説明

導電体および導電体の製造方法

【課題】本発明は、放熱性を向上させると共に、電線の端末処理の作業効率を向上させた導電体および導電体の製造方法を提供する。
【解決手段】金属製のパイプ11と、パイプ11に挿通される複数本の電線12と、パイプ11内に挿通されて電線12をパイプ11内で保持する保持部材13と、を備えた導電体10であって、保持部材13は、電線12とは別部材であって、空気より熱伝導率の大きな合成樹脂又はゴムからなり、電線12を収容すると共に電線12の外周面の少なくとも一部をパイプ11の内周面と接触させた状態で電線12を保持する溝16を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電体及び導電体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、金属製のパイプ内に、複数本の電線を挿通する構造のものが知られている(特許文献1参照)。この構造によれば、シールドパイプが、電線をシールドする機能と電線を保護する機能とを発揮するので、電線及びシールド部材を保護するために、別途プロテクタを配設するシールド導電体に比べて、部品点数が少なくて済むという利点がある。
【特許文献1】特開2004−171952公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の構成によると、通電時に電線から発生した熱が、電線とパイプとの間の空間内にこもり、電線の温度が上昇しやすくなる。電線からの発熱量は電線の断面積が大きいほど小さくなるので、電線の温度上昇値を小さくするためには電線の断面積を大きくすることが考えられる。しかし、この手法は、必然的にシールド導電体が大型化するので採用し得ない。
【0004】
そこで、複数の電線を、空気よりも熱伝導率の大きな合成樹脂でモールド成形して、いわゆるキャブタイヤケーブルとし、このキャブタイヤケーブルをパイプ内に挿通させる構成が考えられる。この手法によれば、通電時に電線から発生した熱は、合成樹脂を介してパイプに伝達され、パイプから外部に放散される。この結果、電線とパイプとの間に熱がこもらないので、シールド導電体の放熱性を向上させることができる。
【0005】
しかしながら上記の構成によると、電線の端末処理を行う場合には、キャブタイヤケーブルの合成樹脂を引き剥がす必要がある。この合成樹脂はモールド成形により電線と一体に形成されているので、電線と合成樹脂とを分離するのはかなり困難である。このため、電線の端末処理の作業効率が低下するという問題がある。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、放熱性を向上させると共に、電線の端末処理の作業効率を向上させた導電体および導電体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、金属製のパイプと、前記パイプに挿通される複数本の電線と、前記パイプ内に挿通されて前記電線を前記パイプ内で保持する保持部材と、を備えた導電体であって、前記保持部材は、前記電線とは別部材であって、空気より熱伝導率の大きな合成樹脂又はゴムからなり、前記電線を収容すると共に前記電線の外周面の少なくとも一部を前記パイプの内周面と接触させた状態で前記電線を保持する溝を有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、金属製のパイプ内に複数の電線を収容してなる導電体の製造方法であって、空気よりも熱伝導率の大きな合成樹脂又はゴムからなると共に複数の前記電線を収容する溝を備えた保持部材の前記溝に、前記電線を収容することで前記電線を前記保持部材に保持する保持工程と、前記電線が保持された前記保持部材を、前記パイプ内に、前記電線の外周面の少なくとも一部が前記パイプの内周面と接触する状態で挿通する挿通工程と、を実行することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、通電時に電線から発生した熱は、電線から溝の内周面を介して保持部材に伝達され、保持部材からパイプへと伝達される。パイプに伝達された熱は、パイプの外面から放散される。このため、電線とパイプとの間に空気層が存在するものと比較すると、導電体の放熱性が全体として向上する。
【0010】
さらに、本発明によれば、電線の外周面の少なくとも一部はパイプの内周面と接触しているので、電線から発生した熱はパイプに直接に伝達され、パイプから外部へと放散される。これにより、導電体の放熱性が一層向上する。
