説明

導電性ナノ粒子を用いた熱伝導性材料

熱伝導組成物(10)が、ポリマーマトリックス(16)とブレンドした非導電性のミクロン粒度の充填剤(18)及び導電性ナノ粒子(20)の両者を含む。かかる組成物はポリマー複合材の全体としての熱伝導率を増大させると同時に熱伝導材料材料とそれに相対する合せ面との間に存在する境界熱抵抗を減少させる。かかる組成物は非導電性である。ナノ粒子(20)を含む配合物は、ナノ粒子(20)を含まない配合物よりミクロン粒度の粒子(18)の相分離も又少ない。熱伝達性を向上させる方法は、発熱部品(12)とヒートシンク(14)との間のかかる組成物を使用することを含む。かかる組成物を使用する電子部品も又開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリマーマトリックスの熱伝導性を向上させるために、導電性ナノ粒子をミクロン粒度の非導電性充填剤と併用することに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの電気部品は動作中に熱を発生する。こうした熱が電気部品から効率的に除去されなければ、熱が蓄積してしまう。その結果、電気部品の誤動作又は永久的損傷が起こりかねない。そのため、電気回路及びシステムでは、動作中の熱除去を促進するため、熱管理技術が用いられることが多い。
【0003】
熱管理技術は、ある形態のヒートシンクを用いて電気系の高温領域から放熱させることが多い。ヒートシンクは、電気部品と機械的に結合して熱除去に役立つ熱伝導率の高い材料(例えば、典型的には金属)からなる構造体である。比較的簡単な形態では、ヒートシンクは、動作中の電気回路と接した金属片(例えばアルミニウム又は銅)からなるものが挙げられる。電気回路からの熱はユニット間の機械的接触面を通してヒートシンクに流れ込む。
【0004】
典型的な電気部品では、動作時にヒートシンクの平面を電気部品の平面に当節して配置し、ある種の形態の接着剤又は固定手段を用いてヒートシンクを適所に保持することによって、ヒートシンクを発熱部品と機械的に結合させる。自明であろうが、ヒートシンクの表面及び部品の表面が完全に平坦又は平滑であることは滅多にないので、通常はそららの表面間に空隙が存在する。周知の通り、向かい合った二つの面の間に空隙が存在すると、それらの表面間の接触面を通した伝熱能力が低下する。こうした空隙は、ヒートシンクの熱管理装置としての有効性及び価値を下げる。この問題に対処するため、伝熱表面間に配置してそれらの間の熱抵抗を低下させるための、熱伝導材料材料(TIM;thermal interface material)と呼ばれるポリマー組成物が開発されている。電気部品に用いられるものを始めとして、多くのTIM用途では、TIMが電気絶縁性であることが必要とされる。また、多くのTIM用途では、発熱部品の熱膨張係数(CTE)がヒートシンクのCTEと(高低)大きく異なる場合に、TIMは発熱部品とヒートシンクの機械的隔離にも十分に対応できるものでなければならない。TIMの厚さ及び材料組成は力学的コンプライアンスの要求によって制限されることがある。TIMの最小厚は、発熱部品及びヒートシンク両者の表面の平面性の程度によって左右される。
【0005】
現状の熱伝導材料材料の全体としての熱伝導率はポリマーマトリックスの低い熱伝導率(TIMに通常入っているポリマーに対して約0.2W/m−K)によって大いに制限されている。これらTIMの熱伝導率を上げる目的で、多くのTIM材料には、それよりも熱伝導率の高い(>10W/m−K)粒子が充填してある。ある推定によれば(”Thermally Conductive Polymer Compositions,” D.M. Bigg., Polymer Composites, June 1986, Vol. 7, No.3)、電気絶縁性ポリマー複合材により到達可能な全体としての最高熱伝導率は、基材ポリマーマトリックスの20〜30倍に過ぎない。この数字は、充填剤の熱伝導率が基材ポリマーマトリックスの熱伝導率の100倍を超えてしまうと、充填剤の種類に関わらず殆ど変らない。従って、ポリマー材料の熱伝導率はヒートシンクの熱伝導率に比して低く、その結果として発熱部品からヒートシンクへの熱伝達が不十分ということになる。それに加えて、1)ミクロ又はナノボイド、及び2)充填剤の沈降又は充填剤の粒度より小さい表面の不規則部分へミクロン粒度の充填剤は入って行けないという原因で充填剤の欠如した層に起因する境界面の欠陥によって、効果的な熱伝達性能はさらに低下する。
【0006】
金属及びその他の導電性材料はしばしば熱伝導性材料である一方で、非導電性の用途ではこれらの高性能材料はTIMに使えないか、又は非導電性材料で被覆しなければならない。それではコストが高くなり、熱的性能が低下し、しかも可能性として電気的ショートの原因になり得る非導電性コーティングにおける隙間があるという危険を冒すことになる。それで、たいていの場合非導電性材料を使用せざるを得ず、そのことによって材料選択が制限され、一般的に熱伝導率も限定される。
【0007】
TIMの熱伝導率を上げるための試みには、充填剤に加えて、ナノ粒子の使用も含まれている。例えば米国特許出願第10/426485号には、TIM系の熱伝導率を改良するためにポリマーマトリックス中に非導電性ナノ粒子を使用することが開示されている。しかしながら上で記した理由で、ナノ粒子として使用するための材料の選択は限られている。
【0008】
