説明

小型共焦点分光計

携帯して使用可能な小型分光計が知られており、かかる小型分光計は、入射放射線によって物体中に誘導された出射放射線のスペクトルを分析するために用いられる。この装置は、ピンホールアパーチュアを備えた光源、照明ビーム経路、検出ビーム経路及びマイクロスペクトロメータから成る。好ましくは、ダイオードレーザが本発明の小型分光計用のエッジエミッタ(ピンホールアパーチュアなし)として用いられる。エッジエミッタの窓は、好ましくはピンホールアパーチュアなしの状態で照明ビーム経路(光ファイバなし)の入力部で収束レンズの焦点に配置される。エッジエミッタは、楕円形断面の発散ビームを生じさせる。楕円の主軸のアスペクト比は、2:1以上である。楕円の主長軸は、マイクロスペクトロメータの入射スリットの長手方向軸線に平行に延びる。小型分光計は、減少したサイズのものであると共に低強度の出射放射線に対して増大した感度のものである。励起放射線は、物体に応力をそれほど及ぼさない。応力を生じさせないでマイクロリットル又はミリリットル範囲の物体を分析することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一体形照明装置を備えた、光学的活性物体によって放出された放射線(radiation:輻射)のための小型共焦点分光計に関する。
【0002】
本発明の目的は、公知の小型分光計により従来、得られている感度を増大させ、利用可能な物質量がマイクログラム又はナノグラム程度である場合であっても、低強度放射線源、例えば光誘導放出スペクトル、例えば分子又は原子のラマン散乱又は蛍光放射線を呈する後方散乱物体についてこの種の分光計の使用範囲を拡大することにある。
【背景技術】
【0003】
共焦点光学機器、例えば顕微鏡及び分光計では、出力端部での照明ビーム経路の焦点は、入口端部での画像化又は検出ビーム経路の焦点に位置する。このビーム経路の光軸は、照明ビーム経路の光軸と一致しても良く、或いは、2本の光軸は、互いに傾けられても良い。
【0004】
照明ビーム経路及び検出ビーム経路の共焦点構造を備えた小型機器が知られている。一般に、照明ビーム経路は、光源、有孔シャッタ、コリメータ、バンドパスフィルタ、ダイクロイック(二色)ビームスプリッタ及び収束レンズを有する。有孔シャッタは、コリメータの入力部側の焦点に配置される。収束レンズは、有孔シャッタを照明ビーム経路の出力側の焦点に画像化する。焦点は、検査されるべき物体上又は物体内に位置する。ダイクロイックビームスプリッタの光軸は、照明ビーム経路の光軸に対して傾けられる。
【0005】
検出ビーム経路は、収束レンズの出力側の焦点で始まる(共焦点画像化)。検出ビーム経路の光軸は、まず最初に、照明ビーム経路の終わりで収束レンズを通過し、この光軸は、照明ビーム経路の光軸から外れてダイクロイックビームスプリッタに偏向される。検出ビーム経路は、オプションとして、偏向ミラーを有するのが良い。検出ビーム経路は、エッジフィルタ及び光を出力側のその焦点に集める集光レンズを有する。
【0006】
白色の又はスペクトル的に汚れた単色光源が用いられる場合、放出された放射線を励起するのに適した波長範囲は、濾波されて除去される。検査されるようになっていると共に照明ビーム経路の焦点に配置された物体によって放出される光は、送り戻された照明光と一緒に、ダイクロイックビームスプリッタにより偏向される。小型分光計の使用の性格に応じて、エッジフィルタ(長波域フィルタ又は短波域フィルタ)は、検査されるべき物体によって放出された放射線の波長が存在する適当な波長範囲を濾波して除去するために用いられる。
【0007】
光源の大きさ及びその発熱は、光源と小型分光計との間に或る特定の距離を必要とする。この距離は、一般に、光ファイバで橋渡しされる。光は、好ましくは、この光ファイバを通って送られ、光ファイバの端は、照明ビーム経路の入口でコリメータの焦点に配置される。
【0008】
照明された物体から出た光は、好ましくは、検出ビーム経路から別の光ファイバを通って分光計の入口スリットに送られる。追加の光ファイバの開始部は、検出ビーム経路の出力で収束レンズの焦点に配置される。
