説明

導電性部材、プロセスカートリッジ及び画像形成装置

【課題】長期にわたって使用されても、クラックの発生を防止することができる、耐久性に優れた導電性部材を提供する
【解決手段】導電性支持体、導電性支持体上に形成された電気抵抗調整層、及び、電気抵抗調整層の表面に表面層、を有する導電性部材において、電気抵抗調整層が、熱可塑性樹脂組成物、高分子型イオン導電材料、及び、熱可塑性樹脂組成物及び高分子型イオン導電材料の両方に対して親和性を有するグラフトコポリマー、を含む樹脂組成物から構成され、電気抵抗調整層が、高分子型イオン導電材料が海部分となり、かつ、熱可塑性樹脂組成物が海部分中に分散した細長い筋状の島部分となった、海島構造を有し、かつ、海部分と島部分との間に、(C)(A)熱可塑性樹脂組成物及び高分子型イオン導電材料の両方に対して親和性を有するグラフトコポリマーからなる層が形成されている導電性部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、レーザービームプリンタ、ファクシミリなどの電子写真方式において、像担持体に対して近接配置される導電性部材であって、帯電部材、現像材担持体、転写部材等に応用できる導電性部材、かかる導電性部材を用いるプロセスカートリッジ、かかるプロセスカートリッジを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、レーザービームプリンタ、ファクシミリなどの電子写真方式には、像担持体(感光体)に対して帯電処理を行う帯電部材や、感光体上のトナーに対して転写処理を行う転写部材として、導電性部材が用いられている。以下、帯電部材として導電性部材を用いた場合について説明する。
【0003】
図1は電子写真方式の画像形成装置の概略図である。図1中符号11は静電潜像が形成される静電潜像担持体(感光体)、12は接触あるいは近接配置されて帯電処理を行う帯電部材(帯電ローラ)、13はレーザー光あるいは原稿の反射光等の露光、14は像担持体上の静電潜像にトナー15を付着させるトナー担持体(現像ローラ)、16は感光体上のトナー像を記録媒体17に転写処理する転写部材(転写ローラ)、18は転写処理後の感光体をクリーニングするためのクリーニング部材(ブレード)である。なお、19は感光体上に残留したトナーがクリーニング部材により除去された排トナー、210は現像装置、211はクリーニング装置を示す。
【0004】
なお、図1は、他の電子写真プロセスにおいて通常必要な機能ユニットは、説明上必要としないので省略してある。
【0005】
このような画像形成装置では次のような手段で、画像の形成を行う。
1.帯電ローラが、感光体の表面を所望の電位に帯電する。
【0006】
2.露光装置が、感光体に画像光を投射して、所望の画像に対応する静電潜像を、感光体上に形成する。
【0007】
3.現像ローラが、静電潜像をトナーによって現像し、感光体上にトナー像(顕像)を形成する。
【0008】
4.転写ローラが、感光体上のトナー像を、記録紙に転写する。
【0009】
5.クリーニング装置が、転写されず像担持体上に残留したトナーを清掃する。
【0010】
6.転写ローラによって、トナー像を転写された記録紙は、不図示の定着装置へと搬送される。定着装置は、トナーを加熱及び加圧して記録紙上に定着する。
【0011】
上記の1から6の手順を繰り返すことによって、記録紙上に所望の画像が形成されていく。
【0012】
ここで、従来の帯電ローラを用いた帯電方式には、像担持体に帯電ローラを接触させる接触帯電方式のものがあるが、このような従来の接触帯電方式には、
(1)帯電ローラを構成している物質が帯電ローラから染み出し、これが被帯電体の表面に付着移行して帯電ローラ跡を残すこと、
(2)帯電ローラに交流電圧を印加したときに、被帯電体に接触している帯電ローラが振動するので、帯電音が発生すること、
(3)像担持体上のトナーが帯電ローラに付着する(特に、上述の染み出しによって、よりトナー付着がおこりやすくなる。)ので、帯電ローラの帯電性能が低下すること、
(4)帯電ローラを構成している物質が像担持体へ付着すること、及び、
(5)像担持体を長期停止したときに、帯電ローラが永久変形すること、
といった問題があった。
【0013】
このような問題を解決する方法として、帯電ローラを感光体に近接させる近接帯電方式が考案されている(特開平3−240076号公報(特許文献1)、特開2001−312121公報(特許文献2)、特開2005−91818公報(特許文献3)等)。帯電ローラと感光体との最近接距離(空隙)が50〜300μmになるように対向させ、帯電ローラに電圧を印加することにより、感光体の帯電を行うものである。この近接帯電方式では、帯電装置と感光体が接触していないために、接触帯電装置で問題となる「帯電ローラを構成している物質の感光体への付着」「感光体を長期停止したときに生ずる、永久変形」は問題とならない。また、「感光体上のトナー等が帯電ローラに付着することによる帯電性能の低下」に関しても、帯電ローラに付着するトナーが少なくなるため、近接帯電方式が優れている。
【0014】
近接帯電方式に使用される帯電ローラの要求特性は、接触帯電方式に使用される帯電ローラのそれとは異なる。接触帯電方式で一般的に用いられてきた帯電ローラは、芯金の周囲に加硫ゴム等の弾性体が被覆された構成になっている。接触帯電方式では感光体を均一に帯電させるため、感光体に対して帯電ローラが均一に接触することが必要とされるからである。
【0015】
近接帯電方式において、このような弾性体で形成された帯電ローラを使用した場合に、以下の不具合が生じる。
【0016】
1.感光体−帯電ローラ間の空隙を形成させるために帯電ローラ両端の非画像領域にスペーサ等の空隙保持部材を介在し近接させる必要があるが、弾性体で形成された帯電ローラの場合、弾性体の変形により空隙を均一にすることが困難である。その結果、帯電電位変動やそれに起因する画像ムラが発生してしまう。
【0017】
2.弾性体を形成する加硫ゴム材料は、経時でのへたり、変形が生じやすく、そのため経時で空隙が変動する。
【0018】
上記不具合を解消するために、非弾性体である熱可塑性樹脂を用いることが考えられる。これにより、感光体−帯電ローラ間の空隙を均一にすることが可能である。
【0019】
帯電ローラによる感光体ドラム表面への帯電メカニズムは帯電ローラ・感光体ドラム間の微小放電におけるパッシェンの法則に従った放電であることが知られている。感光体ドラムを所定の帯電電位に保持する機能を得るためには、熱可塑性樹脂の電気抵抗値を半導電性領域(10〜10Ωcm程度)に制御することが必要となる。
【0020】
電気抵抗調整層の電気抵抗値を制御する方法としては、電気抵抗調整層を形成する熱可塑性樹脂中にカーボンブラック等の導電性材料を分散させる方法が一般的である。しかし、導電性材料を用いて電気抵抗調整層を上記のような半導電性領域に設定しようとすると、抵抗値のバラツキが大きく、部分的帯電不良等の画像欠陥が発生するなどの問題がある。
【0021】
電気抵抗値を制御するための別の手段としてはイオン導電性の材料を使用することが考えられる。イオン導電性材料はマトリックス樹脂中に分子レベルで分散するため、導電性顔料が分散する上記のものに比べて抵抗値のばらつきが小さく、部分的な帯電不良は画像品質的に問題とならない。しかしながら、低分子量のイオン導電性材料はマトリックス樹脂の表面にブリードアウトしやすい性質があり、帯電ローラ表面へブリードアウトした場合にトナーの固着を発生させてしまい、画像不良の不具合を引き起こす。
【0022】
ブリードアウトを避けるためには、高分子型のイオン導電性材料を使用することが考えられる。この場合、イオン導電性材料がマトリックス樹脂中に分散固定化され、表面へのブリードアウトが起こり難い。このようなブリードアウトの少ない高分子型のイオン導電性材料としては、四級アンモニウム塩基を有する高分子型イオン導電性材料が提案されている(特許第3180861号(特許文献4))。しかしながら、このような高分子型イオン導電性材料の場合には、電気抵抗値の温湿度環境依存性が大きく、その添加割合や温湿度環境によっては低電気抵抗化に伴う異常放電や高電気抵抗化に伴う帯電不良等の問題が発生する。特に、低温低湿度(LL)環境において異常放電による画像不良の発生する可能性が高い。
【0023】
また、このような高分子型導電剤分散系(特開2005−92134公報(特許文献5)記載の技術等も含む)において高分子型イオン導電材料が海島状分散の島部分となった場合には、電流が絶縁性のマトリックス樹脂に妨げられるため、抵抗調整層の抵抗値が半導電性領域まで低下しなかったり、抵抗値の電圧依存性が大きくなるという問題がある。加えて、海島状分散の分散粒径が大きい場合には成形時に発生するウェルド部分の強度が低下したり、抵抗値が変動するという問題があげられる。この強度低下のため、機械強度の低い樹脂や相溶性の悪い樹脂をマトリックス樹脂として用いた場合には、使用時の電気的・機械的ストレスや経時・環境での体積変動により抵抗調整層のウェルド部分(抵抗調整層成形時に形成されるウェルドライン等)にクラックが発生するという不具合が発生する。また、ウェルド部分の抵抗変動(電気的抵抗の部分的不均一)が部分的画像不良の不具合を引き起こす場合がある。
