説明

導電性パターン形成方法

【課題】高精細、高耐マイグレーション性、高耐腐食を有する導電性パターンを形成する。
【解決手段】基板上にポリエチレンイミン、ポリアリルアミンおよびポリビニルアミンから選ばれる少なくとも1種を含有する物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層を少なくともこの順に有する導電性材料前駆体を、(A)画像状露光、(B)拡散転写現像処理、(C)銀画像部へ吸着する化合物の付与、(D)非画像部への銀以外の金属の無電解めっき処理、(E)銀画像部の剥離、を順に行うことを特徴とする導電性パターンの形成方法による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムやガラス等の基板上に導電性のパターンを形成する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板上に導電性パターンを設ける導電性パターンの形成方法としては、基本的には印刷方式、フォトリソグラフィー方式、銀塩方式およびその他の方式とに大別される。印刷方式には、導電性金属インキやペーストをスクリーン印刷等の手段によって印刷した後、導電性を付与するために焼成する方法(例えば特許文献1)や、無電解めっき触媒を含有する樹脂塗料等を印刷した後、無電解めっきを施して導電性パターンを付与する方法(例えば特許文献2)等が知られている。
【0003】
フォトリソグラフィー方式には、均一な導電金属層を有する基板上にフォトレジストを塗布し、露光、現像後、レジストが剥離された導電性金属層をエッチング除去し導電性パターンを得るサブトラクティブ方式をとるもの(例えば特許文献3)、無電解めっき触媒を含有するレジストを基板上に塗布し、露光、現像し未露光部のレジストを除去後、無電解めっきすることにより導電性パターンを得るアデティブ方式をとるもの(例えば特許文献4)等が知られている。
【0004】
その他の方式としては、基板上に銀めっき等を施すことによって銀粒子層からなる導電性画像形成層を形成させ、その画像形成層に高密度エネルギー光を照射することにより、照射部の画像形成層と基板との結合力を低下せしめるアブレーション現像を利用した導電性パターンを得る方法(特許文献5)等の提案がなされている。
【0005】
しかしながら印刷を用いる方式では、印刷精度の問題から高精細の導電パターンの形成は一般的に困難とされており、フォトリソグラフィー方式では、高精細の導電パターン形成が可能とされているが、一般的に製造工程が複雑であるため、工程に用いる材料のロスが多いという課題を抱えている。また、アブレーション現像を利用した方法ではアブレーションにより微少な飛散物が生じ、光学系に悪影響を与えるという問題を抱えている。
【0006】
感光性ハロゲン化銀を用いる銀塩方式としては、銀塩拡散転写方式を用いたもの(特許文献6)および化学現像銀を利用するもの(特許文献7)が提案されている。これらの銀塩方式のうち、特許文献7に示されているような化学現像銀を用いる方式は、露光された部位のハロゲン化銀が現像液中に存在する現像主薬によって還元されてできる化学現像銀を触媒核として、無電解めっきを施すことによって導電性とするものである。
【0007】
しかしながら、生成した化学現像銀の周囲に存在する、ハロゲン化銀乳剤のバインダーであるゼラチンが無電解めっきの抑制因子として働く。従って、生成した化学現像銀と水溶性バインダーであるゼラチンとの体積比がポイントであり、無電解めっきの効率を上げて導電性を確保するためには、極力バインダー量を減ずる必要がある。しかし、バインダー量の減量には限度があり、基板上への塗布安定性およびハロゲン化銀写真乳剤の特性確保にはマイナス因子として働き好ましくない。
【0008】
一方、銀塩拡散転写方式を用いるものは、基板上に物理現像核と称する、銀錯体が現像主薬によって還元されて金属銀となるための触媒核層およびその上層にハロゲン化銀乳剤層を設けた材料を使うものである。また、現像処理時には現像主薬の他にハロゲン化銀を溶解する化合物(ハロゲン化銀溶剤)を作用させる。この材料に露光および現像を行うと、ネガ型のハロゲン化銀乳剤を用いた場合、露光部のハロゲン化銀は化学現像銀に変換されて、ハロゲン化銀乳剤層に留まる。一方、未露光部のハロゲン化銀は、上記現像液中に添加されたハロゲン化銀溶剤によって溶解されて銀錯体となり基板上の物理現像核層まで移動・拡散し、そこで現像主薬により還元されることにより、導電性の金属銀を析出させている。その後、露光部位にある化学現像銀を含む乳剤層は、ウォッシュオフを行うことにより除去している。従って銀塩拡散転写法においては、得られる導電性の銀画像部は、バインダーを実質的に含有せず、また含んでいてもごくわずかであるため、無電解めっき抑制がない点で化学現像より好ましい。
【0009】
このように銀塩方式、特に拡散転写方式は簡便に銀画像を作製できる有用な方法である。しかし、銀はイオンマイグレーションが非常に起こりやすく、耐腐食性が低いため、導電性パターンとしての実用には改善が必要である。また、得られた銀画像部上へのめっき加工を行い、耐イオンマイグレーション性、耐腐食性を向上させたとしても、下地に銀があるため、十分満足できる導電性パターンを得ることは困難であった(特許文献8)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭55−91199号公報
【特許文献2】国際公開第04/39138号パンフレット
【特許文献3】特開平5−16281号公報
【特許文献4】特開平11−170421号公報
【特許文献5】特開平10−151858号公報
【特許文献6】国際公開第04/007810号パンフレット
