説明

導入補助具、及び、瘻孔用カテーテルキット

【課題】ファイバースコープ等の導入対象物を瘻孔用カテーテルを介して内臓内に導入する作業を、体内留置部の突き当て部の挿通孔を利用せずに行う。
【解決手段】導入補助具30は、内部に管路52を有する本体部50を備え、本体部50の先端には、管路52と外部とを連通させる開口53が形成されている。開口53が本体部50の基端側部分の軸方向に対する交差方向を向いているという第1条件と、開口53が本体部50の基端側部分の軸の延長線上からオフセットされているという第2条件と、のうちの少なくともいずれか一方の条件を満たしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導入補助具、及び、瘻孔用カテーテルキットに関する。
【背景技術】
【0002】
経口で栄養を摂取できない生体に対する栄養の投与方法として、瘻孔用カテーテルを用い、瘻孔を介して投与する方法がある。瘻孔とは、生体の腹部等に形成され、生体外部と内臓(胃又は腸など)の内部とを連通させる孔部である。瘻孔用カテーテルの一種である胃瘻カテーテルについては、例えば、特許文献1に記載されている。
【0003】
瘻孔用カテーテルは、瘻孔に挿通されるチューブと、チューブの先端に設けられ内臓内に留置される体内留置部と、を有している。体内留置部は、例えば、チューブ内と連通する中空状ないしは籠状に形成される。
【0004】
一般的な瘻孔用カテーテルの体内留置部は、チューブの延長上に位置しオブチュレータ(後述)の先端が突き当てられる突き当て部を有している。そして、体内留置部の基端部(チューブ側)と突き当て部との間に位置する側壁に複数の開口が縦に形成されることにより、当該側壁が複数部分に横に分割されている。体内留置部は、常態においては相対的に大径の張り出し状態となる。その一方で、オブチュレータにより突き当て部が先端側に押し込まれた状態の時には、体内留置部は、弾性変形することによってチューブの軸方向に伸長するとともに上記の張り出し状態よりも縮径する。このように体内留置部を縮径させることによって、体内留置部を瘻孔を介して内臓内に挿入しやすくなる。縮径させた体内留置部を内臓内に挿入した後で、オブチュレータによる押し込みを解除することにより、体内留置部は、弾性変形によって上記の張り出し状態に復元し、瘻孔から抜け止めされた状態となる。
オブチュレータは、チューブ内に挿入される棒状の部材であり、その先端部によって、体内留置部の突き当て部をチューブから離れる方向に押し込むことができる。
【0005】
瘻孔用カテーテルの突き当て部において、チューブの軸の延長線上の位置には、体内留置部を体内へ挿入する際にガイドを行うガイドワイヤが挿通される挿通孔が、必要に応じて形成されている。突き当て部がガイドワイヤの挿通孔を有する場合、その挿通孔の径は、オブチュレータの先端部よりも細径に形成される。そうしないと、オブチュレータによる体内留置部の縮径作業が困難だからである。
また、オブチュレータには、ガイドワイヤが通されるガイドワイヤ通路が、必要に応じて形成されている。
ガイドワイヤを利用する場合、体内留置部を体内へ挿入するのに先立って、予め、ガイドワイヤの一端側の十分な長さの部分を体内へ導入しておく。また、ガイドワイヤの他端側を、体内留置部の挿通孔とオブチュレータのガイドワイヤ通路とに通しておく。そして、オブチュレータにより体内留置部を縮径させた状態で、体内留置部を体内に挿入する。これにより、ガイドワイヤの誘導により、容易に、体内留置部を体内に挿入することができる。
【0006】
ところで、瘻孔用カテーテルの体内留置部が内臓内に適正な状態で留置されているか否かの確認が必要な場合がある。特許文献1には、この確認のために、瘻孔用カテーテルのチューブを介してファイバースコープを内臓内に導くことが記載されている。特許文献1の技術では、胃瘻用カテーテルの突き当て部(同文献では連結部と称される)に挿通孔が形成され、この挿通孔を介してファイバースコープを胃内に導入することとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−131470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の技術では、体内留置部の突き当て部に形成される挿通孔の寸法を、ファイバースコープを挿通可能な寸法に設定する必要がある。しかし、ガイドワイヤはファイバースコープよりも細いので、ファイバースコープを挿通可能な寸法の挿通孔では、挿通孔とガイドワイヤとのクリアランスが大きくなるため、該挿通孔内にガイドワイヤを適切に保持できず、ガイドワイヤに沿った体内への体内留置部の挿入作業に支障をきたす場合がある。
また、特許文献1の技術は、そもそも、突き当て部に挿通孔が形成されていないタイプの瘻孔用カテーテルには適用できない。
また、ファイバースコープを体内留置部の側壁の開口から突出させる場合は、ファイバースコープの先端を体内留置部内から側方に向けて誘導する必要がある。しかし、このようにファイバースコープを誘導する作業には、術者の高い熟練が必要である。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、ファイバースコープ等の導入対象物を瘻孔用カテーテルを介して内臓内に導入する作業を、突き当て部の挿通孔を利用せずに且つ高い熟練を要さず容易に行うことを可能とする導入補助具、及び、瘻孔用カテーテルキットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、瘻孔に挿通されるチューブと、前記チューブの先端に設けられ内臓内に留置される中空状ないしは籠状の体内留置部と、を有する瘻孔用カテーテルを介して前記内臓内に導入対象物を導入する際の補助を行う導入補助具であって、
内部に管路を有する本体部を備え、
前記本体部の先端には、前記管路と外部とを連通させる開口が形成され、
前記開口が前記本体部の基端側部分の軸方向に対する交差方向を向いているという第1条件と、
前記開口が前記本体部の基端側部分の軸の延長線上からオフセットされているという第2条件と、
のうちの少なくともいずれか一方の条件を満たしていることを特徴とする導入補助具を提供する。
【0011】
この導入補助具は、第1条件と第2条件とのうちの少なくともいずれか一方の条件を満たしている。よって、導入補助具の本体部を瘻孔用カテーテルのチューブに挿入し、導入補助具の開口の向きを体内留置部の開口(留置部開口)の向きに合わせた状態で、導入補助具の管路を介して導入対象物を導入した場合には、この導入対象物を容易に体内留置部の開口から内臓内に導入(体内留置部外に導出)することができる。
つまり、側壁に開口(留置部開口)が形成され、突き当て部にガイドワイヤ挿通用の挿通孔が形成されている瘻孔用カテーテルと組み合わせてこの導入補助具を用いた場合に、ファイバースコープ等の導入対象物を瘻孔用カテーテルを介して内臓内に導入する作業を、突き当て部の挿通孔を利用せずに行うことができる。よって、その挿通孔の寸法を、ファイバースコープ等の導入対象物を挿通可能な大きさに設定する必要がない。
