説明

少なくとも1つのトール様受容体7またはトール様受容体8アゴニストおよびトール様受容体4アゴニストを含む免疫賦活性組成物

本発明は、少なくとも1つのトール様受容体7またはトール様受容体8アゴニストおよびトール様受容体4アゴニストを含む免疫賦活性組成物に関する。本発明の組成物はワクチン抗原を含むこともできる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、抗原提示細胞上に存在するトール様受容体7またはトール様受容体8の少なくとも1つのアゴニストを含む免疫賦活性組成物の分野に関する。さらに詳しくは、本発明は、さらにトール様受容体4のアゴニストを含む組成物、特に、さらにワクチン抗原を含むかかる組成物に関する。
【0002】
免疫賦活薬のカテゴリーから選択されるアジュバントによってワクチン中に存在する抗原により誘発される免疫応答を増強したり方向付けたりすることが必要であることは従来知られている。抗原が単独で投与される場合には特にその非常に高い純度のためにそれが十分には免疫原性ではないので、またはワクチン中に存在する抗原の量または行われるべきブースターの回数を減少させることが望まれるので、またはワクチンによって与えられる保護の期間を延長することが望まれるので、これは望ましい。しばしば、誘発される応答を定量的ではなく定性的に修飾することが目的となる。
【0003】
すでに数多くの分子がそれらのアジュバント特性に関して記載されている;しかしながら、ワクチンにおいて現在市販されている主なアジュバントはアルミニウムまたはエマルションをベースとしたアジュバントである。
【0004】
かくして、公知の先行技術の中で、特に、モルモットにおける単純ヘルペス2型ウイルスの糖タンパク質に対するワクチンアジュバントとしての1H−イミダゾ[4,5c]キノリン−4−アミンの使用を記載している特許EP636031を挙げることができる。この文献では、投与されたワクチンは、動物のHSV2ウイルスでの抗原投与の間じゅう疾患の発症を完全に予防することはできないが、病変、ウイルスの膣排泄および疾患の再発現象を軽減することができる。
【0005】
Cellular Immunology 204, 64-74 (2000)におけるVasilakos et al.による“Adjuvant activities of Immune Response Modifier R848: Comparison with CpG ODN”なる標題の刊行物によると、抗原としてマウスに投与したオボアルブミンを使用する試験ではイミダゾキノリン誘導体R−848はTH1型のアジュバントであることが記載されている。この刊行物はまた、ジヌクレオチドCG(ここで、シトシンはメチル化されていない)を含むオリゴヌクレオチドからなる別のタイプのワクチンアジュバントも記載している。
【0006】
Nature Immunology, June 2002, volume 3 No. 6, p 499におけるJurk et al.による“Human TLR7 or TLR8 independently confer responsiveness to the antiviral compound R-848”なる標題の刊行物からなる別の先行技術文献には、トール様受容体は病原体に対する免疫応答において重要な役割を果たし、トール様受容体9は非メチル化CpGユニットを有する細菌DNAによって活性化されるが、R−848はトール様受容体7およびトール様受容体8を介して細胞を活性化することが記載されている。
【0007】
Vaccine 21 (2003) pages 961-970におけるPrzetak et al.による“Novel synthetic LPS receptor agonists boost systemic and mucosal antibody responses in mice”なる標題の刊行物には、糖環が欠けているが、破傷風毒素またはオボアルブミンによって形成される抗原に対するアジュバント活性を有する、脂肪酸鎖を有する化合物が記載されている。これらの化合物は、トール様受容体4と関係がある作用機序を活性化することが知られている。
【0008】