【特許文献7】特開2004−221564号公報
【特許文献8】特開2008−251274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って本発明の目的は、高耐マイグレーション性、高耐腐食を有し、かつ高精細な導電性パターンが得られる導電性パターンの形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記の課題は、基板上にポリエチレンイミン、ポリアリルアミンおよびポリビニルアミンから選ばれる少なくとも1種を含有する物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層を少なくともこの順に有する導電性材料前駆体を、(A)画像状露光、(B)拡散転写現像処理、(C)銀画像部へ吸着する化合物の付与、(D)非画像部への銀以外の金属の無電解めっき処理、(E)銀画像部の剥離、を少なくとも順に行うことを特徴とする導電性パターンの形成方法によって解決された。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、高耐マイグレーション性、高耐腐食を有し、かつ高精細な導電性パターンが得られる導電性パターンの形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の導電性パターンの形成プロセスの実施形態を示す模式図。
【図2】IPC−SM−840に規定されている櫛形電極の形状を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の上記導電性材料前駆体による拡散転写法を用いた導電性パターンの形成方法について、以下に図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の導電性パターンの形成プロセスの実施形態を示す模式図である。
【0016】
図1(イ)においては、基板(1)上に物理現像核層(3)、ハロゲン化銀乳剤層(2)が積層されており、図1(ロ)に示すようにマスクフィルム(4)を介して(A)画像状露光を行うことで、露光部にのみ潜像銀が形成される。
【0017】
露光の方法としては、上記のマスクフィルム(4)として所望のパターンを有する透過原稿とハロゲン化銀乳剤層を密着して露光する方法、あるいは各種レーザー光を用いて画像状に走査露光する方法等がある。上記したレーザー光で露光する方法においては、例えば400〜430nmに発振波長を有する青色半導体レーザー(バイオレットレーザーダイオードともいう)を用いることができる。
【0018】
露光を行った導電性材料前駆体を(B)拡散転写現像液処理することにより物理現像が起こり、未露光部のハロゲン化銀が溶解されて銀錯塩となり、物理現像核層上で還元されて金属銀が析出し、銀画像部となる。一方、露光部はハロゲン化銀乳剤層中で潜像銀から黒化銀へと化学現像される。不要となった露光部の黒化銀を含むハロゲン化銀乳剤層および未露光部の銀錯体を供給した残りのハロゲン化銀乳剤層を除去、乾燥し、図1(ハ)の銀画像部を得る。
【0019】
銀画像部以外の部分を除去する方法には、水洗除去あるいは剥離紙等に転写剥離する方法がある。水洗除去は、スクラビングローラ等を用いて温水シャワーを噴射しながら除去する方法や温水をノズル等でジェット噴射しながら水の勢いで除去する方法がある。また、剥離紙等で転写剥離する方法は、ハロゲン化銀乳剤層上の余分なアルカリ液(銀錯塩拡散転写用現像液)を予めローラ等で絞り取っておき、ハロゲン化銀乳剤層等と剥離紙を密着させてハロゲン化銀乳剤層等をプラスチック樹脂フィルムから剥離紙に転写させて剥離する方法である。剥離紙としては吸水性のある紙や不織布、あるいは紙の上にシリカのような微粒子顔料とポリビニルアルコールのようなバインダーとで吸水性の空隙層を設けたものが用いられる。
【0020】
図1(ハ)の形態が得られた後に、(C)銀画像部上へ吸着する化合物(6)を付与する。付与の方法としては、銀に吸着する化合物を含有する溶液に図1(ハ)の基材を浸漬する、あるいは銀に吸着する化合物溶液を噴霧する処理方法等が挙げられる。溶液の濃度としては数mM〜数十mMが好ましく、液温は20〜30℃が好ましい。処理の時間としては通常は数分で全面吸着が完了する。処理後は水洗を行い余分な前記化合物を除去し、図1(ニ)の銀画像上に前記化合物を付与した基材を得ることができる。
【0021】
次いで、金属銀上へ吸着する化合物で銀画像部が被覆された図1(ニ)の基材を無電解めっき触媒含有水溶液に浸漬することにより、物理現像核層上に無電解めっき触媒を吸着させる(図1(ホ))。銀画像部は銀画像部上へ吸着する化合物で既に被覆されているため、無電解めっき触媒は吸着しない。無電解めっき触媒としては、パラジウム、白金、鉄、ニッケル等の無電解めっき用触媒として一般に使用されるものが使用可能であるが、パラジウムが触媒活性、取扱いの点から好適に用いられる。
【0022】
次いで、図1(ホ)の基材を水洗し、無電解めっき浴に浸漬することにより、めっき触媒付着部分に銀以外の無電解めっき金属(8)を析出させる。すなわち、物理現像核層上の無電解めっき触媒が付与された部分に銀以外の金属が析出し、銀画像部には金属析出が起こらず、図1(ヘ)の基板が得られる。無電解めっきとは、めっきとして析出させたい金属イオンを溶かした溶液を用いて、化学反応によって金属を析出させる操作のことをいう。本工程(D)における無電解めっきは、例えば、無電解めっき触媒が付与された図1(ホ)の基板を、水洗して余分な無電解めっき触媒を除去した後、無電解めっき浴に浸漬して行う。使用される無電解めっき浴としては一般的に知られている無電解めっき浴を使用することができる。また、無電解めっきの金属はニッケル、金、銅等が挙げられる。
