説明

導波路型光デバイス及びその製造方法

【課題】リング導波路の曲率半径を小さくしても伝播損失を抑制できる導波路型光デバイス及びその製造方法を提供する。
【解決手段】導波路型光デバイス30は、基板40と、基板40上に形成されたリング導波路32とを有する。リング導波路32はリング状のコア42と、クラッド43とにより形成されている。リング状のコア42の内周面には、リング状のコア42よりも薄く且つリング状のコア42の内周面に沿って所定の幅で形成されたスラブ層33が接続されており、リング状のコア42の外周にはスラブ層が設けられていない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導波路型光デバイス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通信の高速化及び大容量化の要求に対応すべく、光デバイスが広く使用されるようになった。リング状の光導波路を有するリング共振器は、光フィルタ、光スイッチ及び光変調器などの光デバイスに用いられている。
【0003】
光デバイスとトランジスタ等の電子部品とを同一基板上に集積することにより、光デバイスの小型化及び高性能化が達成される。この種の光デバイスは、成膜技術及び微細加工技術を使用して製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−207854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リング導波路の曲率半径を小さくしても伝播損失を抑制できる導波路型光デバイス及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の技術の一観点によれは、基板と、前記基板上に配置されたリング状のコアと、前記リング状のコアの内周面に接続し、前記リング状のコアよりも薄く且つ前記リング状のコアの内周面に沿って所定の幅で形成されたスラブ層と、前記リング状のコア及び前記スラブ層を覆うクラッドとを有し、前記リング状のコア及び前記スラブ層は前記クラッドよりも屈折率が高く、前記リング状のコアの外周にはスラブ層が設けられていない導波路型光デバイスが提供される。
【0007】
開示の技術の他の一観点によれば、表面に光学材料層が設けられた基板を用意する工程と、前記光学材料層の上にリング状のパターンを形成し、該パターンをマスクとして前記光学材料層をエッチングして、リング状のコアと、エッチングにより薄膜化された前記光学材料層からなるスラブ層とを形成する工程と、前記リング状のコアの内側中心部及び前記リング状のコアの外側の前記スラブ層を除去するとともに、前記リング状のコアの内周面に沿って前記スラブ層を所定の幅で残す工程と、前記リング状のコア及び前記スラブ層を前記リング状のコア及び前記スラブ層よりも屈折率が低い膜で覆う工程とを有する導波路型光デバイスの製造方法が提供される。
【0008】
開示の技術の更に他の一観点によれば、表面に第1の光学材料層が設けられた基板を用意する工程と、前記第1の光学材料層上に第2の光学材料層を形成する工程と、前記第2の光学材料層上にリング状のパターンを形成し、該パターンをマスクとして前記第2の光学材料層をエッチングし、リング状のコアを形成する工程と、前記リング状のコアの内側中心部及び前記リング状のコアの外側の前記第1の光学材料層を除去するとともに、前記リング状のコアの内周面に沿って前記第1の光学材料層を所定の幅で残してスラブ層とする工程と、前記リング状のコア及び前記スラブ層を前記リング状のコア及び前記スラブ層よりも屈折率が低い膜で覆う工程とを有する導波路型光デバイスの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
開示の導波路型光デバイスは、リング導波路の曲率半径を小さくしても伝播損失を抑制することができる。
【0010】
また、他の一観点によれば、リング導波路の曲率半径を小さくしても伝播損失を抑制できる導波路型光デバイスを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1(a)は導波路型リング共振器の一例を表した平面図、図1(b)は図1(a)のI−I線による断面図である。
【図2】図2(a)は第1の実施形態に係る導波路型光デバイスを表した平面図、図2(b)は図2(a)のII−II線による断面図である。
【図3】図3(a),(b)は、実施例及び比較例のリング導波路の各部の寸法を示す図である。