動作中の発熱が比較的低い他の電気部品では、別の熱冷却手段が利用される。これらの部品はしばしばラップトップパーソナルコンピューター、携帯電話、携帯情報機器及びデジタルカメラなどのポータブルな電子機器内で使われる。これらの部品はしばしば、ハンダ球のアレイによってポリマー材料でできているプリント配線板上に取り付けられる。環境変化及びパワーサイクリングに基づく正常な熱サイクルの間のハンダ接合箇所の完全性に関わる信頼性の懸念から、電気部品の下のハンダ球間の間隙を埋める樹脂アンダーフィル材料を使用することになっている。多くの用途において、主要な熱冷却パスは部品からプリント配線板へのものである。アンダーフィルがなくても、又熱伝導がよくないアンダーフィルがあっても、部品から配線板への熱の通り道はハンダだけである。この熱性能はアンダーフィル樹脂に熱伝導性の充填剤を添加することにより改善できる。この用途分野では、部品I/Oパッドをショートさせるといけないので、樹脂は導電性であってはならない。それ故、アンダーフィル樹脂は非導電性充填剤の使用に限定される。TIM材料の場合と同じように、このことが到達できる熱伝導度の制限になる。それ故、非導電性アンダーフィル材料で、プリント配線板と発熱部品との間を効率的に熱伝達する改良された組成物の必要性が存在する。
【特許文献1】米国特許出願第10/426485号明細書
【特許文献2】米国特許第6500891号明細書
【特許文献3】米国特許第6265471号明細書
【特許文献4】米国特許第6060539号明細書
【特許文献5】米国特許第5695872号明細書
【特許文献6】米国特許第5026748号明細書
【非特許文献1】”Thermally Conductive Polymer Compositions,” D.M. Bigg., Polymer Composites, June 1986, Vol. 7, No.3
【非特許文献2】”Polymer Handbook”:, Branduf, J.,; Immergut, E.H; Grulke, Eric A; Wiley Interscience Publication, New York, 4th ed.(1999)
【非特許文献3】”Polymer Data Handbook” Mark, James Oxford University Press, New York (1999)
【非特許文献4】”Chemistry and Technology of Silicone”, Noll, W.; Academic Press 1968
【非特許文献5】”Chemistry and Technology of the Epoxy Resins” B. Ellis (Ed.) Chapman Hall, New York, 1993
【非特許文献6】”Epoxy Resins Chemistry and Technology”, edited by C. A. May, Marcel Dekker, New York, 2nd edition, 1988
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
それ故、特に非導電性用途において、ヒートシンクと発熱部品との間を効率的に熱伝達する改良された組成物の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の熱伝導組成物は非導電性ミクロン粒度の充填剤粒子及び導電性ナノ粒子の両者を含むポリマーマトリックスである。本開示の熱伝導材料材料は非導電性である。本開示の熱伝導組成物は、ヒートシンクと電気部品との間の熱伝導材料材料として又は携帯電子機器中の電子部品のアンダーフィル材料として使用できる。
【0011】
本開示には、非導電性ミクロン粒度の充填剤粒子及び導電性ナノ粒子の両者を含む熱伝導組成物と各々接触している発熱部品及びヒートシンク即ち放熱板を含む電子部品も又記載してある。一実施形態においては、電気部品がプリント配線板を含むチップである。
【0012】
本開示の熱伝達効率向上方法は、発熱部品とヒートシンク即ち放熱板との間に、非導電性ミクロン粒度の充填剤粒子及び導電性ナノ粒子の両者を含む熱伝導組成物を介在させる段階を含む。発熱部品がチップであるところでは、熱伝導組成物はチップとプリント配線板の間に置く。
【0013】
別の実施形態では、本開示の熱伝達効率向上方法には、大きい粒子を使用できない用途において、チップとプリント配線板との間に、導電性ナノ粒子を含む熱伝導組成物を介在させる段階が含まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本開示はポリマーマトリックス中に非導電性のミクロン粒度の充填剤粒子及び導電性ナノ粒子の両者を含む熱伝導組成物を提供する。導電性ナノ粒子は熱伝導組成物の熱伝導率を増大させるために使用する。本開示で使用する「熱伝導組成物」とは、電気装置内の高温領域から熱を取り去るのに役立つ任意の材料であり、電気機器のヒートシンクと発熱部品との間に置かれた熱伝導材料材料(「TIM」)又はチップと基材との間の間隙を埋めて且つ熱サイクルの間に発生した熱を除去することによってチップで使用したハンダの疲労寿命を改善するために、集積回路パッケージ、即ちチップ、で使用するアンダーフィル材料を含めることができる。本開示は、ポリマーマトリックス中に、ミクロン粒度の粒子を機械的又は光学的要求のために使用できない用途において特に使用に適する、導電性のナノ粒子を含み非導電性のミクロン粒度の充填剤を含まない熱伝導組成物をも又提供する。これらの用途は、ミクロン粒度又はそれより大きい粒子がハンダ接合箇所の欠陥の原因になることがわかっている非流動性アンダーフィル用途、ウェハ切断のために透明な樹脂が要求されるウェハレベルのアンダーフィル用途、及びできてくる材料の光学特性からミクロン粒度の粒子が使えない光通信装置の取り付けにおけるアンダーフィル用途を含むが、これらに限定されない。
