説明

導電マルチフィラメント糸

【課題】 109Ω/cm〜1013Ω/cmの高抵抗値を示す導電マルチフィラメント糸において、マルチフィラメント糸を構成する各単繊維の電気抵抗値のばらつきが小さく、接触帯電用等のブラシとして用いると、安定、かつ良好な画像を得ることができる導電マルチフィラメント糸を提供する。
【解決手段】 導電性物質を含有する熱可塑性ポリマーからなる単繊維で構成された導電マルチフィラメント糸であって、導電マルチフィラメント糸の電気抵抗値が109Ω/cm〜1013Ω/cmであり、導電マルチフィラメント糸を構成する単繊維間の電気抵抗値の対数値のばらつきが0.7以下であることを特徴とする導電マルチフィラメント糸。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真装置(複写機、ファクシミリ、プリンター等)に用いる現像用ブラシ、接触帯電用ブラシ、クリーナー用ブラシ又は除電用ブラシに適した導電マルチフィラメント糸に関するものであって、特に電気抵抗値が109Ω/cm〜1013Ω/cmの範囲にある導電マルチフィラメント糸に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、導電性マルチフィラメント糸としては、セルロース系繊維が多く用いられており、また、合成繊維として広く使用されているポリエステルやポリアミド繊維においても、導電性微粒子を含有する繊維が多く提案されている。
【0003】
そして、電子写真複写機等の電子写真装置においては、感光ドラム上に形成させる静電潜像方式として接触帯電方式が提案されており、例えば、接触帯電用ブラシとして電気抵抗値104Ω/cm〜1011Ω/cmの導電糸が接触帯電ブラシとして用いられている。
【0004】
本発明者等は、カーボンブラックを導電性微粒子として用いた電気抵抗値104Ω/cm〜1011Ω/cmの導電性繊維で糸長方向の電気抵抗値の対数値のばらつきが0.3以下の導電性繊維及びブラシを提案した(特許文献1参照)。これらの導電性繊維で、特に109Ω/cm以上の高抵抗値の導電性繊維においては、電気抵抗値の対数値のばらつきが比較的大きいものとなっていた。このため、これらの導電性繊維を用いてブラシを作成すると、ブラシを構成する導電マルチフィラメント糸の長さ方向の電気抵抗値のばらつきにより、画像の鮮明度が十分ではなくなるという問題があった。
【0005】
さらに、一般に、ポリアミドやポリエステル等の熱可塑性ポリマーからなる導電糸においては、マルチフィラメントを構成する各単繊維で電気抵抗値がばらついていることがわかった。そして、このような各単繊維での電気抵抗値のばらつきもまた、均質な静電潜像が形成されにくくなる原因となる。すなわち、導電糸は感光ドラム等との接触においては、単繊維レベルでの接触になるため、各単繊維間の電気抵抗値のばらつきが少ないことによって、通電斑や除電斑をより減少させることができ、より鮮明な画像を得ることができる。
【0006】
しかしながら、109Ω/cm〜1013Ω/cmの高抵抗値を示す導電性マルチフィラメント糸において、長さ方向の電気抵抗値の対数値のばらつきが小さく、かつ単繊維間の電気抵抗値のばらつきも少ない導電性マルチフィラメント糸は未だ提案されていない。
【特許文献1】特開2002−146629号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような問題点を解決し、109Ω/cm〜1013Ω/cmの高抵抗値を示す導電マルチフィラメント糸において、マルチフィラメント糸を構成する各単繊維の電気抵抗値のばらつきが小さく、接触帯電用等のブラシとして用いると、安定、かつ良好な画像を得ることができる導電マルチフィラメント糸を提供することを技術的な課題とするものである。
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明に到達した。
【0009】
すなわち、本発明は、次の(1)〜(3)を要旨とするものである。
(1)導電性物質を含有する熱可塑性ポリマーからなる単繊維で構成された導電マルチフィラメント糸であって、導電マルチフィラメント糸の電気抵抗値が109Ω/cm〜1013Ω/cmであり、導電マルチフィラメント糸を構成する単繊維間の電気抵抗値の対数値のばらつきが0.7以下であることを特徴とする導電マルチフィラメント糸。
