説明

少なくとも1つのガス成分の濃度を決定するセンサおよびセンサの作動方法。

【課題】 少なくとも1つのガス成分の濃度、特に燃焼工程からの排気ガス内、好ましくは内燃機関からの排気ガス内の酸素濃度を決定するセンサ、および上昇された測定精度が達成可能な、センサの作動方法を提供する。
【解決手段】 排気ガス内、好ましくは内燃機関(10)からの排気ガス内の少なくとも1つのガス成分の濃度を決定するためのセンサ(12)およびセンサ(12)の作動方法が開示される。流れ方向(26a、26b)においてセンサ(12)のセンサ・エレメント(20)手前にプラズマ場(24)が設けられ、プラズマ場(24)は、そこを流れるガスへのイオン化作用により、プラズマ場(24)の後方下流側において、一方でガス内の熱力学的平衡の設定および他方で一様に短かい炭化水素鎖の形成を可能にする。化学反応は少なくとも1つの触媒(22a、22b)により支援される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に燃焼工程からの排気ガス内、好ましくは内燃機関からの排気ガス内の少なくとも1つのガス成分の濃度を決定するセンサ、およびセンサの作動方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ドイツ実用新案登録第20004514号に、センサ・エレメントを包囲する保護管を有し、保護管が二重保護管として形成されている、この種のセンサが開示されている。2つの同心保護管部分は円筒形中空室を内包し、円筒形中空室に、酸化アルミニウムまたは酸化ジルコニウムから製造されたセラミック繊維材料が充填されている。ガスは、センサ・エレメントに到達する前にセラミック繊維材料内を流動し、セラミック繊維材料は排気ガス内に含まれている水分を捕獲するので、内部保護管部分に水分が凝縮することはない。凝縮水滴が発生し、凝縮水滴がセンサ・エレメント上に到達し且つ熱衝撃を与え、熱衝撃がセラミック・センサ材料位置に到達することが、これにより阻止される。
【0003】
ドイツ特許公開第3000993号に、センサ・エレメントが、多孔性焼結材料、例えば耐熱性ニッケル合金から製造された保護キャップで被覆されている、酸素濃度を決定するためのセンサが開示されている。保護キャップは、センサ・エレメントの、圧力変動および温度変化からの保護のほかに、ガス内に含まれている、例えば硫黄、リンまたは鉛を含有する化合物によるセンサ・エレメントの被毒からの保護を提供する。センサ・エレメントに対向する保護キャップ表面に触媒材料がコーティングされていてもよく、触媒材料はガス内の熱力学的平衡の設定を支援する。
【0004】
ドイツ特許出願第102004012928号に、触媒材料がコーティングされている保護管を有するこの種のセンサが開示されている。触媒は、例えば一酸化炭素、炭化水素および水素のような被酸化性ガス成分の、例えば酸素のような酸化性ガス成分による転化を支援する。一酸化炭素、炭化水素並びに水素は、空燃比λが1より小さいリッチ燃焼により排気ガス内に発生可能である。被酸化性ガス成分は、1より大きい空燃比λに対応するリーン燃焼においてもまた、燃焼が不完全なとき、または燃焼過程後にこのようなガス成分が適切に排気ガス内に注入されたとき、排気ガス内に発生可能である。
【0005】
例えば、少なくとも1つの燃料後噴射により、または排気ガス内への適切な注入により、内燃機関の排気ガス内に未燃燃料部分が到達可能である。この手段は、排気ガス処理装置の直接または間接加熱のために実行可能である。
【0006】
触媒の使用により支援された、ガス内の熱力学的平衡の設定は、例えば炭化水素または水素に対して交差感度を有することがあるセンサの測定精度を上昇させる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、少なくとも1つのガス成分の濃度、特に燃焼工程からの排気ガス内、好ましくは内燃機関からの排気ガス内の酸素濃度を決定するセンサ、並びにそれにより上昇された測定精度が達成可能な、センサの作動方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、少なくとも1つのガス成分の濃度を決定するセンサは、ガスの流れ方向においてセンサのセンサ・エレメント手前にプラズマ場を備えている。
また、本発明によれば、内燃機関の排気ガス内酸素濃度を測定するための有利な形態により形成されているセンサの作動方法は、プラズマ場が内燃機関の運転状態の関数として設けられているように行われ、これにより、プラズマ場を供給するためのエネルギー消費量を低減する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、少なくとも1つのガス成分の濃度を決定するためのセンサにおいて、排気ガスの流れ方向においてセンサ・エレメント手前にプラズマ場が設けられており、プラズマ場は、ガス成分へのイオン化作用により、流れ方向においてプラズマ場後方における熱力学的平衡の設定を支援する。
