説明

少なくとも一のグリコシダーゼを含有する組成物、プロテアーゼを含有しない該組成物

【課題】落屑を促進させるための組成物であって、乾燥肌のトリートメント、又は皮膚加齢の予防又はトリートメントのために用いることのできる組成物の提供。
【解決手段】落屑を促進させる少なくとも一のグリコシダーゼを活性成分として含有し、プロテアーゼを含有していないことを特徴とする組成物。グリコシダーゼ又はグリコシダーゼ群は、N-グリカナーゼ、セルラーゼ、β-グルコシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、N-アセチル-グルコサミニダーゼ及び/又はN-アセチル-ガラクトサミニダーゼから選択される。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、落屑を促進させる組成物に関する。特に、本発明は、プロテアーゼを含有せず、少なくとも一のグリコシダーゼ及び/又はグリコシダーゼ活性化剤を含有する組成物、及び皮膚加齢又は乾燥肌に抗するためのそれらの使用に関する。
【0002】
落屑は、皮膚の外層を構成している表皮が絶えず再生されているという事実に関連した自然現象である。表皮は複数の細胞層からなり、その最も深い層である基底層は未分化細胞から構成されている。時間が経過すると、これらの細胞は、落屑により除去される、角質細胞、すなわち角質層としても知られているが最外層が表皮の表面に形成されるまで、分化して表皮表面に移動して種々の層を構成する。その表面の損失は基底層から表皮表面への細胞の移動により補われる。これが皮膚の永続的な再生である。
【0003】
若い皮膚は2ないし3週間毎に表層が再生されるが、成人の皮膚は2倍の時間がかかる。表皮再生の遅延化の結果は、乾燥肌に現れる。再生プロセスが長くなればなる程、皮膚表面の本来の保湿性が低減する。
さらに落屑プロセスが遅くなればなる程、皮膚はマットになり、そのつやと新鮮さが失われる。
角質層を強制的に除去すると表皮の再生が促進され、加齢に抗することができる;皮膚は若々しくて新鮮な外観を取り戻し、保湿性が改善される。皮膚はマットな外観を失い、肌つやが改善される。
【0004】
内因性又は外因性要因の影響の結果として生じる皮膚の加齢により、シワやコジワが現れ、皮膚が黄変して、場合によっては皮膚斑点の出現を伴う、パーチメント状の外観になり、エラスチンとコラーゲン線維が崩壊して弾性、柔軟性及び堅さの喪失し、また毛細管拡張症状が発現する。
より詳細には、これらの加齢の徴候のいくつかは、特に内因性又は生理学的加齢、すなわち年齢又は時間生物学に関連した「正常な」加齢であるのに対し、他のものは外因的加齢、すなわち一般に環境により生じる加齢である;これは、より詳細には、太陽、光又は他のあらゆる光線にさらされることによる光加齢に関連している。
本発明は、内因的又は生理学的加齢並びに外因的加齢に適用される。
【0005】
内因的加齢による皮膚の変化は、内的要因が関連した遺伝的にプログラムされた老化の結果によるものである。この内因的加齢は、特に皮膚細胞の再生を遅延させ、例えば皮下脂肪組織の減少やコジワの出現といった臨床的変化、並びに、例えば弾性線維の数や厚みの増加、弾性組織膜中の垂直線維の喪失、及び該弾性組織の細胞中における大きく不規則な線維芽細胞の存在といった組織病理学的変化を本質的に生じる。
これに対し、外因的加齢は、深いシワや弛緩し及び/又は皮革のような皮膚(hide-like skin)が形成されるといった臨床的変化、及び真皮上部における弾性物質の過度の蓄積及びコラーゲン線維の退化といった組織病理学的変化を引き起こす。
【0006】
落屑プロセス中に観察されるタンパク質分解性劣化は、特に角質層キモトリプシン酵素(SCCE)等の角質層で合成されるプロテアーゼにより誘発されうる。リソソーム由来のグリコシダーゼは、表皮の末期分化中に外面化されることが示された(Nemanicら, J of Invest Dermat, 1983, 81:28-33)。しかしながら、角質層における前記グリコシダーゼの基質の特徴付けはあまり進歩しておらず、前記グリコシダーゼの生物学的役割は明らかになっていない。
タンパク質に糖残基が存在すると、プロテアーゼの添加により人工的に誘発されるタンパク質分解性劣化から、角質ソーム(corneosomes)の糖タンパク質及びデスモソーム(desmosomal)構造が保護されることが知見されている(Walsh and Chapman(1990), Arch Dermatol Res 282:304-310)。
この知見により、内因性グリコシダーゼが角質層におけるプロテアーゼの作用を促進し、落屑を促進するという仮説に至る。
また、内因性グリコシダーゼの活性により生成した糖類が直接の細胞反応を引き起こし、角質細胞の放出を生じることもありうる。
