説明

導電性を有する樹脂発泡体

【課題】柔軟性及び導電性に優れ、形状加工が容易であり、さらに高密度化された電子部品間の微小なクリアランスを埋めることが可能な導電性緩衝シール材として用いることのできる樹脂発泡体を提供する。
【解決手段】本発明の樹脂発泡体は、体積抵抗率が1010Ω・cm以下で、且つ50%圧縮時の対反発荷重が5N/cm2以下であることを特徴とする。当該樹脂発泡体の表面抵抗率は、1010Ω/□以下であることが好ましい。また、当該樹脂発泡体の見掛け密度は、0.01〜0.15g/cm3であることが好ましい。さらに、当該樹脂発泡体の発泡倍率が、9倍以上であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟で、高い発泡倍率を有する導電性の樹脂発泡体に関する。より詳細には、導電材と緩衝シール材との機能を併せ持つ導電性の樹脂発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話等の電子機器類には、装置の誤作動防止の点から、導電材が、接地や電磁場シールドを目的に使用されてきた。また、従来、携帯電話等の電子機器類には、緩衝シール材が、電子部品同士の緩衝防止や埃の侵入防止を目的に使用されてきた。
【0003】
しかしながら、近年、携帯電話等の電子機器類の小型化に伴い、内部に搭載される部材点数の減少、及び電子部品の高密度搭載化の傾向がある。そのため、従来のように導電材及び緩衝シール材を個別に使用するのではなく、導電材及び緩衝シール材の機能を併せ持つ部材が求められている。さらには、高密度搭載された電子部品間の微小なクリアランスを埋めることできるように、柔軟な導電材や緩衝シール材が求められている。また、導電性能が求められない用途においても、緩衝シール材は電子部品との接触が避けられないことから、緩衝シール材自体の帯電防止、静電気防止が必要となってきている。
【0004】
このような導電材や緩衝シール材として、発泡体表面へ導電材料を積層したもの(特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)、発泡体への導電性布の胴巻き(特許文献4参照)、導電性材料を内部添加した発泡体(特許文献5、特許文献6参照)が提案されている。
【0005】
しかし、発泡体表面へ導電材料を積層したものでは、導電材料にて発泡体の柔軟性が損なわれ、加えて厚み方向の導電性(厚み方向の体積抵抗率)を得ることは困難であった。
【0006】
また、発泡体への導電性布の胴巻きでは、導電性布により発泡体の柔軟性が損なわれ、且つ打抜き加工による形状加工が難しくなり、さらには挿入される部位の形状に合った形状加工を行えない場合が多く、導電材や緩衝シール材として機能を十分に有するものを得ることが困難であった。
【0007】
さらに、これまでに提案されている導電性材料を内部添加した発泡体(特許文献5、特許文献6)では、発泡倍率が低いため柔軟性に乏しく、さらにセル径も大きいため、薄層加工が難しく、高密度化された電子部品間の微小なクリアランスを埋めることが困難であった。そして、高密度化された電子部品間の微小なクリアランスを埋められないことは、例えば除電(アース)箇所などの抵抗値の増加を生じることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2002/036667号
【特許文献2】特開昭62−241929号公報
【特許文献3】特公平4−26615号公報
【特許文献4】特開平11−346082号公報
【特許文献5】特開2006−63249号公報
【特許文献6】特開2004−83804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、柔軟性及び導電性に優れ、高密度化された電子部品間の微小なクリアランスを埋めることが可能であり、特に圧縮した場合であっても、段差部に対して追従性に優れ且つ低い体積抵抗率を有し、導電性緩衝シール材として用いることのできる樹脂発泡体を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、上記特性に加えて、形状加工性にも優れる樹脂発泡体を提供することにある。さらに、本発明の他の目的は、上記特性に加えて、防塵性にも優れ、導電性防塵材として用いることのできる樹脂発泡体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の問題を解決するために鋭意検討した結果、樹脂発泡体において、体積抵抗率を特定値以下にして、且つ50%圧縮時の対反発荷重を特定値以下にすれば、柔軟性及び導電性を兼ね備え、高密度化された電子部品間の微小なクリアランスを埋めることが可能であり、圧縮した場合でも段差部において段差に追従でき且つ低い体積抵抗率を有し、さらには導電性緩衝シール材として好適に用いることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明は、体積抵抗率が1010Ω・cm以下で、且つ50%圧縮時の対反発荷重が5N/cm2以下であることを特徴とする樹脂発泡体を提供する。
【0012】
さらに、本発明は、樹脂発泡体の表面抵抗率が、1010Ω/□以下である前記の樹脂発泡体を提供する。
【0013】
さらに、本発明は、樹脂発泡体の発泡倍率が、9倍以上である前記の樹脂発泡体を提供する。
【0014】
さらに、本発明は、樹脂発泡体の見掛け密度が、0.01〜0.15g/cm3である前記の樹脂発泡体を提供する。
【0015】
さらに、本発明は、樹脂発泡体の平均セル径が、10〜250μmである前記の樹脂発泡体を提供する。
【0016】
さらに、本発明は、樹脂及び導電性物質を含む樹脂組成物から形成される前記の樹脂発泡体を提供する。
【0017】
さらに、本発明は、導電性物質が、カーボン系フィラーである前記の樹脂発泡体を提供する。
【0018】
さらに、本発明は、樹脂が、熱可塑性樹脂である前記の樹脂発泡体を提供する。
【0019】
さらに、本発明は、熱可塑性樹脂及びカーボン系フィラーを含み、カーボン系フィラーのBET比表面積が500m2/g以上であり、カーボン系フィラーの添加量が熱可塑性樹脂100重量部に対して3〜20重量部であり、平均セル径が10〜250μmであり、見掛け密度が0.01〜0.15g/cm3である前記の樹脂発泡体を提供する。
【0020】
さらに、本発明は、樹脂発泡体において、独立気泡構造又は半連続半独立気泡構造を有している前記の樹脂発泡体を提供する。
【0021】
さらに、本発明は、樹脂及び導電性物質を含む樹脂組成物に高圧の不活性ガスを含浸させた後、減圧する工程を経て形成される前記の樹脂発泡体を提供する。
【0022】
さらに、本発明は、熱可塑性樹脂及びカーボン系フィラーを含み、カーボン系フィラーのBET比表面積が500m2/g以上であり、カーボン系フィラーの添加量が熱可塑性樹脂100重量部に対して3〜20重量部である樹脂組成物に、高圧の不活性ガスを含浸させた後、減圧する工程を経て形成される前記の樹脂発泡体を提供する。
【0023】
さらに、本発明は、不活性ガスが、二酸化炭素である前記の樹脂発泡体を提供する。
【0024】
さらに、本発明は、不活性ガスが、超臨界状態である前記の樹脂発泡体を提供する。
【0025】
さらに、本発明は、前記の樹脂発泡体の片面又は両面に、粘着層を有している導電性発泡部材を提供する。
【0026】
さらに、本発明は、粘着層が、フィルム層を介して、発泡体上に形成されている前記の導電性発泡部材を提供する。
【0027】
さらに、本発明は、粘着層が、アクリル系粘着剤により形成されている前記の導電性発泡部材を提供する。
【発明の効果】
【0028】
