説明

局回線終端装置及び局回線終端装置の制御方法

【課題】1Gbps及び10Gbpsのデータ系列を光波長(λ1及びλ4)の下り光信号として光多重して送信する局回線終端装置であり、光加入者回線端末装置ONU#1〜ONU#Nの各々の光加入者回線端末装置から、光波長λ2の上り光信号を受信する局回線終端装置OLT♯100に於いて、故障発生時に回線復旧に要する時間を短縮化する。
【解決手段】 現用部17は、光加入者回線端末装置ONU(♯1〜♯N)から受信する上り光信号の受信処理を行い、1G/10G信号発生部24は、上り信号と同一の光波長λ2の1G、及び10Gのデータ系列を加算した擬似上り信号を生成し、光スイッチ部16は局回線終端装置及び複数の光加入者回線端末装置の故障箇所検出処理に於いて、複数の光加入者回線端末装置ONU(♯1〜♯N)から受信する上り光信号に替えて擬似上り信号を現用部17へ供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、速度の異なるデータ系列を送受信する局回線終端装置及び局回線終端装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年インターネットユーザの拡大普及が進んでいる。それに伴い、ブロードバンドネットワークの主力はADSLからFTTH(Fiber To The Home)へと移行しつつある。かかる環境下で用いられる、1Gbps信号のネットワークシステムが公開されている(非特許文献1参照)。また、1Gbps信号と10Gbps信号とが混在する双方向ネットワークシステムがIEEE802.3avにおいて現在標準化中である。そのシステムの内容について以下に説明する。
【0003】
図7は、速度の異なる信号が混在するGE−PONシステムのシステム構成図である。
図に示すように、速度の異なる信号が混在するGE−PONシステムは、局回線終端装置OLT#1が、1対N分岐の光分岐カプラ150を介して光加入者回線端末装置ONU(#1〜#N)と接続され、ネットワーク(例えばイーサネット(登録商標))と加入者端末装置(#1〜#N)とが時分割多重方式でデータの送受信を行っている。
【0004】
局回線終端装置OLT#1は、ネットワークから1Gbps、及び10Gbpsの電気信号を受け入れて光信号に変換して多重化し、光ファイバ#0を介して光分岐カプラ150へ送出する。また、光分岐カプラ150から1Gbps+10Gbpsの光信号を受け入れて電気信号に変換し、1Gbpsの電気信号と、10Gbpsの電気信号とに分離してネットワークへ送出する。
【0005】
光加入者回線端末装置ONU(#1〜#N)は、対応する加入者端末装置#1〜#Nから受け入れた1Gbps又は10Gbpsの電気信号に対して所定の送信処理を実行し、1Gbps又は10Gbpsの光信号に変換して光分岐カプラ150へ送出する。更に、光分岐カプラ150から受け入れた1Gbps、及び10Gbpsの光信号を電気信号に変換し、所定の受信処理を実行し、対応する加入者端末装置#1〜#Nへ1Gbps又は10Gbpsの電気信号として送出する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】沖テクニカルレビュー第197号Vol.71No1.p84〜p87
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記システムでは、システム内部の何処かで発生した故障を局回線終端装置OLT♯1側で発見したときに、その故障が光加入者回線端末装置ONU(#1〜#N)の内部で発生した故障なのか、局回線終端装置OLT#1の内部で発生した故障なのかを判断するのが困難であった。即ち、1例として図中A(1G受信処理部)、B(10G受信処理部)で不都合な信号が検出されたとすると、故障被疑対象は、図中C(DualRate光/電気変換部)、D(光多重分離部)、E(光加入者回線端末装置ONU#1)、F(光加入者回線端末装置ONU#2)、G(光加入者回線端末装置ONU#N)となる。
【0008】