分光計では、照明された物体によって放出される放射線のスペクトルが生じる。このスペクトルは、モニタで視認でき又は電子的に評価されて表示できる。
【0009】
独国特許第10010514号明細書(出願人:エステーエーアーゲーミクロパーツ(STEAG microparts)及びフォルシュングスツェントルムカールスルーエ(Forschungszentrum Karlsruhe))は、ハイブリッド一体形機能ユニットとして光り電子マイクロスペクトロメータを記載している。マイクロスペクトロメータは、入口スリット、入射光及びスペクトル的に分解された光のためのプレーナ導波路、自動焦点合わせ反射格子及び他の機能的光学素子を有する。スペクトル的に分解された光は、ダイオードの線上に当たり、かかるダイオード線からのスペクトルが評価ユニットに送られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】独国特許第10010514号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
公知の小型分光計よりも著しく小型であり且つ構造ができるだけコンパクトな小型共焦点分光計を提供するという課題が生じる。小型分光計は、ユーザによる次の調節を必要とすべきではない。小型分光計は又、検出されるべき僅かな濃度の物質(分子又は原子)を含んでいて非常に僅かな放射線量しか許容せず又は熱の影響を受けやすい物体を検査するのに適しているべきである。さらに、小型分光計は、可搬式であると共に極端な条件下で使用できしかも未熟な人による使用に適しているべきである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
光学的に活性の物体によって放出された放射線のスペクトル検査のための本発明の小型共焦点分光計は、以下のコンポーネント、即ち、
光源、光源の放射線は、検査されるべき物体に向けられ、ここで放出放射線を励起し、
照明ビーム経路、この照明ビーム経路は、検出ビーム経路に結合され、出力端部の照明ビーム経路の焦点は、入力端部の検出ビーム経路の焦点と同一であり(共焦点構造)、及び
小型共焦点分光計のコンポーネントの1つとしての公知のマイクロスペクトロメータを有する。
【0013】
光源は、従来型光源又は公知のレーザ光源の1つであって良い。光源の放射線は、照明ビーム経路の入力端部側焦点に集められる。
【0014】
照明ビーム経路は、その入力部に設けられた収束レンズ、オプションとしてバンドパスフィルタ、ダイクロイックビームスプリッタ及びその出力に設けられた収束レンズを有する。バンドパスフィルタでは、物体からの放出放射線を励起するのに適した所望のスペクトル範囲を光源からの放射線から濾波して除去することができる。
【0015】
ダイクロイックビームスプリッタは、照明ビーム経路の光軸に対して傾けられている。照明ビーム経路の光軸に対するビームスプリッタの傾斜角度は、30°〜60°であるのが良い。検出ビーム経路の光軸は、照明ビーム経路の光軸から60°〜120°の角度、好ましくは90°の角度偏向されている。
【0016】
光源の放射線は、照明ビーム経路の出力端部でその焦点に集められる。検査されるべき物体は、この焦点を包囲した領域に配置される。照明放射線は、物体を励起してこれから放出放射線を生じさせる。
【0017】
検出ビーム経路は、照明ビーム経路の出力端部でその焦点で始まり、照明ビーム経路の出力に設けられた収束レンズを通過する。検査されるべき物体から出た放出放射線は、ダイクロイックビームスプリッタにより照明ビーム経路から偏向される。
【0018】
エッジフィルタ(長波域フィルタ又は短波域フィルタ)が検出ビーム経路内に配置されている。フィルタエッジの位置は、検査されるべき放出放射線の波長に合わされている。検査されるべき物体によって放出された放射線は、検出ビーム経路の出力の収束レンズによってマイクロスペクトロメータの入口スリットに差し向けられる。
【0019】