本発明の樹脂発泡体によれば、前記構成を有しているので、柔軟性及び導電性を兼ね備え、さらには高密度化された電子部品間の微小なクリアランスを埋めることが可能であり、特に圧縮した場合でも段差部において段差に追従でき且つ低い体積抵抗率を有し、導電性緩衝シール材として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】クリアランス追従性の評価方法を示す概略断面図である。
【図2】防塵性評価試験装置の一例を示す概略構成図である。
【図3】防塵性評価試験装置の一例を示す概略構成断面図である。
【図4】PETテープを貼付した上部電極の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の樹脂発泡体は、体積抵抗率が1010Ω・cm以下で、且つ50%圧縮時の対反発荷重が5N/cm2以下である。本発明の樹脂発泡体は、通常、樹脂及び導電性物質を含む樹脂組成物から形成される。
【0031】
(樹脂発泡体)
本発明の樹脂発泡体は、体積抵抗率が1010Ω・cm以下であり、且つ初期厚さの50%に圧縮したときの対反発荷重(50%圧縮時の対反発荷重、50%圧縮荷重)が5N/cm2以下である構成を有している。このように、本発明の樹脂発泡体は、導電性や柔軟性に優れており、導電材、衝撃吸収材、緩衝シール材、導電性緩衝シール材、防塵材、導電性防塵材などへの適用が可能である。また、本発明の樹脂発泡体は、シート状やフィルム状の形状を有することが好ましい。
【0032】
樹脂発泡体の体積抵抗率は、1010Ω・cm以下であり、好ましくは108Ω・cm以下であり、さらに好ましくは105Ω・cm以下である。なお、樹脂発泡体の体積抵抗率は、JIS K 6271に記載されている二重リング電極法に基づいて測定される。
【0033】
本発明の樹脂発泡体は、上記のように幅広い用途への適用が可能であるが、樹脂発泡体の体積抵抗率が108Ω・cm以下の場合、例えば、クリーンルーム内での使用も可能となる帯電防止性緩衝シール材などへの適用が可能であり、また樹脂発泡体の体積抵抗率が105Ω・cm以下の場合、接触する電子部品の接地を行ない、静電気障害による誤作動を防ぐ導電性緩衝シール材などへの適用が可能である。
【0034】
樹脂発泡体の50%圧縮時の対反発荷重は、微小なクリアランスへの適用を可能にする点から、5N/cm2以下であり、好ましくは4N/cm2以下であり、さらに好ましくは3N/cm2以下である。なお、樹脂発泡体の50%圧縮時の対反発荷重は、JIS K 6767に記載されている圧縮硬さ測定法に準じて測定される。
【0035】
例えば、樹脂発泡体の50%圧縮時の対反発荷重が4N/cm2以下であると、凹凸面への追従性が非常に良くなり、特に凹凸高さの大きい凹凸面(例えば、0.05〜0.20mmの凹凸高さを有する凹凸面)を有する電子部品の接地用途に好適に用いることができる。
【0036】
特に、本発明の樹脂発泡体は、圧縮した場合でも段差部において段差に良好に追従して導電性を発揮するようにする点から、下記で定義する圧縮抵抗率が、108Ω・cm以下(より好ましくは106Ω・cm以下)であることが好ましい。
【0037】
圧縮抵抗率は、下記の樹脂発泡体を、下記の段差を有する上部電極と下記の下部電極との間に、上部電極の段差面が樹脂発泡体と接する形態で挟み、樹脂発泡体を上部から厚さ方向に5%圧縮した場合(圧縮率5%)の体積抵抗率のことである。
樹脂発泡体:たて25mm、よこ25mm、厚さ1mmのシート状の樹脂発泡体
段差を有する上部電極:たて25mm、よこ25mmの電極に、たて25mm、よこ7.5mm、厚さ0.1mmのPETテープを電極両端にそれぞれ貼付することにより得られ、樹脂発泡体と接する側に、たて25mm、よこ10mm、高さ0.1mmの凹部を有する。
下部電極:たて25mm、よこ25mmの表面が平滑な電極
なお、図4には、段差を有する上部電極の一例の概略断面図が示されている。
【0038】
本発明の樹脂発泡体では、導電材、衝撃吸収材、緩衝シール材、導電性緩衝シール材、防塵材、導電性防塵材などへの幅広い用途により好適に適用することを可能とする点から、1010Ω・cm以下の体積抵抗率を有するともに、1010Ω/□以下(好ましくは108Ω/□以下、さらに好ましくは105Ω/□以下)の表面抵抗率を有することが好ましい。
【0039】
例えば、本発明の樹脂発泡体において、樹脂発泡体の表面抵抗率を108Ω/□以下とすると、クリーンルーム内での使用も可能となる帯電防止性緩衝シール材などへより好適に適用することができる。また、樹脂発泡体の表面抵抗率を105Ω/□以下とすると、接触する電子部品の接地を行ない、静電気障害による誤作動を防ぐ導電性緩衝シール材などへより好適に適用することができる。
【0040】
本発明の樹脂発泡体では、柔軟性を高める点から、見掛け密度は0.15g/cm3以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.10g/cm3以下であり、さらにより好ましくは0.07g/cm3以下である。一方、優れた導電性を確保する点から、見掛け密度は0.01g/cm3以上であることが好ましく、さらに好ましくは0.02g/cm3以上である。
【0041】
本発明の樹脂発泡体では、柔軟性や衝撃吸収性の点から、発泡倍率は、9倍以上(例えば9倍〜50倍)であることが好ましく、さらに好ましくは15倍以上(例えば15倍〜30倍)であることが好ましい。発泡倍率が9倍未満であると、樹脂発泡体において十分な柔軟性や衝撃吸収性が得られない場合があり、一方発泡倍率が50倍を超えると強度が著しく低下する場合がある。
【0042】
樹脂発泡体の発泡倍率は、下記の式より算出される。
発泡倍率(倍)=(発泡前の密度)/(発泡後の密度)
なお、発泡前の密度は、例えば、未発泡成形物の密度や、樹脂組成物を溶融してから、溶融した樹脂に不活性ガスを含浸させて樹脂発泡体を形成する場合の発泡前の樹脂組成物の密度に相当する。また、発泡後の密度は、上記の樹脂発泡体の見掛け密度に相当する。
【0043】
本発明の樹脂発泡体では、薄層加工を可能として微小なクリアランスへの適用性を向上させる点、及び、防塵性を向上させる点から、平均セル径(平均気泡径)は250μmが好ましく、好ましくは200μm以下であり、さらに好ましくは100μm以下であり、さらにより好ましくは80μm以下である。一方、優れた衝撃吸収性(クッション性)を得る点から、平均セル径は10μm以上が好ましく、さらに好ましくは15μm以上であり、さらにより好ましくは20μm以上である。
【0044】
本発明の樹脂発泡体では、防塵性を特に向上させる点から、平均セル径は250μm以下が好ましく、さらに好ましくは200μm以下であり、さらにより好ましくは100μm以下である。
【0045】
本発明の樹脂発泡体では、薄層加工を容易に可能にして微小なクリアランスへの運用性を向上させる点から、その厚さは、2.0mm以下が好ましく、さらに好ましくは1.0mm以下であり、さらにより好ましくは0.5mm以下である。なお、樹脂発泡体の厚さは、通常、0.2mm以上であり、好ましくは0.3mm以上である。
【0046】
本発明の樹脂発泡体では、導電パス(導電ネットワーク)の形成という点及び防塵性の点から、気泡構造は、独立気泡構造又は半連続半独立気泡構造(独立気泡構造と半連続半独立気泡構造とが混在している気泡構造であり、その割合は特に制限されない)が好ましい。特に、樹脂発泡体中に独立気泡構造部が50%以上(中でも80%以上、特に好ましくは90%以上)となっている気泡構造が好適である。
【0047】
樹脂発泡体の体積抵抗率や表面抵抗率は、樹脂を選択することや、導電性物質の種類や量を調整することにより、制御することができる。
【0048】