このような状況下で、例えば光加入者回線端末装置ONU(#1〜#N)が故障しているのであればその装置を早急に交換する必要がある。あるいは、局回線終端装置OLT#1が故障しているのであれば、その内部の故障箇所の交換、或いはまた冗長部への迅速な切替えなどを実施する必要がある。しかしながら、上記システムでは速度の異なる信号がネットワーク中に混在しているため、同一速度の信号のみによるネットワークでは容易に実行可能であった折り返し試験(ループバックテスト)も実行し難い、等の理由により、故障箇所の検出が難しく、回線復旧に長時間を要すると云う解決すべき課題が残されていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の局回線終端装置は、第1速度の第1信号が第1光波長の光信号に変換された第1下り光信号と第2速度の第2信号が第2光波長の光信号に変換された第2下り光信号とを光多重して送信する局回線終端装置であり、複数の光加入者回線端末装置における各光加入者回線端末装置から、第1速度の第3信号が第3光波長の光信号に変換された上り光信号または第2速度の第4信号が第3光波長の光信号に変換された上り光信号を受信する局回線終端装置であって、前記局回線終端装置は、前記上り光信号の受信処理を行う現用系受信処理部と、加算された第1速度の第5信号と第2速度の第6信号とが第3光波長の光信号に変換された擬似上り信号を生成する擬似上り信号発生部と、前記局回線終端装置及び前記複数の光加入者回線端末装置の故障箇所検出処理に於いて、前記上り光信号に替えて前記擬似上り信号を上記現用系受信処理部へ供給する光スイッチとを有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の局回線終端装置の制御方法は、第1速度の第1信号が第1光波長の光信号に変換された第1下り光信号と第2速度の第2信号が第2光波長の光信号に変換された第2下り光信号とを光多重して送信する局回線終端装置であり、複数の光加入者回線端末装置における各光加入者回線端末装置から、第1速度の第3信号が第3光波長の光信号に変換された上り光信号または第2速度の第4信号が第3光波長の光信号に変換された上り光信号を受信する局回線終端装置における局回線終端装置の制御方法であって、現用系受信処理部が、前記上り光信号の受信処理を行う第1ステップと、擬似上り信号発生部が、加算された第1速度の第5信号と第2速度の第6信号とが第3光波長の光信号に変換された擬似上り信号を生成する第2ステップと、光スイッチが、前記局回線終端装置及び前記複数の光加入者回線端末装置の故障箇所検出処理に於いて、前記上り光信号に替えて前記擬似上り信号を前記現用系受信処理部へ供給する第3ステップとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の局回線終端装置では、上り信号と同一の光波長の擬似上り信号であり速度の異なる複数の信号が加算された擬似上り信号を生成する擬似上り信号発生部と、局回線終端装置及び前記複数の光加入者回線端末装置の故障箇所検出処理に於いて、複数の光加入者回線端末装置から受信する上り光信号に替えて擬似上り信号を現用系受信処理部へ供給する光スイッチとを備えるので、局回線終端装置が独自で自己の内部における故障箇所を検出することが可能なので、速度の異なる信号が混在しているシステムに適用されても故障箇所の検出が容易になる。その結果、回線復旧に要する時間を短縮化できるという効果を得る。
【0012】
また、本発明の局回線終端装置の制御方法では、上り信号と同一の光波長の擬似上り信号であり速度の異なる複数の信号が加算された擬似上り信号を生成する第2ステップと、局回線終端装置及び前記複数の光加入者回線端末装置の故障箇所検出処理に於いて、複数の光加入者回線端末装置から受信する上り光信号に替えて擬似上り信号を現用系受信処理部へ供給する第3ステップとを備えるので、局回線終端装置の制御方法が独自で自己の内部における故障箇所を検出することが可能なので、速度の異なる信号が混在しているシステムに適用されても故障箇所の検出が容易になる。その結果、回線復旧に要する時間を短縮化できるという効果を得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の局回線終端装置を適用したGE−PONシステムのシステム構成図である。
【図2】1G/10G信号発生部の構成及び機能の説明図である。
【図3】本発明の局回線終端装置を適用したGE−PONシステムの故障箇所検出動作説明図(その1)である。
【図4】本発明の局回線終端装置を適用したGE−PONシステムの故障箇所検出動作フローチャ−ト(その1)である。
