説明

屈折率が制御された高強度ガラス繊維、該ガラス繊維を製造するための組成物及び該ガラス繊維から形成される複合材料

約48〜54質量%のSiO2と、約7〜14質量%のAl2O3と、約10〜16質量%のCaOと、約7〜13質量%のTiO2と、約9〜19質量%のZnOとの組成物を有するガラス繊維が提供される。本発明のガラス繊維とポリマーマトリックスとで形成される複合材料も提供される。本発明のガラス繊維は、590nmにおける屈折率が約1.60〜1.66である。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(背景技術)
複合材料を強化するものとして数多くのガラス組成物が公知である。一般的に、強度、製造のしやすさ、原料コストの管理、化学的相溶性及び環境への配慮を重視しながら、高強度連続ガラス繊維ストランドを作る目的に合わせてガラス組成物を製造する。S-ガラス、R-ガラス及びE-ガラスは、ポリマー系マトリックス材料を強化して複合構造物を形成するための周知の組成物である。S-ガラスは、主にマグネシウム、アルミニウム及びケイ素の酸化物で形成され、E-ガラス繊維よりも機械的強度が高いガラス繊維を生成する化学組成を有する。S-ガラス組成物は、防弾衣(ballistic armor)のような強度が高い用途で使用するための高強度ガラス繊維を生成する。
R-ガラスは、通常、宇宙航空の複合用途で使用するガラス繊維に形成される、高強度高弾性ガラスの更に別のグループである。R-ガラスグループは主として酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム及び酸化カルシウムで構成され、S-ガラス繊維よりも機械的強度が概して低いガラス繊維を生成する化学組成を有する。一般に、S-ガラスと比較すると、R-ガラスはシリカの含有量が低く、酸化カルシウム(CaO)の含有量が高いので、ガラス繊維を形成する工程での溶融及び加工温度を高くする必要がある。
ガラス繊維はポリマー系マトリックスの強化に使用することが多い。ポリマーには透明な物品の作成に使用されるものがある。そのような透明なポリマーの透明性やそのほかの外観を著しく損なうことなく、ポリマーの強化が可能なガラス繊維が望まれている。
【0002】
(概要)
本発明の態様により、約48〜54質量%のSiO2、約7〜14質量%のAl2O3、約10〜16質量%のCaO、約7〜13質量%のTiO2、約9〜19質量%のZnO及び約0〜2質量%のLiO2の強化用ガラス繊維を提供する。
本発明の別の態様により、ポリマーマトリックスと強化用ガラス繊維とで形成される複合材料を提供する。該ガラス繊維は、590nmにおいて屈折率が約1.60〜1.66であるとよい。
本発明のこれらの態様及び別の態様について、本願明細書で更に徹底的に説明する。
(詳細な説明)
本発明の具体的な実施形態を必要に応じて参照しながら本発明を説明するが、本発明は、異なる形態として具体化することができ、本願明細書に記載の実施形態に限定するものと解釈すべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が申し分なく完全になるよう、また、当該分野の当業者に本発明の範囲を十分に伝えるために提供するものである。
特に定義しないかぎりは、本願明細書で使用の技術的用語及び化学的用語はすべて、本発明が属する分野の当業者が通常理解しているものと同じ意味を有する。本願明細書の発明の説明で使用する専門用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。本発明の説明及びクレームで使用のごとく、特に文脈から明示されないかぎり、単数形(英語の「a」「an」「the」)は、同様に複数形も含むものである。
【0003】
特に記載のないかぎり、本明細書及びクレームで使用のごとく、成分量、分子量等の特性、反応条件等を表すすべての数字は、あらゆる場合、「約」という用語により加減できると解釈すべきである。従って、特に記載のないかぎり、明細書及び請求の範囲に記載の数字で表される特性は、本発明の実施形態で得ようとする所望の特性に応じて異なることがある概算値である。本発明の広い範囲を示す数値範囲やパラメーターは概算値であるが、具体的な例において示す数値はできるだけ正確に記載されている。しかしながら、いずれの数値もそれぞれの測定において見いだされた誤差に必然的に起因する誤差を本質的に含むものである。
