説明

導電性発泡シート及び導電性発泡樹脂容器

【課題】汚損や電気的な損傷に影響されやすい半導体素子などの部材に接する用途に適した導電性発泡シートの提供と、このような部材の収容に適した導電性発泡樹脂容器の提供を課題としている。
【解決手段】導電性発泡シートに係る本発明は、積層構造を有するシート状に形成されており、前記積層構造が、樹脂組成物によって発泡状態に形成された発泡層と、カーボンブラックを含有する樹脂組成物によって非発泡状態に形成された非発泡層とによって形成されており、前記発泡層を介してその両側に前記非発泡層が形成されている導電性発泡シートであって、前記発泡層を形成する前記樹脂組成物に帯電防止剤を含有させることによって体積抵抗率が1×1010Ω・cm以上1×1013Ω・cm以下のいずれかの値となるように形成されていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性発泡シートと導電性発泡樹脂容器とに関し、より詳しくは、積層構造を有するシート状に形成されており、前記積層構造が、樹脂組成物によって発泡状態に形成された発泡層と、カーボンブラックを含有する樹脂組成物によって非発泡状態に形成された非発泡層とによって形成されており、前記発泡層を介してその両側に前記非発泡層が形成されている導電性発泡シートと、このような導電性発泡シートがシート成形されてなる緩衝性に優れた導電性発泡樹脂容器とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂組成物をシート状に発泡させた発泡シートは、軽量性と緩衝性とが求められる用途において広く用いられている。
特に樹脂発泡体によって容器形状が形成された発泡樹脂容器をシート成形によって作製する際の素材などとして広く用いられている。
なかでも、表裏両面に非発泡な層を設けることによって、非発泡層/発泡層/非発泡層の3層構造が形成されている発泡シートは、該発泡シートによって形成される成形品の強度の向上や表面の平滑性向上を図り得ることから広く用いられている。
【0003】
このような発泡樹脂容器は、IC、LSIなどの半導体パッケージや半導体ベアチップなどといった半導体素子を搬送するための搬送容器としても用いられており、このような用途においては内部に収容する半導体素子に静電気などによる電気的ダメージが加えられることを防止し得るように発泡樹脂容器に帯電防止性を付与することが求められている。
【0004】
ところで、発泡シートのみならず一般的な樹脂シートにおける帯電防止性を付与するための手法としては、シートの形成材料である樹脂組成物に帯電防止剤を含有させることによってその表面抵抗率を低下させる方法が知られている。
この帯電防止剤は、通常、極性の高いポリマーや化合物を含有するもので、これらが樹脂シート内における移行性が高く、シート表面に滲出する、いわゆる“ブリードアウト”と呼ばれる現象を発生させやすいことを利用して表面抵抗率を低下させるものである。
そのため、前記非発泡層の形成材料に帯電防止剤を含有させて発泡樹脂容器の帯電防止を図ると、半導体素子のように付着物を嫌う部材の収容には不向きなものとなってしまうおそれがある。
【0005】
また、帯電防止のための他の手法として、非発泡層の形成に用いる樹脂組成物にカーボンブラックを含有させて導電性を付与して表面抵抗率を低下させることが行われており、例えば、下記特許文献1には、特定のDBP吸油量を示すカーボンブラックを所定の割合で含有させた導電性樹脂発泡体が電子部品などの梱包材として有用であり、この導電性樹脂発泡体として、シート状に押し出し成形された導電性発泡シートを作製することが記載されている。
【0006】
しかし、このような導電性発泡シートの採用によって導電性が付与された導電性発泡樹脂容器は、収容物と容器との擦れ合いや容器どうし擦れ合いなどによって粉塵を発生させやすく該粉塵による収容物の汚損が問題となるおそれがある。
そのためカーボンブラックの使用量を抑制しつつ表面抵抗率を低下させることが重要となるが、従来、このような手法が確立されていない。
したがって、半導体素子を収容させるための容器など、所望の電気特性と周囲への汚染性の低減とが求められる用途に適した緩衝性に優れた導電性発泡シートを得ることが従来困難な状況となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−083804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、例えば、汚損や電気的な損傷に影響されやすい半導体素子などの部材に接する用途に適した導電性発泡シートの提供と、このような部材の収容に適した導電性発泡樹脂容器の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
静電気防止や周囲への汚染性の観点からは、金属トレーを搬送容器として採用することも考え得るが、金属トレーは、導電性発泡樹脂容器に比べて緩衝性に劣るばかりでなく、金属トレーのような導電性に優れた搬送容器を採用すると、別の樹脂容器に蓄積された静電気がこの搬送容器に対して放電された際に、その電流が内部の半導体素子にそのままの状態で伝達されてしまうことになる。
このような点においては、帯電防止性と体積抵抗率との両方の観点から容器の形成材料を選択することが重要となる。
