説明

導電性インキ、導電回路および非接触型メディア

【課題】導電回路などの回路パターンの形成に適しており、精細な印刷の可能な導電物質および活性エネルギー線重合性化合物を含む導電性インキの提供。
【解決手段】導電物質およびバインダー成分を含有する導電性インキにおいて、バインダー成分として、アシッドホスホオキシエチルメタクリレート、アシッドホスホオキシプロピルメタクリレート、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノメタクリレート、アシッドホスホオキシポリプロピレングリコールモノメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートの6−ヘキサノリド付加重合物と無水リン酸との反応生成物、2−ヒドロキシエチルメタクリレートと無水リン酸との反応生成物などのリン酸エステル化合物および活性エネルギー線重合性化合物を含むことを特徴とする活性エネルギー線硬化型導電性インキ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型導電性インキ、それを用いて基材上に印刷または塗工して形成される印刷物に関し、さらに活性エネルギー線硬化型導電性インキを用いた導電回路および導電回路に導通された状態で実装されたICモジュールとを具備する非接触型メディアに関する。さらに、詳しくは、耐熱性が乏しい基材に対しても導電回路の形成が可能で、かつ硬化が瞬時に終了するため、導電回路の量産性が良好な活性エネルギー線硬化型導電性性インキに関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品あるいは電磁波シールド用の薄膜形成あるいは導電回路のパターニングは、一般的に、熱硬化型、熱可塑型の導電性インキなどによる回路あるいは回路パターンを印刷し、熱処理による乾燥する方法、または銅張り基材からのエッチング法が知られている。
【0003】
エッチング法は一般的に、絶縁性樹脂に銅箔やアルミニウム箔を貼着した基板から、エッチングにより銅箔またはアルミニウム箔を所望の回路パターンに形成している。しかし、エッチング法は工程、生産性に限界があり、大量生産には向いていない。更に、廃液処理等の問題もあって環境面からも好ましくない。
【0004】
導電性インキは、電子部品の小型軽量化あるいは生産性の向上、低コスト化が期待でき、また基材に印刷あるいは塗工し、乾燥、硬化させることによって容易に導電性を付与できる。この乾燥、硬化工程では、基材や電子部品に高温を加えることなく、低温にて行うことが出来ることから、近年急速に需要が高まっている。
【0005】
熱硬化型の導電性インキは、バインダー成分として熱硬化性樹脂および/またはガラスフリットなどの無機物質を用いているため、基材に塗布または印刷後に高温で過熱する必要がある。加熱による硬化には、多大なエネルギー、時間、装置設置のための床の面積を必要とし、不経済であるばかりでなく、次に示すような大きな制約がある。
【0006】
すなわち、ガラスフリット等の無機物質をバインダーとする導電性インキは、通常800℃以上での焼成を必要とするため、合成樹脂系の基材には適用できない。一方、熱硬化性樹脂をバインダーとする導電性インキは、合成樹脂系の基材に対して適用可能であるが、導電性インキを硬化させる際の過熱によって基材が変形し、得られたプリント配線回路を用いた後工程の部品搭載に支障を来たすなどの大きな障害があった。
【0007】
また、熱可塑型の導電性インキを使用した導電回路なども、パーソナルコンピューターのキーボード等に多用されているが、ポリエチレンテレフタレート等の基材が導電性インキの乾燥工程で収縮するため、その対策として、アニーリング等の基材の前処理が必要であった。更に、乾燥には30〜60分の時間が必要で、かつ得られる導電回路は耐溶剤性がないなどの欠点があった。
【0008】
また、紫外線や電子線等により重合する活性エネルギー線硬化型組成物は、揮発性有機溶剤を含まないか、含んでいても僅かであり、かつ瞬時に硬化可能であるためエネルギー消費が少なく、環境保全の観点から多くの検討が盛んに行われている。
【0009】
そこで、近年金属元素もしくは金属元素化合物分散体を基材等の支持体に塗布して導電性もしくは半導電性を付与して回路を形成する方法が試みられており、特開2003−140330号公報には分散体にラジカル発生剤を添加し分散体を除去することで導電性を発現させることを特徴とする手法が知られている。また、特開2002−72468号公報、特開2003−110225号公報には導電性ペーストに活性エネルギー線にて硬化する化合物をバインダー成分として用いた導電性インキの例が挙げられている。
【0010】
しかしながら、前者(特開2003−110225号公報)は10−6Ω・cmの体積固有抵抗値を有する結果が得られ、導電性は高く、使用範囲は広いが、ラジカル発生剤と紫外線によりラジカルを発生させた後に250℃で30分以上の加熱を必要としており、この熱により金属が焼結し導電性が発現されたことは明らかであり、良好な導電性を発現するには250℃以上の加熱が必要となる。この加熱過程は他の電子部品や基材にダメージを与えるために好ましくない。
【0011】
また、後者(特開2002−72468号公報、特開2003−110225号公報)は、バインダー成分に活性エネルギー線重合性化合物を使用しているが、これら活性エネルギー線重合性化合物は一般的に導電物質との濡れが悪く、また硬化後の導電回路を低抵抗値とするためにインキ中の導電物質を配合比率(重量比)が65%以上にしたとき、バインダー成分が少ないため、一般的に流動性がなく、またチキソトロピーとなってしまうために導電回路などの回路パターンを形成する際、印刷、塗工適性が非常に悪い。また、特開平6−204512広報には銀とリン及び/またはリン化合物を含有し、半導体基材との密着が良好な導電ペーストが開示されている。しかし、この導電ペーストはスクリーン印刷で塗工後、700℃の高温で基材に焼き付けを行っており、本発明の活性エネルギー線硬化型導電性インキとは硬化方法が異なる。