本発明の実施形態によると、ポリマー材料を強化するための製造に特に有用である連続ガラス繊維形成用のガラスバッチ組成物が提供される。本発明のガラス繊維の屈折率は、ポリマー材料の透明性が最終的な複合構造物において保持できるように、ポリマー材料の屈折率と同様である。通常、このガラス繊維は比強度が高く、耐蝕性が良好で、曲げ安定性が高く、ライフタイムコストの総額が低い。
本発明の実施形態によると、ガラス繊維を製造するためのガラスバッチ組成物は、約48〜54質量%のSiO2、約7〜14質量%のAl2O3、約10〜16質量%のCaO、約7〜13 質量%のTiO2、約9〜19質量%のZnO及び約0〜2質量%のLi2Oを含有する。一例として、ガラス組成物は、約48〜51.75質量%のSiO2を含有する。別の実施形態のガラス組成物は、約48〜51.75質量%のSiO2、約10〜13質量%のAl2O3、約13.75〜16質量%のCaO、約7〜11質量%のTiO2、約11〜13質量%のZnO及び約0〜2質量%のLi2Oを含む。
【0004】
更に別の実施形態では、P2O5、ZrO2、SrO、BaO、SO3、F2、B2O3及びFe2O3からなる群から選択される酸化物又は化合物が、意図的な添加物又は原料に含まれる混入物のいずれかとして、組成物中に約2.0質量%を超えて含まれることはない。ガラスバッチ組成物から形成されるガラス繊維は、通常、本願明細書で更に詳細に説明するガラスバッチの組成と同じ組成になることは、当該分野の当業者には理解されよう。
出発物質のバッチ成分は、通常、SiO2(粉砕した珪砂)及びAl2O3(焼成したアルミナ)又は葉蝋石、ならびに、タルク、マグネサイト又はドロマイトなどのソース原料からの連鎖調整剤(chain modifiers)を含む。マグネサイトなどの原料に含まれる炭素はCO2等の炭素の酸化物として排出される。
本発明のガラスバッチ組成物は、繊維化温度(fiberizing temperature)、液相線及びデルタ-T(ΔT)を有する。繊維化温度は、粘度1000ポアズに対応する温度と定義される。下記で更に詳細に説明するが、繊維化温度が下がると、繊維の製造コストは抑えられ、ブッシュ(成形炉)の寿命を長くすることができ、処理量が増加し、エネルギー消費は低減する。
ガラスの液相線の定義は、液体ガラスとその初晶相との間で平衡を示す最高温度である。液相線より温度が高くなると、いずれもガラスには初晶相の結晶は含まれない。液相線より低い温度では、結晶が形成されることがある。溶融物の結晶はブッシュの閉塞を起こし、ガラス繊維を弱くする。
デルタ-T(ΔT)は、繊維化温度と液相線との差と定義される。ΔTが大きくなるほど、ガラス繊維形成中により高い柔軟性を付与でき、ガラスの溶融と繊維化の最中にガラスの失透(即ち、溶融物内での結晶の生成)が起きないようにできる。また、ΔTが大きくなると、ブッシュの寿命を長くし、繊維形成の適用範囲の幅が広がり、ガラス繊維製造の製造コストを抑えることになる。
【0005】
ガラス組成物の繊維化温度は、華氏約2650度(1454℃)未満であるとよい。実施形態の1つでは華氏約2625度(1441℃)未満、別の実施形態では華氏約2600度(1427℃)未満、更に別の実施形態では華氏約2575度(1413℃)未満がよい。ガラス組成物の液相線温度は、実施形態の1つでは繊維化温度よりも少なくとも華氏約25度分低く、別の実施形態では繊維化温度よりも少なくとも華氏約50度分低く、更に別の実施形態では繊維化温度よりも少なくとも華氏約75度分低いことが好ましい。
ガラス繊維の弾性率は12.8MPsiより大きく、初期引張強さは約700KPsiより大きい。別の実施形態では、ガラス繊維の弾性率は約13MPsiより大きく、初期引張強さは約750KPsiより大きい。
