説明

小型スライド装置

【課題】 長さ方向における一層の小型化を実現したスライド装置を提供する。
【解決手段】 レール22と、このレール22上を移動するスライドテーブル23と、このスライドテーブル23に連結するとともに上記レール22と平行に位置するスクリューシャフト26と、このスクリューシャフト26を回転させるモーターMと、このモーターMの回転軸32と上記スクリューシャフト26とを連結するカップリング部材31と、上記スクリューシャフト26を支持するベアリング29とを備え、モーターMを駆動してスクリューシャフト26を回転させ、このスクリューシャフト26の回転によってスライドテーブル23をレール22の軸方向に移動する小型スライド装置において、上記スクリューシャフト26には挟持部27aを設けるとともに、この挟持部27aと上記カップリング部材31との間に、上記ベアリング29を挟持させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、モーターを回転させることによってスクリューシャフトを回転させ、その回転力でスライドテーブルを直進方向に移動する小型のスライド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図3、図4を用いて、従来のスライド装置について説明する。
図3に示すように、基台1にはレール2を敷設するとともに、このレール2に沿ってスライドテーブル3を移動するようにしている。つまり、上記スライドテーブル3の両側には、断面形状をコ字状にしたガイド部材4を設け、これらガイド部材4を上記レール2に摺動自在に跨がせて、上記のようにスライドテーブル3をレール2に沿って移動させるようにしている。
また、上記スライドテーブル3には、レール2の軸方向に貫通する孔を形成するとともに、この孔内にボールナット5をねじで固定し、当該ボールナット5にスクリューシャフト6のねじ部6aを螺合させている。したがって、スクリューシャフト6を回転させたとき、この回転力によってボールナット5およびスライドテーブル3が一体となって、レール2に沿って移動することとなる。
【0003】
なお、上記スクリューシャフト6は、ねじ溝を形成した上記ねじ部6aと、上記ねじ部6aよりも径を大きくした丸棒からなる支持部6bとからなり、しかも、これらねじ部6aと支持部6bとの間にフランジ6cを設けている。
そして、基台1には、上記支持部6bが貫通できる孔を形成したケーシング7を固定するとともに、このケーシング7内にアンギュラベアリング8を組み込んでいる。また、上記ケーシング7の開口にはふた部材9を固定して、ケーシング7からアンギュラベアリング8が抜け出さないようにしている。
【0004】
上記アンギュラベアリング8は、その内輪8aに、上記スクリューシャフト6の支持部6bを貫通させるとともに、内輪8aの一端側に上記フランジ6cを当接させる。一方、内輪8aの他端側にはカラー10を当接させるとともに、このカラー10と上記フランジ6cとの間で、アンギュラベアリング8の内輪8aが圧接するように、上記支持部6bに形成したねじ溝にベアリングナット11をねじ固定する。このように、フランジ6cとカラー10との間に内輪8aを挟持することで、スクリューシャフト6が軸方向にがたつくのを規制している。
【0005】
そして、上記支持部6bであって、ねじ部6aに連結した側とは反対端には、上記支持部6bよりも小径にした連結部6dを設け、この連結部6dの先端に、モーターMの回転軸12を臨ませている。そして、この回転軸12とスクリューシャフト6の連結部6dとを、カップリング部材13によって連結している。したがって、モーターMを駆動して回転軸12が回転すれば、この回転軸12と一体となってスクリューシャフト6が回転し、このスクリューシャフト6の回転によって、スライドテーブル3がレール2に沿って移動することとなる。
【0006】
なお、スライドテーブル3が移動すると、スクリューシャフト6に対して反力が作用して、スライドテーブル3の移動方向とは反対方向にスクリューシャフト6が軸方向に移動しようとする。また、スクリューシャフト6に対して何らかの外力が作用して、上記と同様にスクリューシャフト6が軸方向に移動することもある。このようなことが原因となって、スクリューシャフト6が軸方向に移動してしまうと、スライドテーブル3の移動位置に狂いが生じてしまう。
例えば、上記のスライド装置を、半導体素子の製造工程で位置決め装置として用いる場合には、半導体を載置したスライドテーブル3を種々の位置に移動させるとともに、これら各位置において所定の処理を半導体に施す。このとき、スライドテーブル3の移動位置には精密さが要求されることになるが、特に半導体等のワークが小型の場合には、要求される精密さもミクロン単位の極めて厳密なものとなる。したがって、特に小型のスライド装置においては、スクリューシャフト6が軸方向へ移動しないように、ベアリングナット11によって、フランジ6cとカラー10とを、それら両者の間に遊びが生じないようにして、軸方向に固定している。
【特許文献1】特許第3927285号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したように、半導体のような小型のワークを搬送する場合には、スライド装置自身にも小型化が要求される。例えば、半導体素子の製造工程で用いられるスライド装置は、スライドテーブル3の移動範囲が20mm〜50mm程度と狭いため、スクリューシャフト6の長さは短くてよい。また、耐荷重性もあまり必要とならないことから、スライドテーブル3や基台1を小型化することも可能であり、これらスライドテーブル3や基台1の幅も10mm〜20mm程度にまで小型化したものがある。
