屋外用部品
【課題】屋外用部品において、部品本体の腐食が連鎖的に進行するのを抑える。
【解決手段】部品本体10表面には、酸電解処理により形成されたエッチング層11と、無電解Niめっき層12と、第1半光沢Niめっき処理により形成された第1半光沢Niめっき層13と、Cuめっき処理により形成されたCuめっき層14と、第2半光沢Niめっき処理により形成された第2半光沢Niめっき層15と、トリNiめっき処理により形成されたトリNiめっき層16と、光沢Niめっき処理により形成された光沢Niめっき層17と、Sn−Ni合金めっき処理により形成されたSn−Ni合金めっき層18と、イオンプレーティング成膜処理により形成されたIP層19とが形成されている。
【解決手段】部品本体10表面には、酸電解処理により形成されたエッチング層11と、無電解Niめっき層12と、第1半光沢Niめっき処理により形成された第1半光沢Niめっき層13と、Cuめっき処理により形成されたCuめっき層14と、第2半光沢Niめっき処理により形成された第2半光沢Niめっき層15と、トリNiめっき処理により形成されたトリNiめっき層16と、光沢Niめっき処理により形成された光沢Niめっき層17と、Sn−Ni合金めっき処理により形成されたSn−Ni合金めっき層18と、イオンプレーティング成膜処理により形成されたIP層19とが形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外用部品、特に、屋外で使用される屋外用部品に関する。
【背景技術】
【0002】
屋外で使用されることが多いリール等の釣り用品に使用される屋外用部品、特にアルミニウム合金製の屋外用部品には、表面にアルマイトが形成されたものが知られている(たとえば、特許文献1参照)。アルマイトは、アルミニウム合金を陽極酸化処理して形成される表面処理膜層である。このようなアルマイトを部品本体の表面に形成すると、アルミニウム合金製の部品本体が腐食雰囲気に直接曝されなくなり、耐食性を向上させることができる。
【特許文献1】特開2003−166097号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記従来のアルミニウム合金製の部品本体では、部品本体の表面にアルマイトが形成されているので、耐食性を向上できる。しかし、このようなアルマイトが形成された部品本体では、たとえばリールを落下させたときに、アルマイトの表面が傷付いて部品本体が腐食雰囲気に曝され、部品本体の耐食性が損なわれるおそれが生じる。
【0004】
そこで、ニッケルめっき層と、クロムめっき層と、IP(Ion Plating、イオンプレーティング)層とを順に形成したものが知られている。ここでは、熱処理に強いニッケルめっき層及びクロムめっき層によって、アルマイトとIP層との密着性を向上させながら、非常に硬い薄膜であるIP層によって、部品本体の耐食性を向上させることができる。
【0005】
しかし、IP層及びクロムめっき層が傷付くとニッケルめっき層が外観に露出するが、このときクロムとニッケルとの電位差が大きいので、ニッケルめっき層が電解腐食してしまうことがある。このようにニッケルめっき層が電解腐食すると、IP層及びクロムめっき層が傷付いていない部分の内部に形成されたニッケルめっき層まで腐食が進行し、IP層及びクロムめっき層が崩落するおそれが生じる。IP層及びクロムめっき層が崩落すると、さらにニッケルめっき層が外部に露出するので、電解腐食が連鎖的に進行するおそれがある。
【0006】
本発明の課題は、屋外用部品において、部品本体の腐食が連鎖的に進行するのを抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明1に係る屋外用部品は、屋外で使用される屋外用部品であって、部品本体と、部品本体の表層側に湿式めっき法により形成された湿式めっき層と、湿式めっき層の表層側に形成され湿式めっき層と電位差が近い金属めっき層と、金属めっき層の表層側に蒸着成膜法により形成された蒸着膜層とを備えている。
【0008】
この屋外用部品では、部品本体上に、湿式めっき層と、湿式めっき層と電位差が近い金属めっき層と、蒸着膜層とが順に形成されている。ここでは、湿式めっき層の表層側に湿式めっき層と電位差が小さい金属めっき層が形成されているので、蒸着膜層及び金属めっき層が傷付いて湿式めっき層が外観に露出しても、蒸着膜層及び金属めっき層が傷付いた部分の湿式めっき層のみが腐食し、蒸着膜層及び金属めっき層が傷付いていない部分の内部に形成された湿式めっき層まで腐食が進行しにくくなる。したがって、蒸着膜層及び金属めっき層が崩落しにくくなるので、部品本体の腐食が連鎖的に進行するのを抑えることができる。
【0009】
発明2に係る屋外用部品は、発明1の屋外用部品において、蒸着膜層は、イオンプレーティング成膜処理により形成されたIP層である。この場合、イオンプレーティング成膜処理は、真空容器の中で金属を蒸発させて、蒸発された粒子をイオン化し、他の中性粒子とともに素材表面に金属薄膜を形成する方法である。ここでは、イオンプレーティング成膜処理によって非常に硬い薄膜であるIP層を形成することにより、部品本体の耐食性、耐摩耗性、意匠性を向上できる。
【0010】
発明3に係る屋外用部品は、発明の屋外用部品において、IP層は、Tiを含有する膜層である。この場合、たとえばTiC、TiO、TiN等のTiを含有するIP層であるので、高強度かつ光沢のある外観を呈することができる。
【0011】
発明4に係る屋外用部品は、発明1の屋外用部品において、蒸着膜層は、DLC成膜処理により形成されたDLC層である。この場合、DLC(Diamond Like Carbon、ダイヤモンドライクカーボン)層は、高硬度かつ耐摩耗性のある特性を有しているので、リールを落下させても表面が傷付きにくくなり、このため部品本体の耐食性を高く維持できる。また、DLC層は、表面が滑り性の良い平滑な特性を有しているので、高級感のある外観を呈することができ、このため外観の意匠性を向上できる。