【0015】
熱伝導組成物それ自体は非導電性である。本開示の非導電性のミクロン粒度の充填剤粒子及び導電性ナノ粒子を含むマトリックスは、非導電性のミクロン粒度の充填剤粒子とマトリックスとだけの比較用ブレンドよりも高い熱伝導率に到達できる。ナノ粒子はこのようにマトリックスの全体としての熱伝導度を増大させるが、同時に加工及び操作の容易さは失われない粘度を維持する。さらに、ナノ粒子はミクロン粒度の充填剤は到達不可能な表面の微細孔及び不規則箇所の中に入り込むことができ、それにより表面抵抗の効果を減少させる。
【0016】
本開示で利用する有機マトリックスは、硬化性及び非硬化性マトリックスを含め、如何なるポリマー材料でもよい。適当な有機マトリックスは、ポリジメチルシロキサン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル系樹脂、その他の有機官能性ポリシロキサン樹脂、ポリイミド樹脂、フルオロカーボン樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、フッ素化ポリアリルエーテル、ポリアミド樹脂、ポリイミドアミド樹脂、フェノールレゾール樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、フッ素樹脂その他当業者に公知のあらゆるポリマー系をも含むが、これらに限定されない。(一般的なポリマーについては、”Polymer Handbook”:, Branduf, J.,; Immergut, E.H; Grulke, Eric A; Wiley Interscience Publication, New York, 4th ed.(1999)及び”Polymer Data Handbook” Mark, James Oxford University Press, New York (1999)を参照のこと)。
【0017】
好ましい硬化性ポリマーマトリックスは、フリーラジカル重合、原子移動ラジカル重合、開環重合、開環メタセシス重合、アニオン重合、カチオン重合その他当業者に公知の方法により架橋ネットワークを形成し得るアクリル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリジメチルシロキサン樹脂及びその他の有機官能性ポリシロキサン樹脂である。適当な硬化性シリコーン樹脂には、例えば、”Chemistry and Technology of Silicone”, Noll, W.; Academic Press 1968に記載されている付加硬化性及び縮合硬化性マトリックスが含まれる。
【0018】
ポリマーマトリックスが硬化性ポリマーでない場合には、できてくる熱伝導組成物を、ゲル、グリース又は装置の成形及び動作中の熱伝達中に部品が離れないようにしておくことができる相変化材料として造ることが可能である。
【0019】
本開示の組成物の第2成分は、多数の1種以上のミクロン粒度の充填剤である。ミクロン粒度の充填剤は熱伝導性材料であり、補強性でも又は非補強性でもよい。適当なミクロン粒度の充填剤には、ヒュームドシリカ、溶融シリカ、微粉状石英粉末、非晶質シリカ、カーボンブラック、グラファイト、ダイアモンド、水和アルミナ、金属窒化物(例えば、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、及び窒化アルミニウムでコートしたシリカ)、金属酸化物(例えば、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、チタン、ジルコニウム、ベリリウム、又は鉄の酸化物)及びこれらの組合せが含まれる。充填剤は通常、全最終組成物の重量を基準にして、約10〜約95重量%存在する。もっと一般的に充填剤は、全最終分散組成物の重量を基準にして、約30〜約90重量%存在する。
【0020】
ミクロン粒度の充填剤の粒子の粒度は、約1〜約100ミクロンの範囲にあり、約10〜約50ミクロンの範囲が好ましい。ミクロン粒度の充填剤のサイズの選択は、その最終用途における目標の接着剤層の厚さ、通常約10〜約150ミクロン、によって確定する。充填剤粒子のサイズは、それが使われる熱伝導組成物の硬化後の厚さ未満であるべきである。
【0021】
本開示の組成物の第3成分は導電性ナノ粒子である。本開示で使用する導電性ナノ粒子は、銅、銀、金、白金、パラジウム、グラファイト又はアルミニウムなどの金属、或いはドープしたケイ素又は炭化ケイ素などの半導体材料からなる。本開示で使用する導電性ナノ粒子は、それらの表面に非導電性コーティングを必要としない。
【0022】
ミクロン粒度の充填剤を有する熱伝導組成物中で使用する場合、導電性ナノ粒子は、通常は全最終組成物の重量を基準にして約3重量%と約50重量%の間の範囲、好ましくは重量で約10%〜30%の範囲で含まれる。この範囲は、体積で熱伝導組成物の約1%〜約25%の範囲、好ましくは体積で全最終組成物の約2%〜約15%の範囲に相当する。
【0023】
ミクロン粒度の粒子が機械的又は光学的要求のために使用できない熱伝導組成物用途で使用する場合、導電性ナノ粒子は通常、全最終組成物の重量を基準にして、約10〜約85重量%、好ましくは約50〜約75重量%含まれる。
【0024】
好ましくは、導電性ナノ粒子は約1〜約250ナノメートルの範囲のサイズのもので、約10〜約100ナノメートルの範囲が好ましい。
【0025】