本発明者は、上記課題の解決のためには、導電性発泡シートは、その体積抵抗率が1×1010Ω・cm以上1×1013Ω・cm以下のいずれかであることが好適であり、しかも、このような体積抵抗率を導電性発泡シートに付与するには、発泡層の抵抗値を低減させることが重要であることを見出した。
【0010】
そして、従来、帯電防止のためにシート表面側において表面抵抗率の低下のために用いられていた帯電防止剤を発泡層の形成に用いることで発泡層の気泡膜表面の表面抵抗率を低減させることができ導電性発泡シートの抵抗値を容易に低減させうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、上記課題を解決するための導電性発泡シートに係る本発明は、積層構造を有するシート状に形成されており、前記積層構造が、樹脂組成物によって発泡状態に形成された発泡層と、カーボンブラックを含有する樹脂組成物によって非発泡状態に形成された非発泡層とによって形成されており、前記発泡層を介してその両側に前記非発泡層が形成されている導電性発泡シートであって、前記発泡層を形成する前記樹脂組成物に帯電防止剤を含有させることによって体積抵抗率が1×1010Ω・cm以上1×1013Ω・cm以下のいずれかの値となるように形成されていることを特徴としている。
【0012】
また、導電性発泡樹脂容器に係る本発明は、積層構造を有するシート状に形成されており、前記積層構造が、樹脂組成物によって発泡状態に形成された発泡層と、カーボンブラックを含有する樹脂組成物によって非発泡状態に形成された非発泡層とによって形成されており、前記発泡層を介してその両側に前記非発泡層が形成されている導電性発泡シートがシート成形されて形成された導電性発泡樹脂容器であって、前記導電性発泡シートが、前記発泡層を形成する前記樹脂組成物に帯電防止剤を含有させることによって1×1010Ω・cm以上1×1013Ω・cm以下のいずれかの体積抵抗率となるように形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の導電性発泡シートは、帯電防止剤によって発泡層の抵抗値が低減されることから粉塵などの発生要因となりうるカーボンブラックの使用を抑制させることができる。
しかも、発泡層の両側に非発泡層が形成されている態様の導電性発泡シートにおいて、上記のように帯電防止剤を利用することから、発泡層から導電性発泡シートの表面への帯電防止剤の移行に対するバリア層として非発泡層を機能させることができ発泡層の形成材料に用いた帯電防止剤がシート表面にブリードアウトすることを抑制させうる。
すなわち、本発明によれば導電性発泡シートを汚損や電気的な損傷を受けやすい部材に接する用途に適したものとすることができ、前記部材の収容に適した緩衝性に優れた導電性発泡樹脂容器が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る導電性発泡シートの構造を示す断面図。
【図2】導電性発泡シートの製造方法に用いる装置構成を示す概略図。
【図3】合流金型の構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る実施形態として導電性発泡シートの断面図である図1を参照しつつ説明する。
図1に示すように、本実施形態における導電性発泡シート1は、上面側と下面側とのそれぞれの表面を構成する表面層11,12とその間に形成された中間層20との3層の積層構造を有している。
【0016】
この表面層11,12は、いずれも非発泡状態となるように形成されている。
本実施形態の導電性発泡シート1においては、図1における上側の表面層11(以下「第一非発泡層11」ともいう)と、下側の表面層12(以下「第二表面層12」ともいう)とは、必ずしも、その構成を一致させている必要はなく、それぞれの厚みを異ならせていても良い。
また、中間層20は、発泡状態に形成されている。
すなわち、本実施形態の導電性発泡シート1は、この中間層20(以下「発泡層20」ともいう)を介してその両側に非発泡層を有する状態に形成されている。
本実施形態においては、この中間層20の厚みやその発泡倍率も特に限定するものではなく適宜選択が可能である。
【0017】
なお、前記表面層(非発泡層)の“非発泡状態”とは、完全に非発泡な状態である必要はなく、実質的に非発泡な状態となっていればよい。
例えば、体積で、5%以下程度であれば気泡を含有していても実質的に非発泡な状態であるということができ、本発明における“非発泡”との用語は、このような状態のものまでをも含む意図で用いている。
【0018】
本実施形態に係る導電性発泡シート1が、半導体素子などを収容させるための導電性発泡樹脂容器の形成に用いられるような場合においては、前記第一非発泡層11と前記第二非発泡層12の厚みは、厚くさせるほうが導電性発泡樹脂容器に優れた強度を付与させうるとともに、後述する発泡層20の帯電防止剤が導電性発泡シート1の表面に移行することをより確実に防止させうる。
すなわち、収容物に対する汚染防止効果と強度とに優れた導電性発泡樹脂容器を形成させ得る。
一方で、過度に前記第一非発泡層11と前記第二非発泡層12の厚みを厚くすると導電性発泡樹脂容器に適度な緩衝性(クッション性)と軽量性とを付与することが困難となる。
このような観点においてこれら非発泡層の厚みは、それぞれ、50μm以上150μm以下の内のいずれかであることが好ましい。
【0019】
一方で発泡層20の厚みや、その発泡倍率は、この導電性発泡シート1が導電性発泡樹脂容器の形成に用いられるような場合においては、導電性発泡樹脂容器に求められる軽量性や強度などといった観点から適宜選択されうる。
