説明

工作機械の変位評価方法

【課題】短時間で容易に機械の変位評価を実施することができ、且つ、アナログ量で機械の変位量を把握することができる工作機械の変位評価方法を提供する。
【解決手段】互いに直交するX,Y,Z軸を有する工作機械に対し、例えば、溝加工面61bを有する変位評価用ワーク61を、溝加工面61bがX軸方向に対して傾斜し、且つ、溝加工面61bの一端側の辺61b−1がY軸方向に対して平行な状態となるように設置し、この状態で、工具62をZ軸方向には移動させずにX軸方向に移動させることによって溝加工面61bに直線状の溝63を形成する溝加工を実施し、且つ、この溝加工を、工具62をY軸方向へ順次移動させるごとに実施して各列の直線状の溝63が互いに平行となるようにすることにより、Z軸方向の変位を評価する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は工作機械の変位評価方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に工作機械などの制御系では、図6に示すような機械端の位置情報を位置検出器1で検出して位置フィードバックとして使用するフルクローズドループのフィードバック制御系を採用しているが、機械内に有する主軸やサーボモータ2などの熱源及び外気の温度変化によって機械変位が発生するため、各移動軸の位置決め精度や3次元空間における位置決め精度などの静的精度が悪化する。なお、機械変位は単に熱変位によるものだけでなく、機械の自重によるたわみなどによっても発生する。
更に、工作機械などの制御系として図7に示すようなセミクローズドループのフィードバック制御系を採用した場合には、パルスコーダ3で検出したサーボモータ2の回転位置を位置フィードバックとして使用しているため、静的精度は更に悪化する傾向となる。
なお、図6及び図7において、4は減速ギヤ、5はボールスクリュー、6は移動体(テーブル)、Kpは位置ループゲイン、Kvは速度ループ比例ゲイン、Kviは速度ループ積分ゲイン、sはラプラス演算子である。
【0003】
上記のような機械変位による静的精度の悪化、特に熱などに起因して発生する機械変位による静的精度の悪化は加工誤差増大の大きな要因の一つであり、現在でもなお大きな問題である。この熱に起因して発生する機械変位による静的精度悪化の対策としては、従来より、図8及び図9に示すような温度センサによる工作機械の熱変位補正システムなどが提案されている。詳細な説明は省略するが、図8は立形マシニングセンタの熱変位補正システム(熱変位補正機能)であり、この熱変位補正システムでは温度センサ11を機械の各部(コラム12、サドル13、ヘッド14、テーブル16、ワーク17、ベッド18)に埋め込み、これらの温度センサ11によって計測した温度データを基にして機械の熱変位量を簡易的な算術式を用いて推測し、その変位量だけ機械座標などをシフトさせることにより機械変位量を補償する。なお、図8中の15は主軸である。図9は門形マシニングセンタの熱変位補正システム(熱変位補正機能)であり、この熱変位補正システムでは温度センサ21を機械の各部(コラム22、クロスレール23、サドル24、主軸25、テーブル26、ワーク27、ベッド28)に埋め込み、これらの温度センサ21によって計測した温度データを基にして機械の熱変位量を簡易的な算術式を用いて推測し、その変位量だけ機械座標などをシフトさせることにより機械変位量を補償する。
【0004】
一方では、精度の悪化を抑制する過程で、機械の変位量を把握する必要がある。その方法としては、下記の特許文献1にも示されている通り、主に以下の3つの方法がある。
【0005】
(1) 図10に示す方法は、主軸31にテストバー32を装着し、テーブル34上にダイヤルゲージなどの接触センサ33又は非接触式センサを、テストバー32に対して敷設することにより、時間経過とともに(各時刻において)機械変位を測定する方法である。