【図4】図4(a),(b)は、リング導波路の曲率半径を7μmとしたときの実施例及び比較例のリング導波路の断面における光の強度分布のシミュレーション結果を示す図である。
【図5】図5(a),(b)は、リング導波路の曲率半径を5μmとしたときの実施例及び比較例のリング導波路の断面における光の強度分布のシミュレーション結果を示す図である。
【図6】図6(a),(b)は、リング導波路の曲率半径を3μmとしたときの実施例及び比較例のリング導波路の断面における光の強度分布のシミュレーション結果を示す図である。
【図7】図7は、第1の実施形態に係る導波路型光デバイスの第1の製造方法を工程順に示す断面図(その1)である。
【図8】図8は、第1の実施形態に係る導波路型光デバイスの第1の製造方法を工程順に示す断面図(その2)である。
【図9】図9(a)〜(c)は、第1の実施形態に係る導波路型光デバイスの第2の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図10】図10(a)〜(c)は、第1の実施形態に係る導波路型光デバイスの第3の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図11】図11(a),(b)は、第2の実施形態に係る導波路型光デバイスの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態について説明する前に、実施形態の理解を容易にするための予備的事項について説明する。
【0013】
図1(a)は導波路型リング共振器の一例を表した平面図、図1(b)は図1(a)のI−I線による断面図である。
【0014】
図1(a)のように、導波路型リング共振器10は、直線導波路11と、直線導波路11に近接して配置されたリング導波路12とを有する。
【0015】
この導波路型リング共振器10は、例えば図1(b)のように、基板20の上に配置された下部クラッド21と、下部クラッド21上に配置された直線状及びリング状パターンのコア23と、コア23を覆う上部クラッド24とにより形成されている。直線導波路11は直線状に形成されたコア23からなり、リング導波路12はリング状に形成されたコア23からなる。
【0016】
コア23の屈折率は下部クラッド21及び上部クラッド24の屈折率よりも高く、光はコア23と下部クラッド21及び上部クラッド24との界面で反射されながらコア23内を移動する。
【0017】
図1(a),(b)に示す導波路型リング共振器10では、下部クラッド21と上部クラッド24との間にスラブ層23aが薄く形成されており、スラブ層23aはコア23の側面下部に接続している。スラブ層23aは、例えばコア23を電気光学材料により形成した場合にコア23に電界を印加する際の導通路として使用される。光デバイスによっては、スラブ層23aがないものもある。
【0018】
このような構造の導波路型リング共振器10において、導波路型リング共振器10の共振波長は、リング導波路12の周長とコア23の屈折率とに関係する。コア23を電気光学材料により形成した場合、コア23の屈折率は電界の印加により変化する。
【0019】
ところで、図1(a),(b)に例示した導波路型リング共振器10では、リング導波路12の曲率半径を小さくすると、伝播損失が増加してしまう。これは、以下の理由によると考えられる。
【0020】
すなわち、断面が左右対称に形成された直線状の導波路の場合、コア内を通る光の強度分布は正規分布に近い形状となり、光の強度分布の中心はコアの中心と一致する。しかし、光は直線的に進むので、リング状に形成された導波路では光の強度分布は外側に偏り、コアの外周面近傍の光の強度が高くなる。コアの外周面近傍の光の強度の変化量は導波路の曲率半径に関係し、曲率半径が小さくなるほど変化量は大きくなる。
【0021】
一般的に、コアは微細加工技術を使用して形成されるが、コアの外周面及び内周面にはラフネス(微細な凹凸)が存在する。このため、コアの外周面近傍の光の強度が高いと、ラフネスの影響が大きく作用し、導波路を通る光の伝播損失が増大する。
【0022】
以下、リング導波路の曲率半径を小さくしても伝播損失を抑制できる導波路型光デバイスについて説明する。
【0023】
(第1の実施形態)
図2(a)は第1の実施形態に係る導波路型光デバイスを表した平面図、図2(b)は図2(a)のII−II線による断面図である。なお、ここでは導波路型光デバイスが導波路型リング共振器の場合について説明する。