(2)導電マルチフィラメントの長さ方向の電気抵抗値の対数値のばらつきが0.1以下である(1)記載の導電マルチフィラメント糸。
(3)導電性物質として非粒子状導電材を用いる(1)又は(2)記載の導電マルチフィラメント糸。
【発明の効果】
【0010】
本発明の導電マルチフィラメント糸は、電気抵抗値が109〜1013Ω/cmの高範囲内であっても、マルチフィラメント糸を構成する各単繊維間の電気抵抗値のばらつきが非常に小さいので、接触帯電用等のブラシとして用いると、均一性に優れた良好な画像を長期間安定して得ることが可能であり、各種電子写真装置用ブラシに好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の導電マルチフィラメント糸は、複写機、ファクシミリ、プリンター(例えばレーザービームプリンター)等の電子写真装置に用いる各種ブラシ、例えば現像用ブラシ、接触帯電用ブラシ、クリーナー用ブラシ又は除電用ブラシ等に好適に使用できるものである。以下、本発明の導電マルチフィラメント糸を説明するにあたって、接触帯電用ブラシに関して説明しているが、前記したその他のブラシに適用しても好適に使用し得るものである。
【0012】
本発明の導電マルチフィラメント糸を形成するポリマーは、繊維形成性の熱可塑性重合体であれば特に限定されるものではなく、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられ、中でも、ポリエステル、ポリアミドが好ましい。
【0013】
ポリエステルをさらに具体的に述べると、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレートを主成分とするものが挙げられ、これらにジカルボン酸成分、ジオール成分あるいはオキシカルボン酸成分を共重合した共重合ポリエステルや、あるいはこれらのポリエステルをブレンドしたものが挙げられる。さらには、生分解性ポリエステルとして知られるポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリε−カプロラクタム等の脂肪族ポリエステルでもよい。
【0014】
ポリアミドとしては、例えばナイロン6、ナイロン66、ナイロン69、ナイロン46、ナイロン610、ナイロン12、ポリメタキシレンアジパミドが挙げられ、これらのポリアミドを共重合したものやブレンドしたもの等も用いることができる。
【0015】
そして、本発明においては、上記のような熱可塑性ポリマー中に導電性物質を含有している。導電性物質としては、導電性を有する粒子状の物質として、カーボンブラック、金属粉、金属酸化物等が挙げられる。
【0016】
さらに、本発明においては、電気抵抗値が109Ω/cm〜1013Ω/cmである導電マルチフィラメント糸の長さ方向や単繊維間の電気抵抗値のばらつきを小さくするために、導電性物質として非粒子状導電材を用いることが好ましい。
【0017】
非粒子状導電材とは、上記したような導電性物質として広く用いられているカーボンブラック等の微粒子状の導電性物質とは異なり、アスペクト比が5以上の導電性能を有するものをいう。具体的には、ポリエチレングリコール(PEG)を共重合したポリエチレンテレフタレート、ポリアセチレン、ポリピロール等の分子状(樹脂状)のものや高アスペクト比を示すカーボンナノチューブが挙げられる。
【0018】
非粒子状導電材の電気抵抗値は、目標とする導電マルチフィラメント糸の電気抵抗値により適宜選択すればよいが、108Ωcm以下とすることが好ましく、さらに好ましくは107Ωcm以下とする。より具体的には、非粒子状導電材としてPEGを共重合したポリエチレンテレフタレートを用いた場合、PEGの共重合量を変えることにより導電材の電気抵抗値を適宜変えることができる。このため、非粒子状導電材としては、PEGを共重合したポリエチレンテレフタレートを用いることが好ましく、また、この導電材をナイロン6に添加する場合には、相溶性を向上させるために、ポリエチレンテレフタレート中にスルホイソフタル酸(SIP)を0.1〜3質量%程度共重合することが好ましい。
なお、本発明で用いる導電性物質としては、上記のような非粒子状導電剤が好ましいが、カーボンブラック等の微粒子状の導電性物質と併用してもよい。
【0019】