この発泡層20の発泡倍率が高く、厚みが厚いほど導電性発泡樹脂容器に優れた緩衝性が付与される一方で、発泡倍率を向上させて過度に発泡層20の厚みを厚くしたりすると導電性発泡樹脂容器に十分な強度を付与させることが困難になるおそれがあるとともに発泡層20の電気抵抗値を十分低減させることが困難となって導電性発泡シート1を1×1010Ω・cm以上1×1013Ω・cm以下のいずれかの体積抵抗率とすることが困難になるおそれを有する。
【0020】
このような観点において発泡層20の厚みは、1.5mm以上5.0mm以下のいずれかであることが好ましく、見掛け密度が0.18g/cm3以上0.6g/cm3以下の範囲の内のいずれかとなる発泡倍率であることが好ましい。
【0021】
また、第一非発泡層11と第二非発泡層12とは、上記のようにそれぞれの厚みを異ならせていても、同一であっても良く、その形成に用いられる樹脂組成物も同一であっても、異なっていても良い。
さらに、前記発泡層20に用いられる樹脂組成物も前記第一非発泡層11や前記第二非発泡層12と成分を共通させてもよく異ならせていても良い。
【0022】
前記第一非発泡層11や前記第二非発泡層12の形成に用いられる樹脂組成物は、一般的な導電性発泡シートの形成に用いられている樹脂組成物を挙げることができる。
【0023】
例えば、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂や、ポリスチレン系樹脂などの熱可塑性樹脂をベースポリマーとして含有する樹脂組成物が好適に用いられ得る。
なかでも、ポリオレフィン系樹脂がベースポリマーとして用いられることが好適であり、第一非発泡層11や第二非発泡層12の形成には、ポリオレフィン系樹脂がベースポリマーとして用いられたポリオレフィン系樹脂組成物が好適に用いられうる。
【0024】
前記ポリエチレン(PE)系樹脂としては、高密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、直鎖低密度ポリエチレン樹脂、(高圧法)低密度ポリエチレン樹脂、超低密度ポリエチレン樹脂などが挙げられる。
【0025】
前記ポリプロピレン(PP)系樹脂としては、プロピレン成分のみからなるホモポリプロピレン樹脂、プロピレン成分以外にエチレンなどのオレフィン成分を含有するランダム共重合体やブロック共重合体が挙げられる。
特に、高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)樹脂は、ベースポリマーとして好適である。
この高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)樹脂は、例えば、Borealis社から、商品名「WB130HMS」、「WB135HMS」、及び「WB140HMS」、Basell社から、商品名「Pro−fax F814」、日本ポリプロ社から、商品名「FB3312」、「FB5100」、「FB7200」、及び「FB9100」として市販されているものが挙げられる。
なお、ポリプロピレン系樹脂として、共重合体が用いられる場合には、プロピレン以外のオレフィンを共重合体中に0.5重量%以上30重量%以下、特に好ましくは1重量%以上10重量%以下のいずれかの割合で含有させたものを用いることが望ましい。
この場合のオレフィン成分としては、エチレン、あるいは、炭素数4以上10以下のα−オレフィンを挙げることができる。
【0026】
また、本実施形態のポリオレフィン系樹脂組成物には、これら以外に、エチレン−アクリル酸エチル共重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリブテン樹脂、ポリ−4−メチルペンテン−1樹脂などのポリオレフィン系樹脂を前記ベース樹脂の一部として含有させうる。
【0027】
前記ポリスチレン系樹脂を用いる場合には、スチレン系単量体から選ばれる1種以上の重合体や、スチレン系単量体と該スチレン系単量体と共重合可能なビニル系単量体との共重合体が挙げられる。
前記スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、i−プロピルスチレン、t−ブチルスチレン、ジメチルスチレンが挙げられる。
また、前記ビニル系単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレートが挙げられる。
【0028】
また、本実施形態において非発泡層の形成に用いる樹脂組成物には、これらポリオレフィン系樹脂やポリスチレン系樹脂以外のポリマー成分をベースポリマーとして使用することができ、ポリオレフィン系樹脂やポリスチレン系樹脂とともにその他のポリマー成分を混合して用いることも可能である。
【0029】
前記第一非発泡層11や前記第二非発泡層12の形成に用いられる樹脂組成物には、このようなポリマー成分にカーボンブラックを含有させることによって導電性が付与されている。
このカーボンブラックとしては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、サーマルブラック、ファーネスブラックなどと呼ばれる一般的なカーボンブラックを採用することができる。
このカーボンブラックは、高充填させることで非発泡層の抵抗を低減(導電性を向上)させることが可能になる反面粉塵の発生原因ともなりうる。