【0024】
図2(a)のように、本実施形態に係る導波路型光デバイス30は、直線導波路31と、直線導波路31に近接して配置されたリング導波路32とを有する。また、リング導波路32の内側には、リング導波路32に沿ってスラブ層33が設けられている。リング導波路32の外側には、スラブ層は設けられていない。
【0025】
なお、本実施形態ではリング導波路32が円形に形成されているが、レーストラック状(長円形)に形成されていてもよい。また、本実施形態では直線導波路31の両側にはスラブ層が設けられていないが、必要に応じて直線導波路31の一方又は両方の側面に沿ってスラブ層が設けられていてもよい。
【0026】
この導波路型光デバイス30は、図2(b)のように、基板40上に配置された下部クラッド41と、下部クラッド41の上に配置された直線状及びリング状のコア42と、コア42を覆う上部クラッド43とにより形成されている。直線導波路31は直線状のコア42からなり、リング導波路32はリング状のコア42からなる。
【0027】
スラブ層33は下部クラッド41と上部クラッド43との間に形成されており、コア42の下部に接続している。
【0028】
本実施形態では、基板40、コア42及びスラブ層33がSi(シリコン)により形成され、下部クラッド41及び上部クラッド43がSiO2(酸化シリコン)等により形成されているものとする。但し、コア42及びスラブ層33は下部クラッド41及び上部クラッド43よりも屈折率が高い光学材料により形成されていればよく、コア42、スラブ層33、下部クラッド41及び上部クラッド43の形成材料がSi又はSiO2に限定されるものではない。例えば、コア42がSiGe、InP又はGaAsにより形成されていてもよい。また、基板40はSi基板に限定されるものではなく、石英基板、GaAs基板又はInP基板を使用してもよい。
【0029】
以下、本実施形態に係る導波路型光導波路のリング導波路断面における光の強度分布をシミュレーションした結果について、比較例と比較して説明する。
【0030】
実施例として、図2(a),(b)及び図3(a)に示す構造のリング導波路をシミュレーション対象とした。コア42及びスラブ層33はSiからなり、下部クラッド41及び上部クラッド43はSiO2からなるものとした。また、リング導波路32のコア42の厚さt1は250nm、幅W1は500nmとし、スラブ層33の厚さt2は40nm、幅W2は210nmとした。スラブ層33は、リング導波路32の内側のみに形成されているものとした。
【0031】
一方、比較例として、図1(a),(b)及び図3(b)に示す構造のリング導波路をシミュレーション対象とした。コア23及びスラブ層23aはSiからなり、下部クラッド21及び上部クラッド24はSiO2からなるものとした。リング導波路12のコア23の厚さt1は210nm、幅W1は500nmとし、スラブ層23aの厚さt2は40nmとした。スラブ層23aは、コア23の両側に形成されているものとした。
【0032】
図4(a),(b)は、リング導波路の曲率半径を7μmとしたときの実施例及び比較例のリング導波路の断面における光の強度分布のシミュレーション結果を示す図である。また、図5(a),(b)は、リング導波路の曲率半径を5μmとしたときの実施例及び比較例のリング導波路の断面における光の強度分布のシミュレーション結果を示す図である。更に、図6(a),(b)は、リング導波路の曲率半径を3μmとしたときの実施例及び比較例のリング導波路の断面における光の強度分布のシミュレーション結果を示す図である。
【0033】
これらの図4〜図6からわかるように、比較例では曲率半径が小さくなるほどコアの外周面(図4〜図6においてコアの右側面)近傍の光の強度が高くなるのに対し、実施例ではコアの外周面近傍の光の強度の上昇が回避される。その理由は、リング導波路内を光が通る際に光の一部がリング導波路の内側に形成されたスラブ層を通り、スラブ層の分だけコアの内周側の光強度が高くなり、外周側の光強度が低くなるためと考えられる。
【0034】
通常、コアは成膜技術及び微細加工技術を用いて形成されるが、コアの側面にはラフネス(微小な凹凸)が存在する。このため、コアの外周面近傍の光の強度が高いと、コアの側面のラフネスの影響が大きく作用し、伝播損失が増加する。しかし、本実施形態では、コアの外周面近傍の光の強度の上昇が回避できるため、コアの側面のラフネスの影響が少なく、伝播損失が抑制される。
【0035】