本発明の樹脂発泡体において、樹脂発泡体の50%圧縮時の対反発荷重、見掛け密度、発泡倍率、平均セル径、及び気泡構造は、樹脂の種類、発泡剤の種類、導電性物質やその他の添加剤の種類等に応じて、発泡成形する際の条件、例えば、ガス含浸工程における温度、圧力、時間、混合するガス量などの操作条件、減圧工程における減圧速度、温度、圧力などの操作条件、減圧後の加熱温度などを適宜選択、設定することにより調整することができる。
【0049】
例えば、後述の、熱可塑性樹脂及びカーボン系フィラーを含み、カーボン系フィラーのBET比表面積が500m2/gであり、カーボン系フィラーの添加量が熱可塑性樹脂100重量部に対して3〜20重量部である樹脂組成物を用いれば、熱可塑性樹脂及びカーボン系フィラーを含み、カーボン系フィラーのBET比表面積が500m2/gであり、カーボン系フィラーの添加量が熱可塑性樹脂100重量部に対して3〜20重量部である樹脂発泡体であって、体積抵抗率が1010Ω・cm以下であり、50%圧縮時の対反発荷重が5N/cm2以下である樹脂発泡体を得ることができる。さらには、カーボン系フィラーの添加量が熱可塑性樹脂100重量部に対して3〜20重量部である樹脂発泡体であって、体積抵抗率が1010Ω・cm以下であり、50%圧縮時の対反発荷重が5N/cm2以下であり、且つ表面抵抗率、発泡倍率、見掛け密度、圧縮抵抗率、平均セル径などを少なくとも1つ以上制御した樹脂発泡体を得ることができる。例えば、熱可塑性樹脂及びカーボン系フィラーを含み、カーボン系フィラーのBET比表面積が500m2/gであり、カーボン系フィラーの添加量が熱可塑性樹脂100重量部に対して3〜20重量部である樹脂発泡体であって、体積抵抗率が1010Ω・cm以下であり、50%圧縮時の対反発荷重が5N/cm2以下であり、平均セル径が10〜250μmであり、見掛け密度が0.01〜0.15g/cm3である樹脂発泡体などが挙げられる。
【0050】
本発明の樹脂発泡体は、柔軟性及び導電性を兼ね備え、高発泡且つ軽量である。さらに、微小なクリアランスに対する追従性も有する。特に、発泡体を圧縮しても柔軟性及び導電性を兼ね備える。例えば、厚さ方向に5%圧縮した場合であっても、段差に対して良好に追従でき、且つ低い体積抵抗率を発揮する。
【0051】
本発明の樹脂発泡体は、さらに、微細なセル構造とすれば、形状加工性も兼ね備える。さらにまた、平均セル径を調整することにより、防塵性を特に向上させることができる。
【0052】
本発明の樹脂発泡体は、前記の特性を有するので、導電材、衝撃吸収材、緩衝シール材、導電性緩衝シール材、防塵材、導電性防塵材等として好適に用いることができる。
【0053】
本発明の樹脂発泡体は、前記特性を有し、高密度化された部品間の微小なクリアランスを埋めることが可能であることから、各種部材又は部品、電子部品、電子機器等に用いることができ、特に小型化、薄型化のものに有用である。例えば、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、プラズマディスプレイ等の液晶表示装置、携帯電話、携帯情報端末等の移動体通信の装置に好適に用いることができる。
【0054】
(樹脂組成物)
樹脂組成物は、少なくとも樹脂及び導電性物質を含んでおり、樹脂発泡体を形成する組成物である。
【0055】
本発明において、樹脂発泡体(発泡体)の素材である樹脂としては、熱可塑性を示すポリマー(熱可塑性ポリマー)であって、高圧のガスを含浸可能なものであれば特に制限されない。このような熱可塑性ポリマーとしては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとプロピレンとの共重合体、エチレン又はプロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体、エチレンと他のエチレン性不飽和単量体(例えば、酢酸ビニル、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、ビニルアルコール等)との共重合体などのオレフィン系重合体;ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)などのスチレン系重合体;6−ナイロン、66−ナイロン、12−ナイロンなどのポリアミド;ポリアミドイミド;ポリウレタン;ポリイミド;ポリエーテルイミド;ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂;ポリ塩化ビニル;ポリフッ化ビニル;アルケニル芳香族樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル;ビスフェノールA系ポリカーボネートなどのポリカーボネート;ポリアセタール;ポリフェニレンスルフィドなどが挙げられる。
【0056】
また、前記熱可塑性ポリマーには、常温ではゴムとしての性質を示し、高温では熱可塑性を示す熱可塑性エラストマーも含まれる。このような熱可塑性エラストマーとして、例えば、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリブテン、ポリイソブチレン、塩素化ポリエチレンなどのオレフィン系エラストマー;スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレン−ブタジエン−スチレン共重合体、それらの水素添加物ポリマーなどのスチレン系エラストマー;熱可塑性ポリエステル系エラストマー;熱可塑性ポリウレタン系エラストマー;熱可塑性アクリル系エラストマーなどが挙げられる。これらの熱可塑性エラストマーは、例えば、ガラス転移温度が室温以下(例えば20℃以下)であるため、樹脂発泡体としたとき柔軟性及び形状追随性に著しく優れる。
【0057】
熱可塑性ポリマーは単独で又は2種以上混合して使用できる。また、発泡体の素材として、熱可塑性エラストマー、熱可塑性エラストマー以外の熱可塑性ポリマー、熱可塑性エラストマーと熱可塑性エラストマー以外の熱可塑性ポリマーとの混合物の何れを用いることもできる。
【0058】
前記熱可塑性エラストマーと熱可塑性エラストマー以外の熱可塑性ポリマーとの混合物として、例えば、エチレン−プロピレン共重合体等のオレフィン系エラストマーとポリプロピレン等のオレフィン系重合体との混合物などが挙げられる。熱可塑性エラストマーと熱可塑性エラストマー以外の熱可塑性ポリマーとの混合物を用いる場合、その混合比率は、例えば、前者/後者=1/99〜99/1程度(好ましくは10/90〜90/10程度、さらに好ましくは20/80〜80/20程度)である。
【0059】
導電性物質は、樹脂組成物に必須の添加剤として含まれている。このため、本発明の樹脂発泡体では、導電性物質が添加された樹脂組成物により形成されることにより、導電パスの形成、導電性の調整等がされている。なお、導電性物質は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0060】
導電性物質としては、樹脂発泡体中で導電パスを形成し、樹脂発泡体の体積抵抗率を1010Ω・cm以下にするものである限り、特に制限されない。本発明では、樹脂組成物としては、導電パスの形成しやすさ、導電性の調整しやすさ、特性安定性等の観点から、導電性物質としてカーボン系フィラーを必須の成分として含むことが好ましい。
【0061】
なお、本発明では、任意の導電性物質として、金属系フィラーや下記その他のフィラーなどのカーボン系フィラー以外のフィラーが含まれていてもよい。
【0062】
