説明

屈折率制御薄膜

【課題】光学フィルム上であっても低屈折率化することが可能で、得られた低屈折率膜は、ヘイズが抑制され、防汚性に優れたものである屈折率制御薄膜の提供。
【解決手段】少なくとも天井温度が20℃より低い熱分解性ポリマーと軟化温度が60℃より高いマトリックスポリマーとを含むことを特徴とする屈折率制御薄膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は低屈折率薄膜を形成するための屈折率制御薄膜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、反射防止膜等の光学部材や記録部材等の市場拡大に伴い、光学薄膜の屈折率を制御する技術ニーズは高い。
【0003】
ディスプレイ装置などの表示機器の視認性を高めるために用いられる反射防止膜は、ディスプレイ表面に設けられた多層フィルムの界面の屈折率差を利用して反射光を干渉させることにより、映り込みを低減するものである。通常用いられる基材はポリメチルメタクリレート(屈折率1.49程度)、ポリエチレンテレフタレート(屈折率1.54〜1.67程度)、トリアセチルセルロース(屈折率1.49程度)等であり、この上に単層の低屈折率層を設けることによって可視光領域内での反射率を均一に低下させるには、低屈折率層の屈折率の値が基材(ハードコート層が存在する場合はハードコート層)の屈折率の平方根に近ければ近いほど優れた反射防止膜となるわけで、すなわち低屈折率層の屈折率を1.40未満、より好ましくは1.35未満、さらに好ましくは1.30未満に設定することで反射防止性能を向上させることができる。
【0004】
このような非常に低い屈折率を有する層として、シリカ微粒子からなり、内部に微小な空隙を有するかあるいは表面に微小な凹凸を有する低屈折率層が提案されている(例えば、特許文献3参照)。これらは屈折率1.40未満である層を簡便に形成可能という点では有用であるが、空隙内部や表面の凹凸の隙間に汚染物質が取り込まれやすく、防汚性に劣るという問題があった。
【0005】
そのため特許文献1や非特許文献1では、独立気泡を膜中に導入する技術が開示されている。
【0006】
特許文献1では、ガス発泡剤を含んだ薄膜組成物を光学フィルム上に塗布し、UVや電子線で硬化させた後に加熱することにより、独立気泡を薄膜中に導入している。しかし、光の散乱を生じないナノサイズの気泡は、気泡サイズを維持するためには高い内部圧が必要であり、そのため、気泡寿命が短く、凝集してマクロ気泡になりやすい。従って、光の散乱を増加しない微小サイズの気泡を、屈折率を明らかに低下させる量、高密度に導入することができないという問題があった。
【0007】
また、非特許文献1では、ポリイミド−ポリプロピレングリコールを用いて、250℃でポリプロピレングリコール部分を熱分解することで独立気泡を導入しているが、高温で長時間(10時間)加熱する必要があり、耐熱性の低い光学フィルム上で屈折率を下げることができないし、また、生産性が低いという問題があった。
【0008】
一方、記録材料の場合は、光屈折率差を利用したホログラム等が知られているが、例えば、特許文献2には、ベースポリマー中にジアゾ化合物等の光発泡性化合物を含有させ、露光強度に応じた気泡を発生させ、ホログラムとすることが記載されている。しかし、この方式では発生する気泡の大きさと密度はベースポリマーの軟らかさや光発泡性化合物の添加量で一義的に決まってしまい、露光強度に応じた気泡の分布、即ち屈折率分布が取れないという問題がある。
【0009】
また、この方式では、気泡を発生させるためにベースポリマーとしては軟らかいものを使用する必要があるが、そのために発生した気泡が逃げてしまうという本質的な問題があった。
【0010】
以上の通り、従来の技術では、光学フィルム上で簡便に屈折率を制御(低下させる)することは達成されていない。
【特許文献1】特許3549108号公報
【特許文献2】特開平5−72727号公報
【特許文献3】特許2913715号公報
【非特許文献1】Chem.Mater.,1997,9,p105
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、光学フィルム上であっても低屈折率化することが可能で、得られた低屈折率膜は、ヘイズが抑制され、防汚性に優れたものである屈折率制御薄膜を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、少なくとも天井温度が20℃より低い熱分解性ポリマーと軟化温度が60℃より高いマトリックスポリマーとを含むことを特徴とする屈折率制御薄膜が上記課題を解決し得ることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させるに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、