なお、スラブ層33の厚さは、コア42の厚さの5%〜80%とすることが好ましい。スラブ層33の厚さがコア42の厚さの5%よりも少ない場合は、上述の効果を十分に得ることができない。一方、スラブ層33の厚さがコア42の厚さの80%を超えると、スラブ層33が実質的にコア42の一部となってしまうため、リング共振器の特性が大きく変化してしまう。スラブ層33のより好ましい厚さは、コア42の厚さの15%〜20%である。
【0036】
また、スラブ層33の幅は10nm以上とすることが好ましい。スラブ層33の幅が10nm未満であると、上述の効果を十分に得ることができない。スラブ層33の幅の好ましい範囲は、デバイスにより異なる。
【0037】
(第1の製造方法)
図7,図8は、第1の実施形態に係る導波路型光デバイスの第1の製造方法を工程順に示す断面図である。
【0038】
まず、SOI(silicon on insulator)基板50を用意する。ここでは、図7(a)のように、シリコン基板51の上に厚さが3μmのSiO2層(Box-SiO2層)52と、厚さが250nmのSi層53とが積層された構造のSOI基板を使用するものとする。なお、Si層53は光学材料層の一例である。
【0039】
次に、図7(b)に示す構造を得るまでの工程を説明する。上述の工程でSIO基板50を用意した後、Si層53の上にSiN膜55を約50nmの厚さに形成する。このSiN膜55は例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法により形成すればよく、成膜時の条件は、例えばチャンバ内にSiH2Cl2ガスとNH3ガスとを導入し、基板温度を780℃とする。
【0040】
次に、フォトリソグラフィ法を使用して、SiN膜55の上に所望のリング導波路32及び直線導波路31のパターンでフォトレジスト膜56を形成する。このフォトレジスト膜56の幅でリング導波路32及び直線導波路31の幅が決まる。本実施形態では、フォトレジスト膜56の幅を500nmとする。
【0041】
次に、フォトレジスト膜56をマスクとし、Si層53が露出するまでSiN膜55をエッチングする。このエッチングは例えばCF4ガスを使用したRIE(Reactive Ion Etching)法により行えばよく、エッチング時の条件は例えばチャンバ内の圧力を100mTorr(約13.3Pa)、RF(高周波)電力を150Wとする。
【0042】
次に、SiN膜55をマスクとしてSi層53をエッチングし、SiN膜55で覆われていない部分のSi層53の厚さが約40nmになったところでエッチングを終了する。このエッチングも例えばHBrガスを使用したRIE法により行えばよく、エッチング時の条件は、例えばチャンバ内圧力を50mTorr(約6.7Pa)、RF電力を200Wとする。図7(b)のように、SiN膜55の下に残ったSi層53がコア54となり、それ以外の部分のSi層53がスラブ層54aとなる。
【0043】
次に、図7(c)の構造を得るまでの工程を説明する。前述の工程でコア54及びスラブ層54aを形成した後、SiN膜55上のフォトレジスト膜56を除去する。その後、シリコン基板51の上側全面にSiO2を例えば300nmの厚さに堆積させて、SiO2膜を形成する。このSiO2膜は例えばCVD法により形成すればよく、成膜時の条件は、例えばチャンバ内にSiH4(20%)/He(80%)の混合ガスとN2Oガスとを導入し、基板温度を例えば800℃とする。
【0044】
次に、上述の工程で形成したSiO2膜を異方性エッチングして、コア54の両側部にSiO2からなるサイドウォール57を形成する。この異方性エッチングは、例えばCF4ガスを用いたRIE法により行えばよく、エッチング条件は例えばチャンバ内の圧力を1.8Torr(約240Pa)、RF電力を150Wとする。
【0045】
次に、図7(d)の構造を得るまでの工程を説明する。上述の工程でサイドウォール57を形成した後、フォトリソグラフィ法によりリング導波路の内側部分を覆うフォトレジスト膜58を形成する。この場合、フォトレジスト膜58のエッジがSiN膜55と重なっていればよく、SiN膜55の幅の範囲内であればフォトレジスト膜58の位置ずれは許容される。
【0046】