これらの化合物の全ては、個々に、投与条件に応じて様々な程度の免疫賦活特性を有することが知られている;しかしながら、特にワクチン抗原の投与の場合には、これらの免疫賦活特性を増強することができる組成物が依然として望まれている。
【0009】
この目的を達成するために、本発明の主題は、トール様受容体7またはトール様受容体8の少なくとも1つのアゴニストを含む免疫賦活性組成物であって、さらにトール様受容体4のアゴニストを含む免疫賦活性組成物である。
したがって、免疫賦活性応答の増強が得られる。
【0010】
本発明の特定の実施態様によると、トール様受容体7またはトール様受容体8のアゴニストはトール様受容体4のアゴニストとは異なる化合物である。
【0011】
特定の実施態様によると、該免疫賦活性組成物は、さらに少なくとも1つのワクチン抗原を含む。したがって、抗原に対して誘発される免疫応答が増強される。
【0012】
本発明の特定の実施態様によると、トール様受容体7またはトール様受容体8のアゴニストは、イミダゾキノリンアミン誘導体である。かかるアゴニストは、純粋な化学合成によって得ることができ、したがって、医薬用途に必要な再現性および安全性の保証の全てを有する。
【0013】
特定の実施態様によると、イミダゾキノリンアミン誘導体は、4−アミノ−2−エトキシメチル−α,α−ジメチル−1−H−イミダゾ[4,5c]キノリン−1−エタノールである。
【0014】
一の実施態様によると、トール様受容体4のアゴニストは、出願公開WO 0044758に記載されている化合物、特に、ER804057である;純粋な化学合成によって得られるかかる化合物はまた、医薬用途に必要な再現性および安全性の保証の全てを有する。
【0015】
本発明の多くの他の利点は、実施例5において得られる結果を例示する図1〜4を参照して、以下に記載する詳細な説明を考慮して明らかになるであろう。
【0016】
本発明は、免疫賦活性組成物に関する;免疫賦活性組成物なる表現は、樹状細胞のような免疫系の細胞の成熟または活性化を誘発することができ、次いで、検出され得るある種のマーカー(CD25、CD80、CD83および同類のもの)の該細胞上での発現またはアッセイされ得るサイトカイン(IL6、IL12p70、TNF−αおよび同類のもの)の分泌を引き起こす組成物を意味すると解される。
【0017】
特定の実施態様によると、本発明の免疫賦活性組成物は少なくとも1つのワクチン抗原を含む。ワクチン抗原なる表現は、ヒトまたは動物に投与された場合に免疫系応答を誘発する能力を有する抗原を意味すると解される。この免疫系応答は、抗体の生産によって、または、ある種の細胞(特に、抗原提示細胞(例えば、樹状細胞)、Tリンパ球およびBリンパ球)の活性化によって明らかにすることができる。
当該ワクチン組成物は、予防用または治療用またはどちらのためでもある組成物であり得る。
【0018】
それは、ワクチンのために通常用いられるかまたは推奨されるいずれもの経路(非経口経路、粘膜経路)によって投与され得、種々の形態(注射用液剤または微粉砕可能な液剤、凍結乾燥またはスプレードライまたは風乾した製剤、および同類のもの)で提供することができる。それは、筋肉注射、皮下注射または皮内注射のために注射器または無針注射器によって投与することができる。それはまた、粘膜が鼻、肺、膣または直腸のいずれのものであるかにかかわらず粘膜のレベルで乾燥粉末または液体スプレーを送達することができるネブライザーによって投与することもできる。本発明によるワクチン組成物において使用されるワクチン抗原は、「直接(direct)」抗原であり、言い換えると、これはこれらの抗原をコードするDNAではなく、抗原自体である;これは、微生物の全体であってもこの微生物のほんの一部であってもよい;したがって、ワクチンにおいて通常使用される抗原の中で、特に、以下のものを挙げることができる:
多糖類(それらが単独であるか、担体タンパク質のような担体要素と結合しているかにかかわらない)、
生弱毒全微生物、
不活化微生物、
組換えペプチドおよびタンパク質、
糖タンパク質、糖脂質、リポペプチド、
合成ペプチド、
「スプリット」ワクチンと称されるワクチンの場合の破断微生物。
【0019】
