説明

層状触媒複合体およびその使用方法

自動車排ガス制御用層状触媒複合体を開示する。この複合体は、基質、例えばコーディエライトなど、前記基質の上に位置していて貴金属成分、例えば白金などおよび約0.3から約1.5g/立方インチの量で存在する少なくとも1種のNO貯蔵成分を含有する少なくとも1層の下部層、および前記下部層の上に位置していて貴金属成分、例えば白金などおよび約0.0から約0.3g/立方インチ未満の量で存在する少なくとも1種のNO貯蔵成分を含有する少なくとも1層の上部層を含んで成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車排ガスの制御で用いるに有用な層状触媒複合体に関する。本層状触媒複合体は、特に、希薄条件期間と化学量論的もしくは濃厚条件期間が交互に存在する条件下で作動する自動車エンジンの排気多岐管から放出される排ガス流れの中に存在する炭化水素、一酸化炭素および窒素酸化物の濃度を減少させる目的で用いるに有用である。その上、本発明の層状触媒複合体は、卓越した熱安定性を示しかつ触媒上に付着した硫黄化合物を穏やかな条件下で除去する能力も有する。
【背景技術】
【0002】
層状触媒複合体は従来技術で公知である。そのような触媒は数多くの分野で利用されており、そのような分野には、内燃機関、例えば自動車、トラックおよびガソリン燃料が用いられる他のエンジンから出る排ガス流れの処理が含まれる。
【0003】
特許文献1は触媒構造物の製造に関する。その触媒組成物は白金族金属、卑金属、希土類金属および耐火物、例えばアルミナである支持体などを含有し得る。その組成物を比較的不活性な担体、例えばハニカムなどに付着させてもよい。
【0004】
基質の上で用いるに適したアルミナ支持型(alumina−supported)触媒が特許文献2に開示されている。その触媒は高温で安定である。安定化用の材料はバリウム、ケイ素、希土類金属、アルカリおよびアルカリ土類金属、ホウ素、トリウム、ハフニウムおよびジルコニウムから誘導された化合物を包含する数種の化合物の中の1種であってもよい。そのような安定化用材料の中で酸化バリウム、二酸化ケイ素および希土類酸化物(ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジムなどを包含)が好適であることが示されている。それらをある種の焼成アルミナ膜と接触させると前記焼成アルミナ膜が高い表面積をより高い温度で保持するようになることが開示されている。
【0005】
従来技術の典型的な層状触媒複合体は、高い表面積を有する耐火性金属酸化物である支持体、例えば高い表面積を有するアルミナ被膜の上に位置する1種以上の白金族金属(例えば白金、パラジウム、ロジウム、レニウムおよびイリジウム)を含有しかつまた1種以上のNO捕捉用成分、例えばバリウムまたはカリウムなども含有する。そのような支持体を適切な基質、例えば耐火性セラミックもしくは金属製ハニカム構造物を含んで成るモノリス型担体、または耐火性粒子、例えば適切な耐火性材料の球または短い押出し加工片などの上に担持させている。そのような従来技術の例には特許文献3および4が含まれる。
【0006】
特許文献1は触媒構造物の製造に関する。その触媒組成物は白金族金属、卑金属、希土類金属および耐火物、例えばアルミナである支持体などを含有し得る。その組成物を比較的不活性な担体、例えばハニカムなどに付着させてもよい。
【0007】
また、SO耐性NO捕捉用触媒も公知である。例えば、白金成分と支持体とNO吸着用成分とスピネル材料(アニオン性粘土材料に焼成を受けさせることで調製)を含んで成るSO耐性NO捕捉用触媒複合体を開示している先行する特許文献5を参照のこと。
【0008】
接触コンバーターが備わっている自動車のテールパイプから出る排気に入っているHC、COおよびNOならびにHSも制御する能力を有する触媒が特許文献6に開示されている。ニッケルおよび/または鉄の酸化物を硫化水素除去型の化合物として用いることが開示されている。
【特許文献1】米国特許第4,134,860号
【特許文献2】米国特許第4,438,219号
【特許文献3】EP 1 080 783 A2