したがって、非発泡層の形成に用いる樹脂組成物においては、カーボンブラックが、前記ベースポリマーを含め、全てのポリマー成分100重量部に対して、10重量部以上30重量部以下のいずれかとなる割合で含有されていることが好ましい。
【0030】
なかでも、一次粒子径が30nm以上40nm以下で、DBP吸油量が130cm3/100g以上180cm3/100g以下であるアセチレンブラックが好適である。
【0031】
なお、このようなカーボンブラックは、前記第一非発泡層11や前記第二非発泡層12の形成に用いられる樹脂組成物に、該樹脂組成物を非発泡な状態でシート化した時のシートの表面抵抗率が1×104Ω以上1×108Ω以下のいずれかとなるように含有させることが好ましい。
【0032】
さらには、非発泡層の形成に用いる樹脂組成物には、上記のような成分に加えて、一般的な樹脂シートの形成材料として用いられる添加剤を含有させることができ、例えば、耐候剤や老化防止剤といった各種安定剤、滑剤などの加工助剤、スリップ剤、顔料、充填剤などをさらに含有させることができる。
【0033】
なお、このような添加剤を第一非発泡層11や第二非発泡層12に用いる樹脂組成物に含有させる場合においては、前記発泡層20において用いられる帯電防止剤などの移行性の高い添加剤を含有させないことが好ましい。
【0034】
前記発泡層20の形成に用いる樹脂組成物は、上記に示したような非発泡層の形成に用いられるポリマー成分に、さらに、発泡のための成分と、帯電防止剤とを含有させたものを用いることができる。
【0035】
なお、前記第一非発泡層11や前記第二非発泡層12とともに発泡層20を共押し出しして導電性発泡シート1を作製するにあたって、非発泡層と発泡層との界面の親和性を向上させることができ、非発泡層と発泡層との剥離に要する力(剥離強度)が大きな導電性発泡シートを容易に形成させ得る点においてこれらのベースポリマーをある程度共通させておくことが好ましい。
例えば、非発泡層と発泡層とのいずれの形成においてもポリオレフィン系樹脂組成物を用いることで強度に優れた導電性発泡シートを得ることができる。
【0036】
本実施形態においては、前記帯電防止剤として、低分子型のものや、高分子型のものを特に限定せずに採用することができるが、通常、帯電防止剤は、ポリプロピレン系樹脂やポリエチレン系樹脂などのベースポリマーに比べて高価であり、特に高分子型帯電防止剤は、高価で、しかも、低分子型帯電防止剤に比べて比較的大量に含有させなければ表面抵抗率を低下させることが難しい。
そのため、本実施形態の導電性発泡シートに用いる帯電防止剤としては、比較的安価で入手が容易で、少量の使用で発泡層20の抵抗値を低減させうる点において低分子型帯電防止剤の方が高分子型帯電防止剤より好適であるといえる。
該低分子型帯電防止剤としては、非イオン系低分子型帯電防止剤、アニオン系低分子型帯電防止剤、カチオン系低分子型帯電防止剤、両性系低分子型帯電防止剤が挙げられる。
【0037】
前記非イオン系低分子型帯電防止剤としては、例えば、ポリエチレングリコ−ル等のアルコール系帯電防止剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等のエーテル系帯電防止剤、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等のエステル系帯電防止剤、脂肪族アルキルアミン、脂肪族アルキルエステルアミン等のアミン系帯電防止剤、ポリオキシエチレングリセリド等のグリセリン系帯電防止剤、アルキルアルカノ−ルアミド等のアミド系帯電防止剤などが挙げられる。
また、アニオン系低分子型帯電防止剤としては、アルキルスルホン酸塩などが挙げられ、カチオン系低分子型帯電防止剤としては、テトラアルキルアンモニウム塩などが挙げられ、両性系低分子型帯電防止剤としては、アルキルベタインなどが挙げられる。
【0038】
なお、前記高分子型帯電防止剤としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエステルアミド、ポリエーテルエステルアミドなどのアイオノマーやその第四級アンモニウム塩や、ポリエーテル−ポリオレフィンブロック共重合体(ポリエーテル系ブロックとポリオレフィン系ブロックのブロック共重合体)などのオレフィン系ブロックと親水性ブロックとの共重合体等が挙げられる。
【0039】
これらの内、ベースポリマーにポリプロピレン系樹脂が採用される場合には、低分子型帯電防止剤として脂肪族アルコールと脂肪族アミンとを組み合わせて用いることが特に好適である。
なお、低分子型帯電防止剤は、前記第一非発泡層11や前記第二非発泡層12によって導電性発泡シート1の表面へのブリードアウトが抑制されうるものの移行性が高く過分に含有させると第一非発泡層11や第二非発泡層12を通過して導電性発泡シート1の表面に滲出してしまうおそれがある。
また、必要以上の含有量としても、導電性発泡シート1の材料コストを増大させるばかりで、それ以上に発泡層20の導電性向上を期待することが難しくなるおそれも有する。
【0040】
このような点において、ポリプロピレン系樹脂がベースポリマーとして採用されているポリオレフィン系樹脂組成物に、脂肪族アルコールと脂肪族アミンとが組み合わされて用いられている低分子型帯電防止剤を含有させる場合には、通常、樹脂組成物に含まれるポリマー成分100重量部に対して、0.4重量部以上5.0重量部以下の範囲の内のいずれかの割合となるように前記低分子型帯電防止剤が含有されることが好ましい。