【0007】
よって、皮膚に適用することで落屑を促進させる化粧品を開発することにより、乾燥肌、特に皮膚加齢に抗することができる。落屑を促進させる化粧品組成物の多くの例が従来技術において記載されている。特に、レチノイン酸、例えば米国特許第4603146号に記載されているものを含有する組成物、α-又はβ-ヒドロキシドを含有する組成物(例えば、欧州特許出願公開第0413528号又は国際公開第93/10756号を参照)を挙げることができる。しかしながら、これらの組成物は、チクチクする痛み、掻痒、ヒリヒリ感及び赤みといった、使用者にとって不快な副作用を引き起こす。プロテアーゼ、又はプロテアーゼとグリコシダーゼの組合せを本質的に含有する組成物の例は、従来技術(PCT 国際公開第93/19732号、ユニリーバ社;PCT 国際公開第95/07687号、ユニリーバ社)に記載されている。しかしながら、局所用組成物におけるプロテアーゼの使用に伴う毒物学的危険性があり、アレルギー反応及び炎症の原因となるおそれがあった。
【0008】
本発明は、落屑に対する外因性グリコシダーゼの効果に関して行った研究の結果によるものである。これらの研究は、分子スクリーニングに適したインビトロ落屑テストの開発により実施された。前記研究により、驚くべきことに、外因性グリコシダーゼを、必要であれば内因性グリコシダーゼ活性を刺激可能な生成物と組合せて、添加することにより、角質層におけるグリコシダーゼ活性を増加させると、外因性プロテアーゼを添加しなくても、落屑を促進させるのに十分であることが実証された。
従って、本発明は、落屑を促進させる少なくとも一のグリコシダーゼを活性成分として含有する組成物に関し、該組成物はプロテアーゼを含有していない。また本発明は、落屑を促進させる少なくとも一のグリコシダーゼと該グリコシダーゼの活性を刺激可能な生成物を含有する組成物に関する。
【0009】
本発明の組成物に含まれるグリコシダーゼは、プロテオグリカン、糖脂質及び一般に角質層の複合糖質化合物を基質として有しうるあらゆる酵素である。前記酵素はシアリダーゼ、例えばノイラミニダーゼ、マンノシダーゼ、ガラクトシダーゼ、グルコシダーゼ、N-アセチル-グルコサミニダーゼ、N-アセチル-ガラクトサミニダーゼ、コンドロイチナーゼ、グルクロニダーゼ又はヒアルロニダーゼである。
それらは、また、任意のグリコシダーゼ落屑効力テスト(Lundstrom A and Egelrud T, Arch Dermatol Res(1990), 282:234-237)又は次の工程:
a)個人から角質層のサンプルを回収し;
b)支持体にサンプルを固定し;
c)支持体に固定されたサンプルを、テストされるグリコシダーゼを含有する緩衝溶液と接触させ;
d)緩衝溶液中に放出された不溶性物質を回収し;
e)不溶性物質中に存在するケラチンをアッセイし、グリコシダーゼを含有していないテスト用対照に対してそれを定量する;
ことを含むテストにより選択される、落屑を促進させる任意のグリコシダーゼであってよい。
本テストにおいて、不溶性物質中の工程e)でアッセイされるケラチンは、放出された角質細胞の量を反映している。このようにして、生成物、より詳細にはグリコシダーゼの「落屑誘発(pro-desquamatizing)」効果をテストすることができる。
【0010】
本発明は、一又は複数のグリコシダーゼを活性成分として含有する組成物に関し、該組成物はプロテアーゼを含有しない。
また、本発明のグリコシダーゼは、角質層における内因性基質が知られていないセルラーゼも包含する。
好ましくは、グリコシダーゼは、インビトロ研究において落屑誘発効果が示されている次の酵素:N-グリカナーゼ、セルラーゼ、β-グルコシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、N-アセチル-グルコサミニダーゼ及び/又はN-アセチル-ガラクトサミニダーゼから選択される。本発明の特に好ましい実施態様では、3種のグリコシダーゼの組み合わせ、つまりβ-ガラクトシダーゼ、N-アセチル-グルコサミニダーゼ及びN-アセチル-ガラクトサミニダーゼが組成物に含有される。
【0011】
本発明の組成物に使用されるグリコシダーゼは、角質層の細胞から合成されたタンパク質の抽出物から精製されたものであってよく、あるいは微生物により自然に合成されたグリコシダーゼであってもよい。また、異種系において産生された組換えグリコシダーゼであってもよい。使用可能なグリコシダーゼの例は、クローンザイム(CloneZyme)TM又はベーリンガー社(Boehringer)から販売されているものである。
一般的に、本発明の組成物は、組成物の全重量に対して0.001重量%〜15重量%、好ましくは0.01重量%〜10重量%、特に好ましくは0.05重量%〜5重量%のグリコシダーゼを含有する。
