説明

導光フィルム、並びにこれを用いた植物の光合成を促進させる装置、太陽電池及び光電変換素子

【課題】入射光が出射部の手前で漏れることがなく、屈折率界面で界面反射が起こることによる光取出し効率の減少がない導光フィルム、この導光フィルムを用いた植物の光合成を促進させる装置、太陽電池及び光電変換素子の提供。
【解決手段】光源から入射される入射光を該入射光側の面で入光させる光入射部と、前記光入射部から入射された光を外部に出射する光出射部と、を有し、前記光出射部の少なくとも一つの面の表面には微細凹凸構造が形成されていることを特徴とする導光フィルムにより、上記課題を達成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導光フィルム、並びにこれを用いた植物の光合成を促進させる装置、太陽電池及び光電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石油などの化石燃料使用により放出された二酸化炭素が大気中に増加すると、地球の温暖化など地球環境が悪化し、自然環境破壊のみならず、干ばつ、大雨、洪水などが多発し、自然災害の発生や農作物にも多大な被害が発生し、人類社会にも大きな影響が生じることから、環境に対しての意識が高まりつつある。
【0003】
このため、大気中に放出される二酸化炭素を減少させる方法として、藻などの植物に太陽光を照射することにより、その光合成を利用して大気中の二酸化炭素を減少させる方法や植物の光合成を促進させる装置が検討されている。
【0004】
また、環境に対しての意識と、エネルギー対策の一環から、太陽光から直接電気を得ることができるクリーンな発電方法である太陽電池の開発が検討され、実用化されようとしている。
【0005】
ところで、上述した二酸化炭素を減少させる方法及び太陽電池で使用する一般的な装置は、光源より発光された光が、導光フィルムの入射部を通じて導光フィルムの内部へ入射する。導光フィルムの内部に入射した光は、導光フィルムの出射面(上面)と反射面(下面)との間で反射を繰り返し、その反射光と、出射面の法線とのなす角度が臨界角より小さくなると、その反射光が出射面を透過して出射される。
【0006】
このような導光フィルムでは、一般的に、入射部と逆側に位置する反入射部が平坦性を有するので、光源から出射された光のうち、入射面に対し直交する方向に出射される平行光又は反入射面への入射角が臨界角より小さい光は、それぞれ反入射面側からそのまま外部へ出射されてしまい、光の損失が生じる。
【0007】
このため、二酸化炭素を減少させる方法や植物の光合成を促進させる装置において、ある程度植物の光合成を進行させることができても、光合成に必要な光が十分に届かないという問題があった。また、光の散乱により、特定方向の光の出射量が少ないので、植物の光合成を促進させる装置から離れた場所では特に光量が少ないといった問題もあった。
【0008】
このような問題を解決するために、例えば、光を閉じ込めて面部を導光させ、目的エリアに出射させるために、装置の端部から光を入射させる方法が提案されている(特許文献1参照)。しかし、装置の端部に対して垂直に入射しない光は、出射部の手前で漏れてしまい、出射部まで導光せず、光取出し効率が減少するという問題があった。
【0009】
また、例えば、太陽電池や光合成担体などの光を有効物に変換する部材において、有効物に変換する効率の高い波長に変換して光を活用する方法が提案されている(特許文献2、特許文献3参照)。しかし、変換物質にいたる屈折率界面において、界面反射が生じ、目的の場所に光を導く光取出し効率が低くなるという問題があり、その解決が望まれているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実登2601449号公報
【特許文献2】特開平7−142752号公報
【特許文献3】特開平6−38635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、回折効果を持たせた形状を光出射部に形成させることにより、光の出射方向を制御し、光が散乱する状況であってもより遠くに光を届けることができる導光フィルム、この導光フィルムを用いた植物の光合成を促進させる装置、太陽電池及び光電変換素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 光源から入射される入射光を該入射光側の面で入光させる光入射部と、前記光入射部から入射された光を外部に出射する光出射部と、を有し、前記光出射部の少なくとも一つの面の表面には微細凹凸構造が形成されていることを特徴とする導光フィルムである。
<2> 光の発光波長をλ、光出射部の屈折率をnとしたとき、光出射部の表面に形成されている微細凹凸構造の隣接する凸部間の最短距離を0.1×(λ/2n)〜10×(λ/2n)の範囲内とする前記<1>に記載の導光フィルムである。
<3> 光出射部の表面に形成されている微細凹凸構造の凸部の高さが、0.01μm〜1000μmである前記<1>から<2>のいずれかに記載の導光フィルムである。
<4> 光入射部と光出射部との間に光を導光させる導光部を有する前記<1>から<3>のいずれかに記載の導光フィルムである。
<5> 微細凹凸構造がナノインプリント法で形成させる前記<1>から<4>のいずれかに記載の導光フィルムである。
<6> 光源から入射される入射光を該入射光側の面で入光させる光入射部と、前記入射光側の面の反対側の面に積層され、前記光入射部よりも屈折率が大きい高屈折率層と、前記光入射部から入射された光を外部に出射する光出射部と、を有し、前記光出射部の少なくとも一つの面の表面には微細凹凸構造が形成されていることを特徴とする導光フィルムである。
