説明

屋内外広告物のリサイクル方法

【課題】防炎剤やアクリル樹脂が付着したポリエステル繊維からなる布製の屋内外広告物を使用後、回収し、前処理後に解重合、再重合したポリエステル繊維からなる布製の屋内外広告物をつくるリサイクル方法を提供する。
【解決手段】ポリエステル繊維からなる布製の屋内外広告物をケミカルリサイクルにあたって、布帛に含有した防炎剤とアクリル樹脂を、含窒素界面活性剤と還元剤、アルカリ剤にて除去した後に、解重合反応し、ポリエステル原料とするリサイクル方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリエステル繊維からなる布製の屋内外広告物をリサイクルする方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保護のために、資源の有効利用の面から様々の分野や素材でリサイクルが行われつつある。例えば、使用済みのガラスや紙を回収し選別し再生原料として利用することは、事業として確立されている。
ポリエチレンテレフタレートは、その化学的安定性が優れていることから、繊維、フィルム、樹脂などの生活関連資材、飲料水、炭酸飲料用ボトル等の食品分野などで大量に使用されている。使用量の増大に伴って大量に発生する使用済みポリエチレンテレフタレート、あるいはポリエチレンテレフタレート製造段階で発生する品質不適格品の処理は、大きな社会問題となっている。
例えば、自然に商品イメージを認知、または情報伝達、販促効果を狙ったポリエステル繊維からなる布製の屋内外広告物も使用量の増大に伴い使用後の処分に困っているもののひとつである。
【0003】
特に、コンビニエンスストアに代表される不特定多数の人々が集まる店舗やガソリンスタンドに代表される店舗に設置されている広告物の代表的な製品である「のぼり」には、一般的には顔料プリントと同時に防炎加工が施されている。これらのぼり製品の使用後に、処分するに際し、燃焼させる場合には通常のポリエステル繊維製品でも高熱が発生し、焼却炉の傷みが大きく、焼却炉の寿命が短くなるという問題がある上に、防炎加工が施されたのぼりの場合、より高温で長時間の処理が必要となることから実質的には、焼却不可能なため大部分は廃棄処分されているのが実態である。広告社会の中、焼却し得ないのぼりの大量の製品は、腐敗分解しないため半永久的に残ることになり、環境の面からも問題である。
【0004】
従来より、ポリエチレンテレフタレートにエチレングリコールを過剰に加えて加熱し、解重合反応により、ビス−β−ヒドロキシエチルテレフタレート及び低級オリゴマーを得、該混合物に対し過剰のメタノールを加え、触媒の存在下、置換エステル化反応に付することによりテレフタル酸ジメチルを得、ポリエチレンテレフタレートの製造に際し、再利用する、いわゆるケミカルリサイクルする方法が特許文献1〜3に開示されている。
しかしながら、のぼり製品には顔料以外にリン、ハロゲン化合物からなる防炎剤やバインダーとしてアクリル樹脂が使用されていることから、のぼり製品を大量に処理しようとした場合、解重合反応、精製が困難でケミカルリサイクルできないという問題がある。
従って、現状では、防炎剤やアクリル樹脂を含有した屋内外広告物をまとめて処理し、同じものをつくるシステムは資源の再利用に貢献するものであり、地球環境にやさしい企業活動の一環として重要であるものの簡単にできるものでないのが実態である。
【0005】
【特許文献1】特公昭43−002088号公報
【特許文献2】特開2002−060369号公報
【特許文献3】特開2002−060543号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ポリエステル繊維からなる布製の屋内外広告物を使用した後、回収し、前処理後に解重合し、再重合して得たポリエステル繊維からなる布製の屋内外広告物をつくるリサイクル方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリエチレンテレフタレートを主成分とするポリエステル繊維からなる布製の屋内外広告物を使用した後、回収し、前処理にて防炎剤、アクリル樹脂を除去することで効率よいケミカルリサイクルが可能となり、再生ポリエステル繊維からなる布製の屋内外広告物つくるリサイクル方法を見出し、本発明をなすに至った。
