説明

導波管レーザ

従来設けられたものよりもいっそうコンパクトな構造体になるようにして電極と少なくとも1つの側壁とによって形成することのできるレーザ導波管。電極における突出部によって、いっそう容易なレーザ始動が可能になり、また、分割型の側壁によって、側壁のいっそう容易な組立が可能になり、製造コストが削減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この出願は、2003年5月2日に出願された米国仮特許出願第60/467,542号の利益を主張する。
【0002】
この発明は、一般に導波管レーザに関するものであり、さらに詳しくはRF励起型導波管レーザに関するものであるが、これに限定されるものではない。
【背景技術】
【0003】
導波管レーザは典型的には、2つの鏡であってこれらの鏡どうしの間に光路を画定する導波管とともに連結された光学的共振器を画定する凹面あるいは平面がある2つの鏡から構成されている。
【0004】
この導波管は典型的には、セラミックブロック(例えば酸化アルミニウム,Al23)の中に研削によって設けられた通路であり、これには、導波管の断面を完全なものにするために加えられたアルミニウムあるいは銅からなる下部電極が備わっている。この代わりに、この導波管は、連続状の閉鎖長穴であってこの長穴に対して平行な上部電極および下部電極の備わった閉鎖長穴を作り出すために、酸化アルミニウム(Al23)のような一片のセラミックに超音波で穴を開けることができる。典型的には、発振用電磁界(例えば高周波−RF)電源の正極アームが導波管の上部電極の中に連結されるとともに、RF電源の接地平面が下部電極に連結される。共振は、RF電圧を電極の長さに沿って一様に分布させるために、上部電極の長さの間にそれに沿って加えられる。最後に、鏡と導波管構造体とは、励起されるガスを保有する真空容器(レーザハウジング)の中に一線配置されかつ収容される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
導波管レーザは、必要な長さについて、許容できるレーザ性能を得るのに充分な精度で妥当な費用により導波管を組み立てることが困難である、という不利を免れない。概ね30〜40cmの長さで1.5〜3.0mmのくり穴である典型的な導波管構造体を費用に対して効果的に組み立てることはきわめて困難である。くり穴断面が不正確であると、レーザの横モード特性は許容できないものになり、また、出力が減少する。寸法によって、導波管を製造するために使用される現在のセラミック厚板は、注入成形によって構成されるかあるいは押し出される。注入成形あるいは押出成形の公差は大きいため、所望の精度を獲得するためには、部品が形成された後に費用のかかる機械加工(研削)が必要である。
【0006】
さらに、導波管レーザは、固有の内部RF回路におけるその損失と熱除去効率とのバランスがとられる。理想的には、RF損失を最小限にするためには、天部電極と底部電極と(RF+電極とRF-電極あるいは接地電極と)の間のキャパシタンスは高いものでなければならないが、これは言い換えると、天部電極と底部電極との間にできるだけセラミックを使用しないことである。Al23については、熱効率要件により大きいセラミック区域の使用が要求されるが、これによって、より高い損失のRF回路および/または高い製造コストが生じる。理想的には、BeOおよびAlNのような良好な熱特性の備わった材料は、使用するのに好ましいセラミックであるが、従来技術の導波管設計とともに法外に値段の高いものである。
【0007】
さらに、導波管レーザの共振器空洞は、格納鏡の不整合と格納の低い反射率特性とによってエネルギー損失を免れない。例えば、共振器空洞のいずれか一方の端部で平面鏡を使用すると、完全に整合していないときには、限られた数の反射だけが可能である。
【0008】
従来技術では、くり穴断面は研削あるいは超音波穿孔の結果であるので、たいていのくり穴は長方形かあるいは円形かのいずれかである。これによって、装置の光学的性質のためよりも製造方法のために最適化されたくり穴がもたらされる。例えば、湾曲状の格納鏡を使用すると、共振器空洞を貫通する可変ビーム半径がもたらされ、従って、従来技術の導波管通路では、共振器通路における可変ビーム半径に関して導波管の最適化をすることができない。
【0009】
従来技術では、電極の位置決め、従って共振電界発生は、部分的に電極間隔の関数であり、また、導波管構造体の寸法(すなわち、電極どうしの距離)によってしばしば決定される。電極どうしのさまざまな間隔によって出力レベルが変化するため、電極間隔と光学素子とを充分に最適化することができず、その代わりに、従来方法は製造の容易さに焦点が置かれる。
【0010】
