説明

少なくとも1つの形態のベンラファキシンの調節放出性組成物

本発明は、遅延制御放出性組成物である少なくとも1つの形態のベンラファキシンの調節放出性組成物に関する。該組成物は、ベンラファキシン、ベンラファキシンの活性代謝産物、ベンラファキシンの薬学的に許容可能な塩、ベンラファキシンの活性代謝産物の薬学的に許容可能な塩、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの形態のベンラファキシンと、10%未満のゲル化剤と、薬学的に許容可能な賦形剤とを含むコアを含む。該組成物はさらに、コアを実質的に包囲して、少なくとも1つの形態のベンラファキシンの遅延制御放出を提供する調節放出性コーティングを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの形態のベンラファキシンを経口投与するための調節放出性組成物と、その調製方法と、その医学的な使用とに関する。特に、調節放出性組成物は、少なくとも1つの形態のベンラファキシンの遅延制御放出性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの薬剤のための理想的な投与計画は、それによって薬物の許容可能な治療濃度が作用部位において即座に達成され、その後、治療の期間中は一定に保持されることである。用量の大きさおよび投与の頻度が正確であれば、従来の経口剤形の繰り返しの投与によって、薬物の治療的「定常状態の」血漿濃度は直ちに達成されて保持され得る。しかしながら、従来の経口剤形に関連する多数の潜在的な制限がある。これらの制限により、製薬科学者らは治療的に活性な分子を「延長放出性」製剤において提供することを検討するようになった。
【0003】
経口摂取は従来から好ましい薬物投与経路であり、局所的および全身的の両方の効果を有効に達成する便利な方法を提供する。理想的な経口薬物送達系は、測定可能および再現可能な量の薬物を長時間にわたって標的部位に着実に送達しなければならない。延長放出(extended−release、ER)送達系は吸収部位において均一な濃度/量の薬物を提供し、従って、吸収後に長期間にわたって治療範囲内で血漿濃度の保持が可能になり、これは副作用を最小限にし、投与の頻度も低減することができる。ER剤形は、血漿濃度が長時間にわたって治療レベルに保持されるように薬物をゆっくり放出する。通常、これらの製品は即時放出性組成物と比較して、慢性状態の治療におけるより大きな有効性、副作用の減少、より大きい利便性、そして簡易化した投薬スケジュールのためにより高レベルの患者のコンプライアンスを含む多数の利益を提供する。上記の利点のためにこのような系は薬物デリバリー市場の主要な部分を形成する。
【0004】
従来の送達系の投与後に見られる血漿薬物濃度の周期的変化を排除することを目的として、多くの薬物送達系が開発されている。これらの系を記述するために様々な用語:遅延放出、復効、長期放出、持続放出、延長放出、制御放出および調節放出が用いられている。制御放出、長期放出、持続放出および延長放出という用語が交換可能であるとUSPがみなしていることに気づくのは興味深いことである。
【0005】
制御放出性製剤は従来技術において記載されており、薬剤の治療血清レベルを保持するため、そして患者のコンプライアンスの欠如によって生じる薬物の飲み忘れの効果を最小限にするために、多数の方法を用いて制御放出性医薬剤形が提供されている。抗うつ薬は、制御放出性製剤の優れた候補である。というのは、ほとんどの場合は複雑または多様な一日の投薬スケジュールによる患者のコンプライアンスの欠如の結果として、これらの薬物の中断は重大な中断の症状もたらすことが多いからである。
【0006】
(R/S)−1−[2−(ジメチルアミノ)−1−(4メトキシフェニル)エチル]シクロヘキサノールまたは(±)−1−[a[α−(ジメチルアミノ)メチル]p−メトキシベンジル]シクロヘキサノールと化学的に命名されるベンラファキシンは、脳内の化学的なメッセンジャーに影響を与える抗うつ特性を有する二環式化合物である。神経伝達物質と呼ばれるこれらの化学的なメッセンジャーは、例えば、セロトニン、ドーパミンおよびノルエピネフリンであり得る。神経伝達物質は、神経細胞によって産生および放出される。神経伝達物質は隣接する神経細胞に移動し、細胞の活性を高くしたり低くしたりする。これらの神経伝達物質の不均衡がうつ病の原因であり、不安症の一因にもなり得ると信じられている。ベンラファキシンは、これらの神経伝達物質の放出を阻害するか、あるいはその作用に影響を与えることによって機能すると信じられている。
【0007】
ベンラファキシンは他の抗うつ薬と化学的に関係がないが、セロトニン−ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(SNRI)として分類されることもある。低投薬量では、ベンラファキシンは、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)と同様に、セロトニンの再取り込みを遮断する。中投薬量では、ベンラファキシンは、セロトニンだけでなく、ノルエピネフリンの再取り込みも遮断する。高投薬量では、ベンラファキシンは、ノルエピネフリン、セロトニンの再取り込みも遮断し、そしてドーパミンの再取り込みの弱い遮断薬でもある。
【0008】
ベンラファキシンは経口投与後によく吸収され、その代謝は実証されている。吸収に続いて、ベンラファキシンは肝臓において広範囲の前全身性(pre−systemic)代謝を受けて、主にO−デスメチルベンラファキシン(ODV)になるが、N−デスメチルベンラファキシン(NDV)、N,O−ジデスメチルベンラファキシン(DDV)およびN,N,O−トリデスメチルベンラファキシン(TDV)にもなる。インビトロ研究では、ODVの形成はCYP2D6により触媒されることが示されており、これは臨床研究において確認されており、普通のレベルのCYP2D6を有する人々(「高代謝群」)と比較して、CYP2D6レベルの低い患者(「低代謝群」)は、増大したレベルのベンラファキシンを有し、低下したレベルのODVを有していたことが示されている。しかしながら、ベンラファキシンおよびODVの和は2つの群において同様であり、そしてベンラファキシンおよびODVは、薬理学的にほぼ等活性および等効力であるため、CYP2D6低代謝群と高代謝群の違いは、臨床的に重要であるとは考えられない。約87%のベンラファキシン用量は、未変化のベンラファキシン(5%)、非結合ODV(29%)、結合したODV(26%)、または他の微量活性代謝産物(27%)として、48時間以内に尿中で回収される。ベンラファキシンおよびその代謝産物の腎排泄は、排泄の主要な経路である。ベンラファキシンの代謝経路は、次のように要約することができる。
【化1】