(1)少なくとも天井温度が20℃より低い熱分解性ポリマーと軟化温度が60℃より高いマトリックスポリマーとを含むことを特徴とする屈折率制御薄膜。
(2)さらに微粒子を含むことを特徴とする上記(1)記載の屈折率制御薄膜。
(3)微粒子が中空シリカ微粒子であることを特徴とする上記(2)記載の屈折率制御薄膜。
(4)微粒子が導電性微粒子であることを特徴とする上記(2)記載の屈折率制御薄膜。
(5)熱分解性ポリマーがポリオレフィンスルホンであることを特徴とする上記(1)〜(4)いずれかに記載の屈折率制御薄膜。
(6)熱分解性ポリマーがポリアルデヒドであることを特徴とする上記(1)〜(4)いずれかに記載の屈折率制御薄膜。
(7)さらに光酸発生剤を含むことを特徴とす上記(1)〜(6)いずれかに記載の屈折率制御膜。
(8)上記(1)〜(7)いずれかに記載の屈折率制御薄膜を用いて、屈折率制御薄膜を熱分解性ポリマーの天井温度よりも高く、且つ、マトリックスポリマーの軟化温度よりも低い温度で加熱する工程を含むことを特徴とする屈折率制御薄膜の低屈折率化方法。
(9)上記屈折率制御薄膜を熱分解性ポリマーの天井温度よりも高く、且つ、マトリックスポリマーの軟化温度よりも低い温度で加熱する工程の前に、及び/又は、その工程の中で、電磁波、及び/又は、電子線を照射することを特徴とする上記(8)記載の屈折率制御薄膜の低屈折率化方法。
(10)電磁波、及び/又は、電子線を照射する部分と照射しない部分とを設けることで、屈折率の高低パターンを導入することを特徴とする上記(9)記載の屈折率制御薄膜の低屈折率化方法。
(11)上記(8)〜(10)いずれかに記載の方法により得られる低屈折率薄膜。
(12)透明な光学基板上に、少なくとも上記(1)〜(7)いずれかに記載の屈折率制御薄膜が形成されて構成されることを特徴とする光学、及び/又は記録部材。
(13)透明な光学基板上に、少なくとも上記(11)記載の低屈折率薄膜層が形成されて構成されることを特徴とする光学、及び/又は記録部材。
である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の屈折率制御薄膜は、光学フィルム上へ形成でき、ヘイズが抑えられ、防汚性にも優れ、低屈折率化も容易であり、産業上非常に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明について、以下に具体的に説明する。
初めに本発明の屈折率制御薄膜を構成する成分について説明する。
【0016】
本発明の熱分解性ポリマーはその天井温度(Tc)が20℃より低いことを特徴とする。好ましくは0℃より低く、より好ましくは−60〜−20℃である。この範囲で保存性と分解性とを両立させることができる。
【0017】
本発明の天井温度が20℃より低い熱分解性ポリマーは、ポリマーハンドブック、第3版、ジョン ウィリー アンド ソンズ出版、編者 ブランドラップら、1989年、II/316〜II/322頁に記載されており、Tcが20℃より低いポリマーを挙げることができる。好ましくはポリアルデヒドや二酸化硫黄とオレフィンとの共重合ポリマーが挙げられる。
【0018】
より好ましいものは、ポリアルデヒドでは、例えば、ポリトリクロロアセトアルデヒド(Tc=18℃)、ポリ−n−バレルアルデヒド(Tc=―42℃)、ポリアセトアルデヒド(Tc=−31℃)、ポリプロピオンアルデヒド(Tc=−31℃)が挙げられる。
【0019】
なお、ポリアルデヒドは、有機酸、酸ハロゲン化物又は無水物を用いたエステル化又は連鎖移動反応により、それらの反応性のヒドロキシル末端基を反応性のないエステル結合に変えることにより安定化してあるものが好ましい。重合の間又はその終了近くに、例えば酢酸、プロピオン酸又は無水マレイン酸等のモノ又は多官能性の酸無水物の化学量論的な量を重合組成に含有させ、安定なエステル構造末端に変えることができる。
【0020】
また、二酸化硫黄とオレフィンとの共重合ポリマーでは、1:1の共重合ポリマーを与えるが、コモノマーの好ましい例を挙げると、例えば、コモノマーがシクロヘプテン(Tc=11℃)、イソブテン(Tc=5℃)、2−メチル−1−ペンテン(Tc=−34℃)、4,4−ジメチル−1−ペンテン(Tc=14℃)である。
【0021】
なお、ポリマーの天井温度(Tc)とは、重合の自由エネルギー(ΔF)が零に等しい(ΔF=ΔH−TΔS=0)、すなわち、Tc=ΔH/ΔS(ここでΔHは重合のエンタルピーに等しく、ΔSは重合のエントロピーに等しい)である温度として定義される。
【0022】
通常の連鎖重合では、Tc温度より高い温度では、解重合反応速度が重合反応速度を上回る。Tcより低い温度では、重合は生長するが、反応温度が上昇すると、生長速度定数が解重合速度定数に等しくなる点であるTcに達する。Tcよりも高い温度では、解重合が熱的に有利になり、ポリマーは不安定になり、ついでモノマー成分に解重合することになる。
【0023】