これらの抗原は、例えばジフテリア、テタヌス、ポリオ、狂犬病、百日咳、A型、B型およびC型肝炎、黄熱病、腸チフス、水痘、麻疹、流行性耳下腺炎、風疹、日本脳炎、髄膜炎、肺炎球菌性感染症、ロタウイルス感染症、AIDS、癌、結核、ライム病、RSV感染症、ヘルペス、クラミジア(Chlamydia)、ナイセリア・ゴノレア(Nisseria gonorrheae)、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)、もしくはヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenza)・タイプBによって引き起こされる細菌性疾患、マラリア、リーシュマニア症、リステリア症、および同類のもののような種々の疾患の治療または予防に使用されるかまたは使用され得る抗原である。
【0020】
本発明のワクチン組成物は、単一の病原体または癌に対する免疫化を意図する(言い換えると、それは単一の病原体または癌からの1つまたはそれ以上の抗原を含む)組成物であっても、または、いくつかの病原体または癌に対する免疫化を意図する組成物(以下、混合ワクチンと記す)であってもよい。
【0021】
本発明の目的のために、トール様受容体7およびトール様受容体8のアゴニストなる表現は、これらの受容体のいずれかとまたはどちらとも結合する能力およびこれらの受容体に関連するシグナル伝達カスケードの引き金を引く能力を有する化合物、特に、これらの受容体のいずれかをまたはどちらもコードするcDNAをトランスフェクトされた細胞におけるNF−κBのトランスロケーションを活性化する能力を有する化合物を意味すると解される。
【0022】
本発明の目的に適しているアゴニストの中で、特に、置換イミダゾキノリンアミン、特に米国特許第5389640号に記載されているものを挙げることができる。米国特許第5389640号の実施例99および101に製造方法が記載されている4−アミノ−2−エトキシ−メチル−α,α−ジメチル−1−H−イミダゾ[4,5c]キノリン−1−エタノール(R−848とも称される)を用いて特に良好な結果が得られた。
【0023】
本発明の目的のために、トール様受容体4のアゴニストなる表現は、この受容体と結合する能力および関連シグナル伝達カスケードの引き金を引く能力を有する化合物、特に、この受容体をコードするcDNAをトランスフェクトされた細胞におけるNF−κBのトランスロケーションを活性化する能力を有する化合物を意味すると解される。
【0024】
本発明の目的に適しているアゴニストの中で、グラム陰性細菌のLPS、より適当には、これらのLPSのリピドAのモノリン酸化誘導体、特に、3D−MPLまたは3位で脱アシル化されたモノリン酸化リピドA(英国特許第2211502号および米国特許第4436727号およびその再発行第4912094号においてRIBIによって記載されている)を挙げることができる。出願公開WO 98/50399においてCORIXAにおいて記載されるもの(特に、RC−529)のようなこれらの生成物の合成アナログ、または、出願公開WO 02/12258に記載されるものもまた適している。同様に、OM Pharmaの名義下の出願公開WO 95/14026、WO 00/00462、WO 01/46126およびWO 01/46127の主題である化合物も適当であり得る。
【0025】
好ましくは、EISAI COの名義下の米国特許第6290973号に記載されているもののような、サッカライド環を含まない純粋な合成生成物、特に、ER 112066と称される生成物、または、より好ましくは、ER 804057と称される生成物が使用される。この生成物は、化合物番号50について出願公開WO 0044758に記載されている製造方法、すなわち、第32頁に記載されている方法(ただし、該出願公開の第28頁に記載されている生成物39から生成物41に導く工程において予めミリストイルクロリドの代わりにEDC(言い換えると、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩)の存在下のβ−ケトミリスチン酸を使用する)に従って得られる(1R,6R,22R,27R)−1,27−ジヘプチル−1,27−ビスドデカノイル−9,19−ジヒドロキシ−9,19−ジオキシド−14−オキソ−6,22−ビス[(1,3−ジオキソテトラデシル)アミノ]−4,8,10,18,20,24−ヘキサオキサ−13,15−ジアザ−9,19−ジホスホヘプタコサンの二ナトリウム塩である。
