局所的診断及び治療用の輸送のための組成物及び方法
インスリン、ボツリヌストキシン、抗体断片、及びVEGFを除いて、非タンパク質非核酸系治療薬やタンパク質ベースの治療薬など生物学的に活性な作用物質の経皮送達を含めて、送達に有用な組成物及び方法が提供される。これらの組成物及び方法は、抗真菌物質及び免疫化に適した抗原性物質の局所送達に特に有用である。或いは、組成物は、これらの組成物の送達を標的化するのに有用な成分、並びにイメージング成分と共に調製することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2004年3月3日に出願された米国仮出願第60/550014号の優先権を主張し、この内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究及び開発のもとで行われた発明に対する権利に関する記載
該当無し
【背景技術】
【0003】
皮膚は、外部環境の脅威から身体の器官を保護し、身体の温度を維持するためのサーモスタットの役割を果たす。皮膚は、いくつかの異なる層からなり、それぞれは特殊な機能を有する。主要な層には、表皮、真皮、及び下皮が含まれる。表皮は、結合組織からなる、真皮の上に横たわる上皮細胞の層状の層である。表皮と真皮の双方とも、皮下組織、即ち脂肪組織の内層によってさらに支持されている。
【0004】
表皮、即ち皮膚の最上層は、0.1〜1.5ミリメートルの厚さしかない(Inlander, Skin, New York, NY: People's Medical Society, 1-7 (1998))。表皮は、ケラチノサイトからなり、分化状態に基づいていくつかの層に分けられる。表皮は、角質層、並びに、顆粒メルピギー(melphigian)及び基底細胞からなる分裂可能な表皮にさらに分類することができる。角質層は吸湿性であり、その屈曲性及び柔軟性を維持するために少なくとも10%重量の水分を必要とする。吸湿性は、ある程度は、ケラチンの保水力に起因し得る。角質層は、その柔軟性及び屈曲性を失うと、粗く且つ脆くなり、乾燥した皮膚を生じる。
【0005】
表皮の真下に横たわる真皮は、1.5〜4ミリメートルの厚さである。これは、皮膚の3種の層のうちで最も厚い。さらに、真皮は、汗腺及び皮脂腺(孔(pore)と呼ばれる皮膚中の開口部、又は面ぽうを通して物質を分泌する)、毛穴、神経終末、並びに血管及びリンパ管を含めて、皮膚構造体の大部分が存在する場所でもある(Inlander, Skin, New York, NY:People's Medical Society, 1-7 (1998))。しかし、真皮の主成分は、コラーゲン及びエラスチンである。
【0006】
皮下組織は、皮膚の最下層である。皮下組織は、体温維持のための絶縁体としての役割と器官保護のための衝撃吸収材としての役割の両方を果たす(Inlander, Skin, New York, NY: People's Medical Society, 1-7 (1998))。さらに、皮下組織はまた、エネルギー備蓄のために脂肪を蓄える。皮膚のpHは、一般に5〜6である。この酸性度は、皮脂腺の分泌物に由来する両性のアミノ酸、乳酸、及び脂肪酸の存在に起因する。「酸外套(acid mantle)」という用語は、皮膚の大部分の領域に水溶性物質が存在することに関係する。皮膚の緩衝能は、一部には、皮膚の角質層で蓄積されているこれらの分泌物によるものである。
【0007】
しわは、加齢の証拠となる徴候の1つであり、環境的損傷から蓄積する生化学的、組織学的、及び生理的変化によって引き起こされ得る(Benedetto, International Journal of Dermatology, 38:641-655 (1999))。さらに、顔のしわの特徴的なひだ、溝、及び折り目を引き起こし得る他の2次因子もある(Stegman et al., The Skin of the Aging Face Cosmetic Dermatological Surgery, 2nded., St. Louis, MO: Mosby Year Book: 5-15 (1990))。これらの2次因子としては、重力の恒常的な引張り、皮膚に対する高頻度且つ恒常的な位置的圧力(即ち、就寝中)、及び顔筋の収縮によって生じる反復性の顔面運動が挙げられる(Stegman et al., The Skin of the Aging Face Cosmetic Dermatological Surgery, 2nded., St. Louis, MO: Mosby Year Book: 5-15 (1990))。加齢の徴候のうちのいくつかを潜在的に軽減するために、様々な技術が利用されている。これらの技術は、αヒドロキシ酸及びレチノールを含有する顔用保湿剤から、外科的処置及び神経毒素の注射にまで及ぶ。
【0008】
皮膚の主要機能のうちの1つは、水及び正常な恒常性に対して潜在的に有害な物質の輸送に対する障壁を提供することである。丈夫な半透性の皮膚が無ければ、身体は急速に水分を失うはずである。皮膚は、有害物質の身体への進入を防止するのに寄与する。大半の物質は、この障壁を透過することができないが、皮膚の透過性を選択的に高めるためにいくつかの戦略が開発され、いくらか成功を収めている。
【0009】
抗真菌物質などの非タンパク質の非ヌクレオチドの治療用の物質は皮膚を効率よく浸透することができないので、抗真菌物質の治療上の効果をもたらすために、現在では、抗真菌物質を皮膚中に注射し、又は全身に投与しなければならない。連邦食品医薬品局は、真菌感染症治療のためにそのような処置を承認している。このような治療では、抗真菌薬は、監視された注射又は投与方法により投与される。しかし、このような処置は有害な副作用を引き起こすことがある。抗真菌物質の局所適用では、適用に苦痛が無いという性質があり、抗真菌の治療を適用するための訓練は低減され、作用を及ぼし治療上の臨床の結果に到達するのに必要な投与量はより少なくなり、また、全身の送達に通常関連している副作用は限られているので、より安全でより望ましい処置の選択肢のための局所送達がもたらされる。
【0010】
免疫化に適する抗原物質は皮膚を効率よく浸透することができないので、免疫化に適する抗原物質の治療上の効果をもたらすために、現在では、毒素を皮膚中に注射しなければならない。連邦食品医薬品局は、例えば、マラリア、狂犬病、炭疽、結核の処置のためのこのような手順、又は、例えば、B型肝炎、ジプテリア(diptheria)、百日咳、破傷風、インフルエンザ菌b型、不活化ポリオウィルス、麻疹、流行性耳下腺炎、風疹、水痘、肺炎球菌、A型肝炎、及びインフルエンザなど、小児の免疫化に関するこのような手順を承認している。このような処置では、免疫化のための抗原物質は、モニターされた注射により投与される。しかし、このような処置には不快感があることがあり、より典型的にはある程度の苦痛を伴う。免疫化のための抗原物質の局所適用では、適用に苦痛が無いという性質があり、覆うことができる処置表面の領域が広くなり、治療を適用するための訓練は低減され、作用を及ぼし治療上の臨床の結果に到達するのに必要な投与量が少なくなるので、より安全でより望ましい処置の選択肢が提供される。
【0011】
他の治療薬の経皮投与も、例えば、患者の不快感が低減される可能性、血流中への治療薬の直接投与、並びに特別に作られた器具及び/又は制御放出製剤(controlled release formulations)と技術の使用を通して監視された送達をする機会があるため、関心の非常に高い領域である。
【特許文献1】米国仮出願第60/550014号
【非特許文献1】Inlander, Skin, New York, NY:People's Medical Society, 1-7 (1998)
【非特許文献2】Benedetto, International Journal of Dermatology, 38:641-655 (1999)
【非特許文献3】Stegman et al., The Skin of the Aging Face Cosmetic Dermatological Surgery, 2nded., St. Louis, MO: Mosby Year Book: 5-15 (1990)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、特定の部位への最大の送達を標的にし、又は画像化することができる、多様な治療用の又は化粧用の物質の組成物に広範に適用可能である新規な方法及び組成物を提供する。
【0013】
本発明は、インスリン、ボツリヌストキシン、抗体断片、及びVEGF以外のタンパク質の、好ましくは分子量が20000kD未満であるものの経皮送達のための製剤にさらに関する。タンパク質ベースのこのような物質は、例えば免疫化に適する抗原を含むことができる。本発明の別の態様は、例えばある種の抗真菌物質などの、非タンパク質の非ヌクレオチドの治療薬の経皮送達のための製剤に関する。本発明は、「治療用の」又は「生物学的に活性なタンパク質」という用語を用いる場合、インスリン、ボツリヌストキシン、VEGF、及び抗体断片を特に除外する。しかし、免疫化に適する抗原は免疫反応を増大するなど他の生物学的活性を有するので、これらは本発明の適切な態様に依然として含まれている。
【0014】
本発明は、抗真菌物質などの非タンパク質の非ヌクレオチドの治療薬の経皮送達のための製剤にさらに関する。適切な抗真菌物質には、例えば、アムホテリシンB、フルコナゾール、フルシトシン、イタコナゾール、ケトコナゾール、クロトリマゾール、エコノゾール(econozole)、グリセオフルビン、ミコナゾール、ナイスタチン、又はシクロピロクスなどが含まれる。
【0015】
本発明は、タンパク質ベースの抗原、非タンパク質の非ヌクレオチドの物質、又はこれらの混成体であることができる、免疫化に適する抗原物質の経皮送達のための製剤にさらに関する。適切な抗原には、例えば、環境物質、病原体、又は生物学的有害物質のための抗原が含まれる。適切な物質には、好ましくは、例えば、マラリア、狂犬病、炭疽、結核、又は、例えば、B型肝炎、ジプテリア、百日咳、破傷風、インフルエンザ菌b型、不活化ポリオウィルス、麻疹、流行性耳下腺炎、風疹、水痘、肺炎球菌、A型肝炎、及びインフルエンザなど小児の免疫化に関するものが含まれる。
【0016】
しかし、免疫化に適する抗原は、免疫反応を増大させるなど他の生物学的活性を有するので、これらは本発明の適切な態様に依然として含まれている。容易に皮膚を通過しないが、例えばインスリンよりも実質的に小型であり、最も好ましくは20000kD未満である物質、又は様々な生理学的性質を有する物質は、本発明のさらに別の態様により送達することができる。特に、免疫化に望ましい抗原は、本発明により注射無しで皮膚を通して輸送することができる。結果として、小児の免疫化、又は潜在的に重要な生物学的有害物質若しくは環境有害性に代わる注射の無い選択肢がもたらされる。さらに、例えば、ある種の抗真菌物質などの非タンパク質の非ヌクレオチドの治療は、例えば、特に、オンコミコシス(oncomychosis)などの真菌感染症、又は手指及び爪板の感染に対する局所の浸透が悪いことを特徴としている。
【0017】
本発明は、したがって、特に分子量が20000kD未満であるタンパク質、又は、例えば、ある種の抗真菌物質若しくは交替で免疫化のための物質などの非タンパク質の非ヌクレオチドの治療薬などの他の生物学的に活性な物質を含めた治療用及び診断用の物質を経皮送達するための局所用製剤にさらに関する。しかし、免疫化に適する抗原は、免疫反応を増大させるなど他の生物学的活性を有するので、これらは本発明の適切な態様に依然として含まれている。適切な抗真菌物質には、例えば、アムホテリシンB、フルコナゾール、フルシトシン、イタコナゾール、ケトコナゾール、クロトリマゾール、エコノゾール、グリセオフルビン、ミコナゾール、ナイスタチン、又はシクロピロクスなどが含まれる。適切な物質には、好ましくは、マラリア、狂犬病、炭疽、結核、又は、例えば、B型肝炎、ジプテリア、百日咳、破傷風、インフルエンザ菌b型、不活化ポリオウィルス、麻疹、流行性耳下腺炎、風疹、水痘、肺炎球菌、A型肝炎、及びインフルエンザなど小児の免疫化に関するものが含まれる。
【0018】
本発明は、生物学的に活性なタンパク質及び担体を有する組成物を提供する。担体は、正の電荷を持つ分枝基に結合しているポリマーの主鎖を含み、経皮送達に有効な量で存在している。担体と生物学的に活性なタンパク質との間の結合は、非共有結合性である。
【0019】
本発明の別の目的は、非タンパク質の非ヌクレオチドの生物学的に活性な物質及び担体を含む組成物を提供することである。担体は、正の電荷を持つ分枝基に結合しているポリマーの主鎖を含み、経皮送達に有効な量で存在している。担体と非タンパク質の非ヌクレオチドの生物学的に活性な作用物質との間の結合は、非共有結合性である。
【0020】
本発明のさらに別の目的は、生物学的に活性なタンパク質を対象に投与するためのキットを提供することである。キットは、生物学的に活性なタンパク質を対象の皮膚又は上皮に送達するための器具、及び正の電荷を持つ分枝基に結合しているポリマーの担体を有する組成物を含む。正の電荷を持つ分枝基は、−(gly)n1−(arg)n2、HIV−TAT及びその断片、並びにアンテナペディアPTD及びその断片から選択することができ、式中、下付文字n1は0から約20までの整数であり、下付文字n2は独立に約5から約25までの奇数の整数である。担体と生物学的に活性なタンパク質との間の結合は、非共有結合性である。
【0021】
本発明は、生物学的に活性なタンパク質を対象に投与するための方法も提供する。方法は、タンパク質を有効な量の担体と組み合わせて対象の皮膚又は上皮に局所的に適用することを含む。担体は、正の電荷を持つ分枝基に結合しているポリマーの主鎖を含む。担体と生物学的に活性なタンパク質との間の結合は、非共有結合性である。
【0022】
さらに、本発明は、非タンパク質の非ヌクレオチドの生物学的に活性な物質を対象に投与する方法を提供する。方法は、生物学的に活性な物質を有効な量の担体と組み合わせて対象の皮膚又は上皮に局所的に適用することを含む。担体は、正の電荷を持つ分枝基に結合しているポリマーの主鎖を含むことができる。担体と生物学的に活性な物質との間の結合は、非共有結合性である。
【0023】
本発明の一目的は、免疫化に適する抗原、及び担体を含む組成物を提供することである。担体は、正の電荷を持つ分枝基に結合しているポリマーの主鎖を含み、経皮送達に有効な量で存在する。担体と抗原との間の結合は、非共有結合性である。本発明の別の目的は、対象を免疫化するのに適する抗原を投与するためのキットを提供することである。キットは、免疫化に適する抗原を皮膚又は上皮に送達するための器具、及び担体との組成物を含む。担体は、−(gly)n1−(arg)n2、HIV−TAT及びその断片、並びにアンテナペディアPTDから選択される正の電荷を持つ分枝基に結合しているポリマーの主鎖を含み、式中、下付文字n1は0から約20までの整数であり、下付文字n2は独立に約5から約25までの奇数の整数である。担体と抗原との間の結合は、非共有結合性である。
【0024】
本発明のさらに別の目的は、対象を免疫化するのに適する抗原を投与する方法を提供することである。方法は、免疫化に適する抗原を有効な量の担体と組み合わせて対象の皮膚又は上皮に局所的に適用することを含む。担体は、正の電荷を持つ分枝基に結合しているポリマーの主鎖を含む。担体と抗原との間の結合は、非共有結合性である。
【0025】
本発明は、イメージング成分(imaging moieties)、及び/又は標的物質、及び担体を含む組成物も提供する。担体は、正の電荷を持つ分枝基に結合しているポリマーの主鎖を含み、経皮の送達に有効な量で存在している。担体とイメージング成分、又は標的物質との間の結合は、非共有結合性である。
【0026】
一態様では、本発明は、
a)正に帯電した主鎖と、
b)i)複数の結合されたイメージング部分を有する、負に帯電した第1の主鎖、或いは、負に帯電した複数のイメージング部分、
ii)複数の結合された標的物質を有する、負に帯電した第2の主鎖、或いは、負に帯電した複数の標的部分、
iii)非タンパク質の非ヌクレオチドの生物学的に活性な物質
iv)インスリン、ボツリヌストキシン、抗体断片、又はVEGF以外の治療用タンパク質
から選択される少なくとも1つのメンバーと
の非共有結合性複合体を含む組成物であって、
その複合体が正味の正電荷を有する組成物を提供する。
【0027】
本発明のこの態様では、生物学的作用物質は、治療物質又は薬用化粧物質でよい。本発明は、詳細には、「治療的」又は「生物学的に活性なタンパク質」という用語が使用される場合は、インスリン、ボツリヌストキシン、VEGF、及び抗体断片を除外する。しかし、免疫化に適した抗原は、免疫応答を開始するなど他の生物活性を有するため、これらは、本発明の適切な態様に含まれたままである。或いは、候補物質を用いて、これらの非共有結合性複合体のインビボでの有効性を測定することもできる。
【0028】
別の態様では、本発明は、少なくとも1つの結合した効果基を有する正の電荷を持つ主鎖の非共有結合性の複合体、及び視覚的画像物質などの分子画像のための物質を含む組成物を提供する。最も好ましくは、この適用では、この物質は、診断上の、及び/又は治療上の効果のための特殊な物質を標的にする。例えば、視覚的画像物質は、正の電荷を持つ主鎖、及び黒色腫の局所的診断を標的とするための黒色腫を標的とする構成成分と関連することができる。別の態様では、本発明は、対象の細胞表面に生物学的作用物質を送達するための方法であって、前記対象に前述の組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0029】
さらに別の態様では、本発明は、薬剤組成物又は薬用化粧組成物を調製するための方法であって、正に帯電した主鎖成分と、
i)複数の結合されたイメージング部分を有する、負に帯電した第1の主鎖、或いは、負に帯電した複数のイメージング部分、
ii)複数の結合された標的物質を有する、負に帯電した第2の主鎖、或いは、負に帯電した複数の標的部分、
iii)非タンパク質の非ヌクレオチドの生物学的に活性な物質
iv)インスリン、ボツリヌストキシン、VEGF、又は抗体断片以外の治療用タンパク質
から選択される少なくとも1つのメンバーとを、
製薬上又は薬用化粧品用に許容される担体と組み合わせて、正味の正電荷を有する非共有結合性複合体を形成させることを含む方法を提供する。
【0030】
さらに別の態様では、本発明は、薬剤送達組成物又は薬用化粧品送達組成物を調製するためのキットであって、正に帯電した主鎖成分と、上記のi)〜iv)の群から選択される少なくとも1つの成分とを、送達組成物を調製するための取扱い説明書と共に含むキットを提供する。
【0031】
さらに別の態様では、本発明は、分子量が20000kD未満のタンパク質などの生物学的に活性な物質、及び、例えば非タンパク質の非ヌクレオチドの治療薬(例えば、ある種の抗真菌物質、若しくは交替で免疫化のための物質)などの他の生物学的に活性な物質、並びに、すべて本明細書に記載する、結合した正の電荷を持つ分枝基又は「効果」基のある主鎖を有する正の電荷を持つ担体を含む担体を含む組成物に関する。
【0032】
生物学的に活性な物質は、タンパク質ベースの(例えば、分子量20000kD未満のタンパク質)、非タンパク質の、非ヌクレオチドの治療薬(例えば、ある種の抗真菌物質)、又は免疫化のための抗原であることができる。適切な抗真菌薬としては、例えば、アムホテリシンB、フルコナゾール、フルシトシン、イトラコナゾール、ケトコナゾール、クロトリマゾール、エコノゾール、グリセオフルビン、ミコナゾール、ナイスタチン、又はシクロピロクスなどが挙げられる。本明細書で用いるように、免疫化に適する抗原物質は、血中グルコースレベルを治療的に変化させないタンパク質ベースの抗原、非タンパク質の非ヌクレオチドの物質又はその混成体であることができる。したがって、含まれる物質は、それ自体が免疫化に適する抗原である。適切な抗原には、例えば、環境物質、病原体、又は生物学的有害物質のための抗原が含まれる。適切な抗原の他の例には、マラリア、狂犬病、炭疽、結核に対する免疫化に用いることができるもの、又は、例えば、B型肝炎、ジプテリア、百日咳、破傷風、インフルエンザ菌b型、不活化ポリオウィルス、麻疹、流行性耳下腺炎、風疹、水痘、肺炎球菌、A型肝炎、及びインフルエンザなど小児の免疫化に関するものが含まれる。
【0033】
最も好ましくは、正に帯電した担体は、比較的短鎖又は中鎖の正に帯電したポリペプチド、又は正に帯電した非ペプチジルポリマー、例えばポリアルキレンイミンである。通常は、[本発明の同じ作用物質と担体との複合体に比べて認め得るほどに]皮膚又は上皮を通過することができず、血中グルコースの低下に対して治療効果を持たないタンパク質及び非タンパク質、非ヌクレオチド治療薬は、大きく異なる表面及び生理化学的諸特性を有しており、そのため、通常は、例えばインスリンの経皮送達を可能にする技術が、タンパク質及び非タンパク質治療薬に対して適用できるどうかは不確かになっている。しかし、本明細書で記述するように、正に帯電した分枝基を有する正に帯電した主鎖を有する本発明の担体は、実に驚くべきことに、タンパク質及び非タンパク質治療薬の経皮送達を実現することができる。
【0034】
個々のタンパク質の経皮送達に適した個々の担体は、実施例で説明するもののような試験によって、容易に特定することができる。このようなタンパク質は、例えば、20,000kD未満の分子量を有する小型タンパク質でよい。本明細書においては、血中グルコースの文脈における「治療」という単語は、例えば糖尿病患者において、高血糖症の急性の症状又は徴候を軽減するのに十分な血中グルコースレベルの低下を意味する。
【0035】
本発明は、正の電荷を持つポリペプチド、又は、長鎖ポリアルキレンイミンなどの正の電荷を持つ非ペプチジルのポリマー(この場合、ポリペプチド又は非ペプチジルのポリマーは、本明細書で定義する正の電荷を持つ分枝基又は「効果」基を有する)を含む担体を、例えば、分子量が20000kD未満であるタンパク質などの生物学的に活性な物質と結合させることを含む、薬剤上の、又は化粧上の組成物を調製するための方法も提供する。或いは、担体は、例えば、非タンパク質の非ヌクレオチドの治療用の物質(例えば、ある種の抗真菌物質)などの他の生物学的に活性な物質、又は代わりに免疫化のための物質と組み合わせることができる。
【0036】
本発明はまた、担体及び治療物質を含む組成物を調製又は配合するためのキット、並びに、使用可能な調製物を作製するのに必要な追加品目、又はそのような調製物を作製するのに次いで使用することができるプレミックスも提供する。このようなキットは、本発明の方法による組成物又はその成分を適用するための、アプリケーター又は他の器具からなってよい。本明細書で使用する「器具(device)」は、例えば、本発明の方法による組成物を送達し、混合し、又はさもなければ調製するのに適する器具、又は塗布器具を言うことができる。
【0037】
本発明は、本明細書に定義する正の電荷を持つ分枝基又は「効果(efficiency)」基を有する、好ましくは短鎖から中程度の鎖長、若しくは別の長鎖の非ペプチジルのポリマー担体である正の電荷を持つポリペプチドを含む担体を含む組成物中に含まれている生物学的に活性な物質の経皮輸送のための器具も提供する。このような器具は、皮膚パッチと同じくらい構造が単純なものでもよく、又は、組成物の投与及び投与の観察をするための手段、また、場合によっては、投与された物質に対する対象の反応を観察することを含めて、1つ又は複数の態様において対象の状態を観察するための手段を含んでいてもよい、より複雑な器具でもよい。
【0038】
本発明の別の態様では、器具は、治療用の、生物学的に活性な物質、及び皮膚に別々に適用することができる担体だけを含むことができる。したがって、本発明は、皮膚を介して投与するための器具と正に帯電した担体又は主鎖を含む物質の双方を含み、対象の皮膚又は上皮に適用するのに適したキットも含む。
【0039】
一般に、本発明は、本明細書で説明するように、有効量の生物学的に活性な作用物質を正に帯電したポリペプチド、又は正に帯電した分枝基を有するポリアルキレンイミンなど非ポリペプチジルポリマーと組み合わせて局所投与することを含む、生物学的に活性な作用物質を投与する方法も含む。
【0040】
「組み合わせて」とは、2種の成分が、組み合わせた方法で投与されることを意味する。この方法は、それらを1つの組成物中で混合し、次いでそれを対象に投与するものでもよく、或いは、別々ではあるが、それらが共に作用して、有効量の生物学的に活性な作用物質の必要な送達が実現するような様式でそれらを投与するものでもよい。例えば、正に帯電した担体を含有する組成物を最初に対象の皮膚に適用し、続いて、生物学的に活性な作用物質を含有する皮膚パッチ又は他の器具を適用してもよい。
【0041】
本発明は、生物学的に活性な作用物質を、皮膚の上皮細胞以外のもの、例えば、眼上皮細胞又は胃腸管系の細胞を含めて、上皮細胞に適用する方法にも関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
本発明は、イメージング物質又は他の治療物質を選択的且つ持続的に送達するための成分ベースの系を提供する。組成物の個々の特徴は、臨床用の(bedside)製剤において望ましい成分を指定することによって、選択することができる。さらに、一態様では、イメージング部分及び特異的な標的部分は、正に帯電した主鎖と非共有結合性(好ましくは、イオン結合型)複合体を形成する、負に帯電した別々の主鎖上で提供される。これらの構成成分を複合体に非共有結合性に配置することにより、複雑さ及び損失を増大させ、また立体的制約により成功の組合せがまだ報告されていないレベルに効率を低下させる他の戦略とは対照的に、本発明は構成成分を正の主鎖上の正確な場所に結合させる必要をなくしている。本発明の別の態様では、負に帯電した主鎖を含めることを必要とせずに、正に帯電したいくつかの担体を単独で使用することによって、いくつかの物質を経皮的に送達することができる。これらの事例では、その物質又はその誘導体は、本発明の担体と非共有結合的に、好ましくはイオン結合的に結合するのに十分な機能性を有する。この文脈における「十分な」という用語は、例えば、それらの成分単独に対する粒子測定又は機能的分光測定の変化によって測定することができる結合を意味する。
【0043】
図1を参照すると、本発明がさらによく理解される。この図では、組成物は(1)正の電荷を持つ基に結合している固体の主鎖(暗色のバーに結合している暗色の丸で示されている効果基とも呼ばれる)、例えば(Gly)n1−(Arg)n2(式中、下付文字n1は3から約5までの整数であり、下付文字n2は約7から約17までの奇数の整数である)又はTATドメイン、(2)イメージング成分(明色のバーに結合している白抜きの三角)、(3)標的物質、及び/又は(4)インスリン、ボツリヌストキシン、VEGF、及び抗体断片以外の非タンパク質の非ヌクレオチドの治療薬、又はタンパク質ベースの治療物質などの生物学的に活性な物質(明色のバーに結合している白抜きの丸)で表されている。図2は、多成分の組成物の様々な例を例示しており、基は図1で述べたように表されている。例えば、図2では、正に帯電した主鎖が、イメージング成分、標的成分、治療薬を結合している、第1の多成分系組成物が例示されている。診断時/予後の画像化のために設計された第2の多成分系組成物が例示される。この組成物では、正の電荷を有する主鎖は、視覚的画像構成成分及び標的構成成分の両者と複合し、例えば、黒色腫を認識して局所の黒色腫の検出プラットフォームを作り出している。本発明は、以下により詳細に説明されるが、治療及び診断プログラムにおいて有用ないくつかの追加の組成物を提供する。
【0044】
組成物
本明細書で用いる「生物学的に活性な物質」は、疾患を治し、又は健康に関連する問題(自覚的に評価される、且つ/又は化粧用である、健康に関連する問題を含む)を軽減する治療用の物質を意味する。例えば、生物学的に活性な物質は治療用のタンパク質であることができ、ある実施形態では、好ましくは分子量が20000kD未満であるタンパク質である。しかし、本発明は、「治療用の」又は「生物学的に活性なタンパク質」の語を用いる場合は、インスリン、ボツリヌストキシン、VEGF、及び抗体断片を特に除外することに注意されたい。しかし、免疫化に適する抗原は、免疫反応を増強するなど他の生物学的な活性を有するので、これらは本発明の適切な態様に依然として含まれている。本発明の他の実施形態では、生物学的に活性な物質は、非タンパク質の非ヌクレオチドの物質(例えば、ある種の抗真菌物質)であることができる。他の適切な生物学的に活性な物質の非限定的な例は、本明細書で論じたように提供される。
【0045】
本発明のすべての態様では、本明細書に記載する担体と生物学的に活性な物質との間の結合は、非共有結合性の相互作用によるものであり、例えば、イオン性の相互作用、水素結合、ファンデルファールス力、又はそれらの組合せを含むことができる。
【0046】
ある実施形態では、本発明は、
a)正に帯電した主鎖と、
b)i)複数の結合されたイメージング部分を有する、負に帯電した第1の主鎖、又は負に帯電した複数のイメージング部分、
ii)複数の結合された標的物質を有する、負に帯電した第2の主鎖、又は負に帯電した複数の標的部分、
iii)非タンパク質の非ヌクレオチドの生物学的に活性な物質
iv)インスリン、ボツリヌストキシン、VEGF、又は抗体断片以外の治療用タンパク質
複合体が正味の正の電荷を有する
から選択される少なくとも1つのメンバーとの
非共有結合性複合体を含む組成物であって、
その複合体が正味の正電荷を有する組成物を提供する。実施形態の1つの群では、組成物は、i)〜iv)の群から選択される少なくとも2つのメンバーを含む。実施形態の別の群では、組成物は、i)及びii)の各群から少なくとも1つのメンバー、及びiii)又はiv)からの1つのメンバーを含む。好ましくは、正に帯電した主鎖は、群b)からのメンバーを合わせた長さの約1〜4倍の長さを有する。或いは、正に帯電した主鎖は、群b)からのメンバーを合わせた電荷の約1〜4倍の電荷比を有する。いくつかの実施形態では、電荷密度は均一であり、長さ及び電荷の比は、ほぼ同じである。サイズ対サイズ(長さ)の比は、成分の分子調査に基づいて決定することができ、又は、成分の質量から決定することができる。
【0047】
「正に帯電した」とは、その担体が、少なくともいくつかの液相条件下で、より好ましくは少なくとも、いくつかの生理学的に適合する条件下で正電荷を有することを意味する。より詳細には、本明細書で使用する「正に帯電した」とは、問題の基が、第4級アミンなど、すべてのpH条件下で帯電している官能基を含むこと、又は、第1級アミンの場合のpH変化など特定の液相条件下で正電荷を獲得することができる官能基を含むことを意味する。より好ましくは、本明細書で使用する「正に帯電した」とは、生理学的に適合する条件の間に、陰イオンと結合する挙動を起こす機能性を意味する。当業者には明らかであるように、正に帯電した部分を多数有するポリマーが、ホモポリマーである必要はない。当業者には明らかであるように、正に帯電した部分の他の例は従来技術で周知であり、容易に使用することができる。本発明で説明する、それ自体は治療活性を有さない正に帯電した担体は、例えば、本明細書で説明する組成物及び方法において有用である新規な化合物を表わす。したがって、本発明の別の態様では、本発明者らは、本明細書で説明するような結合された正に帯電した分枝基を有する正に帯電した主鎖を含み、それ自体は治療的な生物活性を有していない任意の担体を含む、これらの新規な化合物を詳述する。本発明は、詳細には、「治療的」又は「生物学的に活性なタンパク質」という用語が使用される場合は、抗体断片を除外する。しかし、免疫化に適した抗原は、免疫応答を開始するなど他の生物活性を有するため、これらは、本発明の適切な態様に含まれたままである。
【0048】
別の実施形態では、本発明は、生物学的に活性な作用物質と、正に帯電した主鎖を含む担体とを含む組成物を提供する。生物学的に活性な物質は、例えば、タンパク質(特に、分子量が20000kD未満のもの)、非タンパク質の非ヌクレオチドの治療薬(ある種の抗真菌物質など)、又は免疫化のための物質であることができる。担体は、例えば、正の電荷を持つポリペプチド又は非ペプチジルのポリマーであることができ、ポリアルキレンイミンなどの、ヘテロポリマー又はホモポリマーのいずれかであることができる。ポリペプチド又は非ペプチジルのポリマーは、正の電荷を持つ分枝基、又は本明細書で定義する「効果」基を有することができる。タンパク質ベースの治療薬及び非ヌクレオチド非タンパク質系治療薬はそれぞれ、複合体全体の特徴を変える、異なる生理化学特性を有する。正に帯電した主鎖として後述する物質のうちに、このような正に帯電した担体がある。
【0049】
本発明はまた、治療有効量の生物学的に活性な作用物質を投与するための方法であって、対象(ヒトでも他の哺乳動物でもよい)の皮膚又は上皮に、その生物学的に活性な作用物質と、タンパク質の対象への経皮送達を実現するのに有効な量の、分枝基を有する正に帯電した主鎖とを適用することを含む方法も提供する。この方法では、タンパク質及び正に帯電した担体は、予め混合した組成物として適用してもよく、或いは、別々に皮膚又は上皮に適用してもよい。例えば、作用物質は皮膚パッチ又は他の器具中に存在してよく、担体は、液体、又は皮膚パッチを貼付する前に皮膚に適用される他のタイプの組成物中に含有されてもよい。
【0050】
正に帯電した主鎖(positively charged backbone)
正に帯電した主鎖(正に帯電した「担体」とも呼ぶ)は、典型的には、原子の直鎖であり、生理的pHで正電荷を有する基を鎖中に含み、又は、主鎖から伸びた側鎖に結合された、正電荷を有する基を含む。好ましくは、正に帯電した主鎖それ自体は、所定の酵素活性又は治療用生物活性を有していないと考えられる。直鎖状の主鎖は、炭化水素主鎖であり、いくつかの実施形態では、窒素、酸素、硫黄、ケイ素、及びリンから選択されるヘテロ原子が割り込んでいる。主鎖の原子の大半は、通常は、炭素である。さらに、主鎖は、しばしば、繰り返し単位(例えば、アミノ酸、ポリ(エチレンオキシ)、ポリ(プロピレンアミン)、ポリアルキレンイミンなど)のポリマーであるが、ヘテロポリマーであってもよい。実施形態の1つの群では、正に帯電した主鎖は、いくつかのアミン窒素原子が、正電荷を有するアンモニウム基(4置換型)として存在するポリプロピレンアミンである。別の実施形態では、正に帯電した主鎖は、ポリアルキレンイミン、例えばポリエチレンイミン又はポリプロピレンイミンなど、約10,000〜約2,500,000、好ましくは約100,000〜約1,800,000、最も好ましくは約500,000〜1,400,000の分子量を有する、ヘテロポリマーでもホモポリマーでもよい非ペプチジルポリマーである。実施形態の別の群では、主鎖は、正に帯電した基(例えば、アンモニウム基、ピリジニウム基、ホスホニウム基、スルホニウム基、グアニジウム基、アミジニウム基)を含む複数の側鎖部分を結合している。実施形態のこの群における側鎖部分は、主鎖に沿って、距離が一定又は様々である間隔で配置されていてよい。さらに、側鎖の長さは類似していても異なっていてもよい。例えば、実施形態の1つの群では、側鎖は、1〜20個の炭素原子を有し、前述の正に帯電した基のうちの1つの(主鎖から離れた)末端で終わっている、直鎖状又は分枝状の炭化水素鎖でよい。本発明のすべての態様において、担体と生物学的に活性な作用物質との結合は、非共有結合性の相互作用によるものであり、その非限定例としては、イオン性相互作用、水素結合、ファンデルワールス力、又はそれらの組合せを挙げることができる。
【0051】
実施形態の1つの群では、正に帯電した主鎖は、正に帯電した複数の側鎖基(例えば、リジン、アルギニン、オルニチン、ホモアルギニンなど)を有するポリペプチドである。好ましくは、このポリペプチドは、約10,000〜約1,500,000、より好ましくは約25,000〜約1,200,000、最も好ましくは約100,000〜約1,000,000の分子量を有する。本発明のこの部分でアミノ酸が使用される場合、側鎖は、結合の中心においてD又はL型(立体配置R又はS)を形成してよいことが当業者には理解されよう。或いは、主鎖は、ペプトイドなどポリペプチドの類似体でもよい。例えば、Kessler, Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 32:543 (1993); Zuckermann et al. Chemtracts-Macromol. Chem. 4:80 (1992);及びSimon et al. Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 89:9367 (1992)を参照されたい。手短に言えば、ペプトイドは、α炭素原子ではなく主鎖の窒素原子に側鎖が結合されているポリグリシンである。前述したように、側鎖の一部分は、通常、正に帯電した基で終結し、正に帯電した主鎖成分を構成すると考えられる。ペプトイドの合成は、例えば、米国特許第5877278号で記述されている。この用語を本明細書で使用する場合、ペプトイド主鎖構造を有する正に帯電した主鎖は、α炭素位置に天然に存在する側鎖を持つアミノ酸から構成されていないため、「非ペプチド」とみなされる。
【0052】
例えば、ペプチドのアミド結合が、チオアミド(−CSNH−)、逆向きのチオアミド(−NHCS−)、アミノメチレン(−NHCH2−)若しくは逆向きのメチレンアミノ(−CH2NH−)基、ケト−メチレン(−COCH2−)基、ホスフィナート(−PO2RCH2−)、ホスホンアミダート及びホスホンアミド酸エステル(−PO2RNH−)、逆向きのペプチド(−NHCO−)、トランス−アルケン(−CR=CH−)、フルオロアルケン(−CF=CH−)、ジメチレン(−CH2CH2−)、チオエーテル(−CH2S−)、ヒドロキシエチレン(−CH(OH)CH2−)、メチレンオキシ(−CH2O−)、テトラゾール(CN4)、スルホンアミド(−SO2NH−)、メチレンスルホンアミド(−CHRSO2NH−)、逆向きのスルホンアミド(−NHSO2−)などの代用物によって置換されている、ポリペプチドの立体的又は電気的模倣物、並びに、例えば、Fletcher他((1998) Chem. Rev. 98:763)に総説があり、また、その中で引用されている参考文献によって詳述されている、マロン酸及び/又はgem−ジアミノ−アルキルサブユニットを有する主鎖を用いる、他の様々な主鎖を使用することができる。前述した置換の多くは、αアミノ酸から形成された主鎖に対してほぼ等配電子のポリマー主鎖を生じる。
【0053】
上記に提供した各主鎖に、正に帯電した基を有する側鎖基を結合させることができる。例えば、スルホンアミド結合の主鎖(−SO2NH−及び−NHSO2−)は、窒素原子に結合された側鎖基を有することができる。同様に、ヒドロキシエチレン(−CH(OH)CH2−)結合は、ヒドロキシ置換基に結合された側鎖基を有することができる。当業者なら、標準の合成法によって、正に帯電した側鎖基を与えるように、他の結合化学反応を容易に適合させることができる。
【0054】
特に好ましい実施形態では、正に帯電した主鎖は、−(gly)n1−(arg)n2、HIV−TAT若しくはその断片、又はアンテナペディアのタンパク質形質導入ドメイン、又はその断片(式中、下付き文字n1は、0〜20、より好ましくは0〜8、さらにより好ましくは2〜5の整数であり、下付き文字n2は、独立に、約5〜約25、より好ましくは約7〜約17、最も好ましくは約7〜約13の奇数である)を含む分枝基(効率基とも呼ぶ)を有するポリペプチドである。HIV−TAT断片が、式(gly)p−RGRDDRRQRRR−(gly)q、(gly)p−YGRKKRRQRRR(gly)q、又は(gly)p−RKKRRQRRR−(gly)q(下付き文字p及びqは、それぞれ独立に、0〜20の整数である)を有し、この断片が、その断片のC末端又はN末端を介して主鎖に結合しているような実施形態が、さらにより好ましい。好ましいHIV−TAT断片は、下付き文字p及びqがそれぞれ独立に、0〜8、より好ましくは2〜5の整数であるものである。別の好ましい実施形態では、正に帯電した側鎖又は分枝基は、アンテナペディア(Antp)タンパク質形質導入ドメイン(PTD)、又は活性を保持しているその断片である。好ましくは、正に帯電した担体は、側鎖の正に帯電した分枝基を、担体の全重量に対するパーセンテージとして、少なくとも約0.05%、好ましくは約0.05〜45重量%、最も好ましくは約0.1〜約30重量%の量で含む。式−(gly)n1−(arg)n2を有する正に帯電した分枝基の場合、最も好ましい量は、約0.1〜約25%である。
【0055】
別の特に好ましい実施形態では、主鎖部分はポリリジンであり、正に帯電した分枝基は、リジン側鎖のアミノ基に結合している。この特に好ましい実施形態で使用されるポリリジンは、約10,000〜約1,500,000、好ましくは約25,000〜約1,200,000、最も好ましくは約100,000〜1,000,000の分子量を有する。これは、例えば、分子量が70,000より大きいポリリジン、分子量70,000〜150,000のポリリジン、分子量150,000〜300,000のポリリジン、及び分子量が300,000より大きいポリリジンなど、市販されている(Sigma Chemical Company社製、セントルイス(St. Louis)、ミズーリ州、米国)ポリリジンのうちの任意のものでよい。適切なポリリジンの選択は、組成物の残りの成分に応じて変わると考えられ、組成物に全体として正味の正電荷を与え、負に帯電した成分を合わせた長さの好ましくは1〜4倍の長さを与えるのに十分と考えられる。好ましい正に帯電した分枝基又は効率基としては、例えば、−gly−gly−gly−arg−arg−arg−arg−arg−arg−arg(−Gly3Arg7)又はHIV−TATが挙げられる。別の好ましい実施形態では、正に帯電した主鎖は、ポリエチレンイミン、例えば分子量が約1,000,000のものなどの長鎖ポリアルキレンイミンである。
【0056】
前述の分枝基を有する、ポリペプチド又はポリアルキレンイミンなどの非ペプチジルポリマーを含む、正に帯電した主鎖又は担体分子は、新規な化合物であり、本発明の一態様を構成する。
【0057】
本発明の一実施形態では、正に帯電した分枝基を有する正に帯電した担体のみが、活性物質(例えば、生物学的に活性な作用物質又はイメージング/標的物質)を経皮送達するのに必要である。この事例の一実施形態では、正に帯電した担体は、前述したように、正に帯電した複数の側鎖基を有するポリペプチド(例えば、リジン、アルギニン、オルニチン、ホモアルギニンなど)である。好ましくは、ポリペプチドの分子量は、少なくとも約10,000である。別の実施形態では、正に帯電した担体は、少なくとも約100,000の分子量を有する正に帯電した複数の側鎖基を有する、ポリアルキレンイミンなどの非ペプチジルポリマーである。このようなポリアルキレンイミンとしては、ポリエチレンイミン及びポリプロピレンイミンが挙げられる。いずれの場合も、経皮送達のために唯一必要な作用物質として使用するために、正に帯電した担体分子は、−(gly)n1−(arg)n2(式中、下付き文字n1は、0〜20、より好ましくは0〜8、さらにより好ましくは2〜5の整数であり、下付き文字n2は、独立に、約5〜約25、より好ましくは約7〜約17、最も好ましくは約7〜約13の奇数である)、HIV−TAT若しくはその断片、又はアンテナペディアPTD若しくはその断片を含む、正に帯電した分枝基又は効率基を含む。好ましくは、側鎖又は分枝基は、前述した一般式−(gly)n1−(arg)n2を有する。他の好ましい実施形態は、分枝基又は効率基が、式(gly)p−RGRDDRRQRRR−(gly)q、(gly)p−YGRKKRRQRRR(gly)q、又は(gly)p−RKKRRQRRR−(gly)q(下付き文字p及びqは、それぞれ独立に、0〜20の整数である)を有するHIV−TAT断片であり、この断片が、その断片のC末端又はN末端を介して担体分子に結合しているような実施形態である。側鎖分枝基は、結合の中心においてD又はL型(立体配置R又はS)を形成してよい。好ましいHIV−TAT断片は、下付き文字p及びqがそれぞれ独立に、0〜8、より好ましくは2〜5の整数であるものである。他の好ましい実施形態は、分枝基がアンテナペディアPTD基、又はその基の活性を保持しているその断片であるものである。これらは、例えば、Console et al., J.Biol. Chem. 278:35109 (2003)により、当技術分野では公知である。
【0058】
特に好ましい実施形態では、担体はポリリジンであり、正に帯電した分枝基は、リジン側鎖のアミノ基に結合している。この特に好ましい実施形態で使用されるポリリジンは、例えば、分子量が70,000より大きいポリリジン、分子量70,000〜150,000のポリリジン、分子量150,000〜300,000のポリリジン、及び分子量が300,000より大きいポリリジンなど、市販されている(例えば、Sigma Chemical Company社製、セントルイス、ミズーリ州、米国)ポリリジンのうちの任意のものでよい。しかし、好ましくは、ポリリジンの分子量は、少なくとも約10,000である。好ましい正に帯電した分枝基又は効率基としては、例えば、−gly−gly−gly−arg−arg−arg−arg−arg−arg−arg(−Gly3Arg7)、HIV−TAT又はその断片、及びアンテナペディアPTD又はその断片が挙げられる。
【0059】
他の成分
正に帯電した主鎖成分に加えて、本発明の多成分系組成物は、以下のもの、即ち、
i)複数の結合されたイメージング部分を有する、負に帯電した第1の主鎖、又は負に帯電した複数のイメージング部分、
ii)複数の結合された標的物質を有する、負に帯電した第2の主鎖、又は負に帯電した複数の標的部分、
iii)非タンパク質の非ヌクレオチドの生物学的に活性な物質