【特許文献1】特開2002−72468号公報
【特許文献2】特開平6−204512号広報
【特許文献3】特開2003−110225号公報
【特許文献4】特開2003−140330号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
導電物質および活性エネルギー線重合性化合物を含み、活性エネルギー線によって硬化する導電性インキにおいて、活性エネルギー線重合性化合物は一般的に導電物質との濡れが悪く、また硬化後の導電回路を低抵抗値とするためにインキ中の導電物質を配合比率(重量比)が65%以上にしたとき、バインダー成分が少ないため、一般的に流動性がなく、またチキソトロピーとなってしまうために印刷、塗工適性が非常に悪い。
【0013】
そこで、本発明は、導電物質および活性エネルギー線重合性化合物を含み、活性エネルギー線によって硬化する導電性インキにおいて、流動性に優れており、そのため印刷適性が良好である活性エネルギー線硬化型導電インキの提供をすることを目的とする。また、本発明は、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、インクジェット、凸版印刷、凹版印刷、静電印刷等の通常の印刷方式により形成される導電回路を具備し、大量生産性、コストダウン、省エネルギー化に寄与する新しい活性エネルギー線硬化型導電インキ、それを用いた印刷物および非接触方メディアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、導電物質および活性エネルギー線重合性化合物を含む、活性エネルギー線によって硬化する導電性インキにおいて、リン酸エステル化合物を添加することによって、流動性が向上し、導電回路などの回路パターンを形成する際、印刷適性が非常に良好となる。
【0015】
本発明におけるバインダー成分とは、活性エネルギー線重合性化合物、非重合性のバインダーポリマー、光重合開始剤、可塑剤、滑剤、分散剤、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤、硫化防止剤などの添加剤で、導電インキ中に含まれる導電物質、揮発性有機溶剤以外の物質をいう。
【0016】
本発明方法の好ましい態様は、導電物質およびバインダー成分を含有する導電性インキにおいて、バインダー成分として、リン酸エステル化合物および活性エネルギー線重合性化合物を含むことを特徴とする活性エネルギー線硬化型導電性インキである。
【0017】
また本発明の別の好ましい態様は、リン酸エステル化合物がバインダー成分中の配合比率(重量比)中として0.01〜30%含有することを特徴とする請求項1記載の活性エネルギー線硬化型導電性インキである。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、導電物質および活性エネルギー線重合性化合物を含む、活性エネルギー線によって硬化する導電性インキにおいて、リン酸エステル化合物を添加することによって、流動性が向上し、導電回路などの回路パターンを形成する際、印刷適性が非常に良好となり、精細な印刷が可能となる。また本発明の導電性インキは流動性が優れているため、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、インクジェット、凸版印刷、凹版印刷、静電印刷等の通常の印刷方式による、導電回路の大量生産が可能となる。これらの印刷法より形成される導電回路は、エッチング法のようなアルミニウムや銅など金属のみで形成されたものと比べて、折り曲げ等の物理的衝撃に対しても安定しており、信頼性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明について、実施の形態に基づいて更に詳しく説明をするが、本発明の技術的思想を逸脱しない限り、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではない。
【0020】
本発明の導電インキは、導電物質およびバインダー成分を含有しており、バインダー成分として、リン酸エステル化合物および活性エネルギー線重合性化合物を含むことを特徴とする活性エネルギー線硬化型導電性インキである。導電性インキに、リン酸エステル化合物を添加することによって、流動性が向上し、導電回路などの回路パターンを形成する際、印刷適性が非常に良好となり、精細な印刷が可能となる。
【0021】
また、リン酸エステル化合物は、バインダー成分中の配合比率(重量比)中に好ましくは0.01〜30%であり、より好ましくは0.01〜10%である。導電性インキにリン酸エステル化合物を添加することによって、リン酸エステル化合物が導電物質に分散剤的な役割をすることによって流動性が向上すると考えられるが、バインダー成分中の配合比率(重量比)が0.01%未満では分散性がほとんどなく、30%を超えるとインキ物性がダイラタンシーとなってしまい、印刷適性は非常に悪くなる。
【0022】
本発明の導電性インキにおいて、導電物質は例えば、金、銀、銅、銀メッキ銅粉、銀−銅複合粉、銀−銅合金、アモルファス銅、ニッケル、クロム、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、インジウム、ケイ素、アルミニウム、タングステン、モリブデン、白金などの金属粉、これらの金属で被覆した無機物粉末、酸化銀、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ、酸化ルテニウム、インジウム−スズ複合酸化物等の金属酸化物、およびカーボンブラック、グラファイト等を用いることができる。これらの導電性物質は、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、導電性、酸化による抵抗値の上昇、コストの点から銀が好ましい。