本開示の熱伝導組成物は、TIMなどの非導電性用途での使用によく適合しているが、本開示の組成物は又、非導電性であることが要求されるが、熱伝導率、弾性率、誘電率又は屈折率などの他の材料特性の改良が必要な非TIM用途のための樹脂系でも使用できる。かかる材料には、モールド、オーバーモールド、アンダーフィル、ウェハレベルのアンダーフィル、非流動性アンダーフィル及びインターポーザーが含まれる。
【0026】
ミクロン粒度の充填剤の添加により組成物の熱伝導率は実質的に増加するが、ミクロン粒度の充填剤のポリマーマトリックスの熱伝導率への効果は導電性ナノ粒子の添加によって大きく増幅される。あるミクロン粒度の粒子が別のミクロン粒度の粒子に触れるか又は非常に近くにある領域内の導電性ナノ粒子は、あるミクロン粒度の粒子を別の粒子に熱的に接続する。このことはミクロン粒度の粒子間に、ミクロン粒度粒子間の直接の熱伝導パスに並列して付け加わる熱の通り道を作り出す。このようにして、粒子間及び粒子から表面への熱的連結が増強される。
【0027】
例として、熱伝導率約0.12W/m−Kのエポキシアラミドなどのポリマーマトリックスに、80〜90wt%の適当なミクロン粒度の充填剤を加えれば、そのポリマーマトリックスの熱伝導率を約2.0W/m−Kに上げることができる。しかしながら、本開示の導電性ナノ粒子を20〜40重量%加えることにより、ポリマーマトリックスの初めの熱伝導率を0.4〜0.6W/m−Kに上げることができ、ナノ粒子を含まない組成物に比較して3倍〜5倍にできる。このようにして、例えば、熱伝導組成物がTIMである場合、ナノ粒子の入った樹脂に70〜80重量%の適当なミクロン粒度の充填剤を続けて加えると、結果として、ナノ粒子を含まないTIMの2〜3倍に増えた4.0〜6.0W/m−KのTIMができる。ミクロン粒子のみを同程度の高熱伝導率に達するまで添加すると、その結果生成する組成物が非常に粘性になって加工が容易でなくなり、電子装置、特にフリップチップデバイスなどの半導体チップを作製するために必要な流動性がなくなる。さらに、80〜90%の範囲に入るような高重量%で導電性ナノ粒子を充填すれば、TIMが導電性になってしまうであろう。他方、本開示の導電性ナノ粒子を使用すると、充填された樹脂の粘度を、流動特性が不十分になるまで大きく上げることなく、電気的絶縁を保ったまま商業的に使用可能な、増大した熱伝導率を得ることができる。
【0028】
本開示の組成物において、ミクロン粒子はナノ粒子よりも約100〜5000倍大きい。従って本開示のTIMは、約10〜約150ミクロンの範囲の、さらに好ましくは約20〜約70ミクロンの範囲の厚さの接着剤層を有する。
【0029】
本開示によれば、導電性ナノ粒子は、通常非導電性ナノ粒子(コート又は非コート)よりも高い熱伝導率を有し、しかもコートしたナノ粒子よりも製造原価が低い。充填剤と樹脂の間の相分離は起こり難く、保存寿命は長くなり、製品の安定性も得られる。
【0030】
ミクロン粒度の充填剤及び導電性ナノ粒子が有機マトリックスと配合されて、本開示の組成物を形成する。ナノ粒子及びミクロン粒度の充填剤を有機マトリックスと配合するのを促進するために、1種又は2種以上の溶媒を、適宜組成物に加えることができる。適当な溶媒には、イソプロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、酢酸1−メトキシ−2−プロピル、トルエン、キシレン、n−メチルピロリドン、ジクロロベンゼン及びこれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0031】
ナノ粒子及びミクロン粒度の充填剤を有機マトリックスと配合する方法は、決定的に重要というものではない。
【0032】
組成物は、酸性又は塩基性不純物を除くために、酸又は塩基で又はイオン交換樹脂で処理できる。この組成物は、約0.5Torr(0.066kPa)と約250Torr(3.3kPa)の間の範囲及び約20℃と約140℃の間の範囲の温度で真空に引いて、溶媒、残存水、及びそれらの組合せなどのあらゆる低沸点成分を、実質的に除去することができて好都合である。その結果得られるものは、ナノ粒子及びミクロン粒度の充填剤が有機マトリックスに分散したもので、本開示では最終分散物又は最終組成物と称する。低沸点成分の実質的除去とは、本開示においては、低沸点成分の総量の少なくとも約90% の除去として定義する。
【0033】
本開示の組成物中のナノ粒子の存在は、ミクロン粒度の充填剤が含まれるとき、組成物の安定性をも改良する。ナノ粒子はミクロン粒度の充填剤の沈降を防止するか又はその速度を減少させ、その結果インターフェイス材料中の充填剤不在層のできやすさを抑える。従って、本開示の熱伝導組成物の導電性ナノ粒子は、ミクロン粒度の充填剤を含むポリマー組成物の相分離を遅延させるためにも又使用できる。ポリマー組成物は、ポリマーマトリックスを用意して、それとポリマー組成物を造るためのミクロン粒度の充填剤とをブレンドして、次に導電性ナノ粒子とポリマー組成物とをブレンドすることによって製造する。
【0034】