すなわち本発明は、以下のとおりである。
(1)ポリエステル繊維からなる布製の屋内外広告物をケミカルリサイクル処理することを特徴とするリサイクル方法。
(2)屋内外広告物が防炎剤及び/又はアクリル樹脂を含有していることを特徴とする上記(1)記載のリサイクル方法。
(3)ポリエステル繊維からなる布製の屋内外広告物を含窒素界面活性剤と還元剤、アルカリ剤を用いて前処理した後、解重合反応し、ポリエステル原料を得ることを特徴とする上記(1)または(2)記載のリサイクル方法。
(4)ポリエステル製の袋にポリエステル繊維からなる布製の屋内外広告物を入れて、含窒素界面活性剤と還元剤、アルカリ剤を用いて防炎剤、アクリル樹脂を除去してリサイクル原料を得ることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載のリサイクル方法。
【発明の効果】
【0008】
防炎剤やアクリル樹脂を含んだポリエステル繊維からなる布製の屋内外広告物のリサイクルが可能となり、ケミカルリサイクルしたポリエステル繊維を使用するので、できあがった布製の屋内外広告物においては物性値のバラツキが少なく、捺染における染色性に優れ、耐候性能に優れた屋内外広告物が得られるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明について、以下に詳細に説明する。
本発明におけるポリエステル繊維とは、主としてポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートであって、共重合ポリエステルが50%以下の範囲で含有されていてもよい。その他、染色及び着色剤等を含有していてよい。
本発明におけるポリエステル繊維からなる布製の屋内外広告物とは、のぼり、旗、幕
(懸垂幕、垂れ幕、腰幕、横幕など)、バナー、タペストリー等をいい、ポンジ、スエード、トロピカル、サテン、トロマットなどの織物からなるものである。織物への彩色、加工は通常実施されている方法であればいずれでもよく、例えば、顔料等にて自動スクリーンによる捺染やインクジェットによる捺染されたものであり、この際、バインダーに使用されたアクリル樹脂の中に防炎剤や撥水剤等が混用されているものである。
【0010】
本発明のリサイクル方法においては、使用後回収されたポリエステル繊維からなる布製の屋内外広告物を解重合触媒下、エチレングリコール中での解重合反応を行うのに先立ち、解重合反応を効率よく行うために、屋内外広告物に残存する防炎剤、アクリル樹脂を除去することが重要である。
本発明における前処理では、含窒素界面活性剤と還元剤、アルカリ剤を用いて処理することにより、解重合時に悪影響を及ぼす防炎剤やアクリル樹脂を簡単に除去することが可能である。また、顔料等の着色剤も同時に容易に除去が可能である。
【0011】
前処理に用いる含窒素界面活性剤とは、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、アルキルトリメチルアンモニウムクロリド、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリド等が好ましく用いられ、塩化ドデシルトリメチルアンモニウムとポリオキシエチレンアルキルアミンからなる混合物がより好ましく使用できる。
還元剤としては、染色工業で使用されている還元剤であればいずれでもよいが、屋内外広告物に残存する防炎剤、アクリル樹脂さらには顔料等の着色剤、撥水剤までを含めた残存加工薬剤を効率よく除去するためには、80℃以上のアルカリ溶液下での還元電位が−800mV以上の高い還元電位を発揮するものが好ましく、例えば、ハイドロサルファイトナトリウムや二酸化チオ尿素が挙げられ、中でも二酸化チオ尿素が除去性、処理液の排水負荷面より好ましく使用できる。この際に併用するアルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の強塩基のものが還元電位を高める上で好ましく使用できる。
【0012】
含窒素界面活性剤の使用量は、好ましくは2〜20g/リットルで、さらに好ましくは5〜10g/リットルであり、2g/リットル未満では除去効率が不十分であり、20g/リットルを越えても除去効率の向上は期待できない。