【0023】
また、銀の形状は、アスペクト比が3以上のフレーク銀であり、平均粒径0.1〜30μmであることが好ましい。銀のアスペクト比が3を下回ると、銀の比表面積が小さくなることから、銀同士の接触点が少なくなり、印刷によって形成された導電回路の抵抗値は高くなってしまう。また、平均粒径が0.1μm未満の銀を使用すると、銀の比表面積が大きくなることから、銀同士の相互作用が強くなり、導電性インキの流動性がなくなり、またチキソトロピーとなってしまい、印刷、塗工適性が非常に悪くなってしまう。また平均粒径が30μmを超えると、比表面積が小さくなり、銀同士の接触点が少ないため、印刷によって形成された導電回路の抵抗値は高くなってしまう。
【0024】
導電インキにおいて、導電物質とバインダー成分との配合比率(重量比)が60:40〜95:5の範囲であることが好ましく、より好ましくは70:30〜95:5である。導電物質が上記範囲より少ない場合は、導電物質の量が少ないため、導電物質同士の接触が少なくなってしまい、抵抗値は高くなってしまう。また導電物質が95%を超える場合、バインダー成分が少ないため、流動性が悪くなり、印刷適性も低下してしまう。
【0025】
リン酸エステル化合物としては、化2で表される化合物が使用できる。
【化2】

【0026】
R、R’、R’’の例を下記に示す。
【化3】

【化4】

【化5】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【化20】


これらのリン酸エステル化合物は、2種類以上を組み合わせても良い。
【0027】
上記リン酸エステルの中でも、アシッドホスホオキシエチルメタクリレート、アシッドホスホオキシプロピルメタクリレート、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノメタクリレート、アシッドホスホオキシポリプロピレングリコールモノメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートの6−ヘキサノリド付加重合物と無水リン酸との反応生成物、2−ヒドロキシエチルメタクリレートと無水リン酸との反応生成物が特に好ましい。
【0028】
また、本発明の導電性インキには、粘度を調整する目的で揮発性有機溶剤を添加することができる。揮発性有機溶剤としては、例えばケトン類、芳香族類、アルコール類、セロソルブ類、エーテルアルコール類、エステル、脂肪族系溶剤類などを使用できる。これらの溶剤は、2種類以上を組み合わせても良い。
【0029】
ケトン類としてはアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、3−ペンタノン、2−ヘプタノン、ジイソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン等が挙げられ、芳香族類としてはベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、クロロベンゼン等が挙げられる。
【0030】
アルコール類としてはメタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノール、ノルマルブタノール、イソブタノール、ネオペンチルブタノール、ヘキサノール、オクタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、べンジルアルコール等が挙げられる。セロソルブ類としてはメチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ヘキシルセロソルブ等が挙げられる。
エーテルアルコール類では、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−プロピルエーテル等が挙げられる。
【0031】
エステル類としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、ノルマルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート等が挙げられる。
【0032】
脂肪族系溶剤としては、n−ヘプタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンが挙げられる。
【0033】
また、本発明の導電性ペーストには、粘度、造膜性、硬化皮膜の物性等を調整するために非重合性のバインダーポリマーを含有させても良い。バインダーポリマーとしては、重合度10〜10000、あるいは数平均分子量が103〜106のバインダーポリマーが好ましい。バインダーポリマーとして、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ブチラール樹脂、アセタール樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、スチレン樹脂、ニトロセルロース、ベンジルセルロース、スチレン−無水マレイン酸樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、マレイン酸樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ケトン樹脂、ロジン、ロジンエステル、塩素化ポリオレフィン樹脂、変性塩素化ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリウレタン樹脂等から選ばれる1種または2種以上を、印刷方法の種類及び使用基材の種類や、非接触メディアの用途に応じて使用することができる。
