説明

導電性ゴムローラ及び転写ローラ

【課題】転写ローラ等に有用な、低硬度かつ、異常発泡セルが極少であり、ローラ外周面にわたり電気抵抗値が均一な導電性ゴムローラを提供する。
【解決手段】発泡ゴム層が、アスカーC硬度で15度以上40度以下であって、少なくとも、ゴム成分、化学発泡剤及びカーボンブラックを含む発泡ゴム層原料を発泡加硫して形成されたものであり、該ゴム成分が極性ゴムであり、該カーボンブラックが低グリットカーボンブラックである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真複写装置、プリンター、静電記録装置等の画像形成装置において使用される導電性ゴムローラ及び転写ローラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真複写装置、プリンター、静電記録装置等の画像形成装置においては、像担持体である感光体面を帯電処理するのに、電圧を印加した帯電部材を該感光体に近接又は接触させて帯電する接触帯電方式が用いられている。このような帯電部材としては、導電性軸体の外周上に導電性の弾性層を有する導電性ゴムローラ(帯電ローラ)があり、その弾性層は所定の抵抗値に制御されていることが必要とされている。なお、その他にも、感光体に形成された静電荷像を現像剤で現像するのに用いられる現像部材やさらに現像剤で現像されたトナー像を紙等の記録媒体に転写するのに用いられる転写部材にも導電性ゴムローラが使用されている。
【0003】
このような弾性層に求められる体積固有抵抗は2×109Ω・cm以下の場合が多い。弾性層用の材料としては、一般に、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)等の非導電性のゴム成分に導電性充填剤を配合した電子導電性のゴム組成物が用いられている。また、ゴム成分としてアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エピクロルヒドリン系ゴム等の、自身がイオン導電性である極性ゴムを用いることも知られている。
【0004】
なお、このようなゴム組成物では、加硫剤として硫黄が用いられることが多く、また、各種加硫促進剤、酸化亜鉛やステアリン酸等の加硫助剤、及び、導電性付与や力学的特性向上のためにカーボンブラックを配合することが一般的である。
【0005】
ところで、上記のような導電性ローラは感光体との密着性を高めるため、弾性層は適度に低硬度であることが望まれている。ローラが硬い(ローラ硬度が高い)場合、感光体等とのニップ幅が小さくなり、例えば、転写ローラでは、転写率の低下、感光体の表面の摩耗や損傷による画像の欠陥等を生じやすい。また硬度が低すぎる場合と、柔らかすぎて圧縮永久歪が大きくなり耐久性が劣る他、搬送力が強くなりすぎ画像に欠陥を生じやすい。
【0006】
導電性ローラの低硬度化の方法としては、弾性層原料に軟化剤や可塑剤等の各種添加剤を加える方法がある。しかし、軟化剤、可塑剤等を添加した導電性ローラでは、感光体と接触使用させると、弾性層から低分子量の各種添加剤がブリードアウトし、感光体表面に付着し、感光体汚染、ひいては画像劣化を起こすという問題が生じ易い。そのため、導電性ローラの低硬度化は、一般的に、化学発泡法にて発泡弾性ゴムローラとすることで行われている。
【0007】
なお、化学発泡法とは、ゴム成分に化学発泡剤を配合し、加熱発泡させる方法である。そして、最も一般的な化学発泡剤は有機発泡剤である。有機発泡剤とは、熱の影響で化学的に分解し、ガスを放出する物質である。この方法では一定の温度範囲で速やかにガスが発生し、放出されるため、比較的大きい気泡が形成され、低硬度でかつ弾性に優れた導電性ゴムローラを得ることが可能となる。
【0008】
しかしながら、化学発泡剤を用いて発泡ゴムを得る場合、ゴム組成物中で分散不良を起こした配合物が存在すると、発泡状態が影響を受け、異常発泡を起こす箇所が発生しがちである。その結果、異常発泡した箇所では電気抵抗が高くなり、電気抵抗にバラツキが生じる。そのような導電性弾性層を有する導電性ゴムローラを用いると、形成される画像に乱れが生じる問題がある。
【0009】
そこで、このような問題を解決する方法として、特定の粒径、粒度分布の化学発泡剤を用いることが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0010】
また、加硫剤や加硫促進剤を凝集物の少ないマスターバッチの形態で配合した発泡導電性ゴムローラも提案されている(例えば、特許文献2)。
