説明

工作機械の制御装置及びこれを備えた加工関連データ処理システム

【課題】工作機械の制御装置にかかる負荷を軽減することができる加工関連データ処理システムなどを提供する。
【解決手段】加工関連データ処理システム1は、工作機械2の制御装置3とデータ処理装置40とが電気通信回線5を介して接続されており、制御装置3は、NC装置11と支援装置20とから構成される。支援装置20は、データ処理装置40に連係処理信号を送信してデータ処理装置40を遠隔操作し、データ処理を行わせるとともに、データ処理装置40で行われたデータ処理結果を受信する連携処理指示部22を備え、データ処理装置40は、プログラム自動生成部44と、加工シミュレーション部45と、制御装置3から連係処理信号を受信して、制御装置3で受け付けられたデータ処理要求に対応し且つワークの加工に関連したデータ処理をプログラム自動生成部44及び加工シミュレーション部45に行わせるとともに、データ処理結果を制御装置3に送信する連係処理実行部42とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気通信回線を介してデータ処理装置と接続可能に設けられ、前記データ処理装置を遠隔操作して、当該データ処理装置にワークの加工に関連したデータ処理を行わせるように構成された工作機械の制御装置、及び、前記工作機械の制御装置とデータ処理装置とが電気通信回線を介し接続されて構成される加工関連データ処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械の制御装置は、CPU,ROM,RAM,ハードディスク,入力装置及び画面表示装置などを備えて構成され、ROMやハードディスクには、様々なソフトウェアが格納される。前記ソフトウェアとしては、例えば、システム制御に関するものの他、加工シミュレーションに関するものを挙げることができ、加工シミュレーションに関するソフトウェアを備えた制御装置としては、従来、例えば、特開2006−85485号公報に開示されたものがある。
【0003】
この制御装置では、前記CPU,ROM,RAM及びハードディスクなどのハードウェア、並びに前記ソフトウェアが、主制御部と、NCプログラムを記憶する加工プログラムメモリと、工具,ワーク,刃物台及びワーク主軸などの3次元モデルデータを記憶するモデルメモリと、加工プログラムメモリに格納されたNCプログラムを解析するプログラム解析処理制御部と、プログラム解析処理制御部によるプログラム解析に基づいて工具移動経路を演算するシミュレーション制御部と、シミュレーション制御部による演算結果及びモデルメモリ内のモデルデータを基に、前記工具,ワーク,刃物台及びワーク主軸を前記工具移動経路に沿って相対移動させたときのモデルデータを演算するモデル処理制御部と、モデル処理制御部によって演算されたモデルデータを基に画像データを生成するモデル描画処理制御部などとして機能するようになっており、モデル描画処理制御部によって生成された画像データが、前記主制御部の表示制御により前記画面表示装置上に表示されるようになっている。
【0004】
そして、オペレータは、NCプログラムに従って移動する工具及びワークの表示画像を通して工具移動状態や加工状態を確認し、NCプログラムに誤りがないかを確認する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−85485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の制御装置では、すべての処理(ソフトウェアによって実行される処理)が1組のハードウェア(所謂コンピュータ)上で実行されているため、処理内容によっては当該制御装置にかかる負荷が大きくなり易く、大きな負荷がかかったときに、処理速度が遅くなるなど処理の実行に支障をきたす恐れがあった。特に、上記加工シミュレーションのように負荷の大きい処理を実行した場合には、このような事態に陥り易く、また、ワーク加工中に大きな負荷が制御装置にかかると、ワークの加工ができないという事態も生じ得る。
【0007】
また、更に、前記ソフトウェアは、新機能の追加や使い勝手の向上を目的として、たびたびバージョンアップが行われており、その際、ハードウェアの要求スペックが引き上げられることがあるが、ハードウェアのスペックを引き上げないまま当該ソフトウェアを実行すると、処理能力の余裕が少なくなって、負荷がかかったときに、他の処理に支障をきたす恐れもある。
【0008】
尚、ハードウェアのスペックを引き上げれば、より大きな負荷がかかっても、上記のような問題を生じ難くなるが、ハードウェアのスペックを引き上げるのは容易でなく、非常にコストもかかる。
【0009】
