このとき、可動入れ子6は、上述したように、溶融樹脂材料のガラス転移点よりも高い温度に調節されているため、一次冷却工程で固化した状態の溶融樹脂Rのうち、可動入れ子6と接触する部分は、一次冷却により固化している状態から、可動入れ子6から伝達される熱により溶融する。
【0050】
ここで、第一実施形態では、可動入れ子6のうち可動側開口部24と対向する面を、平坦面で形成している。
このため、一次冷却工程で固化した状態の溶融樹脂Rのうち、可動入れ子6と接触して溶融した部分、すなわち、一次冷却工程で固化した状態の溶融樹脂Rのうち、成形品の機能面となる面が、可動側開口部24側へ移動する可動入れ子6により押圧される。これにより、一次冷却工程で固化した状態の溶融樹脂Rのうち、成形品の機能面となる面は、図2中に示すように、不整部分の凹凸量が減少して、平坦な面に整形されることとなる。なお、図2は、不整部分を整形した状態の、射出成形金型1の概略構成を示す図であり、射出成形金型1の断面図である。また、図2中には、不整部分が整形された状態の成形品を、符号Pを付して示している。また、図2中には、可動入れ子6を押圧するために入れ子駆動部8から可動側開口部24側へ突出したピストン部材を、符号34を付して示している。
【0051】
溶融樹脂材料のガラス転移点よりも高い温度に調節した可動入れ子6により、一次冷却工程で固化した状態の溶融樹脂Rのうち、成形品の機能面となる面を押圧して、可動入れ子6の位置を保持して整形工程を終了した後、二次冷却工程へ移行する。
【0052】
(二次冷却工程)
以下、図2を参照して、二次冷却工程における射出成形金型1の動作を説明する。
二次冷却工程では、固定側金型2と可動側金型4を型閉じ状態とし、さらに、可動入れ子6の位置を、一次冷却工程で固化した状態の溶融樹脂Rのうち、成形品の機能面となる面を押圧した位置に保持した状態で、可動入れ子6の温度を調節する。
ここで、可動入れ子6に対する温度の調節は、上述した整形工程において、溶融樹脂材料のガラス転移点よりも高い温度に調節した流体を、冷却することにより行う。
【0053】
このとき、温度調節部30は、溶融樹脂材料のガラス転移点よりも低い温度を算出し、この算出した温度を指令値として温度変化部へ出力する。これに加え、温度調節部30は、可動入れ子6の温度が、上記のように温度を調節した流体の温度と近似するように、流体の循環量を制御して行う。
ここで、温度調節部30に記憶させてある溶融樹脂材料のガラス転移点が、上記と同様、例えば、80[℃]である場合は、流体の温度を、ガラス転移点よりも低い温度である80[℃]未満に調節する。これに加え、可動入れ子6の温度が、80[℃]未満となるように、流体の循環量を制御する。これにより、可動入れ子6の温度を、一次冷却工程における固定側金型2と可動側金型4と同じ温度(または、ガラス転移点未満の温度に近似した温度)へ低下させる。
【0054】
上記のように、可動入れ子6の温度を、溶融樹脂材料のガラス転移点未満の温度である80[℃]未満とすると、一次冷却工程で固化した状態の溶融樹脂Rのうち、整形工程において溶融した部分が冷却されて固化するため、成形空間へ射出された樹脂全体が固化することとなる。
成形空間へ射出された樹脂全体が固化すると、不整部分が整形された状態の成形品Pが形成されるため、二次冷却工程を終了して、取り出し工程へ移行する。
【0055】
(取り出し工程)
以下、図2を参照して、取り出し工程における射出成形金型1の動作を説明する。
取り出し工程では、まず、型閉じ状態の固定側金型2及び可動側金型4に対し、可動側金型4を固定側金型2から離れる方向へ移動させて、可動側金型4と固定側金型2とを離間させ、固定側金型2と可動側金型4を型開き状態(図示せず)とする。
そして、固定側金型2と可動側金型4を型開き状態とした後、可動側開口部24内へエジェクターピンを突出させて、可動側開口部24内(成形空間内)で固化させた成形品Pを取り出して、成形品Pの製造を終了する。
【0056】
以上説明したように、本発明では、型閉じ状態とした固定側金型2と可動側金型4との間に形成された成形空間内に射出した溶融樹脂を固化させて、ヒケ等の不整部分が表面に形成された溶融樹脂Rに対し、固定側金型2と可動側金型4を型閉じ状態としたままで、不整部分Aを整形することが可能となる。
このため、射出成形金型1を用いた成形品の製造において、不整部分Aが形成された状態で固化した溶融樹脂Rに対し、射出成形金型1から取り出した後の、切削等の二次加工を行わずに、機能面に形成された不整部分Aを整形した成形品Pを製造することが可能となる。
【0057】
したがって、本発明では、射出成形金型1を用いた成形品の製造において、製造工程を増加させることなく、成形品Pの品質をより向上させることが可能となる。