【0041】
また、要すれば、発泡層のさらなる電気抵抗値の調整を目的として、上記非発泡層の形成材料において例示したカーボンブラックを、この帯電防止剤とともに発泡層の形成材料に含有させることも可能である。
【0042】
前記発泡のための成分としては、例えば、少なくともベースポリマーの融点において気体状態となるガス成分や、該ガス成分によって気泡を形成させる際の核となる核剤や、少なくともベースポリマーの融点において熱分解を生じて気体が発生される熱分解型発泡剤などが挙げられる。
【0043】
前記ガス成分としては、プロパン、ブタン、ペンタンなどの脂肪族炭化水素;1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン(HCFC−141b)、1−クロロ−1,1−ジフルオロエタン(HCFC−142b)、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HCFC−124)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a)などのフロン系ガス成分;窒素、二酸化炭素、アルゴン、水などが挙げられる。
なお、これらのガス成分は単独で使用されても複数併用されてもよい。
【0044】
前記核剤としては、例えば、タルク、マイカ、シリカ、珪藻土、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カリウム、硫酸バリウム、ガラスビーズなどの無機化合物粒子、ポリテトラフルオロエチレン、などの有機化合物粒子などが挙げられる。
この核剤は、例えば、ポリオレフィン系樹脂に予め含有させたマスターバッチ方式で発泡層の形成材料に含有させることができ、前記核剤を5重量%以上50重量%以下のいずれかのとなるようにポリオレフィン系樹脂に分散させたマスターバッチを用いることで、核剤をより効果的に使用することができる。
【0045】
さらに、加熱分解型の発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウムとクエン酸の混合物などが挙げられる。
この加熱分解型の発泡剤については、10重量%以上50重量%以下のいずれかの含有量となるようにポリオレフィン系樹脂に分散させてマスターバッチ化することで、より効果的に使用することができる。
【0046】
通常、樹脂組成物が発泡されてなる成形体を電極で挟んで厚み方向に電圧を印加すると電流は、気泡の間に僅かに存在する気泡膜を通過することになり、樹脂組成物にカーボンブラックなどの導電性の成分を含有させてその電気抵抗値を十分低減させている場合以外は、一般的な超絶縁抵抗計を用いた測定では体積抵抗率を求めるのに十分な電流値を観察することが困難で、測定限界以上となってしまう。
しかし、発泡層を形成させるための樹脂組成物にその電気抵抗の低下に十分な量となるカーボンブラックを含有させると樹脂組成物の流動性が低下して気泡の成長が抑制されたり、連続気泡が形成されたりして所望の発泡状態を得ることが困難となる。
また、成形時における伸びを低下させる結果、この成形体の切断面からカーボンブラックを含んだ粉塵が多量に発生されるおそれも有する。
【0047】
本実施形態においては、上記に示したように帯電防止剤が、気泡膜表面においてその表面抵抗率を低下させるのに有効に作用する。
したがって、気泡膜の表面を伝っての電路が発泡成形体の内部に形成されることでその体積抵抗率の値が低減される。
すなわち、本実施形態においては、発泡状態の形成が困難となることや、粉塵発生が懸念されるカーボンブラックの大量配合を防止しつつ発泡層の抵抗値を低減させることができる。
【0048】
このような導電性発泡シートは、図2、図3に示すような装置を用いて作製されうる。
なお、図2は、導電性発泡シート1の製造装置にかかる概略構成図であり、図3は、図2にも示されている合流金型(符号XH)の内部の様子を示す断面図である。
【0049】
この図2に示されているように、本実施形態における導電性発泡シートの製造装置には、タンデム押し出し機である第1押し出し機70と、シングル押し出し機である第2押し出し機80の2系列の押し出し機が備えられている。
また、これらの押し出し機において溶融混練された樹脂組成物が合流される合流金型XHと、該合流金型XHで合流された樹脂組成物を筒状に吐出するサーキュラーダイCDとが備えられている。
【0050】
さらに、この製造装置には、サーキュラーダイCDから筒状に吐出された導電性発泡シートを空冷する冷却装置CLと、この筒状の導電性発泡シートを拡径して所定の大きさの筒状にするためのマンドレルMDと、該マンドレルMD通過後の導電性発泡シートをスリットして2枚のシートに分割するスリット装置(図示せず:図2においては上下に分割する様子のみを示す)と、スリットされた導電性発泡シート1を複数のローラ91を通過させた後に巻き取るための巻き取りローラ92が備えられている。
【0051】
前記第1押し出し機70は、発泡層20を形成させるためのものであり、その上流側の押し出し機(以下「上流側押し出し機70a」ともいう)には、発泡層20を形成させるための樹脂組成物(以下「発泡性樹脂組成物」ともいう)を投入するためのホッパー71と、炭化水素などのガス成分をシリンダー内に供給するためのガス導入部72が設けられている。