その後、例えば濃度が0.5wt%のフッ酸により、フォトレジスト膜58で覆われていない部分のサイドウォール57、すなわちリング導波路の外側のサイドウォールと直線導波路の両側のサイドウォールとをエッチングにより除去する。なお、SiN膜55はフッ酸でエッチングされないので、図7(d)のようにフォトレジスト膜58がSiN膜55の上を完全に覆っていなくてもよい。また、直線導波路の一方又は両方の側にスラブ層54aを残す場合は、直線導波路の一方又は両方の側のサイドウォールの上をフォトレジスト膜58で覆っておく。
【0047】
次に、図8(a)のように、フォトレジスト膜58を除去する。そして、SiN膜55及びサイドウォール57をマスクとしてスラブ層54aを例えばHBrガスを使用したRIE法によりエッチングする。
【0048】
その後、図8(b)のように、シリコン基板51の上側全面にSiO2膜59を約1μmの厚さに形成する。このSiO2膜59は例えばCVD法により形成すればよく、成膜時の条件は例えばチャンバ内にSiH4(20%)/He(80%)の混合ガスとN2Oガスとを導入し、基板温度を790℃とする。その後、必要に応じて、SiO2膜59の表面を研磨して平坦化する。
【0049】
このようにして、図2(a),(b)に示す構造の導波路型光デバイス30が完成する。なお、図8(b)のSiO2層52、コア54及びスラブ層54aはそれぞれ図2(b)の下部クラッド41、コア42及びスラブ層33に対応し、図8(b)のサイドウォール57、SiN膜55及びSiO2膜59は図2の上部クラッド43に対応する。
【0050】
上述した第1の製造方法では、リング導波路32の内側のスラブ層54aの幅がSiO2膜を異方性エッチングして形成したサイドウォール57の幅により決定されるので、スラブ層54aの幅が均一になるという利点がある。
【0051】
(第2の製造方法)
図9(a)〜(c)は、第1の実施形態に係る導波路型光デバイスの第2の製造方法を工程順に示す断面図である。
【0052】
まず、第1の製造方法と同様に、シリコン基板51の上にSiO2層52及びSi層53が積層されたSOI基板50を用意する(図7(a)参照)。そして、図9(a)のように、Si層53の上にSiN膜55を形成し、SiN膜55の上にフォトレジスト膜56を所望の直線導波路及びリング導波路のパターンで形成する。
【0053】
次に、フォトレジスト膜56をマスクとしてSiN膜55をエッチングする。その後、SiN膜55をマスクとしてSi層53をエッチングし、コア54及びスラブ層54aを形成する。コア54及びスラブ層54aを形成した後、SiN膜55上のフォトレジスト膜56を除去する。
【0054】
次に、図9(b)のように、シリコン基板51の上側全面にフォトレジストを塗布し、露光及び現像処理を実施して、リング導波路となるコア54の上からスラブ層54aとなる領域の上までを覆うフォトレジスト膜61を形成する。
【0055】
次に、フォトレジスト膜61をマスクとし、SiO2層52が露出するまでスラブ層54aをエッチングする。その後、フォトレジスト膜61を除去し、図9(c)のようにシリコン基板51の上側全面にSiO2膜59を形成する。これにより、図2(a),(b)に示す構造の導波路型光デバイス30が完成する。
【0056】
第2の製造方法では、フォトレジスト膜61の位置ずれによりスラブ層54aの幅が変化するおそれがあるものの、サイドウォールを形成する工程がないので、第1の製造方法に比べて製造が容易であるという利点がある。
【0057】
(第3の製造方法)
図10(a)〜(c)は、第1の実施形態に係る導波路型光デバイスの第3の製造方法を工程順に示す断面図である。
【0058】
まず、第1の製造方法と同様に、シリコン基板51の上にSiO2層52及びSi層53が積層されたSOI基板50を用意する(図7(a)参照)。ここでは、SiO2層52の厚さが3μmであり、Si層53の厚さが50nmであるとする。Si層53は第1の光学材料層の一例である。
【0059】
次に、図10(a)のように、Si層53の上にSiGe層65を200nmの厚さにエピタキシャル成長させる。SiGe層65は第2の光学材料層の一例である。
【0060】
次いで、図10(b)に示す構造を得るまでの工程を説明する。上述の工程でSiGe層65を形成した後、SiGe層65の上にSiN膜67を形成する。その後、SiN膜67の上にフォトレジスト膜68を所望の直線導波路及びリング導波路のパターンで形成する。
【0061】
次に、フォトレジスト膜68をマスクとしてSiN膜67をエッチングする。その後、SiN膜67をマスクとし、RIE法によりSi層53が露出するまでSiGe層65をエッチングする。この場合、Si層53とSiGe層65とのエッチングレートが異なる条件でエッチングを行うことにより、Si層53を殆どエッチングすることなくSiGe層65をエッチングすることができる。SiGe層65をエッチングした後、SiN膜67上のフォトレジスト膜68を除去する。