従来のガスレーザには、例えばレーザの始動に付加的な問題が存在している。伝統的なCO2レーザは、70〜80トールで与圧されるが、RFシステムのいくつかの手動操作によることなく始動するのが困難である。
【0011】
従来技術のシステムは、ラークマン(Laakman)特許(米国特許第4,169,251号)に記載されている。ラークマン特許は、他の従来システムと同じような多くの問題(例えば、注入成形によって形成しなければならない高価で長いセラミック部材、従来の始動特性……)を免れない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明の代表的実施形態によれば、ガスレーザ構成方法が提供される。
【0013】
この発明の代表的実施形態によれば、レーザ導波管の形成においてセラミック部分を使用する方法および装置が提供される。
【0014】
この発明の代表的実施形態によれば、レーザ導波管の形成において突出部(例えば電極の隅の丸み部)を使用する方法および装置が提供される。
【0015】
この発明の代表的実施形態によれば、レーザ導波管構造体の形成において突出部とセラミック部の使用とを組み合わせる方法および装置が提供される。
【0016】
この発明の代表的実施形態によれば、電極間隔を最適化することで、レーザの出力および/または効率が増大する。
【0017】
この発明のある代表的実施形態によれば、密封容器の中に収容された導波管の両端において第1および第2の反射手段によって画定されたレーザ共振器空洞の中に配置された導波管を有している導波管レーザが提供される。導波管構造体は、互いに接合されたときに導波管壁を形成する複数の部材から作り上げられている。これらの導波管壁は、これらの壁をいっそう正確に整合させることのできる個々の部材から作り上げることができる。個々の部材は、互いに突き合わせることができ、または、レーザの出力あるいはモードの悪化がほとんどない隙間によって隔てることができる。
【0018】
この発明における実施形態の用途のさらに別の範囲は、これ以降に提供される詳細な説明から明らかになる。詳細な説明および特定の例は、この発明の代表的実施形態を表わすものであるが、例示だけの目的を意図しており、発明の範囲を制限することを意図してない、ということを理解すべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
この発明の実施形態は、図面とともに与えられた次の詳細な説明から明らかになる。
【0020】
代表的実施形態の次の説明は、本質的には単に例示的なものであって、この発明、その用途あるいは使用法を制限することを決して意図していない。
【0021】
図1には、この発明の代表的実施形態に係る厚板導波管レーザ1であって、天部あるいは上部の電極2と底部あるいは下部の電極4とが備わっている厚板導波管レーザ1が示されている。上部電極2および下部電極4はそれぞれ、変形可能な形状(例えば、平坦なもの、厚さ可変のもの、湾曲したもの……)を備えていてもよい。側壁3a,3b,3c,3dが、上部電極2と下部電極4との間に挟まれ、かつ、小さい隙間5によって離されている。側壁の幅および厚さは陰影を付けて示されている。側壁の長さには陰影を付けていない。
【0022】
側壁3a,3b,3c,3d、上部電極2および下部電極4は導波管6を形成することができる。側壁3a,3b,3c,3dどうしの間には、隙間があってもよく、隙間がなくてもよい。この発明の代表的実施形態では、任意の数の隙間があってよい。この発明の追加の代表的実施形態では、側壁は所定圧力で導波管6を密閉することができる。導波管6は、レーザ発振媒体あるいは所望の操作条件に左右されるさまざまな圧力で密閉することができる。例えば、導波管は、電極2と隙間のない側壁3a,3b,3c,3dとを備えていてもよい。この代表的実施形態では、側壁3a,3b,3c,3dは、延出して電極2,4を取り囲み、レーザ自体のハウジングを形成している。同じように、電極2,4はレーザのハウジングを形成することができる(例えば図6C)。
【0023】
側壁3a,3b,3c,3d(など)は、たとえ側壁の部分どうしの間にあるいは側壁の部分と電極2,4との間に隙間があるとしても、感知できるほどのビーム劣化あるいは出力損失がほとんどないかあるいはまったくない限度までビームを導くように作用する。隙間5はビームに影響を及ぼさない可変寸法(例えば1〜3mmあるいはそれ以上、……)のものであってもよい。図2は、図1の導波管レーザ1の横断面における端面図を示している。上部電極2および下部電極4は、丸隅部(突出部)のある導波管6を形成するように具体化されて示されている。電極2,4の形状は、ビームが容易に当たるようにかつビームのモード制御が良好になるように、簡単に変更される。導波管型レーザおよび他の型のレーザでは、ビーム強度への典型的なガウス形状を作り出す円対称部分がビームの中に存在することが好ましい。電極は、導波管の中に真円対称部が存在するように、すなわち導波管の断面が真円であるように(例えば、図6Aの導波管6に示されたように)、ここで示されたものよりもさらに丸みを帯びていてもよい。この発明の代表的実施形態によれば、電極の断面の可変形状は従来の方法によって(例えば、CNCフライス削り、……によって)形づくることができる。