そして、この上流側押し出し機70aの下流側には、ベース樹脂とガス性成分とを含有する発泡性樹脂組成物を溶融混練して合流金型XHに吐出するための押し出し機(以下「下流側押し出し機70b」ともいう)が備えられている。
【0052】
また、前記第2押し出し機80は、第一非発泡層11と第二非発泡層12とを形成させるためのものであり、非発泡層を形成するための樹脂組成物(以下「非発泡性樹脂組成物」ともいう)をホッパー81から投入して、シリンダー内部で非発泡性樹脂組成物を溶融混練して合流金型XHに吐出すべく構成されている。
【0053】
前記合流金型XHは、図3にその概略断面図を示すように、図3正面視右側から左側に向けて中心部を貫通する第一の樹脂流路W1と、この第一の樹脂流路W1の途中において該第一の樹脂流路W1内に樹脂を流入させるための第二の樹脂流路W2と、この第二の樹脂流路W2よりも上流側(図3正面視右側)において該第一の樹脂流路W1内に樹脂を流入させるための第三の樹脂流路W3とが形成されている。
前記第二の樹脂流路W2は、樹脂流路W1を形成する壁面に開口された円環状のスリットS1から樹脂流路W1に樹脂組成物を流入させ得るように形成されており、前記第三の樹脂流路W3は、前記第一の樹脂流路W1の中心部に開口端を配した管体Pに接続され、第一の樹脂流路W1の中心部に樹脂組成物を流入させ得るように形成されている。
【0054】
前記第一の樹脂流路W1は、その上流側が第1押し出し機70に接続され、下流側がサーキュラーダイCDに接続されており、前記第2の樹脂流路W2及び前記第三の樹脂流路W3は、第2押し出し機80から非発泡性樹脂組成物を流入させ得るように分配管Dを介して第2押し出し機80に接続されている。
すなわち、本実施形態の合流金型XHは、第一の樹脂流路W1の下流側において、非発泡性樹脂組成物/発泡性樹脂組成物/非発泡性樹脂組成物の3重構造となる円柱状の流れをサーキュラーダイCDに向けて供給しうるように備えられている。
【0055】
そして、サーキュラーダイCDは、合流金型XHから流入される3重(中心部の非発泡製樹脂組成物/その外側の発泡性樹脂組成物/及びその外側の非発泡製樹脂組成物)の樹脂組成物の流れが筒状に広げられ、しかも、拡径された状態とされて吐出孔から共押し出しされるべく形成されている。
【0056】
このような装置によって導電性発泡シートを作製するには、まず、第1押し出し機70のホッパー71から発泡層20の形成に用いる樹脂材料を投入し、且つ第2押し出し機80に非発泡性樹脂材料を投入し、樹脂の溶融温度以上での溶融混練を各押し出し機内で実施させた後にサーキュラーダイCDから共押し出しする方法が挙げられる。
なお、発泡性樹脂組成物や非発泡性樹脂組成物に添加剤等を含有させる場合には、これらも併せてホッパーから投入して各押し出し機で溶融混練を実施させればよい。
【0057】
これらの押し出し機の内、第1押し出し機70においては、発泡のための成分を溶融混練させる必要があることから、上流側押し出し機70aに設けられたガス導入部72からガス成分を圧入して溶融樹脂との混合が実施される。
前記サーキュラーダイCDから共押し出しするためには、第1押し出し機70における上流側押し出し機70aで溶融混練された発泡性樹脂組成物を、下流側押し出し機70bで押し出し発泡に適した温度に調整して合流金型XHへと送り、一方で第2押し出し機80では、非発泡性樹脂組成物を第一、第二非発泡層11、12の形成に適した温度に調整して合流金型XHへと送って溶融樹脂による積層構造を合流金型XH内に形成させることが重要である。
【0058】
そして、合流金型XH内で合流されたそれぞれの樹脂組成物を、サーキュラーダイCDの円環状の吐出孔から円筒状に共押し出しさせ、前記発泡性樹脂組成物においては発泡させて発泡層20を形成させ、前記非発泡性樹脂組成物においては非発泡層を形成させる。
このとき発泡層20の形成においては、ガス成分によって無数の気泡が内部に形成されるとともにこの気泡と気泡との間に樹脂組成物による薄い気泡膜が形成される。
【0059】
この発泡層の形成に用いる樹脂組成物には、帯電防止剤が含有されていることから溶融状態の発泡性樹脂組成物が発泡による気泡形成をしつつ冷却凝固される際に、この帯電防止剤が気泡膜の表面に移行してその表面抵抗の低下に有効に作用することとなる。
すなわち、気泡膜表面に帯電防止剤がブリードアウトされた状態となることから発泡層の形成材料におけるカーボンブラックの使用を抑制しつつ気泡膜の表面抵抗率を大きく低下させうる。
特に、発泡層の形成にポリオレフィン系樹脂組成物が採用されている場合には、ポリオレフィン系樹脂は、一般に極性が低く帯電防止剤(特に低分子型の帯電防止剤)に対して相溶性が低いことから、含有させた帯電防止剤を、より多く気泡膜の表面に析出させて抵抗値の低下に有効に活用させることができる。
【0060】
また、本実施形態にかかる導電性発泡シートは、その体積抵抗率に対して与える影響が大きい発泡層部分の体積抵抗率が低減されることから、第一非発泡層や第二非発泡層の側においてカーボンブラックの含有量を低減させることができ、カーボンブラックの使用を抑制しつつ導電性発泡シートの体積抵抗率を1×1010Ω・cm以上1×1013Ω・cm以下のいずれかの値とすることができる。
したがって、非発泡層によって形成される導電性シートの表面をより滑らかな状態にさせ得る。
非発泡層の表面滑性が向上することで、この導電性発泡シートや、この導電性発泡シートによって形成される成形品の美観の向上を図ることができ、しかも、表面摩擦が抑制されることから、他の部材との擦れ合いによる粉塵の発生が抑制されうる。