【0062】
次に、図10(c)に示す構造を得るまでの工程を説明する。上述の工程でSiGe層65をエッチングした後、第1の実施形態と同様に、シリコン基板51の上側全面にSiO2膜を形成し、このSiO2膜を異方性エッチングしてサイドウォール69を形成する。そして、フォトレジスト膜(図示せず)を使用してリング導波路の外側及び直線導波路の両側のサイドウォール69を選択的に除去し、リング導波路の内側のみにサイドウォール69を残す。
【0063】
次に、残存するサイドウォール69をマスクとしてSi層53をエッチングした後、シリコン基板51の上側全面にSiO2膜59を形成する。サイドウォール69の下に残存するSi層53がスラブ層53aとなる。また、SiGe層65及びその下方のSi層53はコアとなる。このようにして、図2(a),(b)に示す構造の導波路型光デバイス30が完成する。
【0064】
第3の製造方法では、SiとSiGeとのエッチングレートの差を利用することにより、所望の厚さのスラブ層53aを容易に形成できるという利点がある。
【0065】
(第2の実施形態)
図11(a),(b)は、第2の実施形態に係る導波路型光デバイスの平面図である。図11(a)に示す導波路型光デバイス80は、直線導波路81に沿って半径が同一の2つのリング導波路82a,82bを配置している。リング導波路82a,82bの内側には、リング導波路82a,82bに沿ってスラブ層83が設けられている。この導波路型光デバイス80では、図2に示す導波路型光デバイス30に比べて位相の変調が大きくなる。
【0066】
図11(b)に示す導波路型光デバイス85は、直線導波路86に沿って半径が相互に異なる2つのリング導波路87a,87bを配置している。リング導波路87a,87bの内側には、リング導波路87a,87bに沿ってスラブ層88が設けられている。この導波路型光デバイス80では、図2に示す導波路型光デバイス30に比べて帯域が広くなる。
【0067】
以上の諸実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0068】
(付記1)基板と、
前記基板上に配置されたリング状のコアと、
前記リング状のコアの内周面に接続し、前記リング状のコアよりも薄く且つ前記リング状のコアの内周面に沿って所定の幅で形成されたスラブ層と、
前記リング状のコア及び前記スラブ層を覆うクラッドとを有し、
前記リング状のコア及び前記スラブ層は前記クラッドよりも屈折率が高く、前記リング状のコアの外周にはスラブ層が設けられていないことを特徴とする導波路型光デバイス。
【0069】
(付記2)前記スラブ層の厚さが均一であることを特徴とする付記1に記載の導波路型光デバイス。
【0070】
(付記3)前記スラブ層の幅が均一であることを特徴とする付記1又は2に記載の導波路型光デバイス。
【0071】
(付記4)前記リング状のコアに近接して直線状のコアが配置されていることを特徴とする付記1乃至3のいずれか1項に記載の導波路型光デバイス。
【0072】
(付記5)前記スラブ層の幅が10nm以上であることを特徴とする付記1乃至4のいずれか1項に記載の導波路型光デバイス。
【0073】
(付記6)前記スラブ層の厚さが前記リング状のコアの厚さの5%乃至80%の範囲内であることを特徴とする付記1乃至5のいずれか1項に記載の導波路型光デバイス。
【0074】
(付記7)前記基板が、半導体により形成されていることを特徴とする付記1乃至6のいずれか1項に記載の導波路型光デバイス。
【0075】
(付記8)前記リング状のコア及び前記スラブ層が同一の材料により形成されていることを特徴とする付記1乃至7のいずれか1項に記載の導波路型光デバイス。
【0076】
(付記9)前記リング状のコア及び前記スラブ層が相互に異なる材料により形成されていることを特徴とする付記1乃至7のいずれか1項に記載の導波路型光デバイス。
【0077】
(付記10)前記コア及びスラブ層が、シリコンを主成分とする材料により形成されていることを特徴とする付記1乃至7のいずれか1項に記載の導波路型光デバイス。
【0078】
(付記11)前記直線状のコアの長さ方向に沿って、前記リング状のコアが複数配置されていることを特徴とする付記4に記載の導波路型光デバイス。