【0012】
本発明は、角質層におけるグリコシダーゼ活性の増加が、落屑を促進させるのに十分であるという知見から得られたものである。その結果、本発明は、落屑を促進させる少なくとも一のグリコシダーゼと、グリコシダーゼ活性を刺激可能な生成物との組合せを含有する化粧品用組成物に関する。グリコシダーゼ活性を刺激可能な生成物は、酵素反応速度を増加させることができる生成物であり、それは、例えば該生成物を反応媒体に添加した場合に、単位時間当たりに消化された基質量の増加で測定される。β-グルコシダーゼ活性を刺激可能な生成物の例は、1-O-メチル-β-D-グルコピラノシドである。前記活性化剤は、組成物の全重量に対して0.01%〜10%、好ましくは0.1%〜1%である。
【0013】
上述したように、本発明で使用される組成物において、グリコシダーゼは、落屑特性を有する他の公知の活性成分、例えばヒドロキシ酸、α-又はβ-ケト酸、レチノイド、ある種のスルホン酸又はある種の炭水化物、例えばロレアルの特許出願「皮膚落屑を促進させるための炭水化物の使用」(国際公開第97/12597号)に記載されているものと組合せることができる。このような組合せにより、付加的な効果が得られて、前記活性成分の活性濃度を低減することができる。よって、刺激性が少なく、毒性も低い組成物が得られ、さらに該組成物は、これらの活性成分のみを使用した従来のものよりもより効果的である。
【0014】
ヒドロキシ酸の例は、飽和又は不飽和で、直鎖状、分枝状又は環状であってよいα-ヒドロキシ酸及びβ-ヒドロキシ酸である。炭素性鎖(carbonaceous chain)の水素原子は、ハロゲン、ハロゲン含有基、又はアルキル、アシル、アシルオキシ、アルコキシカルボニル又はアルコキシ基で2〜18の炭素原子を有するもので置換することができる。
特に、前記ヒドロキシ酸は、次のもの:グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸及び一般的な果実酸、2-ヒドロキシアルカン酸、マンデル酸、サリチル酸及びそれらのアルキル化又はアシル化誘導体、例えばn-オクタノイル-5-サリチル酸、n-ドデカノイル-5-サリチル酸、n-デカノイル-5-サリチル酸、n-オクチル-5-サリチル酸、n-ヘプチルオキシ-5-又は4-サリチル酸、2-ヒドロキシ-3-メチル安息香酸又はそれらのアルコキシル化誘導体、例えば2-ヒドロキシ-3-メトキシ安息香酸であってよい。
【0015】
レチノイド類は、特にレチノイン酸(all-トランス又は13-シス)及びその誘導体、レチノール(ビタミンA)及びそのエステル、例えばパルミチン酸レチノール、酢酸レチノール及びプロピオン酸レチノール、並びにそれらの塩、又はレチナールであってよい。
例えば、ヒドロキシ酸、ケト-酸及びレチノイド類は、組成物の全重量に対して0.001%〜5%の範囲の量で、本発明の組成物に導入することができる。
【0016】
本発明で使用される組成物は、化粧品的又は皮膚科学的に許容可能な媒体、すなわち皮膚、爪、粘膜、組織及び毛髪と適合性のある媒体を含有する組成物に使用される。本発明の好ましい実施態様において、組成物のpHは、使用されるグリコシダーゼの至適活性を達成できるものとされ、好ましくは皮膚のpHに近く、4〜7の範囲である。一又は複数のグリコシダーゼを含有する組成物は、好ましくは、顔、首、毛髪、粘膜及び爪、又は任意の他の体の皮膚領域に局所的に適用される。
【0017】
本発明の化粧品用組成物は、局所適用に適した形態であることが好ましく、局所適用用の水性媒体で不安定な酵素タイプの活性成分を含有可能である。それらは、通常、水性アルコール又は油性溶液、ローション又はセラムタイプの分散液、無水又は油性ゲル、ミルク型で、水相に油相を分散させて得られる(O/W)又は逆(W/O)の液体又は半液体状のコンシステンシーのエマルション、クリーム、ゲル又はマイクロエマルションタイプで、希薄な、半固体状又は固体状のコンシステンシーのエマルション又は懸濁液、又はマイクロカプセル、微小粒子、もしくはイオン性及び/又は非イオン性の小胞分散液の形態である。前記組成物は常法を使用して調製される。活性酵素を含有する組成物に特に適した好ましい形態は、ロレアルの特許出願である欧州特許出願公開第0779071号に記載されているようなW/O/W型のものである。
本発明の組成物は、アルコール又は水性アルコール溶液の形態、又はクリーム、ゲル、エマルション又はフォームの形態で毛髪に使用することもできる。
本発明で使用される組成物の種々の成分の量は、当該分野において常套的に使用されている量である。
【0018】
前記組成物は、顔、手又は体を保護、トリートメント又は手入れするためのクリーム、体を保護又は手入れするためのミルク、皮膚及び粘膜を手入れするため、もしくは皮膚をクレンジングするためのローション、ゲル又はフォームを構成する。
