説明

少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されたカルボン酸を含有する組成物

【課題】防錆性、腐食防止性、潤滑性又は鉛適合性に優れた変速機用流体組成物を提供する。
【解決手段】少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されたカルボン酸を流体組成物に添加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されたカルボン酸を含有する流体組成物に関する。1個以上のヒドロキシル基で置換されたカルボン酸は、防錆性、腐食防止性、向上した潤滑性、向上した鉛適合性から選ばれる1つ以上の特性を与える。本願明細書に開示される変速機用流体組成物は、自動変速機、連続無段変速機、および/または手動式変速機での使用に適している。
【背景技術】
【0002】
金属−金属間での極圧状態が、有段自動変速機、連続無段変速機、および自動あるいは手動式変速機等の比較的新規の自動および手動式変速機に存在する。極圧状態は自動車の差動装置や動力伝達装置のギヤ駆動部品といった、各種のギヤ駆動部品にも存在する。
【0003】
この点に関して、潤滑がエンジン、変速機、および可動部分を有するその他の装置といった、自動車の機械装置に関わる摩耗を減らすのに顕著な効果を有することは広く知られている。潤滑剤を使用することで可動部分の表面を損傷せず、低抵抗で滑らせることが出来る膜により接触する可動表面を分離する。
【0004】
カプリル酸等のカルボン酸は潤滑剤や燃料中で腐食防止剤や潤滑向上剤として有用である。しかしながら、機械、エンジンおよび変速機部品が構成材料の1部に鉛を含有する場合、カプリル酸はこのような部品に腐食を生じさせる。
【0005】
特許文献1は、重量比で多量の粘性潤滑油と、重量比で少量の高分子量の窒素含有分散剤、および油溶性で油分散性の芳香族ヒドロカルビルオリゴマーを潤滑剤組成物に向上したスス分散性を与えるに十分な量を含有するクランクケース潤滑油に関する。ここで、該分散剤は一価不飽和カルボン酸から調製できる。
【0006】
特許文献2は、内燃機関の作動中におけるエンジンの摩耗を減らすためのプロセスに関し、該プロセスはエンジンからの排気ガスの少なくとも一部をエンジンの吸気用の空気供給に再循環させ、i)常温・常圧で液体の炭化水素燃料、ii)水、およびiii)1種以上の界面活性剤を混合して得られる水混合燃料組成物を用いてエンジンを作動することを含む。該界面活性剤として、例えばアミンと反応させたカルボン酸等の、1種以上のアシル化剤を用いることができる。
【0007】
特許文献3は、ケイヒ酸等の有機化合物をベースにした接着性を付与するポリマーを含有する耐腐食性ボンドコーティングを有する金属基板に関する。
【0008】
特許文献4は改良された潤滑性を示す添加剤化合物を含有する、硫黄含有量の少ない燃料組成物に関する。該添加剤化合物は、少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されたカルボン酸と少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されたカルボン酸の誘導体とを含有する。
【特許文献1】米国特許第6,750,183号
【特許文献2】米国特許第6,748,905号
【特許文献3】米国特許6,746,778号
【特許文献4】米国特許第6,001,141号
【発明の概要】
【0009】
本発明の種々の実施形態によれば、少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されたカルボン酸を含有する変速機用流体組成物が提供できる。
【0010】
本発明の種々の実施形態によれば、少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されたカルボン酸を含有する潤滑剤組成物が提供される。
【0011】
本発明の種々の実施形態によれば、(a)多量の燃料、および(b)少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されたカルボン酸を少量含有する燃料組成物を含有する燃料組成物が提供される。
【0012】
本発明の種々の実施形態によれば、少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されたカルボン酸を含有する燃料組成物を機械部品に使用することを特徴とする機械部品の腐食を防
止する方法が提供される。
【0013】
本発明の種々の実施形態によれば、少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されたカルボン酸を含有する燃料組成物を機械部品に使用することを特徴とする機械部品の錆を防止する方法が提供される。
【0014】
本発明の種々の実施形態によれば、多量の油と少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されたカルボン酸を含有する組成物を少量含有する潤滑油組成物が提供される。
【0015】
本発明の種々の実施形態によれば、少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されたカルボン酸からなる防錆性組成物が提供される。
【0016】
本発明の種々の実施形態によれば、少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されたカルボン酸からなる防腐食性組成物が提供される。