本発明は、以上の実情に鑑みなされたものであって、自身にかかる負荷を軽減することができる工作機械の制御装置、及びこれを備えた加工関連データ処理システムの提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明は、
電気通信回線を介してデータ処理装置と接続可能に設けられ、前記データ処理装置にデータ処理を行わせるように構成された工作機械の制御装置であって、
前記制御装置は、
データ処理要求を受け付けると、該データ処理要求に係るワークに関連したデータ処理を、自装置と連係して前記データ処理装置に実行させるための連係処理信号を前記データ処理装置に送信し、前記データ処理要求に対応したデータ処理を前記データ処理装置に実行させ、その処理結果に関する情報を受信する連係処理指示手段を備えていることを特徴とする工作機械の制御装置に係る。
【0011】
また、本発明は、
前記工作機械の制御装置とデータ処理装置とが電気通信回線を介して接続され、前記制御装置が前記データ処理装置にワークの加工に関連したデータ処理を行わせるように構成された加工関連データ処理システムであって、
前記データ処理装置は、
データ処理を行う処理手段と、
前記制御装置から前記連係処理信号を受信し、該制御装置で受け付けられたデータ処理要求に対応し且つワークの加工に関連したデータ処理を前記処理手段に行わせるとともに、該処理手段の処理結果に関する情報を前記制御装置に送信する連係処理実行手段とを備えていることを特徴とする加工関連データ処理システムに係る。
【0012】
そして、この加工関連データ処理システムによれば、例えば、入力手段から入力されたデータ処理要求が連係処理指示手段によって受け付けられたり、制御装置で処理されるデータ中に含まれたデータ処理要求が連係処理指示手段によって受け付けられると、当該連係処理指示手段からデータ処理装置に連係処理信号が送信され、当該連係処理指示手段がデータ処理装置にデータ処理を実行させる。
【0013】
連係処理指示手段から送信された連係処理信号は、データ処理装置の連係処理実行手段によって受信され、処理手段におけるデータ処理の実行が制御されて、連係処理指示手段で受け付けられたデータ処理要求に対応し且つワークの加工に関連したデータ処理が処理手段によって行われる。
【0014】
そして、処理手段におけるデータ処理結果は、連係処理実行手段によって制御装置側に送信され、送信されたデータ処理結果が連係処理指示手段により受信される。
【0015】
尚、ワークの加工に関連したデータ処理としては、例えば、工具経路データやNCプログラムの生成、加工シミュレーションなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、電気通信回線としては、例えば、LANやインターネットなどの他、工作機械の制御装置とデータ処理装置とを接続する各種の通信回線が含まれる。また、更に、前記制御装置とは、送り機構などの数値制御対象を制御する部分と、それ以外を制御する部分の両方を含む概念であり、したがって、数値制御対象を制御する部分に関するデータ処理をデータ処理装置側で行っても、それ以外を制御する部分に関するデータ処理をデータ処理装置側で行っても良い。
【0016】
また、前記制御装置は、画面表示するための表示手段を更に備え、
前記連係処理指示手段は、
前記データ処理装置の表示画面に表示された画像情報を該データ処理装置から受信して前記表示手段に表示させるとともに、前記表示手段の画面を通じて入力された、前記データ処理を実行させるための遠隔操作信号を前記連係処理信号として前記データ処理装置に送信して、前記データ処理装置に前記データ処理を実行させ、そのデータ処理完了後に得られる情報を直接又は間接的に前記データ処理装置から受信するように構成しても良い。
【0017】
この場合、データ処理装置の表示画面を制御装置の表示手段に表示させ、その表示された画面を通じて入力された信号をデータ処理装置に送信することで、この信号を受信したデータ処理装置が当該受信信号に応じて、処理を実行する、所謂遠隔操作が実行され、当該データ処理装置は受信信号に応じたデータ処理を実行する。そして、前記連係処理指示手段は、データ処理完了後に得られる情報を直接又は間接的にデータ処理装置から受信する。具体的には、例えば、NCプログラムの自動生成を行う場合、制御装置の表示手段に表示されたデータ処理装置側の表示画面中のプログラム自動生成の実行にかかるソフトウェアを起動させるためのアイコンをクリックし、データ処理装置に当該ソフトウェアを起動させると、ソフトウェアが起動したデータ処理装置の表示画面が制御装置の表示手段に表示され、表示された画面にプログラムの自動生成に必要なデータを入力し、プログラムの自動生成をデータ処理装置に実行させ、制御装置はデータ処理装置が生成したプログラムのみを受信することができる。