【特許文献1】特開平3−240076号公報
【特許文献2】特開2001−312121公報
【特許文献3】特開2005−91818公報
【特許文献4】特許第3180861号
【特許文献5】特開2005−92134公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたもので、その目的とすることは、長期にわたって使用されても、クラックの発生を防止することができる、耐久性に優れた導電性部材、その導電性部材を有するプリセスカートリッジ及び画像形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の導電性部材は上記課題を解決するために、請求項1に記載の通り、導電性支持体、該導電性支持体上に形成された電気抵抗調整層、及び、該電気抵抗調整層の表面に表面層、を有する導電性部材において、(イ)前記電気抵抗調整層が、(A)熱可塑性樹脂組成物、(B)高分子型イオン導電材料、及び、(C)前記(A)熱可塑性樹脂組成物及び前記(B)高分子型イオン導電材料の両方に対して親和性を有するグラフトコポリマー、を含む樹脂組成物から構成され、(ロ)前記電気抵抗調整層が、前記(B)高分子型イオン導電材料が海部分となり、かつ、前記(A)熱可塑性樹脂組成物が該海部分中に分散した細長い筋状の島部分となった、海島構造を有し、かつ、(ハ)前記海部分と前記島部分との間に、前記(C)前記(A)熱可塑性樹脂組成物及び前記(B)高分子型イオン導電材料の両方に対して親和性を有するグラフトコポリマーからなる層が形成されていることを特徴とする導電性部材である。
【0026】
また、本発明の導電性部材は請求項2に記載の通り、導電性支持体、該導電性支持体上に形成された電気抵抗調整層、及び、該電気抵抗調整層の表面に表面層、を有する導電性部材において、(イ)前記電気抵抗調整層が、(A)ポリカーボネート、(B)ポリエーテルエステルアミド、及び、(C)前記(A)ポリカーボネート及び前記(B)ポリエーテルエステルアミドの両方に対して親和性を有するグラフトコポリマー、を含む樹脂組成物から構成され、(ロ)前記電気抵抗調整層が、前記(B)ポリエーテルエステルアミドが海部分となり、かつ、前記(A)ポリカーボネートが該海部分中に分散した細長い筋状の島部分となった、海島構造を有し、かつ、(ハ)前記海部分と前記島部分との間に、前記(C)前記(A)ポリカーボネート及び前記(B)ポリエーテルエステルアミドの両方に対して親和性を有するグラフトコポリマーからなる層が形成されていることを特徴とする導電性部材である。
【0027】
また、本発明の導電性部材は請求項3に記載の通り、請求項1または請求項2に記載の導電性部材において、前記導電性部材が、長手方向を有する形状を有し、かつ、前記島部分が、該島部分の細長い筋状の島の長手方向が、該導電性部材の長手方向に一致するように、配向していることを特徴とする。
【0028】
また、本発明の導電性部材は請求項4に記載の通り、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の導電性部材において、前記島部分の短手方向の幅が10μm以下であることを特徴とする。
【0029】
また、本発明の導電性部材は請求項5に記載の通り、請求項2ないし請求項4のいずれか1項に記載の導電性部材において、前記樹脂組成物の中の、前記(A)ポリカーボネートの配合量と前記(B)ポリエーテルエステルアミドの配合量との重量和を100重量部としたときに、前記(B)ポリエーテルエステルアミドの配合量が50重量部以上90重量部以下であり、かつ、前記(C)前記ポリカーボネート及び前記(B)ポリエーテルエステルアミドの両方に対して親和性を有するグラフトコポリマーの配合量が1重量部以上15重量部以下であることを特徴とする。
【0030】
また、本発明の導電性部材は請求項6に記載の通り、請求項2ないし請求項5のいずれか1項に記載の導電性部材において、前記(C)前記(A)ポリカーボネート及び前記(B)ポリエーテルエステルアミドの両方に対して親和性を有するグラフトコポリマーが、主鎖としてポリカーボネートと、側鎖としてアクリロニトリル−スチレン−グリシジルメタクリレート共重合体と、を有するグラフトコポリマーであることを特徴とする。
【0031】
また、本発明の導電性部材は請求項7に記載の通り、請求項2ないし請求項6のいずれか1項に記載の導電性部材において、前記抵抗調整層をなす樹脂組成物が、(A)ポリカーボネート、(B)ポリエーテルエステルアミド、及び、(C)前記(A)ポリカーボネート及び前記(B)ポリエーテルエステルアミドの両方に対して親和性を有するグラフトコポリマー、を溶融混練してなることを特徴とする。
【0032】
また、本発明の導電性部材は請求項8に記載の通り、請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の導電性部材において、前記表面層が、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、及び、ポリビニルブチラール樹脂から選ばれた1種以上を含む樹脂組成物からなることを特徴とする。
【0033】
また、本発明の導電性部材は請求項9に記載の通り、請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の導電性部材において、前記表面層が、導電剤が分散した樹脂組成物からなることを特徴とする。
【0034】
また、本発明の導電性部材は請求項10に記載の通り、請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の導電性部材において、円筒形状であることを特徴とする。
【0035】
本発明の導電性部材は請求項11に記載の通り、請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の導電性部材において、前記導電性部材が帯電部材であることを特徴とする。
【0036】
本発明のプロセスカートリッジは請求項12に記載の通り、請求項11に記載の導電性部材を有することを特徴とするプロセスカートリッジである。
【0037】
本発明の画像形成装置は請求項13に記載の通り、請求項12に記載のプロセスカートリッジを有することを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0038】
本発明の導電性部材によれば、成形時に形成されるウェルド部分でのクラック発生を予め防止し、長期間の使用にも耐える、耐久性に優れた導電性部材とすることができる。
【0039】
請求項2にかかる導電性部材によれば、用いる熱可塑性樹脂組成物及び高分子型イオン導電材料が帯電部材として最適化されている。
【0040】
請求項3にかかる導電性部材によれば、長手方向を有する長尺形状の導電部材であっても、クラック防止効果をより一層、効果的に高めることができる。
【0041】
請求項4にかかる導電性部材によれば、抵抗調整層の抵抗値ばらつきに伴う部分的な帯電不良を効果的に抑制することができる。
【0042】
請求項5にかかる導電性部材によれば、抵抗調整層に要求される強度及び抵抗値を容易に実現することができる。
【0043】
請求項6にかかる導電性部材によれば、抵抗調整層に要求される分散粒径、すなわち海島構造における所望の大きさの島を容易に得ることができる。
【0044】
請求項7にかかる導電性部材によれば、主鎖としてポリカーボネートと側鎖としてアクリロニトリル−スチレン−グリシジルメタクリレート共重合体とを有するグラフトコポリマーを配合することで、高分子型イオン導電材料及び熱可塑性樹脂組成物に対して相溶化剤として作用させることができ、その結果、導電材料の使用時の電気的・機械的ストレスや経時または環境変化に伴う体積変動によりウェルド部分に発生するクラックをより効果的に抑制することができる。
【0045】
請求項8にかかる導電性部材によれば、表面層の非粘着性を容易に確保することができ、例えばこのような導電性部材を帯電部材として画像形成装置に用いた場合にも、汚れなどの付着を効果的に防止することができ、そのとき、良好な画像形成が長期間に亘って可能となる。
【0046】
請求項9にかかる導電性部材によれば、表面層として要求される電気抵抗値を容易に得ることができる。
【0047】
請求項10にかかる導電性部材によれば、導電性部材が円筒形状となるので、このような導電性部材を回転させて使用することで、導電性部材の同一箇所からの連続通電による導電性部材表面の部分的劣化を防止することができるため、導電性部材の長寿命化を図ることができる。
【0048】
請求項11にかかる導電性部材によれば、画像形成装置に好適に用いることができる。
【0049】
請求項12にかかるプロセスカートリッジによれば、上記導電性部材を備えた着脱可能なプロセスカートリッジとなるので、メンテナンス等が容易となる。
【0050】
請求項13にかかる画像形成装置によれば、成形時に形成されるウェルド部分でのクラック発生を予め防止し、長期間の使用にも耐える、耐久性に優れた帯電部材を有しているので、メンテナンスの頻度が少ない、かつ、帯電部材のウェルド部分での画像の乱れのなく、良好な画像形成が可能な優れた画像形成装置である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