【0011】
また、本発明によれば、電線の端末処理を実行する際には、まず電線を保持部材から外した後、電線に対して通常の端末処理を実行すればよい。電線と保持部材とは別部材なので、電線と保持部材とは容易に分離できる。このため、電線を合成樹脂又はゴムでモールド成形した、いわゆるキャブタイヤケーブルと比較すると、電線の端末処理の作業性を全体として向上させることができる。
【0012】
本発明の実施形態としては、以下の構成が好ましい。
前記溝は前記保持部材の延長方向に延びて形成されていてもよい。
【0013】
また、前記保持工程は、前記保持部材の延長方向に延びて形成された前記溝の一方の端部に前記電線の一方の端部を収容する工程と、前記保持部材のうち前記電線が前記溝に収容された側の端部を固定した状態で、前記溝の一方の端部から他方の端部に至るまで、前記電線を前記溝の内部に押し込むことで前記電線を前記溝に収容する工程と、を含んでもよい。
【0014】
上記の構成によれば、保持部材の一方の端部側の溝に、電線の一方の端部を収容し、その後、電線及び保持部材を他方の端部側にしごくことで、容易に電線を溝に収容することができる。
【0015】
前記保持部材の外周面には前記保持部材の延長方向に沿って延びる複数のリブが設けられていてもよい。
【0016】
パイプの内周面と保持部材の外周面との間の摩擦力が大きい場合、保持部材の挿通作業の効率が低下することが懸念される。
【0017】
上記の構成によれば、パイプの内周面は、保持部材の外周面に形成されたリブと接触する。これにより、パイプと保持部材との接触面積を小さくすることができる。この結果、パイプの内周面と保持部材の外周面との摩擦力を小さくすることができるので、パイプ内への保持部材の挿通作業の効率を向上させることができる。
【0018】
前記各電線は、前記保持部材によって、互いに撚られた姿勢で保持されていてもよい。
【0019】
また、前記挿通工程を実行した後、前記保持部材を捻ることにより前記各電線を互いに撚られた姿勢にする捻回工程を実行してもよい。
【0020】
保持部材に保持された複数本の電線が互いに撚られていない状態でパイプを曲げ加工すると、パイプが曲げ加工された部分の内周側に位置する電線の長さと、曲げ部分の外周側に位置する電線の長さとの間に、差(いわゆる周長差)が生じる。具体的には、曲げ部分の内周側に位置する電線よりも、曲げ部分の外周側に位置する電線の方を長く設定する必要がある。
【0021】
本構成によれば、保持部材によって、各電線は互いに撚られた姿勢で保持されている。このため、パイプが曲げ加工された部分において、各電線は、曲げ部分の内周側又は外周側の位置のいずれかに固定された状態で保持されないようになっている。この結果、各電線によって、パイプの曲げ部分における内外の周長差を吸収できるので、各電線の間に周長差が生じることを抑制できる。
【0022】
前記挿通工程を実行した後、前記パイプの両端部のうちいずれか一方の端部と、前記一方の端部から露出する前記保持部材と、を固定手段によって固定する固定工程を実行した後に、前記パイプの他方の端部に位置する前記保持部材を捻ることで前記捻回工程を実行してもよい。
【0023】
上記の方法によると、まず固定工程において、パイプの両端部のうちいずれかの端部と、この端部から露出する保持部材とが固定される。これにより、捻回工程においては、パイプのうち固定手段によりパイプと保持部材とが固定されていない側に位置する保持部材を捻ればよい。この結果、捻回工程において、保持部材の両端部を保持する必要がないので、作業効率が向上する。また、保持部材をねじる回数や程度を制御しやすいので、各電線についての撚りのピッチを容易に制御することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、導電体の放熱性を向上させると共に、電線の端末処理の作業効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1及び図2を参照しつつ説明する。本実施形態に係る導電体10は、例えば電気自動車において走行用の動力源を構成するバッテリー、インバータ、モータなどの機器(図示せず)の間に配索されて電力回路を構成する。導電体10は、金属製のパイプ11の内部に2本の電線12,12が挿通されてなる。電線12は、パイプ11内に挿通された保持部材13によってパイプ11内に保持されている。
【0026】
