説明

尿素水センサ

【課題】 尿素水タンク内に誤って軽油などの尿素水溶液よりも比重の小さい液体燃料が収容され、尿素水溶液の液面が尿素水センサより下方にまで低下している場合に、適正な尿素水溶液が尿素水タンク内に収容されていると誤検知する不具合を防止できる尿素水センサを提供する。
【解決手段】 本発明の尿素水センサ1は、発熱抵抗体を有する検知部(昇温検知部510)と、その検知部の周囲を包囲する包囲部材58とを備えている。包囲部材58の貫通孔の少なくともいずれかは、直径3.5mm以上(好ましくは5.0mm以上)の仮想円板(第1仮想円板)Kを内側に配置することが可能な形態であり、尿素水センサ1を尿素水タンク10に取り付けた姿勢にしたとき、仮想円板Kの少なくとも一部が検知部(昇温検知部510) よりも鉛直方向下方Y1に位置する配置とされた下方貫通孔58H6である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿素水センサに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ディーゼル自動車から排出される窒素酸化物(NOx)を還元する排ガス浄化装置において、NOx選択還元(SCR)触媒を用いることがあるが、その還元剤として尿素水溶液が用いられている。この還元反応を効率良く行うためには、尿素濃度が32.5wt%の尿素水溶液を用いると良いことが知られている。しかしながら、ディーゼル自動車に搭載される尿素水タンクに収容される尿素水溶液では、経時変化などにより、その尿素濃度が変化してしまうことがある。また、尿素水タンク内に、誤って異種溶液(軽油など)や水などを混入してしまう虞もある。このような現状に鑑み、尿素水タンク内の尿素水溶液の尿素濃度を管理するべく、尿素水センサ(尿素濃度識別装置)が提案されている(例えば、特許文献1 参照)。
【特許文献1】特開2005−84026号公報
【0003】
特許文献1の尿素濃度識別装置では、自動車の走行中にも、尿素溶液の尿素濃度を正確にしかも迅速に識別することの可能な尿素溶液の識別装置を提供するとしている。すなわち、濃度識別センサー部に、金属フインを備えた傍熱型濃度検知部及び液温検知部(検知部)を有している。さらに、この濃度識別センサー部(液体濃度検知素子)には、金属フインを囲むように尿素溶液導入路を形成するカバー部材、及び、上下端面板に流通孔を形成した包囲体が付設されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように構成するのは、一般に、濃度検知素子(濃度識別センサー部)の検知部(傍熱型濃度検知部及び液温検知部)の周囲には、タンク内などに貯留された尿素溶液全体の濃度、温度などの状態を適切に反映した尿素溶液が位置している必要があるため、この検知部の周囲では、尿素溶液が適切に尿素水センサ(尿素濃度識別装置)の外部の尿素溶液と液交換できるように、液の流通がなされている必要があり、一方、検知部の周囲の尿素溶液が、激しく移動する場合には、この影響で、濃度、温度など尿素溶液の状態を適切に検知することが困難となり、濃度の測定値の誤差が大きくなる虞があるからである。
【0005】
ところで、給油所で運転者や作業者が、尿素水タンクを軽油タンクと勘違いして、尿素水タンク内に誤って軽油を注入してしまう虞がある。なお、軽油は尿素水溶液に比べて比重が小さいので、尿素水タンク内に軽油が混入した場合、尿素水溶液が鉛直方向下側、軽油が鉛直方向上側に位置することになる。この場合において、尿素水溶液が使用により減少し、その液面が尿素水センサより下方にまで低下した状態で、振動などの影響で尿素水タンク内の液体(尿素水溶液及び軽油)が激しく動くと、尿素水溶液の液滴が包囲部材(包囲体)内に進入してしまうことがあった。
【0006】
しかるに、本発明者が検討したところ、包囲部材の下部に、液流通のための貫通孔を設けていても、包囲部材内に進入した尿素水溶液を適切に包囲部材の外部に排出することができず、包囲部材の外部(周囲)には軽油が位置しているのに、包囲部材の内部にのみ尿素水溶液が溜まり、検知部が尿素水溶液で囲まれた状態となることがあった。すると、尿素水溶液の液面が検知部より下方にまで低下し、尿素水タンク内に誤って注入した軽油が触媒に供給されかねない異常事態にも拘わらず、尿素水センサが、尿素水タンク内には適正な尿素水溶液が収容されていると誤検知する虞があった。また、ガソリンなどの尿素水溶液よりも比重の小さい液体燃料を、誤って尿素水タンク内に注入してしまった場合も、上述のように軽油を注入した場合と同様の問題が生じる虞があった。
【0007】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、尿素水タンク内に誤って軽油などの尿素水溶液よりも比重の小さい液体燃料が収容され、尿素水溶液の液面が尿素水センサより下方にまで低下している場合に、適正な尿素水溶液が尿素水タンク内に収容されていると誤検知する不具合を防止できる尿素水センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
その解決手段は、尿素水タンク内に収容された尿素水溶液に浸漬されて、上記尿素水タンク内に収容された液体が上記尿素水溶液であるか、これと熱伝導率の異なる異種液体であるかを検知する検知部と、上記検知部の周囲を取り囲む包囲部材であって、自身を貫通する1 または複数の貫通孔を有する包囲部材と、を備える尿素水センサであって、上記包囲部材の上記貫通孔の少なくともいずれかは、直径3.5mm以上の第1仮想円板を内側に配置することが可能な形態であり、上記尿素水センサを上記尿素水タンクに取り付けた姿勢にしたとき、上記第1仮想円板の少なくとも一部が上記検知部よりも鉛直方向下方側に位置する配置とされた下方貫通孔である尿素水センサである。
【0009】
本発明の尿素水センサでは、包囲部材の貫通孔の少なくともいずれかを、直径3.5mm以上の第1仮想円板が内包される下方貫通孔としている。これにより、前述のように、尿素水タンク内に誤って軽油などの尿素水溶液よりも比重の小さい液体燃料(異種液体)が収容された状態で、尿素水溶液の液滴が包囲部材内に進入しても、下方貫通孔を通じて尿素水溶液を包囲部材の外部に排出でき、包囲部材の外部(周囲)と同様に、検知部の周囲に軽油などの尿素水溶液よりも比重の小さい液体燃料を位置させることができる。
【0010】
従って、本発明の尿素水センサでは、尿素水タンク内に誤って軽油などの尿素水溶液よりも比重の小さい液体燃料が収容され、尿素水溶液の液面が検知部より下方にまで低下した場合に、適正な尿素水溶液が尿素水タンク内に収容されていると誤検知する不具合を防止できる。すなわち、尿素水タンク内に誤って軽油などの尿素水溶液よりも比重の小さい液体燃料(尿素水溶液と熱伝導率が異なる異種液体にも該当する)が収容されている場合に、尿素水溶液と熱伝導率の異なる異種液体が収容されていることを、適切に検知することができる。
【0011】
なお、本発明の尿素水センサは、ディーゼル自動車に搭載される尿素水タンクに装着して用いることが多いため、尿素水タンクを軽油タンクと間違えて、特に、軽油が、尿素水タンク内に誤って注入される危険陸が高い。これに対し、本発明の尿素水センサでは、上述のように、尿素水タンク内に誤って異種液体(軽油)が収容されていることを、適切に検知することができるので、例えば、尿素水タンク内に誤って注入した軽油が触媒に供給されてしまう不具合を防止することができる。
【0012】