還元剤の使用量は、好ましくは2〜20g/リットルで、さらに好ましくは3〜10g/リットルであり、2g/リットル未満では除去効率が不十分であり、20g/リットルを越えても除去効率は向上せずコスト面で不経済となる。
アルカリ剤の使用量は、好ましくは2〜30g/リットルであり、さらに好ましくは4〜20g/リットルであり、2g/リットル未満では除去効率が不十分であり、30g/リットルを越えても除去効率の向上は期待できない。
【0013】
本発明における前処理は、含窒素界面活性剤と還元剤、アルカリ剤を含有する水溶液中に屋内外広告物を浸漬する方法が好ましく、処理温度としては80〜130℃、特に90〜120℃が好ましく、処理時間は10〜50分が好ましく、処理の浴比は1:3〜40が好ましい。この際、除去効率を高めるため、処理浴中の還元電位が高まるように還元剤のみ90℃以上での投入が好ましく、さらに好ましくは95℃以上である。処理後は、水洗、脱水、乾燥を行う。
本発明の前処理においては、ポリエステル製の袋に屋内外広告物を入れ処理するものであり、袋に入れることで取り扱いの作業性や生産効率の上で好ましく、特に処理後の解重合工程にもそのまま投入でき分別作業の手間が入らず作業性が向上する。袋は、メッシュ調の編物を使用するので除去効率を高める上で好ましい。
また、袋に入れて前処理する際に、防炎剤やアクリル樹脂、顔料の除去効率を高めることやバッチ毎の除去レベルの向上や均一化を図るために、上記薬剤とともに浸透剤や湿潤剤や濡れ剤を併用使用してもかまわない。
【0014】
次に、前処理を完了したポリエステル繊維からなる布製の屋内外広告物は、まずは既知の解重合触媒存在下、エチレングリコール中で解重合反応させる。次いで、解重合反応で用いた過剰なエチレングリコールを抜出し、その後、メタノールで置換エステル化反応をさせ粗テレフタル酸ジメチルを得る。得られた粗テレフタル酸ジメチルは、固液分離にて脱メタノールを行った後、蒸留精製し、精製テレフタル酸ジメチルを得る。
前処理により防炎剤やアクリル酸を除去した袋入りの屋内外広告物を解重合反応させる際の方式は、回分式と連続式のどちらでもよく、解重合反応温度は90〜230℃、圧力0〜0.2MPa(ゲージ圧)程度であればよく、この範囲内では、エチレングリコールでの解重合反応が十分行われる。防炎剤やアクリル酸が含まれている場合は、解重合反応が進まず、未溶解物が残る。また解重合反応温度が90℃未満であると、解重合時間が非常に長くかかり効率的でない。一方、230℃を越えると高圧対応の反応器が必要となり、運転面や安全面で好ましくない。
【0015】
置換エステル化反応を行う際の反応温度は、35〜100℃、圧力0〜0.5MPa(ゲージ圧)の範囲とするのが好ましい。この範囲にある際には、置換エステル化反応が十分に行われる。置換エステル化反応時間は30分〜4時間とすることが好ましい。
ここで解重合触媒及び置換エステル化触媒は、既知の触媒のいずれも用いることができるが、アルカリ金属、アルカリ土類金属の炭酸塩、炭酸水素塩、カルボン酸塩からなる群から選ばれた少なくとも1種以上の化合物を用いることが触媒能の高さの面から好ましく、酢酸ナトリウムや炭酸ナトリウムを用いるのが好ましい。
【0016】
次に得られた精製テレフタル酸ジメチルを、通常実施されているように、エチレングリコール、触媒とともに重合させる。この際の重合は、通常の重合方法と同様に、溶融重合や固相重合する方法を用いればよい。本発明のように、解重合を行い、再度、重合を行うので、溶融粘度や分子量、結晶化度等の物性値が均一化、安定化する。
また、重合時には、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、共重合成分が含有されていてもよい。さらに、ヒンダードフェノール系化合物等の酸化防止剤、その他顔料、添加剤等が配合されていてもよく、酸化チタンを0.3〜10質量%含有させてもよい。
重合によって得られたポリエステル繊維の形状は特に限定するものではなく、丸断面形状のもののみならず、多角形状や多葉形状のものであってもよく、また中空を有するものであってもよい。
【0017】
ポリエステル繊維の製法については、1500m/分程度の巻取り速度で未延伸糸を得た後、2〜3.5倍程度で延撚する方法、紡糸−延撚工程を直結した直延法(スピンドロー法)、巻取り速度5000m/分以上の高速紡糸法(スピンテイクアップ法)の何れを採用しても良い。
