説明

少なくとも3個の支持部材を有するインプラントシステム

この発明はインプラントシステムに関するものであり、凹面球台状のソケット部分(2)と、これに対応する凸面球台状の継手部分(1)を具えている。本発明によれば、継手部分(1)がソケット部分(2)に載っており、継手部分(1)の表面又はソケット部分(2)の表面には、少なくとも3つの支持部材(3)が配置されており、球面三角形もしくは球面多角形を規定している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載の特徴の組み合わせによる、凹面球台状ソケット部分と、これに対応する凸面球台状接合部分を具えるインプラントシステムであって、接合部分がソケット部分に載っているシステムに関する。
【0002】
人工器官の分野では、多くの材料の組み合わせが公知である。インプラント技術の原点は、今日もまだ用いられている材料であるインプラントグレードのスチールの適用に見ることができる。しかし最近では、例えば金属(例えばインプラントグレードのスチール又はチタン)とセラミクスの組み合わせでなるインプラントを作ることも試みられている。
【背景技術】
【0003】
例えば、ここでDE20320454U1の実用新案公報を参照すると、この公報では人工器官、とりわけ頸椎用の椎間板人工器官の構成部品の構成が開示されている。この構成は、滑り面を有する2つの基本構成部品を具える。基本構成部品はポリエーテル・エーテルケトンからできていることが好ましく、滑り面は例えばコバルト・クロム合金でできている。ポリエーテル・エーテルケトンは皮質骨と同じ弾性率のモジュールを有しているので、この材料は、弾性特性が優れているという点で、インプラントされた人工器官とむき出しになった骨との接合面用に特に適している。しかしながら、PEEK材料上に骨を融合できるようにするためには、この材料に特殊な処理を施す必要がある。滑り特性が優れていると同時に材料の摩耗が少ないため、滑り面に用いられるコバルト・クロム合金が用いられていた。
【0004】
DE60107818T2は、別の材料の組み合わせを用いている。頸椎用の椎間板人工器官は、主に、第1及び第2のプレートで構成されていて、これらのプレートは隣接する頚椎に固定されるように設計されている。更に、球面継手が設けられており、これは重ねて固定された二枚のプレート間に配置されている。この球面継手は、球形カップに協働する球形キャップからなる。プレートはチタン製であることが望ましく、椎骨の椎骨プレートとの接触面を例えばヒドロキシアパタイト又はチタンを用いて界面活性で被覆して、人工器官とこれに隣接する骨との間の係止を改善するようにしている。この球面継手は、別の材料の組み合わせであってもよい。球形カップは例えば酸化ジルコニウムで作ることができ、これに対応する球形キャップは酸化アルミニウムで作ることができる。
【0005】
人工器官では、材料の組み合わせを用いて、個々の構成部品の目的に応じて、最適な材料を適用できるようにしている。しかし、このことは、製作コストが高くなり、製作時間が長くなる。
【0006】
コストと時間を節約するために、更に、上述のタイプの人工器官を、例えばセラミクスなどの、一の材料のみで作ることが試みられている。この材料は、特に、組織への適応性と、例えば金属インプラント(CoCrなど)の場合のような、周囲に物質を放出する特性がないため、特に優れている。この特性は、敏感な人間では、不快な反応が引き起こされることもある。従って、セラミクスのインプラントは、金属に対して敏感であり、金属に反応する人にも使用できるという利点がある。
【0007】
しかしながら、セラミクスには重大な欠点もある。例えば、球面継手として設計されているか、あるいは球面継手を有する人工器官は、球形カップと球形キャップが遊びが無い状態でその全面に相互に重なるように、経済的に製造することができない(これは金属インプラントでも達成できていない)。結局は、この遊びが原因で、どの球面継手も点状ベアリング又は環状ベアリングを持つことになる。しかしながら、セラミック材料の場合は、この種の点状ベアリングが、引張力によって人工器官の摩耗が早まり、人工器官が壊れたり位置がずれたりすることがある。
【0008】
この種の人工器官は、手術によって取り外して、新たなインプラントシステムに交換しなければならず、この手術によって、患者が更なる痛みと不自由を伴うことになる。
【0009】
以上のことから本発明の目的は、インプラントシステム中の力の分布が理想的であり、寿命を改善したインプラントシステムを提供することである。
【0010】