【0009】
約4時間というベンラファキシンの排泄の半減期は短く、その活性代謝物は、約8時間の半減期を有する。この結果、ベンラファキシンは一日二回投与され、この毎日の投薬スケジュールを維持することにおける患者のコンプライアンスの欠如により、中断の問題が生じやすい。ベンラファキシンの急激な中断は、疲労、眩暈、悪心、頭痛および不快気分を含む禁断症状をもたらし得る。従って、ベンラファキシンは、制御放出性経口製剤の優れた候補である。
【0010】
その塩酸塩としてのベンラファキシンは第二世代の延長放出性錠剤として入手可能であり、一日一回の使用のために商標名エフェクサー(Effexor)(登録商標)XRで市販されている。このような製剤では、通常一日二回投与されるベンラファキシンの第一世代の即時放出形態のエフェクサー(Effexor)(登録商標)で見られる中断の問題が排除されている。ベンラファキシンの延長放出性製剤は、従来技術において記載されている。
【0011】
特許文献1、特許文献2、および特許文献3は、例えば、フィルムコートされた球状体において治療的に有効な量のベンラファキシン塩酸塩を含む製剤を開示している。球状体は、ベンラファキシン塩酸塩、微結晶性セルロース、そして任意でヒドロキシプロピルメチルセルロースを有するコアを含む。コアは、エチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースの混合物で被覆され、次に硬いゼラチンカプセル剤につめられる。これらの特許は、投与の4〜8時間後に約150ng/ml以下のベンラファキシンの最高血漿レベルを提供する延長放出性製剤を、それを必要としている患者に経口投与することを含み、悪心および嘔吐の発生率の低下を伴いながら24時間にわたってベンラファキシンの治療血漿濃度を得るための方法および組成物も記載および請求している。
【0012】
特許文献4は、投与の少なくとも3時間後にベンラファキシンの遅延バースト放出が達成される製剤を教示すると主張しており、主に結腸を通って血流中へのベンラファキシンの分散が、結腸吸収の結果少なくとも24時間にわたって得られる。バースト制御剤および崩壊剤を含む圧縮コアは製剤を特徴付ける。コアは、水不溶性であるが親水性の材料の粒子が埋め込まれた比較的剛性の水不溶性の疎水性ポリマーで被覆される。これらの粒子は水性媒体と接触したときにチャンネルを形成し、これは液体を吸収して、バースト制御剤にコーティングをバーストさせ、それにより、ベンラファキシンの遅延バースト放出を可能にする。また特許文献4は、実施例11において、驚くことに、現在市場で入手可能なベンラファキシンの延長放出性製剤と比較したときに、この製剤が空腹のボランティアにおいて30%高いベンラファキシンの生物学的利用能を提供したことも教示する。一方、エフェクサー(Effexor(登録商標))XRのラベルには、「エフェクサーXRは、朝または夜の毎日ほぼ同じ時間に食品と共に単一用量で投与されなければならない」と記載されている。この特許で提示される唯一の薬物動態学的研究である実施例11は、食事をしたボランティアにおける生物学的利用能データを示しておらず、従って、特許文献4において教示される製剤が、エフェクサー(Effexor)(登録商標)XRラベルで推奨される状態、すなわち、食事をした状態において患者に投与される場合にも、より高い生物学的利用能を提供し得るかどうかは分からない。特許文献4は、請求された組成物の有害事象または副作用プロファイルに関するデータを提供していない。
【0013】
上記で議論した特許文献2、特許文献1、および特許文献3の開示は、特許文献2、特許文献1、および特許文献3の4欄、60〜64行目において、「圧縮錠剤が物理的に不安定である(弱い圧縮性またはキャッピングの問題)かあるいは溶解研究において非常に急速に溶解したので、ヒドロゲル技術によるベンラファキシン塩酸塩の延長放出性錠剤を製造するための様々な試みが無駄であることが証明された」と教示している。しかしながら、インドのムンバイ大学の化学工学部(自治)の薬学科のマキジャ(Makhija)およびバビア(Vavia)は、ヒドロゲル技術を用いるベンラファキシンの一日一回の持続放出性錠剤について記載している(非特許文献1)。マキジャ(Makhija)およびバビア(Vavia)の参考文献は、膨潤性および非膨潤性ポリマーに基づく非被覆マトリックス系を用いるベンラファキシン塩酸塩の一日一回の持続放出性錠剤を教示する。興味深いことに、インビトロ(図2)またはインビボ(図4)の薬物の放出における遅延は見られないにもかかわらず、この製剤のベンラファキシンの生物学的利用能も、特許文献4の製剤と同様に、エフェクサー(Effexor)(登録商標)XRを超えて著しく改善される。しかしながら、特許文献4の発明と同様に、この製剤は、食事をした状態で個人に投与される。従って、マキジャ(Makhija)およびバビア(Vavia)の製剤が、食事をした状態でより高い生物学的利用能を提供し得るかどうかは分かっていない。最後に、マキジャ(Makhija)およびバビア(Vavia)の参考文献は、エフェクサー(Effexor)(登録商標)XRと比較した有害事象の発生率および頻度に対する彼らの製剤の効果を教示していない。
【0014】
また、活性剤としてベンラファキシンを含む遅延放出性製剤は従来技術において記載されている。例えば、2003年5月15日に特許文献5として公開された特許文献6、および2003年3月27日に特許文献7として公開された特許文献8はいずれも、10〜70%の活性剤、10〜80%のゲル化剤、そして任意で、従来の賦形剤を含むコアと、コーティング重量を基準として、20〜85重量%の水不溶性の水透過性フィルム形成ポリマー、10〜75重量%の水溶性ポリマーまたは物質、および3〜40重量%の可塑剤から本質的になるコーティングとを含む遅延放出性錠剤について記載している。
【0015】
ベンラファキシンは現在、抗うつ薬のSSRI/SNRIカテゴリー内で処方される抗うつ薬物の上位5つの1つである。しかしながら、ベンラファキシン塩酸塩を含む、唯一の一日一回の経口剤形は、現在、商品名エフェクサー(Effexor)(登録商標)XRで市販されている。ベンラファキシンの効力を所与とすれば、現在市販されているエフェクサー(Effexor)(登録商標)XR150mgカプセル剤と比較して、より高い生物学的利用能を提供することができ、副作用または有害事象プロファイルが低減されるかまたは同等である、少なくとも1つの形態のベンラファキシンを含む一日一回の経口組成物が望ましいであろう。またこのような組成物は、リファレンス製品の量よりも少ない絶対量の活性薬を有し、それによってより良い安全性プロファイルを提供する組成物を可能にすることができる。