【図5】本発明の局回線終端装置を適用したGE−PONシステムの故障箇所検出動作説明図(その2)である。
【図6】本発明の局回線終端装置を適用したGE−PONシステムの故障箇所検出動作フローチャ−ト(その2)である。
【図7】速度の異なる信号が混在する局回線終端装置を適用したGE−PONシステムのシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図を用いて詳細に説明する。
【0015】
(構成)の説明
図1は、本発明の局回線終端装置を適用したGE−PONシステムのシステム構成図である。
図に示すように、本発明による局回線終端装置を適用したGE−PONシステムは、図示しないOLT設置局の内部に配設される局回線終端装置OLT#100が、1対N分岐の光分岐カプラ150の集約ポートに光ファイバ#0を介して接続され、光分岐カプラ150の分岐ポートと光加入者回線端末装置ONU(#1〜#N)とが、光ファイバ(#1〜#N)を介して接続され、ネットワーク(例えばイーサネット(登録商標))と加入者端末装置#1〜#Nとが時分割多重方式でデータの送受信を行う光通信システムである。ここでGE−PONシステムとは、IEEE802.3avにて現在標準化中である最新のPONシステムであり、Gbps単位の双方向通信可能な、イーサネット(登録商標)対応のPassive Optical Networkである。本発明では、図に示すように1G−EPONと10G−EPONとが混在している。
【0016】
局回線終端装置OLT#100は、その内部に1G送信処理部11と、1G電気/光変換部12と、10G送信処理部13と、10G電気/光変換部14と、光多重分離部15と、光スイッチ部16と、現用部17と、予備部21と、1G/10G信号発生部24と、監視制御部30と、SEL部31とを備え、図示しないネットワーク及び光ファイバ#0と接続し、ネットワークから1Gbps、及び10Gbpsの電気信号を受け入れて光信号に変換して多重化し、光ファイバ#0を介して光分岐カプラ150へ送出すると共に、光ファイバ#0を介して光分岐カプラ150から1Gbps+10Gbpsの光信号を受け入れて電気信号に変換し、1Gbpsの電気信号と、10Gbpsの電気信号とに分離してネットワークへ送出する機器である。又、回線故障が検出されると、該当する故障箇所を探索する機器である。更に、回線故障時に現用回線を予備回線に切替えて応急処置を実行する機器でもある。以下に、上記各構成部分について詳細に説明する。
【0017】
1G送信処理部11は、SEL部31を介して図示しないネットワークから受け入れた1Gbpsの電気信号フレームに所定の識別子を付与し、所定の送信処理を実行して1G電気/光変換部12へ送出する部分である。ここで、識別子には、フレームの宛先となるLLID値等が含まれている。
【0018】
1G電気/光変換部12は、1G送信処理部11から1Gbpsの電気信号フレームを受け入れて光信号に変換し、光多重分離部15へ送出する光電変換素子である。通常レーザダイオード又はLED等が用いられる。
【0019】
10G送信処理部13は、SEL部31を介して図示しないネットワークから受け入れた10Gbpsの電気信号フレームに所定の識別子を付与し、所定の送信処理を実行して10G電気/光変換部14へ送出する部分である。ここで、識別子には、フレームの宛先となるLLID値等が含まれている。
【0020】
10G電気/光変換部14は、10G送信処理部13から電気信号フレームを受け入れて光信号に変換し、光多重分離部15へ送出する光電変換素子である。通常レーザダイオード又はLED等が用いられる。
【0021】
光多重分離部15は、光スイッチ部16から受け入れて光分岐カプラ150へ送出する下り光信号と、光加入者回線端末装置ONU(#1〜#N)から受け入れて光スイッチ部16へ送出する上り光信号とを同一ポートから入出力させる波長合分波フィルタである。通常は誘電体多層膜フィルタが用いられる。ここで下り光信号と上り光信号とは光波長が異なる。下り光信号の光波長はλ1、及びλ4であり、上り光信号の光波長はλ2である。
【0022】