このような金属系フィラーとしては、例えば銅、銀、金、鉄、白金、ニッケル、アルミニウムなど純金属系フィラー;ステンレス、真鍮などの合金系フィラー;酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化銀、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウムなどの金属酸化物系フィラーなどが挙げられる。また、その他のフィラーとしては、例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩、硫酸バリウムなどの硫酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの水酸化物、ケイ酸およびその塩類、クレー、タルク、雲母(マイカ)、ベントナイト、シリカ、アルミニウムシリケート、バサルト繊維などが挙げられる。
【0063】
本発明では、樹脂組成物において、導電性物質として、必須成分としてのカーボン系フィラー、及び任意成分としてのカーボン系フィラー以外のフィラーが含まれている場合、カーボン系フィラーが、導電性物質総重量に対して、80重量%以上(好ましくは90重量%以上)占めること重要である。
【0064】
カーボン系フィラーとしては、例えば炭素繊維、カーボンブラック、黒鉛(グラファイト)、カーボンナノチューブ、フラーレン、活性炭などが挙げられる。
【0065】
カーボン系フィラーの中でも、樹脂発泡体中での導電パスの形成しやすさ、導電性の調整しやすさ、特性安定性等の観点から、いわゆる導電性カーボンブラックが好適である。
導電性カーボンブラックとしては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、カーボンナノチューブなどが挙げられる。中でも、導電性カーボンブラックとしては、ケッチェンブラックが好ましい。
【0066】
導電性物質の構造としては、少量の添加で所望の導電性が得られること、導電性物質の添加重量が少ないと樹脂組成物の性能低下(例えば流動性の低下など)を抑制できること、及び表面積が大きいと、導電性物質同士が接触し易く、導電パスを形成しやすいことなどから、BET比表面積が500m2/g以上(好ましくは1000m2/g以上)となる構造を有することが好ましい。
【0067】
導電性物質の形状は、特に制限されず、例えば粉末状の不定形状、球状、棒状、短繊維状、板状、円筒形状(チューブ形状)などが挙げられる。なお、導電性物質の形状が円筒形状(チューブ形状)などであると、大きな比表面積が得やすい。
【0068】
導電性物質は、中空構造を有していてもよい。中空構造を有していると、大きなBET比表面積を得やすい。
【0069】
本発明では、中実構造を有する導電性物質と比較して、中空構造を有する導電性物質が好ましく用いられる。樹脂発泡体中の導電パスの形成では、導電性物質の重量ではなく、導電性物質の表面積が大きな影響を及ぼす因子であり、中空構造を有する導電性物質は、中実構造を有する導電性物質と比較して、重量当たりの表面積を大きくすることができるためである。また、体積当たりの導電性物質の添加重量を抑えることができるので、樹脂組成物の性能低下を抑制できる。
【0070】
導電性物質の表面形状は、特に制限されず、平滑であってもよく、凹凸を有していてもよい。導電性物質の表面形状が凹凸を有する形状や多孔質形状であると、大きな比表面積が得やすい。
【0071】
導電性物質の添加量としては、特に制限されないが、樹脂100重量部に対して、3〜20重量部が好ましく、好ましくは5〜10重量部である。5重量部未満であると、十分な導電性能を得る事ができない場合がある。一方20重量部を超えると樹脂組成物の流動性が低下し、高発泡な発泡体を得る事ができない場合がある。
【0072】
本発明では、導電性物質の他に、必要に応じて、添加剤が添加されていてもよい。添加剤の種類は特に限定されず、発泡成形に通常使用される各種添加剤を用いることができる。このような添加剤として、例えば、気泡核剤、結晶核剤、可塑剤、滑剤、着色剤(顔料、染料等)、紫外線吸収剤、酸化防止剤、老化防止剤、上記導電性物質を除いた充填剤、補強剤、難燃剤、帯電防止剤、界面活性剤、加硫剤、表面処理剤などが挙げられる。添加剤の添加量は、気泡の形成等を損なわない範囲で適宜選択でき、通常の樹脂の発泡・成形に用いられる添加量を採用できる。なお、添加剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0073】
前記滑剤は樹脂の流動性を向上させるとともに、樹脂の熱劣化を抑制する作用を有する。本発明において用いられる滑剤としては、樹脂の流動性の向上に効果を示すものであれば特に制限されず、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックスなどの炭化水素系滑剤;ステアリン酸、ベヘニン酸、12−ヒドロキシステアリン酸などの脂肪酸系滑剤;ステアリン酸ブチル、ステアリン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレート、硬化ヒマシ油、ステアリン酸ステアリルなどのエステル系滑剤などが挙げられる。なお、このような滑剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0074】
滑剤の添加量としては、例えば、樹脂100重量部に対して、0.5〜10重量部(好ましくは0.8〜8重量部、より好ましくは1〜6重量部)である。添加量が10重量部を超えると、流動性が高くなりすぎて発泡倍率が低下するおそれがある。また、0.5重量部未満であると、流動性の向上が図れず、発泡時の延伸性が低下して発泡倍率が低下するおそれがある。
【0075】
また前記収縮防止剤は、発泡体の気泡膜の表面に分子膜を形成して発泡剤ガスの透過を効果的に抑制する作用を有する。本発明において用いられる収縮防止剤としては、発泡剤ガスの透過を抑制する効果を示すものであれば特に限定されず、例えば、脂肪酸金属塩(例えば、ステアリン酸、ベヘニン酸、12−ヒドロキシステアリン酸などの脂肪酸のアルミニウム、カルシウム、マグネシウム、リチウム、バリウム、亜鉛、鉛の塩など);脂肪酸アミド[脂肪酸の炭素数12〜38程度(好ましくは12〜22程度)の脂肪酸アミド(モノアミド、ビスアミドのいずれであってもよいが、微細セル構造を得るためにはビスアミドが好適に用いられる。)、例えば、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、ラウリン酸ビスアミドなど]等が挙げられる。なお、このような収縮防止剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0076】
収縮防止剤の添加量としては、例えば、樹脂100重量部に対して、0.5〜10重量部(好ましくは0.7〜8重量部、さらに好ましくは1〜6重量部)である。添加量が10重量部を超えると、セル成長過程においてガス効率を低下させてしまうため、セル径は小さいものが得られるものの未発泡部分も多くなり、発泡倍率が低下するおそれがある。また、0.5重量部未満であると、被膜の形成が十分ではなく、発泡時にガス抜けが発生して、収縮がおこり、発泡倍率が低下するおそれがある。
【0077】
なお、添加剤は、例えば前記滑剤と前記収縮防止剤を組み合わせて用いてもよい。例えば、ステアリン酸モノグリセリドなどの滑剤と、エルカ酸アミド、ラウリン酸ビスアミドなどの収縮防止剤を組み合わせて用いてもよい。
【0078】
樹脂組成物は、公知・慣用の方法により得られる。例えば、樹脂組成物は、発泡体の原料となる樹脂に、導電性物質、及び必要に応じて添加剤を添加して、混練することにより得られる。なお、混練の際には、加熱されてもよい。
【0079】
1010Ω・cm以下の体積抵抗率、及び5N/cm2以下の50%圧縮時の対反発荷重を満たす樹脂発泡体の形成に用いられる樹脂組成物の具体的態様しては、例えば、熱可塑性樹脂及びカーボン系フィラーを含み、カーボン系フィラーのBET比表面積が500m2/gであり、カーボン系フィラーの添加量が熱可塑性樹脂100重量部に対して3〜20重量部である樹脂組成物が挙げられる。