また、突き当て部にガイドワイヤ挿通用の挿通孔が形成されていないタイプの瘻孔用カテーテルにも適用することができる。
【0012】
また、本発明は、瘻孔に挿通されるチューブと、前記チューブの先端に設けられ内臓内に留置される中空状ないしは籠状の体内留置部と、を有する瘻孔用カテーテルと、
前記瘻孔用カテーテルを介して前記内臓内に導入対象物を導入する際の補助を行う導入補助具と、
を有し、
前記導入補助具は、内部に管路を有する本体部を備え、
前記本体部の先端には、前記管路と外部とを連通させる開口が形成され、
前記開口が前記本体部の基端側部分の軸方向に対する交差方向を向いているという第1条件と、
前記開口が前記本体部の基端側部分の軸の延長線上からオフセットされているという第2条件と、
のうちの少なくともいずれか一方の条件を満たしていることを特徴とする瘻孔用カテーテルキットを提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ファイバースコープ等の導入対象物を瘻孔用カテーテルを介して内臓内に導入する作業を、突き当て部の挿通孔を利用せずに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態に係る導入補助具の正面図である。
【図2】実施形態に係る導入補助具の斜視図である。
【図3】実施形態に係る導入補助具の部分断面図である。
【図4】実施形態に係る瘻孔用カテーテルキットの正面図である。
【図5】実施形態に係る瘻孔用カテーテルキットの斜視図である。
【図6】実施形態に係る瘻孔用カテーテルキットの瘻孔用カテーテルの斜視図である。
【図7】瘻孔用カテーテルの正面断面図である。
【図8】瘻孔用カテーテルの一方弁を示す拡大図である。
【図9】オブチュレータ及び瘻孔用カテーテルを示す模式的な正面図である。
【図10】瘻孔用カテーテルにオブチュレータを差し込んだ状態を示す正面断面図である。
【図11】瘻孔用カテーテルにオブチュレータを差し込み、体内留置部の突き当て部を押し込んだ状態を示す正面断面図である。
【図12】瘻孔への瘻孔用カテーテルの挿入作業を説明するための模式図である。
【図13】導入補助具の調節機構を説明するための正面図である。
【図14】導入補助具の本体部の先端部の形状を示す側面図及び正面図である。
【図15】導入補助具の係合爪の配置と開口の配置との関係の一例を示す平断面図である。
【図16】変形例1に係る導入補助具の挿入部の先端部を示す正面断面図である。
【図17】変形例2に係る導入補助具の挿入部の先端部を示す正面断面図である。
【図18】変形例2に係る導入補助具の挿入部の先端部と瘻孔用カテーテルの体内留置部との位置関係の一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。
【0016】
図1は実施形態に係る導入補助具30の正面図、図2は導入補助具30の斜視図である。図3は導入補助具30の部分断面図である。図4は実施形態に係る瘻孔用カテーテルキット80の正面図、図5は瘻孔用カテーテルキット80の斜視図である。図6は瘻孔用カテーテルキット80の瘻孔用カテーテル10の斜視図、図7は瘻孔用カテーテル10の正面断面図、図8は瘻孔用カテーテル10の一方弁16を示す拡大図である。図9はオブチュレータ20及び瘻孔用カテーテル10を示す模式的な正面図、図10は瘻孔用カテーテル10にオブチュレータ20を挿入した状態を示す正面断面図、図11は瘻孔用カテーテル10にオブチュレータ20を挿入し、体内留置部12の突き当て部18を先端側に押し込んだ状態を示す正面断面図である。図12は瘻孔33への瘻孔用カテーテル10の挿入作業を説明するための模式図である。なお、図12は、上部(瘻孔用カテーテル10及びオブチュレータ20)が断面で示され、下部(瘻孔33、腹壁31及び胃壁32)が透視斜視図となっている。
【0017】
本実施形態に係る導入補助具30は、瘻孔33に挿通されるチューブ11と、チューブ11の先端に設けられ内臓内に留置される中空状ないしは籠状の体内留置部12と、を有する瘻孔用カテーテル10を介して内臓内に導入対象物を導入する際の補助を行う導入補助具30であって、内部に管路52を有する本体部50を備え、本体部50の先端には、管路52と外部とを連通させる開口53が形成され、開口53が本体部50の基端側部分の軸方向に対する交差方向を向いているという第1条件と、開口53が本体部50の基端側部分の軸の延長線上からオフセットされているという第2条件と、のうちの少なくともいずれか一方の条件を満たしている。ここで、オフセットとは、軸の延長線から側方に位置がずれている(軸の延長線上とは異なる位置にある)ことを意味する。
また、本実施形態に係る瘻孔用カテーテルキット80は、上記の瘻孔用カテーテル10と、本実施形態に係る導入補助具30と、を有している。
以下、詳細に説明する。
【0018】
先ず、図6及び図7を参照して瘻孔用カテーテル10(以下、単にカテーテル10)の構成を説明する。
【0019】
カテーテル10は、瘻孔33(図12)に挿通されるチューブ11と、チューブ11の先端に設けられた体内留置部12と、チューブ11の基端に設けられた体外固定部14と、を有している。このカテーテル10は、弾性変形可能な材料により構成されている。
【0020】
チューブ11は、例えば、直線状に形成されている。チューブ11の外径は、瘻孔33の内径とほぼ等しく設定される。逆に言えば、瘻孔33は、チューブ11の外径とほぼ等しい内径に形成される。このため、チューブ11が瘻孔33に挿通されてカテーテル10が生体に装着された状態で、チューブ11は瘻孔33の壁面34に沿って延びる。
【0021】
チューブ11の内空は、栄養又は薬液を体外から内臓(例えば、胃又は腸)内へ導入する導入路13を構成する。
【0022】
チューブ11の先端、すなわち導入路13の出口には、一方弁16が設けられ、チューブ11外(導入路13外)からチューブ11内(導入路13内)への流動体(液物等)の流入が規制されている。これにより、内臓内から流動体が体外へ逆流することを抑制できる。一方弁16は、公知の弁が使用できるが、例えば図8に示すようなチューブ11の先端から延出した一対の弁部材16a、16bで構成されている。通常、体内では矢印で示される内圧がかかるため、一対の弁部材16a、16bが閉じて気密状態を形成し、栄養等の補給状態では、一対の弁部材16a、16bが開放し、チューブ11及び一方弁16をこの順に介して内臓内へ補給が可能である。
【0023】
体内留置部12は、内臓内に留置され、カテーテル10が生体から抜けてしまうことを抑制する。この体内留置部12は、一方弁16を介してチューブ11の導入路13と連通する中空状ないしは籠状に形成されている。体内留置部12は、チューブ11先端の一方弁16を内包している。
【0024】