また、下方貫通孔の形態としては、例えば、直径3.5mm以上の円形の貫通孔や、短径が3.5mm以上の長円形の貫通孔や、幅3.5mm以上の複数のスリットが互いに交差してなる貫通孔や、直径3.5mm以上の円形の貫通孔とこの貫通孔から放射状に延びるスリットとからなる貫通孔などが挙げられる。なお、下方貫通孔としては、直径3.5mm以上の第1仮想円板を内側に配置する形態であれば良いが、尿素水タンクが静止状態(換言すれば、尿素水センサが静止状態)であるときに、尿素水タンク内に誤って軽油などの尿素水溶液よりも比重の小さい液体燃料が収容された状態で、尿素水溶液の液滴が包囲部材内に進入したとしても、下方貫通孔を通じて尿素水溶液を排出できることが好ましい。その観点から、第1仮想円板としては、直径が5.0mm以上であることが好ましい。
【0013】
また、他の解決手段は、尿素水タンク内に収容された尿素水溶液に浸漬されて、上記尿素水タンク内に収容された液体が上記尿素水溶液であるか、これと熱伝導率の異なる異種液体であるかを検知する検知部と、上記検知部の周囲を取り囲む包囲部材であって、自身を貫通する複数の貫通孔を有する包囲部材と、を備える尿素水センサであって、上記包囲部材の上記複数の貫通孔は、上記尿素水センサを取り付けた姿勢にしたとき、上記検知部よりも鉛直方向下方側に位置する下方側貫通孔と、検知部の下端よりも鉛直方向上方側に位置する上方側貫通孔とを含んでおり、上記下方側貫通孔の内側に配置することが可能な第1仮想円板の最大直径は、上記上方側貫通孔の内側に配置することが可能な第2仮想円板の最大直径よりも大きい尿素水センサである。
【0014】
本発明の尿素水センサでは、包囲部材に設けられる複数の貫通孔として、検知部よりも鉛直方向下方側に位置する下方側貫通孔と、検知部の下端よりも鉛直方向下端より上方側に位置する上方側貫通孔とを設け、下方側貫通孔を上方側貫通孔に対して特定関係を満たす大きさに設定している。具体的には、下方側貫通孔の内側に配置することが可能な第1仮想円板の最大直径が、上記上方側貫通孔の内側に配置することが可能な第2仮想円板の最大直径よりも大きい関係を満たすように、互いの貫通孔が設定されている。
【0015】
尿素水センサを取り付けた姿勢にしたとき、上方側貫通孔はその位置関係から尿素水溶液の液滴を導入するように主に機能するが、この上方側貫通孔に対し下方側貫通孔を、上記特定関係を満たす大きさに設定することで、尿素水タンク内に誤って軽油などの尿素水溶液よりも比重の小さい液体燃料が収容された状態で尿素水溶液の液滴が包囲部材内に進入しても、下方貫通孔を通じて尿素水溶液を包囲部材の外部に排出できる。
従って、本発明の尿素水センサでは、尿素水タンク内に誤って軽油などの尿素水溶液よりも比重の小さい液体燃料が収容され、尿素水溶液の液面が検知部より下方にまで低下した場合に、適正な尿素水溶液が尿素水タンク内に収容されていると誤検知する不具合を防止できる。
【0016】
なお、前記第1仮想円板の最大直径は、前記第2仮想円板の最大直径の2倍以下であると良い。第1仮想円板の最大直径の大きさを、第2仮想円板の最大直径に対して過度に大きくすると、尿素水タンクに収容される尿素水溶液に、振動(例えば、ディーゼル自動車の運転中に生じる振動)がかかって鉛直方向下方側から上方に向かう液流が生じた場合に、下方貫通孔を通じて液流の影響が検出部に及び、検出部の検知精度が低下する虞があるがある。そこで、尿素水溶液の液滴を導入するように主に機能する上方側貫通孔に内包される第2仮想円板の最大直径を基準にして、下方側貫通孔に内包される第1仮想円板の最大直径を2倍以下にすることで、液流の影響が検出部に及び難くすることが可能となる。
【0017】
また、上記の尿素水センサであって、前記第1仮想円板の最大直径は、3.5mm以上である尿素水センサとすると良い。
第1仮想円板の最大直径を3.5mm以上に設定することで、尿素水タンク内に誤って軽油などの尿素水溶液よりも比重の小さい液体燃料が収容された状態で、尿素水溶液の液滴が包囲部材内に進入しても、下方貫通孔を通じて尿素水溶液を包囲部材の外部に良好に排出することができる。
【0018】
なお、下方貫通孔としては、最大直径3.5mm以上の第1仮想円板を内側に配置する形態であれば良いが、尿素水タンクが静止状態(換言すれば、尿素水センサが静止状態)であるときに、尿素水タンク内に誤って軽油などの尿素水溶液よりも比重の小さい液体燃料が収容された状態で、尿素水溶液の液滴が包囲部材内に進入したとしても、下方貫通孔を通じて尿素水溶液を排出できることが好ましい。その観点から、第1仮想円板としては、最大直径が5.0mm以上であることが好ましい。
【0019】
さらに、上記の尿素水センサであって、前記包囲部材の前記下方貫通孔は、上記尿素水センサを前記姿勢にしたとき、前記第1仮想円板が鉛直方向下方を向く形態とされてなる尿素水センサとすると良い。
【0020】
本発明の尿素水センサでは、包囲部材の下方貫通孔が、尿素水センサを尿素水タンクに取り付けた姿勢において、第1仮想円板が鉛直方向下方を向く形態とされている。これにより、前述のように包囲部材内に進入した尿素水溶液を、包囲部材の外部に排出し易くなるので好ましい。
【0021】
さらに、上記の尿素水センサであって、前記包囲部材は、上記尿素水センサを前記姿勢にしたとき、鉛直方向下方を向く底部を有する有底筒状をなしており、前記下方貫通孔は、前記底部に配置されてなる尿素水センサとすると良い。
【0022】
本発明の尿素水センサでは、包囲部材が鉛直方向下方を向く底部を有しており、その底部に下方貫通孔が配置されている。これにより、尿素水タンクに収容される尿素水溶液に、振動(例えば、ディーゼル自動車の運転中に生じる振動)がかかって鉛直方向下方側から上方に向かう液流が生じた場合にも、包囲部材の底部にてその液流が検出部に及ぶのを軽減しながら、下方流通孔を通じて尿素水溶液を外部に排出することができる。
【0023】
さらに、上記の尿素水センサであって、上記尿素水センサを前記姿勢にしたとき、前記下方貫通孔の前記第1仮想円板の鉛直方向下方に、上記第1仮想円板に対向する整流対向面を有する整流部材であって、上記整流対向面は、これを鉛直方向上方の上記第1仮想円板に向けて投影したとき、上記第1仮想円板の全体を上記整流対向面の投影領域内に含む形態とされ、上記整流対向面と上記第1仮想円板との距離を3.0mm以上としてなる整流部材を備える尿素水センサとすると良い。
【0024】
尿素水タンク内に収容されている尿素水溶液は、振動(例えば、ディーゼル自動車の運転中に生じる振動)の影響により、鉛直方向下方側から上方に向かう液流が生じることがある。一方、前述のように、第1仮想円板が鉛直方向下方を向く下方貫通孔を包囲部材に設けた場合には、このような液流がその勢いを弱められることなく、下方貫通孔を通じて包囲部材内に進入する。この影響で、検知部の周囲の尿素水溶液が激しく動くことがあり、これによって、検知部において、尿素水タンク内に収容された液体が尿素水溶液であるか、これと熱伝導率の異なる異種液体であるかの検知を、適切に行うことができなくなる虞がある。
【0025】
これに対し、本発明の尿素水センサでは、尿素水センサを尿素水タンクに取り付けた姿勢にしたとき、下方貫通孔の第1仮想円板の鉛直方向下方に、第1仮想円板に対向する整流対向面を有する整流部材を設けている。この整流部材の整流対向面は、これを鉛直方向上方の第1仮想円板に向けて投影したとき、第1仮想円板の全体を整流対向面の投影領域内に含む形態とされている。つまり、本発明の尿素水センサを尿素水タンクに取り付けた姿勢とし、尿素水センサの鉛直方向下方側から鉛直方向上方を見たとき、下方貫通孔に内包される第1仮想円板が、整流部材のうち整流対向面をなす部位に遮られて見えない状態としている。
【0026】