【特許文献4】EP 1 066 874 A1
【特許文献5】米国特許第6,419,890 B1号
【特許文献6】米国特許第4,780,447号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、窒素酸化物から窒素への還元に触媒作用を高い効率で及ぼしかつ熱耐久性がありかつ希薄条件期間と化学量論的もしくは濃厚条件期間が交互に存在する条件下で作動する自動車エンジンに関して触媒に付着した硫黄化合物を穏やかな条件下で除去する能力を有する触媒を提供することにある。
【0010】
NO捕捉用触媒の必須条件は熱安定性である。熱耐久性は、触媒複合体が通常のエンジン作動中に高温環境にさらされることが理由なばかりでなくまたNO捕捉剤が燃料に存在する硫黄によって被毒することから脱硫酸化操作を繰り返すことでNO捕捉用成分を刷新する必要があることが理由で必要である。
【0011】
そのようなNO捕捉剤に脱硫酸化を受けさせるには、一般に、濃厚または濃厚/希薄循環環境を高温、例えば>600℃で受けさせる必要がある。その触媒に脱硫酸化操作を受けさせると結果としてそれが熱で失活する可能性が非常に大きくなる。従って、本発明の目的は、高温循環操作が繰り返されても熱安定性を示しかつ更に脱硫酸化操作によって硫黄を取り除くことも可能なNO貯蔵成分(storage component)を含有する層状触媒複合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、基質(本明細書ではまた担体とも呼ぶ)の上に層を少なくとも2層含んで成る層状触媒複合体に関する。そのような基質の選択および各層の組成(任意の成分を包含)を以下に詳細に挙げる。下部層(本明細書ではまた1番目の層とも呼ぶ)を前記担体に上に位置させる。上部層(本明細書ではまた2番目の層とも呼ぶ)を前記下部層の上に位置させる。
【0013】
また、追加的下部層および上部層も本層状触媒複合体全体の組成が炭化水素および一酸化炭素から二酸化炭素への酸化に関して貴金属成分1種または2種以上が示す能力が窒素酸化物から窒素への還元に必要なNO貯蔵成分1種または2種以上の存在によって悪影響を受けないような組成であることを条件として存在させてもよい。
発明の詳細な説明
自動車排ガスの制御で用いるに有用な本発明の層状触媒複合体は、
(a)基質
(b)下部表面(この下部表面は前記基質に隣接して位置しかつそれと接触している)と上部表面を有する少なくとも1層の下部層{この下部層は支持体[これの上に(i)少なくとも1種の貴金属および(ii)約0.3から約1.5g/立方インチの量で存在する少なくとも1種のNO貯蔵成分が位置する]を含んで成る}、および
(c)下部表面(この下部表面は前記下部層の上部表面に隣接して位置しかつそれと接触している)と上部表面を有する少なくとも1層の上部層{この上部層は支持体[これの上に(i)少なくとも1種の貴金属および(ii)0.0から約0.3g/立方インチ未満の量で存在する少なくとも1種のNO貯蔵成分が位置する]を含んで成る}、
を含んで成る。
【0014】
前記基質は、触媒の調製で典型的に用いられる材料のいずれであってもよく、好適には、セラミックもしくは金属製ハニカム構造物を含んで成る。適切な如何なる基質も使用可能であり、例えば通路が中を通る流体流れに開放されるように担体の入り口もしくは出口表面から中を通って伸びる平行な微細気体流路を有する種類のモノリス型担体などを用いてもよい。その通路(これらは流体入り口から流体出口に向かって本質的に真っすぐな路である)は壁で限定されていて、前記壁の上を触媒材料がウォッシュコート(washcoat)として覆っており、その結果として、その通路の中を通って流れる気体は前記触媒材料と接触する。そのようなモノリス型担体の流路は薄壁通路であり、それの断面形状および大きさは適切な如何なる形状および大きさであってもよく、例えば台形、長方形、正方形、正弦形、六角形、楕円形、円形などであってもよい。そのような構造物は気体流入開口部(即ちセル)を断面積1平方インチ当たり約60から約300個またはそれ以上の数で含有し得る。
【0015】