【0024】
図3はこの発明の代表的実施形態に係る、図4におけるIV−IV断面の縦断面図を示している。レーザ1は、ハウジング11の内部に配置することができ、2つの端部1a,1bの間に構成された空洞を備えている。端部1aには反射面が備わっており、端部1bには出力カプラーを形成する部分反射面が備わっている。RFフィードスルー12は絶縁用セラミックケーシング13の中に取り囲まれている。セラミックケーシング13はさまざまな材料(例えば、BeO、AlN、Al23、他の適切な絶縁用および/または誘電用の材料)から構成されていてもよい。この明細書における考察はさまざまな構成要素についてなされたが、そのような構成要素およびそのような構成要素の存在はこの発明の範囲について制限的なものであると解釈すべきでない。例えば、この発明の代表的な実施形態によれば、反射要素を含んでいる密閉型の導波管構造体では、分離されたハウジングは必要ではなく、側壁あるいは電極がハウジングをさらに形成する。
【0025】
レーザ1は、電極用の天部あるいは上部の板2と底部あるいは下部の板4とを備えてハウジング11の中に収容されていてもよい。天部あるいは上部の電極2は、ここでは連続状のものとして示されているが、電極の天側と底側との温度差による反りの軽減を支援するために、1つ以上の部分を備えたものでもよい。導波管6は全反射体14と部分反射面15との間のものでもよい。全反射体14と部分反射面15とは導波管6の端部に配置することができる。部分反射面15はビームのための出力カプラーを形成することができる。ビームは、出力カプラーで存在する前に、導波管6を通る1つ以上の通路を作ることができる。この発明の代表的実施形態は、全反射体14と部分反射面15との間に配置された導波管の数に関して制限されるものであると解釈すべきでない。この発明の代表的実施形態は複数の導波管を有するものであってもよく、これらの導波管は接続されていてもよく、分離されていてもよい。
【0026】
図3の代表的実施形態には、セラミックの側壁3a,3b,3c,3d,3eが隙間を残すことなく互いに突き合わされている事例が図示されている。この発明のこの実施形態では、4つのセラミック円筒16a,16b,16c,16dが使用されて、レーザハウジングと電極アセンブリーとの間にレーザを互いに保持する型締力がもたらされている。円筒16a,16b,16c,16dはさまざまな材料(例えば、BeO、AlN、Al23、他の適切なセラミック、……)から作ることができる。それらはここでは、レーザの長さに沿った電位差が最小化されることを保証するインダクター17a,17b,17c,17dがそれぞれに設けられて示されている。代表的な実施形態では、少なくとも1つの電源をコネクター12により接続することができる。
【0027】
ねじ式調節器18a,18bは光学素子を調節するために使用することができる。他の調節器は他の平面における光学素子を調節するために使用することができる。この発明の実施形態は光学的調節器の型によって制限されるものではなく、当業者に広く知られた他の方法を使用することができる。この発明は光学的調節器を有しているものに制限されるものでもない。
【0028】
図4は、この発明の代表的実施形態に係るレーザの端面図を示している。くり穴6に対して平行にされているビームの光軸に対してともに垂直である2つの平面における光学素子の調節を促進するために、2つの光学的調節手段18を互いに直交状に配置することができる。図示されていない他の調節手段を、ビームに対して平行な方向における光学素子の調節のために使用することができる。
【0029】
図5は、この発明の代表的実施形態に係る図2の電極および導波管の拡大図を示しており、電極2および導波管4をいっそうはっきりと示している。電極2および導波管4は、ある形状の導波管6を提供するように輪郭が作られている。電極2および導波管4は、出力およびビームの特性を最適化するために、任意の所望形状で形成することができる。電極の輪郭部分は、この明細書の中において突出部としても言及されている。
【0030】
図6A〜6Eは、この発明の代表的実施形態に係る導波管6のさまざまな断面部分を示している。図6A〜6Dでは、導波管6は電極2,4および側壁片9A,9Bによって取り囲まれている。電極2,4および側壁は、隙間を開けてかつ互いに接触しないように構成されていてもよい。図6Cは、この発明の代表的実施形態に係るレーザ導波管のハウジングの大部分を形成するために、電極2を使用することを示している。電極2は、セラミック側壁9A,9Bの突出部であってよい絶縁性スペーサ10によって電極4から隔てられている。この発明のさらに別の代表的実施形態では、側壁がハウジングを形成することができる。
