小型カタジオプトリック型対物系を用いた検査システム
【課題】小型化したカタジオプトリック型対物系を使用するシステムを開示する。
【解決手段】このシステムでは小型化された対物系に加え各種サブシステムを用いて結像能力を増強する。サブシステムには照明、結像、自動合焦、位置決め、センサ、データ取得及びデータ分析サブシステムが含まれる。対物系が使用される光エネルギ波長は例えば約190nm〜赤外域であり、対物系を構成する素子の直径は100nm未満とする。対物系はレンズ型合焦装置(1607)、少なくとも1個の視野レンズ(1605)及び配列マンジャンミラー(1601)を備える。視野レンズ(1605)の向きは、レンズ型合焦装置(1607)から合焦済光エネルギを受け取り中間光エネルギを供給するよう設定する。本発明においては、0.65超で約0.90以下の開口数にて標本に対し結像用に調整済光エネルギを与える。本発明は様々な環境にて使用できる。
【解決手段】このシステムでは小型化された対物系に加え各種サブシステムを用いて結像能力を増強する。サブシステムには照明、結像、自動合焦、位置決め、センサ、データ取得及びデータ分析サブシステムが含まれる。対物系が使用される光エネルギ波長は例えば約190nm〜赤外域であり、対物系を構成する素子の直径は100nm未満とする。対物系はレンズ型合焦装置(1607)、少なくとも1個の視野レンズ(1605)及び配列マンジャンミラー(1601)を備える。視野レンズ(1605)の向きは、レンズ型合焦装置(1607)から合焦済光エネルギを受け取り中間光エネルギを供給するよう設定する。本発明においては、0.65超で約0.90以下の開口数にて標本に対し結像用に調整済光エネルギを与える。本発明は様々な環境にて使用できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2003年2月21日付米国暫定特許出願第60/449326号「高性能低コストカタジオプトリック型結像システム」(High Performance, Low Cost Catadioptric Imaging System)に基づく利益を享受する2003年5月7日付米国特許出願第10/434374号「高性能カタジオプトリック型結像システム」(High Performance Catadioptric Imaging System)(発明者:Shafer et al.)の一部継続出願である。
【0002】
本発明は、概略、光学結像の分野に関し、より詳細には、顕微鏡による画像取得、検査、リソグラフィ等に用いられる光学システムに関する。
【背景技術】
【0003】
集積回路半製品等の標本の表面構造を検査し欠陥について調べる際に使用できる光学システムや電子システムは数多くある。粒状欠陥、ひっかき傷、プロセス的変調部(process variations)、繰り返しパターン欠陥等、標本上に現れる欠陥はそのサイズが割合に小さなものが多く、また標本表面における位置がランダムであることが多い。こうした顕微鏡的欠陥向けの標本検査技術及びデバイスは、本件技術分野において一般的に利用可能なものとなっており、また様々に実施されて商業的に入手可能となっている。その例としては、アメリカ合衆国カリフォルニア州サンノゼ所在のKLA−Tencor Corporationから入手できるものがある。
【0004】
理論上、全タイプの検知システム乃至手法に共通する目標は、欠陥を迅速且つ効率的に検知できるようにすることである。標本表面上のより小さな構造を調べる場合や、新しい素材乃至製造プロセスを使用する場合に求められるのは、より微細な構造や新しい構造を検知できるようにすることである。検査位置への標本の装荷から標本の除去を経て標本表面上の欠陥の特徴判別までに費やす時間をできるだけ短くするため、標本表面を迅速に検査できるようにすることも望まれている。より微細な構造を検査対象にすることができるよう、また上掲の速度条件を満足させられるよう、既存のシステム乃至手法を持続的に改良していき、標本上の問題箇所を正確且つ適切に発見できるようにすることが、求められている。
【0005】
既存の一般的な検査システムは、屈折型対物系か大型カタジオプトリック(catadioptric)型対物系をベースとしたものである。そのうち、屈折型対物系をベースとするシステムの結像能力は、通常は365nmより長波長側で頭打ちになる。そのため、屈折型対物系の用途は限られる。短波長用屈折型対物系は使用可能であるが帯域幅が非常に狭い。更に、100μmより広い視野に亘り良好に収差を補正でき且つその開口数(numerical aperture:NA値)が0.9と大きいUV(紫外線)用の構成を得ることも、難しいことである。
【0006】
大型カタジオプトリック型対物系をベースとする検査システムは、屈折型対物系における波長制限を補えるものであり、DUV(deep ultraviolet:深紫外)域にて使用でき且つ視野サイズが大きな超広帯域カタジオプトリック系も実現可能である。しかしながら、この構成には、高いコスト、厳しい製造公差、柔軟性に欠けるシステム構造、DUV照射に関連した汚染の管理困難性等という限界がある。
【0007】
更に、上述した結像システムの多くは大きめの部材から構成されている。そのため、こうした結像システムは、顕微鏡等の小型環境では使用するのが難しいか或いは不可能である。従来一般に入手可能であったもののうち比較的小型の検査用対物系としては、2003年5月7日付米国特許出願第10/434374号「 高性能カタジオプトリック型結像システム」(High Performance Catadioptric Imaging System)(発明者:Shafer et al.)により開示されているものがある。当該出願により開示されているシステムは、標本検査に用いる結像用部材及びその並べ方にある種の改良を施したものであるが、結像対象標本種別が異なる様々な環境に対しこの出願に記載の構成を単純適用することは不可能である。即ち、幾何学的構成や光源の種類や能力上の基準が異なる様々な検査システムに対し当該出願記載の構成を適用することは不可能であり、従ってあらゆる状況下で正確且つ適切に標本上の欠陥を評価することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5717518号明細書
【特許文献2】米国特許第4639587号明細書
【特許文献3】米国特許第4877326号明細書
【特許文献4】米国特許第6483638号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上の点から見て望まれているのは、前述した既存のシステムよりも優れた標本検査システムを実現すること、特に小型カタジオプトリック型対物系を用いウェハ等の標本の検査を行う標本検査システムを実現することである。中でも望まれているのは、様々な状況下で且つ様々な部材と共に使用でき、既知の構成における結像関連の問題を克服できるシステム乃至構成を、実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1実施形態に係る標本検査システムは、約285〜320nmの波長域に属する波長にて照明光エネルギを発するアークランプを有する照明システムと、複数個のレンズを有し照明光エネルギを受け取って標本に向かわせるよう構成及び方向設定された結像サブシステムと、を備え、結像サブシステムにおけるレンズ直径:視野(field)サイズの比率が100:1未満の検査システムである。
【0011】
本発明の第2実施形態に係る標本検査システムは、約157nmから赤外域に亘る波長域に属する波長にて照明光エネルギを発する照明サブシステムと、少なくとも1個の合焦レンズを含むレンズ型合焦装置及びレンズ型合焦装置から合焦済光エネルギを受け取れるよう方向設定された少なくとも1個の視野レンズを有し、レンズ型合焦装置により照明光エネルギを受け取って視野レンズに合焦済光エネルギを与え視野レンズから中間光エネルギを発する結像サブシステムと、視野レンズから中間光エネルギを受け取り標本に対し0.65超のNA値にて調整済光エネルギを与えることができるよう配置された配列マンジャンミラーと、を備え、対物系内の各レンズ及び配列マンジャンミラー内の各素子の直径が100mm未満であり、且つ結像サブシステム及び照明サブシステムが、明視野、環状暗視野、方向性暗視野、全天、空中結像(areal imaging)、共焦点及び蛍光(fluorescence)の各検査モードのうち少なくとも1個をサポートする標本検査システムである。
【0012】
本発明の第3実施形態に係る標本検査システムは、照明光エネルギを発するアークランプを有する照明サブシステムと、照明光エネルギを受け取り調整済光エネルギを発する結像サブシステムと、標本により反射された調整済光エネルギを受け取るセンササブシステムと、を備え、結像サブシステムが、一種類のガラス素材から形成されており約157nmから赤外域に亘る波長域に属する光エネルギ用に使用できる対物系を有し、対物系が、照明光エネルギを受け取り合焦済光エネルギを発する直径約100mm未満の少なくとも1個の合焦レンズと、合焦済光エネルギを受け取り中間光エネルギを発する直径約100mm未満の少なくとも1個の視野レンズと、中間光エネルギを受け取り調整済光エネルギを発する直径約100mm未満の少なくとも1個のマンジャンミラー素子と、を有する標本検査システムである。
【0013】
本発明の第4実施形態に係る標本検査システムは、標本に向け照明光エネルギを発するアークランプを有する照明サブシステムと、照明光エネルギを受け取り中間光エネルギを発する直径約25mm未満の複数個のレンズ並びに中間光エネルギを受け取り標本に向け調整済光エネルギを発する配列マンジャンミラーを有する結像サブシステムと、フィードバックによって調整済光エネルギを標本に合焦させる自動合焦サブシステムと、を備える。
【0014】
本発明の第5実施形態に係る標本検査システムは、アークランプを有する照明サブシステムと、照明サブシステムから照明光エネルギを受け取れるカタジオプトリック型対物系を有する結像サブシステムと、結像サブシステム視野内に存するセンサを少なくとも1個用いるデータ取得サブシステムと、を備え、カタジオプトリック型対物系が、少なくとも1個の素子を有し照明光エネルギを受け取って反射光エネルギをもたらすカタジオプトリック装置と、反射光エネルギを受け取り最終光エネルギを送出する視野レンズを少なくとも1個有する視野レンズ装置と、最終光エネルギを受け取り合焦最終光エネルギを発する合焦レンズを少なくとも1個有するレンズ型合焦装置と、を有し、カタジオプトリック型対物系用結像NA値が少なくとも0.65あり、カタジオプトリック型対物系が全使用レンズ中で最大のレンズ直径を有し、カタジオプトリック型対物系における最大レンズ直径:視野サイズの比率が100:1未満である標本検査システムである。
【0015】
本発明の第6実施形態に係る標本結像方法は、アークランプから照明光エネルギを発するステップと、レンズ型合焦装置により照明光エネルギを合焦させるステップと、視野レンズ装置により合焦済光エネルギを受け取り中間光エネルギを発するステップと、配列マンジャンミラーにより中間光エネルギを受け取り調整済光エネルギを発するステップと、調整済光エネルギを標本に向けるステップと、データ収集のため標本を再位置決めするステップと、標本からのデータを検知するステップと、を有し、レンズ型合焦装置、視野レンズ装置及び配列マンジャンミラーを用い標本における視野サイズをサポートし、且つレンズ型合焦装置、視野レンズ装置及び配列マンジャンミラーにおける最大素子サイズと視野サイズとの比が100:1未満である標本結像方法である。
【0016】
本発明の第7実施形態に係る標本結像システムは、照明光エネルギを発するアークランプ手段と、レンズ型合焦装置により照明光エネルギを受け取り合焦させる手段と、視野レンズ装置により合焦済光エネルギを受け取り中間光エネルギを発する手段と、配列マンジャンミラーにより中間光エネルギを受け取り調整済光エネルギを生成する手段と、方向設定及びセンサによるデータ収集のため標本を動的且つ好適に位置決めする手段と、を備え、レンズ型合焦装置、視野レンズ装置及び配列マンジャンミラーを用い視野サイズをサポートし、且つレンズ型合焦装置、視野レンズ装置及び配列マンジャンミラーにおける最大素子サイズと視野サイズとの比が100:1未満である標本結像システムである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、上記課題の少なくとも1つを解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1A】典型的な検査システム構成部材を示す図である。
【図1B】照明サブシステムの概略構成を示す図である。
【図1C】ランプ型照明サブシステムを示す図である。
【図1D】レーザ型照明サブシステムを示す図である。
【図2】アークランプの構成部材及び性能を示す図である。
【図3A】電気ポンプ型エキシマランプを示す図である。
【図3B】電子ビームポンプ型エキシマランプを示す図である。
【図4】屈折型ランプ光集光器を示す図である。
【図5】デュアルチャネル屈折型ランプ光集光器を示す図である。
【図6】プリズム型均一化器を示す図である。
【図7A】アークランプ等のランプを軸方向実装した反射型集光器を示す図である。
【図7B】アークランプ等のランプを横方向実装した反射型集光器を示す図である。
【図8A】カタジオプトリック型集光器の第1例を示す図である。
【図8B】カタジオプトリック型集光器の第2例を示す図である。
【図8C】カタジオプトリック型集光器の第3例を示す図である。
【図8D】カタジオプトリック型集光器の第4例を示す図である。
【図9A】均質化ロッドを示す図である。
【図9B】均一照明面形成用レンズアレイを示す図である。
【図10A】アキシコン使用実施形態を示す図である。
【図10B】第1ズーム型デュアルアキシコン系による環状照明の第1例を示す図である。
【図10C】第1ズーム型デュアルアキシコン系による環状照明の第2例即ち図10Bの第1ズーム型デュアルアキシコン系を動かすことにより得られる環状照明を示す図である。
【図10D】第2ズーム型デュアルアキシコン系による環状照明の第1例を示す図である。
【図10E】第2ズーム型デュアルアキシコン系による環状照明の第2例即ち図10Dの第2ズーム型デュアルアキシコン系を動かすことにより得られる環状照明を示す図である。
【図11A】視野面瞳面光中継器を示す図である。
【図11B】視野面光中継器を示す図である。
【図12A】ビーム狭搾部形成型レーザ光集光器を示す図である。
【図12B】開口出射型レーザ光集光器を示す図である。
【図13A】レーザビーム整形光中継器の第1例を示す図である。
【図13B】レーザビーム整形光中継器の第2例として平行光が拡散器乃至回折器に入射する実施形態を示す図である。
【図13C】他の均一化兼整形器を示す図である。
【図13D】瞳選択フィルタリングの考え方による光中継器を示す図である。
【図13E】光結像器外レーザ暗視野用照明光中継器を示す図である。
【図14】光結像器構成部材の概略を示す図である。
【図15】本発明の実施形態における光結像器と対物系の関係を示す図である。
【図16】本発明の実施形態にて使用される小型カタジオプトリック型対物系の一例を示す図である。
【図17】約285〜320nm帯域向けに補正した小型対物系を示す図である。
【図18】配列チューブレンズを示す図である。
【図19】集光用小型対物系及び残留収差補正用チューブレンズを示す図である。
【図20A】固定倍率型実施形態を示す図である。
【図20B】固定長ズーム系を示す図である。
【図20C】可変焦点拡大型実施形態を示す図である。
【図21】複数個固定型対物系の用例を示す図である。
【図22】複数個の対物系を動かして試料像乃至標本像を得るのに用いるタレットの実施形態を示す図である。
【図23】本発明に従い且つ本発明の実施形態に係る小型対物系を用い複数モードをサポートするシステムの実施形態を示す図である。
【図24】本発明の実施形態に係る小型カタジオプトリック型対物系の別の実施形態を示す図である。
【図25】本発明の実施形態に係る小型配列チューブレンズを示す図である。
【図26】波長約311〜315nmで動作可能でその直径が約26mm、視野サイズが約0.28mm、NA値が約0.90の実施形態を示す図である。
【図27】波長約297〜313nmで動作可能でその直径が約26mm、視野サイズが約0.28mm、NA値が約0.90の実施形態を示す図である。
【図28】波長約297〜313nmで動作可能でその直径が約26mm、視野サイズが約0.4mm、NA値が約0.90の実施形態を示す図である。
【図29】波長約266〜313nmで動作可能でその直径が約26mm、視野サイズが約0.28mm、NA値が約0.90の実施形態を示す図である。
【図30】相対帯域幅対最大レンズ素子直径を本発明の実施形態を含め何種類かの対物系間で対比するグラフである。
【図31】視野サイズ対最大レンズ素子直径を本発明の実施形態を含め何種類かの対物系間で対比するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、別紙図面を参照しながら本発明について詳細に説明する。本件技術分野における習熟者(いわゆる当業者)であれば、以上述べたものもそれ以外のものも含め本発明の特徴について以下の説明及び図面から理解できるであろう。また、以下の説明では幾つかの例を示すがこれには限定という意味合いはない。
【0020】
本発明の検査システム及びその実施形態にて使用する結像サブシステムは全体として小型である。特にその対物系は小型であり、従前のカタジオプトリック型対物系では得られない優れた効果を発揮するものである。本システムにて使用する各種の部材及びサブシステムは、小型対物系と併用することによって正確且つ高品質な走査を実行できるよう、即ち従来から知られている小さめの対物系を使用した検査システムと比べ正確且つ高品質に走査できるよう、構成することができる。
【0021】
図1Aに典型的な検査システムを示す。この図に示す検査システムは、照明サブシステム101、位置決めステージ102、自動合焦サブシステム103、結像サブシステム104、センササブシステム105、データ取得サブシステム106及びデータ分析サブシステム107を備えている。本発明に係る対物系は結像サブシステム104に組み込まれており、これについては後により詳細に説明する。図1に示したシステムにおいて光が辿る光路は照明サブシステム101から発しており、位置決めステージ102及び結像サブシステム104を経て、センササブシステム105乃至そのセンサに至っている。データは、自動合焦サブシステム103と位置決めステージ102の間、センササブシステム105とデータ取得サブシステム106の間、データ取得サブシステム106と照明サブシステム101の間、データ取得サブシステム106とデータ分析サブシステム107の間、並びにデータ分析サブシステム107と位置決めステージ102の間を通っている。
【0022】
図1Aに示されている部材の役割は次の通りである。まず、照明サブシステム101は図示しない標本に向け照明光を発する。この標本の位置は位置決めステージ102によってその位置が保持されており、また位置決めステージ102は必要に応じてこの標本の位置を動かして、光エネルギが、小型の対物系、結像用光学系その他結像サブシステム104内にある結像用部材更にはセンササブシステム105に届くようにしている。データ取得サブシステム106はセンササブシステム105乃至そのセンサからデータを取得し、センササブシステム105とやりとりする。このやりとりは、より正確な検知結果を示すデータが得られるよう、位置決め、合焦等を通じて行う。こうして取得されたデータは、例えば既知標本や既知標本欠陥の見え方についてのデータベースを有するデータ分析サブシステム107にて分析される。データ分析関連の情報は、例えばデータ再取得のためデータ取得サブシステム106へとフィードバックされ、また標本の再位置決め(位置の合わせ直し)のため位置決めステージ102に供給される。更に、データ取得サブシステム106は、照明サブシステム101とのやりとりを通じ照明サブシステム101の照明特性を取得像品質に応じ変化させる。そして、自動合焦サブシステム103は、焦点位置を自動的に標本に合わせるため、位置決めステージ102と併用される。
【0023】
検査モード
集積回路半製品等の標本を検査できるモードは数多くあるが、本システムではそのうち用途及び環境にあう何種類かの検査モードを使用できる。本システムにて使用できる検査モードには、例えば、明視野(bright field)、環状暗視野(ring dark field)、方向性暗視野(directional dark field)、全天(full sky)、DIC(Differential Interference Contrast)、共焦点(confocal)等、光エネルギの反射を利用して標本を検査する各種の検査モードが含まれる。本検査システムは、これらの検査モードを全てサポートする構成としてもよいし、そのうち幾つかをサポートする構成としてもよいし、これら以外の検査モードもサポートする構成としてもよい。
【0024】
まず、明視野検査モードは、普通の顕微鏡システムによる検査、即ち検査対象物乃至標本の拡大像をセンサ上に投射する検査と、同様の検査を行う検査モードである。この検査モードには、形成される像が明視野内にあり苦もなく弁別できること、像の上での見かけの構造物サイズが正確に検査対象物上での実際の構造物サイズと光学系の倍率との積であること等の特徴がある。従って、明視野検査モードは特に支障なく画像比較アルゴリズムや処理アルゴリズムと併用でき、それによって検査対象物上のパターンをコンピュータ処理により検知及び分類することができる。この検査モードには、半導体ウェハ検査等、広い用途がある。
【0025】
次に、暗視野検査モードは主としてエッジ、小粒子、不規則面等からの散乱光の検知に使用される。例えば、滑らかな平坦面はほとんど光を散乱させないためその像は暗くなるが、その平坦面から何らかの表面構造物、粒子乃至物体が突出しているとそれらによって光が散乱され、明るい面乃至領域が発生する。暗視野検査モードにて小型構造物から得られる信号は、その構造物が受光エネルギをより散乱させやすい性質であればより大きく広がり、大きく広がった信号は構造物サイズに比してセンサ画素がかなり大きくても捉えることができ従ってウェハの検査を迅速に行えることとなる。繰り返しパターンを有する標本を対象として暗視野検査を行う場合は、フーリエフィルタリングを併用することによってその繰り返しパターンにて現れる信号を抑えることができ、欠陥を表す信号を良好な信号対雑音比で弁別することができる。
【0026】
この暗視野検査モードには、例えば環状暗視野検査モード及び方向性暗視野検査モードを含め、数多くの種類がある。これらの暗視野検査モードにおいては、検査対象物から収集される散乱回折光から正確性の高い信号が得られるようにするため、それぞれ独特な照明方式及び集光方式が使用される。まず、環状暗視野検査モードにおいては照明瞳と結像瞳とが重なり合わないようにする。そうしたやり方の典型例としては、光学瞳のうち光軸となす角度が大きい外側部分(高NA部分)を照明用開口として用いウェハに光を導く一方、結像瞳面には照明用開口を通った光の大部分をブロックするよう且つ結像瞳面の中央部を通って散乱光が収集され像を形成することとなるよう開口を設ける、というやり方である。このやり方では、ウェハ上の構造物が全方向から均一に照明されるため、その向きの違いによらずどの構造物も等しく良好に結像されることとなる。なお、開口同士の関係を反転させ、照明光が光学瞳の中央を通る一方反射光が外側を通って結像する構成とすることもできる。
【0027】
次に、方向性暗視野検査モードは、遭遇する(と見込まれる)欠陥の種類等に応じ、様々な形態で実施することができる。第1の形態である開口整形モードでは、照明瞳面及び結像瞳面に開口を設け、これらの開口により照明瞳面及び結像瞳面上の相異なる部分を選択的に使用する。例えば、照明瞳内の部分のうち縁寄りの部分に照明用開口を設けて照明光をウェハに対し細い光円錐で効率良く広角度入射させる一方、結像瞳内に何個かの結像用開口を設けて散乱光のうち所望部分を選択的に通過させる。照明用開口から見て両側に90°ずれた位置に合計2個の結像用開口を設ければ、主にウェハ上の構造物から横方向への散乱光がこれら結像用開口を介し捉えられることとなる。照明瞳面及び結合瞳面上における開口の設け方は、検知したい欠陥の種類に応じ最適になるよう定めればよく、従って上掲のもの以外の設け方も採用できる。第2の形態であるレーザ方向性暗視野モードでは、何個かのレーザ光源を用いて対物系の外縁から高入射角角で試料を照明する。例えば互いに90°異なる角度位置から4本の照明ビームを発する幾何学的配置を用いれば、試料上の構造物が有しているあらゆる方向依存性の影響を容易に抑えられる。第3の形態である内部レーザ暗視野モードは整形開口モードとレーザ方向性暗視野モードとを組み合わせたモードである。レーザ光を用いた方向性暗視野検査モードでは、光学系を構成する照明瞳面内の特定の場所に向けてレーザビームを入射する。
【0028】
全天検査モードによる光学的検査は明視野検査モードと環状暗視野検査モードとを組み合わせたものであり、このモードでは、明視野からの欠陥検知と暗視野からの欠陥検知とを同じセンサを用いて同時に実行できるよう、明視野から得られる信号に適用する減衰量や暗視野から得られる信号に適用する減衰量を変化させて、その比率を調整する。
【0029】
DIC検査モードは検査対象物上にある構造物のトポロジにおける勾配を分解検知することが可能なモードであり、この検査モードにおいては光路上における勾配が増加するにつれ像のコントラストが増大する。DIC検査モードは、光学系解像度オーダのシア距離(shear distance)を有する空間シア系を用いるモードであり、通常、このモードにおいては、照明光を分割することによって相直交する2本の偏波ビームを生成し、それらのビームを検査対象物上の構造物と相互作用させ、そして像形成前に再結合させる。
【0030】
共焦点検査モードは検査対象物上の構造物トポロジに現れている相違を分解検知できるモードである。大抵の光学検査モードには構造物のトポロジ変化乃至差を検知するのが難しいという難点があるが、共焦点検査モードにおいては、照明焦点及び結像焦点に近い位置に設けた開口によって高さの違いを判別することができる。照明用開口の代わりにレーザ照明を用いてもよい。
【0031】
照明
本システムにて使用する照明サブシステムは、光源、集光器、ビーム整形又は均一化器及び光中継器を含め、何個かの機能装置から構成される。集光器、ビーム整形又は均一化器及び光中継器は、光源から照明光エネルギを受け取って調整・改質し試料に照射する。光源はランプ型でもレーザ型でもよいが、そのどちらにするかによって照明サブシステムの実施形態は幾分違うものになる。
【0032】
図1B、図1C及び図1Dに照明サブシステムの実施形態を概念的に示す。図1Bは照明サブシステムの一般的実施形態を示す図であり、この実施形態は光源121、集光器122、ビーム整形又は均一化素子群123及び光中継器124を有し試料125を照明する。図1Cはこれをランプ型とした実施形態を、また図1Dはレーザ型とした実施形態を、それぞれ示す図である。図1Cに示すランプ型照明サブシステムは、アークランプ、エキシマランプ等のランプ光源126と、屈折型、(楕円面又は放物面)反射型、カタジオプトリック型等の集光器127と、ライトパイプ、レンズアレイ、アキシコン(axicon)等の形態を採るビーム整形素子群128と、瞳面光中継器(開口等)、視野面光中継器(視野サイズリミッタ等)等の形態を採る光中継器129とを有しており、試料130に照明光エネルギを照射している。図1Dに示すレーザ型照明サブシステムは、固体、ガス、エキシマ等のタイプのレーザ光源111と、単純な配列ビーム狭搾部、開口中継等による集光器112と、拡散器、回折光学系(瞳面や視野面内で光を整形する光整形素子等)等の形態を採るビーム整形又は均一化素子群113と、瞳面光中継器(開口等)、視野面光中継器(視野サイズリミッタ等)等の形態を採る光中継器114と、を有している。但し、図1B、図1C及び図1Dに示した実施形態の各構成要素は一例に過ぎず、従ってそれらに代え別種のものを用いることもできる。例えば、限定的意味合い抜きでいうと、図1Dに示したレーザ型照明サブシステムにおけるビーム整形用に、拡散器でも回折光学系でもない素子を用いてもよい。
【0033】
ランプ型照明サブシステムにおけるランプ光源126としては、例えば、アークランプ、エキシマランプ、フィラメントランプ等、様々なものを使用できる。ランプ光源126は通常は高輝度、高安定且つ長寿命であり、高輝度及び高安定であることは高速検査に都合がよく、長寿命であるから輝度条件及び安定度条件を長期間に亘り継続的に充足できる。また、ランプパワーに現れる変動をダイオード等により計測し、信号レベル変化を補償することもできる。使用環境、標本の種類、所望する結果等によっては、比較的低輝度な光源も使用できる。
【0034】