従って、尿素水タンク内において、尿素水センサの鉛直方向下方側から鉛直方向上方に向かう液流が生じた場合でも、整流部材のうち整流対向面をなす部位の存在により、この液流が直接、下方貫通孔を通じて包囲部材内に進入することを防止することができる。これにより、このような液流が、検知部における、尿素水タンク内に収容された液体が尿素水溶液であるか、これと熱伝導率の異なる異種液体であるかの検知に及ぼす影響を、適切に抑制することができる。
【0027】
しかも、本発明の尿素水センサでは、整流対向面と第1仮想円板との距離を3.0mm以上空けている。このようにすることで、前述のように包囲部材内に進入した尿素水溶液の液滴が、下方貫通孔を通じて包囲部材の外部に排出されるのを、整流部材(整流対向面)により妨げることがない。すなわち、前述のように包囲部材内に進入した尿素水溶液の液滴を、下方貫通孔を通じて、包囲部材の外部に適切に排出することもできる。
【0028】
さらに、上記いずれかの尿素水センサであって、前記検知部は、自身の温度に応じて抵抗値が変化する発熱抵抗体が、セラミック絶縁基体内に液密に封止されてなる昇温部を有する尿素水センサとすると良い。
【0029】
尿素水タンク内に誤って、尿素水溶液と熱伝導率の異なる異種液体が収容されている場合、この異種溶液を発熱抵抗体により加熱すると、熱伝導率の違いに起因して、尿素水溶液が収容されているときとは温度上昇率が異なることとなる。例えば、軽油など尿素水溶液よりも熱伝導率の小さい異種液体は、尿素水溶液に比べて、温度上昇率が小さくなる。
【0030】
本発明の尿素水センサは、発熱抵抗体がセラミック絶縁基体内に液密に封止されてなる昇温部を有している。このため、発熱抵抗体を有する昇温部を、尿素水タンク内に収容されている液体に浸漬して発熱抵抗体に通電すると、当該液体の温度上昇率(すなわち、液種など)が発熱抵抗体の温度上昇に影響を与えることとなる。この発熱抵抗体は、自身の温度に応じた抵抗値を有するため、尿素水タンク内に収容されている液体の熱伝導率の違い(液種などの違い)により、所定の通電時間後の発熱抵抗体の抵抗値に違いが生じることとなる。従って、発熱抵抗体の抵抗値に対応して出力される出力値に基づいて、適切に、尿素水タンク内に収容された液体が尿素水溶液であるか、これと熱伝導率の異なる異種液体(軽油など)であるかを検知することができる。
【0031】
ところで、前述の特許文献1(特開2005−84026号公報)の尿素濃度識別装置は、基板と感温体と絶縁層と発熱体と保護層とが、順に積層されてなる素子を有する傍熱型濃度検知部を備えている。この尿素濃度識別装置では、発熱体に所定時間通電を行い、その通電の前後において感温体により測定した発熱体の温度変化に基づいて、尿素濃度を検知する。
これに対し、本発明の尿素水センサは、上述のように、自身の温度に応じた抵抗値を有する発熱抵抗体を検知部に用いているので、発熱抵抗体の抵抗値に対応して出力される出力値に基づいて、尿素水タンク内に収容された液体が尿素水溶液であるか、これと熱伝導率の異なる異種液体であるかを検知することができる。従って、特許文献1の尿素濃度識別装置と異なり、発熱抵抗体の温度を検知する感温体を設ける必要がない。このため、本発明の尿素水センサは、特許文献1の尿素濃度識別装置と比較して、検知部の構成を簡略化し、小型化することができるので好ましい。
【0032】
さらに、上記の尿素水センサであって、前記昇温部は、平板形状をなし、最も発熱面積の大きな昇温部主面と、これの反対側に位置する昇温部裏面と、を有し、上記尿素水センサが前記整流部材を備えているとき、前記包囲部材は、少なくとも、前記下方貫通孔を除く前記貫通孔のいずれもが、上記昇温部主面及び上記昇温部裏面と正対しない位置に配置されてなり、上記尿素水センサが上記整流部材を備えていないとき、前記包囲部材は、前記下方貫通孔を含む前記貫通孔のいずれもが、上記昇温部主面及び上記昇温部裏面と正対しない位置に配置されてなる尿素水センサとすると良い。
【0033】
尿素水タンク内に収容されている尿素水溶液は、振動(例えば、ディーゼル自動車の運転中に生じる振動)の影響により液流が生じることがある。一方、前述のように、検知部の周囲を取り囲む包囲部材には、貫通孔が形成されている。このため、尿素水タンク内で液流が生じた場合、この液流がその勢いを弱められることなく、貫通孔を通じて包囲部材内に進入することがある。このとき、包囲部材の貫通孔が、昇温部主面及び上記昇温部裏面と正対する位置に配置されている場合には、昇温部主面及び上記昇温部裏面に隣接する尿素水溶液が激しく動くことがあり、これによって、検知部において、尿素水タンク内に収容された液体が尿素水溶液であるか、これと熱伝導率の異なる異種液体であるかの検知を、適切に行うことができなくなる虞がある。
【0034】
これに対し、本発明の尿素水センサでは、尿素水センサが整流部材を備えているとき、包囲部材は、少なくとも下方貫通孔を除く貫通孔のいずれもが、昇温部主面及び昇温部裏面と正対しない位置に配置されてなる。または、尿素水センサが整流部材を備えていないとき、包囲部材は、下方貫通孔を含む貫通孔のいずれもが、昇温部主面及び昇温部裏面と正対しない位置に配置されてなる。これにより、液流が貫通孔を通じて包囲部材内に進入しても、この液流が直接、昇温部主面及び昇温部裏面に突き当たることがなく、昇温部主面及び上記昇温部裏面に隣接する尿素水溶液が激しく動くことを防止することができる。従って、本発明の尿素水センサでは、尿素水タンク内で液流が生じた場合でも、検知部において、尿素水タンク内に収容された液体が尿素水溶液であるか、これと熱伝導率の異なる異種液体であるかの検知を、適切に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
(実施形態)
本発明を具体化した尿素水センサの一実施の形態について、以下に説明する。図1に示す本実施形態にかかる尿素水センサ1は、例えば、ディーゼルエンジンなどを搭載した自動車の排気ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)を、尿素水溶液で還元して無害化する排気ガス浄化装置において、尿素水タンク10内に収容された尿素水溶液LQ1の尿素濃度や、尿素水溶液LQ1の液面レベルLQHを検知する装置として用いられる。
【0036】
この尿素水センサ1(以下、単にセンサ1ともいう)は、基部2、及び、この基部2から図1において下方に延びるセンサ部3から構成されている。この尿素水センサ1は、その基部2を、破線で示す尿素水溶液LQ1を収容してなる尿素水タンク10の開口部11周りに取り付け、センサ部3が鉛直方向Y(図1において上下方向)に延びるような姿勢として、センサ部3を尿素水溶液LQ1に浸漬させて用いる。
【0037】
なお、本明細書では、特に断らない限り、センサ1を尿素水タンク10に取り付けた姿勢(図1に示す姿勢)において、このセンサ1及び各部品の説明をするものとする。従って、センサ1を尿素水タンク10に取り付けた姿勢にしたとき、図1に示すように、センサ1の軸線AXに沿う方向(軸線方向)が鉛直方向Y(図1において上下方向)となり、軸線AXに沿う方向のうち、下方が鉛直方向下方Y1、上方が鉛直方向上方Y2となる。
【0038】
尿素水センサ1のうち、基部2は、取付フランジ部21、蓋体25及びこれらに包囲された配線基板22、外部接続ケーブル24、及びこれを保持するブッシュ23などを備える。また、センサ部3は、二重円筒状の液面レベルセンサ部4と、尿素濃度センサ部5とからなる。なお、図1に示すように、尿素水センサ1を尿素水タンク10に取り付けた姿勢において、尿素濃度センサ部5が、液面レベルセンサ部4より鉛直方向下方Y1に位置するように構成されている。
【0039】
まず、基部2について詳細に説明する。取付フランジ21は、金属からなり、尿素水センサ1を尿素水タンク10の開口部11に取付けるための台座として用いる。この取付フランジ21には、図示しないボルト挿通孔が穿孔されており、尿素水センサ1(基部2)を尿素水タンク10にボルトで固定できるように構成されている。
