説明

尿中有形成分分類装置

【課題】被検液中、特に尿中の有形成分に焦点を自動に合わせる機能を有することにより、精密性、正確性の高い尿中有形成分分類装置を提供する。
【解決手段】透光板上もしくはフローセル中の被検液を撮像する手段を有し、かつ前記手段において被検液中の有形成分に焦点を自動に合わせる自動合焦機能が装備されることを特徴とする尿中有形成分分類装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータによる画像処理、認識技術を応用した尿中の有形成分を分類するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、尿中の有形成分の分析、例えば尿沈渣成分の分析は、(1)尿サンプルを遠心分離する、(2)アスピレーター又はピペットを用いて、あるいはデカンテーションによって上澄み液を除去する、(3)残った残渣成分のうち一定量をスライドガラスに塗布し、カバーガラスを載せ標本とする、(4)顕微鏡にセットし、有形成分(赤血球、白血球、上皮細胞、円柱、微生物、結晶塩など)を分類分析することにより行われている。通常、これらの工程は全て人手によって行われているため検査技師の大きな負担になっている。また検査結果のバラツキが大きく、判断には当然個人差があり、正確性に問題がある(特開平4−337460号公報、特開平5−296915号公報、特開平5−322885号公報)。
【特許文献1】特開平4−337460号
【特許文献2】特開平5−296915号
【特許文献3】特開平5−322885号
【0003】
これらの問題点を解決するため、近年、フローサイトメーターを用いて検体の塗布標本を作製せず被検液に染色液を混和した後、懸濁させたままフローセルに流し、物理統計的な方法や光学的ななどによって自動分析する方法がある。しかしながら、上記のフローサイトメーター法により自動分析する方法では、有形成分は常に流れているためそれぞれ焦点を合わせることは極めて困難であり、焦点は一定の位置に固定されている。また、フローセルはある程度厚みがある。これらのことより、上記のフローサイトメーター法では焦点が合わされた位置に流れてきた有形成分しか正確に測定できず、更には該位置から少し離れたところに有形成分が位置した場合は焦点がずれた分だけぼやけてしまい、合焦時とは異なった画像計測結果が得られ、誤った判断結果が得られることがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、被検液中、特に尿中の有形成分に焦点を自動に合わせる機能を有することにより、精密性、正確性の高い尿中有形成分分類装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記事情に鑑み、鋭意検討を重ねた結果、被検液を撮像する工程を有し、被検液中の有形成分を撮像する際、焦点を自動で合わせる機能を装備することで焦点の合った鮮明な画像が得られ、高精度で詳細な分類が可能となり、従来の有形成分分析装置のもつ欠点を解消できることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は以下のような構成からなる。
(1)透光板上もしくはフローセル中の被検液を撮像する手段を有し、かつ前記手段において被検液中の有形成分に焦点を自動的に合わせる自動合焦機能が装備されることを特徴とする尿中有形成分分類装置。
(2)透光板上もしくはフローセル中の尿中有形成分に対して有形成分の光強度を電気信号に変換し、該電気信号の変化を利用して焦点を自動調整することが可能な自動合焦機能を有する(1)の尿中有形成分分類装置。
(3)透光板上もしくはフローセル中の尿中有形成分に対する焦点状態を検出するために位相差検出を行い、該位相差解析を利用して焦点を自動調整することが可能な自動合焦機能を有する(1)の尿中有形成分分類装置。
(4)焦点状態の検出を補助するための補助光を発する補助発光装置を内蔵し、透光板上もしくはフローセル中の尿中有形成分から反射された補助光より距離を換算して算出された距離に基づいて焦点を自動調整することが可能な自動合焦機能を有する(1)の尿中有形成分分類装置。
【発明の効果】
【0006】