図2に使用可能なアークランプの例を示す。このアークランプは、例えば水銀ランプ、キセノンランプ、その組合せの水銀キセノンランプ、メタルハライドランプ、カドミウムランプ、重水素ランプ等の種類のアークランプである。これらの種類のランプであれば、一般に高い輝度を得ることができまた広いスペクトル範囲をカバーすることができる。中でも、ショートアークギャップ水銀キセノンランプは、UVやDUVに亘るスペクトル域で高い輝度が得られることから、半導体ウェハ検査用の光源として好適である。また、キセノンアークランプは非常に均一なスペクトル分布を有しており、水銀キセノンランプがもたらすような線状スペクトルはもたらさない。更に、アークランプにおいては、通常、そのアノード201、カソード202及びランプ容器203を所定の温度に保持することによって、寿命を長くし安定度を高めることができる。この図に示したアークランプ型照明サブシステムにおいては、図中のY軸について対称に放射が生じるため、φが大きい方向への放射はアノード201やカソード202によって遮られて低レベルとなる。
【0035】
図3Aに電気ポンプ型のエキシマランプの例を、また図3Bに電子ビームポンプ型のエキシマランプの例を、それぞれ示す。エキシマランプは連続動作可能なランプであり、その原理はエキシマレーザと同じくガス内エキシマ遷移である。エキシマランプはVUV(vacuum ultraviolet)域内の極短波長域にて使用できる数少ない光源の一種であり、その動作波長域は40〜50nm程と広くすることができる。図示した通り、電気ポンプ型エキシマランプは、高電圧301を用いて電極302と電極302の間のエキシマガスを電気的に励起し、窓303から光を出射する仕組みであり、電子ビームポンプ型エキシマランプは、高電圧304を用いて電子ビームを発生させ、その電子ビームを真空部305とエキシマガス306との間の窒化シリコン障壁を通して合焦させて、窓307から光を出射する仕組みである。後者は電子ビームを用いているため一般に高い輝度を得ることができる。
【0036】
フィラメントランプの例としてはタングステンハロゲンランプがある。フィラメントランプを用いたランプ型照明サブシステムは、特に400nm以上の波長を用いる場合に有用であるが、得られる輝度が本質的に低いため一般に高速検査用には適していない。
【0037】
なお、特定スペクトル領域を増強したいならドーパント素材を添加した混合ガスを用いるとよい。そのようにすれば、例えば様々な種類のアークランプから、より広い波長域に亘る光を得ることができる。次の表は、一般に入手及び利用可能な種々の光源についてその光源に典型的な波長域を示した表である。
【表1】
【0038】
これらのランプはパルス動作でも連続動作でも使用できる。本システムにおいては、そのランプにとり適正な動作環境となるよう最適な状態乃至条件で照明サブシステムを使用することで、寿命をより長くすることができる。
【0039】
ランプ型照明サブシステムの集光器127は、こうした高輝度光源から多量に受光する。ランプ出力分布が適切であり且つ集光方式がランプ出力分布に見合っていれば、ビーム整形装置128に送られる光は好適なものになる。本システムの集光器127における集光方式としては多様な方式を実現及び使用可能であるが、それらは大まかにいって次の三方式に分類できる。即ち、全屈折型、全反射型及びカタジオプトリック型の三方式であり、その中から、波長域、検査システムの幾何学的構成、対象標本種類、所期性能、所期欠陥種類、パワー条件等に応じその照明サブシステムに適切な方式を選ぶことができる。
【0040】
屈折型集光器は、屈折性コンデンサと反射性バッキングミラーを併用する集光器であり、検査上の利点を幾つか有している。図4に例示する屈折型集光器は、アノード402を有するアークランプ403の近くに配置された反射器401を有しており、アークランプ403からの直接光エネルギや反射器401を経た反射光エネルギはレンズ404及びレンズ装置405に向け送出され、レンズ装置405はこれら光エネルギを点406に合焦させる。
【0041】
こうした構成を用いれば、単色収差(monochromatic aberration)を十分な程度まで且つ広い波長域に亘って補正することができ、例えば365〜700nmの波長域をカバーする構成も実現できる。とはいえ、やっかいな点もある。第1に、UV〜DUV域内で広い幅のスペクトル帯域をカバーしたいときに屈折型集光器を用いても、収差が十分に補正されたアーク像を得るのは難しい。十分に収差補正されたアーク像を得るのが難しいのは、使用可能なガラス素材が熔融シリカと弗化カルシウムしかないためである。特に、大抵のコンデンサは他と比較して高温になりやすいため、熱膨張係数が大きな弗化カルシウムではその素材性能が十分に発揮されない。第2に、この図のように向きが定められていると光エネルギがアークランプを2回通過することとなり、そのためバッキングミラー(反射器401)に要請される効率条件が厳しくなる。反射器401に向かった光エネルギはレンズ404に達するまでにランプ容器を3回も通過するし、また反射されて戻るときに恐らくはランプ内アークのどこかを通過する。更に、この構成では一部の光が集光されない。そうした光をも集光するには、上述の実施形態に第2のコンデンサを付加すればよい。図5に屈折性コンデンサをデュアルチャネル配置した実施形態の上面乃至頂面を示す。本実施形態は、アークランプ500と、第1球状反射面501及び第2球状反射面502からなる反射面とを、有している。レンズ装置503はランプ500からの直接光エネルギ及び対応する反射面からの反射光エネルギを点505に向けて送出し、レンズ装置504は点506に向けて送出する。本実施形態によれば、照明光エネルギを発する単一のアーク光源によって2個の検査チャネルを得ることができる。
【0042】
2個のコンデンサを組み合わせるという発想を利用すれば、両コンデンサを用い均一化素子群128における平均輝度を高めることも、またそれらコンデンサを別々の波長域向けに設計して複数の波長域をサポートすることも可能である。まず、平均輝度を高めるには、光路を転向させて均一化素子群内にコンデンサからの像とバッキングミラーからの像を共に入射させればよい。均一化素子群は、反射型集光器から受光しその光から均一な光放射乃至配列を生成する機能装置である。複数の像が均一化素子群内に入射されるよう光路を転向させる装置の例を図6に示す。この図の例はその光路を転向させて二種類の像をライトパイプ内に入射させる装置であり、この装置においては、その表面に反射性被覆が形成されているプリズム603に第1コンデンサ系からの光601及び並びに第2コンデンサ系からの光602を入射させ、プリズム603の反射性被覆によって反射された光をライトパイプ604に入射させることができる。本実施形態は高い輝度を得ることを狙った実施形態であるから、反射性被覆としては高効率ミラー被覆を使用するとよい。元々単一のアーク像から発した光エネルギはこうしてライトパイプ内に好適に収まる。このやり方は、複数個のコンデンサを互いに別の波長域に最適化させた実施形態を得る際にも、適用することができる。
【0043】
また、反射面が楕円面の反射型集光器も使用可能である。全反射型集光器は傾向としてあまり色収差(chromatic abberation)を発生させないため、UV〜DUV波長域内で非常に広い幅を有する帯域をサポートすることができる。反射被覆として所望波長だけを反射できるものを使用すれば、ランプからの光のうち不要な成分をより出し、所望のスペクトルだけとすることができる。逆に、ランプ発光の大部分を集光できるよう反射型集光器を構成することもできる。図7A及び図7Bに楕円面反射型集光器の例を示す。まず、図7Aに示す例では、アーク発生位置が楕円面702の第1焦点となるようランプ701が配置されており、楕円面702によりランプ701から収集された光が第2焦点703に集光されている。次に、図7Bに示すもう一つの例においては、ランプ704が楕円面705に対して横向きに配置されており、楕円面705により収集された光が第2焦点706に集光されている。何れにしろ、楕円面反射型集光器の焦点から離れた場所での収差は大きく、そのため光は第2焦点周りにかなり大きく広がるから平滑化装置内に入射し得る有用な光量は低く、従って楕円面反射型集光器はラージインバリアント向けに用いる方がよい。更に、反射型集光器においてはランプが影をもたらすため中央暗部(central obscuration)が生じるのが普通であるが、同じく中央暗部を発生させる結像システムと併用するならばこのことはさして問題にならない。しかしながら、本実施形態はランプを取り巻くミラーの向きに敏感な構造であり、適正な温度で動作するようランプを冷却できる構成とするのが面倒である。
【0044】
カタジオプトリック型集光器は、屈折型集光器を構成する何個かのコンデンサにより得られる高い収差補正効果と、反射型集光器により得られるスペクトル帯域幅拡張効果とを、併せ享受できるが、小さめであるとはいえ中央暗部が生じることがある装置である。図8Aにカタジオプトリック型の第1例をまた図8Bに第2例をそれぞれ示す。図8A及び図8Bに示す実施形態は、何れも広い帯域幅に亘り良好に収差補正できる性質を有している。まず、図8A中、ブラスト窓802並びに3枚のレンズ素子803、804及び805を有するレンズ装置は、ランプ内アークからの光と、ランプから発せられた後バッキングミラー801によって反射されランプ内アークの近くを通った光とを、受光及び集光する。集光された光は視野レンズ806によって合焦されてマンジャンミラー素子807の開口を通り抜け、マンジャンミラー素子808更にはマンジャンミラー素子807により反射されて、マンジャンミラー素子808の開口を通り抜けて点809で合焦、結像する。図8Aの実施形態の仔細は次の表の通りである。
【表2】
【0045】
この表を含め、本願中のレンズ処方を示す表ではSRF又は面番号という項目を掲げている。これは各素子の表面に対し配置順に割り当てた番号である。大抵の素子は表面を2個有しているから、図8Aに照らして上の表を読み解くと次のようになる。まず、素子802の左面である面0は素子801の焦点から20.0000mm離れた場所にある。素子802は、この表の面1の欄にある通り熔融シリカから形成された3.0000mm厚の素子である。素子802とその隣の素子803の左面即ち面3との間は9.0000mm離れている。素子803は、その左面の曲率半径が−49.1737mm、厚みが16.0000mmで、熔融シリカから形成されている。このように、表中の記載から、図中に示されている面がそれぞれどのようなものであるかを確認できる。
【0046】
図8B中、ブラスト窓811並びに3個のレンズ素子812、813及び814から構成されるレンズ装置は、ランプ内アークからの光と、ランプから発せられた後バッキングミラー810により反射されランプ内アークの近くを通り抜けた光とを、受光及び集光する。集光された光は更にレンズ815を通り抜け、ミラー816により反射され、レンズ815を再度通過して戻り、点817にて像を形成する。図8Bの実施形態の仔細を次の表に示す。
【表3】
【0047】
以上の例に従い大きな集光角を有するカタジオプトリック型集光器を構成しようとしても、反射光の大部分がランプにより隠されてしまって結局大きな集光角で集光できないであろう。この点について検討し改良を施した実施形態を図8C及び図8Dに示す。これらの実施形態においても、広い波長域に亘り好適に収差補正できる。まず、図8C中、ランプ内アークからの光や、ミラー818により反射されランプ内アークの近くを通った光は、ブラスト窓819並びにレンズ素子820及び821から構成されたレンズ装置を通り抜け、ミラー822により反射され、戻って素子821、820及び819を通り抜け、ミラー818にあいている孔を通って像823を形成する。図8Cの実施形態の仔細を次の表に示す。
【表4】
【0048】
図8Dにおいては、ランプ内アークからの光や、ミラー824により反射されランプ内アークの近くを通り抜けた光は、ブラスト窓825及びレンズ素子826から構成されたレンズ装置を通り抜け、ミラー827により反射され、戻って素子826及び825を通り抜け、ミラー824にあいている孔を通って像828を形成する。図8Dの実施形態の仔細を次の表に示す。
【表5】
【0049】
ビーム整形又は均一化素子群128は、照明形状を整形して視野面内や瞳面内における照明形状を望み通りのプロファイルにする。まず、結像サブシステムに対しては、多くの場合、視野面を均一に照明することによって直視画質を改善し且つコンピュータ画像分析時における電子補正所要量を抑えることが、望まれるであろう。均一照明面を実現する手法の一つは、均一化素子として図9Aに示す均質化ロッドを用いる手法である。合焦中の光をこの図の均質化ロッドの入射面901に入射すると、その光は反射を繰り返しつつ長手方向に沿いこのロッド902の下流へと進んでいく。入射面901に相異なる入射角で入射、サンプリングされたビームはこの均質化ロッドの出射面903にて重畳し合い、それによって高度に均一な照明面が形成される。こうしたロッドはガラス(UV用なら熔融シリカ等)から形成できる。このロッドを高効率化したいなら、内部全反射が生じるように構成、使用すればよい。中空ロッドに鏡面被覆を設けて反射が生じるようにしたものも使用できる。中空ロッド型ならば非常に小さいものを製作することができるが、但し一般に伝送容量は小さくなる。六角断面型とすれば、環状面をより効率的に光で充填することができる。そして、ライトパイプ型とすれば、有益なことに、ラージインバリアントをサポートでき、ライトパイプ断面積を小さくすることによって平均輝度を高めることができ、また複数個のライトパイプを使用できる。
【0050】
均一照明面を実現する手法としては、更に、均一化素子として図9Bに示すレンズアレイを用いる方法がある。図示の通りレンズアレイ904と合焦レンズ905とを組み合わせれば、面906上に均一照明エリアを形成することができる。即ち、図9Bに示した実施形態においては、レンズアレイ904を構成する各個別レンズ素子の照明形状を効率的に捕捉し、それら照明形状同士を面906上で重畳させることによって、それらのプロファイルを“均して”均一照明面を形成している。
【0051】
その特性上望ましい照明形状としては更に環状照明がある。環状照明とは環状暗視野モードで観測される瞳面と同様の瞳面を形成する照明形状であり、そうした性質は有益に利用することができる。瞳面内で当該有益な性質を発揮させるには、瞳面に照明用開口を設け、所望角度範囲内を照明する光のみを通すようにすればよい。但し、そうした実施形態ではその開口を通れなかった光が損失になってしまう。図10A〜図10Eに示すように何個かのアキシコン素子を整形素子として用い環状照明を実施するようにすれば、そうした光損失は抑えられる。まず、図10Aでは、レンズ1001と1枚のアキシコン1002とを用い、面1003上に環状照明形状を形成している。次に、図10B及び図10Cに例示されているズーム型デュアルアキシコン系においては、第1アキシコン1004によって第2アキシコン1005上に環状照明形状が形成されており、図10Cに示すように、アキシコン間隔を変えると得られる環状照明の直径が変化する。そして、図10D及び図10Eにもこれと似たズーム型アキシコン系が示されているが、このアキシコン系においては発散アキシコン1006と収束アキシコン1007を組み合わせて用いており、本実施形態でもアキシコン間隔を変えると得られる環状照明の直径が変化する。また、本実施形態では軸長をより短くすることができる。
【0052】
また、スペクトル分布及び光レベルを制御するには、均一化又は中継用の光学系内に更なる光学素子を追加するとよい。追加するとしたら、例えば吸収フィルタ、干渉フィルタ、反射フィルタ、等々であろう。図11A及び図11Bに示す光中継器を用いれば、歪乃至光学的変形を抑えつつ、視野面上の像を離れた場所に再現する(像を中継する)ことができる。まず、図11Aに例示されており本システムで使用できる視野面瞳面中継光中継器は、光パイプ出射端等として構成されている視野面1101上の像を、レンズ1102及び1104により中継用視野面1105へと中継して結像し、中継用視野面1105上の像をレンズ1106により試料上に結像させる。中継用視野面1005上に開口を設けて視野サイズを制限し散乱光の量を抑えることもできるし、また中間瞳面1103上に開口を設けて照明光が使用できる開口範囲を制御する等適当な開口により照明光を改変乃至カスタマイズすることもできるし、中間瞳面1103上にアキシコン系を挿入して環状照明を実施することもできる。何れにせよ、中間瞳面1103上の像はレンズ1104及び1106によって瞳面1107上に中継される。これにより瞳面1107上に形成される瞳は、照明サブシステム側の光路と結像サブシステム側の光路とにより共有される。
【0053】
図11Aの実施形態は中継用視野面を内部形成しない実施形態に変形することができる。即ち、レンズ1102によって視野面1101からの光を瞳面1107上の共有瞳に直接中継する実施形態とすれば、照明サブシステム内光中継器を構成する光学部品の個数を本質的に減らすことができる。図11Bに、視野面中継を実行する光中継器の別の実施形態を示す。この光中継器は、ライトパイプ出射面等として形成されている視野面1108上の像をレンズ1109によって(図11A中の中継用視野面1105と同様の)中継用視野面1110上に結像し、中継用視野面1110からの光をレンズ1111によって中継し共有瞳1112を形成する。
【0054】
先に少し言及したレーザ型照明サブシステムは光源としてレーザ光源111を備える照明サブシステムであり、このレーザ光源111としては例えば固体、イオン、半導体直接発振、エキシマ等の様々な種類を使用できる。本システムにてレーザ光源111を用いるのは、レーザ光源111であれば必要な出力パワーを得ることができ、その安定度が高く且つ寿命が長いためである。
【0055】
レーザ光源111のパワー及び安定度は、本システムの能力即ち標本115を適切に検査する能力の物差しとなる重要な指標である。例えば、ダイオードを用いてパワー変動を計測し信号段階にてその変化を補償してやることにより、レーザ光のパワー変動を補正することができる。また、所与環境にて結像所要パワーを好適に提供できる限り、上掲の条件を満たしていない低パワーレーザ光源でも使用することができる。
【0056】
次の表
【表6】
は、本システムにて使用可能なレーザ光源種別毎に、典型的な波長値を記した表である。但し、使用できるレーザ光の波長はこの表の値に限られるものではなく、複数通りのレーザ波長の混合等により周波数変換すれば、より短波長のレーザ光も得られる。例えば、広く知られているように、YVO4レーザの発振周波数を2倍、3倍、4倍等とすることによって、順に532nm、355nm、266nm等といったレーザ波長を得ることができる。また、上掲のレーザ光源の動作モードには連続モードやパルスモードがある。連続モード下では反射光が連続的に累積し、例えば走査型のデータ取得システムはこの累積された信号からデータを取得することができる。また、本システムでは高繰り返しモードロックレーザ、即ち信号積分時間に対しその繰り返し速度が十分速いため検知システムからすればあたかも連続モードレーザであるかのように見えるレーザ光源も、レーザ光源111として使用できる。無論、より繰り返し速度が低いモードロックレーザを本システムにて使用できないわけではないが、いわゆる当業者に知られているように、その種のレーザ光源を使用するにはフラッシュ型システムアーキテクチャが必要となる。フラッシュ型システムアーキテクチャを用いるならば、その最高繰り返し速度が5kHzレンジ内のエキシマレーザを用いることができる。
【0057】
図12A及び図12Bに、本システムにて使用可能なレーザ光集光器の例を二通り示す。まず図12Aにおいては、レーザ光源1201の働きによってガウシアンビーム狭搾部が位置1202に形成されている。このビーム狭搾部はレーザ光源1201の発振部(空洞)に備わるビーム整形機能によって位置1202に生じたものであり、ビーム狭搾部位置1202はレーザ光源1201の内部になることもまた外部になることもある。周波数変換型レーザ光源なら、ビーム狭搾部位置1202は往々にして周波数変換用クリスタル内になる。こうしたビーム狭搾部はレンズ1203によって二次ビーム狭搾部位置1204、例えば本願中で説明するビーム均一化用光学系への入射部等に、結像される。次に図12Bにおいては、レーザ光源1205から輻射される光が開口1206を通り抜けている。この開口は、例えばレーザ発振モードを規定する内部空洞開口であり、或いはレーザ光のスポットサイズを規定する開口である。この開口は、レーザ光源1205の出射カプラに設けるとよい。これらのレーザ光集光技術を用いることによって、レーザ光源から発せられたビームの方向ズレ及び中心ズレを抑えることができる。
【0058】
均一光を発するようレーザ型照射サブシステム光源を構成する際には、本検査システムの実施形態に対して要求される性能や条件を勘案する。図13Aに示す実施形態においては、レーザ光をレンズ1301によって光学系1302上に合焦し、この光学系1302によってそのレーザ光に角度的広がり1303を持たせる。光学系1302は例えばすりガラス、体積拡散器、回折光学系等から形成できる。すりガラスや体積拡散器より回折光学系の方が効率がよいが値段も高い。すりガラスを用いて高効率の光学系1302を得るには、例えば、ガラス表面を研磨した後に酸でエッチングすればよい。また、回折光学系からの出射光における角度ばらつきをより正確に制御・管理する手段の素材として、すりガラスを使用することもできる。何れにしろ、光学系1302は、レーザ光源111からの高度にコヒーレントな光から、高次変調干渉乃至スペックルパターンを生成する。このとき速めに回転させる等光学系1302を動かしてやれば、そうしたスペックルパターンは均して消すことができ、従って均一照明パターンを得ることができる。図13Bにまた別の方式を示す。この方式においては、拡散器又は回折光学系1304に入射した平行光がレンズ1305によって平面1306上に合焦される。この平面1306には、例えばライトパイプ等、ビーム整形又は均一化光学系を配置することができる。本実施形態でも、拡散器又は回折光学系1304を移動乃至回転させることによって、スペックルパターンを平滑することができる。
【0059】
図13Cに、また別のビーム整形又は均一化方式を示す。この方式においては、レーザ光は、まず照明側視野面に配置された回折素子1307を通り、瞳面に配置された回折素子1309へとレンズ1308により中継され、そしてレンズ1310により視野面1311へと中継される。視野面及び瞳面双方に回折素子を配置してあるため、それら両方の位置で照明形状を制御・管理することができる。本実施形態でも、それら回折素子1307及び1309を移動乃至回転させることにより、干渉パターン乃至スペックルパターンを均して消すことができる。
【0060】
図13Dに、本システムにて使用できる光中継器114の例として、瞳選択フィルタリングという考え方を用いた光中継器を示す。この例においては、レーザ光がレンズ1312によって中継用瞳面1313へと中継され、レンズ1314及び1316によって中継用瞳面1313から集光された光が共有瞳面1317へと中継される。中継用瞳面1313における光強度分布はビーム整形器の構成により決まる。こうした構成の光中継器114を用いれば、(準)均一照明だけでなく、点状照明、環状照明、四分円(quadrapole)照明等、所望の照明パターンで照明することができる。更に、中継用視野面1315に開口を設け光散乱効果を抑えることもできる。図13Eに、光結像器の外から照明するレーザ暗視野モード用の照明中継方式を示す。本実施形態においては、入射レーザ光1319によって試料1320が照明されており、その結果標本乃至試料1320により散乱された光を光結像器1318が集光している。入射面上におけるレーザ光入射方向は、信号光の集光効率がより高くなるよう、また結像信号対雑音比がより良好になるよう、設定すればよい。入射レーザ光1319たる照明ビームは1本でも複数本でもよいが、例えば、入射面となす角度(入射角)が同じ4本のレーザビームを、試料1320の垂線周りで90°ずつずらした方位から入射するとよい。
【0061】
位置決め
DUV検査システム用位置決めサブシステムは、例えば、標本を高速で位置決めすることができ、標本を回転させて整列させることができ、そして合焦光学軸に沿って標本を移送できる構成とする。例えば当業者に精密ステージとして知られている装置を使用すれば、標本を高速で位置決めすることができる。精密ステージとは、普通、花崗岩等から製造した高精度面上でエアベアリングを使用し動きを制御するものをいう。リニアモータを何個か使用すれば、大概は、高速移動を実現できる。
【0062】
高速検査用ステージにて採用できる走査方式には様々なものがある。例えば、半導体ウェハのようなパターン付の試料を検査する際の走査方式としてはラスタ走査を使用できる。ラスタ走査実行時には、ステージは、結像サブシステムの視野を横切るようある方向に沿って試料を動かし、次いでその方向と直交する方向に沿って試料の位置をある増分だけステップ的に変化させ、そして結像サブシステムの視野を横切るよう当初と逆方向に沿って試料を動かす、という動作を、その試料上の所望エリアを検査し終えるまで繰り返す。また、Rθ走査実行時には、結像サブシステムの視野を横切るよう試料を回転させ、一周する間に試料の半径位置をある増分だけステップ的に又は連続的に変化させる、という動作を、その試料上の所望エリアを検査し終えるまで繰り返す。なお、試料の半径位置の連続的変化とは、ちょうど再生中のLPレコードのように、螺旋状の検査経路を発生させることを指している。
【0063】
また、ラスタ走査型位置決めサブシステムに回転機能を設ければ、試料上にある構造物が例えば直線である場合や、検査検査対象物が列乃至線状パターンをなしている場合に、ラスタ走査開始前にそれら直線乃至パターンの向きを走査方向に揃えておき、ラスタ走査を行っている間イメージセンサ上における当該直線乃至パターンの位置乃至向きを実質的に維持することことが、可能になる。
【0064】
また、走査面に直交し且つ光軸と平行な軸に沿い動かせるステージを用い焦点制御を行うことができる。当該焦点制御は十分高速で実行できるため、約1000Hz以上での高速走査中も、合焦状態を維持することができる。その分解能も十分精細にすることができ、実質、その制御誤差はその光学系における焦点スポットの光軸方向寸法よりも小さくすることができる。NA値が高く短波長を使用するシステムではしばしば50nm未満の制御誤差で光軸方向に位置決めできる能力が求められるが、当業者に知られているPZTシステム等のような高分解能駆動システムを用いれば、そうした高分解能制御も実行できる。
【0065】
結像
結像サブシステムの構成上の基本となるのは、高NAで、その寸法が小さく、広い視野を有しており、そして広帯域光源に対処でき各種結像モードをサポート可能なカタジオプトリック型対物系である。この光学装置には、更に、自動合焦サブシステムが使用する何種類かの波長を取り扱える能力や、外部瞳面乃至フーリエ面を有する光学系や、ズーム機能や、光学系の汚濁状況を管理し清掃する機能を、設けるとよい。清掃・汚濁管理機能を設けるのは、UV光エネルギ光源使用時にこの光学装置から酸素を排除するためである。
【0066】
図14に結像システムの実施形態を示す。この結像システム1402は対物系1403及び像形成光学系1404から構成されており、その主目的は試料1401の像を検知器1405上に形成することにある。この結像システム1402を顕微鏡等の検査環境にて動作させるには、先に実施形態として述べた照明サブシステムを照明器1406として用いる必要がある。像の合焦状態を維持するには自動合焦素子1408を用いればよく、システム構成要素の位置揃えには瞳結像1407を用いればよい。
【0067】
本システムにおいては様々な結像方式を使用できる。即ち、図15に示す対物系1501は、単体の固定対物系でも複数個の固定対物系でも複数個の対物系をタレット上に載せたものでもまたそれらの任意の組合せでもよいが、例えば、可変焦点ズーム1502、複数個の合焦光学系付無限遠焦点チューブレンズ1503、複数個の像形成マグチューブ1504等、何通りかの異なる形態で実施可能である。
【0068】
本システムにおける対物系1501は、例えば285〜320nmの波長域に亘り収差補正できるよう、一種類のガラス素材からカタジオプトリック型対物系として構成する。もし性能向上に資するのであれば、状況次第で複数種類のガラス素材から形成してもよい。図16に示すカタジオプトリック型対物系は、UVスペクトル領域内の広帯域即ち約0.285〜0.320μm波長域にて好適に結像できるよう構成されており、比較的高いNA値及び比較的広い検査対象物視野を有している。この図の実施形態においては、Schupmann原理とOffner視野レンズとを組み合わせることによって、軸方向色収差(axial color)及び一次横方向色収差(first order lateral color)を補正可能としている。従来は色収差を補正するため二乃至三種類のガラス素材が使用されるのが普通であったが、本システムにおいては、使用するガラス素材を一種類にとどめつつ各種の色収差を補正できるよう、格別の試みが施されている。即ち、本システムにおいては、レンズ及びミラーの構成及び配置をある特定の構成及び配置とすることによって、全レンズで同一種類のガラス素材を用いつつ収差を補正できるようにしている。極DUV域ではシリカもCaF2も非常に分散性が強まるため、波長が非常に短く且つスペクトル帯域幅が割合に狭い場合は、ほんの二、三種類の色収差を補正できればよい。補正対象となる色収差には、一次及び二次軸方向色収差(primary and secondary axial color)、一次及び二次横方向色収差(primary and secondary lateral color)、球面収差における色変化(chromatic variation of spherical aberration)、コマ収差における色変化(chromatic variation of coma)等が含まれ得る。本システムにおけるレンズ及びミラーの位置は、一次軸方向色収差及び一次横方向色収差を完全に補正できるよう設定される。二次軸方向色収差及び二次横方向色収差については完全には補正できないが、その幅が比較的狭いスペクトル帯域であれば十分許容できる低いレベルに保つことができる。球面収差における色変化やコマ収差における色変化も、ミラー及び2枚のレンズによって光路をコンパクトに折り畳む構成を用い、補正することができる。