<7> 光の発光波長をλ、光出射部の屈折率をnとしたとき、光出射部の表面に形成されている微細凹凸構造の隣接する凸部間の最短距離を0.1×(λ/2n)〜10×(λ/2n)の範囲内とする前記<6>に記載の導光フィルムである。
<8> 光出射部の表面に形成されている微細凹凸構造の凸部の高さが0.01μm〜1,000μmである前記<6>から<7>のいずれかに記載の導光フィルムである。
<9> 光入射部と光出射部との間に光を導光させる導光部を有する前記<6>から<8>のいずれかに記載の導光フィルムである。
<10> 入光層と高屈折率層との間の界面には、微細凹凸構造が形成されている前記<6>から<9>のいずれかに記載の導光フィルムである。
<11> 入光層と高屈折率層との間の界面に形成されている微細凹凸構造及び光出射部の表面に形成されている微細凹凸構造は、ナノインプリント法で形成させる前記<6>から<10>のいずれかに記載の導光フィルムである。
<12> 高屈折率層は、光入射部から入射した光を蛍光変換する蛍光体を含有する前記<6>から<11>のいずれかに記載の導光フィルムである。
<13> 蛍光体は、ペリレン化合物である前記<12>に記載の導光フィルムである。
<14> 高屈折率層の屈折率が1.4〜4.0である前記<6>から<13>のいずれかに記載の導光フィルムである。
<15> 光入射部の屈折率が1.05〜1.8である前記<6>から<14>のいずれかに記載の導光フィルムである。
<16> 高屈折率層と光入射部との屈折率差が0.01〜2.0である前記<6>から<15>のいずれかに記載の導光フィルムである。
<17> 前記<1>から<16>のいずれかに記載の導光フィルムを用いたことを特徴とする植物の光合成を促進させる装置である。
<18> 前記<1>から<16>のいずれかに記載の導光フィルムを用いたことを特徴とする光電変換素子である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、光の出射方向を制御して光の指向性を向上させたので、光が散乱する状況であってもより遠くに光を届けることができる導光フィルム、この導光フィルムを用いた植物の光合成を促進させる装置、太陽電池及び光電変換素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態の導光フィルムの一例を示す平面図である。
【図2】図2は、本発明の第1実施形態の導光フィルムの一例を示す断面図である。
【図3】図3は、光出射部の表面に形成された微細凹凸構造の一例を示す拡大図である。
【図4】図4は、本発明の第2実施形態の導光フィルムの一例を示す平面図である。
【図5】図5は、本発明の第2実施形態の導光フィルムの一例を示す断面図である。
【図6】図6は、光入射部と高屈折率層との界面に形成された微細凹凸構造の一例を示す拡大図である。
【図7】図7は、植物の光合成を促進させる装置の一例を示す模式図である。
【図8】図8は、植物の光合成を促進させる装置の一例を示す模式図である。
【図9】図9は、導光フィルムの固定方法の一例を示す模式図である。
【図10】図10は、実施例及び比較例における光合成を評価するための装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(導光フィルム)
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の導光フィルムの一例を示す平面図であり、図2は、第1実施形態の導光フィルムの一例を示す断面図であり、図3は、光出射部の表面に形成された微細凹凸構造の一例を示す拡大図である。本発明の導光フィルム1は、同一のフィルムに、光源から入射される光を面全体で入光させる光入射部11及び光入射部11から入射された光を外部に出射する光出射部12を有する。また、より遠くへ光を届けるために、光の出射方向を制御し、光の指向性を向上させる必要がある。このため、光出射部12の少なくとも一つの面の表面に微細凹凸構造121が形成されている。また、必要に応じて、光入射部11と光出射部12との間には、光入射部11から入射した光を光出射部12へ導光させる導光部14を備えるようにしてもよい。
【0016】
前記導光フィルム1の屈折率(光入射部11の屈折率)としては、特に制限はなく、使用目的に応じて適宜変更することができ、1.05〜1.8が好ましく、1.1〜1.75がより好ましく、1.2〜1.7が特に好ましく、1.3〜1.65が最も好ましい。前記屈折率が、1.05未満であると、臨界角が大きすぎ、フィルム内部を伝播する光の多くが漏れてしまうことがあり、1.8を超えると、界面反射が大きく、光のフィルム内部への入射光量が低下しすぎることがある。
【0017】
導光フィルム1の形状としては、図1に示すように、説明の便宜上長方形状としているが、特に制限はなく、使用目的に応じて適宜変更することができ、例えば、長方形状、正方形状、円状等が挙げられる。
【0018】
前記導光フィルム1の長さ(H)としては、特に制限はなく、使用目的に応じて適宜変更することができるが、例えば、10mm〜50,000mmが好ましく、100mm〜5,000mmがより好ましく、200mm〜1,000mmが特に好ましい。前記長さが、10mm未満であると、導光させるロスに比べ距離が短すぎ導光の意義がなくなる(直接届けた方が効率高い)ことがあり、50,000mmを超えると、フィルムの吸収により光が届かなくなることがある。
【0019】
前記光入射部11の長さとしては、特に制限はなく、使用目的に応じて適宜変更することができるが、例えば、1mm〜5,000mmが好ましく、5mm〜1,000mmがより好ましく、20mm〜500mmが特に好ましい。前記長さが、1mm未満であると、捕らえられる光が少なくなりすぎることがあり、5,000mmを超えると、フィルムによる光吸収のロスが大きくなりすぎることがある。
【0020】