光スイッチ部16は、監視制御部30によるスイッチ切換制御に基づいて光多重分離部15と、現用部17及び予備部21の何れかを接続したり、あるいはまた、光多重分離部15との接続を遮断し、1G/10G信号発生部と、現用部17及び予備部21の何れかと接続したりする光スイッチである。通常可動部を有する機械式光スイッチや電気光学効果等を利用した電子式光スイッチなどが用いられる。
【0023】
現用部17は、その内部にDual Rate光/電気変換部18と、1G受信処理部19と、10G受信処理部20とを有し、光加入者回線端末装置ONU(#1〜#N)から光分岐カプラ150を介して受け入れた上り光信号を電気信号へ変換し、所定の受信処理を実行してSEL部31を介して図示しないネットワークへ送出する現用系の信号処理ブロックである。
【0024】
Dual Rate光/電気変換部18は、光スイッチ部16から受け入れた1Gbps+10Gbpsの光信号を電気信号に変換し、1Gbpsの電気信号と10Gbpsの電気信号とに分離し、1Gbpsの電気信号を1G受信処理部19へ、10Gbpsの電気信号を10G受信処理部20へ、それぞれ送出する部分である。通常フォトダイオードなどが用いられる。
【0025】
1G受信処理部19は、Dual Rate光/電気変換部18から電気信号に変換された1Gbpsのフレームを受け入れて、所定の順番に蓄積し、所定の受信処理を実行してSEL部31を介してネットワークへ送出する部分である。
【0026】
10G受信処理部20は、Dual Rate光/電気変換部18から電気信号に変換された10Gbpsのフレームを受け入れて、所定の順番に蓄積し、所定の受信処理を実行してSEL部31を介してネットワークへ送出する部分である。
【0027】
予備部21は、その内部にDual Rate光/電気変換部18と、1G受信処理部19と、10G受信処理部20とを有し、現用部17内部に故障が発生したとき等に現用部17に代わって光加入者回線端末装置ONU(#1〜#N)から光分岐カプラ150を介して受け入れた上り光信号を電気信号へ変換し、所定の受信処理を実行してSEL部31を介して図示しないネットワークへ送出する予備系の信号処理ブロックである。
【0028】
1G/10G信号発生部24は、システム内部の何処かで発生した故障を局回線終端装置OLT♯1側で発見したときに、その故障が光加入者回線端末装置ONU(#1〜#N)の内部で発生した故障なのか、局回線終端装置OLT#1の内部で発生した故障なのかを判断し、回線復旧時間の短縮化を図るために用いられる試験信号の発生器である。他の図を用いてその詳細について説明する。
【0029】
図2は、1G/10G信号発生部の構成及び機能の説明図である。
(a)図は構成の機能ブロック図である。(b)図は、各部分での出力信号波形を示す図である。
(a)図に示すように、1G/10G信号発生部24は、その内部に1Gパターン生成部25と、10Gパターン生成部と、加算部27と、Dual Rate電気/光変換部28と、光可変減衰部29とを有する。
【0030】
1Gパターン生成部25は、予め規格化されているパターン(例えば15次擬似ランダムパターン)のテスト信号を1Gバースト信号として生成する部分である。その出力信号波形は(b)図の[A]に示すようにパターン長P1の1Gデータ(1)が出力され、続いてT1時間後にパターン長P2の1Gデータ(2)が出力される。
【0031】
10Gパターン生成部26は、予め規格化されているパターン(例えば15次擬似ランダムパターン)のテスト信号を10Gバースト信号として生成する部分である。その出力信号波形は(b)図の[B]に示すように10Gパターン生成部26の出力よりT2時間遅れて、パターン長P3の10Gデータ(1)が出力され、続いてT3時間後にパターン長P4の10Gデータ(2)が出力される。
【0032】
加算部27は、1Gパターン生成部25、及び10Gパターン生成部26から、それぞれの出力信号を受け入れて、加算して出力する部分である。その出力信号波形は(b)図の[C]に示すように、[A]、及び[B]と同一時間軸上で1Gデータ(1)、10Gデータ(1)、1Gデータ(2)、10Gデータ(2)の順に1G+10Gのバースト信号が出力される。
【0033】
Dual Rate電気/光変換部28は、加算部27から1G+10Gバースト電気信号を受け入れて波長λ2の光信号に変換して出力する部分である。その出力信号波形は(b)図の[D]に示すように、[C]と同一時間軸上で波長λ2の光信号が出力される。
【0034】