得られた繊維は、例えば、0.3〜4dtexの単繊維繊度を有し、フィラメント数は20〜150であり、強度は2.0〜6.0cN/dtex、伸度は25〜40%の物性を保持している。
また繊維の形態は、長繊維でも短繊維でもよく、長さ方向に均一なものや太細のあるものでもよい。そして、繊維が加工される糸状の形態としては、紡績糸、マルチフィラメント糸(極細糸を含む)、甘撚糸乃至は強撚糸、仮撚加工糸(POYの延伸仮撚糸を含む)、空気噴射加工糸、押し込み加工糸、ニットデニット加工糸等が挙げられる。
【0018】
次に、得られた再生ポリエステル繊維を用い布製の屋内外広告物を製造するにあたっては、まず再生ポリエステル繊維を用いて織物を製造するが、織物の密度等の製織条件は通常実施されている条件でよく、また組織は屋内外広告物に使用されているものであればいずれでもよく、例えば、商品用途毎にポンジ、トロピカル、スエード、トロピカル、サテン、トロマットなどを製造すればよい。
得られた織物は、通常実施されている糊抜き、精練、ヒートセットを行った後、オートスクリーンによる捺染やインクジェット方式による捺染を行うが、この際に、アクリル樹脂をバインダーとして用い、防炎剤や撥水剤を併用して加工すればよい。
バインダーとして用いるアクリル樹脂や、防炎剤、撥水剤は、通常、ポリエステル繊維に使用されているものであれば何でもよい。
【0019】
本発明において使用される織物は、使用後回収した屋内外広告物を解重合し、再重合してなるポリエステル繊維を使用しているので、繊維分子量、結晶化度、原糸物性が、通常の重合法により得られたポリエステル繊維と何ら変わらないので、捺染前の準備工程における糊抜き、精練の効果やヒートセットにおける寸法安定性、染色性においてもほとんど差がなく、色調の良好な捺染品が得られ染色堅牢度性能も良好である。
またリサイクルポリエステルを溶融のみ行って再利用したポリエステル繊維と異なり、繊維の分子量、結晶化度、原糸物性値が安定しているので、オートスクリーン捺染において要求される高い捺染精度と高速印刷にも十分に追従し、高品質の捺染品が得られるという特徴も有している。
【0020】
捺染を完了した製品は、ヒートカットで裁断仕上げ、製品に応じて必要な加工を行えばよい。例えば、のぼりではポールに通すチギレを取り付けるがこのチギレやチギレを取り付ける縫い糸やチギレを使わずに袋状に縫製する場合の縫い糸もポリエステル繊維からなるものを使用するのが前処理時や前処理後、解重合反応前に分別作業の手間がいらなく好ましい。また、幕によっては補強のため周囲にロープを縫い込むが、このロープ、縫い糸もポリエステル繊維からなるものを使用するのが好ましい。
このようにして得られたポリエステル繊維からなる布製の屋内外広告物は、繊維物性、織物物性も優れたものであり、耐光性にも優れ、リサイクルされたポリエステル繊維を使用することから循環社会に適応したポリエステル繊維製品を得ることができる。
【実施例】
【0021】
以下に本発明を実施例などにより更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例などにより何ら限定されるものではない。尚、本発明で用いられる特性値の測定法を以下に示す。
(1)固有粘度[η](dl/g)
固有粘度[η](dl/g)は次式の定義に基づいて求められた値である。
[η]=lim(ηr−1)/C
C→0
定義式中、ηrは純度98%以上のo−クロロフェノール溶媒で溶解したポリマーの希釈溶液の35℃での粘度を、同一温度で測定した上記溶媒の粘度で除した値であり、相対粘度と定義されるものである。Cはg/100mlで表されるポリマー濃度である。
【0022】
(2)強度・伸度
オリエンテック社製、引張試験機を用い、糸長20cm、引張速度20cm/分の条件で測定した。
(3)色差
分光光度計(グレタグマクベス社製、形式CE−7000A)を使用し評価した。色差が55以上の場合は、処理前の色がほとんど残っていないレベルである。
(4)プリント品の発色性
プリント品の色調を目視で判定し、3段階で評価した。
○:色調が良好
△:色調がやや不良
×:色調が不良
(5)耐光堅牢度
プリント製品について、100日間天日暴露して評価した。試験サンプルの変褪色をJIS−L−0804のグレースケールと比較し判定し、等級が3級以上を良好、未満を不良と判定した。