前記光出射部12の長さとしては、特に制限はなく、使用目的に応じて適宜変更することができるが、例えば、1mm〜5,000mmが好ましく、5mm〜1,000mmがより好ましく、20mm〜500mmが特に好ましい。前記長さが、1mm未満であると、捕らえられる光が少なくなりすぎることがあり、5,000mmを超えると、フィルムによる光吸収のロスが大きくなりすぎることがある。
【0021】
前記導光フィルム1の厚み(D)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.1μm〜200,000μmが好ましく、1μm〜20,000μmがより好ましく、10μm〜2,000μmが特に好ましく、50μm〜500μmが最も好ましい。前記厚み(D)が、0.1μm未満であると、表面の割合が多すぎ閉じ込め効率が下がることがあり、200,000μmを超えると、材質が不均質になり光が漏れる割合が増えることがある。なお、導光フィルム1の厚み(D)は、光入射部11及び光出射部12を有する同一のフィルムの厚みのことをいう。
【0022】
前記導光フィルム1の長さ(H)及び厚み(D)は、例えば、導光フィルム1を測定計で挟んで導光フィルム1の厚みを測定する膜厚計、光学的な干渉を利用して導光フィルム1の厚みを測定する非接触膜厚計等を使用することにより、測定することができる。
【0023】
前記導光フィルム1の材料としては、透明であり、ある程度の強度を有するものであれば、特に制限はなく、例えば、樹脂、ガラス等が挙げられる。これらの中でも、柔軟性があり、軽量であることから、樹脂が好ましい。
【0024】
前記樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができ、例えば、ポリスチレン、スチレン・メチルメタクリレート共重合体、(メタ)アクリル樹脂、ポリメチルペンテン、アリルグリコールカーボネート樹脂、スピラン樹脂、アモルファスポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアリレート、ポリサルホン、ポリアリルサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ジアリルフタレート、フッ素樹脂、ポリエステルカーボネート、ノルボルネン系樹脂(ARTON)、脂環式アクリル樹脂(オプトレッツ)、シリコーン樹脂、アクリルゴム、シリコーンゴムなどの透明材料が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、透明性、屈折率等の光学特性、加工性などの面から、ポリスチレン、ポリカーボネート、アクリル含有樹脂、PET、スチレン−(メタ)アクリル共重合体(MSポリマー)などが好ましい。
【0025】
前記導光フィルム1のヘイズとしては、10%以下であることが好ましく、2%以下であることがより好ましく、0.5%以下であることが特に好ましい。前記ヘイズが、10%を超えると、入射光を制御して採光する集光効率や導光効率が著しく低下することがある。
【0026】
ここで、前記「ヘイズ」とは、曇り度合いの値を指し、例えば、JIS 7105に準拠したヘイズメータ(型番:HZ−1、スガ試験機(株)製)等の測定装置により評価される値である。
【0027】
光入射部11の端部には、反射部13を有するようにしてもよい。前記反射部13は、必要に応じて適宜省略することができる。前記反射部13の材料としては、反射率が高ければ特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、銀、アルミニウム、金、銅、マグネシウムなどの金属や、高屈折率のTiO、ZnS、シリコンなどの誘電体や半導体が挙げられる。
【0028】
−微細凹凸構造−
前記光出射部12の少なくとも一つの面の表面に微細凹凸構造121が形成されている。前記微細凹凸構造121を形成させることで、光の出射方向が制御され、光の指向性が向上する。このため、より遠くに光を届けることができる。前記微細凹凸構造121としては、より遠くに光を届けたい方向に形成されていればよく、例えば、図2に示したように二つの面の表面に形成してもよく、より遠くに光と届けたい方向側の光出射部12の面の表面のみに形成してもよい。
【0029】
前記微細凹凸構造121の形状としては、断面形状が前記光出射部12側に起伏する凹凸形状を有するものであれば、特に制限はなく、円錐形状、角錐形状、のこぎり状、蛇腹状、方形状などの凹凸形状とすることができる。微細凹凸構造121の形状を適宜変化させることで、例えば、正面輝度を向上させたり、特定の方向の輝度を向上させたり、光の出射方向を制御することができる。
【0030】
前記微細凹凸構造121のピッチ間隔Pの主要発光波長に対する下限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、その下限は、光量向上の観点から、光源からの主要発光波長をλとして0.01λ以上が好ましく、0.05λ以上がより好ましく、0.1λ以上が更により好ましく、0.2λ以上が特に好ましい。
また、上限としては、光量向上の観点から、100λ以下が好ましく、50λ以下がより好ましく、20λ以下がより更に好ましく、10λ以下が特に好ましい。
【0031】
前記微細凹凸構造121の隣接する凸部間の最短距離P(以下、ピッチ間隔ともいう。)(単位:μm)としては、入射させる光の波長によって適宜変更することができるが、光の発光波長をλ、光出射部の屈折率をnとしたとき、0.1×(λ/2n)〜10×(λ/2n)の範囲内とすることが好ましく、0.2×(λ/2n)〜5×(λ/2n)の範囲内とすることがより好ましく、0.4×(λ/2n)〜2.5×(λ/2n)の範囲内とすることが特に好ましい。前記ピッチ間隔Pが0.1×(λ/2n)未満であると、細かすぎて光の相互作用が低く効果が小さくなることがあり、10×(λ/2n)を超えると、光の変化する角度が小さく効果が小さくなることがある。