セラミック製担体は適切な如何なる耐火性材料で作られていてもよく、例えばコージライト、コーデイエライト−αアルミナ、窒化ケイ素、ジルコンムライト、スポジューメン、アルミナ−シリカマグネシア、ケイ酸ジルコン、シリマナイト、ケイ酸マグネシウム、ジルコン、ペタライト、α−アルミナおよびアルミノシリケートなどで作られていてもよい。
【0016】
本発明の層状触媒複合体で用いるに有用な基質は、また、現実に金属製であってもよく、1種以上の金属または金属合金で構成されていてもよい。そのような金属製基質はいろいろな形状で使用可能であり、例えば波形シートまたはモノリス形態などで使用可能である。好適な金属製基質には、耐熱性金属および金属合金、例えばチタンおよびステンレス鋼、ならびに鉄が実質的または主要成分である他の合金も含まれる。そのような合金はニッケル、クロムおよび/またはアルミニウムの中の1種以上を含有していることができ、このような金属の総量が有利に当該合金の少なくとも15重量%を含んでいてもよく、例えばクロムが10−25重量%でアルミニウムが3−8重量%でニッケルが20重量%以下であってもよい。そのような合金にはまた他の1種以上の金属、例えばマンガン、銅、バナジウム、チタンなどが少量または痕跡量で入っていても良い。そのような金属製担体の表面に酸化を高温、例えば1000℃以上の温度で受けさせて前記担体の表面に酸化物層を生じさせることで当該合金が示す耐食性を向上させることも可能である。そのように酸化を高温で誘発させると耐火性金属酸化物である支持体および触媒助長用(catalytically promoting)金属成分が当該担体に対して示す接着力が向上し得る。
【0017】
前記下部層用の支持体ばかりでなく前記上部層用の支持体は、高い表面積を有する耐火性金属酸化物、例えばアルミナ、チタニア、ジルコニア;チタニア、ジルコニアおよびセリアの中の1種以上とアルミナの混合物;アルミナの上を覆っているセリア;またはアルミナの上を覆っているチタニアを含んで成る。そのような耐火性金属酸化物は混合酸化物、例えばシリカ−アルミナ、アルミノシリケート(これは非晶質または結晶性であり得る)、アルミナ−ジルコニア、アルミナ−クロミア、アルミナ−セリアなどで構成されているか或はそれらを含有していてもよい。好適な耐火性金属酸化物はガンマアルミナ、アルミナの上を覆っているセリアおよびアルミナの上を覆っているチタニアである。
【0018】
そのような耐火性金属酸化物に持たせる比表面積は典型的に約60から約300m/である。下部層および上部層両方用の支持体を約0.5から約3.0g/立方インチの量で存在させる。前記下部層用として選択する支持体は前記上部層用として選択するそれと同じである必要はないが、便利にはそれと同じであってもよいことを注目すべきである。その上、前記下部層の中の支持体量も、前記下部層の中の支持体量および前記上部層の中の支持体量が前記範囲内である限り、前記上部層の中の支持体量と同じである必要はない。
【0019】
前記下部層および上部層両方用の支持体の上に1種以上の貴金属成分、例えば白金、パラジウム、ロジウムおよびこれらの混合物などを存在させるが、好適には、そのような貴金属成分は白金を含んで成る。前記下部層および上部層の両方の貴金属成分装填量は約10から約120g/立方フィートの範囲であってもよい。ここでも再び、前記下部層用として選択する貴金属は前記上部層用として選択するそれと同じである必要はないが、便利にはそれと同じであってもよい。その上、前記下部層の中の貴金属成分量も、前記下部層の中の貴金属成分量および前記上部層の中の貴金属成分量が前記範囲内である限り、前記上部層の中の貴金属成分量と同じである必要はない。
【0020】
望ましくは、前記下部層ならびに前記上部層の両方に更に遷移金属成分または希土類金属成分または1種以上の金属成分および/または1種以上の希土類金属成分の混合物も含有させる。適切な遷移金属にはジルコニウム、セリウム、マンガン、鉄およびチタンが含まれる。適切な希土類金属にはランタン、プラセオジム、イットリウムおよびジルコニウムが含まれる。そのような遷移金属成分をいずれかの層で用いる場合、それを典型的には約0.01から約0.5g/立方インチの量で存在させる。