<画像形成装置>
以下に、本発明の実施形態の一例を図面に基づいて説明する。図2は本発明の導電性部材を帯電部材として用いた場合の帯電装置、及び、プロセスカートリッジを用いる画像形成装置の構成を示す概略図である。図3は、図2の画像形成装置の画像形成部の構成を示す概略図である。この画像形成装置1は、表面に感光体層を有するドラム状であってイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色に対応する分の個数分の像担持体61と、各像担持体61をほぼ一様に帯電する帯電装置100と、帯電された像担持体61にレーザ光で露光して静電潜像を形成する露光装置70と、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色の現像剤を収容し、像担持体61上の静電潜像に対応するトナー像を形成する現像装置63と、像担持体61上のトナー像を転写する1次転写装置62と、像担持体61上のトナー像が転写されるベルト状の中間転写体50と、中間転写体50のトナー像を転写する2次転写装置51と、中間転写体50のトナー像が転写される記録媒体上のトナー像を定着させる定着装置80と、さらに、像担持体61上に転写後残留するトナーを除去するクリーニング装置64とを備える。記録媒体は、記録媒体を収納する給紙装置21、22のひとつから、1枚ずつ搬送経路を搬送ローラでレジストローラ23まで搬送され、ここで、像担持体61上のトナー像と同期を計って転写位置に搬送される。
【0052】
図2に示すように、画像形成装置1における露光装置70は、帯電装置100により帯電された像担持体61に光を照射して、光導電性を有する像担持体61上に静電潜像を形成する。光Lは、蛍光灯、ハロゲンランプ等のランプ、LED、LD等の半導体素子によるレーザ光線等であっても良い。ここでは、図示しない画像処理部からの信号により像担持体61の回転速度に同期して照射される場合は、LDの素子を用いる。
【0053】
現像装置63は、現像剤担持体を有し、現像装置63内に貯蔵されたトナーを供給ローラで攪拌部に搬送されて、キャリアを含む現像剤と混合・攪拌され、像担持体61に対向する現像領域に搬送される。このときに、正または負極性に帯電されたトナーは、像担持体61の静電潜像に転移して現像される。現像剤は、磁性または非磁性の一成分現像剤またはこれらを併せて使用するものであっても良いし、湿式の現像液を用いるものであっても良い。
【0054】
1次転写装置62は、像担持体61上の現像されたトナー像を中間転写体50の裏側からトナーの極性と反対の極性の電場を形成して、中間転写体50に転写する。1次転写装置62は、コロトロン、スコロトロンのコロナ転写器、転写ローラ、転写ブラシのいずれの転写装置であっても良い。その後、給紙装置22から搬送されてくる記録媒体と同期させて、再度2次転写装置51による転写で記録媒体上にトナー像を転写する。ここで、最初の転写が中間転写体50ではなく、記録媒体に直接転写する方式であっても良い。
【0055】
定着装置80は、記録媒体上のトナー像を、加熱及び/または加圧して記録媒体上にトナー像を固定して定着させる。ここでは、1対の加圧・定着ローラの間を通過させ、このときに熱・圧力をかけて、トナーの結着樹脂を溶融しながら定着させる。定着装置80は、ローラ状ではなく、ベルト状であっても良いし、ハロゲンランプ等で熱照射により定着させるものであっても良い。像担持体61のクリーニング装置64は、転写されずに像担持体61上に残留したトナーをクリーニングして除去し、次の画像形成を可能にする。クリーニング装置64は、ウレタン等のゴムによるブレード、ポリエステル等の繊維によるファーブラシ等のいずれの方式であっても良い。
【0056】
以下、本発明の画像形成装置1の動作について説明する。読み取り部30は、原稿搬送部36の原稿台上に原稿をセットするか、又、原稿搬送部36を開いてコンタクトガラス31上に原稿をセットし、原稿搬送部36を閉じて原稿を押さえる。
【0057】
そして、図示しないスタートスイッチを押すと、原稿搬送部36に原稿をセットしたときは原稿をコンタクトガラス31上へと搬送して後、他方コンタクトガラス31上に原稿をセットしたときは直ちに、第1読み取り走行体及び第2読み取り走行体32、33を走行する。そして、第1読み取り走行体32で光源から光を発射するとともに原稿面からの反射光をさらに反射して第2読み取り走行体33に向け、第2読み取り走行体33のミラーで反射して結像レンズ34を通して読取りセンサであるCCD35に入れ、画像情報を読み取る。読み取った画像情報をこの制御部に送る。制御部は、読み取り部30から受け取った画像情報に基づき、画像形成部60の露光装置70内に配設された図示しないLDまたはLED等を制御して像担持体61に向けて、書き込みのレーザ光Lを照射させる。この照射により、像担持体61の表面には静電潜像が形成される。
【0058】
給紙部20は、多段に備える給紙カセット21から給紙ローラにより記録媒体を繰り出し、繰り出した記録媒体を分離ローラで分離して給紙路に送り出し、画像形成部60の給紙路に記録媒体を搬送ローラで搬送する。この給紙部20以外に、手差し給紙も可能となっており、手差しのための手差しトレイ、手差しトレイ上の記録媒体を手差し給紙路に向けて一枚ずつ分離する分離ローラも装置側面に備えている。レジストローラ23は、それぞれ給紙カセット21に載置されている記録媒体を1枚だけ排出させ、中間転写体50と2次転写装置51との間に位置する2次転写部に送る。画像形成部60では、読み取り部30から画像情報を受け取ると、上述のようなレーザ書き込みや、現像プロセスを実施させて像担持体61上に潜像を形成させる。
【0059】
現像装置63内の現像剤は、図示しない磁極により汲み上げて保持され、現像剤担持体上に磁気ブラシを形成する。さらに、現像剤担持体に印加する現像バイアス電圧により像担持体61に転移して、その像担持体61上の静電潜像を可視化して、トナー像を形成する。現像バイアス電圧は、交流電圧と直流電圧を重畳させている。次に、トナー像に応じたサイズの記録媒体を給紙させるべく、給紙部20の給紙ローラのうちの1つを作動させる。また、これに伴なって、駆動モータで支持ローラの1つを回転駆動して他の2つの支持ローラを従動回転し、中間転写体50を回転搬送する。同時に、個々の画像形成ユニットでその像担持体61を回転して像担持体61上にそれぞれ、ブラック・イエロー・マゼンタ・シアンの単色画像を形成する。そして、中間転写体50の搬送とともに、それらの単色画像を順次転写して中間転写体50上に合成トナー像を形成する。
【0060】
一方、給紙部20の給紙ローラの1つを選択回転し、給紙カセット21の1つから記録媒体を繰り出し、分離ローラで1枚ずつ分離して給紙路に入れ、搬送ローラで画像形成装置1の画像形成部60内の給紙路に導き、この記録媒体をレジストローラ23に突き当てて止める。そして、中間転写体50上の合成トナー像にタイミングを合わせてレジストローラ23を回転し、中間転写体50と2次転写装置51との当接部である2次転写部に記録媒体を送り込み、この2次転写部に形成されている2次転写バイアスや当接圧力などの影響によってトナー像を2次転写して記録媒体上にトナー像を記録する。ここで、2次転写バイアスは、直流であることが好ましい。画像転写後の記録媒体は、2次転写装置の搬送ベルトで定着装置80へと送り込み、定着装置80で加圧ローラによる加圧力と熱の付与によりトナー像を定着させた後、排出ローラ41で排紙トレイ40上に排出する。
【0061】
<プロセスカートリッジ>
ここで、本発明の導電性部材が帯電部材として用いられる場合について、帯電装置100で詳細に説明する。図4は、本発明の導電部材を帯電部材として用いる帯電装置、及び、プロセスカートリッジの構成を示す概略図である。プロセスカートリッジとは、少なくとも、像担持体61と帯電装置100、クリーニング装置64を含むものであり、図4のように、現像装置63が含まれる場合もある。プロセスカートリッジは、それ自体が一体で画像形成装置に着脱自由なものである。図4に基づいて説明すると、像担持体61の表面は画像形成領域が非接触で配置された帯電部材により一様に帯電され、画像(潜像)形成後に現像によって可視化され、トナー像が記録媒体に転写される。記録媒体に転写されずに像担持体上に残ったトナーは、補助クリーニング部材64dによって回収される。その後、像担持体61の表面へのトナー及び、トナー構成材料の付着を防止するために、固体潤滑剤64aを塗布部材64bで像担持体61上に一様に塗布し滑剤層を形成する。その後、クリーニング部材64cで補助クリーニング部材で回収しきれなかったトナーを回収し排トナー回収部へ搬送する。補助クリーニング部材は、ローラ形状、ブラシ形状があり、固体潤滑剤としては、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩類、ポリテトラフルオロエチレン等、像担持体上の摩擦係数を低減して、非粘着性を付与できるものであれば良い。クリーニング部材はシリコーン、ウレタン等のゴムによるブレード、ポリエステル等の繊維によるファーブラシ等が挙げられる。