【0032】
前記微細凹凸構造112の隣接する凸部間の最短距離Pの下限としては、0.1μm以上であることが好ましく、0.15μm以上であることがより好ましく、0.2μm以上であることが特に好ましい。前記下限が、0.1μm未満であると、加工が困難で均一性が得られないことがある。
【0033】
また、前記ピッチ間隔の上限としては、4μm以下が好ましく、3.5μm以下がより好ましく、3μm以下が特に好ましい。前記上限が、4μmを超えると、光を閉じ込める効果が下がってしまうことがある。
【0034】
前記微細凹凸構造121の凸部の高さHの下限としては、0.01μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましく、0.15μm以上が特に好ましい。前記下限が、0.01μm未満であると、相互作用が小さくなりすぎ、効果が低くなることがある。
【0035】
前記微細凹凸構造121の凸部の高さHの上限としては、1,000μm以下が好ましく、4μm以下がより好ましく、1μm以下が特に好ましい。前記上限が、1,000μmを超えると、強度が低く形状が保たれないことがある。
【0036】
−−微細凹凸構造の形成方法−−
前記微細凹凸構造121の形成方法としては、特に制限はなく、例えば、切削法、ナノインプリント法、レーザ微細加工、エッチング法など目的に応じて適宜選択することができるが、これらの中でも、同じ形状のものを均一に形成するという理由からナノインプリント法で形成させることが好ましい。
【0037】
前記ナノインプリント法としては、予め所望の凹凸形状を備えるスタンパ(金型)で転写することで微細凹凸構造121を形成させることができる。具体的には、スタンパ原版(シリコン基板)上にフォトレジスト材料からなるフォトレジスト層をスピンコート法などで塗布し、光学系レンズでレーザ光をフォトレジスト層に集光して照射することで複数の微細孔を形成させ、反応性イオンエッチング(RIE)などのエッチング処理を行い、原版上に形成された複数の微細孔の深さを調整した後、フォトレジスト層を除去することで所望の凹凸形状を有するスタンパを作製する。
光を入光させる光入射部11の面の反対側の面にナノインプリント材料からなるナノインプリント層を形成させ、このナノインプリント層を前記スタンパで押圧し、必要に応じて加熱又は光照射することで光出射部12に微細凹凸構造を形成させる。
前記フォトレジスト材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、通常の光反応を利用するフォトレジスト材料、熱反応を利用するフォトレジスト材料など挙げられるが、高精細で、凹凸周囲に細かな構造ができ、より光相互作用に高い効果を発現できる点で熱反応を利用できるフォトレジスト材料が好ましい。
前記熱反応を利用できるフォトレジスト材料としては、例えば、メチン色素(シアニン色素、ヘミシアニン色素、スチリル色素、オキソノール色素、メロシアニン色素など)、大環状色素(フタロシアニン色素、ナフタロシアニン色素、ポルフィリン色素など)、アゾ色素(アゾ金属キレート色素を含む)、アリリデン色素、錯体色素、クマリン色素、アゾール誘導体、トリアジン誘導体、1−アミノブタジエン誘導体、経皮酸誘導体、キノフタロン系色素などが挙げられる。
【0038】
前記ナノインプリント材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱可塑性樹脂及び光硬化性樹脂の少なくともいずれかを含有するインプリントレジスト組成物などが挙げられる。
前記インプリントレジスト組成物としては、例えば、ノボラック系樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、有機ガラス樹脂、無機ガラス樹脂などが挙げられる。
【0039】
前記フォトレジスト層の厚みとしては、スタンパの表面上に形成される凸部の高さに対して5%以上、200%未満であることが好ましい。前記厚みが5%未満であると、レジスト量が不足し、所望の微細凹凸構造を形成することができないことがある。
【0040】
前記フォトレジスト層の厚みとしては、例えば、該フォトレジスト層を形成した光出射部12から該フォトレジスト層を一部剥離し、剥離後の段差(高さ)をAFM装置(OLS、オリンパス株式会社製)にて測定することができる。
【0041】
前記インプリントレジスト組成物の粘度としては、例えば、超音波式粘度計などを用いて測定することができる。前記インプリントレジスト組成物の粘度としては、25℃で1mPa・s〜200mPa・sが好ましく、1mPa・s〜100mPa・sがより好ましい。
【0042】
<第2実施形態>
第2実施形態の導光フィルムは、光源から入射される光を面全体で入光させる光入射部と光入射部よりも屈折率が大きい高屈折率層との2層構造となっている以外は第1実施形態と同一である。以下、第2実施形態の導光フィルムについて詳細に説明するが、第1実施形態と内容が重複する箇所の説明は適宜省略する。
【0043】
図4は、本発明の導光フィルムの第2実施形態の一例を示す平面図であり、図5は、本発明の導光フィルムの第2実施形態の一例を示す断面図であり、図6は、光入射部11と高屈折率層111との界面に形成された微細凹凸構造の一例を示す拡大図である。第2実施形態の導光フィルム1´は、同一のフィルムに、光源から入射される光を面全体で入光させる光入射部11及び光入射部11から入射された光を外部に出射する光出射部12を有し、光入射部11の面の反対側の面に積層され、光入射部11よりも屈折率が大きい高屈折率層111をさらに有する。光入射部11と高屈折率層111との界面に微細凹凸構造112が形成されている。また、必要に応じて、高屈折率材料に蛍光体が含有している構成としてもよい。