【0061】
このように、本実施形態の導電性発泡シートは、粉塵などの原因となるおそれがあるカーボンブラックの使用量を抑制しつつ、半導体素子などを収容させるための導電性発泡樹脂容器の形成に好適な体積抵抗率(1×1010Ω・cm以上1×1013Ω・cm以下)とさせることができる。
すなわち、本実施形態の導電性発泡シートは、汚損や電気的な損傷を受けやすい半導体素子などの部材に接する状態で使用するのに好適な導電性発泡シートであるといえる。
【0062】
なお、得られたシートの表面抵抗率の値は、JIS K 6911:1995「熱硬化性プラスチックー般試験方法」記載の方法に準拠して求めることができる。
具体的には、試験装置(アドバンテスト社製、デジタル超高抵抗/微少電流計R8340及びレジスティビティ・チェンバR12702A)を使用し、試料に約30Nの荷重にて電極を圧着させ500Vの電圧を印加して1分経過後の抵抗値を測定し、下記式(1)により算出することができる。
このとき用いる試料のサイズとしては、通常、一辺が10cmの平面正方形状(厚みは、10mm以下)のものを用いることができる。

ρs=π(D+d)/(D−d)×Rs ・・・(1)

ただし、
ρs:表面抵抗率(MΩ)
D:表面の環状電極の内径(cm)
d:表面電極の内円の外径(cm)
Rs:表面抵抗(MΩ)
【0063】
また、得られたシートの体積抵抗率の値は、JIS K 6911:1995「熱硬化性プラスチックー般試験方法」記載の方法に準拠して求めることができる。
具体的には、試験装置(アドバンテスト社製、デジタル超高抵抗/微少電流計R8340及びレジスティビティ・チェンバR12702A)を使用し、試料に約30Nの荷重にて電極を圧着させ500Vの電圧を印加して1分経過後の抵抗値を測定し、下記式(2)により算出することができる。
このとき用いる試料のサイズとしては、通常、一辺が10cmの平面正方形状(厚みは、10mm以下)のものを用いることができる。

ρv=πd2/(4t)×Rv ・・・(2)

ただし、
ρv:体積抵抗率(MΩ・cm)
d:表面電極の内円の外径(cm)
t:試料の厚み(cm)
Rv:表面抵抗(MΩ・cm)
【0064】
なお、このような体積抵抗率を有する導電性発泡シートは、真空成形や真空圧空成形などといった一般的なシート成形法を採用することによって、簡便に、所望の容器形状に成形加工することができる。
例えば、導電性発泡樹脂容器として、発泡トレーなどを、この導電性発泡シートを素材に用いたシート成形で作製させた場合には、トレー全体が導電性発泡シートによって形成されることから、導電性発泡シートの電気特性が発泡トレーに反映されることとなり、この発泡トレーの底板部や側壁部の体積抵抗率も、通常、1×1010Ω・cm以上1×1013Ω・cm以下のいずれかとなる。
【0065】
この発泡トレーを半導体素子の収容・搬送容器として用いた場合には、発泡トレーが適度な電気抵抗を有する状態に形成されていることで発泡トレーに静電気が蓄積されることが防止されるとともに、静電気が蓄積された他の容器などからこの発泡トレーに放電がなされたとしても、内部に収容されている半導体素子に大きなダメージが加えられることを抑制させ得る。
しかも、カーボンブラックなどによる粉塵の発生や、トレー表面への帯電防止剤のブリードアウトが抑制されることから、半導体素子を清浄な状態で収容させうる。
【0066】
また、容器全体が導電性発泡シートによって形成されておらず、半導体素子を収容するための容器の一部のみを構成する場合、例えば、半導体素子どうしを仕切る間仕切り板などの一部の部材として導電性発泡シートを容器に用いる場合などでも、半導体素子に接する用途において付着物などによる汚損や電気的ダメージを防ぐ効果が発揮されるという点においては同様である。
【0067】
上記実施形態においては、発泡層を介してその両側に非発泡層を前記発泡層に接するように配した3層構造の導電性発泡シートを例示しているが、例えば、帯電防止剤を含有する樹脂組成物によって形成された発泡層と、前記非発泡層との間に、異なる発泡層を設けて2層の非発泡層の間に複数の発泡層が形成されている場合や、発泡層を介して上下両方にそれぞれ複数の非発泡層を形成させている場合など種々の積層構造を有する場合も本発明の意図する範囲である。
また、ここでは詳述しないが、導電性発泡シートや導電性発泡樹脂容器について従来公知の技術事項を、本発明の効果が著しく損なわれない範囲において本発明に採用することができる。
【実施例】
【0068】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0069】
(実施例1)
導電性発泡シートの作製には、図2に示すような装置構成と同種の設備を用いた。
すなわち、第1押し出し機70より発泡性樹脂組成物が流入される樹脂流路W1の上流側及び下流側の二箇所において第2押し出し機80より分岐管Dを介して非発泡性樹脂組成物が流入されるように、第1、第2押し出し機を合流金型XHに接続させ、該合流金型XHの下流側にサーキュラーダイCDを接続して共押し出しを実施した。
【0070】
まず、第1押し出し機として、口径が90mmの単軸押し出し機(上流側押し出し機)と、該単軸押し出し機に接続された口径が115mmの単軸押し出し機(下流側押し出し機)とからなるタンデム型押し出し機を用意した。
