説明

少なくとも1つの平面アンテナ装置を備えたレーダセンサ装置

本発明は、間引きアレイ(15.2)として平面上に互いに所定間隔で並行に配置された複数の垂直面指向型の縦列アンテナ(15b、15c、15d)を有する少なくとも1つの平面アンテナ装置を備えたレーダセンサ装置であって、各縦列アンテナ(15b、15c、15d)は少なくとも2つのライン給電されるパッチ素子(23)を有する、上記レーダセンサ装置において、縦列アンテナ(15b、15c、15d)による間引きアレイ(15.2)は、当該間引きアレイ(15.2)内での縦列アンテナ(15b、15c、15d)の互いの所定間隔の量が、縦列アンテナの同一のアンテナ開口及び同一の特性を備えるアンテナ平面アンテナ装置の対応する非疎なアレイの、2つの任意の縦列アンテナ間の様々な間隔の総量を少なくとも一度、しかし可能な限り最小回数有するように、最小の冗長性を有して実現される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間引きアレイとして、平面上に互いに所定間隔で並行に配置された、垂直面指向を有する複数の縦列アンテナを有する少なくとも1つの平面アンテナ装置を備えたレーダセンサ装置であって、各縦列アンテナは少なくとも2つのライン給電されるパッチ素子を有する、上記レーダセンサ装置に関する。更に、本発明は、車両の装置、特に運転者支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両では、交通環境を検出するためのレーダセンサが、例えばレーダを利用する間隔制御(Adaptive Cruise Control−System/ACC)のための運転者支援システムの枠組みにおいて益々使用されている。この種の車速制御システムは、例えば、ロバート・ボッシュ社の「適応走行制御(Adaptive Fahrgeschwindigkeitsregelung ACC)」、2002年、技術教授、黄色の巻で公知である。
【0003】
所謂平面アンテナ装置又はパッチアンテナは、その平らな構造形状や、例えばエッチング工程における製造面での容易さのために、先に挙げたレーダセンサ内での利用に特に適している。この種のアンテナの場合、定められた振幅及び位相がそれぞれに割り当てられた放射型共振器(アンテナ素子又はパッチ素子/パッチ)による平面の構成が関わっている。個々のパッチ素子の放射パターンの重畳により、アンテナの放射パターンが生じ、その際に、ライン(Zeile)が方位角の特性を示し、カラム(Spalte)が仰角の特性を示す。アンテナ素子は通常、垂直面指向型の縦列アンテナ内に配置される。
【0004】
自動車分野における環境検出を使用領域とする多くのレーダセンサが、この種の平面アンテナの概念を利用する。平面アンテナの概念の利点は、この平面アンテナの概念から得られる奥行きの浅いレーダセンサである。これにより、レーダセンサの組み込み場所についてよりフレキシビリティが得られ、かつ、例えば車両の側面の領域に組み込むことにより新たな適用領域が生まれる。当然のことながら、全長の他に、レーダセンサの製造コストも重要である。各シングルチャネル上で信号解析が行われる(HFビーム形成は行われない)平面アンテナの概念の場合には正に、利用されるミキサーの数が大きなコスト要因となる。その際に、アンテナパッチの配置及び数が重要な役割を果たす。平面アンテナ装置を有する公知のレーダセンサは通常、共相励振リニアアレイ(ULA:Uniform Linear Array)の構造を有する。その際に、パッチ素子を有する縦列アンテナは等間隔に配置され、当該間隔は通常、空中での半波長(λ/2)の範囲内にある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
レーダセンサによる可能な限り良好な角度精度を得るためには、アンテナ開口は決定的な要因である。アンテナ開口が大きければ大きいほど、角度精度が良好になる。アンテナ開口が、従来の公知のレーダセンサの場合のように共相励振リニアアレイの構造を有する場合は、多数のミキサーが必要であり、センサ総費用が上がることになる。
【0006】