【0011】
これら特許文献1、2では、発泡剤や加硫剤、加硫促進剤の凝集物に起因する異常発泡を抑制する上で十分な効果があるが、現在の導電性ローラで必須成分であるカーボンブラックに起因する異常発泡に関しては十分なものではなく、更なる改良が求められている。
【特許文献1】特許第3602398号公報
【特許文献2】特開2005−300666号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の目的は、電子写真複写装置、プリンター、静電記録装置等の画像形成装置において使用される導電性ローラにおいて、低硬度であり、異常発泡セルが低減した、ローラ外周面の電気抵抗値が均一な導電性ローラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、極性ゴム及び化学発泡剤を用い、それに配するカーボンブラックが特定である時、上記課題が達成できることを見出し、さらに検討して、本発明に至った。
【0014】
すなわち、本発明は、導電性軸体上に発泡ゴム層が形成されている導電性ゴムローラであって、該発泡ゴム層が、硬度(アスカーC)が15度以上40度以下であり、少なくとも、ゴム成分、化学発泡剤及びカーボンブラックを含むゴム原料組成物を発泡加硫して形成されたものであり、該ゴム成分が極性ゴムであり、かつ、該カーボンブラックが低グリットカーボンブラックであることを特徴とする導電性ゴムローラである。
【0015】
また、本発明は、前記カーボンブラックが、目開き150μmでのふるい残分(JIS K6218−3に準拠する)0.001%以下であることを特徴とする上記導電性ゴムローラである。
【0016】
さらに、本発明は、前記カーボンブラックが、よう素吸着量(JIS K6217−1に準拠する)25mg/g以下、かつ、ジブチルフタレート(DBP)吸収量(JIS K6217−4に準拠する)70ml/100g以下であることを特徴とする上記導電性ゴムローラである。
【0017】
そして、本発明は、前記カーボンブラックの配合量が、ゴム成分100質量部に対し、10質量部以上60質量部以下であるとことを特徴とする上記導電性ゴムローラである。
【0018】
そして、また、本発明は、前記極性ゴムがアクリロニトリルブタジエンゴム及びエピクロルヒドリン系ゴムの少なくとも一方であることを特徴とする上記導電性ゴムローラである。
【0019】
また、本発明は、前記化学発泡剤が、アゾジカルボンアミド又は4、4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)であることを特徴とする上記導電性ゴムローラである。
【0020】
さらに、本発明は、電子写真感光体上の静電荷像を現像剤により現像する画像形成装置において、電子写真感光体に相対して配置される転写ローラが、上記導電性ゴムローラであることを特徴とする転写ローラである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の導電性ゴムローラは、低硬度かつ、異常発泡セルが極めて少なく、ローラ外周面の電気抵抗値が均一である。そのため、本発明の導電性ゴムローラは、電子写真感光体周りの各種導電性ゴムローラ、特に感光体表面に形成担持されたトナー像を紙等の記録媒体や転写材に転写させる転写装置の転写ローラとして好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の導電性ゴムローラについて詳述する。
【0023】
本発明の導電性ゴムローラは、少なくとも表面が導電性である導電性軸体上に同心状に導電性の発泡ゴム層(弾性層)が設けられたものである。その様子を図1に断面図として示す。図において、1は導電性軸であり、2が発泡ゴム層(弾性層)である。なお、導電性軸体1と発泡ゴム層2の間には接着剤層や導電性を調整する機能層が設けられていてもよい。
【0024】
導電性軸体1としては、少なくとも表面が導電性であれば、通常のローラにおいて使用するものが支障なく使用できる。例えば、鉄、銅、青銅、ステンレス、鋳鉄、黄銅、アルミニウム等の棒、パイプが使用可能であり、表面をニッケル等でメッキしておくこともできる。また、カーボンブラック、金属粉、カーボン繊維、金属繊維、金属酸化物、樹脂或いは無機粉末の表面を金属化したもの等の導電性フィラーを含む樹脂組成物からなる棒、パイプ、さらに、樹脂の棒、パイプの表面を金属メッキ等で導電化したものも使用可能である。なお、導電性軸体1の外径としては、使用目的により、また、必要な強度により異なり、適宜決定すればよい。例えば、導電性ゴムローラが1次転写ローラ用で、材料が鉄の表面にニッケルメッキをしたものでは、外径が2mm以上12mm以下、好ましくは4mm以上8mm以下である。