【0044】
前記高屈折率層111は、図5に示すように、光入射部11の光を入光させる面の反対側に積層されている。光の閉じ込め効率を向上させるためには光の反射の臨界角を小さくする必要があるので、前記高屈折率層111は、光入射部11(導光フィルム1)よりも屈折率を大きくする必要がある。
【0045】
前記高屈折率層111を構成する高屈折率材料としては、導光フィルム1´よりも屈折率が高く、ある程度の強度を有するものであれば、特に制限はなく、例えば、TiOやZnS等の高屈折率微粒子が含有された樹脂、高屈折率樹脂などが挙げられる。
前記高屈折率樹脂としては、例えば、ポリカーボネート、PET、PEN、BPEFAなどが挙げられる。
【0046】
前記高屈折率層111の屈折率としては、光入射部11(導光フィルム1)の屈折率よりも大きければ、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、1.4〜4.0が好ましく、1.5〜3.0がより好ましく、1.6〜2.0が特に好ましい。前記高屈折率層111の屈折率が、1.4未満であると、入射光の臨界角を小さくすることができず、光閉じ込め効率を向上させることができないことがあり、4.0を超えると、界面反射により高屈折率層111への光入射が少なくなりすぎることがある。
【0047】
高屈折率層111の屈折率は、散乱粒子を含まない状態の塗布液を調液し、この塗布液をガラス上に塗布し、紫外線で硬化させた後、エリプソメータ(JAウーラム製)で測定することができる。
【0048】
また、高屈折率層111の屈折率Aと光入射部11の屈折率Bとの屈折率差(A−B)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.01〜2であることが好ましく、0.05〜1.5であることがより好ましく、0.1〜1であることが特に好ましい。前記差が、0.01未満であると、光を閉じ込める効果が殆ど得られないことがあり、2を超えると、高屈折率層111への光入射が低くなりすぎることがある。
【0049】
−蛍光体−
前記高屈折率層111には、蛍光体を含有させ、光入射部11から入射した光の光電エネルギーを変換することで必要とする波長を増強させることができる。例えば、光合成において、光エネルギーを吸収する役割を持つクロロフィルは、種々の種類があるが、400nm〜500nmの領域と600nm〜750nmの領域の波長の光をより多く吸収することが多いことが知られている。導光フィルム1を植物の光合成を促進させる装置に使用する際、600nm〜750nm付近で発光する示す蛍光体を高屈折率層111に含有させることで、光入射部11から入射した光を600nm〜750nm付近の波長に光電エネルギーを蛍光変換し、光出射部12から蛍光変換した光を出射させることができ、効果的に光合成を促進させることができる。即ち、蛍光体を高屈折率材料に含ませることで、特定の波長の光を光出射部12から出射させることができる。
【0050】
前記蛍光体としては、必要とする波長を増強させることができれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、DCM、DMETCI、DOCI、DODCI、DQOCI、DQTCI、HIDCI等の蛍光化合物、インドレニン、クマリン、クレジルバイオレット、シアニン、フルオレセイン、マラカイトグリーン、ナイルブルー、オキサジン、ペリレン化合物、フェノキサゾン、フェニルアラニン、フタロシアニン、ピナシアニン、ポルフィン、プロフラビン、ピリジン、ピロメテン、ローダミン、リボフラビン、スチルベン、スチリル化合物、スルホローダミン、ウラニンなどが挙げられる。中でも、ペリレン化合物が好ましく、該ペリレン化合物としては、蛍光発光するものであれば特に制限はなく、ペリレン、ペリレンレッド、ペリレンオレンジ等が挙げられる。
また、前記蛍光体としては、例えば下記のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【0051】
前記蛍光体の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、高屈折率材料100mgに対して0.001mg〜20mgであることが好ましく、0.01mg〜10mgであることがより好ましく、0.1mg〜5mgであることが特に好ましい。前記含有量が0.001mg未満であると、光入射部11から入射した光を効果的に蛍光変換することができないことがあり、20mgを超えると、形状を保つことが困難となることがある。
【0052】
−光入射部と高屈折率層との界面に形成された微細凹凸構造−
光入射部11と高屈折率層111との界面に微細凹凸構造112を形成してもよい。光入射部11と高屈折率層111との界面の微細凹凸構造112は光出射部12の表面に形成された微細凹凸構造121と同一の形成方法で形成させ、微細凹凸構造121を形成させた後、微細凹凸構造121上に高屈折率材料及び蛍光体を溶剤に溶解させ、スプレー法、スピンコート法、ディップ法、ロールコート法、ブレードコート法、ドクターロール法、ドクターブレード法、スクリーン印刷法等で塗布することで高屈折率層111を形成させる。
【0053】
前記微細凹凸構造112のピッチ間隔P´の主要発光波長に対する下限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、その下限は、光量向上の観点から、光源からの主要発光波長をλとして0.01λ以上が好ましく、0.05λ以上がより好ましく、0.1λ以上が更により好ましく、0.2λ以上が特に好ましい。
また、上限としては、光量向上の観点から、100λ以下が好ましく、50λ以下がより好ましく、20λ以下がより更に好ましく、10λ以下が特に好ましい。