【0018】
また、前記制御装置は、画面表示するための表示手段を更に備え、
前記連係処理指示手段は、
前記データ処理装置の表示画面に表示された画像情報を該データ処理装置から受信して前記表示手段に表示させるとともに、前記表示手段の画面を通じて入力された、前記データ処理を実行させるための遠隔操作信号を前記連係処理信号として前記データ処理装置に送信して、前記データ処理装置に前記データ処理を実行させ、そのデータ処理中に得られる情報を直接又は間接的に前記データ処理装置から受信して前記表示手段に表示させるように構成しても良い。
【0019】
この場合においても、上述と同様に、データ処理装置の表示画面を制御装置の表示手段に表示させ、その表示された画面を通じて入力された信号をデータ処理装置に送信することで、この信号を受信したデータ処理装置が当該受信信号に応じた処理を実行する。そして、前記連係処理指示手段は、データ処理中に得られる情報を直接又は間接的にデータ処理装置から受信し、この受信した情報を表示手段に表示させる。具体的には、例えば、加工シミュレーションを実行する場合は、制御装置の表示手段に表示されたデータ処理装置側の表示画面中の加工シミュレーションの実行にかかるソフトウェアを起動させるためのアイコンをクリックし、データ処理装置にソフトウェアを起動させると、ソフトウェアが起動したデータ処理装置の表示画面が制御装置の表示手段に表示され、そして、制御装置の表示手段に表示されたデータ処理装置の画面表示に対して加工シミュレーションに必要なデータを入力することで、データ処理装置に入力されたデータに基づく加工シミュレーションを実行させ、制御装置はデータ処理装置で実行された加工シミュレーションに関する情報を受信し、この受信した情報を表示手段にリアルタイム表示させることができる。
【0020】
尚、本願でいう「連係処理」とは、前記制御装置が実行すべきデータ処理のうち少なくとも一部を、データ処理装置に実行させることをいう。また、前記連係処理信号を送信する態様としては、制御装置とデータ処理装置との間で双方向的に行われる上記遠隔操作による態様の他、例えば、前記連係処理信号を制御装置からデータ処理装置へ一方向的に送信する態様も挙げられる。
【0021】
また、前記工作機械の制御装置は、前記連係処理指示手段によって前記データ処理装置から受信されたデータ処理結果に基づき、ワークの加工を実行する加工実行部を更に備えていても良い。この場合には、データ処理装置から受信されたデータ処理結果(例えば、データ処理装置側で生成された工具経路データやNCプログラム)を基にワークの加工が行われる。
【発明の効果】
【0022】
このように、本発明に係る工作機械の制御装置及び加工関連データ処理システムによれば、工作機械の制御装置からデータ処理装置に連係処理信号を送信し、データ処理装置にワークの加工に関連したデータ処理を行わせるとともに、そのデータ処理結果に関する情報を当該データ処理装置から制御装置に送信させるようにしたので、従来、制御装置側で実行されていた処理の一部を外部のデータ処理装置側で行うことができる。
【0023】
したがって、制御装置にかかる負荷を軽減することができ、当該制御装置における処理に支障をきたすのを防止することができる。また、ソフトウェアがバージョンアップされたとしても、データ処理装置のハードウェアが要求スペックを満たしていれば、当該ソフトウェアをデータ処理装置側で実行することができるので、制御装置のハードウェアのスペックを引き上げなくても、他の処理に支障をきたすことなく、当該ソフトウェアを実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係るデータ処理システムの概略構成を示したブロック図である。
【図2】本実施形態においてデータ処理が実行される際の一連の処理を示したフローチャートである。
【図3】本実施形態に係る制御装置の画面表示装置に表示される画像の一例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の具体的な実施形態について、添付図面に基づき説明する。尚、本例では、データ処理に係るソフトウェアが、工作機械の制御装置単体でのデータ処理の実行も可能となるように、制御装置側及びデータ処理装置側の両方にインストールされているものとするが、必ずしもこの態様に限定されるものではない。また、本例においては、連係処理を遠隔操作によって行うものとし、ここでいう遠隔操作は、制御装置が、データ処理装置の表示画面に表示された画像情報をデータ処理装置から受信して自らの表示装置に表示させるとともに、その画面を通じて入力された信号をデータ処理装置に送信して、制御装置からデータ処理装置を操作することを指す。
【0026】