【0023】
[実施例1]
石油スタンドで3ヶ月使用されたポリエステル繊維からなるポンジー製ののぼり(600×1800mm、チギレは上に3本、横に5本、チギレおよびチギレを縫いつける縫糸ともポリエステル繊維製、重量は93g/1枚)を25000枚回収し、500枚ごとにポリエステル製のメッシュ袋に入れ、下記の条件にて前処理を行った。
前処理条件
含窒素界面活性剤;マシンクリーナYK(一方社油脂工業株製)8g/リットル (塩化ドデシルトリメチルアンモニウムとポリオキシエチレンアルキルアミンから なる混合物)
還元剤 ; 二酸化チオ尿素 5g/リットル
アルカリ剤 ; 水酸化ナトリウム 8g/リットル
浴 比 ; 1:25
処理温度、時間 ; 110℃、30分
(尚、還元剤のみ105℃にて投入した。)
【0024】
処理後、湯洗、水洗を行い、メッシュ袋ごと脱水、乾燥を行った。処理後ののぼりを蛍光X線による分析にてブロムは98%、アンチモンは97%除去されており防炎剤がほとんど残存していないことを確認した。また、赤外吸収スペクトル法によりアクリル樹脂を同定したところ、アクリル樹脂もほとんど除去されていることを確認した。処理前後の色差は65.2であり、処理により顔料もほとんど完全に除去されていた。
次に、前処理されたのぼりをメッシュ袋に入れたまま投入し(トータル2530kg)、さらにエチレングリコールを3500リットル、酢酸ナトリウムを投入し、210℃まで4時間かけて昇温し、40分保持し、解重合反応を行った。反応後、過剰のエチレングリコールを除去し、ビス−β−ヒドロキシエチルテレフタレート(BHET)を主成分とするオリゴマーを得た。得られたBHETをメタノール6000リットル、炭酸ナトリウムが仕込んである反応槽に入れ65℃で30分処理し、粗テレフタル酸ジメチル(粗DMT)を得た。得られた粗DMTを濾布のついた高速遠心分離機でメタノールを除去し、蒸留にて濃縮し、精製DMTを得た。
【0025】
次に得られた精製DMTとエチレングリコールと触媒として酢酸マンガンを反応槽に仕込み、段階的に昇温しながら210℃まで上げ、2時間30分、常圧でエステル交換反応を行った。次に、触媒として、トリメチルフォスフェート、三酸化アンチモン、二酸化チタンを加え、250℃まで1時間かけて昇温し反応させその後、徐々に0.3mmHgまで減圧させ、段階的に290℃まで昇温し、重縮合反応を行った。反応終了後、真空から窒素で常圧に戻し、さらに加圧にしてポリマーを紡口から押し出しながら水で冷却してカッターにてチップ化した。
得られたチップ(固有粘度[η]が0.62(オルソクロロフェノール中、1重量%で測定))を295℃の押出機に供給し、紡糸装置に供給し、紡糸孔30個を有するノズルより、紡糸温度(スピンヘッド温度)295℃、紡糸速度2200m/分で押し出し、90℃の第1延伸ロールでフィラメントを加熱し、120℃の第2延伸ロールにて熱セットを行い、伸度が30〜35%となるように延伸を行い、単糸断面形状が丸型を有した84デシテックス/30フィラメントの延伸糸を得た。得られた原糸の強度は4.4cN/dtexで、伸度は32%であった。
【0026】
得られた原糸を常法により1H加工機にて仮撚加工を行い加工糸を得た。得られた加工糸を経糸密度86本/インチ、緯糸密度74本/インチにてポンジを製織した(得られた生機の密度は62g/m2 であった)。得られた織物を糊抜き、精練を行い、190℃でセットを行った。
次に、オートスクリーン捺染機にて顔料プリントを行った。この際、バインダーのアクリル樹脂に防炎剤、撥水剤を混ぜ込み、同時に加工を行い、仕上げた。このときのプリント性、色の発色性(色調)は良好であった。
得られたプリント製品をほつれのないようにのぼりのサイズ(600×1800mm)にヒートカットにて断裁し、ポールを通すためのチギレをポリエステル繊維からなるものを用い、上に3本、横に5本、それぞれポリエステル繊維からなるミシン糸にて縫い付けのぼり製品を完成した。得られたのぼり製品の耐光堅牢度性能は良好であった。
【0027】
[比較例1]
実施例1の回収したのぼりを前処理せずに、実施例1と同条件にて解重合反応を行ったところ未溶解残渣が多く、高速遠心分離機の濾布が目詰まりを起こし、粗DMTを得ることはできなかった。
[実施例2]