【0054】
前記微細凹凸構造112のピッチ間隔P´の下限としては、0.1μm以上であることが好ましく、0.15μm以上であることがより好ましく、0.2μm以上であることが特に好ましい。前記下限は、0.1μm未満であると、加工が困難で均一性が得られないことがある。
【0055】
また、上限としては、100μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、1μm以下であることが特に好ましい。前記上限が、100μmを超えると、光を閉じ込める効果が下がってしまうことがある。
【0056】
前記微細凹凸構造112の凸部の高さH´の下限としては、0.05μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましく、0.15μm以上であることが特に好ましい。前記下限は、0.05μm未満であると、界面反射低減効果が得られないことがある。
【0057】
前記微細凹凸構造112の凸部の高さH´の上限としては、10μm以下であることが好ましく、4μm以下であることがより好ましく、1μm以下であることが特に好ましい。前記下限は、10μmを超えると、強度が低く形状が保たれないことがある。
【0058】
(植物の光合成を促進させる装置)
前記植物の光合成を促進させる装置としては、前記導光フィルム1又は導光フィルム1´と、前記導光フィルム1を固定するパイプ3などの固定手段を備える。例えば、図7、図8に示すように、導光フィルム1を折り曲げ、光出射部12を藻などの植物が存在する水中に入れ、太陽光などの光源から入射された光を光入射部11から入射させ、水中の光出射部12から光を出射することで、水中の植物の光合成を促進させることができる。なお、折り曲げる箇所は、光出射部12であってもよく、導光部14であってもよい。
前記導光フィルム1又は導光フィルム1´としては、例えば、前記導光フィルム1同士の一部を接着し、水中に設けられているパイプ3などで固定してもよく、また、図9に一例を示したように、例えば、複数のパイプ3を用いて前記導光フィルム1を固定するようにしてもよい。
【0059】
前記第1実施形態の導光フィルム1及び第2実施形態の導光フィルム1´は、光出射部12の表面に形成されている微細凹凸構造121により、光の出射方向が制御され光の指向性が向上する。このため、より遠くに光が届くようになり、従来では光が届かなかった箇所に存在する植物にも光を届くようにすることができる。
【0060】
第2実施形態の導光フィルム1´において、前記高屈折率層111に含む蛍光体としては、光エネルギーを吸収する役割を持つクロロフィルαは、420nmと660nmの波長をより多く吸収するので、光合成をより促進させるために600nm〜700nm付近で発光する蛍光体であれば特に制限されないが、特に、LumogenF Red 305(BASF社製)などのペリレン蛍光体を高屈折率層111に含有させることが好ましい。
【0061】
また、上記蛍光体の他に600nm〜700nmの波長をより多く発光する6MgO・AsMn4+を高屈折率層111に含ませてもよい。上記蛍光体を高屈折率材料に含ませることで、波長が600nm〜700nmの光を光出射部12から出射させることができ、効果的に藻などの光合成を促進させることができる。
【0062】
(光電変換素子)
前記第1実施形態の導光フィルム1及び第2実施形態の導光フィルム1´は、光出射部12の表面に形成されている微細凹凸構造121により、光の出射方向が制御されている。このため、導光フィルム1を光電変換素子に用いることで、光電変換効率を向上させることができる。
【0063】
前記光電変換素子としては、光センサ、有機EL素子、撮像素子などが挙げられる。
【実施例】
【0064】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0065】
(実施例1)
<導光フィルム1の作製>
−光入射部と光出射部の作製−
長さ100mm、幅40mm及び厚みが0.2mmであり、屈折率が1.5のアクリルフィルム(ソフトアクリル 新光エージー社製)を端部から30mmを光入射部とし、他方の端部から50mmを光出射部とした。
【0066】
−光出射部の微細凹凸構造の形成−
前記光入射部と同一形状(30mm×40mm)のシリコン基板上に、フォトレジスト化合物として下記構造式で表される化合物A 20mgを2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール 1mlの割合になるように溶解させ、この溶液を1,000rpmで回転させながらスピンコート法を用いて100nmの厚さに塗布し、シリコン基板上にフォトレジスト層を形成させた。
【化13】

【0067】
基板上に形成させたフォトレジスト層に対して、パルステック工業社製NEO1000(波長405nm、NA0.85)で線速5m/s、4mWで微細凹凸構造の隣接する凸部間の最短距離のピッチ間隔が0.2μmとなるように複数の微細孔を形成させた。その後、反応性イオンエッチング(RIE)処理を行いフォトレジスト層の形成された複数の微細孔の深さを0.2μmに調整し、フォトレジスト層を2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールで除去することでスタンパを作製した。
【0068】
光出射部の両面全体にインプリント化合物(PAK−01−CL 東洋合成社製)を1,000rpmで回転させながらスピンコート法を用いて1μmの厚さに塗布し、光入射部上にインプリント層を形成させた。このインプリント層を前記スタンパ押圧し、UVを照射することで光出射部表面に微細凹凸構造を形成させ、導光フィルム1を作製した。
【0069】
(実施例2)
<導光フィルム2の作製>