【0062】
帯電装置100は、帯電部材101の汚染を除去するためのクリーニング部材102を備える。クリーニング部材102の形状は、ローラ状、パッド形状でもよいが、本発明ではローラ形状とした。クリーニング部材102は、帯電装置100の図示しないハウジングに設けられる軸受に嵌合され、回転可能に軸支される。このクリーニング部材102は、帯電部材101に当接して、外周面をクリーニングする。帯電部材101の表面にトナー、紙粉、部材の破損物等の異物が付着すると、電界が異物部分に集中するために優先的に放電が生ずる異常放電を起こす。逆に、電気的絶縁性の異物が広い範囲に付着すると、その部分では放電が生じないために、像担持体61に帯電斑が生ずる。このために、帯電装置100には帯電部材101の表面をクリーニングするクリーニング部材102を設けることが好ましい。クリーニング部材としては、ポリエステル等の繊維によるブラシ、メラミン樹脂等の多孔質(スポンジ)のようなものを用いることができる。クリーニング部材は、帯電部材に連れ回り、線速差を持って回転、離間して間欠等の形式で回転させても良い。
【0063】
また、帯電装置100は、帯電部材101に電圧を印加する電源を備える。電圧としては、直流電圧だけでも良いが、直流電圧と交流電圧を重畳した電圧が好ましい。帯電部材101の層構成が不均一な部分がある場合には、直流電圧のみを印加すると像担持体61の表面電位が不均一になることがある。重畳した電圧では、帯電部材101表面が等電位となり、放電が安定して像担持体61を均一に帯電させることができる。重畳する電圧における交流電圧は、ピ−ク間電圧を像担持体61の帯電開始電圧の2倍以上にすることが好ましい。帯電開始電圧とは、帯電部材101に直流のみを印加した場合に像担持体61が帯電され始めるときの電圧の絶対値である。これにより、像担持体61から帯電部材101への逆放電が生じ、そのならし効果で像担持体61をより安定した状態で均一に帯電させることができる。また、交流電圧の周波数は像担持体の周速度(プロセススピード)の7倍以上であることが望ましい。7倍以上の周波数にすることにより、モアレ画像が(目視)認識できなくなる。
【0064】
本発明の実施例では、補助クリーニング部材はブラシローラ、滑剤はステアリン酸亜鉛をブロック状に形成し、塗布部材であるブラシローラに、バネ等の加圧部材で加圧することにより、塗布ローラで固体潤滑剤ブロックから削り取った固体潤滑剤を像担持体へ塗布するような構成である。クリーニング部材はウレタンブレードを用いカウンター方式とした。また、帯電部材のクリーニング部材は、メラミン樹脂のスポンジローラを用いて、帯電部材と連れ回りで回転させる方式とすることにより、帯電部材の表面の汚れを良好にクリーニングできる。
【0065】
図5は、本発明の導電性部材である帯電部材と、像担持体の感光層領域及び、画像領域、非画像領域の位置関係を示す概略図である。帯電装置100は、像担持体61に対向し、微少間隙Gを設けて配設される帯電部材101と、帯電部材を清掃するクリーニング部材102と、帯電部材101に電圧を印加する図示しない電源と、帯電部材101を像担持体に61に加圧して接触させる不図示の加圧スプリングとを少なくとも備える。帯電部材101は、図4及び図5に示すように、像担持体61に微少間隙Gを持たせて対向して配設される。帯電部材101と像担持体61の間隙Gは、空隙保持部材103を帯電部材101の非画像形成領域に当接させて形成する。感光層領域に空隙保持部材を当接させることにより、感光層の塗布厚がばらついても、空隙のばらつきを防止することができる。
【0066】
帯電部材101は図5に示すように、導電性支持体上106に形成された、電気抵抗調整層104の両端に、空隙保持部材103を配置する。さらに、電気抵抗調整層104上にはトナー及び、トナー添加剤が付着しにくいように、表面に保護層105が形成されている。
【0067】
帯電部材101の形状は、特に限定されず、ベルト状、ブレード(板)状、半円柱状で固定されて配設されていても良い。また、帯電部材101の形状が円柱状で、両端をギアまたは軸受で回転可能に支持されていても良い。このように、帯電部材101は、像担持体61への最近接部から、像担持体61移動方向の上下流に漸次離間する曲面で形成されていると、像担持体61をより均一に帯電させることができる。像担持体61に対向する帯電部材101が、先鋭な部分があると、その部分の電位が高くなるために優先的に放電が開始され、像担持体61の均一な帯電が困難になる。従って、円柱状の形状で、曲面を有することで均一な像担持体61の帯電が可能になる。また、帯電部材101の放電している表面は強いストレスを受ける。放電が常に同じ面で発生するので、その劣化が促進され、さらに、削り落ちることがある。そのために、帯電部材101の全面を放電する面として使用できるのであれば、回転させることで、早期の劣化を防止することで、長期にわたって使用することができる。
【0068】
<空隙及び、空隙形成方法>
帯電部材101と像担持体61との間隙Gは、空隙保持部材103により100μm以下、特に、5〜70μm程度の範囲にする。これにより、帯電装置100の作動時における異常画像の形成を抑えることができる。間隙Gが、100μm以上では、像担持体61に到達するまでの距離も長くなることで、パッシェンの法則の放電開始電圧が大きくなり、さらに、像担持体61までの放電空間が大きくなることで、像担持体61を所定の帯電をさせるためには放電による放電生成物が多量に必要となり、これが画像形成後も放電空間に多量に残留し、像担持体61に付着して、像担持体61の経時劣化を促進する原因になる。また、この間隙Gが小さいと、像担持体61までの到達距離も短く、放電エネルギーも小さくても像担持体61を帯電させることができる。しかし、帯電部材101と像担持体61により形成される空間が狭くなり、空気の流が悪くなってしまう。そのために、放電空間で形成された放電生成物はこの空間内に滞留するために、間隙Gが大きい場合と同様に、画像形成後も放電空間に多量に残留し、像担持体61に付着して、像担持体61の経時劣化を促進する原因になる。従って、放電エネルギーを小さくして放電生成物の生成を少なくし、かつ、空気が滞留しない程度の空間を形成することが好ましい。そのために、間隙Gは、100μm以下であって、5〜70μmの範囲にすることが好ましい。これにより、ストリーマ放電の発生を防止し、放電生成物の生成を少なくして像担持体61に堆積する量を少なくして、斑点状の画像斑・像流れを防止することができる。
【0069】
ここで、像担持体61上に現像後に残留するトナーは、像担持体61に対向して設けられるクリーニング装置64によりクリーニングされるが、完全に除去するのは困難であり、極わずかのトナーがクリーニング装置64を通過し、帯電装置100へと搬送されてくる。このときに、トナーの粒径が間隙Gより大きいと、トナーは回転する像担持体61や帯電部材101により摺擦されて熱を帯び、帯電部材101に融着することがある。このトナーが融着した部分は、像担持体61に近くなるために優先的に放電が生ずる異常放電を起こす。従って、間隙Gは、画像形成装置1に用いられるトナーの最大粒径よりも大きいことが好ましい。
【0070】
また、帯電部材101は、図4、図5に示すように、帯電装置100の図示しないハウジングの側板に設けられる軸受に嵌合され、軸受には従動しない摩擦係数の低い樹脂による軸受に設ける圧縮バネ106により像担持体61表面方向に押圧されている。これにより、機械的振動、芯金の偏位があっても一定の間隙Gを形成することができる。押圧する荷重は、4〜25Nにする。好ましくは、6〜15Nにする。帯電部材101は、軸受107で固定されていても、回転するときの振動、帯電部材101の偏心、その表面の凹凸により間隙Gの大きさが変動し、間隙Gが適正な範囲からはずれる場合があり、このために、経時的には像担持体61の劣化を促進することになる。ここで、荷重とは、空隙保持部材103を通して像担持体61に加わるすべての荷重を意味する。これは、帯電部材101の両端に設けられる圧縮バネ108の力、帯電部材101とクリーニング部材102の自重等により調整できる。荷重が小さいと、帯電部材101の回転時による変動、駆動するギア等の衝撃力による跳ね上がりを抑えることができない。荷重が大きいと、帯電部材101と嵌合する軸受107との摩擦が大きくなり、経時的な摩耗量を大きくして変動を促進することになる。従って、荷重を4〜25N、好ましくは、6〜15Nの範囲にすることにより、間隙Gを適正な範囲にして、放電生成物の生成を少なくして像担持体61に堆積する量を少なくして像担持体61の寿命を延ばし、かつ、斑点状の異常画像・画像流を防止することができる。
【0071】
空隙保持部材103は空隙保持部材103の一部が電気抵抗調整層と高低差を有している。空隙の形成する方法としては、抵抗調整層と空隙保持部材103を切削、研削等の除去加工により同時加工することにより形成することができる。空隙保持部材103と抵抗調整層を同時加工することにより、空隙を高精度に形成することが可能となる。
【0072】