【0069】
図16に示す実施形態においては、視野レンズ1605乃至視野レンズ装置1604の位置を中間像1606からわずかにずらすことによって、性能を高めている。
【0070】
この図16に示すカタジオプトリック装置1601乃至配列マンジャンミラー(Mangin mirror arrangement)は、何れも反射被覆付レンズ素子であるマンジャンミラー素子1602及び凹球面反射器1603を有している。カタジオプトリック装置1601を構成するこれらの素子の中央部は、何れも反射被覆により覆われておらず、光学的な開口となっている。こうした開口が設けられているため、図示しない検査対象物乃至試料1600から到来する光は、マンジャンミラー素子1602を通り抜け、凹球面反射器1603の第2面即ち内部寄りにある反射面1620にてマンジャンミラー素子1602の反射面へと反射され、凹球面反射器1603を通り抜けて凹球面反射器1603と視野レンズ装置1604との間に中間像1606を形成することとなる。なお、視野レンズ装置1604を構成するレンズの枚数は1枚でも複数枚でもよいが、この図の視野レンズ装置1604内で使用されている視野レンズの枚数は1枚(1605)である。
【0071】
レンズ型合焦装置1607は複数枚のレンズ素子(図では6枚のレンズ素子1608、1609、1610、1611、1612及び1613)から構成されている。レンズ型合焦装置1607内にあるレンズは、視野レンズ装置1604からの光更には中間像1606を集光できるよう、全て同じ単一種類の素材から形成されている。
【0072】
図16の実施形態についてそのレンズ処方を表7に示す。
【表7】
【0073】
当業者であれば理解できるように、表7の最左列に記されている数字は面番号であり、図16の向かって左端から数えた面の順番を表している。例えば、レンズ1612の面のうち図16にて左を向いている面(表7中では面番号3)の曲率半径は53.51878mm、同レンズの厚みは2mmである。レンズ1612の面のうち図16で右側を向いている面(面番号4)の曲率半径は−18.17343mm、隣の面までの距離は0.976177mmである。使用されている素材は熔融シリカであり、レンズ1612の左面の直径は9.376161mm、右面の直径は9.234857mmである。
【0074】
図示されている高NAカタジオプトリック型対物系は、赤外域からDUV域に亘る波長域内の様々な波長向けに最適化できる。即ち、当該波長域に属する波長の光ビームを好適に結像できるよう構成し、その波長で使用することができる。例えばUVスペクトル域では、約193nm、213nm、244nm、248nm、257nm、266nm等の波長を有する光ビームを、本願記載の発明の実施に際し使用することができる。当業者であれば、そのためにどのような調整を施せばよいか、明瞭に理解できるであろう。約110〜200nmの波長域に属する波長ではフッ化物ガラスを使用できる。
【0075】
図16の実施形態においては、約0.90に及ばんとする或いはそれを上回るNA値が得られる。本実施形態を含め、本発明におけるNA値はどの実施形態でも0.65を上回り、これまでにない大きな値になる。
【0076】
図16中、レンズ型合焦装置1607は光エネルギを受け取って合焦光エネルギを送出し、視野レンズ装置1604はその合焦光エネルギを受け取って中間光エネルギを送出し中間像1606を形成し、カタジオプトリック装置乃至配列マンジャンミラー1601は中間光エネルギを受け取って調整済光エネルギを形成し標本1600に送る(それぞれそのような能力を有するよう構成されている)。これに応じ、標本1600は調整済光エネルギを受け取って反射させ、カタジオプトリック装置乃至配列マンジャンミラー1601反射光路を辿って到来するこの反射光を受光して反射光エネルギとして送出し、視野レンズ装置1604はこの反射光エネルギを受け取って最終光エネルギとして送出し、レンズ型合焦装置1607はこの最終光エネルギを受け取って合焦最終光エネルギとして送出する。
【0077】
図16及び表7に示した実施形態は一種類のガラス素材たる熔融シリカを用いて構成されているが、他種素材も使用可能である。熔融シリカを使用するにせよ他種素材を使用するにせよ、本実施形態にて使用する素材に対しては190nmから赤外域までの広い波長域に亘り吸収率が低いことが要求されることに、注意すべきである。熔融シリカを用いた場合、この波長域内であればどのような中心波長に対しても、本実施形態を調整して最適化し直すことができる。例えば、193、198.5、213、244、248、257、266、308、325、351、355又は364nmのレーザ波長で使用できるよう本実施形態を最適化することや、192〜194、210〜216、230〜254、285〜320及び365〜546nmのランプスペクトル帯域で使用できるよう最適化することができる。また、ガラス乃至レンズの素材として弗化カルシウムを用いた場合は、本実施形態を、エキシマレーザから発せられる波長157nmのレーザ光やエキシマランプから発せられる波長域157〜177nmのランプ光に最適化できる。更に、最適化し直す際には構成部材の交換やチューニングが必要となろうが、それは当業者の能力範囲内で行えることである。更に、視野レンズ装置1604内で弗化カルシウム製のレンズを用いれば、この対物系の帯域幅を拡げることができる。この種の変形の概略については特許文献1を参照されたい。
【0078】
図16に示されている対物系の直径は26mmであり、この波長域で従前から使用されている対物系の直径に比べてかなり小さくなっている。対物系の特徴的能力を発揮させる上で、このように小さな寸法の対物系は特に有益である。例えば、この対物系はフランジ対検査対象物間セパレーションが45mmの標準的な顕微鏡タレット内に実装できる。この対物系は、約0.90のNA値をサポートし、約0.4mmの視野サイズをサポートし、約285〜313nmの幅の帯域に亘り収差補正可能で、そしてその多色波面収差(polychromatic wavefront error)が約0.038波未満という性能を発揮する。
【0079】
また、この対物系がその特徴的能力を発揮できるよう、その所望用途や光学的構成に応じてある種のトレードオフ関係に対処するのが望ましい。例えば、その用途に応じ、特徴的能力である帯域幅、視野サイズ、NA値、対物系サイズ、これらの任意の組合せ等のうち何れかを犠牲にして他のものを強化すること、具体的には低めのNA値又は高めのNA値に最適化すること等ができる。低いNA値に最適化するのであれば、製造公差が緩めになり、対物系の外径を小さくすることができ、視野サイズを広くすることができ、帯域幅を広くすることができる。性能が同じならNA値が高い構成よりNA値が低い構成の方が光学部品の個数を少なくすることができる。高めのNA値に最適化するのであれば、視野サイズを狭くすることができ、帯域幅を狭くすることができ、ある種の状況下では対物系構成素子直径がわずかに大きくなる。
【0080】
図16の実施形態における視野サイズは直径約0.4mmであり、従って大型の高速センサをサポートできる。例えば、本実施形態における結像倍率が200倍であれば、その対角線の長さが80mmのセンサをサポートでき、図示の実施形態にてその性能を適切に発揮することができる。更に、より直径が大きなレンズを用いそれらのレンズ素子向けに最適化し直すことにより、図16の実施形態における視野サイズをより大きくすることもできる。これも当業者のなし得る事項の範囲内である。
【0081】
図16の実施形態における固有多色波面収差(intrinsic polychromatic wavefront aberration)は、約285〜320nmの波長域に属する設計帯域幅にて比較的小さくなる。波面収差が小さければ製造ヘッドルームが大きく製造が容易でありしかも良好な性能の対物系製品を得ることができる。図16の実施形態は、約266〜365nmの波長域に属する比較的狭い帯域にて対物系の焦点位置を調整(リフォーカス)することによりその帯域にて良好な性能を発揮させることができる。これもまた当業者が即座になし得る事柄である。図16に示した対物系をこのように狭い帯域幅で使用する場合、365nmで線スペクトルを呈するレーザ光源等のレーザ光源や、そのスペクトル帯域が狭いランプを、光源として用いることができる。更に、本実施形態は単体補正型(self corrected)の光学系、即ちその対物系に何ら光学的構成部材を追加しなくても収差を補正できそれによって設計仕様を現実のものとすることができる光学系である。単体補正型光学系は、光学試験時における度量衡調整が容易であり、他の単体補正型光学系と光軸を揃えて配置することも容易である。更に、本対物系に図示しないまた別の光結像器を付加すれば、残留収差を更に補正することが可能である。こうして他の光学系を追加し残留収差を追補正する構成とすれば、帯域幅や視野サイズが広がる等、その光学的仕様がより優れたものになる。
【0082】
図16の実施形態を含め、本発明においては製造公差が緩和される。例えば、個別レンズ素子の芯ズレ公差(decenter tolerance)が緩和されるため、傾向として本システムの製造条件はより達成しやすいものになる。製造時に個別レンズ素子に生じる芯ズレは何れも軸上コマ収差(on-axis coma)の発生につながり得るものであり、この軸上コマ収差は別途残留収差補正手段を導入すること無しには容易に補償し得ないものである。しかしながら、本発明例えば図16の実施形態を用い、カタジオプトリック装置1601内及びレンズ型合焦装置1607内の収差を注意深くバランスさせれば、芯ズレに対しレンズ素子及びミラー素子をより鈍感にすることができる。カタジオプトリック装置1601の全収差は、図16の実施形態を用い、視野レンズ装置1604及びレンズ型合焦装置1607に必要な補償量をバランスさせることにより、最適化することができる。図16の実施形態における平均公差は、波長約313nmでは約0.13波長誤差とすることができる。カタジオプトリック装置1601内の素子における公差を更にバランスさせることもできる。芯ズレ公差を使用波長を物差しとして評定するのは、小規模な芯ズレにより発生する光路誤差の波長依存性がさして強くないためである。例えば、10μmの芯ズレによって波長266nmでもたらされる0.2波長の収差は0.0532μmの光路誤差に等価であるが、この光学系を波長365nmで動作させた場合に当該10μmの芯ズレによりもたらされる約0.15波長の収差は同じく0.0532μmの光路誤差と等価である。
【0083】
このように、本発明における公差は同様の環境で使用される他種のカタジオプトリック型対物系と比べ、また標準的な屈折型対物系の大抵のものと比べ、緩和される傾向にある。更に、図16の実施形態を含め本発明におけるガラス素材屈折率の公差も、一種類のガラス素材から形成されているため緩和される。即ち、色収差補償用に複数種類のガラス素材を使用する従来の構成はそれらガラス素材間の屈折率差に対する依存性を有しているが、本発明にて使用するガラス素材を一種類とした場合はそのような依存性が発生しない。また、使用する素材が一種類であれば温度変化に対しても割合に鈍感になる。更に、複数種類のガラス素材を使用する従前の標準的構成においては、各ガラス素材の屈折率が温度変化に応じて別様に変化するため、色収差補正用の屈折率曲線を複数通り想定する必要があった。本発明にて使用するガラス素材を一種類とすることにより、温度変化を補償する必要がなくなりまた色収差補正の必要性も軽減される。
【0084】
図17に、本発明の他の実施形態として、その視野サイズを拡げた対物系を示す。図16の実施形態に対する本実施形態の主要な相違点は、前者における視野サイズが約0.4mmであったのに対し後者におけるそれが約1.0mmと大きくなっていることである。本実施形態では、レンズ直径が図16における約25mmに比べ約58mmと大きくなっているが、従前のカタジオプトリック型光学系と比べると最大レンズ直径は大分小さい。また、この図に示した対物系は、約285〜320nmの波長域に属する帯域で収差補正され、そのNA値としては0.90という高い値が確保されており、多色波面収差は最悪の場合でも約0.033波長に留まる。
【0085】
図17中、カタジオプトリック装置1701は、何れも反射被覆付のレンズ素子であるマンジャンミラー素子1702及び凹球面反射器1703を有している。マンジャンミラー素子1702及び凹球面反射器1703の中央部は、何れも反射性の素材により覆われておらず、光学的な開口となっている。このように図示部材の中央部を反射性の素材により覆っていないため、図示しない検査対象物乃至標本1700から到来する光はマンジャンミラー素子1702を通り抜けて凹球面反射器1703に達し、凹球面反射器1703の第2面によりマンジャンミラー素子1702方向に反射され、更にマンジャンミラー素子1702から凹球面反射器1703を通って送り出されて、視野レンズ装置1704内で中間像1720を形成する。本実施形態における視野レンズ装置1704は、3枚の視野レンズ素子1706、1707及び1708を有している。
【0086】
レンズ型合焦装置1705は、複数枚のレンズ素子、具体的には7枚のレンズ素子1709、1710、1711、1712、1713、1714及び1715を有している。これらのレンズ素子は皆、同じ一種類の素材から形成されている。このレンズ型合焦装置1705は、中間像1720を含め、視野レンズ装置1704から到来する光を集光する。
【0087】
本実施形態についてのレンズ処方を表8に示す。
【表8】
【0088】
本発明の更に他の実施形態としては、対物系にチューブレンズを併用してその対物系における残留収差(主として歪に伴う色変化(chromatic variation of distortion)や高次横方向色収差(higher order lateral color))を補正することにより、対物系の視野サイズを確保しながら帯域幅を拡げ或いは対物系単体でのそれより視野サイズを広くする実施形態がある。図18に、視野サイズは図16に示した対物系と同様約0.4mmだが、その帯域幅を拡げてありリフォーカス無しで約266〜405nmをカバーするようにした実施形態を示す。この図の装置における多色波面収差は、最悪の場合でも約0.041波長に留まる。
【0089】
図18に示す実施形態は、集光用の対物系1801に、残留収差補正用のチューブレンズ1803を併用する構成を有している。図16に示した対物系を超える広い帯域幅を実現するため、これら対物系1801及びチューブレンズ1803に対しては他の部材とは別にそれらだけを対象とした最適化を施してある。そのため、対軸方向差限定横方向色収差(limiting off axis lateral color)や歪に伴う色変化等の収差が更に小さくなる。チューブレンズ1803により形成される外部瞳1804は、図16の対物系のみで形成される外部瞳と同じように使用することができる。また、本実施形態は更に光学的ビームスプリッタ素子1802を備えている。この光学的ビームスプリッタ素子1802は、照明光及び自動合焦用の光を屈折させて光路内に入れるのに使用される。本実施形態についてのレンズ処方を表9に示す。
【表9】
【0090】
本実施形態における設計上のスペクトル域は約266〜365nmに制限されており、またその視野サイズはチューブレンズ1803との併用によって0.5mmに最適化し直されている。図18におけるチューブレンズ1803で使用している素材は熔融シリカと弗化カルシウムのみであり、最適化し直しについては図16の実施形態と同様の柔軟性を有している。
【0091】
本実施形態における最大NA値は0.9に及ぶ又はこれを上回る値に達するが、対物系1801の開き絞り位置に、照明光入射角及び結像光入射角を制限する可変開口を配置することにより、NA値をより小さくすることができる。また、本実施形態においては、照明光入射角と結像光入射角を相独立して制御乃至管理することができる。結像側NA値を独立して制御乃至管理するには、図16や図18に示した結像系を用い且つ外部瞳面に開口を配置すればよい。照明側NA値を小さくするには対物系の開口に照明光を入れればよく、そうすれば結像側開口全体を使用することが可能になる。
【0092】
本発明の更に他の実施形態としては、1mmの視野サイズを有する対物系にチューブレンズを併用して、その対物系における残留収差(主として歪に伴う色変化や高次横方向色収差)を補正することにより、図18の実施形態と同様、対物系の視野サイズを確保しながら帯域幅を拡げ或いは対物系のそれより視野サイズを広くする実施形態がある。図19に、視野サイズは図17に示した対物系と同様約1.0mmだが、その帯域幅を拡げてありリフォーカス無しで約266〜405nmをカバーする実施形態を示す。この図の装置における多色波面収差は、最悪の場合でも約0.040波長に留まる。
【0093】
図19の実施形態は、集光用の対物系1901に、残留収差補正用のチューブレンズ1902を併用する構成を有している。図17の実施形態を超える広い帯域幅を実現するため、これら対物系1901及びチューブレンズ1902に対しては、他の部材とは別にそれらだけを対象とした最適化を施してある。即ち、それら対物系1901及びチューブレンズ1902のレンズ処方及び構成部材を一体のものとして最適化し、帯域幅拡充効果が生じるようにしてある。従って、本実施形態では対軸方向差限定横方向色収差や歪に伴う色変化が補正され収差が更に小さくなる。チューブレンズ1902により形成される外部瞳1903は、図18の実施形態にて形成される外部瞳と概ね同じように使用することができる。本実施形態についてのレンズ処方を表10に示す。
【表10】
【0094】
本実施形態における設計上のスペクトル域は約266〜365nmに制限されており、またその視野サイズはチューブレンズ1902との併用により0.5mmに最適化し直されている。図19におけるチューブレンズ1902で使用している素材は熔融シリカと弗化カルシウムのみであり、この最適化し直しについては図18の実施形態と同様の柔軟性を有している。
【0095】
また、本実施形態でも最大NA値は0.9に及ぶ或いはそれを上回る値に達するが、対物系1801の開き絞り位置に可変開口を配置することで照明光入射角及び結像光入射角を効果的に制限してNA値をより小さくすることができる。本実施形態においても、図18の実施形態と同様、照明光入射角と結像光入射角を相独立して制御乃至管理することができる。結像側NA値を独立して制御乃至管理するには、図17や図19に示した構成のチューブレンズ等の光結像器を用い且つ外部瞳面に開口を配置すればよい。照明側NA値を小さくするには対物系の開口に照明光を入れればよく、そうすれば結像側開口全体を使用することが可能になる。
【0096】
図18や図19に示したものと同様のチューブレンズを用い、検知器上に直接結像するようにすれば、必要な光学部品乃至レンズの個数が減るため、総合光伝送効率が上がると共に構成面での複雑さが減る。また、これらの実施形態にて無限遠焦点レンズを用いることにより開口乃至フーリエフィルタを配置可能な外部瞳が形成される。固定型像形成光学系、限定ズーム機能付光学系、可変焦点光学系等の光学系を付加すれば、検知器上により好適に像を形成できる。
【0097】
図24に、本発明の更に他の実施形態として、その帯域幅を拡げた対物系の実施形態を示す。図16の実施形態に対する本実施形態の主な相違点は、帯域幅と視野サイズとの間にトレードオフ関係である。即ち、この図の対物系では260〜320nmという広い幅の帯域に亘り収差が補正されるが、その視野サイズは比較的小さく約0.28mmであり、図16の実施形態における0.4mmよりも小さい。また、本実施形態におけるNA値は約0.90という高い値を保っており、その多色波面収差は最悪でも約0.036波長である。
【0098】
図24中、カタジオプトリック装置2401は、何れも反射性被覆付のレンズ素子であるマンジャンミラー素子2402及び凹球面反射器2403を有している。これらマンジャンミラー素子2402及び凹球面反射器2403の中央部は、何れも反射性被覆により覆われておらず、光学的な開口となっている。このように図示部材の中央部が反射性被覆により覆われていないため、図示しない検査対象物乃至標本2400からの光はマンジャンミラー素子2402を通り抜けて凹球面反射器2403に達し、凹球面反射器2403の第2面によりマンジャンミラー素子2402方向に反射され、凹球面反射器2403を通り抜けて送り出され凹球面反射器2403と視野レンズ装置2404との間に中間像2420を形成する。本実施形態における視野レンズ装置2404は、1枚の視野レンズ2415を有している。
【0099】
レンズ型合焦装置2405は複数枚のレンズ素子を使用している。本実施形態では6枚のレンズ素子2406、2407、2408、2409、2410及び2411が使用されており、これらは皆同じ単一種類の素材によって形成されている。このレンズ型合焦装置2405は、中間像2420を含め視野レンズ装置2404からの光を集光する。本実施形態についてのレンズ処方を表11に示す。
【表11】
【0100】
本発明の更に他の実施形態としては、この対物系にチューブレンズを併用してその対物系内の残留収差(主として歪に伴う色変化及び高次横方向色収差)を補正する実施形態がある。こうした残留収差の一因はこの対物系においてオフナ視野レンズを使用していることにあるから、そのオフナ視野レンズにて第2のガラス素材を使用するというやり方によりそうした残留収差を補正することができるが、第2の素材を使用すると光学系を構成する素子の個数が多くなり公差もやや厳しくなる可能性がある。本願にてこのやり方に代わるやり方として提案するのは、光結像器を用いて残留収差を補正するというやり方であり、こうしたやり方を採れば、光学系のNA値を高くし、視野サイズを大きくし、レンズ直径を小さくし、それでいて公差をやや緩くすることができる。
【0101】
こうして残留収差を補正することによって、視野サイズを確保しながら帯域幅を更に拡げることや、或いは視野サイズを更に拡げることができる。例えば図25の実施形態は、図16の実施形態と同じく約0.4mmの視野サイズを確保しながらその帯域幅を拡げた構成であり、266〜365nmという波長域をカバーできる。リフォーカスも必要ない。図25の実施形態における多色波面収差は、最悪でも約0.036波長に留まる。
【0102】
本実施形態は、素子2501及び2502による空気間隙ダブレットと、素子2503及び2504による空気間隙ダブレットとを有している。これらのダブレットを構成する素子2501〜2504は熔融シリカ及び弗化カルシウムから形成されている。ダブレット2501〜2504により合焦される光は、内部視野面近傍にある3枚の熔融シリカ製レンズ素子2505、2506及び2507を通り抜け、素子2508、2509及び2510による空気間隙トリプレットにより平行化され、位置2511に外部瞳を形成する。位置2511の外部瞳には、暗視野開口(群)、フーリエフィルタ(群)、ビームスプリッタ(群)等を配置することができる。
【0103】
本実施形態についてのレンズ処方を表12に示す。
【表12】
【0104】
図25に実施形態として示したチューブレンズにて使用している素材は熔融シリカ及び弗化カルシウムだけであり、両素材は約190nmから赤外域にかけて光透過性を有しているから、調整によってその中心波長を別の波長に変えた(最適化先波長を変えた)対物系と併用できるようこのチューブレンズを設計することができる。また、本実施形態におけるチューブレンズ倍率は様々な倍率にすることができ、所望合計倍率に応じ様々な無限遠焦点倍率へと最適化し直すことができる。本実施形態によれば、直接結像によって高速センサ上に像を露出できる合焦用チューブレンズを、実現することができる。
【0105】
図26〜図29に、本発明の更に他の実施形態を示す。そのうち図26に示されている実施形態は、約311-315nmの波長域で動作可能で、その直径が約26mm、視野サイズが約 0.28mm、NA値が約0.90の実施形態である。本実施形態についてのレンズ処方を表13に示す。
【表13】
【0106】
図27に示されている実施形態は、約297〜313nmの波長域で動作可能で、その直径が約26mm、視野サイズが約0.28mm、NA値が約0.90の実施形態である。本実施形態についてのレンズ処方を表14に示す。
【表14】
【0107】
図28に示されている実施形態は、約297〜313nmの波長域で動作可能で、その直径が約26mm、視野サイズが約0.4mm、NA値が約0.90の実施形態である。本実施形態についてのレンズ処方を表15に示す。
【表15】
【0108】
図29に示されている実施形態は、約266〜313nmという広い波長域で動作可能で、その直径が約26mm、視野サイズが約0.28mm、NA値が約0.90の実施形態である。本実施形態についてのレンズ処方を表16に示す。
【表16】
【0109】
図30は、従前の対物系と本発明の対物系とを相対帯域幅及び最大レンズ直径によって対比させたグラフである。相対帯域幅は対物系の帯域幅を中心波長で除した値として定義されている。従前の対物系では、少なくとも相対帯域幅=0.5まで良好に収差補正できるが、その最大直径が100mm超のレンズを使用する必要があった。これに対し、本発明の対物系を一種類のガラス素材で形成したならば、その最大直径が約20〜100mmのレンズを使用する場合でも良好に収差補正できる。その場合に対物系単体で良好に収差補正できる相対帯域幅は最高約0.16であるが、図18及び図25の実施形態の如くチューブレンズを付加して残留色収差を補正すれば、最大0.5の相対帯域幅範囲にて良好に収差補正できる。NA値や視野サイズ条件を絞れば、これと同様の収差補正をその対物系単体で実行することもできる。
【0110】
図31は、従前の対物系と本発明の対物系とを視野サイズ及び最大レンズ直径によって対比させたグラフである。従前の対物系では、良好に収差補正を行える視野サイズは最大1mmの範囲であったが、それにはその最大直径が100mm超のレンズを使用する必要があった。これに対し、本発明の対物系では、その最大直径が約25mmのレンズを使用する場合なら0.4mmの視野サイズに亘り、またその最大直径が約58mmのレンズを使用する場合なら1.0mmの視野サイズに亘り、良好に収差補正される。この図と先の図30から読み取れるように、視野サイズと、(配列マンジャンミラーや視野レンズや合焦レンズの中で)最も大きな素子の直径との比は一般に100:1未満であり、60:1未満にもなり得る。例えば、レンズ直径が58mmで視野サイズが1.0mmなら両者の比は58:1となる。レンズ直径を拡げることも可能であるがそれに伴い視野サイズが拡がる。視野サイズの広い対物系を収差補正するには、図18及び図25の実施形態の如く、チューブレンズを用いて残留色収差を補正すればよい。NA値や帯域幅条件を絞れば、これと同様の収差補正をその対物系単体で実行することもできる。
【0111】
図20Aに固定倍率型実施形態を示す。本実施形態においては、瞳面2001上の瞳から到来する光が光学系2002により集光され、面2003上に像を形成する。また、図20Bに固定長ズーム系を示す。本実施形態においては、瞳面2004上の瞳から到来する光がズーム光学系2005により集光され、面2006上に像を形成する。瞳面2004から像面2006までの距離は通常は固定であるので、ズーム光学系2005の位置をずらすことで、像面2006での最終倍率を変えることができる。ズーム光学系2005は例えば複数組のレンズから構成されているので、倍率を変えるにはズーム光学系2005内におけるレンズの組同士の間隔を変えてもよいし、一旦ズーム光学系2005の倍率を設定した後なら、像面2006に対するズーム光学系2005の位置を変えて像を合焦させてもよい。ズーム範囲はレンズ系の複雑さやレンズの組数によって制限される。例えば二組のレンズを用い広帯域ズームを行う構成では±10%のズーム範囲を実現できる。
【0112】
図20Cに可変焦点拡大型実施形態を示す。本実施形態においては、瞳面2007上の瞳から到来する光が可変焦点光学系2008により集光され、面2009上に像を形成する。本実施形態では、瞳2007に対する可変焦点光学系2008の位置を変え、更に瞳面2007と像面2009との間隔を変えてリフォーカスすることにより、倍率を変えることができる。こうした可変焦点光学系の倍率範囲は約4:1を上回るものとなり得るものであるが、瞳面2007と像面2009との許容距離によって制限される。