実施例1において、スタンパの微細凹凸構造のピッチ間隔を0.5μmとした以外は、実施例1と同様にして、導光フィルム2を作製した。
【0070】
(実施例3)
<導光フィルム3の作製>
実施例1において、スタンパの微細凹凸構造のピッチ間隔を0.3μmとした以外は、実施例1と同様にして、導光フィルム3を作製した。
【0071】
(実施例4)
<導光フィルム4の作製>
実施例1において、スタンパの微細凹凸構造のピッチ間隔を1.5μmとした以外は、実施例1と同様にして、導光フィルム4を作製した。
【0072】
(実施例5)
<導光フィルム5の作製>
実施例1において、スタンパの微細凹凸構造のピッチ間隔を2.5μmとした以外は、実施例1と同様にして、導光フィルム5を作製した。
【0073】
(実施例6)
<導光フィルム6の作製>
実施例1において、スタンパの微細凹凸構造のピッチ間隔を0.8μmとし、スタンパの微細孔の深さを0.3μmとした以外は、実施例1と同様にして、導光フィルム6を作製した。
【0074】
(実施例7)
<導光フィルム7の作製>
光を入光させる前記光入射部の面の反対側の面に高屈折率層を積層させ、光入射部と高屈折率層との界面に微細凹凸構造を形成させた以外は、実施例1と同様にして、導光フィルム7を作製した。高屈折率層と光入射部と高屈折率層との界面の微細凹凸構造は、以下のように形成した。
【0075】
前記光入射部と同一形状(30mm×40mm)のシリコン基板上に、フォトレジスト化合物として下記構造式で表される化合物A 20mgを2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール 1mlの割合になるように溶解させ、この溶液を1,000rpmで回転させながらスピンコート法を用いて100nmの厚さに塗布し、シリコン基板上にフォトレジスト層を形成させた。
【化14】

【0076】
基板上に形成させたフォトレジスト層に対して、パルステック工業社製NEO1000(波長405nm、NA0.85)で線速5m/s、4mWで微細凹凸構造の隣接する凸部間の最短距離のピッチ間隔が0.2μmとなるように複数の微細孔を形成させた。その後、反応性イオンエッチング(RIE)処理を行いフォトレジスト層の形成された複数の微細孔の深さを0.2μmに調整し、フォトレジスト層を2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールで除去することでスタンパを作製した。
【0077】
光を入光させる光入射部の面の反対側の面(端部から30mm)にインプリント化合物(PAK−01−CL 東洋合成社製)を1,000rpmで回転させながらスピンコート法を用いて1μmの厚さに塗布し、光入射部上にインプリント層を形成させた。このインプリント層を前記スタンパ押圧し、UVを照射することで光入射部に微細凹凸構造を形成させた。
【0078】
−高屈折率層の作製−
光入射部上に形成させた微細凹凸構造上に、蛍光体として、ペリレンレッド(Lumogen F Red 305、BASF社製)2質量%と、高屈折率材料として屈折率が1.6のBPEFA(大阪ガス化学社製)20質量%を溶剤であるメチルエチルケトンに溶解させ、刷毛を用いて約50μmの厚さに塗布、乾燥させることで高屈折率層を積層させることで導光フィルム7を作製した。
【0079】
(比較例1)
<導光フィルム8の作製>
実施例1において、サンドブラスト法にて光出射部の表面を加工した以外は、実施例1と同様にして、導光フィルム8を作製した。
【0080】
(参考例1)
<導光フィルム9の作製>
実施例1において、スタンパの微細凹凸構造のピッチ間隔を5μmとした以外は、実施例1と同様にして、導光フィルム9を作製した。
【0081】
(評価)
<正面明るさ向上率>
導光フィルム1から導光フィルム9の光入射部から光源である太陽光(可視光の中心は長λは550nm)を入射させ、光出射部から出射する光の正面の明るさを評価した。評価方法としては、光出射部の表面に微細凹凸構造を有さない以外は実施例1と同様にして作製した導光フィルムの正面輝度を基準にし、この導光フィルムに対して正面の明るさの向上率を評価した。光の明るさは、光入射部及び光入射部から100mm離れた光出射部を除き導光フィルム全体に遮光用の黒紙を載置し、導光フィルム1から導光フィルム9の光入射部から光源である太陽光を入射させ、遮光用の黒紙が載置されていない光出射部から出射する光の正面光量をUSB2000(オーシャンオプティクス製)を用いて測定することで正面の明るさの向上率を評価した。結果を表1に示す。
【0082】
<正面光量と45度光量との比率>
導光フィルム1から導光フィルム9の正面光量及び45度光量も評価した。評価方法としては、光入射部及び光入射部から100mm離れた光出射部を除き導光フィルム全体に遮光用の黒紙を載置し、導光フィルム1から導光フィルム9の光入射部から光源である太陽光を入射させ、遮光用の黒紙が載置されていない光出射部から出射する光の正面光量及び45度光量を測定し、正面光量と45度光量との比率(正面光量/45度光量)を求めることで、光の出射方向を制御して光の指向性がどの程度向上したのか評価した。正面光量及び45度光量は、USB2000(オーシャンオプティクス製)を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0083】
<光合成>
図10に示すように遮光板60で遮光された暗室に水槽50を配し、この水槽50中に50万個/mLの濃度のクロレラを満たした。遮光板60の切り欠き部65に対して、導光フィルム100を光の漏れがないように光出射部75側から挿通させるとともに、導光フィルム100の長さ方向の略中央部付近に曲率半径20mmにて、導光フィルム100を折曲げ、光入射部70にランプ80からの光を入射可能としつつ、光出射部75が水槽50中に含浸されるように導光フィルム100を配した。