【0079】
(付記12)表面に光学材料層が設けられた基板を用意する工程と、
前記光学材料層の上にリング状のパターンを形成し、該パターンをマスクとして前記光学材料層をエッチングして、リング状のコアと、エッチングにより薄膜化された前記光学材料層からなるスラブ層とを形成する工程と、
前記リング状のコアの内側中心部及び前記リング状のコアの外側の前記スラブ層を除去するとともに、前記リング状のコアの内周面に沿って前記スラブ層を所定の幅で残す工程と、
前記リング状のコア及び前記スラブ層を前記リング状のコア及び前記スラブ層よりも屈折率が低い膜で覆う工程と
を有することを特徴とする導波路型光デバイスの製造方法。
【0080】
(付記13)前記リング状のコアの内側中心部及び前記リング状のコアの外側の前記スラブ層を除去するとともに、前記リング状のコアの内周面に沿って前記スラブ層を所定の幅で残す工程は、
前記基板上に前記光学材料層よりも屈折率が低い第1の膜を形成する工程と、
前記第1の膜を異方性エッチングして前記リング状のコアの側部にサイドウォールを形成する工程と、
前記サイドウォールをマスクとして前記スラブ層をエッチングする工程とを含むことを特徴とする付記12に記載の導波路型光デバイスの製造方法。
【0081】
(付記14)前記リング状のコアの内側中心部及び前記リング状のコアの外側の前記スラブ層を除去するとともに、前記リング状のコアの内周面に沿って前記スラブ層を所定の幅で残す工程は、
前記リング状のコアの上から前記リング状のコアの内周面近傍の領域の前記スラブ層を覆うレジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜をマスクとして前記スラブ層をエッチングする工程と、
前記レジスト膜を除去する工程と
を含むことを特徴とする付記12に記載の導波路型光デバイスの製造方法。
【0082】
(付記15)表面に第1の光学材料層が設けられた基板を用意する工程と、
前記第1の光学材料層上に第2の光学材料層を形成する工程と、
前記第2の光学材料層上にリング状のパターンを形成し、該パターンをマスクとして前記第2の光学材料層をエッチングし、リング状のコアを形成する工程と、
前記リング状のコアの内側中心部及び前記リング状のコアの外側の前記第1の光学材料層を除去するとともに、前記リング状のコアの内周面に沿って前記第1の光学材料層を所定の幅で残してスラブ層とする工程と、
前記リング状のコア及び前記スラブ層を前記リング状のコア及び前記スラブ層よりも屈折率が低い膜で覆う工程と
を有することを特徴とする導波路型光デバイスの製造方法。
【0083】
(付記16)前記リング状のコアの内側中心部及び前記リング状のコアの外側の前記スラブ層を除去するとともに、前記リング状のコアの内周面に沿って前記スラブ層を所定の幅で残す工程は、
前記基板上に前記第1の光学材料層及び前記第2の光学材料層よりも屈折率が低い第1の膜を形成する工程と、
前記第1の膜を異方性エッチングして前記コアの側部にサイドウォールを形成する工程と、
前記サイドウォールをマスクとして前記第1の光学材料層をエッチングする工程とを含むことを特徴とする付記15に記載の導波路型光デバイスの製造方法。
【0084】
(付記17)前記第1の光学材料層と前記第2の光学材料層は、前記第2の光学材料層をエッチングする際のエッチングレートが異なることを特徴とする付記15に記載の導波路型光デバイスの製造方法。
【符号の説明】
【0085】
10…導波路型リング共振器、11…曲線導波路、12…リング導波路、20…基板、21…下部クラッド、23…コア、23a…スラブ層、24…上部クラッド、30…導波路型光デバイス、31…直線導波路、32…リング導波路、33…スラブ層、40…基板、41…下部クラッド、42…コア、43…上部クラッド,50…SOI基板、51…シリコン基板、52…SiO2層、53…Si層、53a,54a…スラブ層、54…コア、55…SiN膜、56,58,61…フォトレジスト膜、57,69…サイドウォール、59…SiO2膜、65…SiGe層、80,85…導波路型光デバイス、81,86…直線導波路、82a,82b,87a,87b…リング導波路、83,88…スラブ層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に配置されたリング状のコアと、
前記リング状のコアの内周面に接続し、前記リング状のコアよりも薄く且つ前記リング状のコアの内周面に沿って所定の幅で形成されたスラブ層と、