【0031】
図6Eに示されたこの発明の代表的実施形態では、複数の導波管(6A,6B,6C)が示されている。図6A〜6Eに示されたように、この発明の代表的実施形態には、複数形状の導波管6、複数の形状および個数の電極2,4(例えば、2A,2B,2C,4A,4B,4C)、複数個数の導波管(例えば、6A,6B,6C)、および複数個数の側壁(例えば、9A,9B,9C,9D)が備わっていてもよい。さらに、導波管はそれらの長さに沿った位置で接続することができる。同じように、この発明の代表的実施形態には、電極を互いに絶縁するために絶縁体10,10A,10B,10C,10Dが備わっていてもよい。この発明のある代表的実施形態では、図6Eに示された複数の導波管の1つには、活性化された電極は備わっておらず、また、チャンバーはレーザ発振ガスのための冷却チャンバーとして作用する。冷却チャンバーがある場合には、導波管の1つは、導波管の長さに沿ったどこかで第2導波管に接続されている。第2導波管が活性電極を有している場合には、レーザ発振が生じる。
【0032】
図7には、この発明の代表的実施形態に係るレーザ導波管の二次元縦断面図が示されている。導波管6には、縦方向に、光学的効率を最大限にするために具体的に設計された可変断面部がある。可変断面部は、導波管6における光学モードに左右される種々の形状のものであってよい。図7には、縦方向における対称的な可変形状断面部が図示されているが、その形状は非対称のものであってもよい。
【0033】
さらに、導波管6を形成する側壁どうしは、2つの別個の側面がある1つの側壁を基本的に形成している細長片によって接続することができる。1つの側壁が形成されているときには、2つの別個の側面を結合している細長片は、導波管6の長さに沿った位置で1つの電極の表面を覆うことができる。図8には、2つの主要部分3A,3Bがある1つの側壁を有している、この発明の代表的実施形態に係るレーザ導波管6の分解図が図示されている。主要部分3A,3Bは、単一の側壁を形成している細長片17によって接続することができる。細長片17は、電極2,4を配置するためにもまた使用することができ、また、そのような細長片は、さまざまな形状および寸法の多くのものであってもよい。導波管6は、主要部分3A,3Bの2つの表面と2つの電極2,4の表面とで形成されている。この明細書における考察は、この発明の範囲を細長片接続部のある側壁にあるいは1つの側壁に制限するように解釈すべきではない。この発明の代表的実施形態には接続された複数の側壁が備わっていてもよい。
【0034】
突出部はレーザの始動特性を促進する。図9A〜9Cは、この発明のいくつかの代表的実施形態を示しており、ここで電極2,4には突出部21が含まれている。電極2,4の突出部21は、局在化領域における電界を増大させることによってレーザの始動特性を促進する。例えば、この発明の代表的実施形態に係るCO2導波管レーザは、突出部を備えており、70トールとは対照的に200トールの圧力で始動することができる。例示として与えられた始動圧力は、この発明の制限的なものであると解釈すべきではない。この発明の代表的実施形態に係るレーザはさまざまな圧力で始動することができる。
【0035】
先に説明したこの発明の代表的実施形態では、側壁(例えば、3a,3b,3c,3d,9A,9B)は、要望された絶縁性に左右されるさまざまな材料から構成することができる。例えば、側壁は、従来技術の導波管レーザにしばしば使用される酸化アルミニウム(Al23)に対して熱的特性および他の特性がきわめて優れているセラミック材料(例えば、酸化ベリリウム(BeO)、窒化アルミニウム(AlN)、……)から構成することができる。BeOおよびAlNは、Al23よりも熱効率が著しく高く、かつ、反射性が著しく高い。例えば、BeOは熱効率がおよそ10倍である。この発明の代表的実施形態では、上記材料を使用することができるような側壁の効果的使用が可能である。この発明の代表的実施形態ではAl23を使用することもできる。
【0036】