【0034】
バインダー成分のうち活性エネルギー線重合性化合物として使用されるオリゴマーとしては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、不飽和ポリエステル、ビニル/アクリルオリゴマー、マレイミド化合物等が挙げられる。
【0035】
また、バインダー成分のうち活性エネルギー線重合性化合物として使用されるモノマーとしては、エチレン性不飽和二重結合を持つ(メタ)アクリルモノマーまたはアクリルオリゴマーがある。エチレン性不飽和二重結合を有する(メタ)アクリルモノマーモノマーとしては、1官能モノマーとしてアルキル(カーボン数が1〜18)(メタ)アクリレート、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートがあり、さらにベンジル(メタ)アクリレート、ブチルフェノール、オクチルフェノールまたはノニルフェノールまたはドデシルフェノールのようなアルキルフェノールエチレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンモノメチロール(メタ)アクリレート等が例示される。
【0036】
さらに2官能モノマーとしてエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートジ(メタ)アクリレート(通称マンダ)、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートジカプロラクトネートジ(メタ)アクリレート、1,6ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジカプロラクトネートジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート等が例示される。
【0037】
さらに3官能モノマーとしてグリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリカプロラクトネートトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールヘキサントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールオクタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が例示される。
【0038】
さらに4官能以上のモノマーとしてペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラカプロラクトネートテトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラカプロラクトネート、テトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールエタンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールブタンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールオクタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、リペンタエリスリトールポリアルキレンオキサイドヘプタ(メタ)アクリレート等が例示される。
【0039】
本発明は、導電性インキを用いて基材上に導電回路を印刷し、活性エネルギー線を照射することによって、導電回路を形成させることができる。活性エネルギー線は、導電性インキを印刷後に硬化させるためのエネルギー線であり、例えば、紫外線、電子線、γ線、赤外線、可視光線などが挙げられるが、本発明においては、紫外線が好適である。
【0040】
紫外線による硬化の場合には、導電性インキに光重合性開始剤を添加するのが一般的である。すなわち、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、α−アクリルベンゾイン等のベンゾイン系、2、2−ジメトキシ−1、2−ジフェニルエタン−1−オン(イルガキュア651:チバ・スペシャリティケミカルズ社製)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(イルガキュア184、:チバ・スペシャリティケミカルズ社製)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(ダロキュア1173::チバ・スペシャリティケミカルズ社製)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(イルガキュア2959:チバ・スペシャリティケミカルズ社製)、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(イルガキュア907:チバ・スペシャリティケミカルズ社製)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(イルガキュア369:チバ・スペシャリティケミカルズ社製)、ビス(2、4、6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(イルガキュア819:チバ・スペシャリティケミカルズ社製)、2、4、6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(ダロキュアTPO:チバ・スペシャリティケミカルズ社製)、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(イルガキュア127:チバ・スペシャリティケミカルズ社製)、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン(イルガキュア379:チバ・スペシャリティケミカルズ社製)、2、4−ジエチルチオキサントン(カヤキュアーDETX-S:日本化薬社製)、2−クロロチオキサントン(カヤキュアーCTX:日本化薬社製)、ベンゾフェノン(カヤキュアーBP−100:日本化薬社製)、[4−(メチルフェニルチオ)フェニル]フェニルメタン(カヤキュアーBMS:日本化薬社製)、エチルアントラキノン(カヤキュアー2−EAQ:日本化薬社製)、エサキュアーKIP100(シイベルヘグナー社製)、ジエトキシアセトフェノン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド(BAPO1:チバスペシャルティケミカルズ社製)、BTTB(日本油脂(株)製)等が例示される。
【0041】
印刷方式は、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、インクジェット、凸版印刷、凹版印刷、静電印刷等の通常の印刷方式で行うことができる。これらの印刷法より形成される導電回路は、エッチング法のようなアルミニウムや銅など金属のみで形成されたものと比べて、折り曲げ等の物理的衝撃に対しても安定しており、信頼性に優れている。
【0042】
紙基材としては、コート紙、非コート紙、その他、合成紙、ポリエチレンコート紙、含浸紙、耐水加工紙、絶縁加工紙、伸縮加工紙等の各種加工紙が使用できるが、非接触メディアとして安定した抵抗値を得るためには、コート紙、加工紙が好ましい。コート紙の場合は、平滑度の高いものほど好ましい。
また、プラスチック基材としては、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロハン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリスチレン、ビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール、ナイロン、ポリイミド、ポリカーボネート等の通常のタグ、カードとして使用されるプラスチックからなる基材を使用することができる。
【0043】
導電回路を印刷、形成する前の行程において、基材との密着性を高める目的で、基材にアンカーコート剤や各種ワニスを塗工してもよい。また、導電回路印刷後に回路の保護を目的としてオーバープリントワニス、各種コーティング剤等を塗工してもよい。これらの各種ワニス、コーティング剤としては、通常の熱乾燥型、活性エネルギー線硬化型のいずれも使用できる。また、導電回路上に接着剤を塗布し、そのまま絵柄等を印刷した紙基材やプラスチックフィルムを接着、または、プラスチックの溶融押出し等によりラミネートして非接触メディアを得ることもできる。勿論、あらかじめ粘着剤、接着剤が塗布された基材を使用することもできる。
【0044】
上記の方法で製造された導体回路は、基材上にICモジュールと共に積載され、非接触IDが得られる。基材は導体回路およびICチップを保持するものであり、導体回路の基材と同様な紙、フィルムなどを用いることができる。また、ICチップは、データの記憶、蓄積、演算をおこなうものである。非接触IDは、RFID(Radio Frequnecy Identification)、非接触ICカード、非接触ICタグ、データキャリア(記録媒体)、ワイヤレスカードとして、リーダー、あるいはリーダーライターとの間で、電波を使用して個体の識別やデータの送受信を行うものである。その使用用途としては、料金徴収システム等のID管理と履歴管理、道路利用状況管理システムや貨物、荷物追跡・管理システム等の位置管理がある。
【0045】
次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。尚、実施例中の「部」は重量部を表す。
【0046】
<実施例1>
活性エネルギー線重合性化合物(エポキシアクリレート Ebecryl3700 以下EB3700と略す。:ダイセル・サイテック社製 )15部、アシッドホスホオキシエチルメタクリレート(ホスマーM:ユニケミカル社製)1部、光重合性開始剤(イルガキュア907:チバ・スペシャリティケミカル社製)1.5部、溶剤(ジプロピレングリコールモノメチルエーテル 以下 DPMと略す。:ダイセル・サイテック社製)7部を混合し、ディソルバーで完全に溶解するまで撹拌し、バインダー成分1を調整した。
次に、このバインダー成分1に導電物質として、銀粉末(AA0981:メタロー社製)100部を加え、ディソルバーで15分撹拌して、活性エネルギー線硬化型導電性インキ1を得た。
【0047】
<実施例2>
実施例1のアシッドホスホオキシエチルメタクリレートをアシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノメタクリレート(ホスマーPE:ユニケミカル社製)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、活性エネルギー線硬化型導電性インキ2を得た。
【0048】
<実施例3>
実施例1のアシッドホスホオキシエチルメタクリレートをアシッドホスホオキシポリプロピレングリコールモノメタクリレート(ホスマーPP:ユニケミカル社製)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、活性エネルギー線硬化型導電性インキ3を得た。
【0049】
<実施例4>
実施例1のアシッドホスホオキシエチルメタクリレートを2−ヒドロキシエチルメタクリレートと無水リン酸との反応生成物(カヤマーPM−2:日本化薬株式会社製)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、活性エネルギー線硬化型導電性インキ4を得た。