【0040】
一方、図1において破線で示す配線基板22は、この取付フランジ21よりも鉛直方向上方Y2に配置されている。この配線基板22には、CPUや電気回路などを備える制御回路(図示省略)が形成されており、この制御回路は、液面レベルセンサ部4及び尿素濃度センサ部5と電気的に接続されると共に、外部接続ケーブル24を介して外部の電気回路と接続可能となっている。また、この配線基板22は、取付フランジ部21に取付けられた蓋体25によって覆われ、液密に保護されている。
【0041】
この配線基板22に形成された制御回路は、尿素濃度センサ部5のうち、図3に示す濃度センサ素子51への通電により、内部ヒータ配線518の抵抗値に対応した出力信号に基づいて、具体的には、濃度センサ素子51に所定の電流を流すことで内部ヒータ配線518の両端に生じる電位差(電圧値)に基づいて、尿素水溶液LQ1の尿素濃度を検知する。
【0042】
次に、センサ部3について説明する。前述したように、このセンサ部3は、液面レベルセンサ部4と尿素濃度センサ部5とからなる。このうち、まず、液面レベルセンサ部4について説明し、その後、尿素濃度センサ部5について説明する。
液面レベルセンサ部4は、図1に示すように、鉛直方向Y(図1において上下方向)延びる円筒形状の外筒41と、その内部に配置され、この外筒41とは同軸であるが相対的に小径で円筒形状を有する内筒42とを含む。外筒41の内周面と内筒42の外周面とは、所定間隔で離間している。
【0043】
これらのうち、外筒41は、金属からなり、液面レベルLQHを検出するための一方の電極となっている。また、外筒41は、図1に示すように、鉛直方向Y(図1において上下方向)を長手方向とした細幅長円状のスリット415を有しており、内筒42との間に、外部と連通した状態で、破線で示すように尿素水溶液LQ1を収容できるようになっている。また、外筒41のうち、その下方端41Tは開口して下方端開口OPをなす一方、上方端41Bは溶接などにより取付フランジ21に固着されている。
【0044】
なお、本実施形態のセンサ1では、外筒41を取付フランジ21に溶接している。さらに、この取付フランジ21を配線基板22上に形成された制御回路(図示しない)におけるグランド電位に接続している。これによって、外筒41をグランド電位としている。また、図2に拡大して示すように、外筒41のうち下方端41Tより若干上方に位置する保持部412と、内筒42のうち下方側に位置する下端部421との間には、後述するゴムブッシュ56が介在している。外筒41の保持部412には、このゴムブッシュ56の外周に形成した係合突起部562とそれぞれ係合して、このゴムブッシュ56(尿素濃度センサ部5)を保持するための保持孔41Hが、周方向の複数の所定位置(本実施形態では3箇所)に形成されている。さらに、保持孔41Hよりも下方側には、外筒41の内部との間で尿素水溶液LQ1の流通を図るための流通孔41Rが穿孔されている。
【0045】
また、内筒42も、金属からなり、液面レベルLQHを測定するための他方の電極として、外筒41と電気的に絶縁しつつ、この外筒41と対向し、配線基板22上の制御回路と電気的に接続されている。内筒42の外周面42Gは、例えば、PTFE,PFA,ETFEなどのフッ素系樹脂やエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などからなる絶縁性被膜43で被覆されており、内筒42と外筒41との間に尿素水溶液LQ1が介在しても、外筒41とは電気的に絶縁されるようになっている。
【0046】
この液面レベルセンサ部4で、尿素水溶液LQ1の液面レベルLQHを検知するには、図1に示すように、この液面レベルセンサ部4を尿素水溶液LQ1に浸漬して、尿素水溶液LQ1を、スリット415を通じて、外筒41と内筒42(絶縁性被膜43)との間に流入させる。
すると、この液面レベルセンサ部4では、外筒41と内筒42との間において、液面レベルLQHに応じて尿素水溶液LQ1が存在する部分と存在しない部分とができるから、外筒41と内筒42との間に形成されるコンデンサの静電容量が液面レベルLQHに応じて変化する。そこで、外筒41と内筒42との間に交流電圧を印加すると、この静電容量の大きさに応じた電流が流れるので、電流の大きさを知ることで尿素水溶液LQ1の液面レベルLQHを検知することができる。
【0047】
次に、尿素濃度センサ部5について説明する。
尿素濃度センサ部5は、図1に示すように、液面レベルセンサ部4の鉛直方向下方Y1に配置され、濃度センサ素子51、ホルダ部材55、包囲部材58及びゴムブッシュ56などから構成されている。
【0048】
このうち、濃度センサ素子51は、自身の下方端部分が突出する形態で、ホルダ部材55に保持されている。また、この濃度センサ素子51は、これにハンダ付けにより固着された接続端子52及び接続ケーブル53を介して(図2、図3参照)、配線基板22に形成された制御回路と電気的に接続されている。一方、ホルダ部材55は、これを取り囲む外筒41との間に介在するゴムブッシュ56により、外筒41の保持部412に保持されている。さらに、包囲部材58は、濃度センサ素子51のうちホルダ部材55から突出する下端部511を包囲するようにして、ホルダ部材55の下方端部分(径小部553)に係合して保持されている。
【0049】
まず、尿素濃度センサ部5のうち、濃度センサ素子51(図3参照)について説明する。この濃度センサ素子51は、平面視、矩形で平板状をなしており、アルミナセラミックスからなる平板状の2層のセラミック層519(519A,519B)と、これらの間に液密に配置された内部配線516とを備える。この内部配線516は、幅広一対の内部リード配線517と、これらの間に配置され蛇腹状に折り返された内部ヒータ配線518とを含む。
【0050】
また、この濃度センサ素子51は、図2及び図3に示すように、ホルダ部材55から突出される下端部511、この下端部511の鉛直方向上方Y2に隣接してホルダ部材55に挿通する挿通部512、さらに、この挿通部512の鉛直方向上方Y2に位置する樹脂保持部513、及び、一対の接続端子52がそれぞれハンダ付け接続されてなる上端部514に分けられる。
【0051】
図3(a)に示すように、下端部511の内部には、内部ヒータ配線518が配置されている。従って、本実施形態においては、下端部511に、通電により昇温し、尿素水溶液LQ1中の尿素の濃度を検知すると共に、尿素水タンク10内に収容された液体が尿素水溶液LQ1であるか、これと熱伝導率の異なる異種液体であるかを検知する昇温検知部510が含まれる。なお、下端部511は、図3(b)に示すように、前述のセラミック層519Aで構成される主面511A、及び、これと平行で、セラミック層519Bで構成される裏面511Bを有している。さらに、昇温検知部510についてみると、この昇温検知部510は、主面511Aに含まれる昇温部主面511AS、及び、裏面511Bに含まれる昇温部裏面511BSを有している。
【0052】
ところで、前述のセラミック層519のうち、一方のセラミック層519Aは、他のセラミック層519Bよりも薄くされている。このため、通電により、昇温検知部510で、具体的には、内部ヒータ配線518で発生した熱は、セラミック層519Bに比して、相対的にセラミック層519A側に伝えられやすく、外部の温度も、相対的に薄いセラミック層519Aから内部ヒータ配線518に伝えられやすくされている。
【0053】