【0026】
これらのアゴニストの各々は、トール様受容体4のアゴニストであるかトール様受容体7および8のアゴニストであるかにかかわらず、免疫賦活特性を有することが知られている。
【0027】
本発明の重要さは、本発明に関連して観察される応答が増強された応答であるということである。このような増強を得ることは、免疫学の分野に詳しくない人にとってはまず明らかであると思われるであろうが、本発明の特定の分野においては反対に予期しないことであると考えられるはずである;実際に、実験によって、2種類またはそれ以上の免疫賦活薬が同一組成物中に存在する場合には、それらのうちの1つによって生じる効果が、存在する他の免疫賦活薬に対して阻害性であることがよくあることや、少なくとも、一の生成物が免疫賦活効果を発揮する場合には、既に得られた応答をさらに増強するのが困難であることが示されている。
【0028】
インビトロでの免疫賦活化試験では、別々に使用される免疫賦活薬の各々によって誘発される活性化のレベルから予想することができない非常に格別なレベルの細胞の活性化を誘発する免疫系の細胞と接触させられる免疫賦活薬の効果の相乗効果が観察される。
【0029】
同様に、特に非常に良好なレベルの応答でもって応答している対象体の数に関して、免疫賦活性組成物がワクチン抗原を含む場合に得られる応答において観察される相乗効果は非常に格別であり、アジュバントの各々を単独で用いて得られる応答からは全く推測することができない。
【0030】
他の受容体のいくつかのアゴニストを組み合わせることによって行われる試験は、単独で使用されるアゴニストの各々によって観察される効果を全く増強させなかったので、これらのトール様受容体7、8および4のアゴニストを使用して得られた結果はいっそう意外である。
【0031】
本発明のトール様受容体4、7および8のアゴニストは、一緒に投与されるワクチン抗原をアジュバントする特性を有し、これは、一般に、該アゴニストが、ワクチン組成物を投与する生物の免疫系応答を該アゴニストの不在下にて得られるであろう応答と比べて増強または修飾することができることを意味する。特に、これは、体液性応答または細胞性応答または両方の応答の増強を含むことができる。該作用はまた、応答の増強ではなく、誘発される応答の異なる方向付けであってもよい:例えば、体液性応答ではなく細胞性応答に向けての方向付け、他のものではなくある種のサイトカインの産生に向けての方向付け、他のものではなくあるタイプまたはサブタイプの抗体の産生に向けての方向付け、および他のものではなくある種の細胞の賦活化に向けての方向付けなど。アジュバントの作用はまた、経時的な免疫応答の期間の増大にあってもよい。これはまた、免疫化された個体の保護を得るのに必要な投与回数の減少、または投与される用量に含まれる抗原の量の減少を可能にすることも含み得る。
【0032】
本発明の場合、観察される相乗効果は、特にTh1応答に関して、得られる結果の分散の低下によって本質的に明らかになる。
【0033】
本発明によるアゴニストのアジュバント作用は、それらが投与の間じゅうワクチン組成物の抗原と合わせられている場合(すなわち、それらがワクチン組成物中に直接存在する場合)、またはそれらが免疫原性を修飾することが望まれる抗原と別々に投与される場合に得ることができる。しかしながら、投与されるべき抗原と同一のワクチン組成物中にてそれらを使用するのが望ましい。
【0034】
以下の実施例によって本発明の特定の実施態様を説明する。
【0035】
1.トール様受容体7および8のアゴニストの貯蔵懸濁液の調製
Avanti Polar Lipids(アラバマ州アラバスター)から入手したジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)およびInVivogen社によって提供された4−アミノ−2−エトキシメチル−α,α−ジメチル−1−H−イミダゾ[4,5c]キノリン−1−エタノール(R−848)が利用可能である。
