説明

射撃訓練システム

【課題】 迅速に調整を行い容易に設置することができ、高い精度で着弾点の位置を検出することができる射撃訓練システムを提供する。
【解決手段】 映像投影装置により調整画像をスクリーンに投影し(ステップS10)、投影された調整画像を撮影装置により撮影する(ステップS11)。撮影された調整画像に基づいて調整画像の投影範囲及び投影位置を検出し(ステップS12)、検出された投影範囲と予め設定された基準範囲とを用いて調整画像の投影倍率を算出する(ステップS13)。また、検出された投影位置と予め設定された基準位置とを用いて調整画像の位置のずれ量を算出する(ステップS14)。算出された投影倍率及びずれ量に基づいて撮影映像の座標を投影映像の座標に変換するための調整を行う(ステップS15)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スクリーン上に投影された映像に対して、実弾に模したレーザ光を照射することにより射撃訓練を行う射撃訓練システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
実弾を用いない射撃訓練は、スクリーンに所定映像、例えば、標的の映像等の訓練映像をプロジェクタ等の映像投影装置を用いて投影し、投影された映像上にレーザ弾(レーザ光)を発射(照射)することにより行われる。即ち、スクリーンに対して発射されたレーザ弾の着弾点を示す映像をCCD(Charge−Coupled Device)カメラ等の撮影装置を用いて撮影し、撮影された映像を用いて標的への的中率等を判定することにより訓練が行われる。スクリーンに投影された標的にレーザ弾が的中したか否かは、映像投影装置によりスクリーンに投影された訓練映像と、撮影装置により撮影された着弾点を示す映像とを用いて、訓練映像におけるレーザ弾の着弾点を検出することにより判定される。従って、訓練映像と着弾点を示す映像とが適切に対応するように、映像が投影される範囲や映像が撮影される範囲を調整する必要がある。
【0003】
そこで、特許文献1により、撮影装置により撮影される撮影範囲が、映像投影装置によりスクリーンに映像を投影する際の投影範囲を含み、かつ、投影範囲より僅かに大きくなるように調整する射撃訓練装置が提案されている。この射撃訓練装置においては、投影範囲の四隅を示す4つの基準点を映像投影装置によりスクリーンに投影し、投影された基準点を含む映像を撮影装置により撮影する。そして、撮影された基準点と、予め定められている撮影範囲を示す基準点とを比較し、撮影範囲を示す基準点が投影範囲を示す基準点より僅かに外側にあるように撮影装置のズーム比を変更することにより撮影範囲を調整している。
【0004】
【特許文献1】特開平10−220998号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、映像投影装置によるスクリーンへの投影範囲に対して、撮影装置による撮影範囲が僅かに大きくなるように調整する場合、撮影装置のズーム比を変更する調整に時間が掛かるという問題がある。即ち、撮影範囲の外枠が、投影範囲の外枠よりも僅かに外側になるように調整するため、撮影範囲が所定の範囲内に収まるまで基準点の撮影・調整の処理を繰り返すことが必要になり、調整に時間が掛かる。
【0006】
また、特許文献1記載の射撃訓練装置においては、投影範囲全体を用いて撮影範囲を調整しているため、最もレーザ弾が着弾する可能性の高い投影映像の中心部における撮影装置の解像度が低下する可能性がある。即ち、実際の射撃訓練においては、スクリーンに投影される映像の中心付近に標的が配置されるため、映像の中心付近における着弾点を高い解像度で正確に撮影しなければ、着弾点の検出精度が低下する。
【0007】
この発明の課題は、実弾に模したレーザ光を用いた射撃訓練において、迅速に調整を行い容易に設置できると共に、高い精度で着弾点を検出できる射撃訓練システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の射撃訓練システムは、スクリーンに所定映像を投影する映像投影装置と、前記映像投影装置に対して所定の位置関係を保った状態で配置され、前記所定映像上におけるレーザ拳銃から発射されたレーザ弾の着弾点を撮影する撮影装置と、前記映像投影装置及び前記撮影装置を制御する制御装置とを備え、前記映像投影装置及び前記撮影装置が前記スクリーンに対向した所定の位置に配置されている射撃訓練システムにおいて、前記映像投影装置は、前記スクリーンに調整画像を投