説明

山椒木の芽の水耕栽培による生産方法

【課題】山椒木の芽を無農薬ないし低農薬で栽培しながら、木の芽の萎縮の原因となる菌類の増殖を抑制し、流通段階も含めて長期の品質保持を可能にする山椒木の芽の生産方法を提供すること。
【解決手段】木の芽の発芽前の山椒苗木を、保持手段に配列する工程、該保持手段の一側部から茎部を露出させて成長させると共に、他側部の根部に栄養水溶液を噴霧状で供給して木の芽を発芽させる工程、木の芽が成長した後に摘切する工程、木の芽を摘切後30分以内に、少なくともアルミニウム化合物と糖類とを含有する水溶液に浸漬する工程、浸漬後の木の芽を葉内水分が蒸発しにくい保湿性容器に収容する工程からなる木の芽の生産方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
山椒(以下サンショウと記す)の木の芽(若葉)は香辛料として貴重であり、木の芽は摘取後急速に萎凋乃至萎縮するが、この萎縮することを極力抑制しつつ、低農薬又は無農薬で効率的に木の芽を生産する生産方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
木の芽は主として各種の料理品に添えたり、調理品中に混入したりするもので、その品質と日待ちは栽培処理法によって大きく異なるものである。サンショウ樹は元来環境に敏感で細菌が浸入しやすく、化学肥料、生育用栄養剤を農作物、野菜などのように密集して多量に蒔くと樹勢が劣化し易い。このような事情から、現在は生育地域の市街地を中心に周辺農家の露地に植えられたサンショウ樹から採取した木の芽が供給販売されている現状である。
【0003】
このような情況から本件発明者らは、各種栽培法を試験的に模索しながら栽培していった。それは貯蔵乾燥したサンショウの種子を取出して所定の準備的処理後20粒ごと3区画に分けて3月中旬に圃場に播種した。そして生育用の栄養剤を従来からの習慣に従がって、夫々、通常程度に施肥してゆき、6月下旬に発芽した木の芽を摘取り、木箱に収容し、冷暗所乃至冷蔵庫に配置したが、5日〜6日を経過すると萎縮してゆき変色を始めた。
【0004】
上記第一の試験的栽培と同一方法で栽培しながら別の区画の圃場に播種したのには殺菌殺虫剤を量を異にして根元に投与していった。しかし、第一試験栽培の同時期の木の芽の摘取時期前に茎部も木の芽も活勢が幾分劣化してゆき、木の芽摘取り後の5日を経過すると変色と萎縮が発生してきた。
【0005】
更に、第一の試験的栽培法で得られた摘取木の芽に古くから鮮度保持剤として切花などに用いられているミョウバン水溶液に浸漬して冷蔵庫や冷暗室に保管したところ、8日から9日間程度は鮮度を保持することができた。然し乍らこの栽培処理法も商業的流通業界に乗ることはできず、地域的、個々的に販売されている程度のものである。
【0006】
関連する特許文献として、特許文献1では生食用生野菜の保存法が開示されている。酢酸、リンゴ酸などの有機酸や酢酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、ミョウバンなどの有機塩酸など保存剤の水溶液が用いられ、これに生野菜を5−10分程度浸漬することを特徴とする。
特許文献2に開示される技術は、切花の鮮度を保持するシートはその基材シートを設け、これに硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、カリウムミョウバン等のアルミニウム化合物及び糖類を接着し、これに粘着性剥離性接着性を有する合成樹脂製の保護フィルムが接着された積層シートが形成され、水を入れた容器に切花を挿入するものである。これ等は水に溶けて切花の鮮度を幾分か保持するものである。
【0007】
一方、サンショウ樹の木の芽摘切後の鮮度保持処理方法や、その為の栽培による育成方法については専門書や専門の新聞にも見い出せない。周知の技術としては、摘取った木の芽をミョウバン水溶液に浸漬したのち水切りして木箱に収容しながら直接料理店等に提供するか個々的に卸し売りされていることはなされているものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−137171号公報1頁2項
