説明

少なくとも1つの2ストロークサイクルを有する熱交換器、およびこのような熱交換器を含む空調ループ

本発明は、少なくとも1つの2ストロークサイクルを有する熱交換器(6)に関する。この熱交換器(6)は、2組のチューブ(19)に分割されたN個のチューブ(19)を含み、この中の第1の組は、第1のコレクタ(21)と第2のコレクタ(22)の間にN1個のチューブ(19)を含み、また、この中の第2の組は、第2のコレクタ(22)と第3のコレクタ(23)との間にN2個のチューブ(19)を含んでいる。比N1/Nは、15%と50%との間にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に装備される暖房、換気、および/または空調の設備の分野に属する。本発明は、熱交換器に関し、この熱交換器は、空調ループの中に一体化されて、これらの設備の構成要素をなしている。本発明はまた、このような空調ループにも関する。
【背景技術】
【0002】
自動車は、通常、暖房、換気、および/または空調の設備を備え、車室の内部に拡散する空気流の空気熱力学的パラメータを調整している。暖房、換気、および/または空調の設備は、主として、1つのハウジングを備え、このハウジングは、少なくとも1つの空気の出口まで空気流を循環させ、空気流は、その出口を通して車室に向かい、ハウジングの外に拡散して行く。ハウジングは、例えば、プラスチック材料から成り、車両のダッシュボードの下に収容されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ハウジングから外部に空気流が拡散される前に、その空気流の温度を調整するために、暖房、換気、および/または空調の設備は、空調ループを有し、その空調ループの内部で冷却流体を循環させる。冷却流体は、例えば、ハイドロフルオロカーボンであり、例えば、R134aとして知られている流体であるか、または、ハイドロフルオロオレフィンを基本とした化合物であり、特に、HFO1234yfとして知られている流体である。本発明はまた、上記で述べた冷却流体と同様の任意の冷却流体を使用した応用にも関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
空調ループは、車両の外部空気流と熱交換を行うための、車両の前面に設置される外部熱交換器を備えている。外部熱交換器は、外部空気がその中を通り抜けるが、車両の車室に供給されるべき空気には接触していない。外部熱交換器は、少なくとも2つのパスを有する交換器であってよい。すなわち、この交換器は、少なくとも2つの組のチューブを有し、冷却流体は、第1の組のチューブの中を第1の方向に、次に、第1の方向とは逆の方向に、第2の組のチューブの中を流れる。更に具体的には、熱交換器の内部では、冷却流体は、第1のコレクタの第1の区画の中へ入り、第1の組のチューブを通して流れ、そして第2のコレクタから、第2の組のチューブを経て流れ、さらに第1のコレクタの第2の区画から、最終的には外部熱交換器の外部へ排出されるというように、継続して循環する。第1の区画は、第2の区画に並べて配置され、互いに気密とされている。第1のコレクタおよび第2のコレクタは、それぞれ、熱交換器の両側端に配置され、チューブは、これらのコレクタの間に、互いに平行に配置されている。上記した種類の熱交換器を記述している例えば特許文献1(EP1980811)を参照されたい。
【0005】
更に、空調ループは、「暖房モード」、あるいは「冷房モード」で動作するように構成することができる。「暖房モード」では、空調ループの中に含まれる凝縮器として動作する熱交換器を通して、空気を加熱することができ、また「冷房モード」では、空調ループの中にまた含まれる蒸発器として動作する熱交換器を経て、空気流の冷却を行うことができる。空調ループが「暖房モード」で動作する場合には、外部熱交換器は、蒸発器として機能する。すなわち、外部熱交換器の内部では、冷却流体は、外部空気流によって運ばれる熱量を吸収することにより加熱される。空調ループが「冷房モード」で動作する場合には、外部熱交換器は、凝縮器として機能する。すなわち、熱交換器の内部では、冷却流体は、外部空気に熱量を転送することにより冷却される。
【0006】
ある形態においては、空調ループは、蒸発器と並べて配置されたバイパス管を含んでいる。この場合には、冷却流体は、空調ループの中で、特に外部熱交換器の内部では、常に同じ方向に循環する(「暖房モード」および「冷房モード」で)。
【0007】