【特許文献1】米国特許第6,274,171号明細書
【特許文献2】米国特許第6,403,120号明細書
【特許文献3】米国特許第6,419,958号明細書
【特許文献4】米国特許第6,703,044号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2003/0091634A1号明細書
【特許文献6】米国特許出願第10/244,059号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2003/0059466A1号明細書
【特許文献8】米国特許出願第09/953,101号明細書
【非特許文献1】Eur.J.Pharmaceut.Biopharmaceut.2002年、54:9−15頁
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、少なくとも1つの形態のベンラファキシンの調節放出性組成物に関する。
【0017】
本発明の1つの実施形態では、少なくとも1つの形態のベンラファキシンの調節放出性組成物は、a)ベンラファキシン、ベンラファキシンの薬学的に許容可能な塩、ベンラファキシンの活性代謝産物、ベンラファキシンの活性代謝産物の薬学的に許容可能な塩、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、コア乾燥重量の約10重量%〜約90重量%の少なくとも1つの形態のベンラファキシンと、10重量%未満のゲル化剤と、任意で従来の賦形剤とを含むコアと、b)前記コアを実質的に包囲する調節放出性被膜とを含む、一日一回の投薬に適した経口投与のための遅延制御放出性の医薬組成物であり、前記組成物は、USP装置1を用いて75rpm、37℃±0.5℃において1000mlのpH6.8のリン酸緩衝液中で試験される場合に、約2時間後には少なくとも1つの形態のベンラファキシンの20%以下が放出され、約4時間後には少なくとも1つの形態のベンラファキシンの約15%〜約45%が放出され、約8時間後には少なくとも1つの形態のベンラファキシンの約55%〜約85%が放出され、約12時間後には少なくとも1つの形態のベンラファキシンの約65%以上が放出され、そして約16時間後には少なくとも1つの形態のベンラファキシンの約80%以上が放出されるように、前記少なくとも1つの形態のベンラファキシンの遅延制御放出性を提供する。
【0018】
本発明のもう1つの実施形態では、少なくとも1つの形態のベンラファキシンの調節放出性組成物は、a)ベンラファキシン、ベンラファキシンの薬学的に許容可能な塩、ベンラファキシンの活性代謝産物、ベンラファキシンの活性代謝産物の薬学的に許容可能な塩、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、コア乾燥重量の約10重量%〜約90重量%の少なくとも1つの形態のベンラファキシンと、10重量%未満のゲル化剤と、任意で従来の賦形剤とを含むコアと、b)前記コアを実質的に包囲する、被膜乾燥重量の約20重量%〜約85重量%の水不溶性の水透過性フィルム形成ポリマー、約10重量%〜約75重量%の水溶性ポリマーまたは物質、および約3重量%〜約40重量%の可塑剤を含む調節放出性被膜とを含む、一日一回の投薬に適した経口投与のための遅延制御放出性の医薬組成物であり、前記組成物は、USP装置1を用いて75rpm、37℃±0.5℃において1000mlのpH6.8のリン酸緩衝液中で試験される場合に、約2時間後には少なくとも1つの形態のベンラファキシンの20%以下が放出され、約4時間後には少なくとも1つの形態のベンラファキシンの約15%〜約45%が放出され、約8時間後には少なくとも1つの形態のベンラファキシンの約55%〜約85%が放出され、約12時間後には少なくとも1つの形態のベンラファキシンの約65%以上が放出され、そして約16時間後には少なくとも1つの形態のベンラファキシンの約80%以上が放出されるように、前記少なくとも1つの形態のベンラファキシンの遅延制御放出を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、ベンラファキシンの調節放出性医薬組成物に関する。特に、該組成物は、コアと、コアを実質的に包囲する調節放出性コーティングとを含む、少なくとも1つの形態のベンラファキシンの吸収が増強された遅延制御放出性組成物であり、該組成物は、少なくとも1つの形態のベンラファキシンの遅延制御放出を提供する。本発明の吸収が増強された遅延制御放出性の経口剤形は、リファレンス製品と比較して、より高い生物学的利用能を有し、副作用または有害事象は少ないかあるいは同様である。
【0020】
錠剤コア
コアは、ベンラファキシン、ベンラファキシンの薬学的に許容可能な塩、ベンラファキシンの活性代謝産物、ベンラファキシンの活性代謝産物の薬学的に許容可能な塩、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの形態のベンラファキシンと、ゲル化剤と、任意で従来の賦形剤とを含み、調節放出性ポリマー被膜によって包囲される。組成物は、少なくとも1つの形態のベンラファキシンの遅延制御放出を提供する。
【0021】
コア中の少なくとも1つの形態のベンラファキシンの割合は、コア乾燥重量の約10〜約90重量%、好ましくは約20〜約60重量%、より好ましくは約35重量%〜約45重量%、そして最も好ましくは約42重量%である。組成物は、約0.5〜約1000mg、より好ましくは約20〜約200mg、そして最も好ましくは約100〜約200mgの範囲で変わり得る、薬学的に有効な量の少なくとも1つの形態のベンラファキシンを含む。
【0022】