【0012】
発明5に係る屋外用部品は、発明4の屋外用部品において、DLC層は、DLC成膜処理であるプラズマイオン成膜処理により形成されている。この場合、PBID(Plasma−Based Ion Deposition、プラズマイオン成膜法)によって、Sn−Ni合金めっき層の表層側にDLC層が形成される。PBID法は、PBII法と同時に行われる成膜処理であって、Cイオンを照射することよってSn−Ni合金めっき層の表層側にDLC層が形成される。ここでは、プラズマイオン成膜処理によって、Sn−Ni合金めっき層との密着性が高いDLC層を形成できる。
【0013】
発明6に係る屋外用部品は、発明1から5のいずれかの屋外用部品において、部品本体は、合成樹脂製部材である。この場合、ABSやSPS等の合成樹脂製部材により、比較的安価な構成で屋外用部品を提供できる。
【0014】
発明7に係る屋外用部品は、発明1から5のいずれかの屋外用部品において、部品本体は、金属製部材である。この場合、金属製部材により、めっき方法の自由度が高くなる。
【0015】
発明8に係る屋外用部品は、発明7の屋外用部品において、部品本体と湿式めっき層との間に酸電解法により形成されたエッチング層をさらに備えている。この場合、酸性の電解溶液によって部品本体の表面を溶かすエッチング等の酸電解法により、部品本体と湿式めっき層との密着性を向上できる。
【0016】
発明9に係る屋外用部品は、発明7のいずれかの屋外用部品において、部品本体と湿式めっき層との間に陽極酸化法により形成された陽極酸化膜層をさらに備えている。この場合、部品本体を陽極にして硫酸等の電解質溶液中で電解すると、陽極に発生する酸素のために酸化膜が形成される陽極酸化法により、部品本体の耐食性を高く維持できる。
【0017】
発明10に係る屋外用部品は、発明9の屋外用部品において、部品本体は、アルミニウム合金製部材である。陽極酸化膜層は、アルマイト処理により形成されたアルマイト層である。この場合、アルミニウム合金の陽極酸化法であるアルマイト処理により、アルミニウム合金製の部品本体の耐食性を高く維持できる。
【0018】
発明11に係る屋外用部品は、発明1から10のいずれかの屋外用部品において、湿式めっき層は、ニッケルからなるニッケルめっき層である。金属めっき層は、Sn−Ni合金からなるSn−Ni合金めっき層である。この場合、ニッケルめっき層とSn−Ni合金めっき層とは、いずれもニッケルを含む層であるので、電位差が近い湿式めっき層及び金属めっき層を容易に形成できる。
【0019】
発明12に係る屋外用部品は、発明11の屋外用部品において、ニッケルめっき層は、部品本体の表層側に形成された無電解Niめっき層と、無電解Niめっき層の表層側に形成された第1半光沢Niめっき層と、第1半光沢Niめっき層の表層側に形成されたCuめっき層と、Cuめっき層の表層側に形成された第2半光沢Niめっき層と、第2半光沢Niめっき層の表層側に形成された光沢Niめっき層とを有している。この場合、無電解Niめっき層と、第1半光沢Niめっき層と、Cuめっき層と、第2半光沢Niめっき層と、光沢Niめっき層との複数のめっき層を形成することによって、部品本体の耐食性をさらに向上できる。
【0020】
発明13に係る屋外用部品は、発明12の屋外用部品において、ニッケルめっき層は、第2半光沢Niめっき層と光沢Niめっき層との間に形成されたトリNiめっき層をさらに有している。この場合、硫黄成分を多く含むトリNiめっき層を形成することによって、光沢Niめっき層の腐食が進行するのを抑えることができる。
【0021】
発明14に係る屋外用部品は、発明1から13のいずれかの屋外用部品において、部品本体は、釣りに用いられる釣り用部品に使用される。この場合、屋外の腐食雰囲気で使用されることが多い釣り用部品、たとえば釣り用リールのリール本体、スプール、スプールリング、ラインローラ、マスターギア等において、釣り用部品の腐食が連鎖的に進行するのを抑えることができる。
【0022】
発明15に係る屋外用部品は、発明1から13のいずれかの屋外用部品において、部品本体は、自転車に用いられる自転車用部品に使用される。この場合、屋外の腐食雰囲気で使用されることが多い自転車用部品、たとえば自転車のクランク、リアディレーラー、ブレーキ等において、自転車用部品の腐食が連鎖的に進行するのを抑えることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、屋外用部品において、部品本体上に、湿式めっき層と、湿式めっき層と電位差が近い金属めっき層と、蒸着膜層とを順に形成することにより、部品本体の腐食が連鎖的に進行するのを抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の一実施形態を採用した両軸受リールは、図1及び図2に示すように、ベイトキャスト用のロープロフィール型のリールである。この両軸受リールは、釣竿RDに装着されるアルミニウム合金製のリール本体1と、リール本体1の側方に配置されたスプール回転用のハンドル組立体2と、リール本体1の内部に回転自在かつ着脱自在に装着された糸巻き用のスプール4とを備えている。ハンドル組立体2のリール本体1側には、ドラグ調整用のスタードラグ3が設けられている。
【0025】
リール本体1は、図1及び図2に示すように、フレーム5と、フレーム5の両側方に装着された側カバー6と、フレーム5の前方を覆う前カバー7と、上部を覆うサムレスト8と、フレーム5の下方に連結され釣竿RDのリールシートRS(図2参照)に装着される竿取付脚9(図2参照)とを有している。リール本体1を構成する各部材、スプール4及びリールシートRSは、アルミニウム合金製であり、各部材の表面には各種の表面処理が施されている。
【0026】