独国特許出願公開第10036131号明細書では、密にパッチアンテナが配列されたサブアレイと、疎にパッチアンテナが配列されたサブアレイとを組み合わせた形態のパッチアンテナ・アレイと、サポート素子と、を備えた、車両の周辺における交通状況を検出するレーダセンサが提案されている。パッチアンテナは冗長であり、即ち、信号関係が何度も測定される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、間引きアレイとして平面上に互いに所定間隔で並行に配置された複数の垂直面指向性を有する縦列アンテナを備えた少なくとも1つの平面アンテナ装置を搭載するレーダセンサ装置であって、各縦列アンテナは、ライン給電される少なくとも2つのパッチ素子を有し、縦列アンテナによる間引きアレイは、当該間引きアレイ内における縦列アンテナの互いの所定間隔の量が、縦列アンテナの同一のアンテナ開口及び同一の特性を備える平面アンテナ装置に対応する非疎なアレイの、任意の2つの縦列アンテナ間の様々な間隔全てを少なくとも1つ有するが、可能な限り最小の数となるように、最小の冗長性を有して実現される、上記レーダ装置が提案される。
【0008】
これら措置により、要請される角度一意性と、縦列アンテナによる所謂最小冗長アレイ(MRA:Minimum Redundancy Array)を利用した際の角度精度と、の間の非常に良い妥協が達成される。その際に、パッチ素子を有する縦列アンテナの配置は等間隔には実現されず、間引きアレイ又はスパースアレイを用いた最小冗長性の原則を考慮して実現される。このことは好適に、縦列アンテナ又はパッチ素子の更なる大幅な削減、及び、必要なミキサーの数の大幅な低減にも繋がり、これにより、レーダセンサ製造時のコスト削減が達成される。縦列アンテナ間の各間隔、即ち、各位相関係が、少なくとも1つ、可能な限り疎に存在することによって、最小の冗長性が達成される。一意性を保障するために、同一の開口を有する平面アンテナ装置の従来型又は非疎なアレイの、任意の組み合わせの縦列アンテナの様々な間隔の全てが存在する必要がある。
【0009】
縦列アンテナの互いの各所定間隔は、一定の基本間隔の整数倍であってもよい。一定の基本間隔が、空中の半波長よりも小さく又は当該半波長と等しい場合には、有利である。その場合、+/−90度の領域について一意性が得られる。
【0010】
車両の装置、特に運転者支援システムが請求項4に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
以下では、図面を用いて、本発明の実施例が原則に従って記載される。
【図1】車両内の運転者支援システム又はアクティブクルーズコントロール装置の基本的な構成要素の概略図を示す。
【図2】従来技術による4つの縦列アンテナを備えた平面アンテナ装置のアレイの概略図を示す。
【図3】本発明にかかるレーダセンサ装置の第1の実施形態についての3つの縦列アンテナを備えた平面アンテナ装置のアレイの概略図を示す。
【図4】本発明にかかるレーダセンサ装置の第2の実施形態についての4つの縦列アンテナを備えた平面アンテナ装置のアレイの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に示されるアクティブクルーズコントロール装置11を備えた車両10は、当該車両10のフロント部に取り付けられたレーダセンサ装置12を有し、当該レーダセンサ装置12のハウジング内には、アクティブクルーズコントロール装置11の制御装置14も収容されている。レーダセンサ装置12は、車両10の周辺における物体を検出する役割を果たす。レーダセンサ装置12は、制御装置14と接続されている。制御装置14は、データバス16(CAN、MOST等)を介して、電気的な駆動制御ユニット18、及び、制動システム制御ユニット20と接続され、並びに、人間/機械インタフェースのHMI制御ユニット22と接続される。図示されない更なる別の実施例において、制御ユニット14及びHMI制御ユニット22は、アクティブクルーズコントロール装置12の制御装置にも組み込まれ、特に、共通のハウジングに組み込まれうる。
【0013】
レーダセンサ装置12は、マルチビームレーダを用いて、車両10の前に存在しレーダ波を反射する物体の間隔と、相対速度と、アジマス角と、を測定する。個々の物体を識別し追従するために、及び、自身の車線上の直前の走行車両を検出し目標物体として選択するために、定期的な時間間隔、例えば10msごとに受信される生データが制御装置14内で評価される。
【0014】
図1から分かるように、本発明にかかるレーダセンサ装置12は、縦列アンテナ15b〜15hのアレイ15.2又は15.3を備えた平面アンテナ装置を有する(図3及び図4参照)。
【0015】
図2は、従来技術による4つの垂直面指向性を有する縦列アンテナ15aであって、平面上に互いに所定間隔で並行に配置された上記縦列アンテナ15aを示す。縦列アンテナ15aは等間隔に、即ち、空中での半波長λに相当する一定の基本間隔で互いに配置されている。図2から分かるように、様々な間隔として、空中の波長0.5λ、空中の波長1.0λ、及び、空中の波長1.5λが得られる。
【0016】