検出ビーム経路の入力部は、共焦点からダイクロイックビームスプリッタまで照明ビーム経路の出力と一致する。
【0020】
マイクロスペクトロメータでは、入口スリットを通る検査中の物体の放出された放射線のスペクトルを生じさせる。マイクロスペクトロメータは、好ましくは、非対称の三角形条溝を備えた自動焦点合わせ補正反射格子を有する。スペクトルは、好ましくは、これを読み取って評価するダイオードの線上に位置する。
【0021】
熱的光源が用いられる場合、細長いスリットを備えたスリットダイヤフラムが照明ビーム経路の入力端部のその焦点の付近に配置される。熱的光源からの放射線は、スリットダイヤフラムのスリット上に焦点合わせされる。
【0022】
スリットダイヤフラムは、照明ビーム経路の入口端部の収束レンズの焦点に又はその近くに配置される。ビームペンシルが形成され、その断面は、細長い楕円の形態をしている。スリットダイヤフラムのスリットは、幅が10〜100ミクロンであり、高さが50〜500ミクロンであるのが良い。スリットから出た光ペンシルの断面は、細長い楕円の形態をしている。楕円の2本の主軸の長さの比は、2:1〜10:1であるのが良い。
【0023】
用いられるダイオードレーザ光源は、好ましくは波長が安定化されたダイオードエッジエミッタであるのが良い。照明放射線を放出するエッジエミッタの表面は、照明ビーム経路の入力部側のその焦点の付近に配置される。エミッタ表面は、サイズが2〜5平方ミクロンであるのが良い。この場合、エッジエミッタから出る放射線の焦点合わせ装置もスリットダイヤフラムも不要である。
【0024】
エッジエミッタは、末広がり光ペンシルを生じさせる。ビームペンシルの発散角は、ビームペンシルの断面の2つの方向に互いに異なるサイズのものである。その結果、ビームペンシルは、細長い楕円形断面を有する。楕円の2本の主軸の長さの比は、2:1〜10:1であるのが良い。エッジエミッタが光源として用いられる場合、スリットダイヤフラムは用いられない。
【0025】
両方の光源に関し、照明ビーム経路に入るビームペンシルは、細長い楕円形断面を有し、この細長い楕円形断面により、光の楕円スポットが照明ビーム経路の出力で検査中の物体上に作られる。物体は、放射線を放出し、そのスペクトルが検査されることになる。物体によって放出された放射線は、照明ビーム経路を通って入る励起放射線とは異なる波長を有する。この放出放射線の何割かは、検査中の物体から検出ビーム経路の出力の収束レンズに向かって進む。放出されたビームペンシルも又、細長い楕円形断面を有する。このビームペンシルは、照明ビーム経路の出力の収束レンズを通過してダイクロイックビームスプリッタに当たり、ダイクロイックビームスプリッタは、放出されたビームペンシルを検出経路ビーム中に偏向する。検出ビーム経路の出力の収束レンズによって、物体によって放出された楕円形断面のビームペンシルは、マイクロスペクトロメータの入口スリットに差し向けられる。
【0026】
マイクロスペクトロメータの入射スリットに当たるビームペンシルの楕円形断面の主長軸は、入射スリットの長手方向軸線に平行に延びる。マイクロスペクトロメータの入口スリットは、好ましくは、その表面全体にわたって完全に且つ実質的に一様に照明される。ビームペンシルの楕円形断面は、好ましくは、入口スリットの表面よりも僅かに大きいに過ぎない。検出ビーム経路に入った放出放射線の光のビームは、実質的に何ら損失なしに保持される。
【0027】
この条件は、エッジエミッタ又はスリットダイヤフラム及び楕円形断面のビームペンシルの主長軸の方向(3つのコンポーネントの組み立て中)がそれに応じて位置合わせされている場合に満たされる。
【0028】
照明ビーム経路及び検出ビーム経路中の収束レンズは、従来型の個々の屈折グランド(摺り)収束レンズ又は光学ガラス又はプラスチックで作られた屈折グランドレンズの従来型システムであって良い。これとは異なり、収束レンズとして回折レンズ(フレネルゾーンプレート)を用いても良い。さらに、平べったいグランド端部を有すると共に屈折率の半径方向勾配を有するガラスロッド(GRINレンズ)を収束レンズとして用いることができる。GRINレンズの代表的な直径は、0.5〜5mmであり、代表的な長さは、2〜20mmである。