「有効量」という用語は、本明細書における使用では、「薬学的に有効な量」が意図されることを意味する。「薬学的に有効な量」は、単一または多数の用量でそれを必要としている患者に投与される場合に、かなりの臨床的または治療的な応答を誘発するのに十分な、本発明の剤形中の少なくとも1つの形態のベンラファキシンの量または分量である。正確な治療用量が、患者の年齢および状態ならびに治療すべき状態の性質に依存し、主治医の最終的な判断によることは認識されるであろう。特定の徴候のための治療的または臨床的に有効な量が、薬学的に有効な量の少なくとも1つの形態のベンラファキシンを含有する剤形を用いて臨床研究を行うことによって決定され得ることは、当業者によく知られている。
【0023】
本明細書における使用では、「薬学的に許容可能な塩」という用語は、無機酸および有機酸を含む薬学的に許容可能な無毒性の酸から調製される塩を指す。適切な無毒性の酸としては、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ショウノウスルホン酸、クエン酸、エテンスルホン酸塩、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエネスンホン酸などの無機および有機酸があげられる。塩酸塩が最も好ましい。マレイン酸ベンラファキシンおよびベシル酸ベンラファキシンなどのその他の塩は、国際特許出願第PCT/EP03/03319号(国際公開第03/082805号パンフレット)および国際特許出願第PCT/EP03/03318(国際公開第03/082804号パンフレット)においてそれぞれ記載されており、それらの内容は参照によって本明細書中に援用される。
【0024】
ベンラファキシン、またはベンラファキシンの薬学的に許容可能な塩におけるベンラファキシンは、ベンラファキシンのどの形態でもよい。例えば、ベンラファキシンは1つの光学活性炭素を有しており、従って、2つのエナンチオマーおよびラセミ体の存在が可能になる。どちらのエナンチオマーも薬学的に活性である。従って、本発明の経口剤形のコア中で好ましくは活性なベンラファキシン塩酸塩の有効量は、ベンラファキシンのエナンチオマーのラセミ体または混合物、もしくはベンラファキシンの純粋または実質的に純粋な(+)または(−)エナンチオマーに基づくことができる。ベンラファキシンの(+)および(−)エナンチオマーは、米国特許第6,197,828号明細書および米国特許第6,342,533号明細書においてそれぞれ記載されており、その内容は参照によって本明細書中に援用される。このような形態のベンラファキシンは全て、「ベンラファキシン」、「ベンラファキシンの薬学的に許容可能な塩」、「ベンラファキシンの活性代謝産物」、および「ベンラファキシンの活性代謝産物の薬学的に許容可能な塩」という用語の意味に含まれる。
【0025】
少なくとも1つのゲル化剤は、親水性の性質であり、親水性マトリックスのように挙動することができる物質を含む。ゲル化剤の例は、2003年5月15日に米国特許出願公開第2003/0091634号明細書で公開された米国特許出願第10/244,059号明細書、および「Handbook of Pharmaceutical Excipients」、第4版(2003年)、ロウ(Rowe)ら編、Pharmaceutical Press and the American Pharmaceutical Association刊において記載されている。少なくとも1つのゲル化剤は、コア乾燥重量の10重量%未満、好ましくは約8%重量未満、より好ましくは約6重量%未満、さらにより好ましくは約4重量%未満、そして最も好ましくは約2重量%未満の量で存在する。理想的なゲル化剤は、コア乾燥重量の約1.5重量%(180、120、または60mgのベンラファキシン錠剤に対して)または約1%(30mgのベンラファキシン錠剤に対して)のポリビニルアルコールである。少なくとも1つのゲル化剤は、ゲル化剤の総量がコア乾燥重量の10%未満である限りは、2つ以上のゲル化剤の混合物も含むことができる。ゲル化剤の組み合わせの一例は、コア乾燥重量の約1.5重量%のポリビニルアルコールおよび約5重量%のメチルセルロース、または約3重量%のポリビニルアルコールおよび約5重量%のメチルセルロースの混合物を含むことができる。
【0026】
特定の理論に束縛されることは望まないが、低ゲル化製剤、すなわち10%未満のゲル化剤を有する製剤は、本明細書において記載される組成物の吸収が増強された遅延制御放出特性に加えて、安全性プロファイルに寄与する、あるいはさらに改善することができると信じられる。ベンラファキシンは、第1の主要なセロトニン取り込みまたは再取り込み阻害薬(SRI)である。より高い用量/濃度では、ベンラファキシンは、ノルエピネフリンの取り込みも阻害する。これらの活性が生じる用量は、互いに比較的接近しているので、ベンラファキシンはセロトニン/ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(SNRI)とも呼ばれる。しかしながら、SRI部分は、悪心および嘔吐について考察するためにより重要である。セロトニンの取り込みを遮断するベンラファキシンの作用は、ベンラファキシンにさらされた全てのシナプス中のセロトニンの上昇をもたらし得る。シナプスは、中枢神経系のニューロン間だけでなく、ニューロンと、筋肉繊維すなわち神経筋接合部との間においても発生する。胃はセロトニン受容体を有することが分かっている。コーエン(Cohen)およびフルジンスキー(Fludzinski)、JPET 1987年、243:264−269頁。そのため、そして特定の理論に束縛されることは望まないが、胃におけるベンラファキシンの放出は、胃を包囲するシナプスにおけるセロトニンの上昇を生じ、次に悪心および嘔吐をもたらし得る。理論的には、ゲル化剤を10%未満に低減すると、全く膨潤しないか、あるいは10%よりも多いゲル化剤を有する組成物ほどには少なくとも膨潤しない組成物をもたらすことができる。このような低ゲル化組成物は、10%よりも多いゲル化剤を有する組成物と比較して胃の中での保持時間がより短く、その結果、胃の中でのベンラファキシンの放出がそれほど多くないことが期待される。胃の中のより少ない量のベンラファキシンは、胃を包囲するシナプスにおけるセロトニンの上昇の低下をもたらすことができ、これは次に、悪心および嘔吐などの消化管に関連する副作用または有害事象を少なくする。
【0027】