上述したようにパイプ11は金属製(例えばアルミニウム合金、銅合金、ステンレス等)であって、空気よりも熱伝導率が大きい。パイプ11は、電線12の一括シールド機能と、電線12の保護機能とを兼ね備える。パイプ11の横断面形状は概ね円形状をなしている。
【0027】
電線12は、金属製(例えばアルミニウム、アルミニウム合金、銅、又は銅合金等)の芯線14の外周を合成樹脂製の絶縁被覆15で包囲したノンシールドタイプの電線12からなる。芯線14は、複数本の細線(図示せず)を螺旋状に撚り合わせた撚り線、又は棒状の単芯線14からなる。電線12の断面形状については、芯線14と絶縁被覆15の双方が円形状とされる。また、絶縁被覆15の材料としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等が用いられる。
【0028】
さて、保持部材13は、電線12とは別体に形成されている。保持部材13は、空気よりも熱伝導率の大きな合成樹脂製(例えば、EPDM、熱可塑性エラストマー等、必要に応じて任意の材料を用いることができる。)であって、全体として細長く、断面形状が概ね円形状をなしている。本実施形態においては、保持部材13は可撓性を有する材料からなる。保持部材13の外径寸法は、パイプ11の内径寸法とほぼ同じに設定されている。保持部材13の外周面はパイプ11の内周面と接触している。
【0029】
保持部材13の表面には、電線12の延長方向に延びる2本の溝16,16が陥没して形成されている。溝16は、保持部材13の中心軸について対称な位置に形成されている。溝16の形状は、概ね円弧状の一部をなしている。溝16の内径寸法は、電線12の外径寸法と同じか、やや小さく設定されている。溝16は、保持部材13の径方向外方に開口する開口部17を有する。
【0030】
各溝16内には、電線12が収容されている。電線12の絶縁被覆15の外周面と、溝16の内周面とは接触している。電線12の外周面は、溝16の開口部17から、保持部材13の外部に露出している。電線12の外周面のうち溝16の開口部17から露出した部分は、パイプ11の内周面と接触している。
【0031】
次に、導電体10の製造工程の一例を説明する。まず、押出成形により、合成樹脂材からなる保持部材13を形成する。
【0032】
続いて、電線12の保持工程を実行する。すなわち、保持部材13の溝16の一方の端部において、各溝16の開口部17から、電線12の一方の端部を溝16内に収容する。
【0033】
続いて、保持部材13のうち電線12が溝16に収容された側の端部を、固定する。保持部材13の端部は、図示しない治具によって固定してもよいし、また、作業者が保持部材13を握持してもよい。
【0034】
保持部材13の端部が固定された状態で、溝16の一方の端部から他方の端部に至るまで、電線12を保持部材13の径方向内方に押圧することで、電線12を溝16内に押し込む。電線12を押圧する手段としては、作業者が手でしごいてもよいし、また、図示しないダイスに挿通させてもよい。上記の工程により、電線12が保持部材13の径方向内方に押圧され、保持部材13の溝16が電線12に押圧されることで拡開変形する。さらに電線12が押圧されると、保持部材13の溝16が復帰変形し、電線12が溝16内に収容された状態で保持される。このようにして、電線12が、保持部材13の一方の端部から他方の端部に至るまで、溝16内に収容される。溝16の内径寸法は、電線12の外径寸法と同じかやや小さく設定されているので、電線12は溝16内に保持される。
【0035】
次に、電線12が保持された保持部材13をパイプ11内に挿通して、挿通工程を実行する。なお、挿通工程の後に、電線12及び保持部材13が挿通された状態で、パイプ11を曲げ加工してもよい。以上により、導電体10が完成する。
【0036】
上記のようにして完成した導電体10に対して端末処理を実行する場合には、例えば以下のようにすればよい。まず、パイプ11の端部から電線12及び保持部材13を延出する。そして、保持部材13の溝16から電線12を引っ張り出す。保持部材13と電線12とは別部材なので、電線12の外周を合成樹脂材でモールド成形してなるキャブタイヤケーブルと比べて、電線12と保持部材13とを容易に分離できる。電線12と保持部材13とを分離した後は、電線12に対し、作業者は通常のノンシールド電線12に対するのと同様の端末処理を実行すればよい。すなわち、電線12の絶縁被覆15を剥がして芯線14を露出させればよい。
【0037】