【0021】
本発明の目的で、前記下部層にまた少なくとも1種のNO貯蔵成分、即ちNO捕捉剤も約0.3から約1.5g/立方インチの量で含有させるべきである。適切なNO貯蔵成分には、アルカリもしくはアルカリ土類金属の塩基性含酸素化合物が含まれ、前記アルカリ金属はリチウム、ナトリウム、カリウムまたはセシウムであってもよく、そして前記アルカリ土類金属はマグネシウム、カルシウム、ストロンチウムまたはバリウムであってもよい。好適なアルカリ金属にはカリウムが含まれる一方、好適なアルカリ土類金属にはバリウムが含まれる。
【0022】
前記支持体、貴金属成分、NO貯蔵成分および任意の遷移金属/希土類金属成分そしてそれらの量は前記下部層と上部層で同じまたは異なっていてもよいが、前記上部層の中に存在させるNO貯蔵成分の量が0.0から約0.3g/立方インチ未満であることが必須である。窒素酸化物から窒素への還元を起こさせようとする時に前記上部層の中に存在させるNO貯蔵成分の量を約0.3g/立方インチ以上の量にする必要はないばかりでなくそのような過剰量にすると当該貴金属成分が炭化水素および一酸化炭素から二酸化炭素への酸化に触媒作用を及ぼす能力が顕著に有害な影響を受けることを予想外に見いだした。
【0023】
本発明の層状触媒複合体の調製は従来技術で良く知られている方法を用いて容易に実施可能である。代表的な方法を以下に挙げる。
【0024】
本触媒複合体の調製はモノリス型担体の上に位置する層として容易に実施可能である。下部層では、高い表面積を有する耐火性金属酸化物、例えばガンマアルミナなどの微細粒子を適切な媒体、例えば水などの中に入れてスラリー状にする。次に、当該担体の上に当該金属酸化物が所望の装填量、例えば約0.5から約3.0g/立方インチの量で付着するように当該担体を前記スラリーの中に1回以上浸漬してもよいか或は当該担体を前記スラリーで被覆してもよい。前記スラリーの中に当該貴金属、遷移金属の酸化物、安定剤、助触媒およびNO貯蔵成分などの如き成分を水溶性もしくは水分散性化合物または錯体の混合物として入れておいてもよい。その後、そのようにして被覆した担体を加熱、例えば400−600℃に1−3時間加熱することなどで、それに焼成を受けさせる。
【0025】
前記耐火性金属酸化物である支持体、例えば活性アルミナなどの上に前記貴金属成分、例えば白金成分などを分散させようとする時、典型的には、そのような成分を化合物または錯体の形態で用いることでそれを達成する。本発明の目的で、用語「白金成分」は、焼成または使用時に分解を起こすか或は他の様式で触媒活性形態、通常は金属または金属酸化物に転化する化合物、錯体などのいずれかを意味する。そのような金属成分を耐火性金属酸化物である支持体粒子に含浸またはそれの上に付着させる目的で用いる液状媒体が当該触媒組成物の中に存在し得る金属またはその化合物またはその錯体または他の成分と不利な反応を起こさずかつ加熱および/または真空をかけた時に蒸発または分解を起こして当該金属成分から除去され得る限り、当該金属成分の水溶性化合物もしくは水分散性化合物または錯体が使用可能である。ある場合には、本触媒を使用に供してそれが運転中に遭遇する高温にさらされるまではそのような液体の除去が完全には起こらない可能性もある。一般的には、経済および環境面の両方の観点から、当該白金族金属の可溶化合物もしくは錯体が入っている水溶液の方が好適である。適切な化合物は、例えばクロロ白金酸、アミンで可溶化した水酸化白金、硝酸パラジウムまたは塩化パラジウム、塩化ロジウム、硝酸ロジウム、ヘキサミン塩化ロジウムなどである。前記化合物は本複合体の焼成段階または少なくとも初期使用段階中に当該金属またはその化合物の触媒活性形態に転化する。
【0026】
本発明の層状触媒複合体に含める下部層を生じさせる好適な方法は、白金化合物の溶液と少なくとも1種の微細な高表面積耐火性酸化物である支持体、例えばガンマアルミナ(これは前記溶液の実質的に全部を吸収するに充分なほど乾燥している)の混合物を調製してスラリーを生じさせる方法である。前記スラリーを好適には酸性にする、即ちpHを約2から7未満にする。無機もしくは有機酸、例えば塩酸または硝酸、好適には酢酸などを前記スラリーに少量添加することで、前記スラリーのpHを下げてもよい。その後、前記スラリーにNO貯蔵成分および任意の遷移金属成分、安定剤および/または助触媒を添加してもよい。