本発明の熱分解性ポリマーの重量平均分子量は500〜1000000、好ましくは500〜100000、より好ましくは500〜10000である。この範囲においてマトリックスとのミクロ的な相溶性に優れ、また熱分解性にも優れる。
これらのポリマーは公知の方法によって重合させて得られる。
【0024】
熱分解性ポリマーの次に述べるマトリックスポリマーに対する添加量の質量比は、0.01〜10、好ましくは0.1〜2、より好ましくは0.5〜1である。この範囲で本発明の低屈折率化方法によって屈折率を下げることができる。
【0025】
本発明のマトリックスポリマーは、その軟化温度が60℃よりも高いことを特徴とする。好ましくは100℃よりも高く、さらに好ましくは150℃よりも高いことを特徴とする。軟化温度がこの条件を満たせば、低屈折率化処理をした後も経時的な屈折率変化を抑制することができる。
【0026】
本発明の軟化温度は公知の方法を用いて測定すれば良いが、ナノインデンターを用いて測定することができる。マトリックスよりも堅い基板(例えばガラス板)上に薄膜コートを行い、本発明の屈折率制御薄膜を本発明の方法で本発明の低屈折率薄膜層に変換した試料を用いて、ナノインデンターにより、一定荷重に対する応力の温度依存性における応力−温度曲線の変曲点を軟化温度とする。
【0027】
また、ガラス転移温度が60℃より高いポリマーを本発明のマトリックスポリマーとして用いることができる。ポリマーのガラス転移温度は、ポリマーハンドブック、第3版、ジョン ウィリー アンド ソンズ出版、編者 ブランドラップら、1989年、VI/213〜VI/258頁に記載されており、Tgが60℃より高いポリマーから選択して好ましく用いることができる。
【0028】
本発明のマトリックスポリマーの重量平均分子量は1000〜10000000、好ましくは5000〜1000000、より好ましくは10000〜500000である。この範囲においてマトリックスとしての機械的強度及び必要な軟化温度を発現することができる。
【0029】
なお、マトリックスポリマーについては、後述のようにモノマー状態で屈折率制御薄膜用組成物に添加しておいて、成膜する際に硬化させて高分子量化させることも好ましく、この場合得られる分子量は実質上、無限大となる。
【0030】
本発明の屈折率制御薄膜は、微粒子を含むことが好ましい。微粒子としては、有機系のポリマー微粒子やラテックス微粒子、又は無機微粒子が好適に用いることができる。微粒子はそれによる特別な機能を薄膜に付与する場合(例えば導電性)と薄膜の機械的強度を向上させる目的等のために添加される。微粒子の平均粒径は0.001〜1μmであることが好ましく、0.01〜0.5μmであることがより好ましい。この範囲で微粒子添加の目的を達成することができ、光学的に透明である。
【0031】
無機微粒子の種類としては二酸化ケイ素(シリカ)微粒子、二酸化チタン微粒子、酸化アルミニウム微粒子、酸化ジルコニウム微粒子、炭酸カルシウム微粒子、硫酸バリウム微粒子、タルク、カオリンおよび硫酸カルシウム微粒子などを例示することができる。また無機微粒子が導電性微粒子である場合、帯電防止機能を付与することも可能である。導電性微粒子としては亜鉛、スズ、インジウム、アンチモン、チタン、ガリウム、アルミニウム、ジルコニウム、モリブデン、セリウム、タンタル、イットリウムから選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物あるいは複合酸化物からなる無機酸化物微粒子(代表的なものとしてITO(スズ含有酸化インジウム)微粒子、ATO(スズ含有酸化アンチモン)微粒子などがある)や、銅、銀、ニッケル、低融点合金(ハンダなど)の金属微粒子、各種のカーボンブラック、金属繊維、炭素繊維など公知のものが用いられる。これら微粒子の中でも特にシリカ微粒子が好ましい。
【0032】
シリカ微粒子の形状は限定されず、球状、板状、針状、複数のこれらの形状のものがつながって鎖状または枝分かれした鎖状になったもの、複数のこれらの形状のものが凝集してブドウの房状になったものなどを用いることができる。なお「鎖状」とは、一般に「(短)繊維状」、「パールネックレス状」と呼ばれるものも含む。これら粒子の形状は、例えば透過電子顕微鏡で観察することによって確認できる。
【0033】
これらの中でも、球状でないもの、すなわち、板状、針状、鎖状、枝分かれした鎖状、ブドウの房状のものを用いると、隣接する粒子間により多くの空隙が生じ、屈折率の低い低屈折率層を得ることができるので好ましい。
【0034】
また、シリカ微粒子の内部に空隙を有し、表面に孔が開いていない中空シリカ微粒子も薄膜の屈折率を下げる目的で好んで用いることができる。
【0035】
上記無機微粒子の添加量は、マトリックスポリマーに対する質量比で、0.001〜10、好ましくは0.01〜10、より好ましくは0.05〜5、さらに好ましくは0.1〜1の範囲である。この範囲で微粒子添加の目的を達成することができ、薄膜の機械的強度にも優れる。
【0036】