以下に述べるように、本発明の尿中有形成分分類装置を用いることにより、被検液中の有形成分分類にかかわる作業が簡素化され、検査技師の負担を低減させるとともに、より精密性、正確性の高い分析結果を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明において、上記有形成分分類装置の焦点を自動的に合わせる手段は、被検液中の有形成分の焦点状態を検出する手段とレンズもしくはカメラを合焦位置まで駆動する手段とを有していることが好ましい。
【0008】
焦点状態を検出する具体的な方法としては、被写体の光強度を電気信号に変換して、電気信号の変化を利用して焦点を検出する方法、位相差検出を行い位相差解析を利用して焦点状態を検出する方法、また、被写体の焦点状態の検出を補助するために、補助発光装置を内蔵して被写体からの反射光を測定することで、距離を換算し、算出された距離に基づいて焦点を検出する方法がある。上記方法のうち、被写体の光強度を電気信号に変換する方法としては、被写体となる画像撮影用の撮像素子の光強度をコントラストとしてとらえ、コントラストの高周波成分の検出で行う、いわゆるコントラスト方式が挙げられる。
【0009】
また、位相差解析を利用する方法としては、銀塩フィルム、光電変換素子等の撮像素子を配置する撮像面と等価な面の近傍に、ラインセンサー等の像検出用のセンサーを一対または複数対配設して撮影レンズを透過した光のうち異なる部位の光束を異なるセンサーに導き、対を成すセンサー上の被写体像の位置のずれから撮影レンズの焦点を検出する位相差検出方式が挙げられる。さらに、被写体からの反射光よりカメラから被写体との距離を換算し、算出された距離に基づいて焦点を検出する方法としては、赤外線等の補助光を発する発光装置を内蔵して、被写体から反射された赤外線の入射角度を距離に換算する三角測量に基づいて被写体との絶対的な距離を算出する赤外線方式が挙げられる。焦点を調整するに際しては、レンズもしくはカメラの駆動方法には連続的な移動方法と段階的な移動方法がある。連続的な移動は、レンズもしくはカメラを所定周期ごとに極めて微少な距離ずつ移動させる。それぞれの周期で焦点状態を評価し、最も良好な焦点状態を示す移動位置を合焦状態と設定する。段階的な移動は、予め定めた複数の焦点位置から複数の画像が得られるようにレンズもしくはカメラを移動させる。得られた画像から最良の焦点状態を示す移動位置を合焦状態と設定する。
【0010】
本発明の尿中有形成分分類装置は、体液、例えば、尿、血液、血清、血漿、髄液、精液、前立腺液、関節液、胸水、腹水、分泌液等の分析や水質検査などに適用することができる。特に尿、例えば、原尿、濃縮尿、遠心分離後の沈渣等の分析に際して有効に用いられる。
【0011】
本発明において分析の対象となる有形成分は、被検液中に分散ないし懸濁しているものであれば特に限定されるものではない。例えば被検液が尿の場合では、赤血球(変形赤血球、各種由来赤血球)、白血球(濃染細胞、淡染細胞、輝細胞)、上皮細胞類(扁平上皮細胞、移行上皮細胞、尿細管上皮細胞、円形上皮細胞、尿道円柱上皮細胞、前立腺上皮細胞、精嚢腺上皮細胞、子宮内膜上皮細胞、卵円形脂肪体、細胞質内封入体細胞、多辺形細胞など)、円柱類(硝子円柱、上皮円柱、顆粒円柱、蝋様円柱、脂肪円柱、赤血球円柱、白血球円柱、細胞円柱、硝子白血球円柱、ヘモグロビン円柱、ヘモジリデン円柱、ミオグロビン円柱、アミロイド円柱、蛋白円柱、空胞変形円柱、血小板円柱、細菌円柱、ビリルビン円柱、塩類円柱など)、微生物類(真菌、細菌、原虫、精子など)、結晶・塩類(尿酸塩、リン酸塩、シュウ酸カルシウム、ビリルビン、シスチン、コレステロール、2,8−ジヒドロキシアデニン結晶など)、その他(核内封入体細胞、脂肪顆粒細胞、大食細胞、異型細胞)などが分析の対象となる有形成分として挙げられる。
【0012】
本発明は、透光板上もしくはフローセル中の被検液に含まれる有形成分の静止画像など有形成分の標本画像を解析して、被検液中の複数種類の分類や計数を行う工程を有しており、前記標本画像を撮像する際に、被検液中の有形成分に焦点を自動で合わせる機能(オートフォーカス機能)を備えていることを特徴とする。前記標本画像を撮像するための撮像領域は特に限定されないが、撮像位置を変更できるように移動可能なものであるのが好ましい。移動は手動で行ってもよいが、例えばサーボモータ、ステッピングモータやリニアモータ等を使用して機械的に行うのが好ましい。