iv)インスリン、ボツリヌストキシン、VEGF、又は抗体断片以外の治療用タンパク質
からの少なくとも2つの成分を含む。
【0060】
本明細書で説明するように、本発明のいくつかの実施形態又は組成物における関連した態様では、いくつかのタイプの物質の経皮送達を実現するために、正に帯電した主鎖又は担体を単独で使用してもよい。例えば、抗真菌物質などの非ヌクレオチドの非タンパク質の治療、又はインスリン、ボツリヌストキシン、VEGF、及び抗体断片以外のタンパク質(特に分子量が20000kD未満のもの)、並びに免疫化に適する抗原物質の組合せなどの、本明細書に記載する生物学的に活性な物質の組合せを、これらの組成物に使用することもできる。本発明の関連のある一態様では、ある実施形態又はある組成物は、磁気共鳴映像又は視覚的画像に適する物質などの画像物質を含む。これらの実施形態又は組成物は、例えば、黒色腫に対する視覚的画像物質の局所送達を提供することができる。
【0061】
負に帯電した主鎖は、イメージング部分、標的部分、及び治療物質を担うために使用される場合、生理的pHで負電荷を持つ複数の基を有する(前述したものに類似した)様々な主鎖でよい。或いは、当業者には容易に明らかとなるように、表面の負に帯電した部分を十分に有するイメージング部分、標的部分、及び治療物質は、正に帯電した主鎖とのイオン性複合体形成のために付加的な主鎖の結合を必要としない。この文脈における「十分」とは、適切な密度の負に帯電した基が、イメージング部分、標的部分、又は治療物質の表面上に存在して、正に帯電した前述の主鎖とのイオン性引力を生じることを意味する。これらの事例では、その物質又はその誘導体は、本発明の正に帯電した担体と非共有結合的に結合するのに十分な負電荷を有する。或いは、当業者には明らかであるが、他の電荷の無い部分を、本発明の担体の主鎖との非イオン性の、非共有結合性の結合を提供する十分な密度で使用することができる。イオン性又は非イオン性非共有結合性相互作用における「十分な」という用語は、例えば、それらの成分単独に対する粒子測定又は機能的分光測定の変化によって決定することができる。負に帯電した適切な基は、カルボン酸、ホスフィン酸、ホスホン酸若しくはリン酸、スルフィン酸若しくはスルホン酸などである。別の実施形態では、負に帯電した主鎖は、オリゴ糖(例えば、デキストラン)である。さらに別の実施形態では、負に帯電した主鎖は、ポリペプチド(例えば、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、又はグルタミン酸若しくはアスパラギン酸残基に非荷電アミノ酸が割り込んでいるポリペプチド)である。以下により詳細に説明する部分(イメージング部分、標的物質、及び治療物質)は、通常は、エステル結合を介して、これらのペンダント基を有する主鎖に結合することができる。或いは、負に帯電したアミノ酸に割り込み、又は負に帯電した主鎖の末端に結合するアミノ酸を用いて、例えば、ジスルフィド結合(システイン残基による)、アミド結合、エーテル結合(セリン又はトレオニンのヒドロキシル基による)などを介して、イメージング部分及び標的部分を結合することができる。
【0062】
負に帯電したポリマーが無い場合、イメージング部分及び標的部分それら自体が小型の陰イオンでもよい。当業者には容易に明らかとなるように、正に帯電した主鎖とのイオン性複合体形成のために表面に負に帯電した部分を十分に生じるように、イメージング部分、標的部分、及び治療物質それら自体を共有結合的に修飾することもできる。これらの双方の事例において、その物質又はその誘導体は、本発明の正に帯電した担体と非共有結合的に結合するのに十分な負電荷を有する。この文脈における「十分な」という用語は、例えば、それらの成分単独に対する粒子測定又は機能的分光測定の変化によって測定することができる結合を意味する。
【0063】
イメージング部分
様々な診断用部分又はイメージング部分が本発明において有用であり、診断又は画像化される状態、投与経路、作用物質の感光度、作用物質の検出に使用される器具などに応じて変わると考えられる有効量で存在する。
【0064】
適切なイメージング物質又は診断用物質の例としては、放射線不透過性の造影剤、常磁性造影剤、超常磁性造影剤、光学的イメージング部分、CT造影剤、及び他の造影剤が挙げられる。例えば、放射線不透過性造影剤(X線撮像用)としては、無機及び有機のヨウ素化合物(例えば、ジアトリゾ酸)、放射線不透過性の金属及びそれらの塩(例えば、銀、金、白金など)、並びに他の放射線不透過性化合物(例えば、カルシウム塩、硫酸バリウムなどのバリウム塩、タンタル及び酸化タンタル)が挙げられる。適切な常磁性造影剤(MR撮像用)としては、ガドリニウムジエチレントリアミン五酢酸(Gd−DTPA)及びその誘導体、並びに、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N’,N’’,N’’’−四酢酸(DOTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N’,N’’−三酢酸(DO3A)、1,4,7−トリアザシクロノナン−N,N’,N’’−三酢酸(NOTA)、1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン−N,N’,N’’,N’’’−四酢酸(TETA)、ヒドロキシベンジルエチレンジアミン二酢酸(HBED)などとの複合体を含めて、他のガドリニウム、マンガン、鉄、ジスプロシウム、銅、ユウロピウム、エルビウム、クロム、ニッケル、及びコバルト複合体が挙げられる。適切な超常磁性造影剤(MR撮像用)としては、磁鉄鉱、超常磁性酸化鉄、単結晶の酸化鉄、特に、負に帯電した主鎖に結合できるこれらの各作用物質の複合した形態が挙げられる。さらに別の適切なイメージング物質は、ヨウ化及び非ヨウ化並びにイオン性及び非イオン性CT造影剤を含むCT造影剤、並びにスピン標識や他の診断上有効な物質などの造影剤である。適切な光学的イメージング物質としては、例えば、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、Cy7.5、オレゴングリーン488、オレゴングリーン500、オレゴン、グリーン514、緑色蛍光タンパク質、6−FAM、テキサスレッド、Hex、TET、及びHAMRAが挙げられる。
【0065】
診断用物質の他の例としては、マーカーが挙げられる。放射性核種、蛍光体(fluor)、酵素、酵素基質、酵素補助因子、酵素阻害因子、リガンド(特にハプテン)など多種多様の標識を使用することができる。さらに別の有用な物質は、99mTcグルコへプトン酸など放射性の化学種又は成分で標識されたものである。
【0066】
負に帯電した主鎖にイメージング部分を結合させるための選択は、様々な条件に応じて変わると考えられる。いくつかのイメージング物質は、生理的pHで中性であり、好ましくは、負に帯電した主鎖に結合され、又は、正に帯電した担体との複合体を形成するのに十分な上記の負に帯電した部分を含むように共有結合的に修飾される。他のイメージング物質は、負に帯電した主鎖が無い場合でも、正に帯電した担体との複合体を形成するのに十分な負電荷を有する。これらの事例では、その物質又はその誘導体は、本発明の正に帯電した担体と非共有結合的に結合するのに十分な負電荷を有する。この文脈における「十分な」という用語は、例えば、それらの成分単独に対する粒子測定又は機能的分光測定の変化によって測定することができる結合を意味する。このような負に帯電したイメージング部分の例としては、磁気共鳴画像法に有用なリン酸イオンが挙げられる。
【0067】
標的物質
様々な標的物質が、本明細書で説明する組成物において有用である。通常、標的物質は、上記のイメージング部分に関して説明した負に帯電した主鎖に結合されている。標的物質は、治療物質、又は組成物の他の成分を特定の部位に向けること、或いは標的物質を含まない複合体の向性に比べて、その複合体の向性を変えることを可能にする任意の成分でよい。標的物質は、細胞外標的物質でもよい。このような作用物質は、特定の細胞区画(例えばミトコンドリア、核など)に治療物質を誘導することを可能にする、細胞内標的物質でもよい。作用物質は、最も単純には、正味電荷分布を変えることによって、複合体の向性を、より陰性度の高い細胞表面及び細胞外マトリクス成分から、より多様な細胞へ、さらには詳細には最も陰性の高い表面から離れるように変える、小型の陰イオンでよい。
【0068】
標的物質又は作用物質は、好ましくは、共有結合的に又は非共有結合的に、本発明による負に帯電した主鎖に結合している。本発明の好ましい態様によれば、標的物質は、好ましくは連結基を介して、負に帯電した主鎖成分としての機能を果たすポリアスパラギン酸、硫酸化又はリン酸化デキストランなどに共有結合している。実施形態の1つの群では、標的物質は、細胞トランスフェクションを促進するため(即ち、組成物若しくはその多様な成分が膜を通って通過するのを促進するため、又は、エンドソームから出て行くのを助けるため、若しくは核膜を通過するため)の膜融合ペプチドである。標的物質は、例えば、糖、トランスフェリン、又はアシアロ−オロソムコイドタンパク質など、細胞型の表面に存在する受容体に対する細胞受容体リガンドでもよい。
【0069】
他の有用な標的物質としては、糖、ペプチド、ホルモン、ビタミン、サイトカイン、小型の陰イオン、脂質、又はこれらの成分に由来し、それらの対応する受容体との特異的な結合を可能にする配列若しくは断片が挙げられる。好ましくは、標的物質は、糖及び/又はペプチド、細胞受容体リガンド又はその断片、受容体又は受容体断片などである。より好ましくは、標的物質は、増殖因子受容体、サイトカイン受容体、又は細胞レクチン受容体若しくは接着タンパク質受容体のリガンドである。標的物質は、アシアロ糖タンパク質受容体などのレクチンを標的とすることを可能にする糖でもよい。
【0070】
さらに別の実施形態では、負に帯電した主鎖の不在下で標的物質を使用する。実施形態のこの群では、標的物質は、前述の正に帯電した担体とのイオン性複合体を形成するのに十分な負に帯電した部分を有する。これらの事例では、その物質又はその誘導体は、本発明の正に帯電した担体と非共有結合的に結合するのに十分な負電荷を有する。この文脈における「十分な」という用語は、例えば、それらの成分単独に対する粒子測定又は機能的分光測定の変化によって測定することができる結合を意味する。実施形態のこの群に適した、負に帯電した標的物質は、生理的pHで正味の負電荷を持つタンパク質ベースの標的物質、並びに、例えば、標的とされる細胞の正味の表面電荷に基づいて標的を変えることができる、小型のポリアニオン(例えば、リン酸、アスパラギン酸、及びクエン酸)など、特定の細胞表面への接着を促進することができる標的物質である。
【0071】
生物学的に活性な作用物質
治療物質及び薬用化粧物質の双方を含めて、様々な生物学的に活性な作用物質が本発明において有用であり、予防的に又は別の方法で治療される状態、投与経路、作用物質の有効性、並びに患者の大きさ及び治療計画に対する感受性に応じて変わると考えられる有効量で存在する。
【0072】
先に記載したように、本発明は、「治療用の」又は「生物学的に活性なタンパク質」の語を使用する場合は、ボツリヌストキシン、VEGF、及び抗体断片を特に除外する。さらに、本発明は、インスリンなどの、血中グルコースレベルの治療的変化を実現することができる(例えば、高血糖症を処置するための)治療用のタンパク質を特に除外する。しかし、免疫化に適する抗原は他の生物学的活性(免疫反応を増大させるなど)を有するので、これらは本発明の適切な態様に依然として含まれている。免疫化に適する抗原物質は、血中グルコースレベルを治療的に変化させないタンパク質ベースの抗原、非タンパク質の非ヌクレオチドの物質、又はそれらの混成体であることができる。しかし、抗原をコードするヌクレオチドは、本発明の組成物には特に適さない。したがって、含まれる物質は、それ自体が免疫化に適する抗原である。適切な抗原には、例えば、環境物質、病原体、又は生物学的有害物質のための抗原が含まれる。適切な抗原物質には、好ましくは、例えば、マラリア、狂犬病、炭疽、結核の治療に関する抗原、又は、例えば、B型肝炎、ジプテリア、百日咳、破傷風、インフルエンザ菌b型、不活化ポリオウィルス、麻疹、流行性耳下腺炎、風疹、水痘、肺炎球菌、A型肝炎、及びインフルエンザなど小児の免疫化に関するものが含まれる。
【0073】
負に帯電した主鎖に結合されることができる適切な治療物質は、例えば、鎮痛薬、抗喘息薬、抗生物質、抗うつ薬、抗糖尿病薬、抗真菌薬、制吐薬、降圧薬、抗インポテンツ薬、抗炎症薬、抗悪性腫瘍薬、抗HIV薬、抗ウイルス薬、抗不安薬、避妊薬、排卵促進薬、抗血栓薬、プロトロンビン物質(prothrombotic agent)、ホルモン、ワクチン、免疫抑制薬、ビタミンなどを含めて、本質的に任意のクラスの作用物質中に存在し得る。或いは、十分な負に帯電した基を、治療物質に導入して、正に帯電した前述の主鎖とのイオン性複合体形成を生じさせることもできる。当業者には容易に明らかとなるように、リン酸化や硫酸化など多くの適切な方法が存在する。
【0074】
さらに、いくつかの作用物質は、それ自体が、正に帯電した前述の担体と結合するのに適した、負に帯電した部分を有し、負に帯電した主鎖への結合を必要としない。これらの事例では、その物質又はその誘導体は、本発明の正に帯電した担体と非共有結合的に結合するのに十分な負電荷を有する。この文脈における「十分な」という用語は、例えば、それらの成分単独に対する粒子測定又は機能的分光測定の変化によって測定することができる結合を意味する。
【0075】
適切な薬用化粧物質としては、例えば、上皮成長因子(EGF)、並びにヒト成長ホルモン及び抗酸化薬が挙げられる。
【0076】
より具体的には、本発明において有用な治療物質としては、リドカイン、ノボカイン、ブピバカイン、プロカイン、テトラカイン、ベンゾカイン、コカイン、メピバカイン、エチドカイン、プロパラカインロピバカイン、プリロカインなどのような鎮痛薬;アゼラスチン、ケトチフェン、トラキサノクス、コルチコステロイド、クロモリン、ネドクロミル、アルブテロール、メシル酸ビトルテロール、ピルブテロール、サルメテロール、テルブチリン(terbutyline)、テオフィリンなどの抗喘息薬;ネオマイシン、ストレプトマイシン、クロラムフェニコール、ノルフロキサシン、シプロフロキサシン、トリメトプリム、スルファメチルオキサゾール、βラクタム系抗生物質、テトラサイクリンなどの抗生物質;ネホパム、オキシペルチン、イミプラミン、トラザドン(trazadone)などの抗うつ薬;ビグアニジン、スルホニル尿素などの抗糖尿病薬;クロロプロマジン、フルフェナジン、ペルフェナジン、プロクロルペラジン、プロメタジン、チエチルペラジン、トリフルプロマジン、ハロペリドール、スコポラミン、ジフェニドール、トリメトベンズアミドなどの制吐薬及び抗精神病薬;アトラクリウムミバクリウム、ロクロニウム、スクシニルコリン、ドキサクリウム、ツボクラリンなどの神経筋作用物質;アムホテリジンB、ナイスタチン、カンジシジン、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、クロトリマゾール、フルコナゾール、シクロピロクス、エコナゾール、ナフチフィン、テルビナフィン、グリセオフルビン、シクロピロクスなどの抗真菌薬;プロパノロール、プロパフェノン、オキシプレノロール、ニフェジピン、レセルピンなどの降圧薬;一酸化窒素供与体などの抗インポテンツ薬;コルチゾン、ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、フルアザコルトなどのステロイド性抗炎症薬、並びにインドメタシン、イブプロフェン、ラミフェニゾン(ramifenizone)、プリオキシカム(prioxicam)などの非ステロイド性抗炎症薬を含む、抗炎症薬;アドリアマイシン、シクロホスファミド、アクチノマイシン、ブレオマイシン、ズアノルビシン(duanorubicin)、ドキソルビシン、エピルビシン、マイトマイシン、ラパマイシン、メトトレキサート、フルオロウラシル、カルボプラチン、カルムスチン(BCNU)、シスプラスチン、エトポシド、インターフェロン、フェネステリン(phenesterine)、タキソール(類似体及び誘導体を含む)、カンプトセシン及びその誘導体、ビンブラスチン、ビンクリスチンなどの抗悪性腫瘍薬;抗HIV薬(例えば、抗タンパク分解薬(antiproteolytics);アマンタジン、メチサゾン、イドクスウリジン、シタラビン、アシクロビル、ファムシクロビル、ガンシクロビル、フォスカーネット、ソリブジン、トリフルリジン、バラシクロビル、シドフォビル、ジダノシン、スタブジン、ザルシタビン、ジドブジン、リバビリン、リマンタチン(rimantatine)などの抗ウイルス薬;ダントロレン、ジアゼパムなどの抗不安薬;COX−2阻害物質;プロゲストーゲンなどの避妊薬;GPIIb/IIIa阻害物質、組織プラスミノーゲンアクチベーター、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、ヘパリンなどの抗血栓薬;トロンビン、第V、VII、VIII因子などのプロトロンビン物質;成長ホルモン、プロラクチン、EGF(上皮成長因子)などのホルモン;シクロスポリン、アザチオプリン、ミゾロビン(mizorobine)、FK506、プレドニゾンなどの免疫抑制薬、A、D、E、Kなどのビタミン;並びに他の治療的に又は医薬的に活性な作用物質が挙げられる。例えば、GOODMAN & GILMAN'S THE PHARMACOLOGICAL BASIS OF THERAPEUTICS, Ninth Ed. Hardman, et al., eds. McGraw-Hill, (1996)を参照されたい。
【0077】
最も好ましい実施形態では、生物学的物質は、分子量が20000kD未満であるタンパク質及び他の生物学的に活性な物質、例えば、ある種の抗真菌物質などの非タンパク質の非ヌクレオチドの治療薬、並びに免疫化のための抗原物質から選択される。本発明のすべての態様におけるように、適切な例は、インスリン、ボツリヌストキシン、VEGF、及び抗体断片を特に除外する。
【0078】
標的物質及びイメージング物質に関して前述したように、いくつかの生物学的物質又は薬用化粧物質は、負に帯電した主鎖の不在下で使用することができる。このような生物学的又は薬用化粧物質は、一般に、生理的pHにおいて正味の負電荷を有して、正に帯電した担体との複合体を保持するものである。例としては、通常、タンパク質又は糖タンパク質を含む免疫化用の抗原、及び多くの抗真菌薬、並びに固有の治療能を有する又は有していない黒色腫の標的化のイメージング剤が挙げられる。これらの事例では、その物質又はその誘導体は、本発明の正に帯電した担体と非共有結合的に結合するのに十分な負電荷を有する。この文脈における「十分な」という用語は、例えば、それらの成分単独に対する粒子測定又は機能的分光測定の変化によって測定することができる結合を意味する。
【0079】
結合されたイメージング部分、標的物質、又は治療物質を有する、負に帯電した主鎖
イメージング部分、標的物質、及び治療物質を含めて、上記の群の成分の3つに関して、個々の化合物は、負に帯電した主鎖に結合され、負に帯電した部分を導入するように共有結合的に修飾され、又は、前述の正に帯電した主鎖へのイオン複合体形成を与えるのに十分な負に帯電した部分をその化合物が含む場合は直接使用される。必要があれば、通常、その結合は、作用物質並びに主鎖上に存在する官能基を通じて、特定の作用物質を主鎖に共有結合させるのに使用される連結基を介している。様々な連結基が、本発明のこの態様において有用である。例えば、Hermanson, Bioconjugate Techniques, Academic Press, San Diego, CA (1996)、Wong, S.S., Ed., Chemistry of Protein Conjugation and Cross-Linking, CRC Press, Inc., Boca Raton, FL (1991)、Senter, et al., J. Org. Chem. 55:2975-78 (1990)、及びKoneko, et al., Bioconjugate Chem. 2:133-141 (1991)を参照されたい。
【0080】
いくつかの実施形態では、治療物質、診断用物質、又は標的物質は、連結基に結合するために利用可能な官能基を持たないと考えられ、最初に修飾して、例えば、ヒドロキシ、アミノ、又はチオール置換基を組み込むことができる。好ましくは、置換基は、作用物質の非干渉部分に与えられ、連結基を結合するのに使用されることができ、作用物質の機能に不利益な影響を及ぼさない。
【0081】
さらに別の態様では、本発明は、少なくとも1つの結合された効率基を有する正に帯電した主鎖の非共有結合性複合体を含む組成物を提供する。本発明のこの態様では、正に帯電した主鎖は、正に帯電した前述の主鎖のうちの本質的に任意のものでよく、また、(上記の選択された主鎖と同様に)少なくとも1つの結合された効率基も含むと考えられる。適切な効率基としては、例えば、(Gly)n1−(Arg)n2(式中、下付き文字n1は、3〜約5の整数であり、下付き文字n2は、独立に、約7〜約17の奇数である)又はTATドメインが挙げられる。例えば、TATドメインは、式(gly)p−RGRDDRRQRRR−(gly)q、(gly)p−YGRKKRRQRRR−(gly)q、又は(gly)p−RKKRRQRRR−(gly)qを有することができ、式中、下付文字p及びqは、各々独立に0〜20までの整数であり、断片のC末端又はN末端のいずれかにより担体分子に断片が結合している。側鎖の分枝基は、結合の中央でD−体又はL−体(R又はS配座)のいずれかを有することができる。好ましいHIV−TAT断片は、下付文字p及びqが各々独立に0〜8までの、より好ましくは2〜5までの整数であるものである。
【0082】
ある種の他の分子の経皮送達
上記に記載した正の電荷を持つ担体を、タンパク質及び他の生物学的に活性な物質(例えば、分子量20000kD未満のタンパク質、ある種の抗真菌物質などの非タンパク質の非ヌクレオチドの治療薬、又は免疫化のための抗原物質)を経皮送達するために用いることができることが見出されている。正に帯電した担体を使用すると、皮膚細胞の内外双方向へのタンパク質又はマーカー遺伝子の送達、及びその下の組織への有効量且つ活性型でのその送達が可能になる。例えば、この方法の局所送達は、特に、抗真菌物質、免疫化に適する抗原物質、又は、例えば黒色腫などの皮膚の障害の分子画像のための物質の場合に、投与量の減少をもたらし、毒性を低下させ、注射可能の又は埋め込み可能の材料に関して望ましい効果に対するより正確な投与量の最適化を可能にすることができる。この実施形態は、いくらかの好ましくは多価の小型陰イオン(例えば、リン酸、アスパラギン酸、又はクエン酸)を含んでもよく、或いは、このようなポリアニオンが実質的に無い状況で実施してもよい。
【0083】
同様に、「タンパク質」という用語は、天然供給源から抽出されたタンパク質、並びに、化学的又は組換え手段によって合成的に得ることができるタンパク質も含む。タンパク質は、改変型、又は、例えば組換えペプチド、融合タンパク質、若しくはハイブリッド分子の形態でもよい。いくつかの場合におけるタンパク質は、必要な活性を有するより大型のタンパク質分子の部分であることができる。好ましいタンパク質は、分子量が20000kD未満であるタンパク質(例えば、免疫化のための抗原など、経皮の組成物及び方法に用いることができるものなど)であり、生理化学的性質が広く変化することができる。同様に、抗真菌物質を含む非タンパク質の非ヌクレオチドの治療薬は、天然の供給源から得てもよく、又は合成してもよい。
【0084】
本発明の組成物は、好ましくは、対象又は患者(即ち、特定の治療を必要とするヒト又は他の哺乳動物)の皮膚又は上皮に適用される製品の形態である。「必要とする」という用語は、医薬及び健康の双方に関連した必要性、並びに、より化粧的、美容的、又は主観的になる傾向がある必要性を含むことが意図されている。組成物は、例えば、顔組織の外観を変更又は改善するのに使用することもできる。
【0085】
一般的に、組成物は、タンパク質(特に分子量が20000kD未満であるもの)又は他の生物学的に活性な物質(例えば、非タンパク質の非ヌクレオチドの治療薬、若しくは交替で正の電荷を持つ担体と共に投与する免疫化するための物質)、及び通常は1つ又は複数のさらなる薬学的に許容できる担体又は賦形剤を混合することにより調製される。最も単純な形態では、それらは、緩衝化してもよい生理食塩水など、製薬上許容される単純な水性の担体又は希釈剤を含有してよい。しかし、これらの組成物は、皮膚科学的に又は製薬上許容される担体、ビヒクル、又は媒体(即ち、それらが適用される組織に適合性のある担体、ビヒクル、又は媒体)を含む局所用の薬剤組成物又は薬用化粧組成物において一般的な他の成分を含有してよい。本明細書では、「皮膚科学的に又は製薬上許容される」という用語は、組成物又はその成分が、これらの組織と接触して使用するのに、又は、通常は、過度の毒性、不適合性、不安定性、アレルギー反応などを起こさずに、患者に使用するのに適していることを意味する。必要に応じて、本発明の組成物は、考察中の分野、特に化粧品及び皮膚科学の分野で従来使用されている任意の成分を含んでよい。本発明のすべての態様において、担体と生物学的に活性な作用物質との結合は、非共有結合性の相互作用によるものであり、例えば、イオン性相互作用、水素結合、ファンデルワールス力、又はそれらの組合せを挙げることができる。
【0086】
組成物は、予め調製しても、或いは、例えば、投与時点又は投与前に構築するためのキットを提供することによって、投与時に調製してもよい。或いは、前述したように、例えば、治療用タンパク質と、正に帯電した担体(及び場合によっては他の成分)を含有する液体、ゲル、クリームなどとを含む、皮膚パッチ又は他の分配器具を含むキットを提供することによって、治療用タンパク質、並びに正に帯電した主鎖を別々の形態で患者に投与してもよい。この特定の実施形態では、担体を含む液体又は他の組成物を皮膚に適用し、続いて、皮膚パッチ又は他の器具を適用することによって、この組合せを投与する。
【0087】
本発明の組成物は、有効量の治療用タンパク質又はイメージング物質若しくは標的物質などの他の有益な物質を投与するために適用される。経皮送達の場合、「有効量」という用語は、担体が無い場合の作用物質に比べて、生物学的に活性な作用物質のより多くの経皮送達を実現する、任意の組成物又は方法を意味する。抗原に対する、「有効量」は、抗原を適用後、又は一連の適用後、対象に抗原に対する免疫反応を増大させるのに十分な量を意味する。抗真菌薬の場合、「有効量」とは、真菌感染の症状又は徴候を軽減するのに十分な量を意味する。治療的に血中グルコースレベルを変えない他の生物学的に活性な作用物質の場合、「有効量」とは、著しい毒性を引き起こすことなく、例えば、Physicians' Desk Referenceなどでその作用物質について特徴づけられている所定の生物学的又は治療的効果を発揮するのに十分な量を意味する。本発明は、詳細には、「治療的」又は「生物学的に活性なタンパク質」という用語を使用する場合、抗体断片を除外する。しかし、免疫化に適した抗原は、免疫応答を開始するなど他の生物活性を有するため、これらは、本発明の適切な態様に含まれたままである。
【0088】
これらの組成物は、単回投与による治療として適用するために、治療用タンパク質、或いは、他の生物学的に活性な作用物質の適切な有効量を含有してもよく、或いは、投与箇所で希釈するため、又は、複数回適用で使用するために、より濃く濃縮してもよい。一般的に、タンパク質(特に分子量が20000kD未満のもの)、又は他の生物学的に活性な物質を含む組成物は、約1×10−20から約25重量%までの生物学的に活性な物質、及び約1×10−19から約30重量%までの正の電荷を持つ担体を含む。通常、非タンパク質非ヌクレオチド系治療物質、或いは免疫化用の作用物質を含有する組成物は、約1×10−10〜約49.9重量%の抗原、及び約1×10−9〜約50重量%の正に帯電した担体を含有する。担体分子の量、又は生物学的に活性な作用物質に対するその比は、問題の組成物において使用するためにどの担体が選択されるかによって変わると考えられる。所与の事例における担体分子の適切な量又は比は、例えば、以下に説明するもののような1種又は複数の実験を行うことによって、容易に決定することができる。
【0089】
本発明の組成物は、溶液剤、乳剤(マイクロエマルジョンを含む)、懸濁剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、粉末剤、又は、皮膚及び組成物を用いることができる他の組織に適用するために用いる他の典型的な固体若しくは液体の組成物を含むことができる。このような組成物は、生物学的に活性な物質及び担体分子の他に、このような製品に通常用いる他の成分、例えば、抗菌物質、保湿剤及び水和剤、浸透剤、保存剤、乳化剤、天然若しくは合成の油、溶剤、界面活性剤、洗浄剤、ゲル化剤、皮膚軟化剤、抗酸化剤、香料、充填剤、増粘剤、ワックス、臭い吸収剤、色素、着色剤、粉末、粘度調整剤及び水、並びに任意選択で含む麻酔薬、かゆみ止めの添加物、植物抽出物、品質改良剤、暗色化剤若しくは明色化剤、光輝顔料、湿潤剤、雲母、ミネラル、ポリフェノール、シリコーン若しくはその誘導体、日焼け止め、ビタミン、並びに植物性薬物を含むことができる。
【0090】
本発明による組成物は、タンパク質物質と担体とが、それらが制御された方式で時間をかけて皮膚上に放出されるように、ある物質内にカプセル化又は別の方法で含有されている、制御放出組成物又は持続放出組成物の形態でよい。送達しようとする物質と担体は、マトリックス、リポソーム、小胞、マイクロカプセル、マイクロスフェアなどの内部に、又は、固体粒子物質内部に含有されてよく、これらはすべて、1種又は複数の物質を時間をかけて放出するように選択及び/又は構築される。治療物質及び担体は、一緒に(例えば、同じカプセル内に)、又は別々に(別々のカプセル内に)カプセル化されてよい。
【0091】
本発明の組成物を対象に投与することは、当然、本発明の別の態様である。
【0092】
制御放出及び/又は観察を伴う、皮膚パッチなどによる投与は、一般的な方法であるらしく、したがって、本発明の組成物は、しばしば、皮膚パッチ又は他の器具に含有されて提供されることになる。免疫化に適した抗原の場合、最も好ましくは、医師又は他の医療従事者によって、又はその指示のもとで組成物を投与する。1回の治療で、又は、長期にわたる一連の定期的治療においてそれらを投与してよい。前述の目的のために免疫化に適した抗原を経皮送達するために、皮膚、又は爪体及び周囲の皮膚に前述の組成物を局所的に適用する。同様に、抗真菌薬などの非タンパク質非ヌクレオチド系治療薬の場合、好ましくは、医師又は他の医療従事者の指示のもとで組成物を投与する。1回の治療で、又は、長期にわたる一連の定期的治療においてそれらを投与してよい。治療用タンパク質を経皮送達するために、前述の組成物を局所的に皮膚に適用する。
【0093】
医療従事者の指示のもとで、又は患者若しくは対象によって、本発明の組成物を投与するためのキットは、この目的に適する特別仕様でつくられた(custom)アプリケーターも含んでよい。指の爪若しくは足の爪板、又は周囲の解剖学的構造に対する塗布器具の場合には、このような特別仕様でつくられたアプリケーターは、例えば、人工の爪板、ラッカー、色素入りマニキュア液、ゲル、又はこれらのいずれか若しくはすべての組合せを含むことができる。
【0094】
別の態様では、本発明は上記に記載した正の電荷を持つ担体と有効な量の生物学的に活性な物質(例えば、分子量20000kD未満のタンパク質、免疫化に適する抗原、抗真菌物質若しくは非タンパク質の非ヌクレオチドの治療薬)との組合せを局所投与するための方法に関する。前述したように、適切なタイプ及び量のこれら2種の物質、具体的には担体及び生物学的に活性な作用物質を含有する本発明の組成物を使用することによって、投与を実施することができる。しかし、本発明は、必ずしも同じ組成物中ではないが、これら2種の物質を一緒に投与することも含む。例えば、治療物質を、乾燥した形態で皮膚パッチ又は他の分配器具に組み入れてよく、また、それら2種が一緒に作用して所望の経皮送達をもたらすように、パッチを適用する前に皮膚表面に正に帯電した担体を適用してもよい。この点で、2種の物質(担体及び生物学的に活性な作用物質)は、一緒に若しくは協同して作用し、又は、おそらくは相互作用してインサイチュで組成物又は組合せを形成する。
【0095】
組成物の調製方法
別の態様では、本発明は、薬剤組成物を調製するための方法であって、正に帯電した主鎖成分と、
i)複数の結合されたイメージング部分を有する、負に帯電した第1の主鎖、或いは、負に帯電した複数のイメージング部分、
ii)複数の結合された標的物質を有する、負に帯電した第2の主鎖、或いは、負に帯電した複数の標的部分、
iii)非タンパク質の非ヌクレオチドの生物学的に活性な物質
iv)インスリン、ボツリヌストキシン、VEGF、又は抗体断片以外の治療用タンパク質と、正味の正の電荷を有する非共有結合性の複合体を形成するための薬学的に許容できる担体と
から選択される少なくとも1つのメンバーとを組み合わせることを含む方法を提供する。
【0096】
本発明のいくつかの実施形態では、いくつかのタイプの物質の経皮送達を実現するために、正に帯電した主鎖又は担体を単独で使用してもよい。この場合、約1×10−20〜約25重量%の生物学的に活性な作用物質、及び約1×10−19〜約30重量%の正に帯電した担体を含有する組成物及び方法が好ましい。抗真菌物質などの非ヌクレオチドの非タンパク質の治療薬、黒色腫などの皮膚の障害を診断するための選択的画像物質、又は免疫化に適する抗原物質を含む組成物及び方法も好ましく、この場合、組成物及び方法は1×10−10から約49.9重量%までの抗原、及び約1×10−9から約50重量%までの正の電荷を持つ担体を含む。
【0097】
本発明の広範な適用範囲は、様々な薬剤組成物を調製できる容易さによって示される。通常、組成物は、様々な正味の正電荷を有する組成物を得るための比及び順序で、正に帯電した主鎖成分を対象となる所望の成分(例えば、標的部分、イメージング部分、若しくは治療成分)と混合することによって調製される。多くの実施形態で、組成物を投与するための製薬上許容される担体及び希釈剤を用いることによって、例えば枕元で、組成物を調製することができる。或いは、組成物は、諸成分を適切に混合することによって調製し、次いで、凍結乾燥し、使用又は適切な送達媒体中に配合するまで、(通常は室温以下で)保存することもできる。
【0098】
組成物は、様々な投与方法に適する混合物を提供するように配合することができ、その非限定的な例として、局所の、皮膚の、経口の、直腸の、経膣の、非経口の、鼻腔内の、静脈内の、筋肉内の、皮下の、眼内の、及び経皮の投与が含まれる。本発明の薬剤組成物は、好ましくは、注射剤、特に所望の器官への直接注射、又は(皮膚及び/若しくは粘膜への)局所投与用に製薬上許容されているビヒクルを含有する。薬剤組成物は、特に、滅菌の、等張の溶液、又は、滅菌水又は生理学的食塩水の添加により再構成して注射可能の溶液を調製することができる乾燥組成物(例えば、凍結乾燥された組成物)であることができる。
【0099】
或いは、組成物を局所的に適用すべき場合(例えば、経皮送達が望まれる場合)、(例えば、皮膚パッチを用いることによって)対象となる1種又は複数の成分を乾燥した形態で皮膚に適用することができる。ここで、正に帯電した主鎖又は担体で皮膚が別々に処置される。この方式では、組成物全体は、インサイチュで本質的に形成され、患者又は対象に投与される。
【0100】
組成物の使用方法
送達方法
様々な方法を用いて、インビボ又はエックスビボで、対象、細胞、又は標的部位に本発明の組成物を送達することができる。実際には、治療すべき組織に最終的に組成物を接触させるのに通常使用される経路のうちの任意のものを使用することができる。好ましくは、組成物は、製薬上許容される担体と共に投与される。このような化合物を投与する適切な方法は、当業者にとって利用可能且つ周知であり、個々の組成物を投与するのに複数の経路を使用できるが、しばしば、特定の経路が、別の経路と比べてより即時的且つより効果的な反応をもたらし得る。製薬上許容される担体は、1つには、投与される個々の組成物によって、並びに、その組成物を投与するのに使用される個々の方法によって、決定される。したがって、本発明の薬剤組成物の多種多様な適切な製剤が存在する(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed.1985を参照されたい)。
【0101】
投与は、例えば、静脈内、局所、腹腔内、真皮下、皮下、経皮、筋肉内、経口、関節内、非経口、鼻腔内、又は吸入によってでよい。したがって、投与に適した部位としては、それだけには限らないが、皮膚、気管支、胃腸管、眼、及び耳が挙げられる。これらの組成物は、通常、従来の薬剤用担体又は賦形剤を含み、また、他の医薬品物質、担体、補助剤などをさらに含むことができる。好ましくは、製剤は、本発明の組成物の約5重量%〜75重量%となり、残りの部分は、適切な医薬品賦形剤からなる。当技術分野で周知の方法によって、適切な賦形剤を、個々の組成物及び投与経路に合わせることができる(例えば、REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES, 18TH ED., Mack Publishing Co., Easton, PA (1990)を参照されたい)。
【0102】
製剤は、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、坐剤、停留浣腸(retention enema)、クリーム剤、軟膏剤、ローション剤、エアロゾルなど、固体、半固体、凍結乾燥した粉末、又は液体剤形の形態をとることができる。薬剤組成物が、丸剤、錠剤、又はカプセル剤の形態をとる実施形態では、製剤は、生物学的に活性な組成物と共に、以下のもの、即ち、ラクトース、スクロース、リン酸二カルシウムなどの希釈剤;デンプンやその誘導体などの崩壊剤(distintegrant);ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤;並びに、デンプン、アカシアガム、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、セルロース及びその誘導体などの結合剤のうちの任意のものを含有してよい。組成物は、アンプルやバイアルなどの、単位投与又は多回投与用の密閉容器に入れて提供され得る。患者に投与される用量は、時間の経過と共に患者の有益な治療応答を実現するのに十分な量でなくてはならない。
【0103】
いくつかの実施形態では、持続放出製剤は、生物又は培養中の細胞に投与することができ、また、これらは、所望の組成物を含むことができる。例えば、注射によって、生物の組織に持続放出組成物を投与することができる。「持続放出(sustained-release)」とは、その組成物が、粘性がより低い媒体、例えば、生理食塩水溶液中のその組成物を投与することによって実現されると考えられるよりも長い期間、周辺組織又は培養中の細胞によって取込まれるのに利用可能とされていることを意味する。
【0104】
単独で又は他の適切な成分と組み合わせて、組成物を、吸入によって投与され得る、エアロゾル製剤(即ち、「噴霧される」ことができる)に調製することができる。エアロゾル製剤は、ジクロロジフルオルメタン、プロパン、窒素など加圧された許容される高圧ガス中に入れてよい。吸入による送達のために、乾燥粉末(例えば、Nektar)としてこれらの組成物を送達することもできる。
【0105】
例えば、静脈内、筋肉内、皮内、及び皮下の経路によるものなど非経口投与に適した製剤としては、抗酸化薬、緩衝剤、静菌薬、及び製剤を所期の受容者の血液と等張且つ相溶性の溶質を含有し得る水性及び非水性の等張性無菌注射液、並びに、懸濁化剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤、及び保存剤を含み得る水性及び非水性の無菌懸濁剤が挙げられる。
【0106】
他の投与方法としては、それだけには限らないが、血管形成バルーン、カテーテル、及びゲル形成を用いた投与が挙げられる。血管形成バルーン、カテーテル、及びゲル形成による送達の方法は、当技術分野で周知である。
【0107】
イメージング法
当業者には、様々なイメージング用途に合わせて本発明の組成物を調整できることが理解されよう。一実施形態では、成分ベースの系をイメージングに用いて、仮想結腸鏡検査を実施することができる。現在のところ、仮想結腸鏡検査は、本質的には、結腸に造影剤を注入し、CT上で画像を可視化し、次いで、3D画像を復元するものである。MRに対しても同様の技術を使用することができる。しかし、大便、粘液、及び空気はすべて造影剤の妨害物となり、結腸壁の復元物に偽の表面を与えることがある。細胞標的の造影剤の添加は、これらの妨害物に打ち勝って真の壁復元物を実現するのに寄与し、また、偽陽性及び偽陰性の双方を回避するのに寄与すると考えられる。この場合に成分ベースの系を適用することができるいくつかの方法がある。最も単純には、陽イオン性の効率主鎖を、単一の造影剤、例えば、CT、MR、又は光学的な造影剤と共に適用することができる。このようにして、細胞表面の層を可視化し、異常又は妨害物があれば、画像復元物の中で詳細にすることができる。しかし、成分ベースの系は、特異的な第2の作用物質の添加という追加の選択肢を提供する。この作用物質は、陽イオン性の効率主鎖、異なるイメージング部分、及び標的成分、例えば、結腸癌に特徴的な2種の抗原を標的とする成分からなり得た。単純なものから診断用までのイメージング部分は、1種がCT造影剤で、もう一方がMR造影剤となるように、又は、両方がMR造影剤で、1種がT2剤でもう一方がT1剤であるように、選択することができる。この方式では、以前のとおりに表面を復元することができ、また、腫瘍抗原に特異的な任意の領域を可視化し、元の復元物に重ねることができる。さらに、標的化診断システムにも同様に治療物質を組み入れることができる。(また一方では治療と組み合わせて)同様の戦略を限局性腸炎及び潰瘍性大腸炎に適用することができる。或いは、例えば、黒色腫を診断又は管理する場合に、好ましくは蛍光性イメージング部分と併用して、光学的なイメージング部分及び検出法を使用することができる。これらの実施形態では、検出は視覚的で、画像支援で、又は、例えば、暗視野画像分析によるなど、完全に画像ベースであることができる。
【実施例1】
【0108】
本実施例は、本発明の正に帯電した主鎖又は担体を用いる、極めて大型の複合体、即ち青色蛍光タンパク質(BFP)導入遺伝子を含むプラスミドの経皮送達を例示する。
【0109】
主鎖の選択
リジン側鎖の遊離アミンに対する末端グリシンのカルボキシルを介して、18%の飽和度で(即ち、100個のリジン残基毎に18個が−Gly3Arg7に共有結合している)、分子量150,000のポリリジンに−Gly3Arg7を共有結合させることによって、正に帯電した主鎖を構築した。第2のサイズのペプチジル担体を示すために、修飾された主鎖を「KNR2」と呼んだ。対照のポリカチオンは、同じサイズ及び同じロットの未修飾のポリリジン(「K2」と呼ぶ、Sigma Chemical社製、セントルイス、ミズーリ州)であった。別の対照ポリカチオン、即ち、活性化されたデンドリマーベースの作用物質である「Superfect(登録商標)」(Qiagen社製)を、高いインビトロトランスフェクション速度の基準として選択した(即ち、同時に陽性対照及びインビトロの毒性に対する現況技術の効率の基準となる)。
【0110】
治療物質の選択
サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターによって駆動される、青色蛍光タンパク質(BFP)の導入遺伝子全体及びフランキング配列の一部分を含む8キロベースのプラスミド(pSportベースの鋳型、Gibco BRL社製、ゲーサーズバーグ(Gaithersburg)、メリーランド州)を使用した。BFPは、トランスフェクトされ、その後、その遺伝子を転写及び翻訳する細胞に対する同定可能なマーカーとしての機能を果たし、蛍光顕微鏡下で直接(即ち、さらに染色せずに)可視化することができる。したがって、有効搭載量(payload)の送達前に、複合体が原形質膜と核膜の双方を通過した細胞のみが、導入遺伝子を発現することができる。この特有のプラスミドは、約264万の分子量を有し、したがって、これらの複合体を介する極めて大型の治療薬の送達を評価するために選択された。
【0111】
試料の調製
各事例において、過剰なポリカチオンを使用して、過剰な正電荷を有する最終複合体を構築した。電荷密度の増加によりサイズは大きくなる(即ち、より多くの主鎖が複合体1つにつき存在する)が、複合体当たりの効率因子密度の増加が、これらの変化を相殺することができる。したがって、最良の結果は、低い比率(即ち、大きさに基づいて)又は高い比率(即ち、効率因子密度に基づいて)で起こり得、ここでは、KNR2についてどちらも評価する。K2効率及びSuperfect効率の最適な比は、製造業者の推奨及び最大効率に関する以前の報告に基づいて選択した。細胞培養において評価される組成物の合計体積及び最終pHと同様に、ヌクレオチド治療薬の用量を全グループにわたって標準化した。
【0112】
以下の混合物を調製した。
1)CMVプロモーターによって駆動される、青色蛍光タンパク質を発現するプラスミドの0.5mg/mL溶液に対して4:1の電荷比のK2。
2)CMVプロモーターによって駆動される、青色蛍光タンパク質を発現するプラスミドの0.5mg/mL溶液に対して15:1の比のKNR2。
3)CMVプロモーターによって駆動される、青色蛍光タンパク質を発現するプラスミドの0.5mg/mL溶液に対して10:1の比のKNR2。
4)CMVプロモーターによって駆動される、青色蛍光タンパク質を発現するプラスミドの0.5mg/mL溶液に対して4:1の比のKNR2。