この発明の代表的実施形態では、上部電極(例えばRF正極)は、RFエネルギーの分布を促進するために連続状のものでもよく、あるいは分割状のものでもよい。側壁および下部電極(例えば接地電極)は連続状のものでもよく、かつ/または、個々の部分に製造されて組み立てられるものでもよい。個々の部分によれば、高品質の導波管構造体を作るために2つ作製されて一線配置される低コストの標準的反復台を設けることによって全体コストを削減することが促進される。分割状構造体によれば、現在使用されている導波管構造体に比べてコストが削減される結果になるであろう。この明細書における考察は、この発明を特定寸法の分割片に制限するように解釈すべきではない。この発明の代表的実施形態によれば、分割片の長さについては、3インチに加えて(例えば、80.0mm以上の、80.0mm未満の)さまざまな寸法を使用することができる。例えば18インチのレーザでは、3つの分割片はおよそ6インチの長さがあってよく、6インチのレーザでは、(3つの分割片があれば)それぞれの分割片は2インチの長さがあってよい。この明細書における考察は、分割片の寸法を制限するように解釈すべきではない。この発明の代表的実施形態にはさまざまな分割片がさらに含まれており、これらの分割片は等しい長さおよび/または幅および/または厚さではない。
【0037】
この発明の代表的実施形態におけるレーザ導波管は、従来技術の導波管よりも短い側壁が備わっていてもよい。その側壁が3インチよりも短いような分割片から形成されているときには、好適な熱特性の備わったセラミック(例えば、BeO、AlN、……)を効率的にかつ低コストで使用することができる。好適な熱反射特性の備わったセラミックによれば、RF回路損失を最小限にするとともに高い熱伝導率を維持することができる。
【0038】
分割片は、プレス加工、焼結あるいは注入成形によって形成することができる。プレス加工によれば、必要な公差を得るための機械加工を少なくする(少ない機械加工)ことができ、従って機械加工のコストがほとんどなくなる。セラミックの機械加工はしばしば研削と称される。焼結および注入成形は比較的安価である。例えば、BeOは、Al23の価格のおよそ2倍であるが、Al23よりもおよそ10倍、熱的な伝導率が大きい。AlNはおよそ5倍、熱的な伝導率が大きい。伝導率が大きいので、材料が少なくてすみ、その結果、コストが削減される。コスト節減に加えて、これらの材料から得ることのできる優れた反射率によって、いっそう高い効率がもたらされる。
【0039】
この発明の代表的実施形態では、CO2あるいはその混合体(CO2、He、N2、……)のようなガスレーザ発振材料が使用されている。CO2導波管は、いくつかの関連事項の点で光ファイバー導波管とは異なっている。CO2導波管は、「漏洩モード」導波管と称されており、導波管に隙間があるものであり、光学的性質に対する有害な変化をほとんどあるいはまったく引き起こさない。従って、セラミックあるいは他の適切な材料(例えば、BeO、AlN、……)からなる複数の部材は注意深く接合する必要がなく、また、隙間は1つの部材と次の部材との間に残されることがある。隙間は寸法が変化してもよい(例えば1〜3mmかあるいはそれ以上)。さらにまた、天部電極あるいは底部電極は、より良好なビームモード輪郭をもたらす輪郭を形成するために、そのセラミックからかつ互いに独立するように形づくることができる。例えば、導波管における4つの隅部のうちのいくつかあるいはすべては、より高次のモード形成を抑制するために丸みが付けられていてもよく、また、天部電極と底部電極との距離は、同一の全体隙間寸法を維持し、従ってほぼ同一の放電容積(すなわち利得容積)を有しながら、より容易なガス放電開始を可能にするために、セラミックの側壁に沿って減少させることができる。
【0040】
この発明の代表的実施形態では、さまざまな形状の電極によって、従来技術の装置に比べてより高い最大出力が可能になる。図9A〜9Cは、この発明の代表的実施形態に係るさまざまなレーザ導波管の電極突出部を示している。これらの突出部(挟み部とも称される)は、制限された局部的区域においてより強い磁界になり、それによって、レーザの始動が促進される。このような突出部によって、従来のレーザよりも高い圧力での始動が可能になる。増大したレーザ圧力によって利得容積の増大がもたらされ、従ってパルス出力性能は増大するが、レーザから放出された平均出力は減少する。この発明の代表的実施形態では、総パルス出力を維持するために一時的パルス長は増大する。従って、従来技術と比べたときに、総放出出力を維持しながら、より速い始動時間および停止時間を、増大した効率とともに達成することができる。
【0041】
図10は、この発明の代表的実施形態に係る少なくとも1つの電源の接続部を示している。電源30は、電源からハウジング11を介して電力を供給するコネクター12に接続されている。この発明の代表的実施形態では、電源は高周波(RF)電源である。任意のガスレーザのRF電源は、1つ以上のRFパワートランジスタと、このトランジスタおよびRF電源とレーザとの間におけるインターフェイスの両方のための制御回路とから構成されている。トランジスタが発生するRF周波数は、すべてのレーザにとって唯一のものであるが、典型的には、40.68MHz、81.36MHzあるいは100MHzである。RFパワートランジスタのための制御回路は、RF発振とRF電力入切切換とを調整する。従来のRF出力システムでは、40〜100MHzでのRF出力トランジスタの発振によってマイクロプロセッサの回路が破壊されるため、トランジスタ駆動回路に比較的旧い設計手法が使用されている。従って、RFパワートランジスタ回路は現在、パワートランジスタの発振に対して事実上、無感受性である個別の構成要素を組み込むように設計されている。