光可変減衰部29は、Dual Rate電気/光変換部28から波長λ2の光信号を受け入れて出力レベルを調整して出力する光減衰器である。その出力信号波形を(b)図の[D]及び[E]に示す。[D]は、光出力Po1の場合を表し、[E]は、光出力Po2の場合を表している。
【0035】
以上説明したように、1G/10G信号発生部24は、監視制御部30の制御に基づいて波長λ2の光信号を光出力Po1から光出力Po2の範囲にレベル調整して出力することになる。
【0036】
再度図1に戻って、監視制御部30は、送受信制御フレームを介してシステム全体における信号の送受信を制御するとともに、装置内部の稼動状態、即ち、受信光レベル低下等を監視し、ループバック制御を実行したり、電源故障などを監視してユーザに通知するとともに、光加入者回線端末装置ONU(#1〜#N)の状態変化を監視する部分である。
【0037】
光分岐カプラ150は、局回線終端装置OLT#100から光ファイバ#0を介して下り光信号を受け入れて、N本の光ファイバ(#1〜#N)に分岐し、該光ファイバ(#1〜#N)のそれぞれが接続されている光加入者回線端末装置ONU(#1〜#N)へ送出すると共に、光ファイバ(#1〜#N)のそれぞれが接続する光加入者回線端末装置ONU(#1〜#N)から上り光信号を受け入れて合波し、光ファイバ#0を介して局回線終端装置OLT#100へ送出する光部品である。通常、光導波路型や、光ファイバ加熱溶融型の光分岐結合器が用いられる。
【0038】
光加入者回線端末装置ONU(#1〜#N)のそれぞれは、1本の光ファイバ(光ファイバ(#1〜#N)の内の1本)を介して光分岐カプラ150と接続し、さらに、自己を特定する#1〜#Nに対応する1個の加入者端末装置#1〜#Nと接続する機器である。
【0039】
図に示すように、この光加入者回線端末装置ONU(#1〜#N)には、1例として1G−EPON対応の光加入者回線端末装置ONU#1、#2と、10G−EPON対応の光加入者回線端末装置ONU#Nとが光分岐カプラ150に接続されている。
【0040】
1G−EPON対応の光加入者回線端末装置ONU#1、#2は、その内部に光多重分離部41と、1G光電気変換部42と、1G受信処理部43と、1G送信処理部44と、1G電気/光変換部45とを有する。
【0041】
光多重分離部41は、1G電気/光変換部45から受け入れて光分岐カプラ150へ送出する上り光信号と、光分岐カプラ150から受け入れて1G光電気変換部42へ送出する下り光信号とを同一ポートから入出力させる波長合分波フィルタである。通常は誘電体多層膜フィルタが用いられる。ここで下り光信号と上り光信号とは光波長が異なる。下り光信号は光波長λ1であり、上り光信号は光波長λ2である。
【0042】
1G光電気変換部42は、光多重分離部41から受け入れた波長λ1の光信号を電気信号に変換して1G受信処理部43へ送出する部分である。1G受信処理部43は、1G光電気変換部42から受け入れた1Gbpsの電気信号に所定の受信処理を実行して加入者端末装置♯1へ送出する部分である。この受信処理には自己のLLID値に対応するフレームの抽出処理が含まれている。
【0043】
1G送信処理部44は、加入者端末装置♯1から受け入れた電気信号に所定の送信処理を実行して1G電気/光変換部45へ1Gbpsの電気信号フレームとして送出する部分である。この送信処理には、自己のLLID値の付与、及び送信タイミングの調整が含まれている。1G電気/光変換部45は、1G送信処理部44から1Gbpsの電気信号フレームを受け入れて波長λ2の光信号に変換して光多重分離部41へ送出する部分である。
【0044】
同様にして、10G−EPON対応の光加入者回線端末装置ONU#Nは、その内部に光多重分離部51と、10G光電気変換部52と、10G受信処理部53と、10G送信処理部54と、10G電気/光変換部55とを有する。
【0045】
光多重分離部51は、10G電気/光変換部55から受け入れて光分岐カプラ150へ送出する上り光信号と、光分岐カプラ150から受け入れて10G光電気変換部52へ送出する下り光信号とを同一ポートから入出力させる波長合分波フィルタである。通常は誘電体多層膜フィルタが用いられる。ここで下り光信号と上り出力光信号とは光波長が異なる。下り光信号の光波長はλ4であり、上り光信号の光波長はλ2である。
【0046】