本実施形態によれば、通電時に電線12から発生した熱は、電線12から溝16の内周面を介して保持部材13に伝達され、保持部材13からパイプ11へと伝達される。パイプ11に伝達された熱は、パイプ11の外面から放散される。このため、保持部材13が存在しないものと比較すると、導電体10の放熱性が全体として向上する。
【0038】
さらに、本実施形態によれば、電線12の外周面の少なくとも一部はパイプ11の内周面と接触しているので、電線12から発生した熱はパイプ11に直接に伝達され、パイプ11から外部へと放散される。これにより、導電体10の放熱性が一層向上する。
【0039】
また、本実施形態によれば、電線12の端末処理を実行する際には、まず電線12を保持部材13から外した後、電線12に対して通常の端末処理を実行すればよい。電線12と保持部材13とは別部材なので、電線12と保持部材13とは容易に分離できる。このため、電線12を合成樹脂でモールド成形した、いわゆるキャブタイヤケーブルと比較すると、電線12の端末処理の作業性を全体として向上させることができる。
【0040】
また、本実施形態によれば、保持部材13の一方の端部側の溝16に、電線12の一方の端部を収容し、その後、例えば作業者が、電線12及び保持部材13を他方の端部側にしごくことで、容易に電線12を溝16に収容することができる。
【0041】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を図3及び図4を参照しつつ説明する。図3に示すように、本実施形態に係る導電体10においては、保持部材13は捻られた状態でパイプ11内に挿通されている。これにより、電線12の延長方向に延びて形成された溝16の内部に収容された各電線12は、互いに螺旋状に撚られた姿勢でパイプ11内に保持されている。
【0042】
上記以外の構成は実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0043】
本実施形態に係る保持部材13は、保持部材13をパイプ11内に挿通する挿通工程を実行した後に保持部材13を捻ってもよい。
【0044】
また、図4に示すように、電線12を保持部材13に保持する保持工程を実行した後に、保持部材13を捻り、その後、捻られた状態の保持部材13をパイプ11内に挿通してもよい。
【0045】
保持部材13に保持された複数本の電線12が互いに撚られていない状態でパイプ11を曲げ加工すると、パイプ11が曲げ加工された部分の内周側に位置する電線12の長さと、曲げ部分の外周側に位置する電線12の長さとの間に、差(いわゆる周長差)が生じる。具体的には、曲げ部分の内周側に位置する電線12よりも、曲げ部分の外周側に位置する電線12の方を長く設定する必要がある。
【0046】
本実施形態によれば、保持部材13によって、各電線12は互いに撚られた姿勢で保持されている。このため、パイプ11が曲げ加工された部分において、各電線12は、曲げ部分の内周側又は外周側の位置のいずれかに固定された状態で保持されないようになっている。この結果、各電線12によって、パイプ11の曲げ部分における内外の周長差を吸収できるので、パイプ11を曲げ加工した場合に、各電線12の間に周長差が生じることを抑制できる
【0047】
<実施形態3>
次に、本発明の実施形態3を図5及び図6を参照しつつ説明する。図5に示すように、本実施形態においては、図5におけるパイプ11の右端部と、このパイプ11の右端部から露出する保持部材13とは、例えば合成樹脂製のテープ18(固定手段に相当)を、パイプ11及び保持部材13に亘って巻回することにより、固定されている。
【0048】
上記以外の構成は実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0049】
本実施形態に係る導電体10は、以下のようにして製造される。まず、挿通工程を実行した後、固定工程を実行する。すなわち、図6におけるパイプ11の右端部と、この右端部から露出する保持部材13とを、パイプ11の右端部と保持部材13とに亘ってテープ18を巻回することで、パイプ11の右端部と保持部材13とを固定する。なお、パイプ11と保持部材13とは、パイプ11のいずれの端部において固定してもよい。
【0050】
次いで、パイプ11の左端部から露出する保持部材13を捻ることで捻回工程を実行する。これにより、本実施形態に係る導電体10が完成する。
【0051】