【0027】
特に好適な態様では、その後、前記スラリーに粉砕を受けさせることで結果として固体の実質的に全部が平均直径で表して20ミクロン未満、即ち1−15ミクロンの粒径を示すようにする。この粉砕はボールミルまたは他の同様な装置を用いて達成可能であり、そして前記スラリーの固体含有量を例えば20−60重量%、好適には35−45重量%にしてもよい。
【0028】
その後、この上に記述した様式と同様な様式で上部層を調製した後、前記焼成を受けさせておいた複合体の下部層の上に付着させる。次に、被覆操作の全部が完了した後の複合体を再び加熱、例えば400−600℃で1−3時間加熱することで、それに焼成を受けさせる。
【0029】
以下の非制限実施例で本発明のいろいろな態様の説明を行う。
【実施例】
【0030】
触媒1
触媒1は、下記の様式で調製した2層触媒複合体である。基質はコーディエライトであった。下部層を75g/立方フィートの白金、0.42g/立方インチのBaO、0.05g/立方インチのZrOおよび1.83g/立方インチの支持体(TiO被覆Alで構成)で構成させた。前記支持体は、Alの表面に10重量%の量のTiOを化学蒸着させることで調製した支持体であった。この支持体材料に白金アミン塩を所望装填率が達成されるように染み込ませた。次に、この粉末に粉砕を水の存在下で粒子の90%が10ミクロメートル未満の粒径(即ちd90<10μ)を示すようになるように受けさせることで、結果として高固体量のスラリーを得た。この粉砕過程中にまた酢酸バリウムおよび酢酸ジルコニルも水に溶解させて粉砕過程中に添加した。
【0031】
次に、この下部層のスラリーをコーディエライト基質の上にウォッシュコートし(wash−coated)た後、その被覆された基質を110℃で約1時間乾燥させた。その後、その乾燥させた被覆基質を450℃で1時間加熱することで、それに焼成を受けさせた。
【0032】
次に、上部層のスラリーを前記下部層の表面の上にウォッシュコートし、110℃で約1時間乾燥させた後、450℃で1時間加熱することで、それに焼成を受けさせた。前記上部層用のスラリーの調製では、この上に下部層に関して記述した様式と同じ様式で調製を実施した。この上部層を75g/立方フィートの白金、10g/立方フィートのロジウム、0.08g/立方インチのBaO、0.03g/立方インチのZrOおよび1.20g/立方インチの支持体(TiO被覆Alで構成)で構成させた。前記白金成分およびロジウム成分を逐次的に前記支持体に染み込ませた。次に、この粉末に粉砕を水の存在下で粒子の90%が10ミクロメートル未満の粒径(即ちd90<10μ)を示すようになるように受けさせることで、結果として高固体量のスラリーを得た。この粉砕過程中にまた酢酸バリウムおよび酢酸ジルコニルも水に溶解させて粉砕過程中に添加した。
触媒2
触媒2は単層触媒複合体である、即ちコーディエライト基質に付着させた層は1層のみであった。この単一層の調製をこの上に触媒1用の層に関して記述した様式と同じ様式で実施した。この単一層を150g/立方フィートの白金、0.40g/立方インチのBaO、0.2g/立方インチのFeおよび2.4g/立方インチのAl支持体で構成させた。硝酸鉄、酢酸バリウムおよび白金アミン塩を用いてそれらを前記支持体に逐次的に染み込ませることで複合体の調製を行った。
触媒1および2に関する希薄老化条件
触媒1および2を空気/蒸気(10%蒸気)の流れに700℃の入り口温度で1時間当たりの気体空間速度を30,000時−1にして4時間接触させることで、これらの触媒に関する希薄老化(lean aging)を実施した。
触媒1および2に関する希薄/濃厚循環老化条件
希薄供給材料と濃厚供給材料(rich feeds)を交互に用いて触媒1および2に関する希薄/濃厚循環老化を700℃の入り口温度で1時間当たりの気体空間速度を30,000時−1にして4時間実施した。前記希薄供給材料を500ppmのNO、10%のHOおよび80%のNで構成させた。前記濃厚供給材料を4%のCO、0.5%のC(Cとして)、1%のO、10%のHOおよび84.5%のNで構成させた。