また、組成物は、石鹸又はクレンジングバーを構成する固体状の調製物からなるものであってもよい。
【0019】
また、知られている方法で、本発明の組成物は、化粧品及び皮膚科学の分野で通常のアジュバント、例えば、親水性又は親油性のゲル化剤、親水性又は親油性の活性成分、防腐剤、酸化防止剤、溶媒、香料、フィラー及び着色料をさらに含有してもよい。これらのアジュバントの量は、当該分野において従来より使用されている量、例えば、組成物の全重量に対して0.01%〜20%である。当業者であれば、本発明の組成物に固有の有利な特性、特にグリコシダーゼの酵素活性が、考えられる添加により変化しないか、又は実質的に変化しないように留意して、任意の添加剤及び/又はそれらの量を選択するであろう。
【0020】
本発明において使用可能な油としては、鉱物性油(ワセリン油)、植物性油(シア油、スイートアルモンド油)、動物性油、合成油、シリコーン油(シクロメチコーン)及びフッ化油(ペルフルオロポリエーテル)を挙げることができる。また油性物質としては、脂肪アルコール、脂肪酸(ステアリン酸)又はロウ(パラフィン、カルナウバ、ミツロウ)を使用することもできる。
本発明において使用可能な乳化剤としては、スパン(Span)60及びトゥイーン(Tween)60の商品名で、ICI社から販売されているステアリン酸ソルビタン、及びポリソルベイト60を挙げることができる。例えばエムコール(Emcol)249-3Kとしてウィトコ社(Witco)から販売されているPPG-3ミリスチルエーテル等の共乳化剤を加えることもできる。
本発明で使用可能な溶媒としては、低級アルコール、特にエタノール及びイソプロパノール、及びプロピレングリコールを挙げることができる。
【0021】
親水性のゲル化剤としては、カルボキシビニルポリマー類(カーボマー:carbomer)、アクリルコポリマー類、例えばアクリラート/アクリル酸アルキルのコポリマー類、ポリアクリルアミド類、多糖類、例えばヒドロキシプロピルセルロース、天然ガム類(キサンタン)及びクレー類を挙げることができ;また、親油性のゲル化剤としては、変性クレー類、例えばベントーン類、脂肪酸の金属ゾル、例えばステアリン酸アルミニウム、疎水性シリカ、ポリエチレン類及びエチルセルロースを挙げることができる。
使用可能な親水性の活性成分には、タンパク質又はタンパク質の加水分解物、アミノ酸、ポリオール、尿素、アラントイン、糖類及び糖類誘導体、水溶性ビタミン類、デンプン、又は細菌又は植物からの抽出物、特にアロエ・ベラが含まれる。
使用可能な親油性の活性成分には、トコフェロール(ビタミンE)とその誘導体、必須脂肪酸、セラミド類及び精油が含まれる。
【0022】
光加齢に効果的に抗するために、UVA及び/又はUVBに活性があり、スルホン官能基を含んでいてもよく、親水性又は疎水性であってもよい一又は複数の補足的なサンスクリーン剤を、本発明の組成物に添加することができる。
サンスクリーン剤は有機及び/又は無機サンスクリーン剤から好ましく選択される。
有機サンスクリーン剤としては、ケイ皮酸誘導体、サリチル酸誘導体、ショウノウ誘導体、トリアジン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ジベンゾイルメタン誘導体、β,β-ジフェニルアクリラート誘導体、p-アミノ安息香酸誘導体、国際公開第93/04665号に記載されている重合性サンスクリーン剤及びシリコーンサンスクリーン剤、又は欧州特許出願公開第0487404号に記載されている有機サンスクリーン剤を挙げることができる。
【0023】
挙げることのできる無機サンスクリーン剤は、特に、被覆又は非被覆金属酸化物の顔料、又は好ましくはナノ顔料類(一次粒子の平均粒径:一般的に5nm〜100nm、好ましくは10nm〜50nm)、例えば、UV線を物理的にブロック(反射及び/又は散乱)することにより作用する、全てよく知られている光保護剤である、酸化チタン(アモルファス、又はルチル及び/又はアナターゼ型の結晶)、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム又は酸化セリウムのナノ顔料類である。また、アルミナ及び/又はステアリン酸アルミニウムは従来からのコーティング剤である。このような被覆又は非被覆金属酸化物のナノ顔料類は、特に、欧州特許出願公開第0518772号及び欧州特許出願公開第0518773号に記載されている。
【0024】
挙げることのできるUV-A及び/又はUV-B領域に活性のある補足的なサンスクリーン剤の例は:
・p-アミノ安息香酸;
・オキシエチレン化(25モル)されたp-アミノベンゾアート;
・2-エチルヘキシル-p-ジメチルアミノベンゾアート;