次に、リール本体1及びスプール4の各部材の表面構造について説明する。
【0027】
図3及び図4に示すように、各部材のアルミニウム合金製の部品本体10表面には、酸電解処理(図4のS1)により形成されたエッチング層11(図3参照)と、無電解Niめっき処理(図4のS2)により形成された無電解Niめっき層12(図3参照)と、第1半光沢Niめっき処理(図4のS3)により形成された第1半光沢Niめっき層13(図3参照)と、Cuめっき処理(図4のS4)により形成されたCuめっき層14(図3参照)と、第2半光沢Niめっき処理(図4のS5)により形成された第2半光沢Niめっき層15(図3参照)と、トリNiめっき処理(図4のS6)により形成されたトリNiめっき層16(図3参照)と、光沢Niめっき処理(図4のS7)により形成された光沢Niめっき層17(図3参照)と、Sn−Ni合金めっき処理(図4のS8)により形成されたSn−Ni合金めっき層18(図3参照)と、イオンプレーティング成膜処理(図4のS9)により形成されたIP層19(図3参照)とが順に形成されている。
【0028】
エッチング層11は、図3に示すように、酸性の電解溶液によってアルミニウム合金製の部品本体10の表面を溶かすエッチング等の酸電解処理により形成される酸化膜である。なお、エッチング層11は、表面に形成された凹凸のアンカー効果によって、表層側の無電解Niめっき層12との密着性を高めている。
【0029】
無電解Niめっき層12は、図3に示すように、無電解Niめっき層12の表層側に電解めっきを行いやすくするために設けられた膜層であり、たとえばリンを含む導電性に優れた膜層である。
【0030】
第1半光沢Niめっき層13、Cuめっき層14及び第2半光沢Niめっき層15は、図3に示すように、無電解Niめっき層12の表層側にダブルめっきである光沢Niめっき層17の下地層として形成されている。第1半光沢Niめっき層13、Cuめっき層14及び第2半光沢Niめっき層15は、電解めっきまたは無電解めっきにより、均一かつ高硬度に形成されている。
【0031】
トリNiめっき層16は、図3に示すように、第2半光沢Niめっき層15の表層側に第2半光沢Niめっき層15と光沢Niめっき層17との間に形成されている。トリNiめっき層16は、光沢Niめっき層17より硫黄成分を多く含んでおり、光沢Niめっき層17の腐食が進行するのを抑えることができる。
【0032】
光沢Niめっき層17は、図3に示すように、トリNiめっき層16の表層側に形成されており、トリNiめっき層16より少ない硫黄成分を含んだ黄みがかかった白色を呈している。光沢Niめっき層17は、第1半光沢Niめっき層13、Cuめっき層14及び第2半光沢Niめっき層15とともに形成されることでダブルめっきとしての耐食性を向上できる。
【0033】
Sn−Ni合金めっき層18は、図3に示すように、光沢Niめっき層17の表層側に形成されている。Sn−Ni合金めっき層18は、光沢Niめっき層17と同一のNi合金を含まれているので、光沢Niめっき層17との電位差が小さくなっている。また、Sn−Ni合金めっき層18は、接合性の良好なSnが含まれているので、Ni合金を形成しやすくなっている。
【0034】
IP層19は、図3に示すように、Sn−Ni合金めっき層18の表層側にイオンプレーティング成膜処理によって形成されている。イオンプレーティング成膜処理は、真空容器の中で金属を蒸発させて、蒸発された粒子をイオン化し、他の中性粒子とともに素材表面に金属薄膜を形成する方法であって、ここではTiC、TiO、TiN等のTiを含有する金属薄膜である。
【0035】
このようなリール本体1及びスプール4を構成するアルミニウム合金製の部品本体10の表面構造において、光沢Niめっき層17の表層側に電位差が小さいSn−Ni合金めっき層18が形成されているので、IP層19及びSn−Ni合金めっき層18が傷付いて光沢Niめっき層17が外観に露出しても、IP層19及びSn−Ni合金めっき層18が傷付いた部分の光沢Niめっき層17のみが腐食し、IP層19及びSn−Ni合金めっき層18が傷付いていない部分の内部に形成された光沢Niめっき層17まで腐食が進行しにくくなる。したがって、IP層19及びSn−Ni合金めっき層18が崩落しにくくなるので、部品本体10の腐食が連鎖的に進行するのを抑えることができる。
【0036】
〔他の実施形態〕
(a) 本発明に係る屋外用部品は、両軸受リールのリール本体やスプールを例にあげて説明したが、これらに限定されるものではなく、他の全てのアルミニウム合金製の釣り用品に本発明を適用できる。たとえば、図5に示すように、スピニングリールのリール本体102、スプールリング105、ラインローラ106等の部材や、図示しないがスピニングリールの内部に設けられたマスターギア等の部材にも本発明を適用できる。この場合には、釣り糸が接触して傷付きやすいスプールリング105及びラインローラ106の耐摩耗性を高く維持したり、特に、大きな力が作用するマスターギアの強度を高く維持することができる。また、釣り用リールだけでなく、自転車に用いられる自転車用部品に本発明を適用できる。たとえば、図示しないが、自転車のクランク、リアディレーラー、ブレーキ等の部材にも本発明を適用できる。この場合には、傷付きやすい自転車のクランク、リアディレーラー、ブレーキ等の部材の耐摩耗性を高く維持することができる。
【0037】
(b) 前記実施形態では、蒸着膜層としてIP層19が形成されていたが、図6及び図7に示すように、IP層19に代えて、プラズマイオン成膜処理(図7のS19)によるDLC層20(図6参照)を形成してもよい。
【0038】