この課題は、請求項1の特徴点の組み合わせによるとともに、従属請求項が少なくとも実施例とその発展型を記載している、凹面球台状ソケット部分と、これに対応する凸面球台状の継手部分を具えるインプラントシステムであって、継手部分がソケット部分に載っているインプラントシステムによって達成される。
【0011】
本発明によれば、継手部分の表面又はソケット部分の表面に、球面三角形もしくは球面多角形を描いた少なくとも3つの支持部材が配置されている。
【0012】
上述した球台状のソケット部分と継手部分は、一方で、腰関節、肘関節、肘関節あるいは手首関節の構成部品であってもよい。他方では、この球台状部材は頸椎の椎間板用インプラントシステムの一部であってもよい。
【0013】
ソケット部分又は継手部分の表面への支持部材の利点の一つは、インプラントシステムに作用する荷重全体が、通常は1点に掛かってしまう代わりに、少なくとも3点に分散されるようになることにある。一方で、ソケット部分内に少なくとも3つの支持部材が存在する場合、継手部分は製造工程で通常発生する遊びの中での動きが無くなる。
【0014】
この3つの支持部材は、関節部分又はソケット部分の表面上の、球面三角形(支持部材が3つの場合)又は球面多角形(支持部材が3つ以上の場合)を規定するように、凹状又は凸状の曲面に配置されている。このことは、全ての支持部材が常に円のアーチ上にあることを意味している。
【0015】
特に好ましい実施例においては、支持部材が球台状の継手部分又はソケット部分の中心の周りに球面上に120度で配置されている。少なくとも3つの支持部材は、常に、ソケット部分又は継手部分の表面上に載っているので、この角度表示には許容差がない(この角度表示は技術的な理由により、適合しなくともよい)。
【0016】
3つ以上の支持部材が配置されている場合は、個々の部材が継手部分又はソケット部分の中心の周りに球面上を等角度になるように配置することが有利である。
【0017】
支持部材は、本発明に従って、球台状の継手部分又は球台状のソケット部分の表面の点状の高位部分として設計されている。例えば継手部分又はソケット部分の曲面に個々の部材がこのように配置されており、これらの部材が支持部材の点状の高位部分を形成している。例えば、これらの部材は例えばキャップ状又はピラミッド状であっても良い。なぜなら、継手部分又はソケット部分の表面にこれらの部材が載っており(どの部分に支持部材が装着されているかに応じて)、支持部材を点状の高位部分の形で表わすためである。
【0018】
なお、実施例で説明されている継手部分とソケット部分の曲面は、インプラントシステムの個別部分の形状を一例を表わしているに過ぎない。したがって、例えば、これらの表面は平坦であってもよく、傾斜があってもよい。
【0019】
別の実施例では、この支持部材は、球台状の継手部分又はソケット部分の表面に対して、平坦な高位部分として設計されている。この実施例では、継手部分又はソケット部分の表面に、小さなプリズム又はシリンダーの形で支持部材が装着されている。これらは、継手部分又はソケット部分の表面に載っているため、平坦な高位部分の形の支持部材を形成する。
【0020】
また、支持部材は均一な曲面状ソケット部分又は継手部分の上に形成されているだけではなく、支持部材のその領域におけるソケット部分又は継手部分のそれぞれの表面が、平面又は溝を形成していたり、あるいは、継手部分又はソケット部分の表面全体に対して、曲率半径をより小さくしてもよい。
【0021】
このような構成によって、引張力がかからないインプラントシステムの構成が得られるようになる。
【0022】
ここに記載されているインプラントシステム全体がセラミクス材料でできていることが望ましい。しかし、ここに記載されている支持部材を、金属製又は合成樹脂製のインプラントに形成することも考えられる。金属材料の一例としてチタンを、合成樹脂材料の一例としてPEEKを挙げることができる。更に、例えば継手部分をチタン製とし、継手部分をとりわけPEEK製とした、材料の組み合わせも考えられる。
【0023】
同様に、支持部材は、セラミクスでできていることが望ましい。一実施例では、このようなセラミクス製支持部材を、継手部分又はソケット部分のチタンプレート又はPEEKプレートに圧入している。
【0024】
支持部材がインプラントシステムの各構成部分表面の残りの部分より平滑になるように、支持部材がソケット部分又は継手部分表面の残りの部分より粗度が小さいことが都合がよい。
【0025】
このような平滑面を達成するために、支持部材には表面処理が施されている。支持部材を研磨することが好ましい。なぜなら、研磨は比較的簡単作業工程であるためである。これは、支持部材を配置する部分を全部を研磨する必要はなく、対応するインプラントシステム部分と接触する支持部材のみを加工すればよいという点で利点がある。
【0026】