・N-オキシプロピレン化されたp-アミノ安息香酸エチル;
・グリセロール-p-アミノベンゾアート;
・ホモメンチルサリチラート;
・サリチル酸2-エチルヘキシル;
・トリエタノールアミンサリチラート;
・4-イソプロピルベンジルサリチラート;
・4-tert-ブチル-4'-メトキシ-ジベンゾイルメタン(ジボーダン・ルール社(GIVAUDAN ROURE)のパルソール(PARSOL)1789);
・p-メトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル(ジボーダン・ルール社のパルソールMCX);
・4-イソプロピル-ジベンゾイルメタン(メルク社(MERCK)のユーソレックス(EUSOLEX)8020);
・アントラニル酸メンチル、
・2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3'-ジフェニルアクリラート(BASF社のユビヌル(UVINUL)N539);
・2-シアノ-3,3'-ジフェニルアクリル酸エチル;
・2-フェニルベンゾイミダゾール-5-スルホン酸とその塩;
・3-(4'-トリメチルアンモニウム)ベンジリデン-ボルナン-2-オン-メチルスルファート;
・2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン(BASF社のユビヌルMS40);
・2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホナート(BASF社のユビヌルMS40);
・2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン(BASF社のユビヌル400);
・2,2',4,4'-テトラヒドロキシベンゾフェノン(BASF社のユビヌルD50);
・2,2'-ジヒドロキシ-4,4'-ジメトキシベンゾフェノン(ノーケー社(NORQUAY)のヘロソーブ(HELOSORB)II);
・2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン;
・2-ヒドロキシ-4-メトキシ-4'-メチルベンゾフェノン;
・α-(2-オキソボルン-3-イリジエン)-トリル-4-スルホン酸とその塩;
・3-(4'-スルホ)ベンジリデン-ボルナン-2-オンとその塩;
・3-(4'-メチルベンジリデン)-d,l-ショウノウ;
・3-ベンジリデン-d,l-ショウノウ;
・ベンゼン-1,4-ジ(3-メチリデン-10-ショウノウスルホン)酸とその塩(チメックス社(CHIMEX)のメキソリル(MEXORYL)SX);
・ウロカニン酸;
・2,4,6-トリス[p-(2'-エチルヘキシル-1'-オキシカルボニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジン;
・2-[(p-(ターチオブチルアミド)アニリノ]-4,6-ビス[(p-(2'-エチルヘキシル-1'-オキシカルボニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジン;
・2,4-ビス{[4-2-エチルヘキシルオキシ]-2-ヒドロキシフェニル}-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン;
・N-(2及び4)-[2-オキソボルン-3-イリデン)メチル)ベンジル]アクリルアミドのポリマー;
・4,4-ビス-ベンゾイミダゾリル-フェニレン-3,3',5,5'-テトラスルホン酸とその塩;
・2,2'-メチレン-ビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール];
・マロナート官能基を有するポリオルガノシロキサン類;
である。
【0025】
また本発明は、上述した組成物を使用する通常の技術を用い、該組成物を適用することにより実行される美容処理方法に関する。例は、クリーム、ゲル、セラム、軟膏、ローション、ミルクの皮膚、頭皮、爪及び/又は粘膜への適用である。
落屑を促進させるための組成物は、乾燥肌をトリートメント、又は皮膚加齢に抗するのに適している。
その結果、本発明は、乾燥肌のトリートメント、又は皮膚加齢のトリートメント及び/又は防止における、上述した組成物の使用に関する。
以下、落屑における種々のグリコシダーゼの効果のインビトロ研究の結果を示す。また、本発明の組成の非限定的な処方実施例も示される。
【実施例】
【0026】
実験欄
1 種々のグリコシダーゼの研究による、分子スクリーニング及び効果確認に適合化させたインビトロ「落屑」テスト
1.1.分子スクリーニングに適したインビトロ落屑テストの開発
1.1.1.方法