無機微粒子とマトリックスポリマーとの密着性をさらに向上するために、例えば、無機微粒子の表面を重合開始可能な官能基で修飾しておき、本発明のマトリックスポリマーと共有結合で結合させることが好ましい。無機微粒子と共有結合を形成することが可能な官能基とマトリックスポリマーと共重合しうる重合性官能基とを有する化合物として好ましいものは、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、2−アクリロキシエチルトリメトキシシラン、2−メタクリロキシエチルトリメトキシシラン、2−アクリロキシエチルトリエトキシシラン、2−メタクリロキシエチルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランである。またこれらの中でも最も好ましいのは3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランである。
【0037】
上記の無機微粒子の表面修飾反応の条件としては、室温〜100℃の範囲で10分間〜1週間の期間攪拌することで目的を達成できる。また反応を促進するために公知の酸やアルカリ、スズ化合物などの触媒を添加することも有効である。
【0038】
本発明の屈折率制御薄膜は、光酸発生剤を含むことが好ましい。光酸発生剤は、イオン性化合物と非イオン性化合物があり、イオン性化合物としては、重金属、ハロゲンイオンを含まないものがよく、トリオルガノスルホニウム塩系化合物が好ましい。具体的には、トリフェニルスルホニウムの、メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、や1−ジメチルチオナフタレンのメタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、1−ジメチルチオ−4−ヒドロキシナフタレンの、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩、1−ジメチルチオ−4,7−ジヒドロキシナフタレンの、メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、などが挙げられる。非イオン性の光酸発生剤としては、ハロゲン含有化合物、ジアゾケトン化合物、ジアゾメタン化合物、スルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、カルボン酸エステル化合物、リン酸エステル化合物、スルホンイミド化合物、スルホンベンゾトリアゾール化合物等を用いることができる。
【0039】
光酸発生剤の添加量は、熱分解性ポリマーに対して、0.001〜50質量%が好ましく、0.1〜10質量%がさらに好ましい。
【0040】
次に本発明の屈折率制御薄膜の製造法について説明する。
まず、屈折率制御薄膜用塗布組成物の調製について説明する。
本発明のマトリックスポリマーは予め重合したものを添加しても良いが、モノマーの状態で添加して本発明の屈折率制御薄膜を成膜する際に重合させることが好ましい実施形態である。
【0041】
例えば、単官能モノマーや多官能モノマーと光開始剤を添加して成膜した後にUV照射による硬化にてマトリックスポリマーを形成することができる。
【0042】
本発明のマトリックスポリマーを形成するに適するモノマーは特に限定されないが、(メタ)アクリレート系のモノマーが好ましい。なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。
【0043】
好ましい単官能(メタ)アクリレートの具体例は、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸アルキルエステル類、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられる。さらに、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、イソオクチルオキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレート類、2−トリメチルシリロキシエチル(メタ)アクリレートなどのシランまたはシリル基末端のアクリレート類、グリシジル(メタ)アクリレート、3、4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等の末端にエポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸ダイマー類、無水マレイン酸やその誘導体などの不飽和ジカルボン酸なども使用し得る。このようなモノマーは単独で用いても、または2種類以上で混合して用いてもよい。
【0044】