【0025】
本発明の導電性ゴムローラの発泡ゴム層は、硬度(アスカーC)が15度以上40度以下、好ましくは20度以上35度以下である。なお、発泡ゴム層の硬度が15度未満の場合、圧縮永久ひずみが大きくなり耐久性が劣るほか、搬送力が強すぎて画像不良を生じる。また、硬度が40度より大きい場合、感光体等とのニップ幅が小さくなりすぎて、例えば、転写ローラでは、転写率が低下したり、感光体の表面の摩耗や損傷により画像の欠陥を生じたりすることがある。
【0026】
また、本発明に用いるゴム成分は極性ゴムである。極性ゴムは、分子内に極性基が存在するためイオン導電性を有し、電気抵抗のばらつきや電気抵抗の電圧依存性が小さく、導電性ゴムローラに適している。これに対し、EPDM、SBR、IR等の非極性ゴムは、イオン導電性を有さないため、導電性充填剤などを所定量配合し、導電性ゴムローラの弾性層に求められる抵抗値に調整する必要がある。材料ロットによって抵抗値にばらつきが生じる他、導電性ゴムローラ内においても局所的抵抗のばらつきが生じ、均一で安定した抵抗値の導電性ゴムローラを得ることが難しい。
【0027】
なお、極性ゴムとしては、エピクロルヒドリン系ゴム及びNBRの少なくとも一方を用いる方が好ましい。
【0028】
エピクロルヒドリン系ゴムは、特に限定されず、例えば、市販されている以下のものが支障なく使用できる。エピクロルヒドリン単独重合体(ECH)、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体(ECH−EO)、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル共重合体(ECH−AGE)、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体(ECH−EO−AGE)等。中でも、イオウ加硫又は有効加硫が可能であるECH−EO−AGEが好ましい。また、、エピクロルヒドリン系ゴム中のEOの共重合割合が40mol%以上であることがより好ましい。ECH−EO−AGEは、EOの共重合割合が多くなるに従い加硫ゴムの体積固有抵抗値が小さくなる傾向がある。このため、EOの共重合割合が40mol%よりも小さいと導電性ゴムローラの弾性体に必要な電気抵抗値が得にくく、エピクロルヒドリン系ゴムの配合割合が多くなり、環境依存性を高くしてしまう。より好ましくは、エピクロルヒドリン系ゴム中のEOの共重合割合が38mol%乃至58mol%である。なお、上記エピクロルヒドリン系ゴムは、異種であっても、2種以上のブレンドであってもよい。
【0029】
また、NBRも、特に限定されず、市販のNBRが使用可能であるが、中でもアクリロニトリル含量が15〜25質量%であるNBRがより好ましい。平均アクリロニトリル含量が15質量%未満では、所定の抵抗値を得ることが難しく、アクリロニトリル含量が25質量%を超えると抵抗の環境依存性が大きくなる傾向にある。なお、NBRは1種であっても、2種以上のブレンドのいずれであってもよい。
【0030】
本発明では、発泡ゴム層を形成するゴム原料組成物のカーボンブラックとして、低グリットカーボンブラックを用いることに特徴がある。低グリットカーボンブラックとは、カーボンブラック製造工程で混入するコークス粒、炉煉瓦の剥離片、鉄粉等といったグリットと呼ばれる不純物が除去されたカーボンブラックである。このカーボンブラックを用いることにより異物起因の異常発泡が抑制された、ローラ外周面の電気抵抗値が均一な導電性ゴムローラを得ることが可能となる。なお、この理由は定かではないが、上記不純物が含まれる場合、化学発泡に際し、不純物成分のいずれかが発泡セル形成の核となり、局所的に異常発泡を引きおこしているものと考えられる。
【0031】
グリットと呼ばれるカーボンブラック中の不純物は、通常、カーボンブラック中で粗大粒子として含まれ、標準ふるいを用いた分別でふるい残分として評価される。本発明おいては、JIS K6218−3に規定された、目開き150μmのふるいを用い、カーボンブラック中のふるい残分でグリット量を規定する。なお、以下において、特に断らない限り、JIS K6218−3による目開き150μmでのふるい残分を、単に「ふるい残分」という。