角質層の表層のサンプルを回収するために、テストは、ふくらはぎで行われたBlenderm-varnish方法を用いた。ラッカーを皮膚に直接適用し、10分後に角質層の表層をBlendermタイプの接着テープ(3M)で取り除いた。ついで、サンプルを含むフィルターを96ウェルのテフロン製マイクロタイタープレートに取付け、ウェルをシールする基部に固定した。
酵素又はテスト用生成物を含有する90μlのベースバッファー(PBS、pH6.5、0.1%のナトリウム酸、0.05%のトゥイーン20)を各ウェルに添加した。20℃〜37℃の範囲の温度で1〜48時間の範囲のインキュベート時間後、プレート上に別個に分配された3又は4ウェルで各測定を実施した。同じ条件で処理された各ウェルから40μlを混合し、0.22μmの孔サイズのふるいで濾過し、可溶性タンパク質を除去し、放出された角質細胞を保持させた。角質細胞をDTTの存在下で30μlのベースバッファー中に取り上げ、80℃で15分間加熱した。ついでサンプルを遠心分離し、不溶性物質を除去し、抗ケラチンK10モノクローナル抗体(基底上ケラチン(suprabasal keratins))を使用するウエスタンブロット及び/又はSDS-PAGEにより分析した。硝酸銀でタンパク質を染色した後にケラチンを検出した(約55-65kDaの見かけの分子量まで)。抗K10モノクローナル抗体を使用することで、溶解した基底上ケラチンの存在を確認することができた。
【0027】
1.1.2.結果
孔サイズ0.22μmのふるいを通過したフラクション(可溶性タンパク質を含有)を分析したところ、ケラチン移動領域に相当する、主として55-65kDaで表されるタンパク質を含有していなかった。これに対し、フィルターに保持されたフラクションを分析したところ、ケラチンを同定することができた。これにより、免疫ブロット法によるケラチン分析で角質細胞の存在が正確に反映され、角質細胞ケラチンが不溶性物質に結合していることが確認された。このように、検出されたケラチンを定量することで、インキュベート中に放出された角質細胞の量を算出し、よって生成物の落屑誘発効果を評価することができる。
尿素は、落屑において正の効果を有することが知られている成分である。テストの効果を確認するために、正の対照としてこの分子を1%〜5%の濃度で使用した(バッファーベース単独で構成された負の対照と比較)。結果を図1及び2に示す。4回の独立した実験で実施されたテストの平均データは、5%の尿素の効果をはっきりと示している(尿素を含有しないもので測定して100%として、これと比較して測定したケラチンは200%±100%)。
これらの結果により、落屑を促進させる分子をスクリーニングするために、このテストが使用されることが立証された。
【0028】
1.2.落屑に対する種々のグリコシダーゼの効果の研究
1.2.1.落屑に対するN-グリカナーゼ(フラボバクテリウム・メニンゴセプティカム(flavobacterium meningosepticum)由来のエンド-F)の研究
N- グリカナーゼ(エンドF)により、糖タンパク質に担持される全てのN-結合鎖を除去することができる。使用したN-グリカナーゼは、ベーリンガー社から販売されているものである。図2及び3に示された結果には、角質細胞剥離に対するN-グリカナーゼの効果が明確に示されている。
【0029】
1.2.2.落屑に対する熱安定性組換えグリコシダーゼの研究
クローンザイム社(CloneZyme)TMから販売されている種々のグリコシダーゼの、落屑を促進させる能力についてテストした。次の表1に、テストした種々のグリコシダーゼの基質特異性を示す。

これらグリコシダーゼの利点の一つは、比較的直ぐに入手でき、温度変化に対して安定していることである。その結果、それらは、局所投与に適した組成物を調製するのに使用することができる。硝酸銀でのSDS-PAGEゲルの染色と免疫検出の後にケラチンを同定することで得た図4の結果には、これらのグリコシダーゼが落屑を促進することが示されている。その基質に対するこれらグリコシダーゼの特異性は、程度の差はあれ近接している。その結果は、グリコシダーゼGly10での至適効力を示しており、その効力順はGly10>Gly7>Gly02である。
【0030】
1.2.3.落屑に対するグリコシダーゼの効果の研究
セルラーゼは、2つの内在性グルコースの間に位置するβ1-4結合を切断する(エンドグリコシダーゼ)。ヒトの表皮においてセルロース又は類似の構造体が存在することについては記載されていない。しかしながら、角質層における糖構造体はセルラーゼ標的を構成することはありうる。ベーリンガー社から販売されているセルラーゼの効果を、落屑を促進させる能力についてテストした。図5の結果は、驚くべきことに、落屑に対するセルラーゼの大幅な効果(尿素に類似)を示している。同様の結果が、クローンザイム社TMから販売されているいくつかの組換えセルラーゼでも得られ、その効力順はcel03>cel04、cel01(図4)であった。