体内留置部12において、チューブ11の延長上に位置する部分には、オブチュレータ20(図9乃至図11:後述)の先端24が突き当てられる突き当て部18が形成されている。突き当て部18は、例えば平板状に形成され、チューブ11の先端開口と対向している。
【0025】
体内留置部12の基端部(チューブ11との境界部)と突き当て部18との間に位置する側壁に複数の開口12aが縦に形成されることにより、当該側壁が複数の部分(例えば、複数の連結部124)に横に分割されている。このような形状の体内留置部12は、マレコットと称される。複数の連結部124は、それぞれ扁平な短冊状の形状で、且つ、互いの側に向けて凹となるように湾曲している。これら連結部124は、基端側がそれぞれチューブ11の先端の縁部に接合され、先端側がそれぞれ突き当て部18の周縁部に接合され、チューブ11と突き当て部18とを連結している。
【0026】
これら連結部124は、常態においては相対的に高い曲率で湾曲するように形成されている。このため、体内留置部12は、常態においては相対的に大径の張り出し状態(図6、図7、図9、図10の状態)、すなわち、チューブ11の径方向外側に拡径された状態となる。一方、オブチュレータ20により突き当て部18が(チューブ11に対して相対的に)先端側に押し込まれた状態の時には、湾曲が解消される方向に連結部124が弾性変形する。その結果、体内留置部12は、チューブ11の軸方向に伸長するとともに上記の張り出し状態よりも縮径する(図11の状態)。このように縮径した状態では、体内留置部12を瘻孔33を介して内臓内へ容易に挿入することができる。一方、張り出し状態では、体内留置部12の径(図7の直径a)が瘻孔33の内径よりも十分に大きくなり、カテーテル10が生体から抜けてしまうことが好適に抑制される。
【0027】
体内留置部12は、例えば、連結部124どうしの継ぎ目(股部)部分の内側に切欠き121(先端側の切欠きのみを図示し、基端側の切欠きは図示略としている)を備えるものが挙げられる。なお、切欠き121は先端側と基端側のいずれか一方のみに設けてもよい。切欠き121が設けられていることにより、体内留置部12の縮径状態において、連結部124どうしの継ぎ目部分の嵩張りを小さくすることができ、カテーテル10の瘻孔33への挿入、抜き取り作業に伴う患者の負担を減少できるとともに、術者の作業性を向上させることができる。
【0028】
また、体内留置部12のアスペクト比は、チューブ11の径方向外側に拡径された直径a(図7)が、チューブ11の軸方向における長さb(図7)よりも大きくなるように設定されていることが望ましい。これにより、患者の胃内部にカテーテル10が留置された状態において、患者の胃底部への刺激を抑制することができる。
【0029】
体内留置部12の突き当て部18には、オブチュレータ20のガイドワイヤ通路22と協働し、生体外と内臓内との連絡機能を果たす挿通孔15が形成されている。後述するガイドワイヤ40を挿通孔15及びガイドワイヤ通路22に通した状態で、チューブ11及びオブチュレータ20の組み付け体を瘻孔33を介して内臓内に挿入することにより、ガイドワイヤ40の誘導によりこの組み付け体を容易に挿入することができる。
【0030】
突き当て部18は、補強部材19で補強されていることが好ましい。これにより、オブチュレータ20が突き当て部18を先端側に押し込む際に、オブチュレータ20が突き当て部18を突き破ってしまうことが抑制される。補強部材19は、例えば金属又は熱硬化性樹脂等の材質で形成されたものが挙げられ、特に金属製のメッシュであることが好ましい。ただし、補強部材19は、挿通孔15と干渉しない形状及び配置とされる。
【0031】
体外固定部14は、カテーテル10が生体内に埋没しないようにチューブ11の基端に設けられた部分であり、カテーテル10を生体に装着した状態において、体外に位置する。体外固定部14は、例えば、生体の表皮に固定される。体外固定部14は、チューブ11の外径よりも長い寸法でチューブ11の径方向に延在する。体外固定部14は、例えば、導入路13の基端の開口周りに配置される扁平状物であることが挙げられる。また、体外固定部14には、更に、導入路13の基端の導入口に嵌合する栓17が、可撓性の連結部材171を介して取付けられている。カテーテル10の装着状態において、栄養又は薬液を体外から内臓内へ経皮的に補給しない時、栓17を導入路13の導入口に嵌合させることにより、内臓内を体外環境から遮断することができる。
【0032】
また、体内留置部12の先端の外壁面には突起状物191が付設されている。この突起状物191は略半円断面形状であり、その最大径はチューブ11の直径と略同じである。これにより、カテーテル10を瘻孔33へ挿入する際に、瘻孔33に対する体内留置部12の位置関係を目視しやすく、術者の作業性を向上させることができる。なお、突起状物191の大きさは特に制限されず、その最大径がチューブ11の直径より小さいものであってもよい。
【0033】
カテーテル10を形成する体内留置部12、チューブ11、体外固定部14、一方弁16及び補強部材19は、例えば圧縮成形により作製され、好ましくは、一体成形で作製される。カテーテル10は、例えば、シリコーンゴムどの樹脂により形成することが好ましい。
【0034】
次に、図9乃至図11を参照してオブチュレータ20の構成を説明する。
【0035】
オブチュレータ20は、カテーテル10のチューブ11の導入路13内に差し込み可能な棒状体25と、棒状体25の基端に形成され、術者に操作される操作部21と、を有している。オブチュレータ20を導入路13内に差し込み、オブチュレータ20の先端24を一方弁16を介して体内留置部12内に導出させ、該先端24を体内留置部12の突き当て部18に突き当てた状態で、操作部21を先端側に押し込むことにより、先端24が突き当て部18を先端側に変位させ体内留置部12を上述のように縮径させることができる。
【0036】
オブチュレータ20は、チューブ11の内径よりやや小さい外径を有することが、押し込みの際のチューブ11の変形を抑制し、術者がオブチュレータ20に付与する力をその先端24から突き当て部18へ効率的に伝達できる点で好ましい。
【0037】
棒状体25の内部には、ガイドワイヤ40の直径よりも大きな内径を有するガイドワイヤ通路22が形成されている。このガイドワイヤ通路22は、棒状体25の先端から途中まで延在している。ガイドワイヤ通路22の基端部23は、棒状体25の側面に形成された開口26を介して、棒状体25の外部と連通している。ガイドワイヤ通路22の長さ(棒状体25の先端から基端部23までの長さ)は、体内留置部12を縮径させたときのカテーテル10の長さよりも長いことが好ましい。
【0038】
オブチュレータ20は、カテーテル10よりも硬質(少なくとも連結部124よりも硬質)の材料により構成することが好ましく、例えば、ポリアセタール(POM)により構成することができる。
【0039】
次に、図1乃至図3を参照して、本実施形態に係る導入補助具30の構成を説明する。
【0040】
導入補助具30は、例えば、管状の本体部50と、この本体部50に外挿された外筒60と、本体部50の基端部に装着された装着部材70と、の3点の部材により構成されている。