【0113】
本発明の結像システムでは様々な形態の対物系及び像形成光学系を使用できる。例えば、その結像系自体が比較的広い帯域幅及び比較的広い開口をサポートするよう構成されているなら、所望の結像及び検査モード全てをサポートできるタイプの固定型対物系単体を、使用することができる。帯域幅を狭めるには特定スペクトル域用のフィルタを設ければよく、NA値を所望値まで減らすには内部に開口を設ければよい。
【0114】
また、図21に示すように複数個固定型対物系も使用できる。図21中、対物系2104、2105及び2106相互の位置関係は固定されており、それらのうちどの対物系を使用するかに応じて、試料2101を載せたステージはその試料2101を使用対物系に見合った位置へと動かす。また、ビームスプリッタモジュール2103には照明光2102が入射されており、また試料2101からの光は対物系によって集光されこのビームスプリッタモジュール2103を通り抜けて像形成光学系更にはセンサ2110に達する。図示の幾何学的構成では、照明光2102がビームスプリッタモジュール2103内のビームスプリッタにより反射されて何れかの対物系に入射し、一方で試料2101からの光がビームスプリッタモジュール2103内のビームスプリッタを通り抜けて送り出されているが、この関係を逆にし、照明光2102がビームスプリッタモジュール2103内のビームスプリッタを通り抜ける一方、試料2101からの光がビームスプリッタモジュール2103内のビームスプリッタにより反射されるような構成としてもよい。また、この図に示されている対物系の個数は3個であるが個数に特に限定はない。各対物系の光軸は、他の対物系の光軸からある固定された距離だけ離れているが、この対物系光軸間距離を可変調整できるようにしてもよい。同一装置内の複数個の対物系を互いに別の波長域或いは検査モード向けに最適化しておいてもよいし、対物系を検査毎に1個ずる使用することも1回の検査で同時に複数個の対物系を使用することもできる。ビームスプリッタモジュール2103は、対物系2104、2105及び2106それぞれに対応するようビームスプリッタ2107、2108及び2109を備えている。各対物系が別々の波長向けに最適化されている場合はこれらのビームスプリッタにもそれに応じた波長を反射する被覆を付すのがよかろう。例えば、照明光2102が約260〜546nmの波長を含んでおり、対物系2106が約405〜546nmの波長域内の可視スペクトルに、対物系2105が約320〜405nmの波長域内に、対物系2104が約260〜320nmの波長域内に、それぞれ最適化されているとする。その場合、ビームスプリッタ2109に対しては約405〜546nmの波長域にて分反射性を有することと約260〜405nmの波長域にて高透過率を有することとが求められ、ビームスプリッタ2108に対しては約320〜405nmの波長域にて分反射性を有することと約260〜320nmの波長域にて高い透過率を有することとが求められ、ビームスプリッタ2107に対しては約260〜320nmの波長域にて分反射性を有することが求められる。こうしたやり方に代わるやり方としては、タイミング、向き、位置関係、その任意の組合せ等に応じてビームスプリッタ(群)をスライドさせて出し入れする、というやり方もある。その場合には、ビームスプリッタを例えばその対物系の補正後の波長域にて分反射性を呈するよう最適化しておけば、対物系間でのスペクトル域を重ねてもよくなる。例えば、対物系2106を約365〜546nmに、対物系2105を約320〜405nmに、対物系2104を約260〜365nmに、というように最適化対象波長域を重複させることが許される。
【0115】
標準的な顕微鏡では、複数個の対物系を試料付近に動かして試料像を得る手段として、回転するタレットを用いることができる。図22にタレット型実施形態の一例を示す。図中、照明光2202はビームスプリッタ2203を通り抜けてミラー2204に達し、このミラー2204によって反射され、対物系2205を通り抜けて試料2201を照らす。試料2201はこの光を反射乃至散乱させ、その光は対物系2205により集光され、ミラー2204及びビームスプリッタ2203によって反射され、像形成光学系を通り抜けてセンサ2208上に像を形成する。その際、タレット2206を用いれば、各対物系を、試料2201の像が得られるような場所へと動かすことができる。なお、簡明化のためこの図においては対物系の個数を2205及び2207の2個としているが、タレットの直径次第で対物系の個数はより多数にすることもできる。試料エリア付近へと対物系を動かす手法としては、例えば、対物系をステージ上方で横方向に移送する、ゴニオメータを用いて対物系を弧状に動かす等の手法も使用できる。更には、固定型対物系とタレット上複数搭載型対物系群とを様々に組み合わせて用いることも、本発明に係る検査システムにおいては可能である。
【0116】
図23に、複数種類の結像モードをサポートするシステムの構造を示す。この図に示されているシステムは、レーザ型照明サブシステム2301とランプ型照明サブシステム2302とを併用している。レーザ型照明サブシステム2301は回転型拡散器及びライトパイプを用いる構成であり、そのレーザ発振モードは狭帯域連続発振モード、動作波長は例えば266nm又は355nmである。ランプ型照明サブシステム2302はカタジオプトリック型集光器及びライトパイプを用いる構成であり、そのランプはHgXeランプ、そのカタジオプトリック型集光器は概略約260〜700nmの波長域向けに最適化されている。摺動型ミラーアセンブリ2303はこれら二種類の照明サブシステムの中から使用する照明サブシステムを選択するアセンブリであり、選択した照明サブシステムからの照明光を摺動型ビームスプリッタアセンブリ2304方向に送り出す。摺動型ビームスプリッタアセンブリ2304には複数個のビームスプリッタが搭載されており、使用したい波長及び使用したい結像モードにそれらビームスプリッタを使用する。照明光エネルギは、タレット上にあり対物系アセンブリ2305を構成する複数個の対物系から選んだ1個の対物系に入射され、その対物系を介して試料2306上の注目領域を照明する。また、通常はこのタレット上に少なくとも3個の対物系を設け、そのうち少なくとも1個を例えば視野サイズが約0.4mm、レンズ直径が約25mm未満、補正波長域が約260〜320nmの小型カタジオプトリック型対物系とし、残りの対物系を、標準的な屈折型対物系を例えば約365nmから可視域に亘る波長域に最適化したものとしておくのがよかろう。対物系のうち1個をそのNA値が0.2未満の低倍率対物系とし、主として試料乃至標本2306の配列作業に使用するようにすることも可能である。自動合焦システム2308は試料乃至標本2306の焦点位置を計測する。
【0117】
標本2306によって反射された光エネルギは何れかの対物系によって集められ、集められた光エネルギは摺動型ビームスプリッタアセンブリ2304及びダイクロイックミラー2307を通り抜け、更にタレット2309に組み込まれているチューブレンズを通り抜ける。タレット2309には、系の倍率を変えられるよう少なくとも4個のチューブレンズを組み込んでおくのが望ましく、また各チューブレンズを別々の波長域及び対物系に最適化しておいてもよい。チューブレンズを通り抜けた光は位置2310に瞳像を形成する。環状暗視野モードでの動作をサポートするには、例えば、この位置2310に少なくとも一組の開口を設ける。瞳像を形成した光エネルギはミラー乃至反射素子2311によって反射され、例えば少なくとも約5%のズームレンジを有するズームレンズ系2312を通り抜け、センサ2313上に像を形成する。センサ2313は、例えばTDI(Time Delay and Integration)モードで動作するシリコン製の背面薄化(back thinned)センサとするが、他種センサも使用できる。
【0118】
ダイクロイックミラー2307は、約260〜600nmの波長域に属する結像波長を通過させる一方、自動合焦システム2308から到来、入射する波長600nm超の自動合焦波長の光を反射させる。ダイクロイックミラー2307により反射された自動合焦光は、ビームスプリッタアセンブリ2304やタレット上の1個の対物系2305を通り抜け、試料乃至標本2306を照らす。自動合焦光はこの試料乃至標本2306によって反射され、戻ってタレット上の対物系を通り抜けてビームスプリッタアセンブリ2304に達し、ダイクロイックミラー2307により反射されて自動合焦システム2308に戻り、自動合焦システム2308ではこれに基づき試料2306の焦点位置を計測する。
【0119】
このカタジオプトリック型結像システムで実現できる照明角及び集光角の範囲は広いため、複数種類の結像モードをサポートすることができる。先の段落で述べた事項から明らかなように、複数種類の結像モードを実行するのに使用する光学系乃至照明装置関連機器は、一種類でよい。本実施形態では、照明及び集光用のNA値が高いため同一の光学系により複数種類の結像モードを実施でき、複数種類の結像モードを実施できるため欠陥乃至試料の種類に適した結像動作を実行できる。また、この小型カタジオプトリック型光学系は、UV顕微鏡用対物系としての利用、ウェハ検査装置における表面散乱UV集光用の集光器としての利用、UVフォトリソグラフィシステム向けのマスク投射用光学系としての利用等、各種のUV結像用途に利用できる。
【0120】
この小型カタジオプトリック型光学装置は、明視野及び暗視野からの画像取得及びそれによる検査をサポートするよう構成でき、そのように構成することによてその用途を広げることができる。当業者であれば、この装置を変形し、可視域、DUV域更にはVUV域に属する波長向けに、最適化することができるであろう。長波長向けに最適化する場合は、ガラスによる散乱が少なくなるため帯域幅を広くすることができる。例えば、二種類のガラス素材を用い中心波長を300nmとした実施形態では、140nmを上回る広い帯域幅を実現できる。本発明では、これより短波長の光エネルギも使用でき、また複数通りの波長を用いることも可能である。半導体検査向けに本発明を実施する場合、明視野、レーザ方向性暗視野及び環状暗視野の各モードに加え、明視野及び暗視野を同時に検査する方式もサポートできる。本発明における光学系実施形態は、リソグラフィ乃至リソグラフィシミュレーション用のレンズとしても、試料クリアランス上長めの動作距離が必要な微小機械開発や蛍光計測や生物学研究用のツールとしても、適している。本光学系は、このように極めて広範且つ様々な光波長及びスペクトル帯域幅向けに利用できるものであり、蛍光計測にも好適に利用できる。
【0121】
自動合焦
検査時にはその対象例えば半導体デバイスが高速で動く。そのため、本検査システムでは、わずかな焦点位置変化でも補正できるよう、自動合焦システムを用いて高忠実度結像状態を維持している。
【0122】
本検査システムで使用する自動合焦サブシステムは、位置決めサブシステムと連携し、照明サブシステムから送られてくる光エネルギを自動合焦させる。本検査システムを半導体検査に適用するに当たり、この自動合焦サブシステムは様々な形態にて実現できる。また、そうした自動合焦サブシステムによって、焦点位置の変化を検出し、焦点位置を試料上に合わせ、そしてフィードバックを実行して焦点位置を所望位置に保持することができる。
【0123】
本検査システムにおける焦点位置変化検出には様々な方法を使用できる。その一つは、KLA Instrumentsが譲受した特許に係る特許文献2に記載されている方法、即ち自動合焦システムを用いて二通りのマスクを比較する方法であり、この方法は主として半導体ウェハの検査に利用される。集積回路形成途中のウェハ上における最良焦点位置を計測することは、そのウェハ上にある多数の層が往々にして複雑な形状乃至配置を有しており各部各部で反射率が異なるためやっかいなことである。それは、焦点位置の実変化を回路パターンによる変化から分離して検出するのが難しいためである。特許文献2記載の方法では、反射信号強度を荷重としてウェハ上の各面高さを平均し、その結果を最良焦点位置と見なしている。こうして最良焦点位置を求める特許文献2記載の方法を用いれば、集積回路形成途中のウェハにおける焦点位置を計測し、通常は所望焦点位置と同じくウェハの最上層にある自動合焦システム焦点位置を、当該所望焦点位置に合わせることができる。本発明にこの方法を適用すれば、素材がより強く光エネルギを吸収する短波長領域における焦点位置の設定及び補正を、より容易にすることができる。
【0124】
本発明で採用できるまた別の自動合焦方法としては、コードラント(四分)検知器上への非点収差合焦がある。この方法を用いる場合、本検査システムは、照明用光源からの光を例えば結像サブシステムの光学系を介し試料表面上に合焦させ、試料表面からの反射光を例えば同結像サブシステム光学系を介しまた非点収差レンズによりコードラント検知器上に集光させ、更に試料を動かして焦点位置を変化させ、焦点位置を変化させたことによりコードラント検知器上での焦点形状変化を当該コードラント検知器を用いて検知する。このような非点収差合焦手法は、通常、トポロジ的な変化が少ない試料を対象とする場合に効果的に機能する。
【0125】
焦点位置変化検出に際しては、自動合焦用信号を結像サブシステム内で像から分離する方法が重要である。その際には、波長の違いや視野におく部位の違いを利用できる。まず、使用波長が自動合焦サブシステムと結像サブシステムとで異なる場合、ビームスプリッタや格子等のダイクロイックデバイスを用いれば、信号同士を分離することができる。また、試料上における使用位置が自動合焦サブシステムと結像サブシステムとでわずかに異なる場合、本検査システムでは、最終結像面又は結像サブシステム内の内部視野面にて信号同士を分離することができる。この場合、照明サブシステムと自動合焦サブシステムとで同一の照明光源を共用できる。
【0126】
半導体デバイス等の標本上への合焦に際しては、自動合焦の実行とは別に、その半導体デバイス又は対物系を動かして合焦状態を保つようにするとよい。本発明を大型高精度光学系として実施する場合、対物系を動かして合焦させるやり方がうまくいかない場合があるが、そうした場合は、検査システムを構成する結像サブシステム内に焦点位置変化補償用の光学素子を何個か設けるとよい。合焦動作が結像サブシステムの倍率やテレセントリック性に対して大きく影響しないようにすれば、好適な性能が得られる。
【0127】
本検査システムでは、自動合焦実行に当たりフィードバック制御を利用して、適切な合焦状態を維持することができる。このフィードバック制御の目的は、自動合焦に使用される各種機械部品及び電子部品による共振・共鳴に対処し、オーバシュートやリンギングを抑えることにある。こうしたフィードバック制御は、半導体検査用自動合焦システムに限られず、コンパクトディスクプレーヤ等、各種の高精度光学装置にて使用され得る。PID(Proportional Integral Derivative)ループコントローラ等でどのようなフィードバックループパラメタを使用すればよいかについては、その自動合焦システムの構成に応じて当業者が設計的に決定することができる。
【0128】
センサ
本検査システムに使用できるセンサの種類は、本検査システムの他の構成部材としてどのようなものを使用するかに大きな影響を与える事項であり、また用途によって変わるものである。センサの種類としては、例えば、単一点型ダイオード型検知器や、CCD、TDIモード動作CCD等の面型検知器がある。センサに対しては、量子効率が高いこと、雑音が少ないこと、良好なMTF(Modulation Transfer Function)を有していること等が望まれる。こうした条件を満たすのは背面薄化型のCCDセンサであるが、オープンシリコンエリア付フロントサイドデバイス、ルモゲン被覆付フロントサイドセンサ、フォトダイアモンドセンサ、シリコンカーバイドセンサ等、それ以外の種類のセンサも使用可能である(なお「ルモゲン(lumogen)」は登録商標)。フォトダイアモンド型及びシリコンカーバイド型のセンサは傾向として可視光波長での感度が非常に低いため、可視光波長を使用する検査システムを良好に動作させるには、別の種類のセンサを用いた方がよいであろう。
【0129】
本検査システムでは、フレーム転送(frame transfer)モードセンサ、TDIモードセンサ等、各種のモードで動作するセンサを使用できる。まず、標本上のエリア1箇所当たり1個のレーザパルスを用いて標本上を照明するよう本検査システムを構成してある場合は、フレーム転送モードで動作するセンサを使用できる。本検査システムでこのモードを使用すると、レーザパルス1個がセンサのフレーム1個に相当しているため検知器の全検知野から一挙に読み取ることができ、データレート及び合計スループットが高くなる。また、標本上のエリア1箇所当たり複数個のレーザパルスを用いて標本を露出するよう本検査システムを構成してある場合、TDIモードセンサを使用できる。より特殊な検査モード、例えば共焦点検査モードや暗視野検査モードにおいては、単一点型検知器又はそのアレイも使用できる。
【0130】
本発明に係る小型カタジオプトリック型光学系を用いれば、高速試料検査を高解像度で実行することができる。即ち、本検査システムでは、画素サイズを例えば50nmとし、毎秒1.1ギガ画素のデータレートで1時間当たり10cm×10cmのエリアを走査することによって、検査速度向上による試料1個当たり検査コストを抑えることができる。また、これを実現するには、そうした高いデータレートを使用しても雑音レベルが極低レベルに留まるようなセンサを、用いるのが望ましい。例えば、ノイズ発生個数が信号256カウント当たり1カウント未満に留まるものや、場合によってはノイズ発生個数を信号1024カウント当たり1カウント未満に留まるものを、要求性能に応じて使用するのがよい。雑音発生をそうした低水準に抑えるには、センサレイアウト、増幅器、外装、読取用電子回路等に関し、構成部材の選択や位置の決定を仔細に行うことが必要になろうが、それは設計的事項であり一般に当業者のなし得る範囲内のことである。また、こうした構成部材それぞれの電気的構成を工夫することにより、クロストーク、フィードスルー等の現象を抑えまた好適に対接地絶縁分離することができる。
【0131】
センササブシステムを構成する部材は、その量子効率が高く、寿命が長く、高いCTF(Contrast Transfer Function)値を有するものとする。まず、量子効率が高ければ、一般に、センサ全体を露出するため照明サブシステムから供給すべき光量を少なくすることができる。量子効率が高ければ、試料表面に照射する光エネルギの量を抑えることもできるため、例えばエキシマレーザパルスからのピークパワーが高すぎて試料が損傷する潜在的危険性が減る。また、寿命が長ければ、時間経過に伴うセンサ性能変化、例えばDUV露出に典型的な暗電流増加や量子効率低下が生じにくく、従ってシステムを校正する必要性が軽減される。
【0132】
高いCTF値を有する部材によってセンササブシステムを構成すれば、像を好適な解像度で検知することができる。仮に、結像サブシステムにより形成される像が非常に高解像度の像であったとしても、センサのCTF値が低ければ、本検査システムではその高解像度像を検知できないこととなろう。一般に、本検査システムにて許容できる最低のCTFは約0.4であるが、望ましい結果を得るにはCTF値を0.6以上とすべきである。
【0133】
本検査システムで使用可能なセンサの例としては、KLA−Tencor Corporationに譲受された特許に係り「光学的基板検査方法及び装置」(Method and Apparatus for Optical Inspection of Substrates)と題する特許文献3に記載されているものがある(この参照を以てその全体を本願に繰り入れることとする)。
【0134】
本検査システムでは、背面照射型のセンサも前面照射型のセンサも使用できる。使用できる前面照射型センサとしては、仮想位相型(virtual phase)センサ、固体センサ、UV感受性オープンエリア付センサ、蛍光被覆付センサ等がある。本検査システムは、例えばポイント型、ライン型、2D型、多端子読出型、リニア型、フォトダイオードアレイ型、CCD型、倍速読取用スプリット読取型等とすることができる。本検査システムでは、ダイアモンド型センサ、アンチブルーミング能力のあるセンサ等も使用できる。本検査システムでは、千鳥配置型(staggered)センサや、単一外装内に複数個のセンサを組み込んだセンサも、使用できる。センサ電子回路にて露出補正を行うようにしてもよい。
【0135】
本検査システムでは、更に、エキシマレーザ波長にて高い量子効率を呈するセンサも使用できる。背面薄化型シリコンセンサを用いれば、好適な性能を得ることができる。また、高解像度センサを用いて高解像度画像取得をサポートすること、高速検知センサを用いて高速検査をサポートすること、低雑音広ダイナミックレンジセンサを用いて本願記載の各種欠陥検知モードをサポートすること等も可能である。
【0136】
データ取得
本検査システムを構成するデータ取得サブシステムは、フレームモードやTDIモードで動作させることができる。まず、フレームモードで動作させるときは、位置決めステージが走査運動する間に各レーザパルスでフレーム1個ずつを露出する。このモードにおいては、露出用のパルスを短時間パルスとし、またセンサ全体に亘りMTFが良好なセンサ(例えばTDI型センサ)を用いることによって、位置決めステージの振動の影響を抑えることができる。他方、TDIモードでは、露出の効果がエキシマレーザパルス複数個分累積することとなるためスペックルパターンが平滑され、従ってピークパワーを抑えることができる。このデータ取得サブシステムでは、単一の大面積センサを用い前述のやり方でセンシングを行うこともできる。センサによって結像視野をくまなくカバーするようにすれば、結像面利用効率が高まり、従ってピークパワーを抑えることができる。
【0137】
また、同じセンサ面積が得られるなら、通常は、大型のセンサを1個用いるよりも小型のセンサを複数用いる方が安価である。本検査システムでは、複数個のセンサを用いセンサ関連のコストを全体として抑えることもできる。複数個のセンサを用いる場合、それらのセンサは、同一電子回路基板上に実装する、互いに密着させて実質的に大面積センサとする等、互いに近接して配置してもよいし、読取用電子回路全てを各センサの近くに配置して収容すること等を狙って、互いに空間的に離して配置してもよい。また、スクレイピングミラー、ビームスプリッタ、プリズム、格子、回折光学系等を用い、結像サブシステムの視野を複数個の部分に分割しておき、各部分からの光をそれぞれ1個のセンサに送る構成とすることもできる。理想的にはこの分割を視野面にて行う。そうすれば、像の忠実度に対する影響が小さくなる。また、複数個のセンサを合焦光路上の相異なる位置に配置し、合焦光に係るデータと非合焦光に係るデータとを同時収集してもよい。更に、各センサを互いに別々の結像モード向けに使用し、データ例えば欠陥についてのデータ等を複数通りの結像モードで同時収集してもよい。例えば、明視野データと暗視野データとを同時収集することにより、種類の異なる欠陥を同時に判別、検知することが可能になる。データ取得は、ステージが加減速するタイミングで実行すればよい。本検査システムにおけるステージの動きと他の部分の動作とを同期させれば、データ取得をより好適に行うことができ性能が高まる。
【0138】
データ分析
データ分析サブシステムは、主として比較による手法を用いて、標本上の不正箇所、歩留低下性欠陥等(の位置)を識別する。ウェハ検査を例としていうと、使用できる比較手法の一つはダイ間比較である。これは、例えば、本データ分析システムによる第1ダイと第2ダイとの比較により場所Aに相違が発見され、更に第2ダイと第3ダイとの比較によっても場所Aに相違が発見された場合、第2ダイの場所Aに欠陥があると認定する、という手法である。
【0139】
本データ分析システムにて使用できる比較手法としては更に同一ダイ内でのセル間比較がある。セル間比較は同一ダイ内に同様のサブエリア(例えばメモリエリアや論理素子エリア)が複数個ある部材を対象とする場合に使用可能な手法であり、注目検査エリア内に多数回繰り返し現れるパターン乃至形状をセルとする。本検査システムの結像サブシステムの倍率が可調であれば、セル毎の調整を通じ、概ね各セルに対応するセンサ画素の個数が何れのセルでも概ね均等にすることができる。
【0140】
本データ分析システムにて使用できる第3の比較手法はダイ対データベース比較である。検査によって得られるデータと比較できるようにするには、そのデータベースを、結像サブシステム及びセンササブシステムの性能並びにそれらのシステムがデータベースに及ぼす影響を考慮に入れて、構築しなければならない。本データ分析システムは、本検査システムが収集したデータを、こうして構築されたデータベースと比較する。
【0141】
データの取得は連続スワス方式で行われる。その際、各スワスを直前及び直後のスワスとわずかに重ね合わせることで、データ損失をなくすことができる。また、この重複領域を利用してフレームを正確に整列させることができる。
【0142】
比較するデータ同士を互いにうまく整列させるには、画素の個数を表す整数値を比較対象データに含めるとよい。また、比較を簡単化するには、各データ乃至フレームの開始位置を既知の位置にするとよい。例えばダイ間比較を行う場合、各ダイについての開始位置をフレーム内の同じ場所にすることにより、計算がより単純になる。本データ分析システムでは、こうしたデータの整列を、第1ダイの開始位置と第2ダイの開始位置とがフレーム内の同じ場所になるよう、データ取得サブシステム動作タイミング及びフレーム重複量を所望の如く調整することにより、実現する。
【0143】
本検査システムにより得られるデータ即ち欠陥についてのデータは、他種システムに供給することができる。それによって、例えば電子ビームリビュー、マクロリビュー、合焦イオンビーム破壊分析等、そのデータについて更なる分析を施すことができる。また、本検査システムから生産高管理ソフトウェアへと半導体ウェハデータを提供し、工場規模での生産高の向上に役立てることもできる。
【0144】
本検査システムは様々な環境にて使用できる。例えば、リソグラフィ、顕微鏡、生物学的検査、医学的分析等の環境である。
【0145】
本発明及び各図示実施形態についての本願中での記載は、本発明の要旨を限定する趣旨のものではなく、むしろ、本発明の思想に従い本発明の利益(小型化、高NA化、使用可能波長多様化、使用可能照明モード多様化等)を享受できる限りにおいて、記載や図示のない代替的構成要素をも包含する趣旨のものである。即ち、本発明についてその特定の実施形態に基づき説明を行ったが、そうした実施形態に更なる改良乃至変形を施して本発明を実施できることについても、理解されたい。本願で意図していることは、一般に本発明の原理に従う限り本発明についてのあらゆる変形、用途乃至改変をカバーすることであり、本願記載の構成から離れるものであっても、本発明が属する技術分野で既知のやり方或いは慣用的なやり方によって得られるものであれば、本願によりカバーされる。
【0146】
以上、本発明についてその特定の実施形態に基づき説明を行ったが、これには更に改変等を施せることを理解されたい。本願で意図していることは、一般に本発明の原理に従う限り本発明についてのあらゆる変形、用途乃至改変をカバーすることであり、本願記載の実施形態から離れるものであっても、本発明が属する技術分野で既知のやり方或いは慣用的なやり方によって得られるものであれば、本願によりカバーされる。
【技術分野】
【0001】
本願は、2003年2月21日付米国暫定特許出願第60/449326号「高性能低コストカタジオプトリック型結像システム」(High Performance, Low Cost Catadioptric Imaging System)に基づく利益を享受する2003年5月7日付米国特許出願第10/434374号「高性能カタジオプトリック型結像システム」(High Performance Catadioptric Imaging System)(発明者:Shafer et al.)の一部継続出願である。
【0002】
本発明は、概略、光学結像の分野に関し、より詳細には、顕微鏡による画像取得、検査、リソグラフィ等に用いられる光学システムに関する。
【背景技術】
【0003】
集積回路半製品等の標本の表面構造を検査し欠陥について調べる際に使用できる光学システムや電子システムは数多くある。粒状欠陥、ひっかき傷、プロセス的変調部(process variations)、繰り返しパターン欠陥等、標本上に現れる欠陥はそのサイズが割合に小さなものが多く、また標本表面における位置がランダムであることが多い。こうした顕微鏡的欠陥向けの標本検査技術及びデバイスは、本件技術分野において一般的に利用可能なものとなっており、また様々に実施されて商業的に入手可能となっている。その例としては、アメリカ合衆国カリフォルニア州サンノゼ所在のKLA−Tencor Corporationから入手できるものがある。
【0004】
