説明

導電性ペースト

【課題】硬化反応時に揮発成分を発生せず、高温での接着力に優れた導電性ペースト。
【解決手段】導電粉、エポキシ樹脂、式(I)又は(II)で示される構造の硬化性樹脂及び硬化促進剤からなる導電性ペースト。




(Arは、所定の2価の有機基。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップなどの素子をリードフレームに接着させるなどのために使用される、高温での接着力に優れた導電性ペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に半導体装置は半導体チップなどの素子を樹脂ペースト即ち導電性ペーストによりリードフレームに接着して製造している。近年は、電子部品装置の高性能・高機能化を図るために素子の高密度実装化、配線の微細化、多層化、多ピン化、素子のパッケージに対する占有面積増大化等が進んでいる。
【0003】
また、自動車分野等の電子機器においては、大きな電力を消費するいわゆるパワー系素子の増加が観られ、前記素子の高密度実装化と併せ、素子の発熱の問題がクローズアップされることとなり、より高温での接着力が要求されるようになった。
【0004】
従来、エポキシ樹脂系ペースト状接着剤はガラス転移温度(Tg)以上の領域では接着力が大きく低下してしまう。このため、高温での接着力の低下を減少させるために、接着剤組成物に用いるベース樹脂の耐熱性の向上が求められている。耐熱性の向上方法として、従来から(1)高架橋密度化、(2)剛直な樹脂骨格の導入等が知られている(例えば、非特許文献1参照)が、いずれも高コストであること、必ず明瞭なTgが存在するため、Tg前後での物性の変化が著しいこと等の問題がある。
【0005】
一方、最近では、硬化反応と同時にゾル-ゲル反応によりナノサイズの無機物質を生成させる手法により、Tgを消失させることが可能であると報告されている(例えば、非特許文献2参照)。
【0006】
ゾル−ゲル反応による手法では、ビスフェノール型エポキシ樹脂等の水酸基含有エポキシ樹脂の少なくとも一部をアルコキシシラン又はその部分縮合物で変性して得られるアルコキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂を硬化剤として使用する方法が開示されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0007】
また、フェノール樹脂の一部をアルコキシシラン又はその部分縮合物で変性して得られるアルコキシ基含有シラン変性フェノール樹脂を硬化剤として使用する方法が開示されている(例えば、特許文献3及び4参照)。
【0008】
上記に示す方法によれば、エポキシ樹脂硬化物の耐熱性を向上させることが可能となる。
しかしながら、上記に示す方法で使用する硬化剤のいずれもがアルコキシシリル基を有するため、エポキシ樹脂とそれら硬化剤との硬化反応時にはメタノール、エタノール等のアルコールが生じることになる。アルコールなどの揮発性成分は、硬化時のボイドの発生原因となる。
【0009】
【非特許文献1】最新版 エポキシ樹脂のエレクトロニクスへの応用、3頁
【非特許文献2】季刊 化学総説 無機有機ナノ複合物質、51〜54頁
【特許文献1】特開2001−059013号公報
【特許文献2】特開2002−249539号公報
【特許文献3】特開2000−281756号公報
【特許文献4】特開2001−294639号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、硬化反応時にアルコールなどの揮発成分を発生することがなく、高温での接着力に優れた導電性ペーストを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、バインダ成分として所定構造の硬化性樹脂を用いることにより、硬化反応時にアルコールなどの揮発成分を発生することがなく、高温での接着力に優れた導電性ペーストが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は以下の事項に関する。
(1)(A)導電粉、(B)エポキシ樹脂、(C)所定構造の硬化性樹脂及び(D)硬化促進剤からなる導電性ペーストであって、(C)所定構造の硬化性樹脂が、下記一般式(I)又は(II)で示される構造部位を有することを特徴とする導電性ペースト。
【0013】
【化1】

【0014】
【化2】


(式中、Arは、炭素数2〜30を有し、芳香族性を示す環状化合物から誘導される基を有する2価の有機基を示す。)
【0015】
(2)(C)所定構造の硬化性樹脂が、(a)下記一般式(III)で示されるシラン化合物及びその部分縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物及び(b)フェノール化合物を反応させて得られる硬化性樹脂である上記(1)記載の導電性ペースト。
【0016】
【化3】


(式中、nは、0〜2の数であり、Rは、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の炭化水素基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、Rは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜18の置換又は非置換のオキシ基、炭素数1〜18の置換又は非置換のアミノ基及び炭素数2〜18のカルボニルオキシ基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、またR及びRの2以上が結合して環状構造を形成してもよい。)
【0017】
(3)(C)所定構造の硬化性樹脂が、(a)一般式(III)で示されるシラン化合物及びその部分縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物及び(b)フェノール化合物を反応させて得られる硬化性樹脂であって、反応開始時の前記(a)のシラン化合物におけるR基数を基準として、未反応のR基数が10%以下である上記(1)又は(2)記載の導電性ペースト。
【0018】
(4)(C)所定構造の硬化性樹脂が、(a)一般式(III)で示されるシラン化合物及びその部分縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物及び(b)フェノール化合物を反応させて得られる硬化性樹脂であって、(b)のフェノール化合物において、フェノール化合物の全重量を基準としてその70重量%以上が2価フェノール化合物である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の導電性ペースト。
【0019】
(5)(C)所定構造の硬化性樹脂が、(a)一般式(III)で示されるシラン化合物及びその部分縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物及び(b)フェノール化合物を反応させて得られる硬化性樹脂であって、(b)のフェノール化合物において、フェノール化合物の全重量を基準としてその50重量%以上が前記(a)の少なくとも1種の化合物と環化可能なフェノール化合物である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の導電性ペースト。
【0020】
(6)(C)所定構造の硬化性樹脂が(a)一般式(III)で示されるシラン化合物及びその部分縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物並びに(b)フェノール化合物を反応させて得られる硬化性樹脂であって、(a)の少なくとも1種の化合物において、Rが水酸基又は1価のオキシ基である上記(1)〜(5)のいずれかに記載の導電性ペースト。
【0021】
(7)(A)導電粉、(B)エポキシ樹脂、(C)所定構造の硬化性樹脂及び(D)硬化促進剤を分散装置又は溶解装置を用いて均一なペースト状とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載の導電性ペースト。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、硬化反応時にアルコールなどの揮発成分を発生することがなく、高温での接着力に優れた導電性ペーストを提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
[(A)導電粉]
本発明に用いられる導電粉は、例えば、金、銀、銅、ニッケル等の導電性金属;アルミナ、ガラスなどの無機絶縁体やポリエチレン、ポリスチレン等の有機高分子の表面を導電性物質でコートしたもの;カーボン;グラファイト等が挙げられるが、銅粉又は銅合金粉の一部を露出して、表面が銀で被覆された状態の金属粉(銀被覆銅粉又は銀被覆銅合金粉)を含むものが好ましい。言い換えれば、銅粉又は銅合金粉の表面が部分的に銀で被覆された金属粉を含むものである。
【0024】
[(B)エポキシ樹脂]
本発明における、(B)エポキシ樹脂は、特に制限するものではないが、好ましくは室温において液状であることが望ましい。液状のエポキシ樹脂として例を挙げるとビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック、クレゾールノボラック類とエピクロルヒドリンとの反応により得られるポリグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル等の脂肪族エポキシ、ジグリシジルヒダントイン等の複素環式エポキシ、ビニルシクロへキセンジオキサイド、ジシクロペンタジエンジオキサイドのような脂環式エポキシがある。
【0025】
これらは、1種類又は複数種組み合わせて用いることができる。
また、室温で固体のエポキシ樹脂であっても特性を損なわない程度であれば液状エポキシに加えて用いることもできる。
【0026】
[(C)所定構造の硬化性樹脂]
本発明における(C)所定構造の硬化性樹脂とは、下記一般式(I)又は(II)で示される構造部位を有することを特徴とする。
【0027】
【化4】