錠剤化操作を満足のいくように実行できることを保証するため、そして特定の品質の錠剤が調製されることを保証するために、上記の成分に加えて、錠剤中に一連の賦形剤が含まれてもよい。目的とされる主な機能によって、錠剤において使用される賦形剤は、種々の群に細分類される。しかしながら、1つの賦形剤は一連の様式で錠剤の特性に影響を与えることができ、従って、錠剤組成物において使用される多くの賦形剤は、多機能性であるものとして記載され得る。
【0028】
例えば、コアはさらに、少なくとも1つの滑沢剤を含むことができる。滑沢剤は、固体とダイ壁との間の摩擦が低い状態で錠剤の形成および排出が行われることを保証するために、医薬製剤に添加される。錠剤化中の摩擦が高ければ、不適切な錠剤品質(排出中の錠剤のキャッピングまたはさらに断片化、そして錠剤縁部における垂直方向のスクラッチ)を含む一連の問題が生じ、製造を停止することさえある。本明細書において記載される経口剤形のために有用な滑沢剤の非限定的な例としては、ステアリン酸マグネシウム、タルク、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸カルシウム、シリカゲル、コロイド二酸化ケイ素、コンプリトール(Compritol)888ATO、ベヘン酸グリセリル、ステアリン酸、水素化植物油(水素化綿実油(ステロテックス(Sterotex)(登録商標))、水素化大豆油(ステロテックス(Sterotex)(登録商標)HM)および水素化大豆油&カスターワックス(ステロテックス(Sterotex)(登録商標)Kなど)、ステアリルアルコール、ロイシン、ポリエチレングリコール(MW4000以上)、ならびにこれらの混合物が挙げられる。少なくとも1つの滑沢剤は、コア乾燥重量の約0.02〜約5重量%の量で存在することができる。好ましい滑沢剤はベヘン酸グリセリルであり、好ましくは、コア乾燥重量の約3重量%で存在する。
【0029】
いくつかの経口剤形は、1つまたは複数の賦形剤を剤形内に含んで、粉末のかさ容積、そしてそれにより剤形のサイズを増大することを必要とする。従って、コアはさらに、少なくとも1つの充填剤(または希釈剤)を含むことができる。本明細書において記載される経口剤形のために有用な少なくとも1つの充填剤の非限定的な例には、ラクトース一水和物、無水ラクトース、マンニトール、ソルビトール、微結晶性セルロース、二塩基性カルシウム、および硫酸カルシウムが含まれる。充填剤の混合物も使用され得る。少なくとも1つの充填剤は、好ましくは、コア乾燥重量の約75重量%までの量で存在する。好ましい充填剤は、ラクトース一水和物である。最も好ましくは、ラクトース一水和物は、特別に調製された純粋なα−ラクトース一水和物と、少量のアモルファスラクトースとの混合物であるラクトース#315噴霧乾燥(Spray Dried)と呼ばれるタイプのものである。好ましくは、ラクトース#315噴霧乾燥は、コア乾燥重量の約53重量%(180、120、または60mgのベンラファキシン錠剤に対して)または72重量%(30mgのベンラファキシン錠剤に対して)で存在する。
【0030】
少なくとも1つの形態のベンラファキシンと、充填剤、好ましくはラクトース315(噴霧乾燥)とは、まず適切な流動床造粒装置において、ゲル化剤、好ましくはポリビニルアルコールの水溶液と共に粒状にされる。次に粒は乾燥され、1.4mmのスクリーンでふるいにかけられる。大きさで分類された粒は次に、V−ブレンダーまたは他の任意の適切な混合装置において、本発明の経口剤形の加工を改善し得る滑沢剤、好ましくはベヘン酸グリセリル、および必要であれば他の任意の追加の不活性賦形剤と一緒により多くの充填剤とブレンドされる。あるいは、成分は乾燥ブレンドされて、当該技術分野において既知の方法によって直接圧縮されることも可能である。
【0031】
次に、乾燥粉砕された粒は加圧されて錠剤にされ、以下において「錠剤コア」または簡単に「コア」と称される。錠剤コアは、当業者によく知られている標準的な技法および装置を使用して得ることができる。好ましくは、錠剤コアは、適切なパンチが取り付けられたロータリープレス(マルチステーションプレスとも称される)によって得られる。この段階では、コア製剤は即時放出性製剤であり、約30分で少なくとも1つの形態のベンラファキシンの約90%よりも多くの放出がもたらされる。
【0032】
被膜
コアは次に、少なくとも1つの形態のベンラファキシンの遅延制御放出を達成するように設計されたポリマー被膜で被覆される。37℃の1000mlのリン酸緩衝液pH6.8中、75rpmにおけるUSPタイプI方法を用いてインビトロで試験される場合に、組成物が、約2時間後には少なくとも1つの形態ベンラファキシンの20%以下を放出し、約4時間後には少なくとも1つの形態のベンラファキシンの約15%〜約45%を放出し、約8時間後には少なくとも1つの形態のベンラファキシンの約55%〜約85%を放出し、約12時間後には少なくとも1つの形態のベンラファキシンの約65%以上を放出し、そして約16時間後には少なくとも1つの形態のベンラファキシンの約80%以上を放出するように、被膜は、少なくとも1つの形態のベンラファキシン、好ましくはベンラファキシンの塩酸塩のインビトロ放出プロファイルを達成するように設計される。
【0033】
少なくとも1つの形態のベンラファキシンの遅延制御放出を達成するために好ましいポリマー被膜はベンラファキシンに対して透過性の半透性被膜であり、例えば米国特許第5,654,005号明細書に記載されるように予め形成された細孔を有さない。半透性被膜は、少なくとも1つの水不溶性の水透過性フィルム形成ポリマー、少なくとも1つの水溶性ポリマーまたは物質、および少なくとも1つの可塑剤を含む。純水、0.1NのHCl、疑似胃液(SGF)pH1.2、またはpH6.8リン酸緩衝液中で少なくとも約24時間の間、被膜の完全性が損なわれないままであり、そして溶解および/または分解しないようにポリマー被膜は設計される。これらの状態はインビボ状態を模倣することを目的とするので、ポリマー被膜の完全性は消化管中でも損なわれないままであり、そして溶解および/または分解もしないと信じられる。本明細書において記載されるポリマー被膜は、従って、米国特許第6,117,453号明細書(迅速溶解フィルムである)、および米国特許第6,703,044号明細書(バーストして、それによりコアから活性が放出されるように設計された剛性フィルム)において記載されるポリマー被膜とは根本的に異なる。