影する調整画像投影手段を備え、前記撮影装置は、前記調整画像投影手段により前記スクリーンに投影された前記調整画像を撮影する調整画像撮影手段を備え、前記制御装置は、前記スクリーン上における前記調整画像の位置及び範囲として予め設定された基準位置及び基準範囲を含む設定情報を記憶する設定情報記憶手段と、前記調整画像撮影手段により撮影された前記調整画像を記憶する調整画像記憶手段と、前記調整画像記憶手段に記憶された前記調整画像に基づいて、前記スクリーンに投影された前記調整画像の投影位置及び投影範囲を検出する調整画像検出手段と、前記調整画像検出手段により検出された投影範囲及び前記設定情報記憶手段に記憶されている基準範囲に基づいて、前記調整画像の投影倍率を算出する投影倍率算出手段と、前記調整画像検出手段により検出された投影位置及び前記設定情報記憶手段に記憶されている基準位置に基づいて、前記調整画像の位置のずれ量を検出するずれ量検出手段と、前記投影倍率算出手段により算出された投影倍率及び前記ずれ量検出手段により検出されたずれ量に基づいて、前記撮影装置により撮影される撮影映像の座標を、前記映像投影装置により投影される投影映像の座標に変換する座標変換手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
また、請求項2記載の射撃訓練システムは、前記映像投影装置の投影レンズの光軸方向と、前記撮影装置の撮影レンズの光軸方向とを一致させた状態で配置したことを特徴とする。
【0010】
また、請求項3記載の射撃訓練システムは、前記映像投影装置及び前記撮影装置が、前記スクリーンの略中心から延びる法線上に配置されていることを特徴とする。
【0011】
この請求項1〜請求項3記載の射撃訓練システムによれば、映像投影装置と撮影装置とが所定の位置関係、例えば、映像投影装置の投影レンズの光軸方向と撮影装置の撮影レンズの光軸方向とを一致させた位置関係を保ち、映像投影装置及び撮影装置がスクリーンに対向して所定の位置に、例えば、スクリーンの略中心から延びる法線上に配置されているため、調整画像の基準範囲と投影範囲とを用いて算出された調整画像の投影倍率と、調整画像の基準位置と投影位置とを用いて算出された調整画像の位置のずれ量とに基づいて、撮影映像の座標を投影映像の座標に極めて容易に変換することができる。従って、射撃訓練システムを設置する際には、所定の位置関係を保った映像投影装置及び撮影装置を、スクリーンに対向させて所定の位置に配置するだけでよく、スクリーンと、映像投影装置及び撮影装置との間の距離を繰り返し調整したり、調整画像を撮影し撮影映像のズーム比を変更する等の調整を繰り返し行う必要がなく、迅速、かつ、容易に射撃訓練システムを設置することができる。
【0012】
また、請求項4記載の射撃訓練システムは、前記調整画像は所定の色彩を有し、前記調整画像撮影手段は、前記所定の色彩に対応する波長の光を透過させる光学フィルタを介して前記調整画像を撮影することを特徴とする。
【0013】
この請求項4記載の射撃訓練システムによれば、調整画像が有する色彩に対応する波長の光を透過させる光学フィルタを介して調整画像を撮影している。従って、調整画像以外の色彩に対応する波長の光及び太陽光や室内灯等の光によるノイズを除去して調整画像を撮影することができ、高い解像度で撮影された調整画像を用いて高い精度の調整を行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、映像投影装置と撮影装置とが所定の位置関係、例えば、映像投影装置の投影レンズの光軸方向と撮影装置の撮影レンズの光軸方向とを一致させた位置関係を保ち、映像投影装置及び撮影装置がスクリーンに対向して所定の位置に、例えば、スクリーンの略中心から延びる法線上に配置されているため、調整画像の投影倍率と、調整画像の位置のずれ量とに基づいて、撮影映像における座標を投影映像における座標に極めて容易に変換することができる。従って、調整画像を撮影し撮影装置のズーム比を変更する等の調整を繰り返す必要がなく、容易、かつ、迅速に射撃訓練システムを設置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態に係る射撃訓練システムについて説明する。図1は、この発明の実施の形態に係る射撃訓練システムの概略を説明するための図である。射撃訓練システムは、スクリーン2の略中心から延びる法線上に配置されたプロジェクタ(映像投影装置)6及びCCD(Charge−Coupled Device)カメラ(撮影装置)8と、制御装置10(図1においては図示を省略、図2参照)とを備えている。