これらの化合物は、粉末形態で提供される。
【0036】
R−848 150μg(0.51μmol)を加えたDPPC 342μg(0.46μmol)をクロロホルム/メタノール(4:1(vol/vol))混合液984μlに溶解する。ロータリーエバポレーターを用いて該溶液をガラス製丸底フラスコ中にて乾燥させて、丸底フラスコの壁にて均一な脂質膜を得る。この膜を高真空下にてさらに乾燥させて微量の残留溶媒を除去し、次いで、60℃の水3ml中に取る。得られたリポソーム懸濁液を、ボルテックスし、超音波浴中にて超音波処理することによってホモジナイズし、次いで、50℃に温度調節したLipex押出機を用いて0.8μmの孔を有するポリカーボネート膜を通過させ、次いで、0.4μmの孔を有する膜を通過させ、最後に0.2μmの孔を有する膜を通過させて連続的に押し出す。
かくして、114μg/mlのDPPCおよび50μg/mlのR−848のDPPC/R−848(0.9:1(mol/mol))リポソームが水中にて得られる。
【0037】
2.トール様受容体4のアゴニストの貯蔵懸濁液の調製
Avanti Polar Lipids(アラバマ州アラバスター)から入手したジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)およびEisai社によって提供されたER804057が利用可能である。
これらの化合物は、粉末状態で提供される。
【0038】
ER804057 150μg(0.092μmol)を加えたDPPC 273μg(0.37μmol)をクロロホルム/メタノール(4:1(vol/vol))混合液760μlに溶解する。ロータリーエバポレーターを用いて該溶液をガラス製丸底フラスコ中にて乾燥させて、丸底フラスコの壁にて均一な脂質膜を得る。この膜を高真空下にてさらに乾燥させて微量の残留溶媒を除去し、次いで、60℃の水3ml中に取る。得られたリポソーム懸濁液を、ボルテックスし、超音波浴中にて超音波処理することによってホモジナイズし、次いで、50℃に温度調節したLipex押出機を用いて0.8μmの孔を有するポリカーボネート膜を通過させ、次いで、0.4μmの孔を有する膜を通過させ、最後に0.2μmの孔を有する膜を通過させて連続的に押し出す。
かくして、91μg/mlのDPPCおよび50μg/mlのER804057のDPPC/ER804057(4:1(mol/mol))リポソームが水中にて得られる。
【0039】
3.トール様受容体4のアゴニストおよびトール様受容体7および8のアゴニストの貯蔵懸濁液の調製
Avanti Polar Lipids(アラバマ州アラバスター)から入手したジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)およびInVivogen社によって提供された4−アミノ−2−エトキシメチル−α,α−ジメチル−1−H−イミダゾ[4,5c]キノリン−1−エタノール(R−848)およびEisai社によって提供されたER804057が利用可能である。
これらの化合物は、粉末状態で提供される。
【0040】
TLA4 150μg(0.092μmol)およびR−848 150μg(0.51μmol)を加えたDPPC 273μg(0.37μmol)をクロロホルム/メタノール(4:1(vol/vol))混合液1.06mlに溶解する。ロータリーエバポレーターを用いて該溶液をガラス製丸底フラスコ中にて乾燥させて、丸底フラスコの壁にて均一な脂質膜を得る。この膜を高真空下にてさらに乾燥させて微量の残留溶媒を除去し、次いで、60℃の水3ml中に取る。得られたリポソーム懸濁液を、ボルテックスし、超音波浴中にて超音波処理することによってホモジナイズし、次いで、50℃に温度調節したLipex押出機を用いて0.8μmの孔を有するポリカーボネート膜を通過させ、次いで、0.4μmの孔を有する膜を通過させ、最後に0.2μmの孔を有する膜を通過させて連続的に押し出す。
かくして、91μg/mlのDPPC、50μg/mlのER804057および50μg/mlのR−848のDPPC/ER804057/R−848(4:1:5.5(mol/mol/mol))リポソームが水中にて得られる。