10G光電気変換部52は、光多重分離部51から受け入れた波長λ4の光信号を電気信号に変換して10G受信処理部53へ送出する部分である。10G受信処理部53は、10G光電気変換部52から受け入れた10Gbpsの電気信号に所定の受信処理を実行して加入者端末装置♯Nへ送出する部分である。この受信処理には自己のLLID値に対応するフレームの抽出処理が含まれている。
【0047】
10G送信処理部54は、加入者端末装置♯Nから受け入れた電気信号に所定の送信処理を実行して10G電気/光変換部55へ10Gbpsの電気信号フレームとして送出する部分である。この送信処理には、自己のLLID値の付与、及び送信タイミングの調整が含まれている。10G電気/光変換部55は、10G送信処理部54から10Gbpsの電気信号フレームを受け入れて波長λ2の光信号に変換して光多重分離部51へ送出する部分である。
【0048】
(動作)
以上説明した本発明による局回線終端装置を適用したGE−PONシステムは以下のように動作する。
最初に本発明による局回線終端装置を適用したGE−PONシステムの正常稼動状態における動作について説明し、続いて故障発生時における故障箇所を検出する動作について説明する。
【0049】
本発明による局回線終端装置を適用したGE−PONシステムの正常稼動状態では図1に示すように、光スイッチ部16は、監視制御部30の制御に基づいて、波長λ2の上り光信号を光多重分離部15から受け入れて現用部17へ送出している。この状態では、従来技術と同様に、図1に示す1Gbps+10Gbpsの混在バースト信号が上り光信号S1となって、光多重分離部15から現用部17へ送出され、該現用部17により、1Gbpsの電気信号フレームと10Gbpsの電気信号フレームとに分離されSEL部31を介して図示しないネットワークへ送出される。
【0050】
図3、本発明の局回線終端装置を適用したGE−PONシステムの故障箇所検出動作説明図(その1)である。
この図は、局回線終端装置OLT♯100の10G受信処理部20に於いて故障が検出された場合の故障検出方法と、故障解除方法を説明する図である。
図4は、本発明の局回線終端装置を適用したGE−PONシステムの故障箇所検出動作フローチャ−ト(その1)である。
このフローチャートを用いて、図3を併用しながら局回線終端装置OLT♯100の10G受信処理部20に於いて故障が検出された場合の故障検出方法と、故障解除方法とをステップS1−1からステップS1−7までステップ順に説明する。
【0051】
ステップS1−1
監視制御部30は、10G受信処理部20に於いて故障を検出すると、光スイッチ部16の接続を2−3へ切替えて光多重分離部15と現用部17との接続をとき、1G/10G信号発生部24と現用部17とを接続する。
【0052】
ステップS1−2
監視制御部30は、1G/10G信号発生部24から光スイッチ部16を介して現用部17のDual Rate光/電気変換部18へ出力信号(図2)を送出させる。
【0053】
ステップS1−3
このとき10G受信処理部20に於ける故障が解除されたときはステップS1−6へ進み、解除されなかったときはステップS1−4へ進む。
【0054】
ステップS1−4
監視制御部30は、Dual Rate光/電気変換部18の故障であると判断する。
【0055】
ステップS1−5
監視制御部30は、光スイッチ部16の接続を1−4へ切換て信号系統を現用部17から予備部21へ切替えてフローを終了する。
【0056】
ステップS1−6
監視制御部30は、10Gbps系の光加入者回線端末装置(図3ではONU♯N)の故障と判断する。
【0057】
ステップS1−7
監視制御部30は、図示しない所定の警告通知手段を介して10Gbps系の光加入者回線端末装置(図3ではONU♯N)のユーザに対して所定の装置交換手続を実行してフローを終了する。
【0058】
図5、本発明の局回線終端装置を適用したGE−PONシステムの故障箇所検出動作説明図(その2)である。
この図は、局回線終端装置OLT♯100の1G受信処理部19に於いて故障が検出された場合の故障検出方法と、故障解除方法を説明する図である。
図6は、本発明の局回線終端装置を適用したGE−PONシステムの故障箇所検出動作フローチャ−ト(その2)である。