【0032】
本発明では、低グリットカーボンブラックとして、ふるい残分0.001%以下のものを用いることが好ましい。ふるい残分が0.001%より大きい場合、得られる発泡ゴム層は、異常発泡を起こした部位を有することがあり、ローラの電気抵抗値にむらを生じるので好ましくない。
【0033】
また、カーボンブラックとしては、よう素吸着量(JIS K6217−1に準拠する)やジブチルフタレート(DBP)吸収量(JIS K6217−4に準拠する)が異なるグレードが多数存在する。本発明においては、よう素吸着量が25mg/g以下かつDBP吸収量が75ml/100g以下であり、粒子径が比較的大きくかつ低ストラクチャーのカーボンブラックを用いた方がより好ましい。よう素吸着量やDBP吸収量が上記範囲より大きい小粒子径、高ストラクチャーのカーボンブラックでは、カーボンブラックによる電子導電性が発現しやすく、ローラの電気抵抗にむらを生じる場合があり、また、電圧依存性が大きくなる傾向にある。
【0034】
本発明では、カーボンブラックの配合量は、ゴム成分100質量部に対し、10質量部以上60質量部以下が好ましい。配合量が10質量部未満の場合、カーボンブラックの配合による補強効果は十分ではなく耐久性が劣り、画像不良を生じやすい。また、配合量が60質量部超の場合、原料ゴム組成物の粘度が高くなり、加工性が劣る他、導電性ゴムローラの硬度も高くなりすぎて、画像不良を生じやすい。
【0035】
本発明では、化学発泡剤として、アゾジカルボンアミド(ADCA)、4、4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DTP)等が使用できる。なお、DTPは、分解副生成物として毒性のあるホルムアルデヒドやアミン臭の強いヘキサメチレンテトラミンが発生するので、ADCAやOBSHを使用する方が好ましい。
【0036】
また、本発明では、原料ゴム組成物には、一般のゴムに使用されるその他の成分を必要に応じて含有させることができる。例えば、加硫促進剤、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、ステアリン酸等の加硫助剤、尿素等の発泡助剤が挙げられる。なお、第4級アンモニウム塩等のイオン導電剤や、ジ(2−エチルヘキシル)フタレート(DOP)等の可塑剤、アミン系の老化防止剤などは感光体を汚染するので使用するのは好ましくない。
【0037】
本発明では、製造が容易であり、かつ安価に製造できることから、発泡ゴムのチューブに導電性軸体を挿入し、表面を研削する方法により、導電性ゴムローラを製造することが望ましい。以下にその方法を示す。
【0038】
未加硫の導電性ゴム組成物を押出し機によりチューブ状に2m/分から10m/分の間の速度で押出し、加硫缶や熱風炉で140℃から160℃の間で、20分から50分の間加熱し、導電性の発泡ゴム(弾性体)チューブを作成する。次いで、該導電性発泡ゴムチューブを所定長さに切断したのち、それに接着剤を塗布した導電性軸体を挿入して、更に150℃から200℃で、10分から60分の間加熱して、ゴム層の発泡加硫を完結すると共に導電性軸体と導電性発泡ゴムチューブを接着する。この導電性軸体に導電性発泡ゴム層が接着されたゴムローラを研磨砥石GC#60からGC#120を取り付けた研磨機にセットし、ローラ回転速度1500RPMから2000RPM、送り速度300mm/分から700mm/分で研磨する。
【0039】
本発明の導電性ゴムローラは、電子写真複写装置、プリンター、静電記録装置等の画像形成装置において、感光体周りに使用される帯電ローラ、転写ローラ、現像ローラ等に好適に使用できる。中でも、感光体等の像担持体に電子写真プロセス、静電記録プロセス等の作像手段で形成担持させたトナー像を紙等の被転写材に転写させる画像形成装置に搭載される、電子写真感光体に相対して配置される転写ローラとして好ましい。すなわち、本発明の導電性ゴムローラは、電子写真感光体上の静電荷像を現像剤により現像する画像形成装置において、転写ローラとして好ましい。
【実施例】
【0040】
以下に実施例及び比較例を用いて、本発明を詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。なお、各実施例及び比較例で使用した資材は以下の通りである。
【0041】
1)原料ゴム
・GECO:エピクロルヒドリンゴム「Hydrin T3106S」(商品名、日本ゼオン株式会社製、エピクロルヒドリン:エチレンオキサイド:アリルグリシジルエーテル=40:56:4モル%)