なお、図1において、一点鎖線はプロジェクタ6により投影される映像を示し、破線はCCDカメラ8により撮影される映像を示している。また、プロジェクタ6とCCDカメラ8とは、プロジェクタ6の投影レンズの光軸方向と、CCDカメラ8の撮影レンズの光軸方向とを一致させた状態で、例えば、投影レンズの中心と撮影レンズの中心とが同一鉛直線上に位置するように配置され一体化されている。また、図1において、射撃訓練を行う者(射撃手)は、レーザ弾(レーザ光)を発射(照射)する拳銃(レーザ拳銃)4を用い、スクリーン2に投影された映像(訓練映像)中の標的に対してレーザ弾(レーザ光)を発射(照射)することにより射撃訓練を行う。
【0016】
図2は、この発明の実施の形態に係る射撃訓練システムのブロック構成図である。射撃訓練システムは、図2に示すように、訓練映像を投影するプロジェクタ6、レーザ弾の着弾点を撮影するCCDカメラ8、プロジェクタ6及びCCDカメラ8における処理を制御する制御装置10を備えている。射撃訓練システムにおいては、制御装置10による制御に基づいて、プロジェクタ6により訓練映像がスクリーン2(図1参照)に投影され、制御装置10による制御に基づいて、CCDカメラ8によりスクリーン2に投影された訓練映像中の標的に対して拳銃4から発射されたレーザ弾の着弾点が撮影される。なお、制御装置10としては、パーソナルコンピュータ等が用いられる。
【0017】
図3は、この発明の実施の形態に係る射撃訓練システムにおける制御装置10のブロック構成図である。制御装置10は、図3に示すように、制御装置10におけるデータの処理を制御するデータ制御部20を備えている。データ制御部20には、プロジェクタ6及びCCDカメラ8との間の通信を制御する通信制御部22及びプロジェクタ6を介してスクリーン2に投影される映像データを記憶した映像データ記憶部24が接続されている。また、データ制御部20には、CCDカメラ8を介して撮影された着弾点の撮影データを記憶する撮影データ記憶部26及び投影映像と撮影映像との調整に用いられる情報等を記憶するデータ記憶部28が接続されている。
【0018】
映像データ記憶部24には、プロジェクタ6によりスクリーン2に投影される映像データ、即ち、プロジェクタ6によりスクリーン2に投影される調整画像のデータ及び訓練映像を示すデータが記憶されている。ここで、調整画像とは、CCDカメラ8により撮影される映像(撮影映像)の座標を、プロジェクタ6によりスクリーン2に投影される映像(投影映像)の座標に変換するための調整を行う際に用いられる画像であり、例えば、緑色で丸型の画像等が用いられる。また、訓練映像とは、例えば、コンビニエンスストアから逃亡する強盗犯等を標的とした動画像である。なお、1秒間の動画像は数10フレーム(例えば30フレーム)の静止画像により構成されており、映像データ記憶部24には、訓練映像である動画像を構成する全フレームの静止画像が記憶されている。また、各静止画像における標的(犯人)の位置を示すデータ、例えば、標的の位置を示す座標等が映像データ記憶部24に記憶されている。
【0019】
また、撮影データ記憶部26には、CCDカメラ8により撮影される撮影映像のデータ、即ち、CCDカメラ8により撮影された調整画像や、スクリーン2におけるレーザ弾の着弾点を示すデータが記憶される。なお、CCDカメラ8には、調整画像を撮影する際には、例えば、調整画像の色彩である緑色に対応する波長の光を良好に透過させる光学フィルタが装着され、着弾点を撮影する際には、レーザ弾として用いられるレーザ光の波長の光を良好に透過させる光学フィルタが装着される。従って、CCDカメラ8においては、着弾点を撮影する際には、プロジェクタ6によりスクリーン2に投影される訓練映像は撮影されず、レーザ弾の着弾点、即ち、スクリーン2に照射されたレーザ光の点(着弾点)のみが撮影される。
【0020】
また、データ記憶部28には、座標変換を行うための調整、即ち、プロジェクタ6によりスクリーン2に投影される投影映像におけるx−y座標系の座標と、CCDカメラ8により撮影される撮影映像におけるX−Y座標系の座標とを一致させる座標変換を行うために用いられる設定情報が記憶されている。ここで、設定情報については、以下に示す図4を用いて説明する。
【0021】