本発明においては、上記のような非粒子状導電材を単独で又は併用して用いることにより、電気抵抗値が109Ω/cm〜1013Ω/cmの範囲にある高抵抗値を示す導電性繊維において、従来品が有していた、マルチフィラメント糸を構成する各単繊維間の電気抵抗値のばらつきや糸の長さ方向の電気抵抗値のばらつきを非常に小さくできるものであり、この作用について以下に具体的に説明する。
【0020】
特開2000-160427号公報には、導電性繊維として導電性セルロース系繊維が記載されている。この導電性繊維においては、繊維中の導電性カーボン粒子の添加量を0重量%から順次増加した場合、ある増加率近辺で繊維の導電性が急激に増加(電気抵抗値が急激に低下する)するという現象が生じ、導電性カーボン粒子の添加率の増加につれて繊維の導電性が徐々に増加するという穏やかな(正比例での)導電性の増加を示さない。例えば、繊維の比抵抗値が、導電性カーボン粒子の添加量15重量%のときに109Ω・cmであったのが、導電性カーボン粒子の添加量が17重量%のときには103Ω・cmにまで低下するというように、導電性カーボン粒子の添加量によりその導電性能が急激に変化する。
このため、電気抵抗値が109〜1013Ω/cmの範囲内の導電糸を作成する場合には、この範囲内の電気抵抗値を示すことが可能な導電性カーボンの量を想定することが難しい。また、この範囲の電気抵抗値とするには、導電性カーボンの量を少なくするが、エクストルーダー等の溶融時の混練のばらつき等が導電性カーボンの量にも影響し、(この電気抵抗値の範囲外ではほとんど影響を受けないようなミクロレベルのばらつきであっても)、マルチフィラメントを構成する単繊維間や長さ方向の電気抵抗値が不均一となりやすかった。
【0021】
このような現象は、用いる導電性物質が微粒子形状を示すものであるために生じるものと思われる。すなわち、特に電気抵抗値が109〜1013Ω/cmの範囲の高抵抗値の領域においては、繊維中の導電性微粒子の濃度が低くなるため、導電性物質間の距離のばらつきが大きくなり、導電性物質の粒子間の連結も悪くなる。これにより、導電マルチフィラメントを構成する単繊維間の電気抵抗値や、導電マルチフィラメントの長さ方向の電気抵抗値のばらつきが大きくなると考えられる。
【0022】
そこで、上記のような非粒子状導電材を添加した場合は、カーボンブラック等の導電性微粒子を導電性物質として添加した場合には導電性物質間の連結がいわゆる点接触になるのに対して、導電性物質間の連結は線接触となるため、連結が非常に良好となり、導電マルチフィラメントを構成する単繊維間の電気抵抗値や、導電マルチフィラメントの長さ方向の電気抵抗値のばらつきが小さくなると考えられる。
【0023】
なお、前記したように、これらの導電性能を有する非粒子状導電材に加えてカーボンブラック等の微粒子状のものを併用しても、上記のような導電性物質間の線接触での連結は阻害されるものではない。
【0024】
非粒子状導電材の添加量は、目的とする導電マルチフィラメント糸の電気抵抗値により適宜選択されるが、例えば非粒子状導電材を単独で用いる場合は、熱可塑性ポリマー中の含有量を0.1〜60質量%とすることが好ましく、中でも0.5〜40質量%、さらには1〜40質量%とすることが好ましい。
【0025】
なお、非粒子状導電材にPEGを共重合したポリエチレンテレフタレートを用いる場合は、この非粒子状導電材自体が繊維形成性の熱可塑性ポリマーであるため、この非粒子状導電材のみからなる(100%使用)繊維としてもよい。
【0026】
また、非粒子状導電材とカーボンブラック等の微粒子状の導電性物質を併用する場合は、熱可塑性ポリマー中の非粒子状導電剤の含有量は0.1〜50質量%とし、カーボンブラック等の微粒子状の導電性物質の含有量を5〜45質量%、中でも10〜35質量%とすることが好ましい。そして、両者の合計の含有量を0.1〜50質量%、中でも0.5〜45質量%とすることが好ましい。
【0027】
そして、本発明の導電マルチフィラメント糸の電気抵抗値は109Ω/cm〜1013Ω/cmであり、中でも1010Ω/cm〜1013Ω/cmが好ましく、より好ましくは1011Ω/cm〜1013Ω/cmである。
【0028】