(2) 図11(a)に示す方法は、時間経過とともに(各時刻T0,T1,T2,T3,T4,T5,T6において)、ボールエンドミルによりワーク35に縦方向と横方向の溝加工を行って格子状の溝36,37を形成することにより、一方向の基準溝36に対して他方向の溝37が交わるようにして、これらの交差部分の溝底に現れた溝幅の状態から相対的に変位量を計測する方法である。図11(b)における左側の拡大図は時刻T1のときに加工した溝37が時刻T0のときに加工した基準溝36に比べて深い場合の例であり、右側の拡大図は時刻T1のときに加工した溝37が時刻T0のときに加工した基準溝36に比べて浅い場合の例である。
(3) 図12に示す方法は、ワーク41の平面41a上に深さ一定としてフラットエンドミル42で時間経過とともに(各時刻T0,T1,T2,T3,T4において)溝切削もしくは片肉切削を行い、その切削部の底面の深さZを測定することにより変位量を把握する方法である。
【0006】
しかし、(1)の方法は数値評価であり、加工での変位量を把握することはできない。(2)の方法は加工ワーク35上で変位を直接視認はできるが、数値評価をするには計算式を用いる必要があり、数値評価を直接的にできない。(3)の方法は深さ測定を行わないと評価できない。即ち、いずれの方法も変位量を数値的に直接視認できないという問題点がある。
【0007】
その対策として、下記の特許文献1では図13に示すような方法が提案されている。この方法は、加工深さを一定量ずつ変化させた複数の四角形状の溝51をワーク52の表面52aに一定のピッチで一列に加工する溝加工を1セットとして実施し、且つ、このような1セットの溝加工を一定時間間隔で(各時刻T0,T1,T2,T3,T4,T5,T6において)行うことにより、図示例のようなサーモマトリックスを得る方法である。この方法では、機械の変位量を直接視認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4128929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記のような加工深さを一定量ずつ変化させた四角形状の溝51をワーク52の表面52aに一定のピッチで一列に加工する方法では、次のような問題点がある。
【0010】
(1) 加工深さを一定量ずつ変化させた四角形状の溝51を複数加工する必要があるため、加工に手間がかかり、1セットの溝加工における時間が少なからず必要である。
(2) しかも、1セットの溝加工における時間が少なからず必要であるため、1セットの溝加工における最初の溝51の加工と最後の溝51の加工の間には比較的大きな時間のずれが発生する。このため、例えば最初の溝51の加工と最後の溝51の加工における温度などの条件が変化してしまう可能性がある。
(3) 加工深さを一定量ずつ変化させた四角形状の溝51を一定のピッチで加工するため、ディジタル量でしか機械の変位量を把握することができない。
【0011】
従って本発明は上記の事情に鑑み、短時間で容易に機械の変位評価を実施することができ、且つ、アナログ量で機械の変位量を把握することができる工作機械の変位評価方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する第1発明の工作機械の変位評価方法は、互いに直交する第1直線移動軸と第2直線移動軸と第3直線移動軸とを有する工作機械に対し、前記第1直線移動軸方向の変位を評価する方法であって、
溝加工面を有する変位評価用ワークを、前記溝加工面が前記第2直線移動軸方向に対して傾斜し、且つ、前記溝加工面の一端側の辺が前記第3直線移動軸方向に対して平行な第1状態となる、又は、前記溝加工面が前記第3直線移動軸方向に対して傾斜し、且つ、前記溝加工面の一端側の辺が前記第2直線移動軸方向に対して平行な第2状態となるように設置し、