本実施形態によると、まず固定工程において、パイプ11の一方の端部(本実施形態では図6における右端部)と、この右端部から露出する保持部材13とが固定される。これにより、捻回工程においては、パイプ11の他方の端部(本実施形態では図6における左端部)から露出する保持部材13を捻ればよい。この結果、捻回工程において、保持部材13の両端部を保持する必要がないので、作業効率が向上する。また、保持部材13をねじる回数や程度を制御しやすいので、各電線12についての撚りのピッチを容易に制御することができる。
【0052】
<実施形態4>
次に、本発明の実施形態4を図7を参照しつつ説明する。本実施形態においては、保持部材13には3つの溝16,16,16が、保持部材13の延長方向に延びて形成されている。3つの溝16は、保持部材13の中心軸について対称な位置に形成されており、本実施形態においては、溝16の中心軸がほぼ正三角形をなす位置に形成されている。
【0053】
保持部材13に形成された3つの溝16には、それぞれ電線12が保持されている。3本の電線12は、保持部材13によって、電線12の中心軸がほぼ正三角形をなす位置に保持されている。
【0054】
なお、保持部材13は、パイプ11の内部で捻られていなくてもよいし、また、パイプ11の内部で捻られることで、各電線12が撚られた姿勢で保持される構成としてもよい。
【0055】
上記以外の構成は実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0056】
<実施形態5>
次に、本発明の実施形態5を図8を参照しつつ説明する。本実施形態においては、保持部材13の外周面には、保持部材13の延長方向に沿って延びる複数(本実施形態では3つ)のリブ19,19,19が設けられている。リブ19は、保持部材13のうち、隣り合う開口部17の間の位置に形成されている。また、これらのリブ19は、保持部材13の中心軸について対称な位置に形成されている。リブ19は、保持部材13と一体に形成されている。リブ19の断面形状は、略三角形状をなしている。
【0057】
上記以外の構成は実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0058】
保持部材13をパイプ11内に挿通する際、パイプ11と保持部材13との間の摩擦力が大きいと、保持部材13の挿通作業の効率が低下することが懸念される。
【0059】
本実施形態によれば、パイプ11の内周面は、保持部材13の外周面に形成されたリブ19と接触する。これにより、パイプ11と保持部材13との接触面積を小さくすることができる。この結果、パイプ11の内周面と保持部材13の外周面との摩擦力を小さくすることができるので、パイプ11内への保持部材13の挿通作業の効率を向上させることができる。
【0060】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)保持部材13の表面に、保持部材13を構成する合成樹脂又はゴムよりも、パイプ11との摩擦係数の小さな合成樹脂を、例えば厚さ20μm程度でコーティングする構成としてもよい。これにより、挿通工程において、保持部材13をパイプ11内に挿通させやすくすることができる。コーティングする合成樹脂としては、テフロン(登録商標)でもよいし、また、テフロンよりも環境負荷の小さなフッ素系樹脂でもよく、必要に応じて任意の合成樹脂を用いることができる。
(2)本実施形態では、電線12は、芯線14が絶縁被覆15により包囲された被覆電線12を用いたが、これに限られず、保持部材13が絶縁性を有すると共にパイプ11の内周面に絶縁処理がなされている場合には、電線12として裸電線12を用いてもよい。
(3)本実施形態では、溝16は、保持部材13の延長方向に延びて形成される構成としたが、これに限られず、溝16は、保持部材13の外周面に、複数の螺旋溝16を形成してもよい。この螺旋溝16に電線12を収容することにより、捻回工程を省略できる。
(4)保持部材13は、直線状のパイプ11に用いる場合には可撓性を有していなくてもよい。また、被覆電線12を用いる場合には絶縁性を有していなくてもよい。
(5)実施形態5では、リブ19は、保持部材13と一体に形成される構成としたが、リブ19は、保持部材13を構成する合成樹脂又はゴムよりも、パイプ11との摩擦係数の小さな合成樹脂により二色成形することにより形成してもよい。これにより、挿通工程の作業効率を一層向上させることができる。
(6)本実施形態では、電線12を保持部材13に保持させた後でパイプ11内に挿通する構成としたが、これに限られず、パイプ11内に保持部材13を挿通させた後に、電線12を保持部材13に挿通させてもよい。