石油スタンドにて3ヶ月使用されたポリエステル繊維からなるトロピカル製からなるバナー(1200×3800mm、重量は680g/1枚)を1500枚回収し、50枚ごとにポリエステル製の袋に入れ、下記の条件にて前処理を行った。
前処理条件
含窒素界面活性剤;マシンクリーナYK 10g/リットル
還元剤 ; 二酸化チオ尿素 8g/リットル
アルカリ剤 ; 水酸化ナトリウム 15g/リットル
浴 比 ; 1:25
処理温度、時間 ; 110℃、30分
(尚、還元剤のみ105℃にて投入した。)
【0028】
処理後、湯洗、水洗を行い、メッシュ袋ごと脱水、乾燥を行った。処理後のバナーを蛍光X線による分析にてブロムは97%、アンチモンは98%除去されており防炎剤がほとんど残存していないことを確認した。また、赤外吸収スペクトル法によりアクリル樹脂を同定したところ、アクリル樹脂もほとんど除去されていることを確認した。処理前後の色差は62.5であり、処理により顔料もほとんど完全に除去されていた。
次に、前処理されたバナーを袋に入れたまま投入し(トータル1150kg)、実施例1と同様の方法にて過剰のエチレングリコールを投入し、酢酸ナトリウムを投入し、解重合反応を行ない、得られた精製DMTを用い、重縮合反応を行い、ポリエステルチップを得た。
【0029】
得られたチップ(固有粘度[η]が0.62(オルソクロロフェノール中、1重量%で測定))を295℃の押出機に供給し、紡糸装置に供給し、紡糸孔48個を有するノズルより、紡糸温度(スピンヘッド温度)295℃、紡糸速度2200m/分で押し出し、90℃の第1延伸ロールでフィラメントを加熱し、120℃の第2延伸ロールにて熱セットを行い、伸度が30〜35%となるように延伸を行い、単糸断面形状が丸型を有した167デシテックス/48フィラメントの延伸糸を得た。得られた原糸の強度は4.3CN/dtexで、伸度は30%であった。
得られた原糸を常法により1H加工機にて仮撚加工を行い加工糸を得た。得られた加工糸を経糸密度72本/インチ、緯糸密度60本/インチにてトロピカルを製織した(得られた生機の密度は110g/m2 であった)。得られた織物を糊抜き、精練を行い、190℃でセットを行った。
【0030】
次に、オートスクリーン捺染機にて顔料プリントを行った。この際、バインダーのアクリル樹脂に防炎剤、撥水剤を混ぜ込み、同時に加工を行い、仕上げた。このときのプリント性、色の発色性(色調)は良好であった。
得られたプリント製品をバナーのサイズ(1200×3800mm)となるように断裁し、上下にポリエステル製のヒモを仕込みバナー製品を完成した。得られたバナー製品の耐光堅牢度性能は良好であった。
[比較例2]
実施例2の回収したバナーを前処理せずに、同条件にて解重合反応を行ったところ未溶解残渣が多く、高速遠心分離機の濾布が目詰まりを起こし、粗DMTを得ることはできなかった。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明のリサイクル方法は、特にポリエステル繊維からなる布製の屋内外広告物のリサイクルに好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル繊維からなる布製の屋内外広告物をケミカルリサイクル処理することを特徴とするリサイクル方法。
【請求項2】
屋内外広告物が防炎剤及び/又はアクリル樹脂を含有していることを特徴とする請求項1記載のリサイクル方法。
【請求項3】
ポリエステル繊維からなる布製の屋内外広告物を含窒素界面活性剤と還元剤、アルカリ剤を用いて前処理した後、解重合反応してポリエステル原料を得ることを特徴とする請求項1または2記載のリサイクル方法。
【請求項4】
ポリエステル製の袋にポリエステル繊維からなる布製の屋内外広告物を入れて含窒素界面活性剤と還元剤、アルカリ剤にて防炎剤、アクリル樹脂を除去してリサイクル原料を得ることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のリサイクル方法。

【公開番号】特開2008−88324(P2008−88324A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−271784(P2006−271784)
【出願日】平成18年10月3日(2006.10.3)
【出願人】(303046303)旭化成せんい株式会社 (548)
【Fターム(参考)】