空隙保持部材の電気抵抗調整層と隣接する部分の高さを、電気抵抗調整層の高さと同一、もしくは低く形成することで、空隙保持部材と感光体との接触幅が低減され、導電性部材と感光体との空隙を高精度にすることができる。このようにすることで、空隙保持部材の抵抗調整層側端部の外表面が像担持体に当接することを防止することができ、この端部を介して隣接する抵抗調整層が像担持体に接触してリーク電流が発生してしまうことを防止することが可能となる。また、空隙保持部の抵抗調整層側の端部を低く加工することによって、この部分を、除去加工を行う際の切削刃等の逃げ代(逃げ加工)とすることができる。なお、逃げ代(逃げ加工)の形状は、空隙保持部の端部の外表面が像担持体に当接しないような形状であるならばどのような形状であっても良い。
【0073】
さらに、表面層をコーティングする際のマスキングを抵抗調整層と空隙保持部材の境界で行うことは、ばらつきを考慮すると制御が難しく、段差を形成する際に、抵抗調整層と同一もしくは、低く形成された空隙保持部まで表面層を形成することで、抵抗調整層上に確実に表面層を形成することができる。
【0074】
<空隙保持部材について>
空隙保持部材103の必要な特性としては、感光体との空隙を環境及び、長期(経時)に渡って安定して形成することであり、そのためには、吸湿性、耐摩耗性が小さい材料が望ましい。また、トナー及び、トナー添加剤が付着しにくいことや、感光体と当接し、摺動するために、感光体を摩耗させないということも重要であり、種々の条件に応じて、適宜選択されるものである。具体的には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアセタール(POM)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリスチレン(PS)およびその共重合体(AS、ABS)等の汎用樹脂、ポリカーボネート(PC)、ウレタン樹脂、フッ素樹脂(PTFE)等があげられる。特に空隙保持部材を確実に固定するためには、接着剤を塗布して接着することができる。また、空隙保持部材は絶縁性材料が好ましく、体積固有抵抗で10^13Ωcm以上であることが好ましい。絶縁性が必要である理由は、感光体とのリーク電流の発生を無くすためである。空隙保持部材は、成型加工により成形されたものである。
【0075】
<電気抵抗調整層について>
抵抗調整層の体積固有抵抗は10〜10Ωcmであることが望ましい。10Ωcmを越えると、帯電能力や転写能力が不足してしまい、10Ωcmよりも体積固有抵抗が低いと、感光体全体への電圧集中によるリークが生じてしまう。
【0076】
電気抵抗調整層は高分子型イオン導電材料(島部分)が分散された熱可塑性樹脂組成物(海部分)により形成され、かつ、これら島部分と海部分との境界には、両者に親和性を有しているグラフトコポリマー層が配された構造を有している。このような構成により、海部分のポリマーと島部分のポリマーとがともに電気抵抗調整層の機械的特性向上に寄与し、従来の単純な海島構造体では得られない機械的特性が得られる。
【0077】
すなわち、上記電気抵抗調整層が、(A)ポリカーボネート、(B)ポリエーテルエステルアミド、及び、(C)前記(A)ポリカーボネート及び前記(B)ポリエーテルエステルアミドの両方に対して親和性を有するグラフトコポリマー、を含む樹脂組成物から構成され、前記電気抵抗調整層が、前記(B)ポリエーテルエステルアミドが海部分となり、かつ、前記(A)ポリカーボネートが該海部分中に分散した細長い筋状の島部分となった、海島構造を有し、かつ、前記海部分と前記島部分との間に、前記(C)前記(A)ポリカーボネート及び前記(B)ポリエーテルエステルアミドの両方に対して親和性を有するグラフトコポリマーからなる層が形成されていることが必要である。
【0078】
このような電気抵抗調整層に用いられる(A)熱可塑性樹脂組成物としてのポリカーボネートは構造単位中に炭酸エステル型構造を有する熱可塑性樹脂であり、下記化学式(I)で示される重合体(ポリマー)で構成されるもの(式中、R、Rは水素原子、またはメチル基である。nは自然数である)であって、それ自体は公知の樹脂であるが、重合体中のカルボニル基とジオキシ基とで構成されるカーボネート結合は、分子間引力が非常に強いので、ポリカーボネートは力学的強度、クリープ特性等に優れており、特にその耐衝撃強度は、他の熱可塑性樹脂と比較して格段に優れている。
【0079】
【化1】

【0080】
また(B)高分子型イオン導電材料としてのポリエーテルエステルアミドは、下記の化学式(II)(式中、R、R、Rはそれぞれ炭素数が1〜20のアルキル基である。lは自然数である。)で示される共重合体であって、ポリアミド単位のハード成分とポリエーテル単位のソフト成分とからなるものであり、公知の共重合体である。ポリエーテルエステルアミドは、イオン導電性の高分子材料であるので、マトリックスポリマー中に分子レベルで均一に分散固定化され、そのために、金属酸化物、カーボンブラック等の電子伝導系導電剤を分散した組成物にみられるような分散不良に伴う部分的な電気抵抗値のばらつきが生じない。また、導電性部材として、高い電圧が印加される場合には、電子伝導系導電剤の場合では、局所的に電気の流れやすい経路が形成されるため、像担持体へのリーク電流が発生し、特に画像形成装置の帯電部材として応用した場合、異常画像である白・黒ポチ画像が発生するが、ポリエーテルエステルアミドの場合は、高分子材料であるため、ブリードアウトが生じ難く、このような異常画像の発生は予防される。
【0081】
【化2】

【0082】
なお、さらに抵抗値を調整するために、電解質(塩)を添加することも可能である。塩としては、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム等のアルカリ金属塩、エチルトリフェニルホスホニウム・テトラフルオロボレート、テトラフェニルホスホニウム・ブロマイド等の四級ホスホニウム塩が挙げられる。導電剤は物性を損なわない範囲で、単独若しくは、複数をブレンドして用いても構わない。
【0083】
(C)上記(A)ポリカーボネート及び上記(B)ポリエーテルエステルアミドの両方に対して親和性を有するグラフトコポリマーとしては、例えば下記化学式(III)で示される、主鎖としてポリカーボネートと、側鎖としてアクリロニトリル−スチレン−グリシジルメタクリレート共重合体と、を有するグラフトコポリマーを用いる(式中n、m、lは自然数)。このグラフトコポリマーにおける主鎖のポリカーボネートは有極性基であるジオキシ基の鎖をもつ分子構造のため、分子間引力が非常に強い。このため、このような主鎖を有することにより、力学的強度・クリープ特性などに優れ、特に衝撃強度は他プラスチックと比較してずばぬけて優れている。また比較的低吸水性であるため、吸水変動に伴う体積変動が少ない。
これらの特性により、グラフトコポリマーの主鎖としてポリカーボネートを使用した系では、使用時の機械的・電気的ストレスや経時または環境変化に伴う体積変動によるクラックが生じにくくなる。
【0084】
【化3】

【0085】
また、側鎖を構成するアクリロニトリル−スチレン−グリシジルメタクリレート共重合体は、アクリロニトリル成分及びスチレン成分と反応基であるグリシジルメタクリレート成分からなる。反応基のグリシジルメタクリレートは成分を溶融混練する際の加熱により、エポキシ基が(B)ポリエーテルエステルアミドのエステル基やアミノ基と反応し、(B)ポリエーテルエステルアミドと強固に化学的結合をする。さらに、アクリロニトリル成分及びスチレン成分は、(A)ポリカーボネートとの相溶性が良好である。そのため、化学式(3)で表されるグラフトコポリマーは、本来親和性の低い(A)ポリカーボネートと(B)ポリエーテルエステルアミドと間の相溶化剤として機能し、これら(A)ポリカーボネートと(B)ポリエーテルエステルアミドとの分散状態を均一かつ緻密化する。
【0086】
このような(C)前記(A)ポリカーボネート及び前記(B)ポリエーテルエステルアミドの両方に対して親和性を有するグラフトコポリマーの機能により、上記3成分を、溶融混練することにより、前記(B)ポリエーテルエステルアミドが海部分となり、かつ、前記(A)ポリカーボネートが該海部分中に分散した細長い筋状の島部分となった、海島構造が形成されると共に、これら海部分と島部分との間(境界)に、(C)前記(A)ポリカーボネート及び前記(B)ポリエーテルエステルアミドの両方に対して親和性を有するグラフトコポリマーからなる層が形成され、(A)ポリカーボネートと(B)ポリエーテルエステルアミドとの分散不良に伴うウェルド部抵抗の変動や、帯電体としての使用時の電気的・機械的ストレスや経時・環境での体積変動により電気抵抗調整層のウェルド部分に発生するクラックを抑制することができる。その結果、上記ポリカーのネートの主鎖の効果と併せて強度的に優れた混練系の樹脂組成物を形成することができる。
【0087】