図4は、データ記憶部28に記憶されている調整画像が基準範囲及び基準位置に投影された状態を示す図である。図4においては、スクリーン2と、プロジェクタ6及びCCDカメラ8とが所定の位置に、即ち、スクリーン2の略中心から延びる法線上に、スクリーン2から、例えば、4mの距離を隔てて対向する位置に設置された場合に、プロジェクタ6によりスクリーン2に投影された調整画像30を含む投影映像40と、CCDカメラ8により撮影される撮影映像50とを示している。また、図4に示すように、調整画像30の中心、投影映像40に設定されたx−y座標系の原点(0,0)、撮影映像50に設定されたX−Y座標系の原点(0,0)が一致するように、スクリーン2、プロジェクタ6及びCCDカメラ8がそれぞれ所定の位置に配置されている。ここで、スクリーン2とプロジェクタ6及びCCDカメラ8との間の距離及びスクリーン2に対するプロジェクタ6及びCCDカメラ8の配置位置を示すデータ、調整画像30の基準範囲を示す例えば、調整画像30の半径を示すデータ、調整画像30の基準位置を示す例えば、調整画像30の中心を示す座標(0,0)、調整画像30とX(x)軸との交点を示す座標(−30,0)、(30,0)、調整画像30とY(y)軸との交点を示す座標(0,30)、(0,−30)を含む情報が、設定情報としてデータ記憶部28に記憶される。なお、調整画像30の基準位置を示すデータとして記憶される座標を用いて、調整画像30の半径が算出される。
【0022】
次に、図5のフローチャートを参照して、この発明の実施の形態に係る射撃訓練システムにおける座標変換の処理について説明する。まず、図1に示すように、プロジェクタ6及びCCDカメラ8を、スクリーン2の略中心から延びる法線上に位置するように配置する。この時、プロジェクタ6及びCCDカメラ8は、プロジェクタ6の投影レンズの中心と、CCDカメラ8の撮影レンズの中心とが同一鉛直線上に位置するように配置され一体化されており、プロジェクタ6及びCCDカメラ8は、スクリーン2から所定の距離、例えば、4〜6m等の範囲内において任意の距離を隔てて配置される。
【0023】
次に、制御装置10による制御に基づいて、プロジェクタ6を介して調整画像をスクリーン2に投影する(ステップS10)。即ち、映像データ記憶部24に記憶されている緑色で丸型の画像データが通信制御部22を介して制御装置10からプロジェクタ6に送信され、プロジェクタ6において、受信された映像データに基づき緑色で丸型の調整画像がスクリーン2に投影される。なお、調整画像は、プロジェクタ6により映像が投影される範囲の中心に位置するようにスクリーン2に投影される。
【0024】
次に、スクリーン2に投影された調整画像を、制御装置10による制御に基づいてCCDカメラ8により撮影する(ステップS11)。なお、CCDカメラ8により撮影された調整画像は、CCDカメラ8から制御装置10に送信される。そして、制御装置10において、CCDカメラ8から送信された調整画像のデータが通信制御部22を介して受信され、制御装置10の撮影データ記憶部26に記憶される。
【0025】
図6は、実施の形態に係る射撃訓練システムにおいて撮影された調整画像の一例を示す図である。なお、調整画像32は、図6に示すように、調整画像32の中心と投影映像42の中心とが一致するように、即ち、投影映像42に設定されたx−y座標系における原点と調整画像32の中心とが一致するようにスクリーン2に投影されている。
【0026】
次に、ステップS11において撮影された調整画像に基づいて、スクリーン2に投影された調整画像の範囲(投影範囲)及び位置(投影位置)を検出する(ステップS12)。例えば、図6に示すように、撮影映像50の中心を原点とするX−Y座標系を設定する。そして、撮影映像50のX−Y座標系における撮影された調整画像32の中心を示す座標、中心を通りX軸と平行な線分と調整画像32との交点を示す座標及び中心を通りY軸と平行な線分と調整画像32との交点を示す座標を検出する。そして、検出された座標に基づいて、調整画像32の投影範囲を示すデータとして調整画像32の半径の値が算出されデータ記憶部28に記憶される。また、調整画像32の投影位置を示すデータとして、調整画像32の中心を示す座標等の検出された座標がデータ記憶部28に記憶される。
【0027】
次に、ステップS12において検出された調整画像の投影範囲と、設定情報に含まれる調整画像の基準範囲に基づいて、調整画像の投影倍率を算出する(ステップS13)。例えば、撮影データ記憶部26に投影範囲として記憶されている調整画像32(図6参照)の半径として「40」が記憶されており、データ記憶部28に基準範囲として記憶されている調整画像30(図4参照)の半径として「30」が記憶されているとする。この場合には、投影倍率として「40/30」が算出される。なお、算出された投影倍率は、データ記憶部28に記憶される。