このフローチャートを用いて、図5を併用しながら局回線終端装置OLT♯100の1G受信処理部19に於いて故障が検出された場合の故障検出方法と、故障解除方法とをステップS2−1からステップS2−7までステップ順に説明する。
【0059】
ステップS2−1
監視制御部30は、1G受信処理部19に於いて故障を検出すると、光スイッチ部16の接続を3−2へ切替えて光多重分離部15と現用部17との接続をとき、1G/10G信号発生部24と現用部17とを接続する。
【0060】
ステップS2−2
監視制御部30は、1G/10G信号発生部24から光スイッチ部16を介して現用部17のDual Rate光/電気変換部18へ出力信号(図2)を送出させる。
【0061】
ステップS2−3
このとき1G受信処理部19に於ける故障が解除されたときはステップS2−6へ進み、解除されなかったときはステップS2−4へ進む。
【0062】
ステップS2−4
監視制御部30は、Dual Rate光/電気変換部18の故障であると判断する。
【0063】
ステップS2−5
監視制御部30は、光スイッチ部16の接続を1−4へ切換で信号系統を現用部17から予備部21へ切替えてフローを終了する。
【0064】
ステップS2−6
監視制御部30は、1Gbps系の光加入者回線端末装置(図3ではONU♯1及びONU♯2)の故障と判断する。
【0065】
ステップS2−7
監視制御部30は、図示しない所定の警告通知手段を介して1Gbps系の光加入者回線端末装置(図3ではONU♯1及びONU♯2)のユーザに対して所定の装置交換手続を実行してフローを終了する。
【0066】
(効果)の説明
以上説明したように、本発明の局回線終端装置によれば、故障発生時に光スイッチ部16が、局回線終端装置ONU♯100と、光加入者回線端末装置ONU(♯1〜♯N)との接続を解くことが可能であり、更に、局回線終端装置OLT♯100の内部に1G/10G信号発生部24を備えるので、局回線終端装置OLT♯100が独自で自己の内部における故障箇所を検出することが可能であり、速度の異なる信号がネットワーク中に混在しているGE−PONシステムに適用されても故障箇所の検出が容易になるという効果を得る。その結果、回線復旧に要する時間を短縮化できるという効果を得る。
【産業上の利用可能性】
【0067】
実施例の説明では、局回線終端装置OLTが接続するネットワークをイーサネット(登録商標)に限定して説明したが、本発明はこの例に限定されるものではない。即ち、インターネット網への接続も可能であり、更には、将来インタオペラビリティの確保も可能になってくる。
【符号の説明】
【0068】
11 1G送信処理部
12 1G電気/光変換部
13 10G送信処理部
14 10G電気/光変換部
15 光多重分離部
16 光スイッチ
17 現用部
18 Dual Rate光/電気変換部
19 1G受信処理部
20 10G受信処理部
21 予備部
24 1G/10G信号発生部
25 1Gパターン生成部
26 10Gパターン生成部
27 加算部
28 Dual Rate電気/光変換部
29 光可変減衰部
30 監視制御部
41 光多重分離部
42 1G光電気変換部
43 1G受信処理部
44 1G送信処理部
45 1G電気/光変換部
51 光多重分離部
52 10G光電気変換部
53 10G受信処理部
54 10G送信処理部
55 10G電気/光変換部
150 光分岐カプラ
ONU♯1〜ONU♯N 光加入者回線端末装置
OLT♯100 局回線終端装置
♯0〜♯N 光ファイバ
λ1、λ2、λ4 光波長

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1速度の第1信号が第1光波長の光信号に変換された第1下り光信号と第2速度の第2信号が第2光波長の光信号に変換された第2下り光信号とを光多重して送信する局回線終端装置であり、複数の光加入者回線端末装置における各光加入者回線端末装置から、第1速度の第3信号が第3光波長の光信号に変換された上り光信号または第2速度の第4信号が第3光波長の光信号に変換された上り光信号を受信する局回線終端装置であって、
前記局回線終端装置は、
前記上り光信号の受信処理を行う現用系受信処理部と、
加算された第1速度の第5信号と第2速度の第6信号とが第3光波長の光信号に変換された擬似上り信号を生成する擬似上り信号発生部と、