【0013】
撮像手段としては、デジタルカメラ、CCDカラービデオカメラ等が挙げられる。拡大手段は、撮像前の静止画像や標本画像を光学的に拡大するものであっても良いし、撮像された画像をデジタル処理等をして拡大するものであっても良い。具体的には、前記カメラに取り付けられるズームレンズや対物レンズ等が挙げられる。
【0014】
デジタルカメラやCCDカラービデオカメラなどの電子カメラの焦点調整は、画像撮影用の撮像素子の光強度をコントラストとしてとらえ、コントラストの高周波成分の検出で行ういわゆるコントラスト方式が好ましい。このコントラスト方式は、被写体までの距離を測定してその距離によって撮影レンズ系内のフォーカスレンズを移動させる方法に比べて、撮影光学系とは別個の距離測定用光学系が不要なので、光学系の構造を簡素化することができる等の点で優れている。
【0015】
被検液中の有形成分としては、血球類や細菌などの数μmの大きさのものから、円柱などの数百μmの大きさのものまでがある。従って、拡大手段の有する拡大倍率は、一種類のみとするよりも二種類以上とするのが好ましい。この場合、小型の有形成分から大型の有形成分までをより精度良く解析することができる。また、拡大倍率は連続的に変化するものであっても良い。拡大倍率は有形成分に合わせて適宜決定すれば良い。
【0016】
識別手段は、撮像された画像中の有形成分をその形態などに基づいて分類し、識別するものである。識別手段には、分析結果を算出する機能と、分析結果を出力器から出力する機能とを付加するのが好ましい。また、識別手段には撮像された画像をいったん記憶しておくためのメモリ等を備えておくのが好ましい。識別手段としては、例えば、上記の識別を行うようにプログラミングされたコンピュータ、理論回路で構成された識別装置などが挙げられる。このうち、識別手段としてコンピュータを用いれば、各工程の動作、画像処理、記憶、計算、出力等すべての制御がソフト上で行えるようになり好ましい。
【0017】
識別手段は学習認識機能を有しているのが好ましい。学習認識機能を有することによって、正確性、精密性の高い測定結果が提供される。識別手段は、(1)赤、緑、青を明度と色度に分離する色抽出、(2)穴埋め、線分の書き込み、画像の切り離しからなる2値画像処理、(3)画像の特徴量(面積、円形度係数、円相当径、周囲長、絶対最大長、フェレ径X/Y比、最大弦長X/Y比、短軸長さ/長軸長さ比など)の範囲指定を学習し、識別を行うことができる。
【0018】
また、本発明の装置には、撮像された画像を処理して各種成分に識別した結果を記憶しておく手段(画像記憶装置)が備えられているのが好ましい。記憶しておく手段としては、記憶容量の大きい光磁気ディスク、固定ディスク、デジタルビデオディスク、CD−ROM等の補助記憶装置が挙げられる。なお、出力装置としてディスプレイを用いる場合には、メニュー選択によって、測定結果や画像データの他、時刻、現在の装置の状況(各検体の測定状況、各検体又は選択した検体の測定終了予定時刻又は必要残時間、廃液タンクの廃液量、純水タンクの残量、各試薬の残量、洗剤の残量)等を表示する機能や、選択指定した情報のみを離れた場所から読み取れるように拡大表示する機能を付加しても良い。
【実施例】
【0019】
以下、本発明の装置の実施例を図に基づいてより具体的に説明する。なお、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0020】
実施例1
図1は、本発明の尿中有形成分分析装置の一例を示す図であり、尿中有形成分の分析装置を示す。図1では、被検液をフローセル1に流し、有形成分の検出を行う。フローセル1の撮像領域は壁面が透光板で形成されており、CCDカメラ5の前面に配置されている。
【0021】
撮像手段としてのCCDカメラ5に拡大手段として、対物レンズ4が取り付けられている。対物レンズ4は光源光軸方向に可動であり、その移動は演算回路6の判断によって駆動制御回路7で調節される。識別手段は、画像処理・記憶回路8、制御計算回路9で構成されている。出力装置10は各種に識別した結果を示すディスプレイおよびプリンタである。次に、本発明の装置で行われる処理を時系列に説明する。