【0017】
本発明のさらなる目的や利点は、以下に示す発明の説明に一部記載されているが、以下の記載から明らかになるもの、発明の実施によりわかるものもある。また、本発明の目的や利点は、本願明細書に付随する請求項に特に記載されている要素や組合わせにより実現および達成できるであろう。
【0018】
前述の一般的な説明と以下の詳細な説明は例示および本発明の説明を目的としたものであり、本発明を限定するものではないことは理解されるべきである。
【発明の説明】
【0019】
本発明の開示に従えば、少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されたカルボン酸を含有する変速機用流体組成物が提供される。
【0020】
本発明の流体組成物は、これらには限定されないが、自動変速機油(ATF)、連続無段変速機油、手動式変速機油、およびデュアルクラッチ変速機に使用される流体等への使用に適した流体組成物を含む。少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されたカルボン酸は、ギヤ潤滑剤や燃料といった、その他の流体組成物中に使用してもよい。
【0021】
少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されたカルボン酸は、錆防止や腐食防止、および/または潤滑向上の少なくとも1つを達成するのに十分な量を流体組成物中に含有される。例えば、少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されたカルボン酸は、該組成物中、該組成物の全重量に対して、約0.05wt.%〜約0.2wt.%、さらなる例としては約0.01〜約0.5wt.%存在する。
【0022】
少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されたカルボン酸は、通常60個以下の炭素原子を有し、一価または多価カルボン酸あるいは酸の二量体が挙げられる。カルボン酸の炭素鎖は、飽和あるいは不飽和、分岐あるいは直鎖、多環式または非環式を含む環式の少なくとも1つである。 カルボン酸としては、その性状として、脂肪族、脂環式、芳香族、あるいは複素環式であってもよい。
【0023】
モノカルボン酸を使用する場合、モノカルボン酸として炭素数10〜30、例えば12〜24、といった炭素数8〜40のものが通常使用される。例として、これらには限定されないが、ラウリン酸、ミリスチン酸、ヘプタデカン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、マルガリン酸、イソステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、9−デセン酸、パルミトレイン酸、エライジン酸、ヤシ油脂肪酸、硬化魚油の脂肪酸、硬化ナタネ油の脂肪酸、硬化牛脂の脂肪酸、パーム油の脂肪酸、ドデセニルコハク酸およびその無水物、およびデカン酸が挙げられる。本願明細書において「脂肪族」という語は、非環式または環式、飽和または不飽和の炭素化合物を意味し、芳香族化合物を含まない。
【0024】
脂肪族飽和カルボン酸の例として、これらには限定されないが、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、セロチン酸、およびラッセル酸等の直鎖飽和カルボン酸が挙げられる。脂肪族飽和カルボン酸の例として、これらには限定されないが、イソペンタン酸、2−メチルペンタン酸、2−メチルブタン酸、2,2−ジメチルブタン酸、2−メチルヘキサン酸、5−メチルヘキサン酸、2,2−ジメチル−ヘプタン酸、2−エチル−2−メチルブタン酸、2−エチルヘキサン酸、ジメチルヘキサン酸、2−n−プロピルペンタン酸、3,5,5−トリ
メチルヘキサン酸、ジメチルオクタン酸、イソトリデカン酸、イソミリスチン酸、イソステアリン酸、イソアラキン酸、およびイソヘキサン酸のような分岐状カルボン酸が挙げられる。不飽和カルボン酸の例として、これらには限定されないが、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、およびリシノール酸が挙げられる。ナフテン酸等の脂環式カルボン酸も使用することができる。これらのカルボン酸は、2種以上を組合わせて使用することもできる。
【0025】
芳香族カルボン酸の例として、これらには限定されないが、安息香酸、フタル酸、トリメリット酸、およびピロメリット酸が挙げられる。
【0026】
ジカルボン酸やトリカルボン酸のような多価カルボン酸を使用する場合、これらの多価カルボン酸は、3〜30個、例えば3〜24個といった、3〜40個の炭素原子を通常有する。例として、これらには限定されないが、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、アジピン酸、グルタル酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等のジカルボン酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸等のトリカルボン酸、および1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸等のテトラカルボン酸が挙げられる。
【0027】