別の形態においては、空調ループは、外部熱交換器の内部で、冷却流体の循環の方向を反転させるようになっている4ウェイバルブを備えている。外部熱交換器の内部で冷却流体の循環の方向を反転させるようになっているこの構成では、冷却流体を、第1の組のチューブ、および第2の組のチューブを通して、または、第2の組のチューブ、および第1の組のチューブを通して循環させることができる。
【0008】
上記のような熱交換器の設計者は、空調ループの動作モードに拘わらず、また外部熱交換器の内部での冷却流体の循環の方向に拘わらず、熱交換機能が最適化されて、満足のいく熱交換器を得たいと願っている。これにより生ずる一般的な問題は、上記のような熱交換器で、熱交換器が蒸発器または凝縮器として動作するときに、熱交換器内部での冷却流体の循環の方向に拘わらず、また、使用する冷却流体に拘わらず、最も満足のいく熱交換を行うことができる熱交換器の最適な構成を得ることである。
【0009】
本発明の目的は、自動車の、暖房、換気、および/または空調設備の空調ループと一体化した熱交換器を得ることである。この熱交換器は、空調ループの内部を循環する冷却流体と熱交換器と接触している車両へ流れる外部空気流との間の熱転送に対して、十分に最適化されているものである。また、冷却流体は、ハイドロフルオロカーボン(例えば、R134aとして知られている流体)、またはハイドロフルオロオレフィンを基本とする化合物(例えば、HFO1234yfとして知られている流体)であり、また、空調ループは、「冷房モード」および「暖房モード」で動作することができ、冷却流体の循環の方向は、空調ループの動作モードに従って、熱交換器の内部で反転することができる。本発明の別の目的は、このような空調ループを得ることである。
【0010】
本発明の熱交換器は、少なくとも2つのパス(2つのパスであることが望ましい)を有する熱交換器であり、2組のチューブに分割されたN個のチューブを備えている。この2組のチューブの中の第1の組は、第1のコレクタと第2のコレクタとの間に、N1個のチューブを有し、第2の組は、第2のコレクタと第3のコレクタとの間に、N2個のチューブを有している。比N1/Nは、15%と50%との間にある。
【0011】
第1の実施形態においては、比N1/Nは、35%と50%との間にある(40%と50%との間にあることが望ましい)。比N1/Nは、たとえば35%、または40%、または45%、または約50%に等しい。
【0012】
第2の実施形態においては、比N1/Nは、15%と35%との間にある(15%と25%との間にあることが望ましい)。比N1/Nは、たとえば、15%、または20%の程度、またはこれらの値と等しい。
【0013】
第1のコレクタは、第1の区画と第2の区画とを有し、第3のコレクタは、第1のコレクタの第2の区画によって形成されることが望ましい。
【0014】
本発明の空調ループは、上記した熱交換器を備えている。
【0015】
以下に示す詳細な説明を読むことによって、本発明をよりよく理解することができ、また上記以外の特徴、および利点も更に明らかになると思う。なお、この詳細な説明は、添付図面に示す実施形態を参照して行うが、この実施形態は限定的なものではなく、単に、本発明の理解を助けるためのものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】欧州特許第1980811号明細書
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態における、2つの動作モードの空調ループのうちの1つを示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態における、2つの動作モードの空調ループの、別の1つを示す図である。
【図3】本発明の第2の実施形態における、2つの動作モードの空調ループのうちの1つを示す図である。
【図4】本発明の第2の実施形態における、2つの動作モードの空調ループの、別の1つを示す図である。
【図5】図1から図4に示した、本発明における第1および第2の実施形態の熱交換器を示す図である。
【図6】図1から図4に示した、本発明における第1および第2の実施形態の熱交換器を示す図である。
【図7】図5および図6に示した熱交換器の内部を循環する第1のタイプの冷却流体と熱交換器を通過する外部空気流との間で交換される電力の変化を、熱交換器の種々の異なる態様について示すグラフである。