【0029】
3つのコンポーネント(照明ユニット、検出ビーム経路を備えた照明ビーム経路及び読み出しユニットを備えたマイクロスペクトロメータ)を組み立てると、これらコンポーネントは、光学的に調節されると共に互いに剛性的に連結される。
【0030】
ダイクロイックビームスプリッタは、2つの45°プリズムで構成されるのが良い。ダイクロイック分割ミラーがプリズムの一方の内面に被着される(例えば、蒸着によって)。2つのプリズムの内面は、互いに上下に配置される。さらに、ダイクロイックビームスプリッタミラーは、2つのプリズムの内面相互間に配置された透明なシートに被着されるのが良い。
【0031】
2つの45°プリズムで構成されたダイクロイックビームスプリッタは、非常にコンパクトな構成をもたらすと共にGRINレンズ及びプレート形フィルタを用いた場合に光学システムを組み立てるのを容易にする。
【0032】
マイクロスペクトロメータは、自動焦点合わせの且つ好ましくは補正された反射格子を有する。反射格子は、好ましくは、三角形の非対称溝を有する。マイクロスペクトロメータの入口スリットは、検出ビーム経路の出力の収束レンズの焦点に又はこの焦点のすぐ近くに位置する。反射格子に生じたスペクトルは、好ましくは、ダイオード線に当たる。
【0033】
細長い楕円の断面を備えた照明ペンシルは、照明ビーム経路の出力端部のその焦点で検査されるべき物体上に楕円形断面の光スポットを生じさせる。この光スポットで物体により放出されたビームペンシルも又、楕円形断面を有する。この楕円形光スポットは、検出ビーム経路を経てマイクロスペクトロメータの入口スリット上に画像化される。検出ビーム経路中のビームペンシルの楕円形断面の主長軸は、マイクロスペクトロメータの入口スリットの長手方向軸線に平行に延びる。
【0034】
マイクロスペクトロメータの入口スリットは、検査中の物体によって放出された放射線により完全且つ実質的に一様に照明される。入口スリット上のビームペンシルの断面積は、入口スリットの面積よりも僅かに大きいものであるに過ぎない。検出ビーム経路の入力部の収束レンズによってピックアップされた検査中の物体によって放出された放射線は、損失がほんの僅かな状態でスペクトロメータの入口スリット上に焦点合わせされる。入口スリットは、完全に照明される。
【0035】
マイクロスペクトロメータの入口スリットは、代表的には幅が10〜100ミクロン、高さが150〜500ミクロンである。
【0036】
小型分光計のコンポーネントは、照明ユニット、照明ビーム経路のための光学部品、検出ビーム経路のための光学部品、凹状反射格子及びスペクトルのための好ましくは電子読み出しユニットを備えたマイクロスペクトロメータを含む。これらコンポーネントは、組み立て中、光学的に調節される。これらコンポーネントは、互いに剛性的に且つ永続的に固定される。小型分光計は、ユーザの観点からは「一体形」装置である。代表的な外寸は、幅20mm、長さ60mm、厚さ10mmである。小型分光計は、好ましくは、入射励起放射線、例えばラマン放射線又は蛍光放射線の影響を受けて異なる周波数の放射線を放出する物体を検査するために使用できる。小型分光計は、低発光源を検査するのに、例えば、好ましくは顕微鏡的に小さい物体について表面増感ラマン分光法(SERS)を実施するのに特に適している。
【0037】
本発明の小型共焦点分光計は、次の利点を有する。
光源から照明ビーム経路に入った楕円形断面のビームペンシルは、検査されるべき物体に完全に当たる。物体は、楕円形断面のビームペンシルを放出し、このビームペンシルは、マイクロスペクトロメータの入口スリットを一様に照明するが、この入口スリットに隣接したところについては低い強度を有するに過ぎない。
空間分布及び強度に従って、マイクロスペクトロメータの入口スリットを照明するのに必要な放出放射線だけが生成される。
剛性的に互いに接合されたコンポーネントは、最適に且つ永続的に調節されると共に互いに耐久性のある仕方で固定される。