本開示の組成物は他に追加された材料も含んでよい。例えば、最終組成物の硬化を促進するために、最終分散物に硬化触媒を添加することができる。通常触媒添加量は、硬化すべき組成物全体の重量を基準にして約百万分の10部(ppm)と約2%未満との間の範囲である。カチオン硬化触媒の例には、ビスアリルヨードニウム塩(例えば、ヘキサフルオロアンチモン酸ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム、ヘキサフルオロアンチモン酸(オクチルオキシフェニル,フェニル)ヨードニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸ビスアリルヨードニウム)、トリアリルスルホニウム塩、及びこれらの組合せなどのオニウム触媒が含まれるが、これらに限定されない。ラジカル硬化触媒には、種々の過酸化物(例えばtert−ブチルペルオキシベンゾエート)、アゾ化合物(例えば2,2’−アゾビス−イソブチルニトリル)及びニトロキシド(例えば4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシ(即ち4−ヒドロキシTEMPO))が含まれるが、これらに限定されない。付加硬化性シリコーン樹脂に対して好ましい触媒は、種々の8〜10族の遷移金属(例えば、ルテニウム、ロジウム、白金)錯体である。縮合硬化性シリコーンに対して好ましい触媒は、有機スズ又は有機チタン錯体である。触媒の細目にわたる構造は当業者に公知のものである。
【0035】
カチオン硬化性ポリマーマトリックスに対しては、場合によって効果的な量のフリーラジカル発生化合物を、適宜使用の試薬として添加することができる。適当なフリーラジカル発生化合物には、芳香族ピナコール、ベンゾインアルキルエーテル、有機過酸化物、及びこれらの組合せが含まれる。フリーラジカル発生化合物は比較的低温でオニウム塩の分解を促進する。
【0036】
エポキシ樹脂に対しては、カルボン酸無水物硬化剤及びヒドロキシ基を有する有機化合物などの硬化剤を、適宜使用の試薬として、硬化触媒と共に添加することができる。これらの場合には硬化触媒は、アミン、アルキル置換イミダゾール、イミダゾリウム塩、ホスフィン、金属塩、トリフェニルホスフィン、アルキル−イミダゾール、アルミニウムアセチルアセトネート及びこれらの組合せから選ぶことができるが、これらに限定されない。多官能性アミンなどの硬化剤は、架橋剤として適宜併用できる。代表的なアミンには、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,2−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、1,4−フェニレンジアミン、及び2又は3以上のアミノ基を含む任意の他の化合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0037】
エポキシ樹脂に対して、代表的な無水物硬化剤には、通常、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、フタル酸無水物、ピロメリット酸二無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、ジクロロマレイン酸無水物、クロレンド酸無水物、テトラクロロフタル酸無水物等々が含まれる。少なくとも2種の無水物硬化剤を含む組合せも又使用してよい。説明となる例が、"Chemistry and Technology of the Epoxy Resins" B. Ellis (Ed.) Chapman Hall, New York, 1993及び"EpoxyResins Chemistry and Technology", edited by C. A. May, Marcel Dekker, New York, 2nd edition, 1988に記載されている。
【0038】
付加硬化性シリコーン樹脂に対しては、多官能性Si−H含有液状シリコーンなどの架橋剤を、Si−H対ビニルのモル比が調合後で0.5〜5.0及び好ましくは0.9〜2.0の範囲に入るようにして併用することができる。
【0039】
付加硬化性シリコーン樹脂に対しては、硬化特性を改良して所望の貯蔵寿命を達成するために、適宜、禁止剤を含ませることが可能である。禁止剤には、ホスフィン化合物、アミン化合物、イソシアヌレート、アルキニルアルコール、マレイン酸エステルその他当業者に公知の化合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0040】
反応性の有機希釈剤も又、硬化性組成物全体に、組成物の粘度を下げるために加えてよい。反応性希釈剤の例には、3−エチル−3−ヒドロキシメチル−オキセタン、ドデシルグリシジルエーテル、4−ビニル−1−シクロヘキサンジエポキシド、ジ(ベータ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル)−テトラメチルジシロキサン、種々のジエン(例えば1,5−ヘキサジエン)、アルケン(例えばn−オクテン)、スチレン系化合物、アクリレート又はメタクリレートを含む化合物(例えばメタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)及びこれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。非反応性希釈剤も又、組成物に調合物の粘度を下げるために加えてよい。非反応性希釈剤の例には、低沸点脂肪族炭化水素(例えばオクタン)、トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸1−メトキシプロピル、エチレングリコールジメチルエーテル、及びこれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0041】
接着促進剤も又最終分散物に添加することができて、それにはトリアルコキシオルガノシラン(例えばγ−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、フマル酸ビス(トリメトキシシリルプロピル))が含まれ、効果的な量で、通常は、全最終分散物の約0.01重量%と約2重量%の間の範囲で使用する。