5)CMVプロモーターによって駆動される、青色蛍光タンパク質を発現するプラスミドの0.5mg/mL溶液に対して1.25:1の比のKNR2。
6)CMVプロモーターによって駆動される、青色蛍光タンパク質を発現するプラスミドの0.5mg/mL溶液に対して5:1の電荷比の、製造業者の推奨によるSuperfect。
【0113】
細胞培養手順
細胞培養実験はすべて、処置群の正体について盲検化された観察者によって実施された。6ウェルプレートで、70%コンフルエントなHA−VSMC初代ヒト大動脈平滑筋細胞(21継代;ATCC、ロックビル(Rockville)、メリーランド州)に各溶液1.0mLを加え、10%血清を含むM−199中で、摂氏37度、10%CO2で48時間増殖させた。未処置の対照ウェルも同様に評価し、1群につきn=5ウェルで各群を評価した。
【0114】
効率分析
盲検化された観察者は、BFPフィルター及び平面アポクロマートレンズの付いたNikon E600エピ蛍光顕微鏡を用いて、各ウェルの表面から60度、180度、及び200度で、未処置の細胞プレートの低倍率写真(全体で10倍)を撮影した。Image Pro Plus 3.0画像解析セット(Media Cybernetics社製、シルバースプリング(SilverSpring)、メリーランド州)を用いて、陽性の細胞領域全体に対するパーセントを測定した。この結果をそれぞれについて細胞領域全体に標準化し、遺伝子送達の効率(検出可能なレベルで導入遺伝子を発現する全細胞の比率)として報告した。
【0115】
毒性分析
続いて、盲検化された観察者は、色素排除アッセイ(生細胞は色素を排除するが、生育不能な細胞は排除できない)、続いて、リン酸緩衝化生理食塩水中の0.4%SDSへの可溶化で各ウェルを評価した。トランスフェクション剤の毒性の直接的な尺度として生育不能な細胞を定量的に評価するために、Spectronic Genesys 5 UV/VIS分光光度計により、595nm(青色)の波長で試料を評価した。OD595測定に先立って、一致するOD280値に濃度を調整することによって、細胞数が同一になるように試料を標準化した。
【0116】
データ処理及び統計分析
盲検化された観察者は、Image Pro Plusソフトウェア(Media Cybernetics社製、シルバースプリング、メリーランド州)を用いて、バッチ式(batch)画像解析によって陽性染色の総量を測定し、それぞれについて陽性染色のパーセントを決定するために、横断面領域全体にそれを標準化した。続いて、Statviewソフトウェア(Abacus社製、バークリー(Berkeley)、カリフォルニア州)を用いた、反復測定による1元配置分散分析における95%信頼度の有意性分析により、各群の平均値及び標準誤差を測定した。
結果
効率:
効率性の結果は以下のとおりであった(平均値±標準誤差)
1)0.163±0.106%
2)10.642±2.195%
3)8.797±3.839%
4)15.035±1.098%
5)17.574±6.807%
6)1.199±0.573%
第4回及び第5回の試験は、ポリリジン単独及びSuperfectの双方と比べて、統計学的に有意な(Fisher PLSD及びTUKEY−A事後試験を用いる1因子反復測定分散分析によってP<0.05)遺伝子送達効率の向上を示している。
【0117】
毒性
平均毒性データは以下のとおりである(OD595でのAUで示されている。生理食塩水単独の場合に示されるような低い値は、低い毒性と相関があり、条件1で示されるようなより高い値は、高い細胞毒性を示唆する。
生理食塩水−0.057A、
1)3.460A、
2)0.251A、
3)0.291A、
4)0.243A、
5)0.297A、
6)0.337A。
【0118】
結論
対照、さらには現在の基準であるSuperfectのものより、より毒性が低くより効率的な遺伝子送達を、1.25対4.0の比率のKNR2及びDNAを用いて実現することができる。この実験は、この担体を用いて、極めて大型の治療用複合体を膜を通過して送達できる可能性を裏付ける。
【実施例2】
【0119】
本実施例は、単回投与後の、本発明の担体による皮膚を通過しての大型ヌクレオチドの輸送を例示する。
【0120】
主鎖の選択
リジン側鎖の遊離アミンに対する末端グリシンのカルボキシルを介して、18%の飽和度で(即ち、100個のリジン残基毎に18個が−Gly3Arg7に共有結合している)、ポリリジン(分子量150,000)に−Gly3Arg7を共有結合させることによって、正に帯電した主鎖を構築した。修飾された主鎖を先と同様に「KNR2」と呼んだ。対照のポリカチオンは、同じサイズ及び同じロットの未修飾のポリリジン(「K2」と呼ぶ、Sigma Chemical社製、セントルイス、ミズーリ州)であった。別の対照ポリカチオン、即ち、活性化されたデンドリマーベースの作用物質であるSuperfect(Qiagen社製)を、高いトランスフェクション速度の基準として選択した(即ち、同時に陽性対照及びインビトロの毒性に対する現況技術の効率の基準となる)。
【0121】
治療物質の選択
本実験のために、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターによって駆動される、大腸菌βガラクトシダーゼ(βgal)の導入遺伝子全体及びフランキング配列の一部分を含む8.5キロベースのプラスミド(pSportベースの鋳型、Gibco BRL社製、ゲーサーズバーグ、メリーランド州)を使用した。この場合、βgalは、トランスフェクトされ、その後、その遺伝子を転写及び翻訳する細胞に対する同定可能なマーカーとしての機能を果たし、外来酵素に対する特異的染色後に直接可視化することができる。したがって、複合体が皮膚を通過し、次いで標的細胞に到達し、有効搭載量の送達前に、原形質膜と核膜の双方を通過した細胞のみが、導入遺伝子を発現することができる。この特有のプラスミドは、約2,805,000の分子量を有する。
【0122】
試料の調製
各事例において、過剰なポリカチオンを使用して、過剰な正電荷を有する最終複合体を構築する。製造業者の推奨に基づき、最大効率を決定するインビトロ実験の前に、K2効率、KNR2効率、及びSuperfect効率の最適な比を選択した。局所適用される組成物の合計体積及び最終pHと同様に、ヌクレオチド治療薬の用量を全グループにわたって標準化した。以下のように試料を調製した。
AK1と名づけた群:最終アリコート当たり8マイクログラムのβgalプラスミド(p/CMV-sport-βgal)(即ち、合計80マイクログラム)及びペプチジル担体KNR2を電荷比4:1で混合して均質にし、リン酸緩衝化生理食塩水で200マイクロリットルに希釈した。得られた組成物を1.8mlのセタフィル(Cetaphil)保湿剤と混合して均質にし、インビボ実験のために200マイクロリットルずつ分取した。
AL1と名づけた群:最終アリコート当たり8マイクログラムのβgalプラスミド(p/CMV-sport-βgal)(即ち、合計80マイクログラム)及びK2を電荷比4:1で混合して均質にし、リン酸緩衝化生理食塩水で200マイクロリットルに希釈した。得られた組成物を1.8mlのセタフィルと混合して均質にし、インビボ実験のために200マイクロリットルずつ分取した。
AM1と名づけた群:最終アリコート当たり8マイクログラムのβgalプラスミド(p/CMV-sport-βgal)(即ち、合計80マイクログラム)及びSuperfectを電荷比5:1で混合して均質にし、リン酸緩衝化生理食塩水で200マイクロリットルに希釈した。得られた組成物を1.8mlのセタフィルと混合して均質にし、インビボ実験のために200マイクロリットルずつ分取した。
【0123】
ペプチジル担体及び核酸治療薬を用いた1回の処置後の経皮送達効率を測定するための動物実験
処置を施す間、イソフルランの吸入によって動物を麻酔した。麻酔をかけた後、C57 black 6マウス(1群当たりn=4)は、計量した用量200マイクロリットルの適切な処置を、背部(dorsal back)皮膚の頭側部分(マウスの口や肢がこの領域に届かないために選択された)に適用された。動物は、脱毛処理は受けなかった。低体温を防止するために管理された熱環境において動物を回復させ、応答するようになった後、一晩、食物及び水を自由に与えた。処置の24時間後に、マウスをCO2吸入によって安楽死させ、盲検化された観察者が、処置した皮膚部分の全層を採取した。処置部分を3つの部分に等分し、頭側部分を10%中性緩衝ホルマリン中で12〜16時間固定し、次いで、パラフィン包埋するまで70%エタノール中で保存した。中央部分は、急速凍結し、以前に説明されているような切片上での摂氏37度のβ−ガラクトシダーゼ染色に直接使用した(Waugh, J.M., M. Kattash, J. Li, E. Yuksel, M.D. Kuo, M. Lussier, A.B. Weinfeld, R. Saxena, E.D. Rabinovsky, S. Thung, S.L.C. Woo, and S.M. Shenaq. Local Overexpression of Tissue Plasminogen Activator to Prevent Arterial Thrombosis in an in vivo Rabbit Model. Proc Natl Acad Sci U S A. 1999 96(3): 1065-1070. 同様に、Elkins CJ, Waugh JM, Amabile PG, Minamiguchi H, Uy M, Sugimoto K, Do YS, Ganaha F, Razavi MK, Dake MD. Development of a platform to evaluate and limit in-stent restenosis. Tissue Engineering 2002. Jun;8(3): 395-407)。尾側の処置部分は、可溶化調査のために急速凍結した。
【0124】
毒性
上記の効率に関して分析したものに対する毒性を、対にした切片での色素排除によって評価した。これらの方法を併用することは確実ではないため、切片は、効率性又は毒性のいずれかについてのみ染色を受けた。毒性分析の場合、これらの切片を排除色素に5分間浸し、次いで、摂氏37度、10%CO2で30分間インキュベートした。この期間中に色素を排除しなかった細胞はすべて、生育不能とみなした。
【0125】
データ処理及び統計分析
データ収集及び画像解析は、盲検化された観察者が実施した。前述したように染色した切片の全体を、平面アポクロマートレンズの付いたNikon E600顕微鏡で撮影した。得られた画像を、β−ガラクトシダーゼ酵素活性(ここで使用した基質法では青色)又は細胞毒性に関して陽性の数を決定するために、マニュアルを確認しながら前述のImage Pro Plusソフトウェアを用いて、バッチ式画像解析処理にかけた。各々に対するヌクレアファーストレッド染色によって、これらの結果を横断面全体の細胞数に標準化し、横断面の陽性染色のパーセントとして表にした。次いで、Statviewソフトウェア(Abacus社製、バークリー(Berkeley)、カリフォルニア州)を用いた、反復測定による1元配置分散分析における95%信頼度の有意性分析により、各群の平均値及び標準誤差を続いて測定した。
【0126】
結果
結果を以下の表にまとめ、図3に示す。正に帯電したペプチジル経皮送達担体は、K2(本質的には陰性対照)及び効率のベンチマーク標準のSuperfectの双方に対して、送達効率及び導入遺伝子発現の統計学的に有意な上昇を実現した。Superfectは、K2よりも統計学的に有意な改善を達成したが、KNR2は、このモデルの系のSuperfectよりも1桁以上大きな送達効率の改善を示した。
【0127】
【表1】
【0128】
毒性についての結果を図4に示す。この図は、処置の24時間後に生育不能のままであった領域全体のパーセントを示す。この場合、K2は、以前に説明されているように(Amabile, P.G., J.M.Waugh, T. Lewis, C.J. Elkins, T. Janus, M.D. Kuo, and M.D. Dake. Intravascular Ultrasound Enhances in vivo Vascular Gene Delivery. J.Am.Col.Cardiol. 2001 June; 37(7):1975-80)K2の輸送効率が低い用量でさえ、KNR2又はSuperfectに比べて統計学的に有意な、細胞毒性を示している。
【0129】
結論
ペプチジル経皮担体は、特に、先に考察した導入遺伝子発現及び複合体全体の大きさの制約を考慮すれば、高効率で、大型の複合体を皮膚を通過して輸送することができる。(1)方法が非常に簡略化されており、画像解析がより正確であること、(2)効率の点レベルの実証(point demonstration)が、すでにII.Bで結論的に与えられていたこと、(3)非細胞性成分が断面のかなりの部分を占めるため、領域測定が、インビボの結果を理解するためのより広い範囲を提供すること、(4)さらに大きな非ペプチジル担体複合体に対する比較が容易になることを理由として、ここでは、陽性の数ではなく陽性領域を分析に使用した。
【実施例3】
【0130】
本実施例は、本発明の正に帯電したペプチジル担体を7日間連続して適用することによる、皮膚を通過しての大型ヌクレオチドベースの治療薬の経皮送達を例示する。
【0131】
主鎖の選択
リジン側鎖の遊離アミンに対する末端グリシンのカルボキシルを介して、18%の飽和度で(即ち、100個のリジン残基毎に18個が−Gly3Arg7に共有結合している)、ポリリジン(分子量150,000)に−Gly3Arg7を共有結合させることによって、正に帯電したペプチジル主鎖を構築した。修飾された主鎖を「KNR2」と呼んだ。対照のポリカチオンは、同じサイズ及び同じロットの未修飾のポリリジン(「K2」と呼ぶ、Sigma Chemical社製、セントルイス、ミズーリ州)であった。
【0132】
治療物質の選択
本実験のために、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターによって駆動される、大腸菌βガラクトシダーゼ(βgal)の導入遺伝子全体及びフランキング配列の一部分を含む8.5キロベースのプラスミド(pSportベースの鋳型、Gibco BRL社製、ゲーサーズバーグ、メリーランド州)を使用した。この特有のプラスミドは、約2,805,000の分子量を有し、したがって、ペプチジル担体を介する、皮膚を通過しての極めて大型の治療薬の送達を評価するために選択された。
【0133】
試料の調製
各事例において、過剰なポリカチオンを使用して、過剰な正電荷を有する最終複合体を構築した。実験の比は、先の実験で示した単回投与実験に対応するように選択した。局所適用される組成物の合計体積及び最終pHと同様に、ヌクレオチド治療薬の用量を全グループにわたって標準化した。以下のように試料を調製した。
AK1と名づけた群:最終アリコート当たり8マイクログラムのβgalプラスミド(p/CMV-sport-βgal)(即ち、合計240マイクログラム)及びペプチジル担体KNR2を電荷比4:1で混合して均質にし、リン酸緩衝化生理食塩水で600マイクロリットルに希釈した。得られた組成物を5.4mlのセタフィルと混合して均質にし、インビボ実験のために200マイクロリットルずつ分取した。
AL1と名づけた群:最終アリコート当たり8マイクログラムのβgalプラスミド(p/CMV-sport-βgal)(即ち、合計240マイクログラム)及びK2を電荷比4:1で混合して均質にし、リン酸緩衝化生理食塩水で600マイクロリットルに希釈した。得られた組成物を5.4mlのセタフィルと混合して均質にし、インビボ実験のために200マイクロリットルずつ分取した。
【0134】
ペプチジル担体及びヌクレオチド治療薬による1日1回の処置を7回受けた後の累積的な経皮送達効率を測定するための動物実験
処置を施す間、イソフルランの吸入によって動物を麻酔した。麻酔をかけた後、C57 black6マウス(1群当たりn=4)は、計量した用量200マイクロリットルの適切な処置を、背部皮膚の頭側部分(マウスの口や肢がこの領域に届かないために選択された)に適用された。動物は、脱毛処理は受けなかった。低体温を防止するために管理された熱環境において動物を回復させ、応答するようになった後、一晩、食物及び水を自由に与えた。この手順を1日のうちのほぼ同じ時間に1日1回、7日間繰り返した。7日間の処置後に、マウスをCO2吸入によって安楽死させ、盲検化された観察者が、処置した皮膚部分の全層を採取した。処置部分を3つの部分に等分し、頭側部分を10%中性緩衝ホルマリン中で12〜16時間固定し、次いで、パラフィン包埋するまで70%エタノール中で保存した。中央部分は、急速凍結し、以前に説明されているような切片上での摂氏37度のβ−ガラクトシダーゼ染色に直接使用した。尾側の処置部分は、可溶化調査のために急速凍結した。
【0135】
データ処理及び統計分析
データ収集及び画像解析は、盲検化された観察者が実施した。前述したように染色した切片の全体を、平面アポクロマートレンズの付いたNikon E600顕微鏡で撮影した。得られた画像を、β−ガラクトシダーゼ酵素活性に関して陽性の領域を決定するために、マニュアルを確認しながら前述のImage Pro Plusソフトウェアを用いて、バッチ式画像解析処理にかけた。これらの結果をそれぞれについて細胞の横断面領域全体に標準化し、横断面の陽性染色のパーセントとして表にした。次いで、Statviewソフトウェア(Abacus社製、バークリー、カリフォルニア州)を用いた、反復測定による1元配置分散分析における95%信頼度の有意性分析により、各群の平均値及び標準誤差を続いて測定した。
【0136】
結果
結果を以下の表にまとめ、図5に示す。ペプチジル経皮送達担体は、K2に対して、送達効率及び導入遺伝子発現の統計学的に有意な増大を実現した。
【0137】
【表2】
【実施例4】
【0138】
非ペプチジル担体
本実施例は、7日間連続の適用において本発明の正に帯電した非ペプチジル担体を用いることによる、皮膚を通過しての大型ヌクレオチドベースの治療薬の経皮送達を例示する。
【0139】
主鎖の選択
PEI側鎖の遊離アミンに対する末端グリシンのカルボキシルを介して、30%の飽和度で(即ち、100個のリジン残基毎に30個が−GIy3Arg7に共有結合している)、ポリエチレンイミン(PEI、分子量1,000,000)に−Gly3Arg7を共有結合させることによって、正に帯電した主鎖を構築した。大型の非ペプチジル担体を示すために、修飾された主鎖を「PEIR」と呼んだ。対照のポリカチオンは、同じサイズ及び同じロットの未修飾のPEI(「PEI」と呼ぶ、Sigma Chemical社製、セントルイス、ミズーリ州)であった。
【0140】
治療物質の選択
本実験のために、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターによって駆動される、大腸菌βガラクトシダーゼ(βgal)の導入遺伝子全体及びフランキング配列の一部分を含む8.5キロベースのプラスミド(pSportベースの鋳型、Gibco BRL社製、ゲーサーズバーグ、メリーランド州)を使用した。この特有のプラスミドは、約2,805,000の分子量を有する。
【0141】
試料の調製
各事例において、過剰なポリカチオンを使用して、過剰な正電荷を有する最終複合体を構築した。局所適用される組成物の合計体積及び最終pHと同様に、ヌクレオチド治療薬の用量を全グループにわたって標準化した。以下のように試料を調製した。
ASと名づけた群:最終アリコート当たり8マイクログラムのβgalプラスミド(p/CMV-sport-βgal)(即ち、合計240マイクログラム)及び対照PEIを電荷比5:1で混合して均質にし、Tris−EDTA緩衝液で600マイクロリットルに希釈した。得られた組成物を5.4mlのセタフィルと混合して均質にし、インビボ実験のために200マイクロリットルずつ分取した。
ATと名づけた群:最終アリコート当たり8マイクログラムのβgalプラスミド(p/CMV-sport-βgal)(即ち、合計240マイクログラム)及び複合体非ペプチジル担体PEIR(「PEIR」)を電荷比5:1で混合して均質にし、Tris−EDTA緩衝液で600マイクロリットルに希釈した。得られた組成物を5.4mlのセタフィルと混合して均質にし、インビボ実験のために200マイクロリットルずつ分取した。
AUと名づけた群:最終アリコート当たり8マイクログラムのβgalプラスミド(p/CMV-sport-βgal)(即ち、合計240マイクログラム)及び高度に精製されたEssentia非ペプチジル担体PEIR(「純粋なPEIR」)を電荷比5:1で混合して均質にし、Tris−EDTA緩衝液で600マイクロリットルに希釈した。得られた組成物を5.4mlのセタフィルと混合して均質にし、インビボ実験のために200マイクロリットルずつ分取した。
【0142】
非ペプチジル担体及びヌクレオチド治療薬による1日1回の処置を7回受けた後の累積的な経皮送達効率を測定するための動物実験
処置を施す間、イソフルランの吸入によって動物を麻酔した。麻酔をかけた後、C57 black6マウス(1群当たりn=3)は、計量した用量200マイクロリットルの適切な処置を、背部皮膚の頭側部分(マウスの口や肢がこの領域に届かないために選択された)に適用された。動物は、脱毛処理は受けなかった。低体温を防止するために管理された熱環境において動物を回復させ、応答するようになった後、一晩、食物及び水を自由に与えた。この手順を1日のうちのほぼ同じ時間に1日1回、7日間繰り返した。7日間の処置後に、マウスをCO2吸入によって安楽死させ、盲検化された観察者が、処置した皮膚部分の全層を採取した。処置部分を3つの部分に等分し、頭側部分を10%中性緩衝ホルマリン中で12〜16時間固定し、次いで、パラフィン包埋するまで70%エタノール中で保存した。中央部分は、急速凍結し、以前に説明されているような切片上での摂氏37度のβ−ガラクトシダーゼ染色に直接使用した。尾側の処置部分は、可溶化調査のために急速凍結した。
【0143】
データ処理及び統計分析
データ収集及び画像解析は、盲検化された観察者が実施した。前述したように染色した切片の全体を、平面アポクロマートレンズの付いたNikon E600顕微鏡で撮影した。得られた画像を、β−ガラクトシダーゼ酵素活性に関して陽性の領域を決定するために、マニュアルを確認しながらImage Pro Plusソフトウェアを用いて、バッチ式画像解析処理にかけた。これらの結果をそれぞれについて細胞の横断面領域全体に標準化し、横断面の陽性染色のパーセントとして表にした。次いで、Statviewソフトウェア(Abacus社製、バークリー、カリフォルニア州)を用いた、反復測定による1元配置分散分析における95%信頼度の有意性分析により、各群の平均値及び標準誤差を続いて測定した。
【0144】
結果
結果を以下の表にまとめ、図6に示す。非ペプチジル経皮送達担体は、複合型でも超高純度型でも、PEIに対して、送達効率及び導入遺伝子発現の統計学的に有意な増大を実現した。PEIRの超高純度型は、算出される試薬の特異的活性がより高いことと一致して、標準のPEIRより高い効率になる傾向を示した。
【0145】
【表3】
【0146】
結論
非ペプチジル経皮担体は、特に、先に考察した導入遺伝子発現及び複合体全体の大きさの制約を考慮すれば、高効率で、大型の複合体を皮膚を通過して輸送することができる。効率は、ペプチジル担体のより小型の複合体で得られたものほど高くはなかったが、著しい増加が実現された。注目すべきことに、大型非ペプチジル複合体による導入遺伝子発現の分布は、ほとんど専ら毛包に位置していたのに対し、ペプチジル担体に対する結果は、断面の全体にわたって広がっていた。したがって、サイズ及び主鎖の向性は、送達のナノ力学的な標的化に使用することができる。
【実施例5】
【0147】
本実験は、1回の投与後に、標識した完全なタンパク質ボツリヌストキシンを含有する大型複合体を無傷の皮膚を通して輸送するためのペプチジル担体の使用を対照と比べて実証する。ここでは、ボツリヌストキシンを、例えば、免疫化するための物質などの大型タンパク質のモデル系として選択した。
【0148】
主鎖の選択
リジン側鎖の遊離アミンに対する末端グリシンのカルボキシルを介して、18%の飽和度で(即ち、100個のリジン残基毎に18個が−Gly3Arg7に共有結合している)、ポリリジン(分子量112,000)に−Gly3Arg7を共有結合させることによって、正に帯電した主鎖を構築した。修飾した主鎖を「KNR」と呼んだ。対照のポリカチオンは、同じサイズ及び同じロットの未修飾のポリリジン(「K」と呼ぶ、Sigma Chemical社製、セントルイス、ミズーリ州)であった。
【0149】
治療物質
ボツリヌストキシンAの「Botox(登録商標)」ブランド(Allergan社製)を本実験のために選択した。その分子量は、約150,000である。
【0150】
試料の調製
製造業者の取扱い説明書に従って、ボツリヌストキシンに水を加えて元に戻した。計算上12倍モル過剰のスルホNHS−LCビオチン(Pierce Chemical社製)を用いて、一定分量のタンパク質をビオチン標識した。標識した生成物を「Btox-b」と呼んだ。
【0151】
各事例において、陰性度の高い大型ヌクレオチド複合体の送達の際のように、過剰なポリカチオンを使用して、過剰な正電荷を有する最終複合体を構築した。正味の中性又は正電荷は、陰性度の高い細胞表面プロテオグリカン及び細胞外基質からタンパク質複合体が反発するのを防止する。局所適用される組成物の合計体積及び最終pHと同様に、Btox-bの用量を全グループにわたって標準化した。以下のように試料を調製した。
「JMW−7」と名づけた群:アリコート当たり2.0ユニットのBtox-b(即ち、合計20U)及びペプチジル担体KNRを計算上の分子量比4:1で混合して均質にし、リン酸緩衝化生理食塩水で200マイクロリットルに希釈した。得られた組成物を1.8mlのセタフィルと混合して均質にし、200マイクロリットルずつ分取した。
「JMW−8」と名づけた群:アリコート当たり2.0ユニットのBtox-b(即ち、合計20U)及びKを電荷比4:1で混合して均質にし、リン酸緩衝化生理食塩水で200マイクロリットルに希釈した。得られた組成物を1.8mlのセタフィルと混合して均質にし、200マイクロリットルずつ分取した。
【0152】
ペプチジル担体及び標識したボツリヌストキシンを用いた1回の処置後の経皮送達効率を測定するための動物実験
処置を施す間、イソフルランの吸入によって動物を麻酔した。麻酔をかけた後、C57 black6マウス(1群当たりn=4)は、背部皮膚の頭側部分(マウスの口や肢がこの領域に届かないために選択された)に適用される、計量した用量200マイクロリットルの適切な処置の局所適用を受けた。動物は、脱毛処理は受けなかった。初回の処置の30分後に、マウスをCO2吸入によって安楽死させ、盲検化された観察者が、処置した皮膚部分の全層を採取した。処置部分を3つの部分に等分し、頭側部分を10%中性緩衝ホルマリン中で12〜16時間固定し、次いで、パラフィン包埋するまで70%エタノール中で保存した。中央部分は急速凍結し、以下に要約するような、盲検化された観察者によるビオチン可視化に直接使用した。尾側の処置部分は、可溶化調査のために急速凍結した。
【0153】
以下のようにしてビオチン可視化を行った。手短に言えば、各切片を「NeutrAvidin(登録商標)」緩衝溶液に1時間浸した。アルカリホスファターゼ活性を可視化するために、断面を生理食塩水中で4回洗浄し、次いで、NBT/BCIP(Pierce Scientific社製)に1時間浸した。次いで、切片を生理食塩水中ですすぎ、平面アポクロマートレンズの付いたNikon E600顕微鏡で全体を撮影した。
【0154】
データ処理及び統計分析
盲検化された観察者は、Image Pro Plusソフトウェア(Media Cybernetics社製、シルバースプリング、メリーランド州)を用いて、バッチ式画像解析によって陽性染色の総量を測定し、それぞれについて陽性染色のパーセントを決定するために、横断面領域全体にそれを標準化した。続いて、Statviewソフトウェア(Abacus社製、バークリー、カリフォルニア州)を用いた、反復測定による1元配置分散分析における95%信頼度の有意性分析により、各群の平均値及び標準誤差を測定した。
【0155】
結果
ビオチン標識したボツリヌストキシンに対して陽性な断面領域の平均を、KNR(「EB-Btox」)又はK(「nl」)のいずれかと共にBtox-bを1回局所投与した後の全領域に対するパーセントとして報告した。これらの結果を以下の表に示し、図7に例示する。図7では、標識に対して陽性の領域を、Btox-b及びペプチジル担体KNRを含む「EB-Btox」、並びに対照としてのポリカチオンKと共にBtoxbを含む「nl」による1日1回の処置を3日間行った後の全領域に対するパーセントとして決定した。各群について平均及び標準誤差を示す。
【0156】
【表4】
【実施例6】
【0157】
実施例5は、ペプチジル経皮担体が、無傷の皮膚のマウスモデルにおける局所適用後の効率的なボツリヌストキシン輸送を可能にすることを実証した。しかし、本実験は、皮膚を通過して移動した後に、タンパク質ボツリヌストキシン複合体が機能的な形態で放出されるかどうかは示さなかった。したがって、このペプチジル担体を用いて(さらに、タンパク質を共有結合で修飾せずに)、無傷の皮膚を通って、ボツリヌストキシンを局所薬として治療的に送達させることができるかどうかを評価するために、以下の実験を構成した。
【0158】
リジン側鎖の遊離アミンに対する末端グリシンのカルボキシルを介して、18%の飽和度で(即ち、100個のリジン残基毎に18個が−Gly3Arg7に共有結合している)、分子量112,000のポリリジンに−Gly3Arg7を共有結合させることによって、正に帯電した主鎖を再び構築した。修飾された主鎖を「KNR」と呼んだ。対照のポリカチオンは、同じサイズ及び同じロットの未修飾のポリリジン(「K」と呼ぶ、Sigma Chemical社製、セントルイス、ミズーリ州)であった。実施例5の場合と同じボツリヌストキシン治療物質を使用し、同じ方法で調製した。以下のように試料を調製した。
「JMW−9」と名づけた群:アリコート当たり2.0ユニットのボツリヌストキシン(即ち、合計60U)及びペプチジル担体KNRを計算上の分子量比4:1で混合して均質にし、リン酸緩衝化生理食塩水で600マイクロリットルに希釈した。得られた組成物を5.4mlのセタフィルと混合して均質にし、200マイクロリットルずつ分取した。
「JMW−10」と名づけた群:アリコート当たり2.0ユニットのボツリヌストキシン(即ち、合計60U)及びKを電荷比4:1で混合して均質にし、リン酸緩衝化生理食塩水で600マイクロリットルに希釈した。得られた組成物を5.4mlのセタフィルと混合して均質にし、200マイクロリットルずつ分取した。
「JMW−11」と名づけた群:ポリカチオン無しの、アリコート当たり2.0ユニットのボツリヌストキシン(即ち、合計60U)をリン酸緩衝化生理食塩水で600マイクロリットルに希釈した。得られた組成物を5.4mlのセタフィルと混合して均質にし、200マイクロリットルずつ分取した。
【0159】
ペプチジル担体及びボツリヌストキシンを用いた1回の処置後の治療効率を測定するための動物実験
処置を施す間、イソフルランの吸入によって動物を麻酔した。麻酔をかけた後、C57 black6マウス(1群当たりn=4)は、つま先から大腿中央まで均一に適用される適切な処置の計量した用量400マイクロリットルの局所適用を受けた。両方の肢に処置し、両側に無作為に処置を施した。動物は、脱毛処理は受けなかった。初回の処置の30分後に、公表されているボツリヌストキシン投与後の足の可動性に関する指外転スコア(Aoki, KR.. A comparison of the safety margins of botulinum neurotoxin serotypes A, B, and F in mice. Toxicon. 2001 Dec; 39(12): 1815-20)に従って、マウスの指の外転能力を評価した。マウスの可動性も主観的に評価した。
【0160】
データ処理及び統計分析
2名の盲検化された観察者が、それぞれ独立に、指外転スコアを表にした。続いて、Statviewソフトウェア(Abacus社製、バークリー、カリフォルニア州)を用いた、反復測定による1元配置分散分析における95%信頼度の有意性分析により、各群の平均値及び標準誤差を測定した。
【0161】
結果
KNR(「JMW−9」)、K(「JMW−10」)、又はポリカチオン無しの希釈剤(「JMW−11」)と共にボツリヌストキシンを1回局所投与した後の平均指外転スコアを以下の表に示し、図8の代表的な顕微鏡写真において例示する。ペプチジル担体KNRは、互いに同等である両方の対照と比べて、統計学的に有意な、皮膚を通過してのボツリヌストキシンの機能的送達をもたらした。本実験をさらに独立して反復することにより(合計3回の独立した実験のすべてで、KNRを伴う局所的ボツリヌストキシンから統計学的に有意な麻痺が起こり対照では起こらないという同一の結論が得られた)、本発明の研究結果が確認され、Kのある場合又は無い場合(即ち、双方の対照)に局所的ボツリヌストキシンの間で有意な差は明らかにされなかった。興味深いことに、マウスは、一貫して、麻痺した肢の方へ移動した(処置された動物の100%、並びに両対照群の対照の0%で起こった)。図8で示すように、対照のポリカチオンを加えたボツリヌストキシン、又はポリカチオン無しのボツリヌストキシン(「Btox単独」)で処置された肢は、(持ち上げられたときの防衛機構として)指を動かすことができるが、ペプチジル担体KNRを加えたボツリヌストキシン(「Essentia Btoxローション剤」)で処置された肢は動かすことができなかった。
【0162】
【表5】
【0163】
結論
本実験は、ペプチジル経皮担体が、治療薬を共有結合で修飾せずに、治療有効量のボツリヌス治療薬を皮膚を通過して輸送できることを実証するのに役立つ。本実験はまた、対照において局所適用された場合はボツリヌストキシンが機能しないことも裏付ける。
【実施例7】
【0164】
本実験は、本発明の非ペプチジル担体の能力を実証する。
【0165】
主鎖の選択
PEI側鎖の遊離アミンに対する末端グリシンのカルボキシルを介して、30%の飽和度で(即ち、100個のリジン残基毎に30個が−GIy3Arg7に共有結合している)、分子量1,000,000のポリエチレンイミン(PEI)に−Gly3Arg7を共有結合させることによって、正に帯電した主鎖を構築した。修飾された主鎖は、大型の非ペプチジル担体を示すために「PEIR」と呼んだ。対照のポリカチオンは、同じサイズ及び同じロットの未修飾のPEI(「PEI」と呼ぶ、Sigma Chemical社製、セントルイス、ミズーリ州)であった。実施例5と同じボツリヌストキシン治療物質を使用した。
【0166】
製造業者の取扱い説明書に従って、「BOTOX(登録商標)」製品からボツリヌストキシンを元に戻した。各事例において、陰性度の高い大型ヌクレオチド複合体の送達の際のように、過剰なポリカチオンを使用して、過剰な正電荷を有する最終複合体を構築した。正味の中性又は正電荷は、陰性度の高い細胞表面プロテオグリカン及び細胞外基質からタンパク質複合体が反発するのを防止する。局所適用される組成物の合計体積及び最終pHと同様に、ボツリヌストキシンの用量を全グループにわたって標準化した。以下のように試料を調製した。
「AZ」と名づけた群:アリコート当たり2.0ユニットのボツリヌストキシン(即ち、合計60U)及び超高純度型の非ペプチジル担体PEIRを計算上の分子量比5:1で混合して均質にし、リン酸緩衝化生理食塩水で600マイクロリットルに希釈した。得られた組成物を5.4mlのセタフィルと混合して均質にし、200マイクロリットルずつ分取した。
「BA」と名づけた群:アリコート当たり2.0ユニットのボツリヌストキシン(即ち、合計60U)及びPEIを電荷比5:1で混合して均質にし、リン酸緩衝化生理食塩水で600マイクロリットルに希釈した。得られた組成物を5.4mlのセタフィルと混合して均質にし、200マイクロリットルずつ分取した。
【0167】
1回処置後の治療効率を測定するための動物実験
処置を施す間、イソフルランの吸入によって動物を麻酔した。麻酔をかけた後、C57 black6マウス(1群当たりn=3)は、つま先から大腿中央まで均一に適用される適切な処置の計量した用量400マイクロリットルの局所適用を受けた。両方の肢に処置し、両側に無作為に処置を施した。動物は、脱毛処理は受けなかった。初回の処置の30分後に、公表されているボツリヌストキシン投与後の足の可動性に関する指外転スコア(Aoki, KR.. A comparison of the safety margins of botulinum neurotoxin serotypes A, B, and F in mice. Toxicon. 2001 Dec; 39(12): 1815-20)に従って、マウスの指の外転能力を評価した。マウスの可動性も主観的に評価した。
【0168】
データ処理及び統計分析
2名の盲検化された観察者が、それぞれ独立に、指外転スコアを表にした。続いて、Statviewソフトウェア(Abacus社製、バークリー、カリフォルニア州)を用いた、反復測定による1元配置分散分析における95%信頼度の有意性分析により、各群の平均値及び標準誤差を測定した。
【0169】
結果
超高純度PEIR(「AZ」)、又は対照のポリカチオンPEI(「BA」)と共に行うボツリヌストキシンの1回局所投与、及び再現(本実験の1回の独立した再現)後の平均の指外転スコアを以下の表に示す。非ペプチジル担体PEIRは、対照と比べて、統計学的に有意な、皮膚を通過してのボツリヌストキシンの機能的送達をもたらした。先と同様に、動物は、麻痺した肢の方向へ同じ所をめぐりながら歩くのが観察された。
【0170】
【表6】
【0171】
【表7】
【0172】
結論
本実験は、非ペプチジル経皮担体が、ボツリヌストキシンを事前に共有結合で修飾せずに、治療量のボツリヌストキシンを皮膚を通過して輸送できることを実証した。これらの研究結果は、ペプチジル輸送物質によるものを補完する。治療効果を得るために非ペプチジル又はペプチジル担体の使用を選択できることにより、個々の状況、環境、及び適用方法に合わせることが可能になり、本発明の経皮送達の場の幅が広げられる。
【0173】
これらの実施例では、担体無しの局所的ボツリヌストキシンに対する、ペプチジル又は非ペプチジル担体を用いたボツリヌストキシン浸透が、免疫化用の抗原の経皮浸透に対する、特にボツリヌスなど他の方法では皮膚をあまり通らない抗原を用いた免疫化に対する有用性をさらに証明する。機能的ボツリヌストキシンの送達は、少なくとも4つの異なる抗原決定基が完全な状態で経皮送達されることを確実にする。いずれの実施例でも担体が無い場合は機能的ボツリヌストキシンが送達されなかったという事実は、担体が、担体が無い場合の作用物質と比べて、著しい免疫化能力を与えることを裏付ける。免疫化は、免疫応答を開始するのに十分な量の抗原が皮膚を通過することを必要とするため、この手法は、免疫化用の抗原の経皮送達を可能にする。この手法は抗原の共有結合的修飾を必要とせず、ウイルス遺伝子の導入を伴う必要がないため、安全性、安定性、及び効率の点でいくつかの利点が生じる。
【実施例8】
【0174】
本実施例は、TAT効率因子を有するペプチジル及び非ペプチジル担体、並びにボツリヌストキシンとこれらの担体の構築物の作製を詳述する。
【0175】
TAT断片GGGRKKRRQRRRへのポリエチレンイミン(PEI)の結合
側鎖保護基をすべて欠いているTAT断片GGGRKKRRQRRR(6mg、0.004mmol、Sigma Genosys社製、ヒューストン(Houston)、テキサス州)を1mlの0.1M MES緩衝液に溶解した。これに、EDC(3mg、0.016mmol)、続いてPEI 400k分子量の水中50%溶液(w:v)(約0.02ml、約2.5×10−5mmol)を加えた。試験紙によって、pHが7.5であることが測定された。さらに1ml分の0.1M MESを加え、HClを添加してpHを約5に調整した。さらにEDC(5mg、0.026mmol)を加え、pH約5の反応物を一晩攪拌した。翌朝、反応混合物を凍結し、凍結乾燥した。
【0176】
SephadexG-25(Amersham Biosciences社製、ピスカタウェイ(Piscataway)、ニュージャージー州)のカラム(直径1cm×高さ14cm)を滅菌1×PBS中でスラリー状にした。分子量19kDのFITCデキストラン(Sigma社製、セントルイス、ミズーリ州)の溶出によって、カラムを標準化した。標準は、5ml PBSで最初に溶出し、6mlで中央ピークを示し、7mlで次第に消えた。前述のものに由来する凍結乾燥された反応混合物を、少量のPBS中に溶解させ、カラムに加えた。1ml PBSを連続的に適用して、これを溶出させた。画分を回収した。最初の画分は、反応体積を含めて、溶出された最初の3mlからなった。その後の各画分は1mlであった。
【0177】
溶出された画分の280nmでのUV吸光度を分析した。5〜7mlに対応する画分3、4、及び5は、中程度の吸光度ピークを示した。すべての画分を凍結乾燥し、IRスペクトルを測定した。TAT断片の特徴的なグラニジンの3重のピーク(2800〜3000cm−1)が、画分4〜6で認められた。これらの各群は、1700cm−1でアミドの伸びも示し、したがって、TAT断片及びPEIの結合体が確認された。
【0178】
TAT断片GGGRKKRRQRRR(11.6mg、0.007mmol)を用いてもう1回繰り返しを行った。この量は、PEIアミンの30個のうち1つがTAT断片と反応することが予期されるように計算した。これは、前述の元のポリリジン−オリゴアルギニン(KNR)効率因子の組成に近い。TAT断片のPEIアミンへの共有結合の成功が前述のIRによって確認された。
【0179】
TAT断片へのポリリジンの結合
1mlの0.1M MES、pH約4.5に溶かしたポリリジン(10mg 1.1×10−4mmol; Sigma社製)の溶液に、TAT断片(4mg、0.003mmol)、次いでEDC(3.5mg、0.0183mmol)を加えた。得られた反応混合物(pH約4.5)を室温で攪拌した。反応物を−78℃で一晩凍結させた。翌日、反応混合物を室温まで解凍し、飽和炭酸水素ナトリウムの添加によってpHを約8に調整した。前述したように構成し標準化したSephadex G-25カラムに、反応混合物を直接添加した。これは、5ml後から始まる7つの1ml画分に溶出された。UV280吸光度を測定し、画分2、3、及び4において対応するピークが明らかになった。凍結乾燥された画分のIRでは、画分1〜7における特徴的なグアニジンピーク(2800〜3000cm−1)が明らかになった。画分1は1730cm−1に強いピークを生じ、1600cm−1ではピークが無かったのに対し、画分2〜6の場合は反対の結果が当てはまった。したがって、ペプチジル担体、ポリリジンに対するTAT断片の共有結合の成功が確認された。
【0180】
続いて、共有結合されたTAT断片及びPEI(PEIT)、並びに共有結合されたTAT断片及びポリリジン(KNT)をボツリヌストキシンと混合して以下のような非共有結合性複合体を形成させた。
「JL−1」と名づけた群:アリコート当たり2.0ユニットのBtox-b(即ち、合計20U)及びPEITを電荷比4:1で混合して均質にし、リン酸緩衝化生理食塩水で200マイクロリットルに希釈した。
「JL−2」と名づけた群:アリコート当たり2.0ユニットのBtox-b(即ち、合計20U)及びKNTを電荷比4:1で混合して均質にし、リン酸緩衝化生理食塩水で200マイクロリットルに希釈した。
【0181】
非共有結合性複合体の形成後、回転式微量遠心機中で12,000×gで5分間、粒子を遠心分離し、次いで、20マイクロリットルの脱イオン水中に再懸濁させ、IR用のゲルマニム減衰全反射セル上で蒸発させた。このようにして、複合体中のBtox-bの存在を確認した。全体として、本実験は、合成スキームを他の効率因子に適用できたこと、並びに、オリゴアルギニンの正に帯電した分枝又は効率基を含む担体を用いた先の実施例の場合と同様に、得られた担体は、生物学的に活性な作用物質―この場合ボツリヌストキシン―と複合体を形成できることを確認した。
【実施例9】
【0182】
本実験は、特定の抗原を画像化するためのペプチジル担体の能力を実証する。本実施例では、Essentiaペプチジル担体のうちの1つ、KNR2と、光学的イメージング部分、及び黒色腫を標的とする改変された抗体との複合体が、黒色腫の局所的検出に適している。
【0183】
主鎖の選択
リジン側鎖の遊離アミンに対する末端グリシンのカルボキシルを介して、18%の飽和度で(即ち、100個のリジン残基毎に18個が−Gly3Arg7に共有結合している)、ポリリジン(分子量150,000)に−Gly3Arg7を共有結合させることによって、正に帯電したペプチジル主鎖を構築した。修飾された主鎖を「KNR2」と呼んだ。対照のポリカチオンは、同じサイズ及び同じロットの未修飾のポリリジン(「K2」と呼ぶ、Sigma Chemical社製、セントルイス、ミズーリ州)であった。
【0184】