ヒドロキシ置換した酸二量体も使用できる。本願明細書では、このような化合物を二量体酸または三量体酸と称する。これらの化合物を使用する場合、二量体酸は通常約10〜約60、例えば約20〜約60、更なる例として約30〜約60個の炭素原子を有する。このような酸は、不飽和酸を二量体化することで得られ、通常酸のモノマー、二量体、および三量体の混合物を含有する。二量体は、モノマーを2wt.%、二量体を83wt.%、および三量体以上の酸を15wt.%含有する混合物でもよい。二量体化した酸は、その他の上記の酸同様、商業的に入手あるいは公知技術を利用または適用することで得られる。
【0028】
いずれのカルボン酸も、ヒドロキシル官能基を有するように化学修飾できる。このような化学修飾は、当業者にとって既知である。少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されたカルボン酸は、ヒドロキシル基を1個以上有する。さらに、少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されたカルボン酸は、カルボン酸官能基を1個以上有する。
【0029】
本発明で使用できる少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されたカルボン酸の例として、これらには限定されないが、リシノール酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、6−ヒドロキシカプロン酸(6−ヒドロキシヘキサン酸)、2−ヒドロキシケイヒ酸、および3−(2−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸が挙げられる。
【0030】
少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されたカルボン酸は、低融点を有してもよい。さらに、少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されたカルボン酸は、液体でもよい。
【0031】
特別な理論に限定されることなく、少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されたカルボン酸からなる組成物は、全酸価の変化を測定する酸化試験の基準を満たすと考えられている。酸化試験の例として、MERCON(R)アルミニウムビーカー酸化試験(ABOT)、FMC BJ 10−4、2003年度改定第1版がある。この試験を行う場合、少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されたカルボン酸を含有する組成物では、全酸価の変化は5以下を示す。MERCON V(R)アルミニウムビーカー酸化試験(ABOT)では、組成物の全酸価の変化が3.5未満であることが要求される。さらなる例として、G.M.DEXRON(R)−III,H Revision,ATF GMN10055、酸化試験、2003年10月版では、組成物の全酸価の変化が3.25未満であることが要求され、サイクル試験では、全酸価変化が2.0未満であることが要求される。
【0032】
少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されたカルボン酸は、鉛クーポン試験にも合格する。酸化試験の一部として、鉛クーポンを、少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されたカルボン酸と共にビーカーに入れる。その後、鉛クーポンを、その外観および重量に基づいて評価する。例えば、試験終了時において少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されたカルボン酸を含有する組成物に浸した鉛クーポンは、クーポンへの沈着物等の腐食を起こさない。
【0033】
さらに、鉛クーポンの重量は、試験前後の鉛クーポンの重量を測定することで評価される。試験の最後で重量を正確に測定するのに、鉛クーポンは、重量測定前に腐食性の沈着物をきれいにふき取っておく必要がある。本発明の組成物に浸した鉛クーポンの重量変化は、ふき取り前後で3%以下にとどまる。
【0034】
少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されたカルボン酸は、多機能性の燃料添加剤パッケージを与えるように、適切な比率で1種以上の添加剤に加えてもよい。使用できる1種以上の添加剤の例として、これらには限定されないが、分散剤、清浄剤、抗酸化剤、キャリヤ流体、金属不活性化剤、染料、マーカー、腐食防止剤、殺生物剤、帯電防止添加剤、抵抗低減剤、乳化破壊剤、ヘーズ防止剤(dehazer)、着氷防止添加剤、ノッキング防止添加剤、バルブシートリセッション防止添加剤、潤滑添加剤、燃焼向上剤、低温流動性向上剤、摩擦調整剤、耐摩耗剤、消泡剤、粘度指数向上剤、防錆添加剤、シール膨潤剤、金属不活性化剤、および空気除去添加剤(air expulsion additives)が挙げられる。
【0035】
添加剤を1種以上選ぶ場合、選択する添加剤が燃料添加剤パッケージおよび完成品の組成物中に溶解または安定して分散し、組成物中のその他の成分と混和し、完成品の組成物全体として必要あるいは所望の適切な防錆性、腐食防止性、向上した潤滑性、向上した鉛適合性といった、組成物の性能を顕著に妨げないように確実にするのが重要である。
【0036】