【特許文献2】特開2005−104961号公報2頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記従来技術の有する問題点に鑑みて創出されたものであり、山椒木の芽を無農薬ないし低農薬で栽培しながら、木の芽の萎縮の原因となる菌類の増殖を抑制し、流通段階も含めて長期の品質保持を可能にする山椒木の芽の生産方法を提供することを目的とする。
特に、上記の目的に寄与する水耕栽培による生産方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は次のような山椒木の芽の生産方法を提供する。
すなわち、山椒木の芽の水耕栽培による生産方法であって、木の芽の発芽前の山椒苗木を、保持手段に配列する工程、該保持手段の一側部から茎部を露出させて成長させると共に、他側部の根部に栄養水溶液を噴霧状で供給して木の芽を発芽させる工程、木の芽が成長した後に摘切する工程、木の芽を摘切後30分以内に、少なくともアルミニウム化合物と糖類とを含有する水溶液に浸漬する工程、浸漬後の木の芽を葉内水分が蒸発しにくい保湿性容器に収容する工程からなることを特徴とする。
【0011】
上記の保持手段が、山椒苗木を複数並列する横長の保持板を備える構成において、保持板を山椒苗木の根部から茎部に向けて上向きに傾斜させて設置し、山椒苗木は、該保持板の上面に剥離可能に接着固定する構成でもよい。
【0012】
上記の栄養水溶液は窒素8me/L、リン2me/L、カリウム4me/L、カルシウム4me/L、及び微量のマグネシウム、鉄を少なくとも含むことが特に好ましい。
【0013】
摘切後の木の芽を浸透する水溶液が含有する前記アルミニウム化合物は、アルミニウムミョウバンを0.05ないし0.3重量%含み、前記糖類はトレハロースを1.0ないし3.0重量%含むことが特に好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、発芽前の山椒苗木から水耕栽培により山椒木の芽を生産する生産方法を提供することができる。温室内等で実施できる水耕栽培によれば、山椒木の芽を無農薬ないし低農薬で栽培しながら、木の芽の萎縮の原因となる菌類の増殖を抑制することができる。
また、栄養水溶液を噴霧状で供給することにより、苗木の枯死や夏期の高温障害を防止することができ、木の芽の周年栽培の実現に寄与する。
【0015】
噴霧水耕方式を採用すると共に、本発明で提供する山椒木の芽の保持手段の構成によれば、木の芽の短期間での植え替えを可能であり、大量の生産にも寄与する。
【0016】
保湿性容器の採用により、流通段階も含めて長期の品質保持を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明における水耕栽培設備の斜視図
【図2】本発明における水耕栽培設備の断面図
【図3】本発明の実験例の結果を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の態様を述べると、露地等に植込んだサンショウ樹は8月中旬頃に結実した果実を採取する。果実は播種前までに乾燥させながら果皮を取除き、温ったバーミキュライトを敷詰めた浅い筺体に埋めて5℃程度の低温室に収容貯蔵して自発休眠した種子は予め発芽率を向上させるため表面の油脂層を除去して2〜3日間流水に晒したのち通常3月中旬頃圃場に播種する。
【0019】
前記圃場に比較的大規模に播種する場合を予想して10日間毎に2回に亘って播種した。これはサンショウ栽培全体を通じて作業車や機械の使用に適さず、手作業による小人数の作業員でも過度の労働をすることなく順調に仕事を遂行させるためである。
【0020】
圃場は水捌けよく形成し、播種した上には逆U字形の骨材を順次立設し寒冷紗状のシートを覆う。これは日光照射を加減し、強風、豪雨による幼木の損傷を抑止して菌類や害虫の侵入を防止し、サンショウ樹や根部に殺菌、殺虫剤を供給することなく、既に土壌中に存在するアルテルナリア属・クラドスポリウム属などの菌類やバクテリアの侵入を防止して、樹幹に菌類が侵入して折傷や切傷を生ずることのないようになし、樹勢劣化を防止することがサンショウ樹の性質からして最良の栽培処理法である。
【0021】
圃場の播種部には栄養剤としての肥料をおおよそ花木などへの供給量(100平方メートル当り堆肥400kg、鶏糞60kg、油粕16kg、苦土石灰30kg等)より少な目に蒔いて、生育を促進させた。これら肥料の供給量は過大になると環境に敏感なサンショウ樹は劣化してゆくので、樹幹や根部を順調に生育させるためのものである。