好ましい多官能(メタ)アクリレートの具体例は、エチレンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられ、特に好ましくは、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートである。これらは単独、または、混合物で使用することが好ましい。また、単官能モノマーと多官能モノマーとを混合して使用することが好ましい。
【0045】
(メタ)アクリレート系のモノマー以外に、(メタ)アクリレート系、ウレタン系、ウレタン(メタ)アクリレート系、シリコーン系、シリコーン(メタ)アクリレート系、エポキシ系、エポキシ(メタ)アクリレート系、ポリエステル(メタ)アクリレート系、メラミン系、フェノール系、尿素系の各樹脂を単独で、または、複数、含んでいることが好ましい。
【0046】
モノマーの硬化剤として熱開始剤や放射線重合開始剤を添加するが、好ましくは放射線重合開始剤を用いる。放射線重合開始剤の具体例としては、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4' −ジメトキシベンゾフェノン、4,4' −ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モリフォリノ−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オンなどを挙げることができる。これらの化合物は、単独であるいは2種以上を併用することができる。
【0047】
開始剤の添加量はモノマーに対する質量比で、0.001〜0.1であり、好ましくは0.005〜0.05である。この範囲に添加することによって得られるマトリックスの硬度を十分なものにできる。
【0048】
本発明の屈折率制御薄膜用塗布組成物は上記の構成成分以外に塗布組成物の粘度などを調節するために通常は溶媒を添加して調製される。溶媒としては水、任意の有機溶媒、公知の反応性希釈剤が好適である。もちろん溶媒は単一でも複数の混合でもよい。有機溶媒の具体例として、炭素数1〜6の一価アルコール、炭素数1〜6の二価アルコール、グリセリンなどのアルコール類の他、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジ(n−プロピル)エーテル、ジイソプロピルエーテル、ジグライム、1、4−ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレンなどのエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチル(n−ブチル)ケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類、アセトニトリル、プロピオニトリル、n−ブチロニトリル、イソブチロニトリルなどのニトリル類、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホランなどが好適に用いられる。これらの中でもより好ましい溶媒は、炭素数1〜6の一価アルコール類またはエチレングリコールモノメチルエーテルやプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルカノールエーテル類である。
【0049】
溶媒は、本発明の構成成分を好ましくは均一に相溶させ、且つ、塗布した際に期待する膜厚及び膜質が得られるように添加すればよいが、マトリックスポリマーに対する質量比で、好ましくは1〜10000、より好ましくは10〜1000である。この範囲で塗布成膜した際に成膜性に優れる。
【0050】
屈折率制御薄膜用塗布組成物には、さらに、着色剤(顔料、染料)、消泡剤、増粘剤、レベリング剤、難燃剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、酸化防止剤や改質用樹脂を添加してもよい。
次に、本発明の屈折率制御薄膜の成膜法について説明する。
【0051】
本発明の屈折率制御膜は、上記塗布組成物を基材に塗布することで得られる。基材としては任意の形状をもつ金属、ガラス、セラミック、プラスチック等どのようなものでも用いることができる。特に基材として好ましいものはフレキシブル基板である透明樹脂基板である。
【0052】
透明樹脂基板としては(メタ)アクリル樹脂板、(メタ)アクリル樹脂シート、スチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体樹脂板、スチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体樹脂シート、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、トリアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネートなどのセルロースアセテート系フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ノルボネン系フィルム、ポリアリレート系フィルムおよびポリスルフォン系フィルムなどが挙げられる。