抵抗調整層を構成する樹脂組成物は、(A)ポリカーボネート、(B)ポリエーテルエステルアミド及び(C)上記(A)ポリカーボネート及び上記(B)ポリエーテルエステルアミドの両方に対して親和性を有するグラフトコポリマーを混合した後、二軸混練機、ニーダー等で溶融混練することによって、容易に製造できる。その溶融混練時の加熱により、グラフトコポリマーのグリシジル部分が(B)ポリエーテルエステルアミドのエステル基部分やアミノ基部分と化学的に結合し、かつ(A)(B)及び(C)の各成分が均一に分散する。このとき、(A)ポリカーボネート及び(B)ポリエーテルエステルアミドの配合比を(A)ポリカーボネートの配合量と(B)ポリエーテルエステルアミドの配合量との重量和を100重量部としたときに、(B)ポリエーテルエステルアミドの配合量が20重量部以上90重量部以下であることが必要である。この範囲より少なすぎると充分な導電性が得られない場合があり、また、この範囲より多すぎると電気抵抗調整層として充分な強度が得られない場合がある。ここで、(B)ポリエーテルエステルアミドの好ましい配合量は50重量部以上90重量部以下であると、(B)ポリエーテルエステルアミドが海、(A)ポリカーボネート細長い筋状の島となる海島構造を容易に得ることができるので好ましい。
【0088】
(C)(A)ポリカーボネート及び(B)ポリエーテルエステルアミドの両方に対して親和性を有するグラフトコポリマーの量は(A)ポリカーボネートの配合量と(B)ポリエーテルエステルアミドの配合量との重量和を100重量部としたときに、1重量部以上15重量部以下に設定することで、上述したように(A)ポリカーボネートと(B)ポリエーテルエステルアミドとの間の相溶性を向上させ、優れた加工安定性を得ることができると共に、要求される分散粒径すなわち島部分の所望の大きさを容易に得ることができる。
【0089】
導電性支持体上への電気抵抗調整層の形成は、押出成形や射出成形等の手段で導電性支持体に対して上記(A)ポリカーボネート、(B)ポリエーテルエステルアミド、及び、(C)からなる半導電性樹脂組成物を被覆することによって、容易に行うことが可能であり、成形する導電性部材が長手方向を有する形状を有する場合、成形時の樹脂組成物の流動方向をこの導電性支持体の長手方向と一致させることにより、前記島部分の細長い筋状の島の長手方向が、導電性部材の長手方向に一致するように配向させることができる。
【0090】
導電性支持体上に形成した抵抗調整層の樹脂組成物の分散状態は以下のようにして観察することができる。抵抗調整層から断面を切り出し、エポキシ樹脂に包埋後クライオミクロトームを用いて50nm程度の厚みの超薄切片を得る。この超薄切片は必要に応じて、四酸化オスミウムや四酸化ルテニウム等で染色処理を行い、透過型電子顕微鏡を用いて観察する。このときの抵抗調整層の切出・断面採取方法の一例を図6(a)及び図6(b)に、得られた写真の例を図7(導電性材料の長手方向に平行な断面での透過型電子顕微鏡写真。写真中符号201は海部分、202は島部分をそれぞれ示す。以下同じ)及び図8(導電性材料の長手方向に垂直な断面での透過型電子顕微鏡写真)に示す。これらのような電気抵抗調整層の切出断面によって海島構造の島部分の形状が異なり、この島部分はその長手方向が導電性部材の長手方向に一致するように配向していることが確認できる。
【0091】
次に得られた写真から任意の100個の島について島部分の短手方向の幅を測定し、平均値を求めた。ここで島部分の短手方向の幅は図9にモデル的に示すように島部分中央部での幅とする。島部分の短手方向の幅が10μm以下であることが好ましい。10μmを超える場合、ブリードアウトに伴う帯電不良が発生する場合がある。
【0092】
なお、島部分の短手方向の幅が10μm以下とするには電気抵抗層の射出成形時に芯軸の一方の端近くにゲート部を設け、そのゲート部から芯軸の周囲のキャビティに溶融樹脂を導入して成形することで達成できる。
【0093】
導電性支持体上に抵抗調整層のみを形成した導電性部材を帯電体として画像形成装置に用いると、抵抗調整層にトナー及び、トナーの添加剤等が固着して性能低下する場合がある。このような不具合は、抵抗調整層表面にさらに表面層を形成することで、防止することができる。
【0094】
このような表面層の抵抗値は抵抗調整層のそれよりも大きくなるように形成され、それによって感光体欠陥部への電圧集中、異常放電(リーク)を回避することができる。ただし、表面層の抵抗値を高くしすぎると帯電能力や転写能力が不足してしまうため、表面層と抵抗調整層との抵抗値の差を10Ωcm以下にすることが好ましい。
【0095】
<表面層について>
このような表面層を形成する材料としては、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂等が非粘着性に優れ、トナー固着防止の面で好ましい。また表面層の抵抗調整層上への形成は、上記表面層構成材料を有機溶媒に溶解して塗料を作製し、スプレー塗装、ディッピング、ロールコート等の種々のコーティング方法で行う。膜厚については、10〜30μm程度が望ましい。
【0096】
表面層を構成する材料は、1液性、2液性どちらも使用可能であるが、硬化剤を併用する2液性塗料とすることより、耐環境性、非粘着性、離型性を高めることが出来る。2液性塗料の場合、塗膜を加熱することにより、樹脂を架橋・硬化させる方法が一般的である。しかしながら、電気抵抗調整層は熱可塑性樹脂のため、電気抵抗層を損なうような高い温度で加熱することができない。2液性塗料としては、分子中に水酸基を有する主剤及び、水酸基と架橋反応を起こす、イソシアネート系樹脂を用いることが有効である。イソシアネート系樹脂を用いることにより、100℃以下の比較的低温で架橋・硬化反応が起こる。トナーの非粘着性から検討を進めた結果、シリコーン系樹脂でトナーの非粘着性が高い樹脂であることを確認し、特に、分子中にアクリル骨格を有するアクリルシリコーン樹脂が良好である。
【0097】
導電性部材は電気特性(抵抗値)が重要であるため、表面層に導電性を付与する必要がある。導電性の形成方法は、表面層を形成する樹脂材料中に導電剤を分散することにより可能である。導電剤としては、特に制約を受けるものではなく、ケッチェンブラックEC、アセチレンブラック等の導電性カーボン、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用カーボン、酸化処理等を施したカラー用カーボン、熱分解カーボン、インジウムドープ酸化スズ(ITO)、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛、銅、銀、ゲルマニウム等の金属及び、金属酸化物、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン等の導電性ポリマー等が挙げられる。また、導電性付与材として、イオン導電性物質もあり、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸カルシウム、塩化リチウム等の無機イオン性導電物質、更に、エチルトリフェニルホスホニウム・テトラフルオロボレート、テトラフェニルホスホニウム・ブロマイド等の四級ホスホニウム塩、変性脂肪酸ジメチルアンモニウムエトサルファート、ステアリン酸アンモニウムアセテート、ラウリルアンモニウムアセテート等の有機イオン性導電性物質が挙げられる。
【0098】
これら導電剤は、物性を損なわない範囲で、単独若しくは、複数をブレンドして用いても構わない。塗料樹脂中への導電剤の分散方法は、ボールミル、ペイントシェーカー、ビーズミル等にガラズビーズ、ジルコニアビーズ等の分散メディアを用いて、公知の方法を用いて行うことができる。
【実施例】
【0099】
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。
【0100】
〈実施例1〉
ポリカーボネート(パンライト L−1255LL、帝人化成社製)20重量部及びポリエーテルエステルアミド(IRGASTAT P18、チバスペシャリティケミカルズ社製)80重量部の混合物100重量部に対し、ポリカーボネート−グリシジルメタクリレート−スチレン−アクリロニトリル共重合体(モディパーC L440−G、日本油脂社製)を4.5重量部加え、これを温度220℃に設定した押出混練機により溶融混練した樹脂組成物(体積固有抵抗:2×10Ωcm)を、ステンレスからなる芯軸(導電性支持体:外径8mm、長さ:34cm)の両端部それぞれ約2cmずつを除く表面に射出成形により被覆させて電気抵抗調整層を形成した。この射出成形時には、成形時の樹脂組成物の流動方向をこの導電性支持体の長手方向(芯軸の軸方向)と一致するようにした。すわわち、具体的には電気抵抗層の射出成形時に芯軸の一方の端近くにゲート部を設けた金型を用い、そのゲート部から芯軸の周囲のキャビティに溶融樹脂を導入して成形した。
【0101】
次いで芯軸の両端部に、高密度ポリエチレン樹脂(ノバテックHD HY540、日本ポリエチレン株式会社製)からなるリング状の空隙保持部材を挿入(嵌入)し、空隙保持部材を芯軸及び電気抵抗調整層端部と接着した。次いで切削加工によって空隙保持部材の外径(最大径)を12.12mm、電気抵抗調整層の外径を12.00mmに同時仕上げを行なった。
【0102】
さらに上記で形成された電気抵抗調整層の表面に、アクリルシリコン樹脂(3000VH−P、川上塗料製)、イソシアネート系硬化剤、及びカーボンブラック(全固形分に対して35重量%)からなる混合物(表面抵抗:2×10Ω)により膜厚約10μの表面層を形成し、焼成工程(表面層形成樹脂の熱硬化を行う硬化工程)を経て、表面層を有する導電性部材を得た。