【0022】
圃場に蒔かれたサンショウ種子は外部細菌の侵入が阻止され本来種子に存在するごく小数の菌類も苗本の茎に枝が生ずるあいだに多く増殖することはない。そして、木の芽が発芽する直前に細い根ごと掘りおこし、その一部は次の水耕栽培に移送させる。残った多量のサンショウ樹は温度5℃に設定した冷温室や冷蔵庫に収容して休眠させておき、必要とされると取出して水耕栽培行程に移して周年に亘り栽培が可能となる。
【0023】
土耕栽培の圃場から堀出したサンショウ幼樹は水耕栽培場に移送配置される。図1には、該水耕栽培場の設備の斜視図を、本発明の保持手段の構造を説明する設備断面図を図2に示す。
該水耕栽培場は屋外又は屋内の任意の場所に設置することができるが、本実施例では特に好適な構成として、透明なシートで覆い、10℃〜28℃の温度内に設定した温室内に設ける。該温室内には図1に示す如く、サンショウ樹を配列固定して噴霧式栄養水溶液を散布する栽培枠体1を設ける。
【0024】
前記栽培枠体1はモルタルコンクリートの床面2に流出溝3を設け、流出溝3上には複数の支持柱4と梁材5及び6とからなる長方形状の筺体を形成する。筺枠の両側部に設けた横材には多数の山椒苗木(以下、サンショウ樹)7を並べて配置する複数段の保持板8を内側から外側に向けて左右対称に設ける。図1の斜視図では保持板8が2段の構成、図2の断面図は3段の構成を示しており、本発明においては、概ね30cmないし50cmの段差で2段ないし5段程度備えることが生産性の観点から好ましい。
【0025】
保持板8は栽培枠体1の全長に亘る長さで、それぞれ根部から茎部に向かって上方に向けて、水平方向から50゜〜60゜の仰角度で配設される。保持板8の上面9には、サンショウ樹7の茎部7aを例えば粘着テープ10で剥離可能に接着固定する。
なお、本発明の実施において、保持板8の角度は必ずしも限定されず、水平でもよいが、根部から茎部に向かって上方に向けて傾斜させることが好ましい。さらに実験によれば、生育の方向及び配置のしやすさの観点から上記50゜〜60゜の仰角度が好適である。
また、サンショウ樹7を保持板8に固定する方法は、粘着テープ10による方法が簡便であるが、針金や固定治具等による方法、溝を設けて左右にずれないようにする方法でもよい。
【0026】
枠体1の合成樹脂製で透明な頂壁12下面部には栄養水溶液13の供給管14を設け、それから順次長い管と短い管からなる支給管15と16を下設し、下端には上方に向った四個の噴出口を有する回転可能なスプレーノズル17を設ける。
サンショウ樹7の根部側に向けて、スプレーノズル17から栄養水溶液を噴霧する。
【0027】
上記噴霧する栄養水溶液は、協和株式会社製液体肥料「ハイポニカ」(登録商標)を2000倍希釈した水溶液を用いるのが好適である。同製品は、通常500倍から1000倍に希釈して使用するものとされているが、本発明の実施例としては、上記ハイポニカを2000倍に希釈した成分を一つの最適な実施例とする。
【0028】
あるいは、窒素8me/L、リン2me/L、カリウム4me/L、カルシウム4me/L、その他、微量のマグネシウム、鉄などを含有する水溶液を用いてもよい。
【0029】
根部で吸収されなかった栄養水溶液は、保持板8、その他の設備内壁等で液状になり、排出溝3に流下する。排出溝3の上側には落葉、樹皮片塵介などの流出を阻止する20〜30メッシュ程度の金網18を設ける。排出溝3の延長先は図示していないが更に塵止め網を設けて清浄化させながら自重で流下して貯留槽に貯蔵される。
【0030】
貯留槽の浄化された栄養水溶液は図示していないが電気的抑制回路によって作動するポンプで栽培枠体1内のスプレーノズル17に間欠的に給送される。間欠的な栄養水溶液の供給は25分間の休止時間をおいて50秒間程栄養水溶液を噴霧させる。
【0031】
上段位置に列設したスプレーノズル17から上側外方に噴出した霧状栄養水溶液は落下しながら上段保持板上のサンショウ樹7の根部に供給され下段位置のスプレーノズル17より下段の保持板8上のサンショウ樹7根部に供給して発芽生長を促進させる。栽培枠体1内に充満した噴霧液は茎を湿潤に保護すると共に枠外に飛散する噴霧液は摘取り作業に違和感を生じさせないように飛散防止板21を栽培枠体1の両側の上下部に設ける。
【0032】