【0022】
最初に、被検液となる尿検体をサンプル容器からプローブによって、反応容器に必要量分注する。なお、より均一に分注するため、尿検体は分注前に撹拌している。サンプルとして予めバーコードが貼り付けられた容器を用いるのであれば、バーコード読み取り装置にて、予めバーコードを読み取る。バーコードを使用することによってサンプルの有無、種類、検体番号を読み取れば、以後の処理データおよびサンプルの識別を容易に行える。次に染色液を反応容器に必要量注入し、反応容器から被検液と染色液との反応液を分取しフローセル1に注入する。なお、染色反応時間や反応温度は任意に設定している。
【0023】
次に、被検液はフローセル中を連続的に流れ、フローセル中の撮像領域に達する。被検液を撮像するため、光源2から照射された光は光軸上を進み、コンデンサレンズ3を通ってフローセル1中の被検液上に集光される。被検液中の有形成分の標本像は対物レンズ4により結像位置に形成され、この結像位置の標本像は、CCDカメラ5の撮像面上に画像として投影され、光電変換される。駆動制御回路7は、演算回路6によって合焦状態が検出されるまで、所定周期毎に極めて微小な距離ずつ対物レンズ4を左右に移動させるように駆動部に対して指令する。そして、演算回路6がそれぞれの周期で求まる輝度レベルの分散値を評価値として決め、この評価値が最小値となるときを検出し、その最小値となったときの対物レンズ4の移動位置が合焦状態であると判断して、対物レンズ4を合焦状態の位置に設定するように駆動制御回路7に指令することで自動合焦調整を完了する。CCDカメラ5で得られた画像は、画像処理・記憶回路8内のA/D変換機によりデジタル化される。画像処理・記憶回路8は、このデジタル化された画像データを格納する。
【0024】
次に、画像処理・記憶回路8は、格納された画像データを制御計算回路9へ入力する。制御計算回路9は、画像の特徴量(例えば面積、円形度係数、円相当径、周囲長、絶対最大長、フェレX/Y比、最大弦長X/Y比、短軸長さ/長軸長さ比など)を一次パラメーターとして抽出する。画像処理・記憶回路8は、これら一次パラメーター及びこれらの組み合わせ演算で生じる二次パラメーターを制御計算回路9に入力する。
【0025】
制御計算回路9は、ニューラルネットワークを用いて有形成分の分類を行う。ニューラルネットワークは、予め専門家の判断に基づいて大量のデータを用いて学習を実行し、各ニューロン間の結合係数を最適化するものである。従って、制御計算回路9は、入力された一次および二次パラメーターを用いてニューラルネットワーク演算の代わりに、制御計算回路9には統計的学習認識方法を用いた有形成分の自動分類を行わせても良い。
【0026】
さらに、制御計算回路9は分類結果及び画像データを出力装置10に記憶させる。本実施例では、出力装置として、記憶容量が大きい光磁気ディスクが用いられている。
【0027】
実施例2
[尿検体採取工程]尿原液200検体を遠心分離せずに攪拌後、各0.75mlをそれぞれ所定の反応管に分注する。
[染色工程]尿検体を分注した反応管に、S(Sternheimer)染色液0.25ml添加し攪拌する。
[撮像工程]染色液と混合した尿検体はフローセル中を流れ、撮像領域に到達する。撮像領域の前面にセットされたCCDカメラによって、10倍率内物レンズと40倍率対物レンズに相当する拡大画像を100視野(強拡大視野:HPF)撮像する。
[画像処理・記憶工程]撮像した画像を光磁気ディスクまたは固定ディスクに記憶する。撮像した画像を、学習認識機能を用い尿中有形成分を各種成分に分類、計数し、結果を制御計算工程へ伝達する。また、画像を記憶後、被検液が移動し、再び焦点工程、撮像工程、記憶工程へと進み、この繰り返しを100視野になるまで実施する。
[制御計算工程・出力工程]画像処理・記憶工程から得られた結果をディスプレイやプリンタにアウトプットする。表1に、その出力(印字)例を示し、強拡大視野(HPF)における結果が記号で示されている。
【0028】
【表1】

【0029】