表2には、グリコシドに対する種々のテスト用セルラーゼの基質特異性を示す。

【0031】
1.2.4.種々のエキソ-グリコシダーゼ及びO-グリカナーゼの効果
ある種のエキソ-グリコシダーゼを、落屑における効果についてテストした。特に40Uのβ-ガラクトシダーゼ、α-フコシダーゼ、1UのN-アセチル-グルコサミニダーゼ、0.5Uのα-ガラクトシダーゼ、0.3Uのα-マンノシダーゼ、0.2Uのβ-マンノシダーゼ、50Uのグルクロニダーゼ、5Uのβ-グルコシダーゼ及び5Uのα-グルコシダーゼをインビトロでテストした。別々にとった場合、エキソグリコシダーゼのみが、わずかに落屑に影響を及ぼしただけであった。落屑に対して有意な効果を示した組合せは、β-ガラクトシダーゼ、N-アセチル-グルコサミニダーゼ及びN-アセチル-ガラクトサミニダーゼの混合物であった。図6には、角質細胞の剥離に対する酵素のこの組合せの効果を示している。
【0032】
O-グリカナーゼは、O-結合鎖を特異的に切断することができる。O-グリカナーゼの落屑を促進させる能力についてテストした。インビトロテストで得られた結果には、O-グリカナーゼが落屑に影響を及ぼさないか、又は非常にわずかしか及ぼさない(10%増加が観察された)ことが示されている。さらに、O-グリカナーゼと広域スペクトルのシアリダーゼ(アルスロバクター・ウレアファシエンス(Arthrobacter ureafaciens))又はO-グリカナーゼ+N-グリカナーゼ及びシアリダーゼの同時使用の効果は、N-グリカナーゼ単独で観察されたものよりも良好ではなかった。
【0033】
2 本発明の組成物の処方実施例
組成物1:フェイスミルク
ワセリン油 7.0g
N-グリカナーゼ(フラボバクテリウム・メニ
ンゴセプティカム由来のエンド-F) 0.1g
モノステアリン酸グリセリル、ポリエチレ
ングリコールステアラート(100OE) 3.0g
カルボキシビニルポリマー 0.4g
ステアリルアルコール 0.7g
大豆タンパク質 3.0g
NaOH 0.4g
防腐剤 適量
水 全体を100gにする量
この組成物は、良好な化粧品特性を有するフェイスミルクの形態をしており、マイルドで、快適な使用感を有するものであった。
組成物のpHは約5.5であった。
【0034】
組成物2:ローション
β-グルコシダーゼ 0.5g
パルミチン酸2-エチルヘキシル 10.0g
シクロペンタジメチルシロキサン 20.0g
ブチレングリコール 5.0g
防腐剤 適量
水 全体を100gにする量
界面活性化剤を含有していないこのローションは皮膚の落屑を促進した。
【0035】
組成物3:ミルク
パルミチン酸オクチル 35.0g
グリセリン 2.0g
N-アセチル-グルコサミニダーゼ 0.8g
C10-C30アクリラート/アルキルア
クリラートの架橋ポリマー 0.1g
トリエタノールアミン 0.1g
小麦アミノ酸 1.0g
防腐剤 適量
水 全体を100gにする量
界面活性化剤を含有しない得られたミルクは、良好な化粧品特性を有するものであった。
【0036】
組成物4:フェイスゲル
グルセリン 10.0g
N-アセチル-ガラクトシダーゼ 1.0g
ココアンホ二酢酸二ナトリウム 1.0g
防腐剤 適量
水 全体を100gにする量
得られたゲルは良好な化粧品特性を有するものであった。
【0037】
組成物5:水性クレンジング用ゲル
ブチレングリコール 7.0g
ラウロイルサルコシン酸ナトリウム 4.0g
β-グルコシダーゼ 1.0g
トリエタノールアミン 0.8g
カーボマー 0.5g
防腐剤 適量
水 全体を100gにする量
得られたゲルは良好な化粧品特性を有するものであった。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】角質細胞の剥離に対する5%尿素の効果を示す棒グラフである。値は、PBSベースバッファーを含有する負の対照(100%)に対するケラチン検出レベルのパーセントとして示している。
【図2】尿素と比較した、角質細胞剥離に対するN-グリカナーゼの用量依存的効果を示す(免疫ブロットによる)。
【図3】角質細胞剥離に対する3通りの異なる濃度でのN-グリカナーゼの効果を示すグラフである。値は、ベースバッファーを含有する負の対照(100%)に対するケラチン検出レベルのパーセントとして表され、5回の独立した実験の平均値である。
【図4】免疫ブロットによる、クローンザイム社から販売されているある種のセルラーゼ及びある種のグリコシダーゼの落屑に対する効果を示す。
【図5】ベースバッファーと比較した、角質細胞剥離に対するセルラーゼの効果を示すグラフである。値は、ベースバッファーを含有する負の対照(100%)に対するケラチン検出レベルのパーセントとして示している。