理論上、全タイプの検知システム乃至手法に共通する目標は、欠陥を迅速且つ効率的に検知できるようにすることである。標本表面上のより小さな構造を調べる場合や、新しい素材乃至製造プロセスを使用する場合に求められるのは、より微細な構造や新しい構造を検知できるようにすることである。検査位置への標本の装荷から標本の除去を経て標本表面上の欠陥の特徴判別までに費やす時間をできるだけ短くするため、標本表面を迅速に検査できるようにすることも望まれている。より微細な構造を検査対象にすることができるよう、また上掲の速度条件を満足させられるよう、既存のシステム乃至手法を持続的に改良していき、標本上の問題箇所を正確且つ適切に発見できるようにすることが、求められている。
【0005】
既存の一般的な検査システムは、屈折型対物系か大型カタジオプトリック(catadioptric)型対物系をベースとしたものである。そのうち、屈折型対物系をベースとするシステムの結像能力は、通常は365nmより長波長側で頭打ちになる。そのため、屈折型対物系の用途は限られる。短波長用屈折型対物系は使用可能であるが帯域幅が非常に狭い。更に、100μmより広い視野に亘り良好に収差を補正でき且つその開口数(numerical aperture:NA値)が0.9と大きいUV(紫外線)用の構成を得ることも、難しいことである。
【0006】
大型カタジオプトリック型対物系をベースとする検査システムは、屈折型対物系における波長制限を補えるものであり、DUV(deep ultraviolet:深紫外)域にて使用でき且つ視野サイズが大きな超広帯域カタジオプトリック系も実現可能である。しかしながら、この構成には、高いコスト、厳しい製造公差、柔軟性に欠けるシステム構造、DUV照射に関連した汚染の管理困難性等という限界がある。
【0007】
更に、上述した結像システムの多くは大きめの部材から構成されている。そのため、こうした結像システムは、顕微鏡等の小型環境では使用するのが難しいか或いは不可能である。従来一般に入手可能であったもののうち比較的小型の検査用対物系としては、2003年5月7日付米国特許出願第10/434374号「 高性能カタジオプトリック型結像システム」(High Performance Catadioptric Imaging System)(発明者:Shafer et al.)により開示されているものがある。当該出願により開示されているシステムは、標本検査に用いる結像用部材及びその並べ方にある種の改良を施したものであるが、結像対象標本種別が異なる様々な環境に対しこの出願に記載の構成を単純適用することは不可能である。即ち、幾何学的構成や光源の種類や能力上の基準が異なる様々な検査システムに対し当該出願記載の構成を適用することは不可能であり、従ってあらゆる状況下で正確且つ適切に標本上の欠陥を評価することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5717518号明細書
【特許文献2】米国特許第4639587号明細書
【特許文献3】米国特許第4877326号明細書
【特許文献4】米国特許第6483638号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上の点から見て望まれているのは、前述した既存のシステムよりも優れた標本検査システムを実現すること、特に小型カタジオプトリック型対物系を用いウェハ等の標本の検査を行う標本検査システムを実現することである。中でも望まれているのは、様々な状況下で且つ様々な部材と共に使用でき、既知の構成における結像関連の問題を克服できるシステム乃至構成を、実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1実施形態に係る標本検査システムは、約285〜320nmの波長域に属する波長にて照明光エネルギを発するアークランプを有する照明システムと、複数個のレンズを有し照明光エネルギを受け取って標本に向かわせるよう構成及び方向設定された結像サブシステムと、を備え、結像サブシステムにおけるレンズ直径:視野(field)サイズの比率が100:1未満の検査システムである。
【0011】
本発明の第2実施形態に係る標本検査システムは、約157nmから赤外域に亘る波長域に属する波長にて照明光エネルギを発する照明サブシステムと、少なくとも1個の合焦レンズを含むレンズ型合焦装置及びレンズ型合焦装置から合焦済光エネルギを受け取れるよう方向設定された少なくとも1個の視野レンズを有し、レンズ型合焦装置により照明光エネルギを受け取って視野レンズに合焦済光エネルギを与え視野レンズから中間光エネルギを発する結像サブシステムと、視野レンズから中間光エネルギを受け取り標本に対し0.65超のNA値にて調整済光エネルギを与えることができるよう配置された配列マンジャンミラーと、を備え、対物系内の各レンズ及び配列マンジャンミラー内の各素子の直径が100mm未満であり、且つ結像サブシステム及び照明サブシステムが、明視野、環状暗視野、方向性暗視野、全天、空中結像(areal imaging)、共焦点及び蛍光(fluorescence)の各検査モードのうち少なくとも1個をサポートする標本検査システムである。
【0012】
本発明の第3実施形態に係る標本検査システムは、照明光エネルギを発するアークランプを有する照明サブシステムと、照明光エネルギを受け取り調整済光エネルギを発する結像サブシステムと、標本により反射された調整済光エネルギを受け取るセンササブシステムと、を備え、結像サブシステムが、一種類のガラス素材から形成されており約157nmから赤外域に亘る波長域に属する光エネルギ用に使用できる対物系を有し、対物系が、照明光エネルギを受け取り合焦済光エネルギを発する直径約100mm未満の少なくとも1個の合焦レンズと、合焦済光エネルギを受け取り中間光エネルギを発する直径約100mm未満の少なくとも1個の視野レンズと、中間光エネルギを受け取り調整済光エネルギを発する直径約100mm未満の少なくとも1個のマンジャンミラー素子と、を有する標本検査システムである。
【0013】
本発明の第4実施形態に係る標本検査システムは、標本に向け照明光エネルギを発するアークランプを有する照明サブシステムと、照明光エネルギを受け取り中間光エネルギを発する直径約25mm未満の複数個のレンズ並びに中間光エネルギを受け取り標本に向け調整済光エネルギを発する配列マンジャンミラーを有する結像サブシステムと、フィードバックによって調整済光エネルギを標本に合焦させる自動合焦サブシステムと、を備える。
【0014】
本発明の第5実施形態に係る標本検査システムは、アークランプを有する照明サブシステムと、照明サブシステムから照明光エネルギを受け取れるカタジオプトリック型対物系を有する結像サブシステムと、結像サブシステム視野内に存するセンサを少なくとも1個用いるデータ取得サブシステムと、を備え、カタジオプトリック型対物系が、少なくとも1個の素子を有し照明光エネルギを受け取って反射光エネルギをもたらすカタジオプトリック装置と、反射光エネルギを受け取り最終光エネルギを送出する視野レンズを少なくとも1個有する視野レンズ装置と、最終光エネルギを受け取り合焦最終光エネルギを発する合焦レンズを少なくとも1個有するレンズ型合焦装置と、を有し、カタジオプトリック型対物系用結像NA値が少なくとも0.65あり、カタジオプトリック型対物系が全使用レンズ中で最大のレンズ直径を有し、カタジオプトリック型対物系における最大レンズ直径:視野サイズの比率が100:1未満である標本検査システムである。
【0015】
本発明の第6実施形態に係る標本結像方法は、アークランプから照明光エネルギを発するステップと、レンズ型合焦装置により照明光エネルギを合焦させるステップと、視野レンズ装置により合焦済光エネルギを受け取り中間光エネルギを発するステップと、配列マンジャンミラーにより中間光エネルギを受け取り調整済光エネルギを発するステップと、調整済光エネルギを標本に向けるステップと、データ収集のため標本を再位置決めするステップと、標本からのデータを検知するステップと、を有し、レンズ型合焦装置、視野レンズ装置及び配列マンジャンミラーを用い標本における視野サイズをサポートし、且つレンズ型合焦装置、視野レンズ装置及び配列マンジャンミラーにおける最大素子サイズと視野サイズとの比が100:1未満である標本結像方法である。
【0016】
本発明の第7実施形態に係る標本結像システムは、照明光エネルギを発するアークランプ手段と、レンズ型合焦装置により照明光エネルギを受け取り合焦させる手段と、視野レンズ装置により合焦済光エネルギを受け取り中間光エネルギを発する手段と、配列マンジャンミラーにより中間光エネルギを受け取り調整済光エネルギを生成する手段と、方向設定及びセンサによるデータ収集のため標本を動的且つ好適に位置決めする手段と、を備え、レンズ型合焦装置、視野レンズ装置及び配列マンジャンミラーを用い視野サイズをサポートし、且つレンズ型合焦装置、視野レンズ装置及び配列マンジャンミラーにおける最大素子サイズと視野サイズとの比が100:1未満である標本結像システムである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、上記課題の少なくとも1つを解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1A】典型的な検査システム構成部材を示す図である。
【図1B】照明サブシステムの概略構成を示す図である。
【図1C】ランプ型照明サブシステムを示す図である。
【図1D】レーザ型照明サブシステムを示す図である。
【図2】アークランプの構成部材及び性能を示す図である。
【図3A】電気ポンプ型エキシマランプを示す図である。
【図3B】電子ビームポンプ型エキシマランプを示す図である。
【図4】屈折型ランプ光集光器を示す図である。
【図5】デュアルチャネル屈折型ランプ光集光器を示す図である。
【図6】プリズム型均一化器を示す図である。
【図7A】アークランプ等のランプを軸方向実装した反射型集光器を示す図である。
【図7B】アークランプ等のランプを横方向実装した反射型集光器を示す図である。
【図8A】カタジオプトリック型集光器の第1例を示す図である。
【図8B】カタジオプトリック型集光器の第2例を示す図である。
【図8C】カタジオプトリック型集光器の第3例を示す図である。
【図8D】カタジオプトリック型集光器の第4例を示す図である。
【図9A】均質化ロッドを示す図である。
【図9B】均一照明面形成用レンズアレイを示す図である。
【図10A】アキシコン使用実施形態を示す図である。
【図10B】第1ズーム型デュアルアキシコン系による環状照明の第1例を示す図である。
【図10C】第1ズーム型デュアルアキシコン系による環状照明の第2例即ち図10Bの第1ズーム型デュアルアキシコン系を動かすことにより得られる環状照明を示す図である。
【図10D】第2ズーム型デュアルアキシコン系による環状照明の第1例を示す図である。
【図10E】第2ズーム型デュアルアキシコン系による環状照明の第2例即ち図10Dの第2ズーム型デュアルアキシコン系を動かすことにより得られる環状照明を示す図である。
【図11A】視野面瞳面光中継器を示す図である。
【図11B】視野面光中継器を示す図である。
【図12A】ビーム狭搾部形成型レーザ光集光器を示す図である。
【図12B】開口出射型レーザ光集光器を示す図である。
【図13A】レーザビーム整形光中継器の第1例を示す図である。
【図13B】レーザビーム整形光中継器の第2例として平行光が拡散器乃至回折器に入射する実施形態を示す図である。
【図13C】他の均一化兼整形器を示す図である。
【図13D】瞳選択フィルタリングの考え方による光中継器を示す図である。
【図13E】光結像器外レーザ暗視野用照明光中継器を示す図である。
【図14】光結像器構成部材の概略を示す図である。
【図15】本発明の実施形態における光結像器と対物系の関係を示す図である。
【図16】本発明の実施形態にて使用される小型カタジオプトリック型対物系の一例を示す図である。
【図17】約285〜320nm帯域向けに補正した小型対物系を示す図である。
【図18】配列チューブレンズを示す図である。
【図19】集光用小型対物系及び残留収差補正用チューブレンズを示す図である。
【図20A】固定倍率型実施形態を示す図である。
【図20B】固定長ズーム系を示す図である。
【図20C】可変焦点拡大型実施形態を示す図である。
【図21】複数個固定型対物系の用例を示す図である。
【図22】複数個の対物系を動かして試料像乃至標本像を得るのに用いるタレットの実施形態を示す図である。
【図23】本発明に従い且つ本発明の実施形態に係る小型対物系を用い複数モードをサポートするシステムの実施形態を示す図である。
【図24】本発明の実施形態に係る小型カタジオプトリック型対物系の別の実施形態を示す図である。
【図25】本発明の実施形態に係る小型配列チューブレンズを示す図である。
【図26】波長約311〜315nmで動作可能でその直径が約26mm、視野サイズが約0.28mm、NA値が約0.90の実施形態を示す図である。
【図27】波長約297〜313nmで動作可能でその直径が約26mm、視野サイズが約0.28mm、NA値が約0.90の実施形態を示す図である。
【図28】波長約297〜313nmで動作可能でその直径が約26mm、視野サイズが約0.4mm、NA値が約0.90の実施形態を示す図である。
【図29】波長約266〜313nmで動作可能でその直径が約26mm、視野サイズが約0.28mm、NA値が約0.90の実施形態を示す図である。
【図30】相対帯域幅対最大レンズ素子直径を本発明の実施形態を含め何種類かの対物系間で対比するグラフである。
【図31】視野サイズ対最大レンズ素子直径を本発明の実施形態を含め何種類かの対物系間で対比するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、別紙図面を参照しながら本発明について詳細に説明する。本件技術分野における習熟者(いわゆる当業者)であれば、以上述べたものもそれ以外のものも含め本発明の特徴について以下の説明及び図面から理解できるであろう。また、以下の説明では幾つかの例を示すがこれには限定という意味合いはない。
【0020】
本発明の検査システム及びその実施形態にて使用する結像サブシステムは全体として小型である。特にその対物系は小型であり、従前のカタジオプトリック型対物系では得られない優れた効果を発揮するものである。本システムにて使用する各種の部材及びサブシステムは、小型対物系と併用することによって正確且つ高品質な走査を実行できるよう、即ち従来から知られている小さめの対物系を使用した検査システムと比べ正確且つ高品質に走査できるよう、構成することができる。
【0021】
図1Aに典型的な検査システムを示す。この図に示す検査システムは、照明サブシステム101、位置決めステージ102、自動合焦サブシステム103、結像サブシステム104、センササブシステム105、データ取得サブシステム106及びデータ分析サブシステム107を備えている。本発明に係る対物系は結像サブシステム104に組み込まれており、これについては後により詳細に説明する。図1に示したシステムにおいて光が辿る光路は照明サブシステム101から発しており、位置決めステージ102及び結像サブシステム104を経て、センササブシステム105乃至そのセンサに至っている。データは、自動合焦サブシステム103と位置決めステージ102の間、センササブシステム105とデータ取得サブシステム106の間、データ取得サブシステム106と照明サブシステム101の間、データ取得サブシステム106とデータ分析サブシステム107の間、並びにデータ分析サブシステム107と位置決めステージ102の間を通っている。
【0022】
図1Aに示されている部材の役割は次の通りである。まず、照明サブシステム101は図示しない標本に向け照明光を発する。この標本の位置は位置決めステージ102によってその位置が保持されており、また位置決めステージ102は必要に応じてこの標本の位置を動かして、光エネルギが、小型の対物系、結像用光学系その他結像サブシステム104内にある結像用部材更にはセンササブシステム105に届くようにしている。データ取得サブシステム106はセンササブシステム105乃至そのセンサからデータを取得し、センササブシステム105とやりとりする。このやりとりは、より正確な検知結果を示すデータが得られるよう、位置決め、合焦等を通じて行う。こうして取得されたデータは、例えば既知標本や既知標本欠陥の見え方についてのデータベースを有するデータ分析サブシステム107にて分析される。データ分析関連の情報は、例えばデータ再取得のためデータ取得サブシステム106へとフィードバックされ、また標本の再位置決め(位置の合わせ直し)のため位置決めステージ102に供給される。更に、データ取得サブシステム106は、照明サブシステム101とのやりとりを通じ照明サブシステム101の照明特性を取得像品質に応じ変化させる。そして、自動合焦サブシステム103は、焦点位置を自動的に標本に合わせるため、位置決めステージ102と併用される。
【0023】
検査モード
集積回路半製品等の標本を検査できるモードは数多くあるが、本システムではそのうち用途及び環境にあう何種類かの検査モードを使用できる。本システムにて使用できる検査モードには、例えば、明視野(bright field)、環状暗視野(ring dark field)、方向性暗視野(directional dark field)、全天(full sky)、DIC(Differential Interference Contrast)、共焦点(confocal)等、光エネルギの反射を利用して標本を検査する各種の検査モードが含まれる。本検査システムは、これらの検査モードを全てサポートする構成としてもよいし、そのうち幾つかをサポートする構成としてもよいし、これら以外の検査モードもサポートする構成としてもよい。
【0024】
まず、明視野検査モードは、普通の顕微鏡システムによる検査、即ち検査対象物乃至標本の拡大像をセンサ上に投射する検査と、同様の検査を行う検査モードである。この検査モードには、形成される像が明視野内にあり苦もなく弁別できること、像の上での見かけの構造物サイズが正確に検査対象物上での実際の構造物サイズと光学系の倍率との積であること等の特徴がある。従って、明視野検査モードは特に支障なく画像比較アルゴリズムや処理アルゴリズムと併用でき、それによって検査対象物上のパターンをコンピュータ処理により検知及び分類することができる。この検査モードには、半導体ウェハ検査等、広い用途がある。
【0025】
次に、暗視野検査モードは主としてエッジ、小粒子、不規則面等からの散乱光の検知に使用される。例えば、滑らかな平坦面はほとんど光を散乱させないためその像は暗くなるが、その平坦面から何らかの表面構造物、粒子乃至物体が突出しているとそれらによって光が散乱され、明るい面乃至領域が発生する。暗視野検査モードにて小型構造物から得られる信号は、その構造物が受光エネルギをより散乱させやすい性質であればより大きく広がり、大きく広がった信号は構造物サイズに比してセンサ画素がかなり大きくても捉えることができ従ってウェハの検査を迅速に行えることとなる。繰り返しパターンを有する標本を対象として暗視野検査を行う場合は、フーリエフィルタリングを併用することによってその繰り返しパターンにて現れる信号を抑えることができ、欠陥を表す信号を良好な信号対雑音比で弁別することができる。
【0026】
この暗視野検査モードには、例えば環状暗視野検査モード及び方向性暗視野検査モードを含め、数多くの種類がある。これらの暗視野検査モードにおいては、検査対象物から収集される散乱回折光から正確性の高い信号が得られるようにするため、それぞれ独特な照明方式及び集光方式が使用される。まず、環状暗視野検査モードにおいては照明瞳と結像瞳とが重なり合わないようにする。そうしたやり方の典型例としては、光学瞳のうち光軸となす角度が大きい外側部分(高NA部分)を照明用開口として用いウェハに光を導く一方、結像瞳面には照明用開口を通った光の大部分をブロックするよう且つ結像瞳面の中央部を通って散乱光が収集され像を形成することとなるよう開口を設ける、というやり方である。このやり方では、ウェハ上の構造物が全方向から均一に照明されるため、その向きの違いによらずどの構造物も等しく良好に結像されることとなる。なお、開口同士の関係を反転させ、照明光が光学瞳の中央を通る一方反射光が外側を通って結像する構成とすることもできる。
【0027】
次に、方向性暗視野検査モードは、遭遇する(と見込まれる)欠陥の種類等に応じ、様々な形態で実施することができる。第1の形態である開口整形モードでは、照明瞳面及び結像瞳面に開口を設け、これらの開口により照明瞳面及び結像瞳面上の相異なる部分を選択的に使用する。例えば、照明瞳内の部分のうち縁寄りの部分に照明用開口を設けて照明光をウェハに対し細い光円錐で効率良く広角度入射させる一方、結像瞳内に何個かの結像用開口を設けて散乱光のうち所望部分を選択的に通過させる。照明用開口から見て両側に90°ずれた位置に合計2個の結像用開口を設ければ、主にウェハ上の構造物から横方向への散乱光がこれら結像用開口を介し捉えられることとなる。照明瞳面及び結合瞳面上における開口の設け方は、検知したい欠陥の種類に応じ最適になるよう定めればよく、従って上掲のもの以外の設け方も採用できる。第2の形態であるレーザ方向性暗視野モードでは、何個かのレーザ光源を用いて対物系の外縁から高入射角角で試料を照明する。例えば互いに90°異なる角度位置から4本の照明ビームを発する幾何学的配置を用いれば、試料上の構造物が有しているあらゆる方向依存性の影響を容易に抑えられる。第3の形態である内部レーザ暗視野モードは整形開口モードとレーザ方向性暗視野モードとを組み合わせたモードである。レーザ光を用いた方向性暗視野検査モードでは、光学系を構成する照明瞳面内の特定の場所に向けてレーザビームを入射する。
【0028】
全天検査モードによる光学的検査は明視野検査モードと環状暗視野検査モードとを組み合わせたものであり、このモードでは、明視野からの欠陥検知と暗視野からの欠陥検知とを同じセンサを用いて同時に実行できるよう、明視野から得られる信号に適用する減衰量や暗視野から得られる信号に適用する減衰量を変化させて、その比率を調整する。
【0029】
DIC検査モードは検査対象物上にある構造物のトポロジにおける勾配を分解検知することが可能なモードであり、この検査モードにおいては光路上における勾配が増加するにつれ像のコントラストが増大する。DIC検査モードは、光学系解像度オーダのシア距離(shear distance)を有する空間シア系を用いるモードであり、通常、このモードにおいては、照明光を分割することによって相直交する2本の偏波ビームを生成し、それらのビームを検査対象物上の構造物と相互作用させ、そして像形成前に再結合させる。
【0030】
共焦点検査モードは検査対象物上の構造物トポロジに現れている相違を分解検知できるモードである。大抵の光学検査モードには構造物のトポロジ変化乃至差を検知するのが難しいという難点があるが、共焦点検査モードにおいては、照明焦点及び結像焦点に近い位置に設けた開口によって高さの違いを判別することができる。照明用開口の代わりにレーザ照明を用いてもよい。
【0031】
照明
本システムにて使用する照明サブシステムは、光源、集光器、ビーム整形又は均一化器及び光中継器を含め、何個かの機能装置から構成される。集光器、ビーム整形又は均一化器及び光中継器は、光源から照明光エネルギを受け取って調整・改質し試料に照射する。光源はランプ型でもレーザ型でもよいが、そのどちらにするかによって照明サブシステムの実施形態は幾分違うものになる。
【0032】
図1B、図1C及び図1Dに照明サブシステムの実施形態を概念的に示す。図1Bは照明サブシステムの一般的実施形態を示す図であり、この実施形態は光源121、集光器122、ビーム整形又は均一化素子群123及び光中継器124を有し試料125を照明する。図1Cはこれをランプ型とした実施形態を、また図1Dはレーザ型とした実施形態を、それぞれ示す図である。図1Cに示すランプ型照明サブシステムは、アークランプ、エキシマランプ等のランプ光源126と、屈折型、(楕円面又は放物面)反射型、カタジオプトリック型等の集光器127と、ライトパイプ、レンズアレイ、アキシコン(axicon)等の形態を採るビーム整形素子群128と、瞳面光中継器(開口等)、視野面光中継器(視野サイズリミッタ等)等の形態を採る光中継器129とを有しており、試料130に照明光エネルギを照射している。図1Dに示すレーザ型照明サブシステムは、固体、ガス、エキシマ等のタイプのレーザ光源111と、単純な配列ビーム狭搾部、開口中継等による集光器112と、拡散器、回折光学系(瞳面や視野面内で光を整形する光整形素子等)等の形態を採るビーム整形又は均一化素子群113と、瞳面光中継器(開口等)、視野面光中継器(視野サイズリミッタ等)等の形態を採る光中継器114と、を有している。但し、図1B、図1C及び図1Dに示した実施形態の各構成要素は一例に過ぎず、従ってそれらに代え別種のものを用いることもできる。例えば、限定的意味合い抜きでいうと、図1Dに示したレーザ型照明サブシステムにおけるビーム整形用に、拡散器でも回折光学系でもない素子を用いてもよい。
【0033】
ランプ型照明サブシステムにおけるランプ光源126としては、例えば、アークランプ、エキシマランプ、フィラメントランプ等、様々なものを使用できる。ランプ光源126は通常は高輝度、高安定且つ長寿命であり、高輝度及び高安定であることは高速検査に都合がよく、長寿命であるから輝度条件及び安定度条件を長期間に亘り継続的に充足できる。また、ランプパワーに現れる変動をダイオード等により計測し、信号レベル変化を補償することもできる。使用環境、標本の種類、所望する結果等によっては、比較的低輝度な光源も使用できる。
【0034】
図2に使用可能なアークランプの例を示す。このアークランプは、例えば水銀ランプ、キセノンランプ、その組合せの水銀キセノンランプ、メタルハライドランプ、カドミウムランプ、重水素ランプ等の種類のアークランプである。これらの種類のランプであれば、一般に高い輝度を得ることができまた広いスペクトル範囲をカバーすることができる。中でも、ショートアークギャップ水銀キセノンランプは、UVやDUVに亘るスペクトル域で高い輝度が得られることから、半導体ウェハ検査用の光源として好適である。また、キセノンアークランプは非常に均一なスペクトル分布を有しており、水銀キセノンランプがもたらすような線状スペクトルはもたらさない。更に、アークランプにおいては、通常、そのアノード201、カソード202及びランプ容器203を所定の温度に保持することによって、寿命を長くし安定度を高めることができる。この図に示したアークランプ型照明サブシステムにおいては、図中のY軸について対称に放射が生じるため、φが大きい方向への放射はアノード201やカソード202によって遮られて低レベルとなる。
【0035】
図3Aに電気ポンプ型のエキシマランプの例を、また図3Bに電子ビームポンプ型のエキシマランプの例を、それぞれ示す。エキシマランプは連続動作可能なランプであり、その原理はエキシマレーザと同じくガス内エキシマ遷移である。エキシマランプはVUV(vacuum ultraviolet)域内の極短波長域にて使用できる数少ない光源の一種であり、その動作波長域は40〜50nm程と広くすることができる。図示した通り、電気ポンプ型エキシマランプは、高電圧301を用いて電極302と電極302の間のエキシマガスを電気的に励起し、窓303から光を出射する仕組みであり、電子ビームポンプ型エキシマランプは、高電圧304を用いて電子ビームを発生させ、その電子ビームを真空部305とエキシマガス306との間の窒化シリコン障壁を通して合焦させて、窓307から光を出射する仕組みである。後者は電子ビームを用いているため一般に高い輝度を得ることができる。
【0036】
フィラメントランプの例としてはタングステンハロゲンランプがある。フィラメントランプを用いたランプ型照明サブシステムは、特に400nm以上の波長を用いる場合に有用であるが、得られる輝度が本質的に低いため一般に高速検査用には適していない。
【0037】
なお、特定スペクトル領域を増強したいならドーパント素材を添加した混合ガスを用いるとよい。そのようにすれば、例えば様々な種類のアークランプから、より広い波長域に亘る光を得ることができる。次の表は、一般に入手及び利用可能な種々の光源についてその光源に典型的な波長域を示した表である。
【表1】
【0038】
これらのランプはパルス動作でも連続動作でも使用できる。本システムにおいては、そのランプにとり適正な動作環境となるよう最適な状態乃至条件で照明サブシステムを使用することで、寿命をより長くすることができる。
【0039】
ランプ型照明サブシステムの集光器127は、こうした高輝度光源から多量に受光する。ランプ出力分布が適切であり且つ集光方式がランプ出力分布に見合っていれば、ビーム整形装置128に送られる光は好適なものになる。本システムの集光器127における集光方式としては多様な方式を実現及び使用可能であるが、それらは大まかにいって次の三方式に分類できる。即ち、全屈折型、全反射型及びカタジオプトリック型の三方式であり、その中から、波長域、検査システムの幾何学的構成、対象標本種類、所期性能、所期欠陥種類、パワー条件等に応じその照明サブシステムに適切な方式を選ぶことができる。
【0040】
屈折型集光器は、屈折性コンデンサと反射性バッキングミラーを併用する集光器であり、検査上の利点を幾つか有している。図4に例示する屈折型集光器は、アノード402を有するアークランプ403の近くに配置された反射器401を有しており、アークランプ403からの直接光エネルギや反射器401を経た反射光エネルギはレンズ404及びレンズ装置405に向け送出され、レンズ装置405はこれら光エネルギを点406に合焦させる。