【0042】
難燃剤は、適宜全最終組成物量に対して約0.5重量%と約20重量%の間の範囲で最終分散物に添加することができる。難燃剤の例には、ホスフォルアミド、リン酸トリフェニル(TPP)、レゾルシノール二リン酸(RDP)、ビスフェノール−a−二リン酸(BPA−DP)、有機ホスフィンオキシド、ハロゲン化エポキシ樹脂(テトラブロモビスフェノールA)、金属酸化物、金属水酸化物、及びこれらの組合せが含まれる。
【0043】
本開示の組成物を調製するために、有機マトリックスよりも熱伝導率の大きい他の非導電性ナノ粒子も、導電性ナノ粒子と併せて使用することができる。追加に適当な非導電性ナノ粒子には、コロイダルシリカ、多面体オリゴマーシルセスキオキサン(「POSS」)、ナノサイズの金属酸化物(例えば、アルミナ、チタニア、ジルコニア)、及びナノサイズの金属窒化物(例えば、窒化ホウ素、窒化アルミニウム)が含まれるが、これらに限定されない。特に有用な実施形態においては、追加のナノ粒子はそれらが有機マトリックス中に一体化するのを増進するために、官能基をもたせるのであり、有機官能基を付けたPOSS材料又はコロイダルシリカがその例である。コロイダルシリカの粒子サイズは通常、約1ナノメートル(「nm」)と約250nmの間の範囲内にあり、もっと普通には約5nmと約150nmの間の範囲内にある。
【0044】
最終組成物は、手で混合することができ、又はドウミキサー、チェンジカンミキサー、プラネタリーミキサー、2軸スクリュー押出し機、2本又は3本ロールミル等々などの標準的な混合装置によって混合することができる。組成物の成分のブレンドは、当業者に使われる任意の方法により、回分式、連続式、又は半連続式で実施できる。
【0045】
硬化工程は当業者に公知の任意の方法により実施できる。硬化は、熱硬化、紫外線硬化、マイクロ波硬化、電子線硬化及びこれらの組合せなどの方法によって行う。硬化は通常約20℃と約250℃の間の範囲内の、もっと普通には約20℃と約150℃の間の範囲内の温度で起こる。硬化は、通常約1気圧(「atm」)(0.10MPa)と平方インチ当り約5トン(77.2MPa)の間の範囲内及びもっと普通には約1気圧(0.10MPa)と平方インチ当り約100ポンド(「psi」)(0.69MPa)の間の範囲内の圧力下で起こる。さらに、硬化は、通常約30秒と約5時間の間の範囲内、及びもっと普通には約90秒と約60分の間の範囲内の時間で起こる。硬化した組成物は、適宜、約100℃と約150℃の間の範囲内の温度で、約1時間と約4時間の間の範囲内の時間をかけて後硬化させることができる。
【0046】
導電性ナノ粒子の添加は、特に電気部品の部品間のように非導電性の用途の任意の2つの物体の間に置かれたときに、改良した熱伝導率を提供するベースポリマーマトリックスの全体としての熱伝導率を上げるために使われる。さらに本開示の熱伝導組成物は、熱が伝達されるべき任意の2つの部品の表面にもともと存在する熱流に対する界面抵抗を減少させる。本開示の熱伝導組成物は、コンピュータ、半導体などの電子工学における装置、又は部品間の伝熱が必要な任意の装置において使用できる。
【0047】
ある実施形態では、電子部品が発熱部品として半導体チップを含んでいる。かかる場合、発熱部品になり得るものは、チップキャリア、エリアアレイパッケージ、チップスケールパッケージ、又はその他の半導体パッケージ構造である。他の実施形態では、半導体チップそれ自体が発熱部品である。
【0048】
本開示の熱伝導組成物の塗工は、如何なる当業者によっても達成可能である。従来法には、スクリーン印刷、ステンシル印刷、注入分配及びピックアンドプレイス装置が含まれる。
【0049】
別の態様では、本開示の組成物はシートに成形して、任意の所望の形に切ることができる。この実施形態で本開示の組成物は、電子部品の間に置き得る予備成形した熱伝導性パッドを作ることに使用できて、有利である。
【0050】
ここで、これから添付図面を参照して、本開示をさらに詳細に説明する。図1は本開示の非導電性TIM10の断面である。TIMは電子装置12とヒートシンク即ち放熱板14との間に置かれている。TIM材料は、エポキシ系又はシリコーン系材料などのポリマー樹脂16で、それが又多数の非導電性のミクロン粒度の粒子18及びそれよりも小さい導電性ナノ粒子20を含んでいる。TIMは通常約10〜約150ミクロン、好ましくは約20〜約70ミクロンの接着剤層厚さを有していて、如何なる空隙も埋めて、熱伝達を容易にする。
【0051】
図2は、図1で示したTIMシステムの断面図の拡大である。この図は2つのミクロン粒度の充填剤粒子18と多数の導電性ナノ粒子20を図示している。この図はあるミクロン粒度の充填剤粒子18と装置表面12との間及び2つのミクロン粒度の充填剤粒子の間の界面領域を強調している。導電性ナノ粒子は樹脂16の領域全体内と同様にこれらの界面区域に存在している。このTIMシステムにおける重要な熱的改良は、3つの界面区域、即ちミクロン粒度の充填剤粒子18から電子装置表面12への区域、ミクロン粒度の充填剤粒子18からミクロン粒度の充填剤粒子18への区域、及びミクロン粒度の充填剤粒子18からヒートシンク(放熱板)14の表面区域(示していない)における改良された熱伝導効果である。
【0052】