【図6】角質細胞剥離に対するグリコシダーゼ混合物の効果を示すグラフである。値は、ベースバッファーを含有する負の対照(100%)に対するケラチン検出レベルのパーセントとして示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
落屑を促進させる少なくとも一のグリコシダーゼを活性成分として含有し、プロテアーゼを含有していないことを特徴とする組成物。
【請求項2】
グリコシダーゼ又はグリコシダーゼ群が、
a)個人から角質層のサンプルを回収し;
b)支持体にサンプルを固定し;
c)支持体に固定されたサンプルを、テストされるグリコシダーゼを含む緩衝溶液と接触させ;
d)緩衝溶液中に放出された不溶性物質を回収し;
e)不溶性物質中に存在するケラチンをアッセイし、グリコシダーゼを含有していないテスト用対照に対してそれを定量すること;
を含むインビトロ落屑テストにより選択されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
グリコシダーゼ又はグリコシダーゼ群が、次の酵素:N-グリカナーゼ、セルラーゼ、β-グルコシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、N-アセチル-グルコサミニダーゼ及び/又はN-アセチル-ガラクトサミニダーゼから選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
β-ガラクトシダーゼ、N-アセチル-グルコサミニダーゼ及びN-アセチル-ガラクトサミニダーゼの組合せを含有することを特徴とする、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
グリコシダーゼ活性を刺激可能な生成物をさらに含有することを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
落屑を促進させるグリコシダーゼが、組成物の全重量に対して0.001%〜15%、好ましくは0.01%〜10%、さらに好ましくは0.05%〜5%の範囲であることを特徴とする、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
グリコシダーゼ活性を刺激可能な生成物が、組成物の全重量に対して0.01%〜10%、好ましくは0.1%〜1%であることを特徴とする請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
落屑を促進させる少なくとも一のグリコシダーゼが、組換えグリコシダーゼであることを特徴とする、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
少なくとも一のグリコシダーゼが、角質層から単離されたグリコシダーゼであることを特徴とする、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
落屑を促進させる特性を有する少なくとも一の他の活性成分をさらに含有することを特徴とする、請求項1ないし9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
局所投与に適していることを特徴とする、請求項1ないし10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
乾燥肌のトリートメント、又は皮膚加齢のトリートメント及び/又は防止のための、請求項1ないし11のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項13】
請求項11に記載の組成物を、皮膚、頭皮、爪及び/又は粘膜に適用することからなる、皮膚の落屑を促進させるための皮膚の美容処理方法。
【請求項14】
請求項11に記載の組成物を皮膚に適用することからなる、乾燥肌のトリートメント、皮膚加齢のトリートメント及び/又は防止のための美容方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−291119(P2007−291119A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−145067(P2007−145067)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【分割の表示】特願2002−540712(P2002−540712)の分割
【原出願日】平成13年11月13日(2001.11.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(391023932)ロレアル (950)
【Fターム(参考)】