【0041】
4.ワクチン組成物の調製
ワクチン抗原としてAIDSに対するワクチンにて使用することができる組換えタンパク質を含むワクチン組成物を調製する;該組換えタンパク質は、出願公開WO 99/33346に記載されているように、イー・コリ(E.coli)における発現および様々なクロマトグラフィー工程による精製、次いで、化学的不活化によって得られる解毒されたTAT III Bタンパク質であり、カルボキシメチル化Tatの用語の下に同定されている。
【0042】
該組成物は以下に記載する方法で調製される。
実施例1〜3に従って調製したリポソーム懸濁液と、200mM NaCl(pH7.4)を含有する100mMトリス緩衝液中200μg/mlの濃縮Tat溶液とを、容量対容量(0.9ml+0.9ml)で混合して、以下に示す組成の調製物(最終1.8ml)を得る。ここで、用量200μl当たりの抗原およびアジュバントの量が示されている。
1)Tat(20μg)
2)Tat(20μg)+ER804057/DPPC(5μg/9.1μg、すなわち、3.1nmol/12.4nmol)
3)Tat(20μg)+ER804057/DPPC/R−848(5μg/9.1μg/5μg、すなわち、3.1nmol/12.4nmol/16.7nmol)
4)Tat(20μg)+R−848/DPPC(5μg/11.4μg、すなわち、16.7nmol/15.5nmol)。
【0043】
5.マウスに対する免疫化試験
実施例4で調製した組成物のうちの1つをマウス1匹あたり200μlの用量で皮下注射した8週齢の雌性BALB/cマウス6匹ずつのグループ4つが利用可能である;注射は0日目および21日目に行われる。
一次応答を評価するために14日目に、二次応答を評価するために32日目に、眼窩後の洞で血液試料を採取する。特異的IgG1およびIgG2aのレベルの測定は、標準的なELISA試験によって行われる。
37日目にマウスを屠殺する;それらの脾臓を取り出し、脾細胞を単離する。
【0044】
体液性応答に関して得られた結果を下記表および図1〜4にまとめて記載する。ここで、IgGレベルは、任意のELISA単位(log10)として表される。
各グループのマウスについて、表中に示される値は、各マウスについて得られた値の平均幾何力価である。
【0045】
【表1】

【0046】
IgG1/IgG2a比によって、誘発される免疫応答の方向付けを評価することができる。実際に、Th1型応答は高い割合のIgG2aによってマウスにおいて示されるが、一方、Th2型応答は高い割合のIgG1によって示される。したがって、本発明の組成物によって、応答は、免疫賦活薬の各々が個々に使用された場合よりも非常に強くTh1型に向けて方向付けられる。
【0047】
図1〜4に示されるグラフによって、マウスの各々について得られる応答を可視化することができ、したがって、該結果の分散の大小を評価することができる。本発明の組成物の性能はブースター注射後に得られたIgG2a応答のレベルで特に顕著である;実際に、R−848であろうとER804057であろうと単一の免疫賦活薬を有する組成物について得られた応答レベルは平均して満足のいくものであるが、これらの場合の結果は比較的分散している;これに対して、本発明の組成物を用いた場合、全てのマウスが高いIgG2aレベルを生産した。この性能は、ワクチン接種した対象体全てを保護することが常に望まれるが、個体間で一般的に見られる可変性により該ワクチンを受けている個体の各々に同一の利益を確保することができないワクチン接種の技術分野では、非常に重要である。
【0048】
トール様受容体7および8のアゴニストおよび抗原提示細胞上に存在する別の受容体のアゴニストを組み合わせることによって行われる試験によってアジュバントとして各化合物を別々に使用して得られる応答と比べて該応答を向上させることができなかったので、トール様受容体4のアゴニストおよびトール様受容体7および8のアゴニストの両方を含むアジュバントを同一ワクチン組成物にて提供することによって観察されるこれらの結果は、いっそう意外なことである。
【0049】
本発明の医薬組成物の細胞性応答に対する効果を評価するために、ELISPOT試験によってγ−インターフェロンを産生することができる脾臓細胞の計数を行う。この試験は、新鮮な細胞および再刺激した細胞の両方について行う。