触媒1および2に関する触媒性能試験プロトコール
この上に記述した希薄供給材料および濃厚供給材料を用いて、希薄供給材料と濃厚供給材料を交互に供給、典型的には50秒間の希薄期間と5秒間の濃厚期間を交互に設けて供給することで、性能試験を実施した。これらの触媒に評価を200、250、300、350および450℃の温度で受けさせた。性能が所定温度で安定になった時点でデータを10分間に渡って集めた。当該触媒の下流のNO濃度をこの触媒の上流の濃度と比較した。NO濃度の相対的消失(パーセントで表す)を1/秒の割合でデータ収集期間全体に渡って計算した。次に、瞬時NO転化率の平均を取って触媒入り口温度に対してプロットすることで、図1に示すグラフを得た。
触媒3
支持体をアルミナの上を覆っている二酸化チタンではなくガンマ−アルミナにする以外は触媒1の様式と同様な様式で触媒3の調製を行った。
触媒4
触媒4の調製を下記の様式で実施した。基質はコーディエライトであった。前記コーディエライトの上に位置させる下部層を75g/立方フィートの白金、0.42g/立方インチのBaO、0.13g/立方インチのFe、1g/立方インチのAl支持体および0.05g/立方インチのZrOで構成させた。最初に、アルミナである支持体に硝酸鉄の水溶性を染み込ませた後、焼成を450℃で1時間受けさせた。次に、その結果として得た粉末に酢酸バリウムの水溶液を0.27g/立方インチのBaOが達成されるまで染み込ませた後、さらなる焼成を450℃で1時間受けさせた。次に、その結果として得た粉末に白金アミン塩を湿り開始(incipient wetness)が達成されるまで染み込ませた。次に、この粉末に粉砕を水の存在下で粒子の90%が10ミクロメートル未満の粒径(即ちd90<10μ)を示すようになるように受けさせることで、結果として高固体量のスラリーを得た。この粉砕過程中に酢酸ジルコニルを水に溶解させて粉砕過程中に添加した。次に、その結果として得たスラリーで前記コーディエライトを被覆した後、その被覆コーディエライトを酢酸バリウム溶液の中に後浸漬することで追加的0.15g/立方インチのBaOを達成した。次に、その結果として得たコーディエライトを110℃で約1時間乾燥させた。その後、その乾燥させた被覆基質を450℃で1時間加熱することで、それに焼成を受けさせた。
【0033】
触媒4用の上部層を65g/立方フィートの白金、10g/立方フィートのロジウム、0.08g/立方インチのBaO、0.03g/立方インチのZrOおよび0.20g/立方インチの支持体(Alで構成)で構成させた。この上部層の調製方法そしてこれで前記下部層を被覆する方法はこの上に触媒1に関して記述した方法と同じである。
触媒5
この層状触媒複合体は、上部層用の支持体をAlではなくAlの上を覆っているTiOで構成させる以外は触媒4と同じであった。
触媒6
この層状触媒複合体は、下部層および上部層の両方用の支持体をAlの上を覆っているTiOで構成させる以外は触媒5と同じであった。
触媒7
この触媒複合体の調製方法は触媒3の調製で用いた方法と同じであった。
【0034】
下部層を65g/立方フィートの白金、0.35g/立方インチのBaO、0.05g/立方インチのZrOおよび1.55g/立方インチの支持体(Alで構成)で構成させた。前記下部層の上を覆う上部層を75g/立方フィートの白金、10g/立方フィートのロジウム、0.12g/立方インチのBaO、0.05g/立方インチのZrOおよび1.5g/立方インチの支持体(Alで構成)で構成させた。
触媒1−7の評価
この上に希薄/濃厚循環老化条件下で記述したようにして、触媒1−7に希薄/濃厚循環熱処理を700℃で受けさせた。次に、この上に触媒1および2に関する触媒性能試験プロトコールの下で記述した方法を用いて各触媒が示す性能を測定した。触媒1−7を比較した時の結果を図2のグラフに示す。
触媒1の硫酸化および脱硫酸化