本発明のガラス繊維を最適化して特定のポリマーマトリックス材料の光学特性に対応させると、該マトリックス材料と一緒に使用した際に光学特性及び機械的特性が向上した複合材料になる。ポリマーマトリックス材料の屈折率を一致させるか、近似値にすることにより、得られる複合材料の光学特性を向上させることができる。透明性を向上させるには、広い可視光域に亘り、マトリックスの屈折率とガラス繊維の屈折率とを近似にする。材料における波長による屈折率の変化(分散)は、アッベ数として定量化される。ガラス繊維の590nmにおける屈折率は約1.60〜1.66が好ましい。別の実施形態においては、ガラス繊維の656nmにおける屈折率は約1.61〜1.64が好ましい。更に別の実施形態では、ガラス繊維の486nmにおける屈折率は約1.62〜1.66が好ましい。ある実施形態では、590nmにおける屈折率約1.60〜1.66、656nmにおける屈折率約1.61〜1.64、486nmにおける屈折率約1.62〜1.66のいずれかを組み合わせた屈折率をガラス繊維が有することが好ましい。実施形態として、アッベ数で測定されるガラス繊維の分散が42.6〜47.6であると好ましい。
【0006】
好適なポリマーマトリックス材料はいずれもガラス繊維と一緒に使用して複合材料を形成することができる。ポリマーマトリックス材料の590nmにおける屈折率は約1.60〜1.66が好ましい。実施形態によって、ポリマーマトリックス材料がポリスルホンを含むことが好ましい。ポリスルホンは硬質で強度の高い透明ポリマー材料で、その特性機械特性が広範な温度スペクトルにわたり保持される。ポリスルホンは寸法安定度が非常に高く、ガラス転移温度は約185℃、590nmにおける屈折率は1.63である。ポリスルホンは、アルカリ、無機酸及びpH値約2〜13の電解液に対する耐性が良好であり、酸化剤に対しても耐性がある。ポリスルホンはその機械特性及び化学特性により、数多くの製造工業において有用である。ポリスルホンは、下記式のごとく、ジフェノールとビス(4-クロロフェニル)スルホンとの反応により生成し、塩化ナトリウムを取り除くことによりポリエーテルが形成される。
nHOC6H4OH + n(ClC6H4)2SO2 + nNa2CO3
[OC6H4OC6H4SO2C6H4]n+ 2nNaCl + nH2O + nCO2
表1は、ポリスルホン(PSU)の656nm(nC)、590nm(nD)及び486nm(nF)における屈折率ならびに該材料の分散とアッベ数を示す。
【0007】
【表1】

【0008】
別の実施形態では、マトリックス材料がポリエーテルスルホン(PES)であるとよい。PESの590nmにおける屈折率は約1.652であるとよい。更に別の実施形態ではマトリックス材料がポリエーテルイミド(PEI)であるとよい。PEIの590nmにおける屈折率は約1.657であるとよい。
本発明のガラス繊維は好適な方法を用いて作成することができる。本発明のガラス繊維は、ダイレクトメルト法を用いて形成することができる。例えば、空気又は酸素/気体燃料の燃焼(air or oxy/gas-fuel combustion)をもとにしたガラス溶融を用いて、本発明のガラスバッチを溶融することができる。こうしたガラス溶融炉は1個以上のバブラー及び/又は電気ブースト電極を有することが多い。図1に好適なダイレクトメルト法の溶融炉の1つを例示するが、ガラス溶融炉10は、上流端壁14、下流端壁16、側壁(図示せず)10、フロア20、ルーフ22を有する縦長の流路を有する。ガラス溶融炉10の部品はそれぞれ適当な耐火性材料、例えば、アルミナ、酸化クロム、シリカ、アルミナ‐シリカ、ジルコン、ジルコニア‐アルミナ‐シリカ又は同様な酸化物を基にした耐火性材料で作製されている。ルーフ22は、通常、組成物流路の軸線を横切るアーチ状の形状であるが、適切な設計であればいずれでもよい。ルーフ22は、一般に、ガラスバッチ組成物30の表面から約3〜10フィート(約91.4〜304.8cm)上に位置する。ガラスバッチ材30は、本発明によるガラス製造で使用する原料の混合物である。ガラス溶融炉10は、1個以上のバブラー24及び/又は電気ブースト電極(図示せず)を任意で有していてもよい。バブラー24及び/又は電気ブースト電極により、バッチカバー下のバルクガラスの温度は上昇し、溶融ガラスの循環が増大する。