前記リング状のコア及び前記スラブ層を覆うクラッドとを有し、
前記リング状のコア及び前記スラブ層は前記クラッドよりも屈折率が高く、前記リング状のコアの外周にはスラブ層が設けられていないことを特徴とする導波路型光デバイス。
【請求項2】
前記リング状のコアに近接して直線状のコアが配置されていることを特徴とする請求項1に記載の導波路型光デバイス。
【請求項3】
前記スラブ層の幅が10nm以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の導波路型光デバイス。
【請求項4】
前記基板が、半導体により形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の導波路型光デバイス。
【請求項5】
前記直線状のコアの長さ方向に沿って、前記リング状のコアが複数配置されていることを特徴とする請求項2に記載の導波路型光デバイス。
【請求項6】
表面に光学材料層が設けられた基板を用意する工程と、
前記光学材料層の上にリング状のパターンを形成し、該パターンをマスクとして前記光学材料層をエッチングして、リング状のコアと、エッチングにより薄膜化された前記光学材料層からなるスラブ層とを形成する工程と、
前記リング状のコアの内側中心部及び前記リング状のコアの外側の前記スラブ層を除去するとともに、前記リング状のコアの内周面に沿って前記スラブ層を所定の幅で残す工程と、
前記リング状のコア及び前記スラブ層を前記リング状のコア及び前記スラブ層よりも屈折率が低い膜で覆う工程と
を有することを特徴とする導波路型光デバイスの製造方法。
【請求項7】
前記リング状のコアの内側中心部及び前記リング状のコアの外側の前記スラブ層を除去するとともに、前記リング状のコアの内周面に沿って前記スラブ層を所定の幅で残す工程は、
前記基板上に前記光学材料層よりも屈折率が低い第1の膜を形成する工程と、
前記第1の膜を異方性エッチングして前記リング状のコアの側部にサイドウォールを形成する工程と、
前記サイドウォールをマスクとして前記スラブ層をエッチングする工程とを含むことを特徴とする請求項6に記載の導波路型光デバイスの製造方法。
【請求項8】
前記リング状のコアの内側中心部及び前記リング状のコアの外側の前記スラブ層を除去するとともに、前記リング状のコアの内周面に沿って前記スラブ層を所定の幅で残す工程は、
前記リング状のコアの上から前記リング状のコアの内周面近傍の領域の前記スラブ層を覆うレジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜をマスクとして前記スラブ層をエッチングする工程と、
前記レジスト膜を除去する工程と
を含むことを特徴とする請求項6に記載の導波路型光デバイスの製造方法。
【請求項9】
表面に第1の光学材料層が設けられた基板を用意する工程と、
前記第1の光学材料層上に第2の光学材料層を形成する工程と、
前記第2の光学材料層上にリング状のパターンを形成し、該パターンをマスクとして前記第2の光学材料層をエッチングし、リング状のコアを形成する工程と、
前記リング状のコアの内側中心部及び前記リング状のコアの外側の前記第1の光学材料層を除去するとともに、前記リング状のコアの内周面に沿って前記第1の光学材料層を所定の幅で残してスラブ層とする工程と、
前記リング状のコア及び前記スラブ層を前記リング状のコア及び前記スラブ層よりも屈折率が低い膜で覆う工程と
を有することを特徴とする導波路型光デバイスの製造方法。
【請求項10】
前記リング状のコアの内側中心部及び前記リング状のコアの外側の前記スラブ層を除去するとともに、前記リング状のコアの内周面に沿って前記スラブ層を所定の幅で残す工程は、
前記基板上に前記第1の光学材料層及び前記第2の光学材料層よりも屈折率が低い第1の膜を形成する工程と、
前記第1の膜を異方性エッチングして前記コアの側部にサイドウォールを形成する工程と、
前記サイドウォールをマスクとして前記第1の光学材料層をエッチングする工程とを含むことを特徴とする請求項9に記載の導波路型光デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−113862(P2013−113862A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257078(P2011−257078)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】