また、本発明では、温度調節部30により、ガラス転移点よりも高い温度に調節された可動入れ子6が固化した状態の溶融樹脂Rを押圧した状態で、可動入れ子6の温度を、ガラス転移点よりも低い温度に調節する。これは、上記の二次冷却工程において行う。
【0058】
このため、成形空間内に射出されて固化した溶融樹脂Rのうち、可動入れ子6で押圧されて不整部分Aを整形した部分を、効率的に冷却して固化させることが可能となり、射出成形金型1を用いた成形品Pの製造において、製造効率を向上させることが可能となる。
また、本発明では、可動入れ子6のうち可動側開口部24と対向する面を銅で形成し、可動入れ子6のその他の部分を、銅よりも熱伝導率の低い金属である鉄で形成している。
【0059】
このため、可動入れ子6のうち、成形品Pの機能面と対向して接触する部分を、その他の部分よりも効率的に昇温させることが可能となるため、不整部分Aの整形を効率的に行うことが可能となる。また、流体の昇温に要するコストを低減することが可能となる。
また、本発明では、可動入れ子6内において、温度調節配管28を配置する位置を、可動入れ子6を可動側開口部24側から見て、温度調節配管28が可動入れ子6の中心付近に配置される位置としている。
【0060】
このため、温度調節配管28を配置する位置が可動入れ子6の中心付近からオフセットしている場合と比較して、可動入れ子6のうち、成形品Pの機能面と対向して接触する面において、流体の温度変化に伴う温度変化が均一化される。
これにより、可動入れ子6のうち、成形品Pの機能面と対向して接触する面における加熱ムラを抑制することが可能となるため、不整部分Aの整形を効率的に行うことが可能となる。
【0061】
(変形例)
以下、第一実施形態の変形例を列挙する。
第一実施形態においては、成形品Pの面のうち、可動側開口部24内で可動入れ子6と対向する面を、所望の形状として平面が設定されている面とし、可動入れ子6のうち可動側開口部24と対向する面を、平坦面で形成したが、これに限定するものではない。すなわち、例えば、成形品Pが凸レンズ形状を有する部品である場合等、成形品Pの面のうち、可動側開口部24内で可動入れ子6と対向する面を、所望の形状として中央部が最も突出して連続する湾曲面が設定されている面とした場合、可動入れ子6のうち可動側開口部24と対向する面を、中央部が最も窪んで連続する湾曲面で形成してもよい。
【0062】
すなわち、可動入れ子6のうち可動側開口部24と対向する面の形状は、平坦面に限定するものではなく、成形品Pの構成に応じて、凹部や凸部が形成されている面とすればよい。この場合、凹部や凸部の形状としては、例えば、可動側開口部24側から見て、円形や多角形に形成されていてもよい。
また、第一実施形態においては、射出成形金型1の構成を、可動入れ子6を一つのみ備えた構成としたが、これに限定するものではなく、不整部分Aの整形が要求される面が複数ある場合等は、射出成形金型1の構成を、可動入れ子6を複数備えた構成としてもよい。この場合、射出成形金型1の構成を、複数の可動入れ子6に対して、入れ子駆動部8及び入れ子制御部10を個別に備えている構成、すなわち、入れ子駆動部8及び入れ子制御部10を複数備えている構成としてもよい。
【0063】
また、第一実施形態においては、可動入れ子6のうち可動側開口部24と対向する部分を、その他の部分よりも熱伝導率の高い金属(銅)で形成したが、これに限定するものではなく、可動入れ子6全体を、熱伝導率が同一の金属で形成してもよい。
また、第一実施形態においては、可動入れ子6の温度を調節する構成として、可動入れ子6の内部に、流体を循環可能な温度調節配管28を配置し、温度調節部30によって、温度調節配管28内に循環させる流体の温度や循環量、循環タイミング等の制御を行う構成としたが、可動入れ子6の温度を調節する構成は、これに限定するものではない。
【0064】
すなわち、可動入れ子6の温度を昇温させる構成として、例えば、可動入れ子6の内部に、棒ヒーター(シーズヒーター、サーミスタ)等、電力の供給により加熱可能な熱源を配置してもよい。この場合、可動入れ子6の温度を低下させる構成として、例えば、可動入れ子6の内部に、ペルチェ素子等、電力の供給により冷却可能な構成を配置してもよい。
【0065】
また、可動入れ子6の温度を調節する構成としては、上記のような、電力の供給により加熱可能な熱源を配置する構成以外に、例えば、温度の異なる複数の媒体(カートリッジ)を、可動入れ子6内へ着脱可能な構成としてもよい。この場合、温度の異なる複数の媒体としては、可動入れ子6の温度をガラス転移点よりも低い温度に調節可能な低温媒体と、可動入れ子6の温度をガラス転移点よりも高い温度に調節可能な高温媒体の、少なくとも二種類を用い、工程に応じて交換する。