接続端子52は、所定形状の金属板をコ字状に折り曲げて形成されてなる。この接続端子52のうち、その下端部521は、下方に向けて延びる形状とされており、濃度センサ素子51の上端部514に形成された図示しないパッドにハンダ付けにより接続されて、この濃度センサ素子51に固着されている。これにより、接続端子52(下端部521)は、一方のセラミック層519Aを貫通する図示しないビア導体を介して内部リード配線517に接続している。このため、一対の接続端子52間に電圧を印加すると、内部リード配線517を通じて、主に内部ヒータ配線518が発熱する。この内部ヒータ配線518は、自身の温度に応じて抵抗値が変化する。
【0054】
一方、接続端子52のうち上端部522には、接続ケーブル53のリード線532の芯線533がハンダ付けにより電気的、機械的に接続されている。この接続ケーブル53は、図1に示すように、内筒42内に挿通されて鉛直方向上方Y2に延び、配線基板22(制御回路)に接続されている。
【0055】
また、ホルダ部材55は、全体が絶縁性の樹脂材からなり、図2に示すように、自身を鉛直方向Y(図2において上下方向)に貫通するホルダ貫通孔55Hを有する中空状の部材である。このホルダ貫通孔55Hは、上方から下方に向かう順に徐々に小径となる、内筒保持孔55H1、第2段孔55H2、及び第3段孔55H3の3段円孔状の部分と、最も先端側(図中、下方)に位置する概略角孔状の素子保持孔55H4とからなる。
【0056】
このホルダ部材55は、濃度センサ素子51を保持している。具体的には、このホルダ部材55の素子保持孔55H4に濃度センサ素子51の挿通部512が挿通され、第3段孔55H3内に配置された濃度センサ素子51の樹脂保持部513がこの第3段孔55H3内に充填された封止樹脂59により固定されている。なお、この封止樹脂59により濃度センサ素子51とホルダ部材55との間の間隙が液密に封止されている。これにより、この濃度センサ素子51のうち、内部に内部ヒータ配線518が配置されている下端部511が、ホルダ部材55の素子保持孔55H4から鉛直方向下方Y1に突出した状態に配置される。
【0057】
また、このホルダ部材55は、図2に示すように、そのホルダ貫通孔55Hの内筒保持孔55H1の内側に、内筒42の下端部421を保持しており、この内筒保持孔55H1と第2段孔55H2との間に位置する段状の内筒当接面55Dで、内筒42の下端422と当接して、内筒42とホルダ部材55との軸線方向(鉛直方向Y)の位置決めを行っている。
ホルダ貫通孔55Hの内筒保持孔55H1には、2つのOリング挿入溝55G1,55G2が凹設されており、これらの内部に配置されたOリング571,572により、ホルダ部材55と内筒52(絶縁性被膜43)との間を液密に封止すると共に、内筒42を保持している。
【0058】
また、上述のようにして、濃度センサ素子51を保持しているホルダ部材55 と内筒42とが接続されているので、濃度センサ素子51の上端部514の大部分、及び接続端子52全体が、内筒42内に配置される。この内筒42の下端部421内には、ゴム状弾性を有する絶縁性の樹脂からなり、濃度センサ素子51及び接続端子52と内筒42との間を絶縁しつつ、内筒42内で濃度センサ素子51及び接続端子52を弾性的に保持するセパレータ54が配置されている。
【0059】
次に、尿素濃度センサ部5のうち、包囲部材58について説明する。
包囲部材58は、図2に示すように、有底円筒形状をなし、円筒状の側部581と、この側部581の下端側を閉塞する下端部(底部)582とを有している。このうち、側部581には、この包囲部材58の内外に尿素水溶液LQ1を流通可能とするため、図4〜図7に示すように、3つの円形状の液体流通孔58H1,58H2,58H3、及び、円孔部58H41とこれから先端側に延びた長いスリット部58H42とからなる鍵穴状の液体流通孔58H4が、周方向に均等に配置形成されている。なお、液体流通孔58H1,58H2,58H3、及び、液体流通孔58H4のうちの円孔部58H41は、図2、図4〜図7に示すように、尿素水センサ1を尿素水タンク10に取り付けた姿勢にしたとき、いずれも濃度センサ素子51の昇温検知部510の下端よりも鉛直方向上方側に位置する上方側貫通孔をなしているものである。本実施形態では、この上方側貫通孔である液体流通孔58H1,58H2,58H3、及び、液体流通孔58H4のうちの円孔部58H41の直径を3.0mmとしている。換言すると、これら上方側貫通孔は、直径(最大直径)3.0mmの仮想円板を内側に配置することが可能な形態をなしている。
【0060】
また、下端部(底部)582にも、この包囲部材58の内外に尿素水溶液LQ1を流通可能とするため、その中央に1つ円形の下方貫通孔58H6が形成されている。この下方貫通孔58H6は、図2に示すように、尿素水センサ1を尿素水タンク10に取り付けた姿勢にしたとき、鉛直方向下方を向く形態とされている。
なお、本実施形態では、下方貫通孔58H6の直径を5.0mmとしている。つまり、下方貫通孔58H6は、図8に二点差線のハッチングで示すように、直径(最大直径)3.5mm以上(本実施形態では5.0mm)の仮想円板Kを内側に配置することが可能な形態をなしている。また、これら記載から分かるように、本実施形態では、下方貫通孔58H6に内包される仮想円板Kの直径(最大直径)が、上方側貫通孔である液体流通孔58H1,58H2,58H3、及び、液体流通孔58H4のうちの円孔部58H41のそれぞれに内包される仮想円板の直径(最大直径)よりも大きく設定されていると共に、当該上方側貫通孔に内包される仮想円板の最大直径の2倍以下の大きさに設定されている。
【0061】
ところで、給油所などで、ディーゼル自動車の運転者や作業者が、尿素水タンク10を軽油タンクと勘違いして、図9に示すように、尿素水タンク10内に誤って軽油LQ2(異種液体)を注入してしまう虞がある。なお、軽油LQ2は尿素水溶液LQ1に比べて比重が小さいので、尿素水タンク10内に軽油LQ2が注入された場合、尿素水溶液LQ1が鉛直方向下側、軽油LQ2が鉛直方向上側に位置することになる。この場合において、尿素水溶液LQ1が使用により減少し、その液面レベルLQHが昇温検知部510の下端より下方にまで低下した状態で、振動などの影響で尿素水タンク10内の液体(尿素水溶液LQ1及び軽油LQ2)が激しく動くと、図9に矢印で示すように、液体流通孔58H1〜58H4などを通じて、尿素水溶液LQ1の液滴が包囲部材58内に進入してしまうことがあった。
【0062】
ところが、本発明者が調査したところ、包囲部材の下部に、液流通のための貫通孔を設けていても、包囲部材内に進入した尿素水溶液を適切に包囲部材の外部に排出することができず、包囲部材の外部凋囲)には軽油が位置しているのに、包囲部材の内部にのみ尿素水溶液が溜まり、検知部(昇温検知部)が尿素水溶液で囲まれた状態となることがあった。すると、尿素水溶液の液面レベルが検知部(昇温検知部)より下方にまで低下し、尿素水タンク内に誤って注入した軽油が触媒に供給されかねない異常事態にも拘わらず、尿素水センサが、尿素水タンク内には適正な尿素水溶液が収容されていると誤検知する虞があった。
【0063】
(液抜け試験1)
そこで、包囲部材58の下端部(底部)に設けた下方貫通孔58H6の孔径を異ならせて、上述のようにして包囲部材58内に進入した尿素水溶液LQ1の液滴が、適切に外部に排出されるか否かを調査した。具体的には、下方貫通孔58H6の直径を、3.0mm,3.5mm,4.0mm,5.0mmに異ならせた点のみが異なる3種類の包囲部材に、それぞれ、ホルダ55及び濃度センサ素子51などを装着した、4種類のサンプル(順に、サンプル1,2,3,4とする)を用意した。なお、上方貫通孔である液体流通孔58H1,58H2,58H3、及び、液体流通孔58H4のうちの円孔部58H41の直径は3.0mmとした。
【0064】