【0041】
本体部50は、例えば、直線状に形成されている。本体部50の先端側の部分は、カテーテル10のチューブ11内に挿入される挿入部51を構成している。この挿入部51は、チューブ11の基端側から、該チューブ11内に挿入される。
【0042】
本体部50は、例えば、その基端から先端に亘って中空形状とされ、その中空は、導入対象物(例えば、PEG用ファイバースコープ)を誘導する管路52を構成している。そして、挿入部51の先端には、管路52と外部とを連通させる開口53が形成されている。管路52の基端には、導入対象物を管路52内に導入させる導入口52a(図3)が形成されている。
【0043】
装着部材70は、本体部50の基端部に外嵌されることにより固定された外嵌部71と、この外嵌部71に対して外嵌されることにより該外嵌部71を覆うことが可能なキャップ部72と、外嵌部71とキャップ部72とを連結する可撓性の連結部73と、を有している。
【0044】
外嵌部71の中央には、外嵌部71を貫通する導入口74(図2)が形成されている。この導入口74を介して、導入補助具30の外部と本体部50の管路52とが連通している。PEG用ファイバースコープ等の導入対象物は、導入口74を介して管路52内に導入される。ここで、外嵌部71の導入口74の内周はPEG用ファイバースコープ等の導入対象物の外周よりも小さい径に設定され、導入対象物の外周面に密着することで、導入対象物と外嵌部71との気密を確保できるようになっている。
【0045】
また、導入口74から導入対象物を抜いた状態の時には、外嵌部71にキャップ部72を外嵌することにより、導入口74を塞ぎ、管路52の内部の気密を確保することができる。
【0046】
このような装着部材70は、例えば、その全体が一体成形されている。装着部材70の材質は、例えば、シリコーンゴムとすることができる。
【0047】
本体部50には、更に、管路52内へ送気を行うことを可能とさせる導入口54が一体的に設けられている。この導入口54は、例えば、筒状の継ぎ手形状に形成され、本体部50の長手方向と交差(例えば直交)するように設けられている。この導入口54は、例えば、送気用手動ポンプ(一般に加圧用に供される医療用の手動ポンプ等)や接続チューブと容易に接続できるような、竹の子状の外形形状とされていることが好ましい。
【0048】
なお、管路52の基端部側には、テーパ状の導入口52aが設けられ、これにより、管路52内への導入対象物の導入及び誘導をスムーズに行うことができるようになっている。
【0049】
更に、本体部50の先端部55の外周面には突起58(詳細後述)が形成されている。
【0050】
このような本体部50は、例えば、その全体が一体成形されている。本体部50の材質は、例えば、ポリプロピレン(PP)とすることができる。
【0051】
外筒60は、本体部50に外挿される筒状の外筒本体61と、外筒本体61の先端に位置し外筒本体61よりも外筒60の径方向に張り出した張出部62と、張出部62よりも先端側に位置し本体部50に外挿される気密保持部63と、を有している。
【0052】
張出部62は、カテーテル10の体外固定部14と同様の扁平形状に形成されている。張出部62は、導入補助具30の使用時にカテーテル10の体外固定部14上に重ね合わされ、且つ、該体外固定部14に一体化される。
【0053】
張出部62には、例えば、体外固定部14に係合する一対の係合爪66が形成されている。このうち一方の係合爪66は、体外固定部14の一方の側面に係合し、他方の係合爪66は、体外固定部14の反対側の側面に係合する(図4及び図5の状態)。これにより、体外固定部14に対して外筒60(ひいては導入補助具30の全体)が相対的に軸周りに回動することが規制される。なお、係合爪66は、体外固定部14の裏面側にも係合する断面L字形状であることが好ましく、このようにすることにより、張出部62が体外固定部14から離れる方向への移動も規制できる。
【0054】
張出部62は、外筒本体61の両側にそれぞれ張り出していることが、安定性の面から好ましい。更に、一対の係合爪66のうちの一方は、張出部62において外筒本体61から一方に張り出した部分に形成され、一対の係合爪66のうちの他方は、張出部62において外筒本体61から他方に張り出した部分に形成されていることが、安定性の面から好ましい。
【0055】
ここで、本体部50において、外筒60よりも先端側に露出する部位が、上記の挿入部51であるものとする。そして、導入補助具30は、本体部50に対する外筒60の固定位置を本体部50の長手方向において調節できるようになっている。この調節により、カテーテル10のチューブ11の長さに合わせて挿入部51の長さを変えることが可能となっている。換言すれば、係合部66から開口53までの長さを調節することが可能となっている。
【0056】
この調節を可能とするため、外筒本体61には、本体部50の長手方向に沿って、長孔形状のガイド孔64が形成されている。このガイド孔64は、外筒本体61の内外を貫通しており、本体部50の突起58を該ガイド孔64の長手方向にガイドする。
更に、外筒本体61には、それぞれ外筒本体61の内外を貫通する複数の孔部65が形成されている。これら孔部65は、ガイド孔64の近傍において、ガイド孔64と並列に配列されている。これら孔部65は、該孔部65内に突起58が嵌入可能な寸法に形成されている。
なお、ガイド孔64と各孔部65との間には、それらを相互に仕切る仕切り67が形成されている。
【0057】
なお、図1及び図2においては、突起58を分かりやすくするため、突起58がガイド孔64から外れた状態を示しているが、常態においては、外筒60は図1及び図2に示した位置よりも上に位置し、突起58がガイド孔64内に位置している(図13(a)、図13(c)参照)。
【0058】
図13は導入補助具30の調節機構を説明するための正面図である。このうち図13(a)は挿入部51を最も短くした状態を、図13(c)は図13(a)の状態よりも挿入部51を長くした状態を、図13(b)は長さ調節のために、一旦突起58を孔部65から外してガイド孔64内に入れた状態を示す。
【0059】
挿入部51を所望の長さに調節するには、ガイド孔64内の突起58が所望の孔部65の隣に位置するように本体部50に対する外筒60の相対位置を調節した状態(例えば図13(b)の状態)から、外筒60を本体部50に対して軸周りに回転させる。すると、突起58と外筒本体61とのうちの少なくとも一方が弾性変形することにより、先ず、突起58がガイド孔64から外れ、突起58の頂部が仕切り67の内面に対して摺動する状態に移行する(図示略)。更に回転させると、突起58と外筒本体61とのうちの少なくとも一方が弾性復帰するとともに、突起58が所望の孔部65内に嵌入する。これにより、本体部50に対し、外筒60が本体部50の長手方向に相対移動することが規制されるとともに、挿入部51の長さが所望の長さに固定される(例えば、図13(a)の状態)。