【0066】
また、第一実施形態においては、可動入れ子6及び温度調節部30の構成を、可動入れ子6の温度を加熱及び低下可能な構成としたが、これに限定するものではなく、可動入れ子6及び温度調節部30の構成を、可動入れ子6の温度を加熱することのみが可能な構成であってもよい。この場合、整形工程後の可動入れ子6は、加熱を停止することにより、経時的に冷却させて、成形空間を形成するその他の構成(固定側金型2と可動側金型4)の温度と同じ温度とし、可動入れ子6を押圧して、不整部分Aを整形した溶融樹脂Rのうち、溶融させた部分を冷却して固化させる。
【0067】
また、第一実施形態においては、可動側金型4に可動入れ子6が取り付けられている構成としたが、これに限定するものではなく、固定側金型2に可動入れ子6が取り付けられている構成としてもよい。
また、第一実施形態においては、可動入れ子6の一つの面のみが、可動側開口部24と対向している構成としたが、これに限定するものではない。すなわち、例えば、成形品Pの構成が、隣り合う二つの機能面や意匠面を有している構成である場合には、可動入れ子6のうち隣り合う二つの面が、可動側開口部24と対向している構成としてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 射出成形金型、2 固定側金型、4 可動側金型、6 可動入れ子、8 入れ子駆動部、10 入れ子制御部、12 固定側取付け板、14 固定側型板、16 可動側取付け板、18 スペーサーブロック、20 エジェクタープレート、22 可動側型板、24 可動側開口部、26 入れ子変位用空隙部、28 温度調節配管、30 温度調節部、32 駆動量制御部、34 ピストン部材、R 一次冷却工程で固化した状態の溶融樹脂、A 不整部分、P 不整部分が整形された状態の成形品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
型閉じ及び型開きが可能な一組の金型のうち一方に取り付けられている可動入れ子と、
前記型閉じ状態において前記一組の金型間に形成され、且つ溶融樹脂が射出される成形空間を形成する成形空間形成部と、
前記成形空間へ射出された前記溶融樹脂が固化した状態で、前記可動入れ子の温度を前記溶融樹脂のガラス転移点よりも高い温度に調節する温度調節部と、
前記温度調節部が前記可動入れ子の温度を前記ガラス転移点よりも高い温度に調節した状態で、前記溶融樹脂が射出された前記成形空間へ前記可動入れ子を移動させて固化した状態の前記溶融樹脂を押圧する入れ子駆動部と、を備えることを特徴とする射出成形金型。
【請求項2】
前記温度調節部は、前記ガラス転移点よりも高い温度に調節された前記可動入れ子が固化した状態の前記溶融樹脂を押圧した状態で、前記可動入れ子の温度を前記ガラス転移点よりも低い温度に調節することを特徴とする請求項1に記載した射出成形金型。
【請求項3】
前記可動入れ子のうち前記固化した状態の樹脂を押圧する部分の熱伝導率は、前記可動入れ子のその他の部分の熱伝導率よりも高いことを特徴とする請求項1または2に記載した射出成形金型。
【請求項4】
型閉じ及び型開きが可能な一組の金型間に、前記型閉じ状態において形成されている成形空間へ溶融樹脂を射出する射出工程と、
前記射出工程において前記成形空間へ射出された前記溶融樹脂を冷却して固化させる一次冷却工程と、
前記一組の金型のうち一方に取り付けられている可動入れ子の温度を前記溶融樹脂のガラス転移点よりも高い温度に調節し、前記ガラス転移点よりも高い温度に調節した可動入れ子を前記溶融樹脂が射出された前記成形空間へ移動させて、前記一次冷却工程で固化した状態の前記溶融樹脂を押圧する整形工程と、を有することを特徴とする射出成形方法。
【請求項5】
前記整形工程において前記ガラス転移点よりも高い温度に調節した可動入れ子により前記一次冷却工程で固化した状態の前記溶融樹脂を押圧した状態で、前記押圧した溶融樹脂を前記成形空間で冷却する二次冷却工程を有し、
前記二次冷却工程では、前記可動入れ子の温度を前記ガラス転移点よりも低い温度に調節することを特徴とする請求項4に記載した射出成形方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−179783(P2012−179783A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43604(P2011−43604)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】