前記局回線終端装置及び前記複数の光加入者回線端末装置の故障箇所検出処理に於いて、前記上り光信号に替えて前記擬似上り信号を前記現用系受信処理部へ供給する光スイッチと
を有することを特徴とする局回線終端装置。
【請求項2】
前記現用系受信処理部に異常状態が発生すると該現用系受信処理部に替わって前記上り光信号の受信処理を行う予備系受信処理部と、
前記現用系受信処理部を監視し、前記受信処理における異常状態を検出すると、前記光スイッチを制御し、前記上り光信号に替えて前記擬似上り信号を前記現用系受信処理部へ供給させ、前記受信処理における異常状態の消滅を検出すると、前記光スイッチを制御し、前記上り光信号の受信処理を予備系受信処理部に実行させる監視制御部と
を有することを特徴とする請求項1に記載の局回線終端装置。
【請求項3】
前記現用系受信処理部に異常状態が発生すると該現用系受信処理部に替わって前記上り光信号の受信処理を行う予備系受信処理部と、
前記現用系受信処理部を監視し、前記受信処理における異常状態を検出すると、前記光スイッチを制御し、前記上り光信号に替えて前記擬似上り信号を前記現用系受信処理部へ供給させ、前記受信処理における異常状態の不消滅を検出すると、所定の警告を発する監視制御部と
を有することを特徴とする請求項1に記載の局回線終端装置。
【請求項4】
前記所定の警告は、光加入者回線端末装置の故障通知であること
を特徴とする請求項3に記載の局回線終端装置。
【請求項5】
第1速度の第1信号が第1光波長の光信号に変換された第1下り光信号と第2速度の第2信号が第2光波長の光信号に変換された第2下り光信号とを光多重して送信する局回線終端装置であり、複数の光加入者回線端末装置における各光加入者回線端末装置から、第1速度の第3信号が第3光波長の光信号に変換された上り光信号または第2速度の第4信号が第3光波長の光信号に変換された上り光信号を受信する局回線終端装置における局回線終端装置の制御方法であって、
現用系受信処理部が、前記上り光信号の受信処理を行う第1ステップと、
擬似上り信号発生部が、加算された第1速度の第5信号と第2速度の第6信号とが第3光波長の光信号に変換された擬似上り信号を生成する第2ステップと、
光スイッチが、前記局回線終端装置及び前記複数の光加入者回線端末装置の故障箇所検出処理に於いて、前記上り光信号に替えて前記擬似上り信号を前記現用系受信処理部へ供給する第3ステップと
を有することを特徴とする局回線終端装置の制御方法。
【請求項6】
予備系受信処理部が、前記現用系受信処理部に異常状態が発生すると該現用系受信処理部に替わって前記上り光信号の受信処理を行う第6ステップと、
監視制御部が、前記現用系受信処理部を監視し、前記受信処理における異常状態を検出すると、前記光スイッチを制御し、前記上り光信号に替えて前記擬似上り信号を前記現用系受信処理部へ供給させ、前記受信処理における異常状態の消滅を検出すると、前記光スイッチを制御し、前記上り光信号の受信処理を予備系受信処理部に実行させる第7ステップと
を有することを特徴とする請求項5に記載の局回線終端装置の制御方法。
【請求項7】
予備系受信処理部が、前記現用系受信処理部に異常状態が発生すると該現用系受信処理部に替わって前記上り光信号の受信処理を行う第8ステップと、
監視制御部が、前記現用系受信処理部を監視し、前記受信処理における異常状態を検出すると、前記光スイッチを制御し、前記上り光信号に替えて前記擬似上り信号を前記現用系受信処理部へ供給させ、前記受信処理における異常状態の不消滅を検出すると、所定の警告を発する第9ステップと
を有することを特徴とする請求項1に記載の局回線終端装置の制御方法。
【請求項8】
前記所定の警告は、光加入者回線端末装置の故障通知であること
を特徴とする請求項7に記載の局回線終端装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−165438(P2012−165438A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−90307(P2012−90307)
【出願日】平成24年4月11日(2012.4.11)
【分割の表示】特願2008−35892(P2008−35892)の分割
【原出願日】平成20年2月18日(2008.2.18)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】