【0060】
挿入部51の長さを変更するには、突起58を所望の孔部65内に嵌入させる動作と逆の動作を行うことにより、突起58をガイド孔64内に戻した後、再び、上記と同様の動作により突起58を別の孔部65内に嵌入させる(例えば、図13(c)の状態)。
【0061】
なお、孔部65の数や、孔部65の配置間隔は、カテーテル10のチューブ11の長さのバリエーションに合わせて任意に設定することができる。
【0062】
ガイド孔64、孔部65及び突起58により、長さ調節機構が構成されている。
【0063】
気密保持部63は、外筒本体61の延長上に位置する筒状の部分であり、張出部62よりも先端側に位置し、且つ、張出部62における先端側の面と連続的に形成されている。この気密保持部63は、係合爪66を体外固定部14に係合させた状態で、チューブ11内に嵌入する。このように気密保持部63がチューブ11内に嵌入することによって、気密保持部63の外面とチューブ11の内面との気密が確保できるように、気密保持部63の外径は、チューブ11の内径と略等しく設定されている。
【0064】
このように、外筒60は、挿入部51の長さ調節機能の他に、カテーテル10と導入補助具30との気密性を確保する機能を担う。
【0065】
このような外筒60は、例えば、その全体が一体成形されている。外筒60の材質は、例えば、ポリプロピレン(PP)或いはポリアセタール(POM)とすることができる。
【0066】
本実施形態に係る導入補助具30は、以上のように構成されている。ただし、挿入部51の先端部の構成の詳細については後述する。
【0067】
次に、図4及び図5を参照して、本実施形態に係る瘻孔用カテーテルキット80について説明する。この瘻孔用カテーテルキット80は、本実施形態に係る導入補助具30と、カテーテル10と、を有している。なお、瘻孔用カテーテルキット80は、上述のオブチュレータ20を含めたものとしても良い。
【0068】
図4及び図5は、係合爪66を体外固定部14に係合させて、導入補助具30をカテーテル10に組み付けた状態を示す。すなわち、導入補助具30の挿入部51をチューブ11の基端側からチューブ11の導入路13内に奥まで挿入し、張出部62を体外固定部14上に重ね合わせるとともに一対の係合爪66を体外固定部14に係合させることにより、導入補助具30をカテーテル10に組み付けることができる。この状態では、挿入部51の先端部は、チューブ11の先端の一方弁16を介してチューブ11よりも先端側に突出し、少なくとも体内留置部12内に達する。図4及び図5の例では、挿入部51の先端は、体内留置部12の開口12aを介して、体内留置部12の外部にまで達している。
この状態で、挿入部51の先端に形成された開口53が体内留置部12の開口12aの方を向くという第3条件と、該開口53がチューブ11の軸の延長線上から開口12a側にオフセットされているという第4条件と、のうちの少なくとも何れか一方の条件を満たすようになっている。ここで、オフセットとは、軸の延長線から側方に位置がずれている(軸の延長線上とは異なる位置にある)ことを意味する。
【0069】
次に、挿入部51の先端部の構成の詳細を説明する。
【0070】
挿入部51の長さは、図4及び図5に示すように導入補助具30をカテーテル10に組み付けた状態で、挿入部51の先端が少なくとも体内留置部12内にまで達する長さに設定されている。そして、挿入部51の先端には管路52と外部とを連通させる開口53が形成されている。
【0071】
導入補助具30は、開口53が本体部50の(管路52の)基端側部分の軸方向に対する交差方向を向いているという第1条件と、開口53が本体部50の(管路52の)基端側部分の軸の延長線上からオフセットされているという第2条件と、のうちの少なくともいずれか一方の条件を満たしている。
【0072】
ここで、本体部50の基端側部分の軸(軸方向)とは、開口53を除く挿入部51の中間部分の主たる延在方向であり、チューブ11の軸(軸方向)と一致する。本実施形態では、軸(軸方向)が直線状であるが、これに限られない。
【0073】
本実施形態の場合、開口53は、例えば、第1条件を満たしている。すなわち、開口53が本体部50の基端側部分の軸方向に対する交差方向(例えば、直交方向)を向いている。更に、開口53の少なくとも先端部は、本体部50の基端側部分の軸の延長線上からオフセットされている。
これにより、図4及び図5に示す組み付け状態で、PEG用ファイバースコープ等の導入対象物を導入口74より管路52内に挿入し、更に、管路52の先端の開口53より導出し、且つ、体内留置部12外に導出しようとする場合に、導入対象物の先端の移動が突き当て部18によって妨げられてしまうことを好適に抑制し、導入対象物の先端を好適に、体内留置部12の開口12a側へ導くことができる。
【0074】
しかも、管路52の先端部(例えば、開口53の基端部よりも先端側の部分で、且つ、開口53を含む部分)は、その先端に向かうほど本体部50の基端側部分の軸の延長線から遠ざかるように、曲がっている。換言すれば、管路52の先端部は、その先端に向かうほど、体内留置部12の開口12a側に向かうように、曲がっている。
より具体的には、開口53を含む管路52の先端部は、その先端に向かうほど本体部50の基端側部分の軸の延長線から遠ざかるようなスプーン形状(或いはかぎ爪状とも言える)の凹曲面となっている。換言すれば、管路52の先端部は、その先端に向かうほど、体内留置部12の開口12a側に向かうようなスプーン形状の凹曲面となっている。
これらの特徴により、一層好適に、導入対象物の先端を開口12a側へ導くことができる。
【0075】
ここで、係合爪66がカテーテル10の体外固定部14に係合することによって、チューブ11の軸周りにおいてカテーテル10に対する導入補助具30の回転位相が位置決めされる。そして、このように導入補助具30がカテーテル10に対して位置決めされた状態で、開口53が体内留置部12の開口12aの方を向いているという第3条件と、開口53がチューブ11の軸の延長線上から開口12a側にオフセットされているという第4条件と、のうちの少なくともいずれか一方の条件を満たす。すなわち、これらの少なくともいずれか一方の条件を満たすように、係合爪66の配置と、開口53の向き或いは配置と、が設定されている。
具体的には、本実施形態の場合、開口53が体内留置部12の開口12aの方を向いている。また、開口53の先端部は、チューブ11の軸の延長線上から開口12a側にオフセットされている。
よって、導入補助具30をカテーテル10に組み付けるだけで、開口53と開口12aとの位置合わせが自動的に行われ、導入対象物の先端を開口12a側へ容易に導くための準備がなされる。
【0076】
図14は挿入部51の先端部の形状を示す側面図(図14(a))及び正面図(図144(b))である。
【0077】
図14(b)に示すように、挿入部51の先端部は、先端に向けて徐々に細くなっている。すなわち先細りの形状に形成され、より柔軟性を持つ構造となっている。これにより、挿入部51をチューブ11内に挿入しやすくなっている。