しかし、従来のスライド装置においては、スクリューシャフト6の軸方向の移動を規制するために、カラー10やベアリングナット11を取り付けるスペースが必要となり、また、回転軸12とスクリューシャフト6(連結部6d)とを連結するカップリング部材13を取り付けるスペースも必要となる。このように、カラー10やベアリングナット11、あるいはカップリング部材13を、スクリューシャフト6の軸方向に設けなければならないため、どうしてもスクリューシャフト6が長くなってしまい、装置の全長が長くなってしまう。
つまり、従来のスライド装置においては、スライドテーブル3の移動範囲が僅かであるにも関わらず、その長さ方向の小型化に制約を受けざるを得ないという問題があった。
【0008】
この発明の目的は、長さ方向における一層の小型化を実現したスライド装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、レールと、このレール上を移動するスライドテーブルと、このスライドテーブルに連結するとともに上記レールと平行に位置するスクリューシャフトと、このスクリューシャフトを回転させるモーターと、このモーターの回転軸と上記スクリューシャフトとを連結するカップリング部材と、上記スクリューシャフトを支持するベアリングとを備え、上記モーターを駆動してスクリューシャフトを回転させ、このスクリューシャフトの回転によってスライドテーブルをレールの軸方向に移動する小型スライド装置を前提とする。
【0010】
上記のスライド装置を前提として、第1の発明は、上記スクリューシャフトには挟持部を設けるとともに、この挟持部と上記カップリング部材との間に、上記ベアリングを挟持する点に特徴を有する。
第2の発明は、上記第1の発明を前提として、上記スクリューシャフトの先端には、フランジを形成したキャップ部材を固定するとともに、このフランジによって上記挟持部を構成した点に特徴を有する。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明によれば、スクリューシャフトに設けた挟持部とカップリング部材との間に、ベアリングを挟持させたので、カラーやベアリングナットといったスクリューシャフトの軸方向への移動を規制するための専用部品や、ベアリングナット用のねじ溝が不要となる。したがって、その分スクリューシャフトの軸方向のスペースを削減することができ、装置全体を小型化することができる。
また、上記のように専用部品が不要となるので、部品点数を削減してコストを低減することができる。
【0012】
第2の発明によれば、スクリューシャフトに挟持部を形成するよりも、加工コストを低減することができる。また、キャップ部材によって挟持部を構成したので、スクリューシャフトの先端に加工を施す必要がなくなる。したがって、装置のサイズに応じて、スクリューシャフトを切断して用いることが可能となり、スクリューシャフトの共通利用による在庫点数削減を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1、図2を用いて、この発明の実施形態に係るスライド装置について説明する。
図1に示すように、基台21にはレール22を敷設するとともに、このレール22に沿ってスライドテーブル23を移動するようにしている。つまり、上記スライドテーブル23の両側には、断面形状をコ字状にしたガイド部材24を設け、これらガイド部材24を上記レール22に摺動自在に跨がせて、上記のようにスライドテーブル23をレール22に沿って移動させるようにしている。
また、上記スライドテーブル23には、レール22の軸方向に貫通する孔を形成するとともに、この孔内にボールナット25をねじで固定し、当該ボールナット25にスクリューシャフト26のねじ溝を螺合させている。したがって、スクリューシャフト26を回転させたとき、この回転力によってボールナット25およびスライドテーブル23が一体となって、レール22に沿って移動することとなる。
【0014】
なお、図2に示すように、上記スクリューシャフト26の一端には、キャップ部材27を圧入固定している。このキャップ部材27は、長手方向の一端にフランジ27aを形成するとともに、このフランジ27aを形成した一端側から他端側に貫通孔27bを貫通させている。この貫通孔27bは、その内径を上記スクリューシャフト26の直径とほぼ等しくしており、当該スクリューシャフト26にキャップ部材27が圧入固定される寸法関係を維持している。したがって、スクリューシャフト26とキャップ部材27とは一体回転することとなる。ただし、スクリューシャフト26を圧入する孔は貫通孔ではなく、めくら孔であってもよい。
【0015】
そして、基台21には、上記キャップ部材27が貫通する孔が形成されたケーシング28を固定するとともに、このケーシング28内に、この発明のベアリングを構成するアンギュラベアリング29を組み込んでいる。また、上記ケーシング28の開口には、ふた部材30を固定して、ケーシング28からアンギュラベアリング29が抜け出さないようにしている。
【0016】
上記アンギュラベアリング29は、その内輪29aを、上記キャップ部材27で支持するとともに、内輪29aの一端側に上記フランジ27aを当接させる。一方、内輪29aの他端側にはカップリング部材31の端部を当接させるとともに、このカップリング部材31と上記フランジ27aとの間に、アンギュラベアリング29の内輪29aを圧接させた状態で、当該カップリング部材31をキャップ部材27に固定する。
具体的には、上記カップリング部材31は、その軸方向に貫通する孔31aを形成するとともに、この孔31aに連通するネジ孔31b,31cを、径方向に形成している。