図1に示すように、本例のデータ処理システム1は、工作機械2に設けられ、相互に接続されたNC装置11と支援装置20とから構成される制御装置3と、データ処理装置40とがLANやインターネットなどのネットワーク(電気通信回線)5を介して接続され、前記制御装置3が前記データ処理装置40を遠隔操作して、当該データ処理装置40にワークの加工に関連したデータ処理を行わせるように構成される。
【0027】
前記NC装置11は、CPU,ROM,RAM及びハードディスク、並びにこれらに格納された適宜ソフトウェアから構成される加工プログラム記憶部12や加工実行部13、入出力インタフェース14といった機能部を備えており、前記加工プログラム記憶部12には、NCプログラムが格納されており、前記加工実行部13は、加工プログラム記憶部12に格納されたNCプログラムや、前記データ処理装置40で生成されたNCプログラムを基に工作機械2の作動を制御する。また、入出力インターフェース14には、前記工作機械2及び後述する入出力インターフェース26が接続される。
【0028】
前記支援装置20は、CPU,ROM,RAM及びハードディスク、並びにこれらに格納された適宜ソフトウェアから構成される認証処理部21,連係処理指示部22,データ記憶部23,プログラム自動生成部24,加工シミュレーション部25,入出力インターフェース26及び通信インターフェース27などの機能部と、各種データや信号を入力する入力装置30と、画像データを表示する画面表示装置31とを備えており、これらCPU,ROM,RAM,ハードディスク,入力装置30及び画面表示装置31が操作盤に一体的に設けられた構造を備え、また、通信インターフェース27を介して前記ネットワーク5に接続されている。尚、入出力インターフェース26には、入力装置30、画面表示装置31及び入出力インターフェース14が接続される。
【0029】
前記認証処理部21は、前記データ処理装置40からの認証要求に応じて認証処理を実行する。
【0030】
前記データ記憶部23には、NCプログラムの生成や加工シミュレーションといったデータ処理に必要なデータが格納されており、前記プログラム自動生成部24は、当該データ記憶部23に格納された工具種類、工具サイズ、素材材質、加工軌跡等の加工データや送り速度、主軸回転速度等の切削条件などを基に、NCプログラムを自動生成し、前記加工シミュレーション部25は、NCプログラムや、工具,ワーク,工具保持機構及びワーク保持機構の3次元モデルデータを基に、加工シミュレーションを実行する。尚、データ記憶部23に格納されるデータは、例えば、入力装置30から入力されたり、ネットワーク5を介して外部から入力される。
【0031】
前記連係処理指示部22は、例えば、入力装置30から入力されたデータ処理要求を受け付け、当該データ処理要求を受け付けると、データ処理を実行させるための連係処理信号を前記データ処理装置40に送信して、当該データ処理装置40を遠隔操作し、受け付けたデータ処理要求に対応し且つワークの加工に関連したデータ処理を当該データ処理装置40に行わせる。
【0032】
また、連係処理指示部22は、当該データ処理装置40で行われたデータ処理結果を受信して、受信したデータ処理結果(例えば、シミュレーション画像)を画面表示装置31に表示させる、或いは、受信したデータ処理結果(例えば、NCプログラム)を制御装置3内の適宜記憶部に格納する。例えば、データ処理装置40で行う処理がNCプログラムの自動生成である場合、生成されたNCプログラムをデータ処理装置40から受信して、前記加工プログラム記憶部12に格納する。
【0033】
前記データ処理装置40は、CPU,ROM,RAM及びハードディスク、並びにこれらに格納された適宜ソフトウェアから構成される認証処理部41,連係処理実行部42,データ記憶部43,プログラム自動生成部44,加工シミュレーション部45,入出力インターフェース46及び通信インターフェース47などの機能部と、各種データや信号を入力する入力装置49と、画像データを表示する画面表示装置50とをており、通信インターフェース47を介して前記ネットワーク5に接続されている。尚、入出力インターフェース46には、入力装置49及び画面表示装置50が接続される。
【0034】
前記認証処理部41は、前記プログラム自動生成部44及び加工シミュレーション部45におけるデータ処理の実行時に、前記支援装置20に対して認証要求を行ってから、前記プログラム自動生成部44及び加工シミュレーション部45におけるデータ処理を実行可能にする。
【0035】
前記連係処理実行部42は、前記連係処理指示部22から送信された連係処理信号を受信し、当該連係処理指示部22で受け付けられたデータ処理要求に対応するデータ処理を前記プログラム自動生成部44及び加工シミュレーション部45に行わせるとともに、当該プログラム自動生成部44及び加工シミュレーション部45におけるデータ処理結果を連係処理指示部22に送信する。