【0010】
例えば、被酸化性ガス成分として一酸化炭素、炭化水素および水素を含み、また、酸化性ガス成分として酸素を含むガス、例えば排気ガス、好ましくは内燃機関の排気ガスにおいては、遊離酸素はほぼ完全に被酸化性ガス成分を酸化する。したがって、もはや被酸化性ガス成分に対するセンサの交差感度が作用することはない。
【0011】
プラズマ場のイオン化作用により、異なる長さの炭化水素鎖から出発して、一様に短かい炭化水素鎖の形成が支援される。同様に、センサ・エレメント内部における異なる長さの炭化水素鎖の異なる拡散速度により低下されることがあるセンサの測定精度は、これにより上昇する。炭化水素に対する交差感度は低下する。
【0012】
本発明によれば、センサの有利な変更態様および形態が得られる。
一形態により、センサ・エレメントを包囲する保護管が設けられ、保護管はプラズマ場を受け入れている。保護管は、一方で場合により加熱されたセンサ・エレメントの冷却を阻止し、他方で特にガス流れ内に同伴された粒子のセンサ・エレメントへの好ましくない衝突を阻止する。
【0013】
有利な一形態はプラズマ場後方に少なくとも1つの触媒を配置している。触媒はガス内に熱力学的平衡を形成するための反応を支援する。触媒は、さらに、一様に短かい炭化水素鎖の形成を支援する。保護管が存在する場合、触媒は保護管内側のコーティングとして形成されている。代替態様または追加態様として、触媒はセンサ・エレメントのコーティングとして形成されていてもよい。さらに、代替態様または追加態様として、触媒はセンサ・エレメントの内部に配置されてもよい。
【0014】
他の形態はプラズマ場に関するものである。一形態により、複数の電極対が設けられ、その間にそれぞれプラズマ場が発生するようにしてもよい。この手段により、プラズマの点火および燃焼電圧が低下される。他の形態は、誘電バリヤ放電を形成するために電極にセラミック・コーティングが設けられている。
【0015】
本発明によれば、内燃機関の排気ガス内酸素濃度を測定するための有利な形態により形成されているセンサの作動方法は、プラズマ場が内燃機関の運転状態の関数として設けられているように行われる。この手段により、プラズマ場を供給するためのエネルギー消費量は低減される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は内燃機関10を示し、内燃機関10の吸気領域内に空気センサ11が配置され、内燃機関10の排気領域内にセンサ12並びに排気ガス処理装置13が配置されている。空気センサ11は、制御装置15に空気信号mLを出力し、センサ12はセンサ信号lamを出力する。内燃機関10は、制御装置15に回転速度信号nを供給する。制御装置15にはさらに、トルク目標信号MFaが供給される。制御装置15は、内燃機関10に燃料信号mKを出力する。
【0017】
制御装置15は、燃料信号mKを、詳細には図示されていない内燃機関10の燃料注入装置に、少なくとも、同様に詳細には図示されていない自動車の詳細には図示されていない加速ペダルにより導かれたトルク目標値MFaの関数として出力する。場合により、燃料信号mKは、さらに、空気信号mLおよび/またはセンサ信号lamおよび/または回転速度信号nの関数である。
【0018】
図2は、センサ12の概略断面図を示す。センサ12はセンサ・エレメント20を含み、センサ・エレメント20は保護管21内に配置され、保護管21の内側に触媒22a、22bが配置されている。保護管21の内部に複数の電極対23a、23bが配置され、それらの間にそれぞれプラズマ場24が発生する。電極対23a、23bは、交流電圧源25に接続されている。図2に記載されている矢印は、プラズマ場24前後におけるガスの流れ方向26a、26bを示す。ガスは、プラズマ場24内を流れ且つ触媒22a、22bの脇を流れた後に、センサ・エレメント20に衝突し、それに続いて開口28a、28bから保護管21を離れる。
【0019】
排気ガス処理装置13は、例えば少なくとも1つの触媒および/または粒子フィルタである。内燃機関10の排気領域内に発生する排気ガスは、例えば一酸化炭素、炭化水素、並びに水素のような被酸化性排気ガス成分、並びに例えば酸素のような酸化性排気ガス成分を含んでいることがある。
【0020】