【0023】
最後に図1(ヘ)における(E)画像銀部の除去を行うことにより、無電解めっき金属のみがパターンとして基板上に形成される(図1(ト))。画像銀を溶解し除去するが、この液としては、無電解めっき金属を侵さずかつ銀を溶解させるものであれば特に制限はない。かかる溶解除去に用いる液としては、過酸化水素、過酸(次亜塩素酸、過硫酸等)、鉄EDTA塩、セリウム塩等の酸化性金属塩等を含有する液が挙げられる。中でも過酸化水素液を用いることが好ましく、このような液の市販品としては、例えばメルテックス(株)より「アグリップ940」として市販されている液を用いることができる。
【0024】
このようにして得られた導電性パターン上にさらに各種金属めっき処理を行っても良い。
【0025】
本発明に用いられる導電性材料前駆体について説明する。導電性材料前駆体は基板上に少なくともポリエチレンイミン、ポリアリルアミンおよびポリビニルアミンから選ばれる少なくとも1種を含有する物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層をこの順に有する。
【0026】
本発明の導電性材料前駆体が有する基板としては、基紙の両面をポリエチレン系樹脂等で被覆した樹脂被覆紙、合成もしくは半合成高分子フィルム、例えば、PET等のポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、セルローストリアセテートフィルム等、当業界で公知のフィルム素材、ガラス基板等を使用することができる。ガラス基板としては、当業界で公知のガラス素材を使用することができる。用途、求められる性能等によって選択する必要があるが、例えば、ソーダ石灰、ホワイトクラウン等のソーダライムガラス、ホウケイ酸、無アルカリ、アルミケイ酸等の低膨張ガラス、合成石英ガラス等が挙げられる。
【0027】
導電性材料前駆体における物理現像核層の物理現像核としては、重金属あるいはその硫化物からなる微粒子(粒子サイズは1〜数十nm程度)が用いられる。例えば、金、銀等のコロイド、パラジウム、亜鉛等の水溶性塩と硫化物を混合して得られる金属硫化物等が挙げられるが、銀コロイドおよび硫化パラジウム核が好ましい。これらの物理現像核の微粒子層は、真空蒸着法、カソードスパッタリング法、コーティング法等によってプラスチック樹脂フィルム上に設けることができる。生産効率の面からコーティング法が好ましく用いられる。物理現像核層における物理現像核の含有量は、固形分で1平方メートル当たり0.1〜10mg程度が適当である。
【0028】
物理現像核層が含有するポリエチレンイミンは、下記一般式(1)で表される直鎖型のもの、あるいは一般式(2)で表される第1級、第2級および第3級アミンを含む分岐型のものに代表される化合物であって、これらの誘導体も使用することができる。これらはエチレンイミンを公知の方法で重合して得られる。例えば、Advances in Polymer Science,Vol.102,p171−188,1992に詳しく記載されている。
【0029】
【化1】

【0030】
一般式(1)の式中n1は20以上の整数を表し、一般式(2)の式中、R、Rは各々水素原子、またはエチレンイミン連鎖を表す。また、x、yはそれぞれ10以上の整数を表し、x、yの比率は1:2に近いことが好ましい。平均分子量の好ましい範囲は1,000〜1,000,000、より好ましくは5,000〜50,000である。
【0031】
ポリエチレンイミンの誘導体の例としては、特開昭62−271791号公報、特開昭58−120879号公報、特開昭60−135585号公報、特開平11−293173号公報等の公報に開示されており、以下に示すような構造単位を含むものが挙げられる。これらは一般式(1)および(2)のエチレンイミノ基の2級アミン部分が変性したものである。
【0032】
【化2】

【0033】
【化3】

【0034】
構造単位中RからRは各々水素原子、または炭素数1〜3のn−あるいはiso−アルキル基を表す。
【0035】
本発明に用いるポリエチレンイミンの好ましい形態は一般式(2)に示す分岐型のものであり、例えば、以下に示すような市販品として入手することができる。(株)日本触媒製エポミンシリーズであるSP−012(平均分子量1,200)、SP−018(平均分子量1,800)、SP−200(平均分子量10,000)、P−1000(平均分子量70,000)、また、BASF社製LupasolシリーズであるLupasol WF(平均分子量25,000)等が挙げられる。
【0036】
物理現像核層が含有する本発明のポリアリルアミンは下記一般式(3)に代表される化合物であって、これらの誘導体も使用することができる。これはアリルアミンを公知の方法で重合することによって得られる。例えば特公平2−14364号公報、特公平2−52362号公報、特公昭63−43402号公報、特公平2−57084号公報、特公平4−41686号公報および特開昭63−286405号公報等の公報に記載の方法により製造できる。
【0037】
【化4】

【0038】
一般式(3)の式中n2は20以上の整数であり、平均分子量の好ましい範囲は1,000〜100,000、より好ましくは5,000〜50,000である。
【0039】
ポリアリルアミンの誘導体の例としては、特開平7−213897号公報、特開平9−286816号公報、特開平9−302026号公報、特開平10−316827号公報、特開平11−21321号公報等の公報に開示されており、以下に示すような構造単位を含むものである。
【0040】
【化5】

【0041】
上記構造単位中Rは下記構造を表し、Rは炭素数1〜17のn−あるいはiso−アルキル基を表す。