【0050】
該試験を行うために、培地単独または組換えTAT抗原のいずれかの存在下にて、細胞培養プレートにて1ウェルにつき200,000細胞の割合で脾臓細胞を培養する。16時間の培養後、ELISPOTを可視化し、すなわち、γ−インターフェロンを分泌する細胞に相当するスポットの数を計数する。得られた結果を下記表にまとめて記載する;示される値は、各マウスについて算出した、組換えTATを有するウェル中の細胞100万個当たりの計数したスポットの数と培地だけを有するウェル中の細胞100万個当たりの計数したスポットの数との間の差異の平均値(マウスの1グループ当たり)である。新鮮な細胞について得られた結果を下記表にまとめて記載する。
【0051】
【表2】

【0052】
TATタンパク質の配列を完全に網羅している重複ペプチドプールによって、IL2の存在下にて、7日間、インビトロで再刺激した細胞について得られた結果を下記表にまとめて記載する。
【0053】
【表3】

【0054】
さらに、平行して、ELISA試験により、組換えTATの存在または不在下にて5日間培養した脾細胞を含む培養上清におけるIL5サイトカインおよびγ−インターフェロンの分泌の測定を行う。
得られた結果を下記表にまとめて記載する(pg/mlで表す)。
【0055】
【表4】

【0056】
これらの結果は、本発明の組成物によってTH1応答について得られた特に有益な効果を示す。
【0057】
6.ヒト細胞の刺激の試験のためのリポソーム懸濁液の調製
Avanti Polar Lipids(アラバマ州アラバスター)から入手したジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)およびInVivogen社によって提供された4−アミノ−2−エトキシメチル−α,α−ジメチル−1−H−イミダゾ[4,5c]キノリン−1−エタノール(R−848)が利用可能である。
これらの化合物は粉末形態で提供される。
【0058】
R−848 1mg(3.38μmol)を加えたDPPC 9.92mg(13.5μmol)をクロロホルム/メタノール(4:1(vol/vol))混合液2mlに溶解する。ロータリーエバポレーターを用いて該溶液をガラス製丸底フラスコ中にて乾燥させて、丸底フラスコの壁にて均一な脂質膜を得る。この膜を高真空下にてさらに乾燥させて微量の残留溶媒を除去し、次いで、60℃の水4ml中に取る。得られたリポソーム懸濁液を、ボルテックスし、超音波浴中にて超音波処理することによってホモジナイズし、次いで、50℃に温度調節したLipex押出機を用いて0.8μmの孔を有するポリカーボネート膜を通過させ、次いで、0.4μmの孔を有する膜を通過させ、最後に0.2μmの孔を有する膜を通過させて連続的に押し出す。
かくして、2.48mg/mlのDPPCおよび250μg/mlのR−848のDPPC/R−848(4:1(mol/mol))リポソームが水中にて得られる。
【0059】
Avanti Polar Lipids(アラバマ州アラバスター)から入手したジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)およびEisai社によって提供されたER804057が利用可能である。
これらの化合物は、粉末状態で提供される。
【0060】
ER804057 11mg(6.7μmol)を加えたDPPC 19mg(25μmol)をクロロホルム/メタノール(4:1(vol/vol))混合液5mlに溶解する。ロータリーエバポレーターを用いて該溶液をガラス製丸底フラスコ中にて乾燥させて、丸底フラスコの壁にて均一な脂質膜を得る。この膜を高真空下にてさらに乾燥させて微量の残留溶媒を除去し、次いで、60℃の水11ml中に取る。得られたリポソーム懸濁液を、ボルテックスし、超音波浴中にて超音波処理することによってホモジナイズし、次いで、50℃に温度調節したLipex押出機を用いて0.8μmの孔を有するポリカーボネート膜を通過させ、次いで、0.4μmの孔を有する膜を通過させ、最後に0.2μmの孔を有する膜を通過させて連続的に押し出す。