【0028】
【化5】

(式中、Arは、炭素数2〜30を有し、芳香族性を示す環状化合物から誘導される基を有する2価の有機基を示す。)
【0029】
ここで、Arとして記載した「炭素数2〜30を有し、芳香族性を示す環状化合物から誘導される基を有する2価の有機基」とは、特に制限はなく、ひとつの前記環状化合物から水素原子2個を除いた2価の基であってもよい。例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基、ビフェニレン基、ビナフチレン基、メチレンビスフェニレン基、メチレンビスナフチレン基、オキシビスフェニレン基、スルホニルビスフェニレン基、チオビスフェニレン基等のアリール基を両側に有する2価の有機基及びフラニレン、チオフェニレン、イミダゾリレン、メチレンビスフラニレン、メチレンビスチオフェニレン、メチレンビスイミダゾリレン等の複素環基を両側に有する2価の有機基、一方にアリール基を有し他方に複素環基を有する2価の有機基等の有機基が含まれる。
【0030】
上記(C)所定構造の硬化性樹脂は、下記一般式(III)で示されるシラン化合物及びその部分縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、(b)フェノール化合物とを反応させて得られる硬化性樹脂であって、硬化性樹脂中に残存する揮発性成分の含有量が硬化性樹脂の全重量を基準として10重量%以下であることを特徴とする。
【0031】
【化6】