発泡層用のポリプロピレン系樹脂として、Borealis社製の商品名「WB135HMS」(メルトテンション31g、メルトインデックス2.4g/10分)に、該樹脂に100重量部対する割合が、0.2重量部となる重曹−クエン酸系発泡剤(大日精化社製、商品名「ファインセルマスターPO410k」)と、1.5重量部となる帯電防止剤(脂肪族アルコールと脂肪族アミン混合物、花王社製、商品名「TS−2B」)とが添加された混合物を作製し、この混合物を上流側の口径が90mmの単軸押し出し機一段目のホッパーに供給し、200℃で加熱溶融した後、この溶融樹脂100重量部に対する割合が、4重量部となるようにガス成分であるブタン(イソブタン/ノルマルブタン=35/65wt%)を圧入し、混練した。
この発泡性樹脂組成物を、接続管を通して下流側の押し出し機70bに供給し、発泡性樹脂組成物の温度を170℃にまで下げ、100kg/時間の吐出量で押し出し機先端に接続された合流金型XHに供給した。
【0071】
一方、第2押し出し機80として口径60mmの単軸押し出し機を用意し、表面層となる非発泡層形成用の導電樹脂層として大日精化工業社製のカーボンブラックのマスターペレット90重量%と、ポリプロピレン系樹脂としてBorealis社製の商品名「WB135HMS」(メルトテンション31g、メルトインデックス2.4g/10分)10重量%とを混合してなる混合物を、前記第2押し出し機に供給して、200℃で加熱溶融した後、押し出し機の先端部に設けられた単管にて190℃に維持した。
【0072】
ついで、この溶融状態の非発泡性樹脂組成物を、分岐流路を有する分配管で二分した後、合流金型XHの管体PとスリットS1とから、それぞれの合計が20kg/時間となる量で吐出させ、発泡性樹脂組成物の内層側と外層側に積層合流させた後、合流金型先端に接続されたサーキュラーダイ(口径110mm、スリット間隙0.95mm)から120kg/時間となる樹脂吐出量で円筒状に共押し出しさせることによって発泡層を介してその内外両側に非発泡層が積層された導電性発泡シートを形成させた。
この導電性発泡シートは、さらに冷却されている直径200mmのマンドレル上に添わせて拡径させるとともに、その外面をエアリングからエアーを吹き付けて冷却し、該マンドレル上の一点でカッターにより切開して平板状とした。
【0073】
得られた、平板状の導電性発泡シートの表面固有抵抗値は、5.0×104Ωであり、体積抵抗率は、3.0×1011Ω・cmであった。
【0074】
(比較例1)
発泡層の形成材料に帯電防止剤(花王社製、商品名「TS−2B」)を含有させなかったこと以外は、実施例1と同様に導電性発泡シートを作製した。
この比較例1の導電性発泡シートの表面抵抗率は、2.0×104Ωであり、体積抵抗率は、3.0×1015Ω・cmであった。
【0075】
この実施例1の導電性発泡シートと比較例1の導電性発泡シートの電気特性の違いからも、同じ表面抵抗率を有していながらも、発泡層の形成材料に帯電防止剤を含有させることで半導体素子などの収容容器の形成材料に適した体積抵抗率を有する導電性発泡シートを形成させ得ることがわかる。
【符号の説明】
【0076】
1:導電性発泡シート、11、12:非発泡層、20:発泡層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層構造を有するシート状に形成されており、前記積層構造が、樹脂組成物によって発泡状態に形成された発泡層と、カーボンブラックを含有する樹脂組成物によって非発泡状態に形成された非発泡層とによって形成されており、前記発泡層を介してその両側に前記非発泡層が形成されている導電性発泡シートであって、
前記発泡層を形成する前記樹脂組成物に帯電防止剤を含有させることによって体積抵抗率が1×1010Ω・cm以上1×1013Ω・cm以下のいずれかの値となるように形成されていることを特徴とする導電性発泡シート。
【請求項2】
前記発泡層と前記非発泡層との形成に用いられている樹脂組成物が、いずれも、ポリエチレン系樹脂、又は、ポリプロピレン系樹脂をベースポリマーとしたポリオレフィン系樹脂組成物である請求項1記載の導電性発泡シート。
【請求項3】
前記発泡層と前記非発泡層とが共押し出しされて形成されたものである請求項1又は2記載の導電性発泡シート。
【請求項4】
半導体素子を収容するための容器の形成に用いられ、前記半導体素子に接する箇所を形成させるべく用いられる請求項1乃至3のいずれかに記載の導電性発泡シート。
【請求項5】
積層構造を有するシート状に形成されており、前記積層構造が、樹脂組成物によって発泡状態に形成された発泡層と、カーボンブラックを含有する樹脂組成物によって非発泡状態に形成された非発泡層とによって形成されており、前記発泡層を介してその両側に前記非発泡層が形成されている導電性発泡シートがシート成形されて形成された導電性発泡樹脂容器であって、
前記導電性発泡シートが、前記発泡層を形成する前記樹脂組成物に帯電防止剤を含有させることによって1×1010Ω・cm以上1×1013Ω・cm以下のいずれかの体積抵抗率となるように形成されていることを特徴とする導電性発泡樹脂容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−214625(P2010−214625A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−61165(P2009−61165)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】