この実施例における画像処理による検査結果の一致率を表2にまとめた。即ち、撮像された各画像を目視して、画像処理により分類分析された成分(赤血球、白血球など)と一致しているか否かを判断した。また、対照比較として焦点の調節機能のない一点焦点装置を用いて同様な測定を行った。その結果を表2にまとめた。
【0030】
【表2】

【0031】
実施例3
図2は、本発明の尿中有形成分分析装置の別な一例を示す図である。尿検体の入ったサンプル容器からプローブによって反応管11に必要量分注する。この時、より均一にサンプル分取するため、攪拌動作後サンプリングしても良い。また、予めバーコードが貼りつけてあるサンプル容器を用いる場合はバーコード読みとり装置にて予めバーコードを読み取る。バーコードを使用することによってサンプルの有無、種類、検体番号を読み取れ、以後の処理データおよびサンプルの識別として用いることができる。次に染色液を必要量反応管11に分注し、尿中有形成分の染色を実施する。約2分後反応管11から必要量を分取し、スライドガラス12に分注する。尚、染色反応時間や反応温度は任意に設定して構わない。
【0032】
図2において、スライドガラス12は撮像ステージであるXYテーブル13上に載置され、スライドガラス12がX座標軸方向及びY座標方向に自在に移動、停止するようにXYテーブル13を駆動させることができる。光源であるランプ14から照射された光は光軸上を進み、コンデンサレンズ15を通ってスライドガラス12上の被検液上に集光される。被検液中の有形成分の像は対物レンズ16により拡大され自動焦点機構によって結像位置に合わされる。この結像位置の像はCCDカメラ17の撮像面上に画像として投影され、光電変換される。レンズ駆動回路19は、焦点演算回路18によって合焦状態が検出されるまで、所定周期毎に極めて微小な距離ずつ対物レンズ16を上下に移動させるようにレンズ駆動部に対して指令する。そして、焦点演算回路18がそれぞれの周期で求まる輝度レベルの分散値を評価値として決め、この評価値が最小値となるときを検出し、その最小値となったときの対物レンズ16の移動位置が合焦状態であると判断して、対物レンズ16を合焦状態の位置に設定するようにレンズ駆動回路19に指令することで自動合焦調整を完了する。XYテーブル13を駆動させるためのテーブル駆動回路21は、画像処理制御回路20により制御され、画像処理制御回路20は、XYテーブル13の移動、停止を制御するとともに、XYテーブル13が停止した際に、CCDカメラ17の撮像を行うよう制御する。CCDカメラ17で得られる画像は、画像記憶回路22内のA/D変換器によりデジタル化され、画像記憶回路22に格納される。画像記憶回路22への格納が終了後、視野を変更するためXYテーブル13を移動させ同様の工程で画像を撮像、A/D変換、画像の格納を行い、予め設定された視野数になるまでこの動作を繰り返す。尚、視野を変更するためのXYテーブル13の移動は、一視野分の画像解析が終了してから実施するよう制御しても良い。画像記憶回路22への書き込みやそれ以降の画像処理の制御については、画像処理制御回路20がこれを行い、画像記憶回路22に格納された画像データの識別演算回路23への入力を制御する。識別演算回路23は、画像の特徴量(有形成分の面積、円形度係数、円相当径、周囲長、絶対最大長、フェレ径X/Y比、最大弦長X/Y比、短軸長さ/長軸長さ比など)を一次パラメーターとして抽出する。画像処理制御回路20は、これら一次パラメーター及びこれらの組合せ演算で生じる二次パラメーターを識別演算回路23に入力する。識別演算回路23は、ニューラルネットワークを用いて有形成分の分類を行うが、ニューラルネットワークは予め専門家の判断に基づいて大量のデータを用いて学習を実行し、各ニューロン間の結合係数は最適化されているので、入力された特徴パラメーターを用いてニューラルネットワーク演算を行い、対象となる有形成分の自動分類を実施することができる。また、ニューラルネットワークを用いず、統計的学習認識方法を用いて有形成分の自動分類を行っても良い。さらに、識別演算回路23は分類結果及び画像データを出力装置24に記憶させる。本実施例では、出力装置として、記憶容量が大きい光磁気ディスクが用いられている。
【0033】
実施例4