また、支持部材を別の材料でコーティングしてもよく、このコーティングによって、例えば、より平滑なあるいはより耐性のある表面を提供することができる。
【0027】
更に、インプラントシステムの骨に対向する表面をコーティングすることも考えられる。このように、例えば、チタンまたは特殊セラミクスによるコーティングは、一つにはインプラントシステムの機械的な特性を変えるためのものであり、一方で、インプラントシステム上の骨の融合を改善するためのものである。
【0028】
本発明による支持部材を有するここに記載されているインプラントシステムは、頸椎エリアの人工器官に関連させて適用することができる。そこで、椎間板人工器官としての使用も考えられる。
【0029】
しかしながら、ここに記載した構成を腰部インプラントの製作に適用することも可能である。この場合、ここに記載したソケット部分は臼蓋窩に、継手部分は、大腿骨側骨の関節部分に相当する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
いくつかの実施例に基づいて図面を参照に、本発明をより詳細に説明する。
【図1】図1は、点状の高位部分としての支持部材を有する本発明によるインプラントシステムを示す図である。
【図2】図2は、ソケット部分に載った支持部材を示す図である。
【図3】図3は、継手部分に形成された溝と、平坦な高位部分の形の支持部材を有する、本発明によるインプラントシステムを示す図である。
【図4】図4は、継手部分に形成された溝と、平坦な高位部分の形の支持部材を有する、本発明によるインプラントシステムを示すもう一つの図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1に示すように、本発明によるインプラントシステムは継手部分1とソケット部分2を具える。ここでは、継手部分2は凸面球台状部材の形をしており、ソケット部分2はこれに対応する凹面球台状部材の形をしている。
【0032】
図1の実施例によれば、継手部分1の上に3つの支持部材3があり、これらは曲面継手部分の中心点の周りに、球面上に互いに120度の角度で配置されている。更に、支持部材3は球面三角形を規定していることが明らかである。仮想連結線では、支持部材3が球面三角形を囲っている。しかしながら3点以上の支持点が用いられている場合は、球面多角形を囲うことになる。3つの支持部材を有するインプラントシステムを構築することの利点は、支持部材が、支持部材の相互の距離や、維持するべき許容差に関係なく、常に球台面に載っていることである。
【0033】
支持部材3と、これに接触しているソケット部分2の相互作用を図2に示す。この詳細は、継手部分1に配置され、ソケット部分2の凹面に接触している、支持部材3を示している。支持部材3が球台として設計されているため、点接触となっている。
【0034】
図3は、本発明によるインプラントシステムの別の実施例を示す。この場合も、3つの支持部材3が継手部分1の表面に配置されているが、均質な凸面に直接ではなく、溝4の上にある。この溝4は凹状の湾曲部を具えており、その中央に支持部材3がそれぞれ取り付けられている。
【0035】
凹状の湾曲部は、引張力の無い構造を実現し、このことはセラミクス製インプラントシステムの製作に特に重要である。
【0036】
更に、図3及び4に記載の実施例では、支持部材3が平坦な高位部分の形をとっていることに注意すべきである。すなわち、支持部材3が円錐台形の基本形状を有しており、これは周知のとおりその上底側が平坦である。組み立てたインプラントシステムでは、この平坦化部分が、ソケット部分2の表面に完全に接触する。
【符号の説明】
【0037】
1 継手部分
2 ソケット部分
3 支持部材
4 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹面球台状のソケット部分(2)と、対応する凸面球台状の継手部分(1)を具えるインプラントシステムにおいて、
前記継手部分(1)が前記ソケット部分(2)に載っており、前記継手部分(1)の表面又は前記ソケット部分(2)の表面に、球面三角形もしくは球面多角形を規定する少なくとも3つの支持部材(3)が配置されていることを特徴とするインプラントシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のインプラントシステムにおいて、
前記支持部材(3)が、前記球台状の継手部分(1)又はソケット部分(2)の中心点の周りに球面上を120度の角度で配置されていることを特徴とするインプラントシステム 。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のインプラントシステムにおいて、