ランプ80として、LEDランプより光量の大きな100Wハロゲンランプを用い、前記の通り、光入射部70にランプ80からの光を入射可能としつつ、光出射部75が水槽50中に含浸されるように配された導光フィルム100の光入射部70に対して、光を照射して、水槽50中のクロレラの培養を行った。
ランプ80による光の照射を24時間継続し、その後、光学顕微鏡を用いて個数を測定し、該個数を試験前の個数と比較して、増減率を算出し、下記評価基準に基づき評価した。結果を下記表1に示す。
[評価基準]
◎・・・クロレラの増加率が20%以上
○・・・クロレラの増加率が10%以上20%未満
△・・・クロレラの増加率が0%以上10%未満
×・・・クロレラの増加率が0%未満
【0084】
【表1】

【0085】
表1から、実施例1から実施例7は、正面明るさ向上率が向上していることがわかる。また、正面光量/45度光量も向上していることがわかる。この結果から、実施例1から実施例6は、光の出射方向が制御され、光の指向性が向上し、より遠くに光が届いていることがわかる。
一方、比較例1では、実施例1から実施例7と比較して明るさ向上率及び正面光量/45度光量がほとんど向上していないことから、光が散乱しており、光の指向性が向上していない。このため、実施例1から実施例7と比較して遠くに光が届いていないことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の導光フィルムは、光の出射方向が制御され光の指向性が向上するので、より遠くに光を届けることができる。このため、本発明の導光フィルムは、様々な状況において使用することができ、例えば、植物の光合成を促進させる装置、光電変換素子などに幅広く用いることができる。
【符号の説明】
【0087】
1 導光フィルム
1´ 導光フィルム
11 光入射部
111 高屈折率層
112 微細凹凸構造
12 光出射部
121 微細凹凸構造
13 反射部
14 導光部
3 パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から入射される入射光を該入射光側の面で入光させる光入射部と、
前記光入射部から入射された光を外部に出射する光出射部と、を有し、
前記光出射部の少なくとも一つの面の表面には微細凹凸構造が形成されていることを特徴とする導光フィルム。
【請求項2】
光の発光波長をλ、光出射部の屈折率をnとしたとき、光出射部の表面に形成されている微細凹凸構造の隣接する凸部間の最短距離を0.1×(λ/2n)〜10×(λ/2n)の範囲内とする請求項1に記載の導光フィルム。
【請求項3】
光出射部の表面に形成されている微細凹凸構造の凸部の高さが、0.01μm〜1000μmである請求項1から2のいずれかに記載の導光フィルム。
【請求項4】
光入射部と光出射部との間に光を導光させる導光部を有する請求項1から3のいずれかに記載の導光フィルム。
【請求項5】
微細凹凸構造がナノインプリント法で形成させる請求項1から4のいずれかに記載の導光フィルム。
【請求項6】
光源から入射される入射光を該入射光側の面で入光させる光入射部と、
前記入射光側の面の反対側の面に積層され、前記光入射部よりも屈折率が大きい高屈折率層と、
前記光入射部から入射された光を外部に出射する光出射部と、を有し、
前記光出射部の少なくとも一つの面の表面には微細凹凸構造が形成されていることを特徴とする導光フィルム。
【請求項7】
光の発光波長をλ、光出射部の屈折率をnとしたとき、光出射部の表面に形成されている微細凹凸構造の隣接する凸部間の最短距離を0.1×(λ/2n)〜10×(λ/2n)の範囲内とする請求項6に記載の導光フィルム。
【請求項8】
光出射部の表面に形成されている微細凹凸構造の凸部の高さが0.01μm〜1,000μmである請求項6から7のいずれかに記載の導光フィルム。
【請求項9】
光入射部と光出射部との間に光を導光させる導光部を有する請求項6から8のいずれかに記載の導光フィルム。
【請求項10】
入光層と高屈折率層との間の界面には、微細凹凸構造が形成されている請求項6から9のいずれかに記載の導光フィルム。
【請求項11】
入光層と高屈折率層との間の界面に形成されている微細凹凸構造及び光出射部の表面に形成されている微細凹凸構造は、ナノインプリント法で形成させる請求項6から10のいずれかに記載の導光フィルム。
【請求項12】
高屈折率層は、光入射部から入射した光を蛍光変換する蛍光体を含有する請求項6から11のいずれかに記載の導光フィルム。
【請求項13】
蛍光体は、ペリレン化合物である請求項12に記載の導光フィルム。
【請求項14】
高屈折率層の屈折率が1.4〜4.0である請求項6から13のいずれかに記載の導光フィルム。
【請求項15】
光入射部の屈折率が1.05〜1.8である請求項6から14のいずれかに記載の導光フィルム。
【請求項16】
高屈折率層と光入射部との屈折率差が0.01〜2.0である請求項6から15のいずれかに記載の導光フィルム。
【請求項17】
請求項1から16のいずれかに記載の導光フィルムを用いたことを特徴とする植物の光合成を促進させる装置。
【請求項18】
請求項1から16のいずれかに記載の導光フィルムを用いたことを特徴とする光電変換素子。

【図9】
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【図10】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−167087(P2011−167087A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−31732(P2010−31732)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】