【0053】
塗布の方法は浸漬、スピンコーター、ナイフコーター、バーコーター、ブレードコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、グラビアロールコーター、スライドコーター、カーテンコーター、スプレイコーター、ダイコーター等の公知の塗布法を用いて実施することができる。これらのうち、透明樹脂基板がフィルム状の場合、連続塗布が可能なナイフコーター、バーコーター、ブレードコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、グラビアロールコーター、スライドコーター、カーテンコーター、スプレイコーター、ダイコーター等の方法が好ましく用いられる。
【0054】
塗布を行った後、通常は塗布組成物に含まれる溶媒を乾燥するために室温〜200℃の範囲で静置、送風、マイクロ波照射などを5秒〜10分間行う。これらの温度、時間などは使用する基材や溶媒の種類に応じて適宜決定される。また、マトリックスポリマーとして上記のモノマーを添加した場合は、硬化するために紫外線照射等を行う。空気中の酸素による硬化阻害を抑制するために、窒素雰囲気下で紫外線照射を行うことが好ましい。
【0055】
本発明の屈折率制御薄膜の厚さは、用途に応じて調整されるが、通常、10nm〜1000μmの範囲が好ましく、50nm〜200μmの範囲がより好ましい。この範囲で本発明の低屈折率化方法によって屈折率を効率よく下げることができる。
次に本発明の低屈折率化方法について説明する。
【0056】
上記の屈折率制御薄膜を用いて、屈折率制御薄膜を熱分解性ポリマーの天井温度よりも高く、且つ、マトリックスポリマーの軟化温度よりも低い温度での加熱工程を経ることによって屈折率制御薄膜の低屈折率化を達成することができる。さらに分解性ポリマーの分解を触媒的に開始したり、加速するために、電磁波、及び/又は、電子線を、屈折率制御薄膜を熱分解性ポリマーの天井温度よりも高く、且つ、マトリックスポリマーの軟化温度よりも低い温度の加熱工程の前に、及び/又は、その工程の中で、照射することも好ましい実施形態である。
【0057】
また、電磁波、及び/又は、電子線を、パターンを形成するように屈折率制御薄膜に照射することによって、屈折率の高低パターンを導入することが可能となる。このため、屈折率制御薄膜及びこれから得られる低屈折率薄膜は偏光板等の光学部材や記録材料として有用である。
【0058】
上記の熱分解性ポリマーの加熱処理条件は、屈折率制御薄膜を熱分解性ポリマーの天井温度よりも高く、且つ、マトリックスポリマーの軟化温度よりも低い温度であれば特に限定されない。加熱時間は10秒から10時間、好ましくは20秒〜1時間、より好ましくは30秒〜10分である。この範囲で効率よく低屈折率化を行うことができ、必要以上に加熱劣化を誘発することが無い。
【0059】
本発明の低屈折率化方法による薄膜の屈折率の低下量は、マトリックスポリマーに対する熱分解性ポリマーの含有量、熱分解性ポリマーの分解量、及び、それそれの屈折率によってほぼ決定されるが、Δn=0.01〜0.3、好ましくは0.1〜0.3である。
【0060】
本発明によれば光学フィルム上であっても低屈折率化することが可能で、得られた低屈折率膜は、ヘイズが抑制され、防汚性に優れた屈折率制御薄膜を提供することができる。
【0061】
この理由は明確ではないが、本発明の熱分解性ポリマーは天井温度に対して高温で分解を行うために、モノマーまでの開裂が容易で、マトリックス層を拡散して薄膜層外に揮散する。マトリックスポリマーと熱分解性ポリマーとの相溶性が良いため、得られる空隙は可視光波長に対して小さく、光学的に透明性に優れたものになる。熱分解性ポリマーが分解揮散する場合、モノマーの低分子量化合物で薄膜内を拡散揮散するため、薄膜表面にマクロ開孔が生じることがなく、独立気泡としてマトリックス内に低屈折率部位を与える。マトリックスポリマーの軟化温度よりも低い温度で低屈折率化するために、低屈折率化処理中、及び、低屈折率化後もマトリックスポリマーがその構造を維持することが可能で低屈折率薄膜構造を経時変化無く、安定に存在させる、ためであると考えている。
本発明の屈折率制御薄膜及び低屈折率薄膜は、光学部材や記録部材として利用される。
【0062】
低屈折率薄膜を設けた反射防止膜は、ディスプレイなどの映り込み抑制のための表示材料にのみならず、メガネレンズ、ゴーグル、コンタクトレンズなどの視力矯正用部材、車の窓やインパネメーター、ナビゲーションシステムなどの自動車部品、窓ガラスなどの住宅・建築部材、ビニルハウスの光透過性フィルムやシートなどの農芸製品、太陽電池、光電池などの電池部材、タッチパネル、光ファイバー、光ディスクなどの電子情報機器部品、照明グローブ、蛍光灯、鏡、時計などの家庭用品、ショーケース、額、半導体リソグラフィー、コピー機器などの業務用部材、パチンコ台ガラスやゲーム機など、視認性の向上が求められる様々な分野における部材として応用することが可能である。