【図8】図5および図6に示した熱交換器の内部を循環する第1のタイプの冷却流体と熱交換器を通過する外部空気流との間で交換される電力の変化を、熱交換器の種々の異なる態様について示すグラフである。
【図9】図5および図6に示した熱交換器の内部を循環する第1のタイプの冷却流体と熱交換器を通過する外部空気流との間で交換される電力の変化を、熱交換器の種々の異なる態様について示すグラフである。
【図10】図5および図6に示した熱交換器の内部を循環する第1のタイプの冷却流体と熱交換器を通過する外部空気流との間で交換される電力の変化を、熱交換器の種々の異なる態様について示すグラフである。
【図11】熱交換器の種々の異なる設定に対して、熱交換器の熱的動作性能の変化を示すグラフである。
【図12】熱交換器の種々の異なる設定に対して、熱交換器の熱的動作性能の変化を示すグラフである。
【図13】図5および図6に示した熱交換器の内部を循環する第2のタイプの冷却流体と熱交換器を通過する外部空気との間で交換される電力の変化を、熱交換器の種々の異なる設定に対して示すグラフである。
【図14】図5および図6に示した熱交換器の内部を循環する第2のタイプの冷却流体と熱交換器を通過する外部空気との間で交換される電力の変化を、熱交換器の種々の異なる設定に対して示すグラフである。
【図15】熱交換器の種々の異なる設定に対して、熱交換器の熱的動作性能の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1〜図4は、本発明による空調ループの第1の実施形態と第2の実施形態とを、それぞれ2つの動作モードに対して示している。
【0019】
図1から図4に示すように、自動車は、暖房、換気、および/または空調設備を備え、車室の内部に放散される空気流の空気熱力学的パラメータを調整するようになっている。暖房、換気、および/または空調の設備は、ハウジング1を備え、このハウジング1は、プラスチック材料で作られて車両のダッシュボードの中に収容されている。暖房、換気、および/または空調設備は、空気流2の循環を導く役割を持ち、空気流2は、少なくとも1つの空気入口から少なくとも1つの空気出口へ循環し、その出口を経て、車両の車室内にある暖房、換気、および/または空調設備のハウジング1の外部に拡散される。
【0020】
暖房、換気、および/または空調設備は、また、空調ループ3を備えて、空気流2の空気熱力学的パラメータ(特に、空気流2の温度)を調整するために、空気流2を車室の中に拡散させる前に、冷却流体FRを、空調ループ3の内部で循環方向4に循環させる。冷却流体FRは、例えば、ハイドロフルオロカーボン(例えば、R134aとして知られている流体)、またはハイドロフルオロオレフィンを基本とした化合物(例えば、HFO1234yfとして知られている流体)、または他の任意の同様の冷却流体である。
【0021】
空調ループ3は、圧縮機5と外部熱交換器6とを含み、圧縮機5は、冷却流体FRを圧縮するようになっており、また外部熱交換器6は、車両のところの外部空気流7とアキュムレータ8との間で、熱量の交換を行うようになっている。
【0022】
ある実施形態においては、アキュムレータ8は、空調ループ3の内部における冷却流体FRの循環方向4に沿って、圧縮機5の上流の近くに配置され、液体状態にある冷却流体FRを集める。
【0023】
外部熱交換器6は、車両の前面に設置され、外部熱交換器6を通過する外部空気流7と熱交換を行うようになっていることが望ましい。外部熱交換器6は、車両の車室の中に拡散されるべき空気流2が、ハウジング1の内部に循環した後には、それとは接触しない方が有利である。その代わりに、空調ループ3は、内部熱交換器9を備えている。内部熱交換器9はハウジング1の中に収容され、中を空気流2が通過して、空気流2の空気熱力学的パラメータ(特に、その温度)が調整される。
【0024】
第1の実施形態を、図1および図2に示す。この実施形態においては、空調ループ3は、第1のバイパス管10を備えている。第1のバイパス管10は、内部熱交換器9の内部への冷却流体FRの循環を、許可または禁止するように適合なっている。
【0025】
空調ループ3はまた、第1の膨張器11を有し、第1の膨張器11は、空調ループ3の内部における冷却流体FRの循環方向4に沿って、外部熱交換器6と内部熱交換器9との間に配置されている。図1および図2の実施形態において、第1の膨張器11は、空調ループ3の内部における冷却流体FRの循環方向4にそって、第1のバイパス管10と外部熱交換器6との間で、外部熱交換器6の上流に配置されている。