【0080】
(樹脂発泡体の製造)
本発明の樹脂発泡体は、樹脂と導電性物質とを少なくとも含む樹脂組成物から形成される。本発明の樹脂発泡体において、樹脂発泡体を製造する方法としては、特に制限されず、例えば、物理的方法、化学的方法等の通常用いられる方法が挙げられる。一般的な物理的方法は、クロロフルオロカーボン類又は炭化水素類などの低沸点液体(発泡剤)を樹脂に分散させ、次に加熱し発泡剤を揮発することにより気泡を形成させる方法である。また、一般的な化学的方法は、樹脂に添加した化合物(発泡剤)の熱分解により生じたガスにより気泡を形成させる方法である。しかし、一般的な物理的方法は、発泡剤として用いられる物質の可燃性や毒性、及びオゾン層破壊などの環境への影響が懸念される。また、一般的な化学的方法では、発泡ガスの残渣が発泡体中に残存するため、特に低汚染性の要求が高い電子機器用途においては、腐食性ガスやガス中の不純物による汚染が問題となる。しかも、これらの物理的方法及び化学的方法では、いずれにおいても、微細な気泡構造を形成することは難しく、特に300μm以下の微細気泡を形成することは極めて困難である。
【0081】
このため、本発明では、セル径が小さく且つセル密度の高い発泡体を容易に得ることができる点から、発泡剤として高圧の不活性ガスを用いる方法が好ましい。
【0082】
具体的には、本発明の樹脂発泡体を、発泡剤として高圧の不活性ガスを用いる方法により樹脂組成物から形成する方法としては、例えば、樹脂に、不活性ガスを高圧下で含浸させるガス含浸工程、該工程後に圧力を低下させて樹脂を発泡させる減圧工程、及び必要に応じて加熱により気泡を成長させる加熱工程を経て形成する方法などが挙げられる。この場合、樹脂組成物を予め成形し未発泡成形物を得てから、該未発泡成形物を不活性ガスに含浸させてもよく、また、樹脂組成物を溶融してから、溶融した樹脂に不活性ガスを加圧状態下で含浸させた後、減圧の際に成形に付してもよい。これらの工程は、バッチ方式、連続方式の何れの方式で行ってもよい。
【0083】
本発明で用いられる不活性ガスとしては、上記樹脂に対して不活性で且つ含浸可能なものであれば特に制限されず、例えば、二酸化炭素、窒素ガス、空気等が挙げられる。これらのガスは混合して用いてもよい。これらのうち、発泡体の素材として用いる樹脂への含浸量が多く、含浸速度の速い二酸化炭素が好適である。また、不純物の少ないクリーンな樹脂発泡体を得る観点からも二酸化炭素が好ましい。
【0084】
また、樹脂に含浸させる際の不活性ガスは超臨界状態であるのが好ましい。超臨界状態では、樹脂へのガスの溶解度が増大し、高濃度の混入が可能である。また、含浸後の急激な圧力降下時には、前記のように高濃度であるため、気泡核の発生が多くなり、その気泡核が成長してできる気泡の密度が、気孔率が同じであっても、大きくなるため、微細な気泡を得ることができる。なお、二酸化炭素の臨界温度は31℃、臨界圧力は7.4MPaである。
【0085】
バッチ方式によれば、例えば以下のようにして樹脂発泡体を形成できる。すなわち、まず、単軸押出機、二軸押出機等の押出機を使用して樹脂組成物を押し出すことにより、未発泡成形物(発泡体成形用樹脂シート等)を形成する。或いは、ローラ、カム、ニーダ、バンバリ型の羽根を設けた混練機を使用して、樹脂組成物を均一に混練しておき、これを熱板のプレス機を用いてプレス成形し、未発泡成形物(発泡体成形用樹脂シート等)を形成する。そして、得られた未発泡成形物を耐圧容器中に入れ、高圧の不活性ガスを導入し、該不活性ガスを未発泡成形物中に含浸させる。この場合、未発泡成形物の形状は特に限定されず、ロール状、板状等の何れであってもよい。また、高圧の不活性ガスの導入は連続的に行ってもよく不連続的に行ってもよい。十分に高圧の不活性ガスを含浸させた時点で圧力を解放し(通常、大気圧まで)、樹脂中に気泡核を発生させる。気泡核はそのまま室温で成長させてもよく、また、必要に応じて加熱することによって成長させてもよい。加熱の方法としては、ウォーターバス、オイルバス、熱ロール、熱風オーブン、遠赤外線、近赤外線、マイクロ波などの公知乃至慣用の方法を採用できる。このようにして気泡を成長させた後、冷水などにより急激に冷却し、形状を固定化する。
【0086】
一方、連続方式によれば、例えば以下のようにして樹脂発泡体を形成できる。すなわち、樹脂組成物を単軸押出機、二軸押出機等の押出機を使用して混練しながら高圧の不活性ガスを注入し、十分にガスを樹脂中に含浸させた後、押し出して圧力を解放し(通常、大気圧まで)、発泡と成形とを同時に行い、場合によっては加熱することにより気泡を成長させる。気泡を成長させた後、冷水などにより急激に冷却し、形状を固定化する。
【0087】
前記ガス含浸工程における圧力は、例えば6MPa以上(例えば6〜100MPa程度)、好ましくは8MPa以上(例えば8〜100MPa程度)である。圧力が6MPaより低い場合には、発泡時の気泡成長が著しく、気泡径が大きくなりすぎて、前記範囲の小さな平均セル径(平均気泡径)を得ることができず、防塵効果が低下する。これは、圧力が低いとガスの含浸量が高圧時に比べて相対的に少なく、気泡核形成速度が低下して形成される気泡核数が少なくなるため、1気泡あたりのガス量が逆に増えて気泡径が極端に大きくなるからである。また、6MPaより低い圧力領域では、含浸圧力を少し変化させるだけで気泡径、気泡密度が大きく変わるため、気泡径及び気泡密度の制御が困難になりやすい。
【0088】
ガス含浸工程における温度は、用いる不活性ガスや樹脂の種類等によって異なり、広い範囲で選択できるが、操作性等を考慮した場合、例えば、10〜350℃程度である。例えば、シート状などの未発泡成形物に不活性ガスを含浸させる場合の含浸温度は、バッチ式では10〜250℃程度、好ましくは10〜200℃程度、より好ましくは40〜200℃程度である。また、ガスを含浸させた溶融した樹脂組成物を押し出して発泡と成形とを同時に行う場合の含浸温度は、連続式では60〜350℃程度が一般的である。なお、不活性ガスとして二酸化炭素を用いる場合には、超臨界状態を保持するため、含浸時の温度は32℃以上、特に40℃以上であるのが好ましい。
【0089】
不活性ガス(発泡剤としてのガス)の混合量は、特に制限されないが、発泡性や、例えば前記の平均セル径などの小さな平均セル径を有する気泡構造を得る点から、熱可塑性樹脂組成物中の樹脂全量に対して1〜15重量%が好ましく、より好ましくは2〜12重量%であり、さらにより好ましくは3〜10重量%である。
【0090】
前記減圧工程において、減圧速度は、特に限定されないが、均一な微細気泡を得るため、好ましくは5〜300MPa/秒程度である。また、前記加熱工程における加熱温度は、例えば、40〜250℃程度、好ましくは60〜250℃程度である。
【0091】
1010Ω・cm以下の体積抵抗率、及び5N/cm2以下の50%圧縮時の対反発荷重を満たす樹脂発泡体の形成に用いられる製造方法の具体的態様しては、例えば、態様1としては、前記樹脂組成物に高圧の不活性ガスを含浸させた後、減圧する工程を経て形成する方法が挙げられる。また、態様2としては、前記樹脂組成物からなる未発泡成形物に高圧の不活性ガスを含浸させた後、減圧する工程を経て形成する方法が挙げられる。
【0092】
より具体的な態様としては、例えば、熱可塑性樹脂及びカーボン系フィラーを含み、カーボン系フィラーのBET比表面積が500m2/gであり、カーボン系フィラーの添加量が熱可塑性樹脂100重量部に対して3〜20重量部である樹脂組成物に、高圧の不活性ガスを含浸させた後、減圧する工程を経て形成する方法や、熱可塑性樹脂及びカーボン系フィラーを含み、カーボン系フィラーのBET比表面積が500m2/gであり、カーボン系フィラーの添加量が熱可塑性樹脂100重量部に対して3〜20重量部である樹脂組成物からなる未発泡成形物に、高圧の不活性ガスを含浸させた後、減圧する工程を経て形成する方法などが挙げられる。