かくして、1.72mg/mlのDPPCおよび1mg/mlのER804057のDPPC/ER804057(4:1(mol/mol))リポソームが水中にて得られる。
【0061】
7.インビトロでのヒト細胞の刺激の試験
本発明の組成物の、インビトロでヒト単球に由来する樹状細胞の成熟を誘発する能力を4つの個別のドナーについて評価する。末梢血単核細胞から単球を得、IL4の存在下およびGM−CSFの存在下にて5〜6日間培養する。
次いで、これらの細胞を以下の組成物のうちの1つの存在下で2日間培養する:
・培養培地だけ(負の対照としての役割を果たす)、
・実施例6に従って調製し、2.96μg/mlのR−848を得るように希釈したR−848/DPPCリポソーム、
・0.1μg/mlの量の、実施例6に従って調製したER804057/DPPCリポソーム、
・2つのリポソーム調製物の組み合わせ。
【0062】
次いで、成熟マーカーCD25、CD80およびCD83の発現を測定することができるフローサイトメトリーによる表現型分析、およびこれらの細胞によって分泌されるサイトカイン(TNF−α、IL6およびIL12p70)のELISA測定を行う。
下記表に示される結果は、4つのドナーについて算出した平均値を表す。
【0063】
【表5】

【0064】
【表6】

【0065】
得られた結果は、本発明の組成物の、IL12p70のようなTH1指向性応答を示すサイトカインの分泌を誘発する高い能力を示す;2つの生成物を組み合わせることによって得られる相乗効果は顕著である。したがって、本発明の組成物は、Th1指向性免疫系応答を得ることが求められる治療方法の全て、特に以下のサイトカイン:TNF−α、IL−6またはIL12p70のうちの1つの分泌を誘発することが望まれる全てのケースにおいて、特に推奨される。
【図面の簡単な説明】
【0066】
(原文に記載なし)

【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
トール様受容体7またはトール様受容体8の少なくとも1つのアゴニストを含む免疫賦活性組成物であって、さらにトール様受容体4のアゴニストを含むことを特徴とする免疫賦活性組成物。
【請求項2】
トール様受容体7またはトール様受容体8のアゴニストがトール様受容体4のアゴニストとは異なる化合物であることを特徴とする請求項1記載の免疫賦活性組成物。
【請求項3】
さらに少なくとも1つのワクチン抗原を含むことを特徴とする請求項1および2いずれか1項記載の免疫賦活性組成物。
【請求項4】
トール様受容体7のアゴニストがイミダゾキノリンアミン誘導体であることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の免疫賦活性組成物。
【請求項5】
イミダゾキノリンアミン誘導体が4−アミノ−2−エトキシメチル−α,α−ジメチル−1−H−イミダゾ[4,5c]キノリン−1−エタノールであることを特徴とする請求項4記載の免疫賦活性組成物。
【請求項6】
トール様受容体4のアゴニストがER804057であることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の免疫賦活性組成物。
【請求項7】
薬剤の製造のための請求項1〜6いずれか1項記載の免疫賦活性組成物の使用。
【請求項8】
TH1型免疫応答を誘発する能力を有する薬剤の製造のための請求項1〜6いずれか1項記載の免疫賦活性組成物の使用。


【公表番号】特表2007−514725(P2007−514725A)
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544506(P2006−544506)
【出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【国際出願番号】PCT/FR2004/003308
【国際公開番号】WO2005/060966
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(592055820)サノフィ・パスツール (20)
【氏名又は名称原語表記】SANOFI PASTEUR
【Fターム(参考)】