【0026】
空調ループ3はまた、内部凝縮器12を有し、内部凝縮器12は、ハウジング1の中に収容され、空調ループ3の内部における冷却流体FRの循環方向4に沿って、圧縮機5の下流すぐのところに配置されている。内部凝縮器12は、冷却流体FRを冷却する役目を有する。内部凝縮器12における冷却流体FRを冷却させると、内部凝縮器12を通過する空気流2は加熱させられる。
【0027】
空調ループ3はまた、第2の膨張器13を有し、第2の膨張器13は、内部凝縮器12と外部熱交換器6との間に挿入されている。第2の膨張器13は、第2のバイパス管14に関連しており、第2の膨張器13を通して、外部熱交換器6の方へ冷却流体FRを循環させるか、または、第2の膨張器13を迂回させることにより、内部凝縮器12から外部熱交換器6の方へ、直接に冷却流体FRを循環させることができる。
【0028】
図1において、空調ループ3は、「冷房モード」における第1の実施形態に従って動作する。この構成では、冷却流体FRは、圧縮機5から内部凝縮器12に向かって循環し、第2のバイパス管14を通して外部熱交換器6に向かって循環する。この構成では、外部熱交換器6は、凝縮器として動作して外部空気流7を加熱する。次に、冷却流体FRは、第1の膨張器11に循環して行き、その中で冷却流体FRは膨張する。冷却流体FRは、内部熱交換器9に向かって循環して行き、内部熱交換器9は、この構成では、蒸発器として動作して空気流2を冷却する。冷却流体FRは更に、アキュムレータ8に向かって循環して行き、圧縮機5に戻る。この構成により、可能な限りの最大熱量を、外部空気流7に対して転送するようになっている外部熱交換器6が得られる。
【0029】
図2においては、空調ループ3は、「暖房モード」における第1の実施形態に従って動作する。この場合には、冷却流体FRは、圧縮機5から内部凝縮器12に向かって循環し、その後、第2の膨張器13を通して循環し、冷却流体FRは膨張する。その後、外部熱交換器6に向かって循環して行き、外部熱交換器6は、蒸発器として動作して外部空気流7を冷却する。次に、第1のバイパス管10を通して循環して行き、更にアキュムレータ8に向かって行き、圧縮機5に戻る。この構成により、可能な限りの最大熱量を外部空気流7から収集するように構成された外部熱交換器6を得ることができる。
【0030】
この第1の実施形態においては、冷却流体FRは、空調ループ3の動作モード(「暖房モード」または「冷房モード」に拘わらず、外部熱交換器6を通して同一の方向に循環する。すなわち、第2の膨張器13および第2のバイパス管14に関する、外部熱交換器6の第1の開口15から、第1の膨張器11および第1のバイパス管10に関する、外部熱交換器6の第2の開口16へ循環する。すなわち、この第1の実施形態においては、第1の開口15は、外部熱交換器6の内部への冷却流体FRの入力開口を構成し、第2の開口16は、外部熱交換器6の外部への冷却流体FRの出力開口を構成している。
【0031】
外部熱交換器6が、凝縮器として動作するか、または蒸発器として動作するかは、第1の開口15の入口と第2の開口16の出口とにおける冷却流体FRの密度によって決まる。これら両者の密度は、お互いに異なっている。外部熱交換器6が凝縮器として動作するときには、冷却流体FRは、第1の開口15のところでは、全体または部分が気相であり、また、第2の開口16のところでは、全体または部分が液相である。従って、第1の開口15のところの冷却流体FRの密度は、第2の開口16のところの冷却流体FRの密度よりも低い。外部熱交換器6における熱交換を最適にするためには、外部熱交換器6の入口のところの冷却流体FRの行路部分を最大にすることが必要である。
【0032】
反対に、外部熱交換器6が、蒸発器として動作するときには、冷却流体FRは、第1の開口15のところでは、気相と液相との混成であり、一方、第2の開口16のところでは、冷却流体FRは、全体または部分が気相である。従って、第1の開口15のところの冷却流体FRの密度は、第2の開口16のところの冷却流体FRの密度よりも高い。熱交換器6における熱交換を最適にするためには、外部熱交換器6の入口のところの冷却流体FRの行路部分を最小にすることが必要である。
【0033】
従って、これら2つの相反する最適化の間において、特別に適用可能な解を見出すことが必要になる。本発明は、外部熱交換器6に対して、主要かつ有利な動作特性に基づく解決策を提供するものである。
【0034】