【0042】
【化6】

【0043】
ポリアリルアミンの好ましい形態は一般式(3)のもの、あるいはその塩酸塩タイプのものであり、例えば以下に示すような市販品として入手することができる。日東紡績(株)から市販されている商品名PAAシリーズである、PAA−15(平均分子量15,000)、PAA−08(平均分子量8,000)、PAA−HCL−05(平均分子量5,000)、PAA−HCL−3L(平均分子量15,000)等が挙げられる。
【0044】
物理現像核層が含有する本発明のポリビニルアミンは、下記一般式(4)で表される構造単位を有する化合物であり、公知の方法で重合して得られる。例えば特開2003−147007号公報、特開2004−27015号公報、特開2006−257287号公報等の公報に記載の方法で製造できる。また、本発明のポリビニルアミンはダイヤニトリックス(株)、星光PMC(株)等より市販品として入手することができる。
【0045】
【化7】

【0046】
一般式(4)の式中n3は20以上の整数であり、好ましい平均分子量の範囲は1,000〜1,000,000、より好ましくは5,000〜50,000である。
【0047】
本発明のポリビニルアミンは単独重合体でも、共重合体でも良い。共重合体の他のモノマーとしては、N−ビニルアミド類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルアルコール、アクリロニトリル、アクリルアミド、炭素数1〜4のアルコールと(メタ)アクリル酸とからなる(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、スチレン、アリルアミン、N−メチルアリルアミン、N,N−ジメチルアリルアミン等を挙げることができる。
【0048】
物理現像核層における本発明のポリエチレンイミン、ポリアリルアミンおよびポリビニルアミンの好ましい添加量は10〜500mg/mであり、より好ましくは30〜100mg/mである。少ない添加量ではめっき金属の接着性が不十分であり、多すぎると塗液としての安定性が低下する傾向にある。添加方法については、高分子量のものは粘性が高いため、固形分濃度1〜40質量%程度の水溶液として使用するのが好ましい。この希釈液を塗布前に物理現像核層塗布液中に添加しておいても、塗布中にインライン添加しても良い。
【0049】
また、本発明のポリエチレンイミン、ポリアリルアミンおよびポリビニルアミンは2種以上併用しても良い。併用する際の好ましい添加量は合計で10〜100mg/mであり、より好ましくは30〜70mg/mである。
【0050】
本発明の物理現像核層を基板に塗布するために用いる塗液には、物理現像核の安定化、塗布を容易にさせる等種々の目的で、水溶性高分子化合物を含有させることができる。具体的にはポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。これらの水溶性高分子化合物を含有させる場合は、本発明のポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミンの含有量に対して5〜100質量%程度が好ましい。
【0051】
本発明に用いる物理現像核層には架橋剤を含有させることができる。該架橋剤としてはホルマリン、グリオキザール、マレアルデヒド、グルタルアルデヒドのようなアルデヒド類、尿素やエチレン尿素等のN−メチロール化合物、ムコクロル酸、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサンのようなアルデヒド等価体、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン塩のような活性ハロゲンを有する化合物、ジビニルスルホン、ジビニルケトンやN,N,N−トリアクリロイルヘキサヒドロトリアジン、活性な三員環であるエチレンイミノ基やエポキシ基を分子中に二個以上有する化合物類、高分子硬膜剤としてのジアルデヒド澱粉等の種々の化合物の1種もしくは2種以上を用いることができる。これらの架橋剤の中でも、好ましくは、グリオキザール、グルタルアルデヒド、3−メチルグルタルアルデヒド、サクシンアルデヒド、アジポアルデヒド等のジアルデヒド類であり、より好ましい架橋剤はグリオキザール、グルタルアルデヒドである。架橋剤は1〜20mg/m含有させるのが好ましく、特に3〜10mg/mが好ましい。さらにはエポキシ基を分子中に二個以上有する化合物を併用することが好ましい。エポキシ基を分子中に二個以上有する化合物の好ましい添加量は3〜50mg/mである。
【0052】
さらに物理現像核層にはResearch Disclosure Item 17643(1978年12月)および18716(1979年11月)、308119(1989年12月)に記載されているような公知の写真用添加剤を含有させることができる。
【0053】
物理現像核層の塗布方式としては特に制限はなく、ディップコート法、エアナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法等により塗布することができる。
【0054】
導電性材料前駆体においては、物理現像核層と基板の間にタンパク質からなる易接着層(タンパク質含有易接着層;以降、単に易接着層という)を有することは好ましい。基板と易接着層の間には、さらに塩化ビニリデンやポリウレタン等の易接着層を有することは好ましい。易接着層に用いられるタンパク質としては、ゼラチン、アルブミン、カゼインあるいはこれらの混合物が好ましく用いられる。易接着層におけるタンパク質の含有量は1平方メートル当たり10〜300mgが好ましい。
【0055】