【0034】
少なくとも1つの水不溶性の水透過性フィルム形成ポリマーの非限定的な例は、エチルセルロースなどのセルロースエーテル、酢酸セルロースなどのセルロースエステル、メタクリル酸誘導体、シュアリース(Surelease)(登録商標)などの水性エチルセルロース分散液、シュアテリック(Sureteric)(登録商標)などの水性腸溶コーティング系、およびアクリル−EZE(Acryl−EZE)(登録商標)などの水性アクリル腸溶系であり得る。組み合わせも可能である。少なくとも1つの水不溶性の水透過性フィルム形成ポリマーは、コーティング乾燥重量の約20〜約85重量%の範囲、好ましくは約55〜約62重量%の範囲、そして最も好ましくは約60重量%の範囲の量で存在する。最も好ましくは、エチルセルロースが少なくとも1つの水不溶性の水透過性フィルム形成ポリマーであり、そして好ましくは、コーティング乾燥重量の約55〜約62%、最も好ましくは約60%で存在する。
【0035】
少なくとも1つの水溶性ポリマーまたは物質は、外部の水性媒体に対するフィルム透過性を調節することを目的として部分的または完全に水溶性の親水性物質でもよい。少なくとも1つの水溶性ポリマーまたは物質の非限定的な例は、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、水和コロイドシリカ、スクロース、マンニトール、およびこれらの組み合わせであり得る。少なくとも1つの水溶性ポリマーは、コーティング乾燥重量の約10〜約75重量%、好ましくは約20重量%〜約30重量%、そして最も好ましくは約23重量%〜約26重量%を含む。最も好ましくは、少なくとも1つの水溶性ポリマーはポリビニルピロリドンであり、好ましくは、コーティング乾燥重量の約23重量%〜約26重量%を含む。
【0036】
ポリマーの物理特性を改変して、使用可能性をさらに増大させるために、フィルムコーティング製剤には、通常、可塑剤が添加される。可塑剤の量および選択は錠剤の硬度に寄与し、さらに、その溶解または分解特性、ならびにその物理的および化学的な安定性にも影響し得る。可塑剤の1つの重要な特性は、これらが被膜を弾性および柔軟性にできることであり、それによって被膜の脆性が低減される。好ましいポリマー被膜のために有用な少なくとも1つの可塑剤の非限定的な例としては、様々な分子量のポリエチレングリコールなどのポリオールと、フタル酸ジエチルまたはクエン酸トリエチル、セバシン酸ジブチル、フタル酸ジブチル(dibutyl pthalate)などの有機エステルと、分画されたココナッツ油またはヒマシ油などの油/グリセリドとが挙げられる。組み合わせも可能である。少なくとも1つの可塑剤は、コーティング乾燥重量の約3〜約40重量%、好ましくは約13〜約18重量%、そして最も好ましくはおよそ約15重量%〜約17重量%で存在する。好ましい少なくとも1つの可塑剤はセバシン酸ジブチルであり、好ましくはコーティング乾燥重量の約15重量%〜約17重量%の量で存在する。
【0037】
好ましいポリマー被膜成分の相対的な割合、とりわけ、少なくとも1つの水不溶性の水透過性フィルム形成ポリマー:少なくとも1つの水溶性ポリマーまたは物質:少なくとも1つの可塑剤の比は、所望される放出速度に応じて変化し得る。当業者は、錠剤コアに施されるコーティングの透過性および/または量の制御は、活性の放出速度を制御することができることを認識するであろう。例えば、好ましいポリマー被膜の透過性は、少なくとも1つの水不溶性の水透過性フィルム形成ポリマー:少なくとも1つの水溶性ポリマー:少なくとも1つの可塑剤の比および/または錠剤コアに施されるコーティングの量を変えることによって変更することができる。より遅延制御される放出は、通常、水不溶性の水透過性フィルム形成ポリマーの量を多くする、少なくとも1つの水溶性ポリマーの量を少なくする、そして/または錠剤コアに施されるコーティング溶液の量を増大することで得られる。あるいは、より速い放出速度は、水溶性ポリマーの量を増大する、少なくとも1つの水不溶性の水透過性フィルム形成ポリマーの量を低減する、そして/または施されるコーティング溶液の量を低減することによって得ることができる。その他の賦形剤を錠剤コアに添加しても、被膜の透過性を変更することができる。例えば、錠剤コアがさらに膨張剤を含むことが所望される場合には、柔軟性の低い被膜に膨張剤によって加えられた圧力は被膜を破裂させ得るので、被膜中の可塑剤の量を増大させてより柔軟性の高い被膜を作ることができる。顔料および風味マスキング剤などの他の賦形剤もコーティング製剤に添加することができる。被膜の完全性を少なくとも約24時間保持するため、そして上記のインビトロ放出プロファイルを得るために、少なくとも1つの水不溶性の水透過性フィルム形成ポリマー:少なくとも1つの水溶性ポリマー:少なくとも1つの可塑剤の好ましい比率は、約50〜85:10〜40:5〜20である。好ましくは、比率は、約58〜60:23〜26:15〜17である。
【0038】
ポリマー被膜を以下のように調製して施した。適切な量の水不溶性の水透過性フィルム形成ポリマー、好ましくはエチルセルロースと、水溶性ポリマー、好ましくはポリビニルピロリドンと、可塑剤、好ましくはセバシン酸ジブチルとを全て、エタノール、イソプロピルアルコール、またはこれらの混合物などのアルコール溶媒中に溶解した。得られたコーティング溶液を、コーティングパン装置を用いて錠剤コア上に噴霧した。コーティング溶液をコアに施したことで生じる重量の増加の割合は、非被覆コア重量の約2〜約50重量%、好ましくは約8〜約30重量%、より好ましくは約10〜約18重量%、そして最も好ましくは約12重量%〜約15重量%の範囲であり得る。単量体細孔形成剤がコーティング中に存在せず、そしてコアが10%未満のゲル化剤を有するにもかかわらず、驚くことに、上記のコーティング製剤は、遅延制御放出性組成物を提供することが発見された。
【0039】
以下の実施例は本発明を説明するものであって、本発明の範囲を限定することは意図されない。
【実施例】
【0040】
実施例1
30mgのベンラファキシン遅延制御放出性錠剤
表1に示される材料を合わせて、30mgのベンラファキシン遅延制御放出性錠剤のための錠剤コアを作製した。
【0041】
【表1】