DLC層20は、図6に示すように、PBID(Plasma−Based Ion Deposition、プラズマイオン成膜法)によって、Sn−Ni合金めっき層18の表層側に形成されたDLC(Diamond Like Carbon、ダイヤモンドライクカーボン)層である。PBID法は、PBII(Plasma−Based Ion Implantation、プラズマイオン注入法)と同時に行われる成膜処理であって、プラズマイオン注入処理でCイオンを高出力で注入した後Cイオンを低出力で照射することよってSn−Ni合金めっき層18の表層側にDLC層20が形成される。
【0039】
(c) 前記実施形態では、部品本体10の表層側に酸電解処理によるエッチング層11が形成されていたが、図8及び図9に示すように、エッチング層11に代えて、アルマイト処理(図9のS21)によアルマイト21(図8参照)を形成してもよい。
【0040】
アルマイト21は、図8に示すように、アルミニウム合金の陽極酸化処理により形成される酸化膜であって、アルミニウム合金製の部品本体10を陽極にして硫酸等の電解質溶液中で電解すると、陽極に発生する酸素のために酸化膜が形成される。アルマイト21は、脱脂、エッチング、中和等の前処理と、電解処理等の陽極酸化処理と、封孔処理等の後処理との3つの工程により形成される。なお、アルマイト21等の陽極酸化皮膜層は、表面の多孔質性によって、表層側のめっき層の密着性を高める効果を有している。
【0041】
(d) 前記実施形態では、部品本体10は、アルミニウム合金により形成されていたが、これに限定されるものではなく、他の金属製であってもよい。また、図10及び図11に示すように、金属に代えて、ABSやSPS等の合成樹脂によって部品本体10を形成してもよい。なお、図10では最表層としてIP層19形成され、図11では最表層としてDLC層20形成されている。
【0042】
(e) 図12及び図13に示すように、光沢Niめっき層17に代えて、サーチライトめっき層22やパールめっき層23を形成してもよい。また、図14及び図15に示すように、トリNiめっき層16を形成しない構成にしてもよいし、図15に示すように、さらにCuめっき層14を形成しない構成にしてもよい。なお、この場合には、Cuめっき層14が形成されていないので、第1半光沢Niめっき層13及び第2半光沢Niめっき層15に代えて、1層からなる半光沢Niめっき層24が形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態を採用した両軸受リールの斜視図。
【図2】前記両軸受リールの平面図。
【図3】各部材の断面拡大模式図。
【図4】前記各部材の表面処理工程を示す図。
【図5】本発明の他の実施形態を採用したスピニングリールの側面図。
【図6】他の実施形態の図3に相当する図。
【図7】他の実施形態の図4に相当する図。
【図8】他の実施形態の図3に相当する図。
【図9】他の実施形態の図4に相当する図。
【図10】他の実施形態の図3に相当する図。
【図11】他の実施形態の図3に相当する図。
【図12】他の実施形態の図3に相当する図。
【図13】他の実施形態の図3に相当する図。
【図14】他の実施形態の図3に相当する図。
【図15】他の実施形態の図3に相当する図。
【符号の説明】
【0044】
1 リール本体
4 スプール
10 部品本体
11 エッチング層
12 無電解Niめっき層
13 第1半光沢Niめっき層
14 Cuめっき層
15 第2半光沢Niめっき層
16 トリNiめっき層
17 光沢Niめっき層
18 Sn−Ni合金めっき層
19 IP層
20 DLC層
21 アルマイト
22 サーチライトめっき層
23 パールめっき層
24 半光沢Niめっき層
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外用部品、特に、屋外で使用される屋外用部品に関する。
【背景技術】
【0002】
屋外で使用されることが多いリール等の釣り用品に使用される屋外用部品、特にアルミニウム合金製の屋外用部品には、表面にアルマイトが形成されたものが知られている(たとえば、特許文献1参照)。アルマイトは、アルミニウム合金を陽極酸化処理して形成される表面処理膜層である。このようなアルマイトを部品本体の表面に形成すると、アルミニウム合金製の部品本体が腐食雰囲気に直接曝されなくなり、耐食性を向上させることができる。
【特許文献1】特開2003−166097号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記従来のアルミニウム合金製の部品本体では、部品本体の表面にアルマイトが形成されているので、耐食性を向上できる。しかし、このようなアルマイトが形成された部品本体では、たとえばリールを落下させたときに、アルマイトの表面が傷付いて部品本体が腐食雰囲気に曝され、部品本体の耐食性が損なわれるおそれが生じる。
【0004】
そこで、ニッケルめっき層と、クロムめっき層と、IP(Ion Plating、イオンプレーティング)層とを順に形成したものが知られている。ここでは、熱処理に強いニッケルめっき層及びクロムめっき層によって、アルマイトとIP層との密着性を向上させながら、非常に硬い薄膜であるIP層によって、部品本体の耐食性を向上させることができる。
【0005】
しかし、IP層及びクロムめっき層が傷付くとニッケルめっき層が外観に露出するが、このときクロムとニッケルとの電位差が大きいので、ニッケルめっき層が電解腐食してしまうことがある。このようにニッケルめっき層が電解腐食すると、IP層及びクロムめっき層が傷付いていない部分の内部に形成されたニッケルめっき層まで腐食が進行し、IP層及びクロムめっき層が崩落するおそれが生じる。IP層及びクロムめっき層が崩落すると、さらにニッケルめっき層が外部に露出するので、電解腐食が連鎖的に進行するおそれがある。
【0006】