【0093】
(導電性発泡部材)
導電性発泡部材は、少なくとも前記樹脂発泡体から構成されている。具体的には、導電性発泡部材は、樹脂発泡体のみからなる構成であってもよいし、樹脂発泡体の片面又は両面に、他の層や基材(特に粘着層など)が設けられている構成であってもよい。
【0094】
導電性発泡部材は、樹脂発泡体の片面又は両面に粘着層が設けられている構成を有していると、光学部材等の部材又は部品を被着体へ固定ないし仮止めすることができる。
【0095】
前記粘着層を形成する粘着剤としては、特に制限されず、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤(天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤など)、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、エポキシ系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、フッ素系粘着剤などの公知の粘着剤を適宜選択して用いることができる。粘着剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なお、粘着剤は、エマルジョン系粘着剤、ホットメルト型粘着剤、溶剤系粘着剤、オリゴマー系粘着剤、固系粘着剤などのいずれの形態の粘着剤であってもよい。中でも、粘着剤としては、被着体への汚染防止などの観点から、アクリル系粘着剤が好適である。
【0096】
粘着層は、公知乃至慣用の形成方法を利用して形成することができ、例えば、所定の部位又は面上に粘着剤を塗布する方法(塗布方法)、剥離ライナーなどの剥離フィルム上に、粘着剤を塗布して粘着層を形成した後、該粘着層を、所定の部位又は面上に転写する方法(転写方法)などが挙げられる。なお、粘着層の形成に際しては、公知乃至慣用の塗布方法(流延方法、ロールコーター方法、リバースコータ方法、ドクターブレード方法など)を適宜利用することができる。
【0097】
粘着層の厚さとしては、通常、2〜100μm(好ましくは10〜100μm)程度である。粘着層は、薄層であるほど、端部のゴミや埃の付着を防止する効果が高いため、厚さは薄い方が好ましい。なお、粘着層は、単層、積層体のいずれの形態を有していてもよい。
【0098】
また、粘着層は、他の層(下層)を介して、発泡体上に形成されていてもよい。このような下層としては、例えば、基材層(特に、フィルム層や不織布)や、他の粘着層の他、中間層、下塗り層などが挙げられる。
【0099】
さらにまた、粘着層が発泡体の一方の面(片面)にのみ形成されている場合、発泡体の他方の面には、他の層が形成されていてもよく、例えば、他の種類の粘着層や、基材層などが挙げられる。
【0100】
導電性発泡部材や導電性発泡部材を構成する樹脂発泡体は、所望の形状や厚さなどを有するように加工が施されていてもよい。例えば、導電性発泡部材をスライスすることにより、所望の厚さを有する導電性発泡部材を得ることができる。また、用いられる装置や機器等に合わせて種々の形状に加工が施されていてもよい。
【0101】
導電性発泡部材は、例えば、シール材、導電材、衝撃吸収材、緩衝シール材、導電性緩衝シール材、防塵材、導電性防塵材などとして好適に用いることができる。
【0102】
導電性発泡部材は、特に電子機器等の内部に好適に利用される。これは、導電性発泡部材を構成する樹脂発泡体は、柔軟性に優れており、さらに製造時の発泡剤として二酸化炭素等の不活性ガスが用いられているので、有害物質の発生や汚染物質の残存がなくクリーンであることによる。
【0103】
導電性発泡部材は、例えば、各種部材又は部品(例えば、光学部材など)を、所定の部位に取り付ける(装着する)際に用いられる。特に、小型の部材又は部品(例えば、小型の光学部材など)を、薄型化の製品に装着する際であっても好適に用いられる。
【0104】
導電性発泡部材を利用して取付(装着)される光学部材としては、例えば、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、プラズマディスプレイ等の画像表示装置に装着される画像表示部材(特に、小型の画像表示部材)や、いわゆる「携帯電話」や「携帯情報端末」等の移動体通信の装置に装着されるカメラやレンズ(特に、小型のカメラやレンズ)などが挙げられる。
【実施例】
【0105】
以下に実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0106】
(実施例1)
ポリプロピレン[メルトフローレート(MFR):0.35g/10min]:50重量部、ポリオレフィン系エラストマー[メルトフローレート(MFR):6g/10min、JIS A硬度:79°]:50重量部、水酸化マグネシウム:10重量部、カーボン(商品名「ケッチェンブラック EC−600JD」ケッチェン・ブラック・インターナショナル株式会社製、中空シェル構造、BET比表面積:1270m2/g):10重量部、ステアリン酸モノグリセリド:1重量部を、日本製鋼所(JSW)社製の二軸混練機にて、200℃の温度で混練した後、ストランド状に押出し、水冷後ペレット状に成形した。このペレットを、日本製鋼所社製の単軸押出機に投入し、220℃の雰囲気下、13(注入後12)MPaの圧力で、二酸化炭素ガスを注入した。二酸化炭素ガスは、ポリマー全量に対して6.0重量%の割合で注入した。二酸化炭素ガスを十分飽和させた後、発泡に適した温度まで冷却後、ダイから押出して、発泡体を得た。
【0107】
(実施例2)
ポリプロピレン[メルトフローレート(MFR):0.35g/10min]:50重量部、ポリオレフィン系エラストマー[メルトフローレート(MFR):6g/10min、JIS A硬度:79°]:50重量部、水酸化マグネシウム:10重量部、カーボン(商品名「ケッチェンブラック EC−600JD」ケッチェン・ブラック・インターナショナル株式会社製、中空シェル構造、BET比表面積:1270m2/g):10重量部、ステアリン酸モノグリセリド:1重量部を、日本製鋼所(JSW)社製の二軸混練機にて、200℃の温度で混練した後、ストランド状に押出し、水冷後ペレット状に成形した。このペレットを、日本製鋼所社製の単軸押出機に投入し、220℃の雰囲気下、13(注入後12)MPaの圧力で、二酸化炭素ガスを注入した。二酸化炭素ガスは、ポリマー全量に対して5.0重量%の割合で注入した。二酸化炭素ガスを十分飽和させた後、発泡に適した温度まで冷却後、ダイから押出して、発泡体を得た。
【0108】
(実施例3)
ポリプロピレン[メルトフローレート(MFR):0.35g/10min]:70重量部、ポリオレフィン系エラストマー[メルトフローレート(MFR):6g/10min、JIS A硬度:79°]:30重量部、水酸化マグネシウム:10重量部、カーボン(商品名「ケッチェンブラック EC−600JD」ケッチェン・ブラック・インターナショナル株式会社製、中空シェル構造、BET比表面積:1270m2/g):10重量部、ステアリン酸モノグリセリド:1重量部を、日本製鋼所(JSW)社製の二軸混練機にて、200℃の温度で混練した後、ストランド状に押出し、水冷後ペレット状に成形した。このペレットを、日本製鋼所社製の単軸押出機に投入し、220℃の雰囲気下、13(注入後12)MPaの圧力で、二酸化炭素ガスを注入した。二酸化炭素ガスは、ポリマー全量に対して5.0重量%の割合で注入した。二酸化炭素ガスを十分飽和させた後、発泡に適した温度まで冷却後、ダイから押出して、発泡体を得た。
【0109】
(実施例4)