次いで、これらのサンプルを、タンク内に収容した軽油であって、静止状態にある軽油中に浸漬し、包囲部材58の液体流通孔58H1〜58H4を通じて、包囲部材58の内部に、ゆっくりと尿素水溶液を注入していった。すると、下方貫通孔58H6の直径を3.0mm,3.5mm,4.0mmとしたサンプル1,2,3では、包囲部材58の内部に尿素水溶液が次第に溜まってゆき、昇温検知部510の周囲にまで尿素水溶液が溜まってしまった。一方、下方貫通孔58H6の直径を5.0mmとしたサンプル4では、下方貫通孔58H6からスムーズに尿素水溶液が抜けてゆき、昇温検知部510の周囲にまで尿素水溶液が溜まることはなかった。
【0065】
(液抜け試験2)
次に、前述の液抜け試験1にて用意した4種類のサンプルを、軽油を収容したタンクに車両のアイドリング時の振動を想定した振動(本試験では、20Hzの振動)を付与した条件下で、タンク内の軽油中に浸漬し、ゆっくりと尿素水溶液を注入していった。すると、下方貫通孔58H6の直径を3.0mmとしたサンプル1では、包囲部材58の内部に尿素水溶液が次第に溜まってゆき、昇温検知部510の周囲にまで尿素水溶液が溜まってしまった。一方、下方貫通孔58H6の直径を3.5mm,4.0mm,5.0mmとしたサンプル2,3,4では、下方貫通孔58H6からスムーズに尿素水溶液が抜けてゆき、昇温検知部510の周囲にまで尿素水溶液が溜まることはなかった。
【0066】
これらの結果より、下方貫通孔の直径を5.0mm以上とすることで、タンクが静止状態にある場合に、前述のように尿素水溶液の液滴が包囲部材内に進入しても、下方貫通孔を通じて包囲部材の外部に排出でき、包囲部材の外部(周囲)と同様に、昇温検知部510の周囲に軽油を位置させることができるといえる。また、下方貫通孔の直径を3.5mm以上とすることで、センサの通常使用時に、尿素水タンクに頻繁にかかるレベルの振動が及べば、尿素水溶液の液滴が包囲部材内に進入しても、下方貫通孔を通じて包囲部材の外部に排出でき、包囲部材の外部(周囲)と同様に、昇温検知部510の周囲に軽油を位置させることができるといえる。
【0067】
本実施形態の尿素水センサ1では、前述のように、直径を5.0mmの下方貫通孔58H6を、包囲部材58に設けている。従って、本実施形態の尿素水センサ1では、尿素水タンク10内に誤って軽油LQ2が収容され、尿素水溶液LQ1の液面レベルLQHが昇温検知部510より下方にまで低下した場合(図9参照)に、適正な尿素水溶液LQ1が尿素水タンク10内に収容されていると誤検知する不具合を防止できる。すなわち、尿素水タンク10内に誤って異種液体(軽油LQ2)が収容されていることを、適切に検知することができる。
【0068】
なお、本液抜け試験では、下方貫通孔の形態を円形としたが、下方貫通孔の形態は円形に限らず、いずれの形態でも良い。従って、本試験の結果より、下方貫通孔を、直径3.5mm以上(好ましくは5.0mm以上)の仮想円板Kを内側に配置することが可能な形態とすれば良いと考えられる。例えば、図12に示す包囲部材158のように、直径3.5mm以上の円形の貫通孔158H61(この内側に仮想円板Kを配置可能)と、この貫通孔158H61から放射状に延びる4つのスリット158H62とからなる下方貫通孔158H6としても良い。また、図14の包囲部材258に示すように、短径(図13において左右方向の寸法)が3.5mm以上の長円形の下方貫通孔258H6としても良い。
【0069】
また、本液抜け試験では、下方貫通孔を包囲部材の下端部(底部)に設けたが、下方貫通孔の位置は、包囲部材の下端部(底部)に限定されない。すなわち、包囲部材の内部に進入した尿素水溶液の液滴が、昇温検知部510の周囲にまで溜まらないように、外部に排出できる位置であれば良い。従って、下方貫通孔は、尿素水センサを尿素水タンク10に取り付けた姿勢にしたとき、仮想円板Kの少なくとも一部が昇温検知部510よりも鉛直方向下方に位置する配置であれば良いと考えられる。
【0070】
そのほか、包囲部材58の側部581のうち、上端付近には、コ字状の切り込みを形成して内側に折り曲げた係止舌部583が4つ、周方向周りに均等に形成されている。このため、図10に示すようにして、ホルダ部材55の径小部553の外周に形成された包囲部材係止凹部55G3に、包囲部材58の係止舌部583を係止させることができる。これにより、この包囲部材58の包囲部580が、濃度センサ素子51の昇温検知部510を包囲するようにして配置される。
【0071】
ところで、図4〜図7に示すように、昇温検知部510の周囲を取り囲む包囲部材58の側部581には、液体流通孔58H1,58H2,58H3,58H4が、周方向に均等に配置形成されている。さらに、図8に示すように、包囲部材58の下端部(底部)582には、下方貫通孔58H6が形成されている。このため、尿素水タンク10内で液流が生じた場合、この液流がその勢いを弱められることなく、液体流通孔58H1〜58H4及び下方貫通孔58H6のいずれかを通じて、包囲部材58内に進入することがある。
【0072】
このとき、液体流通孔58H1〜58H4及び下方貫通孔58H6のいずれかが、濃度センサ素子51の昇温部主面511AS及び昇温部裏面511BSと正対する位置に配置されている場合には、昇温部主面511AS及び昇温部裏面511BSに隣接する液体が激しく動くことがある。これによって、昇温検知部510において、尿素水タンク10内に収容された液体が尿素水溶液LQ1であるか、これと熱伝導率の異なる異種液体(軽油など)であるかの検知、及び、尿素の濃度検知を、適切に行うことができなくなる虞がある。
【0073】
これに対し、本実施形態の尿素水センサ1では、包囲部材58は、図4〜図8に示すように、液体流通孔58H1〜58H4及び下方貫通孔58H6のいずれもが、昇温部主面511AS(図5において破線のハッチングで示す部位)及び昇温部裏面511BS(図7において破線のハッチングで示す部位)と正対しない位置に配置されてなる。これにより、液体流通孔58H1〜58H4及び下方貫通孔58H6を通じて、液流が包囲部材58内に進入したとしても、この液流が直接、昇温部主面511AS及び昇温部裏面511BSに突き当たることがなく、昇温部主面511AS及び昇温部裏面511BSに隣接する液体が激しく動くことを防止することができる。
【0074】
従って、本実施形態の尿素水センサ1では、尿素水タンク10内で液流が生じた場合でも、昇温検知部510において、尿素水タンク10内に収容された液体が尿素水溶液LQ1であるか、これと熱伝導率の異なる異種液体(軽油など)であるかの検知、及び、尿素の濃度検知を、適切に行うことができる。なお、図4〜図8には、包囲部材58を装着した尿素水センサ1において昇温検知部510の位置がわかるように、参考として濃度センサ素子51を破線で示している。
【0075】
さらに、濃度センサ素子51及び包囲部材58を保持したホルダ部材55は、その外周面に適合する形態のホルダ保持孔56Hを備える絶縁陸のゴムブッシュ56に保持されている。このゴムブッシュ56は、図2に示すように、その中央に上述のホルダ保持孔56Hが形成され、外筒41と嵌合可能な外径を有する円筒形状のブッシュ本体部561と、このブッシュ本体部561の外周の3カ所に均等に配置され、ブッシュ本体部561から径方向外側に向けて突出する係止突起部562とを有する。ブッシュ本体部561のホルダ保持孔56Hは、ホルダ部材55及び包囲部材58と密着して、これらを保持可能な形状とされている。
【0076】
このゴムブッシュ56は、外筒41の保持孔41Hに係止突起部562を挿入係止することにより、外筒41に保持されている。かくして、濃度センサ素子51及び包囲部材58を保持したホルダ部材55は、ゴムブッシュ56に保持され、このゴムブッシュ56が外筒51に保持されることにより、尿素濃度センサ部5全体が外筒41の保持部412及び内筒42の下端部421との間に保持される。