【0103】
この導電性部材の電気抵抗調整層を図6のように芯軸に対して垂直及び平行な断面で切り出し、エポキシ樹脂に包埋後クライオミクロトームを用いて厚さ50nmの超薄切片を作製した。次いで、この超薄切片を四酸化ルテニウム等で染色処理を行い、透過型電子顕微鏡を用いて観察した。このときの芯軸に対して垂直及び平行断面の観察写真を図10及び図11に示す。これらの写真からポリエーテルエステルアミドが海、ポリカーボネートが細長い筋状の島となり、島部分の長径方向が導電性材料の芯軸の軸方向(長手方向)に配向した海島構造が形成されていることが判った。また、島部分の短手方向の幅は10μm以下(ほとんどが3μm以下)であった。
【0104】
〈実施例2〉
実施例1とそれぞれ同じポリカーボネート樹脂20重量部及びポリエーテルエステルアミド80重量部に対してポリカーボネート−グリシジルメタクリレート−スチレン−アクリロニトリル共重合体を12重量部加えた以外は実施例1と同様にして表面層を有する導電性部材を得た。
【0105】
この導電性部材の抵抗調整層を透過型電子顕微鏡を用いて観察したところ、ポリエーテルエステルアミドが海、ポリカーボネート樹脂が細長い筋状の島で、島部分の細長い筋状の島の長手方向が、導電性部材の長手方向(芯軸の軸方向)に一致する細長い筋状の島方向が導電性材料の芯軸の長手方向に配向した海島構造が形成されており、島部分の短手方向の幅は平均10μm以下(ほとんどが5μm以下)であった。
【0106】
〈実施例3〉
実施例1の導電性材料と同様に、ただし、帝人化成社製ポリカーボネート、パンライト L−1255LLの代わりに、三菱エンジニアリングプラスチックス社製ポリカーボネート樹脂ユーピロン H−4000を用いて導電性材料を得た。
【0107】
この導電性部材の抵抗調整層を透過型電子顕微鏡を用いて観察したところ、ポリエーテルエステルアミドが海、ポリカーボネート樹脂が細長い筋状の島で、島部分の細長い筋状の島の長手方向が、導電性部材の長手方向(芯軸の軸方向)に一致する、細長い筋状の島方向が導電性部材の長手方向に配向した海島構造が形成されており、島部分の短手方向の幅(平均値)は10μm以下(ほとんどが5μm以下)であった。
【0108】
〈実施例4〉
ポリカーボネート樹脂10重量部及びポリエーテルエステルアミド90重量部に対してポリカーボネート−グリシジルメタクリレート−スチレン−アクリロニトリル共重合体を9重量部加え、210℃で溶融混練した以外は実施例1と同様にして表面層を有する導電性部材を得た。
【0109】
この導電性部材の抵抗調整層を透過型電子顕微鏡を用いて観察したところ、ポリエーテルエステルアミドが海、ポリカーボネート樹脂が細長い筋状の島で、島部分の細長い筋状の島の長手方向が、導電性部材の長手方向(芯軸の軸方向)に一致する、細長い筋状の島方向が導電性部材の長手方向に配向した海島構造が形成されており、島部分の短手方向の幅(平均値)は平均10μm以下(ほとんどが3μm以下)であった。
【0110】
〈実施例5〉
ポリカーボネート樹脂20重量部及びポリエーテルエステルアミド80重量部に対してポリカーボネート−グリシジルメタクリレート−スチレン−アクリロニトリル共重合体を9重量部加え、230℃で溶融混練した以外は実施例1と同様にして表面層を有する導電性部材を得た。
【0111】
この導電性部材の抵抗調整層を透過型電子顕微鏡を用いて観察したところ、ポリエーテルエステルアミドが海、ポリカーボネート樹脂が細長い筋状の島で、島部分の細長い筋状の島の長手方向が、導電性部材の長手方向(芯軸の軸方向)に一致する細長い筋状の島方向が導電性材料の芯軸の長手方向に配向した海島構造が形成されており、島部分の短手方向の幅(平均値)は10μm以下(ほとんどが3μm以下)であった。
【0112】
〈比較例1〉
ポリエーテル成分を含有する高分子型導電剤(アクアコークTW、住友精化社製)30重量%及びポリプロピレン樹脂(ノバテックPP MA3、日本ポリプロ社製)70重量%の混合物を、溶融混練を行わずにステンレスからなる芯軸(外径8mm:実施例で用いたものと同じもの)の両端部それぞれ約2cmずつを除く表面に、あらかじめ押し出し成形によって成形した電気抵抗調整層部分を導電性接着剤を用いて固定した。
【0113】
次いで芯軸の両端部に、高密度ポリエチレン樹脂からなるリング状の空隙保持部材を挿入(嵌入)し、空隙保持部材を芯軸及び電気抵抗調整層端部と接着した。次いで切削加工によって空隙保持部材の外径(最大径)を12.12mm、電気抵抗調整層の外径を12.00mmに同時仕上げを行なった。
【0114】
この導電性部材の電気抵抗調整層を透過型電子顕微鏡を用いて観察したところ、抵抗調整層はポリプロピレンの海にポリエーテル含有高分子型導電剤の島が粒状に分散する海島構造が形成されており、島部分の粒子の径は100μm〜200μmであった。島の形状はほぼ真円状であり、特別な方向への配向は認められなかった。
【0115】
〈比較例2〉
四級アンモニウム塩基を含有するイオン導電性の高分子化合物(レオレックスAS−1720、第一工業製薬社製)30重量部及びポリプロピレン樹脂(MA3、日本ポリプロ株式会社製)70重量部の混合物を、溶融混練を行わずにステンレスからなる芯軸(外径8mm)の両端部それぞれ約2cmずつを除く表面に、あらかじめ押し出し成形によって成形した電気抵抗調整層部分を導電性接着剤を用いて固定した。
【0116】
次いでこの両端部に、ポリアミド樹脂リング状の空隙保持部材を挿入し、芯軸及び抵抗調整層と接着した。次いで、切削加工によって空隙保持部材の外径(最大径)を12.12mm、抵抗調整層の外径を12.00mmに同時仕上げを行ない、導電性部材を得た。
【0117】
この導電性部材の抵抗調整層を透過型電子顕微鏡を用いて観察したところ、抵抗調整層はポリプロピレンの海にイオン導電性の高分子化合物の島が粒状に分散する海島構造が形成されており、島部分の粒子の径は200μm〜300μmであった。また、島の形状はほぼ真円状であり、特別な方向への配向は認められなかった。
【0118】
〈比較例3〉
ポリプロピレン樹脂(MA3、日本ポリプロ社製)100重量部に対し、導電性カーボンブラック(ケッチェンブラックEC、ケッチェンブラックインターナショナル社製)15重量部を配合した組成物を、ステンレスからなる芯軸(外径8mm)の両端部それぞれ約2cmずつを除く表面にあらかじめ押し出し成形によって成形した電気抵抗調整層部分を導電性接着剤を用いて固定した。次いで、切削加工によって抵抗調整層の外径を12.00mmに仕上げた。次いでこの両端部周囲に一液性エポキシ配合樹脂接着剤(2202、スリーボンド製)により厚さ50μmのテープ状部材(ダイタックPF025−H、大日本インキ社製)を貼り付け、導電性部材を得た。
【0119】
この導電性部材の抵抗調整層を透過型電子顕微鏡を用いて観察したが、海島構造を観察することができなかった。
【0120】
〈比較例4〉
ポリプロピレン樹脂(MA3、日本ポリプロ社製)100重量部に過塩素酸リチウム2重量部を配合した組成物を、ステンレスからなる芯軸(外径8mm)の両端部それぞれ約2cmずつを除く部分にあらかじめ押し出し成形によって成形した電気抵抗調整層部分を導電性接着剤を用いて固定した。
【0121】
次いで、切削加工によって抵抗調整層の外径を12.00mmに仕上げた。次いでこの両端部に、ポリアセタール樹脂(ジュラコン YF10、ポリプラスチックス株式会社製)からなるリング状の空隙保持部材を挿入し、芯軸及び抵抗調整層と接着した。次いで、切削加工によって空隙保持部材の外径(最大径)を12.12mm、抵抗調整層の外径を12.00mmに同時仕上げを行ない、導電性部材を得た。
【0122】
この導電性部材の抵抗調整層を透過型電子顕微鏡を用いて観察したが、海島構造を観察することができなかった。
【0123】
<評価>
上記実施例1〜5及び比較例1〜4の導電性材料について下記の試験1及び試験2の方法で耐久性を評価した。
【0124】
〈試験1〉
図2に示した画像形成装置を加速試験装置として用いた。上記導電性材料を帯電材料(帯電ローラ)として組み込み、通紙無し状態での通電空回し試験を5日間(150000枚の複写に相当)行ない、この間に導電性材料にクラックが発生するかどうかを調べた。この際、帯電ローラに印加する電圧はDC=−700V、AC Vpp=2.7kV(周波数=3kHz)とした。また、評価環境を23℃、RH50%とした。
【0125】
その結果、実施例1〜5の導電性材料については試験後もいずれも電気抵抗調整層にクラックの発生は認められず、長期にわたって使用されても、クラックの発生を防止することができる、耐久性に優れた導電性部材であることが確認された。
【0126】
一方、比較例1〜4の導電性材料についてはすべて電気抵抗調整層のクラックが発生し、上記評価環境では耐久性が不充分であることが判った。
【0127】
〈試験2〉
図2に示した画像形成装置を加速試験装置として用いた。上記導電性材料を帯電材料(帯電ローラ)として組み込み、低温低湿環境(10℃、RH15%)で画像評価を行った。帯電ローラに印加する電圧はDC=−600V、AC Vpp=2.3kV (周波数=2.2kHz)とし、抵抗値ばらつきによる画像ムラ及び異常放電(リーク)によって生じる異常画像の有無を評価した。