本発明の課題は、屋外用部品において、部品本体の腐食が連鎖的に進行するのを抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明1に係る屋外用部品は、屋外で使用される屋外用部品であって、部品本体と、部品本体の表層側に湿式めっき法により形成された湿式めっき層と、湿式めっき層の表層側に形成され湿式めっき層と電位差が近い金属めっき層と、金属めっき層の表層側に蒸着成膜法により形成された蒸着膜層とを備えている。
【0008】
この屋外用部品では、部品本体上に、湿式めっき層と、湿式めっき層と電位差が近い金属めっき層と、蒸着膜層とが順に形成されている。ここでは、湿式めっき層の表層側に湿式めっき層と電位差が小さい金属めっき層が形成されているので、蒸着膜層及び金属めっき層が傷付いて湿式めっき層が外観に露出しても、蒸着膜層及び金属めっき層が傷付いた部分の湿式めっき層のみが腐食し、蒸着膜層及び金属めっき層が傷付いていない部分の内部に形成された湿式めっき層まで腐食が進行しにくくなる。したがって、蒸着膜層及び金属めっき層が崩落しにくくなるので、部品本体の腐食が連鎖的に進行するのを抑えることができる。
【0009】
発明2に係る屋外用部品は、発明1の屋外用部品において、蒸着膜層は、イオンプレーティング成膜処理により形成されたIP層である。この場合、イオンプレーティング成膜処理は、真空容器の中で金属を蒸発させて、蒸発された粒子をイオン化し、他の中性粒子とともに素材表面に金属薄膜を形成する方法である。ここでは、イオンプレーティング成膜処理によって非常に硬い薄膜であるIP層を形成することにより、部品本体の耐食性、耐摩耗性、意匠性を向上できる。
【0010】
発明3に係る屋外用部品は、発明の屋外用部品において、IP層は、Tiを含有する膜層である。この場合、たとえばTiC、TiO、TiN等のTiを含有するIP層であるので、高強度かつ光沢のある外観を呈することができる。
【0011】
発明4に係る屋外用部品は、発明1の屋外用部品において、蒸着膜層は、DLC成膜処理により形成されたDLC層である。この場合、DLC(Diamond Like Carbon、ダイヤモンドライクカーボン)層は、高硬度かつ耐摩耗性のある特性を有しているので、リールを落下させても表面が傷付きにくくなり、このため部品本体の耐食性を高く維持できる。また、DLC層は、表面が滑り性の良い平滑な特性を有しているので、高級感のある外観を呈することができ、このため外観の意匠性を向上できる。
【0012】
発明5に係る屋外用部品は、発明4の屋外用部品において、DLC層は、DLC成膜処理であるプラズマイオン成膜処理により形成されている。この場合、PBID(Plasma−Based Ion Deposition、プラズマイオン成膜法)によって、Sn−Ni合金めっき層の表層側にDLC層が形成される。PBID法は、PBII法と同時に行われる成膜処理であって、Cイオンを照射することよってSn−Ni合金めっき層の表層側にDLC層が形成される。ここでは、プラズマイオン成膜処理によって、Sn−Ni合金めっき層との密着性が高いDLC層を形成できる。
【0013】
発明6に係る屋外用部品は、発明1から5のいずれかの屋外用部品において、部品本体は、合成樹脂製部材である。この場合、ABSやSPS等の合成樹脂製部材により、比較的安価な構成で屋外用部品を提供できる。
【0014】
発明7に係る屋外用部品は、発明1から5のいずれかの屋外用部品において、部品本体は、金属製部材である。この場合、金属製部材により、めっき方法の自由度が高くなる。
【0015】
発明8に係る屋外用部品は、発明7の屋外用部品において、部品本体と湿式めっき層との間に酸電解法により形成されたエッチング層をさらに備えている。この場合、酸性の電解溶液によって部品本体の表面を溶かすエッチング等の酸電解法により、部品本体と湿式めっき層との密着性を向上できる。
【0016】
発明9に係る屋外用部品は、発明7のいずれかの屋外用部品において、部品本体と湿式めっき層との間に陽極酸化法により形成された陽極酸化膜層をさらに備えている。この場合、部品本体を陽極にして硫酸等の電解質溶液中で電解すると、陽極に発生する酸素のために酸化膜が形成される陽極酸化法により、部品本体の耐食性を高く維持できる。
【0017】
発明10に係る屋外用部品は、発明9の屋外用部品において、部品本体は、アルミニウム合金製部材である。陽極酸化膜層は、アルマイト処理により形成されたアルマイト層である。この場合、アルミニウム合金の陽極酸化法であるアルマイト処理により、アルミニウム合金製の部品本体の耐食性を高く維持できる。
【0018】
発明11に係る屋外用部品は、発明1から10のいずれかの屋外用部品において、湿式めっき層は、ニッケルからなるニッケルめっき層である。金属めっき層は、Sn−Ni合金からなるSn−Ni合金めっき層である。この場合、ニッケルめっき層とSn−Ni合金めっき層とは、いずれもニッケルを含む層であるので、電位差が近い湿式めっき層及び金属めっき層を容易に形成できる。
【0019】
発明12に係る屋外用部品は、発明11の屋外用部品において、ニッケルめっき層は、部品本体の表層側に形成された無電解Niめっき層と、無電解Niめっき層の表層側に形成された第1半光沢Niめっき層と、第1半光沢Niめっき層の表層側に形成されたCuめっき層と、Cuめっき層の表層側に形成された第2半光沢Niめっき層と、第2半光沢Niめっき層の表層側に形成された光沢Niめっき層とを有している。この場合、無電解Niめっき層と、第1半光沢Niめっき層と、Cuめっき層と、第2半光沢Niめっき層と、光沢Niめっき層との複数のめっき層を形成することによって、部品本体の耐食性をさらに向上できる。
【0020】
発明13に係る屋外用部品は、発明12の屋外用部品において、ニッケルめっき層は、第2半光沢Niめっき層と光沢Niめっき層との間に形成されたトリNiめっき層をさらに有している。この場合、硫黄成分を多く含むトリNiめっき層を形成することによって、光沢Niめっき層の腐食が進行するのを抑えることができる。
【0021】