【0077】
さらに、このブッシュ本体部561のうち、係止突起部562同士の間の外周面には、鉛直方向Y(図2において上下方向)に延びる外周スリット561Gが多数溝設されている。この外周スリット561Gは、図2に示すように、ゴムブッシュ56を外筒41内に嵌め込むことにより、このブッシュ本体部561と外筒41との間に、鉛直方向Yに尿素水溶液LQ1の流通、及び気抱抜きを可能とする流通路を形成する。
【0078】
さらに、外筒41の先端部411には、整流部材61が嵌め込まれている。この整流部材61は、図2及び図11に示すように、外径が外筒41の内径よりも径小かつ包囲部材58の外径よりも径大の、円板形状の遮蔽部611と、この遮蔽部611の周縁から、図2において斜め上方に延びて、外筒41の先端部411に届く3つのブリッジ部612を有している。このブリッジ部612の先には、それぞれさらに、鉛直方向下方Y1に反転して、外筒41の先端部411の内周面41Nに沿って配置される湾曲した板状の板状部613が設けられている。この板状部613の先端は、外筒41の径方向外側に向けて折り曲げられて、係合爪部614とされている。
【0079】
本実施形態のセンサ1では、図2に示すように、この整流部材61は、板状部613の先端の係合爪部614を外筒41の下方端41Tに係合させた状態とし、板状部613のうちの溶接部613Wで外筒41の先端部411にスポット溶接されている。これにより、整流部材61の遮蔽部611で、外筒41の下方端開口OPのうちの一部(中央部分)を塞ぐ状態となる。
【0080】
この整流部材61の遮蔽部611は、包囲部材58の下端部582に形成された下方貫通孔58H6の鉛直方向下方Y1に、下方貫通孔58H6の仮想円板K
に対向する整流対向面611Bを有している。さらに、図2に示すように、この整流対向面611Bは、これを鉛直方向上方Y2に(下方貫通孔58H6に向けて)投影したとき、下方貫通孔58H6(仮想円板K)の全体を整流対向面611Bの投影領域TR内に含む形態とされている。つまり、尿素水センサ1を尿素水タンク10に取り付けた姿勢とし、尿素水センサ1の鉛直方向下方側(図2において下側)から鉛直方向上方Y2を見たとき、下方貫通孔58H6(仮想円板K)が、整流部材61の遮蔽部611(整流部材61のうち整流対向面611Bをなす部位)に遮られて見えない状態とされている。
【0081】
このようにすることで、尿素水タンク10内において、尿素水センサ1の鉛直方向下方側から鉛直方向上方Y2に向かう液流が生じた場合でも、整流部材61の遮蔽部611(整流部材61のうち整流対向面611Bをなす部位)の存在により、この液流が直接、下方貫通孔58H6を通じて包囲部材58内に進入することを防止することができる。これにより、このような液流が、昇温検知部510における、尿素水タンク10内に収容された液体が尿素水溶液LQ1であるか、これと熱伝導率の異なる異種液体(軽油など)であるかの検知、及び、昇温検知部510での尿素濃度検知に及ぼす影響を、適切に抑制することができる。換言すれば、このような液流の影響で、昇温検知部510の周囲の尿素水溶液が激しく動くことを防止でき、これによって、昇温検知部510において、尿素水タンク10内に収容された液体が尿素水溶液LQ1であるか、これと熱伝導率の異なる異種液体(軽油など)であるかの検知、及び、尿素の濃度検知を、適切に行うことができる。
【0082】
ところで、整流部材61の遮蔽部611(整流対向面611B)と下方貫通孔58H6(仮想円板K)との距離Lを近づけるほど、尿素水センサ1の鉛直方向下方側から鉛直方向上方Y2に向かう液流が、直接、下方貫通孔58H6を通じて包囲部材58内に進入することを防止できるので好ましい。しかしながら、距離Lを近づけすぎると、前述のように、尿素水タンク10内に軽油LQ2が収容された状態で包囲部材58内に尿素水溶液LQ1の液滴が進入したときに、尿素水溶液LQ1の液滴が下方貫通孔58H6を通じて包囲部材58の外部に排出されるのを、遮蔽部611(整流対向面611B)により妨げてしまう虞があった。
【0083】
(液抜け試験3)
そこで、整流部材61の遮蔽部611(整流対向面611B)と下方貫通孔58H6(仮想円板K)との距離Lを異ならせて、先の液抜け試験1と同様に、包囲部材58内に進入した尿素水溶液LQ1の液滴が、適切に外部に排出できるか否かを調査した。具体的には、包囲部材として、下方貫通孔58H6の直径を5.0mmに統一した包囲部材58を用い、距離Lを2.0mm,3.0mm,4.0mmの3種類に異ならせた、3種類の尿素水センサ(順に、サンプル5,6,7とする)を用意した。
【0084】
次いで、これらのサンプルを、静止軽油中に浸漬し、包囲部材58の液体流通孔58H1〜58H4を通じて、包囲部材58の内部に、ゆっくりと尿素水溶液を注入していった。すると、距離Lを2.0mmとしたサンプル5では、包囲部材58の内部に尿素水溶液が次第に溜まってゆき、昇温検知部510の周囲にまで尿素水溶液が溜まってしまった。一方、距離Lを3.0mm,4.0mmとしたサンプル6,7では、下方貫通孔58H6からスムーズに尿素水溶液が抜けてゆき、昇温検知部510の周囲にまで尿素水溶液が溜まることはなかった。
【0085】
この結果より、整流部材61の遮蔽部611(整流対向面611B)と下方貫通孔58H6(仮想円板K)との距離Lを3.0mm以上とすることで、前述のように包囲部材58内に進入した尿素水溶液LQ1の液滴が、下方貫通孔58H6を通じて包囲部材58の外部に排出されるのを、遮蔽部611(整流対向面611B)により妨げることがないといえる。すなわち、距離Lを3.0mm以上とすることで、前述のように包囲部材58内に進入した尿素水溶液LQ1の液滴を、下方貫通孔58H6を通じて、包囲部材58の外部に適切に排出することもできるといえる。
【0086】
次に、尿素水溶液LQ1の尿素濃度検知にあたり、センサ1の尿素濃度センサ部5の動作について説明する。
本実施形態の尿素水センサ1では、配線基板22上に構成された制御回路から、所定の大きさの電流を、所定時間(例えば700ms)、尿素濃度センサ部5の濃度センサ素子51に流し、その内部ヒータ配線518を発熱させる。すると、内部ヒータ配線518には、自身の抵抗値の大きさに対応した検出電圧が発生する。そこで、この検出電圧の変化を制御回路で検知して、尿素水溶液の濃度を検知する。
【0087】
具体的には、濃度センサ素子51への通電開始直後の検出電圧と、通電開始から所定時間経過後の検出電圧とを計測する。そして、この間の検出電圧の変化量を用いて、この変化量に対応する尿素水溶液の濃度を、予め得ておいた尿素水溶液の濃度と変化量との関係から得る。
【0088】
ところで、軽油LQ2は、尿素水溶液LQ1に比べて熱伝導率が小さいため、尿素濃度の如何に関わらず、尿素水溶液LQ1に比べて、検出電圧の変化量が大きくなる。従って、予め、様々
な濃度の尿素水溶液LQ1について検出電圧の変化量を取得し、その最大値を闘値Qとして求めておき、現実の検出電圧の変化量が、闘値Qよりも大きくなった場合には、尿素水タンク10内に軽油LQ2が収容されていると判断することができる。一方、現実の検出電圧の変化量が、闘値Q下である場合には、尿素水タンク10内に尿素水溶液LQ1が収容されていると判断することができ、上述のように、尿素濃度を得ることができる。
【0089】