導電性材料前駆体においては光センサーとしてハロゲン化銀乳剤層が設けられる。ハロゲン化銀に関する銀塩写真フィルムや印画紙、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等で用いられる技術は、そのまま用いることもできる。
【0056】
ハロゲン化銀乳剤層に用いられるハロゲン化銀乳剤粒子の形成には、順混合、逆混合、同時混合等のResearch Disclosure Item 17643(1978年12月)および18716(1979年11月)、308119(1989年12月)に記載されているような公知の手法を用いることができる。中でも同時混合法の1種で、粒子形成される液相中のpAgを一定に保ついわゆるコントロールドダブルジェット法を用いることが、粒径の揃ったハロゲン化銀乳剤粒子が得られる点において好ましい。本発明においては、好ましいハロゲン化銀乳剤粒子の平均粒径は0.25μm以下、特に好ましくは0.05〜0.2μmである。本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤のハロゲン化物組成には好ましい範囲が存在し、塩化物を80モル%以上含有するのが好ましく、特に90モル%以上が塩化物であることが特に好ましい。
【0057】
ハロゲン化銀乳剤の製造においては、必要に応じてハロゲン化銀粒子の形成あるいは物理熟成の過程において、亜硫酸塩、鉛塩、タリウム塩、あるいはロジウム塩もしくはその錯塩、イリジウム塩もしくはその錯塩等VIII族金属元素の塩もしくはその錯塩を共存させても良い。また、種々の化学増感剤によって増感することができ、イオウ増感法、セレン増感法、貴金属増感法等当業界で一般的な方法を、単独、あるいは組み合わせて用いることができる。また本発明においてハロゲン化銀乳剤は必要に応じて色素増感することもできる。
【0058】
また、ハロゲン化銀乳剤層に含有するハロゲン化銀量とゼラチン量の比率は、ハロゲン化銀(銀換算)とゼラチンとの質量比(銀/ゼラチン)が1.2以上、より好ましくは1.5以上である。
【0059】
ハロゲン化銀乳剤層には、さらに種々の目的のために、公知の写真用添加剤を用いることができる。これらは、Research Disclosure Item 17643(1978年12月)および18716(1979年11月)、308119(1989年12月)に記載、あるいは引用された文献に記載されている。
【0060】
導電性材料前駆体にはハロゲン化銀乳剤層の感光波長域に吸収極大を有する非増感性染料または顔料を、画質向上のためのハレーション、あるいはイラジエーション防止剤として用いることは好ましい。ハレーション防止剤としては、好ましくは上記した易接着層あるいは物理現像核層、あるいは物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層の間に必要に応じて設けられる中間層、または基板が透明な場合には、基板を挟んで設けられる裏塗り層に含有させることができる。イラジエーション防止剤としては、ハロゲン化銀乳剤層に含有させるのが良い。添加量は、目的の効果が得られるのであれば広範囲に変化しうるが、例えばハレーション防止剤として裏塗り層に含有させる場合、1平方メートル当たり約20mg〜約1gの範囲が望ましく、好ましくは、極大吸収波長における光学濃度として0.5以上である。
【0061】
導電性材料前駆体は、非感光性層を基板から最も遠い最外層として、または物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層との間の中間層として有していても良い。これらの非感光性層は、水溶性高分子化合物を主とする層である。ここでいう水溶性高分子化合物とは、現像液で容易に膨潤し、下層のハロゲン化銀乳剤層、物理現像核層まで現像液を容易に浸透させるものであれば任意のものが選択できる。
【0062】
かかる水溶性高分子化合物としては、具体的にはゼラチン、アルブミン、カゼイン、ポリビニルアルコール等を用いることができる。特に好ましい水溶性高分子化合物はゼラチン、アルブミン、カゼイン等のタンパク質である。本発明の効果を十分に得るためには、この非感光性層の水溶性高分子化合物の含有量としては、ハロゲン化銀乳剤層の総バインダー量に対して20〜100質量%の範囲が好ましく、特に30〜80質量%が好ましい。
【0063】
これら非感光性層には、必要に応じてResearch Disclosure Item 17643(1978年12月)および18716(1979年11月)、308119(1989年12月)に記載されているような公知の写真用添加剤を含有させることができる。また、処理後のハロゲン化銀乳剤層の剥離を妨げない限りにおいて、架橋剤により硬膜させることも可能である。
【0064】
次に、銀塩拡散転写現像の現像液について説明する。現像液は、可溶性銀錯塩形成剤および還元剤を含有するアルカリ液である。可溶性銀錯塩形成剤は、ハロゲン化銀を溶解し可溶性の銀錯塩を形成させる化合物であり、還元剤はこの可溶性銀錯塩を還元して物理現像核上に金属銀を析出させるための化合物である。
【0065】
現像液に用いられる可溶性銀錯塩形成剤としては、チオ硫酸ナトリウムやチオ硫酸アンモニウムのようなチオ硫酸塩、チオシアン酸ナトリウムやチオシアン酸アンモニウムのようなチオシアン酸塩、亜硫酸ナトリウムや亜硫酸水素カリウムのような亜硫酸塩、オキサゾリドン類、2−メルカプト安息香酸およびその誘導体、ウラシルのような環状イミド類、アルカノールアミン、ジアミン、特開平9−171257号公報に記載のメソイオン性化合物、USP5,200,294に記載のようなチオエーテル類、5,5−ジアルキルヒダントイン類、アルキルスルホン類、他に、「The Theory of the photographic Process(4th edition,p474〜475)」、T.H.James著に記載されている化合物が挙げられる。