前記第1状態で、工具を前記第1直線移動軸方向には移動させずに前記第2直線移動軸方向に移動させることによって前記溝加工面に直線状の溝を形成する第1溝加工を実施し、且つ、この第1溝加工を、前記工具を前記第3直線移動軸方向へ順次移動させるごとに実施して各列の直線状の溝が互いに平行となるようにする、又は、前記第2状態で、工具を前記第1直線移動軸方向には移動させずに前記第3直線移動軸方向に移動させることによって前記溝加工面に直線状の溝を形成する第2溝加工を実施し、且つ、この第2溝加工を、前記工具を前記第2直線移動軸方向へ順次移動させるごとに実施して各列の直線状の溝が互いに平行となるようにすることを特徴とする。
【0013】
また、第2発明の工作機械の変位評価方法は、互いに直交する第1直線移動軸と第2直線移動軸と第3直線移動軸とを有する工作機械に対し、前記第1直線移動軸方向の変位と前記第2直線移動軸方向の変位と前記第3直線移動軸方向の変位とを評価する方法であって、
互いに直交する第1設置面と第2設置面と第3設置面とを有するワーク設置用治具と、第1溝加工面を有する第1変位評価用ワークと、第2溝加工面を有する第2変位評価用ワークと、第3溝加工面を有する第3変位評価用ワークとを用い、
前記第1変位評価用ワークを、前記第1溝加工面が前記第2直線移動軸方向に対して傾斜し、且つ、前記第1溝加工面の一端側の辺が前記第3直線移動軸方向に対して平行な第1状態となる、又は、前記第1溝加工面が前記第3直線移動軸方向に対して傾斜し、且つ、前記第1溝加工面の一端側の辺が前記第2直線移動軸方向に対して平行な第2状態となるように前記第1設置面に設置し、
前記第2変位評価用ワークを、前記第2溝加工面が前記第3直線移動軸方向に対して傾斜し、且つ、前記第2溝加工面の一端側の辺が前記第1直線移動軸方向に対して平行な第3状態となる、又は、前記第2溝加工面が前記第1直線移動軸方向に対して傾斜し、且つ、前記第2溝加工面の一端側の辺が前記第3直線移動軸方向に対して平行な第4状態となるように前記第2設置面に設置し、
前記第3変位評価用ワークを、前記第3溝加工面が前記第1直線移動軸方向に対して傾斜し、且つ、前記第3溝加工面の一端側の辺が前記第2直線移動軸方向に対して平行な第5状態となる、又は、前記第3溝加工面が前記第2直線移動軸方向に対して傾斜し、且つ、前記第3溝加工面の一端側の辺が前記第1直線移動軸方向に対して平行な第6状態となるように前記第3設置面に設置し、
前記第1状態で、工具を前記第1直線移動軸方向には移動させずに前記第2直線移動軸方向に移動させることによって前記第1溝加工面に直線状の溝を形成する第1溝加工を実施し、且つ、この第1溝加工を、前記工具を前記第3直線移動軸方向へ順次移動させるごとに実施して各列の直線状の溝が互いに平行となるようにする、又は、前記第2状態で、工具を前記第1直線移動軸方向には移動させずに前記第3直線移動軸方向に移動させることによって前記第1溝加工面に直線状の溝を形成する第2溝加工を実施し、且つ、この第2溝加工を、前記工具を前記第2直線移動軸方向へ順次移動させるごとに実施して各列の直線状の溝が互いに平行となるようにすること、
前記第3状態で、工具を前記第2直線移動軸方向には移動させずに前記第3直線移動軸方向に移動させることによって前記第2溝加工面に直線状の溝を形成する第3溝加工を実施し、且つ、この第3溝加工を、前記工具を前記第1直線移動軸方向へ順次移動させるごとに実施して各列の直線状の溝が互いに平行となるようにする、又は、前記第4状態で、工具を前記第2直線移動軸方向には移動させずに前記第1直線移動軸方向に移動させることによって前記第2溝加工面に直線状の溝を形成する第4溝加工を実施し、且つ、この第4溝加工を、前記工具を前記第3直線移動軸方向へ順次移動させるごとに実施して各列の直線状の溝が互いに平行となるようにすること、
前記第5状態で、工具を前記第3直線移動軸方向には移動させずに前記第1直線移動軸方向に移動させることによって前記第3溝加工面に直線状の溝を形成する第5溝加工を実施し、且つ、この第5溝加工を、前記工具を前記第2直線移動軸方向へ順次移動させるごとに実施して各列の直線状の溝が互いに平行となるようにする、又は、前記第6状態で、工具を前記第3直線移動軸方向には移動させずに前記第2直線移動軸方向に移動させることによって前記第3溝加工面に直線状の溝を形成する第6溝加工を実施し、且つ、この第6溝加工を、前記工具を前記第1直線移動軸方向へ順次移動させるごとに実施して各列の直線状の溝が互いに平行となるようにすること、