図3は導電性ナノ粒子20及びこれらの粒子がミクロン粒度粒子18からミクロン粒度粒子18への熱伝導率を改善できることを示すTIM拡大部分の断面である。あるミクロン粒度の粒子が別のミクロン粒度の粒子に接触しているか又は非常に接近している領域にある導電性ナノ粒子は、あるミクロン粒度の粒子を別のミクロン粒度の粒子に熱的に連結する。このことはミクロン粒度18の粒子間に、ミクロン粒度粒子間の直接の熱伝導パスに並列して付け加わる複数の熱の通り道を作り出す。ミクロン粒度の粒子が非導電性である限り、導電性ナノ粒子が装置から基材への電気伝導の通路を作ることはない。
【0053】
しかし、ナノ粒子が配向して導電性ナノ粒子が長く数珠つながりになって、TIM接着層を通る直接の電気接続を形成することは、理論的には可能であるものの、TIM中の粒子の量とサイズの組合せから、かかる配向は実際には不可能である。目標のTIM厚さ(10〜150ミクロンの範囲内)、TIM中のナノ粒子の量(重量で約3〜約50%、体積で1〜25%)、及び好ましいナノ粒子サイズ(10〜100ナノメートル)を考慮すると、TIMが導電性になるためには、全て連続した通路で接している200〜5000の導電性ナノ粒子が数珠つなぎになったものが、電子装置12の表面からヒートシンク(放熱板)14の表面に到達できなければならないであろう。当業者に容易にわかるように、特にミクロン粒度の非導電性粒子が存在して導電性ナノ粒子が作る短い通電路を必然的に遮断し、全体としての接続を絶縁するであろう、電子装置12とヒートシンク(放熱板)14との間に、導電性ナノ粒子が連続した通電路を形成し、及びそれにより電気接続を形成することは不可能であろう。
【0054】
別の実施形態では、本開示の組成物はアンダーフィル材料として電子部品に使用することができる。この実施形態では、導電性ナノ粒子を非導電性ミクロン粒度の粒子をも含むポリマー樹脂に添加するが、その結果生成するマトリックス系は非導電性で、電子部品のためのアンダーフィル材料として使用される。その電子部品は電子部品をプリント配線板に電気的に接続するためにハンダ球を使用するものである。かかる場合、本開示の組成物の用途は、通常、プリント配線板上への部品の組み立て及びハンダのリフローの後になる。別の方法として、部品の取り付けに先立って、配線板にアンダーフィル樹脂を付けることができる。この方法では、樹脂を硬化させているときに、ハンダをリフローする。別の方法では、多数の電子部品及びハンダ球のアレイを含む半導体ウェハに熱伝導性のアンダーフィル樹脂を塗工することが含まれる。ウェハ切断による各部品への分離に続いて、部品をプリント配線板に取り付ける。この方法では、樹脂を硬化するときにハンダをリフローする。
【0055】
図4は、部品表面38、配線板表面40及びハンダ球32を封止している熱伝導性アンダーフィル36のついたプリント配線板34にハンダ球32によって電気的に接続している発熱部品30の拡大部分の断面である。熱伝導性樹脂16は導電性ナノ粒子20及び非導電性ミクロン粒度粒子18の両者を含んでいる。熱伝導性アンダーフィルは部品と配線板との間の50〜500ミクロンの間隙を満たしている。
【0056】
さらに別の実施形態では、導電性ナノ粒子をミクロン粒度の粒子を含まないポリマー樹脂に添加する。その結果生成したマトリックス系は非導電性で、その樹脂は電子部品をプリント配線板に電気的に接続するためにハンダ球を使用する電子部品のアンダーフィル材料として使われる。これらの用途には、ミクロン粒度又はそれよりも大きい粒子がハンダ接合箇所に欠陥を生ずることがわかっている非流動性アンダーフィルへの塗工、ウェハ切断のために透明な樹脂が要求されるウェハレベルのアンダーフィルへの塗工、及び生成する材料の光学的性質からミクロン粒度の粒子は使えない光通信装置の取り付けにおける塗工が含まれるが、これらに限定されない。
【0057】
本開示の熱伝達性を向上させる方法には、発熱部品とポリマーマトリックス、少なくとも1ミクロン粒度の充填剤、及び導電性ナノ粒子のブレンドを含む非導電性の熱伝導組成物とを接触させて配置すること及びヒートシンクを熱伝導組成物と接触させて配置することが含まれる。電子部品がチップである場合、この発熱部品はプリント配線板に接触させて置き、且つ部品とプリント配線板の1以上の電気接点との間に電気接続を形成する。熱伝導組成物、それはポリマーマトリックス、少なくとも1ミクロン粒度の充填剤及び導電性ナノ粒子のブレンドを含むが、それを部品とプリント配線板の間に入れて、それで熱伝導組成物が1以上の電気接続を封止する。別の実施形態では、1以上の電気接続を封止するために使用する熱伝導組成物には、ポリマーマトリックスと導電性ナノ粒子のブレンドが含まれる。
【0058】
その他の実施形態で、熱伝達を増大するための方法は、本開示の熱伝導組成物を、複数の電気接点を含むダイ部位が複数ある半導体ウェハに添付すること及び1以上のハンダ球を複数の接点に配設することを含む。熱伝導組成物は、1以上のハンダ球の頂点が露出するように部分硬化させ、その時間経過後ウェハを個々の半導体チップに切断する。それから個々のチップをプリント配線板上に配置して、プリント配線板の1以上の電気接点と1以上の電気接続を形成するように1以上のハンダ球が並ぶようにする。それから部品と配線板を加熱して、ハンダ球を熔かすと同時に熱伝導組成物を硬化させ、その後それらを冷やしてハンダ球を固化し、且つ熱伝導組成物が1以上の電気接続を封止するように熱伝導組成物を硬化させる。
【0059】
本開示を代表的な実施形態で例証し説明したが、本開示の趣旨から離れることなく種々な改良及び置き換えが可能であるから、示した詳細に限定するものではない。そのように、ここで開示した本開示のさらなる改良及び同等のことは当業者にとって日常的に過ぎない実験を使ってできることであり、かかる改良及び同等のことは全て、次の特許請求の範囲によって規定したように本開示の趣旨及び意図の範囲内であると信じられる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】ミクロン粒度の充填剤粒子及び導電性ナノ粒子の両者を含む非導電性TIMの断面図である。