[尿検体採取工程]尿原液200検体を遠心分離をせずに攪拌後、各0.75mlをそれぞれ所定の反応管に分注する。
[染色工程]尿検体を分注した反応管に、S(Sternheimer)染色液0.25ml添加し攪拌する。
[標本作製工程]染色液を添加した液から0.015mlを分取し、スライドガラスの間隔部分に分注し標本を作製する。
[標本移動工程]作製した標本をXYステージへセットする。標本はXYステージによって撮像位置まで移動する。
[撮像工程]撮像ステージにセットされたCCDカメラによって、10倍率内物レンズと400倍率対物レンズに相当する拡大画像を100視野(強拡大視野:HPF)撮像する。
[画像処理・記憶工程]撮像した画像を光磁気ディスクに記憶する。撮像した画像を、学習認識機能を用い尿中有形成分を各種成分に分類、計数し、結果を制御計算工程へ伝達する。また画像を記憶後、次視野へXYステージが移動し、再び焦点工程、撮像工程、記憶工程へと進み、この繰り返しを100視野になるまで実施する。
[制御計算工程・出力工程]画像処理・記憶工程から得られた結果と微生物量分析工程から得られた結果を統合し、ディスプレイやプリンタにアウトプットする。本実施例における画像処理による検査結果の一致率を表2にまとめた。即ち、撮像された各画像を目視して、画像処理により分類分析された白血球細分類と一致しているか否かを判断した。また、対象比較として焦点の調節機能のない一点焦点装置を用いて同様な測定を行った。その結果を表3にまとめた。
【0034】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、コンピュータによる画像処理、認識技術を応用した尿中の有形成分を分類するための装置に関し、臨床検査分野に適用される。
上述したように、本発明の尿中有形成分分類装置を用いることにより、被検液中の有形成分分類にかかわる作業が簡素化され、検査技師の負担を低減させるとともに、より精密性、正確性の高い分析結果を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の尿中有形成分分析装置の一例を示す図である。
【図2】本発明の尿中有形成分分析装置の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
1 フローセル
2 光源
3 コンデンサレンズ
4 対物レンズ
5 CCDカメラ
6 演算回路
7 駆動制御回路
8 画像処理・記憶回路
9 制御計算回路
10 出力装置
11 反応管
12 スライドガラス
13 XYテーブル
14 光源
15 コンデンサレンズ
16 対物レンズ
17 CCDカメラ
18 焦点演算回路
19 レンズ駆動回路
20 画像処理制御回路
21 テーブル駆動回路
22 画図記憶回路
23 識別演算回路
24 出力装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光板上の被検液を撮像する手段を有し、かつ前記手段において被検液中の有形成分に焦点を自動的に合わせる自動合焦機能が装備されることを特徴とする尿中有形成分分類装置であって、
透光板上の尿中有形成分に対して有形成分の光強度を電気信号に変換し、該電気信号の変化を利用して焦点を自動調整することが可能な自動合焦機能を有する尿中有形成分分類装置において、
焦点状態の検出を補助するための補助光を発する補助発光装置を内蔵し、透光板上の尿中有形成分から反射された補助光より距離を換算して算出された距離に基づいて焦点を自動調整することが可能な自動合焦機能を有する、
尿中有形成分分類装置。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−65342(P2008−65342A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−258336(P2007−258336)
【出願日】平成19年10月2日(2007.10.2)
【分割の表示】特願2000−62381(P2000−62381)の分割
【原出願日】平成12年3月7日(2000.3.7)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】