保存されているヒト黒色腫領域、ガングリオシド2に対するマウスモノクローナル抗体(IgG3、US Biologicals社製、スワンプスコット(Swampscott)(マサチューセッツ州)を、前述のEDC結合を介してポリアスパラギン酸アニオン短鎖鎖(MW3,000)に共有結合させて、「Gang2Asp」と呼ばれる誘導体化抗体を作製した。さらに、配列がATGC−J(今後「ATGC−J」と呼ぶ)であり、「J」は共有結合したテキサスレッド蛍光を示す、オリゴヌクレオチド(Sigma Genosys社製、ウッドランドズ(Woodlands)、テキサス州)をポリアニオンとして用いて陰イオン性のイメージング物質を設計した。本実験のために、6.35マイクログラムのGang2Aspを、0.1712マイクログラムのATGC−Jと組み合わせ、次いで、総体積200マイクロリットルの脱イオン水中で17.5マイクログラムのKNR2と複合体を形成させ、KNR2:ATGC−J:Gang2Aspの最終比を5:1:1とした。この混合物を2分間ボルテックスした。得られた複合体を、水和したCellTekヒト黒色腫スライド、及び対照のCellTekサイトケラチンスライド(SDL社製、デスプレーンズ(Des Plaines)、イリノイ州)に塗布し、5分間インキュベートした後、同じ視野における黒色腫色素の明視野分布に対する蛍光分布の写真評価をした。ATGC−J無し、又はGang2Asp無しの付加的な対照も使用した。
【0185】
結果
非共有結合性複合体は、抗体が無い場合の複合体の分布ではなく、抗体誘導体の向性に従う、光学的イメージング物質の分布を与えた。より注目すべきことには、これらの複合体は、図9に示されるように、着色された黒色腫細胞の分布に一致する分布に従った。
【0186】
結論
本実験は、局所送達に適した担体を用いる、皮膚を通過して輸送するための存続可能な複合体の作製、及び光学的技術による黒色腫の可視化を実証する。このような手法は、例えば、外科的な辺縁設定と組み合わせて使用することができ、又は、定期的な黒色腫観察で使用することができる。当業者には明らかであるように、他の皮膚関連障害の局所診断にも同様に、類似した戦略を容易に使用することができる。光学的イメージング部分の極めて高い感度を前提とすると、これらの非共有結合性複合体によって、これらの障害の検出改善がかなり有望になり得る。
【実施例10】
【0187】
この実験は、様々な大きさ及び構造のタンパク質の混合物の、経皮送達におけるペプチジル担体の浸透の効率及び深さを実証するものである。
【0188】
方法
Revitixタンパク質(マサチューセッツ州、Canton、Organogenesis社製)をビオチン化し、4℃で貯蔵した。用いたビオチン化したRevitixタンパク質の濃度は、10〜15ng/μlであった。この研究における試験物及び比較対照を表1に示す。この研究には対照は2つあり、1つはRevitixにpHを一致させた脱イオン水であり、他方はRevitix単独であった。処置グループの試験物は、ペプチジル担体入りRevitixであった。
【0189】
【表8】
【0190】
ペプチジル担体及びRevitixタンパク質で毎日1回処置し2及び9日後に累積性の経皮送達の効果を決定するための動物実験
メスC57黒6マウス(1グループ当たりn=5)をイソフルランス(isoflurance)で吸入麻酔し、次いでげっ歯類用麻酔カクテル(100mg/mlケタミン3.75ml、20mg/mlキシラジン3.00ml、及び食塩水23.25ml)0.05mlを腹腔内注射した。各マウスを麻酔した後、処置を適用する初日の2日前に、各マウスの背部上の2.0cm×2.0cmの投与部位をバリカン(Oster社製)で注意深く毛を剃った。動物にはさらなる脱毛の処置は行わなかった。動物は、セタフィルモイスチャライジングクリーム(テキサス州、Fort Worth、Galderma社製)で処置を施す間、イソフルランスのみで吸入麻酔し、背部の皮膚の頭蓋部分(選択したのは、マウスはこの領域に口又は四肢が届かないからである)に施す適切な処置の200マイクロリットルの投与量を計量して供給した。2〜5分間動物を麻酔下に置き、適切な処置を指で覆って皮膚に擦り込んだ。マウスは低体温症を防ぐために暖房を調節した環境で回復させ、反応がもたらされた後、えさ及び水は一夜任意であった。この手順を、2及び9日間、およそ同じ時間に1日1回繰り返した。処置2及び9日後、マウスをCO2の吸入により安楽死させ、最終の処置を適用した8時間後に、ブラインドの観測者が、処置した皮膚切片を完全な厚さで回収した。処置した切片を3等分し、頭蓋部分を10%中性緩衝ホルマリンで12〜16時間固定し、次いで70%エタノール中に貯蔵してからパラフィン包埋した。中央の部分を、NeutrAvidin、ヘマトキシリン&エオジン、及びクロロエステラーゼ(chloroesterase)に特異的の染色に使用した。処置した尾部の切片を、可溶性試験用に瞬間冷凍した。
【0191】
データ処理及び統計学的分析
ブラインドの観測者により、データ収集及び画像分析を行った。染色した切片を、プランアポクロマートレンズ付きNikon社製E600顕微鏡上のRetiga1300Bカメラ(カナダ、ブリティッシュコロンビア州、Burnaby、QImaging社製)で写真撮影した。ブラインドの観測者により、Image-Pro Plus分析用ソフトウェア(メリーランド州、Silver Springs、Media Cybernetics社製)を用いて、緑色チャンネル抽出物及び閾値化でポジティブ染色を判定し、ポジティブの画素で表した。引き続きStatview(登録商標)ソフトウェア(カリフォルニア州、Berkeley、Abacus Concepts社製)を用いて、各グループに対し統計学的分析を判定し、平均値及び標準誤差で表した。すべての比較に対して、反復測定による1因子分散分析及び信頼限界95%のFisherのPLSD事後検定を用いて、統計学的な有意差を判定した。
【0192】
結果
Revitixタンパク質をビオチンでラベルし、様々なタンパク質上のラベリングが良好であることが示された。NeutrAvidin染色を用いてRevitixタンパク質の経皮送達を決定した。2つの異なる倍率での、対照グループ(パネルa及びc及びe)対、処置グループ(b及びd及びf)の写真を図10に示したが、ここでa及びbは10×倍率であり、cからfは20×倍率である。ポジティブのNeutrAvidin染色に対する平均を、比較用に用いた。Revitixプラス主鎖の平均のポジティブ染色は、3日目の水(50.297±6.394対16.676±2.749)、及びRevitix単独(50.297±6.394対18.379±6.394;P=0.0041)より有意に高かった。
【0193】
【表9】
【0194】
結果
ビオチン標識したタンパク質をゲル分析することで、インビトロで標識の確認ができた。
【0195】
2日の時間点を用いて流れを決定した。この実験により、標識したタンパク質対両方の対照グループにおける経皮送達が、統計学的に有意に上昇したことが確認された。シグナルの深さも量も、担体グループ対対照において明らかに上昇した。興味深いことに、ゲル電気泳動、及び親和性の空間的評価により検証すると、多様な集団のタンパク質が、これらの予め集合した粒子と共に皮膚を通して輸送されていた。
【実施例11】
【0196】
これらの実験は、ペプチジル担体及び腫瘍抗原抗体を使用することにより、蛍光プローブの標的化された経上皮の送達が可能な、新規な分子画像プラットフォームを実証するものである。
【0197】
主鎖
正の電荷を持つペプチジルの主鎖を、−Arg9のポリリジン(MW150000)への、末端のグリシンのカルボキシル基からリジンの側鎖の遊離アミンへの飽和度18%の(即ち、リジン残基100個につき18個が−Arg9に共有結合している)共有結合により組み立てた。修飾した主鎖を「KNR」と呼んだ。対照のポリカチオンは、同じ大きさで同じロット由来の、非修飾のポリリジンであった(「K」と呼んだ、ミズーリ州、St.Louis、Sigma Chemical社製)。
【0198】
方法
プローブ設計
プローブは、静電気の相互作用に基づく自己集合である多成分系である。このような系は、官能基部分が容易に置換できる。中心となる構成成分は、正の荷電を過剰に有し、多数のCPPが結合している担体の主鎖である。積荷はすべて負に荷電している。最終の複合体は、輸送活性を維持するために、正味の正の電荷を持っている。
【0199】
インビトロの担体の毒性
以下の担体の主鎖の毒性を試験した。
1.KNR
2.R9側鎖の無いポリ−L−リジン(K)
3.Superfect(カリフォルニア州、Valencia、Qiagen社製)、市販のトランスフェクション物質
70%の集密度で増殖させたHeLa細胞(ATCC、バージニア州、Manassas)を無血清培地で2時間、担体0.4mgとインキュベートし(n=6ウェル/グループ)、次いでPBSで洗浄した。生存細胞は色素を排除するが非生存の細胞は排除しない標準の色素排除アッセイを用いて、毒性を評価した。色素の取り込みを、分光分析計(Spectronic Genesys 5UV/VIS)を用いて波長595nmで測定した。OD595測定の前にOD280値にマッチする濃度に調節して、サンプルを細胞数に標準化した。
【0200】
インビトロの経皮のレポーター遺伝子の送達
KNR担体が、生物発光レポーター遺伝子の形態の大分子量の積荷を組織のバリア(皮膚)を通して送達することができるか否かを決定するために、様々な担体の主鎖で、以下のプローブを試験した。
1.主鎖:KNR;対照−K、Superfect、担体無し
2.積荷及びイメージング成分:青色蛍光タンパク質を発現するプラスミド(BFP、8kb、MW2600000)
主鎖−プラスミド(プラスミド8μg)複合体をイオン性の相互作用により形成し(陽イオンの主鎖−陰イオンのDNA)、次いで7日間毎日、C57黒6マウス(グループ当たりのn=4)の背部の皮膚に施した。次いで、処置した皮膚切片を回収し、蛍光顕微鏡でBFP発現を評価した。遺伝子の経皮送達の効率を、真皮のみにおける全細胞中のBFP陽性細胞の%により決定した。
【0201】
画像プローブの腫瘍細胞への標的化された送達
KNRシステムが視覚的画像プローブの結腸癌抗原への標的化された送達をもたらすことができるか否かを決定するために、様々なターゲティングの構成要素で以下のプローブを試験した。
1.主鎖:KNR
2.イメージング成分:イソチオシアン酸フルオレセイン(FITC、Molecular Probes社製)で標識した4−塩基オリゴヌクレオチド(Sigma-Genosys社製)
3.ターゲティング部分:a)EDCカップリングにより陰イオンのポリアスパラギン酸(3KMW)に共有結合している癌胎児抗原(CEA;クローンCD66e、米国Biological社製)に対するモノクローナル抗体;b)対照−ポリアスパラギン酸に結合している、アクチン(クローン3G1、米国Biological社製)に対するモノクローナル抗体
KNR−画像−ターゲティング複合体を形成した、CEAを過剰発現する共培養した(n=6ウェル/グループ)ヒト結腸癌細胞(LS174T、ATCC)、及び対照のマウス繊維芽細胞(3T3、ATCC)を無血清培地で2時間、複合体とインキュベートした。細胞を引き続き、PBSで3回洗浄した。標的化された送達を、LS174T細胞及びFITCで標識した3T3細胞の定量化パーセント値により評価した。3T3細胞及びLS174T細胞を、形態学的に同定した。
【0202】
結果
KNRは、BFP対対照の経皮送達及び導入遺伝子発現において、20倍を超える効率を達成し(5%±2.12%対0.25%±0.06%、P<0.01)、分子画像に十分大きい複合体の局所送達の可能性を確証した。標的化された送達を評価すると、フルオレセイン及びTRシグナルは、それぞれ複合体の別の構成成分であっても、結腸癌細胞の40.2%の画素に共存していた(φ相関0.74、P<0.001)。対照の繊維芽細胞はフルオレセイン又はTRで最小限に標識し、結腸癌細胞の87.6%±8.3%はフルオレセインのシグナルに陽性であった。担体の主鎖の結果の相対毒性を図11に示し、遺伝子の経皮送達の効率の結果を図12に示す。
CEAに特異的な画像プローブ(パネルa)及び蛍光画像を適用した後の結腸癌(C)及び繊維芽細胞(F、紡錘形)の共培養の明視野画像は、結腸癌のフルオレセインの標識化を示しているが、図13では繊維芽細胞(パネルb)は表されていない。
【0203】
【表10】
【0204】
結果
抗原の分配と平行して、視覚的プローブの局所適用及び標的化された送達の後の、大型の複合体(BFP遺伝子)の経皮送達を、KNRを用いて実証した。これらの試験は、この系を、黒色腫の局所的サーベイランス又は結腸癌の粘膜下の検出に使用する可能性を確証している。当業者には明らかであるように、このプラットフォームを、治療上の、診断上の、又は両者の組合せの標的化された送達に用いることができる。さらに、このプラットフォームを、大腸内視鏡又はデマトスコピー(dematoscopy)(若しくは直接の視覚化)によるリアルタイム画像、並びに仮想大腸内視鏡などの画像方法に用いることができる。
【0205】
本明細書に記載された実施例及び実施形態は、例示するためのものにすぎないこと、並びにそれらを踏まえた様々な修正及び変更が当業者に示唆され、且つそれらが、本出願の精神及び範囲、並びに添付の特許請求の範囲の内に含まれることを理解されたい。本明細書に引用したすべての刊行物、特許、及び特許出願は、あらゆる目的のために、全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0206】
【図1】本発明で使用する成分の概略図である。
【図2】本発明のいくつかの実施形態の概略図である。
【図3−4】実施例2で説明した、大腸菌β−ガラクトシダーゼの導入遺伝子を含むプラスミドの経皮送達の結果を示すグラフである。
【図5】実施例3で説明した、大腸菌β−ガラクトシダーゼの導入遺伝子を含むプラスミドの経皮送達の結果を示すグラフである。
【図6】実施例4で説明した、大腸菌β−ガラクトシダーゼの導入遺伝子を含むプラスミドの経皮送達の結果を示すグラフである。
【図7】実施例5で説明した、ボツリヌストキシンの経皮送達の結果を示すグラフである。
【図8】実施例6で説明した、ボツリヌストキシンの経皮送達の結果を示す写真である。
【図9】実施例9のイメージング複合体について、黒色腫色素が沈着した細胞の明視野分布(パネルa及びc)の後に蛍光性の光学的イメージング物質(パネルb及びd)を示す、2種の異なる視野及び異なる拡大率(パネルa及びbの10倍に対し、パネルc及びdは拡大率40倍)の写真である。
【図10】実施例10に記載した、2つの異なる倍率の、ポジティブのNeutrAvidin染色を示す写真描写である。図10aの(a)及び(b)部分は10×倍率であり、(c)及び(d)部分は20×倍率である。図10bの(e)及び(f)部分は、繰り返し染色で20×倍率である。
【図11】実施例11に記載した、担体の主鎖に対する相対毒性の結果を示す図である。
【図12】実施例11に記載した、経皮の遺伝子送達効率の結果を示す図である。
【図13】実施例11に記載した、結腸癌及び繊維芽細胞の共培養の明視野画像(パネルa)、並びに結腸癌の蛍光画像(パネルb)を示す、視覚的画像プローブのCEA陽性細胞への選択的送達の写真描写である。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2004年3月3日に出願された米国仮出願第60/550014号の優先権を主張し、この内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究及び開発のもとで行われた発明に対する権利に関する記載
該当無し
【背景技術】
【0003】
皮膚は、外部環境の脅威から身体の器官を保護し、身体の温度を維持するためのサーモスタットの役割を果たす。皮膚は、いくつかの異なる層からなり、それぞれは特殊な機能を有する。主要な層には、表皮、真皮、及び下皮が含まれる。表皮は、結合組織からなる、真皮の上に横たわる上皮細胞の層状の層である。表皮と真皮の双方とも、皮下組織、即ち脂肪組織の内層によってさらに支持されている。
【0004】
表皮、即ち皮膚の最上層は、0.1〜1.5ミリメートルの厚さしかない(Inlander, Skin, New York, NY: People's Medical Society, 1-7 (1998))。表皮は、ケラチノサイトからなり、分化状態に基づいていくつかの層に分けられる。表皮は、角質層、並びに、顆粒メルピギー(melphigian)及び基底細胞からなる分裂可能な表皮にさらに分類することができる。角質層は吸湿性であり、その屈曲性及び柔軟性を維持するために少なくとも10%重量の水分を必要とする。吸湿性は、ある程度は、ケラチンの保水力に起因し得る。角質層は、その柔軟性及び屈曲性を失うと、粗く且つ脆くなり、乾燥した皮膚を生じる。
【0005】
表皮の真下に横たわる真皮は、1.5〜4ミリメートルの厚さである。これは、皮膚の3種の層のうちで最も厚い。さらに、真皮は、汗腺及び皮脂腺(孔(pore)と呼ばれる皮膚中の開口部、又は面ぽうを通して物質を分泌する)、毛穴、神経終末、並びに血管及びリンパ管を含めて、皮膚構造体の大部分が存在する場所でもある(Inlander, Skin, New York, NY:People's Medical Society, 1-7 (1998))。しかし、真皮の主成分は、コラーゲン及びエラスチンである。
【0006】
皮下組織は、皮膚の最下層である。皮下組織は、体温維持のための絶縁体としての役割と器官保護のための衝撃吸収材としての役割の両方を果たす(Inlander, Skin, New York, NY: People's Medical Society, 1-7 (1998))。さらに、皮下組織はまた、エネルギー備蓄のために脂肪を蓄える。皮膚のpHは、一般に5〜6である。この酸性度は、皮脂腺の分泌物に由来する両性のアミノ酸、乳酸、及び脂肪酸の存在に起因する。「酸外套(acid mantle)」という用語は、皮膚の大部分の領域に水溶性物質が存在することに関係する。皮膚の緩衝能は、一部には、皮膚の角質層で蓄積されているこれらの分泌物によるものである。
【0007】
しわは、加齢の証拠となる徴候の1つであり、環境的損傷から蓄積する生化学的、組織学的、及び生理的変化によって引き起こされ得る(Benedetto, International Journal of Dermatology, 38:641-655 (1999))。さらに、顔のしわの特徴的なひだ、溝、及び折り目を引き起こし得る他の2次因子もある(Stegman et al., The Skin of the Aging Face Cosmetic Dermatological Surgery, 2nded., St. Louis, MO: Mosby Year Book: 5-15 (1990))。これらの2次因子としては、重力の恒常的な引張り、皮膚に対する高頻度且つ恒常的な位置的圧力(即ち、就寝中)、及び顔筋の収縮によって生じる反復性の顔面運動が挙げられる(Stegman et al., The Skin of the Aging Face Cosmetic Dermatological Surgery, 2nded., St. Louis, MO: Mosby Year Book: 5-15 (1990))。加齢の徴候のうちのいくつかを潜在的に軽減するために、様々な技術が利用されている。これらの技術は、αヒドロキシ酸及びレチノールを含有する顔用保湿剤から、外科的処置及び神経毒素の注射にまで及ぶ。
【0008】
皮膚の主要機能のうちの1つは、水及び正常な恒常性に対して潜在的に有害な物質の輸送に対する障壁を提供することである。丈夫な半透性の皮膚が無ければ、身体は急速に水分を失うはずである。皮膚は、有害物質の身体への進入を防止するのに寄与する。大半の物質は、この障壁を透過することができないが、皮膚の透過性を選択的に高めるためにいくつかの戦略が開発され、いくらか成功を収めている。
【0009】
抗真菌物質などの非タンパク質の非ヌクレオチドの治療用の物質は皮膚を効率よく浸透することができないので、抗真菌物質の治療上の効果をもたらすために、現在では、抗真菌物質を皮膚中に注射し、又は全身に投与しなければならない。連邦食品医薬品局は、真菌感染症治療のためにそのような処置を承認している。このような治療では、抗真菌薬は、監視された注射又は投与方法により投与される。しかし、このような処置は有害な副作用を引き起こすことがある。抗真菌物質の局所適用では、適用に苦痛が無いという性質があり、抗真菌の治療を適用するための訓練は低減され、作用を及ぼし治療上の臨床の結果に到達するのに必要な投与量はより少なくなり、また、全身の送達に通常関連している副作用は限られているので、より安全でより望ましい処置の選択肢のための局所送達がもたらされる。
【0010】
免疫化に適する抗原物質は皮膚を効率よく浸透することができないので、免疫化に適する抗原物質の治療上の効果をもたらすために、現在では、毒素を皮膚中に注射しなければならない。連邦食品医薬品局は、例えば、マラリア、狂犬病、炭疽、結核の処置のためのこのような手順、又は、例えば、B型肝炎、ジプテリア(diptheria)、百日咳、破傷風、インフルエンザ菌b型、不活化ポリオウィルス、麻疹、流行性耳下腺炎、風疹、水痘、肺炎球菌、A型肝炎、及びインフルエンザなど、小児の免疫化に関するこのような手順を承認している。このような処置では、免疫化のための抗原物質は、モニターされた注射により投与される。しかし、このような処置には不快感があることがあり、より典型的にはある程度の苦痛を伴う。免疫化のための抗原物質の局所適用では、適用に苦痛が無いという性質があり、覆うことができる処置表面の領域が広くなり、治療を適用するための訓練は低減され、作用を及ぼし治療上の臨床の結果に到達するのに必要な投与量が少なくなるので、より安全でより望ましい処置の選択肢が提供される。
【0011】
他の治療薬の経皮投与も、例えば、患者の不快感が低減される可能性、血流中への治療薬の直接投与、並びに特別に作られた器具及び/又は制御放出製剤(controlled release formulations)と技術の使用を通して監視された送達をする機会があるため、関心の非常に高い領域である。
【特許文献1】米国仮出願第60/550014号
【非特許文献1】Inlander, Skin, New York, NY:People's Medical Society, 1-7 (1998)
【非特許文献2】Benedetto, International Journal of Dermatology, 38:641-655 (1999)
【非特許文献3】Stegman et al., The Skin of the Aging Face Cosmetic Dermatological Surgery, 2nded., St. Louis, MO: Mosby Year Book: 5-15 (1990)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、特定の部位への最大の送達を標的にし、又は画像化することができる、多様な治療用の又は化粧用の物質の組成物に広範に適用可能である新規な方法及び組成物を提供する。
【0013】
本発明は、インスリン、ボツリヌストキシン、抗体断片、及びVEGF以外のタンパク質の、好ましくは分子量が20000kD未満であるものの経皮送達のための製剤にさらに関する。タンパク質ベースのこのような物質は、例えば免疫化に適する抗原を含むことができる。本発明の別の態様は、例えばある種の抗真菌物質などの、非タンパク質の非ヌクレオチドの治療薬の経皮送達のための製剤に関する。本発明は、「治療用の」又は「生物学的に活性なタンパク質」という用語を用いる場合、インスリン、ボツリヌストキシン、VEGF、及び抗体断片を特に除外する。しかし、免疫化に適する抗原は免疫反応を増大するなど他の生物学的活性を有するので、これらは本発明の適切な態様に依然として含まれている。
【0014】
本発明は、抗真菌物質などの非タンパク質の非ヌクレオチドの治療薬の経皮送達のための製剤にさらに関する。適切な抗真菌物質には、例えば、アムホテリシンB、フルコナゾール、フルシトシン、イタコナゾール、ケトコナゾール、クロトリマゾール、エコノゾール(econozole)、グリセオフルビン、ミコナゾール、ナイスタチン、又はシクロピロクスなどが含まれる。
【0015】
本発明は、タンパク質ベースの抗原、非タンパク質の非ヌクレオチドの物質、又はこれらの混成体であることができる、免疫化に適する抗原物質の経皮送達のための製剤にさらに関する。適切な抗原には、例えば、環境物質、病原体、又は生物学的有害物質のための抗原が含まれる。適切な物質には、好ましくは、例えば、マラリア、狂犬病、炭疽、結核、又は、例えば、B型肝炎、ジプテリア、百日咳、破傷風、インフルエンザ菌b型、不活化ポリオウィルス、麻疹、流行性耳下腺炎、風疹、水痘、肺炎球菌、A型肝炎、及びインフルエンザなど小児の免疫化に関するものが含まれる。
【0016】
しかし、免疫化に適する抗原は、免疫反応を増大させるなど他の生物学的活性を有するので、これらは本発明の適切な態様に依然として含まれている。容易に皮膚を通過しないが、例えばインスリンよりも実質的に小型であり、最も好ましくは20000kD未満である物質、又は様々な生理学的性質を有する物質は、本発明のさらに別の態様により送達することができる。特に、免疫化に望ましい抗原は、本発明により注射無しで皮膚を通して輸送することができる。結果として、小児の免疫化、又は潜在的に重要な生物学的有害物質若しくは環境有害性に代わる注射の無い選択肢がもたらされる。さらに、例えば、ある種の抗真菌物質などの非タンパク質の非ヌクレオチドの治療は、例えば、特に、オンコミコシス(oncomychosis)などの真菌感染症、又は手指及び爪板の感染に対する局所の浸透が悪いことを特徴としている。
【0017】
本発明は、したがって、特に分子量が20000kD未満であるタンパク質、又は、例えば、ある種の抗真菌物質若しくは交替で免疫化のための物質などの非タンパク質の非ヌクレオチドの治療薬などの他の生物学的に活性な物質を含めた治療用及び診断用の物質を経皮送達するための局所用製剤にさらに関する。しかし、免疫化に適する抗原は、免疫反応を増大させるなど他の生物学的活性を有するので、これらは本発明の適切な態様に依然として含まれている。適切な抗真菌物質には、例えば、アムホテリシンB、フルコナゾール、フルシトシン、イタコナゾール、ケトコナゾール、クロトリマゾール、エコノゾール、グリセオフルビン、ミコナゾール、ナイスタチン、又はシクロピロクスなどが含まれる。適切な物質には、好ましくは、マラリア、狂犬病、炭疽、結核、又は、例えば、B型肝炎、ジプテリア、百日咳、破傷風、インフルエンザ菌b型、不活化ポリオウィルス、麻疹、流行性耳下腺炎、風疹、水痘、肺炎球菌、A型肝炎、及びインフルエンザなど小児の免疫化に関するものが含まれる。
【0018】
本発明は、生物学的に活性なタンパク質及び担体を有する組成物を提供する。担体は、正の電荷を持つ分枝基に結合しているポリマーの主鎖を含み、経皮送達に有効な量で存在している。担体と生物学的に活性なタンパク質との間の結合は、非共有結合性である。
【0019】
本発明の別の目的は、非タンパク質の非ヌクレオチドの生物学的に活性な物質及び担体を含む組成物を提供することである。担体は、正の電荷を持つ分枝基に結合しているポリマーの主鎖を含み、経皮送達に有効な量で存在している。担体と非タンパク質の非ヌクレオチドの生物学的に活性な作用物質との間の結合は、非共有結合性である。
【0020】
本発明のさらに別の目的は、生物学的に活性なタンパク質を対象に投与するためのキットを提供することである。キットは、生物学的に活性なタンパク質を対象の皮膚又は上皮に送達するための器具、及び正の電荷を持つ分枝基に結合しているポリマーの担体を有する組成物を含む。正の電荷を持つ分枝基は、−(gly)n1−(arg)n2、HIV−TAT及びその断片、並びにアンテナペディアPTD及びその断片から選択することができ、式中、下付文字n1は0から約20までの整数であり、下付文字n2は独立に約5から約25までの奇数の整数である。担体と生物学的に活性なタンパク質との間の結合は、非共有結合性である。
【0021】
本発明は、生物学的に活性なタンパク質を対象に投与するための方法も提供する。方法は、タンパク質を有効な量の担体と組み合わせて対象の皮膚又は上皮に局所的に適用することを含む。担体は、正の電荷を持つ分枝基に結合しているポリマーの主鎖を含む。担体と生物学的に活性なタンパク質との間の結合は、非共有結合性である。
【0022】
さらに、本発明は、非タンパク質の非ヌクレオチドの生物学的に活性な物質を対象に投与する方法を提供する。方法は、生物学的に活性な物質を有効な量の担体と組み合わせて対象の皮膚又は上皮に局所的に適用することを含む。担体は、正の電荷を持つ分枝基に結合しているポリマーの主鎖を含むことができる。担体と生物学的に活性な物質との間の結合は、非共有結合性である。
【0023】
本発明の一目的は、免疫化に適する抗原、及び担体を含む組成物を提供することである。担体は、正の電荷を持つ分枝基に結合しているポリマーの主鎖を含み、経皮送達に有効な量で存在する。担体と抗原との間の結合は、非共有結合性である。本発明の別の目的は、対象を免疫化するのに適する抗原を投与するためのキットを提供することである。キットは、免疫化に適する抗原を皮膚又は上皮に送達するための器具、及び担体との組成物を含む。担体は、−(gly)n1−(arg)n2、HIV−TAT及びその断片、並びにアンテナペディアPTDから選択される正の電荷を持つ分枝基に結合しているポリマーの主鎖を含み、式中、下付文字n1は0から約20までの整数であり、下付文字n2は独立に約5から約25までの奇数の整数である。担体と抗原との間の結合は、非共有結合性である。
【0024】
本発明のさらに別の目的は、対象を免疫化するのに適する抗原を投与する方法を提供することである。方法は、免疫化に適する抗原を有効な量の担体と組み合わせて対象の皮膚又は上皮に局所的に適用することを含む。担体は、正の電荷を持つ分枝基に結合しているポリマーの主鎖を含む。担体と抗原との間の結合は、非共有結合性である。
【0025】
本発明は、イメージング成分(imaging moieties)、及び/又は標的物質、及び担体を含む組成物も提供する。担体は、正の電荷を持つ分枝基に結合しているポリマーの主鎖を含み、経皮の送達に有効な量で存在している。担体とイメージング成分、又は標的物質との間の結合は、非共有結合性である。
【0026】
一態様では、本発明は、
a)正に帯電した主鎖と、
b)i)複数の結合されたイメージング部分を有する、負に帯電した第1の主鎖、或いは、負に帯電した複数のイメージング部分、
ii)複数の結合された標的物質を有する、負に帯電した第2の主鎖、或いは、負に帯電した複数の標的部分、
iii)非タンパク質の非ヌクレオチドの生物学的に活性な物質
iv)インスリン、ボツリヌストキシン、抗体断片、又はVEGF以外の治療用タンパク質
から選択される少なくとも1つのメンバーと
の非共有結合性複合体を含む組成物であって、
その複合体が正味の正電荷を有する組成物を提供する。
【0027】
本発明のこの態様では、生物学的作用物質は、治療物質又は薬用化粧物質でよい。本発明は、詳細には、「治療的」又は「生物学的に活性なタンパク質」という用語が使用される場合は、インスリン、ボツリヌストキシン、VEGF、及び抗体断片を除外する。しかし、免疫化に適した抗原は、免疫応答を開始するなど他の生物活性を有するため、これらは、本発明の適切な態様に含まれたままである。或いは、候補物質を用いて、これらの非共有結合性複合体のインビボでの有効性を測定することもできる。
【0028】
別の態様では、本発明は、少なくとも1つの結合した効果基を有する正の電荷を持つ主鎖の非共有結合性の複合体、及び視覚的画像物質などの分子画像のための物質を含む組成物を提供する。最も好ましくは、この適用では、この物質は、診断上の、及び/又は治療上の効果のための特殊な物質を標的にする。例えば、視覚的画像物質は、正の電荷を持つ主鎖、及び黒色腫の局所的診断を標的とするための黒色腫を標的とする構成成分と関連することができる。別の態様では、本発明は、対象の細胞表面に生物学的作用物質を送達するための方法であって、前記対象に前述の組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0029】
さらに別の態様では、本発明は、薬剤組成物又は薬用化粧組成物を調製するための方法であって、正に帯電した主鎖成分と、
i)複数の結合されたイメージング部分を有する、負に帯電した第1の主鎖、或いは、負に帯電した複数のイメージング部分、
ii)複数の結合された標的物質を有する、負に帯電した第2の主鎖、或いは、負に帯電した複数の標的部分、
iii)非タンパク質の非ヌクレオチドの生物学的に活性な物質
iv)インスリン、ボツリヌストキシン、VEGF、又は抗体断片以外の治療用タンパク質
から選択される少なくとも1つのメンバーとを、
製薬上又は薬用化粧品用に許容される担体と組み合わせて、正味の正電荷を有する非共有結合性複合体を形成させることを含む方法を提供する。
【0030】
さらに別の態様では、本発明は、薬剤送達組成物又は薬用化粧品送達組成物を調製するためのキットであって、正に帯電した主鎖成分と、上記のi)〜iv)の群から選択される少なくとも1つの成分とを、送達組成物を調製するための取扱い説明書と共に含むキットを提供する。
【0031】
さらに別の態様では、本発明は、分子量が20000kD未満のタンパク質などの生物学的に活性な物質、及び、例えば非タンパク質の非ヌクレオチドの治療薬(例えば、ある種の抗真菌物質、若しくは交替で免疫化のための物質)などの他の生物学的に活性な物質、並びに、すべて本明細書に記載する、結合した正の電荷を持つ分枝基又は「効果」基のある主鎖を有する正の電荷を持つ担体を含む担体を含む組成物に関する。
【0032】
生物学的に活性な物質は、タンパク質ベースの(例えば、分子量20000kD未満のタンパク質)、非タンパク質の、非ヌクレオチドの治療薬(例えば、ある種の抗真菌物質)、又は免疫化のための抗原であることができる。適切な抗真菌薬としては、例えば、アムホテリシンB、フルコナゾール、フルシトシン、イトラコナゾール、ケトコナゾール、クロトリマゾール、エコノゾール、グリセオフルビン、ミコナゾール、ナイスタチン、又はシクロピロクスなどが挙げられる。本明細書で用いるように、免疫化に適する抗原物質は、血中グルコースレベルを治療的に変化させないタンパク質ベースの抗原、非タンパク質の非ヌクレオチドの物質又はその混成体であることができる。したがって、含まれる物質は、それ自体が免疫化に適する抗原である。適切な抗原には、例えば、環境物質、病原体、又は生物学的有害物質のための抗原が含まれる。適切な抗原の他の例には、マラリア、狂犬病、炭疽、結核に対する免疫化に用いることができるもの、又は、例えば、B型肝炎、ジプテリア、百日咳、破傷風、インフルエンザ菌b型、不活化ポリオウィルス、麻疹、流行性耳下腺炎、風疹、水痘、肺炎球菌、A型肝炎、及びインフルエンザなど小児の免疫化に関するものが含まれる。
【0033】
最も好ましくは、正に帯電した担体は、比較的短鎖又は中鎖の正に帯電したポリペプチド、又は正に帯電した非ペプチジルポリマー、例えばポリアルキレンイミンである。通常は、[本発明の同じ作用物質と担体との複合体に比べて認め得るほどに]皮膚又は上皮を通過することができず、血中グルコースの低下に対して治療効果を持たないタンパク質及び非タンパク質、非ヌクレオチド治療薬は、大きく異なる表面及び生理化学的諸特性を有しており、そのため、通常は、例えばインスリンの経皮送達を可能にする技術が、タンパク質及び非タンパク質治療薬に対して適用できるどうかは不確かになっている。しかし、本明細書で記述するように、正に帯電した分枝基を有する正に帯電した主鎖を有する本発明の担体は、実に驚くべきことに、タンパク質及び非タンパク質治療薬の経皮送達を実現することができる。
【0034】
個々のタンパク質の経皮送達に適した個々の担体は、実施例で説明するもののような試験によって、容易に特定することができる。このようなタンパク質は、例えば、20,000kD未満の分子量を有する小型タンパク質でよい。本明細書においては、血中グルコースの文脈における「治療」という単語は、例えば糖尿病患者において、高血糖症の急性の症状又は徴候を軽減するのに十分な血中グルコースレベルの低下を意味する。
【0035】
本発明は、正の電荷を持つポリペプチド、又は、長鎖ポリアルキレンイミンなどの正の電荷を持つ非ペプチジルのポリマー(この場合、ポリペプチド又は非ペプチジルのポリマーは、本明細書で定義する正の電荷を持つ分枝基又は「効果」基を有する)を含む担体を、例えば、分子量が20000kD未満であるタンパク質などの生物学的に活性な物質と結合させることを含む、薬剤上の、又は化粧上の組成物を調製するための方法も提供する。或いは、担体は、例えば、非タンパク質の非ヌクレオチドの治療用の物質(例えば、ある種の抗真菌物質)などの他の生物学的に活性な物質、又は代わりに免疫化のための物質と組み合わせることができる。
【0036】
本発明はまた、担体及び治療物質を含む組成物を調製又は配合するためのキット、並びに、使用可能な調製物を作製するのに必要な追加品目、又はそのような調製物を作製するのに次いで使用することができるプレミックスも提供する。このようなキットは、本発明の方法による組成物又はその成分を適用するための、アプリケーター又は他の器具からなってよい。本明細書で使用する「器具(device)」は、例えば、本発明の方法による組成物を送達し、混合し、又はさもなければ調製するのに適する器具、又は塗布器具を言うことができる。
【0037】
本発明は、本明細書に定義する正の電荷を持つ分枝基又は「効果(efficiency)」基を有する、好ましくは短鎖から中程度の鎖長、若しくは別の長鎖の非ペプチジルのポリマー担体である正の電荷を持つポリペプチドを含む担体を含む組成物中に含まれている生物学的に活性な物質の経皮輸送のための器具も提供する。このような器具は、皮膚パッチと同じくらい構造が単純なものでもよく、又は、組成物の投与及び投与の観察をするための手段、また、場合によっては、投与された物質に対する対象の反応を観察することを含めて、1つ又は複数の態様において対象の状態を観察するための手段を含んでいてもよい、より複雑な器具でもよい。
【0038】
本発明の別の態様では、器具は、治療用の、生物学的に活性な物質、及び皮膚に別々に適用することができる担体だけを含むことができる。したがって、本発明は、皮膚を介して投与するための器具と正に帯電した担体又は主鎖を含む物質の双方を含み、対象の皮膚又は上皮に適用するのに適したキットも含む。
【0039】
一般に、本発明は、本明細書で説明するように、有効量の生物学的に活性な作用物質を正に帯電したポリペプチド、又は正に帯電した分枝基を有するポリアルキレンイミンなど非ポリペプチジルポリマーと組み合わせて局所投与することを含む、生物学的に活性な作用物質を投与する方法も含む。
【0040】
「組み合わせて」とは、2種の成分が、組み合わせた方法で投与されることを意味する。この方法は、それらを1つの組成物中で混合し、次いでそれを対象に投与するものでもよく、或いは、別々ではあるが、それらが共に作用して、有効量の生物学的に活性な作用物質の必要な送達が実現するような様式でそれらを投与するものでもよい。例えば、正に帯電した担体を含有する組成物を最初に対象の皮膚に適用し、続いて、生物学的に活性な作用物質を含有する皮膚パッチ又は他の器具を適用してもよい。
【0041】
本発明は、生物学的に活性な作用物質を、皮膚の上皮細胞以外のもの、例えば、眼上皮細胞又は胃腸管系の細胞を含めて、上皮細胞に適用する方法にも関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
本発明は、イメージング物質又は他の治療物質を選択的且つ持続的に送達するための成分ベースの系を提供する。組成物の個々の特徴は、臨床用の(bedside)製剤において望ましい成分を指定することによって、選択することができる。さらに、一態様では、イメージング部分及び特異的な標的部分は、正に帯電した主鎖と非共有結合性(好ましくは、イオン結合型)複合体を形成する、負に帯電した別々の主鎖上で提供される。これらの構成成分を複合体に非共有結合性に配置することにより、複雑さ及び損失を増大させ、また立体的制約により成功の組合せがまだ報告されていないレベルに効率を低下させる他の戦略とは対照的に、本発明は構成成分を正の主鎖上の正確な場所に結合させる必要をなくしている。本発明の別の態様では、負に帯電した主鎖を含めることを必要とせずに、正に帯電したいくつかの担体を単独で使用することによって、いくつかの物質を経皮的に送達することができる。これらの事例では、その物質又はその誘導体は、本発明の担体と非共有結合的に、好ましくはイオン結合的に結合するのに十分な機能性を有する。この文脈における「十分な」という用語は、例えば、それらの成分単独に対する粒子測定又は機能的分光測定の変化によって測定することができる結合を意味する。
【0043】
図1を参照すると、本発明がさらによく理解される。この図では、組成物は(1)正の電荷を持つ基に結合している固体の主鎖(暗色のバーに結合している暗色の丸で示されている効果基とも呼ばれる)、例えば(Gly)n1−(Arg)n2(式中、下付文字n1は3から約5までの整数であり、下付文字n2は約7から約17までの奇数の整数である)又はTATドメイン、(2)イメージング成分(明色のバーに結合している白抜きの三角)、(3)標的物質、及び/又は(4)インスリン、ボツリヌストキシン、VEGF、及び抗体断片以外の非タンパク質の非ヌクレオチドの治療薬、又はタンパク質ベースの治療物質などの生物学的に活性な物質(明色のバーに結合している白抜きの丸)で表されている。図2は、多成分の組成物の様々な例を例示しており、基は図1で述べたように表されている。例えば、図2では、正に帯電した主鎖が、イメージング成分、標的成分、治療薬を結合している、第1の多成分系組成物が例示されている。診断時/予後の画像化のために設計された第2の多成分系組成物が例示される。この組成物では、正の電荷を有する主鎖は、視覚的画像構成成分及び標的構成成分の両者と複合し、例えば、黒色腫を認識して局所の黒色腫の検出プラットフォームを作り出している。本発明は、以下により詳細に説明されるが、治療及び診断プログラムにおいて有用ないくつかの追加の組成物を提供する。
【0044】
組成物
本明細書で用いる「生物学的に活性な物質」は、疾患を治し、又は健康に関連する問題(自覚的に評価される、且つ/又は化粧用である、健康に関連する問題を含む)を軽減する治療用の物質を意味する。例えば、生物学的に活性な物質は治療用のタンパク質であることができ、ある実施形態では、好ましくは分子量が20000kD未満であるタンパク質である。しかし、本発明は、「治療用の」又は「生物学的に活性なタンパク質」の語を用いる場合は、インスリン、ボツリヌストキシン、VEGF、及び抗体断片を特に除外することに注意されたい。しかし、免疫化に適する抗原は、免疫反応を増強するなど他の生物学的な活性を有するので、これらは本発明の適切な態様に依然として含まれている。本発明の他の実施形態では、生物学的に活性な物質は、非タンパク質の非ヌクレオチドの物質(例えば、ある種の抗真菌物質)であることができる。他の適切な生物学的に活性な物質の非限定的な例は、本明細書で論じたように提供される。
【0045】
本発明のすべての態様では、本明細書に記載する担体と生物学的に活性な物質との間の結合は、非共有結合性の相互作用によるものであり、例えば、イオン性の相互作用、水素結合、ファンデルファールス力、又はそれらの組合せを含むことができる。
【0046】
ある実施形態では、本発明は、
a)正に帯電した主鎖と、
b)i)複数の結合されたイメージング部分を有する、負に帯電した第1の主鎖、又は負に帯電した複数のイメージング部分、
ii)複数の結合された標的物質を有する、負に帯電した第2の主鎖、又は負に帯電した複数の標的部分、
iii)非タンパク質の非ヌクレオチドの生物学的に活性な物質
iv)インスリン、ボツリヌストキシン、VEGF、又は抗体断片以外の治療用タンパク質
複合体が正味の正の電荷を有する
から選択される少なくとも1つのメンバーとの
非共有結合性複合体を含む組成物であって、
その複合体が正味の正電荷を有する組成物を提供する。実施形態の1つの群では、組成物は、i)〜iv)の群から選択される少なくとも2つのメンバーを含む。実施形態の別の群では、組成物は、i)及びii)の各群から少なくとも1つのメンバー、及びiii)又はiv)からの1つのメンバーを含む。好ましくは、正に帯電した主鎖は、群b)からのメンバーを合わせた長さの約1〜4倍の長さを有する。或いは、正に帯電した主鎖は、群b)からのメンバーを合わせた電荷の約1〜4倍の電荷比を有する。いくつかの実施形態では、電荷密度は均一であり、長さ及び電荷の比は、ほぼ同じである。サイズ対サイズ(長さ)の比は、成分の分子調査に基づいて決定することができ、又は、成分の質量から決定することができる。
【0047】
「正に帯電した」とは、その担体が、少なくともいくつかの液相条件下で、より好ましくは少なくとも、いくつかの生理学的に適合する条件下で正電荷を有することを意味する。より詳細には、本明細書で使用する「正に帯電した」とは、問題の基が、第4級アミンなど、すべてのpH条件下で帯電している官能基を含むこと、又は、第1級アミンの場合のpH変化など特定の液相条件下で正電荷を獲得することができる官能基を含むことを意味する。より好ましくは、本明細書で使用する「正に帯電した」とは、生理学的に適合する条件の間に、陰イオンと結合する挙動を起こす機能性を意味する。当業者には明らかであるように、正に帯電した部分を多数有するポリマーが、ホモポリマーである必要はない。当業者には明らかであるように、正に帯電した部分の他の例は従来技術で周知であり、容易に使用することができる。本発明で説明する、それ自体は治療活性を有さない正に帯電した担体は、例えば、本明細書で説明する組成物及び方法において有用である新規な化合物を表わす。したがって、本発明の別の態様では、本発明者らは、本明細書で説明するような結合された正に帯電した分枝基を有する正に帯電した主鎖を含み、それ自体は治療的な生物活性を有していない任意の担体を含む、これらの新規な化合物を詳述する。本発明は、詳細には、「治療的」又は「生物学的に活性なタンパク質」という用語が使用される場合は、抗体断片を除外する。しかし、免疫化に適した抗原は、免疫応答を開始するなど他の生物活性を有するため、これらは、本発明の適切な態様に含まれたままである。