・NBR:アクリロニトリルブタジエンゴム「Nipol DN401LL」(商品名、日本ゼオン株式会社製、アクリロニトリル含量=18wt%)
【0042】
2)カーボンブラック
・CB1:よう素吸着量23mg/g、DBP吸収量50ml/100g、算術平均粒子径70nm、ふるい残分0.0005%の低グリットカーボンブラック試作品
・CB2:よう素吸着量23mg/g、DBP吸収量50ml/100g、算術平均粒子径70nm、ふるい残分0.0008%の低グリットカーボンブラック試作品
・CB3:よう素吸着量23mg/g、DBP吸収量50ml/100g、算術平均粒子径70nm、ふるい残分0.002%の低グリットカーボンブラック試作品
・CB4:よう素吸着量23mg/g、DBP吸収量50ml/100g、算術平均粒子径70nm、ふるい残分0.01%の通常のカーボンブラック試作品
・CB5:よう素吸着量26mg/g、DBP吸収量87ml/100g、算術平均粒子径66nm、ふるい残分0.0008%の低グリットカーボンブラック試作品
【0043】
3)硫黄/加硫促進剤
・S:イオウ「サルファックスPMC」(商品名、鶴見化学工業株式会社製)、加硫剤
・DM:ジベンゾチアジルジスルフィド「ノクセラーDM」(商品名、大内新興化学工業株式会社製)、加硫促進剤
・TET:テトラエチルチウラムジスルフィド「ノクセラーTET」(商品名、大内新興化学工業株式会社製)、加硫促進剤
【0044】
4)発泡剤類
・ADCA:アゾジカルボンアミド「ビニホールAC#LQ」(商品名、永和化成株式会社製)、発泡剤
・尿素:尿素「セルペーストA」(商品名、永和化成株式会社製)、発泡助剤
【0045】
5)その他
・酸化亜鉛:酸化亜鉛2種(ハクスイテック株式会社製)、加硫促進助剤
・ステアリン酸:ステアリン酸「ルナックS20」(商品名、花王株式会社製)、加硫促進助剤
【0046】
また、作製した導電性ゴムローラについて、ゴム層の抵抗、抵抗ムラ、ローラ硬度、画像評価を以下の方法により評価した。
【0047】
1)ローラ抵抗値及び同ムラ
23℃×50%RHにおいて、導電性ゴムローラの軸体に総圧1000gの荷重が掛かるように外径30mmのアルミニウム製ドラムに圧着し、0.5Hzで回転させた状態で、軸体とアルミドラムとの間に2000Vの電圧を印加しながら抵抗値を測定する。導電性ゴムローラ1周分の測定値の平均値を当該ローラの電気抵抗とした。
【0048】
導電性ゴムローラが一周する間の抵抗値の最高Rmaxと最小Rminから、下記式で求めた値Xを電気抵抗のバラツキの指標とし、下記基準でローラ電気抵抗ムラを評価した。
X=log(Rmax/Rmin)
評価基準
○:(ローラ抵抗ムラ極小) X≦1.05
△:(ローラ抵抗ムラ小) 1.05<X≦1.10
×:(ローラ抵抗ムラ大) 1.10<X
【0049】
2)ローラ硬度
導電性ゴムローラを軸受で受けた状態で、ゴム層表面に総圧500gの荷重とともにアスカーC型スプリング式硬さ試験機(商品名、高分子計器株式会社製)の押し針を押し付けてアスカーC硬度を測定した。なお、測定は中央部、両端から5cmの箇所についてローラを120度回転させて測定し、3×3の9箇所の平均値を当該導電性ゴムローラの硬度(アスカーC)とし、下記基準で評価した。
○:硬度20度乃至35度
△:硬度15度乃至19度又は硬度36度乃至40度
×:硬度14度以下又は硬度41度以上
【0050】
3)異常発泡セル
ローラ全周に存在する発泡セルを、株式会社キーエンス製のビデオマイクロ「VH−8000」(商品名)により観察し、「異常発泡セル」として直径500μm以上である発泡セルの数をした。導電性ゴムローラ10本についての計測から、ローラ1本当りに存在する「異常発泡セル数」Y(個/本)を算出し、下記基準で評価した。
評価基準
○:(異常発泡セル極少) Y≦0.5
△:(異常発泡セル少) 0.5<Y≦1.0
×:(異常発泡セル多) 1.0<Y
【0051】
実施例1〜6、比較例1
表1に示すゴム成分合計100質量部に対して、下記成分と共に、表1に示すカーボンブラックを表1に示す量比で配合し、発泡ゴム層用のゴム原料組成物を作成した。
酸化亜鉛 5質量部
ステアリン酸 1質量部
硫黄 1.0質量部
DM 1.5質量部
TET 1.0質量部
ADCA 4.0質量部
尿素 2.0質量部
【0052】