センサ12は、例えば内燃機関10の排気ガス内酸素含有量を測定するように形成されている。センサ12は、被酸化性ガス成分に対して交差感度を有していることがある。センサ12は、さらに、ガス内に含まれている炭化水素の異なる鎖長に対して、センサ・エレメント20内における異なる鎖長の異なる拡散速度に基づく関数関係を有していることがある。
【0021】
内燃機関10は、異なる運転状態において運転可能である。このような運転状態は、特に排気ガス処理装置13の調整のために実行される。
1より小さい空燃比λを有するリッチ燃焼は、例えばNOx吸蔵触媒の再生を実行するために行われる。リッチ燃焼は、さらに、排気ガス処理装置13、例えば触媒または粒子フィルタの間接または直接加熱のために存在する酸素を用いて行われてもよい。
【0022】
直接加熱においては、燃焼可能な排気ガス成分が、排気ガス処理装置13の触媒層上において、存在する酸素により酸化され、酸素は、残留酸素として排気ガス内に含まれていても、または二次空気供給の範囲内において排気ガス内に注入されてもよい。触媒層により支援された発熱反応は、排気ガス処理装置13を直接加熱する。
【0023】
間接加熱においては、燃焼可能な排気ガス成分が、例えば加熱されるべき排気ガス処理装置13手前に配置されている、詳細には図示されていない酸化触媒内において酸化され、この場合、酸化触媒内の発熱反応が排気ガスを加熱させ、排気ガスは排気ガス処理装置13を間接加熱する。
【0024】
さらに、1より大きい空燃比λによるそれ自身リーンな燃焼が内燃機関10内で行われることがあり、この場合、被酸化性排気ガス成分が、例えばエンジン内部の燃料後噴射により、または排気ガス内への適切な噴霧により注入される。
【0025】
実験により、プラズマ場24は、リーンであるにもかかわらず被酸化性ガス成分を含む比較的リーンなガスにおける個々のガス成分へのイオン化作用により、流れ方向においてプラズマ場24後方における熱力学的平衡の設定を支援することが特定された。流れ方向においてプラズマ場24後方に配置されているセンサ・エレメント20には、これにより、一方で少ない酸素が、他方で特にきわめて少ない酸化性ガス成分が供給される。酸化性ガス成分に対して、場合により存在するセンサ・エレメント20内の交差感度は、これによりもはやセンサ信号lamに作用することはない。
【0026】
少ない被酸化性ガス成分を含むにすぎないリーン・ガスにおいては、プラズマ場24は、プラズマ場24の後方下流側におけるガス内のほぼ完全な熱力学的平衡の設定を支援するので、このようなガス組成においてもまた、センサ12の測定精度は上昇される。
【0027】
リッチであるにもかかわらず酸素を含む、多くの被酸化性ガス成分を有する比較的リッチなガスにおいては、プラズマ場24は、同様に、プラズマ場24の後方下流側におけるガス内の熱力学的平衡の設定を支援するので、センサ信号lamは高い精度で酸素不足に対する尺度を表わしている。
【0028】
僅かな酸素を含むにすぎないリッチ・ガスにおいては、プラズマ場24は、同様に、プラズマ場24の後方下流側におけるほぼ完全な熱力学的平衡の設定を支援するので、このようなガス組成においてもまた、センサ12の測定精度は上昇される。
【0029】
一般に、異なる鎖長を有する炭化水素は、酸素部分とは無関係に、プラズマ場24がイオン化作用により鎖長を低下させ、また鎖長ができるだけ小さく且つ特にできるだけ等しい長さとなるようにすることによって、精度の著しい上昇が得られる。炭化水素の異なる鎖長に基づいてセンサ・エレメント20内の拡散速度が異なることによる、センサ12から供給されるセンサ信号lamの歪曲は、一様な鎖長によりほぼ完全に消失する。
【0030】
本発明によるセンサ12の特に有利な変更形態により、プラズマ場24の後方下流側に少なくとも1つの触媒22a、22bが設けられ、触媒22a、22bは、熱力学的平衡を設定するための反応と、また場合によりできるだけ一様な短鎖長を有する炭化水素の形成とを支援する。
【0031】
一形態により、触媒22a、22bは別の構成要素として形成されていてもよい。他の形態により、少なくとも1つの触媒22a、22bは、保護管21内側のコーティングとして形成されていてもよい。コーティングは、代替態様または追加態様として、多孔性材料上に塗布されてもよい。
【0032】
代替形態または追加形態により、触媒の形成がセンサ・エレメント20のコーティングとして設けられている。他の代替形態または追加形態により、触媒の形成はセンサ・エレメント20の内部に設けられている。
【0033】
プラズマ場24を供給するために交流電圧源25が設けられ、交流電圧源25は、プラズマ24を点火するために十分なピーク電圧を有する交流電圧を供給する。プラズマ24の点火後においては、プラズマ24の燃焼電圧は点火電圧以下であるので、交流電圧源25の平均電圧は低下されてもよい。
【0034】
必要な点火および燃焼電圧を低下させるための第1の手段は、2つ以上の電極対23a、23bを配置している。他の手段として、誘電バリヤ電圧を形成するために、セラミック材料による電極対23a、23bのコーティングが設けられていてもよい。追加手段として、ガス流れに影響を与えないために、電極対23a、23b間の間隔はできるだけ小さく、好ましくは0.5−3mmの間で選択される。
【0035】
一形態は、交流電圧源25が内燃機関10の所定の運転状態においてのみ作動されるように設計されている。熱力学的平衡内にない排気ガスの発生が予測されるとき、このような運転状態が考慮されるべきであることが好ましい。さらに、一般に異なる鎖長を有する排気ガス内炭化水素部分の上昇が予測されるとき、このような運転状態が考慮されるべきであることが好ましい。この手段により、プラズマ場24の供給のためにできるだけ少ないエネルギー消費量が達成される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明によるセンサが使用される技術的周辺図である。
【図2】本発明によるセンサの略断面図である。
【符号の説明】
【0037】
10 内燃機関
11 空気センサ
12 センサ
13 排気ガス処理装置
15 制御装置
20 センサ・エレメント
21 保護管
22a、22b 触媒
23a、28b 電極対
24 プラズマ場
25 交流電圧源
26a、26b 流れ方向
28a、28b 開口
lam センサ信号
MFa トルク目標信号(トルク目標値)
mK 燃料信号
mL 空気信号
n 回転速度信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスの流れ方向(26a、26b)においてセンサ(12)のセンサ・エレメント(20)手前にプラズマ場(24)が設けられていることを特徴とする少なくとも1つのガス成分の濃度を決定するセンサ。
【請求項2】
センサ・エレメント(20)を包囲する保護管(21)が設けられていること、および
プラズマ場(24)が保護管(21)内に配置されていること、
を特徴とする請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
流れ方向(26a、26b)においてプラズマ場(24)後方に配置された、少なくとも1つの触媒(22a、22b)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のセンサ。
【請求項4】
触媒(22a、22b)が、保護管(21)のコーティングとして形成されていることを特徴とする請求項3に記載のセンサ。
【請求項5】
2つ以上の電極対(23a、23b)が設けられ、その間にプラズマ場(24)が発生することを特徴とする請求項1に記載のセンサ。
【請求項6】
少なくとも1つの電極対(23a、23b)が、セラミック・コーティングを有することを特徴とする請求項5に記載のセンサ。
【請求項7】
少なくとも1つの電極対(23a、23b)の間の間隔が、0.5−3mmの範囲内にあることを特徴とする請求項5に記載のセンサ。
【請求項8】
センサ・エレメント(20)が、ガスの酸素濃度を測定するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のセンサ。
【請求項9】
センサ・エレメント(20)が、内燃機関(10)の排気ガス内の酸素濃度を測定するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のセンサ。
【請求項10】
ガスの流れ方向(26a、26b)においてセンサ(12)のセンサ・エレメント(20)手前にプラズマ場(24)が設けられていること、
センサ・エレメント(20)が内燃機関(10)の排気ガス内酸素濃度を測定するように形成されていること、
プラズマ場(24)が内燃機関(10)の運転状態の関数として設けられていること、
を特徴とするセンサの作動方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−84463(P2006−84463A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−238415(P2005−238415)
【出願日】平成17年8月19日(2005.8.19)
【出願人】(591245473)ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (591)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【Fターム(参考)】