【図2】導電性ナノ粒子が如何にしてミクロン粒度の充填剤粒子と電子装置との間の熱伝導率を改善するかを示す図1の一部の拡大図である。
【図3】ミクロン粒度の充填剤粒子同士間の熱伝導率を改善する導電性ナノ粒子を示すTIM断面の拡大部分の図である。
【図4】ミクロン粒度の充填剤粒子同士間の熱伝導率を改善する導電性ナノ粒子を利用する電気絶縁性アンダーフィル材料断面の拡大部分の図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーマトリックス(16)と1種以上のミクロン粒度の充填材(18)と導電性ナノ粒子(20)とのブレンドを含んでなる熱伝導組成物であって、非導電性である熱伝導組成物(10)。
【請求項2】
ミクロン粒度の充填剤(18)が、ヒュームドシリカ、溶融シリカ、微粉状石英粉末、非晶質シリカ、カーボンブラック、グラファイト、ダイアモンド、水和アルミナ、金属窒化物、金属酸化物及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1記載の熱伝導組成物(10)。
【請求項3】
導電性ナノ粒子(20)が、銅、銀、白金、パラジウム、金、グラファイト、アルミニウム、ドープしたケイ素及び炭化ケイ素からなる群から選択される、請求項1記載の熱伝導組成物(10)。
【請求項4】
発熱部品(12)を、ポリマーマトリックス(16)と1種以上のミクロン粒度の充填材(18)と導電性ナノ粒子(20)とのブレンドを含む非導電性熱伝導組成物(10)と接触させて配置し、
ヒートシンク(14)を熱伝導組成物(10)と接触させて配置する
ことを含む熱伝達性を向上させる方法。
【請求項5】
発熱部品(12)と、
ヒートシンク(14)と、
発熱部品(12)とヒートシンク(14)の間に挿入され、ポリマーマトリックス(16)と1種以上のミクロン粒度の充填材(18)と導電性ナノ粒子(20)とのブレンドを含む非導電性熱伝導組成物(10)と
を備える電子部品。
【請求項6】
発熱部品(30)をプリント配線板(34)と接触させて配置し、
部品(30)をプリント配線板(34)の1以上の電気接点に接触させて電気接続を形成し、
ポリマーマトリックス(16)と1種以上のミクロン粒度の充填材(18)と導電性ナノ粒子(20)とのブレンドを含む熱伝導組成物(10)を、部品(30)とプリント配線板(34)の間に配設する
ことを含んでなる熱伝達性を向上させる方法であって、熱伝導組成物(10)が1以上の電気接続を封止している、方法。
【請求項7】
ポリマーマトリックス(16)と1種以上のミクロン粒度の充填材(18)と導電性ナノ粒子(20)とのブレンドを含む熱伝導組成物(10)を、複数の電気接点を有するダイ部位を複数含む半導体ウェハに塗工し、
複数の接点に1以上のハンダ球(32)を配設し、
1以上のハンダ球(32)の頂点が露出するように熱伝導組成物(10)を部分硬化させ、
ウェハを個々の半導体チップに切断し、
1以上のハンダ球(32)がプリント配線板(34)の1以上の電気接点と整列して1以上の電気接続を形成するように、1以上の半導体チップをプリント配線板(34)上に配設し、
ハンダ球(32)の溶融と熱伝導組成物(10)の硬化が同時に起こるように、1以上の半導体チップと配線板(34)を加熱し、
ハンダ球(32)を固化するとともに熱伝導組成物(10)を硬化させて熱伝導組成物(10)が1以上の電気接続を封止するように、1以上の半導体チップ及び配線板(34)を冷却する、
ことを含んでなる熱伝達性を向上させる方法。
【請求項8】
ポリマーマトリックス(16)と導電性ナノ粒子(20)とのブレンドを含む熱伝導組成物(10)をプリント配線板(34)に塗工し、
1以上のハンダ球(32)がプリント配線板(34)の1以上の電気接点と整列して1以上の電気接続を形成するように、1以上のハンダ球(32)と1以上の電気接点を含む発熱部品(30)をプリント配線板(34)上に配設し、
ハンダ球(32)の溶融と熱伝導組成物(10)の硬化が同時に起こるように、部品(30)及び配線板(34)を加熱し、
ハンダ球(32)を固化するとともに熱伝導組成物(10)を硬化させて熱伝導組成物(10)が1以上の電気接続を封止するように、部品(30)及び配線板(34)を冷却する、
ことを含んでなる熱伝達性を向上させる方法。
【請求項9】
発熱部品(30)と、
プリント配線板(34)と、
発熱部品(30)とプリント配線板(34)との間に挿入され、ポリマーマトリックス(16)と導電性ナノ粒子(20)とのブレンドを含む熱伝導組成物(10)と
を備える電子部品。
【請求項10】
ポリマーマトリックスと導電性ナノ粒子(20)とのブレンドを含んでなる非導電性アンダーフィル組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−504663(P2007−504663A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525337(P2006−525337)
【出願日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【国際出願番号】PCT/US2004/025262
【国際公開番号】WO2005/024942
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】