【0028】
次に、ステップS12において検出された投影位置と、設定情報に含まれる調整画像の基準位置とに基づいて、調整画像のずれ量を算出する(ステップS14)。例えば、撮影データ記憶部26に投影位置として記憶されている調整画像32(図6参照)の中心を示す座標(−150,100)と、データ記憶部28に基準位置として記憶されている調整画像30(図4参照)の中心を示す座標(0,0)とを用いて、X軸方向のずれ量「−150」、Y軸方向のずれ量「+100」が算出される。なお、算出されたずれ量は、データ記憶部28に記憶される。
【0029】
次に、CCDカメラ8により撮影される映像(撮影映像)のX−Y座標系における座標を、プロジェクタ6により投影される映像(投影映像)のx−y座標系における座標に変換するための調整を行う(ステップS15)。例えば、投影倍率が「40/30」であり、ずれ量がX軸方向「−150」、Y軸方向「+100」となっている場合には、投影映像におけるx−y座標系と、撮影映像におけるX−Y座標系との投影倍率及びずれ量を以下の数式(1)により示すことができる。
(x,y)={40/30(X−150)、40/30(Y+100)}・・・(1)
ここで、(x,y)は、投影映像のx−y座標系における座標を示し、(X,Y)は、撮影映像のX−Y座標系における座標を示している。従って、数式(1)を用いることにより、撮影映像のX−Y座標系における座標を、投影映像のx−y座標系における座標に変換し、両座標系を正確に対応させることができる。なお、上述の数式(1)は、座標変換の際に用いられる調整結果としてデータ記憶部28に記憶される(ステップS16)。
【0030】
次に、この発明の実施の形態に係る射撃訓練システムを用いた射撃訓練について説明する。まず、図1に示すように、スクリーン2、プロジェクタ6及びCCDカメラ8をそれぞれ所定の位置に配置し、図5のフローチャートにおける処理と同様の処理により、スクリーン2に投影された映像をCCDカメラ8により撮影した撮影映像に設定されたX−Y座標系における座標を、プロジェクタ6によりスクリーン2に投影される投影映像に設定されたx−y座標系における座標に変換するための調整を行う。
【0031】
次に、プロジェクタ6により訓練映像をスクリーン2に投影する。そして、射撃手は、実弾に模したレーザ弾(レーザ光発射装置)が装着された拳銃4(図1参照)を用いて、図1に示すように、プロジェクタ6によりスクリーン2に投影された訓練映像に含まれる標的に対してレーザ弾を発射する。
【0032】
ここで、訓練映像に含まれる標的に対して発射されたレーザ弾の着弾点は、CCDカメラ8により撮影されている。このCCDカメラ8においては、レーザ弾の着弾点を正確に記録すべく、撮影レンズにレーザ弾の波長を良好に透過させる光学フィルタが装着されている。従って、CCDカメラ8においては、訓練映像は撮影されずレーザ弾の着弾点が撮影される。なお、CCDカメラ8により撮影された着弾点のデータは、制御装置10に送信され、撮影データ記憶部26(図3参照)に記憶される。
【0033】
次に、制御装置10において、訓練映像中におけるレーザ弾の着弾点を検出する。ここで、プロジェクタ6による訓練映像の投影と、CCDカメラ8による着弾点の撮影とは、制御装置10による制御に基づいて同期をとって行われている。そのため、プロジェクタ6によりスクリーン2に投影される訓練映像と、CCDカメラ8により撮影される着弾点の映像とが対応付けられている。従って、映像データ記憶部24に記憶されている訓練映像を構成する静止画像の中で、撮影された着弾点に対応する静止画像における標的の位置を示す座標と、撮影データ記憶部26に記憶されている着弾点のデータにより示される着弾点の座標とを用いて、訓練映像中におけるレーザ弾の着弾点を検出する。
【0034】
即ち、着弾点の座標をデータ記憶部28に記憶されている調整結果を用いて静止画像における座標系における座標に変換する。例えば、調整結果として、データ記憶部28に上述の数式(1)が記憶されている場合には、着弾点の座標(XHP,YHP)を数式(1)の(X,Y)に当てはめ、静止画像の中心を原点とするx−y座標系における着弾点の座標(xHP,yHP)に変換する。
【0035】