【0066】
これらの可溶性銀錯塩形成剤の中でも特に、アルカノールアミンが好ましい。アルカノールアミンを含有した処理液で現像を行った透明導電性材料の表面抵抗は比較的低い値が得られる。
【0067】
アルカノールアミンとしては、例えばN−(2−アミノエチル)エタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エタノールアミン、4−アミノブタノール、N,N−ジメチルエタノールアミン、3−アミノプロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等が挙げられる。
【0068】
これらの可溶性銀錯塩形成剤は単独で、または複数組み合わせて使用することができる。
【0069】
現像液に用いられる還元剤は、Research Disclosure Item 17643(1978年12月)および18716(1979年11月)、308119(1989年12月)に記載されているような写真現像の分野で公知の現像主薬を用いることができる。例えば、ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、メチルハイドロキノン、クロロハイドロキノン等のポリヒドロキシベンゼン類、アスコルビン酸およびその誘導体、1−フェニル−4,4−ジメチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−メチル−4−ヒドロキシメチル−3−ピラゾリドン等の3−ピラゾリドン類、パラメチルアミノフェノール、パラアミノフェノール、パラヒドロキシフェニルグリシン、パラフェニレンジアミン等が挙げられる。これらの還元剤は単独で、または複数組み合わせて使用することができる。
【0070】
可溶性銀錯塩形成剤の含有量は、現像液1リットル当たり0.001〜5モルが好ましく、より好ましくは0.005〜1モルの範囲である。還元剤の含有量は現像液1リットル当たり0.01〜1モルが好ましく、より好ましくは0.05〜1モルの範囲である。
【0071】
現像液のpHは10以上が好ましく、さらに11〜14が好ましい。所望のpHに調整するために、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ剤、燐酸、炭酸等の緩衝剤を単独、または組み合わせて含有させる。また、本発明の現像液には、亜硫酸ナトリウムや亜硫酸カリウム等の保恒剤を含むことが好ましい。
【0072】
次に、本発明で使用する銀画像部上へ吸着する化合物について説明する。一般的に貴金属へ吸着する化合物として、ジスルフィド化合物(−S−S−)、スルフィド化合物(−S−)、チオール化合物(−SH)が知られている。これらは貴金属原子と自発的に化学結合し、自己集合単分子膜と呼ばれる単分子層の吸着膜を形成することが可能である。これら化合物の本発明における目的は、銀画像部へのめっき触媒付着を阻害することである。この機能を得るためには、形成した単分子膜が有効にめっき触媒をブロックすることが必要である。以下に具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0073】
5−カルボキシ−1−ペンタンチオール、11−メルカプトウンデカノイックアシッド、16−メルカプトヘキサデカノイックアシッド、6−アミノ−1−ヘキサンチオール、11−アミノ−1−ウンデカンチオール、6−メルカプト−1−ヘキサノール、11−メルカプトウンデカノール、5−カルボキシ−ペンチルジスルフィド、10−カルボキシデシルジスルフィド、1−ヘキサデカンチオール、1−オクタンチオール、3−アミノ−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、2−アミノ−1,3,4−チアジアゾール、5−アミノ−1,3,4−チアジアゾール−2−チオール、6−アミノ−2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプト−2−チアゾリン、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール、2,4,6−トリメルカプト−s−トリアジン等。
【0074】
以下、実施例によって本発明を説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0075】
<実施例1>
(導電性材料前駆体の作製)
基板として厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた。この基板上に下記組成の裏塗り層を塗布、乾燥した。
【0076】
<裏塗り層組成>1m当たり
ゼラチン 2g
不定形シリカマット剤(平均粒径5μm) 20mg
界面活性剤(S−1) 400mg
染料1 200mg
【0077】
【化8】

【0078】
次に裏塗り層を有する基板の、裏塗り層とは反対側の面に下記のようにして作製した硫化パラジウムを含有する物理現像核層塗液を塗布、乾燥した。
【0079】
<硫化パラジウムゾルの調製>
A液 塩化パラジウム 5g
塩酸 40ml
蒸留水 1000ml
B液 硫化ソーダ 8.6g
蒸留水 1000ml
A液とB液を撹拌しながら混合し、30分後にイオン交換樹脂の充填されたカラムに通し硫化パラジウムゾルを得た。
【0080】
<物理現像核層塗液の調製>1m当たり
前記硫化パラジウムゾル 0.4mg
2質量%のグリオキザール溶液 0.2ml
界面活性剤ノニオンOT−221 3mg