便宜上、使用される1種以上の添加剤として、希釈用の濃厚物を使用できる。このような濃厚物は、本発明の一部であり、99〜1wt.%の添加剤と1〜99wt.%の添加剤の溶媒または希釈剤からなり、該溶媒または希釈剤は、該濃厚物を使用する燃料と混和および/または溶解可能である。該溶媒または希釈剤はいうまでもなく、低硫黄燃料自身であってもよい。しかし、その他の溶媒・希釈剤の例として、ホワイトスピリット、灯油、アルコール類(例:2−エチルヘキサノール、イソプロパノール、およびイソデカノール)、高沸点芳香族系溶媒(例:トルエンおよびキシレン)、セタン価向上剤(例:2−エチルヘキシルニトレート)が挙げられる。もちろんいうまでもなく、これらは単独あるいは混合して使用することができる。
【0037】
一般に、本発明で使用される1種以上の添加剤は、ベース流体の性能や特性を向上させるのに十分な少量を使用する。従って、使用するベース流体の粘度特性、完成品の流体に望まれる粘度特性、完成品の流体の目的とする使用条件、および完成品の流体に望まれる性能といった要因に応じて、添加剤の使用量は異なる。
【0038】
個々の使用成分はベース流体に個別に加えても、必要に応じて他の成分と組合わせて混合してもよいことは理解できよう。通常、そのような混合工程の特定の順序は、重要でない。さらに、そのような成分は希釈剤に混ぜて別の溶液としてもよい。しかし、種々の実施形態によれば、混合操作の簡易化、混合ミスの可能性を減らしたり、濃厚物全体の混和性や溶解性の利点から、濃厚物で混合するのがよい。
【0039】
本発明による燃料組成物を配合するのに使用されるベース燃料として、加鉛または無鉛の自動車用または航空機用ガソリン等の火花点火式内燃機関の作動の使用に適した各種ベース燃料;ガソリン留分、灯油留分、軽油留分等の天然ガスから製造される液体燃料(GTL);およびガソリンの沸点領域を有する炭化水素類とアルコール類、エーテル類、およびその他適切な酸素含有有機化合物のような燃料に可溶する酸素添加混合剤とを通常含有するいわゆる改質ガソリンが使用できる。好適な酸素添加剤として、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、t−ブタノール、C−C混合アルコール、メチル−t−ブチルエーテル、t−アミルメチルエーテル、エチル−t−ブチルエーテル、および混合エーテルが挙げられる。酸素添加剤を使用する場合、酸素添加剤はベース燃料中に通常約25vol.%未満、例えば燃料全体として、約0.5〜5vol.%の範囲で酸素が含有されるように使用される。
【0040】
種々の実施形態によれば、変速機用流体組成物は、トルク変換装置等の車両の変速機に使用できる。
【0041】
さらに、本発明の少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されたカルボン酸は、潤滑剤組成物中に使用できる。潤滑剤組成物は、車両エンジンの変速機のブッシュ1個以上や車
両の各種ギヤ等の鉛部品を有する各種機械部品といった、各種機械部品を潤滑にするのに使用できる。
【0042】
種々の実施形態によれば、(a)多量の燃料と、(b)少量の少なくとも1個がヒドロキシル基で置換されたカルボン酸を含有する燃料組成物が提供される。ここで、「多量」とは、50%以上を意味し、「少量」とは50%未満を意味する。
【実施例】
【0043】
実施例1 − 潤滑剤の腐食試験
試験する成分の重量をミリグラム単位まで測定し、25x150mm試験用チューブにいれた。通常、部品は最終潤滑剤中の濃度が0.05〜0.2wt.%となるようにして試験した。20.0gの典型的な自動変速機油を試験チューブに充填した。厚さ0.81cm、2.5cm平方の鉛クーポンを半円状に折り曲げ、チューブに挿入した。チューブを150℃の油槽に14〜42時間入れた。試験終了後、鉛クーポンを流体から取出し、ヘプタンで洗浄後空気乾燥した。クーポンの外観および試験終了時の流体の状態を記録した。クーポンをTHFで洗浄しきれいにふき取った。洗浄後のクーポンの重量を記録した。試験終了時の流体を誘導結合プラズマ原子発光分光分析法(ICP−Inductively Coupled Plasma Atomic Emission Spectroscopy)により鉛の存在を分析した。
【0044】
試験する成分を充填する代わりに、該成分を添加剤濃厚物を介して完成品の油に加えてもよい。この場合、20.0gの完成品の流体を使用した。
【0045】
表1および2に示すような結果を得た。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
2−ヒドロキシケイヒ酸等の少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されたカルボン酸を含有する組成物においては、流体は透明で沈殿物が全くあるいはほとんどなく、腐食試験終了時の鉛クーポンの重量減少が許容範囲内であった。
【0049】
実施例2 − MERCONアルミニウムビーカー酸化試験(ABOT)、FMC BJ 10−4、2003年度改定第1版
300時間ABOT試験を各種のカルボン酸を含有する完成品の自動変速機用流体について150oCで所定の手順に従って行った。100時間後鉛クーポンを取り出した。結果を以下の表にまとめる。
【0050】
流体 1
100時間後の重量減少 300時間後の全酸価変化
なし 0.17% 0.98
カプリル酸 6.95% −0.11
ヒドロキシフェニル− 0.18% 0.58
プロピオン酸
ヒドロキシステアリン酸 4.95% 0.49

流体 2
100時間後の重量減少
なし 2.4%
0.19% ケイヒ酸 4.2%
0.1% ヒドロキシケイヒ酸 0.2%
0.19% ヒドロキシケイヒ酸 0.9%

ヒドロキシフェニルプロピオン酸等の少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されたカルボン酸からなる組成物において、全酸価変化(ΔTAN)は許容範囲内であり、鉛クーポンの重量減少も許容範囲内であった。