ポリプロピレン[メルトフローレート(MFR):0.35g/10min]:70重量部、ポリオレフィン系エラストマー[メルトフローレート(MFR):6g/10min、JIS A硬度:79°]:30重量部、水酸化マグネシウム:10重量部、カーボン(商品名「ケッチェンブラック EC−600JD」ケッチェン・ブラック・インターナショナル株式会社製、中空シェル構造、BET比表面積:1270m2/g):10重量部、ステアリン酸モノグリセリド:1重量部を、日本製鋼所(JSW)社製の二軸混練機にて、200℃の温度で混練した後、ストランド状に押出し、水冷後ペレット状に成形した。このペレットを、日本製鋼所社製の単軸押出機に投入し、220℃の雰囲気下、13(注入後12)MPaの圧力で、二酸化炭素ガスを注入した。二酸化炭素ガスは、ポリマー全量に対して4.0重量%の割合で注入した。二酸化炭素ガスを十分飽和させた後、発泡に適した温度まで冷却後、ダイから押出して、発泡体を得た。
【0110】
(実施例5)
ポリプロピレン[メルトフローレート(MFR):0.35g/10min]:50重量部、ポリオレフィン系エラストマー[メルトフローレート(MFR):6g/10min、JIS A硬度:79°]:50重量部、水酸化マグネシウム:10重量部、カーボン(商品名「ケッチェンブラック EC−600JD」ケッチェン・ブラック・インターナショナル株式会社製、中空シェル構造、BET比表面積:1270m2/g):10重量部、ステアリン酸モノグリセリド:1重量部を、日本製鋼所(JSW)社製の二軸混練機にて、200℃の温度で混練した後、ストランド状に押出し、水冷後ペレット状に成形した。このペレットを、日本製鋼所社製の単軸押出機に投入し、220℃の雰囲気下、13(注入後12)MPaの圧力で、二酸化炭素ガスを注入した。二酸化炭素ガスは、ポリマー全量に対して3.5重量%の割合で注入した。二酸化炭素ガスを十分飽和させた後、発泡に適した温度まで冷却後、ダイから押出して、発泡体を得た。
【0111】
(比較例1)
ポリプロピレン[メルトフローレート(MFR):0.35g/10min]:50重量部、ポリオレフィン系エラストマー[メルトフローレート(MFR):6g/10min、JIS A硬度:79°]:50重量部、水酸化マグネシウム:10重量部、カーボン(商品名「旭♯35」旭カーボン株式会社製、BET比表面積:23m2/g、中実構造):10重量部、ステアリン酸モノグリセリド:1重量部を、日本製鋼所(JSW)社製の二軸混練機にて、200℃の温度で混練した後、ストランド状に押出し、水冷後ペレット状に成形した。このペレットを、日本製鋼所社製の単軸押出機に投入し、220℃の雰囲気下、13(注入後12)MPaの圧力で、二酸化炭素ガスを注入した。二酸化炭素ガスは、ポリマー全量に対して6.0重量%の割合で注入した。二酸化炭素ガスを十分飽和させた後、発泡に適した温度まで冷却後、ダイから押出して、発泡体を得た。
【0112】
(比較例2)
ポリプロピレン[メルトフローレート(MFR):0.35g/10min]:50重量部、ポリオレフィン系エラストマー[メルトフローレート(MFR):6g/10min、JIS A硬度:79°]:50重量部、水酸化マグネシウム:10重量部、カーボン(商品名「ケッチェンブラック EC−600JD」ケッチェン・ブラック・インターナショナル株式会社製、中空シェル構造、BET比表面積:1270m2/g):25重量部、ステアリン酸モノグリセリド:1重量部を、日本製鋼所(JSW)社製の二軸混練機にて、200℃の温度で混練した後、ストランド状に押出し、水冷後ペレット状に成形した。このペレットを、日本製鋼所社製の単軸押出機に投入し、220℃の雰囲気下、13(注入後12)MPaの圧力で、二酸化炭素ガスを注入した。二酸化炭素ガスは、ポリマー全量に対して6.0重量%の割合で注入した。二酸化炭素ガスを十分飽和させた後、発泡に適した温度まで冷却したが、樹脂組成物の流動性が低く、発泡体を得る事ができなかった。
【0113】
(比較例3)
低密度ポリエチレン樹脂とエチレン酢酸ビニル樹脂の混合樹脂に帯電防止剤を配合した市販の導電性発泡体を用いた。
【0114】
(評価)
実施例及び比較例に係る発泡体について、体積抵抗率、表面抵抗率、50%圧縮時の対反発荷重(50%圧縮荷重)、見掛け密度、セル径、発泡倍率、クリアランス追従性、防塵性指標、及び圧縮抵抗率を測定又は評価した。その結果を表1に示した。
【0115】
(体積抵抗率及び表面抵抗率)
JIS K 6271に記載されている二重リング電極法に準じて、体積抵抗率及び表面抵抗率を測定した。抵抗値の測定には、装置名「デジタル・マルチメータ VOAC7520」(岩通計測株式会社製)を使用した。
【0116】
(50%圧縮時の対反発荷重(50%圧縮荷重))
JIS K 6767に記載されている圧縮硬さ測定法に準じて測定した。
【0117】
(見掛け密度)
40mm・40mmの打抜き刃型にて発泡体を打抜き、打抜いた試料の寸法を測定する。また、測定端子の直径(φ)20mmである1/100ダイヤルゲージにて厚さを測定する。これらの値から発泡体の体積を算出した。次に、発泡体の重量を最小目盛り0.01g以上の上皿天秤にて測定する。これらの値より発泡体の見掛け密度(g/cm3)を算出した。
【0118】
(平均セル径)
デジタルマイクロスコープ(商品名「VH−8000」キーエンス株式会社製)により、発泡体気泡部の拡大画像を取り込み、画像解析ソフト(商品名「Win ROOF」三谷商事株式会社製)を用いて、画像解析することにより、平均セル径(μm)を求めた。
【0119】
(発泡倍率)
発泡前の密度を測定し、下記式より求めた。
発泡倍率(倍)=(発泡前の密度)/(発泡後の密度)
発泡前の密度は実施例及び比較例のペレットの密度のことであり、また発泡後の密度は実施例及び比較例の発泡体の見掛け密度のことである。
【0120】
(クリアランス追従性)
図1に示されるような治具(クリアランス追従性評価治具1)に、実施例及び比較例の発泡体(発泡体13)をセットし、上面側のアクリル板(厚さ10mmのアクリル板11a)の変形の状態を目視にて観察した。具体的には、厚さ20mmのアクリル板(厚さ20mmのアクリル板11b)の左右の端部に、厚さ0.1mmのスペーサー(厚さ0.1mmのスペーサー12)を設置し、前記スペーサーで挟まれた中央部に発泡体(発泡体13)を設置し、この上面に、厚さ10mmのアクリル板(厚さ10mmのアクリル板11a)を設置して、両端のスペーサー部において、上面側のアクリル板(厚さ10mmのアクリル板11a)側から荷重(荷重a)をかけて圧縮し、その際の上面側のアクリル板(厚さ10mmのアクリル板11a)の変形の有無を目視で観察した。そして、変形がみられない場合を「良好」、変形がみられる場合を「不良」と評価した。
なお、治具にセットされた実施例及び比較例の発泡体の厚さは、1mmであった。
【0121】
(防塵性指標の測定方法)
防塵性指標の測定には、図2及び図3に示す防塵性評価試験装置を使用した。図2及び図3において、2aは防塵性評価試験装置の概略構成、2bは防塵性評価試験装置の断面の概略構成、21は天井板、22はスペーサー、23は両面テープ(枠形状の両面粘着テープ、商品名「No.5603」、日東電工株式会社製、厚さ:30μm)、24は発泡体(枠形状に打ち抜き加工をした実施例及び比較例の発泡体)、25は評価用箱体、26aは管継ぎ手を介して定量ポンプに接続する貫通孔、26bは管継ぎ手を介してパーティクルカウンタに接続する貫通孔、26cは管継ぎ手を介してニードルバルブに接続する貫通孔、27は開口部(一辺の長さが52mmの正方形状)、28は空間部を示す。該防塵性評価試験装置は、略四角形の平板状の天井板21と評価用箱体25とをねじ止めすることによって、内部に略直方体状の密閉可能な空間部28を形成することができる。なお、開口部27は、該空間部28の開口部である。また、天井板21は、開口部となる平面視四角形(台形)の切り込みを有する。