なお、本実施形態では、尿素水溶液LQ1の濃度検知を、制御回路内のCPUなどを用いて行っており、この制御回路で得られた濃度清報の信号は、外部接続ケーブル24を通じて、外部回路(例えば、ECU)に出力される。この外部回路では、入力された濃度清報の信号に基づいて、尿素水溶液LQ1の濃度が適正範囲内であるか否かを判断し、適正な濃度範囲でない場合には、運転者にその旨を通知するなどの処理を適宜行う。また、尿素水タンク10内に軽油LQ2
が収容されていると判断した場合は、運転者にその旨を通知し、尿素水溶液への入れ替えを促すなどの処理を適宜行う。
【0090】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
例えば、前述の実施形態では、尿素水センサ1として、液体レベルセンサ部4と尿素濃度センサ部5とを複合したタイプのセンサを例示した。しかし、液体レベルセンサとしての機能を有さないもの、さらには、外筒を備えないものに、本発明を適用することもできる。
【0091】
また、前述の実施形態では、尿素濃度センサ部5において、尿素水溶液の濃度を検知する手法について説明したが、濃度センサ素子51(内部ヒータ配線518)への通電直後の抵抗値から、尿素水溶液の液温を測定することもできる。従って、尿素水溶液の濃度のほか、液温を測定する液温センサとして用いることもできる。
また、前述の実施形態では、尿素水センサ1として、制御回路を搭載した配線基板22を有するものを例示した。しかし、本発明の尿素水センサとしては、液体濃度検知素子やこれを保持するホルダ部材、包囲部材などを備えていればよく、制御回路を含まないタイプの尿素水センサをも含む。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】実施形態にかかる尿素水センサの部分破断断面図である。
【図2】実施形態にかかる尿素水センサのうち、尿素濃度センサ部の縦断面図である。
【図3】(a)は濃度センサ素子、接続端子及びリード線の各形態及び接続形態を示す説明図、(b)は濃度センサ素子の先端部分の側面図である。
【図4】包囲部材の正面図である。
【図5】包囲部材の左側面図である。
【図6】包囲部材の背面図である。
【図7】包囲部材の右側面図である。
【図8】包囲部材の底面図である。
【図9】尿素水タンク10内に、尿素水溶液LQ1と軽油LQ2とが収容されたときの説明図である。
【図10】ホルダ部材と包囲部材との結合の様子を示す説明図である。
【図11】整流部材の形状を示す斜視図である。
【図12】他の形態の下方貫通孔158H6を示す図であり、包囲部材158の底面図である。
【図13】他の形態の下方貫通孔258H6を示す図であり、包囲部材258の底面図である。
【符号の説明】
【0093】
1 尿素水センサ
10 尿素水タンク
51 濃度センサ素子
58 包囲部材
58H1,58H2,58H3,58H4 液体流通孔(上方貫通孔、貫通孔)
58H6 下方貫通孔(貫通孔)
61 整流部材
510 昇温検知部(検知部、昇温部)
511 下端部
511AS 昇温部主面
511BS 昇温部裏面
518 内部ヒータ配線(発熱抵抗体)
519 セラミック層(セラミック絶縁基体)
611B 整流対向面
K 仮想円板(第1仮想円板)
LQ1 尿素水溶液
LQ2 軽油

【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿素水タンク内に収容された尿素水溶液に浸漬されて、上記尿素水タンク内に収容された液体が上記尿素水溶液であるか、これと熱伝導率の異なる異種液体であるかを検知する検知部と、
上記検知部の周囲を取り囲む包囲部材であって、自身を貫通する1または複数の貫通孔を有する包囲部材と、
を備える尿素水センサであって、
上記包囲部材の上記貫通孔の少なくともいずれかは、
直径3.5mm以上の第1仮想円板を内側に配置することが可能な形態であり、
上記尿素水センサを上記尿素水タンクに取り付けた姿勢にしたとき、上記第1仮想円板の少なくとも一部が上記検知部よりも鉛直方向下方側に位置する配置された
下方貫通孔である
尿素水センサ。
【請求項2】
尿素水タンク内に収容された尿素水溶液に浸漬されて、上記尿素水タンク内に収容された液体が上記尿素水溶液であるか、これと熱伝導率の異なる異種液体であるかを検知する検知部と、
上記検知部の周囲を取り囲む包囲部材であって、自身を貫通する複数の貫通孔を有する包囲部材と、
を備える尿素水センサであって、
上記包囲部材の上記複数の貫通孔は、上記尿素水センサを取り付けた姿勢にしたとき、上記検知部よりも鉛直方向下方側に位置する下方側貫通孔と、検知部の下端よりも鉛直方向上方側に位置する上方側貫通孔とを含んでおり、
上記下方側貫通孔の内側に配置することが可能な第1仮想円板の最大直径は、上記上方側貫通孔の内側に配置することが可能な第2仮想円板の最大直径よりも大きい
尿素水センサ。
【請求項3】
請求項2に記載の尿素水センサであって、
前記第1仮想円板の最大直径は、前記第2仮想円板の最大直径の2倍以下である
尿素水センサ。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の尿素水センサであって、
前記第1仮想円板の最大直径は、3.5mm以上である
尿素水センサ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の尿素水センサであって、
前記包囲部材の前記下方貫通孔は、
上記尿素水センサを前記姿勢にしたとき、前記第1仮想円板が鉛直方向下方を向く形態とされてなる
尿素水センサ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の尿素水センサであって、
前記包囲部材は、上記尿素水センサを前記姿勢にしたとき、鉛直方向下方を向く底部を有する有底筒状をなしており、
前記下方貫通孔は、前記底部に配置されてなる
尿素水センサ。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の尿素水センサであって、
上記尿素水センサを前記姿勢にしたとき、
前記下方貫通孔の前記第1仮想円板の鉛直方向下方に、上記第1仮想円板に対向する整流対向面を有する整流部材であって、
上記整流対向面は、これを鉛直方向上方の上記第1仮想円板に向けて投影したとき、上記第1仮想円板の全体を上記整流対向面の投影領域内に含む形態とされ、
上記整流対向面と上記第1仮想円板との距離を3.0mm以上としてなる
整流部材を備える
尿素水センサ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の尿素水センサであって、
前記検知部は、
自身の温度に応じて抵抗値が変化する発熱抵抗体が、セラミック絶縁基体内に液密に封止されてなる昇温部を有する
尿素水センサ。
【請求項9】
請求項8に記載の尿素水センサであって、
前記昇温部は、
平板形状をなし、最も発熱面積の大きな昇温部主面と、これの反対側に位置する昇温部裏面と、を有し、
上記尿素水センサが前記整流部材を備えているとき、
前記包囲部材は、少なくとも、前記下方貫通孔を除く前記貫通孔のいずれもが、上記昇温部主面及び上記昇温部裏面と正対しない位置に配置されてなり、
上記尿素水センサが上記整流部材を備えていないとき、
前記包囲部材は、前記下方貫通孔を含む前記貫通孔のいずれもが、上記昇温部主面及び上記昇温部裏面と正対しない位置に配置されてなる
尿素水センサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2008−203243(P2008−203243A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−324895(P2007−324895)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】