更に、ガラス溶融炉10は、2つの連続ゾーン、即ち、上流溶融ゾーン26と下流清澄ゾーン28とを有しているとよい。溶融ゾーン26では、当該分野で周知のタイプの充填装置32を使ってガラスバッチ組成物30が炉内に充填される。
【0009】
好適な溶融装置構成の1つでは、ガラス溶融炉10の溶融ゾーン26で溶融ガラスの表面上にガラスバッチ材30が固体粒子のバッチ層を形成する。火炎形状と長さが制御された少なくとも1個のバーナー34がガラス溶融炉10のルーフ22内に搭載されており、このバーナー34により、ガラスバッチ組成物30の固形バッチ粒子は浮いている状態で、少なくとも部分的に溶融される。送出流路40は、溶融装置10の流出口に位置し、溶融装置10から前炉310に溶融したガラスバッチ組成物30を送り出す。
本発明から逸脱することなく、他の好適な溶融装置も使用可能である。例えば、好適な溶融装置として、従来の空気燃焼炉、酸素燃焼炉、電気加熱炉、化石燃料燃焼炉が挙げられる。溶融工程のいずれかに電気ブースト又はバブラーを加えることができる。また、別個に清澄ゾーン(図1に示すごとく)を設けることも、または、溶融装置の主タンクに清澄ゾーンを一体化させることも可能である。
炉内でガラスが溶融すると、ガラス繊維を形成するブッシュアセンブリーに送り込まれる。いずれの好適なブッシュアセンブリーも使用できると解釈される。図2に好適なブッシュアセンブリーの1つを示す。図2に示すごとく、ブッシュアセンブリー100は、ブッシュ110とブッシュフレーム210とを含む。ブッシュ110は、側壁122C、122d及び該側壁122間に伸びる先端プレート124とで構成されるブッシュ本体120を含む。ブッシュ本体120は、前炉310の下方に位置するブッシュブロック300の下に位置する。
【0010】
前炉310からの溶融ガラス流がブッシュ本体120に受け入れられると、ガラス繊維が形成される。前炉310は、溶融装置10(図1に示す)から溶融ガラスを受け入れる。前炉310及びブッシュブロック300は構造的に従来のものでよく、耐火性材料で形成されていればよい。先端プレート124には複数のノズル124a(本願明細書ではオリフィスとも呼ぶ)があり、このノズルから複数の溶融ガラス流を放出することができる。ガラス溶融物の流れは、機械的に先端プレート124から引き出され、連続フィラメント125が形成される。フィラメント125は、サイジングアプリケーター410からのサイジング組成物による保護膜を設けたのち、単一の連続ストランド125aに束ねられる。連続フィラメント125は、湿式チョップトストランド繊維、乾式チョップトストランド繊維、連続フィラメントマット、チョップトストランドマット、湿式形成マット又はエアレイドマットをはじめとする他の所望の複合ガラス材料に制限なく加工することもできる。本発明に従って形成されたガラス繊維には、溶融装置や前炉の耐火性材料と溶融ガラスとの相互作用による不純物、ならびに、バッチに添加した原料中の低含有量の不純物が含まれることがある。通常、バッチ及びガラス繊維はこのような不純物は実質的に含まないと言われるが、それは、不純物の存在が極めて微量なため、バッチ、ガラス、ガラス繊維の溶融特性、繊維化特性又は機械特性に影響を与えないからである。
加工及び複合製造において、連続フィラメント125を、湿式チョップトストランド繊維、乾式チョップトストランド繊維、連続フィラメントマット、チョップトストランドマット、湿式形成マット又はエアレイドマットに加工することもできる。加工したガラス繊維はポリスルホンマトリックス材料と混合して、好適な方法により好適な量で複合構造体を形成する。得られた複合構造体は、ポリスルホンマトリックスの好適な光学特性を提供する一方、ガラス繊維を含まないポリスルホンマトリックスに比べて大幅に物理的特性が向上する。
本発明を概略的に説明したが、下記に示す具体的ないくつかの実施例を参照することにより更に理解を得ることができる。これらの実施例は例示のみを目的とするもので、包括的又は限定的であることを意図するものではない。
【0011】
実施例
本発明は、以下の実施例を参照することにより一層理解される。以下の実施例は例示するためであり、限定するためのものではない。