本発明における電気抵抗値は次のようにして測定するものである。導電マルチフィラメント糸から、それぞれ長さ方向に沿って、100m毎に長さ10cmの試験片を20個採取する。この10cmの試験片の間(両端間)に500Vの電圧をかけて、測定環境20℃、20%RHの条件下で、東亜電波工業社製の抵抗値測定機「SM−10E」を使用して、電気抵抗値(Ω/cm)を測定する。なお、試料片20個の平均値とする。
【0029】
本発明の導電マルチフィラメント糸は、マルチフィラメントを構成する単繊維の電気抵抗値の対数値のばらつきが0.7以下であることが必要である。本発明におけるばらつきとは、導電マルチフィラメントを構成する単繊維の電気抵抗値を前記の電気抵抗値の測定法に従い、マルチフィラメントを構成する全ての単繊維について電気抵抗値を測定し、電気抵抗値の対数値を求め、マルチフィラメントを構成する単糸数をn数とし、標準偏差を算出するものである。
【0030】
前記したように、導電糸は感光ドラム等との接触においては、単繊維レベルでの接触になるため、各単繊維間の電気抵抗値のばらつきが少ないことによって、通電斑や除電斑を減少させることができ、より鮮明な画像を得ることができる。
ばらつき(標準偏差)が0.7を超えると、各単繊維間で電気抵抗値の差が大きくなり、均質な静電潜像が形成されにくくなる。中でも、ばらつきは0.5以下とすることが好ましく、より好ましくは0.3以下である。
【0031】
さらに、本発明の導電マルチフィラメント糸においては、マルチフィラメントの長さ方向の電気抵抗値の対数値のばらつきが0.1以下であることが好ましい。導電マルチフィラメントの長さ方向の電気抵抗値のばらつきとは、マルチフィラメントの糸長方向に500ポイントで前記と同様にして電気抵抗値を測定し、これらの値の対数値を求め、n数を500として標準偏差を算出するものである。
【0032】
ばらつき(標準偏差)が0.1を超えると糸長方向での電気抵抗値のばらつきが大きく、長さ方向に導電性が不均一なマルチフィラメントとなるため、このマルチフィラメントからは、電気抵抗値が均一で、品質の安定した接触帯電ブラシ等を得ることが困難となる傾向がある。
【0033】
また、本発明の導電マルチフィラメント糸を構成する各単繊維の横断面形状は特に限定されるものではなく、丸断面形状のもののみならず、四角や三角の多角形のものや中空のものでもよい。
【0034】
さらには、本発明の導電マルチフィラメント糸は、単糸繊度が10.0dtex以下であることが好ましく、より好ましくは8.0dtex以下、さらに好ましくは5.0dtex以下である。本発明の導電マルチフィラメント糸を接触帯電ブラシ等に用いる場合、感光ドラム等との接触は単繊維レベルとなるため、単糸繊度が小さいほど感光ドラム等との接触状態が密で均一となり、帯電等をより均一に行うことができ、安定かつ良好な静電潜像が得られる。単糸繊度が10.0dtexを超えると、この効果が得られず、鮮明な画像が得られにくくなったり、複写回数が多くなるにつれて複写物に筋状の汚れが生じやすくなる。
【0035】
また、本発明の導電マルチフィラメント糸の繊度は、特に限定するものではないが、10〜1000dtexとすることが好ましく、単繊維数は2〜300とすることが好ましい。
【0036】
次に、本発明の導電マルチフィラメント糸の製造方法について一例を用いて説明する。
常用の溶融紡糸装置を用い、非粒子状導電材を含有する熱可塑性ポリマーを溶融紡糸し、未延伸マルチフィラメント糸を一旦巻き取った後、延伸するか、もしくは溶融紡糸後、一旦未延伸マルチフィラメントを巻き取ることなく連続して熱延伸を行うことにより製造することができる。
このとき、非粒子状導電材を含むマスターチップを作成し、このマスターチップと熱可塑性ポリマーをエクストルーダーで混練・溶融し、紡糸口金より押し出し、溶融紡糸を行うことが好ましい。
【実施例】
【0037】
次に、本発明を実施例により具体的に説明する。
実施例中の導電マルチフィラメント糸の電気抵抗値、導電マルチフィラメント糸を構成する単繊維間の電気抵抗値の対数値のばらつき、導電マルチフィラメント糸の長さ方向の電気抵抗値の対数値のばらつきは前記の方法で測定したものである。
【0038】
実施例1