【0078】
また、挿入部51の先端は、基端側の部分よりも、軸方向に対する直交方向に突出している(図14(a)の突出量dだけ突出している)。これにより、導入対象物の誘導をより好適に行うことができるようになっている。
【0079】
また、開口53は、挿入部51の先端を二次曲線状のラインに沿ってえぐり取るように切欠59を形成することによって、形成されている。このため、開口53の形成箇所での挿入部51の側壁91の高さ(挿入部51の厚み)が十分に小さくなっている。これにより、挿入部51の先端の可撓性を十分に確保できる。よって、挿入部51の先端が軸方向に対する直交方向に突出していても、挿入部51の先端をチューブ11内及び一方弁16内を通す際には、挿入部51の先端を容易に直線状に変形させることができるので、挿入部51を容易にチューブ11内及び一方弁16内に通すことができる。
【0080】
また、挿入部51の先端のスプーン形状は、側壁91を有するようなスプーン形状であるため、導入対象物の誘導をより好適に行うことができるようになっている。
【0081】
図15は導入補助具30の係合爪66の配置と開口53の向き及び配置との関係の一例を示す平断面図である。例えば、一対の係合爪66は張出部62の長手方向において互いに離間して配置され、開口53は、これら係合爪66の並び方向(張出部62の長手方向)に対して交差する方向を向き、且つ、開口53の先端部はその方向にオフセットされている。
【0082】
なお、開口53は、例えば、チューブ11の軸方向に長い長孔状に形成されている。すなわち、開口53は、チューブ11の軸方向における開口径c(図1)が、管路52の内径よりも大きい。ここで、管路52の内径とは、管路52において開口53よりも基端側に位置する部分の内径である。
開口53をこのような形状にすることにより、管路52の先端において導入補助具30を屈曲させた状態でも、該導入補助具30を管路52に対してスムーズに相対移動させることができる。よって、管路52の先端において、導入補助具30の進路の転換をスムーズに行うことができる。
【0083】
次に、動作を説明する。
【0084】
先ず、図12を参照してカテーテル10を生体に装着する作業を説明する。ここでは、体内留置部12を患者の胃内に留置する作業を説明する。
【0085】
先ず、患者の胃内に内視鏡を挿入し、且つ、胃内への送気を十分行うことにより腹壁31と胃壁32とを密着させる。次に、内視鏡からの透過光により胃の位置を確認し、腹部皮膚の消毒と局所麻酔を行う。続いて、その部位において、腹壁31と胃壁32の相対位置のずれを抑制するため、胃壁腹壁固定を行う。更に、この胃壁腹壁固定を行った箇所の近傍に、メスで小切開を加える。この小切開の部位が、カテーテル10の挿入予定部位となる。
【0086】
次に、小切開部位に中空針又はシース付き針等を腹壁31、胃壁32の順に貫通させ、挿入孔を形成する。中空針又はシースの内腔を介して(つまり挿入孔を介して)、ガイドワイヤ40を胃内まで挿入する。ここで、以降の作業中にガイドワイヤ40が意に反して引き抜かれてしまうことが抑制されるように、ガイドワイヤ40の先端側のうち、十分に長い長さを胃内に挿入しておく。また、ガイドワイヤ40の基端側は体外に導出させておく。このような挿入作業の終了後、ガイドワイヤ40の先端側を胃内に残したまま、中空針又はシース付き針を患者から抜き取る。
【0087】
次に、挿入孔の直径を拡張し、所定寸法の瘻孔33を形成する操作を行う。このためには、例えば、ガイドワイヤ40に沿ってダイレータを挿入孔に挿入する。拡張操作終了後、ガイドワイヤ40を残したままダイレータを患者から抜き取る。
【0088】
次に、チューブ11の基端側の導入口から、導入路13内にオブチュレータ20を差し込む。また、ガイドワイヤ40において瘻孔33から体外に導出されている部分を、体内留置部12の挿通孔15、一方弁16、チューブ11、オブチュレータ20のガイドワイヤ通路22及び開口26にこの順に通す(図10の状態)。
【0089】
次に、オブチュレータ20の操作部21を操作して、オブチュレータ20をチューブ11内にさらに押し込むことにより、体内留置部12は、オブチュレータ20からの外力の作用により弾性変形し、チューブ11の軸方向に伸長するとともに上記の張り出し状態よりも縮径する(図11、図12の状態)。
【0090】
次に、このように縮径した体内留置部12を含むカテーテル10とオブチュレータ20との組み付け体を、ガイドワイヤ40に沿って体内留置部12側から胃内に挿入する。ここでは、体内留置部12が縮径しているので、体内留置部12を瘻孔33を介して胃内へ容易に挿入することができる。
【0091】
ガイドワイヤ40の誘導により体内留置部12(及びチューブ11)が胃内に挿入され、チューブ11の基端の体外固定部14が患者の腹壁31に当接した段階で挿入を停止する。
【0092】
次に、オブチュレータ20の操作部21にかける操作力を弱めて、体内留置部12を張り出し状態に復元させる。更に、オブチュレータ20及びガイドワイヤ40をカテーテル10から抜き取る。これにより、張り出し状態の体内留置部12によって、カテーテル10が生体から抜け止めされた状態となる。
【0093】
このようにカテーテル10を生体に装着した後、例えば数ヶ月間栄養投与などに使用すると、カテーテル10の交換時期となる。カテーテル10を交換するには、古いカテーテル10及び瘻孔33を介して胃内にガイドワイヤ40の一端側を挿入し、ガイドワイヤ40の他端側をオブチュレータ20に挿通させ、オブチュレータ20を用いて古いカテーテル10をガイドワイヤ40に沿って抜去する。次に、新しい清潔なカテーテル10を上記と同様にオブチュレータ20を用いて瘻孔33に挿入し、生体に装着する。このようにカテーテル10の交換を実施した後で、以下に説明するように、本実施形態に係る導入補助具30を用いてPEG用ファイバースコープ(図示略)を患者の瘻孔33から胃内に導入し、新しいカテーテル10の体内留置部12が胃内に適正な状態で留置されているか否かの確認を行う。こうすることで、経口から内視鏡を入れる場合と比べて患者への侵襲を小さくできるとともに、術者の手間も少なくできる。ここで、PEGとは、経皮的内視鏡下胃瘻造設術(Percutaneous Endoscopic Gastrostomy)の略である。
【0094】
この確認を行うためには、先ず、カテーテル10のチューブ11の長さに応じて、導入補助具30の挿入部51の長さ調節を行う。すなわち、上述のように、突起58を所望の孔部65内に嵌入させる。
【0095】
そして、図4及び図5に示すように導入補助具30をカテーテル10に対して組み付ける。
【0096】
このとき、挿入部51の先端部は、一方弁16の弁部材16aと弁部材16bとの間を通過して、体内留置部12の中空内部に到達する。挿入部51がスプーン形状である場合、その厚み方向が弁部材16a、16bと直交するように(つまり弁部材16aと弁部材16bとの開きがなるべく小さい状態で、挿入部51の先端が一方弁16を通過できるように)、係合爪66の配置と、挿入部51の先端部の形状と、が設定されている。