【0051】
本発明のその他の実施形態は、明細書を考察し本願明細書に開示されている発明を実施すれば当業者に自明であろう。明細書および実施例は、本願明細書に付随する請求項に示される発明の真の範囲および精神と共に、例示を目的としたものである。
【0052】
本発明の特徴及び態様を挙げれば以下のとおりである。
1.少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されたカルボン酸を含有する変速機用流体組成物。
2.該少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されたカルボン酸は、ヒドロキシケイヒ酸、3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、6−ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシケイヒ酸、および3−(2−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸からなる群より選ばれることを特徴とする、上記1記載の変速機用流体組成物。
3.前出の少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されたカルボン酸は、1個以上のヒドロキシル官能基を有することを特徴とする、上記1記載の変速機用流体組成物。
4.前出の少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されたカルボン酸は、1個以上のカルボン酸官能基を有することを特徴とする、上記1記載の変速機用流体組成物。
5.前出の少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されたカルボン酸は、直鎖又は分岐状、飽和又は不飽和、環状又は非環式のうちの少なくとも1つである炭素主鎖からなることを特徴とする、上記1記載の変速機用流体組成物。
6.該流体組成物は自動変速機、連続無段変速機油、手動変速機油、およびデュアルクラッチ変速機に使用される流体からなる群より選ばれる流体を含有することを特徴とする、上記1記載の変速機用流体組成物。
7.前出の少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されたカルボン酸は、該組成物中に錆を防止するのに効果的な量含有されていることを特徴とする、上記1記載の変速機用流体組成物。
8.前出の少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されたカルボン酸は、該組成物中に腐食を防止するのに効果的な量含有されていることを特徴とする、上記1記載の変速機用流体組成物。
9.前出の少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されたカルボン酸は、該組成物中に鉛適合性を改良するのに効果的な量含有されていることを特徴とする、上記1記載の変速機用流体組成物。
10.前出の少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されたカルボン酸は、該組成物中に、該組成物の全重量に対して約0.05〜約0.2wt.%の範囲で含有されていること
を特徴とする、上記1記載の変速機用流体組成物。
11.前出の少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されたカルボン酸は、該組成物中に、該組成物の全重量に対して約0.01〜約0.5wt.%の範囲で含有されていることを特徴とする、上記10記載の変速機用流体組成物。
12.分散剤、清浄剤、抗酸化剤、キャリヤ流体、金属不活性化剤、染料、マーカー、腐食防止剤、殺生物剤、帯電防止添加剤、抵抗低減剤、乳化破壊剤、ヘーズ防止剤(dehazer)、着氷防止添加剤、ノッキング防止添加剤、バルブシートリセッション防止添加剤、潤滑添加剤、燃焼向上剤、低温流動性向上剤、摩擦調整剤、耐摩耗剤、消泡剤、粘度指数向上剤、防錆添加剤、シール膨潤剤、金属不活性化剤、および空気除去添加剤(air expulsion additives)からなる群より選ばれる添加剤1種以上をさらに含有する、上記1記載の変速機用流体組成物。
13.上記1記載の変速機用流体組成物を含むことを特徴とする変速機を有する車両。
14.少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されたカルボン酸を含有する潤滑剤組成物。
15.少なくとも1個の鉛部品と上記14記載の潤滑剤組成物を有する車両。
16.上記14記載の潤滑剤組成物で潤滑されたギヤを1個以上有する車両。
17.(A)多量の燃料;および(B)少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されたカルボン酸を含有する流体組成物を少量含有する燃料組成物。
18.前出の少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されたカルボン酸を該組成物中に潤滑性を改良するのに効果的な量を含有することを特徴とする、上記17記載の燃料組成物。