【0048】
別の実施形態では、本発明は、生物学的に活性な作用物質と、正に帯電した主鎖を含む担体とを含む組成物を提供する。生物学的に活性な物質は、例えば、タンパク質(特に、分子量が20000kD未満のもの)、非タンパク質の非ヌクレオチドの治療薬(ある種の抗真菌物質など)、又は免疫化のための物質であることができる。担体は、例えば、正の電荷を持つポリペプチド又は非ペプチジルのポリマーであることができ、ポリアルキレンイミンなどの、ヘテロポリマー又はホモポリマーのいずれかであることができる。ポリペプチド又は非ペプチジルのポリマーは、正の電荷を持つ分枝基、又は本明細書で定義する「効果」基を有することができる。タンパク質ベースの治療薬及び非ヌクレオチド非タンパク質系治療薬はそれぞれ、複合体全体の特徴を変える、異なる生理化学特性を有する。正に帯電した主鎖として後述する物質のうちに、このような正に帯電した担体がある。
【0049】
本発明はまた、治療有効量の生物学的に活性な作用物質を投与するための方法であって、対象(ヒトでも他の哺乳動物でもよい)の皮膚又は上皮に、その生物学的に活性な作用物質と、タンパク質の対象への経皮送達を実現するのに有効な量の、分枝基を有する正に帯電した主鎖とを適用することを含む方法も提供する。この方法では、タンパク質及び正に帯電した担体は、予め混合した組成物として適用してもよく、或いは、別々に皮膚又は上皮に適用してもよい。例えば、作用物質は皮膚パッチ又は他の器具中に存在してよく、担体は、液体、又は皮膚パッチを貼付する前に皮膚に適用される他のタイプの組成物中に含有されてもよい。
【0050】
正に帯電した主鎖(positively charged backbone)
正に帯電した主鎖(正に帯電した「担体」とも呼ぶ)は、典型的には、原子の直鎖であり、生理的pHで正電荷を有する基を鎖中に含み、又は、主鎖から伸びた側鎖に結合された、正電荷を有する基を含む。好ましくは、正に帯電した主鎖それ自体は、所定の酵素活性又は治療用生物活性を有していないと考えられる。直鎖状の主鎖は、炭化水素主鎖であり、いくつかの実施形態では、窒素、酸素、硫黄、ケイ素、及びリンから選択されるヘテロ原子が割り込んでいる。主鎖の原子の大半は、通常は、炭素である。さらに、主鎖は、しばしば、繰り返し単位(例えば、アミノ酸、ポリ(エチレンオキシ)、ポリ(プロピレンアミン)、ポリアルキレンイミンなど)のポリマーであるが、ヘテロポリマーであってもよい。実施形態の1つの群では、正に帯電した主鎖は、いくつかのアミン窒素原子が、正電荷を有するアンモニウム基(4置換型)として存在するポリプロピレンアミンである。別の実施形態では、正に帯電した主鎖は、ポリアルキレンイミン、例えばポリエチレンイミン又はポリプロピレンイミンなど、約10,000〜約2,500,000、好ましくは約100,000〜約1,800,000、最も好ましくは約500,000〜1,400,000の分子量を有する、ヘテロポリマーでもホモポリマーでもよい非ペプチジルポリマーである。実施形態の別の群では、主鎖は、正に帯電した基(例えば、アンモニウム基、ピリジニウム基、ホスホニウム基、スルホニウム基、グアニジウム基、アミジニウム基)を含む複数の側鎖部分を結合している。実施形態のこの群における側鎖部分は、主鎖に沿って、距離が一定又は様々である間隔で配置されていてよい。さらに、側鎖の長さは類似していても異なっていてもよい。例えば、実施形態の1つの群では、側鎖は、1〜20個の炭素原子を有し、前述の正に帯電した基のうちの1つの(主鎖から離れた)末端で終わっている、直鎖状又は分枝状の炭化水素鎖でよい。本発明のすべての態様において、担体と生物学的に活性な作用物質との結合は、非共有結合性の相互作用によるものであり、その非限定例としては、イオン性相互作用、水素結合、ファンデルワールス力、又はそれらの組合せを挙げることができる。
【0051】
実施形態の1つの群では、正に帯電した主鎖は、正に帯電した複数の側鎖基(例えば、リジン、アルギニン、オルニチン、ホモアルギニンなど)を有するポリペプチドである。好ましくは、このポリペプチドは、約10,000〜約1,500,000、より好ましくは約25,000〜約1,200,000、最も好ましくは約100,000〜約1,000,000の分子量を有する。本発明のこの部分でアミノ酸が使用される場合、側鎖は、結合の中心においてD又はL型(立体配置R又はS)を形成してよいことが当業者には理解されよう。或いは、主鎖は、ペプトイドなどポリペプチドの類似体でもよい。例えば、Kessler, Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 32:543 (1993); Zuckermann et al. Chemtracts-Macromol. Chem. 4:80 (1992);及びSimon et al. Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 89:9367 (1992)を参照されたい。手短に言えば、ペプトイドは、α炭素原子ではなく主鎖の窒素原子に側鎖が結合されているポリグリシンである。前述したように、側鎖の一部分は、通常、正に帯電した基で終結し、正に帯電した主鎖成分を構成すると考えられる。ペプトイドの合成は、例えば、米国特許第5877278号で記述されている。この用語を本明細書で使用する場合、ペプトイド主鎖構造を有する正に帯電した主鎖は、α炭素位置に天然に存在する側鎖を持つアミノ酸から構成されていないため、「非ペプチド」とみなされる。
【0052】
例えば、ペプチドのアミド結合が、チオアミド(−CSNH−)、逆向きのチオアミド(−NHCS−)、アミノメチレン(−NHCH2−)若しくは逆向きのメチレンアミノ(−CH2NH−)基、ケト−メチレン(−COCH2−)基、ホスフィナート(−PO2RCH2−)、ホスホンアミダート及びホスホンアミド酸エステル(−PO2RNH−)、逆向きのペプチド(−NHCO−)、トランス−アルケン(−CR=CH−)、フルオロアルケン(−CF=CH−)、ジメチレン(−CH2CH2−)、チオエーテル(−CH2S−)、ヒドロキシエチレン(−CH(OH)CH2−)、メチレンオキシ(−CH2O−)、テトラゾール(CN4)、スルホンアミド(−SO2NH−)、メチレンスルホンアミド(−CHRSO2NH−)、逆向きのスルホンアミド(−NHSO2−)などの代用物によって置換されている、ポリペプチドの立体的又は電気的模倣物、並びに、例えば、Fletcher他((1998) Chem. Rev. 98:763)に総説があり、また、その中で引用されている参考文献によって詳述されている、マロン酸及び/又はgem−ジアミノ−アルキルサブユニットを有する主鎖を用いる、他の様々な主鎖を使用することができる。前述した置換の多くは、αアミノ酸から形成された主鎖に対してほぼ等配電子のポリマー主鎖を生じる。
【0053】
上記に提供した各主鎖に、正に帯電した基を有する側鎖基を結合させることができる。例えば、スルホンアミド結合の主鎖(−SO2NH−及び−NHSO2−)は、窒素原子に結合された側鎖基を有することができる。同様に、ヒドロキシエチレン(−CH(OH)CH2−)結合は、ヒドロキシ置換基に結合された側鎖基を有することができる。当業者なら、標準の合成法によって、正に帯電した側鎖基を与えるように、他の結合化学反応を容易に適合させることができる。
【0054】
特に好ましい実施形態では、正に帯電した主鎖は、−(gly)n1−(arg)n2、HIV−TAT若しくはその断片、又はアンテナペディアのタンパク質形質導入ドメイン、又はその断片(式中、下付き文字n1は、0〜20、より好ましくは0〜8、さらにより好ましくは2〜5の整数であり、下付き文字n2は、独立に、約5〜約25、より好ましくは約7〜約17、最も好ましくは約7〜約13の奇数である)を含む分枝基(効率基とも呼ぶ)を有するポリペプチドである。HIV−TAT断片が、式(gly)p−RGRDDRRQRRR−(gly)q、(gly)p−YGRKKRRQRRR(gly)q、又は(gly)p−RKKRRQRRR−(gly)q(下付き文字p及びqは、それぞれ独立に、0〜20の整数である)を有し、この断片が、その断片のC末端又はN末端を介して主鎖に結合しているような実施形態が、さらにより好ましい。好ましいHIV−TAT断片は、下付き文字p及びqがそれぞれ独立に、0〜8、より好ましくは2〜5の整数であるものである。別の好ましい実施形態では、正に帯電した側鎖又は分枝基は、アンテナペディア(Antp)タンパク質形質導入ドメイン(PTD)、又は活性を保持しているその断片である。好ましくは、正に帯電した担体は、側鎖の正に帯電した分枝基を、担体の全重量に対するパーセンテージとして、少なくとも約0.05%、好ましくは約0.05〜45重量%、最も好ましくは約0.1〜約30重量%の量で含む。式−(gly)n1−(arg)n2を有する正に帯電した分枝基の場合、最も好ましい量は、約0.1〜約25%である。
【0055】
別の特に好ましい実施形態では、主鎖部分はポリリジンであり、正に帯電した分枝基は、リジン側鎖のアミノ基に結合している。この特に好ましい実施形態で使用されるポリリジンは、約10,000〜約1,500,000、好ましくは約25,000〜約1,200,000、最も好ましくは約100,000〜1,000,000の分子量を有する。これは、例えば、分子量が70,000より大きいポリリジン、分子量70,000〜150,000のポリリジン、分子量150,000〜300,000のポリリジン、及び分子量が300,000より大きいポリリジンなど、市販されている(Sigma Chemical Company社製、セントルイス(St. Louis)、ミズーリ州、米国)ポリリジンのうちの任意のものでよい。適切なポリリジンの選択は、組成物の残りの成分に応じて変わると考えられ、組成物に全体として正味の正電荷を与え、負に帯電した成分を合わせた長さの好ましくは1〜4倍の長さを与えるのに十分と考えられる。好ましい正に帯電した分枝基又は効率基としては、例えば、−gly−gly−gly−arg−arg−arg−arg−arg−arg−arg(−Gly3Arg7)又はHIV−TATが挙げられる。別の好ましい実施形態では、正に帯電した主鎖は、ポリエチレンイミン、例えば分子量が約1,000,000のものなどの長鎖ポリアルキレンイミンである。
【0056】
前述の分枝基を有する、ポリペプチド又はポリアルキレンイミンなどの非ペプチジルポリマーを含む、正に帯電した主鎖又は担体分子は、新規な化合物であり、本発明の一態様を構成する。
【0057】
本発明の一実施形態では、正に帯電した分枝基を有する正に帯電した担体のみが、活性物質(例えば、生物学的に活性な作用物質又はイメージング/標的物質)を経皮送達するのに必要である。この事例の一実施形態では、正に帯電した担体は、前述したように、正に帯電した複数の側鎖基を有するポリペプチド(例えば、リジン、アルギニン、オルニチン、ホモアルギニンなど)である。好ましくは、ポリペプチドの分子量は、少なくとも約10,000である。別の実施形態では、正に帯電した担体は、少なくとも約100,000の分子量を有する正に帯電した複数の側鎖基を有する、ポリアルキレンイミンなどの非ペプチジルポリマーである。このようなポリアルキレンイミンとしては、ポリエチレンイミン及びポリプロピレンイミンが挙げられる。いずれの場合も、経皮送達のために唯一必要な作用物質として使用するために、正に帯電した担体分子は、−(gly)n1−(arg)n2(式中、下付き文字n1は、0〜20、より好ましくは0〜8、さらにより好ましくは2〜5の整数であり、下付き文字n2は、独立に、約5〜約25、より好ましくは約7〜約17、最も好ましくは約7〜約13の奇数である)、HIV−TAT若しくはその断片、又はアンテナペディアPTD若しくはその断片を含む、正に帯電した分枝基又は効率基を含む。好ましくは、側鎖又は分枝基は、前述した一般式−(gly)n1−(arg)n2を有する。他の好ましい実施形態は、分枝基又は効率基が、式(gly)p−RGRDDRRQRRR−(gly)q、(gly)p−YGRKKRRQRRR(gly)q、又は(gly)p−RKKRRQRRR−(gly)q(下付き文字p及びqは、それぞれ独立に、0〜20の整数である)を有するHIV−TAT断片であり、この断片が、その断片のC末端又はN末端を介して担体分子に結合しているような実施形態である。側鎖分枝基は、結合の中心においてD又はL型(立体配置R又はS)を形成してよい。好ましいHIV−TAT断片は、下付き文字p及びqがそれぞれ独立に、0〜8、より好ましくは2〜5の整数であるものである。他の好ましい実施形態は、分枝基がアンテナペディアPTD基、又はその基の活性を保持しているその断片であるものである。これらは、例えば、Console et al., J.Biol. Chem. 278:35109 (2003)により、当技術分野では公知である。
【0058】
特に好ましい実施形態では、担体はポリリジンであり、正に帯電した分枝基は、リジン側鎖のアミノ基に結合している。この特に好ましい実施形態で使用されるポリリジンは、例えば、分子量が70,000より大きいポリリジン、分子量70,000〜150,000のポリリジン、分子量150,000〜300,000のポリリジン、及び分子量が300,000より大きいポリリジンなど、市販されている(例えば、Sigma Chemical Company社製、セントルイス、ミズーリ州、米国)ポリリジンのうちの任意のものでよい。しかし、好ましくは、ポリリジンの分子量は、少なくとも約10,000である。好ましい正に帯電した分枝基又は効率基としては、例えば、−gly−gly−gly−arg−arg−arg−arg−arg−arg−arg(−Gly3Arg7)、HIV−TAT又はその断片、及びアンテナペディアPTD又はその断片が挙げられる。
【0059】
他の成分
正に帯電した主鎖成分に加えて、本発明の多成分系組成物は、以下のもの、即ち、
i)複数の結合されたイメージング部分を有する、負に帯電した第1の主鎖、又は負に帯電した複数のイメージング部分、
ii)複数の結合された標的物質を有する、負に帯電した第2の主鎖、又は負に帯電した複数の標的部分、
iii)非タンパク質の非ヌクレオチドの生物学的に活性な物質
iv)インスリン、ボツリヌストキシン、VEGF、又は抗体断片以外の治療用タンパク質
からの少なくとも2つの成分を含む。
【0060】
本明細書で説明するように、本発明のいくつかの実施形態又は組成物における関連した態様では、いくつかのタイプの物質の経皮送達を実現するために、正に帯電した主鎖又は担体を単独で使用してもよい。例えば、抗真菌物質などの非ヌクレオチドの非タンパク質の治療、又はインスリン、ボツリヌストキシン、VEGF、及び抗体断片以外のタンパク質(特に分子量が20000kD未満のもの)、並びに免疫化に適する抗原物質の組合せなどの、本明細書に記載する生物学的に活性な物質の組合せを、これらの組成物に使用することもできる。本発明の関連のある一態様では、ある実施形態又はある組成物は、磁気共鳴映像又は視覚的画像に適する物質などの画像物質を含む。これらの実施形態又は組成物は、例えば、黒色腫に対する視覚的画像物質の局所送達を提供することができる。
【0061】
負に帯電した主鎖は、イメージング部分、標的部分、及び治療物質を担うために使用される場合、生理的pHで負電荷を持つ複数の基を有する(前述したものに類似した)様々な主鎖でよい。或いは、当業者には容易に明らかとなるように、表面の負に帯電した部分を十分に有するイメージング部分、標的部分、及び治療物質は、正に帯電した主鎖とのイオン性複合体形成のために付加的な主鎖の結合を必要としない。この文脈における「十分」とは、適切な密度の負に帯電した基が、イメージング部分、標的部分、又は治療物質の表面上に存在して、正に帯電した前述の主鎖とのイオン性引力を生じることを意味する。これらの事例では、その物質又はその誘導体は、本発明の正に帯電した担体と非共有結合的に結合するのに十分な負電荷を有する。或いは、当業者には明らかであるが、他の電荷の無い部分を、本発明の担体の主鎖との非イオン性の、非共有結合性の結合を提供する十分な密度で使用することができる。イオン性又は非イオン性非共有結合性相互作用における「十分な」という用語は、例えば、それらの成分単独に対する粒子測定又は機能的分光測定の変化によって決定することができる。負に帯電した適切な基は、カルボン酸、ホスフィン酸、ホスホン酸若しくはリン酸、スルフィン酸若しくはスルホン酸などである。別の実施形態では、負に帯電した主鎖は、オリゴ糖(例えば、デキストラン)である。さらに別の実施形態では、負に帯電した主鎖は、ポリペプチド(例えば、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、又はグルタミン酸若しくはアスパラギン酸残基に非荷電アミノ酸が割り込んでいるポリペプチド)である。以下により詳細に説明する部分(イメージング部分、標的物質、及び治療物質)は、通常は、エステル結合を介して、これらのペンダント基を有する主鎖に結合することができる。或いは、負に帯電したアミノ酸に割り込み、又は負に帯電した主鎖の末端に結合するアミノ酸を用いて、例えば、ジスルフィド結合(システイン残基による)、アミド結合、エーテル結合(セリン又はトレオニンのヒドロキシル基による)などを介して、イメージング部分及び標的部分を結合することができる。
【0062】
負に帯電したポリマーが無い場合、イメージング部分及び標的部分それら自体が小型の陰イオンでもよい。当業者には容易に明らかとなるように、正に帯電した主鎖とのイオン性複合体形成のために表面に負に帯電した部分を十分に生じるように、イメージング部分、標的部分、及び治療物質それら自体を共有結合的に修飾することもできる。これらの双方の事例において、その物質又はその誘導体は、本発明の正に帯電した担体と非共有結合的に結合するのに十分な負電荷を有する。この文脈における「十分な」という用語は、例えば、それらの成分単独に対する粒子測定又は機能的分光測定の変化によって測定することができる結合を意味する。
【0063】
イメージング部分
様々な診断用部分又はイメージング部分が本発明において有用であり、診断又は画像化される状態、投与経路、作用物質の感光度、作用物質の検出に使用される器具などに応じて変わると考えられる有効量で存在する。
【0064】
適切なイメージング物質又は診断用物質の例としては、放射線不透過性の造影剤、常磁性造影剤、超常磁性造影剤、光学的イメージング部分、CT造影剤、及び他の造影剤が挙げられる。例えば、放射線不透過性造影剤(X線撮像用)としては、無機及び有機のヨウ素化合物(例えば、ジアトリゾ酸)、放射線不透過性の金属及びそれらの塩(例えば、銀、金、白金など)、並びに他の放射線不透過性化合物(例えば、カルシウム塩、硫酸バリウムなどのバリウム塩、タンタル及び酸化タンタル)が挙げられる。適切な常磁性造影剤(MR撮像用)としては、ガドリニウムジエチレントリアミン五酢酸(Gd−DTPA)及びその誘導体、並びに、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N’,N’’,N’’’−四酢酸(DOTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N’,N’’−三酢酸(DO3A)、1,4,7−トリアザシクロノナン−N,N’,N’’−三酢酸(NOTA)、1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン−N,N’,N’’,N’’’−四酢酸(TETA)、ヒドロキシベンジルエチレンジアミン二酢酸(HBED)などとの複合体を含めて、他のガドリニウム、マンガン、鉄、ジスプロシウム、銅、ユウロピウム、エルビウム、クロム、ニッケル、及びコバルト複合体が挙げられる。適切な超常磁性造影剤(MR撮像用)としては、磁鉄鉱、超常磁性酸化鉄、単結晶の酸化鉄、特に、負に帯電した主鎖に結合できるこれらの各作用物質の複合した形態が挙げられる。さらに別の適切なイメージング物質は、ヨウ化及び非ヨウ化並びにイオン性及び非イオン性CT造影剤を含むCT造影剤、並びにスピン標識や他の診断上有効な物質などの造影剤である。適切な光学的イメージング物質としては、例えば、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、Cy7.5、オレゴングリーン488、オレゴングリーン500、オレゴン、グリーン514、緑色蛍光タンパク質、6−FAM、テキサスレッド、Hex、TET、及びHAMRAが挙げられる。
【0065】
診断用物質の他の例としては、マーカーが挙げられる。放射性核種、蛍光体(fluor)、酵素、酵素基質、酵素補助因子、酵素阻害因子、リガンド(特にハプテン)など多種多様の標識を使用することができる。さらに別の有用な物質は、99mTcグルコへプトン酸など放射性の化学種又は成分で標識されたものである。
【0066】
負に帯電した主鎖にイメージング部分を結合させるための選択は、様々な条件に応じて変わると考えられる。いくつかのイメージング物質は、生理的pHで中性であり、好ましくは、負に帯電した主鎖に結合され、又は、正に帯電した担体との複合体を形成するのに十分な上記の負に帯電した部分を含むように共有結合的に修飾される。他のイメージング物質は、負に帯電した主鎖が無い場合でも、正に帯電した担体との複合体を形成するのに十分な負電荷を有する。これらの事例では、その物質又はその誘導体は、本発明の正に帯電した担体と非共有結合的に結合するのに十分な負電荷を有する。この文脈における「十分な」という用語は、例えば、それらの成分単独に対する粒子測定又は機能的分光測定の変化によって測定することができる結合を意味する。このような負に帯電したイメージング部分の例としては、磁気共鳴画像法に有用なリン酸イオンが挙げられる。
【0067】
標的物質
様々な標的物質が、本明細書で説明する組成物において有用である。通常、標的物質は、上記のイメージング部分に関して説明した負に帯電した主鎖に結合されている。標的物質は、治療物質、又は組成物の他の成分を特定の部位に向けること、或いは標的物質を含まない複合体の向性に比べて、その複合体の向性を変えることを可能にする任意の成分でよい。標的物質は、細胞外標的物質でもよい。このような作用物質は、特定の細胞区画(例えばミトコンドリア、核など)に治療物質を誘導することを可能にする、細胞内標的物質でもよい。作用物質は、最も単純には、正味電荷分布を変えることによって、複合体の向性を、より陰性度の高い細胞表面及び細胞外マトリクス成分から、より多様な細胞へ、さらには詳細には最も陰性の高い表面から離れるように変える、小型の陰イオンでよい。
【0068】
標的物質又は作用物質は、好ましくは、共有結合的に又は非共有結合的に、本発明による負に帯電した主鎖に結合している。本発明の好ましい態様によれば、標的物質は、好ましくは連結基を介して、負に帯電した主鎖成分としての機能を果たすポリアスパラギン酸、硫酸化又はリン酸化デキストランなどに共有結合している。実施形態の1つの群では、標的物質は、細胞トランスフェクションを促進するため(即ち、組成物若しくはその多様な成分が膜を通って通過するのを促進するため、又は、エンドソームから出て行くのを助けるため、若しくは核膜を通過するため)の膜融合ペプチドである。標的物質は、例えば、糖、トランスフェリン、又はアシアロ−オロソムコイドタンパク質など、細胞型の表面に存在する受容体に対する細胞受容体リガンドでもよい。
【0069】
他の有用な標的物質としては、糖、ペプチド、ホルモン、ビタミン、サイトカイン、小型の陰イオン、脂質、又はこれらの成分に由来し、それらの対応する受容体との特異的な結合を可能にする配列若しくは断片が挙げられる。好ましくは、標的物質は、糖及び/又はペプチド、細胞受容体リガンド又はその断片、受容体又は受容体断片などである。より好ましくは、標的物質は、増殖因子受容体、サイトカイン受容体、又は細胞レクチン受容体若しくは接着タンパク質受容体のリガンドである。標的物質は、アシアロ糖タンパク質受容体などのレクチンを標的とすることを可能にする糖でもよい。
【0070】
さらに別の実施形態では、負に帯電した主鎖の不在下で標的物質を使用する。実施形態のこの群では、標的物質は、前述の正に帯電した担体とのイオン性複合体を形成するのに十分な負に帯電した部分を有する。これらの事例では、その物質又はその誘導体は、本発明の正に帯電した担体と非共有結合的に結合するのに十分な負電荷を有する。この文脈における「十分な」という用語は、例えば、それらの成分単独に対する粒子測定又は機能的分光測定の変化によって測定することができる結合を意味する。実施形態のこの群に適した、負に帯電した標的物質は、生理的pHで正味の負電荷を持つタンパク質ベースの標的物質、並びに、例えば、標的とされる細胞の正味の表面電荷に基づいて標的を変えることができる、小型のポリアニオン(例えば、リン酸、アスパラギン酸、及びクエン酸)など、特定の細胞表面への接着を促進することができる標的物質である。
【0071】
生物学的に活性な作用物質
治療物質及び薬用化粧物質の双方を含めて、様々な生物学的に活性な作用物質が本発明において有用であり、予防的に又は別の方法で治療される状態、投与経路、作用物質の有効性、並びに患者の大きさ及び治療計画に対する感受性に応じて変わると考えられる有効量で存在する。
【0072】
先に記載したように、本発明は、「治療用の」又は「生物学的に活性なタンパク質」の語を使用する場合は、ボツリヌストキシン、VEGF、及び抗体断片を特に除外する。さらに、本発明は、インスリンなどの、血中グルコースレベルの治療的変化を実現することができる(例えば、高血糖症を処置するための)治療用のタンパク質を特に除外する。しかし、免疫化に適する抗原は他の生物学的活性(免疫反応を増大させるなど)を有するので、これらは本発明の適切な態様に依然として含まれている。免疫化に適する抗原物質は、血中グルコースレベルを治療的に変化させないタンパク質ベースの抗原、非タンパク質の非ヌクレオチドの物質、又はそれらの混成体であることができる。しかし、抗原をコードするヌクレオチドは、本発明の組成物には特に適さない。したがって、含まれる物質は、それ自体が免疫化に適する抗原である。適切な抗原には、例えば、環境物質、病原体、又は生物学的有害物質のための抗原が含まれる。適切な抗原物質には、好ましくは、例えば、マラリア、狂犬病、炭疽、結核の治療に関する抗原、又は、例えば、B型肝炎、ジプテリア、百日咳、破傷風、インフルエンザ菌b型、不活化ポリオウィルス、麻疹、流行性耳下腺炎、風疹、水痘、肺炎球菌、A型肝炎、及びインフルエンザなど小児の免疫化に関するものが含まれる。
【0073】
負に帯電した主鎖に結合されることができる適切な治療物質は、例えば、鎮痛薬、抗喘息薬、抗生物質、抗うつ薬、抗糖尿病薬、抗真菌薬、制吐薬、降圧薬、抗インポテンツ薬、抗炎症薬、抗悪性腫瘍薬、抗HIV薬、抗ウイルス薬、抗不安薬、避妊薬、排卵促進薬、抗血栓薬、プロトロンビン物質(prothrombotic agent)、ホルモン、ワクチン、免疫抑制薬、ビタミンなどを含めて、本質的に任意のクラスの作用物質中に存在し得る。或いは、十分な負に帯電した基を、治療物質に導入して、正に帯電した前述の主鎖とのイオン性複合体形成を生じさせることもできる。当業者には容易に明らかとなるように、リン酸化や硫酸化など多くの適切な方法が存在する。
【0074】
さらに、いくつかの作用物質は、それ自体が、正に帯電した前述の担体と結合するのに適した、負に帯電した部分を有し、負に帯電した主鎖への結合を必要としない。これらの事例では、その物質又はその誘導体は、本発明の正に帯電した担体と非共有結合的に結合するのに十分な負電荷を有する。この文脈における「十分な」という用語は、例えば、それらの成分単独に対する粒子測定又は機能的分光測定の変化によって測定することができる結合を意味する。
【0075】
適切な薬用化粧物質としては、例えば、上皮成長因子(EGF)、並びにヒト成長ホルモン及び抗酸化薬が挙げられる。
【0076】
より具体的には、本発明において有用な治療物質としては、リドカイン、ノボカイン、ブピバカイン、プロカイン、テトラカイン、ベンゾカイン、コカイン、メピバカイン、エチドカイン、プロパラカインロピバカイン、プリロカインなどのような鎮痛薬;アゼラスチン、ケトチフェン、トラキサノクス、コルチコステロイド、クロモリン、ネドクロミル、アルブテロール、メシル酸ビトルテロール、ピルブテロール、サルメテロール、テルブチリン(terbutyline)、テオフィリンなどの抗喘息薬;ネオマイシン、ストレプトマイシン、クロラムフェニコール、ノルフロキサシン、シプロフロキサシン、トリメトプリム、スルファメチルオキサゾール、βラクタム系抗生物質、テトラサイクリンなどの抗生物質;ネホパム、オキシペルチン、イミプラミン、トラザドン(trazadone)などの抗うつ薬;ビグアニジン、スルホニル尿素などの抗糖尿病薬;クロロプロマジン、フルフェナジン、ペルフェナジン、プロクロルペラジン、プロメタジン、チエチルペラジン、トリフルプロマジン、ハロペリドール、スコポラミン、ジフェニドール、トリメトベンズアミドなどの制吐薬及び抗精神病薬;アトラクリウムミバクリウム、ロクロニウム、スクシニルコリン、ドキサクリウム、ツボクラリンなどの神経筋作用物質;アムホテリジンB、ナイスタチン、カンジシジン、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、クロトリマゾール、フルコナゾール、シクロピロクス、エコナゾール、ナフチフィン、テルビナフィン、グリセオフルビン、シクロピロクスなどの抗真菌薬;プロパノロール、プロパフェノン、オキシプレノロール、ニフェジピン、レセルピンなどの降圧薬;一酸化窒素供与体などの抗インポテンツ薬;コルチゾン、ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、フルアザコルトなどのステロイド性抗炎症薬、並びにインドメタシン、イブプロフェン、ラミフェニゾン(ramifenizone)、プリオキシカム(prioxicam)などの非ステロイド性抗炎症薬を含む、抗炎症薬;アドリアマイシン、シクロホスファミド、アクチノマイシン、ブレオマイシン、ズアノルビシン(duanorubicin)、ドキソルビシン、エピルビシン、マイトマイシン、ラパマイシン、メトトレキサート、フルオロウラシル、カルボプラチン、カルムスチン(BCNU)、シスプラスチン、エトポシド、インターフェロン、フェネステリン(phenesterine)、タキソール(類似体及び誘導体を含む)、カンプトセシン及びその誘導体、ビンブラスチン、ビンクリスチンなどの抗悪性腫瘍薬;抗HIV薬(例えば、抗タンパク分解薬(antiproteolytics);アマンタジン、メチサゾン、イドクスウリジン、シタラビン、アシクロビル、ファムシクロビル、ガンシクロビル、フォスカーネット、ソリブジン、トリフルリジン、バラシクロビル、シドフォビル、ジダノシン、スタブジン、ザルシタビン、ジドブジン、リバビリン、リマンタチン(rimantatine)などの抗ウイルス薬;ダントロレン、ジアゼパムなどの抗不安薬;COX−2阻害物質;プロゲストーゲンなどの避妊薬;GPIIb/IIIa阻害物質、組織プラスミノーゲンアクチベーター、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、ヘパリンなどの抗血栓薬;トロンビン、第V、VII、VIII因子などのプロトロンビン物質;成長ホルモン、プロラクチン、EGF(上皮成長因子)などのホルモン;シクロスポリン、アザチオプリン、ミゾロビン(mizorobine)、FK506、プレドニゾンなどの免疫抑制薬、A、D、E、Kなどのビタミン;並びに他の治療的に又は医薬的に活性な作用物質が挙げられる。例えば、GOODMAN & GILMAN'S THE PHARMACOLOGICAL BASIS OF THERAPEUTICS, Ninth Ed. Hardman, et al., eds. McGraw-Hill, (1996)を参照されたい。
【0077】
最も好ましい実施形態では、生物学的物質は、分子量が20000kD未満であるタンパク質及び他の生物学的に活性な物質、例えば、ある種の抗真菌物質などの非タンパク質の非ヌクレオチドの治療薬、並びに免疫化のための抗原物質から選択される。本発明のすべての態様におけるように、適切な例は、インスリン、ボツリヌストキシン、VEGF、及び抗体断片を特に除外する。
【0078】
標的物質及びイメージング物質に関して前述したように、いくつかの生物学的物質又は薬用化粧物質は、負に帯電した主鎖の不在下で使用することができる。このような生物学的又は薬用化粧物質は、一般に、生理的pHにおいて正味の負電荷を有して、正に帯電した担体との複合体を保持するものである。例としては、通常、タンパク質又は糖タンパク質を含む免疫化用の抗原、及び多くの抗真菌薬、並びに固有の治療能を有する又は有していない黒色腫の標的化のイメージング剤が挙げられる。これらの事例では、その物質又はその誘導体は、本発明の正に帯電した担体と非共有結合的に結合するのに十分な負電荷を有する。この文脈における「十分な」という用語は、例えば、それらの成分単独に対する粒子測定又は機能的分光測定の変化によって測定することができる結合を意味する。
【0079】
結合されたイメージング部分、標的物質、又は治療物質を有する、負に帯電した主鎖
イメージング部分、標的物質、及び治療物質を含めて、上記の群の成分の3つに関して、個々の化合物は、負に帯電した主鎖に結合され、負に帯電した部分を導入するように共有結合的に修飾され、又は、前述の正に帯電した主鎖へのイオン複合体形成を与えるのに十分な負に帯電した部分をその化合物が含む場合は直接使用される。必要があれば、通常、その結合は、作用物質並びに主鎖上に存在する官能基を通じて、特定の作用物質を主鎖に共有結合させるのに使用される連結基を介している。様々な連結基が、本発明のこの態様において有用である。例えば、Hermanson, Bioconjugate Techniques, Academic Press, San Diego, CA (1996)、Wong, S.S., Ed., Chemistry of Protein Conjugation and Cross-Linking, CRC Press, Inc., Boca Raton, FL (1991)、Senter, et al., J. Org. Chem. 55:2975-78 (1990)、及びKoneko, et al., Bioconjugate Chem. 2:133-141 (1991)を参照されたい。
【0080】
いくつかの実施形態では、治療物質、診断用物質、又は標的物質は、連結基に結合するために利用可能な官能基を持たないと考えられ、最初に修飾して、例えば、ヒドロキシ、アミノ、又はチオール置換基を組み込むことができる。好ましくは、置換基は、作用物質の非干渉部分に与えられ、連結基を結合するのに使用されることができ、作用物質の機能に不利益な影響を及ぼさない。
【0081】
さらに別の態様では、本発明は、少なくとも1つの結合された効率基を有する正に帯電した主鎖の非共有結合性複合体を含む組成物を提供する。本発明のこの態様では、正に帯電した主鎖は、正に帯電した前述の主鎖のうちの本質的に任意のものでよく、また、(上記の選択された主鎖と同様に)少なくとも1つの結合された効率基も含むと考えられる。適切な効率基としては、例えば、(Gly)n1−(Arg)n2(式中、下付き文字n1は、3〜約5の整数であり、下付き文字n2は、独立に、約7〜約17の奇数である)又はTATドメインが挙げられる。例えば、TATドメインは、式(gly)p−RGRDDRRQRRR−(gly)q、(gly)p−YGRKKRRQRRR−(gly)q、又は(gly)p−RKKRRQRRR−(gly)qを有することができ、式中、下付文字p及びqは、各々独立に0〜20までの整数であり、断片のC末端又はN末端のいずれかにより担体分子に断片が結合している。側鎖の分枝基は、結合の中央でD−体又はL−体(R又はS配座)のいずれかを有することができる。好ましいHIV−TAT断片は、下付文字p及びqが各々独立に0〜8までの、より好ましくは2〜5までの整数であるものである。
【0082】
ある種の他の分子の経皮送達
上記に記載した正の電荷を持つ担体を、タンパク質及び他の生物学的に活性な物質(例えば、分子量20000kD未満のタンパク質、ある種の抗真菌物質などの非タンパク質の非ヌクレオチドの治療薬、又は免疫化のための抗原物質)を経皮送達するために用いることができることが見出されている。正に帯電した担体を使用すると、皮膚細胞の内外双方向へのタンパク質又はマーカー遺伝子の送達、及びその下の組織への有効量且つ活性型でのその送達が可能になる。例えば、この方法の局所送達は、特に、抗真菌物質、免疫化に適する抗原物質、又は、例えば黒色腫などの皮膚の障害の分子画像のための物質の場合に、投与量の減少をもたらし、毒性を低下させ、注射可能の又は埋め込み可能の材料に関して望ましい効果に対するより正確な投与量の最適化を可能にすることができる。この実施形態は、いくらかの好ましくは多価の小型陰イオン(例えば、リン酸、アスパラギン酸、又はクエン酸)を含んでもよく、或いは、このようなポリアニオンが実質的に無い状況で実施してもよい。
【0083】
同様に、「タンパク質」という用語は、天然供給源から抽出されたタンパク質、並びに、化学的又は組換え手段によって合成的に得ることができるタンパク質も含む。タンパク質は、改変型、又は、例えば組換えペプチド、融合タンパク質、若しくはハイブリッド分子の形態でもよい。いくつかの場合におけるタンパク質は、必要な活性を有するより大型のタンパク質分子の部分であることができる。好ましいタンパク質は、分子量が20000kD未満であるタンパク質(例えば、免疫化のための抗原など、経皮の組成物及び方法に用いることができるものなど)であり、生理化学的性質が広く変化することができる。同様に、抗真菌物質を含む非タンパク質の非ヌクレオチドの治療薬は、天然の供給源から得てもよく、又は合成してもよい。
【0084】
本発明の組成物は、好ましくは、対象又は患者(即ち、特定の治療を必要とするヒト又は他の哺乳動物)の皮膚又は上皮に適用される製品の形態である。「必要とする」という用語は、医薬及び健康の双方に関連した必要性、並びに、より化粧的、美容的、又は主観的になる傾向がある必要性を含むことが意図されている。組成物は、例えば、顔組織の外観を変更又は改善するのに使用することもできる。
【0085】
一般的に、組成物は、タンパク質(特に分子量が20000kD未満であるもの)又は他の生物学的に活性な物質(例えば、非タンパク質の非ヌクレオチドの治療薬、若しくは交替で正の電荷を持つ担体と共に投与する免疫化するための物質)、及び通常は1つ又は複数のさらなる薬学的に許容できる担体又は賦形剤を混合することにより調製される。最も単純な形態では、それらは、緩衝化してもよい生理食塩水など、製薬上許容される単純な水性の担体又は希釈剤を含有してよい。しかし、これらの組成物は、皮膚科学的に又は製薬上許容される担体、ビヒクル、又は媒体(即ち、それらが適用される組織に適合性のある担体、ビヒクル、又は媒体)を含む局所用の薬剤組成物又は薬用化粧組成物において一般的な他の成分を含有してよい。本明細書では、「皮膚科学的に又は製薬上許容される」という用語は、組成物又はその成分が、これらの組織と接触して使用するのに、又は、通常は、過度の毒性、不適合性、不安定性、アレルギー反応などを起こさずに、患者に使用するのに適していることを意味する。必要に応じて、本発明の組成物は、考察中の分野、特に化粧品及び皮膚科学の分野で従来使用されている任意の成分を含んでよい。本発明のすべての態様において、担体と生物学的に活性な作用物質との結合は、非共有結合性の相互作用によるものであり、例えば、イオン性相互作用、水素結合、ファンデルワールス力、又はそれらの組合せを挙げることができる。
【0086】
組成物は、予め調製しても、或いは、例えば、投与時点又は投与前に構築するためのキットを提供することによって、投与時に調製してもよい。或いは、前述したように、例えば、治療用タンパク質と、正に帯電した担体(及び場合によっては他の成分)を含有する液体、ゲル、クリームなどとを含む、皮膚パッチ又は他の分配器具を含むキットを提供することによって、治療用タンパク質、並びに正に帯電した主鎖を別々の形態で患者に投与してもよい。この特定の実施形態では、担体を含む液体又は他の組成物を皮膚に適用し、続いて、皮膚パッチ又は他の器具を適用することによって、この組合せを投与する。
【0087】
本発明の組成物は、有効量の治療用タンパク質又はイメージング物質若しくは標的物質などの他の有益な物質を投与するために適用される。経皮送達の場合、「有効量」という用語は、担体が無い場合の作用物質に比べて、生物学的に活性な作用物質のより多くの経皮送達を実現する、任意の組成物又は方法を意味する。抗原に対する、「有効量」は、抗原を適用後、又は一連の適用後、対象に抗原に対する免疫反応を増大させるのに十分な量を意味する。抗真菌薬の場合、「有効量」とは、真菌感染の症状又は徴候を軽減するのに十分な量を意味する。治療的に血中グルコースレベルを変えない他の生物学的に活性な作用物質の場合、「有効量」とは、著しい毒性を引き起こすことなく、例えば、Physicians' Desk Referenceなどでその作用物質について特徴づけられている所定の生物学的又は治療的効果を発揮するのに十分な量を意味する。本発明は、詳細には、「治療的」又は「生物学的に活性なタンパク質」という用語を使用する場合、抗体断片を除外する。しかし、免疫化に適した抗原は、免疫応答を開始するなど他の生物活性を有するため、これらは、本発明の適切な態様に含まれたままである。
【0088】
これらの組成物は、単回投与による治療として適用するために、治療用タンパク質、或いは、他の生物学的に活性な作用物質の適切な有効量を含有してもよく、或いは、投与箇所で希釈するため、又は、複数回適用で使用するために、より濃く濃縮してもよい。一般的に、タンパク質(特に分子量が20000kD未満のもの)、又は他の生物学的に活性な物質を含む組成物は、約1×10−20から約25重量%までの生物学的に活性な物質、及び約1×10−19から約30重量%までの正の電荷を持つ担体を含む。通常、非タンパク質非ヌクレオチド系治療物質、或いは免疫化用の作用物質を含有する組成物は、約1×10−10〜約49.9重量%の抗原、及び約1×10−9〜約50重量%の正に帯電した担体を含有する。担体分子の量、又は生物学的に活性な作用物質に対するその比は、問題の組成物において使用するためにどの担体が選択されるかによって変わると考えられる。所与の事例における担体分子の適切な量又は比は、例えば、以下に説明するもののような1種又は複数の実験を行うことによって、容易に決定することができる。
【0089】
本発明の組成物は、溶液剤、乳剤(マイクロエマルジョンを含む)、懸濁剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、粉末剤、又は、皮膚及び組成物を用いることができる他の組織に適用するために用いる他の典型的な固体若しくは液体の組成物を含むことができる。このような組成物は、生物学的に活性な物質及び担体分子の他に、このような製品に通常用いる他の成分、例えば、抗菌物質、保湿剤及び水和剤、浸透剤、保存剤、乳化剤、天然若しくは合成の油、溶剤、界面活性剤、洗浄剤、ゲル化剤、皮膚軟化剤、抗酸化剤、香料、充填剤、増粘剤、ワックス、臭い吸収剤、色素、着色剤、粉末、粘度調整剤及び水、並びに任意選択で含む麻酔薬、かゆみ止めの添加物、植物抽出物、品質改良剤、暗色化剤若しくは明色化剤、光輝顔料、湿潤剤、雲母、ミネラル、ポリフェノール、シリコーン若しくはその誘導体、日焼け止め、ビタミン、並びに植物性薬物を含むことができる。
【0090】
本発明による組成物は、タンパク質物質と担体とが、それらが制御された方式で時間をかけて皮膚上に放出されるように、ある物質内にカプセル化又は別の方法で含有されている、制御放出組成物又は持続放出組成物の形態でよい。送達しようとする物質と担体は、マトリックス、リポソーム、小胞、マイクロカプセル、マイクロスフェアなどの内部に、又は、固体粒子物質内部に含有されてよく、これらはすべて、1種又は複数の物質を時間をかけて放出するように選択及び/又は構築される。治療物質及び担体は、一緒に(例えば、同じカプセル内に)、又は別々に(別々のカプセル内に)カプセル化されてよい。
【0091】
本発明の組成物を対象に投与することは、当然、本発明の別の態様である。
【0092】
制御放出及び/又は観察を伴う、皮膚パッチなどによる投与は、一般的な方法であるらしく、したがって、本発明の組成物は、しばしば、皮膚パッチ又は他の器具に含有されて提供されることになる。免疫化に適した抗原の場合、最も好ましくは、医師又は他の医療従事者によって、又はその指示のもとで組成物を投与する。1回の治療で、又は、長期にわたる一連の定期的治療においてそれらを投与してよい。前述の目的のために免疫化に適した抗原を経皮送達するために、皮膚、又は爪体及び周囲の皮膚に前述の組成物を局所的に適用する。同様に、抗真菌薬などの非タンパク質非ヌクレオチド系治療薬の場合、好ましくは、医師又は他の医療従事者の指示のもとで組成物を投与する。1回の治療で、又は、長期にわたる一連の定期的治療においてそれらを投与してよい。治療用タンパク質を経皮送達するために、前述の組成物を局所的に皮膚に適用する。
【0093】
医療従事者の指示のもとで、又は患者若しくは対象によって、本発明の組成物を投与するためのキットは、この目的に適する特別仕様でつくられた(custom)アプリケーターも含んでよい。指の爪若しくは足の爪板、又は周囲の解剖学的構造に対する塗布器具の場合には、このような特別仕様でつくられたアプリケーターは、例えば、人工の爪板、ラッカー、色素入りマニキュア液、ゲル、又はこれらのいずれか若しくはすべての組合せを含むことができる。
【0094】