【0042】
ベンラファキシン塩酸塩および充填剤のラクトース315(噴霧乾燥)をまず適切な流動床造粒装置において、ゲル化剤のポリビニルアルコールの水溶液と共に粒状にした。次に粒を乾燥し、1.4mmのスクリーンでふるいにかけた。次に、大きさで分類された粒を、滑沢剤のベヘン酸グリセリルと一緒にV−ブレンダーにおいてより多くの充填剤とブレンドし、次に従来のロータリー錠剤プレスを用いて圧縮して錠剤にした。
【0043】
得られた錠剤コアの溶解は、以下の条件下で決定した。
媒体:1000mlのpH6.8のリン酸緩衝液
方法:USPタイプI装置、37℃±0.5℃で75rpm
データは、90%よりも多くのベンラファキシン塩酸塩が約30分で放出されることを示した。
【0044】
表2に示される材料を合わせて調節放出性被膜を作製した。
【0045】
【表2】

【0046】
可塑剤、セバシン酸ジブチルをまず溶媒(エチルアルコール/イソプロピルアルコール混合物)中に溶解した。水不溶性の水透過性フィルム形成ポリマー(エチルセルロース)を可塑剤/溶媒混合物にゆっくり添加した後、均一な溶液が得られるまで水溶性ポリマー(ポビドン)を添加した。次に、約15%の重量増加が達成されるまでオーハラ・ラブコート(O’Hara Labcoat)III系において実施例1からの錠剤コアのコーティングを実行した。
【0047】
所望の重量増加が達成されるまで錠剤を被覆し、次に、2rpmのパン速度において50±3℃に設定した入口空気温度で5分間乾燥させた。さらに同じパン速度および同じパラメーターを用いてジョグ(Jog)において40分間乾燥を継続させた。続いて、入口温度をオフにして、排気装置はオンに保持することによって錠剤を冷却した。被覆錠剤の溶解は、非被覆錠剤コアに対するものと同じ実験条件下で決定した。結果は、被覆錠剤コア中の全ベンラファキシン塩酸塩の放出された%として表3に提示される。
【0048】
【表3】