【0041】
こうした構成を用いれば、単色収差(monochromatic aberration)を十分な程度まで且つ広い波長域に亘って補正することができ、例えば365〜700nmの波長域をカバーする構成も実現できる。とはいえ、やっかいな点もある。第1に、UV〜DUV域内で広い幅のスペクトル帯域をカバーしたいときに屈折型集光器を用いても、収差が十分に補正されたアーク像を得るのは難しい。十分に収差補正されたアーク像を得るのが難しいのは、使用可能なガラス素材が熔融シリカと弗化カルシウムしかないためである。特に、大抵のコンデンサは他と比較して高温になりやすいため、熱膨張係数が大きな弗化カルシウムではその素材性能が十分に発揮されない。第2に、この図のように向きが定められていると光エネルギがアークランプを2回通過することとなり、そのためバッキングミラー(反射器401)に要請される効率条件が厳しくなる。反射器401に向かった光エネルギはレンズ404に達するまでにランプ容器を3回も通過するし、また反射されて戻るときに恐らくはランプ内アークのどこかを通過する。更に、この構成では一部の光が集光されない。そうした光をも集光するには、上述の実施形態に第2のコンデンサを付加すればよい。図5に屈折性コンデンサをデュアルチャネル配置した実施形態の上面乃至頂面を示す。本実施形態は、アークランプ500と、第1球状反射面501及び第2球状反射面502からなる反射面とを、有している。レンズ装置503はランプ500からの直接光エネルギ及び対応する反射面からの反射光エネルギを点505に向けて送出し、レンズ装置504は点506に向けて送出する。本実施形態によれば、照明光エネルギを発する単一のアーク光源によって2個の検査チャネルを得ることができる。
【0042】
2個のコンデンサを組み合わせるという発想を利用すれば、両コンデンサを用い均一化素子群128における平均輝度を高めることも、またそれらコンデンサを別々の波長域向けに設計して複数の波長域をサポートすることも可能である。まず、平均輝度を高めるには、光路を転向させて均一化素子群内にコンデンサからの像とバッキングミラーからの像を共に入射させればよい。均一化素子群は、反射型集光器から受光しその光から均一な光放射乃至配列を生成する機能装置である。複数の像が均一化素子群内に入射されるよう光路を転向させる装置の例を図6に示す。この図の例はその光路を転向させて二種類の像をライトパイプ内に入射させる装置であり、この装置においては、その表面に反射性被覆が形成されているプリズム603に第1コンデンサ系からの光601及び並びに第2コンデンサ系からの光602を入射させ、プリズム603の反射性被覆によって反射された光をライトパイプ604に入射させることができる。本実施形態は高い輝度を得ることを狙った実施形態であるから、反射性被覆としては高効率ミラー被覆を使用するとよい。元々単一のアーク像から発した光エネルギはこうしてライトパイプ内に好適に収まる。このやり方は、複数個のコンデンサを互いに別の波長域に最適化させた実施形態を得る際にも、適用することができる。
【0043】
また、反射面が楕円面の反射型集光器も使用可能である。全反射型集光器は傾向としてあまり色収差(chromatic abberation)を発生させないため、UV〜DUV波長域内で非常に広い幅を有する帯域をサポートすることができる。反射被覆として所望波長だけを反射できるものを使用すれば、ランプからの光のうち不要な成分をより出し、所望のスペクトルだけとすることができる。逆に、ランプ発光の大部分を集光できるよう反射型集光器を構成することもできる。図7A及び図7Bに楕円面反射型集光器の例を示す。まず、図7Aに示す例では、アーク発生位置が楕円面702の第1焦点となるようランプ701が配置されており、楕円面702によりランプ701から収集された光が第2焦点703に集光されている。次に、図7Bに示すもう一つの例においては、ランプ704が楕円面705に対して横向きに配置されており、楕円面705により収集された光が第2焦点706に集光されている。何れにしろ、楕円面反射型集光器の焦点から離れた場所での収差は大きく、そのため光は第2焦点周りにかなり大きく広がるから平滑化装置内に入射し得る有用な光量は低く、従って楕円面反射型集光器はラージインバリアント向けに用いる方がよい。更に、反射型集光器においてはランプが影をもたらすため中央暗部(central obscuration)が生じるのが普通であるが、同じく中央暗部を発生させる結像システムと併用するならばこのことはさして問題にならない。しかしながら、本実施形態はランプを取り巻くミラーの向きに敏感な構造であり、適正な温度で動作するようランプを冷却できる構成とするのが面倒である。
【0044】
カタジオプトリック型集光器は、屈折型集光器を構成する何個かのコンデンサにより得られる高い収差補正効果と、反射型集光器により得られるスペクトル帯域幅拡張効果とを、併せ享受できるが、小さめであるとはいえ中央暗部が生じることがある装置である。図8Aにカタジオプトリック型の第1例をまた図8Bに第2例をそれぞれ示す。図8A及び図8Bに示す実施形態は、何れも広い帯域幅に亘り良好に収差補正できる性質を有している。まず、図8A中、ブラスト窓802並びに3枚のレンズ素子803、804及び805を有するレンズ装置は、ランプ内アークからの光と、ランプから発せられた後バッキングミラー801によって反射されランプ内アークの近くを通った光とを、受光及び集光する。集光された光は視野レンズ806によって合焦されてマンジャンミラー素子807の開口を通り抜け、マンジャンミラー素子808更にはマンジャンミラー素子807により反射されて、マンジャンミラー素子808の開口を通り抜けて点809で合焦、結像する。図8Aの実施形態の仔細は次の表の通りである。
【表2】
【0045】
この表を含め、本願中のレンズ処方を示す表ではSRF又は面番号という項目を掲げている。これは各素子の表面に対し配置順に割り当てた番号である。大抵の素子は表面を2個有しているから、図8Aに照らして上の表を読み解くと次のようになる。まず、素子802の左面である面0は素子801の焦点から20.0000mm離れた場所にある。素子802は、この表の面1の欄にある通り熔融シリカから形成された3.0000mm厚の素子である。素子802とその隣の素子803の左面即ち面3との間は9.0000mm離れている。素子803は、その左面の曲率半径が−49.1737mm、厚みが16.0000mmで、熔融シリカから形成されている。このように、表中の記載から、図中に示されている面がそれぞれどのようなものであるかを確認できる。
【0046】
図8B中、ブラスト窓811並びに3個のレンズ素子812、813及び814から構成されるレンズ装置は、ランプ内アークからの光と、ランプから発せられた後バッキングミラー810により反射されランプ内アークの近くを通り抜けた光とを、受光及び集光する。集光された光は更にレンズ815を通り抜け、ミラー816により反射され、レンズ815を再度通過して戻り、点817にて像を形成する。図8Bの実施形態の仔細を次の表に示す。
【表3】
【0047】
以上の例に従い大きな集光角を有するカタジオプトリック型集光器を構成しようとしても、反射光の大部分がランプにより隠されてしまって結局大きな集光角で集光できないであろう。この点について検討し改良を施した実施形態を図8C及び図8Dに示す。これらの実施形態においても、広い波長域に亘り好適に収差補正できる。まず、図8C中、ランプ内アークからの光や、ミラー818により反射されランプ内アークの近くを通った光は、ブラスト窓819並びにレンズ素子820及び821から構成されたレンズ装置を通り抜け、ミラー822により反射され、戻って素子821、820及び819を通り抜け、ミラー818にあいている孔を通って像823を形成する。図8Cの実施形態の仔細を次の表に示す。
【表4】
【0048】
図8Dにおいては、ランプ内アークからの光や、ミラー824により反射されランプ内アークの近くを通り抜けた光は、ブラスト窓825及びレンズ素子826から構成されたレンズ装置を通り抜け、ミラー827により反射され、戻って素子826及び825を通り抜け、ミラー824にあいている孔を通って像828を形成する。図8Dの実施形態の仔細を次の表に示す。
【表5】
【0049】
ビーム整形又は均一化素子群128は、照明形状を整形して視野面内や瞳面内における照明形状を望み通りのプロファイルにする。まず、結像サブシステムに対しては、多くの場合、視野面を均一に照明することによって直視画質を改善し且つコンピュータ画像分析時における電子補正所要量を抑えることが、望まれるであろう。均一照明面を実現する手法の一つは、均一化素子として図9Aに示す均質化ロッドを用いる手法である。合焦中の光をこの図の均質化ロッドの入射面901に入射すると、その光は反射を繰り返しつつ長手方向に沿いこのロッド902の下流へと進んでいく。入射面901に相異なる入射角で入射、サンプリングされたビームはこの均質化ロッドの出射面903にて重畳し合い、それによって高度に均一な照明面が形成される。こうしたロッドはガラス(UV用なら熔融シリカ等)から形成できる。このロッドを高効率化したいなら、内部全反射が生じるように構成、使用すればよい。中空ロッドに鏡面被覆を設けて反射が生じるようにしたものも使用できる。中空ロッド型ならば非常に小さいものを製作することができるが、但し一般に伝送容量は小さくなる。六角断面型とすれば、環状面をより効率的に光で充填することができる。そして、ライトパイプ型とすれば、有益なことに、ラージインバリアントをサポートでき、ライトパイプ断面積を小さくすることによって平均輝度を高めることができ、また複数個のライトパイプを使用できる。
【0050】
均一照明面を実現する手法としては、更に、均一化素子として図9Bに示すレンズアレイを用いる方法がある。図示の通りレンズアレイ904と合焦レンズ905とを組み合わせれば、面906上に均一照明エリアを形成することができる。即ち、図9Bに示した実施形態においては、レンズアレイ904を構成する各個別レンズ素子の照明形状を効率的に捕捉し、それら照明形状同士を面906上で重畳させることによって、それらのプロファイルを“均して”均一照明面を形成している。
【0051】
その特性上望ましい照明形状としては更に環状照明がある。環状照明とは環状暗視野モードで観測される瞳面と同様の瞳面を形成する照明形状であり、そうした性質は有益に利用することができる。瞳面内で当該有益な性質を発揮させるには、瞳面に照明用開口を設け、所望角度範囲内を照明する光のみを通すようにすればよい。但し、そうした実施形態ではその開口を通れなかった光が損失になってしまう。図10A〜図10Eに示すように何個かのアキシコン素子を整形素子として用い環状照明を実施するようにすれば、そうした光損失は抑えられる。まず、図10Aでは、レンズ1001と1枚のアキシコン1002とを用い、面1003上に環状照明形状を形成している。次に、図10B及び図10Cに例示されているズーム型デュアルアキシコン系においては、第1アキシコン1004によって第2アキシコン1005上に環状照明形状が形成されており、図10Cに示すように、アキシコン間隔を変えると得られる環状照明の直径が変化する。そして、図10D及び図10Eにもこれと似たズーム型アキシコン系が示されているが、このアキシコン系においては発散アキシコン1006と収束アキシコン1007を組み合わせて用いており、本実施形態でもアキシコン間隔を変えると得られる環状照明の直径が変化する。また、本実施形態では軸長をより短くすることができる。
【0052】
また、スペクトル分布及び光レベルを制御するには、均一化又は中継用の光学系内に更なる光学素子を追加するとよい。追加するとしたら、例えば吸収フィルタ、干渉フィルタ、反射フィルタ、等々であろう。図11A及び図11Bに示す光中継器を用いれば、歪乃至光学的変形を抑えつつ、視野面上の像を離れた場所に再現する(像を中継する)ことができる。まず、図11Aに例示されており本システムで使用できる視野面瞳面中継光中継器は、光パイプ出射端等として構成されている視野面1101上の像を、レンズ1102及び1104により中継用視野面1105へと中継して結像し、中継用視野面1105上の像をレンズ1106により試料上に結像させる。中継用視野面1005上に開口を設けて視野サイズを制限し散乱光の量を抑えることもできるし、また中間瞳面1103上に開口を設けて照明光が使用できる開口範囲を制御する等適当な開口により照明光を改変乃至カスタマイズすることもできるし、中間瞳面1103上にアキシコン系を挿入して環状照明を実施することもできる。何れにせよ、中間瞳面1103上の像はレンズ1104及び1106によって瞳面1107上に中継される。これにより瞳面1107上に形成される瞳は、照明サブシステム側の光路と結像サブシステム側の光路とにより共有される。
【0053】
図11Aの実施形態は中継用視野面を内部形成しない実施形態に変形することができる。即ち、レンズ1102によって視野面1101からの光を瞳面1107上の共有瞳に直接中継する実施形態とすれば、照明サブシステム内光中継器を構成する光学部品の個数を本質的に減らすことができる。図11Bに、視野面中継を実行する光中継器の別の実施形態を示す。この光中継器は、ライトパイプ出射面等として形成されている視野面1108上の像をレンズ1109によって(図11A中の中継用視野面1105と同様の)中継用視野面1110上に結像し、中継用視野面1110からの光をレンズ1111によって中継し共有瞳1112を形成する。
【0054】
先に少し言及したレーザ型照明サブシステムは光源としてレーザ光源111を備える照明サブシステムであり、このレーザ光源111としては例えば固体、イオン、半導体直接発振、エキシマ等の様々な種類を使用できる。本システムにてレーザ光源111を用いるのは、レーザ光源111であれば必要な出力パワーを得ることができ、その安定度が高く且つ寿命が長いためである。
【0055】
レーザ光源111のパワー及び安定度は、本システムの能力即ち標本115を適切に検査する能力の物差しとなる重要な指標である。例えば、ダイオードを用いてパワー変動を計測し信号段階にてその変化を補償してやることにより、レーザ光のパワー変動を補正することができる。また、所与環境にて結像所要パワーを好適に提供できる限り、上掲の条件を満たしていない低パワーレーザ光源でも使用することができる。
【0056】
次の表
【表6】
は、本システムにて使用可能なレーザ光源種別毎に、典型的な波長値を記した表である。但し、使用できるレーザ光の波長はこの表の値に限られるものではなく、複数通りのレーザ波長の混合等により周波数変換すれば、より短波長のレーザ光も得られる。例えば、広く知られているように、YVO4レーザの発振周波数を2倍、3倍、4倍等とすることによって、順に532nm、355nm、266nm等といったレーザ波長を得ることができる。また、上掲のレーザ光源の動作モードには連続モードやパルスモードがある。連続モード下では反射光が連続的に累積し、例えば走査型のデータ取得システムはこの累積された信号からデータを取得することができる。また、本システムでは高繰り返しモードロックレーザ、即ち信号積分時間に対しその繰り返し速度が十分速いため検知システムからすればあたかも連続モードレーザであるかのように見えるレーザ光源も、レーザ光源111として使用できる。無論、より繰り返し速度が低いモードロックレーザを本システムにて使用できないわけではないが、いわゆる当業者に知られているように、その種のレーザ光源を使用するにはフラッシュ型システムアーキテクチャが必要となる。フラッシュ型システムアーキテクチャを用いるならば、その最高繰り返し速度が5kHzレンジ内のエキシマレーザを用いることができる。
【0057】
図12A及び図12Bに、本システムにて使用可能なレーザ光集光器の例を二通り示す。まず図12Aにおいては、レーザ光源1201の働きによってガウシアンビーム狭搾部が位置1202に形成されている。このビーム狭搾部はレーザ光源1201の発振部(空洞)に備わるビーム整形機能によって位置1202に生じたものであり、ビーム狭搾部位置1202はレーザ光源1201の内部になることもまた外部になることもある。周波数変換型レーザ光源なら、ビーム狭搾部位置1202は往々にして周波数変換用クリスタル内になる。こうしたビーム狭搾部はレンズ1203によって二次ビーム狭搾部位置1204、例えば本願中で説明するビーム均一化用光学系への入射部等に、結像される。次に図12Bにおいては、レーザ光源1205から輻射される光が開口1206を通り抜けている。この開口は、例えばレーザ発振モードを規定する内部空洞開口であり、或いはレーザ光のスポットサイズを規定する開口である。この開口は、レーザ光源1205の出射カプラに設けるとよい。これらのレーザ光集光技術を用いることによって、レーザ光源から発せられたビームの方向ズレ及び中心ズレを抑えることができる。
【0058】
均一光を発するようレーザ型照射サブシステム光源を構成する際には、本検査システムの実施形態に対して要求される性能や条件を勘案する。図13Aに示す実施形態においては、レーザ光をレンズ1301によって光学系1302上に合焦し、この光学系1302によってそのレーザ光に角度的広がり1303を持たせる。光学系1302は例えばすりガラス、体積拡散器、回折光学系等から形成できる。すりガラスや体積拡散器より回折光学系の方が効率がよいが値段も高い。すりガラスを用いて高効率の光学系1302を得るには、例えば、ガラス表面を研磨した後に酸でエッチングすればよい。また、回折光学系からの出射光における角度ばらつきをより正確に制御・管理する手段の素材として、すりガラスを使用することもできる。何れにしろ、光学系1302は、レーザ光源111からの高度にコヒーレントな光から、高次変調干渉乃至スペックルパターンを生成する。このとき速めに回転させる等光学系1302を動かしてやれば、そうしたスペックルパターンは均して消すことができ、従って均一照明パターンを得ることができる。図13Bにまた別の方式を示す。この方式においては、拡散器又は回折光学系1304に入射した平行光がレンズ1305によって平面1306上に合焦される。この平面1306には、例えばライトパイプ等、ビーム整形又は均一化光学系を配置することができる。本実施形態でも、拡散器又は回折光学系1304を移動乃至回転させることによって、スペックルパターンを平滑することができる。
【0059】
図13Cに、また別のビーム整形又は均一化方式を示す。この方式においては、レーザ光は、まず照明側視野面に配置された回折素子1307を通り、瞳面に配置された回折素子1309へとレンズ1308により中継され、そしてレンズ1310により視野面1311へと中継される。視野面及び瞳面双方に回折素子を配置してあるため、それら両方の位置で照明形状を制御・管理することができる。本実施形態でも、それら回折素子1307及び1309を移動乃至回転させることにより、干渉パターン乃至スペックルパターンを均して消すことができる。
【0060】
図13Dに、本システムにて使用できる光中継器114の例として、瞳選択フィルタリングという考え方を用いた光中継器を示す。この例においては、レーザ光がレンズ1312によって中継用瞳面1313へと中継され、レンズ1314及び1316によって中継用瞳面1313から集光された光が共有瞳面1317へと中継される。中継用瞳面1313における光強度分布はビーム整形器の構成により決まる。こうした構成の光中継器114を用いれば、(準)均一照明だけでなく、点状照明、環状照明、四分円(quadrapole)照明等、所望の照明パターンで照明することができる。更に、中継用視野面1315に開口を設け光散乱効果を抑えることもできる。図13Eに、光結像器の外から照明するレーザ暗視野モード用の照明中継方式を示す。本実施形態においては、入射レーザ光1319によって試料1320が照明されており、その結果標本乃至試料1320により散乱された光を光結像器1318が集光している。入射面上におけるレーザ光入射方向は、信号光の集光効率がより高くなるよう、また結像信号対雑音比がより良好になるよう、設定すればよい。入射レーザ光1319たる照明ビームは1本でも複数本でもよいが、例えば、入射面となす角度(入射角)が同じ4本のレーザビームを、試料1320の垂線周りで90°ずつずらした方位から入射するとよい。
【0061】
位置決め
DUV検査システム用位置決めサブシステムは、例えば、標本を高速で位置決めすることができ、標本を回転させて整列させることができ、そして合焦光学軸に沿って標本を移送できる構成とする。例えば当業者に精密ステージとして知られている装置を使用すれば、標本を高速で位置決めすることができる。精密ステージとは、普通、花崗岩等から製造した高精度面上でエアベアリングを使用し動きを制御するものをいう。リニアモータを何個か使用すれば、大概は、高速移動を実現できる。
【0062】
高速検査用ステージにて採用できる走査方式には様々なものがある。例えば、半導体ウェハのようなパターン付の試料を検査する際の走査方式としてはラスタ走査を使用できる。ラスタ走査実行時には、ステージは、結像サブシステムの視野を横切るようある方向に沿って試料を動かし、次いでその方向と直交する方向に沿って試料の位置をある増分だけステップ的に変化させ、そして結像サブシステムの視野を横切るよう当初と逆方向に沿って試料を動かす、という動作を、その試料上の所望エリアを検査し終えるまで繰り返す。また、Rθ走査実行時には、結像サブシステムの視野を横切るよう試料を回転させ、一周する間に試料の半径位置をある増分だけステップ的に又は連続的に変化させる、という動作を、その試料上の所望エリアを検査し終えるまで繰り返す。なお、試料の半径位置の連続的変化とは、ちょうど再生中のLPレコードのように、螺旋状の検査経路を発生させることを指している。
【0063】
また、ラスタ走査型位置決めサブシステムに回転機能を設ければ、試料上にある構造物が例えば直線である場合や、検査検査対象物が列乃至線状パターンをなしている場合に、ラスタ走査開始前にそれら直線乃至パターンの向きを走査方向に揃えておき、ラスタ走査を行っている間イメージセンサ上における当該直線乃至パターンの位置乃至向きを実質的に維持することことが、可能になる。
【0064】
また、走査面に直交し且つ光軸と平行な軸に沿い動かせるステージを用い焦点制御を行うことができる。当該焦点制御は十分高速で実行できるため、約1000Hz以上での高速走査中も、合焦状態を維持することができる。その分解能も十分精細にすることができ、実質、その制御誤差はその光学系における焦点スポットの光軸方向寸法よりも小さくすることができる。NA値が高く短波長を使用するシステムではしばしば50nm未満の制御誤差で光軸方向に位置決めできる能力が求められるが、当業者に知られているPZTシステム等のような高分解能駆動システムを用いれば、そうした高分解能制御も実行できる。
【0065】
結像
結像サブシステムの構成上の基本となるのは、高NAで、その寸法が小さく、広い視野を有しており、そして広帯域光源に対処でき各種結像モードをサポート可能なカタジオプトリック型対物系である。この光学装置には、更に、自動合焦サブシステムが使用する何種類かの波長を取り扱える能力や、外部瞳面乃至フーリエ面を有する光学系や、ズーム機能や、光学系の汚濁状況を管理し清掃する機能を、設けるとよい。清掃・汚濁管理機能を設けるのは、UV光エネルギ光源使用時にこの光学装置から酸素を排除するためである。
【0066】
図14に結像システムの実施形態を示す。この結像システム1402は対物系1403及び像形成光学系1404から構成されており、その主目的は試料1401の像を検知器1405上に形成することにある。この結像システム1402を顕微鏡等の検査環境にて動作させるには、先に実施形態として述べた照明サブシステムを照明器1406として用いる必要がある。像の合焦状態を維持するには自動合焦素子1408を用いればよく、システム構成要素の位置揃えには瞳結像1407を用いればよい。
【0067】
本システムにおいては様々な結像方式を使用できる。即ち、図15に示す対物系1501は、単体の固定対物系でも複数個の固定対物系でも複数個の対物系をタレット上に載せたものでもまたそれらの任意の組合せでもよいが、例えば、可変焦点ズーム1502、複数個の合焦光学系付無限遠焦点チューブレンズ1503、複数個の像形成マグチューブ1504等、何通りかの異なる形態で実施可能である。
【0068】
本システムにおける対物系1501は、例えば285〜320nmの波長域に亘り収差補正できるよう、一種類のガラス素材からカタジオプトリック型対物系として構成する。もし性能向上に資するのであれば、状況次第で複数種類のガラス素材から形成してもよい。図16に示すカタジオプトリック型対物系は、UVスペクトル領域内の広帯域即ち約0.285〜0.320μm波長域にて好適に結像できるよう構成されており、比較的高いNA値及び比較的広い検査対象物視野を有している。この図の実施形態においては、Schupmann原理とOffner視野レンズとを組み合わせることによって、軸方向色収差(axial color)及び一次横方向色収差(first order lateral color)を補正可能としている。従来は色収差を補正するため二乃至三種類のガラス素材が使用されるのが普通であったが、本システムにおいては、使用するガラス素材を一種類にとどめつつ各種の色収差を補正できるよう、格別の試みが施されている。即ち、本システムにおいては、レンズ及びミラーの構成及び配置をある特定の構成及び配置とすることによって、全レンズで同一種類のガラス素材を用いつつ収差を補正できるようにしている。極DUV域ではシリカもCaF2も非常に分散性が強まるため、波長が非常に短く且つスペクトル帯域幅が割合に狭い場合は、ほんの二、三種類の色収差を補正できればよい。補正対象となる色収差には、一次及び二次軸方向色収差(primary and secondary axial color)、一次及び二次横方向色収差(primary and secondary lateral color)、球面収差における色変化(chromatic variation of spherical aberration)、コマ収差における色変化(chromatic variation of coma)等が含まれ得る。本システムにおけるレンズ及びミラーの位置は、一次軸方向色収差及び一次横方向色収差を完全に補正できるよう設定される。二次軸方向色収差及び二次横方向色収差については完全には補正できないが、その幅が比較的狭いスペクトル帯域であれば十分許容できる低いレベルに保つことができる。球面収差における色変化やコマ収差における色変化も、ミラー及び2枚のレンズによって光路をコンパクトに折り畳む構成を用い、補正することができる。
【0069】
図16に示す実施形態においては、視野レンズ1605乃至視野レンズ装置1604の位置を中間像1606からわずかにずらすことによって、性能を高めている。
【0070】
この図16に示すカタジオプトリック装置1601乃至配列マンジャンミラー(Mangin mirror arrangement)は、何れも反射被覆付レンズ素子であるマンジャンミラー素子1602及び凹球面反射器1603を有している。カタジオプトリック装置1601を構成するこれらの素子の中央部は、何れも反射被覆により覆われておらず、光学的な開口となっている。こうした開口が設けられているため、図示しない検査対象物乃至試料1600から到来する光は、マンジャンミラー素子1602を通り抜け、凹球面反射器1603の第2面即ち内部寄りにある反射面1620にてマンジャンミラー素子1602の反射面へと反射され、凹球面反射器1603を通り抜けて凹球面反射器1603と視野レンズ装置1604との間に中間像1606を形成することとなる。なお、視野レンズ装置1604を構成するレンズの枚数は1枚でも複数枚でもよいが、この図の視野レンズ装置1604内で使用されている視野レンズの枚数は1枚(1605)である。
【0071】
レンズ型合焦装置1607は複数枚のレンズ素子(図では6枚のレンズ素子1608、1609、1610、1611、1612及び1613)から構成されている。レンズ型合焦装置1607内にあるレンズは、視野レンズ装置1604からの光更には中間像1606を集光できるよう、全て同じ単一種類の素材から形成されている。
【0072】
図16の実施形態についてそのレンズ処方を表7に示す。
【表7】
【0073】
当業者であれば理解できるように、表7の最左列に記されている数字は面番号であり、図16の向かって左端から数えた面の順番を表している。例えば、レンズ1612の面のうち図16にて左を向いている面(表7中では面番号3)の曲率半径は53.51878mm、同レンズの厚みは2mmである。レンズ1612の面のうち図16で右側を向いている面(面番号4)の曲率半径は−18.17343mm、隣の面までの距離は0.976177mmである。使用されている素材は熔融シリカであり、レンズ1612の左面の直径は9.376161mm、右面の直径は9.234857mmである。
【0074】
図示されている高NAカタジオプトリック型対物系は、赤外域からDUV域に亘る波長域内の様々な波長向けに最適化できる。即ち、当該波長域に属する波長の光ビームを好適に結像できるよう構成し、その波長で使用することができる。例えばUVスペクトル域では、約193nm、213nm、244nm、248nm、257nm、266nm等の波長を有する光ビームを、本願記載の発明の実施に際し使用することができる。当業者であれば、そのためにどのような調整を施せばよいか、明瞭に理解できるであろう。約110〜200nmの波長域に属する波長ではフッ化物ガラスを使用できる。