(日油(株)製モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)
デナコールEX−830
(ナガセケムテックス(株)製ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル)
50mg
10質量%SP−200水溶液 0.5g
(日本触媒(株)製ポリエチレンイミン;平均分子量10,000)
【0081】
続いて、基板に近い方から順に下記組成の中間層、ハロゲン化銀乳剤層、および保護層を上記物理現像核層の上に塗布し、導電性材料前駆体を得た。ハロゲン化銀乳剤は、写真用ハロゲン化銀乳剤の一般的なダブルジェット混合法で製造した。このハロゲン化銀乳剤は、塩化銀95モル%と臭化銀5モル%で、平均粒径が0.15μmになるように調製した。このようにして得られたハロゲン化銀乳剤を定法に従いチオ硫酸ナトリウムと塩化金酸による金イオウ増感を施した。こうして得られたハロゲン化銀乳剤は銀1g当たり0.5gのゼラチンを含む。
【0082】
<中間層組成>1m当たり
ゼラチン 0.5g
界面活性剤(S−1) 5mg
<ハロゲン化銀乳剤層組成>1m当たり
ゼラチン 0.5g
ハロゲン化銀乳剤 3g銀相当
1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール 20mg
界面活性剤(S−1) 20mg
【0083】
<保護層組成>1m当たり
ゼラチン 1g
不定形シリカマット剤(平均粒径3.5μm) 15mg
界面活性剤(S−1) 10mg
【0084】
(銀パターンの作製)
このようにして得た導電性材料前駆体を、水銀灯を光源とする密着プリンターで400nm以下の光をカットする樹脂フィルターを介し、IPC−SM−840に規定されている櫛形電極の形状(導体幅:100μm、導体間:100μm、重ね代:15.75mmの反転パターン(図2(b))(以下、マイグレーション試験パターン)の透過原稿を密着させて露光した。
【0085】
露光した導電性材料前駆体を下記組成のアルカリ処理液(銀錯塩拡散転写用現像液)で20℃で60秒の浸漬処理を行ったのち40℃温水で水洗、乾燥した。このようにして基板上に櫛形電極の形状を有する銀画像を形成させた(図1(ハ))。
【0086】
<アルカリ処理液>
水酸化カリウム 25g
ハイドロキノン 18g
1−フェニル−3−ピラゾリドン 2g
亜硫酸カリウム 80g
N−メチルエタノールアミン 15g
臭化カリウム 1.2g
全量を水で1000ml
pH=12.2に調整する
【0087】
このようにして得られた銀画像部に、1−ヘキサデカンチオールの10mMエタノール溶液に室温で10分間浸漬したのち、水洗、乾燥した(図1(ニ))。
【0088】
続いて、下記組成の無電解ニッケルめっき処理を行った(図1(ホ)および(ヘ))。触媒付与とめっき処理の間には水洗工程を含む。
触媒付与:メルプレートアクチベーター350 25℃2分
(メルテックス(株)製)
めっき処理:メルプレートNI−2290LF 90℃15分
(メルテックス(株)製)
【0089】
めっき処理後、水洗、乾燥した基材をメルテックス社製アグリップ940使用液(過酸化水素液17.5%含有)に25℃で3分浸積させて銀薄膜層を除去した(図1(ト))。
【0090】
このようにして、非画像部へニッケルが析出し、ニッケルが未析出であった銀画像部は除去された結果、ニッケルからなる図2(a)のパターンを有する導電性材料を得ることができた。
【0091】
<実施例2>
物理現像核層塗液処方が以下の通りである以外は実施例1と同様にして導電性材料を作製した。
前記硫化パラジウムゾル 0.4mg
2質量%のグリオキザール溶液 0.2ml
界面活性剤ノニオンOT−221 3mg
デナコールEX−830 50mg
10質量%PAA−15水溶液 0.5g
(日東紡績(株)製ポリアリルアミン;平均分子量15,000)
【0092】
このようにして、非画像部へニッケルが析出し、ニッケルが未析出であった銀画像部は除去された結果、ニッケルからなる図2(a)のパターンを有する導電性材料を得ることができた。
【0093】
<実施例3>
物理現像核層塗液処方が以下の通りである以外は実施例1と同様にして導電性材料を作製した。
前記硫化パラジウムゾル 0.4mg
2質量%のグリオキザール溶液 0.2ml
界面活性剤ノニオンOT−221 3mg
デナコールEX−830 50mg
10質量%一般式(4)の化合物の水溶液 0.5g
(ポリビニルアミン;平均分子量20,000)
【0094】
このようにして、非画像部へニッケルが析出し、ニッケルが未析出であった銀画像部は除去された結果、ニッケルからなる図2(a)のパターンを有する導電性材料を得ることができた。
【0095】
<実施例4>
実施例1で用いた銀画像部へ吸着する化合物を付与する1−ヘキサデカンチオールの10mMエタノール溶液をジスネットF(三協化成(株)製2,4,6−トリメルカプト−s−トリアジン)の10mMエタノール溶液に変更した以外は、実施例1と同様に作製した。
【0096】
このようにして、非画像部へニッケルが析出し、ニッケルが未析出であった銀画像部は除去された結果、ニッケルからなる図2(a)のパターンを有する導電性材料を得ることができた。
【0097】
<実施例5>
実施例1のめっき処理を下記のように変更した以外は、実施例1と同様に作製した。
触媒付与:メルプレートアクチベーター350 25℃2分
めっき処理:メルプレートAU−6630 60℃60分
(メルテックス(株)製)
【0098】
このようにして、非画像部へ金が析出し、金が未析出であった銀画像部は除去された結果、金からなる図2(a)のパターンを有する導電性材料を得ることができた。
【0099】