【0036】
前記データ記憶部43には、データ処理に必要なデータが格納されており、前記プログラム自動生成部44は、前記データ記憶部43に格納された工具種類、工具サイズ、素材材質、加工軌跡等の加工データや送り速度、主軸回転速度等の切削条件などを基に、前記支援装置20のプログラム自動生成部24と同様に、NCプログラムを自動生成する機能部であり、NCプログラムの自動生成は、前記連係処理実行部42による制御の下で行われる。
【0037】
同様に、前記加工シミュレーション部45は、前記データ記憶部43に格納されたNCプログラムや、工具,ワーク,工具保持機構及びワーク保持機構の3次元モデルデータを基に、前記支援装置20の加工シミュレーション部25と同じように、加工シミュレーションを行い、そのシミュレーション画像を生成する機能部であり、これらのデータ処理も前記連係処理実行部42による制御の下で行われる。
【0038】
以上のように構成された本例のデータ処理システム1によって、プログラム生成及び加工シミュレーションを実行する過程について、図2を参照しつつ説明する。尚、本例においては、工作機械2の制御装置3側及びデータ処理装置40側のそれぞれがプログラム自動生成部24,44及び加工シミュレーション部25,45を有し、制御装置3単体でのプログラム生成及び加工シミュレーションの実行が可能となっているが、制御装置3側に負荷を掛けないことを目的とし、データ処理装置40側でプログラム生成及び加工シミュレーションを実行するようにしている。
【0039】
まず、制御装置3側で入力装置30から入力されたデータ処理要求(加工シミュレーション実行要求やNCプログラム生成要求)が連係処理指示部22によって受け付けられると(ステップS1)、当該連係処理指示部22によりデータ処理装置40に連係処理信号が送信されて当該データ処理装置40が遠隔操作される(ステップS2)。
【0040】
ここで、上記遠隔操作とは、例えば、前記画面表示装置31に表示されたデータ処理装置40側の表示画面中のアイコンをマウスのクリックによって選択した、或いは、表示画面中に数値などを入力した場合などに、これらの操作に対応する信号を連係処理信号として連係処理実行部42に送信し、データ処理装置40側に、前記アイコンが選択された、或いは、数値が入力されたと認識させることをいい、より具体的に言えば、データ処理装置40側のプログラム自動生成部44や加工シミュレーション部45を担うソフトウェアの起動にかかるアイコンをクリックすることによってこれらのソフトウェアを起動でき、表示画面装置31に表示されたデータ処理装置40側の表示画面を通して、データ処理装置40に数値などを入力できることをいう。
【0041】
連係処理指示部22から送信された連係処理信号は、データ処理装置40側の連係処理実行部42によって受信され(ステップS3)、前記認証処理部21,41によって制御装置3とデータ処理装置40との間で認証処理が行われ(ステップS4)、ついで、連係処理指示部22で受け付けられたデータ処理要求に対応し且つワークの加工に関連したデータ処理(加工シミュレーションやNCプログラムの生成)を連係処理実行部42がプログラム自動生成部44や加工シミュレーション部45に実行させる(ステップS5)。
【0042】
前記データ処理がNCプログラムの生成である場合には、前記プログラム自動生成部44がデータ記憶部43に格納された工具種類、工具サイズ、素材材質、加工軌跡等の加工データや送り速度、主軸回転速度等の切削条件などを基に、NCプログラムを生成し、当該生成されたNCプログラムが、連係処理実行部42によって制御装置3側に送信され(ステップS6)、送信されたNCプログラムは、連係処理指示部22によって受信され(ステップS7)、当該制御装置3側では、このNCプログラムを基に、加工実行部13によりワークの加工が実行される(ステップS8)。
【0043】
一方、前記データ処理が加工シミュレーションである場合には、前記加工シミュレーション部45がデータ記憶部43に格納されたNCプログラムや、工具,ワーク,工具保持機構及びワーク保持機構の3次元モデルデータを基に、データ処理を実行し、当該データ処理が実行されると、その開始から終了まで、生成されたシミュレーション画像が、連係処理実行部42によって制御装置3側に順次送信され(ステップS6)、送信されたシミュレーション画像は、連係処理指示部22によって受信された後(ステップS7)、画面表示装置31に表示される(ステップS8)。
【0044】
尚、このとき表示される画像の一例を図3に示す。図3において、符号32は操作盤を、符号31aは画面表示装置31の表示画面を、符号Tは工具を、符号Wはワークを、符号33は主軸を、符号34はテーブル上に取り付けられたパレットをそれぞれ示している。