図3および図4に示す第2の実施形態においては、空調ループ3は、外部熱交換器6の内部で冷却流体FRの循環方向4を反転させるようになっている4ウェイバルブ17を含んでいる。この構成では、空調ループ3は膨張器18を含み、膨張器18は、外部熱交換器6と内部熱交換器9との間で、内部熱交換器9の上流に挿入されている。
【0035】
第2の実施形態は、第1の実施形態と同様に多くの要素を含んでいる。従って、特に指摘しない限り、これらの要素は、以前に記述したものと同じ特性と仕様とを有する。従って、それらは、第1の実施形態の記述に関連して与えたもの同じである。
【0036】
図3において、空調ループ3は、「冷房モード」で、第2の実施形態に従って動作する。この構成では、冷却流体FRは、圧縮機5から4ウェイバルブ17に循環する。4ウェイバルブ17は、冷却流体FRを外部熱交換器6の第1の開口15に向かって循環させるように構成されている。冷却流体FRは、外部熱交換器6を通して流れ、第2の開口16に循環する。外部熱交換器6は、この構成では、凝縮器として動作し、冷却流体FRは、凝縮器の内部で、外部空気流7に熱を転送することにより冷却される。冷却流体FRは、外部熱交換器6から出て膨張器18へ循環し、膨張器18の中で膨張する。そして、内部熱交換器9を通して循環する。この構成では、内部熱交換器9は蒸発器として動作し、それを通過する空気流2を冷却する。更に、冷却流体は、再び4ウェイバルブ17に結合する。4ウェイバルブ17は、アキュムレータ8に冷却流体FRを循環させ、更に、圧縮機5に再び戻すように構成されている。この構成により、可能な限りの最大熱量を、外部空気流7に対して転送するように構成された外部熱交換器6を得ることができる。
【0037】
図4において、空調ループ3は、「暖房モード」で、第2の実施形態に従って動作する。この構成では、冷却流体FRは、圧縮機5から4ウェイバルブ17に循環する。4ウェイバルブ17は、冷却流体FRを内部熱交換器9に向かって循環させるように構成されている。この構成により、内部熱交換器9は凝縮器として動作し、内部熱交換器9を通して流れる空気流2を加熱する。その後、冷却流体FRは、膨張器18へ循環し、第2の開口16を介して外部熱交換器6の中へ入る。冷却流体FRは、外部熱交換器6を通して流れる。外部熱交換器6は蒸発器として動作し、その後、冷却流体FRは、第1の開口15を介して、外部熱交換器6の外に排出される。冷却流体FRは、冷却流体FRをアキュムレータ8に循環させるように構成された4ウェイバルブ17に再び流れ、圧縮機5に戻る。この構成により、可能な限りの最大熱量を、外部空気流7から吸収するようになっている外部熱交換器6を得ることができる。
【0038】
この第2の実施形態においては、冷却流体FRは、空調ループ3の動作モードに従って、外部熱交換器6の内部を反対の方向に循環する。具体的には、「冷房モード」では、冷却流体FRは、4ウェイバルブ17における第1の開口15から、膨張器18に関わる第2の開口16に循環する。すなわち、この動作モードでは、第1の開口15は、外部熱交換器6の内部への冷却流体FRの入力開口を構成する。また、第2の開口16は、熱交換器6から外への冷却流体FRの出力開口を構成する。
【0039】
反対に、「暖房モード」では、冷却流体FRは、膨張器18における第2の開口16から、4ウェイバルブ17に関わる第1の開口15に循環する。すなわち、この動作モードでは、第1の開口15は、外部熱交換器6の外への冷却流体FRの出力開口を構成し、第2の開口16は、熱交換器6の内部への冷却流体FRの入力開口を構成する。
【0040】
冷却流体FRと外部空気流7との間の熱交換を最適にするために、外部熱交換器6の入口のところの冷却流体FRの行路部分と、外部熱交換器6の出口のところの冷却流体FRの行路部分との間の差は、考慮するべき問題とはならない。その理由は、第1の開口15および第2の開口16は、入力開口か、または出力開口かのどちらかになるからである。
【0041】
本発明は、外部熱交換器6を提案するものであり、これにより外部熱交換器6の2つの場合の間で、可能な限りの最良の動作性能を有利に達成することができる。1つの場合では、「冷房モード」と「暖房モード」とにおいて最適化された動作性能を得ることができる。また別の場合で、2つの反対の構成の間で最適な構成を得ることができる。ここでは、第1の開口15は、熱交換器6の内部への冷却流体FRの入力開口であるか、または、熱交換器6から外への冷却流体FRの出力開口であるかによって、最適な構成を得ることができる。第2の開口16に関しても同様である。