本発明の小型分光計の光学的感度は、光ファイバを利用した小型分光計の感度の10〜100倍である。
小型分光計は、その疑似一体形構造により、使用にあたって機械的且つ熱的に頑丈である。
小型分光計は、安価に大量生産でき、製造中、特定の意図した使用に合うよう設計可能である。
組み立て中における能動的光調節プロセスが回避され又はその実施にあたりほんの僅かな技術的労力が必要であるに過ぎない。
楕円形断面のビームペンシルは、検査されるべき物体を経て損失が僅かな状態でマイクロスペクトロメータの入口スリットに差し向けられる。光ファイバ利用プローブでは回避することができない伝送損失は、生じない。
マイクロスペクトロメータの入口スリットで物体によって放出された放射線の放射損失は、低い。
低出力照明により、公知の小型分光計を一段と小型化することができ、しかも検査されるべき物体に対する熱的負荷が低くなる。
伝搬距離が短いので、寄生スペクトルが生じる恐れが低い。寄生スペクトルは、照明放射線と機器(例えば、光ファイバ)との相互作用の結果として生じる場合がある。
ダイオードレーザが用いられる場合、個々の事例では、一般に必要とされる照明ビーム経路中のレーザ光の濾波を省略できる。
小型分光計は、例えば医療上の診断の観点からのスポットに対する微視的分析に特に適している。
数マイクロリットルの範囲の極めて僅かな体積の物体又はミリグラムの数分の1の極めて僅かな質量の物体を検査することができる。
小型分光計は、少量の物質のマイクロスペクトル分析及び物体中に極めて低い濃度で存在する原子又は分子の微量分析に適している。
【0038】
本発明の小型分光計について以下の図面によって詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】先行技術の小型分光計の基本的略図である。
【図2】本発明の小型分光計の光学コンポーネントの一例としての構成例を示す図である。
【図3】ダイクロイックビームスプリッタの実施形態を示す図である。
【図4】ダイクロイックビームスプリッタの別の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1は、先行技術の小型分光計の基本的略図である。光源101からの放射線は、光ファイバ102によって照明ビーム経路の入力端部の収束レンズ104の焦点103に差し向けられる。照明ビーム経路中にバンドパスフィルタ105が設けられる場合がある。光は、照明ビーム経路の光軸に対して傾けられたダイクロイックビームスプリッタ106を通って照明ビーム経路の出力部の収束レンズ107に当たる。照明放射線は、照明ビーム経路の出力端部でその焦点108に集められる。検査されるべき物体109がこの焦点に配置されている。
【0041】
照明放射線は、物体中の原子又は分子を励起することができる。物体によって放出された放射線、例えばラマン散乱放射線又は蛍光放射線は、検出放射線である。この放射線は、共焦点108で物体から出て検出ビーム経路中に入る。検出放射線は、検出ビーム経路の入力部の収束レンズ107から出てダイクロイックビームスプリッタ106に当たる。ビームスプリッタは、偏向ミラー110と一緒になって、検出放射線を偏向させる。図示の構成例では、検出ビーム経路の光軸は、例えば照明ビーム経路の光軸に平行に延びている。
【0042】
また、エッジフィルタ111及び検出ビーム経路の終わりに位置する収束レンズ112が検出ビーム経路中に設けられている。収束レンズ112は、放出された放射線をその焦点113に集める。検出放射線は、焦点113から光ファイバ114によって分光計115の入口スリットに差し向けられる。
【0043】
照明ビーム経路は、光源101から共焦点108まで延びている。検出ビーム経路は、共焦点108から分光計115まで延びている。
【0044】