次に、変換された着弾点の座標が、標的の座標により示される標的の位置と重複している場合には、レーザ弾が標的に的中したと判定される。次に、レーザ弾が標的に的中したと判定された場合には、プロジェクタ6による訓練映像の投影を停止し、静止画像上における着弾点を示した画像がプロジェクタ6を介してスクリーン2に投影される。なお、静止画像上における着弾点を示した画像は、着弾点検出結果としてデータ記憶部28に記憶される。また、レーザ弾が標的に的中していないと判定された場合には、プロジェクタ6による訓練映像の投影が継続され、射撃訓練が行われる。
【0036】
この発明の実施の形態に係る射撃訓練システムによれば、スクリーンに対向した所定の位置に、所定の位置関係を保った状態のプロジェクタ及びCCDカメラを配置しているため、スクリーンとプロジェクタ及びCCDカメラの間の距離を変更等する調整を繰り返し行う必要がなく、射撃訓練システムを迅速、かつ、容易に設置することができる。
【0037】
また、この発明の実施の形態に係る射撃訓練システムによれば、プロジェクタの投影レンズの光軸方向と、CCDカメラの撮影レンズの光軸方向とを一致させた位置関係を保った状態で、プロジェクタ及びCCDカメラをスクリーンの略中心から延びる法線上に配置することによって、撮影映像における座標を投影映像における座標に変換する処理を行う。従って、プロジェクタ及びCCDカメラにおいてズーム比の変更等の調整を行う機能を備える必要がないため、小型で低価格のプロジェクタ及びカメラを用いて射撃訓練システムを構成することができ、可搬性に優れたコンパクトな射撃訓練システムを低コストで提供することができる。
【0038】
また、この発明の実施の形態に係る射撃訓練システムによれば、撮影映像の中心を示す原点と、投影映像の中心を示す原点とを一致させることによって、撮影映像における座標を投影映像における座標に変換している。従って、訓練映像において最も標的が存在する可能性が高く、最も着弾の可能性が高い訓練映像の中心部分における着弾点を高い精度で検出することができる。そのため、撮影映像の範囲を、投影映像の範囲と一致させる調整を行っている場合と異なり、訓練映像の中心部分に存在する標的に対する的中率を高い精度で判定することができ、高精度の射撃訓練を実現することができる。
【0039】
また、この発明の実施の形態に係る射撃訓練システムによれば、緑色の調整画像を撮影する際にはCCDカメラに緑色に対応する波長の光を良好に通過させる光学フィルタが装着されている。従って、他の色彩に対応する波長の光や室内灯等の光やスクリーンに投影されている訓練映像をノイズとして排除して撮影することができ、高い解像度で撮影された調整画像を用い、高い精度で調整を行うことができる。
【0040】
なお、上述の実施の形態に係る射撃訓練システムにおいては、プロジェクタ及びCCDカメラを、スクリーンの略中心から延びる法線上に配置しているが、その他の位置に配置されていてもよい。即ち、プロジェクタ及びCCDカメラが所定の位置関係を保ち、スクリーンに対向した位置であれば、どのような位置に配置してもよい。
【0041】
また、上述の実施の形態に係る射撃訓練システムにおいては、調整画像として丸型で緑色の画像を用いたが、調整画像の形状は丸型に限定されるものではなく、調整画像の色彩も緑色に限定されるものではない。また、映像投影装置としてプロジェクタを用いているが、映像投影装置はプロジェクタのみに限定されるものではない。更に、撮影装置としてCCDカメラを用いているが、撮影装置はCCDカメラのみに限定されるものではない。
【0042】
また、上述の実施の形態に係る射撃訓練システムにおいては、プロジェクタの投影レンズの中心とCCDカメラの撮影レンズの中心とを同一鉛直線上に配置して一体化しているが、光軸方向を固定した状態で配置されていれば、どのように配置されていてもよい。
【0043】
また、上述の実施の形態に係る射撃訓練システムにおいては、調整画像の基準範囲と、調整画像の投影範囲とが相似形となることから、調整画像の基準範囲として、投影された調整画像(円)の半径を記憶しているが、調整画像の基準範囲と、調整画像の投影範囲とが相似形となる場合には、その他のものを基準範囲として記憶するようにしてもよい。例えば、投影された調整画像の面積や、投影された調整画像の画素数を基準範囲として記憶するようにしてもよい。
【0044】
また、上述の実施の形態に係る射撃訓練システムにおいては、標的にレーザ弾が的中したと判定された段階で訓練映像の投影を中止する場合を例としているが、その他のパターンにより射撃訓練を行ってもよい。即ち、訓練映像を所定時間、例えば、15秒間スクリーンに投影し、訓練映像がスクリーンに投影されている間に、予め設定されている回数、訓練映像に含まれる標的に対してレーザ弾を発射する。そして、訓練映像の投影が終了した後に、レーザ弾の着弾点を検出し、何発のレーザ弾が標的に的中したかを判定等することにより、射撃訓練を行うようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】この発明の実施の形態に係る射撃訓練システムの概略を説明するための図である。