図3には、3つの垂直面指向性を有する縦列アンテナ15b、15c及び15dであって、間引きアレイ15.2として平面上に互いに所定間隔で並行に配置され、ライン給電される複数のパッチ素子23をそれぞれが有する上記縦列アンテナ15b、15c及び15dを備えた、本発明にかかるレーダセンサ装置12の第1の実施形態についての平面アンテナ装置が示されている。
縦列アンテナ15b、15c、及び15dによる間引きアレイ15.2は、当該間引きアレイ15.2内での縦列アンテナ15b、15c、及び15dの互いの所定間隔の量が、縦列アンテナ15aの同一のアンテナ開口及び同一の特性を備える平面アンテナ装置の図1の対応する非疎なアレイ15.1の2つの任意の縦列アンテナ15a間の様々な間隔の全てを少なくとも一度、しかし可能な限り最小の数となるように、最小の冗長性を備えて実現される。その際に、図3から更に分かるように、縦列アンテナ15bと15cとの間には、空中の波長0.5λの間隔が設けられ、縦列アンテナ15cと15dとの間には、空中の波長1.0λの間隔が設けられる。更に、縦列アンテナ15bと15dとの間は、間隔が空中の波長1.5λのままである。
【0017】
図4には、4つの垂直面指向性を有する縦列アンテナ15e、15f、15g、及び15hであって、間引きアレイ15.3として平面上に互いに所定間隔で並行に配置された上記縦列アンテナ15e、15f、15g、及び15hを備えた、本発明にかかるレーダセンサ装置12の第2の実施形態についての平面アンテナ装置が示されている。図4から分かるように、その際に、縦列アンテナ15eと15fとの間には、空中の波長0.5λの間隔が設けられ、縦列アンテナ15fと15gとの間には、空中の波長1.5λの間隔が設けられ、縦列アンテナ15gと15hの間には、空中の波長1.0λの間隔が設けられる。さらに、縦列アンテナ15eと15gの間は、間隔が空中の波長2.0λのままであり、縦列アンテナ15fと15hとの間は、間隔が空中の波長2.5λのままであり、縦列アンテナ15eと15hと間は、間隔が空中の波長3.0λのままである。
【0018】
縦列アンテナ15a〜15gの互いの各所定間隔は、一定の基本間隔、即ち空中の半波長λの整数倍である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
間引きアレイ(15.2、15.3)として、平面上に互いに所定間隔で並行に配置された複数の垂直面指向性を有する縦列アンテナ(15b〜15h)を備えた少なくとも1つの平面アンテナ装置を搭載するレーダセンサ装置(12)であって、
各前記縦列アンテナ(15b〜15h)は、ライン給電される少なくとも2つのパッチ素子(23)を有し、
前記レーダセンサ装置(12)において、縦列アンテナ(15b〜15h)で構成される前記間引きアレイ(15.2、15.3)は、当該間引きアレイ(15.2、15.3)内における前記縦列アンテナ(15b〜15h)の互いの前記所定間隔の量が、
前記縦列アンテナ(15a)の同一のアンテナ開口及び同一の特性を備える平面アンテナ装置に対応する非疎なアレイ(15.1)の、任意の2つの縦列アンテナ(15a)間の間隔全てを少なくとも1つ有するが、可能な限り最小の数となるように、最小の冗長性を有して実現される
ことを特徴とする、レーダセンサ装置(12)。
【請求項2】
前記縦列アンテナ(15b〜15h)の互いの前記所定間隔は、一定の基本間隔の整数倍である
ことを特徴とする、請求項1に記載のレーダセンサ装置。
【請求項3】
前記一定の基本間隔は、空中での半波長(λ)よりも小さく、又は、前記半波長(λ)と等しい
ことを特徴とする、請求項2に記載のレーダセンサ装置。
【請求項4】
車両(10)の周辺における物体検出のために、請求項1〜3のいずれかに記載の、少なくとも1つのレーダセンサ装置(12)と、前記少なくとも1つのレーダセンサ装置(12)と接続された制御装置(14)と、を備える
前記車両(10)の装置、特に運転者支援システム(11)。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2013−504764(P2013−504764A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529166(P2012−529166)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【国際出願番号】PCT/EP2010/060316
【国際公開番号】WO2011/032745
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(501125231)ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (329)
【Fターム(参考)】