【0042】
この発明の代表的実施形態では、RF電源は、マイクロプロセッサ32によって制御されるものであってもよい。この実施形態では、マイクロプロセッサ32は、RFパワートランジスタの40〜100MHzレベルよりも高い周波数で作動する。例えば、10倍でのプロセッサでは、RF出力レベルは100MHz×10=1.0GHzであろう。GHzプロセッサによって「拾い上げられた」任意の信号は、プロセッサの作動が損なわれないように、そのノイズ閾値よりも著しく下にあってもよい。従って、マイクロプロセッサ32は、RFパワートランジスタを制御する個別の現存構成要素と置き換えることができる。例えば、個別のTTL論理回路のさまざまな部品は、マイクロプロセッサ32によって置き換えることができ、例えば、RFパワートランジスタのVSWR保護回路の部品であるワンショットの個別ICを省略することができる。加えて、さまざまなオアゲート、オペアンプおよびコンパレータを省略することができる。出力システムの他の部分をマイクロプロセッサ32によって置き換えることができ、また、この明細書における考察は置き換えられた部分を制限するように解釈すべきでない。
【0043】
マイクロプロセッサ32の使用によって、RF電源ボードをより低いコストで製造することができ、かつ、電源を著しく小さくすることができる。多数の個別構成要素を出力することによって、現在使用されている設計に比べてマイクロプロセッサに基づく電源の信頼性が大きく増大する。この明細書における考察は、RF電源とともに/において使用することのできるマイクロプロセッサの数および型を制限することを意図していない。
【0044】
この発明の説明は、事実上、単に例示的なものであり、従って、この発明の要旨から逸脱することのない変形が、この発明の実施形態の範囲内で意図されている。そのような変形はこの発明の精神および範囲からの逸脱とみなすべきではない(例えば、CO2あるいはCO2混合体に加えて他のガスを使用することができ、セラミック側壁が金属側壁で置き換えられるときには突出部を全金属システムとともに使用することができ、付加的な導波管を冷却液チャンバーとして使用することができる、……)。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は、この発明の代表的実施形態に係る厚板導波管レーザの斜視図を示している。
【図2】図2は、この発明の代表的実施形態に係る導波管レーザの断面図を示している。
【図3】図3は、この発明の代表的実施形態に係るレーザの、図4におけるIV−IV断面の縦断面図を示している。
【図4】図4は、この発明の代表的実施形態に係るレーザの、出力カプラー端からの端面図を示している。
【図5】図5は、この発明の代表的実施形態に係る導波管部分の拡大図を示している。
【図6】図6A〜6Eは、この発明の代表的実施形態に係るさまざまなレーザ導波管を示している。
【図7】図7は、この発明の代表的実施形態に係る可変長型導波管の断面を示している。
【図8】図8は、この発明の代表的実施形態に係る導波管構造体の壁を形成する単一部材のセラミック側壁が備わった導波管の分解図を示している。
【図9】図9A〜9Cは、この発明の代表的実施形態に係るさまざまなレーザ導波管の電極突出部を示している。
【図10】図10は、この発明の代表的実施形態に係る電源接続部を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面を有している上部電極と、第2面を有している下部電極とを備え、
前記第1面と前記第2面とは、少なくとも1つの側壁によって隔てられ、前記第1面と前記第2面とは、互いに対向し、それらの部分が前記少なくとも1つの側壁で完全には覆われておらず、前記第1面、前記第2面、および前記少なくとも1つの側壁は、レーザ導波管を形成している、導波管レーザに使用するためのレーザ導波管。
【請求項2】
前記少なくとも1つの側壁は、2つ以上の側壁である請求項1に記載のレーザ導波管。
【請求項3】
前記2つ以上の側壁は、分割型側壁である請求項2に記載のレーザ導波管。
【請求項4】
前記分割型側壁は、分割用隙間によって隔てられている請求項3に記載のレーザ導波管。
【請求項5】
前記少なくとも1つの側壁は、セラミックから作られている請求項1に記載のレーザ導波管。
【請求項6】
前記少なくとも1つの側壁は、BeOから作られている請求項1に記載のレーザ導波管。
【請求項7】
前記少なくとも1つの側壁は、AlNから作られている請求項1に記載のレーザ導波管。
【請求項8】
前記電極は、金属から作られている請求項1に記載のレーザ導波管。