【0075】
図16の実施形態においては、約0.90に及ばんとする或いはそれを上回るNA値が得られる。本実施形態を含め、本発明におけるNA値はどの実施形態でも0.65を上回り、これまでにない大きな値になる。
【0076】
図16中、レンズ型合焦装置1607は光エネルギを受け取って合焦光エネルギを送出し、視野レンズ装置1604はその合焦光エネルギを受け取って中間光エネルギを送出し中間像1606を形成し、カタジオプトリック装置乃至配列マンジャンミラー1601は中間光エネルギを受け取って調整済光エネルギを形成し標本1600に送る(それぞれそのような能力を有するよう構成されている)。これに応じ、標本1600は調整済光エネルギを受け取って反射させ、カタジオプトリック装置乃至配列マンジャンミラー1601反射光路を辿って到来するこの反射光を受光して反射光エネルギとして送出し、視野レンズ装置1604はこの反射光エネルギを受け取って最終光エネルギとして送出し、レンズ型合焦装置1607はこの最終光エネルギを受け取って合焦最終光エネルギとして送出する。
【0077】
図16及び表7に示した実施形態は一種類のガラス素材たる熔融シリカを用いて構成されているが、他種素材も使用可能である。熔融シリカを使用するにせよ他種素材を使用するにせよ、本実施形態にて使用する素材に対しては190nmから赤外域までの広い波長域に亘り吸収率が低いことが要求されることに、注意すべきである。熔融シリカを用いた場合、この波長域内であればどのような中心波長に対しても、本実施形態を調整して最適化し直すことができる。例えば、193、198.5、213、244、248、257、266、308、325、351、355又は364nmのレーザ波長で使用できるよう本実施形態を最適化することや、192〜194、210〜216、230〜254、285〜320及び365〜546nmのランプスペクトル帯域で使用できるよう最適化することができる。また、ガラス乃至レンズの素材として弗化カルシウムを用いた場合は、本実施形態を、エキシマレーザから発せられる波長157nmのレーザ光やエキシマランプから発せられる波長域157〜177nmのランプ光に最適化できる。更に、最適化し直す際には構成部材の交換やチューニングが必要となろうが、それは当業者の能力範囲内で行えることである。更に、視野レンズ装置1604内で弗化カルシウム製のレンズを用いれば、この対物系の帯域幅を拡げることができる。この種の変形の概略については特許文献1を参照されたい。
【0078】
図16に示されている対物系の直径は26mmであり、この波長域で従前から使用されている対物系の直径に比べてかなり小さくなっている。対物系の特徴的能力を発揮させる上で、このように小さな寸法の対物系は特に有益である。例えば、この対物系はフランジ対検査対象物間セパレーションが45mmの標準的な顕微鏡タレット内に実装できる。この対物系は、約0.90のNA値をサポートし、約0.4mmの視野サイズをサポートし、約285〜313nmの幅の帯域に亘り収差補正可能で、そしてその多色波面収差(polychromatic wavefront error)が約0.038波未満という性能を発揮する。
【0079】
また、この対物系がその特徴的能力を発揮できるよう、その所望用途や光学的構成に応じてある種のトレードオフ関係に対処するのが望ましい。例えば、その用途に応じ、特徴的能力である帯域幅、視野サイズ、NA値、対物系サイズ、これらの任意の組合せ等のうち何れかを犠牲にして他のものを強化すること、具体的には低めのNA値又は高めのNA値に最適化すること等ができる。低いNA値に最適化するのであれば、製造公差が緩めになり、対物系の外径を小さくすることができ、視野サイズを広くすることができ、帯域幅を広くすることができる。性能が同じならNA値が高い構成よりNA値が低い構成の方が光学部品の個数を少なくすることができる。高めのNA値に最適化するのであれば、視野サイズを狭くすることができ、帯域幅を狭くすることができ、ある種の状況下では対物系構成素子直径がわずかに大きくなる。
【0080】
図16の実施形態における視野サイズは直径約0.4mmであり、従って大型の高速センサをサポートできる。例えば、本実施形態における結像倍率が200倍であれば、その対角線の長さが80mmのセンサをサポートでき、図示の実施形態にてその性能を適切に発揮することができる。更に、より直径が大きなレンズを用いそれらのレンズ素子向けに最適化し直すことにより、図16の実施形態における視野サイズをより大きくすることもできる。これも当業者のなし得る事項の範囲内である。
【0081】
図16の実施形態における固有多色波面収差(intrinsic polychromatic wavefront aberration)は、約285〜320nmの波長域に属する設計帯域幅にて比較的小さくなる。波面収差が小さければ製造ヘッドルームが大きく製造が容易でありしかも良好な性能の対物系製品を得ることができる。図16の実施形態は、約266〜365nmの波長域に属する比較的狭い帯域にて対物系の焦点位置を調整(リフォーカス)することによりその帯域にて良好な性能を発揮させることができる。これもまた当業者が即座になし得る事柄である。図16に示した対物系をこのように狭い帯域幅で使用する場合、365nmで線スペクトルを呈するレーザ光源等のレーザ光源や、そのスペクトル帯域が狭いランプを、光源として用いることができる。更に、本実施形態は単体補正型(self corrected)の光学系、即ちその対物系に何ら光学的構成部材を追加しなくても収差を補正できそれによって設計仕様を現実のものとすることができる光学系である。単体補正型光学系は、光学試験時における度量衡調整が容易であり、他の単体補正型光学系と光軸を揃えて配置することも容易である。更に、本対物系に図示しないまた別の光結像器を付加すれば、残留収差を更に補正することが可能である。こうして他の光学系を追加し残留収差を追補正する構成とすれば、帯域幅や視野サイズが広がる等、その光学的仕様がより優れたものになる。
【0082】
図16の実施形態を含め、本発明においては製造公差が緩和される。例えば、個別レンズ素子の芯ズレ公差(decenter tolerance)が緩和されるため、傾向として本システムの製造条件はより達成しやすいものになる。製造時に個別レンズ素子に生じる芯ズレは何れも軸上コマ収差(on-axis coma)の発生につながり得るものであり、この軸上コマ収差は別途残留収差補正手段を導入すること無しには容易に補償し得ないものである。しかしながら、本発明例えば図16の実施形態を用い、カタジオプトリック装置1601内及びレンズ型合焦装置1607内の収差を注意深くバランスさせれば、芯ズレに対しレンズ素子及びミラー素子をより鈍感にすることができる。カタジオプトリック装置1601の全収差は、図16の実施形態を用い、視野レンズ装置1604及びレンズ型合焦装置1607に必要な補償量をバランスさせることにより、最適化することができる。図16の実施形態における平均公差は、波長約313nmでは約0.13波長誤差とすることができる。カタジオプトリック装置1601内の素子における公差を更にバランスさせることもできる。芯ズレ公差を使用波長を物差しとして評定するのは、小規模な芯ズレにより発生する光路誤差の波長依存性がさして強くないためである。例えば、10μmの芯ズレによって波長266nmでもたらされる0.2波長の収差は0.0532μmの光路誤差に等価であるが、この光学系を波長365nmで動作させた場合に当該10μmの芯ズレによりもたらされる約0.15波長の収差は同じく0.0532μmの光路誤差と等価である。
【0083】
このように、本発明における公差は同様の環境で使用される他種のカタジオプトリック型対物系と比べ、また標準的な屈折型対物系の大抵のものと比べ、緩和される傾向にある。更に、図16の実施形態を含め本発明におけるガラス素材屈折率の公差も、一種類のガラス素材から形成されているため緩和される。即ち、色収差補償用に複数種類のガラス素材を使用する従来の構成はそれらガラス素材間の屈折率差に対する依存性を有しているが、本発明にて使用するガラス素材を一種類とした場合はそのような依存性が発生しない。また、使用する素材が一種類であれば温度変化に対しても割合に鈍感になる。更に、複数種類のガラス素材を使用する従前の標準的構成においては、各ガラス素材の屈折率が温度変化に応じて別様に変化するため、色収差補正用の屈折率曲線を複数通り想定する必要があった。本発明にて使用するガラス素材を一種類とすることにより、温度変化を補償する必要がなくなりまた色収差補正の必要性も軽減される。
【0084】
図17に、本発明の他の実施形態として、その視野サイズを拡げた対物系を示す。図16の実施形態に対する本実施形態の主要な相違点は、前者における視野サイズが約0.4mmであったのに対し後者におけるそれが約1.0mmと大きくなっていることである。本実施形態では、レンズ直径が図16における約25mmに比べ約58mmと大きくなっているが、従前のカタジオプトリック型光学系と比べると最大レンズ直径は大分小さい。また、この図に示した対物系は、約285〜320nmの波長域に属する帯域で収差補正され、そのNA値としては0.90という高い値が確保されており、多色波面収差は最悪の場合でも約0.033波長に留まる。
【0085】
図17中、カタジオプトリック装置1701は、何れも反射被覆付のレンズ素子であるマンジャンミラー素子1702及び凹球面反射器1703を有している。マンジャンミラー素子1702及び凹球面反射器1703の中央部は、何れも反射性の素材により覆われておらず、光学的な開口となっている。このように図示部材の中央部を反射性の素材により覆っていないため、図示しない検査対象物乃至標本1700から到来する光はマンジャンミラー素子1702を通り抜けて凹球面反射器1703に達し、凹球面反射器1703の第2面によりマンジャンミラー素子1702方向に反射され、更にマンジャンミラー素子1702から凹球面反射器1703を通って送り出されて、視野レンズ装置1704内で中間像1720を形成する。本実施形態における視野レンズ装置1704は、3枚の視野レンズ素子1706、1707及び1708を有している。
【0086】
レンズ型合焦装置1705は、複数枚のレンズ素子、具体的には7枚のレンズ素子1709、1710、1711、1712、1713、1714及び1715を有している。これらのレンズ素子は皆、同じ一種類の素材から形成されている。このレンズ型合焦装置1705は、中間像1720を含め、視野レンズ装置1704から到来する光を集光する。
【0087】
本実施形態についてのレンズ処方を表8に示す。
【表8】
【0088】
本発明の更に他の実施形態としては、対物系にチューブレンズを併用してその対物系における残留収差(主として歪に伴う色変化(chromatic variation of distortion)や高次横方向色収差(higher order lateral color))を補正することにより、対物系の視野サイズを確保しながら帯域幅を拡げ或いは対物系単体でのそれより視野サイズを広くする実施形態がある。図18に、視野サイズは図16に示した対物系と同様約0.4mmだが、その帯域幅を拡げてありリフォーカス無しで約266〜405nmをカバーするようにした実施形態を示す。この図の装置における多色波面収差は、最悪の場合でも約0.041波長に留まる。
【0089】
図18に示す実施形態は、集光用の対物系1801に、残留収差補正用のチューブレンズ1803を併用する構成を有している。図16に示した対物系を超える広い帯域幅を実現するため、これら対物系1801及びチューブレンズ1803に対しては他の部材とは別にそれらだけを対象とした最適化を施してある。そのため、対軸方向差限定横方向色収差(limiting off axis lateral color)や歪に伴う色変化等の収差が更に小さくなる。チューブレンズ1803により形成される外部瞳1804は、図16の対物系のみで形成される外部瞳と同じように使用することができる。また、本実施形態は更に光学的ビームスプリッタ素子1802を備えている。この光学的ビームスプリッタ素子1802は、照明光及び自動合焦用の光を屈折させて光路内に入れるのに使用される。本実施形態についてのレンズ処方を表9に示す。
【表9】
【0090】
本実施形態における設計上のスペクトル域は約266〜365nmに制限されており、またその視野サイズはチューブレンズ1803との併用によって0.5mmに最適化し直されている。図18におけるチューブレンズ1803で使用している素材は熔融シリカと弗化カルシウムのみであり、最適化し直しについては図16の実施形態と同様の柔軟性を有している。
【0091】
本実施形態における最大NA値は0.9に及ぶ又はこれを上回る値に達するが、対物系1801の開き絞り位置に、照明光入射角及び結像光入射角を制限する可変開口を配置することにより、NA値をより小さくすることができる。また、本実施形態においては、照明光入射角と結像光入射角を相独立して制御乃至管理することができる。結像側NA値を独立して制御乃至管理するには、図16や図18に示した結像系を用い且つ外部瞳面に開口を配置すればよい。照明側NA値を小さくするには対物系の開口に照明光を入れればよく、そうすれば結像側開口全体を使用することが可能になる。
【0092】
本発明の更に他の実施形態としては、1mmの視野サイズを有する対物系にチューブレンズを併用して、その対物系における残留収差(主として歪に伴う色変化や高次横方向色収差)を補正することにより、図18の実施形態と同様、対物系の視野サイズを確保しながら帯域幅を拡げ或いは対物系のそれより視野サイズを広くする実施形態がある。図19に、視野サイズは図17に示した対物系と同様約1.0mmだが、その帯域幅を拡げてありリフォーカス無しで約266〜405nmをカバーする実施形態を示す。この図の装置における多色波面収差は、最悪の場合でも約0.040波長に留まる。
【0093】
図19の実施形態は、集光用の対物系1901に、残留収差補正用のチューブレンズ1902を併用する構成を有している。図17の実施形態を超える広い帯域幅を実現するため、これら対物系1901及びチューブレンズ1902に対しては、他の部材とは別にそれらだけを対象とした最適化を施してある。即ち、それら対物系1901及びチューブレンズ1902のレンズ処方及び構成部材を一体のものとして最適化し、帯域幅拡充効果が生じるようにしてある。従って、本実施形態では対軸方向差限定横方向色収差や歪に伴う色変化が補正され収差が更に小さくなる。チューブレンズ1902により形成される外部瞳1903は、図18の実施形態にて形成される外部瞳と概ね同じように使用することができる。本実施形態についてのレンズ処方を表10に示す。
【表10】
【0094】
本実施形態における設計上のスペクトル域は約266〜365nmに制限されており、またその視野サイズはチューブレンズ1902との併用により0.5mmに最適化し直されている。図19におけるチューブレンズ1902で使用している素材は熔融シリカと弗化カルシウムのみであり、この最適化し直しについては図18の実施形態と同様の柔軟性を有している。
【0095】
また、本実施形態でも最大NA値は0.9に及ぶ或いはそれを上回る値に達するが、対物系1801の開き絞り位置に可変開口を配置することで照明光入射角及び結像光入射角を効果的に制限してNA値をより小さくすることができる。本実施形態においても、図18の実施形態と同様、照明光入射角と結像光入射角を相独立して制御乃至管理することができる。結像側NA値を独立して制御乃至管理するには、図17や図19に示した構成のチューブレンズ等の光結像器を用い且つ外部瞳面に開口を配置すればよい。照明側NA値を小さくするには対物系の開口に照明光を入れればよく、そうすれば結像側開口全体を使用することが可能になる。
【0096】
図18や図19に示したものと同様のチューブレンズを用い、検知器上に直接結像するようにすれば、必要な光学部品乃至レンズの個数が減るため、総合光伝送効率が上がると共に構成面での複雑さが減る。また、これらの実施形態にて無限遠焦点レンズを用いることにより開口乃至フーリエフィルタを配置可能な外部瞳が形成される。固定型像形成光学系、限定ズーム機能付光学系、可変焦点光学系等の光学系を付加すれば、検知器上により好適に像を形成できる。
【0097】
図24に、本発明の更に他の実施形態として、その帯域幅を拡げた対物系の実施形態を示す。図16の実施形態に対する本実施形態の主な相違点は、帯域幅と視野サイズとの間にトレードオフ関係である。即ち、この図の対物系では260〜320nmという広い幅の帯域に亘り収差が補正されるが、その視野サイズは比較的小さく約0.28mmであり、図16の実施形態における0.4mmよりも小さい。また、本実施形態におけるNA値は約0.90という高い値を保っており、その多色波面収差は最悪でも約0.036波長である。
【0098】
図24中、カタジオプトリック装置2401は、何れも反射性被覆付のレンズ素子であるマンジャンミラー素子2402及び凹球面反射器2403を有している。これらマンジャンミラー素子2402及び凹球面反射器2403の中央部は、何れも反射性被覆により覆われておらず、光学的な開口となっている。このように図示部材の中央部が反射性被覆により覆われていないため、図示しない検査対象物乃至標本2400からの光はマンジャンミラー素子2402を通り抜けて凹球面反射器2403に達し、凹球面反射器2403の第2面によりマンジャンミラー素子2402方向に反射され、凹球面反射器2403を通り抜けて送り出され凹球面反射器2403と視野レンズ装置2404との間に中間像2420を形成する。本実施形態における視野レンズ装置2404は、1枚の視野レンズ2415を有している。
【0099】
レンズ型合焦装置2405は複数枚のレンズ素子を使用している。本実施形態では6枚のレンズ素子2406、2407、2408、2409、2410及び2411が使用されており、これらは皆同じ単一種類の素材によって形成されている。このレンズ型合焦装置2405は、中間像2420を含め視野レンズ装置2404からの光を集光する。本実施形態についてのレンズ処方を表11に示す。
【表11】
【0100】
本発明の更に他の実施形態としては、この対物系にチューブレンズを併用してその対物系内の残留収差(主として歪に伴う色変化及び高次横方向色収差)を補正する実施形態がある。こうした残留収差の一因はこの対物系においてオフナ視野レンズを使用していることにあるから、そのオフナ視野レンズにて第2のガラス素材を使用するというやり方によりそうした残留収差を補正することができるが、第2の素材を使用すると光学系を構成する素子の個数が多くなり公差もやや厳しくなる可能性がある。本願にてこのやり方に代わるやり方として提案するのは、光結像器を用いて残留収差を補正するというやり方であり、こうしたやり方を採れば、光学系のNA値を高くし、視野サイズを大きくし、レンズ直径を小さくし、それでいて公差をやや緩くすることができる。
【0101】
こうして残留収差を補正することによって、視野サイズを確保しながら帯域幅を更に拡げることや、或いは視野サイズを更に拡げることができる。例えば図25の実施形態は、図16の実施形態と同じく約0.4mmの視野サイズを確保しながらその帯域幅を拡げた構成であり、266〜365nmという波長域をカバーできる。リフォーカスも必要ない。図25の実施形態における多色波面収差は、最悪でも約0.036波長に留まる。
【0102】
本実施形態は、素子2501及び2502による空気間隙ダブレットと、素子2503及び2504による空気間隙ダブレットとを有している。これらのダブレットを構成する素子2501〜2504は熔融シリカ及び弗化カルシウムから形成されている。ダブレット2501〜2504により合焦される光は、内部視野面近傍にある3枚の熔融シリカ製レンズ素子2505、2506及び2507を通り抜け、素子2508、2509及び2510による空気間隙トリプレットにより平行化され、位置2511に外部瞳を形成する。位置2511の外部瞳には、暗視野開口(群)、フーリエフィルタ(群)、ビームスプリッタ(群)等を配置することができる。
【0103】
本実施形態についてのレンズ処方を表12に示す。
【表12】
【0104】
図25に実施形態として示したチューブレンズにて使用している素材は熔融シリカ及び弗化カルシウムだけであり、両素材は約190nmから赤外域にかけて光透過性を有しているから、調整によってその中心波長を別の波長に変えた(最適化先波長を変えた)対物系と併用できるようこのチューブレンズを設計することができる。また、本実施形態におけるチューブレンズ倍率は様々な倍率にすることができ、所望合計倍率に応じ様々な無限遠焦点倍率へと最適化し直すことができる。本実施形態によれば、直接結像によって高速センサ上に像を露出できる合焦用チューブレンズを、実現することができる。
【0105】
図26〜図29に、本発明の更に他の実施形態を示す。そのうち図26に示されている実施形態は、約311-315nmの波長域で動作可能で、その直径が約26mm、視野サイズが約 0.28mm、NA値が約0.90の実施形態である。本実施形態についてのレンズ処方を表13に示す。
【表13】
【0106】
図27に示されている実施形態は、約297〜313nmの波長域で動作可能で、その直径が約26mm、視野サイズが約0.28mm、NA値が約0.90の実施形態である。本実施形態についてのレンズ処方を表14に示す。
【表14】
【0107】
図28に示されている実施形態は、約297〜313nmの波長域で動作可能で、その直径が約26mm、視野サイズが約0.4mm、NA値が約0.90の実施形態である。本実施形態についてのレンズ処方を表15に示す。
【表15】
【0108】
図29に示されている実施形態は、約266〜313nmという広い波長域で動作可能で、その直径が約26mm、視野サイズが約0.28mm、NA値が約0.90の実施形態である。本実施形態についてのレンズ処方を表16に示す。
【表16】
【0109】
図30は、従前の対物系と本発明の対物系とを相対帯域幅及び最大レンズ直径によって対比させたグラフである。相対帯域幅は対物系の帯域幅を中心波長で除した値として定義されている。従前の対物系では、少なくとも相対帯域幅=0.5まで良好に収差補正できるが、その最大直径が100mm超のレンズを使用する必要があった。これに対し、本発明の対物系を一種類のガラス素材で形成したならば、その最大直径が約20〜100mmのレンズを使用する場合でも良好に収差補正できる。その場合に対物系単体で良好に収差補正できる相対帯域幅は最高約0.16であるが、図18及び図25の実施形態の如くチューブレンズを付加して残留色収差を補正すれば、最大0.5の相対帯域幅範囲にて良好に収差補正できる。NA値や視野サイズ条件を絞れば、これと同様の収差補正をその対物系単体で実行することもできる。
【0110】
図31は、従前の対物系と本発明の対物系とを視野サイズ及び最大レンズ直径によって対比させたグラフである。従前の対物系では、良好に収差補正を行える視野サイズは最大1mmの範囲であったが、それにはその最大直径が100mm超のレンズを使用する必要があった。これに対し、本発明の対物系では、その最大直径が約25mmのレンズを使用する場合なら0.4mmの視野サイズに亘り、またその最大直径が約58mmのレンズを使用する場合なら1.0mmの視野サイズに亘り、良好に収差補正される。この図と先の図30から読み取れるように、視野サイズと、(配列マンジャンミラーや視野レンズや合焦レンズの中で)最も大きな素子の直径との比は一般に100:1未満であり、60:1未満にもなり得る。例えば、レンズ直径が58mmで視野サイズが1.0mmなら両者の比は58:1となる。レンズ直径を拡げることも可能であるがそれに伴い視野サイズが拡がる。視野サイズの広い対物系を収差補正するには、図18及び図25の実施形態の如く、チューブレンズを用いて残留色収差を補正すればよい。NA値や帯域幅条件を絞れば、これと同様の収差補正をその対物系単体で実行することもできる。
【0111】
図20Aに固定倍率型実施形態を示す。本実施形態においては、瞳面2001上の瞳から到来する光が光学系2002により集光され、面2003上に像を形成する。また、図20Bに固定長ズーム系を示す。本実施形態においては、瞳面2004上の瞳から到来する光がズーム光学系2005により集光され、面2006上に像を形成する。瞳面2004から像面2006までの距離は通常は固定であるので、ズーム光学系2005の位置をずらすことで、像面2006での最終倍率を変えることができる。ズーム光学系2005は例えば複数組のレンズから構成されているので、倍率を変えるにはズーム光学系2005内におけるレンズの組同士の間隔を変えてもよいし、一旦ズーム光学系2005の倍率を設定した後なら、像面2006に対するズーム光学系2005の位置を変えて像を合焦させてもよい。ズーム範囲はレンズ系の複雑さやレンズの組数によって制限される。例えば二組のレンズを用い広帯域ズームを行う構成では±10%のズーム範囲を実現できる。
【0112】
図20Cに可変焦点拡大型実施形態を示す。本実施形態においては、瞳面2007上の瞳から到来する光が可変焦点光学系2008により集光され、面2009上に像を形成する。本実施形態では、瞳2007に対する可変焦点光学系2008の位置を変え、更に瞳面2007と像面2009との間隔を変えてリフォーカスすることにより、倍率を変えることができる。こうした可変焦点光学系の倍率範囲は約4:1を上回るものとなり得るものであるが、瞳面2007と像面2009との許容距離によって制限される。
【0113】
本発明の結像システムでは様々な形態の対物系及び像形成光学系を使用できる。例えば、その結像系自体が比較的広い帯域幅及び比較的広い開口をサポートするよう構成されているなら、所望の結像及び検査モード全てをサポートできるタイプの固定型対物系単体を、使用することができる。帯域幅を狭めるには特定スペクトル域用のフィルタを設ければよく、NA値を所望値まで減らすには内部に開口を設ければよい。
【0114】
また、図21に示すように複数個固定型対物系も使用できる。図21中、対物系2104、2105及び2106相互の位置関係は固定されており、それらのうちどの対物系を使用するかに応じて、試料2101を載せたステージはその試料2101を使用対物系に見合った位置へと動かす。また、ビームスプリッタモジュール2103には照明光2102が入射されており、また試料2101からの光は対物系によって集光されこのビームスプリッタモジュール2103を通り抜けて像形成光学系更にはセンサ2110に達する。図示の幾何学的構成では、照明光2102がビームスプリッタモジュール2103内のビームスプリッタにより反射されて何れかの対物系に入射し、一方で試料2101からの光がビームスプリッタモジュール2103内のビームスプリッタを通り抜けて送り出されているが、この関係を逆にし、照明光2102がビームスプリッタモジュール2103内のビームスプリッタを通り抜ける一方、試料2101からの光がビームスプリッタモジュール2103内のビームスプリッタにより反射されるような構成としてもよい。また、この図に示されている対物系の個数は3個であるが個数に特に限定はない。各対物系の光軸は、他の対物系の光軸からある固定された距離だけ離れているが、この対物系光軸間距離を可変調整できるようにしてもよい。同一装置内の複数個の対物系を互いに別の波長域或いは検査モード向けに最適化しておいてもよいし、対物系を検査毎に1個ずる使用することも1回の検査で同時に複数個の対物系を使用することもできる。ビームスプリッタモジュール2103は、対物系2104、2105及び2106それぞれに対応するようビームスプリッタ2107、2108及び2109を備えている。各対物系が別々の波長向けに最適化されている場合はこれらのビームスプリッタにもそれに応じた波長を反射する被覆を付すのがよかろう。例えば、照明光2102が約260〜546nmの波長を含んでおり、対物系2106が約405〜546nmの波長域内の可視スペクトルに、対物系2105が約320〜405nmの波長域内に、対物系2104が約260〜320nmの波長域内に、それぞれ最適化されているとする。その場合、ビームスプリッタ2109に対しては約405〜546nmの波長域にて分反射性を有することと約260〜405nmの波長域にて高透過率を有することとが求められ、ビームスプリッタ2108に対しては約320〜405nmの波長域にて分反射性を有することと約260〜320nmの波長域にて高い透過率を有することとが求められ、ビームスプリッタ2107に対しては約260〜320nmの波長域にて分反射性を有することが求められる。こうしたやり方に代わるやり方としては、タイミング、向き、位置関係、その任意の組合せ等に応じてビームスプリッタ(群)をスライドさせて出し入れする、というやり方もある。その場合には、ビームスプリッタを例えばその対物系の補正後の波長域にて分反射性を呈するよう最適化しておけば、対物系間でのスペクトル域を重ねてもよくなる。例えば、対物系2106を約365〜546nmに、対物系2105を約320〜405nmに、対物系2104を約260〜365nmに、というように最適化対象波長域を重複させることが許される。