【0128】
このとき、実施例1〜5の導電性材料を用いた場合ではいずれの場合でも、低温低湿環境であるにも係わらず図12に示すような画面全体が均一な斑のない良好な画像が得られた。一方、比較例1〜4の導電性材料を用いた場合には図13に示すような図面中央部及び左右端部近くに図面の縦方向に長い斑や白・黒ポチ状の異常画像が発生した(導電性材料の長手方向はこれら図12及び図13の図面において横方向となる)。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明の導電性部材は長期にわたって使用されても、クラックの発生を防止することができる、耐久性に優れた導電性部材であるので、画像形成装置などの帯電部材として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】電子写真方式の画像形成装置の概略図である。
【図2】本発明の導電性部材を帯電部材として用いた場合の帯電装置、及び、プロセスカートリッジを用いる画像形成装置の構成を示す概略図である。
【図3】図2の画像形成装置の画像形成部の構成を示す概略図である。
【図4】本発明の導電部材を帯電部材として用いる帯電装置、及び、プロセスカートリッジの構成を示す概略図である。
【図5】本発明の導電性部材である帯電部材と、像担持体の感光層領域及び、画像領域、非画像領域の位置関係を示す概略図である。
【図6】導電性部材の電気抵抗調整層の海島構造確認用サンプル切り出し方法をモデル的に示すモデル図である。(a)導電性部材の長手方向に垂直な断面での切り出し方法を示す図である。(b)導電性部材の長手方向に平行な断面での切り出し方法を示す図である。
【図7】本発明に係る導電性材料の電気調整層の長手方向に平行な断面での透過型電子顕微鏡写真の一例である。
【図8】本発明に係る導電性材料の電気調整層の長手方向に垂直な断面での透過型電子顕微鏡写真の一例である。
【図9】島部分の短手方向の幅の測定方法を示すモデル図である。
【図10】実施例1の導電性材料の電気調整層の長手方向に平行な断面での透過型電子顕微鏡写真である。
【図11】実施例2の導電性材料の電気調整層の長手方向に垂直な断面での透過型電子顕微鏡写真である。
【図12】本発明に係る導電性材料を画像形成装置の帯電部材として低温低湿環境で用いたときに得られた画像の一例を示す図である。
【図13】比較例係る導電性材料を画像形成装置の帯電部材として低温低湿環境で用いたときに得られた画像の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0131】
1 画像形成装置
11 静電潜像担持体(感光体)
12 帯電部材(帯電ローラ)
13 露光
14 トナー担持体
15 トナー
16 転写部材(転写ローラ)
17 記録媒体
18 クリーニング部材(ブレード)
19 排トナー
210 現像装置
211 クリーニング装置
20 給紙部
21 給紙装置(給紙カセット)
23 レジストローラ
30 読み取り部
31 コンタクトガラス
32 第1読み取り走行体
33 第2読み取り走行体
35 CCD
40 排紙トレイ
41 排出ローラ
50 中間転写体
51 2次転写装置
60 画像形成部
61 像担持体
62 1次転写装置
63 現像装置
64 クリーニング装置
64a 固体潤滑剤
64b 塗布部材
64c クリーニング部材
64d 補助クリーニング部材
80 定着装置
100 帯電装置
101 帯電部材
102 クリーニング部材
103 空隙保持部材
104 電気抵抗調整層
105 保護層
106 導電性支持体
107 軸受
108 圧縮バネ
201 海部分
202 島部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体、該導電性支持体上に形成された電気抵抗調整層、及び、該電気抵抗調整層の表面に表面層、を有する導電性部材において、
(イ)前記電気抵抗調整層が、(A)熱可塑性樹脂組成物、(B)高分子型イオン導電材料、及び、(C)前記(A)熱可塑性樹脂組成物及び前記(B)高分子型イオン導電材料の両方に対して親和性を有するグラフトコポリマー、を含む樹脂組成物から構成され、
(ロ)前記電気抵抗調整層が、前記(B)高分子型イオン導電材料が海部分となり、かつ、前記(A)熱可塑性樹脂組成物が該海部分中に分散した細長い筋状の島部分となった、海島構造を有し、かつ、
(ハ)前記海部分と前記島部分との間に、前記(C)前記(A)熱可塑性樹脂組成物及び前記(B)高分子型イオン導電材料の両方に対して親和性を有するグラフトコポリマーからなる層が形成されている
ことを特徴とする導電性部材。
【請求項2】
導電性支持体、該導電性支持体上に形成された電気抵抗調整層、及び、該電気抵抗調整層の表面に表面層、を有する導電性部材において、
(イ)前記電気抵抗調整層が、(A)ポリカーボネート、(B)ポリエーテルエステルアミド、及び、(C)前記(A)ポリカーボネート及び前記(B)ポリエーテルエステルアミドの両方に対して親和性を有するグラフトコポリマー、を含む樹脂組成物から構成され、
(ロ)前記電気抵抗調整層が、前記(B)ポリエーテルエステルアミドが海部分となり、かつ、前記(A)ポリカーボネートが該海部分中に分散した細長い筋状の島部分となった、海島構造を有し、かつ、
(ハ)前記海部分と前記島部分との間に、前記(C)前記(A)ポリカーボネート及び前記(B)ポリエーテルエステルアミドの両方に対して親和性を有するグラフトコポリマーからなる層が形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の導電性部材。
【請求項3】
前記導電性部材が、長手方向を有する形状を有し、かつ、前記島部分が、該島部分の細長い筋状の島の長手方向が、該導電性部材の長手方向に一致するように、配向していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の導電性部材。
【請求項4】
前記島部分の短手方向の幅が10μm以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項5】
前記樹脂組成物の中の、前記(A)ポリカーボネートの配合量と前記(B)ポリエーテルエステルアミドの配合量との重量和を100重量部としたときに、
前記(B)ポリエーテルエステルアミドの配合量が50重量部以上90重量部以下であり、かつ、
前記(C)前記(A)ポリカーボネート及び前記(B)ポリエーテルエステルアミドの両方に対して親和性を有するグラフトコポリマーの配合量が1重量部以上15重量部以下であることを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項6】
前記(C)前記(A)ポリカーボネート及び前記(B)ポリエーテルエステルアミドの両方に対して親和性を有するグラフトコポリマーが、主鎖としてポリカーボネートと、側鎖としてアクリロニトリル−スチレン−グリシジルメタクリレート共重合体と、を有するグラフトコポリマーであることを特徴とする請求項2ないし請求項5のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項7】
前記電気抵抗調整層をなす樹脂組成物が、前記(A)ポリカーボネート、前記(B)ポリエーテルエステルアミド、及び、前記(C)前記(A)ポリカーボネート及び前記(B)ポリエーテルエステルアミドの両方に対して親和性を有するグラフトコポリマー、を溶融混練してなることを特徴とする請求項2ないし請求項6のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項8】
前記表面層が、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、及び、ポリビニルブチラール樹脂から選ばれた1種以上を含む樹脂組成物からなることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項9】
前記表面層が、導電剤が分散した樹脂組成物からなることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項10】
円筒形状であることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項11】
前記導電性部材が帯電部材であることを特徴とする請求項1ないし請求項10に記載の導電性部材。
【請求項12】
請求項11に記載の導電性部材を有することを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項13】
請求項12に記載のプロセスカートリッジを有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−70542(P2008−70542A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−248167(P2006−248167)
【出願日】平成18年9月13日(2006.9.13)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】