【0097】
導入補助具30がカテーテル10に対して組み付けられた状態では、挿入部51の先端の開口53の少なくとも基端部が、体内留置部12内に位置するとともに、開口12a側を向いた状態となる。ただし、開口53の先端部は、開口12aを介して体内留置部12の外部に達しているため、開口53の先端部は、開口12aに背を向けて体内留置部12の外方を向いている。
【0098】
また、この状態で、挿入部51の先端部は、体内留置部12の開口12aの内周に当接するようになっていても良いし、当接しないようになっていても良い。前者の場合、挿入部51の先端が開口12a内に進入する際に、その進入方向の反対側へ体内留置部12を押しのけながら、進入することが挙げられる。
【0099】
また、係合爪66が体外固定部14に係合したとき、すなわち挿入部51がチューブ11に最も深く挿入されたとき、開口53の全体が一方弁16よりも先端側に露出するようになっていることが好ましい。
【0100】
また、このとき、一方弁16の弁部材16a、16bが挿入部51の外周面に密着し、この後で実施される胃内への送気時に、胃内から外部への空気の漏れを抑制する役割も果たす。
【0101】
この状態で、PEG用ファイバースコープを導入口74より管路52内に導入し、更に、PEG用ファイバースコープの先端側の部分を管路52の先端の開口53より導出する。ここで、開口53は、開口12a側を向いているので、PEG用ファイバースコープの先端を好適に体内留置部12の開口12a側へ導くことができる。よって、PEG用ファイバースコープの先端を容易に開口12aを介して体内留置部12の外部(胃内)に導出することができる。
【0102】
次に、送気用手動ポンプ(図示略)を導入口54に接続する。そして、送気用手動ポンプを用いて、導入口54、管路52及びその先端の開口53を通して、胃内へ送気を行うことにより、胃内を十分に拡張させてPEG用ファイバースコープの視野を確保する。
ここでは、PEG用ファイバースコープを挿入してから、送気用手動ポンプを導入口54に接続し、送気を行う手順を説明したが、キャップ部72を外嵌部71に取り付けて導入口74を閉じておいて、送気用手動ポンプを導入口54に接続し、胃内への送気を実施した後、PEG用ファイバースコープを挿入するという手順でも良い。
なお、ここでは、送気用手動ポンプを用いる代わりに、導入口54に対し、接続チューブ(図示略)を介してシリンジ(図示略)を接続し、送気を行うこともできる。
【0103】
ここで、外嵌部71の導入口74の内周は、PEG用ファイバースコープ等の導入対象物の外周よりも小さい径に設定され、PEG用ファイバースコープの外周面に密着し、管路52の内部が気密になっている。
つまり、外嵌部71に設けられた導入口74とPEG用ファイバースコープとにより得られる気密と、上述のように一方弁16と挿入部51とにより得られる気密と、気密保持部63とチューブ11とに得られる気密とによって、胃内に充填したガスが体外に漏れてしまうことが抑制される。
【0104】
次に、PEG用ファイバースコープを手元操作することによって先端の向きの角度調整を行ったり、PEG用ファイバースコープを更に胃内の奥に導入したりして、胃内における所望の方向の観察を行う。これにより、体内留置部12が胃内に適正な状態で留置されているか否かの確認を行う。
【0105】
この確認後、必要に応じて、体内留置部12の位置補正を行う。その後は、順に、PEG用ファイバースコープを導入補助具30から抜き取り、カテーテル10から導入補助具30を抜き取り、カテーテル10の栓17を導入路13の基端の導入口に嵌合させて、胃内を体外環境から遮断する。
【0106】
以上のような実施形態によれば、開口53が本体部50の基端側部分の軸方向に対する交差方向を向いているという第1条件と、開口53が本体部50の基端側部分の軸の延長線上からオフセットされているという第2条件と、のうちの少なくともいずれか一方の条件を満たしている。よって、導入補助具30の挿入部51をチューブ11に挿入し、開口53の向きを体内留置部の開口12aの向きに合わせた状態で、管路52を介して導入対象物(例えばPEG用ファイバースコープ)を導入することにより、この導入対象物を容易に体内留置部12の開口12aから内臓(例えば胃)内に導入(体内留置部12外に導出)することができる。
つまり、導入対象物をカテーテル10を介して内臓内に導入する作業を、突き当て部18の挿通孔15を利用せずに行うことができる。よって、突き当て部18にガイドワイヤ挿通用の挿通孔15が形成されている場合に、その挿通孔15の寸法を、導入対象物を挿通可能な大きさに設定する必要がない。また、突き当て部18に挿通孔15が形成されていないタイプのカテーテル10にも適用することができる。
なお、PEG用ファイバースコープの手元操作で行う先端の向きの調整では、PEG用ファイバースコープの先端を、一方弁16をかいくぐらせて内臓内に到達させることは困難である。これに対し、本実施形態の導入補助具30を用いることにより、容易に、PEG用ファイバースコープを一方弁16を通過させて、内臓内に到達させることができる。
【0107】
<変形例1>
図16は変形例1に係る導入補助具の挿入部51の先端部を示す正面断面図である。
【0108】
上記の実施形態では、管路52の先端部が曲がっている例を説明したが、変形例1に係る導入補助具では、管路52が直線状に形成されている。ただし、変形例1でも、開口53は、本体部50の(管路52の)基端側部分の軸方向(チューブ11の軸方向と一致する)に対する交差方向(例えば、直交方向)を向いている。
【0109】
このような変形例1によっても、上記の実施形態と同様の効果が得られる。
【0110】
<変形例2>
図17は変形例2に係る導入補助具の挿入部51の先端部を示す正面断面図である。
【0111】
上記の実施形態及び変形例1では、開口53が本体部50の(管路52の)の軸方向に対する交差方向を向いている例を説明したが、変形例2に係る導入補助具では、開口53が本体部50の(管路52の)の軸方向(チューブ11の軸方向と一致する)を向いている。ただし、変形例2では、開口53が本体部50の(管路52の)の軸(チューブ11の軸と一致する)の延長線上からオフセットされている。
【0112】
このような構成を実現するため、挿入部51の先端部は、図17に示すようにクランク状に屈曲している。このような屈曲形状の挿入部51をカテーテル10のチューブ11内に挿通でき、且つ、挿入部51の先端部をチューブ11の先端より導出させた状態では図17に示すように該先端部が屈曲形状となるように、挿入部51は適度の剛性を有し、且つ、適度の可撓性を有する材料により構成することが好ましい。すなわち、挿入部51の先端部は、チューブ11内では該チューブ11の径方向に圧縮されるように(直線状に)弾性変形するが、チューブ11の先端から導出されると元通りの屈曲形状に復元することが好ましい。