【0042】
図5および図6に示す熱交換器6によって、所望の結果を達成することができる。両図は、本発明による熱交換器を示すものである。
【0043】
熱交換器6は、少なくとも2つのパスを有する交換器であり、複数個Nのチューブ19を備えている。チューブ19は、少なくとも2組のチューブ19に分割されている。図5および図6の例は、2組だけのチューブ19を備えている。しかし、本発明は、2組よりも多くの組のチューブ19を含む熱交換器に対しても等しく適用することができる。
【0044】
熱交換器6は、2つのパスを有する交換器であり、2つのパスは複数個Nのチューブ19を有し、それらは、2組のチューブ19に分割されていることが望ましい。図5および図6の例においては、第1の組のチューブ19は、N1個のチューブ19を含んでいる。第2の組のチューブ19は、N2個のチューブ19を含んでいる。従って、熱交換器6のチューブ19の数Nは、第1の組のチューブ19の数N1と、第2の組のチューブ19の数N2との和に等しい。
【0045】
第1の組のチューブ19は、第1のコレクタ21と第2のコレクタ22との間に位置している。第1の組のチューブ19は、第1のコレクタ21の第1の区画20と第2のコレクタ22との間に位置していることが望ましい。
【0046】
第2の組のチューブ19は、第2のコレクタ22と第3のコレクタ23との間に含まれている。図5および図6に示すように、第3のコレクタは、第1のコレクタ21の第2の区画23によって形成されていると有利である。
【0047】
チューブ19は、互いに同じものであり、チューブ19のそれぞれは、互いに等しい断面Aを有する。そのため、外部熱交換器6の入口のところの冷却流体FRの行路の断面は、第1の組のチューブ19の数N1に比例している。同様に、外部熱交換器6の出口のところの冷却流体FRの行路の断面は、第2の組のチューブ19の数N2に直接に比例している。
【0048】
好適な実施形態においては、第1のコレクタ21と第2のコレクタ22とは、それぞれ、熱交換器6の反対の端に設けられている。第1のコレクタ21は、第1の区画20と第2の区画23とから構成され、これら2つの区画は、互いに気密になるように構成されている。第1の区画20は、第2の区画23に並べて配置されている。第1の区画20には第1の開口15が設けられ、また第2の区画23には第2の開口16が設けられている。スペーサ24が2つの隣接したチューブ19の間に挿入され、冷却流体FRと外部空気流7との間の熱交換を容易にしている。
【0049】
チューブ19は互いに並行に配置され、第1の組のN1個のチューブ19は、その中を冷却流体FRが第1の方向S1に流れ、また、第2の組のN2個のチューブ19は、その中を第1の方向と反対の第2の方向S2に冷却流体FRが流れる。
【0050】
ここには示していない別の実施形態においては、第2の組のN2個のチューブ19は、第2の組のN2個のチューブ19の一部に対しては、第1の方向S1とは反対の方向の第2の方向S2に冷却流体が流れ、また第2の組のN2個のチューブ19の別の部分に対しては、第1の方向S1に流れるようになっており、冷却流体は、交互に、および/または継続して流れることができる。
【0051】
図5に基づいて更に詳細に説明すると、外部熱交換器6の第1の開口15は、外部熱交換器6の内部への冷却流体FRの入力開口を構成している。また、外部熱交換器6の第2の開口16は、熱交換器6の外に向っての冷却流体FRの出力開口を構成している。図5に示す外部熱交換器6は、図1〜図3に示した動作モードに従って、空調ループ3の中に一体化されるようになっている。
【0052】
図6において更に詳細に説明すると、外部熱交換器6の第1の開口15は、外部熱交換器6の外に向かう冷却流体FRの出力開口を構成している。また、外部熱交換器6の第2の開口16は、熱交換器6の内部への冷却流体FRの入力開口を構成している。図6に示す外部熱交換器6は、図4に示した動作モードに従って、空調ループ3の中に一体化されるようになっている。
【0053】
このような熱交換器6の熱的動作性能は、比N1/Nが10%と50%との間にある熱交換器6の特性を好ましいものとする。従って、本発明においては、熱交換器6のN個のチューブの中、その半分以下の数のチューブが第1の区画20と第2のコレクタ22との間に設けられる。すなわち、本発明においては、熱交換器6は、N1とN2との間の不等式関係を証明している。
【0054】