(式中、nは、0〜2の数であり、Rは、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の炭化水素基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、Rは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜18の置換又は非置換のオキシ基、炭素数1〜18の置換又は非置換のアミノ基及び炭素数2〜18のカルボニルオキシ基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、またR及びRの2以上が結合して環状構造を形成してもよい。)
【0032】
上記一般式(III)における「n」は、0〜2の数であれば特に制限はない。しかし、耐熱性の観点からはn=0又は1であることが好ましく、生成する硬化性樹脂の低応力性の観点からはn=2であることが好ましい。
【0033】
上記「揮発性成分」とは、(a)シラン化合物と(b)フェノール化合物との反応で副生成物として生成する水、アルコール、アンモニア、アミン、カルボン酸、ハロゲン化水素等及び反応時に任意で使用される溶剤並びに樹脂粘度の調節等の目的で任意に含有する溶剤を意味し、上記反応で主生成物となる硬化性樹脂に存在する未反応のR基も潜在的な揮発性成分として見なされる。すなわち、未反応のR基を有する硬化性樹脂は、それらを例えばエポキシ樹脂硬化剤として使用した場合、硬化反応時に水、アルコール、アンモニア、アミン、カルボン酸、又はハロゲン化水素といった揮発性成分を生成することになる。
【0034】
(シラン化合物)
上記一般式(III)で示されるシラン化合物において、Rとして記載した「炭素数1〜18の置換又は非置換の炭化水素基」は、炭素数1〜18を有し、置換されても又は非置換であってもよい脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基を含むことを意味する。
【0035】
より具体的には、上記置換又は非置換の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、アリル基、ビニル基等の脂肪族炭化水素基及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリルオキシ基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、及びイソシアネート基で置換したものが挙げられる。
【0036】
また、上記置換又は非置換の脂肪族炭化水素基には、置換又は非置換の脂環式炭化水素基も含まれる。置換又は非置換の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロペンテニル基、及びシクロヘキセニル基等、並びにそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリルオキシ基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、イソシアネート基等で置換したものが挙げられる。
【0037】
上記置換又は非置換の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基等のアリール基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、ブチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基等のアルキル基置換アリール基;メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、tert−ブトキシフェニル基等のアルコキシ基置換アリール基等が挙げられ、それらをさらにアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリルオキシ基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、イソシアネート基で置換したものであってもよい。
【0038】
なお、上記一般式(III)のR1としては、特に制限はないが、アルキル基及びアリール基からなる群より選ばれる1価の基であることが好ましい。中でも、原料の入手しやすさの観点から、フェニル基、p−トリル基、m−トリル基、o−トリル基、p−メトキシフェニル基、m−メトキシフェニル基、o−メトキシフェニル基等の非置換あるいはアルキル基及び/又はアルコキシ基及び/又は水酸基置換のアリール基; メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、オクチル基、シクロヘキシル基、エポキシシクロヘキシルエチル基、グリシドキシプロピル基、クロロプロピル基、メタクリルオキシプロピル基、メルカプトプロピル基、アミノプロピル基、N−フェニルアミノプロピル基、N−アミノプロピルアミノプロピル基、ウレイドプロピル基、イソシアネートプロピル基等の置換又は非置換の鎖状又は環状のアルキル基から選ばれる基がより好ましい。
【0039】
一般式(III)のRとして記載した「ハロゲン原子」には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が含まれる。
また、一般式(III)のRとして記載した「炭素数1〜18の置換又は非置換のオキシ基」には、例えば「炭素数1〜18の置換又は非置換の脂肪族炭化水素オキシ基」及び「炭素数1〜18の置換又は非置換の芳香族炭化水素オキシ基」が含まれる。より具体的な例示は以下の通りである。
【0040】
上記「炭素数1〜18の置換又は非置換の脂肪族炭化水素オキシ基」としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、シクロプロピルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、アリルオキシ基、ビニルオキシ基等の、Rとして先に説明した脂肪族炭化水素基に酸素原子が結合した構造を有する基及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等で置換したものが挙げられる。
【0041】
上記「炭素数1〜18の置換又は非置換の芳香族炭化水素オキシ基」としては、例えば、フェノキシ基、メチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、メトキシフェノキシ基、ブトキシフェノキシ基、フェノキシフェノキシ基等の、R1として先に説明した芳香族炭化水素基に酸素原子が結合した構造を有する基及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子で置換したものが挙げられる。
【0042】
上記一般式(III)のRとして記載した「炭素数0〜18の置換又は非置換のアミノ基」には、例えば、非置換のアミノ基、炭素数1〜18の置換又は非置換の脂肪族炭化水素アミノ基、芳香族炭化水素アミノ基、ジ脂肪族炭化水素アミノ基、ジ芳香族炭化水素アミノ基、脂肪族炭化水素芳香族炭化水素アミノ基及びシリルアミノ基が含まれる。より具体的な例示は以下の通りである。
【0043】
「炭素数1〜18の置換又は非置換の脂肪族炭化水素アミノ基」としては、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、sec−ブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、オクチルアミノ基、デシルアミノ基、ドデシルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、シクロヘプチルアミノ基、アリルアミノ基、ビニルアミノ基、シクロペンテニルアミノ基、シクロヘキセニルアミノ基等の、Rとして先に説明した脂肪族炭化水素基によって置換されたアミノ基及びこれらの脂肪族炭化水素基部分をアルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子でさらに置換したものが挙げられる。
【0044】
「炭素数1〜18の置換又は非置換の芳香族炭化水素アミノ基」としては、例えば、フェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、トリルアミノ基、ジメチルフェニルアミノ基、エチルフェニルアミノ基、ブチルフェニルアミノ基、tert−ブチルフェニルアミノ基、メトキシフェニルアミノ基、エトキシフェニルアミノ基、ブトキシフェニルアミノ基、tert−ブトキシフェニルアミノ基等の、Rとして先に説明した脂肪族炭化水素基によって置換されたアミノ基及びこれらの芳香族炭化水素基部分をアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子でさらに置換したものが挙げられる。
【0045】