【0050】
<実施例5>
実施例1のアシッドホスホオキシエチルメタクリレートを2−ヒドロキシエチルメタクリレートの6−ヘキサノリド付加重合物と無水リン酸との反応生成物(カヤマーPM−21:日本化薬株式会社製)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、活性エネルギー線硬化型導電性インキ5を得た。
【0051】
<実施例6>
実施例1のアシッドホスホオキシエチルメタクリレートをリン酸(和光純薬社製)0.3部に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、活性エネルギー線硬化型導電性インキ6を得た。
【0052】
<実施例7>
実施例1のアシッドホスホオキシエチルメタクリレートをトリス(2−エチルヘキシル)フォスフェート(TOP:大八化学社製)0.5部に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、活性エネルギー線硬化型導電性インキ7を得た。
【0053】
<実施例8>
実施例1のアシッドホスホオキシエチルメタクリレートをビス(2−エチルヘキシル)フォスフェート(DP−8R大八化学社製)0.5部に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、活性エネルギー線硬化型導電性インキ8を得た。
【0054】
<比較例1>
実施例1のアシッドホスホオキシエチルメタクリレートを含まない以外は、実施例1と同様の方法で、活性エネルギー線硬化型導電性インキ9を得た。
【0055】
(1)インキ流動性評価
調整した活性エネルギー線硬化型導電性インキをブルックフィールド型粘度計RE80H(東機産業株式会社製)を用いて、25℃環境下でローター回転数が2、5および20回転時の粘度を測定した。本明細書における粘度およびチキソトロピーインデックス値(TI値)の値を以下に定義した。
粘度 : 5回転時の粘度
TI値 = (2回転時の粘度)/(20回転時の粘度)
(2)印刷適性評価
CI型6色フレキソ印刷機 SOLOFLEX(Windmoeller & Hoelscher KG社製)の第2ユニットに導体パターンを有するフレキソ版(DSF版)を装着し、165線のアニロックスロール(セル容量25.6cc/m)を用いてアート紙(三菱製紙社製片面アート、66μm)上に10〜70m/minの速度でインキ1〜9を順次印刷し、印刷物を目視評価した。
【0056】
【表1】

【0057】
表1に示すように、実施例1〜8に関してはTI値が2.0以下であり、流動性に優れており、印刷適性も良好であった。比較例においては、TI値が3.0以上でチキソトロピーとなる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明により、活性エネルギー線硬化型導電性インキの流動性は向上し、導電回路などの回路パターンを形成する際、印刷適性が非常に良好となり、精細な印刷が可能となる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電物質およびバインダー成分を含有する導電性インキにおいて、バインダー成分として、化1で表されるリン酸エステル化合物および活性エネルギー線重合性化合物を含むことを特徴とする活性エネルギー線硬化型導電性インキ。
【化1】

【請求項2】
リン酸エステル化合物がバインダー成分中の配合比率(重量比)として0.01〜30%含有することを特徴とする請求項1記載の活性エネルギー線硬化型導電性インキ。
【請求項3】
導電物質が銀であることを特徴とする請求項1または2記載の活性エネルギー線硬化型導電性インキ。
【請求項4】
銀の形状がアスペクト比3以上のフレーク銀であり、平均粒径が0.1〜30μmであることを特徴とする請求項1ないし3何れか記載の活性エネルギー線硬化型導電性インキ。
【請求項5】
導電物質とバインダー成分との配合比率(重量比)が60:40〜95:5の範囲であることを特徴とする請求項1ないし4何れか記載の活性エネルギー線硬化型導電性インキ。
【請求項6】
リン酸エステル化合物として、アシッドホスホオキシエチルメタクリレート、アシッドホスホオキシプロピルメタクリレート、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノメタクリレート、アシッドホスホオキシポリプロピレングリコールモノメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートの6−ヘキサノリド付加重合物と無水リン酸との反応生成物、2−ヒドロキシエチルメタクリレートと無水リン酸との反応生成物を使用することを特徴とする請求項1ないし5何れか記載の活性エネルギー線硬化型導電性インキ。
【請求項7】
基材上に、請求項1ないし6何れか記載の活性エネルギー線硬化型導電性インキを用いて導電回路を印刷し、活性エネルギー線を照射することによって、導電回路を形成させることを特徴とする導電回路の製造方法。
【請求項8】
請求項7記載の印刷方法が、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、インクジェット、凸版印刷、凹版印刷、静電印刷であることを特徴とする導電回路の製造方法。
【請求項9】
基材上に、請求項7または8記載の導電回路及びICチップを積載した非接触型メディア。



【公開番号】特開2007−169462(P2007−169462A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−369207(P2005−369207)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】