実施例1
表IIIA、表IIIB及び表IIICに挙げた実施例のガラスは、表IIIB及び表IIICに記載の光学特性と物性を求めるために白金製るつぼ又は白金を連続被覆した溶融装置で溶融した。
【0012】
【表2】

【0013】
物性の測定ユニットは、粘度、液相線温度及びΔTである。繊維化温度は円筒型回転粘度計を使って測定した。繊維化粘度(fiberizing viscosity)は1000ポワズとする。液相線は、ガラスを充填した白金容器を熱勾配炉中に16時間置くことにより測定した。結晶が存在する最高温度を液相線温度とした。粘度、液相線温度、ΔT及び初晶を表IIIBに示す。
【0014】
【表3】

【0015】
材料の波長による屈折率の変化(分散)は、アッベ数で定量化する。590nmでの屈折率(nD)の測定、486nmでの屈折率(nF)、656nmでの屈折率(nC)、分散(nF-nC)及びアッベ数((nD-1)/(nF-nC))は、アッベ屈折計(プリズムは25℃に保持)を用いて算定し、表IIICに示す。
【0016】
【表4】

【0017】
実施例2
ガラス繊維を含有したポリスルホン(PSU)マトリックスの物理特性を測定し、最大荷重応力、ヤング率、最大荷重歪パーセントを求めた。100%ポリスルホン(PSU)、オーウェンスコーニング社製Advantexガラス繊維を90質量%含有するもの、及び、実施例9によるガラス繊維を90質量%含有するもの、それぞれの試料を10個ずつ作成した。作成した試料を温度23℃、相対湿度50%で24時間調整した。引張特性は、ASTM D638に従って、クロスヘッド速度は0.2インチ(0.51cm)/分、伸び計ゲージ長は2.0インチ(5.08cm)で測定した。物理特性を以下の表IVに示す。
【0018】
【表5】

【0019】
当該分野では理解されているが、統計学的手法(例えば、丸めたり平均すること)によるため、上記で例示した発明の組成物において、列挙した成分を合計して必ずしも100%になるわけではなく、列挙していない不純物を含有する組成物があることも事実である。当然のことながら、組成物における不純物も含んだすべての成分の実際の量を合計すると、常に100%となる。更には、組成物中の少量の成分、例えば約0.05質量%以下の単位の量で規定されている場合、それらの成分は、意図的に添加したというのではなく、むしろ原料中に存在する微量の不純物の形態で存在していると解釈すべきである。
更に、例えば、バッチ組成物には加工を容易にする目的で添加可能な成分があるが、これらは後から取り除くので、このような成分を実質的には含まないガラス組成物が形成される。即ち、例えば、本発明の商業上の使用においては、フッ素や硫酸塩といった極微量の成分が、シリカ、カルシア、アルミナ、チタニア、リチア及び酸化亜鉛成分を供給する原料中に極微量の不純物として存在することや、或いは、これらの微量成分が製造中に実質的に除去される加工助剤であることもある。
上記実施例から明らかなように、本発明のガラス繊維組成物は、繊維化温度が低く、液相線温度と繊維化温度との差が広い(ΔTの値が高い)といった有利な特性がある。
本発明は、本願明細書に記載の具体例に限定されると解釈すべきではなく、むしろ、本発明のすべての態様を包含すると解釈すべきである。様々な変更、同等の方法、ならびに本発明が適用可能な数多くの構造体や装置は、当該分野の当業者には容易にわかるであろう。当該分野の当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく様々な変更ができることは理解できよう。本発明の範囲は本明細書の記載内容に限定されると解釈すべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化用ガラス繊維であって、
約48〜54質量%のSiO2と、
約7〜14質量%のAl2O3と、
約10〜16質量%のCaOと、
約7〜13質量%のTiO2と、
約9〜19質量%のZnOと、
約0〜2質量%のLiO2とを含み、
屈折率が590nmにおいて約1.60〜1.66である、強化用ガラス繊維。
【請求項2】