このように、熱交換器6の内部において冷却流体FRの循環を分布させることにより、「冷房モード」および「暖房モード」動作に対して、最適な動作性能を得ることができる。またそればかりではなく、それぞれ図5および図6に示した、熱交換器6の内部における冷却流体FRの循環に関して、2つの反対の構成に対しても、最適な動作性能を得ることができる。
【0055】
従って、このような熱交換器6に対して、比較的任意な形の空調ループ3であって、その内部に冷却流体FRが循環する、空調ループ3の上で最適に動作するようになっている、ユニークな熱交換器6を得ることができる。この場合、冷却流体FRは、ハイドロフルオロカーボン(特に、R134aとして知られている流体)で構成してもよいし、またはハイドロフルオロオレフィンを基本とした化合物(特に、HFO1234yfとして知られている流体)で構成してもよい。
【0056】
図7〜図12では、冷却流体FRはR134aであり、外部熱交換器6は、外部空気流7の方向に垂直とされた前面を有する。すなわち、図5および図6に示す面と平行である。前面は、20dm2から31.8dm2の間である。
【0057】
図7および図8は、「冷房モード」において、冷却流体FRと外部空気流7との間で交換される電力Pの変化を、熱交換器6を通して流れる外部空気流7の流速に対して、比N1/Nの関数として示すものである。流速は、それぞれ、1.5m/s、2m/s、および3m/sである。
【0058】
さらに詳細には、図7は、31.8dm2に等しい前面を有する熱交換器6の場合での交換される電力Pの変化を示し、また、図8は、20dm2に等しい前面を有する熱交換器6の場合での交換される電力Pの変化を示している。どちらの場合も、交換される電力Pは、比N1/Nが可能な範囲で最も高い値を取るときに最大になる。
【0059】
図7および図8は、熱交換器6の前面の特定な2つの値に対して、熱交換器6において交換される電力Pの変化の2つの例を示しているが、本発明はこれらの値に限定されるものではなく、他の値の前面を有する熱交換器6に対しても、等しく適用することができる。
【0060】
図9および図10は、「暖房モード」において、冷却流体FRと外部空気流7との間で交換される電力Pの変化を、外部熱交換器6を流れる外部空気流7の温度に対して、比N1/Nの関数として示すものである。温度は、外部熱交換器6の上流で、それぞれ、0℃、−5℃、および−10℃である。
【0061】
さらに詳細には、図9は、31.8dm2と等しい前面を有する熱交換器6の場合での交換される電力Pの変化を示し、また、図10は、20dm2に等しい前面を有する熱交換器6の場合での交換される電力Pの変化を示している。どちらの場合も、交換される電力Pは、比N1/Nが、可能な範囲で最も低い値を取るときに最大になる。
【0062】
図7〜図10は、熱交換器6の前面の特定の2つの値に対して、熱交換器6において交換される電力Pの変化の2つの例を示しているが、本発明はこれらの値に限定されるものではなく、他の値の前面を有する熱交換器6に対しても、等しく適用することができる。
【0063】
従って、考慮する2つのモードのそれぞれにおいて、交換される電力Pの積に比例する比Rを決定することが可能である。比Rの変化は、図11および図12に示されている。図11は、前表面が20dm2の場合であり、図12は、前表面が31.8dm2の場合である。図11および図12では、比Rは、比N1/Nが、30%と50%との間の範囲で最適になる。すなわち、比Rは最大になる。さらに詳細には、比Rは、比N1/Nが35%と45%との間の範囲で最適になる。できれば、40%の程度が望ましい。
【0064】
図13〜図15は、図5および図6に示す熱交換器の内部を循環する第2のタイプの冷却流体と熱交換器を通して流れる外部空気との間で交換される電力の変化を、熱交換器の種々の異なる設定に対して示すグラフである。
【0065】
図13〜図15では、冷却流体FRはHFO1234yfであり、熱交換器6は、その前面が、31.8dm2程度の面積を有する外部空気流7の流れの方向に対して直交するように配置されている。
【0066】
図13は、「冷房モード」において冷却流体FRと外部空気流7との間で交換される電力Pの変化を、熱交換器6を通して流れる外部空気流7の速度に対して、比N1/Nの関数として示すものである。外部空気流7の速度は、それぞれ、1.5m/s、2m/s、および3m/sである。交換される電力Pは、比N1/Nが可能な範囲で最も高い値を取るときに最大になる。
【0067】