【0045】
尚、加工シミュレーション部45におけるデータ処理結果は、当該加工シミュレーション部45により画面表示装置50に表示されるようになっていても良い。
【0046】
斯くして、本例の加工関連データ処理システム1によれば、工作機械2の制御装置3からデータ処理装置40を遠隔操作して当該データ処理装置40にデータ処理を行わせるとともに、そのデータ処理結果を当該データ処理装置40から送信させるようにしたので、従来、制御装置3側で実行されていたNCプログラムの生成や加工シミュレーションの実行を、外部のデータ処理装置40側で行うことができる。
【0047】
したがって、制御装置3にかかる負荷を軽減することができ、当該制御装置3における処理に支障をきたすのを防止することができる。また、データ処理に係るソフトウェアがバージョンアップされたとしても、データ処理装置40のハードウェアが要求スペックを満たしていれば、当該ソフトウェアをデータ処理装置40側で実行することができるので、制御装置3のハードウェアのスペックを引き上げなくても、システム制御に関するソフトウェアや他のソフトウェアの実行に支障をきたすことなく、当該ソフトウェアを実行することができる。
【0048】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の採り得る具体的な態様は、何らこれに限定されるものではない。
【0049】
上例では、ワークの加工に関連したデータ処理の一例として、加工シミュレーションやNCプログラムの生成を挙げたが、この他、工具経路データの生成などであっても良く、何ら限定されるものではない。また、負荷の小さい処理は制御装置3側でデータ処理させ、負荷の大きい処理をデータ処理装置40側でデータ処理させるようにしても良いし、負荷の小さい処理であっても、データ処理装置40側でデータ処理させるようにしても良い。
【0050】
また、制御装置3側にプログラム自動生成部24や加工シミュレーション部25といったデータ処理を行う機能部を設けず、すべてのデータ処理をデータ処理装置40が行うようにしても良い。
【0051】
また、連係処理指示部22は、前記データ記憶部23に格納されたデータを連携処理信号とともに送信するようにしても良く、データ処理装置40側でデータ処理を実行するに当たり、プログラム自動生成部44及び加工シミュレーション部45は、データ記憶部23から送信されたデータを基にデータ処理するように構成されていても、データ記憶部43内に格納されたデータ及び制御装置3側から送信されたデータの両方を基にデータ処理するように構成されていても良い。
【0052】
更に、前記データ処理システム1では、工作機械2の制御装置3とデータ処理装置40とがネットワーク5を介して1対1で接続されているが、1台以上の工作機械2の制御装置3と1台以上のデータ処理装置40とがネットワーク5を介して接続されていても良い。
【0053】
また、工作機械2の制御装置3とデータ処理装置40とは、ファイル共有サーバなどを介して連係処理信号及びデータ処理結果を送受信するように構成されていても良い。具体的には、ファイル共有サーバは、ネットワーク5に接続されており、前記連係処理信号は、連係処理指示部22からネットワーク5を通じてファイル共有サーバに送信された後、ファイル共有サーバから連係処理実行部42に送信される。また、前記データ処理結果についても、連係処理実行部42からネットワーク5を通じてファイル共有サーバに送信された後、ファイル共有サーバから連係処理指示部22に送信される。この際、データ処理結果であるNCプログラムなどをファイル共有サーバに任意の期間保存しておくようにしても良い。
【0054】
また、前記データ処理装置40は、前記ネットワーク5に接続された他の工作機械の状態を監視する状態監視部を更に備えていても良い。この場合、前記状態監視部によって、ネットワーク5に接続された工作機械の状態を監視し、異常が発生した工作機械がある場合などには、その旨を制御装置3側に通知することができる。
【0055】
更に、上記の例では、前記データ処理要求を前記入力装置30を介して制御装置3に入力する態様としたが、これに限られるものではなく、データ処理要求をNC装置11や支援装置20で実行されるプログラムや処理されるデータ中に含ませた態様としても良い。この場合、支援装置20の連係処理指示部22が、前記実行されるプログラムや処理されるデータ中に含まれたデータ処理要求に係る連係処理信号をデータ処理装置40側の連係処理実行部42に送信し、データ処理要求に対応したデータ処理を連係処理実行部42に実行させる。
【0056】