【0113】
ここで、チューブ11の軸の延長線上からの開口53のオフセット量は任意に設定することができる。ただし、開口53が突き当て部18と対向しない程度の量に設定すること、すなわち、挿入部51の先端が開口12aを介して体内留置部12の外部に導出されるようにすることが好ましい。
【0114】
図18は変形例2に係る導入補助具の挿入部51の先端部とカテーテル10の体内留置部12との位置関係の一例を示す正面図であり、導入補助具をカテーテル10に組み付けた状態を示す。
【0115】
図18の例では、挿入部51の先端は、開口12aを介して体内留置部12の外部に導出されている。
【0116】
このような変形例2によっても、上記の実施形態と同様の効果が得られる。
【0117】
上記においては、挿入部51の長さ調節を可能とするために、本体部50と、該本体部50とは別体の外筒60と、を有する導入補助具30を例示した。つまり、張出部62(係合爪66を含む)が本体部50と別体である例を説明した。しかし、上記の調節機構は必ずしも必要ではない。調節機能を有しない導入補助具30の場合、張出部62を本体部50と一体形成することも可能である。
同様に、上記においては、本体部50とは別部材の装着部材70を有する導入補助具30、すなわち導入口74、キャップ部72及び連結部73が本体部50とは別体の導入補助具30を説明した。しかし、導入口74、キャップ部72及び連結部73についても、本体部50と一体形成することも可能である。この場合、キャップ部72は、本体部50の基端部に外嵌されて、導入口74を塞ぐ構成とすることができる。
【符号の説明】
【0118】
10 瘻孔用カテーテル
11 チューブ
12 体内留置部
12a 開口
13 導入路
14 体外固定部
15 挿通孔
16 一方弁
16a 弁部材
17 栓
18 突き当て部
19 補強部材
20 オブチュレータ
21 操作部
22 ガイドワイヤ通路
23 基端部
24 先端
25 棒状体
26 開口
30 導入補助具
31 腹壁
32 胃壁
33 瘻孔
34 壁面
40 ガイドワイヤ
50 本体部
51 挿入部
52 管路
52a 導入口
53 開口
54 導入口
55 先端部
58 突起
59 切欠
60 外筒
61 外筒本体
62 張出部
63 気密保持部
64 ガイド孔
65 孔部
66 係合爪
67 仕切り
70 装着部材
71 外嵌部
72 キャップ部
73 連結部
74 導入口
80 瘻孔用カテーテルキット
91 側壁
121 切欠き
124 連結部
171 連結部材
191 突起状物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
瘻孔に挿通されるチューブと、前記チューブの先端に設けられ内臓内に留置される中空状ないしは籠状の体内留置部と、を有する瘻孔用カテーテルを介して前記内臓内に導入対象物を導入する際の補助を行う導入補助具であって、
内部に管路を有する本体部を備え、
前記本体部の先端には、前記管路と外部とを連通させる開口が形成され、
前記開口が前記本体部の基端側部分の軸方向に対する交差方向を向いているという第1条件と、
前記開口が前記本体部の基端側部分の軸の延長線上からオフセットされているという第2条件と、
のうちの少なくともいずれか一方の条件を満たしていることを特徴とする導入補助具。
【請求項2】
前記第1条件を満たすことを特徴とする請求項1に記載の導入補助具。
【請求項3】
前記管路の先端部が前記本体部の基端側部分の軸の延長線から遠ざかるように曲がっていることを特徴とする請求項1又は2に記載の導入補助具。
【請求項4】
前記管路の先端部は、その先端に向かうほど前記本体部の基端側部分の軸の延長線から遠ざかるようなスプーン形状の凹曲面となっていることを特徴とする請求項3に記載の導入補助具。
【請求項5】
前記開口は、前記本体部の基端側部分の軸方向における開口径が、前記管路の内径よりも大きいことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の導入補助具。
【請求項6】
前記体内留置部は、その側壁に複数の留置部開口が形成されることにより当該側壁が複数部分に分割され、
当該導入補助具は、
前記瘻孔用カテーテルに係合し、前記チューブの軸周りにおいて前記瘻孔用カテーテルに対する当該導入補助具の回転位相を位置決めする係合部を有し、
前記係合部が前記瘻孔用カテーテルに係合した状態で、前記開口が前記留置部開口の方を向いているという第3条件と、前記開口が前記延長線上から前記留置部開口側にオフセットされているという第4条件と、のうちの少なくともいずれか一方の条件を満たすことを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の導入補助具。
【請求項7】
前記係合部から前記開口までの長さを調節するための調節機構を更に有していることを特徴とする請求項6に記載の導入補助具。
【請求項8】
当該導入補助具は、前記本体部に外挿される外筒を更に有し、
前記調節機構は、
前記本体部の外面に形成された突起と、
前記本体部の長手方向に沿って延在するよう前記外筒に形成され、前記突起をガイドするガイド孔と、
前記ガイド孔と並列に配列されるよう、前記外筒に形成され、各々前記突起が係合可能な複数の孔部と、
を有し、
前記本体部と前記外筒とが相対的に回転されると、前記突起が前記ガイド孔から外れて何れか1つの前記孔部に係合し、前記本体部の長手方向への前記外筒の相対移動が規制されることを特徴とする請求項7に記載の導入補助具。
【請求項9】
当該導入補助具は、前記導入対象物としてのファイバースコープを導入する際の補助を行うことを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項に記載の導入補助具。
【請求項10】
瘻孔に挿通されるチューブと、前記チューブの先端に設けられ内臓内に留置される中空状ないしは籠状の体内留置部と、を有する瘻孔用カテーテルと、
前記瘻孔用カテーテルを介して前記内臓内に導入対象物を導入する際の補助を行う導入補助具と、
を有し、
前記導入補助具は、内部に管路を有する本体部を備え、
前記本体部の先端には、前記管路と外部とを連通させる開口が形成され、
前記開口が前記本体部の基端側部分の軸方向に対する交差方向を向いているという第1条件と、
前記開口が前記本体部の基端側部分の軸の延長線上からオフセットされているという第2条件と、
のうちの少なくともいずれか一方の条件を満たしていることを特徴とする瘻孔用カテーテルキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−75547(P2012−75547A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221803(P2010−221803)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】