発明14に係る屋外用部品は、発明1から13のいずれかの屋外用部品において、部品本体は、釣りに用いられる釣り用部品に使用される。この場合、屋外の腐食雰囲気で使用されることが多い釣り用部品、たとえば釣り用リールのリール本体、スプール、スプールリング、ラインローラ、マスターギア等において、釣り用部品の腐食が連鎖的に進行するのを抑えることができる。
【0022】
発明15に係る屋外用部品は、発明1から13のいずれかの屋外用部品において、部品本体は、自転車に用いられる自転車用部品に使用される。この場合、屋外の腐食雰囲気で使用されることが多い自転車用部品、たとえば自転車のクランク、リアディレーラー、ブレーキ等において、自転車用部品の腐食が連鎖的に進行するのを抑えることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、屋外用部品において、部品本体上に、湿式めっき層と、湿式めっき層と電位差が近い金属めっき層と、蒸着膜層とを順に形成することにより、部品本体の腐食が連鎖的に進行するのを抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の一実施形態を採用した両軸受リールは、図1及び図2に示すように、ベイトキャスト用のロープロフィール型のリールである。この両軸受リールは、釣竿RDに装着されるアルミニウム合金製のリール本体1と、リール本体1の側方に配置されたスプール回転用のハンドル組立体2と、リール本体1の内部に回転自在かつ着脱自在に装着された糸巻き用のスプール4とを備えている。ハンドル組立体2のリール本体1側には、ドラグ調整用のスタードラグ3が設けられている。
【0025】
リール本体1は、図1及び図2に示すように、フレーム5と、フレーム5の両側方に装着された側カバー6と、フレーム5の前方を覆う前カバー7と、上部を覆うサムレスト8と、フレーム5の下方に連結され釣竿RDのリールシートRS(図2参照)に装着される竿取付脚9(図2参照)とを有している。リール本体1を構成する各部材、スプール4及びリールシートRSは、アルミニウム合金製であり、各部材の表面には各種の表面処理が施されている。
【0026】
次に、リール本体1及びスプール4の各部材の表面構造について説明する。
【0027】
図3及び図4に示すように、各部材のアルミニウム合金製の部品本体10表面には、酸電解処理(図4のS1)により形成されたエッチング層11(図3参照)と、無電解Niめっき処理(図4のS2)により形成された無電解Niめっき層12(図3参照)と、第1半光沢Niめっき処理(図4のS3)により形成された第1半光沢Niめっき層13(図3参照)と、Cuめっき処理(図4のS4)により形成されたCuめっき層14(図3参照)と、第2半光沢Niめっき処理(図4のS5)により形成された第2半光沢Niめっき層15(図3参照)と、トリNiめっき処理(図4のS6)により形成されたトリNiめっき層16(図3参照)と、光沢Niめっき処理(図4のS7)により形成された光沢Niめっき層17(図3参照)と、Sn−Ni合金めっき処理(図4のS8)により形成されたSn−Ni合金めっき層18(図3参照)と、イオンプレーティング成膜処理(図4のS9)により形成されたIP層19(図3参照)とが順に形成されている。
【0028】
エッチング層11は、図3に示すように、酸性の電解溶液によってアルミニウム合金製の部品本体10の表面を溶かすエッチング等の酸電解処理により形成される酸化膜である。なお、エッチング層11は、表面に形成された凹凸のアンカー効果によって、表層側の無電解Niめっき層12との密着性を高めている。
【0029】
無電解Niめっき層12は、図3に示すように、無電解Niめっき層12の表層側に電解めっきを行いやすくするために設けられた膜層であり、たとえばリンを含む導電性に優れた膜層である。
【0030】
第1半光沢Niめっき層13、Cuめっき層14及び第2半光沢Niめっき層15は、図3に示すように、無電解Niめっき層12の表層側にダブルめっきである光沢Niめっき層17の下地層として形成されている。第1半光沢Niめっき層13、Cuめっき層14及び第2半光沢Niめっき層15は、電解めっきまたは無電解めっきにより、均一かつ高硬度に形成されている。
【0031】
トリNiめっき層16は、図3に示すように、第2半光沢Niめっき層15の表層側に第2半光沢Niめっき層15と光沢Niめっき層17との間に形成されている。トリNiめっき層16は、光沢Niめっき層17より硫黄成分を多く含んでおり、光沢Niめっき層17の腐食が進行するのを抑えることができる。
【0032】
光沢Niめっき層17は、図3に示すように、トリNiめっき層16の表層側に形成されており、トリNiめっき層16より少ない硫黄成分を含んだ黄みがかかった白色を呈している。光沢Niめっき層17は、第1半光沢Niめっき層13、Cuめっき層14及び第2半光沢Niめっき層15とともに形成されることでダブルめっきとしての耐食性を向上できる。
【0033】
Sn−Ni合金めっき層18は、図3に示すように、光沢Niめっき層17の表層側に形成されている。Sn−Ni合金めっき層18は、光沢Niめっき層17と同一のNi合金を含まれているので、光沢Niめっき層17との電位差が小さくなっている。また、Sn−Ni合金めっき層18は、接合性の良好なSnが含まれているので、Ni合金を形成しやすくなっている。
【0034】
IP層19は、図3に示すように、Sn−Ni合金めっき層18の表層側にイオンプレーティング成膜処理によって形成されている。イオンプレーティング成膜処理は、真空容器の中で金属を蒸発させて、蒸発された粒子をイオン化し、他の中性粒子とともに素材表面に金属薄膜を形成する方法であって、ここではTiC、TiO、TiN等のTiを含有する金属薄膜である。
【0035】