19.分散剤、清浄剤、抗酸化剤、キャリヤ流体、金属不活性化剤、染料、マーカー、腐食防止剤、殺生物剤、帯電防止添加剤、抵抗低減剤、乳化破壊剤、ヘーズ防止剤(dehazer)、着氷防止添加剤、ノッキング防止添加剤、バルブシートリセッション防止添加剤、潤滑添加剤、燃焼向上剤、低温流動性向上剤、摩擦調整剤、耐摩耗剤、消泡剤、粘度指数向上剤、防錆添加剤、シール膨潤剤、金属不活性化剤、および空気除去添加剤(air expulsion additives)からなる群より選ばれる添加剤1種以上をさらに含有する、上記17記載の燃料組成物。
20.該燃料組成物は自動車両の燃料とする、上記17記載の燃料組成物。
21.該燃料組成物は航空機燃料とする、上記17記載の燃料組成物。
22.少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されたカルボン酸からなる流体組成物を機械部品に使用することを特徴とする、機械部品の腐食を防止する方法。
23.該流体組成物をエンジンに使用することを特徴とする、上記22記載の方法。
24.該流体組成物を変速機に使用することを特徴とする、上記22記載の方法。
25.少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されたカルボン酸を含有する流体組成物を機械部品に使用することを特徴とする、機械部品の錆を防止する方法。
26.該流体組成物をエンジンに使用することを特徴とする、上記25記載の方法。
27.該流体組成物を変速機に使用することを特徴とする、上記25記載の方法。
28.多量の油と少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されたカルボン酸を含有する組成物少量とを含有する潤滑油組成物。
29.少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されたカルボン酸を含有する防錆性組成物。
30.少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されたカルボン酸を含有する防腐食性組成物。
31.少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されたカルボン酸を含有する添加剤濃厚物組成物。
32.分散剤、清浄剤、抗酸化剤、キャリヤ流体、金属不活性化剤、染料、マーカー、腐食防止剤、殺生物剤、帯電防止添加剤、抵抗低減剤、乳化破壊剤、ヘーズ防止剤(dehazer)、着氷防止添加剤、ノッキング防止添加剤、バルブシートリセッション防止添加剤、潤滑添加剤、燃焼向上剤、低温流動性向上剤、摩擦調整剤、耐摩耗剤、消泡剤、粘
度指数向上剤、防錆添加剤、シール膨潤剤、金属不活性化剤、および空気除去添加剤(air expulsion additives)からなる群より選ばれる添加剤1種以上をさらに含有する、上記31記載の添加剤濃厚物組成物。
33.全酸価の変化を測定する酸化試験の基準を満たす、少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されたカルボン酸を含有する組成物。
34.全酸価の変化が5以下であることを特徴とする、上記33記載の組成物。
35.全酸価の変化が3.25未満であることを特徴とする、上記33記載の組成物。
36.全酸価の変化が2.0未満であることを特徴とする、上記33記載の組成物。
37.上記33記載の組成物を有する車両。
38.上記33記載の組成物を有する自動変速機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されたカルボン酸を含有する変速機用流体組成物。
【請求項2】
該少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されたカルボン酸は、ヒドロキシケイヒ酸、3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、6−ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシケイヒ酸、および3−(2−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸からなる群より選ばれることを特徴とする、請求項1記載の変速機用流体組成物。
【請求項3】
前出の少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されたカルボン酸は、該組成物中に、該組成物の全重量に対して約0.05〜約0.2wt.%の範囲で含有されていることを特徴とする、請求項1記載の変速機用流体組成物。
【請求項4】
前出の少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されたカルボン酸は、該組成物中に、該組成物の全重量に対して約0.01〜約0.5wt.%の範囲で含有されていることを特徴とする、請求項3記載の変速機用流体組成物。
【請求項5】
(A)多量の燃料;および(B)少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されたカルボン酸を含有する流体組成物を少量含有する燃料組成物。

【公開番号】特開2006−104449(P2006−104449A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−237357(P2005−237357)
【出願日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(391007091)アフトン・ケミカル・コーポレーション (123)
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation
【Fターム(参考)】