非粒子状導電材として平均分子量6000のPEGを13.3質量%とスルホイソフタル酸を1.8mol%を共重合したポリエチレンテレフタレート(A)〔相対粘度(フェノールと四塩化エタンの質量比1/1の混合物を溶媒とし、20℃で測定)が1.60〕を用い、相対粘度(96%硫酸を溶媒として、濃度1g/dl、温度25℃で測定)2.50のナイロン6チップ中に非粒子状導電材が35質量%となるようにブレンドした。そして、エクストルーダー型溶融押出機に供給し、紡糸温度270℃で溶融し、孔径0.35mmの紡糸孔を48個有する紡糸口金より吐出させて、捲取速度600m/分で未延伸糸を巻取った。次いで得られた未延伸糸を延伸弛緩熱処理装置により、150℃のホットプレートを介して2.6倍に延伸し、170℃のサドルヒーターにて弛緩熱処理を行い、330dtex/48fの導電マルチフィラメント糸を得た。
【0039】
実施例2〜7
非粒子状導電材の添加量を表1に示すように種々変更させた以外は、実施例1と同様に行い、330dtex/48fの導電マルチフィラメント糸を得た。
【0040】
実施例8
非粒子状導電材として、平均分子量6000のPEGを16.0質量%とスルホイソフタル酸を1.8mol%を共重合したポリエチレンテレフタレート(B)(相対粘度1.60)を用いた以外は、実施例1と同様に行い、330dtex/48fの導電マルチフィラメント糸を得た。
【0041】
実施例9
非粒子状導電材として、平均分子量6000のPEGを19.0質量%とスルホイソフタル酸を1.8mol%を共重合したポリエチレンテレフタレート(C)(相対粘度1.60)を用いた以外は、実施例1と同様に行い、330dtex/48fの導電マルチフィラメント糸を得た。
【0042】
実施例10、11
導電性物質として非粒子状導電材と粒子状導電材の両者を用い、非粒子状導電材としては、カーボンナノチューブ(D)を用いて添加量0.5質量%となるように添加し、粒子状導電材としてはカーボンブラック(e)を用いて、表1に示す添加量となるように添加した以外は、実施例1と同様に行い、330dtex/48fの導電マルチフィラメント糸を得た。
【0043】
比較例1、2
導電性物質に、粒子状導電材としてカーボンブラック(e)のみを用いて、表1に示す添加量となるように添加した以外は、実施例1と同様に行い、330dtex/48fの導電マルチフィラメント糸を得た。
【0044】
実施例1〜13、比較例1〜2で得られた導電マルチフィラメント糸の特性値の評価結果を表1に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
表1から明らかなように、実施例1〜11で得られた導電マルチフィラメント糸は、電気抵抗値が109〜1013Ω/cmの高範囲内であっても、マルチフィラメントを構成する単繊維間の電気抵抗値の対数値のばらつきが0.7以下と、単繊維間の電気抵抗値のばらつきが小さいものであった。また、マルチフィラメントの長さ方向の電気抵抗値の対数値のばらつきも0.1以下であった。このため、これらの導電マルチフィラメント糸を帯電ブラシに用いると、長期間に亘って鮮明な画像を得ることができた。
一方、比較例1〜2の導電マルチフィラメント糸は、単繊維間の電気抵抗値の対数値のばらつきが0.7を超え、また、長さ方向の電気抵抗値のばらつきが0.1を超えるのもであった。このため、これらの導電マルチフィラメント糸を帯電ブラシに用いると、画像評価は鮮明さに劣るものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性物質を含有する熱可塑性ポリマーからなる単繊維で構成された導電マルチフィラメント糸であって、導電マルチフィラメント糸の電気抵抗値が109Ω/cm〜1013Ω/cmであり、導電マルチフィラメント糸を構成する単繊維間の電気抵抗値の対数値のばらつきが0.7以下であることを特徴とする導電マルチフィラメント糸。
【請求項2】
導電マルチフィラメントの長さ方向の電気抵抗値の対数値のばらつきが0.1以下である請求項1記載の導電マルチフィラメント糸。
【請求項3】
導電性物質として非粒子状導電材を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の導電マルチフィラメント糸。

【公開番号】特開2006−28660(P2006−28660A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−206043(P2004−206043)
【出願日】平成16年7月13日(2004.7.13)
【出願人】(399065497)ユニチカファイバー株式会社 (190)
【Fターム(参考)】