また、本発明の低屈折率薄膜は独立気泡による空隙を有するため、層間絶縁膜や電気絶縁体、及び断熱材や緩衝材としても有用である。
【0063】
屈折率差を利用した記録部材としては、屈折率差が高く、かつ透明なホログラムや回折格子、階調性を有する屈折率分布型光学素子に使用することができ、透過型ホログラム、反射型ホログラム、レリーフ型ホログラム、深溝型コンピュータジェネレイテッドホログラム、ブレーズド型格子、屈折率分布型レンズ、レンズアレイとして有用である。
【実施例】
【0064】
本発明を実施例、比較例を用いて更に具体的に説明する。
(1)屈折率測定
FE−3000型反射分光計(大塚電子株式会社)を用いて、波長250〜800nmの範囲での反射スペクトルを測定し、該装置付属のソフトウェア「FE−Analysis」を用いて低屈折率層の屈折率を計算した。
【0065】
(2)耐擦傷性試験
表面特性試験機(株式会社井元製作所)を用いた。直径15mmのステンレス柱の片端にスチールウール(ボンスター(登録商標)#0000、日本スチールウール株式会社)を取り付け、50gの荷重をかけながら反射防止膜上を10回往復させた後、摩擦痕を目視で観察した。傷がほとんどみられなければ○、傷が多数みられれば×とした。
【0066】
(3)防汚性
表面保護層上に黒色油性ペンで印を付け、すぐに紙ワイパーで拭き取りを行った。インクを完全に拭き取ることができれば○、拭き取れなければ×とした。
【0067】
(4)軟化温度測定
MTSシステムズ コープレーション社製ナノインデンター DCMで測定する。測定方法は、バーコビッチ型のダイヤモンド製圧子を試料に押し込み、一定荷重に対する応力を、試料温度を変えて測定することで、応力−温度曲線の変曲点を求め、軟化温度とした。
【0068】
[実施例1]
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名サイラエースS710、チッソ株式会社)1.0g、鎖状シリカ微粒子の20質量%MEK溶液(商品名スノーテックス(登録商標)MEK−OUP、日産化学株式会社)5.0g、0.1N−硝酸水溶液0.5g、エタノール10gを室温で1日攪拌した。
【0069】
得られた溶液に、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(商品名DPE−6A、共栄社化学株式会社)10g、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名Irgacure184、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社)0.5g、ポリアセトアルデヒド6.0g、プロピレングリコールモノメチルエーテル100gを混合し、屈折率制御薄膜用塗布組成物を得た。
【0070】
片面に易接着処理がなされた厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名コスモシャインA4100、東洋紡績株式会社)上に、上記屈折率制御薄膜用塗布組成物をバーコーター(米国R.D.Specialties,Inc.製の#7ロッドを装着)を用いて塗布し、室温にて30秒間乾燥し、続いて紫外線硬化装置を用いて出力160W、コンベア速度2m/分、光源距離100mmにて紫外線照射することによって屈折率制御薄膜を形成した。屈折率制御薄膜の屈折率は1.50で、光学的に透明であった。
【0071】
得られたフィルムを120℃にて5分間加熱することにより、低屈折率化処理を行った。得られた低屈折率薄膜の屈折率は1.35であり、光学的に透明であり、耐擦傷性と防汚性は○であった。
【0072】
また、ガラス板上に屈折率制御薄膜コートを行い、低屈折率薄膜層に変換した試料を用いて軟化温度測定を行った。低屈折率薄膜の軟化温度は150℃以上であった。
【0073】
[実施例2]
ポリアセトアルデヒドの代わりにポリ(2−メチル−1−ペンテンスルホン)を用い、低屈折率化処理する際に電子線照射装置を用いて約50kVの加速電圧で電子線を照射した後、加熱処理を行った以外は、実施例1と同様に実施した。得られた屈折率制御薄膜の屈折率は1.54で、光学的に透明であった。また得られた低屈折率薄膜の屈折率は1.32であり、光学的に透明であり、耐擦傷性と防汚性は○であった。
実施例1と同様に軟化温度測定を行った。低屈折率薄膜の軟化温度は150℃以上であった。
【0074】
[実施例3]
電子線を照射する際に薄膜上にパターン板をおいて、電子線が照射される場所と照射しない場所を設けた以外は実施例3と同様に実施した。得られた低屈折率薄膜には電子線照射パターンに応じて、屈折率高低パターンが形成された。また、光学的に透明であり、耐擦傷性と防汚性は○であった。
実施例1と同様に軟化温度測定を行った。低屈折率薄膜の軟化温度は150℃以上であった。