噴霧栄養水溶液は間欠的に放散させるが、これは長い言伝えだが山問や露地の自然に生育したサンショウ樹は水捌けがよく適宜の降雨と日陰の土地環境に適すると言われているからである。従って栄養水溶液は過剰供給とならず、又圧力水を供給することも適切ではない。
【0033】
上記のように、水耕栽培されるサンショウ樹は数日で木の芽が発芽して成長するので、作業員による摘切りに着手する。作業員は背を伸し過ぎたり、腰を前屈することなく大きい温室内で作業できる。
そして、プラスチック製の軽いコップ状容器には水道水に小量のアルミニウム化合物とトレハロースなどの糖類を混入した水溶液(貯蔵期間延長液)を入れ、他方の手にはピンセットのように自動的に開放して、先端は鋭利の刃を有する摘切具を用いる。摘切位置は木の芽の基部分や、木の芽を有する葉柄の基部を需要者の要求に応じて切り採るものである。その手法としては木の芽の下側に容器を配置して、切った木の芽が自重で落ち込むようにする。容器内に木の芽を侵漬して30分間程度経過すると、これを取り上げて一旦大きい集積容器に集めたのち販売用容器に適切量だけ収容するか、又は直接に取り上げた木の芽を販売用容器に詰めてゆくものである。
【0034】
本発明で用いた貯蔵期間延長液において、アルミニウム化合物は硫酸アルミニウムアンモニウムや硫酸アルミニウムカリウム及びミョウバン石の粉体からなるミョウバンである。これを水に対して0.1重量%の量を混入する。なお、含有量は、概ね0.05ないし0.3重量%の範囲内が好ましい。
糖類としてトレハロースを、2.0重量%の割合で水に混入している。この含有量は、概ね1.0ないし3.0重量%の範囲内が好ましい。
このような水溶液を入れた容器に摘切った木の芽を投入して30分間程度又はそれ以上浸漬する。浸漬時間は、30分ないし60分が好ましく、例えば3時間以上などの長時間浸漬すると、吸水による変色を起こしやすい。
【0035】
本発明において、販売用容器には、従来一般的な木製の容器ではなく、保湿性の高い保湿性容器を用いることを特徴とする。木製の容器の場合、木の芽の葉内水分が減少しやすく、萎縮や変色、菌類の侵入の原因となっていた。
本発明では、これを蓋付プラスチック製容器とし、内部に和紙又はウレタンを敷き、その上に木の芽を収容する。和紙やウレタンは移送時の衝撃吸収や水分保持に寄与する。
【0036】
具体的には、販売用容器は縦10〜12cm、横8〜5cm程度の底が浅いポリウレタン製容器と比較的密着した透明なポリスチレン製蓋とによる。この販売用容器は摘切った当日か翌日に搬出され、約2日〜3日で遠隔地の卸拠店に達するが、卸拠店から末端の料理店へ達して余裕を以って顧客に提供できるよう、摘切日から16日〜18日程度、新鮮且つ活性とを保持可能である。
【0037】
以上の水耕栽培の全行程を通じて殺菌殺虫剤は全く使用しないが、生育要素としての栄養剤はサンショウ樹に元来有するごく小数の細菌を増殖させるような要素にはならない。更に水道水は元来塩素という殺菌剤が存在するが、これにより人体を害するものではなく、且つ、微量であると共に使用コストが廉価である。従って、木の芽の鮮度維持を少なくするには至らないものである。
【0038】
木の芽は鋭利な刃によって摘切面を平滑にすることが、水溶液中のアルミニウム化合物の吸収を良好にする。更にトレハロースなどの糖類は樹勢に活力を与え、アルミニウム化合物はサンショウの細胞膜を強固にして搬送供給中に木の芽の活力を保持するものである。これらは古くから用いられているものであるが、摘切時点で直ちにこれらの水溶液中に浸漬出来ることが極めて好適である。このような水溶液は全くサンショウ樹や木の芽に悪影響がなく鮮度が極めて好適に保持されるものである。
【0039】
最後に、本発明の目的である、木の芽の無農薬・低農薬による水耕栽培の実現と、長期の品質保持の両立に関して、実証実験を行った。その実験結果を次に示す。
まず、木の芽は概して日持ちの悪い軟弱野菜であって、通常の栽培には農薬の使用が一般的であった。木の芽の変色等の品質低下の原因としては、アルタナリア属菌・フザリウム属菌・クラドスポリウム属菌、及びバクテリア類の付着であり、これらの付着を防ぐために農薬が使用されるという悪循環が見られた。
【0040】
すなわち、木の芽の通常栽培は、伏せ床に客土を行い、そこに苗木を伏せこむ。伏せ床は密閉されて保温されており、一度菌(白絹病など)が発生すると、再度客土を行うか、農薬を使用しなければならなかった。