別の態様では、本発明は上記に記載した正の電荷を持つ担体と有効な量の生物学的に活性な物質(例えば、分子量20000kD未満のタンパク質、免疫化に適する抗原、抗真菌物質若しくは非タンパク質の非ヌクレオチドの治療薬)との組合せを局所投与するための方法に関する。前述したように、適切なタイプ及び量のこれら2種の物質、具体的には担体及び生物学的に活性な作用物質を含有する本発明の組成物を使用することによって、投与を実施することができる。しかし、本発明は、必ずしも同じ組成物中ではないが、これら2種の物質を一緒に投与することも含む。例えば、治療物質を、乾燥した形態で皮膚パッチ又は他の分配器具に組み入れてよく、また、それら2種が一緒に作用して所望の経皮送達をもたらすように、パッチを適用する前に皮膚表面に正に帯電した担体を適用してもよい。この点で、2種の物質(担体及び生物学的に活性な作用物質)は、一緒に若しくは協同して作用し、又は、おそらくは相互作用してインサイチュで組成物又は組合せを形成する。
【0095】
組成物の調製方法
別の態様では、本発明は、薬剤組成物を調製するための方法であって、正に帯電した主鎖成分と、
i)複数の結合されたイメージング部分を有する、負に帯電した第1の主鎖、或いは、負に帯電した複数のイメージング部分、
ii)複数の結合された標的物質を有する、負に帯電した第2の主鎖、或いは、負に帯電した複数の標的部分、
iii)非タンパク質の非ヌクレオチドの生物学的に活性な物質
iv)インスリン、ボツリヌストキシン、VEGF、又は抗体断片以外の治療用タンパク質と、正味の正の電荷を有する非共有結合性の複合体を形成するための薬学的に許容できる担体と
から選択される少なくとも1つのメンバーとを組み合わせることを含む方法を提供する。
【0096】
本発明のいくつかの実施形態では、いくつかのタイプの物質の経皮送達を実現するために、正に帯電した主鎖又は担体を単独で使用してもよい。この場合、約1×10−20〜約25重量%の生物学的に活性な作用物質、及び約1×10−19〜約30重量%の正に帯電した担体を含有する組成物及び方法が好ましい。抗真菌物質などの非ヌクレオチドの非タンパク質の治療薬、黒色腫などの皮膚の障害を診断するための選択的画像物質、又は免疫化に適する抗原物質を含む組成物及び方法も好ましく、この場合、組成物及び方法は1×10−10から約49.9重量%までの抗原、及び約1×10−9から約50重量%までの正の電荷を持つ担体を含む。
【0097】
本発明の広範な適用範囲は、様々な薬剤組成物を調製できる容易さによって示される。通常、組成物は、様々な正味の正電荷を有する組成物を得るための比及び順序で、正に帯電した主鎖成分を対象となる所望の成分(例えば、標的部分、イメージング部分、若しくは治療成分)と混合することによって調製される。多くの実施形態で、組成物を投与するための製薬上許容される担体及び希釈剤を用いることによって、例えば枕元で、組成物を調製することができる。或いは、組成物は、諸成分を適切に混合することによって調製し、次いで、凍結乾燥し、使用又は適切な送達媒体中に配合するまで、(通常は室温以下で)保存することもできる。
【0098】
組成物は、様々な投与方法に適する混合物を提供するように配合することができ、その非限定的な例として、局所の、皮膚の、経口の、直腸の、経膣の、非経口の、鼻腔内の、静脈内の、筋肉内の、皮下の、眼内の、及び経皮の投与が含まれる。本発明の薬剤組成物は、好ましくは、注射剤、特に所望の器官への直接注射、又は(皮膚及び/若しくは粘膜への)局所投与用に製薬上許容されているビヒクルを含有する。薬剤組成物は、特に、滅菌の、等張の溶液、又は、滅菌水又は生理学的食塩水の添加により再構成して注射可能の溶液を調製することができる乾燥組成物(例えば、凍結乾燥された組成物)であることができる。
【0099】
或いは、組成物を局所的に適用すべき場合(例えば、経皮送達が望まれる場合)、(例えば、皮膚パッチを用いることによって)対象となる1種又は複数の成分を乾燥した形態で皮膚に適用することができる。ここで、正に帯電した主鎖又は担体で皮膚が別々に処置される。この方式では、組成物全体は、インサイチュで本質的に形成され、患者又は対象に投与される。
【0100】
組成物の使用方法
送達方法
様々な方法を用いて、インビボ又はエックスビボで、対象、細胞、又は標的部位に本発明の組成物を送達することができる。実際には、治療すべき組織に最終的に組成物を接触させるのに通常使用される経路のうちの任意のものを使用することができる。好ましくは、組成物は、製薬上許容される担体と共に投与される。このような化合物を投与する適切な方法は、当業者にとって利用可能且つ周知であり、個々の組成物を投与するのに複数の経路を使用できるが、しばしば、特定の経路が、別の経路と比べてより即時的且つより効果的な反応をもたらし得る。製薬上許容される担体は、1つには、投与される個々の組成物によって、並びに、その組成物を投与するのに使用される個々の方法によって、決定される。したがって、本発明の薬剤組成物の多種多様な適切な製剤が存在する(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed.1985を参照されたい)。
【0101】
投与は、例えば、静脈内、局所、腹腔内、真皮下、皮下、経皮、筋肉内、経口、関節内、非経口、鼻腔内、又は吸入によってでよい。したがって、投与に適した部位としては、それだけには限らないが、皮膚、気管支、胃腸管、眼、及び耳が挙げられる。これらの組成物は、通常、従来の薬剤用担体又は賦形剤を含み、また、他の医薬品物質、担体、補助剤などをさらに含むことができる。好ましくは、製剤は、本発明の組成物の約5重量%〜75重量%となり、残りの部分は、適切な医薬品賦形剤からなる。当技術分野で周知の方法によって、適切な賦形剤を、個々の組成物及び投与経路に合わせることができる(例えば、REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES, 18TH ED., Mack Publishing Co., Easton, PA (1990)を参照されたい)。
【0102】
製剤は、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、坐剤、停留浣腸(retention enema)、クリーム剤、軟膏剤、ローション剤、エアロゾルなど、固体、半固体、凍結乾燥した粉末、又は液体剤形の形態をとることができる。薬剤組成物が、丸剤、錠剤、又はカプセル剤の形態をとる実施形態では、製剤は、生物学的に活性な組成物と共に、以下のもの、即ち、ラクトース、スクロース、リン酸二カルシウムなどの希釈剤;デンプンやその誘導体などの崩壊剤(distintegrant);ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤;並びに、デンプン、アカシアガム、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、セルロース及びその誘導体などの結合剤のうちの任意のものを含有してよい。組成物は、アンプルやバイアルなどの、単位投与又は多回投与用の密閉容器に入れて提供され得る。患者に投与される用量は、時間の経過と共に患者の有益な治療応答を実現するのに十分な量でなくてはならない。
【0103】
いくつかの実施形態では、持続放出製剤は、生物又は培養中の細胞に投与することができ、また、これらは、所望の組成物を含むことができる。例えば、注射によって、生物の組織に持続放出組成物を投与することができる。「持続放出(sustained-release)」とは、その組成物が、粘性がより低い媒体、例えば、生理食塩水溶液中のその組成物を投与することによって実現されると考えられるよりも長い期間、周辺組織又は培養中の細胞によって取込まれるのに利用可能とされていることを意味する。
【0104】
単独で又は他の適切な成分と組み合わせて、組成物を、吸入によって投与され得る、エアロゾル製剤(即ち、「噴霧される」ことができる)に調製することができる。エアロゾル製剤は、ジクロロジフルオルメタン、プロパン、窒素など加圧された許容される高圧ガス中に入れてよい。吸入による送達のために、乾燥粉末(例えば、Nektar)としてこれらの組成物を送達することもできる。
【0105】
例えば、静脈内、筋肉内、皮内、及び皮下の経路によるものなど非経口投与に適した製剤としては、抗酸化薬、緩衝剤、静菌薬、及び製剤を所期の受容者の血液と等張且つ相溶性の溶質を含有し得る水性及び非水性の等張性無菌注射液、並びに、懸濁化剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤、及び保存剤を含み得る水性及び非水性の無菌懸濁剤が挙げられる。
【0106】
他の投与方法としては、それだけには限らないが、血管形成バルーン、カテーテル、及びゲル形成を用いた投与が挙げられる。血管形成バルーン、カテーテル、及びゲル形成による送達の方法は、当技術分野で周知である。
【0107】
イメージング法
当業者には、様々なイメージング用途に合わせて本発明の組成物を調整できることが理解されよう。一実施形態では、成分ベースの系をイメージングに用いて、仮想結腸鏡検査を実施することができる。現在のところ、仮想結腸鏡検査は、本質的には、結腸に造影剤を注入し、CT上で画像を可視化し、次いで、3D画像を復元するものである。MRに対しても同様の技術を使用することができる。しかし、大便、粘液、及び空気はすべて造影剤の妨害物となり、結腸壁の復元物に偽の表面を与えることがある。細胞標的の造影剤の添加は、これらの妨害物に打ち勝って真の壁復元物を実現するのに寄与し、また、偽陽性及び偽陰性の双方を回避するのに寄与すると考えられる。この場合に成分ベースの系を適用することができるいくつかの方法がある。最も単純には、陽イオン性の効率主鎖を、単一の造影剤、例えば、CT、MR、又は光学的な造影剤と共に適用することができる。このようにして、細胞表面の層を可視化し、異常又は妨害物があれば、画像復元物の中で詳細にすることができる。しかし、成分ベースの系は、特異的な第2の作用物質の添加という追加の選択肢を提供する。この作用物質は、陽イオン性の効率主鎖、異なるイメージング部分、及び標的成分、例えば、結腸癌に特徴的な2種の抗原を標的とする成分からなり得た。単純なものから診断用までのイメージング部分は、1種がCT造影剤で、もう一方がMR造影剤となるように、又は、両方がMR造影剤で、1種がT2剤でもう一方がT1剤であるように、選択することができる。この方式では、以前のとおりに表面を復元することができ、また、腫瘍抗原に特異的な任意の領域を可視化し、元の復元物に重ねることができる。さらに、標的化診断システムにも同様に治療物質を組み入れることができる。(また一方では治療と組み合わせて)同様の戦略を限局性腸炎及び潰瘍性大腸炎に適用することができる。或いは、例えば、黒色腫を診断又は管理する場合に、好ましくは蛍光性イメージング部分と併用して、光学的なイメージング部分及び検出法を使用することができる。これらの実施形態では、検出は視覚的で、画像支援で、又は、例えば、暗視野画像分析によるなど、完全に画像ベースであることができる。
【実施例1】
【0108】
本実施例は、本発明の正に帯電した主鎖又は担体を用いる、極めて大型の複合体、即ち青色蛍光タンパク質(BFP)導入遺伝子を含むプラスミドの経皮送達を例示する。
【0109】
主鎖の選択
リジン側鎖の遊離アミンに対する末端グリシンのカルボキシルを介して、18%の飽和度で(即ち、100個のリジン残基毎に18個が−Gly3Arg7に共有結合している)、分子量150,000のポリリジンに−Gly3Arg7を共有結合させることによって、正に帯電した主鎖を構築した。第2のサイズのペプチジル担体を示すために、修飾された主鎖を「KNR2」と呼んだ。対照のポリカチオンは、同じサイズ及び同じロットの未修飾のポリリジン(「K2」と呼ぶ、Sigma Chemical社製、セントルイス、ミズーリ州)であった。別の対照ポリカチオン、即ち、活性化されたデンドリマーベースの作用物質である「Superfect(登録商標)」(Qiagen社製)を、高いインビトロトランスフェクション速度の基準として選択した(即ち、同時に陽性対照及びインビトロの毒性に対する現況技術の効率の基準となる)。
【0110】
治療物質の選択
サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターによって駆動される、青色蛍光タンパク質(BFP)の導入遺伝子全体及びフランキング配列の一部分を含む8キロベースのプラスミド(pSportベースの鋳型、Gibco BRL社製、ゲーサーズバーグ(Gaithersburg)、メリーランド州)を使用した。BFPは、トランスフェクトされ、その後、その遺伝子を転写及び翻訳する細胞に対する同定可能なマーカーとしての機能を果たし、蛍光顕微鏡下で直接(即ち、さらに染色せずに)可視化することができる。したがって、有効搭載量(payload)の送達前に、複合体が原形質膜と核膜の双方を通過した細胞のみが、導入遺伝子を発現することができる。この特有のプラスミドは、約264万の分子量を有し、したがって、これらの複合体を介する極めて大型の治療薬の送達を評価するために選択された。
【0111】
試料の調製
各事例において、過剰なポリカチオンを使用して、過剰な正電荷を有する最終複合体を構築した。電荷密度の増加によりサイズは大きくなる(即ち、より多くの主鎖が複合体1つにつき存在する)が、複合体当たりの効率因子密度の増加が、これらの変化を相殺することができる。したがって、最良の結果は、低い比率(即ち、大きさに基づいて)又は高い比率(即ち、効率因子密度に基づいて)で起こり得、ここでは、KNR2についてどちらも評価する。K2効率及びSuperfect効率の最適な比は、製造業者の推奨及び最大効率に関する以前の報告に基づいて選択した。細胞培養において評価される組成物の合計体積及び最終pHと同様に、ヌクレオチド治療薬の用量を全グループにわたって標準化した。
【0112】
以下の混合物を調製した。
1)CMVプロモーターによって駆動される、青色蛍光タンパク質を発現するプラスミドの0.5mg/mL溶液に対して4:1の電荷比のK2。
2)CMVプロモーターによって駆動される、青色蛍光タンパク質を発現するプラスミドの0.5mg/mL溶液に対して15:1の比のKNR2。
3)CMVプロモーターによって駆動される、青色蛍光タンパク質を発現するプラスミドの0.5mg/mL溶液に対して10:1の比のKNR2。
4)CMVプロモーターによって駆動される、青色蛍光タンパク質を発現するプラスミドの0.5mg/mL溶液に対して4:1の比のKNR2。
5)CMVプロモーターによって駆動される、青色蛍光タンパク質を発現するプラスミドの0.5mg/mL溶液に対して1.25:1の比のKNR2。
6)CMVプロモーターによって駆動される、青色蛍光タンパク質を発現するプラスミドの0.5mg/mL溶液に対して5:1の電荷比の、製造業者の推奨によるSuperfect。
【0113】
細胞培養手順
細胞培養実験はすべて、処置群の正体について盲検化された観察者によって実施された。6ウェルプレートで、70%コンフルエントなHA−VSMC初代ヒト大動脈平滑筋細胞(21継代;ATCC、ロックビル(Rockville)、メリーランド州)に各溶液1.0mLを加え、10%血清を含むM−199中で、摂氏37度、10%CO2で48時間増殖させた。未処置の対照ウェルも同様に評価し、1群につきn=5ウェルで各群を評価した。
【0114】
効率分析
盲検化された観察者は、BFPフィルター及び平面アポクロマートレンズの付いたNikon E600エピ蛍光顕微鏡を用いて、各ウェルの表面から60度、180度、及び200度で、未処置の細胞プレートの低倍率写真(全体で10倍)を撮影した。Image Pro Plus 3.0画像解析セット(Media Cybernetics社製、シルバースプリング(SilverSpring)、メリーランド州)を用いて、陽性の細胞領域全体に対するパーセントを測定した。この結果をそれぞれについて細胞領域全体に標準化し、遺伝子送達の効率(検出可能なレベルで導入遺伝子を発現する全細胞の比率)として報告した。
【0115】
毒性分析
続いて、盲検化された観察者は、色素排除アッセイ(生細胞は色素を排除するが、生育不能な細胞は排除できない)、続いて、リン酸緩衝化生理食塩水中の0.4%SDSへの可溶化で各ウェルを評価した。トランスフェクション剤の毒性の直接的な尺度として生育不能な細胞を定量的に評価するために、Spectronic Genesys 5 UV/VIS分光光度計により、595nm(青色)の波長で試料を評価した。OD595測定に先立って、一致するOD280値に濃度を調整することによって、細胞数が同一になるように試料を標準化した。
【0116】
データ処理及び統計分析
盲検化された観察者は、Image Pro Plusソフトウェア(Media Cybernetics社製、シルバースプリング、メリーランド州)を用いて、バッチ式(batch)画像解析によって陽性染色の総量を測定し、それぞれについて陽性染色のパーセントを決定するために、横断面領域全体にそれを標準化した。続いて、Statviewソフトウェア(Abacus社製、バークリー(Berkeley)、カリフォルニア州)を用いた、反復測定による1元配置分散分析における95%信頼度の有意性分析により、各群の平均値及び標準誤差を測定した。
結果
効率:
効率性の結果は以下のとおりであった(平均値±標準誤差)
1)0.163±0.106%
2)10.642±2.195%
3)8.797±3.839%
4)15.035±1.098%
5)17.574±6.807%
6)1.199±0.573%
第4回及び第5回の試験は、ポリリジン単独及びSuperfectの双方と比べて、統計学的に有意な(Fisher PLSD及びTUKEY−A事後試験を用いる1因子反復測定分散分析によってP<0.05)遺伝子送達効率の向上を示している。
【0117】
毒性
平均毒性データは以下のとおりである(OD595でのAUで示されている。生理食塩水単独の場合に示されるような低い値は、低い毒性と相関があり、条件1で示されるようなより高い値は、高い細胞毒性を示唆する。
生理食塩水−0.057A、
1)3.460A、
2)0.251A、
3)0.291A、
4)0.243A、
5)0.297A、
6)0.337A。
【0118】
結論
対照、さらには現在の基準であるSuperfectのものより、より毒性が低くより効率的な遺伝子送達を、1.25対4.0の比率のKNR2及びDNAを用いて実現することができる。この実験は、この担体を用いて、極めて大型の治療用複合体を膜を通過して送達できる可能性を裏付ける。
【実施例2】
【0119】
本実施例は、単回投与後の、本発明の担体による皮膚を通過しての大型ヌクレオチドの輸送を例示する。
【0120】
主鎖の選択
リジン側鎖の遊離アミンに対する末端グリシンのカルボキシルを介して、18%の飽和度で(即ち、100個のリジン残基毎に18個が−Gly3Arg7に共有結合している)、ポリリジン(分子量150,000)に−Gly3Arg7を共有結合させることによって、正に帯電した主鎖を構築した。修飾された主鎖を先と同様に「KNR2」と呼んだ。対照のポリカチオンは、同じサイズ及び同じロットの未修飾のポリリジン(「K2」と呼ぶ、Sigma Chemical社製、セントルイス、ミズーリ州)であった。別の対照ポリカチオン、即ち、活性化されたデンドリマーベースの作用物質であるSuperfect(Qiagen社製)を、高いトランスフェクション速度の基準として選択した(即ち、同時に陽性対照及びインビトロの毒性に対する現況技術の効率の基準となる)。
【0121】
治療物質の選択
本実験のために、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターによって駆動される、大腸菌βガラクトシダーゼ(βgal)の導入遺伝子全体及びフランキング配列の一部分を含む8.5キロベースのプラスミド(pSportベースの鋳型、Gibco BRL社製、ゲーサーズバーグ、メリーランド州)を使用した。この場合、βgalは、トランスフェクトされ、その後、その遺伝子を転写及び翻訳する細胞に対する同定可能なマーカーとしての機能を果たし、外来酵素に対する特異的染色後に直接可視化することができる。したがって、複合体が皮膚を通過し、次いで標的細胞に到達し、有効搭載量の送達前に、原形質膜と核膜の双方を通過した細胞のみが、導入遺伝子を発現することができる。この特有のプラスミドは、約2,805,000の分子量を有する。
【0122】
試料の調製
各事例において、過剰なポリカチオンを使用して、過剰な正電荷を有する最終複合体を構築する。製造業者の推奨に基づき、最大効率を決定するインビトロ実験の前に、K2効率、KNR2効率、及びSuperfect効率の最適な比を選択した。局所適用される組成物の合計体積及び最終pHと同様に、ヌクレオチド治療薬の用量を全グループにわたって標準化した。以下のように試料を調製した。
AK1と名づけた群:最終アリコート当たり8マイクログラムのβgalプラスミド(p/CMV-sport-βgal)(即ち、合計80マイクログラム)及びペプチジル担体KNR2を電荷比4:1で混合して均質にし、リン酸緩衝化生理食塩水で200マイクロリットルに希釈した。得られた組成物を1.8mlのセタフィル(Cetaphil)保湿剤と混合して均質にし、インビボ実験のために200マイクロリットルずつ分取した。
AL1と名づけた群:最終アリコート当たり8マイクログラムのβgalプラスミド(p/CMV-sport-βgal)(即ち、合計80マイクログラム)及びK2を電荷比4:1で混合して均質にし、リン酸緩衝化生理食塩水で200マイクロリットルに希釈した。得られた組成物を1.8mlのセタフィルと混合して均質にし、インビボ実験のために200マイクロリットルずつ分取した。
AM1と名づけた群:最終アリコート当たり8マイクログラムのβgalプラスミド(p/CMV-sport-βgal)(即ち、合計80マイクログラム)及びSuperfectを電荷比5:1で混合して均質にし、リン酸緩衝化生理食塩水で200マイクロリットルに希釈した。得られた組成物を1.8mlのセタフィルと混合して均質にし、インビボ実験のために200マイクロリットルずつ分取した。
【0123】
ペプチジル担体及び核酸治療薬を用いた1回の処置後の経皮送達効率を測定するための動物実験
処置を施す間、イソフルランの吸入によって動物を麻酔した。麻酔をかけた後、C57 black 6マウス(1群当たりn=4)は、計量した用量200マイクロリットルの適切な処置を、背部(dorsal back)皮膚の頭側部分(マウスの口や肢がこの領域に届かないために選択された)に適用された。動物は、脱毛処理は受けなかった。低体温を防止するために管理された熱環境において動物を回復させ、応答するようになった後、一晩、食物及び水を自由に与えた。処置の24時間後に、マウスをCO2吸入によって安楽死させ、盲検化された観察者が、処置した皮膚部分の全層を採取した。処置部分を3つの部分に等分し、頭側部分を10%中性緩衝ホルマリン中で12〜16時間固定し、次いで、パラフィン包埋するまで70%エタノール中で保存した。中央部分は、急速凍結し、以前に説明されているような切片上での摂氏37度のβ−ガラクトシダーゼ染色に直接使用した(Waugh, J.M., M. Kattash, J. Li, E. Yuksel, M.D. Kuo, M. Lussier, A.B. Weinfeld, R. Saxena, E.D. Rabinovsky, S. Thung, S.L.C. Woo, and S.M. Shenaq. Local Overexpression of Tissue Plasminogen Activator to Prevent Arterial Thrombosis in an in vivo Rabbit Model. Proc Natl Acad Sci U S A. 1999 96(3): 1065-1070. 同様に、Elkins CJ, Waugh JM, Amabile PG, Minamiguchi H, Uy M, Sugimoto K, Do YS, Ganaha F, Razavi MK, Dake MD. Development of a platform to evaluate and limit in-stent restenosis. Tissue Engineering 2002. Jun;8(3): 395-407)。尾側の処置部分は、可溶化調査のために急速凍結した。
【0124】
毒性
上記の効率に関して分析したものに対する毒性を、対にした切片での色素排除によって評価した。これらの方法を併用することは確実ではないため、切片は、効率性又は毒性のいずれかについてのみ染色を受けた。毒性分析の場合、これらの切片を排除色素に5分間浸し、次いで、摂氏37度、10%CO2で30分間インキュベートした。この期間中に色素を排除しなかった細胞はすべて、生育不能とみなした。
【0125】
データ処理及び統計分析
データ収集及び画像解析は、盲検化された観察者が実施した。前述したように染色した切片の全体を、平面アポクロマートレンズの付いたNikon E600顕微鏡で撮影した。得られた画像を、β−ガラクトシダーゼ酵素活性(ここで使用した基質法では青色)又は細胞毒性に関して陽性の数を決定するために、マニュアルを確認しながら前述のImage Pro Plusソフトウェアを用いて、バッチ式画像解析処理にかけた。各々に対するヌクレアファーストレッド染色によって、これらの結果を横断面全体の細胞数に標準化し、横断面の陽性染色のパーセントとして表にした。次いで、Statviewソフトウェア(Abacus社製、バークリー(Berkeley)、カリフォルニア州)を用いた、反復測定による1元配置分散分析における95%信頼度の有意性分析により、各群の平均値及び標準誤差を続いて測定した。
【0126】
結果
結果を以下の表にまとめ、図3に示す。正に帯電したペプチジル経皮送達担体は、K2(本質的には陰性対照)及び効率のベンチマーク標準のSuperfectの双方に対して、送達効率及び導入遺伝子発現の統計学的に有意な上昇を実現した。Superfectは、K2よりも統計学的に有意な改善を達成したが、KNR2は、このモデルの系のSuperfectよりも1桁以上大きな送達効率の改善を示した。
【0127】
【表1】
【0128】
毒性についての結果を図4に示す。この図は、処置の24時間後に生育不能のままであった領域全体のパーセントを示す。この場合、K2は、以前に説明されているように(Amabile, P.G., J.M.Waugh, T. Lewis, C.J. Elkins, T. Janus, M.D. Kuo, and M.D. Dake. Intravascular Ultrasound Enhances in vivo Vascular Gene Delivery. J.Am.Col.Cardiol. 2001 June; 37(7):1975-80)K2の輸送効率が低い用量でさえ、KNR2又はSuperfectに比べて統計学的に有意な、細胞毒性を示している。
【0129】
結論
ペプチジル経皮担体は、特に、先に考察した導入遺伝子発現及び複合体全体の大きさの制約を考慮すれば、高効率で、大型の複合体を皮膚を通過して輸送することができる。(1)方法が非常に簡略化されており、画像解析がより正確であること、(2)効率の点レベルの実証(point demonstration)が、すでにII.Bで結論的に与えられていたこと、(3)非細胞性成分が断面のかなりの部分を占めるため、領域測定が、インビボの結果を理解するためのより広い範囲を提供すること、(4)さらに大きな非ペプチジル担体複合体に対する比較が容易になることを理由として、ここでは、陽性の数ではなく陽性領域を分析に使用した。
【実施例3】
【0130】
本実施例は、本発明の正に帯電したペプチジル担体を7日間連続して適用することによる、皮膚を通過しての大型ヌクレオチドベースの治療薬の経皮送達を例示する。
【0131】
主鎖の選択
リジン側鎖の遊離アミンに対する末端グリシンのカルボキシルを介して、18%の飽和度で(即ち、100個のリジン残基毎に18個が−Gly3Arg7に共有結合している)、ポリリジン(分子量150,000)に−Gly3Arg7を共有結合させることによって、正に帯電したペプチジル主鎖を構築した。修飾された主鎖を「KNR2」と呼んだ。対照のポリカチオンは、同じサイズ及び同じロットの未修飾のポリリジン(「K2」と呼ぶ、Sigma Chemical社製、セントルイス、ミズーリ州)であった。
【0132】
治療物質の選択
本実験のために、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターによって駆動される、大腸菌βガラクトシダーゼ(βgal)の導入遺伝子全体及びフランキング配列の一部分を含む8.5キロベースのプラスミド(pSportベースの鋳型、Gibco BRL社製、ゲーサーズバーグ、メリーランド州)を使用した。この特有のプラスミドは、約2,805,000の分子量を有し、したがって、ペプチジル担体を介する、皮膚を通過しての極めて大型の治療薬の送達を評価するために選択された。
【0133】
試料の調製
各事例において、過剰なポリカチオンを使用して、過剰な正電荷を有する最終複合体を構築した。実験の比は、先の実験で示した単回投与実験に対応するように選択した。局所適用される組成物の合計体積及び最終pHと同様に、ヌクレオチド治療薬の用量を全グループにわたって標準化した。以下のように試料を調製した。
AK1と名づけた群:最終アリコート当たり8マイクログラムのβgalプラスミド(p/CMV-sport-βgal)(即ち、合計240マイクログラム)及びペプチジル担体KNR2を電荷比4:1で混合して均質にし、リン酸緩衝化生理食塩水で600マイクロリットルに希釈した。得られた組成物を5.4mlのセタフィルと混合して均質にし、インビボ実験のために200マイクロリットルずつ分取した。
AL1と名づけた群:最終アリコート当たり8マイクログラムのβgalプラスミド(p/CMV-sport-βgal)(即ち、合計240マイクログラム)及びK2を電荷比4:1で混合して均質にし、リン酸緩衝化生理食塩水で600マイクロリットルに希釈した。得られた組成物を5.4mlのセタフィルと混合して均質にし、インビボ実験のために200マイクロリットルずつ分取した。
【0134】
ペプチジル担体及びヌクレオチド治療薬による1日1回の処置を7回受けた後の累積的な経皮送達効率を測定するための動物実験
処置を施す間、イソフルランの吸入によって動物を麻酔した。麻酔をかけた後、C57 black6マウス(1群当たりn=4)は、計量した用量200マイクロリットルの適切な処置を、背部皮膚の頭側部分(マウスの口や肢がこの領域に届かないために選択された)に適用された。動物は、脱毛処理は受けなかった。低体温を防止するために管理された熱環境において動物を回復させ、応答するようになった後、一晩、食物及び水を自由に与えた。この手順を1日のうちのほぼ同じ時間に1日1回、7日間繰り返した。7日間の処置後に、マウスをCO2吸入によって安楽死させ、盲検化された観察者が、処置した皮膚部分の全層を採取した。処置部分を3つの部分に等分し、頭側部分を10%中性緩衝ホルマリン中で12〜16時間固定し、次いで、パラフィン包埋するまで70%エタノール中で保存した。中央部分は、急速凍結し、以前に説明されているような切片上での摂氏37度のβ−ガラクトシダーゼ染色に直接使用した。尾側の処置部分は、可溶化調査のために急速凍結した。
【0135】
データ処理及び統計分析
データ収集及び画像解析は、盲検化された観察者が実施した。前述したように染色した切片の全体を、平面アポクロマートレンズの付いたNikon E600顕微鏡で撮影した。得られた画像を、β−ガラクトシダーゼ酵素活性に関して陽性の領域を決定するために、マニュアルを確認しながら前述のImage Pro Plusソフトウェアを用いて、バッチ式画像解析処理にかけた。これらの結果をそれぞれについて細胞の横断面領域全体に標準化し、横断面の陽性染色のパーセントとして表にした。次いで、Statviewソフトウェア(Abacus社製、バークリー、カリフォルニア州)を用いた、反復測定による1元配置分散分析における95%信頼度の有意性分析により、各群の平均値及び標準誤差を続いて測定した。
【0136】
結果
結果を以下の表にまとめ、図5に示す。ペプチジル経皮送達担体は、K2に対して、送達効率及び導入遺伝子発現の統計学的に有意な増大を実現した。
【0137】
【表2】
【実施例4】
【0138】
非ペプチジル担体
本実施例は、7日間連続の適用において本発明の正に帯電した非ペプチジル担体を用いることによる、皮膚を通過しての大型ヌクレオチドベースの治療薬の経皮送達を例示する。
【0139】
主鎖の選択
PEI側鎖の遊離アミンに対する末端グリシンのカルボキシルを介して、30%の飽和度で(即ち、100個のリジン残基毎に30個が−GIy3Arg7に共有結合している)、ポリエチレンイミン(PEI、分子量1,000,000)に−Gly3Arg7を共有結合させることによって、正に帯電した主鎖を構築した。大型の非ペプチジル担体を示すために、修飾された主鎖を「PEIR」と呼んだ。対照のポリカチオンは、同じサイズ及び同じロットの未修飾のPEI(「PEI」と呼ぶ、Sigma Chemical社製、セントルイス、ミズーリ州)であった。
【0140】
治療物質の選択
本実験のために、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターによって駆動される、大腸菌βガラクトシダーゼ(βgal)の導入遺伝子全体及びフランキング配列の一部分を含む8.5キロベースのプラスミド(pSportベースの鋳型、Gibco BRL社製、ゲーサーズバーグ、メリーランド州)を使用した。この特有のプラスミドは、約2,805,000の分子量を有する。
【0141】
試料の調製
各事例において、過剰なポリカチオンを使用して、過剰な正電荷を有する最終複合体を構築した。局所適用される組成物の合計体積及び最終pHと同様に、ヌクレオチド治療薬の用量を全グループにわたって標準化した。以下のように試料を調製した。
ASと名づけた群:最終アリコート当たり8マイクログラムのβgalプラスミド(p/CMV-sport-βgal)(即ち、合計240マイクログラム)及び対照PEIを電荷比5:1で混合して均質にし、Tris−EDTA緩衝液で600マイクロリットルに希釈した。得られた組成物を5.4mlのセタフィルと混合して均質にし、インビボ実験のために200マイクロリットルずつ分取した。
ATと名づけた群:最終アリコート当たり8マイクログラムのβgalプラスミド(p/CMV-sport-βgal)(即ち、合計240マイクログラム)及び複合体非ペプチジル担体PEIR(「PEIR」)を電荷比5:1で混合して均質にし、Tris−EDTA緩衝液で600マイクロリットルに希釈した。得られた組成物を5.4mlのセタフィルと混合して均質にし、インビボ実験のために200マイクロリットルずつ分取した。
AUと名づけた群:最終アリコート当たり8マイクログラムのβgalプラスミド(p/CMV-sport-βgal)(即ち、合計240マイクログラム)及び高度に精製されたEssentia非ペプチジル担体PEIR(「純粋なPEIR」)を電荷比5:1で混合して均質にし、Tris−EDTA緩衝液で600マイクロリットルに希釈した。得られた組成物を5.4mlのセタフィルと混合して均質にし、インビボ実験のために200マイクロリットルずつ分取した。
【0142】
非ペプチジル担体及びヌクレオチド治療薬による1日1回の処置を7回受けた後の累積的な経皮送達効率を測定するための動物実験
処置を施す間、イソフルランの吸入によって動物を麻酔した。麻酔をかけた後、C57 black6マウス(1群当たりn=3)は、計量した用量200マイクロリットルの適切な処置を、背部皮膚の頭側部分(マウスの口や肢がこの領域に届かないために選択された)に適用された。動物は、脱毛処理は受けなかった。低体温を防止するために管理された熱環境において動物を回復させ、応答するようになった後、一晩、食物及び水を自由に与えた。この手順を1日のうちのほぼ同じ時間に1日1回、7日間繰り返した。7日間の処置後に、マウスをCO2吸入によって安楽死させ、盲検化された観察者が、処置した皮膚部分の全層を採取した。処置部分を3つの部分に等分し、頭側部分を10%中性緩衝ホルマリン中で12〜16時間固定し、次いで、パラフィン包埋するまで70%エタノール中で保存した。中央部分は、急速凍結し、以前に説明されているような切片上での摂氏37度のβ−ガラクトシダーゼ染色に直接使用した。尾側の処置部分は、可溶化調査のために急速凍結した。
【0143】
データ処理及び統計分析
データ収集及び画像解析は、盲検化された観察者が実施した。前述したように染色した切片の全体を、平面アポクロマートレンズの付いたNikon E600顕微鏡で撮影した。得られた画像を、β−ガラクトシダーゼ酵素活性に関して陽性の領域を決定するために、マニュアルを確認しながらImage Pro Plusソフトウェアを用いて、バッチ式画像解析処理にかけた。これらの結果をそれぞれについて細胞の横断面領域全体に標準化し、横断面の陽性染色のパーセントとして表にした。次いで、Statviewソフトウェア(Abacus社製、バークリー、カリフォルニア州)を用いた、反復測定による1元配置分散分析における95%信頼度の有意性分析により、各群の平均値及び標準誤差を続いて測定した。
【0144】
結果
結果を以下の表にまとめ、図6に示す。非ペプチジル経皮送達担体は、複合型でも超高純度型でも、PEIに対して、送達効率及び導入遺伝子発現の統計学的に有意な増大を実現した。PEIRの超高純度型は、算出される試薬の特異的活性がより高いことと一致して、標準のPEIRより高い効率になる傾向を示した。
【0145】
【表3】
【0146】
結論
非ペプチジル経皮担体は、特に、先に考察した導入遺伝子発現及び複合体全体の大きさの制約を考慮すれば、高効率で、大型の複合体を皮膚を通過して輸送することができる。効率は、ペプチジル担体のより小型の複合体で得られたものほど高くはなかったが、著しい増加が実現された。注目すべきことに、大型非ペプチジル複合体による導入遺伝子発現の分布は、ほとんど専ら毛包に位置していたのに対し、ペプチジル担体に対する結果は、断面の全体にわたって広がっていた。したがって、サイズ及び主鎖の向性は、送達のナノ力学的な標的化に使用することができる。
【実施例5】
【0147】
本実験は、1回の投与後に、標識した完全なタンパク質ボツリヌストキシンを含有する大型複合体を無傷の皮膚を通して輸送するためのペプチジル担体の使用を対照と比べて実証する。ここでは、ボツリヌストキシンを、例えば、免疫化するための物質などの大型タンパク質のモデル系として選択した。
【0148】
主鎖の選択
リジン側鎖の遊離アミンに対する末端グリシンのカルボキシルを介して、18%の飽和度で(即ち、100個のリジン残基毎に18個が−Gly3Arg7に共有結合している)、ポリリジン(分子量112,000)に−Gly3Arg7を共有結合させることによって、正に帯電した主鎖を構築した。修飾した主鎖を「KNR」と呼んだ。対照のポリカチオンは、同じサイズ及び同じロットの未修飾のポリリジン(「K」と呼ぶ、Sigma Chemical社製、セントルイス、ミズーリ州)であった。
【0149】
治療物質
ボツリヌストキシンAの「Botox(登録商標)」ブランド(Allergan社製)を本実験のために選択した。その分子量は、約150,000である。
【0150】
試料の調製
製造業者の取扱い説明書に従って、ボツリヌストキシンに水を加えて元に戻した。計算上12倍モル過剰のスルホNHS−LCビオチン(Pierce Chemical社製)を用いて、一定分量のタンパク質をビオチン標識した。標識した生成物を「Btox-b」と呼んだ。
【0151】
各事例において、陰性度の高い大型ヌクレオチド複合体の送達の際のように、過剰なポリカチオンを使用して、過剰な正電荷を有する最終複合体を構築した。正味の中性又は正電荷は、陰性度の高い細胞表面プロテオグリカン及び細胞外基質からタンパク質複合体が反発するのを防止する。局所適用される組成物の合計体積及び最終pHと同様に、Btox-bの用量を全グループにわたって標準化した。以下のように試料を調製した。
「JMW−7」と名づけた群:アリコート当たり2.0ユニットのBtox-b(即ち、合計20U)及びペプチジル担体KNRを計算上の分子量比4:1で混合して均質にし、リン酸緩衝化生理食塩水で200マイクロリットルに希釈した。得られた組成物を1.8mlのセタフィルと混合して均質にし、200マイクロリットルずつ分取した。
「JMW−8」と名づけた群:アリコート当たり2.0ユニットのBtox-b(即ち、合計20U)及びKを電荷比4:1で混合して均質にし、リン酸緩衝化生理食塩水で200マイクロリットルに希釈した。得られた組成物を1.8mlのセタフィルと混合して均質にし、200マイクロリットルずつ分取した。
【0152】
ペプチジル担体及び標識したボツリヌストキシンを用いた1回の処置後の経皮送達効率を測定するための動物実験
処置を施す間、イソフルランの吸入によって動物を麻酔した。麻酔をかけた後、C57 black6マウス(1群当たりn=4)は、背部皮膚の頭側部分(マウスの口や肢がこの領域に届かないために選択された)に適用される、計量した用量200マイクロリットルの適切な処置の局所適用を受けた。動物は、脱毛処理は受けなかった。初回の処置の30分後に、マウスをCO2吸入によって安楽死させ、盲検化された観察者が、処置した皮膚部分の全層を採取した。処置部分を3つの部分に等分し、頭側部分を10%中性緩衝ホルマリン中で12〜16時間固定し、次いで、パラフィン包埋するまで70%エタノール中で保存した。中央部分は急速凍結し、以下に要約するような、盲検化された観察者によるビオチン可視化に直接使用した。尾側の処置部分は、可溶化調査のために急速凍結した。
【0153】
以下のようにしてビオチン可視化を行った。手短に言えば、各切片を「NeutrAvidin(登録商標)」緩衝溶液に1時間浸した。アルカリホスファターゼ活性を可視化するために、断面を生理食塩水中で4回洗浄し、次いで、NBT/BCIP(Pierce Scientific社製)に1時間浸した。次いで、切片を生理食塩水中ですすぎ、平面アポクロマートレンズの付いたNikon E600顕微鏡で全体を撮影した。
【0154】
データ処理及び統計分析
盲検化された観察者は、Image Pro Plusソフトウェア(Media Cybernetics社製、シルバースプリング、メリーランド州)を用いて、バッチ式画像解析によって陽性染色の総量を測定し、それぞれについて陽性染色のパーセントを決定するために、横断面領域全体にそれを標準化した。続いて、Statviewソフトウェア(Abacus社製、バークリー、カリフォルニア州)を用いた、反復測定による1元配置分散分析における95%信頼度の有意性分析により、各群の平均値及び標準誤差を測定した。
【0155】
結果
ビオチン標識したボツリヌストキシンに対して陽性な断面領域の平均を、KNR(「EB-Btox」)又はK(「nl」)のいずれかと共にBtox-bを1回局所投与した後の全領域に対するパーセントとして報告した。これらの結果を以下の表に示し、図7に例示する。図7では、標識に対して陽性の領域を、Btox-b及びペプチジル担体KNRを含む「EB-Btox」、並びに対照としてのポリカチオンKと共にBtoxbを含む「nl」による1日1回の処置を3日間行った後の全領域に対するパーセントとして決定した。各群について平均及び標準誤差を示す。
【0156】
【表4】
【実施例6】
【0157】
実施例5は、ペプチジル経皮担体が、無傷の皮膚のマウスモデルにおける局所適用後の効率的なボツリヌストキシン輸送を可能にすることを実証した。しかし、本実験は、皮膚を通過して移動した後に、タンパク質ボツリヌストキシン複合体が機能的な形態で放出されるかどうかは示さなかった。したがって、このペプチジル担体を用いて(さらに、タンパク質を共有結合で修飾せずに)、無傷の皮膚を通って、ボツリヌストキシンを局所薬として治療的に送達させることができるかどうかを評価するために、以下の実験を構成した。
【0158】
リジン側鎖の遊離アミンに対する末端グリシンのカルボキシルを介して、18%の飽和度で(即ち、100個のリジン残基毎に18個が−Gly3Arg7に共有結合している)、分子量112,000のポリリジンに−Gly3Arg7を共有結合させることによって、正に帯電した主鎖を再び構築した。修飾された主鎖を「KNR」と呼んだ。対照のポリカチオンは、同じサイズ及び同じロットの未修飾のポリリジン(「K」と呼ぶ、Sigma Chemical社製、セントルイス、ミズーリ州)であった。実施例5の場合と同じボツリヌストキシン治療物質を使用し、同じ方法で調製した。以下のように試料を調製した。
「JMW−9」と名づけた群:アリコート当たり2.0ユニットのボツリヌストキシン(即ち、合計60U)及びペプチジル担体KNRを計算上の分子量比4:1で混合して均質にし、リン酸緩衝化生理食塩水で600マイクロリットルに希釈した。得られた組成物を5.4mlのセタフィルと混合して均質にし、200マイクロリットルずつ分取した。
「JMW−10」と名づけた群:アリコート当たり2.0ユニットのボツリヌストキシン(即ち、合計60U)及びKを電荷比4:1で混合して均質にし、リン酸緩衝化生理食塩水で600マイクロリットルに希釈した。得られた組成物を5.4mlのセタフィルと混合して均質にし、200マイクロリットルずつ分取した。
「JMW−11」と名づけた群:ポリカチオン無しの、アリコート当たり2.0ユニットのボツリヌストキシン(即ち、合計60U)をリン酸緩衝化生理食塩水で600マイクロリットルに希釈した。得られた組成物を5.4mlのセタフィルと混合して均質にし、200マイクロリットルずつ分取した。
【0159】
ペプチジル担体及びボツリヌストキシンを用いた1回の処置後の治療効率を測定するための動物実験