(7)実施形態5では、リブ19の断面形状は略三角形状をなしていたが、これに限られず、略矩形状、略半円形状等、必要に応じて任意の形状をとりうる。
(8)実施形態5では、保持部材13には3つのリブ19が形成される構成としたが、これに限られず、2つ、又は4つ以上のリブ19が形成される構成としてもよい。
(9)本実施形態では、保持部材13には2本又は3本の電線12が保持される構成としたが、保持部材13に保持される電線12は、4本以上でもよい。
(10)本実施形態では、パイプ11の断面形状は円形状としたが、これに限られず、パイプ11の断面形状は、長円形状、四角形状等、必要に応じて任意の形状を採用しうる。
(11)本実施形態では、電線12の断面形状は略円形状としたが、これに限られず、長円形状、矩形状等、必要に応じて任意の形状を取りうる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施形態1に係る導電体の横断面図
【図2】導電体の端部を示す要部拡大斜視図
【図3】実施形態2に係る導電体の端部を示す要部拡大斜視図
【図4】導電体の製造工程の一例を示す要部拡大斜視図
【図5】実施形態3に係る導電体を示す一部切欠側面図
【図6】導電体の製造工程を示す一部切欠側面図
【図7】実施形態4に係る導電体を示す横断面図
【図8】実施形態5に係る導電体を示す横断面図
【符号の説明】
【0062】
10…導電体
11…パイプ
12…電線
13…保持部材
16…溝
19…リブ
18…テープ(固定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製のパイプと、前記パイプに挿通される複数本の電線と、前記パイプ内に挿通されて前記電線を前記パイプ内で保持する保持部材と、を備えた導電体であって、
前記保持部材は、前記電線とは別部材であって、空気より熱伝導率の大きな合成樹脂又はゴムからなり、前記電線を収容すると共に前記電線の外周面の少なくとも一部を前記パイプの内周面と接触させた状態で前記電線を保持する溝を有することを特徴とする導電体。
【請求項2】
前記溝は前記保持部材の延長方向に延びて形成されていることを特徴とする請求項1に記載の導電体。
【請求項3】
前記保持部材の外周面には前記保持部材の延長方向に沿って延びる複数のリブが設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の導電体。
【請求項4】
前記各電線は、前記保持部材によって、互いに撚られた姿勢で保持されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の導電体。
【請求項5】
金属製のパイプ内に複数の電線を収容してなる導電体の製造方法であって、
空気よりも熱伝導率の大きな合成樹脂又はゴムからなると共に複数の前記電線を収容する溝を備えた保持部材の前記溝に、前記電線を収容することで前記電線を前記保持部材に保持する保持工程と、前記電線が保持された前記保持部材を、前記パイプ内に、前記電線の外周面の少なくとも一部が前記パイプの内周面と接触する状態で挿通する挿通工程と、を実行することを特徴とする導電体の製造方法。
【請求項6】
前記保持工程は、前記保持部材の延長方向に延びて形成された前記溝の一方の端部に前記電線の一方の端部を収容する工程と、前記保持部材のうち前記電線が前記溝に収容された側の端部を固定した状態で、前記溝の一方の端部から他方の端部に至るまで、前記電線を前記溝の内部に押し込むことで前記電線を前記溝に収容する工程と、を含むことを特徴とする請求項5に記載の導電体の製造方法。
【請求項7】
前記挿通工程を実行した後、前記保持部材を捻ることにより前記各電線を互いに撚られた姿勢にする捻回工程を実行することを特徴とする請求項6に記載の導電体の製造方法。
【請求項8】
前記挿通工程を実行した後、前記パイプの両端部のうちいずれか一方の端部と、前記一方の端部から露出する前記保持部材と、を固定手段によって固定する固定工程を実行した後に、前記パイプの他方の端部に位置する前記保持部材を捻ることで前記捻回工程を実行することを特徴とする請求項7に記載の導電体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−205982(P2009−205982A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−48571(P2008−48571)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】