具体的には、例えば、前記加工実行部13によって実行されるNCプログラム中に、連係処理に係る特定コード(例えば、先読み指令)を含ませ、前記加工実行部13が処理実行中にこの特定コードを認識したとき、これに対応した連係処理信号を前記連係処理指示部22を介し連係処理実行部42に送信して、データ処理装置40側に処理を実行させ、処理結果を連係処理実行部42を介して制御装置3側に送信させることができる。
【0057】
或いは、加工シミュレーションにおいて、その処理プログラム中に特定の形状や複雑度の高い形状に対して連係処理に係るコードを含ませておき、前記加工シミュレーション部25が処理実行中にこのコードを認識したとき、これに対応した連係処理信号を連係処理指示部22を介し連係処理実行部42に送信して、データ処理装置40側の加工シミュレーション部45に処理を実行させ、連係処理実行部42は処理結果を連係処理指示部22に逐一送信し、連係処理指示部22は受信した処理結果を画面表示装置31に出力させるといった態様を採ることができる。このようにしても、制御装置3側にかかる負荷を小さくすることができる。尚、この場合、前記NC装置11と支援装置20とを一体的に構成しても良い。
【符号の説明】
【0058】
1 加工関連データ処理システム
2 工作機械
3 制御装置
5 ネットワーク
11 NC装置
12 加工プログラム記憶部
13 加工実行部
20 支援装置
22 連係処理指示部
30 入力装置
31 画面表示装置
40 データ処理装置
42 連係処理実行部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気通信回線を介してデータ処理装置と接続可能に設けられ、前記データ処理装置にデータ処理を行わせるように構成された工作機械の制御装置であって、
前記制御装置は、
データ処理要求を受け付けると、該データ処理要求に係るワークに関連したデータ処理を、自装置と連係して前記データ処理装置に実行させるための連係処理信号を前記データ処理装置に送信し、前記データ処理要求に対応したデータ処理を前記データ処理装置に実行させ、その処理結果に関する情報を受信する連係処理指示手段を備えていることを特徴とする工作機械の制御装置。
【請求項2】
前記制御装置は、画面表示するための表示手段を更に備え、
前記連係処理指示手段は、
前記データ処理装置の表示画面に表示された画像情報を該データ処理装置から受信して前記表示手段に表示させるとともに、前記表示手段の画面を通じて入力された、前記データ処理を実行させるための遠隔操作信号を前記連係処理信号として前記データ処理装置に送信して、前記データ処理装置に前記データ処理を実行させ、そのデータ処理完了後に得られる情報を直接又は間接的に前記データ処理装置から受信するように構成されてなることを特徴とする請求項1記載の工作機械の制御装置。
【請求項3】
前記制御装置は、画面表示するための表示手段を更に備え、
前記連係処理指示手段は、
前記データ処理装置の表示画面に表示された画像情報を該データ処理装置から受信して前記表示手段に表示させるとともに、前記表示手段の画面を通じて入力された、前記データ処理を実行させるための遠隔操作信号を前記連係処理信号として前記データ処理装置に送信して、前記データ処理装置に前記データ処理を実行させ、そのデータ処理中に得られる情報を直接又は間接的に前記データ処理装置から受信して前記表示手段に表示させるように構成されてなることを特徴とする請求項1記載の工作機械の制御装置。
【請求項4】
前記連係処理指示手段によって前記データ処理装置から受信したデータ処理結果に基づき、ワークの加工を実行する加工実行部を更に備えていることを特徴とする請求項1乃至3記載のいずれかの工作機械の制御装置。
【請求項5】
前記請求項1乃至4に記載のいずれかの工作機械の制御装置とデータ処理装置とが電気通信回線を介して接続され、前記制御装置が前記データ処理装置にワークの加工に関連したデータ処理を行わせるように構成された加工関連データ処理システムであって、
前記データ処理装置は、
データ処理を行う処理手段と、
前記制御装置から前記連係処理信号を受信し、該制御装置で受け付けられたデータ処理要求に対応し且つワークの加工に関連したデータ処理を前記処理手段に行わせるとともに、該処理手段の処理結果に関する情報を前記制御装置に送信する連係処理実行手段とを備えていることを特徴とする加工関連データ処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−79290(P2012−79290A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169709(P2011−169709)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000146847)株式会社森精機製作所 (204)
【Fターム(参考)】