処置を施す間、イソフルランの吸入によって動物を麻酔した。麻酔をかけた後、C57 black6マウス(1群当たりn=4)は、つま先から大腿中央まで均一に適用される適切な処置の計量した用量400マイクロリットルの局所適用を受けた。両方の肢に処置し、両側に無作為に処置を施した。動物は、脱毛処理は受けなかった。初回の処置の30分後に、公表されているボツリヌストキシン投与後の足の可動性に関する指外転スコア(Aoki, KR.. A comparison of the safety margins of botulinum neurotoxin serotypes A, B, and F in mice. Toxicon. 2001 Dec; 39(12): 1815-20)に従って、マウスの指の外転能力を評価した。マウスの可動性も主観的に評価した。
【0160】
データ処理及び統計分析
2名の盲検化された観察者が、それぞれ独立に、指外転スコアを表にした。続いて、Statviewソフトウェア(Abacus社製、バークリー、カリフォルニア州)を用いた、反復測定による1元配置分散分析における95%信頼度の有意性分析により、各群の平均値及び標準誤差を測定した。
【0161】
結果
KNR(「JMW−9」)、K(「JMW−10」)、又はポリカチオン無しの希釈剤(「JMW−11」)と共にボツリヌストキシンを1回局所投与した後の平均指外転スコアを以下の表に示し、図8の代表的な顕微鏡写真において例示する。ペプチジル担体KNRは、互いに同等である両方の対照と比べて、統計学的に有意な、皮膚を通過してのボツリヌストキシンの機能的送達をもたらした。本実験をさらに独立して反復することにより(合計3回の独立した実験のすべてで、KNRを伴う局所的ボツリヌストキシンから統計学的に有意な麻痺が起こり対照では起こらないという同一の結論が得られた)、本発明の研究結果が確認され、Kのある場合又は無い場合(即ち、双方の対照)に局所的ボツリヌストキシンの間で有意な差は明らかにされなかった。興味深いことに、マウスは、一貫して、麻痺した肢の方へ移動した(処置された動物の100%、並びに両対照群の対照の0%で起こった)。図8で示すように、対照のポリカチオンを加えたボツリヌストキシン、又はポリカチオン無しのボツリヌストキシン(「Btox単独」)で処置された肢は、(持ち上げられたときの防衛機構として)指を動かすことができるが、ペプチジル担体KNRを加えたボツリヌストキシン(「Essentia Btoxローション剤」)で処置された肢は動かすことができなかった。
【0162】
【表5】
【0163】
結論
本実験は、ペプチジル経皮担体が、治療薬を共有結合で修飾せずに、治療有効量のボツリヌス治療薬を皮膚を通過して輸送できることを実証するのに役立つ。本実験はまた、対照において局所適用された場合はボツリヌストキシンが機能しないことも裏付ける。
【実施例7】
【0164】
本実験は、本発明の非ペプチジル担体の能力を実証する。
【0165】
主鎖の選択
PEI側鎖の遊離アミンに対する末端グリシンのカルボキシルを介して、30%の飽和度で(即ち、100個のリジン残基毎に30個が−GIy3Arg7に共有結合している)、分子量1,000,000のポリエチレンイミン(PEI)に−Gly3Arg7を共有結合させることによって、正に帯電した主鎖を構築した。修飾された主鎖は、大型の非ペプチジル担体を示すために「PEIR」と呼んだ。対照のポリカチオンは、同じサイズ及び同じロットの未修飾のPEI(「PEI」と呼ぶ、Sigma Chemical社製、セントルイス、ミズーリ州)であった。実施例5と同じボツリヌストキシン治療物質を使用した。
【0166】
製造業者の取扱い説明書に従って、「BOTOX(登録商標)」製品からボツリヌストキシンを元に戻した。各事例において、陰性度の高い大型ヌクレオチド複合体の送達の際のように、過剰なポリカチオンを使用して、過剰な正電荷を有する最終複合体を構築した。正味の中性又は正電荷は、陰性度の高い細胞表面プロテオグリカン及び細胞外基質からタンパク質複合体が反発するのを防止する。局所適用される組成物の合計体積及び最終pHと同様に、ボツリヌストキシンの用量を全グループにわたって標準化した。以下のように試料を調製した。
「AZ」と名づけた群:アリコート当たり2.0ユニットのボツリヌストキシン(即ち、合計60U)及び超高純度型の非ペプチジル担体PEIRを計算上の分子量比5:1で混合して均質にし、リン酸緩衝化生理食塩水で600マイクロリットルに希釈した。得られた組成物を5.4mlのセタフィルと混合して均質にし、200マイクロリットルずつ分取した。
「BA」と名づけた群:アリコート当たり2.0ユニットのボツリヌストキシン(即ち、合計60U)及びPEIを電荷比5:1で混合して均質にし、リン酸緩衝化生理食塩水で600マイクロリットルに希釈した。得られた組成物を5.4mlのセタフィルと混合して均質にし、200マイクロリットルずつ分取した。
【0167】
1回処置後の治療効率を測定するための動物実験
処置を施す間、イソフルランの吸入によって動物を麻酔した。麻酔をかけた後、C57 black6マウス(1群当たりn=3)は、つま先から大腿中央まで均一に適用される適切な処置の計量した用量400マイクロリットルの局所適用を受けた。両方の肢に処置し、両側に無作為に処置を施した。動物は、脱毛処理は受けなかった。初回の処置の30分後に、公表されているボツリヌストキシン投与後の足の可動性に関する指外転スコア(Aoki, KR.. A comparison of the safety margins of botulinum neurotoxin serotypes A, B, and F in mice. Toxicon. 2001 Dec; 39(12): 1815-20)に従って、マウスの指の外転能力を評価した。マウスの可動性も主観的に評価した。
【0168】
データ処理及び統計分析
2名の盲検化された観察者が、それぞれ独立に、指外転スコアを表にした。続いて、Statviewソフトウェア(Abacus社製、バークリー、カリフォルニア州)を用いた、反復測定による1元配置分散分析における95%信頼度の有意性分析により、各群の平均値及び標準誤差を測定した。
【0169】
結果
超高純度PEIR(「AZ」)、又は対照のポリカチオンPEI(「BA」)と共に行うボツリヌストキシンの1回局所投与、及び再現(本実験の1回の独立した再現)後の平均の指外転スコアを以下の表に示す。非ペプチジル担体PEIRは、対照と比べて、統計学的に有意な、皮膚を通過してのボツリヌストキシンの機能的送達をもたらした。先と同様に、動物は、麻痺した肢の方向へ同じ所をめぐりながら歩くのが観察された。
【0170】
【表6】
【0171】
【表7】
【0172】
結論
本実験は、非ペプチジル経皮担体が、ボツリヌストキシンを事前に共有結合で修飾せずに、治療量のボツリヌストキシンを皮膚を通過して輸送できることを実証した。これらの研究結果は、ペプチジル輸送物質によるものを補完する。治療効果を得るために非ペプチジル又はペプチジル担体の使用を選択できることにより、個々の状況、環境、及び適用方法に合わせることが可能になり、本発明の経皮送達の場の幅が広げられる。
【0173】
これらの実施例では、担体無しの局所的ボツリヌストキシンに対する、ペプチジル又は非ペプチジル担体を用いたボツリヌストキシン浸透が、免疫化用の抗原の経皮浸透に対する、特にボツリヌスなど他の方法では皮膚をあまり通らない抗原を用いた免疫化に対する有用性をさらに証明する。機能的ボツリヌストキシンの送達は、少なくとも4つの異なる抗原決定基が完全な状態で経皮送達されることを確実にする。いずれの実施例でも担体が無い場合は機能的ボツリヌストキシンが送達されなかったという事実は、担体が、担体が無い場合の作用物質と比べて、著しい免疫化能力を与えることを裏付ける。免疫化は、免疫応答を開始するのに十分な量の抗原が皮膚を通過することを必要とするため、この手法は、免疫化用の抗原の経皮送達を可能にする。この手法は抗原の共有結合的修飾を必要とせず、ウイルス遺伝子の導入を伴う必要がないため、安全性、安定性、及び効率の点でいくつかの利点が生じる。
【実施例8】
【0174】
本実施例は、TAT効率因子を有するペプチジル及び非ペプチジル担体、並びにボツリヌストキシンとこれらの担体の構築物の作製を詳述する。
【0175】
TAT断片GGGRKKRRQRRRへのポリエチレンイミン(PEI)の結合
側鎖保護基をすべて欠いているTAT断片GGGRKKRRQRRR(6mg、0.004mmol、Sigma Genosys社製、ヒューストン(Houston)、テキサス州)を1mlの0.1M MES緩衝液に溶解した。これに、EDC(3mg、0.016mmol)、続いてPEI 400k分子量の水中50%溶液(w:v)(約0.02ml、約2.5×10−5mmol)を加えた。試験紙によって、pHが7.5であることが測定された。さらに1ml分の0.1M MESを加え、HClを添加してpHを約5に調整した。さらにEDC(5mg、0.026mmol)を加え、pH約5の反応物を一晩攪拌した。翌朝、反応混合物を凍結し、凍結乾燥した。
【0176】
SephadexG-25(Amersham Biosciences社製、ピスカタウェイ(Piscataway)、ニュージャージー州)のカラム(直径1cm×高さ14cm)を滅菌1×PBS中でスラリー状にした。分子量19kDのFITCデキストラン(Sigma社製、セントルイス、ミズーリ州)の溶出によって、カラムを標準化した。標準は、5ml PBSで最初に溶出し、6mlで中央ピークを示し、7mlで次第に消えた。前述のものに由来する凍結乾燥された反応混合物を、少量のPBS中に溶解させ、カラムに加えた。1ml PBSを連続的に適用して、これを溶出させた。画分を回収した。最初の画分は、反応体積を含めて、溶出された最初の3mlからなった。その後の各画分は1mlであった。
【0177】
溶出された画分の280nmでのUV吸光度を分析した。5〜7mlに対応する画分3、4、及び5は、中程度の吸光度ピークを示した。すべての画分を凍結乾燥し、IRスペクトルを測定した。TAT断片の特徴的なグラニジンの3重のピーク(2800〜3000cm−1)が、画分4〜6で認められた。これらの各群は、1700cm−1でアミドの伸びも示し、したがって、TAT断片及びPEIの結合体が確認された。
【0178】
TAT断片GGGRKKRRQRRR(11.6mg、0.007mmol)を用いてもう1回繰り返しを行った。この量は、PEIアミンの30個のうち1つがTAT断片と反応することが予期されるように計算した。これは、前述の元のポリリジン−オリゴアルギニン(KNR)効率因子の組成に近い。TAT断片のPEIアミンへの共有結合の成功が前述のIRによって確認された。
【0179】
TAT断片へのポリリジンの結合
1mlの0.1M MES、pH約4.5に溶かしたポリリジン(10mg 1.1×10−4mmol; Sigma社製)の溶液に、TAT断片(4mg、0.003mmol)、次いでEDC(3.5mg、0.0183mmol)を加えた。得られた反応混合物(pH約4.5)を室温で攪拌した。反応物を−78℃で一晩凍結させた。翌日、反応混合物を室温まで解凍し、飽和炭酸水素ナトリウムの添加によってpHを約8に調整した。前述したように構成し標準化したSephadex G-25カラムに、反応混合物を直接添加した。これは、5ml後から始まる7つの1ml画分に溶出された。UV280吸光度を測定し、画分2、3、及び4において対応するピークが明らかになった。凍結乾燥された画分のIRでは、画分1〜7における特徴的なグアニジンピーク(2800〜3000cm−1)が明らかになった。画分1は1730cm−1に強いピークを生じ、1600cm−1ではピークが無かったのに対し、画分2〜6の場合は反対の結果が当てはまった。したがって、ペプチジル担体、ポリリジンに対するTAT断片の共有結合の成功が確認された。
【0180】
続いて、共有結合されたTAT断片及びPEI(PEIT)、並びに共有結合されたTAT断片及びポリリジン(KNT)をボツリヌストキシンと混合して以下のような非共有結合性複合体を形成させた。
「JL−1」と名づけた群:アリコート当たり2.0ユニットのBtox-b(即ち、合計20U)及びPEITを電荷比4:1で混合して均質にし、リン酸緩衝化生理食塩水で200マイクロリットルに希釈した。
「JL−2」と名づけた群:アリコート当たり2.0ユニットのBtox-b(即ち、合計20U)及びKNTを電荷比4:1で混合して均質にし、リン酸緩衝化生理食塩水で200マイクロリットルに希釈した。
【0181】
非共有結合性複合体の形成後、回転式微量遠心機中で12,000×gで5分間、粒子を遠心分離し、次いで、20マイクロリットルの脱イオン水中に再懸濁させ、IR用のゲルマニム減衰全反射セル上で蒸発させた。このようにして、複合体中のBtox-bの存在を確認した。全体として、本実験は、合成スキームを他の効率因子に適用できたこと、並びに、オリゴアルギニンの正に帯電した分枝又は効率基を含む担体を用いた先の実施例の場合と同様に、得られた担体は、生物学的に活性な作用物質―この場合ボツリヌストキシン―と複合体を形成できることを確認した。
【実施例9】
【0182】
本実験は、特定の抗原を画像化するためのペプチジル担体の能力を実証する。本実施例では、Essentiaペプチジル担体のうちの1つ、KNR2と、光学的イメージング部分、及び黒色腫を標的とする改変された抗体との複合体が、黒色腫の局所的検出に適している。
【0183】
主鎖の選択
リジン側鎖の遊離アミンに対する末端グリシンのカルボキシルを介して、18%の飽和度で(即ち、100個のリジン残基毎に18個が−Gly3Arg7に共有結合している)、ポリリジン(分子量150,000)に−Gly3Arg7を共有結合させることによって、正に帯電したペプチジル主鎖を構築した。修飾された主鎖を「KNR2」と呼んだ。対照のポリカチオンは、同じサイズ及び同じロットの未修飾のポリリジン(「K2」と呼ぶ、Sigma Chemical社製、セントルイス、ミズーリ州)であった。
【0184】
保存されているヒト黒色腫領域、ガングリオシド2に対するマウスモノクローナル抗体(IgG3、US Biologicals社製、スワンプスコット(Swampscott)(マサチューセッツ州)を、前述のEDC結合を介してポリアスパラギン酸アニオン短鎖鎖(MW3,000)に共有結合させて、「Gang2Asp」と呼ばれる誘導体化抗体を作製した。さらに、配列がATGC−J(今後「ATGC−J」と呼ぶ)であり、「J」は共有結合したテキサスレッド蛍光を示す、オリゴヌクレオチド(Sigma Genosys社製、ウッドランドズ(Woodlands)、テキサス州)をポリアニオンとして用いて陰イオン性のイメージング物質を設計した。本実験のために、6.35マイクログラムのGang2Aspを、0.1712マイクログラムのATGC−Jと組み合わせ、次いで、総体積200マイクロリットルの脱イオン水中で17.5マイクログラムのKNR2と複合体を形成させ、KNR2:ATGC−J:Gang2Aspの最終比を5:1:1とした。この混合物を2分間ボルテックスした。得られた複合体を、水和したCellTekヒト黒色腫スライド、及び対照のCellTekサイトケラチンスライド(SDL社製、デスプレーンズ(Des Plaines)、イリノイ州)に塗布し、5分間インキュベートした後、同じ視野における黒色腫色素の明視野分布に対する蛍光分布の写真評価をした。ATGC−J無し、又はGang2Asp無しの付加的な対照も使用した。
【0185】
結果
非共有結合性複合体は、抗体が無い場合の複合体の分布ではなく、抗体誘導体の向性に従う、光学的イメージング物質の分布を与えた。より注目すべきことには、これらの複合体は、図9に示されるように、着色された黒色腫細胞の分布に一致する分布に従った。
【0186】
結論
本実験は、局所送達に適した担体を用いる、皮膚を通過して輸送するための存続可能な複合体の作製、及び光学的技術による黒色腫の可視化を実証する。このような手法は、例えば、外科的な辺縁設定と組み合わせて使用することができ、又は、定期的な黒色腫観察で使用することができる。当業者には明らかであるように、他の皮膚関連障害の局所診断にも同様に、類似した戦略を容易に使用することができる。光学的イメージング部分の極めて高い感度を前提とすると、これらの非共有結合性複合体によって、これらの障害の検出改善がかなり有望になり得る。
【実施例10】
【0187】
この実験は、様々な大きさ及び構造のタンパク質の混合物の、経皮送達におけるペプチジル担体の浸透の効率及び深さを実証するものである。
【0188】
方法
Revitixタンパク質(マサチューセッツ州、Canton、Organogenesis社製)をビオチン化し、4℃で貯蔵した。用いたビオチン化したRevitixタンパク質の濃度は、10〜15ng/μlであった。この研究における試験物及び比較対照を表1に示す。この研究には対照は2つあり、1つはRevitixにpHを一致させた脱イオン水であり、他方はRevitix単独であった。処置グループの試験物は、ペプチジル担体入りRevitixであった。
【0189】
【表8】
【0190】
ペプチジル担体及びRevitixタンパク質で毎日1回処置し2及び9日後に累積性の経皮送達の効果を決定するための動物実験
メスC57黒6マウス(1グループ当たりn=5)をイソフルランス(isoflurance)で吸入麻酔し、次いでげっ歯類用麻酔カクテル(100mg/mlケタミン3.75ml、20mg/mlキシラジン3.00ml、及び食塩水23.25ml)0.05mlを腹腔内注射した。各マウスを麻酔した後、処置を適用する初日の2日前に、各マウスの背部上の2.0cm×2.0cmの投与部位をバリカン(Oster社製)で注意深く毛を剃った。動物にはさらなる脱毛の処置は行わなかった。動物は、セタフィルモイスチャライジングクリーム(テキサス州、Fort Worth、Galderma社製)で処置を施す間、イソフルランスのみで吸入麻酔し、背部の皮膚の頭蓋部分(選択したのは、マウスはこの領域に口又は四肢が届かないからである)に施す適切な処置の200マイクロリットルの投与量を計量して供給した。2〜5分間動物を麻酔下に置き、適切な処置を指で覆って皮膚に擦り込んだ。マウスは低体温症を防ぐために暖房を調節した環境で回復させ、反応がもたらされた後、えさ及び水は一夜任意であった。この手順を、2及び9日間、およそ同じ時間に1日1回繰り返した。処置2及び9日後、マウスをCO2の吸入により安楽死させ、最終の処置を適用した8時間後に、ブラインドの観測者が、処置した皮膚切片を完全な厚さで回収した。処置した切片を3等分し、頭蓋部分を10%中性緩衝ホルマリンで12〜16時間固定し、次いで70%エタノール中に貯蔵してからパラフィン包埋した。中央の部分を、NeutrAvidin、ヘマトキシリン&エオジン、及びクロロエステラーゼ(chloroesterase)に特異的の染色に使用した。処置した尾部の切片を、可溶性試験用に瞬間冷凍した。
【0191】
データ処理及び統計学的分析
ブラインドの観測者により、データ収集及び画像分析を行った。染色した切片を、プランアポクロマートレンズ付きNikon社製E600顕微鏡上のRetiga1300Bカメラ(カナダ、ブリティッシュコロンビア州、Burnaby、QImaging社製)で写真撮影した。ブラインドの観測者により、Image-Pro Plus分析用ソフトウェア(メリーランド州、Silver Springs、Media Cybernetics社製)を用いて、緑色チャンネル抽出物及び閾値化でポジティブ染色を判定し、ポジティブの画素で表した。引き続きStatview(登録商標)ソフトウェア(カリフォルニア州、Berkeley、Abacus Concepts社製)を用いて、各グループに対し統計学的分析を判定し、平均値及び標準誤差で表した。すべての比較に対して、反復測定による1因子分散分析及び信頼限界95%のFisherのPLSD事後検定を用いて、統計学的な有意差を判定した。
【0192】
結果
Revitixタンパク質をビオチンでラベルし、様々なタンパク質上のラベリングが良好であることが示された。NeutrAvidin染色を用いてRevitixタンパク質の経皮送達を決定した。2つの異なる倍率での、対照グループ(パネルa及びc及びe)対、処置グループ(b及びd及びf)の写真を図10に示したが、ここでa及びbは10×倍率であり、cからfは20×倍率である。ポジティブのNeutrAvidin染色に対する平均を、比較用に用いた。Revitixプラス主鎖の平均のポジティブ染色は、3日目の水(50.297±6.394対16.676±2.749)、及びRevitix単独(50.297±6.394対18.379±6.394;P=0.0041)より有意に高かった。
【0193】
【表9】
【0194】
結果
ビオチン標識したタンパク質をゲル分析することで、インビトロで標識の確認ができた。
【0195】
2日の時間点を用いて流れを決定した。この実験により、標識したタンパク質対両方の対照グループにおける経皮送達が、統計学的に有意に上昇したことが確認された。シグナルの深さも量も、担体グループ対対照において明らかに上昇した。興味深いことに、ゲル電気泳動、及び親和性の空間的評価により検証すると、多様な集団のタンパク質が、これらの予め集合した粒子と共に皮膚を通して輸送されていた。
【実施例11】
【0196】
これらの実験は、ペプチジル担体及び腫瘍抗原抗体を使用することにより、蛍光プローブの標的化された経上皮の送達が可能な、新規な分子画像プラットフォームを実証するものである。
【0197】
主鎖
正の電荷を持つペプチジルの主鎖を、−Arg9のポリリジン(MW150000)への、末端のグリシンのカルボキシル基からリジンの側鎖の遊離アミンへの飽和度18%の(即ち、リジン残基100個につき18個が−Arg9に共有結合している)共有結合により組み立てた。修飾した主鎖を「KNR」と呼んだ。対照のポリカチオンは、同じ大きさで同じロット由来の、非修飾のポリリジンであった(「K」と呼んだ、ミズーリ州、St.Louis、Sigma Chemical社製)。
【0198】
方法
プローブ設計
プローブは、静電気の相互作用に基づく自己集合である多成分系である。このような系は、官能基部分が容易に置換できる。中心となる構成成分は、正の荷電を過剰に有し、多数のCPPが結合している担体の主鎖である。積荷はすべて負に荷電している。最終の複合体は、輸送活性を維持するために、正味の正の電荷を持っている。
【0199】
インビトロの担体の毒性
以下の担体の主鎖の毒性を試験した。
1.KNR
2.R9側鎖の無いポリ−L−リジン(K)
3.Superfect(カリフォルニア州、Valencia、Qiagen社製)、市販のトランスフェクション物質
70%の集密度で増殖させたHeLa細胞(ATCC、バージニア州、Manassas)を無血清培地で2時間、担体0.4mgとインキュベートし(n=6ウェル/グループ)、次いでPBSで洗浄した。生存細胞は色素を排除するが非生存の細胞は排除しない標準の色素排除アッセイを用いて、毒性を評価した。色素の取り込みを、分光分析計(Spectronic Genesys 5UV/VIS)を用いて波長595nmで測定した。OD595測定の前にOD280値にマッチする濃度に調節して、サンプルを細胞数に標準化した。
【0200】
インビトロの経皮のレポーター遺伝子の送達
KNR担体が、生物発光レポーター遺伝子の形態の大分子量の積荷を組織のバリア(皮膚)を通して送達することができるか否かを決定するために、様々な担体の主鎖で、以下のプローブを試験した。
1.主鎖:KNR;対照−K、Superfect、担体無し
2.積荷及びイメージング成分:青色蛍光タンパク質を発現するプラスミド(BFP、8kb、MW2600000)
主鎖−プラスミド(プラスミド8μg)複合体をイオン性の相互作用により形成し(陽イオンの主鎖−陰イオンのDNA)、次いで7日間毎日、C57黒6マウス(グループ当たりのn=4)の背部の皮膚に施した。次いで、処置した皮膚切片を回収し、蛍光顕微鏡でBFP発現を評価した。遺伝子の経皮送達の効率を、真皮のみにおける全細胞中のBFP陽性細胞の%により決定した。
【0201】
画像プローブの腫瘍細胞への標的化された送達
KNRシステムが視覚的画像プローブの結腸癌抗原への標的化された送達をもたらすことができるか否かを決定するために、様々なターゲティングの構成要素で以下のプローブを試験した。
1.主鎖:KNR
2.イメージング成分:イソチオシアン酸フルオレセイン(FITC、Molecular Probes社製)で標識した4−塩基オリゴヌクレオチド(Sigma-Genosys社製)
3.ターゲティング部分:a)EDCカップリングにより陰イオンのポリアスパラギン酸(3KMW)に共有結合している癌胎児抗原(CEA;クローンCD66e、米国Biological社製)に対するモノクローナル抗体;b)対照−ポリアスパラギン酸に結合している、アクチン(クローン3G1、米国Biological社製)に対するモノクローナル抗体
KNR−画像−ターゲティング複合体を形成した、CEAを過剰発現する共培養した(n=6ウェル/グループ)ヒト結腸癌細胞(LS174T、ATCC)、及び対照のマウス繊維芽細胞(3T3、ATCC)を無血清培地で2時間、複合体とインキュベートした。細胞を引き続き、PBSで3回洗浄した。標的化された送達を、LS174T細胞及びFITCで標識した3T3細胞の定量化パーセント値により評価した。3T3細胞及びLS174T細胞を、形態学的に同定した。
【0202】
結果
KNRは、BFP対対照の経皮送達及び導入遺伝子発現において、20倍を超える効率を達成し(5%±2.12%対0.25%±0.06%、P<0.01)、分子画像に十分大きい複合体の局所送達の可能性を確証した。標的化された送達を評価すると、フルオレセイン及びTRシグナルは、それぞれ複合体の別の構成成分であっても、結腸癌細胞の40.2%の画素に共存していた(φ相関0.74、P<0.001)。対照の繊維芽細胞はフルオレセイン又はTRで最小限に標識し、結腸癌細胞の87.6%±8.3%はフルオレセインのシグナルに陽性であった。担体の主鎖の結果の相対毒性を図11に示し、遺伝子の経皮送達の効率の結果を図12に示す。
CEAに特異的な画像プローブ(パネルa)及び蛍光画像を適用した後の結腸癌(C)及び繊維芽細胞(F、紡錘形)の共培養の明視野画像は、結腸癌のフルオレセインの標識化を示しているが、図13では繊維芽細胞(パネルb)は表されていない。
【0203】
【表10】
【0204】
結果
抗原の分配と平行して、視覚的プローブの局所適用及び標的化された送達の後の、大型の複合体(BFP遺伝子)の経皮送達を、KNRを用いて実証した。これらの試験は、この系を、黒色腫の局所的サーベイランス又は結腸癌の粘膜下の検出に使用する可能性を確証している。当業者には明らかであるように、このプラットフォームを、治療上の、診断上の、又は両者の組合せの標的化された送達に用いることができる。さらに、このプラットフォームを、大腸内視鏡又はデマトスコピー(dematoscopy)(若しくは直接の視覚化)によるリアルタイム画像、並びに仮想大腸内視鏡などの画像方法に用いることができる。
【0205】
本明細書に記載された実施例及び実施形態は、例示するためのものにすぎないこと、並びにそれらを踏まえた様々な修正及び変更が当業者に示唆され、且つそれらが、本出願の精神及び範囲、並びに添付の特許請求の範囲の内に含まれることを理解されたい。本明細書に引用したすべての刊行物、特許、及び特許出願は、あらゆる目的のために、全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0206】
【図1】本発明で使用する成分の概略図である。
【図2】本発明のいくつかの実施形態の概略図である。
【図3−4】実施例2で説明した、大腸菌β−ガラクトシダーゼの導入遺伝子を含むプラスミドの経皮送達の結果を示すグラフである。
【図5】実施例3で説明した、大腸菌β−ガラクトシダーゼの導入遺伝子を含むプラスミドの経皮送達の結果を示すグラフである。
【図6】実施例4で説明した、大腸菌β−ガラクトシダーゼの導入遺伝子を含むプラスミドの経皮送達の結果を示すグラフである。
【図7】実施例5で説明した、ボツリヌストキシンの経皮送達の結果を示すグラフである。
【図8】実施例6で説明した、ボツリヌストキシンの経皮送達の結果を示す写真である。
【図9】実施例9のイメージング複合体について、黒色腫色素が沈着した細胞の明視野分布(パネルa及びc)の後に蛍光性の光学的イメージング物質(パネルb及びd)を示す、2種の異なる視野及び異なる拡大率(パネルa及びbの10倍に対し、パネルc及びdは拡大率40倍)の写真である。
【図10】実施例10に記載した、2つの異なる倍率の、ポジティブのNeutrAvidin染色を示す写真描写である。図10aの(a)及び(b)部分は10×倍率であり、(c)及び(d)部分は20×倍率である。図10bの(e)及び(f)部分は、繰り返し染色で20×倍率である。
【図11】実施例11に記載した、担体の主鎖に対する相対毒性の結果を示す図である。
【図12】実施例11に記載した、経皮の遺伝子送達効率の結果を示す図である。
【図13】実施例11に記載した、結腸癌及び繊維芽細胞の共培養の明視野画像(パネルa)、並びに結腸癌の蛍光画像(パネルb)を示す、視覚的画像プローブのCEA陽性細胞への選択的送達の写真描写である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的に活性なタンパク質と、正に帯電した分枝基を結合したポリマーの主鎖を含み、経皮送達に有効な量で存在する担体とを含む組成物であって、担体と生物学的に活性なタンパク質との結合が非共有結合性である組成物。
【請求項2】
治療用のタンパク質がインスリン、ボツリヌストキシン、VEGF、及び抗体断片を除外する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
治療用のタンパク質が血中グルコースレベルを治療的に変化させない、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
治療用のタンパク質がボツリヌストキシンを除外する、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
治療用のタンパク質がVEGFを除外する、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
治療用のタンパク質が抗体断片を除外する、請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
担体が無い場合の作用物質に比べて、生物学的に活性なタンパク質のより多くの経皮送達を実現する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
生物学的に活性なタンパク質が治療活性を有する、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
治療用タンパク質が少なくとも20,000kD未満の分子量を有する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
主鎖が、正に帯電したポリペプチドを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
主鎖が、約10,000〜約1,500,000の分子量を有する正に帯電したポリペプチドを含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
主鎖が、約25,000〜約1,200,000の分子量を有する正に帯電したポリペプチドを含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
主鎖が、約100,000〜約1,000,000の分子量を有する正に帯電したポリペプチドを含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項14】
主鎖が、正に帯電したポリリジンを含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項15】
主鎖が、約10,000〜約1,500,000の分子量を有する正に帯電したポリリジンを含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
主鎖が、約25,000〜約1,200,000の分子量を有する正に帯電したポリリジンを含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
主鎖が、約100,000〜約1,000,000の分子量を有する正に帯電したポリリジンを含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項18】
主鎖が、正に帯電した非ペプチジルポリマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
非ペプチジルポリマー主鎖が、正に帯電したポリアルキレンイミンを含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
ポリアルキレンイミンがポリエチレンイミンである、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
ポリエチレンイミンが、約10,000〜約2,500,000の分子量を有する、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
ポリエチレンイミンが、約100,000〜約1,800,000の分子量を有する、請求項20に記載の組成物。
【請求項23】
ポリエチレンイミンが、約500,000〜約1,400,000の分子量を有する、請求項20に記載の組成物。
【請求項24】
担体が、−(gly)n1−(arg)n2、HIV−TAT及びその断片、並びにアンテナペディアPTD及びその断片(式中、下付き文字n1は、0〜約20の整数であり、下付き文字n2は、独立に、約5〜約25の奇数である)から選択される正に帯電した分枝基を結合したポリマーの主鎖を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項25】
正に帯電した分枝基が、式−(gly)n1−(arg)n2を有する基から選択される、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
下付き文字n1が、約1〜約8の整数である、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
下付き文字n1が、約2〜約5の整数である、請求項25に記載の組成物。
【請求項28】
下付き文字n2が、約7〜約17の奇数である、請求項25に記載の組成物。
【請求項29】
下付き文字n2が、約7〜約13の奇数である、請求項25に記載の組成物。
【請求項30】
分枝基が、HIV−TAT及びその断片から選択される、請求項24に記載の組成物。
【請求項31】
結合された正に帯電した分枝基が、式(gly)p−RGRDDRRQRRR−(gly)q、(gly)p−YGRKKRRQRRR−(gly)q、又は(gly)p−RKKRRQRRR−(gly)q(式中、下付き文字p及びqは、それぞれ独立に、0〜20の整数である)を有するHIV−TAT断片である、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
分枝基が、アンテナペディアPTD基又はその断片である、請求項24に記載の組成物。
【請求項33】
非タンパク質非ヌクレオチド系の生物学的に活性な作用物質と、正に帯電した分枝基を結合したポリマーの主鎖を含み、経皮送達に有効な量で存在する担体とを含む組成物であって、担体と生物学的に活性な作用物質との結合が非共有結合性である組成物。
【請求項34】
担体が無い場合の作用物質に比べて、生物学的に活性な作用物質のより多くの経皮送達を実現する、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
生物学的に活性な作用物質が治療活性を有する、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
主鎖が、正に帯電したポリペプチドを含む、請求項33に記載の組成物。
【請求項37】
主鎖が、約10,000〜約1,500,000の分子量を有する正に帯電したポリペプチドを含む、請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
主鎖が、約25,000〜約1,200,000の分子量を有する正に帯電したポリペプチドを含む、請求項36に記載の組成物。
【請求項39】
主鎖が、約100,000〜約1,000,000の分子量を有する正に帯電したポリペプチドを含む、請求項36に記載の組成物。
【請求項40】
主鎖が、正に帯電したポリリジンを含む、請求項36に記載の組成物。
【請求項41】
主鎖が、約10,000〜約1,500,000の分子量を有する正に帯電したポリリジンを含む、請求項40に記載の組成物。
【請求項42】
主鎖が、約25,000〜約1,200,000の分子量を有する正に帯電したポリリジンを含む、請求項40に記載の組成物。
【請求項43】
主鎖が、約100,000〜約1,000,000の分子量を有する正に帯電したポリリジンを含む、請求項40に記載の組成物。
【請求項44】
主鎖が、正に帯電した非ペプチジルポリマーを含む、請求項33に記載の組成物。
【請求項45】
非ペプチジルポリマー主鎖が、正に帯電したポリアルキレンイミンを含む、請求項44に記載の組成物。
【請求項46】
ポリアルキレンイミンがポリエチレンイミンである、請求項45に記載の組成物。
【請求項47】
ポリエチレンイミンが、約10,000〜約2,500,000の分子量を有する、請求項46に記載の組成物。
【請求項48】
ポリエチレンイミンが、約100,000〜約1,800,000の分子量を有する、請求項46に記載の組成物。
【請求項49】
ポリエチレンイミンが、約500,000〜約1,400,000の分子量を有する、請求項46に記載の組成物。
【請求項50】
担体が、−(gly)n1−(arg)n2、HIV−TAT及びその断片、並びにアンテナペディアPTD及びその断片(式中、下付き文字n1は、0〜約20の整数であり、下付き文字n2は、独立に、約5〜約25の奇数である)から選択される結合された正に帯電した分枝基を有するポリマーの主鎖を含む、請求項33に記載の組成物。
【請求項51】
正に帯電した分枝基が、式−(gly)n1−(arg)n2を有する基から選択される、請求項50に記載の組成物。
【請求項52】
下付き文字n1が、約1〜約8の整数である、請求項51に記載の組成物。
【請求項53】
下付き文字n1が、約2〜約5の整数である、請求項51に記載の組成物。
【請求項54】
下付き文字n2が、約7〜約17の奇数である、請求項51に記載の組成物。
【請求項55】
下付き文字n2が、約7〜約13の奇数である、請求項51に記載の組成物。
【請求項56】
分枝基が、HIV−TAT及びその断片から選択される、請求項50に記載の組成物。
【請求項57】
結合された正に帯電した分枝基が、式(gly)p−RGRDDRRQRRR−(gly)q、(gly)p−YGRKKRRQRRR−(gly)q、又は(gly)p−RKKRRQRRR−(gly)q(式中、下付き文字p及びqは、それぞれ独立に、0〜20の整数である)を有するHIV−TAT断片である、請求項56に記載の組成物。
【請求項58】
分枝基が、アンテナペディアPTD基又はその断片である、請求項50に記載の組成物。
【請求項59】
約1×10−20〜約25重量%の生物学的に活性な作用物質、及び約1×10−19〜約30重量%の担体を含有する、請求項33に記載の組成物。
【請求項60】
請求項33に記載の制御放出組成物。
【請求項61】
生物学的に活性な作用物質を送達するための器具と、正に帯電した分枝基を結合したポリマーの主鎖を含み、経皮送達に有効な量で存在する担体とを含む、請求項1に記載の組成物を対象に投与するためのキット。
【請求項62】
生物学的に活性な作用物質がインスリン、ボツリヌストキシン、VEGF、及び抗体断片を除外する、請求項60に記載のキット。
【請求項63】
組成物が、生物学的に活性なタンパク質を皮膚又は上皮を介して対象に投与するための器具に含まれる、請求項62に記載のキット。
【請求項64】
器具が皮膚パッチである、請求項63に記載のキット。
【請求項65】
生物学的に活性なタンパク質を皮膚又は上皮に送達するための器具と、−(gly)n1−(arg)n2、HIV−TAT及びその断片、並びにアンテナペディアPTD及びその断片(式中、下付き文字n1は、0〜約20の整数であり、下付き文字n2は、独立に、約5〜約25の奇数である)から選択される、正に帯電した分枝基を結合したポリマーの担体を含む組成物とを含む、生物学的に活性なタンパク質を対象に投与するためのキットであって、担体と生物学的に活性なタンパク質との結合が非共有結合性であるキット。
【請求項66】
器具が皮膚パッチである、請求項65に記載のキット。
【請求項67】
正に帯電した分枝基を結合したポリマーの主鎖を含む有効量の担体と共に、タンパク質を対象の皮膚又は上皮に局所的に適用することを含む、生物学的に活性なタンパク質を対象に投与する方法であって、担体と生物学的に活性なタンパク質との結合が非共有結合性である方法。
【請求項68】
組成物が、担体が無い場合の作用物質に比べて、生物学的に活性なタンパク質のより多くの経皮送達を実現する、請求項66に記載の方法。
【請求項69】
生物学的に活性なタンパク質が治療活性を有する、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
治療用のタンパク質がインスリン、ボツリヌストキシン、VEGF、及び抗体断片を除外する、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
治療用のタンパク質が血中グルコースレベルを治療的に変化させない、請求項69に記載の方法。
【請求項72】
治療用のタンパク質がボツリヌストキシンを除外する、請求項69に記載の方法。
【請求項73】
治療用のタンパク質が抗体断片を除外する、請求項69に記載の方法。
【請求項74】
治療用のタンパク質がVEGFを除外する、請求項69に記載の方法。
【請求項75】
正に帯電した分枝基を結合したポリマー主鎖を含む有効量の担体と共に、生物学的に活性な作用物質を対象の皮膚又は上皮に局所的に適用することを含む、非タンパク質非ヌクレオチド系の生物学的に活性な作用物質を対象に投与する方法であって、担体と生物学的に活性な作用物質との結合が非共有結合性である方法。
【請求項76】
組成物が、担体が無い場合の作用物質に比べて、生物学的に活性な作用物質のより多くの経皮送達を実現する、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
生物学的に活性な作用物質が治療活性を有する、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
生物学的に活性なタンパク質及び担体が、双方の成分を含有する組成物の状態で対象に投与される、請求項75に記載の方法。
【請求項79】
生物学的に活性なタンパク質及び担体が、対象に別々に投与される、請求項75に記載の方法。
【請求項80】
生物学的に活性なタンパク質及び担体が、双方の成分を含有する組成物の状態で対象に投与される、請求項77に記載の方法。
【請求項81】
生物学的に活性な作用物質及び担体が、対象に別々に投与される、請求項77に記載の方法。
【請求項82】
組成物が、制御放出組成物である、請求項75に記載の方法。
【請求項83】
組成物が、制御放出組成物である、請求項77に記載の方法。
【請求項84】
非タンパク質非ヌクレオチド系の生物学的に活性な物質が抗真菌物質である、請求項75に記載の方法。
【請求項85】
生物学的に活性な物質が抗真菌物質である、請求項33に記載の組成物。
【請求項86】
約1×10e−10〜約49.9重量%までの生物学的に活性な物質、及び約1×10e−9〜約50重量%までの担体を含む、請求項85に記載の組成物。
【請求項87】
請求項85に記載の制御放出組成物。
【請求項88】
抗真菌薬が、アムホテリジンB、フルコナゾール、フルシトシン、イトラコナゾール、ケトコナゾール、クロトリマゾール、エコノゾール、グリセオフルビン、ミコナゾール、ナイスタチン、シクロピロクスなどから選択される、請求項85に記載の組成物。
【請求項89】
対象の皮膚又は上皮に作用物質を送達するための器具と、請求項33に記載の組成物とを含む、非タンパク質非ヌクレオチド系の生物学的に活性な作用物質を対象に投与するためのキット。
【請求項90】
特別仕様のアプリケーターをさらに含む、請求項89に記載のキット。
【請求項91】
物質が抗真菌物質であり、組成物が爪板又は隣接する解剖構造を介して対象に抗真菌物質を投与するための器具に含まれている、請求項89に記載のキット。
【請求項92】
器具が人工爪体又はラッカーである、請求項89に記載のキット。
【請求項93】
生物学的に活性な作用物質が乾癬の症状を治療又は予防する作用物質である、請求項75に記載の方法。
【請求項94】
抗真菌薬及び担体が、双方の成分を含有する組成物の状態で対象に投与される、請求項84に記載の方法。
【請求項95】
抗真菌薬及び担体が、対象に別々に投与される、請求項84に記載の方法。
【請求項96】
組成物が制御放出組成物である、請求項84に記載の方法。
【請求項97】
抗真菌薬が、アムホテリジンB、フルコナゾール、フルシトシン、イトラコナゾール、ケトコナゾール、クロトリマゾール、エコノゾール、グリセオフルビン、ミコナゾール、ナイスタチン、シクロピロクスなどから選択される、請求項84に記載の方法。
【請求項98】
真菌感染の症状及び徴候を治療するために抗真菌薬が投与される、請求項84に記載の方法。
【請求項99】
爪体又は爪床の真菌感染の症状又は徴候を改善するために抗真菌薬が投与される、請求項84に記載の方法。
【請求項100】
免疫化に適した抗原と、正に帯電した分枝基を結合したポリマーの主鎖を含み、経皮送達に有効な量で存在する担体とを含む組成物であって、担体と抗原との結合が非共有結合性である組成物。
【請求項101】
主鎖が、正に帯電したポリペプチドを含む、請求項100に記載の組成物。