このようなリール本体1及びスプール4を構成するアルミニウム合金製の部品本体10の表面構造において、光沢Niめっき層17の表層側に電位差が小さいSn−Ni合金めっき層18が形成されているので、IP層19及びSn−Ni合金めっき層18が傷付いて光沢Niめっき層17が外観に露出しても、IP層19及びSn−Ni合金めっき層18が傷付いた部分の光沢Niめっき層17のみが腐食し、IP層19及びSn−Ni合金めっき層18が傷付いていない部分の内部に形成された光沢Niめっき層17まで腐食が進行しにくくなる。したがって、IP層19及びSn−Ni合金めっき層18が崩落しにくくなるので、部品本体10の腐食が連鎖的に進行するのを抑えることができる。
【0036】
〔他の実施形態〕
(a) 本発明に係る屋外用部品は、両軸受リールのリール本体やスプールを例にあげて説明したが、これらに限定されるものではなく、他の全てのアルミニウム合金製の釣り用品に本発明を適用できる。たとえば、図5に示すように、スピニングリールのリール本体102、スプールリング105、ラインローラ106等の部材や、図示しないがスピニングリールの内部に設けられたマスターギア等の部材にも本発明を適用できる。この場合には、釣り糸が接触して傷付きやすいスプールリング105及びラインローラ106の耐摩耗性を高く維持したり、特に、大きな力が作用するマスターギアの強度を高く維持することができる。また、釣り用リールだけでなく、自転車に用いられる自転車用部品に本発明を適用できる。たとえば、図示しないが、自転車のクランク、リアディレーラー、ブレーキ等の部材にも本発明を適用できる。この場合には、傷付きやすい自転車のクランク、リアディレーラー、ブレーキ等の部材の耐摩耗性を高く維持することができる。
【0037】
(b) 前記実施形態では、蒸着膜層としてIP層19が形成されていたが、図6及び図7に示すように、IP層19に代えて、プラズマイオン成膜処理(図7のS19)によるDLC層20(図6参照)を形成してもよい。
【0038】
DLC層20は、図6に示すように、PBID(Plasma−Based Ion Deposition、プラズマイオン成膜法)によって、Sn−Ni合金めっき層18の表層側に形成されたDLC(Diamond Like Carbon、ダイヤモンドライクカーボン)層である。PBID法は、PBII(Plasma−Based Ion Implantation、プラズマイオン注入法)と同時に行われる成膜処理であって、プラズマイオン注入処理でCイオンを高出力で注入した後Cイオンを低出力で照射することよってSn−Ni合金めっき層18の表層側にDLC層20が形成される。
【0039】
(c) 前記実施形態では、部品本体10の表層側に酸電解処理によるエッチング層11が形成されていたが、図8及び図9に示すように、エッチング層11に代えて、アルマイト処理(図9のS21)によアルマイト21(図8参照)を形成してもよい。
【0040】
アルマイト21は、図8に示すように、アルミニウム合金の陽極酸化処理により形成される酸化膜であって、アルミニウム合金製の部品本体10を陽極にして硫酸等の電解質溶液中で電解すると、陽極に発生する酸素のために酸化膜が形成される。アルマイト21は、脱脂、エッチング、中和等の前処理と、電解処理等の陽極酸化処理と、封孔処理等の後処理との3つの工程により形成される。なお、アルマイト21等の陽極酸化皮膜層は、表面の多孔質性によって、表層側のめっき層の密着性を高める効果を有している。
【0041】
(d) 前記実施形態では、部品本体10は、アルミニウム合金により形成されていたが、これに限定されるものではなく、他の金属製であってもよい。また、図10及び図11に示すように、金属に代えて、ABSやSPS等の合成樹脂によって部品本体10を形成してもよい。なお、図10では最表層としてIP層19形成され、図11では最表層としてDLC層20形成されている。
【0042】
(e) 図12及び図13に示すように、光沢Niめっき層17に代えて、サーチライトめっき層22やパールめっき層23を形成してもよい。また、図14及び図15に示すように、トリNiめっき層16を形成しない構成にしてもよいし、図15に示すように、さらにCuめっき層14を形成しない構成にしてもよい。なお、この場合には、Cuめっき層14が形成されていないので、第1半光沢Niめっき層13及び第2半光沢Niめっき層15に代えて、1層からなる半光沢Niめっき層24が形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態を採用した両軸受リールの斜視図。
【図2】前記両軸受リールの平面図。
【図3】各部材の断面拡大模式図。
【図4】前記各部材の表面処理工程を示す図。
【図5】本発明の他の実施形態を採用したスピニングリールの側面図。
【図6】他の実施形態の図3に相当する図。
【図7】他の実施形態の図4に相当する図。
【図8】他の実施形態の図3に相当する図。
【図9】他の実施形態の図4に相当する図。
【図10】他の実施形態の図3に相当する図。
【図11】他の実施形態の図3に相当する図。
【図12】他の実施形態の図3に相当する図。
【図13】他の実施形態の図3に相当する図。
【図14】他の実施形態の図3に相当する図。
【図15】他の実施形態の図3に相当する図。
【符号の説明】
【0044】
1 リール本体
4 スプール
10 部品本体
11 エッチング層
12 無電解Niめっき層
13 第1半光沢Niめっき層
14 Cuめっき層
15 第2半光沢Niめっき層
16 トリNiめっき層
17 光沢Niめっき層
18 Sn−Ni合金めっき層
19 IP層
20 DLC層
21 アルマイト
22 サーチライトめっき層
23 パールめっき層
24 半光沢Niめっき層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外で使用される屋外用部品であって、
部品本体と、
前記部品本体の表層側に湿式めっき法により形成された湿式めっき層と、