図14は、「暖房モード」において冷却流体FRと外部空気流7との間で交換される電力Pの変化を、外部熱交換器6の入り口のところの外部空気流7の温度に対して、比N1/Nの関数として示すものである。温度は、それぞれ、0℃、−5℃、および−10℃である。交換される電力Pは、比N1/Nが可能な範囲で最も低い値を取るときに最大になる。
【0068】
従って、2つのモードのそれぞれにおいて、交換される電力Pの積に比例した比Rを決定することが可能である。比Rの変化は、図15に示されている。比Rは、比N1/Nが35%と50%との間の範囲で最適になる。すなわち、比Rは最大になる。さらに詳細には、比Rは、比N1/Nが40%と50%との間の範囲で最適になる。できれば、45%の程度が望ましい。
【0069】
また、冷却流体FRとして、ハイドロフルオロカーボン(例えば、R134aとして知られている流体)、またはハイドロフルオロオレフィンを基本とした化合物(例えば、HFO1234yfとして知られている流体)のどちらの場合も、熱交換器6の内部で冷却流体FRの循環の方向が変化する場合には、比N1/Nは、15%と35%との間の範囲で最適になる。さらに詳細には、比Rは、比N1/Nが15%と25%との間の値を取るときに最適になる。できれば、20%程度が望ましい。
【0070】
しかしながら、これらの動作例は、本発明の単なる実施例として挙げたものであることを理解されるべきである。無論のことながら、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、これらは単に例として提供したものである。本発明は、種々の変更、代替の形、および他の変形を含み、これらは、本発明の技術分野における当業者には理解されると思う。また、本発明は、上記した種々の異なる実施形態の全ての組み合わせを含むものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの組のチューブ(19)に分割されたN個のチューブ(19)を含む、少なくとも2つのパスを有する熱交換器(6)であって、
前記チューブ(19)の第1の組は、第1のコレクタ(21)と第2のコレクタ(22)との間にあるN1個のチューブ(19)を含み、また第2の組は、第2のコレクタ(22)と第3のコレクタ(23)との間にあるN2個のチューブ(19)を含み、
比N1/Nが、15%と50%との間にあることを特徴とする熱交換器(6)。
【請求項2】
前記比N1/Nは、35%と50%の間にあることを特徴とする、請求項1に記載の熱交換器(6)。
【請求項3】
前記比N1/Nは、35%に等しいことを特徴とする、請求項1または2に記載の熱交換器(6)。
【請求項4】
前記比N1/Nは、40%に等しいことを特徴とする、請求項1または2に記載の熱交換器(6)。
【請求項5】
前記比N1/Nは、45%に等しいことを特徴とする、請求項1または2に記載の熱交換器(6)。
【請求項6】
前記比N1/Nは、55%に等しいことを特徴とする、請求項1または2に記載の熱交換器(6)。
【請求項7】
前記比N1/Nは、15%と35%との間にあることを特徴とする、請求項1に記載の熱交換器(6)。
【請求項8】
前記比N1/Nは、15%に等しいことを特徴とする、請求項1または7に記載の熱交換器(6)。
【請求項9】
前記比N1/Nは、20%に等しいことを特徴とする、請求項1または7に記載の熱交換器(6)。
【請求項10】
前記第1のコレクタ(21)は、第1の区画(20)と第2の区画(23)とを含み、前記第3のコレクタは、前記第1のコレクタ(21)の前記第2の区画(23)によって形成されていることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の熱交換器(6)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2013−501909(P2013−501909A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524179(P2012−524179)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【国際出願番号】PCT/EP2010/060903
【国際公開番号】WO2011/018332
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(510337414)
【Fターム(参考)】