【0115】
標準的な顕微鏡では、複数個の対物系を試料付近に動かして試料像を得る手段として、回転するタレットを用いることができる。図22にタレット型実施形態の一例を示す。図中、照明光2202はビームスプリッタ2203を通り抜けてミラー2204に達し、このミラー2204によって反射され、対物系2205を通り抜けて試料2201を照らす。試料2201はこの光を反射乃至散乱させ、その光は対物系2205により集光され、ミラー2204及びビームスプリッタ2203によって反射され、像形成光学系を通り抜けてセンサ2208上に像を形成する。その際、タレット2206を用いれば、各対物系を、試料2201の像が得られるような場所へと動かすことができる。なお、簡明化のためこの図においては対物系の個数を2205及び2207の2個としているが、タレットの直径次第で対物系の個数はより多数にすることもできる。試料エリア付近へと対物系を動かす手法としては、例えば、対物系をステージ上方で横方向に移送する、ゴニオメータを用いて対物系を弧状に動かす等の手法も使用できる。更には、固定型対物系とタレット上複数搭載型対物系群とを様々に組み合わせて用いることも、本発明に係る検査システムにおいては可能である。
【0116】
図23に、複数種類の結像モードをサポートするシステムの構造を示す。この図に示されているシステムは、レーザ型照明サブシステム2301とランプ型照明サブシステム2302とを併用している。レーザ型照明サブシステム2301は回転型拡散器及びライトパイプを用いる構成であり、そのレーザ発振モードは狭帯域連続発振モード、動作波長は例えば266nm又は355nmである。ランプ型照明サブシステム2302はカタジオプトリック型集光器及びライトパイプを用いる構成であり、そのランプはHgXeランプ、そのカタジオプトリック型集光器は概略約260〜700nmの波長域向けに最適化されている。摺動型ミラーアセンブリ2303はこれら二種類の照明サブシステムの中から使用する照明サブシステムを選択するアセンブリであり、選択した照明サブシステムからの照明光を摺動型ビームスプリッタアセンブリ2304方向に送り出す。摺動型ビームスプリッタアセンブリ2304には複数個のビームスプリッタが搭載されており、使用したい波長及び使用したい結像モードにそれらビームスプリッタを使用する。照明光エネルギは、タレット上にあり対物系アセンブリ2305を構成する複数個の対物系から選んだ1個の対物系に入射され、その対物系を介して試料2306上の注目領域を照明する。また、通常はこのタレット上に少なくとも3個の対物系を設け、そのうち少なくとも1個を例えば視野サイズが約0.4mm、レンズ直径が約25mm未満、補正波長域が約260〜320nmの小型カタジオプトリック型対物系とし、残りの対物系を、標準的な屈折型対物系を例えば約365nmから可視域に亘る波長域に最適化したものとしておくのがよかろう。対物系のうち1個をそのNA値が0.2未満の低倍率対物系とし、主として試料乃至標本2306の配列作業に使用するようにすることも可能である。自動合焦システム2308は試料乃至標本2306の焦点位置を計測する。
【0117】
標本2306によって反射された光エネルギは何れかの対物系によって集められ、集められた光エネルギは摺動型ビームスプリッタアセンブリ2304及びダイクロイックミラー2307を通り抜け、更にタレット2309に組み込まれているチューブレンズを通り抜ける。タレット2309には、系の倍率を変えられるよう少なくとも4個のチューブレンズを組み込んでおくのが望ましく、また各チューブレンズを別々の波長域及び対物系に最適化しておいてもよい。チューブレンズを通り抜けた光は位置2310に瞳像を形成する。環状暗視野モードでの動作をサポートするには、例えば、この位置2310に少なくとも一組の開口を設ける。瞳像を形成した光エネルギはミラー乃至反射素子2311によって反射され、例えば少なくとも約5%のズームレンジを有するズームレンズ系2312を通り抜け、センサ2313上に像を形成する。センサ2313は、例えばTDI(Time Delay and Integration)モードで動作するシリコン製の背面薄化(back thinned)センサとするが、他種センサも使用できる。
【0118】
ダイクロイックミラー2307は、約260〜600nmの波長域に属する結像波長を通過させる一方、自動合焦システム2308から到来、入射する波長600nm超の自動合焦波長の光を反射させる。ダイクロイックミラー2307により反射された自動合焦光は、ビームスプリッタアセンブリ2304やタレット上の1個の対物系2305を通り抜け、試料乃至標本2306を照らす。自動合焦光はこの試料乃至標本2306によって反射され、戻ってタレット上の対物系を通り抜けてビームスプリッタアセンブリ2304に達し、ダイクロイックミラー2307により反射されて自動合焦システム2308に戻り、自動合焦システム2308ではこれに基づき試料2306の焦点位置を計測する。
【0119】
このカタジオプトリック型結像システムで実現できる照明角及び集光角の範囲は広いため、複数種類の結像モードをサポートすることができる。先の段落で述べた事項から明らかなように、複数種類の結像モードを実行するのに使用する光学系乃至照明装置関連機器は、一種類でよい。本実施形態では、照明及び集光用のNA値が高いため同一の光学系により複数種類の結像モードを実施でき、複数種類の結像モードを実施できるため欠陥乃至試料の種類に適した結像動作を実行できる。また、この小型カタジオプトリック型光学系は、UV顕微鏡用対物系としての利用、ウェハ検査装置における表面散乱UV集光用の集光器としての利用、UVフォトリソグラフィシステム向けのマスク投射用光学系としての利用等、各種のUV結像用途に利用できる。
【0120】
この小型カタジオプトリック型光学装置は、明視野及び暗視野からの画像取得及びそれによる検査をサポートするよう構成でき、そのように構成することによてその用途を広げることができる。当業者であれば、この装置を変形し、可視域、DUV域更にはVUV域に属する波長向けに、最適化することができるであろう。長波長向けに最適化する場合は、ガラスによる散乱が少なくなるため帯域幅を広くすることができる。例えば、二種類のガラス素材を用い中心波長を300nmとした実施形態では、140nmを上回る広い帯域幅を実現できる。本発明では、これより短波長の光エネルギも使用でき、また複数通りの波長を用いることも可能である。半導体検査向けに本発明を実施する場合、明視野、レーザ方向性暗視野及び環状暗視野の各モードに加え、明視野及び暗視野を同時に検査する方式もサポートできる。本発明における光学系実施形態は、リソグラフィ乃至リソグラフィシミュレーション用のレンズとしても、試料クリアランス上長めの動作距離が必要な微小機械開発や蛍光計測や生物学研究用のツールとしても、適している。本光学系は、このように極めて広範且つ様々な光波長及びスペクトル帯域幅向けに利用できるものであり、蛍光計測にも好適に利用できる。
【0121】
自動合焦
検査時にはその対象例えば半導体デバイスが高速で動く。そのため、本検査システムでは、わずかな焦点位置変化でも補正できるよう、自動合焦システムを用いて高忠実度結像状態を維持している。
【0122】
本検査システムで使用する自動合焦サブシステムは、位置決めサブシステムと連携し、照明サブシステムから送られてくる光エネルギを自動合焦させる。本検査システムを半導体検査に適用するに当たり、この自動合焦サブシステムは様々な形態にて実現できる。また、そうした自動合焦サブシステムによって、焦点位置の変化を検出し、焦点位置を試料上に合わせ、そしてフィードバックを実行して焦点位置を所望位置に保持することができる。
【0123】
本検査システムにおける焦点位置変化検出には様々な方法を使用できる。その一つは、KLA Instrumentsが譲受した特許に係る特許文献2に記載されている方法、即ち自動合焦システムを用いて二通りのマスクを比較する方法であり、この方法は主として半導体ウェハの検査に利用される。集積回路形成途中のウェハ上における最良焦点位置を計測することは、そのウェハ上にある多数の層が往々にして複雑な形状乃至配置を有しており各部各部で反射率が異なるためやっかいなことである。それは、焦点位置の実変化を回路パターンによる変化から分離して検出するのが難しいためである。特許文献2記載の方法では、反射信号強度を荷重としてウェハ上の各面高さを平均し、その結果を最良焦点位置と見なしている。こうして最良焦点位置を求める特許文献2記載の方法を用いれば、集積回路形成途中のウェハにおける焦点位置を計測し、通常は所望焦点位置と同じくウェハの最上層にある自動合焦システム焦点位置を、当該所望焦点位置に合わせることができる。本発明にこの方法を適用すれば、素材がより強く光エネルギを吸収する短波長領域における焦点位置の設定及び補正を、より容易にすることができる。
【0124】
本発明で採用できるまた別の自動合焦方法としては、コードラント(四分)検知器上への非点収差合焦がある。この方法を用いる場合、本検査システムは、照明用光源からの光を例えば結像サブシステムの光学系を介し試料表面上に合焦させ、試料表面からの反射光を例えば同結像サブシステム光学系を介しまた非点収差レンズによりコードラント検知器上に集光させ、更に試料を動かして焦点位置を変化させ、焦点位置を変化させたことによりコードラント検知器上での焦点形状変化を当該コードラント検知器を用いて検知する。このような非点収差合焦手法は、通常、トポロジ的な変化が少ない試料を対象とする場合に効果的に機能する。
【0125】
焦点位置変化検出に際しては、自動合焦用信号を結像サブシステム内で像から分離する方法が重要である。その際には、波長の違いや視野におく部位の違いを利用できる。まず、使用波長が自動合焦サブシステムと結像サブシステムとで異なる場合、ビームスプリッタや格子等のダイクロイックデバイスを用いれば、信号同士を分離することができる。また、試料上における使用位置が自動合焦サブシステムと結像サブシステムとでわずかに異なる場合、本検査システムでは、最終結像面又は結像サブシステム内の内部視野面にて信号同士を分離することができる。この場合、照明サブシステムと自動合焦サブシステムとで同一の照明光源を共用できる。
【0126】
半導体デバイス等の標本上への合焦に際しては、自動合焦の実行とは別に、その半導体デバイス又は対物系を動かして合焦状態を保つようにするとよい。本発明を大型高精度光学系として実施する場合、対物系を動かして合焦させるやり方がうまくいかない場合があるが、そうした場合は、検査システムを構成する結像サブシステム内に焦点位置変化補償用の光学素子を何個か設けるとよい。合焦動作が結像サブシステムの倍率やテレセントリック性に対して大きく影響しないようにすれば、好適な性能が得られる。
【0127】
本検査システムでは、自動合焦実行に当たりフィードバック制御を利用して、適切な合焦状態を維持することができる。このフィードバック制御の目的は、自動合焦に使用される各種機械部品及び電子部品による共振・共鳴に対処し、オーバシュートやリンギングを抑えることにある。こうしたフィードバック制御は、半導体検査用自動合焦システムに限られず、コンパクトディスクプレーヤ等、各種の高精度光学装置にて使用され得る。PID(Proportional Integral Derivative)ループコントローラ等でどのようなフィードバックループパラメタを使用すればよいかについては、その自動合焦システムの構成に応じて当業者が設計的に決定することができる。
【0128】
センサ
本検査システムに使用できるセンサの種類は、本検査システムの他の構成部材としてどのようなものを使用するかに大きな影響を与える事項であり、また用途によって変わるものである。センサの種類としては、例えば、単一点型ダイオード型検知器や、CCD、TDIモード動作CCD等の面型検知器がある。センサに対しては、量子効率が高いこと、雑音が少ないこと、良好なMTF(Modulation Transfer Function)を有していること等が望まれる。こうした条件を満たすのは背面薄化型のCCDセンサであるが、オープンシリコンエリア付フロントサイドデバイス、ルモゲン被覆付フロントサイドセンサ、フォトダイアモンドセンサ、シリコンカーバイドセンサ等、それ以外の種類のセンサも使用可能である(なお「ルモゲン(lumogen)」は登録商標)。フォトダイアモンド型及びシリコンカーバイド型のセンサは傾向として可視光波長での感度が非常に低いため、可視光波長を使用する検査システムを良好に動作させるには、別の種類のセンサを用いた方がよいであろう。
【0129】
本検査システムでは、フレーム転送(frame transfer)モードセンサ、TDIモードセンサ等、各種のモードで動作するセンサを使用できる。まず、標本上のエリア1箇所当たり1個のレーザパルスを用いて標本上を照明するよう本検査システムを構成してある場合は、フレーム転送モードで動作するセンサを使用できる。本検査システムでこのモードを使用すると、レーザパルス1個がセンサのフレーム1個に相当しているため検知器の全検知野から一挙に読み取ることができ、データレート及び合計スループットが高くなる。また、標本上のエリア1箇所当たり複数個のレーザパルスを用いて標本を露出するよう本検査システムを構成してある場合、TDIモードセンサを使用できる。より特殊な検査モード、例えば共焦点検査モードや暗視野検査モードにおいては、単一点型検知器又はそのアレイも使用できる。
【0130】
本発明に係る小型カタジオプトリック型光学系を用いれば、高速試料検査を高解像度で実行することができる。即ち、本検査システムでは、画素サイズを例えば50nmとし、毎秒1.1ギガ画素のデータレートで1時間当たり10cm×10cmのエリアを走査することによって、検査速度向上による試料1個当たり検査コストを抑えることができる。また、これを実現するには、そうした高いデータレートを使用しても雑音レベルが極低レベルに留まるようなセンサを、用いるのが望ましい。例えば、ノイズ発生個数が信号256カウント当たり1カウント未満に留まるものや、場合によってはノイズ発生個数を信号1024カウント当たり1カウント未満に留まるものを、要求性能に応じて使用するのがよい。雑音発生をそうした低水準に抑えるには、センサレイアウト、増幅器、外装、読取用電子回路等に関し、構成部材の選択や位置の決定を仔細に行うことが必要になろうが、それは設計的事項であり一般に当業者のなし得る範囲内のことである。また、こうした構成部材それぞれの電気的構成を工夫することにより、クロストーク、フィードスルー等の現象を抑えまた好適に対接地絶縁分離することができる。
【0131】
センササブシステムを構成する部材は、その量子効率が高く、寿命が長く、高いCTF(Contrast Transfer Function)値を有するものとする。まず、量子効率が高ければ、一般に、センサ全体を露出するため照明サブシステムから供給すべき光量を少なくすることができる。量子効率が高ければ、試料表面に照射する光エネルギの量を抑えることもできるため、例えばエキシマレーザパルスからのピークパワーが高すぎて試料が損傷する潜在的危険性が減る。また、寿命が長ければ、時間経過に伴うセンサ性能変化、例えばDUV露出に典型的な暗電流増加や量子効率低下が生じにくく、従ってシステムを校正する必要性が軽減される。
【0132】
高いCTF値を有する部材によってセンササブシステムを構成すれば、像を好適な解像度で検知することができる。仮に、結像サブシステムにより形成される像が非常に高解像度の像であったとしても、センサのCTF値が低ければ、本検査システムではその高解像度像を検知できないこととなろう。一般に、本検査システムにて許容できる最低のCTFは約0.4であるが、望ましい結果を得るにはCTF値を0.6以上とすべきである。
【0133】
本検査システムで使用可能なセンサの例としては、KLA−Tencor Corporationに譲受された特許に係り「光学的基板検査方法及び装置」(Method and Apparatus for Optical Inspection of Substrates)と題する特許文献3に記載されているものがある(この参照を以てその全体を本願に繰り入れることとする)。
【0134】
本検査システムでは、背面照射型のセンサも前面照射型のセンサも使用できる。使用できる前面照射型センサとしては、仮想位相型(virtual phase)センサ、固体センサ、UV感受性オープンエリア付センサ、蛍光被覆付センサ等がある。本検査システムは、例えばポイント型、ライン型、2D型、多端子読出型、リニア型、フォトダイオードアレイ型、CCD型、倍速読取用スプリット読取型等とすることができる。本検査システムでは、ダイアモンド型センサ、アンチブルーミング能力のあるセンサ等も使用できる。本検査システムでは、千鳥配置型(staggered)センサや、単一外装内に複数個のセンサを組み込んだセンサも、使用できる。センサ電子回路にて露出補正を行うようにしてもよい。
【0135】
本検査システムでは、更に、エキシマレーザ波長にて高い量子効率を呈するセンサも使用できる。背面薄化型シリコンセンサを用いれば、好適な性能を得ることができる。また、高解像度センサを用いて高解像度画像取得をサポートすること、高速検知センサを用いて高速検査をサポートすること、低雑音広ダイナミックレンジセンサを用いて本願記載の各種欠陥検知モードをサポートすること等も可能である。
【0136】
データ取得
本検査システムを構成するデータ取得サブシステムは、フレームモードやTDIモードで動作させることができる。まず、フレームモードで動作させるときは、位置決めステージが走査運動する間に各レーザパルスでフレーム1個ずつを露出する。このモードにおいては、露出用のパルスを短時間パルスとし、またセンサ全体に亘りMTFが良好なセンサ(例えばTDI型センサ)を用いることによって、位置決めステージの振動の影響を抑えることができる。他方、TDIモードでは、露出の効果がエキシマレーザパルス複数個分累積することとなるためスペックルパターンが平滑され、従ってピークパワーを抑えることができる。このデータ取得サブシステムでは、単一の大面積センサを用い前述のやり方でセンシングを行うこともできる。センサによって結像視野をくまなくカバーするようにすれば、結像面利用効率が高まり、従ってピークパワーを抑えることができる。
【0137】
また、同じセンサ面積が得られるなら、通常は、大型のセンサを1個用いるよりも小型のセンサを複数用いる方が安価である。本検査システムでは、複数個のセンサを用いセンサ関連のコストを全体として抑えることもできる。複数個のセンサを用いる場合、それらのセンサは、同一電子回路基板上に実装する、互いに密着させて実質的に大面積センサとする等、互いに近接して配置してもよいし、読取用電子回路全てを各センサの近くに配置して収容すること等を狙って、互いに空間的に離して配置してもよい。また、スクレイピングミラー、ビームスプリッタ、プリズム、格子、回折光学系等を用い、結像サブシステムの視野を複数個の部分に分割しておき、各部分からの光をそれぞれ1個のセンサに送る構成とすることもできる。理想的にはこの分割を視野面にて行う。そうすれば、像の忠実度に対する影響が小さくなる。また、複数個のセンサを合焦光路上の相異なる位置に配置し、合焦光に係るデータと非合焦光に係るデータとを同時収集してもよい。更に、各センサを互いに別々の結像モード向けに使用し、データ例えば欠陥についてのデータ等を複数通りの結像モードで同時収集してもよい。例えば、明視野データと暗視野データとを同時収集することにより、種類の異なる欠陥を同時に判別、検知することが可能になる。データ取得は、ステージが加減速するタイミングで実行すればよい。本検査システムにおけるステージの動きと他の部分の動作とを同期させれば、データ取得をより好適に行うことができ性能が高まる。
【0138】
データ分析
データ分析サブシステムは、主として比較による手法を用いて、標本上の不正箇所、歩留低下性欠陥等(の位置)を識別する。ウェハ検査を例としていうと、使用できる比較手法の一つはダイ間比較である。これは、例えば、本データ分析システムによる第1ダイと第2ダイとの比較により場所Aに相違が発見され、更に第2ダイと第3ダイとの比較によっても場所Aに相違が発見された場合、第2ダイの場所Aに欠陥があると認定する、という手法である。
【0139】
本データ分析システムにて使用できる比較手法としては更に同一ダイ内でのセル間比較がある。セル間比較は同一ダイ内に同様のサブエリア(例えばメモリエリアや論理素子エリア)が複数個ある部材を対象とする場合に使用可能な手法であり、注目検査エリア内に多数回繰り返し現れるパターン乃至形状をセルとする。本検査システムの結像サブシステムの倍率が可調であれば、セル毎の調整を通じ、概ね各セルに対応するセンサ画素の個数が何れのセルでも概ね均等にすることができる。
【0140】
本データ分析システムにて使用できる第3の比較手法はダイ対データベース比較である。検査によって得られるデータと比較できるようにするには、そのデータベースを、結像サブシステム及びセンササブシステムの性能並びにそれらのシステムがデータベースに及ぼす影響を考慮に入れて、構築しなければならない。本データ分析システムは、本検査システムが収集したデータを、こうして構築されたデータベースと比較する。
【0141】
データの取得は連続スワス方式で行われる。その際、各スワスを直前及び直後のスワスとわずかに重ね合わせることで、データ損失をなくすことができる。また、この重複領域を利用してフレームを正確に整列させることができる。
【0142】
比較するデータ同士を互いにうまく整列させるには、画素の個数を表す整数値を比較対象データに含めるとよい。また、比較を簡単化するには、各データ乃至フレームの開始位置を既知の位置にするとよい。例えばダイ間比較を行う場合、各ダイについての開始位置をフレーム内の同じ場所にすることにより、計算がより単純になる。本データ分析システムでは、こうしたデータの整列を、第1ダイの開始位置と第2ダイの開始位置とがフレーム内の同じ場所になるよう、データ取得サブシステム動作タイミング及びフレーム重複量を所望の如く調整することにより、実現する。
【0143】
本検査システムにより得られるデータ即ち欠陥についてのデータは、他種システムに供給することができる。それによって、例えば電子ビームリビュー、マクロリビュー、合焦イオンビーム破壊分析等、そのデータについて更なる分析を施すことができる。また、本検査システムから生産高管理ソフトウェアへと半導体ウェハデータを提供し、工場規模での生産高の向上に役立てることもできる。
【0144】
本検査システムは様々な環境にて使用できる。例えば、リソグラフィ、顕微鏡、生物学的検査、医学的分析等の環境である。
【0145】
本発明及び各図示実施形態についての本願中での記載は、本発明の要旨を限定する趣旨のものではなく、むしろ、本発明の思想に従い本発明の利益(小型化、高NA化、使用可能波長多様化、使用可能照明モード多様化等)を享受できる限りにおいて、記載や図示のない代替的構成要素をも包含する趣旨のものである。即ち、本発明についてその特定の実施形態に基づき説明を行ったが、そうした実施形態に更なる改良乃至変形を施して本発明を実施できることについても、理解されたい。本願で意図していることは、一般に本発明の原理に従う限り本発明についてのあらゆる変形、用途乃至改変をカバーすることであり、本願記載の構成から離れるものであっても、本発明が属する技術分野で既知のやり方或いは慣用的なやり方によって得られるものであれば、本願によりカバーされる。
【0146】
以上、本発明についてその特定の実施形態に基づき説明を行ったが、これには更に改変等を施せることを理解されたい。本願で意図していることは、一般に本発明の原理に従う限り本発明についてのあらゆる変形、用途乃至改変をカバーすることであり、本願記載の実施形態から離れるものであっても、本発明が属する技術分野で既知のやり方或いは慣用的なやり方によって得られるものであれば、本願によりカバーされる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約320nm未満の波長域にて照明光エネルギを発するアークランプを有する照明システムと、
照明光エネルギを受け取り標本に向かわせるよう構成及び方向設定されており複数個のレンズを有する結像サブシステムと、
を備え、
結像サブシステムが、約100mm未満の直径を有し、すべてが単一の軸に沿って配置された複数個の素子を有し、
結像サブシステムが、約320nm未満の波長域を有する照明システムから受け取る光エネルギに対して、NA値が約0.90において約0.4mmを超える視野サイズを提供するように構成された、標本検査システム。
【請求項2】
上記複数個の素子が配列マンジャンミラーを含む請求項1記載のシステム。
【請求項3】
上記複数個の素子が標本からの反射光エネルギを集めるカタジオプトリック型集光器を含む請求項1記載のシステム。
【請求項4】
結像サブシステム及び照明サブシステムが、明視野、環状暗視野、方向性暗視野、全天、空中結像、共焦点及び蛍光の各検査モードのうち少なくとも1個をサポートする請求項1記載のシステム。
【請求項5】
結像サブシステムが可変焦点系を使用しその倍率レンジ全体をカバーする請求項1記載のシステム。
【請求項6】
各個別結像レンズが倍率の一部を分担する請求項1記載のシステム。
【請求項7】
標本からの反射光エネルギを表すデータを分析し標本上の各欠陥位置を随時記録するデータ分析サブシステムを備える請求項1記載のシステム。
【請求項8】
カタジオプトリック型集光器が約266〜600nmの波長域内の波長をサポートする請求項3記載のシステム。
【請求項1】
約320nm未満の波長域にて照明光エネルギを発するアークランプを有する照明システムと、
照明光エネルギを受け取り標本に向かわせるよう構成及び方向設定されており複数個のレンズを有する結像サブシステムと、
を備え、
結像サブシステムが、約100mm未満の直径を有し、すべてが単一の軸に沿って配置された複数個の素子を有し、
結像サブシステムが、約320nm未満の波長域を有する照明システムから受け取る光エネルギに対して、NA値が約0.90において約0.4mmを超える視野サイズを提供するように構成された、標本検査システム。
【請求項2】
上記複数個の素子が配列マンジャンミラーを含む請求項1記載のシステム。
【請求項3】
上記複数個の素子が標本からの反射光エネルギを集めるカタジオプトリック型集光器を含む請求項1記載のシステム。
【請求項4】
結像サブシステム及び照明サブシステムが、明視野、環状暗視野、方向性暗視野、全天、空中結像、共焦点及び蛍光の各検査モードのうち少なくとも1個をサポートする請求項1記載のシステム。
【請求項5】
結像サブシステムが可変焦点系を使用しその倍率レンジ全体をカバーする請求項1記載のシステム。
【請求項6】
各個別結像レンズが倍率の一部を分担する請求項1記載のシステム。
【請求項7】
標本からの反射光エネルギを表すデータを分析し標本上の各欠陥位置を随時記録するデータ分析サブシステムを備える請求項1記載のシステム。
【請求項8】
カタジオプトリック型集光器が約266〜600nmの波長域内の波長をサポートする請求項3記載のシステム。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図10E】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図13D】
【図13E】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20A】
【図20B】
【図20C】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図10E】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図13D】
【図13E】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20A】
【図20B】
【図20C】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【公開番号】特開2012−128453(P2012−128453A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−61956(P2012−61956)
【出願日】平成24年3月19日(2012.3.19)
【分割の表示】特願2006−518859(P2006−518859)の分割
【原出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【出願人】(500049141)ケーエルエー−テンカー コーポレイション (126)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年3月19日(2012.3.19)
【分割の表示】特願2006−518859(P2006−518859)の分割
【原出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【出願人】(500049141)ケーエルエー−テンカー コーポレイション (126)
【Fターム(参考)】
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