前記湿式めっき層の表層側に形成され、前記湿式めっき層と電位差が近い金属めっき層と、
前記金属めっき層の表層側に蒸着成膜法により形成された蒸着膜層と、
を備えた屋外用部品。
【請求項2】
前記蒸着膜層は、イオンプレーティング成膜処理により形成されたIP層である、請求項1に記載の屋外用部品。
【請求項3】
前記IP層は、Tiを含有する膜層である、請求項2に記載の屋外用部品。
【請求項4】
前記蒸着膜層は、DLC成膜処理により形成されたDLC層である、請求項1に記載の屋外用部品。
【請求項5】
前記DLC層は、前記DLC成膜処理であるプラズマイオン成膜処理により形成されている、請求項4に記載の屋外用部品。
【請求項6】
前記部品本体は、合成樹脂製部材である、請求項1から5のいずれか1項に記載の屋外用部品。
【請求項7】
前記部品本体は、金属製部材である、請求項1から5のいずれか1項に記載の屋外用部品。
【請求項8】
前記部品本体と前記湿式めっき層との間に酸電解法により形成されたエッチング層をさらに備えている、請求項7に記載の屋外用部品。
【請求項9】
前記部品本体と前記湿式めっき層との間に陽極酸化法により形成された陽極酸化膜層をさらに備えている、請求項7に記載の屋外用部品。
【請求項10】
前記部品本体は、アルミニウム合金製部材であり、
前記陽極酸化膜層は、アルマイト処理により形成されたアルマイト層である、請求項9に記載の屋外用部品。
【請求項11】
前記湿式めっき層は、ニッケルからなるニッケルめっき層であり、
前記金属めっき層は、Sn−Ni合金からなるSn−Ni合金めっき層である、請求項1から10のいずれか1項に記載の屋外用部品。
【請求項12】
前記ニッケルめっき層は、前記部品本体の表層側に形成された無電解Niめっき層と、前記無電解Niめっき層の表層側に形成された第1半光沢Niめっき層と、前記第1半光沢Niめっき層の表層側に形成されたCuめっき層と、前記Cuめっき層の表層側に形成された第2半光沢Niめっき層と、前記第2半光沢Niめっき層の表層側に形成された光沢Niめっき層とを有している、請求項11に記載の屋外用部品。
【請求項13】
前記ニッケルめっき層は、前記第2半光沢Niめっき層と前記光沢Niめっき層との間に形成されたトリNiめっき層をさらに有している、請求項12に記載の屋外用部品。
【請求項14】
前記部品本体は、釣りに用いられる釣り用部品に使用される、請求項1から13のいずれか1項に記載の屋外用部品。
【請求項15】
前記部品本体は、自転車に用いられる自転車用部品に使用される、請求項1から13のいずれか1項に記載の屋外用部品。
【請求項1】
屋外で使用される屋外用部品であって、
部品本体と、
前記部品本体の表層側に湿式めっき法により形成された湿式めっき層と、
前記湿式めっき層の表層側に形成され、前記湿式めっき層と電位差が近い金属めっき層と、
前記金属めっき層の表層側に蒸着成膜法により形成された蒸着膜層と、
を備えた屋外用部品。
【請求項2】
前記蒸着膜層は、イオンプレーティング成膜処理により形成されたIP層である、請求項1に記載の屋外用部品。
【請求項3】
前記IP層は、Tiを含有する膜層である、請求項2に記載の屋外用部品。
【請求項4】
前記蒸着膜層は、DLC成膜処理により形成されたDLC層である、請求項1に記載の屋外用部品。
【請求項5】
前記DLC層は、前記DLC成膜処理であるプラズマイオン成膜処理により形成されている、請求項4に記載の屋外用部品。
【請求項6】
前記部品本体は、合成樹脂製部材である、請求項1から5のいずれか1項に記載の屋外用部品。
【請求項7】
前記部品本体は、金属製部材である、請求項1から5のいずれか1項に記載の屋外用部品。
【請求項8】
前記部品本体と前記湿式めっき層との間に酸電解法により形成されたエッチング層をさらに備えている、請求項7に記載の屋外用部品。
【請求項9】
前記部品本体と前記湿式めっき層との間に陽極酸化法により形成された陽極酸化膜層をさらに備えている、請求項7に記載の屋外用部品。
【請求項10】
前記部品本体は、アルミニウム合金製部材であり、
前記陽極酸化膜層は、アルマイト処理により形成されたアルマイト層である、請求項9に記載の屋外用部品。
【請求項11】
前記湿式めっき層は、ニッケルからなるニッケルめっき層であり、
前記金属めっき層は、Sn−Ni合金からなるSn−Ni合金めっき層である、請求項1から10のいずれか1項に記載の屋外用部品。
【請求項12】
前記ニッケルめっき層は、前記部品本体の表層側に形成された無電解Niめっき層と、前記無電解Niめっき層の表層側に形成された第1半光沢Niめっき層と、前記第1半光沢Niめっき層の表層側に形成されたCuめっき層と、前記Cuめっき層の表層側に形成された第2半光沢Niめっき層と、前記第2半光沢Niめっき層の表層側に形成された光沢Niめっき層とを有している、請求項11に記載の屋外用部品。
【請求項13】
前記ニッケルめっき層は、前記第2半光沢Niめっき層と前記光沢Niめっき層との間に形成されたトリNiめっき層をさらに有している、請求項12に記載の屋外用部品。
【請求項14】
前記部品本体は、釣りに用いられる釣り用部品に使用される、請求項1から13のいずれか1項に記載の屋外用部品。
【請求項15】
前記部品本体は、自転車に用いられる自転車用部品に使用される、請求項1から13のいずれか1項に記載の屋外用部品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−270276(P2007−270276A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−97732(P2006−97732)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】
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