【0017】
そして、上記アンギュラベアリング29の内輪29aを支持するキャップ部材27の先端を、カップリング部材31の孔31aに進入させる。このとき、カップリング部材31の一端を上記内輪29aに圧接させた状態で、ネジ孔31bに六角穴付き止めネジN1を螺合させる。そして、上記六角穴付き止めネジN1の先端によって、キャップ部材27を押圧することで、カップリング部材31とキャップ部材27とを固定する。
このように、フランジ27aとカップリング部材31との間に内輪29aを挟持することで、キャップ部材27およびこのキャップ部材27を固定したスクリューシャフト26が軸方向にがたつくのを規制している。
【0018】
そして、上記キャップ部材27の先端には、モーターMの回転軸32を臨ませるとともに、この回転軸32を、上記カップリング部材31の孔31aに進入させた状態で、上記と同様の方法により、六角穴付き止めネジN2によって、カップリング部材31と回転軸32とを固定している。つまり、モーターMの回転軸32と、キャップ部材27(スクリューシャフト26)とが、カップリング部材31を介して連結することとなる。したがって、モーターMを駆動して回転軸32が回転すれば、この回転軸32と一体となってスクリューシャフト26が回転し、このスクリューシャフト26の回転によって、スライドテーブル23がレール22に沿って移動することとなる。
【0019】
上記のスライド装置によれば、キャップ部材27に設けたフランジ27aとカップリング部材31との間に、アンギュラベアリング29を挟持させたので、従来のようにカラーやベアリングナットといったスクリューシャフト26の軸方向への移動を規制するための専用部品や、これら部品を固定するためのねじ溝等が不要となる。つまり、本来スクリューシャフト26(キャップ部材27)とモーターMの回転軸32とを連結するための部材であるカップリング部材31に、スクリューシャフト26のがたつき防止機能を併有させたので、従来、カラーやベアリングナットを設けていたスペースを削減することができ、装置全体を小型化することができる。
【0020】
なお、上記実施形態においては、スクリューシャフト26の先端にキャップ部材27を固定するとともに、このキャップ部材27において、アンギュラベアリング29がスクリューシャフト26を固定、支持するようにしているが、キャップ部材27は必須の構成要件ではない。例えば、スクリューシャフト26とキャップ部材27とを一体的に形成するとともに、スクリューシャフト26のモーターM側先端近傍に、ねじ溝を形成しない部分を設け、この部分でアンギュラベアリング29を支持しても構わない。
ただし、キャップ部材27は、焼入れ硬化の必要がないため、上記のようにスクリューシャフト26とキャップ部材27とを別体成形すれば、スクリューシャフト26に挟持部を形成するよりも、加工コストを低減することができる。また、別体成形したキャップ部材27を、スクリューシャフト26のモーターM側先端に固定すれば、当該スクリューシャフト26の先端に加工を施す必要がなくなる。そのため、ストローク長さに応じてスクリューシャフト26を切断し、当該スクリューシャフト26の長さを適宜変更して利用することができる。したがって、スクリューシャフト26の共通利用が可能となり、在庫点数を削減することができる。
さらには、キャップ部材27はスクリューシャフト26よりも硬くないため、六角穴付き止めネジN1の先端がキャップ部材27に食い込みやすく、六角穴付き止めネジN1の緩み防止効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この実施形態に係るスライド装置の概念図である。
【図2】この実施形態に係るスライド装置の部分拡大図である。
【図3】従来のスライド装置を示す概念図である。
【図4】従来のスライド装置の部分拡大図である。
【符号の説明】
【0022】
22 レール
23 スライドテーブル
26 スクリューシャフト
27 キャップ部材
27a この発明の挟持部を構成するフランジ
29 この発明のベアリングであるアンギュラベアリング
31 カップリング部材
32 モーター回転軸
M モーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールと、このレール上を移動するスライドテーブルと、このスライドテーブルに連結するとともに上記レールと平行に位置するスクリューシャフトと、このスクリューシャフトを回転させるモーターと、このモーターの回転軸と上記スクリューシャフトとを連結するカップリング部材と、上記スクリューシャフトを支持するベアリングとを備え、上記モーターを駆動してスクリューシャフトを回転させ、このスクリューシャフトの回転によってスライドテーブルをレールの軸方向に移動する小型スライド装置において、上記スクリューシャフトには挟持部を設けるとともに、この挟持部と上記カップリング部材との間に、上記ベアリングを挟持する構成にした小型スライド装置。
【請求項2】
上記スクリューシャフトの先端には、フランジを形成したキャップ部材を固定するとともに、このフランジによって上記挟持部を構成した請求項1記載の小型スライド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−92101(P2009−92101A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−261212(P2007−261212)
【出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(000229335)日本トムソン株式会社 (96)
【Fターム(参考)】