【請求項9】
前記分割型側壁は、長さが200.0mm未満である請求項3に記載のレーザ導波管。
【請求項10】
前記上部電極は、前記下部電極との間の距離を減少させる第1突出部を形成するように形づくられている請求項1に記載のレーザ導波管。
【請求項11】
前記下部電極は、前記上部電極との間の距離を減少させる第1突出部を形成するように形づくられている請求項1に記載のレーザ導波管。
【請求項12】
前記下部電極は、前記上部電極との間の距離を減少させる第2突出部を形成するように形づくられている請求項10に記載のレーザ導波管。
【請求項13】
レーザ導波管と、発振用電磁界と、前記導波管の中に配置されたレーザ発振材料とを備え、
前記レーザ導波管は、電極と少なくとも1つの側壁とによって、前記導波管の境界を形成する前記電極のどの面も前記少なくとも1つの側壁で完全には覆われないように形成され、
前記電磁界は、その電磁界が前記レーザ導波管の中で作られるように、前記電極へ供給された発振用電流によって作られ、
前記電磁界は、前記レーザ発振材料から電磁放射線の誘導放出を生じさせる導波管レーザ。
【請求項14】
RF電源と、マイクロプロセッサとをさらに備え、
前記RF電源は、前記発振用電磁界に電力を供給し、
前記マイクロプロセッサは、前記発振用電磁界の周波数よりも高い周波数で作動するとともに前記RF電源の作動を制御する請求項13に記載の導波管レーザ。
【請求項15】
前記少なくとも1つの側壁は、2つ以上の側壁である請求項13に記載の導波管レーザ。
【請求項16】
前記2つ以上の側壁は、分割型側壁である請求項15に記載の導波管レーザ。
【請求項17】
前記分割型側壁は、分割用隙間によって隔てられている請求項16に記載の導波管レーザ。
【請求項18】
前記少なくとも1つの側壁は、セラミックから作られている請求項13に記載の導波管レーザ。
【請求項19】
前記少なくとも1つの側壁は、BeOから作られている請求項13に記載の導波管レーザ。
【請求項20】
前記少なくとも1つの側壁は、AlNから作られている請求項13に記載の導波管レーザ。
【請求項21】
前記電極は、金属から作られている請求項13に記載の導波管レーザ。
【請求項22】
前記分割型側壁は、長さが200.0mm未満である請求項17に記載の導波管レーザ。
【請求項23】
前記上部電極は、前記下部電極との間の距離を減少させる第1突出部を形成するように形づくられている請求項13に記載の導波管レーザ。
【請求項24】
前記下部電極は、前記上部電極との間の距離を減少させる第1突出部を形成するように形づくられている請求項13に記載の導波管レーザ。
【請求項25】
前記下部電極は、前記上部電極との間の距離を減少させる第2突出部を形成するように形づくられている請求項23に記載の導波管レーザ。
【請求項26】
前記レーザ発振材料は、CO2である請求項13に記載の導波管レーザ。
【請求項27】
前記レーザ発振材料は、CO2の混合体である請求項13に記載の導波管レーザ。
【請求項28】
レーザ導波管と、ハウジングと、発振用電磁界と、前記導波管の中に配置されたレーザ発振材料とを備え、
前記レーザ導波管は、電極と少なくとも1つの側壁とによって、前記導波管の境界を形成する前記電極のどの面も前記少なくとも1つの側壁で完全には覆われないように形成され、前記側壁は、前記レーザ導波管の一部を形成する第1面および第2面を有し、前記一部は、前記第1面から前記第2面までの距離が前記導波管の長さに沿って変化し、
前記ハウジングは、前記レーザ導波管を取り囲むとともに準大気圧に与圧され、
前記電磁界は、その電磁界が前記レーザ導波管の中で作られるように、前記電極へ供給された発振用電流によって作られ、
前記電磁界は、前記レーザ発振材料から電磁放射線の誘導放出を生じさせる導波管レーザ。
【請求項29】
RF電源と、マイクロプロセッサとをさらに備え、
前記RF電源は、前記発振用電磁界に電力を供給し、
前記マイクロプロセッサは、前記発振用電磁界の周波数よりも高い周波数で作動するとともに前記RF電源の作動を制御する請求項28に記載の導波管レーザ。
【請求項30】
前記ハウジングは、前記少なくとも1つの側壁から形成されている請求項28の導波管レーザ。
【請求項31】
前記ハウジングは、少なくとも1つの電極から形成されている請求項28の導波管レーザ。
【請求項32】
前記電極の断面の中心線どうしの間の距離は、前記導波管の長さに沿って変化する請求項28の導波管レーザ。
【請求項33】
前記第1面と前記第2面との間の距離は、前記導波管の長さに沿って変化する請求項28の導波管レーザ。
【請求項34】
突出部とともに第1面を有している上部電極を配置するステップと、
前記第1面の上に、少なくとも1つの側壁をその少なくとも1つの側壁が前記第1面を完全には覆わないように位置決めするステップと、