「炭素数1〜18の置換又は非置換のジ脂肪族炭化水素アミノ基」としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジ-n-ブチルアミノ基、ジ−sec−ブチルアミノ基、ジ−tert−ブチルアミノ基、ジシクロペンチルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ジシクロヘプチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、メチルイソプロピルアミノ基、メチル−n−ブチルアミノ基、メチル−sec−ブチルアミノ基、メチル−tert−ブチルアミノ基、メチルシクロヘキシルアミノ基、ジアリルアミノ基、ジビニルアミノ基、ジシクロペンテニルアミノ基、ジシクロヘキセニルアミノ基、アリルメチルアミノ基等の、Rとして先に説明した2つの脂肪族炭化水素基によって置換されたアミノ基及びこれらの脂肪族炭化水素基部分をアルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子でさらに置換したものが挙げられる。
【0046】
「炭素数1〜18の置換又は非置換のジ芳香族炭化水素アミノ基」としては、例えば、ジフェニルアミノ基、ジナフチルアミノ基、ジトリルアミノ基、ビス(ジメチルフェニル)アミノ基、ビス(エチルフェニル)アミノ基、ビス(ブチルフェニル)アミノ基、ビス(tert−ブチルフェニル)アミノ基、ビス(メトキシフェニル)アミノ基、ビス(エトキシフェニル)アミノ基、ビス(ブトキシフェニル)アミノ基、ビス(tert−ブトキシフェニル)アミノ基等の、Rとして先に説明した2つの芳香族炭化水素基によって置換されたアミノ基及びこれらの芳香族炭化水素基部分をアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子でさらに置換したものが挙げられる。
【0047】
「炭素数1〜18の置換又は非置換の脂肪族炭化水素芳香族炭化水素アミノ基」としては、例えば、メチルフェニルアミノ基、メチルナフチルアミノ基、ブチルフェニルアミノ基等の、R1として先に説明した脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基によって置換されたアミノ基が挙げられる。
【0048】
「炭素数0〜18の置換又は非置換のシリルアミノ基」としては、例えば、非置換のシリルアミノ基、トリメチルシリルアミノ基、トリエチルシリルアミノ基、トリフェニルシリルアミノ基、メチル(トリメチルシリル)アミノ基、メチル(トリフェニルシリル)アミノ基、フェニル(トリメチルシリル)アミノ基、フェニル(トリフェニルシリル)アミノ基等の、シリル基及び/又はアミノ基がRとして先に説明した脂肪族炭化水素基及び/又は芳香族炭化水素基によって置換されたシリルアミノ基及びこれらの脂肪族炭化水素基及び/又は芳香族炭化水素基部分をアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子でさらに置換したものが挙げられる。
【0049】
また、一般式(III)のRとして記載した「炭素数2〜18の置換又は非置換のカルボニルオキシ基」には、例えば「炭素数2〜18の置換又は非置換の脂肪族炭化水素カルボニルオキシ基」及び「炭素数2〜18の置換又は非置換の芳香族炭化水素カルボニルオキシ基」等が含まれる。より具体的な例示は以下の通りである。
【0050】
上記「炭素数2〜18の置換又は非置換の脂肪族炭化水素カルボニルオキシ基」としては、例えば、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、プロピルカルボニルオキシ基、イソプロピルカルボニルオキシ基、n−ブチルカルボニルオキシ基、sec−ブチルカルボニルオキシ基、tert−ブチルカルボニルオキシ基、シクロプロピルカルボニルオキシ基、シクロヘキシルカルボニルオキシ基、シクロペンチルカルボニルオキシ基、アリルカルボニルオキシ基、ビニルカルボニルオキシ基等の、Rとして先に説明した脂肪族炭化水素基によって置換されたカルボニルオキシ基及びそれらの脂肪族炭化水素基部分をアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子で置換したものが挙げられる。
【0051】
上記「炭素数2〜18の置換又は非置換の芳香族炭化水素カルボニルオキシ基」としては、例えば、フェニルカルボニルオキシ基、メチルフェニルカルボニルオキシ基、エチルフェニルカルボニルオキシ基、メトキシフェニルカルボニルオキシ基、ブトキシフェニルカルボニルオキシ基、フェノキシフェニルカルボニルオキシ基等の、R1として先に説明した芳香族炭化水素基によって置換されたカルボニルオキシ基及びそれらの芳香族炭化水素基部分をアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子で置換したものが挙げられる。
【0052】
上記一般式(III)のRは、特に制限はないが、入手が容易であることから、塩素原子、水酸基、炭素数1〜8を有する置換又は非置換の1価のオキシ基が好ましい。中でも、反応性の観点からは、塩素原子、水酸基又はオキシ基がより好ましく、本発明による硬化性樹脂をエポキシ樹脂硬化剤として使用して得られる硬化物の長期信頼性に及ぼす影響を考慮すると、Rの少なくとも1つが水酸基又は炭素数1〜8のオキシ基であることがさらに好ましい。
【0053】
また、一般式(III)に記載した「R及びRの2以上が結合して環状構造を形成してもよい」とは、R及びRが互いに結合し、全体としてそれぞれ2価以上の有機基となる場合を意味する。例えば、2つのRがSi原子と結合して環状構造を形成する場合、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン等のアルキレン基、エチレニル、プロピレニル、ブチレニル基等のアルケニル基、メチレンフェニレン基等のアラルキレン基、フェニレン、ナフチレン、アントラセニレン等のアリーレン基が挙げられる。
【0054】
1つのRと1つのRとがSi原子と結合して環状構造を形成する場合、上記アルキレン基、アルケニル基、アラルキレン基、アリーレン基のオキシ基が挙げられる。2つのRがSi原子と結合して環状構造を形成する場合、上記アルキレン基、アルケニル基、アラルキレン基のジオキシ基が挙げられる。
【0055】
それらの有機基は、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリルオキシ基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、イソシアネート基等で置換されていてもよい。
【0056】
上記一般式(III)の具体的な化合物を以下に例示するが、それらに限られるものではない。n=0のシラン化合物としては、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラキス(エトキシエトキシ)シラン、テトラキス(メトキシエトキシ)シラン、テトラプロポキシシラン、テトラアリロキシシラン、テトラクロロシラン、テトラブロモシラン、テトラアセトキシシラン、テトラキス(ジメチルアミノ)シラン等が挙げられる。
【0057】
n=1のシラン化合物としては、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリフルオロシラン、フェニルアセトキシシラン、フェニルビス(ジメチルアミノ)クロロシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、メチルアセトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリクロロシラン、エチルアセトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルアセトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0058】
また、n=2のシラン化合物としては、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジメシチルジメトキシシラン等の置換又は非置換のジアリールジアルコキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、デシルメチルジエトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等の置換又は非置換のジアルキルジアルコキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ビニルフェニルジエトキシシラン等のアリールアルキルジアルコキシシラン、ジフェニルシランジオール等の置換又は非置換のジアリールシランジオール、ジフェニルジクロロシラン、ジトリルジクロロシラン、ジメシチルジクロロシラン等の置換又は非置換のジアリールジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ドデシルメチルジクロロシラン、ジビニルジクロロシラン、ジイソプロピルジクロロシラン等の置換又は非置換のジアルキルジクロロシラン、フェニルエチルジクロロシラン、フェニルメチルジクロロシラン等の置換又は非置換のアリールアルキルジクロロシラン、ジメチルジアセトキシシラン等のジアルキルジアセトキシシラン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)ジエチルシラン等の置換又は非置換のジアルキルジアミノシラン、ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルシラン等の置換又は非置換のジアリールジアミノシラン、フェニルメチルビス(ジメチルアミノ)シラン、ヘキサメチルシクロトリシラザン等の環状シラン化合物、ジメチルメトキシクロロシラン等のジアルキルアルコキシクロロシラン等が挙げられる。