次いで、この組成物を押出し機からチューブ状に押出した後、加硫缶にて160℃で30分間加硫を行い、内径5mm、外形20mmのゴム層用のチューブを作製した。このチューブにφ6mmのステンレス製の導電性軸体を挿入し、ローラ状の成形体を得た。その後、この成形体を外径がφ14mmになるように研磨して、導電性ゴムローラを作製した。
【0053】
作製した導電性ゴムローラの各種性能を上記により評価した。結果を表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
実施例1、比較例1より、低グリットカーボンブラックを用いることが異常発泡の抑制には重要であることがわかる。すなわち、低グリッドでないカーボンブラックを用いた比較例1は異常発泡セル数が多く、また抵抗ムラが大きい。
【0056】
実施例1乃至3より、低グリットカーボンブラックはふるい残分0.001%以下である方が好ましいことがわかる。すなわち、ふるい残分が0.001%を超える実施例3では異常発泡セル数が多くなる傾向にある。
【0057】
実施例1及び4より、カーボンブラックは、よう素吸着量25mg/g以下かつDBP吸収量70ml/100g以下である方がより好ましいことがわかる。すなわち、上記範囲を超える実施例4ではカーボンブラックによる電子導電性の影響を受け、ローラの抵抗ムラが大きくなる傾向にある。
【0058】
実施例5及び6より、本発明のカーボンブラックの配合量は60質量部以下がより好ましいことがわかる。すなわち、配合量が60質量部を超える実施例6ではローラの抵抗ムラが大きくなる傾向にある。また、ローラ硬度も大きくなる傾向にあり、感光体等とのニップ幅が小さすぎて、例えば、転写ローラでは、転写率が低下したり、感光体の表面の摩耗や損傷により画像の欠陥を生じたりすることがある。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の導電性ゴムローラの一例の断面図である。
【符号の説明】
【0060】
1 導電性軸体
2 ゴム層(弾性層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性軸体上に発泡ゴム層が形成されている導電性ゴムローラであって、
該発泡ゴム層が、硬度(アスカーC)が15度以上40度以下であり、少なくとも、ゴム成分、化学発泡剤及びカーボンブラックを含むゴム原料組成物を発泡加硫して形成されたものであり、
該ゴム成分が極性ゴムであり、かつ、該カーボンブラックが低グリットカーボンブラックである
ことを特徴とする導電性ゴムローラ。
【請求項2】
前記カーボンブラックが、目開き150μmでのふるい残分(JIS K6218−3に準拠する)0.001%以下であることを特徴とする請求項1記載の導電性ゴムローラ。
【請求項3】
前記カーボンブラックが、よう素吸着量(JIS K6217−1に準拠する)25mg/g以下、かつ、ジブチルフタレート(DBP)吸収量(JIS K6217−4に準拠する)70ml/100g以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の導電性ゴムローラ。
【請求項4】
前記カーボンブラックの配合量が、ゴム成分100質量部に対し、10質量部以上60質量部以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の導電性ゴムローラ。
【請求項5】
前記極性ゴムが、アクリロニトリルブタジエンゴム及びエピクロルヒドリン系ゴムの少なくとも一方であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の導電性ゴムローラ。
【請求項6】
前記化学発泡剤が、アゾジカルボンアミド又は4、4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の導電性ゴムローラ。
【請求項7】
電子写真感光体上の静電荷像を現像剤により現像する画像形成装置において、電子写真感光体に相対して配置される転写ローラが、請求項1〜6のいずれかに記載の導電性ゴムローラであることを特徴とする転写ローラ。

【図1】
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【公開番号】特開2010−19991(P2010−19991A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−179167(P2008−179167)
【出願日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】