【図2】この発明の実施の形態に係る射撃訓練システムのブロック構成図である。
【図3】この発明の実施の形態に係る制御装置のブロック構成図である。
【図4】この発明の実施の形態に係る調整画像の基準範囲及び基準位置の一例を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態に係る制御装置における処理を説明するためのフローチャートである。
【図6】この発明の実施の形態に係る調整画像の投影範囲及び投影位置の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0046】
2・・・スクリーン、4・・・拳銃(レーザ拳銃)、6・・・プロジェクタ、8・・・CCDカメラ、10・・・制御装置、20・・・データ制御部、22・・・通信制御部、24・・・映像データ記憶部、26・・・撮影データ記憶部、28・・・データ記憶部、30、32・・・調整画像、40、42・・・投影映像、50・・・撮影映像。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリーンに所定映像を投影する映像投影装置と、前記映像投影装置に対して所定の位置関係を保った状態で配置され、前記所定映像上におけるレーザ拳銃から発射されたレーザ弾の着弾点を撮影する撮影装置と、前記映像投影装置及び前記撮影装置を制御する制御装置とを備え、前記映像投影装置及び前記撮影装置が、前記スクリーンに対向した所定の位置に配置されている射撃訓練システムにおいて、
前記映像投影装置は、前記スクリーンに調整画像を投影する調整画像投影手段を備え、
前記撮影装置は、前記調整画像投影手段により前記スクリーンに投影された前記調整画像を撮影する調整画像撮影手段を備え、
前記制御装置は、
前記スクリーン上における前記調整画像の位置及び範囲として予め設定された基準位置及び基準範囲を含む設定情報を記憶する設定情報記憶手段と、
前記調整画像撮影手段により撮影された前記調整画像を記憶する調整画像記憶手段と、
前記調整画像記憶手段に記憶された前記調整画像に基づいて、前記スクリーンに投影された前記調整画像の投影位置及び投影範囲を検出する調整画像検出手段と、
前記調整画像検出手段により検出された投影範囲及び前記設定情報記憶手段に記憶されている基準範囲に基づいて、前記調整画像の投影倍率を算出する投影倍率算出手段と、
前記調整画像検出手段により検出された投影位置及び前記設定情報記憶手段に記憶されている基準位置に基づいて、前記調整画像の位置のずれ量を検出するずれ量検出手段と、
前記投影倍率算出手段により算出された投影倍率及び前記ずれ量検出手段により検出されたずれ量に基づいて、前記撮影装置により撮影される撮影映像の座標を、前記映像投影装置により投影される投影映像の座標に変換する座標変換手段と
を備えることを特徴とする射撃訓練システム。
【請求項2】
前記映像投影装置の投影レンズの光軸方向と、前記撮影装置の撮影レンズの光軸方向とを一致させた状態で配置したことを特徴とする請求項1記載の射撃訓練システム。
【請求項3】
前記映像投影装置及び前記撮影装置は、前記スクリーンの略中心から延びる法線上に配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の射撃訓練システム。
【請求項4】
前記調整画像は所定の色彩を有し、
前記調整画像撮影手段は、前記所定の色彩に対応する波長の光を透過させる光学フィルタを介して前記調整画像を撮影することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の射撃訓練システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−207975(P2006−207975A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−24084(P2005−24084)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(000155469)株式会社野村総合研究所 (1,067)
【Fターム(参考)】