【0059】
上述の具体例は、いずれも工業製品又は試薬として入手可能である。上記一般式(III)で示される化合物は、工業製品又は試薬として購入可能な化合物を用いても、公知の方法で合成した化合物を用いても構わない。これらシラン化合物の中でも、硬化物の長期安定性、電子部品の長期信頼性等の観点から、Rがオキシ基であるシラン化合物が好ましい。
【0060】
(シラン化合物の部分縮合物)
上記一般式(III)で示されるシラン化合物の部分縮合物は、上記一般式(I−1)で示される1種の化合物が自己縮合した化合物又は2種以上の化合物が互いに反応し縮合して生成した化合物が含まれる。特に制限するものではないが、縮合反応は、必要であれば水を用い、また必要に応じて、酸、アルカリ等の縮合反応を促進する公知の物質を加えて行うことができる。通常の縮合反応では、1分子の水を消費して、1つの縮合反応が起こり、2分子のRHが副生成物として生じる(2≡Si−R+HO→≡Si−O−Si≡+2RH)
【0061】
縮合の度合いは、反応条件により調節することが可能であり、縮合してできる化合物の分子数は、特に制限はないが、平均で1.5分子以上であることが好ましく、2〜50分子であることがより好ましく、2〜20分子であることがさらに好ましい。
【0062】
本発明で使用可能なシラン化合物は、上述のようにそれらが部分的に縮合した化合物を含めばよく、その一部は縮合せずに上記一般式(III)で示される化合物のままであってよい。
【0063】
本発明において使用される特定のシラン化合物の部分縮合物は、予め上記一般式(III)で示されるシラン化合物を縮合させて用いても、フェノール化合物と反応させるときに同時に縮合させても、市販品として入手可能なものを用いても、これらを組み合わせても構わない。
【0064】
市販品として入手可能な上記一般式(III)で示される化合物の部分縮合物の具体例としては、式(I−1)のRがメトキシ基であり、n=0、平均縮合分子数が3〜5のMシリケート51(多摩化学工業株式会社製、商品名)、Rがメトキシ基であり、n=0、平均縮合分子数が8〜12のメチルシリケート56(多摩化学工業株式会社製、商品名)、Rがエトキシ基であり、n=0、平均縮合分子数が約5のシリケート40(多摩化学工業株式会社製、商品名)、Rがエトキシ基であり、n=0、平均縮合分子数が6〜8のシリケート45(多摩化学工業株式会社製、商品名)、Rがメチル基、Rがメトキシ基であり、n=1、縮合分子数が2の1,3−ジメチルテトラメトキシジシロキサン(アズマックス株式会社販売試薬)、Rがn−オクチル基、Rがエトキシ基であり、n=1、縮合分子数が2の1,3−ジ−n−オクチルテトラエトキシジシロキサン(アズマックス株式会社販売試薬)等が挙げられる。
【0065】
(フェノール化合物)
本発明において使用可能な(b)フェノール化合物としては、分子内に1以上のフェノール性水酸基を有するものであれば、特に制限はない。例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、クミルフェノール、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール類、α−ナフトール、β−ナフトール、メチルナフタレン、ジメチルナフタレン等のナフトール類等の1分子中に1個のフェノール性水酸基を有する化合物(すなわち、1価フェノール化合物);
レゾルシン、カテコール、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ジヒドロキシナフタレン、置換又は非置換のビフェノール等の1分子内に2つのフェノール性水酸基を有する化合物(すなわち、2価フェノール化合物);
フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール類及び/又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド類とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂;
フェノール類及び/又はナフトール類とジメトキシパラキシレンやビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるフェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂;
パラキシリレン及び/又はメタキシリレン変性フェノール樹脂;
メラミン変性フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂;
フェノール類及び/又はナフトール類とジシクロペンタジエンから共重合により合成される、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型ナフトール樹脂;
シクロペンタジエン変性フェノール樹脂;
多環芳香環変性フェノール樹脂;
ビフェニル型フェノール樹脂;トリフェニルメタン型フェノール樹脂;及び
上記樹脂の2種以上を共重合して得たフェノール樹脂等の分子内に2以上のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物が挙げられる。上記フェノール化合物の1種を単独で使用しても、それら化合物の2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0066】
本発明において使用可能な(a)フェノール化合物は、特に制限はないが、硬化性樹脂の粘度の観点では、1分子中に2個以下のフェノール性水酸基を有する化合物が好ましい。1分子中のフェノール性水酸基の数が多いほど、生成する硬化性樹脂の粘度が高くなり、製造及び/又は製造後の取り扱いが困難となる傾向がある。特に、ノボラック型フェノール樹脂又はレゾール型フェノール樹脂を用いた場合、1分子中のフェノール性水酸基が多く、反応点間の分子量が小さいことからゲル化が起こりやすい傾向がある。
【0067】
一方、硬化後の硬化性樹脂における耐熱性の観点では、1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物が好ましい。
しかし、上述のように分子内のフェノール性水酸基の数が増えると、得られる反応生成物の粘度が高くなる傾向がある。
【0068】
そのため、本発明における(a)フェノール化合物の一形態として、フェノール化合物の全量を基準として、2価フェノール化合物の含有量を、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは85重量%以上とすることが望ましい。例えば、2価フェノール化合物の含有量が70重量%以下、分子内に3個以上のフェノール性水酸基を有する化合物の含有量が30重量%以上となると、反応によって得られる反応生成物の粘度が高くなり、取り扱い性に劣る結果となる。
【0069】
本発明における(a)フェノール化合物の別の形態として、分子内に2個以上のフェノール性水酸基を有し、さらにシラン化合物と環化可能なフェノール化合物を用いることも可能である。この場合、分子内に3個以上のフェノール性水酸基を有する化合物の含有量が30重量%以上となっても、反応によって得られる反応生成物の粘度は著しく高くならず、取り扱い性が著しく低下することはない。
【0070】
シラン化合物と環化可能な構造を有する分子内に2以上のフェノール性水酸基を有する化合物を使用する場合、それら化合物に由来するフェノール性水酸基が、全フェノール性水酸基中の50重量%以上であることが好ましく、70重量%以上であることがより好ましい。
【0071】
シラン化合物と環化可能なフェノール化合物を用いる場合、より具体的には、流動性の観点では、分子内に2個のフェノール性水酸基を有する化合物の含有量を30重量%以上とすることが好ましく、50重量%以上とすることがより好ましい。耐熱性の観点では、分子内に3個以上のフェノール性水酸基を有する化合物の含有量を30重量%以上とすることが好ましく、50重量%以上とすることがより好ましい。
【0072】
しかし、分子内に3個以上のフェノール性水酸基を有する化合物と分子内に2個のフェノール性水酸基を有する化合物との割合は、特に制限されるものではなく、流動性及び耐熱性の必要度に応じて適切に調節することが可能である。なお、環化可能なフェノール性化合物における、少なくとも2個のフェノール性水酸基は、それぞれ以下に示す一般式(III−1)〜(III−4)のいずれかに示す位置関係となることが好ましい。
【0073】
シラン化合物と環化可能な2価フェノール化合物は、特に制限されるものではないが、例えば一般式(III−1)〜(III−4)に示されるようなフェノール化合物が挙げられ、それらの1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0074】
【化7】