図2は、本発明の小型分光計の光学コンポーネントの一例としての構成例を示している。熱的光源201の光は、焦点合わせ装置によって焦点203に集められる。スリットダイヤフラムが焦点203に配置されている。焦点203も又、照明ビーム経路の入口における収束レンズ204の入口側の焦点でもある。バンドパスフィルタ205が図示のビーム経路中に設けられるのが良い。照明放射線は、ダイクロイックビームスプリッタ206を経て収束レンズ207に差し向けられる。この収束レンズは、照明放射線を照明ビーム経路の出力端部のその焦点208に集める。検査されるべき物体209がここに配置されている。
【0045】
物体209によって放出された放射線、例えばラマン散乱放射線又は蛍光放射線は、検出放射線である。かかる放射線は、共焦点208で物体から出て検出ビーム経路中に入る。検出放射線は、検出ビーム経路の入力部の収束レンズ207から出てダイクロイックビームスプリッタ206に当たる。ビームスプリッタは、検出放射線を照明ビーム経路から偏向させる。エッジフィルタ211によって、検出放射線は、検出ビーム経路の出力部の収束レンズ212に当たる。この収束レンズは、検出放射線を焦点213に集め、マイクロスペクトロメータ215の入口スリットは、この焦点に配置されている。
【0046】
小型分光計のコンポーネントは、光源A、照明ビーム経路B及びマイクロスペクトロメータCである。
【0047】
熱的光源の代わりにレーザダイオードを用いても良い。その出口窓は、焦点203に配置される。この場合、スリットダイヤフラムは不要である。
【0048】
図3は、ダイクロイックビームスプリッタ206の実施形態を示している。この実施形態は、2つの45°プリズム301,302を有し、これらプリズムの内面303は、互いに衝合して配置されている。好ましくは、これら表面の一方は、光学的活性膜を備えている。GRINレンズ305及びバンドパスフィルタ306が照明ビーム経路の入口に配置され、この入口の前には、組立体の状態の光源Aが配置される。GRINレンズ307が照明ビーム経路の出力部を形成し、この前には、物体が配置されている。物体によって放出された放射線は、ビームスプリッタの内面303で、検出ビーム経路に偏向される。放出された放射線は、エッジフィルタ308及びGRINレンズ309によってコンポーネントとしてのマイクロスペクトロメータCの入口スリットに当たる。
【0049】
図4は、ダイクロイックビームスプリッタの別の実施形態を示している。2つの45°プリズム401,402相互間には、プレート403が設けられ、このプレートの表面の一方にはダイクロイック層が被着されている。
【0050】
図のサイズは、本発明の小型分光計と先行技術の小型分光計との間に相当なサイズの差があるということを示唆しているわけではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小型共焦点分光計であって、光源と、入力部及び出力部に収束レンズを備えた照明ビーム経路と、入力部及び出力部に収束レンズを備えた検出ビーム経路と、物体から放出された放射線を前記照明ビーム経路から前記検出ビーム経路中に偏向させるダイクロイックビームスプリッタと、入射スリット及び前記物体により放出された放射線のスペクトルのための観察装置を備えたマイクロスペクトロメータとを有し、前記照明ビーム経路の前記出力部の前記収束レンズは、前記検出ビーム経路の前記入力部の前記収束レンズと同一であり(共焦点構造)、検査されるべき前記物体は、前記照明ビーム経路及び前記検出ビーム経路の共通焦点の近くに配置されている小型共焦点分光計において、
光源の発散ビームペンシルが細長い楕円形の断面を有し、
前記楕円形ビームペンシルの整列状態の主長軸が、前記マイクロスペクトロメータの前記入射スリットに当たる前記楕円形ビームペンシルの前記主長軸が前記入射スリットの前記長手方向軸線に平行に延びる方向で前記照明ビーム経路に入り、
互いに対して永続的に固定されたサブアセンブリが互いに剛性的に且つ耐久性をもって接合され、前記サブアセンブリは、前記照明装置、前記照明ビーム経路、前記検出ビーム経路及び読み出しユニットを備えた前記マイクロスペクトロメータを含む、
ことを特徴とする小型共焦点分光計。
【請求項2】
前記光源は、実質的に正方形の窓を備えたダイオードエッジエミッタであり、