希薄供給材料および濃厚供給材料の両方にSOを10ppm入れて触媒1に関する硫酸化試験を300℃の一定反応温度で実施した。その他の成分の気体濃度および希薄/濃厚時期はこの上に表題が触媒1および2に関する希薄/濃厚循環老化条件および触媒1および2に関する触媒性能試験プロトコールの章で挙げたそれらと同じであった。
【0035】
データを1時間毎に集めそして各データ集積期間を10分間にした。図3のグラフに示したのは所定時間の時の平均NO転化率のみである。各硫酸化実験を6時間実施しそして各硫酸化実験が終了した時点で脱硫酸化過程を開始させた。この脱硫酸化過程は、気体を窒素流中で650℃に加熱することを伴っていた。目標の脱硫酸化温度(650℃)になった時点で特別な希薄/濃厚(5秒間の希薄/15秒間の濃厚)が交互に存在する流れを開始させた。触媒1を前記交互流れに5分間接触させることで脱硫酸化過程を完了させた。図3に、4回の連続的硫酸化および脱硫酸化実験を示す。図3に示したグラフから分かるであろうように、NO転化率は元々のレベルにまで回復した。
触媒8
基質をコーディエライトで構成させた。下部層を75g/立方フィートの白金、0.42g/立方インチのBaO、0.05g/立方インチのZrOおよび1.83g/立方インチの支持体(CeOで覆われているAlで構成)で構成させた。この支持体の調製では湿り開始技術を用いてAlの表面にCeOを10重量%付着させることで調製を行った。この支持体材料に白金アミン塩を所望装填率が達成されるまで染み込ませた。次に、この粉末に粉砕を水の存在下で粒子の90%が10ミクロメートル未満の粒径(即ちd90<10μ)を示すようになるように受けさせることで、結果として高固体量のスラリーを得た。この粉砕過程中にまた酢酸バリウムおよび酢酸ジルコニルも水に溶解させて粉砕過程中に添加した。
【0036】
次に、この下部層のスラリーをコーディエライト基質の上にウォッシュコートした後、その被覆された基質を110℃で約1時間乾燥させた。その後、その乾燥させた被覆基質を450℃の空気流の流れの中で1時間加熱することで、それに焼成を受けさせた。
【0037】
次に、上部層のスラリーを前記下部層の表面の上にウォッシュコートし、110℃で約1時間乾燥させた後、450℃に1時間加熱することで、それに焼成を受けさせた。前記上部層用のスラリーの調製では、この上に下部層に関して記述した様式と同じ様式で調製を実施した。この上部層を75g/立方フィートの白金、10g/立方フィートのロジウム、0.08g/立方インチのBaO、0.03g/立方インチのZrOおよび1.20g/立方インチの支持体[CeO被覆Al(CeOが10重量%)で構成]で構成させた。前記白金成分およびロジウム成分を逐次的に前記支持体材料に染み込ませた。次に、この粉末に粉砕を水の存在下で粒子の90%が10ミクロメートル未満の粒径(即ちd90<10μ)を示すようになるように受けさせることで、結果として高固体量のスラリーを得た。この粉砕過程中にまた酢酸バリウムおよび酢酸ジルコニルも水に溶解させて粉砕過程中に添加した。
触媒8の硫酸化および脱硫酸化
触媒8に硫酸化および脱硫酸化を硫酸化を650℃ではなく600℃で実施する以外はこの上に触媒1の硫酸化および脱硫酸化に関して記述した様式と同じ様式で受けさせた。図4に、4回の連続的硫酸化および脱硫酸化実験を示す。図4に示したグラフから分かるであろうように、触媒8が示すNO転化率は元々のレベルにまで回復した。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は、触媒1および2の熱安定性を示すグラフである。
【図2】図2は、触媒1−7のNO性能を示すグラフである。
【図3】図3は、触媒1がSOによって被毒された後にそのNO性能が回復することを示すグラフである。
【図4】図4は、触媒8がSOによって被毒された後にそのNO性能が回復することを示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車排ガス制御用層状触媒複合体であって、
(a)基質
(b)(i)少なくとも1種の貴金属および(ii)約0.3から約1.5g/立方インチの量で存在する少なくとも1種のNO貯蔵成分が上に位置する支持体を含んで成っていて前記基質に隣接して位置しかつそれと接触している下部表面と上部表面を有する少なくとも1層の下部層、および