(式中、Rは、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、2以上のRが結合して環状構造を形成してもよい。)
【0075】
上記一般式(III−1)で示されるフェノール化合物としては、特に制限はないが、例えば、カテコール、2,3−ジヒドロキシナフタレンが挙げられる。
【0076】
【化8】


(式中、R5は、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、2以上のRが結合して環状構造を形成してもよい。)
【0077】
上記一般式(III−2)で示されるフェノール化合物としては、特に制限はないが、例えば、2,2’−ビフェノール、1,1’−ビ−2−ナフトールが挙げられる。
【0078】
【化9】


(式中、Rは、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、2以上のRが結合して環状構造を形成してもよく、Rは、炭素数0〜18の2価の有機基を示す。)
【0079】
上記一般式(III−3)で示されるフェノール化合物としては、特に制限はないが、例えば、2,2’−ジヒドロキシジフェニルメタン、2,2’−ジヒドロキシ−5,5’−ジメチルジフェニルメタン、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルジフェニルメタン、2,2’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、2,2’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、2,2’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、1,1’−メチレンジ−2−ナフトールが挙げられる。
【0080】
【化10】


(式中、Rは、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、2以上のRが結合して環状構造を形成してもよい)
【0081】
上記一般式(III−4)で示されるフェノール化合物としては、特に制限はないが、例えば、1,8−ジヒドロキシナフタレンが挙げられる。
【0082】
分子内にシラン化合物と環化可能な3個以上のフェノール性水酸基を有する化合物を含有するフェノール化合物としては、例えば、一般式(III−5)〜(III−)に示されるようなフェノール化合物が挙げられ、それらの1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0083】
【化11】


(式中、Rは、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、2以上のRが結合して環状構造を形成してもよく、nは平均で0より大きい数を示す。)
【0084】
上記一般式(III−5)で示されるフェノール化合物としては、特に制限されるものではないが、例えば、カテコールノボラックが挙げられる。
【0085】
【化12】


(式中、Rは、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、2以上のRが結合して環状構造を形成してもよく、nは平均で、1より大きい数を示す)
【0086】
【化13】


(式中、Rは、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、2以上のRが結合して環状構造を形成してもよく、Rは、炭素数0〜18の2価の有機基を示し、nは平均で、1より大きい数を示す)
【0087】
上記一般式(III−7)で示されるフェノール化合物としては、特に制限はないが、例えば、パラクレゾールノボラック、ハイオルト型フェノールノボラック等が挙げられる。
【0088】
上記一般式(III−1)〜(III−7)のR、R、R、及びRとして記載した用語「炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基」は、炭素数1〜18を有し、かつ置換されても又は非置換であってもよい脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素オキシ基、脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素カルボニル基、脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素オキシカルボニル基及び脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素カルボニルオキシ基が結合したものを含むことを意味する。
【0089】
上記置換又は非置換の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、アリル基及びビニル基等の脂肪族炭化水素基若しくはそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、水酸基、アミノ基、ハロゲン等で置換したもの挙げられる。
【0090】
上記置換又は非置換の脂肪族炭化水素基には、置換又は非置換の脂環式炭化水素基も含まれる。置換又は非置換の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロペンテニル基及びシクロヘキセニル基等、並びにそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、ハロゲン等で置換したものが挙げられる。
【0091】
上記置換又は非置換の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基等のアリール基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、ブチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基等のアルキル基置換アリール基;メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、tert−ブトキシフェニル基等のアルコキシ基置換アリール基が挙げられ、それらをさらにアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン等で置換したものであってもよい。
【0092】
上記脂肪族炭化水素オキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、シクロプロピルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、アリルオキシ基、ビニルオキシ基等の上述の脂肪族炭化水素基に酸素原子が結合した構造を有する基及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン等で置換したものが挙げられる。
【0093】
上記芳香族炭化水素オキシ基としては、フェノキシ基、メチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、メトキシフェノキシ基、ブトキシフェノキシ基、フェノキシフェノキシ基等の上述の芳香族炭化水素基に酸素原子が結合した構造を有する基及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン等で置換したものが挙げられる。
【0094】
上記カルボニル基としては、ホルミル基、アセチル基、エチルカルボニル基、ブチリル基、シクロヘキシルカルボニル基、アリルカルボニル等の脂肪族炭化水素カルボニル基、フェニルカルボニル基、メチルフェニルカルボニル基等の芳香族炭化水素カルボニル基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン等で置換したものが挙げられる。
【0095】
上記オキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基等の脂肪族炭化水素オキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、メチルフェノキシカルボニル基等の芳香族炭化水素オキシカルボニル基及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン等で置換したものが挙げられる。
【0096】
上記カルボニルオキシ基としては、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、アリルカルボニルオキシ基、シクロヘキシルカルボニルオキシ基等の脂肪族炭化水素カルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基、メチルフェニルカルボニルオキシ基等の芳香族炭化水素カルボニルオキシ基及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン等で置換したものが挙げられる。
【0097】