【0049】
非被覆コアの放出プロファイルと比較した被覆錠剤コアの放出プロファイルは、ポリマーがコアを形成するために顆粒化プロセスにおいて使用されると、錠剤からの薬物の放出を著しくは妨害しないことを示す。ポリマー被膜は遅延制御放出プロファイルを提供する。このことは、ベンラファキシンの全ての投薬強度について当てはまる。
【0050】
実施例2
60mgのベンラファキシン遅延制御放出性錠剤
表4に示される材料を合わせて、60mgのベンラファキシン遅延制御放出性錠剤のための錠剤コアを作製した。
【0051】
【表4】

【0052】
実施例1に記載されるように錠剤コアを作製し、続いて、同様に実施例1に記載されるように、表5に示される材料の溶液で被覆した。
【0053】
【表5】

【0054】
被覆錠剤の溶解は、非被覆錠剤コアについて実施例1に記載されるように決定した。結果は、被覆錠剤コア中の全ベンラファキシン塩酸塩の放出された%として表6に提示される。
【0055】
【表6】

【0056】
実施例3
120mgのベンラファキシン遅延制御放出性錠剤
表7に示される材料を合わせ、120mgのベンラファキシン遅延制御放出性錠剤のための錠剤コアを作製した。
【0057】
【表7】

【0058】
錠剤コアを作製し、実施例1に記載されるように、表8に示される材料の溶液で被覆した。
【0059】
【表8】

【0060】
被覆錠剤の溶解は、非被覆錠剤コアについて実施例1に記載されるように決定した。結果は、被覆錠剤コア中の全ベンラファキシン塩酸塩の放出された%として表9に提示される。
【0061】
【表9】

【0062】
実施例4
180mgのベンラファキシン遅延制御放出性錠剤
表10に示される材料を合わせ、180mgのベンラファキシン遅延制御放出性錠剤のための錠剤コアを作製した。
【0063】
【表10】

【0064】
錠剤コアを作製し、続いて、実施例1に記載されるように、表11に示される材料のコーティング溶液で被覆した。
【0065】
【表11】

【0066】
被覆錠剤の溶解は、非被覆錠剤コアについて実施例1に記載されるように決定した。結果は、被覆錠剤コア中の全ベンラファキシン塩酸塩の放出された%として表12に提示される。
【0067】
【表12】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ベンラファキシン、ベンラファキシンの薬学的に許容可能な塩、ベンラファキシンの活性代謝産物、ベンラファキシンの活性代謝産物の薬学的に許容可能な塩、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、コア乾燥重量の約10重量%〜約90重量%の少なくとも1つの形態のベンラファキシンと、10重量%未満のゲル化剤と、任意で従来の賦形剤とを含むコアと、
b)前記コアを実質的に包囲する、被膜乾燥重量の約60重量%のエチルセルロース、約25重量%のポリビニルピロリドンおよび約15重量%の可塑剤を含む調節放出性被膜と
を含む、一日一回の投薬に適した経口投与のための遅延制御放出性の医薬組成物であって、
USP装置1を用いて75rpm、37℃±0.5℃において1000mlのpH6.8のリン酸緩衝液中で試験される場合に、約2時間後には前記少なくとも1つの形態ベンラファキシンの20%以下が放出され、約4時間後には前記少なくとも1つの形態のベンラファキシンの約15%〜約45%が放出され、約8時間後には前記少なくとも1つの形態のベンラファキシンの約55%〜約85%が放出され、約12時間後には前記少なくとも1つの形態のベンラファキシンの約65%以上が放出され、そして約16時間後には前記少なくとも1つの形態のベンラファキシンの約80%以上が放出されるように、前記少なくとも1つの形態のベンラファキシンの遅延制御放出を提供する組成物。
【請求項2】
少なくとも1つの他のコーティングを任意で含有する請求項1に記載の遅延放出性組成物。
【請求項3】
前記可塑剤が、ポリオール、有機エステル、油またはグリセリドを含む請求項1に記載の遅延放出性組成物。
【請求項4】
前記ベンラファキシンの薬学的に許容可能な塩が、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、ショウノウスルホン酸塩、クエン酸塩、エテンスルホン酸塩(ethensulfonic)、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、臭化水素酸塩(hydrobomic)、塩酸塩、イセチオン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩(methansulfonic)、粘液酸塩、硝酸塩、パモ酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、p−トルエネスンホン酸塩などを含む請求項1に記載の遅延放出性組成物。
【請求項5】
前記塩が塩酸塩である請求項4に記載の遅延放出性組成物。
【請求項6】
20〜200mgのベンラファキシンを含む請求項1に記載の遅延放出性組成物。
【請求項7】
30mgのベンラファキシンを含む請求項6に記載の遅延放出性組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の遅延放出性組成物を一日一回投与することを含む、うつ状態の治療を必要としている患者のうつ状態の治療方法。
【請求項9】
少なくとも1つの形態のベンラファキシンの調節放出性組成物は、a)ベンラファキシン、ベンラファキシンの活性代謝産物の薬学的に許容可能な塩、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、コア乾燥重量の約10重量%〜約90重量%の少なくとも1つの形態のベンラファキシンと、10重量%未満のゲル化剤と、任意で従来の賦形剤とを含むコアと、b)前記コアを実質的に包囲する、被膜乾燥重量の約20重量%〜約85重量%の水不溶性の水透過性フィルム形成ポリマー、約10重量%〜約75重量%の水溶性ポリマーまたは物質、および約3重量%〜約40重量%の可塑剤を含む調節放出性被膜とを含む、一日一回の投薬に適した経口投与のための遅延制御放出性の医薬組成物であって、
USP装置1を用いて75rpm、37℃±0.5℃において1000mlのpH6.8のリン酸緩衝液中で試験される場合に、約2時間後には前記少なくとも1つの形態ベンラファキシンの20%以下が放出され、約4時間後には前記少なくとも1つの形態のベンラファキシンの約15%〜約45%が放出され、約12時間後には前記少なくとも1つの形態のベンラファキシンの約55%〜約85%が放出され、そして約16時間後には前記少なくとも1つの形態のベンラファキシンの約80%以上が放出されるように、前記少なくとも1つの形態のベンラファキシンの遅延制御放出を提供する組成物。
【請求項10】
請求項9に記載の遅延放出性組成物を一日一回投与することを含む、うつ状態の治療を必要としている患者のうつ状態の治療方法。

【公表番号】特表2008−542394(P2008−542394A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−514917(P2008−514917)
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【国際出願番号】PCT/US2006/021519
【国際公開番号】WO2006/130843
【国際公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(507395153)バイオベイル・ラボラトリーズ・インターナショナル・ソサイアティーズ・ウィズ・リストリクティッド・ライアビリティ (4)
【氏名又は名称原語表記】BIOVAIL LABORATORIES INTERNATIONAL S.R.L.
【Fターム(参考)】