前記エッジエミッタの前記窓は、前記照明ビーム経路の前記入力部の前記焦点の付近に配置され、
前記エッジエミッタは、細長い楕円形断面のビームペンシルを発生させる、請求項1記載の小型共焦点分光計。
【請求項3】
前記エッジエミッタの実質的に長方形の窓は、2〜5平方マイクロメートルの面積を有し、
前記楕円形ペンシル断面の主長軸と主短軸の長さの比は、2:1〜10:1である、
請求項2記載の小型共焦点分光計。
【請求項4】
前記光源は、熱的光源であり、
前記熱的光源は、前記照明ビーム経路の前記入力部の焦点の付近に配置されたスリットダイヤフラムであり、前記熱的光源は、前記スリット上に焦点合わせされている、
請求項1記載の小型共焦点分光計。
【請求項5】
前記スロットダイヤフラムの前記スリットは、10〜100ミクロンの幅を有すると共に50〜500ミクロンの高さを有する、
請求項4記載の小型共焦点分光計。
【請求項6】
前記照明ビームペンシルの前記楕円形断面の主長軸と主短軸の長さの比は、2:1〜10:1である、
請求項1記載の小型共焦点分光計。
【請求項7】
前記ダイクロイックビームスプリッタの前記照明ビーム経路と前記検出ビーム経路の光軸相互間の偏向角は、60°〜120°、好ましくは80°〜100°、特に90°である、
請求項1記載の小型共焦点分光計。
【請求項8】
バンドパスフィルタが前記照明ビーム経路中に配置されている、
請求項1記載の小型共焦点分光計。
【請求項9】
エッジフィルタが前記検出ビーム経路中に配置されている、
請求項1記載の小型共焦点分光計。
【請求項10】
前記収束レンズは、従来型屈折レンズである、
請求項1記載の小型共焦点分光計。
【請求項11】
前記収束レンズは、回折レンズ(例えば、フレネルゾーンプレート)である、
請求項1記載の小型共焦点分光計。
【請求項12】
前記収束レンズは、円柱状であり且つ屈折率の半径方向勾配を有する、
請求項1記載の小型共焦点分光計。
【請求項13】
前記ダイクロイックビームスプリッタミラーは、2つのプリズムの一方の内面上に設けられ、前記2つのプリズムの内面は、互いに衝合して配置されている、
請求項1記載の小型共焦点分光計。
【請求項14】
前記ダイクロイックビームスプリッタミラーは、前記2つのプリズムの内面相互間に配置された透明なキャリヤプレートに被着されている、
請求項1記載の小型共焦点分光計。
【請求項15】
前記マイクロスペクトロメータの前記スリットは、高さが250〜500ミクロンであり、幅が30〜100ミクロンである、
請求項1記載の小型共焦点分光計。
【請求項16】
前記自動焦点合わせ反射型回折格子は、好ましくは三角形の非対称溝を備えた補正格子である、
請求項1記載の小型共焦点分光計。
【請求項17】
前記物体によって放出された放射線のスペクトルの検出装置は、該検出装置に接続された電子読み出し装置を有するダイオードの線である、
請求項1記載の小型共焦点分光計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−526972(P2012−526972A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510277(P2012−510277)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【国際出願番号】PCT/EP2010/056495
【国際公開番号】WO2010/133485
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(503277020)ベーリンガー インゲルハイム マイクロパーツ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (17)
【氏名又は名称原語表記】Boehringer Ingelheim microParts GmbH
【住所又は居所原語表記】Hauert 7,D−44227 Dortmund,Germany
【Fターム(参考)】