【0075】
[実施例4]
実施例1において、さらにトリフェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホン酸塩0.6gを添加して屈折率制御薄膜を成膜した以外には同様に実施した。得られた屈折率制御薄膜の屈折率は1.52で、光学的に透明であった。また得られた低屈折率薄膜の屈折率は1.32であり、光学的に透明であり、耐擦傷性と防汚性は○であった。
実施例1と同様に軟化温度測定を行った。低屈折率薄膜の軟化温度は150℃以上であった。
【0076】
[比較例1]
ポリアセトアルデヒドの代わりにポリテトラヒドロフラン(Tc=80℃)を用いた以外は実施例1と同様に実施した。しかし、低屈折率化処理によって屈折率が下がらなかった。
【0077】
[比較例2]
特許2913715号の実施例に従い、モノメチルトリエトキシシランを17g秤量し、これにエタノール14g、及び1−ブタノール22g添加混合し、均一溶液とした。この溶液に水を11g、燐酸を0.5g加え、さらに1時間撹拌した。この溶液に14gのエタノール、22gのブタノール及び3.3gのポリエチレングリコールを加えさらに10分間の撹拌を行ったものを塗布溶液とした。この塗布溶液中へ、厚さ1.1mm、直径50mmの円板状の石英ガラス板を浸漬した後ゆっくりと引き上げて、フロートガラス板上に塗布膜を形成した。その後この塗布膜をつけたガラス板を室温において5分間乾燥し、350℃に保ったオーブン中で15分間熱処理を行った。この熱処理により、塗布膜中に分散していたポリエチレングリコールは完全に分解、燃焼してしまい、塗布膜は透明な700nmの厚みの膜となった。得られたサンプルの分光反射特性を測定したところ350〜850nmの範囲で分光反射率が0.7%以下となる優れた反射防止特性を示した。しかしながら、表面に開孔が多いためか、耐擦傷性及び防汚性は共に×であった。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、光学フィルム上であっても低屈折率化することが可能で、得られた低屈折率膜は、ヘイズが抑制され、防汚性に優れたものである屈折率制御薄膜を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも天井温度が20℃より低い熱分解性ポリマーと軟化温度が60℃より高いマトリックスポリマーとを含むことを特徴とする屈折率制御薄膜。
【請求項2】
さらに微粒子を含むことを特徴とする請求項1記載の屈折率制御薄膜。
【請求項3】
微粒子が中空シリカ微粒子であることを特徴とする請求項2記載の屈折率制御薄膜。
【請求項4】
微粒子が導電性微粒子であることを特徴とする請求項2記載の屈折率制御薄膜。
【請求項5】
熱分解性ポリマーがポリオレフィンスルホンであることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の屈折率制御薄膜。
【請求項6】
熱分解性ポリマーがポリアルデヒドであることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の屈折率制御薄膜。
【請求項7】
さらに光酸発生剤を含むことを特徴とする請求項1〜6いずれかに記載の屈折率制御薄膜。
【請求項8】
請求項1〜7いずれかに記載の屈折率制御薄膜を用いて、屈折率制御薄膜を熱分解性ポリマーの天井温度よりも高く、且つ、マトリックスポリマーの軟化温度よりも低い温度で加熱する工程を含むことを特徴とする屈折率制御薄膜の低屈折率化方法。
【請求項9】
前記屈折率制御薄膜を熱分解性ポリマーの天井温度よりも高く、且つ、マトリックスポリマーの軟化温度よりも低い温度で加熱する工程の前に、及び/又は、その工程の中で、電磁波、及び/又は、電子線を照射することを特徴とする請求項8記載の屈折率制御薄膜の低屈折率化方法。
【請求項10】
電磁波、及び/又は、電子線を照射する部分と照射しない部分とを設けることで、屈折率の高低パターンを導入することを特徴とする請求項9記載の屈折率制御薄膜の低屈折率化方法。
【請求項11】
請求項8〜10いずれかに記載の方法により得られる低屈折率薄膜。
【請求項12】
透明な光学基板上に、少なくとも請求項1〜7いずれかに記載の屈折率制御薄膜が形成されて構成されることを特徴とする光学、及び/又は記録部材。
【請求項13】
透明な光学基板上に、少なくとも請求項11記載の低屈折率薄膜層が形成されて構成されることを特徴とする光学、及び/又は記録部材。


【公開番号】特開2007−279459(P2007−279459A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−106799(P2006−106799)
【出願日】平成18年4月7日(2006.4.7)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【Fターム(参考)】