【0122】
天井板21の開口部27に対向する下面には、開口部27より大きい四角形平板状のスペーサー22が、開口部27の全面に対向するように取り付けられる。そして、該スペーサー22の下面の開口部27に対向する位置には、開口部27とほぼ同じ大きさの窓部を有する発泡体24が、両面テープ23を介して取り付けられる。このため、天井板21をねじ止めすることによって、発泡体24は、スペーサー22と開口部27の周縁部とによって厚さ方向に圧縮される。発泡体24の圧縮率は、スペーサー22の厚さを調整することにより、調整される。
【0123】
従って、天井板21と評価用箱体25とをねじ止めすることによって、評価用箱体25内の空間部28は、発泡体24、両面テープ23及びスペーサー22によって密閉される。
【0124】
枠形状に打ち抜き加工をした実施例及び比較例(厚さ:1mm、幅1mm、一辺の長さが54mmの正方形状、開口部は一辺の長さが52mmの正方形状)について、前記防塵性評価試験装置により、通過した直径0.5μm以上の粒子の数を求めた。
【0125】
具体的には、上記の枠形状に打ち抜き加工をした実施例及び比較例の発泡体を防塵性評価試験装置に圧縮率50%でセットし、該枠形状に打ち抜き加工をした実施例及び比較例の発泡体セットした防塵性評価試験装置を、粉塵箱体内に配置し、密閉した。
次に、粉塵箱体に接続した粉塵供給装置、及び、粉塵箱体に接続したパーティクルカウンタを用いて、密閉した粉塵箱体内の直径0.5μm以上の粒子のパーティクルカウント値(数)が1000000付近でほぼ一定になるように制御した。
次に、貫通孔26cのニードルバルブを閉じた状態で、貫通孔26aから、吸引速度:0.5L/min、30分間の定量ポンプによる吸引を行い、吸引後、防塵性評価試験装置の空間部28の直径0.5μm以上の粒子の数をパーティクルカウンタで測定することにより、発泡体を通過して進入した粒子個数を求めた。
この粒子個数を防塵性指標とした。
【0126】
防塵性指標としては、防塵性を高める点から、50,000以下が好ましく、さらに好ましくは30,000以下であり、さらにより好ましくは10,000以下である。
【0127】
(圧縮抵抗率)(高さ0.1mmの段差を設けた治具にて、厚さ1mmの樹脂発泡体を厚さ方向に5%圧縮した場合の体積抵抗率)
データアクイジション装置(装置名「Omniace II RA1200」、NEC Avio赤外線テクノロジー株式会社製)に接続した電極(たて:25mm、よこ:25mm)を用意し、あらかじめ準備したPETテープ(たて:25mm、よこ:7.5mm、厚さ:0.2mm)を電極両端に貼付し、段差(段差部)を作製した(図4参照)。そして、PETテープを貼付した電極を上部電極とした。
なお、PETテープを貼付した上部電極の概略断面図を図4に示す。図4において、41は電極を示し、42はPETテープを示す。
また別途に上記装置に接続した電極(たて:25mm、よこ:25mm)を用意し、下部電極とした。なお、下部電極は表面が平らである。
次に、実施例及び比較例で得られた発泡体を所定の大きさ(たて:25mm、よこ:25mm、厚さ:1mmのシート状)に加工し、加工後の発泡体を、導電性を有するアクリル系両面粘着テープ(商品名「導電性銅箔両面テープ No.792」、株式会社寺岡製作所製、粘着剤:アクリル系導電性粘着剤、テープ厚さ:0.09mm、電気抵抗:0.02Ω/cm2)を介して、下部電極に固定した。固定後、発泡体上に、上部電極を段差の面が発泡体に接するように静置した。
次に、電磁力式微小試験機(装置名「MMT−250」、株式会社島津製作所製)により、発泡体を上部から圧縮しながら、体積抵抗率を測定した。
そして、発泡体の厚さ方向に5%圧縮した際(圧縮率5%)の体積抵抗率を圧縮抵抗率とした。
【0128】
実施例1〜5は5%という低い圧縮率であっても段差部に追従し、低い体積抵抗率を示した。しかし、比較例3では圧縮率が5%では段差部に追従できず、体積抵抗率を測定することができなかった。
【表1】

【0129】
なお、比較例2では、発泡体を得ることはできなかった。
【符号の説明】
【0130】
1 クリアランス追従性評価治具
11a 厚さ10mmのアクリル板
11b 厚さ20mmのアクリル板
12 厚さ0.1mmのスペーサー
13 発泡体
a 荷重
2a 防塵性評価試験装置の概略構成
2b 防塵性評価試験装置の断面の概略構成
21 天井板
22 スペーサー
23 両面テープ
24 発泡体
25 評価用箱体
26a 貫通孔
26b 貫通孔
26c 貫通孔
27 開口部
28 空間部
41 電極
42 PETテープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体積抵抗率が1010Ω・cm以下で、且つ50%圧縮時の対反発荷重が5N/cm2以下であることを特徴とする樹脂発泡体。
【請求項2】
樹脂発泡体の表面抵抗率が、1010Ω/□以下である請求項1記載の樹脂発泡体。
【請求項3】
樹脂発泡体の発泡倍率が、9倍以上である請求項1又は2に記載の樹脂発泡体。
【請求項4】
樹脂発泡体の見掛け密度が、0.01〜0.15g/cm3である請求項1〜3の何れかの項に記載の樹脂発泡体。
【請求項5】
樹脂発泡体の平均セル径が、10〜250μmである請求項1〜4の何れかの項に記載の樹脂発泡体。
【請求項6】
樹脂及び導電性物質を含む樹脂組成物から形成される請求項1〜5の何れかの項に記載の樹脂発泡体。
【請求項7】
導電性物質が、カーボン系フィラーである請求項6記載の樹脂発泡体。
【請求項8】
樹脂が、熱可塑性樹脂である請求項1〜7の何れかの項に記載の樹脂発泡体。
【請求項9】
熱可塑性樹脂及びカーボン系フィラーを含み、カーボン系フィラーのBET比表面積が500m2/g以上であり、カーボン系フィラーの添加量が熱可塑性樹脂100重量部に対して3〜20重量部であり、平均セル径が10〜250μmであり、見掛け密度が0.01〜0.15g/cm3である請求項1〜8の何れかの項に記載の樹脂発泡体。
【請求項10】
樹脂発泡体において、独立気泡構造又は半連続半独立気泡構造を有している請求項1〜9の何れかの項に記載の樹脂発泡体。
【請求項11】
樹脂及び導電性物質を含む樹脂組成物に高圧の不活性ガスを含浸させた後、減圧する工程を経て形成される請求項1〜10の何れかの項に記載の樹脂発泡体。
【請求項12】
熱可塑性樹脂及びカーボン系フィラーを含み、カーボン系フィラーのBET比表面積が500m2/g以上であり、カーボン系フィラーの添加量が熱可塑性樹脂100重量部に対して3〜20重量部である樹脂組成物に、高圧の不活性ガスを含浸させた後、減圧する工程を経て形成される請求項1〜10の何れかの項に記載の樹脂発泡体。
【請求項13】
不活性ガスが、二酸化炭素である請求項11又は12に記載の樹脂発泡体。
【請求項14】
不活性ガスが、超臨界状態である請求項11〜13の何れかの項に記載の樹脂発泡体。
【請求項15】
請求項1〜14の何れかの項に記載の樹脂発泡体の片面又は両面に、粘着層を有している導電性発泡部材。
【請求項16】
粘着層が、フィルム層を介して、発泡体上に形成されている請求項15記載の導電性発泡部材。
【請求項17】
粘着層が、アクリル系粘着剤により形成されている請求項15又は16記載の導電性発泡部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−229398(P2010−229398A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−41021(P2010−41021)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】