前記少なくとも1つの側壁の上に、第2面を有している下部電極を位置決めするステップとを備え、前記少なくとも1つの側壁は、前記第2面を完全には覆うことがなく、前記上部電極の配置によって、前記下部電極と前記少なくとも1つの側壁とが位置決めされ、コンパクトな構造を有するレーザ導波管が形成される
レーザ導波管の形成方法。
【請求項35】
前記少なくとも1つの側壁を形成するステップをさらに備え、この形成ステップは、少なくとも1つのセラミック片を所望の形状にプレス加工するステップと、前記少なくとも1つのセラミック片を第1公差まで研削するステップとからなる請求項34の方法。
【請求項36】
前記下部電極を形成するステップをさらに備え、この形成ステップは、前記下部電極を第2公差まで機械加工するステップからなる請求項34の方法。
【請求項37】
前記上部電極を形成するステップをさらに備え、この形成ステップは、前記上部電極を第3公差まで機械加工するステップからなる請求項34の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2電極と、
前記第1および第2電極の間に少なくとも部分的に設けられた第1および第2分割型側壁と、
前記第1および第2電極の間と前記第1および第2側壁の間とに画定された空洞を含んでいるレーザ導波管と、
前記第1および/または第2電極において前記第1および/または第2電極から前記レーザ導波管の前記空洞の中へ延出している少なくとも1つの突出部とを備えているレーザ。
【請求項2】
突出部は、前記第1および第2電極のそれぞれに形成されている請求項1のレーザ。
【請求項3】
前記第1分割型側壁のそれぞれの隣接部分は、互いに接触状態になるように互いに突き合わされている請求項1のレーザ。
【請求項4】
前記第2分割型側壁のそれぞれの隣接部分は、互いに接触状態になるように互いに突き合わされている請求項3のレーザ。
【請求項5】
前記第1分割型側壁のそれぞれの隣接部分は、互いに離れた状態に配置されている請求項1のレーザ。
【請求項6】
前記少なくとも1つの突出部は、前記空洞の局在化領域における電界を増大させることによって前記レーザの始動特性を促進する請求項1のレーザ。
【請求項7】
前記導波管レーザは、CO2が含まれているガス状レーザ発振材料を使用するCO2レーザである請求項1のレーザ。
【請求項8】
前記側壁は、セラミックからなる請求項1のレーザ。
【請求項9】
前記側壁は、BeO、Al23および/またはAlNの1つからなる請求項8のレーザ。
【請求項10】
前記側壁のそれぞれの部分は、長さが200mm未満である請求項1のレーザ。
【請求項11】
電磁界が、前記導波管の前記空洞の中にその電磁界がもたらされるように、前記電極の少なくとも1つへ供給された発振用電流によって引き起こされる請求項1のレーザ。
【請求項12】
第1および第2電極と、
少なくとも第1および第2電極の間に画定されたレーザ導波管と、
前記第1および/または第2電極において前記第1および/または第2電極から前記レーザのレーザ導波管の中へ延出している少なくとも1つの突出部とを備えているレーザ。
【請求項13】
突出部は、前記第1および第2電極のそれぞれに形成され、かつ、前記レーザは、導波管レーザである請求項12のレーザ。
【請求項14】
前記少なくとも1つの突出部は、前記空洞の局在化領域における電界を増大させることによって前記レーザの始動特性を促進する請求項12のレーザ。
【請求項15】
前記導波管レーザは、CO2が含まれているガス状レーザ発振材料を使用するCO2レーザである請求項12のレーザ。
【請求項16】
電磁界が、前記導波管の空洞の中にその電磁界がもたらされるように、前記電極の少なくとも1つへ供給された発振用電流によって引き起こされる請求項12のレーザ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【公表番号】特表2006−525756(P2006−525756A)
【公表日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−513391(P2006−513391)
【出願日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【国際出願番号】PCT/US2004/013081
【国際公開番号】WO2004/100325
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(505403924)ライトレーザー エル.エル.シー. (1)
【氏名又は名称原語表記】LITELASER L.L.C.
【住所又は居所原語表記】39533 Woodward Avenue,Suite 340,Bloomfield Hills,MI 48304,U.S.A.
【Fターム(参考)】