【請求項102】
主鎖が、約10,000〜約1,500,000の分子量を有する正に帯電したポリペプチドを含む、請求項101に記載の組成物。
【請求項103】
主鎖が、約25,000〜約1,200,000の分子量を有する正に帯電したポリペプチドを含む、請求項101に記載の組成物。
【請求項104】
主鎖が、約100,000〜約1,000,000の分子量を有する正に帯電したポリペプチドを含む、請求項101に記載の組成物。
【請求項105】
主鎖が、正に帯電したポリリジンを含む、請求項101に記載の組成物。
【請求項106】
主鎖が、約10,000〜約1,500,000の分子量を有する正に帯電したポリリジンを含む、請求項105に記載の組成物。
【請求項107】
主鎖が、約25,000〜約1,200,000の分子量を有する正に帯電したポリリジンを含む、請求項105に記載の組成物。
【請求項108】
主鎖が、約100,000〜約1,000,000の分子量を有する正に帯電したポリリジンを含む、請求項105に記載の組成物。
【請求項109】
主鎖が、正に帯電した非ペプチジルポリマーを含む、請求項100に記載の組成物。
【請求項110】
非ペプチジルポリマー主鎖が、正に帯電したポリアルキレンイミンを含む、請求項109に記載の組成物。
【請求項111】
ポリアルキレンイミンがポリエチレンイミンである、請求項110に記載の組成物。
【請求項112】
ポリエチレンイミンが、約10,000〜約2,500,000の分子量を有する、請求項111に記載の組成物。
【請求項113】
ポリエチレンイミンが、約100,000〜約1,800,000の分子量を有する、請求項111に記載の組成物。
【請求項114】
ポリエチレンイミンが、約500,000〜約1,400,000の分子量を有する、請求項111に記載の組成物。
【請求項115】
担体が、−(gly)n1−(arg)n2、HIV−TAT及びその断片、並びにアンテナペディアPTD(式中、下付き文字n1は、0〜約20の整数であり、下付き文字n2は、独立に、約5〜約25の奇数である)から選択される、正に帯電した分枝基を結合したポリマーの主鎖を含む、請求項100に記載の組成物。
【請求項116】
正に帯電した分枝基が、式−(gly)n1−(arg)n2を有する基から選択される、請求項115に記載の組成物。
【請求項117】
下付き文字n1が、約1〜約8の整数である、請求項116に記載の組成物。
【請求項118】
下付き文字n1が、約2〜約5の整数である、請求項116に記載の組成物。
【請求項119】
下付き文字n2が、約7〜約17の奇数である、請求項116に記載の組成物。
【請求項120】
下付き文字n2が、約7〜約13の奇数である、請求項116に記載の組成物。
【請求項121】
分枝基が、HIV−TAT及びその断片から選択される、請求項115に記載の組成物。
【請求項122】
結合された正に帯電した分枝基が、式(gly)p−RGRDDRRQRRR−(gly)q、(gly)p−YGRKKRRQRRR−(gly)q、又は(gly)p−RKKRRQRRR−(gly)q(式中、下付き文字p及びqは、それぞれ独立に、0〜20の整数である)を有するHIV−TAT断片である、請求項121に記載の組成物。
【請求項123】
分枝基が、アンテナペディアPTD基である、請求項115に記載の組成物。
【請求項124】
正に帯電したポリマーがポリペプチドを含む、請求項115に記載の組成物。
【請求項125】
ポリペプチドが、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリオルニチン、及びポリホモアルギニンから選択される、請求項124に記載の組成物。
【請求項126】
ポリペプチドがポリリジンである、請求項125に記載の組成物。
【請求項127】
ポリマーが、正に帯電した非ペプチジルポリマーを含む、請求項115に記載の組成物。
【請求項128】
非ペプチジルポリマーが、正に帯電したポリアルキレンイミンを含む、請求項127に記載の組成物。
【請求項129】
ポリアルキレンイミンがポリエチレンイミンである、請求項128に記載の組成物。
【請求項130】
約1×10e−10〜約49.9重量%の抗原、及び約1×10e−9〜約50重量%の担体を含有する、請求項100に記載の組成物。
【請求項131】
請求項100に記載の制御放出組成物。
【請求項132】
抗原がインスリン、ボツリヌストキシン、VEGF、及び抗体断片を除外する、請求項100に記載の組成物。
【請求項133】
抗原が小児期の免疫化に適している、請求項100に記載の組成物。
【請求項134】
免疫化に適した抗原を皮膚又は上皮に送達するための器具と、(gly)n1−(arg)n2、HIV−TAT及びその断片、並びにアンテナペディアPTD(式中、下付き文字n1は、0〜約20の整数であり、下付き文字n2は、独立に、約5〜約25の奇数である)から選択される、正に帯電した分枝基を結合したポリマーの主鎖からなる担体を含む組成物とを含む、免疫化に適した抗原を対象に投与するためのキットであって、担体と抗原との結合が非共有結合性であるキット。
【請求項135】
皮膚又は上皮に抗原を送達するための器具、及び請求項100に記載の組成物を含む、免疫化に適した抗原を対象に投与するためのキット。
【請求項136】
特別仕様のアプリケーターをさらに含む、請求項134に記載のキット。
【請求項137】
組成物が、免疫化に適した抗原を皮膚又は上皮を介して対象に投与するための器具に含まれる、請求項134に記載のキット。
【請求項138】
器具を局所的に使用する、請求項134に記載のキット。
【請求項139】
器具が皮膚パッチである、請求項134に記載のキット。
【請求項140】
正に帯電した分枝基を結合したポリマーの主鎖を含む有効量の担体と共に、免疫化に適した抗原を対象の皮膚又は上皮に局所的に適用することを含む、免疫化に適した抗原を対象に投与する方法であって、担体と抗原との結合が非共有結合性である方法。
【請求項141】
免疫化に適した抗原及び担体が、双方の成分を含有する組成物の状態で対象に投与される、請求項140に記載の方法。
【請求項142】
免疫化に適した抗原及び担体が、対象に別々に投与される、請求項140に記載の方法。
【請求項143】
主鎖が、正に帯電したポリペプチドを含む、請求項140に記載の方法。
【請求項144】
主鎖が、約10,000〜約1,500,000の分子量を有する正に帯電したポリペプチドを含む、請求項143に記載の方法。
【請求項145】
主鎖が、約25,000〜約1,200,000の分子量を有する正に帯電したポリペプチドを含む、請求項143に記載の方法。
【請求項146】
主鎖が、約100,000〜約1,000,000の分子量を有する正に帯電したポリペプチドを含む、請求項143に記載の方法。
【請求項147】
主鎖が、正に帯電したポリリジンを含む、請求項143に記載の方法。
【請求項148】
主鎖が、約10,000〜約1,500,000の分子量を有する正に帯電したポリリジンを含む、請求項147に記載の方法。
【請求項149】
主鎖が、約25,000〜約1,200,000の分子量を有する正に帯電したポリリジンを含む、請求項147に記載の方法。
【請求項150】
主鎖が、約100,000〜約1,000,000の分子量を有する正に帯電したポリリジンを含む、請求項147に記載の方法。
【請求項151】
主鎖が、正に帯電した非ペプチジルポリマーを含む、請求項140に記載の方法。
【請求項152】
非ペプチジルポリマー主鎖が、正に帯電したポリアルキレンイミンを含む、請求項151に記載の方法。
【請求項153】
ポリアルキレンイミンがポリエチレンイミンである、請求項152に記載の方法。
【請求項154】
ポリエチレンイミンが、約10,000〜約2,500,000の分子量を有する、請求項153に記載の方法。
【請求項155】
ポリエチレンイミンが、約100,000〜約1,800,000の分子量を有する、請求項153に記載の方法。
【請求項156】
ポリエチレンイミンが、約500,000〜約1,400,000の分子量を有する、請求項153に記載の方法。
【請求項157】
担体が、−(gly)n1−(arg)n2、HIV−TAT及びその断片、並びにアンテナペディアPTD(式中、下付き文字n1は、0〜約20の整数であり、下付き文字n2は、独立に、約5〜約25の奇数である)から選択される、正に帯電した分枝基を結合したポリマーの主鎖を含む、請求項140に記載の方法。
【請求項158】
正に帯電した分枝基が、式−(gly)n1−(arg)n2を有する基から独立に選択される、請求項157に記載の方法。
【請求項159】
下付き文字n1が、約1〜約8の整数である、請求項158に記載の方法。
【請求項160】
下付き文字n1が、約2〜約5の整数である、請求項158に記載の方法。
【請求項161】
下付き文字n2が、約7〜約17の奇数である、請求項158に記載の方法。
【請求項162】
下付き文字n2が、約7〜約13の奇数である、請求項158に記載の方法。
【請求項163】
分枝基が、HIV−TAT及びその断片から選択される、請求項157に記載の方法。
【請求項164】
結合された正に帯電した分枝基が、式(gly)p−RGRDDRRQRRR−(gly)q、(gly)p−YGRKKRRQRRR−(gly)q、又は(gly)p−RKKRRQRRR−(gly)q(式中、下付き文字p及びqは、それぞれ独立に、0〜20の整数である)を有するHIV−TAT断片である、請求項163に記載の方法。
【請求項165】
分枝基が、アンテナペディアPTD基である、請求項157に記載の方法。
【請求項166】
正に帯電したポリマーがポリペプチドを含む、請求項157に記載の方法。
【請求項167】
ポリペプチドが、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリオルニチン、及びポリホモアルギニンから選択される、請求項166に記載の方法。
【請求項168】
ポリペプチドがポリリジンである、請求項167に記載の方法。
【請求項169】
ポリマーが、正に帯電した非ペプチジルポリマーを含む、請求項157に記載の方法。
【請求項170】
非ペプチジルポリマーが、正に帯電したポリアルキレンイミンを含む、請求項169に記載の方法。
【請求項171】
ポリアルキレンイミンがポリエチレンイミンである、請求項170に記載の方法。
【請求項172】
組成物が制御放出組成物である、請求項140に記載の方法。
【請求項173】
免疫化に適した抗原がインスリン、ボツリヌストキシン、VEGF、及び抗体断片を除外する、請求項140に記載の方法。
【請求項174】
抗原が小児期の免疫化に適している、請求項140に記載の方法。
【請求項175】
環境抗原に対する抵抗性を付与するために、免疫化に適した抗原が投与される、請求項140に記載の方法。
【請求項176】
潜在的病原体に対する抵抗性を付与するために、免疫化に適した抗原が投与される、請求項140に記載の方法。
【請求項177】
潜在的バイオハザードに対する抵抗性を付与するために、免疫化に適した抗原が投与される、請求項140に記載の方法。
【請求項178】
イメージング部分及び標的物質と、正に帯電した分枝基を結合したポリマーの主鎖を含み、経皮送達に有効な量で存在する担体とを含む組成物であって、担体とイメージング部分又は標的物質との結合が非共有結合性である組成物。
【請求項179】
イメージング物質が光学的イメージング物質である、請求項178に記載の組成物。
【請求項180】
イメージング物質が、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、Cy7.5、オレゴングリーン488、オレゴングリーン500、オレゴン、グリーン514、緑色蛍光タンパク質、6−FAM、テキサスレッド、Hex、TET、及びHAMRAから選択される、請求項179に記載の組成物。
【請求項181】
イメージング物質が磁気共鳴画像法に適している、請求項178に記載の組成物。
【請求項182】
標的物質が黒色腫を認識する、請求項178に記載の組成物。
【請求項183】
イメージング部分及び標的部分を送達するための器具と、正に帯電した分枝基を結合したポリマーの主鎖を含み、経皮送達に有効な量で存在する担体とを含む、請求項178に記載の組成物を対象に投与するためのキット。
【請求項184】
正に帯電した分枝基を結合したポリマーの主鎖を含む有効量の担体と共に、イメージング部分及び標的物質を対象の皮膚又は上皮に局所的に適用することを含む、イメージング部分及び標的物質を対象に投与する方法であって、担体と生物学的に活性なタンパク質との結合が非共有結合性である方法。
【請求項185】
イメージング物質が光学的イメージング物質である、請求項184に記載の方法。
【請求項186】
イメージング物質が、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、Cy7.5、オレゴングリーン488、オレゴングリーン500、オレゴン、グリーン514、緑色蛍光タンパク質、6−FAM、テキサスレッド、Hex、TET、及びHAMRAから選択される、請求項185に記載の方法。
【請求項187】
イメージング物質が磁気共鳴画像法に適している、請求項184に記載の方法。
【請求項188】
標的物質が黒色腫を認識する、請求項184に記載の方法。
【請求項189】
黒色腫の危険性のある患者をスクリーニングするために組成物が使用される、請求項184に記載の方法。
【請求項190】
黒色腫の外科的切除を補助するために組成物が使用される、請求項184に記載の方法。
【請求項191】
写真技術又は画像解析技術と共に組成物が使用される、請求項184に記載の方法。
【請求項1】
生物学的に活性なタンパク質と、正に帯電した分枝基を結合したポリマーの主鎖を含み、経皮送達に有効な量で存在する担体とを含む組成物であって、担体と生物学的に活性なタンパク質との結合が非共有結合性である組成物。
【請求項2】
治療用のタンパク質がインスリン、ボツリヌストキシン、VEGF、及び抗体断片を除外する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
治療用のタンパク質が血中グルコースレベルを治療的に変化させない、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
治療用のタンパク質がボツリヌストキシンを除外する、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
治療用のタンパク質がVEGFを除外する、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
治療用のタンパク質が抗体断片を除外する、請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
担体が無い場合の作用物質に比べて、生物学的に活性なタンパク質のより多くの経皮送達を実現する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
生物学的に活性なタンパク質が治療活性を有する、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
治療用タンパク質が少なくとも20,000kD未満の分子量を有する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
主鎖が、正に帯電したポリペプチドを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
主鎖が、約10,000〜約1,500,000の分子量を有する正に帯電したポリペプチドを含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
主鎖が、約25,000〜約1,200,000の分子量を有する正に帯電したポリペプチドを含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
主鎖が、約100,000〜約1,000,000の分子量を有する正に帯電したポリペプチドを含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項14】
主鎖が、正に帯電したポリリジンを含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項15】
主鎖が、約10,000〜約1,500,000の分子量を有する正に帯電したポリリジンを含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
主鎖が、約25,000〜約1,200,000の分子量を有する正に帯電したポリリジンを含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
主鎖が、約100,000〜約1,000,000の分子量を有する正に帯電したポリリジンを含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項18】
主鎖が、正に帯電した非ペプチジルポリマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
非ペプチジルポリマー主鎖が、正に帯電したポリアルキレンイミンを含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
ポリアルキレンイミンがポリエチレンイミンである、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
ポリエチレンイミンが、約10,000〜約2,500,000の分子量を有する、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
ポリエチレンイミンが、約100,000〜約1,800,000の分子量を有する、請求項20に記載の組成物。
【請求項23】
ポリエチレンイミンが、約500,000〜約1,400,000の分子量を有する、請求項20に記載の組成物。
【請求項24】
担体が、−(gly)n1−(arg)n2、HIV−TAT及びその断片、並びにアンテナペディアPTD及びその断片(式中、下付き文字n1は、0〜約20の整数であり、下付き文字n2は、独立に、約5〜約25の奇数である)から選択される正に帯電した分枝基を結合したポリマーの主鎖を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項25】
正に帯電した分枝基が、式−(gly)n1−(arg)n2を有する基から選択される、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
下付き文字n1が、約1〜約8の整数である、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
下付き文字n1が、約2〜約5の整数である、請求項25に記載の組成物。
【請求項28】
下付き文字n2が、約7〜約17の奇数である、請求項25に記載の組成物。
【請求項29】
下付き文字n2が、約7〜約13の奇数である、請求項25に記載の組成物。
【請求項30】
分枝基が、HIV−TAT及びその断片から選択される、請求項24に記載の組成物。
【請求項31】
結合された正に帯電した分枝基が、式(gly)p−RGRDDRRQRRR−(gly)q、(gly)p−YGRKKRRQRRR−(gly)q、又は(gly)p−RKKRRQRRR−(gly)q(式中、下付き文字p及びqは、それぞれ独立に、0〜20の整数である)を有するHIV−TAT断片である、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
分枝基が、アンテナペディアPTD基又はその断片である、請求項24に記載の組成物。
【請求項33】
非タンパク質非ヌクレオチド系の生物学的に活性な作用物質と、正に帯電した分枝基を結合したポリマーの主鎖を含み、経皮送達に有効な量で存在する担体とを含む組成物であって、担体と生物学的に活性な作用物質との結合が非共有結合性である組成物。
【請求項34】
担体が無い場合の作用物質に比べて、生物学的に活性な作用物質のより多くの経皮送達を実現する、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
生物学的に活性な作用物質が治療活性を有する、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
主鎖が、正に帯電したポリペプチドを含む、請求項33に記載の組成物。
【請求項37】
主鎖が、約10,000〜約1,500,000の分子量を有する正に帯電したポリペプチドを含む、請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
主鎖が、約25,000〜約1,200,000の分子量を有する正に帯電したポリペプチドを含む、請求項36に記載の組成物。
【請求項39】
主鎖が、約100,000〜約1,000,000の分子量を有する正に帯電したポリペプチドを含む、請求項36に記載の組成物。
【請求項40】
主鎖が、正に帯電したポリリジンを含む、請求項36に記載の組成物。
【請求項41】
主鎖が、約10,000〜約1,500,000の分子量を有する正に帯電したポリリジンを含む、請求項40に記載の組成物。
【請求項42】
主鎖が、約25,000〜約1,200,000の分子量を有する正に帯電したポリリジンを含む、請求項40に記載の組成物。
【請求項43】
主鎖が、約100,000〜約1,000,000の分子量を有する正に帯電したポリリジンを含む、請求項40に記載の組成物。
【請求項44】
主鎖が、正に帯電した非ペプチジルポリマーを含む、請求項33に記載の組成物。
【請求項45】
非ペプチジルポリマー主鎖が、正に帯電したポリアルキレンイミンを含む、請求項44に記載の組成物。
【請求項46】
ポリアルキレンイミンがポリエチレンイミンである、請求項45に記載の組成物。
【請求項47】
ポリエチレンイミンが、約10,000〜約2,500,000の分子量を有する、請求項46に記載の組成物。
【請求項48】
ポリエチレンイミンが、約100,000〜約1,800,000の分子量を有する、請求項46に記載の組成物。
【請求項49】
ポリエチレンイミンが、約500,000〜約1,400,000の分子量を有する、請求項46に記載の組成物。
【請求項50】
担体が、−(gly)n1−(arg)n2、HIV−TAT及びその断片、並びにアンテナペディアPTD及びその断片(式中、下付き文字n1は、0〜約20の整数であり、下付き文字n2は、独立に、約5〜約25の奇数である)から選択される結合された正に帯電した分枝基を有するポリマーの主鎖を含む、請求項33に記載の組成物。
【請求項51】
正に帯電した分枝基が、式−(gly)n1−(arg)n2を有する基から選択される、請求項50に記載の組成物。
【請求項52】
下付き文字n1が、約1〜約8の整数である、請求項51に記載の組成物。
【請求項53】
下付き文字n1が、約2〜約5の整数である、請求項51に記載の組成物。
【請求項54】
下付き文字n2が、約7〜約17の奇数である、請求項51に記載の組成物。
【請求項55】
下付き文字n2が、約7〜約13の奇数である、請求項51に記載の組成物。
【請求項56】
分枝基が、HIV−TAT及びその断片から選択される、請求項50に記載の組成物。
【請求項57】
結合された正に帯電した分枝基が、式(gly)p−RGRDDRRQRRR−(gly)q、(gly)p−YGRKKRRQRRR−(gly)q、又は(gly)p−RKKRRQRRR−(gly)q(式中、下付き文字p及びqは、それぞれ独立に、0〜20の整数である)を有するHIV−TAT断片である、請求項56に記載の組成物。
【請求項58】
分枝基が、アンテナペディアPTD基又はその断片である、請求項50に記載の組成物。
【請求項59】
約1×10−20〜約25重量%の生物学的に活性な作用物質、及び約1×10−19〜約30重量%の担体を含有する、請求項33に記載の組成物。
【請求項60】
請求項33に記載の制御放出組成物。
【請求項61】
生物学的に活性な作用物質を送達するための器具と、正に帯電した分枝基を結合したポリマーの主鎖を含み、経皮送達に有効な量で存在する担体とを含む、請求項1に記載の組成物を対象に投与するためのキット。
【請求項62】
生物学的に活性な作用物質がインスリン、ボツリヌストキシン、VEGF、及び抗体断片を除外する、請求項60に記載のキット。
【請求項63】
組成物が、生物学的に活性なタンパク質を皮膚又は上皮を介して対象に投与するための器具に含まれる、請求項62に記載のキット。
【請求項64】
器具が皮膚パッチである、請求項63に記載のキット。
【請求項65】
生物学的に活性なタンパク質を皮膚又は上皮に送達するための器具と、−(gly)n1−(arg)n2、HIV−TAT及びその断片、並びにアンテナペディアPTD及びその断片(式中、下付き文字n1は、0〜約20の整数であり、下付き文字n2は、独立に、約5〜約25の奇数である)から選択される、正に帯電した分枝基を結合したポリマーの担体を含む組成物とを含む、生物学的に活性なタンパク質を対象に投与するためのキットであって、担体と生物学的に活性なタンパク質との結合が非共有結合性であるキット。
【請求項66】
器具が皮膚パッチである、請求項65に記載のキット。
【請求項67】
正に帯電した分枝基を結合したポリマーの主鎖を含む有効量の担体と共に、タンパク質を対象の皮膚又は上皮に局所的に適用することを含む、生物学的に活性なタンパク質を対象に投与する方法であって、担体と生物学的に活性なタンパク質との結合が非共有結合性である方法。
【請求項68】
組成物が、担体が無い場合の作用物質に比べて、生物学的に活性なタンパク質のより多くの経皮送達を実現する、請求項66に記載の方法。
【請求項69】
生物学的に活性なタンパク質が治療活性を有する、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
治療用のタンパク質がインスリン、ボツリヌストキシン、VEGF、及び抗体断片を除外する、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
治療用のタンパク質が血中グルコースレベルを治療的に変化させない、請求項69に記載の方法。
【請求項72】
治療用のタンパク質がボツリヌストキシンを除外する、請求項69に記載の方法。
【請求項73】
治療用のタンパク質が抗体断片を除外する、請求項69に記載の方法。
【請求項74】
治療用のタンパク質がVEGFを除外する、請求項69に記載の方法。
【請求項75】
正に帯電した分枝基を結合したポリマー主鎖を含む有効量の担体と共に、生物学的に活性な作用物質を対象の皮膚又は上皮に局所的に適用することを含む、非タンパク質非ヌクレオチド系の生物学的に活性な作用物質を対象に投与する方法であって、担体と生物学的に活性な作用物質との結合が非共有結合性である方法。
【請求項76】
組成物が、担体が無い場合の作用物質に比べて、生物学的に活性な作用物質のより多くの経皮送達を実現する、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
生物学的に活性な作用物質が治療活性を有する、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
生物学的に活性なタンパク質及び担体が、双方の成分を含有する組成物の状態で対象に投与される、請求項75に記載の方法。
【請求項79】
生物学的に活性なタンパク質及び担体が、対象に別々に投与される、請求項75に記載の方法。
【請求項80】
生物学的に活性なタンパク質及び担体が、双方の成分を含有する組成物の状態で対象に投与される、請求項77に記載の方法。
【請求項81】
生物学的に活性な作用物質及び担体が、対象に別々に投与される、請求項77に記載の方法。
【請求項82】
組成物が、制御放出組成物である、請求項75に記載の方法。
【請求項83】
組成物が、制御放出組成物である、請求項77に記載の方法。
【請求項84】
非タンパク質非ヌクレオチド系の生物学的に活性な物質が抗真菌物質である、請求項75に記載の方法。
【請求項85】
生物学的に活性な物質が抗真菌物質である、請求項33に記載の組成物。
【請求項86】
約1×10e−10〜約49.9重量%までの生物学的に活性な物質、及び約1×10e−9〜約50重量%までの担体を含む、請求項85に記載の組成物。
【請求項87】
請求項85に記載の制御放出組成物。
【請求項88】
抗真菌薬が、アムホテリジンB、フルコナゾール、フルシトシン、イトラコナゾール、ケトコナゾール、クロトリマゾール、エコノゾール、グリセオフルビン、ミコナゾール、ナイスタチン、シクロピロクスなどから選択される、請求項85に記載の組成物。
【請求項89】
対象の皮膚又は上皮に作用物質を送達するための器具と、請求項33に記載の組成物とを含む、非タンパク質非ヌクレオチド系の生物学的に活性な作用物質を対象に投与するためのキット。
【請求項90】
特別仕様のアプリケーターをさらに含む、請求項89に記載のキット。
【請求項91】
物質が抗真菌物質であり、組成物が爪板又は隣接する解剖構造を介して対象に抗真菌物質を投与するための器具に含まれている、請求項89に記載のキット。
【請求項92】
器具が人工爪体又はラッカーである、請求項89に記載のキット。
【請求項93】
生物学的に活性な作用物質が乾癬の症状を治療又は予防する作用物質である、請求項75に記載の方法。
【請求項94】
抗真菌薬及び担体が、双方の成分を含有する組成物の状態で対象に投与される、請求項84に記載の方法。
【請求項95】
抗真菌薬及び担体が、対象に別々に投与される、請求項84に記載の方法。
【請求項96】
組成物が制御放出組成物である、請求項84に記載の方法。
【請求項97】
抗真菌薬が、アムホテリジンB、フルコナゾール、フルシトシン、イトラコナゾール、ケトコナゾール、クロトリマゾール、エコノゾール、グリセオフルビン、ミコナゾール、ナイスタチン、シクロピロクスなどから選択される、請求項84に記載の方法。
【請求項98】
真菌感染の症状及び徴候を治療するために抗真菌薬が投与される、請求項84に記載の方法。
【請求項99】
爪体又は爪床の真菌感染の症状又は徴候を改善するために抗真菌薬が投与される、請求項84に記載の方法。
【請求項100】
免疫化に適した抗原と、正に帯電した分枝基を結合したポリマーの主鎖を含み、経皮送達に有効な量で存在する担体とを含む組成物であって、担体と抗原との結合が非共有結合性である組成物。
【請求項101】
主鎖が、正に帯電したポリペプチドを含む、請求項100に記載の組成物。
【請求項102】
主鎖が、約10,000〜約1,500,000の分子量を有する正に帯電したポリペプチドを含む、請求項101に記載の組成物。
【請求項103】
主鎖が、約25,000〜約1,200,000の分子量を有する正に帯電したポリペプチドを含む、請求項101に記載の組成物。
【請求項104】
主鎖が、約100,000〜約1,000,000の分子量を有する正に帯電したポリペプチドを含む、請求項101に記載の組成物。
【請求項105】
主鎖が、正に帯電したポリリジンを含む、請求項101に記載の組成物。
【請求項106】
主鎖が、約10,000〜約1,500,000の分子量を有する正に帯電したポリリジンを含む、請求項105に記載の組成物。
【請求項107】
主鎖が、約25,000〜約1,200,000の分子量を有する正に帯電したポリリジンを含む、請求項105に記載の組成物。
【請求項108】
主鎖が、約100,000〜約1,000,000の分子量を有する正に帯電したポリリジンを含む、請求項105に記載の組成物。
【請求項109】
主鎖が、正に帯電した非ペプチジルポリマーを含む、請求項100に記載の組成物。
【請求項110】
非ペプチジルポリマー主鎖が、正に帯電したポリアルキレンイミンを含む、請求項109に記載の組成物。
【請求項111】
ポリアルキレンイミンがポリエチレンイミンである、請求項110に記載の組成物。
【請求項112】
ポリエチレンイミンが、約10,000〜約2,500,000の分子量を有する、請求項111に記載の組成物。
【請求項113】
ポリエチレンイミンが、約100,000〜約1,800,000の分子量を有する、請求項111に記載の組成物。
【請求項114】
ポリエチレンイミンが、約500,000〜約1,400,000の分子量を有する、請求項111に記載の組成物。
【請求項115】
担体が、−(gly)n1−(arg)n2、HIV−TAT及びその断片、並びにアンテナペディアPTD(式中、下付き文字n1は、0〜約20の整数であり、下付き文字n2は、独立に、約5〜約25の奇数である)から選択される、正に帯電した分枝基を結合したポリマーの主鎖を含む、請求項100に記載の組成物。
【請求項116】
正に帯電した分枝基が、式−(gly)n1−(arg)n2を有する基から選択される、請求項115に記載の組成物。
【請求項117】
下付き文字n1が、約1〜約8の整数である、請求項116に記載の組成物。
【請求項118】
下付き文字n1が、約2〜約5の整数である、請求項116に記載の組成物。
【請求項119】
下付き文字n2が、約7〜約17の奇数である、請求項116に記載の組成物。
【請求項120】
下付き文字n2が、約7〜約13の奇数である、請求項116に記載の組成物。
【請求項121】
分枝基が、HIV−TAT及びその断片から選択される、請求項115に記載の組成物。
【請求項122】
結合された正に帯電した分枝基が、式(gly)p−RGRDDRRQRRR−(gly)q、(gly)p−YGRKKRRQRRR−(gly)q、又は(gly)p−RKKRRQRRR−(gly)q(式中、下付き文字p及びqは、それぞれ独立に、0〜20の整数である)を有するHIV−TAT断片である、請求項121に記載の組成物。
【請求項123】
分枝基が、アンテナペディアPTD基である、請求項115に記載の組成物。
【請求項124】
正に帯電したポリマーがポリペプチドを含む、請求項115に記載の組成物。
【請求項125】
ポリペプチドが、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリオルニチン、及びポリホモアルギニンから選択される、請求項124に記載の組成物。
【請求項126】
ポリペプチドがポリリジンである、請求項125に記載の組成物。
【請求項127】
ポリマーが、正に帯電した非ペプチジルポリマーを含む、請求項115に記載の組成物。
【請求項128】
非ペプチジルポリマーが、正に帯電したポリアルキレンイミンを含む、請求項127に記載の組成物。
【請求項129】
ポリアルキレンイミンがポリエチレンイミンである、請求項128に記載の組成物。
【請求項130】
約1×10e−10〜約49.9重量%の抗原、及び約1×10e−9〜約50重量%の担体を含有する、請求項100に記載の組成物。
【請求項131】
請求項100に記載の制御放出組成物。
【請求項132】
抗原がインスリン、ボツリヌストキシン、VEGF、及び抗体断片を除外する、請求項100に記載の組成物。
【請求項133】
抗原が小児期の免疫化に適している、請求項100に記載の組成物。
【請求項134】
免疫化に適した抗原を皮膚又は上皮に送達するための器具と、(gly)n1−(arg)n2、HIV−TAT及びその断片、並びにアンテナペディアPTD(式中、下付き文字n1は、0〜約20の整数であり、下付き文字n2は、独立に、約5〜約25の奇数である)から選択される、正に帯電した分枝基を結合したポリマーの主鎖からなる担体を含む組成物とを含む、免疫化に適した抗原を対象に投与するためのキットであって、担体と抗原との結合が非共有結合性であるキット。
【請求項135】
皮膚又は上皮に抗原を送達するための器具、及び請求項100に記載の組成物を含む、免疫化に適した抗原を対象に投与するためのキット。
【請求項136】
特別仕様のアプリケーターをさらに含む、請求項134に記載のキット。
【請求項137】
組成物が、免疫化に適した抗原を皮膚又は上皮を介して対象に投与するための器具に含まれる、請求項134に記載のキット。
【請求項138】
器具を局所的に使用する、請求項134に記載のキット。
【請求項139】
器具が皮膚パッチである、請求項134に記載のキット。
【請求項140】
正に帯電した分枝基を結合したポリマーの主鎖を含む有効量の担体と共に、免疫化に適した抗原を対象の皮膚又は上皮に局所的に適用することを含む、免疫化に適した抗原を対象に投与する方法であって、担体と抗原との結合が非共有結合性である方法。
【請求項141】
免疫化に適した抗原及び担体が、双方の成分を含有する組成物の状態で対象に投与される、請求項140に記載の方法。
【請求項142】
免疫化に適した抗原及び担体が、対象に別々に投与される、請求項140に記載の方法。
【請求項143】
主鎖が、正に帯電したポリペプチドを含む、請求項140に記載の方法。
【請求項144】
主鎖が、約10,000〜約1,500,000の分子量を有する正に帯電したポリペプチドを含む、請求項143に記載の方法。
【請求項145】
主鎖が、約25,000〜約1,200,000の分子量を有する正に帯電したポリペプチドを含む、請求項143に記載の方法。
【請求項146】
主鎖が、約100,000〜約1,000,000の分子量を有する正に帯電したポリペプチドを含む、請求項143に記載の方法。
【請求項147】
主鎖が、正に帯電したポリリジンを含む、請求項143に記載の方法。
【請求項148】
主鎖が、約10,000〜約1,500,000の分子量を有する正に帯電したポリリジンを含む、請求項147に記載の方法。
【請求項149】
主鎖が、約25,000〜約1,200,000の分子量を有する正に帯電したポリリジンを含む、請求項147に記載の方法。
【請求項150】
主鎖が、約100,000〜約1,000,000の分子量を有する正に帯電したポリリジンを含む、請求項147に記載の方法。
【請求項151】
主鎖が、正に帯電した非ペプチジルポリマーを含む、請求項140に記載の方法。
【請求項152】
非ペプチジルポリマー主鎖が、正に帯電したポリアルキレンイミンを含む、請求項151に記載の方法。
【請求項153】
ポリアルキレンイミンがポリエチレンイミンである、請求項152に記載の方法。
【請求項154】
ポリエチレンイミンが、約10,000〜約2,500,000の分子量を有する、請求項153に記載の方法。
【請求項155】
ポリエチレンイミンが、約100,000〜約1,800,000の分子量を有する、請求項153に記載の方法。
【請求項156】
ポリエチレンイミンが、約500,000〜約1,400,000の分子量を有する、請求項153に記載の方法。
【請求項157】
担体が、−(gly)n1−(arg)n2、HIV−TAT及びその断片、並びにアンテナペディアPTD(式中、下付き文字n1は、0〜約20の整数であり、下付き文字n2は、独立に、約5〜約25の奇数である)から選択される、正に帯電した分枝基を結合したポリマーの主鎖を含む、請求項140に記載の方法。
【請求項158】
正に帯電した分枝基が、式−(gly)n1−(arg)n2を有する基から独立に選択される、請求項157に記載の方法。
【請求項159】
下付き文字n1が、約1〜約8の整数である、請求項158に記載の方法。
【請求項160】
下付き文字n1が、約2〜約5の整数である、請求項158に記載の方法。
【請求項161】
下付き文字n2が、約7〜約17の奇数である、請求項158に記載の方法。
【請求項162】
下付き文字n2が、約7〜約13の奇数である、請求項158に記載の方法。
【請求項163】
分枝基が、HIV−TAT及びその断片から選択される、請求項157に記載の方法。
【請求項164】
結合された正に帯電した分枝基が、式(gly)p−RGRDDRRQRRR−(gly)q、(gly)p−YGRKKRRQRRR−(gly)q、又は(gly)p−RKKRRQRRR−(gly)q(式中、下付き文字p及びqは、それぞれ独立に、0〜20の整数である)を有するHIV−TAT断片である、請求項163に記載の方法。
【請求項165】
分枝基が、アンテナペディアPTD基である、請求項157に記載の方法。
【請求項166】
正に帯電したポリマーがポリペプチドを含む、請求項157に記載の方法。
【請求項167】
ポリペプチドが、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリオルニチン、及びポリホモアルギニンから選択される、請求項166に記載の方法。
【請求項168】
ポリペプチドがポリリジンである、請求項167に記載の方法。
【請求項169】
ポリマーが、正に帯電した非ペプチジルポリマーを含む、請求項157に記載の方法。
【請求項170】
非ペプチジルポリマーが、正に帯電したポリアルキレンイミンを含む、請求項169に記載の方法。
【請求項171】
ポリアルキレンイミンがポリエチレンイミンである、請求項170に記載の方法。
【請求項172】
組成物が制御放出組成物である、請求項140に記載の方法。
【請求項173】
免疫化に適した抗原がインスリン、ボツリヌストキシン、VEGF、及び抗体断片を除外する、請求項140に記載の方法。
【請求項174】
抗原が小児期の免疫化に適している、請求項140に記載の方法。
【請求項175】
環境抗原に対する抵抗性を付与するために、免疫化に適した抗原が投与される、請求項140に記載の方法。
【請求項176】
潜在的病原体に対する抵抗性を付与するために、免疫化に適した抗原が投与される、請求項140に記載の方法。
【請求項177】
潜在的バイオハザードに対する抵抗性を付与するために、免疫化に適した抗原が投与される、請求項140に記載の方法。
【請求項178】
イメージング部分及び標的物質と、正に帯電した分枝基を結合したポリマーの主鎖を含み、経皮送達に有効な量で存在する担体とを含む組成物であって、担体とイメージング部分又は標的物質との結合が非共有結合性である組成物。
【請求項179】
イメージング物質が光学的イメージング物質である、請求項178に記載の組成物。
【請求項180】
イメージング物質が、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、Cy7.5、オレゴングリーン488、オレゴングリーン500、オレゴン、グリーン514、緑色蛍光タンパク質、6−FAM、テキサスレッド、Hex、TET、及びHAMRAから選択される、請求項179に記載の組成物。
【請求項181】
イメージング物質が磁気共鳴画像法に適している、請求項178に記載の組成物。
【請求項182】
標的物質が黒色腫を認識する、請求項178に記載の組成物。
【請求項183】
イメージング部分及び標的部分を送達するための器具と、正に帯電した分枝基を結合したポリマーの主鎖を含み、経皮送達に有効な量で存在する担体とを含む、請求項178に記載の組成物を対象に投与するためのキット。
【請求項184】
正に帯電した分枝基を結合したポリマーの主鎖を含む有効量の担体と共に、イメージング部分及び標的物質を対象の皮膚又は上皮に局所的に適用することを含む、イメージング部分及び標的物質を対象に投与する方法であって、担体と生物学的に活性なタンパク質との結合が非共有結合性である方法。
【請求項185】
イメージング物質が光学的イメージング物質である、請求項184に記載の方法。
【請求項186】
イメージング物質が、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、Cy7.5、オレゴングリーン488、オレゴングリーン500、オレゴン、グリーン514、緑色蛍光タンパク質、6−FAM、テキサスレッド、Hex、TET、及びHAMRAから選択される、請求項185に記載の方法。
【請求項187】
イメージング物質が磁気共鳴画像法に適している、請求項184に記載の方法。
【請求項188】
標的物質が黒色腫を認識する、請求項184に記載の方法。
【請求項189】
黒色腫の危険性のある患者をスクリーニングするために組成物が使用される、請求項184に記載の方法。
【請求項190】
黒色腫の外科的切除を補助するために組成物が使用される、請求項184に記載の方法。
【請求項191】
写真技術又は画像解析技術と共に組成物が使用される、請求項184に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10a】
【図10b】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10a】
【図10b】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2007−527431(P2007−527431A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−501983(P2007−501983)
【出願日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【国際出願番号】PCT/US2005/006931
【国際公開番号】WO2005/120546
【国際公開日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(504319459)ルバンス セラピュティックス (12)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【国際出願番号】PCT/US2005/006931
【国際公開番号】WO2005/120546
【国際公開日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(504319459)ルバンス セラピュティックス (12)
【Fターム(参考)】
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