これに対して本発明は水耕栽培を行った上で、流通過程において保湿性のある(すなわち気密性が相対的に高い)容器を行うことで、木の芽の鮮度を維持し、細菌やバクテリアの増殖を防ぐことに成功したものである。
【0041】
実験としては、最低温期の2月と、最高温期の8月に、それぞれ水耕栽培及び通常栽培区からの木の芽を100枚収穫し、新しいビニール袋にいれた上で検査まで冷蔵庫で保管した。
そして、両栽培区とも3gずつ木の芽を抜き出し、90mlの生理食塩水を加えて攪拌した後、100倍にして2枚の培養プレートに植菌した。検査項目は、一般生菌、大腸菌群、カビ酵母である。
【0042】
表1は2月の表面菌数、表2は8月の表面菌数を示している。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
上記の結果によれば、高いものでは100倍程度、菌数を抑制することができている。表面菌数が少ないことは、切り口や傷口等からこれらの細菌類が侵入しにくく、変色等の品質の低下の抑制に寄与する。また、農薬を使用せず、または使用量を少なくすることができる。
【0046】
次に、本発明の生産方法により、実際に日持ちがどの程度延びるかを実験した。
図3は日持ち比較試験の実験結果であり、従来の路地栽培(土耕)及び本発明の水耕栽培の比較、及びそれぞれについて貯蔵期間延長液の使用、不使用を比較した結果を示している。
図から明らかなように、土耕で貯蔵期間延長液を使用しなかった場合には12日後にはほとんど全てが変色してしまったのに対し、本発明による水耕栽培及び貯蔵期間延長液を用いた方法では、21日後でも半数の変色に留まっている。ほぼ全てが変色したのは30日後である。
【0047】
また、それぞれにおいて、貯蔵期間延長液を使用した方がより日持ちすることが明らかであり、この効果も顕著に示された。
【符号の説明】
【0048】
1 栽培枠体
2 床面
3 流出溝
4 支持柱
5 梁材
6 梁材
7 サンショウ樹
8 保持板
9 上板部
10 粘着テープ
12 頂壁
13 養液(栄養水溶液)
14 供給管
15 支給管
16 支給管
17 スプレーノズル
18 金網
21 飛散防止板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
山椒木の芽の水耕栽培による生産方法であって、
木の芽の発芽前の山椒苗木を、保持手段に配列する工程、
該保持手段の一側部から茎部を露出させて成長させると共に、他側部の根部に栄養水溶液を噴霧状で供給して木の芽を発芽させる工程、
木の芽が成長した後に摘切する工程、
木の芽を摘切後30分以内に、少なくともアルミニウム化合物と糖類とを含有する水溶液に浸漬する工程、
浸漬後の木の芽を葉内水分が蒸発しにくい保湿性容器に収容する工程
からなることを特徴とする山椒木の芽の生産方法。
【請求項2】
前記保持手段が、前記山椒苗木を複数並列する横長の保持板を備える構成において、
該保持板を前記山椒苗木の根部から茎部に向けて上向きに傾斜させて設置し、
該山椒苗木は、該保持板の上面に剥離可能に接着固定する
請求項1に記載の山椒木の芽の生産方法。
【請求項3】
前記栄養水溶液は窒素8me/L、リン2me/L、カリウム4me/L、カルシウム4me/L、及び微量のマグネシウム、鉄を少なくとも含むことを特徴とする
請求項1又は2のいずれか記載の山椒木の芽の生産方法。
【請求項4】
前記摘切後の木の芽を浸透する水溶液が含有する前記アルミニウム化合物は、アルミニウムミョウバンを0.05ないし0.3重量%含み、前記糖類はトレハロースを1.0ないし3.0重量%含むことを特徴とする
請求項1ないし3のいずれか記載の山椒木の芽の生産方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−110241(P2012−110241A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259400(P2010−259400)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(598129200)いし本食品工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】