P2O5、ZrO2、SrO、BaO、SO3、F2、B2O3及びFe2O3からなる群から選択される化合物を全部で約2質量%未満の量で更に含む、請求項1記載の高強度ガラス繊維。
【請求項3】
前記ガラス繊維の屈折率が、486nmにおいて約1.62〜1.66である、請求項1記載のガラス繊維。
【請求項4】
SiO2が約48〜51.75質量%含まれる、請求項1記載のガラス繊維。
【請求項5】
前記ガラス繊維の屈折率が、656nmにおいて約1.61〜1.64である、請求項1記載のガラス繊維。
【請求項6】
前記ガラス繊維のアッベ数が約42.6〜47.6である、請求項1記載のガラス繊維。
【請求項7】
前記組成物が、
約48〜51.75質量%のSiO2と、
約10〜13質量%のAl2O3と、
約13.75〜16質量%のCaOと、
約7〜11質量%のTiO2と、
約11〜13質量%のZnOとを含み、
屈折率が656nmにおいて約1.62〜1.65である、請求項1記載のガラス繊維。
【請求項8】
前記ガラス繊維の弾性率が約12.8MPsiより大きい、請求項1記載のガラス繊維。
【請求項9】
屈折率が590nmにおいて約1.60〜1.66であるポリマーマトリックスと、
屈折率が590nmにおいて約1.60〜1.66である強化用ガラス繊維とを含む、複合材料。
【請求項10】
前記強化用ガラス繊維が、
約48〜54質量%のSiO2と、
約7〜14質量%のAl2O3と、
約10〜16質量%のCaOと、
約7〜13質量%のTiO2と、
約9〜19質量%のZnOと、
約0〜2質量%のLiO2とを含むガラスバッチから形成される、請求項9記載の複合材料。
【請求項11】
前記強化用ガラス繊維が、
約48〜51.75質量%のSiO2と、
約10〜13質量%のAl2O3と、
約13.75〜16質量%のCaOと、
約7〜11質量%のTiO2と、
約11〜13質量%のZnOと、
約0〜2質量%のLiO2とを含むガラスバッチから形成される、請求項9記載の複合材料。
【請求項12】
前記強化用ガラス繊維が、
P2O5、ZrO2、SrO、BaO、SO3、F2、B2O3及びFe2O3からなる群から選択される化合物を全部で約2質量%未満の量で更に含むガラスバッチから形成される、請求項9記載の複合材料。
【請求項13】
前記強化用ガラス繊維のアッベ数が約42.6〜47.6である、請求項9記載の複合材料。
【請求項14】
前記ポリマーマトリックスが、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン及びポリエーテルイミドの少なくとも1種から選択される、請求項9記載の複合材料。
【請求項15】
前記ポリマーマトリックスがポリスルホンを含有する、請求項14記載の複合材料。
【請求項16】
約48〜51.75質量%のSiO2と、
約10〜13質量%のAl2O3と、
約13.75〜16質量%のCaOと、
約7〜11質量%のTiO2と、
約11〜13質量%のZnOと、
約0〜2質量%のLiO2とを含む複数本のガラス繊維と、
ポリマーマトリックスとを含有する複合材料。
【請求項17】
前記強化用ガラス繊維の屈折率が、590nmにおいて約1.60〜1.66である、請求項16記載の複合材料。
【請求項18】
前記ポリマーマトリックスが、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン及びポリエーテルイミドの少なくとも1種から選択される、請求項17記載の複合材料。

【公表番号】特表2013−513547(P2013−513547A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544684(P2012−544684)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【国際出願番号】PCT/US2010/060091
【国際公開番号】WO2011/081883
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(508076428)オーシーヴィー インテレクチュアル キャピタル リミテッド ライアビリティ カンパニー (43)
【Fターム(参考)】