前記支持部材(3)が、前記球台状の継手部分(1)又はソケット部分(2)の表面に点状高位部分として形成されていることを特徴とするインプラントシステム。
【請求項4】
請求項の1乃至3のいずれか1項に記載のインプラントシステムにおいて、
前記支持部材(3)が、前記球台状の継手部分(1)又はソケット部分(2)の表面の平坦高位部分として形成されていることを特徴とするインプラントシステム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインプラントシステムにおいて、
前記支持部材(3)が、前記継手部分又はソケット部分の表面に対して曲率半径がより小さい、前記球台状の継手部分表面又は前記ソケット部分表面の、個々の平面部分、溝部分(4)あるいは表面部分に配置されていることを特徴とするインプラントシステム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインプラントシステムにおいて、
前記インプラントシステムがセラミクスでできていることを特徴とするインプラントシステム。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のインプラントシステムにおいて、
前記インプラントシステムがPEEKでできていることを特徴とするインプラントシステム。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載のインプラントシステムにおいて、
前記インプラントシステムがチタンでできていることを特徴とするインプラントシステム。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載のインプラントシステムにおいて、
前記支持部材がセラミクスでできていることを特徴とするインプラントシステム。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載のインプラントシステムにおいて、
前記支持部材(3)が、前記ソケット部分(2)又は前記継手部分(1)の表面より粗度が小さいことを特徴とするインプラントシステム。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載のインプラントシステムにおいて、
前記支持部材(3)に表面処理が施されていることを特徴とするインプラントシステム。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載のインプラントシステムにおいて、
前記支持部材(3)が研磨されていることを特徴とするインプラントシステム。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載のインプラントシステムにおいて、
前記支持部材(3)が、別の材料でコーティングされていることを特徴とするインプラントシステム。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか1項に記載のインプラントシステムにおいて、
前記インプラントシステムの骨に対向する側がコーティングされていることを特徴とするインプラントシステム。
【請求項15】
請求項14に記載のインプラントシステムにおいて、
前記コーティングは、チタン又は特殊セラミクスによるものであることを特徴とするインプラントシステム。
【請求項16】
請求項1乃至15のいずれか1項に記載のインプラントシステムの使用において、
頸椎の人工器官との関連で用いられることを特徴とするインプラントシステムの使用。
【請求項17】
請求項1乃至16のいずれか1項に記載のインプラントシステムの使用において、
腰関節との関連で用いられることを特徴とするインプラントシステムの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−519507(P2012−519507A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552447(P2011−552447)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際出願番号】PCT/EP2010/052750
【国際公開番号】WO2010/100222
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(511208807)アドバンスド メディカル テクノロジーズ アーゲー (1)
【氏名又は名称原語表記】ADVANCED MEDICAL TECHNOLOGIES AG
【Fターム(参考)】