さらに、R、R、R及びRとして記載した「環状構造を形成してもよい」とは、2以上のR、R、R又はR結合し、全体としてそれぞれ2〜4価の有機基となる場合を意味する。例えば、それらが結合するベンゼン環と併せて、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環等の多環芳香族環を形成するような基が挙げられ、それらはアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、ハロゲン等で置換されてもよい。
【0098】
上記一般式(III−1)〜(III−7)のR、R、R又はRとしては、特に制限はないが、水素原子、水酸基、及び1価の有機基であるアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基が好ましい。中でも、原料の入手しやすさの観点からは、水素原子、水酸基、フェニル基、p−トリル基、m−トリル基、o−トリル基、p−メトキシフェニル基等の非置換若しくはアルキル基及び/又はアルコキシ基及び/又は水酸基置換の芳香族基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、オクチル基、シクロヘキシル基等の鎖状又は環状のアルキル基から選ばれる置換基がより好ましく、水素原子、水酸基、フェニル基、メチル基、エチル基、tert−ブチル基から選ばれる置換基がさらに好ましい。2以上のR、R、R又はRが結合して環状構造を形成する場合、それらが結合するベンゼン環と併せて、ナフタレン環となることが好ましい。
【0099】
上記一般式(III−3)及び(III−7)のRは、炭素数0〜18の2価の有機基を示す。炭素数0〜18の有機基としては、特に制限はなく、例えば、酸素原子、硫黄原子、スルホキシド基、スルホニル基、炭素数1〜18の2価の炭化水素基等が挙げられる。
炭素数1〜18の2価の炭化水素基としては、特に制限はなく、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、シクロへキシレン基、シクロペンチレン基等の脂肪族炭化水素基及びこれらにアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン等が置換したもの、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基等の芳香族炭化水素基及びこれらにアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン等が置換したものが挙げられる。
【0100】
中でも、入手しやすさの観点からは、酸素原子、硫黄原子、スルホキシド基、スルホニル基、アルキレン基、シクロへキシレン基、シクロペンチレン基、これらにアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基が置換したものが好ましい。酸素原子、硫黄原子、スルホキシド基、スルホニル基、メチレン基、メチルメチレン基、イソプロピルメチレン基、フェニルメチレン基、シクロヘキシルメチレン基、ジメチルメチレン基、メチルジイソピルメチレン基、メチルフェニルメチレン基、シクロへキシレン基、シクロペンチレン基、シクロペンチレン基がより好ましい。
【0101】
[(D)硬化促進剤]
本発明における、(D)硬化促進剤は、特に制限はないが、例を挙げると、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7等のジアザビシクロアルケン等のシクロアミジン化合物、その誘導体;それらのフェノールノボラック塩及びこれらの化合物に無水マレイン酸、1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタン等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物; トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン類及びこれらの誘導体、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール等のイミダゾール類;テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート; 2−エチル−4−メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N−メチルモルホリン・テトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩;トリフェニルホスフィン、ジフェニル(p−トリル)ホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(アルキル・アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルコキシフェニル)ホスフィン、トリアルキルホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、アルキルジアリールホスフィン等の有機ホスフィン類;それら有機ホスフィン類と有機ボロン類との錯体; それら有機ホスフィン類と無水マレイン酸、1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタン等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物;これら有機ホスフィン類と4−ブロモフェノール、3−ブロモフェノール、2−ブロモフェノール、4−クロロフェノール、3−クロロフェノール、2−クロロフェノール、4−ヨウ化フェノール、3−ヨウ化フェノール、2−ヨウ化フェノール、4−ブロモ−2−メチルフェノール、4−ブロモ−3−メチルフェノール、4−ブロモ−2,6−ジメチルフェノール、4−ブロモ−3,5−ジメチルフェノール、4−ブロモ−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−クロロ−1−ナフトール、1−ブロモ−2−ナフトール、6−ブロモ−2−ナフトール、4−ブロモ−4’−ヒドロキシビフェニル等のハロゲン化フェノール化合物を反応させた後に、脱ハロゲン化水素して得られる分子内分極を有する化合物(例えば、特開2004−156036号公報に記載の化合物)が挙げられる。硬化性の観点からは有機ホスフィン類とハロゲン化フェノール化合物を反応させた後に、脱ハロゲン化水素の工程を経て得られる分子内分極を有する化合物が好ましい。
【0102】
本発明になる導電ペーストは、(A)導電粉、(B)エポキシ樹脂、(C)所定構造の硬化性樹脂及び(D)硬化促進剤とともに、一括又は分割して撹拌器、らいかい機、3本ロール、プラネタリーミキサー等の分散・溶解装置を適宜組み合わせ、必要に応じて加熱して混合、溶解、解粒混練又は分散する等して均一なペースト状として得ることができる。このようにして製造した本発明の導電性ペーストは、通常80〜250℃程度で0.1〜3時間程度加熱することにより、硬化させることができる。
【実施例】
【0103】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限するものではない。
〔硬化性樹脂の合成例〕
(合成例1)
300mlのセパラブルフラスコに、精製した2,2’−ビフェノール100g(0.537mol)及びトルエン152mlを投入し、100℃に加熱して固形成分を溶解させ溶液とした。
【0104】
その溶液を100℃に維持しながら、その溶液にトリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物を0.50g(0.0013mol)加え、さらにメチルトリメトキシシランの部分縮合物(多摩化学工業株式会社製、商品名MTMS−A) 55.0gを20分かけて滴下し、120℃で12時間にわたって反応を進めた。その際、副生成物となるメタノールを、溶媒として用いたトルエンとの共沸混合物として反応系外に除去した。
【0105】
反応終了後、アスピレータを用い80℃で、反応溶液からトルエンを減圧除去し、次いで残渣をポリフッ化エチレン系繊維でコーティングした金属製容器に移して、室温まで冷却することによって、固体の生成物112gを得た。
【0106】
得られた生成物の1H−NMR測定及びIR測定を行った。生成物は解けにくいが、重アセトンに含まれる微量の水に分解しながら溶けると考えられる。そのような溶液の1H−NMR測定の結果によれば、メタノール及びメトキシ基が観測されなかった。IR測定の結果を図2に示す。図1は原料となる2,2’−ビフェノールのIRスペクトル、図2は本実施例で得られた生成物のIRスペクトルである。
【0107】
生成物のIR測定の結果から、920〜970cm−1にSi−OArに特徴的なピークが出現していること、及び図1で確認されたフェノール性水酸基のO−Hのピークが消失していることが確認された。以上の結果から、生成物は上記一般式(IV)及び/又は下記一般式(V)で示される構造単位を有する化合物を含有すると推測される。
【0108】
【化14】