(c)(i)少なくとも1種の貴金属および(ii)0.0から約0.3g/立方インチ未満の量で存在する少なくとも1種のNO貯蔵成分が上に位置する支持体を含んで成っていて前記下部層の前記上部表面に隣接して位置しかつそれと接触している下部表面と上部表面を有する少なくとも1層の上部層、
を含んで成る触媒複合体。
【請求項2】
前記基質がセラミックもしくは金属を含んで成っていてハニカム構造を有する請求項1記載の触媒複合体。
【請求項3】
前記下部層に存在する前記支持体が高い表面積を有する耐火性金属酸化物を含んで成る請求項1記載の触媒複合体。
【請求項4】
前記耐火性金属酸化物がアルミナ、チタニア、ジルコニア;チタニア、ジルコニアおよびセリアの中の1種以上とアルミナの混合物;アルミナの上を覆っているセリア;およびアルミナの上を覆っているチタニアから成る群から選択される請求項3記載の触媒複合体。
【請求項5】
前記上部層に存在する前記支持体が高い表面積を有する耐火性金属酸化物を含んで成る請求項1記載の触媒複合体。
【請求項6】
前記耐火性金属酸化物がアルミナ、チタニア、ジルコニア;チタニア、ジルコニアおよびセリアの中の1種以上とアルミナの混合物;アルミナの上を覆っているセリア;およびアルミナの上を覆っているチタニアから成る群から選択される請求項5記載の触媒複合体。
【請求項7】
前記下部層に存在する前記貴金属が白金、パラジウム、ロジウムおよびこれらの混合物から成る群から選択される請求項1記載の触媒複合体。
【請求項8】
前記上部層に存在する前記貴金属が白金、パラジウム、ロジウムおよびこれらの混合物から成る群から選択される請求項1記載の触媒複合体。
【請求項9】
前記下部層が更に(a)ジルコニウム、セリウム、マンガン、鉄およびチタンから成る群から選択される遷移金属成分、または(b)ランタン、プラセオジム、イットリウムおよびジルコニウムから成る群から選択される希土類金属成分、または(c)1種以上の遷移金属成分と1種以上の希土類金属成分の混合物も含んで成る請求項1記載の触媒複合体。
【請求項10】
前記上部層が更に(a)ジルコニウム、セリウム、マンガン、鉄およびチタンから成る群から選択される遷移金属成分、または(b)ランタン、プラセオジム、イットリウムおよびジルコニウムから成る群から選択される希土類金属成分、または(c)1種以上の遷移金属成分と1種以上の希土類金属成分の混合物も含んで成る請求項1記載の触媒複合体。
【請求項11】
前記下部層の中の前記NO貯蔵成分がアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の塩基性含酸素化合物を含んで成る請求項1記載の触媒複合体。
【請求項12】
前記上部層の中の前記NO貯蔵成分がアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の塩基性含酸素化合物を含んで成る請求項1記載の触媒複合体。
【請求項13】
希薄条件期間と化学量論的もしくは濃厚条件期間が交互に存在する条件下で作動する自動車エンジンの排気多岐管から放出される排ガス流れの中に存在する炭化水素、一酸化炭素および窒素酸化物の濃度を減少させる方法であって、前記排ガス流れを請求項1から12のいずれか記載の層状触媒複合体と接触させることを含んで成る方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−518276(P2006−518276A)
【公表日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−502880(P2006−502880)
【出願日】平成16年1月20日(2004.1.20)
【国際出願番号】PCT/US2004/001271
【国際公開番号】WO2004/069389
【国際公開日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(591044371)エンゲルハード・コーポレーシヨン (43)
【氏名又は名称原語表記】ENGELHARD CORPORATION
【Fターム(参考)】