<比較例1>
物理現像核層塗液処方が以下の通りである以外は実施例1と同様に作製した。
前記硫化パラジウムゾル 0.4mg
2質量%のグリオキザール溶液 0.2ml
界面活性剤ノニオンOT−221 3mg
デナコールEX−830 50mg
【0100】
上記導電性材料前駆体では非画像部、銀画像部ともニッケルの析出が起こらず、ニッケルからなる図2(a)のパターンを有する導電性材料を得ることはできなかった。
【0101】
<比較例2>
物理現像核層塗液処方が以下の通りである以外は実施例1と同様に作製した。
前記硫化パラジウムゾル 0.4mg
2質量%のグリオキザール溶液 0.2ml
界面活性剤ノニオンOT−221 3mg
デナコールEX−830 50mg
10質量%石灰処理ゼラチン溶液 0.5g
【0102】
上記導電性材料前駆体では非画像部、銀画像部ともニッケルの析出が起こらず、ニッケルからなる図2(a)のパターンを有する導電性材料を得ることはできなかった。
【0103】
<比較例3>
物理現像核層塗液処方が以下の通りである以外は実施例1と同様に作製した。
前記硫化パラジウムゾル 0.4mg
2質量%のグリオキザール溶液 0.2ml
界面活性剤ノニオンOT−221 3mg
デナコールEX−830 50mg
2−アミノエタノール 50mg
【0104】
上記導電性材料前駆体では非画像部、銀画像部ともニッケルの析出が起こらず、ニッケルからなる図2(a)のパターンを有する導電性材料を得ることはできなかった。
【0105】
<比較例4>
銀画像部へ吸着する化合物を付与する工程を省略した以外は実施例1と同様に作製した。
【0106】
上記導電性材料前駆体では銀画像部にもニッケルの析出が起きてしまうため、銀薄膜除去ができず、ニッケルからなる図2(a)のパターンを有する導電性材料を得ることはできなかった。
【0107】
<比較例5>
物理現像核層塗液処方が以下の通りであることと、銀画像部へ吸着する化合物を付与する工程を省略すること、マスクパターンを図2(b)から図2(a)に変更した以外は実施例1と同様に作製した。
前記硫化パラジウムゾル 0.4mg
2質量%のグリオキザール溶液 0.2ml
界面活性剤ノニオンOT−221 3mg
デナコールEX−830 50mg
【0108】
上記導電性材料前駆体では非画像部にニッケルの析出が起きず、銀画像部にニッケルの析出が起きた。銀上にニッケルが積層した図2(a)のパターンを有する導電性材料を得た。
【0109】
<比較例6>
実施例1のめっき処理を下記のように変更した以外は、実施例1と同様に作製した。
触媒付与:メルプレートアクチベーター350 25℃2分
めっき処理:EL−Ag#31 70℃60分
(エヌ・イー ケムキャット(株)製)
【0110】
上記導電性材料前駆体では非画像部に銀の析出が起きる。元の画像部の銀をエッチング除去する際に非画像部に析出した銀も除去されてしまうため、図2(a)のパターンを有する導電性材料を得ることはできなかった。
【0111】
以上のようにして得られた実施例1〜5および比較例5のマイグレーション試験パターン(図2(a))を有する導電性材料のマイグレーション評価を実施した。まず、導電性材料を高温高湿試験機内部にセットし、機外から標準電圧発生装置により電圧を印加し、評価試験中における線間絶縁抵抗を、マイグレーション評価システム(ESPEC製のマイグレーション評価システムAMI)を用いて常時モニタリングし、試験中に線間絶縁抵抗が107Ωを切るまでの時間を測定した。なお、試験環境条件は80℃90%RHであり、印加電圧は50Vであった。結果を表1に示す。
【0112】
また、実施例1〜5および比較例5のサンプルの中性塩水噴霧試験(JIS H8502に規定)による耐食性試験(pH7の5%NaClを35℃で噴霧)を実施した。120時間噴霧後のパターン表面を目視観察し、錆による変色の有無を確認した。結果を表1に示す。
【0113】
【表1】

【0114】
また、実施例1〜5において、それぞれの透過原稿をマイグレーション試験パターンからメッシュパターン(線幅10μm、線間100μm)に変更した以外は、実施例1〜5のそれぞれと同様にして導電性材料を作製し、線幅を測定した。結果を表2に示す。
【0115】
【表2】

【0116】
表1および表2から明らかなように、本発明により、高耐マイグレーション性、高耐食性を有した高精細な導電性パターンを形成することができる。
【符号の説明】
【0117】
1 基板
2 ハロゲン化銀乳剤層
3 物理現像核層
4 マスクフィルム
5 銀画像部
6 銀画像部へ吸着する化合物
7 無電解めっき触媒
8 無電解めっき金属

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にポリエチレンイミン、ポリアリルアミンおよびポリビニルアミンから選ばれる少なくとも1種を含有する物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層を少なくともこの順に有する導電性材料前駆体を、(A)画像状露光、(B)拡散転写現像処理、(C)銀画像部へ吸着する化合物の付与、(D)非画像部への銀以外の金属の無電解めっき処理、(E)銀画像部の剥離、を少なくともこの順に行うことを特徴とする導電性パターンの形成方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−71367(P2011−71367A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−221876(P2009−221876)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】