【0109】
【化15】

【0110】
(合成例2)
300mlのセパラブルフラスコに、2,2’−ビフェノール(東京化成工業株式会社製、試薬)156g(0.84mol)及びトルエン159mlを投入し、100℃に加熱して固体成分を溶解させ溶液とした。その溶液を100℃に維持しながら、溶液に1,3−ジメチルテトラメトキシジシロキサン(アヅマックス株式会社製販売、試薬)95gを90分かけて滴下し、110℃で5時間にわたって反応を進行させた。
【0111】
その際、副生成物となるメタノールを、溶媒として用いたトルエンとの共沸混合物として反応系外に除去した。反応終了後、アスピレータを用いて約80℃で、反応溶液からトルエンを減圧除去し、次いでその残渣をポリフッ化エチレン系繊維でコーティングした金属製容器に移し、室温まで冷却することによって、生成物182gを固体として得た。
【0112】
得られた生成物のH−NMR測定及びIR測定を行った。生成物のH−NMR測定の結果(図3)から、原料である1,3−ジメチルテトラメトキシジシロキサンのメトキシ基由来のシグナルが、反応開始時を基準として0.9%であることを確認した。生成物のIR測定の結果を図4に示す。
【0113】
図4によれば、920〜970cm−1にSi−OArに特徴的なピークが出現していること及び原料に由来するフェノール性水酸基のO−Hのピーク(図1を参照)が消失していることが確認された。以上の結果から、生成物は先に示した一般式(I)で示される構造単位を有する硬化性樹脂を含有すると推測される。
【0114】
(合成例3)
300mlのセパラブルフラスコに、2,2’−ビフェノール(東京化成工業株式会社製、試薬)155g(0.83mol)及びトルエン222mlを投入し、100℃に加熱して溶解させ溶液とした。その溶液を100℃に維持しながら、溶液にフェニルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社製、商品名AY43−040)110g(0.55mol)を60分かけて滴下し、120〜130℃で42時間にわたって反応を進行させた。
【0115】
その際、副生成物となるメタノールを、溶媒として用いたトルエンとの共沸混合物として反応系外に除去した。反応終了後、アスピレータを用いて約80℃で、反応溶液からトルエンを減圧除去し、次いでその残渣をポリフッ化エチレン系繊維でコーティングした金属製容器に移し、室温まで冷却することによって、生成物197gを固体として得た。
【0116】
得られた生成物のH−NMR測定及びIR測定を行った。生成物のH−NMR測定の結果(図5)から、原料であるフェニルトリメトキシシランのメトキシ基由来のシグナルが、反応開始時を基準として0.6%であることを確認した。生成物のIR測定の結果を図6に示す。
【0117】
図6によれば、920〜970cm−1にSi−OArに特徴的なピークが出現していること及び原料に由来するフェノール性水酸基のO−Hのピーク(図1を参照)が減少していることが確認された。以上の結果から、生成物は先に示した一般式(I)の単位構造を有する硬化性樹脂を含有していると推測される。
【0118】
[導電性ペーストの作製及び評価]
(実施例1)
エポキシ樹脂としては3官能のグリシジルアミン型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名「E630H−LSD」、エポキシ当量94)9.4重量部、硬化剤としては、先の合成例1で得た硬化性樹脂を12.6重量部、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物を0.4重量部用意した。
【0119】
得られた硬化性樹脂は固体であることから液体のエポキシ樹脂と混合させるために、100℃に加熱したホットプレート上にて溶解させ混合した。導電性ペースト全体の体積に対する銀フィラの総体積が77vol%となるようにバインダ成分と銀フィラを混合し、らいかい機にて5分間ごとに2回混練し、その後真空らいかい機にて5分間混練して導電性ペーストを得た。
【0120】
(実施例2)
実施例1と同様にして、合成例2で得た硬化性樹脂を11.7重量部用いて導電性ペーストを作製した。
【0121】
(実施例3)
実施例1と同様にして、合成例3で得た硬化性樹脂を12.7重量部用いて導電性ペーストを作製した。
【0122】
(比較例)
比較例として、バインダ成分は、エポキシ樹脂としてビスフェノールF型エポキシ樹脂(東都化成株式会社製、商品名「YDF−170」、エポキシ当量170)7.5重量部及びビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ株式会社製、商品名「YL−980」、エポキシ当量185)7.5重量部、硬化剤としてジシアンジアミド、硬化促進剤としてイミダゾール(四国化成株式会社製、商品名「C17Z」)を用意した。以下、実施例1と同様にして導電性ペーストを作製した。
【0123】
導電性ペーストの接着強度評価は次のようにして行なった。Ni/Pdメッキしたリードフレーム上に導電性ペーストを膜厚1mm、幅2mm及び長さ2mmに塗布し、シリコンチップ(2mm×2mm×1mm)を載せて180度にて2時間硬化させた。作製した硬化物は、シェア速度500μm/sec、クリアランス100μmの条件でボンドテスター(DAGE社製、2400)を用いて、各温度でのせん断接着強度を測定した。
【0124】
評価結果を図7に示す。
図7に示されるように、実施例の導電性ペーストは熱時における接着強度が良好である。特に、120度及び180度における接着強度が優れており、フラッシュメモリやICタグなどの半導体素子の接着用途に好適であることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】原料となる2,2’−ビフェノールのIRスペクトルを示すグラフである。
【図2】合成例1で得られた生成物のIR測定の結果を示すグラフである。
【図3】合成例2で得られた生成物のH−NMR測定の結果を示すグラフである。
【図4】合成例2で得られた生成物のIR測定の結果を示すグラフである。
【図5】合成例3で得られた生成物のH−NMR測定の結果を示すグラフである。
【図6】合成例3で得られた生成物のIR測定の結果を示すグラフである。
【図7】各温度でのせん断接着強度を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)導電粉、(B)エポキシ樹脂、(C)所定構造の硬化性樹脂及び(D)硬化促進剤からなる導電性ペーストであって、(C)所定構造の硬化性樹脂が、下記一般式(I)又は(II)で示される構造部位を有することを特徴とする導電性ペースト。
【化1】

【化2】

(式中、Arは、炭素数2〜30を有し、芳香族性を示す環状化合物から誘導される基を有する2価の有機基を示す。)
【請求項2】
(C)所定構造の硬化性樹脂が、(a)下記一般式(III)で示されるシラン化合物及びその部分縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物及び(b)フェノール化合物を反応させて得られる硬化性樹脂である請求項1記載の導電性ペースト。
【化3】


(式中、nは、0〜2の数であり、Rは、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の炭化水素基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、Rは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜18の置換又は非置換のオキシ基、炭素数1〜18の置換又は非置換のアミノ基及び炭素数2〜18のカルボニルオキシ基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、またR及びRの2以上が結合して環状構造を形成してもよい。)
【請求項3】
(C)所定構造の硬化性樹脂が、(a)一般式(III)で示されるシラン化合物及びその部分縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物及び(b)フェノール化合物を反応させて得られる硬化性樹脂であって、反応開始時の前記(a)のシラン化合物におけるR基数を基準として、未反応のR基数が10%以下である請求項1又は2記載の導電性ペースト。
【請求項4】
(C)所定構造の硬化性樹脂が、(a)一般式(III)で示されるシラン化合物及びその部分縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物及び(b)フェノール化合物を反応させて得られる硬化性樹脂であって、(b)のフェノール化合物において、フェノール化合物の全重量を基準としてその70重量%以上が2価フェノール化合物である請求項1〜3のいずれかに記載の導電性ペースト。
【請求項5】
(C)所定構造の硬化性樹脂が、(a)一般式(III)で示されるシラン化合物及びその部分縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物及び(b)フェノール化合物を反応させて得られる硬化性樹脂であって、(b)のフェノール化合物において、フェノール化合物の全重量を基準としてその50重量%以上が前記(a)の少なくとも1種の化合物と環化可能なフェノール化合物である請求項1〜4のいずれかに記載の導電性ペースト。
【請求項6】
(C)所定構造の硬化性樹脂が(a)一般式(III)で示されるシラン化合物及びその部分縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物並びに(b)フェノール化合物を反応させて得られる硬化性樹脂であって、(a)の少なくとも1種の化合物において、Rが水酸基又は1価のオキシ基である請求項1〜5のいずれかに記載の導電性ペースト。
【請求項7】
(A)導電粉、(B)エポキシ樹脂、(C)所定構造の硬化性樹脂及び(D)硬化促進剤を分散装置又は溶解装置を用いて均一なペースト状とする請求項1〜6のいずれかに記載の導電性ペースト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−93997(P2009−93997A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−265560(P2007−265560)
【出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】