を特徴とする。
【0014】
また、第3発明の工作機械の変位評価方法は、第1又は第2発明の工作機械の変位評価方法において、
前記変位評価用ワークは側面の一端側から他端側に向かって側面の厚さが徐々に変化していることにより、前記溝加工面が前記第2直線移動軸方向又は前記第3直線移動軸方向に対して傾斜しているものであること、
又は、前記第1変位評価用ワークは側面の一端側から他端側に向かって側面の厚さが徐々に変化していることにより、前記第1溝加工面が前記第2直線移動軸方向又は前記第3直線移動軸方向に対して傾斜しているものであり、前記第2変位評価用ワークは側面の一端側から他端側に向かって側面の厚さが徐々に変化していることにより、前記第2溝加工面が前記第3直線移動軸方向又は前記第1直線移動軸方向に対して傾斜しているものであり、前記第3変位評価用ワークは側面の一端側から他端側に向かって側面の厚さが徐々に変化していることにより、前記第3溝加工面が前記第1直線移動軸方向又は前記第2直線移動軸方向に対して傾斜しているものであること、
を特徴とする。
【0015】
また、第4発明の工作機械の変位評価方法は、第1又は第2発明の工作機械の変位評価方法において、
前記変位評価用ワークはワーク傾斜用治具に取り付けて前記変位評価用ワーク全体を傾斜させることにより、前記溝加工面が前記第2直線移動軸方向又は前記第3直線移動軸方向に対して傾斜しているものであること、
又は、前記第1変位評価用ワークはワーク傾斜用治具に取り付けて前記第1変位評価用ワーク全体を傾斜させることにより、前記第1溝加工面が前記第2直線移動軸方向又は前記第3直線移動軸方向に対して傾斜しているものであり、前記第2変位評価用ワークはワーク傾斜用治具に取り付けて前記第2変位評価用ワーク全体を傾斜させることにより、前記第2溝加工面が前記第3直線移動軸方向又は前記第1直線移動軸方向に対して傾斜しているものであり、前記第3変位評価用ワークはワーク傾斜用治具に取り付けて前記第3変位評価用ワーク全体を傾斜させることにより、前記第3溝加工面が前記第1直線移動軸方向又は前記第2直線移動軸方向に対して傾斜しているものであること、
を特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
第1発明の工作機械の変位評価方法によれば、互いに直交する第1直線移動軸と第2直線移動軸と第3直線移動軸とを有する工作機械に対し、前記第1直線移動軸方向の変位を評価する方法であって、溝加工面を有する変位評価用ワークを、前記溝加工面が前記第2直線移動軸方向に対して傾斜し、且つ、前記溝加工面の一端側の辺が前記第3直線移動軸方向に対して平行な第1状態となる、又は、前記溝加工面が前記第3直線移動軸方向に対して傾斜し、且つ、前記溝加工面の一端側の辺が前記第2直線移動軸方向に対して平行な第2状態となるように設置し、前記第1状態で、工具を前記第1直線移動軸方向には移動させずに前記第2直線移動軸方向に移動させることによって前記溝加工面に直線状の溝を形成する第1溝加工を実施し、且つ、この第1溝加工を、前記工具を前記第3直線移動軸方向へ順次移動させるごとに実施して各列の直線状の溝が互いに平行となるようにする、又は、前記第2状態で、工具を前記第1直線移動軸方向には移動させずに前記第3直線移動軸方向に移動させることによって前記溝加工面に直線状の溝を形成する第2溝加工を実施し、且つ、この第2溝加工を、前記工具を前記第2直線移動軸方向へ順次移動させるごとに実施して各列の直線状の溝が互いに平行となるようにすることを特徴としているため、溝深さ方向の工具位置を変化させる必要がなく、短時間且つ容易に直線状の溝を加工することができる。従って、変位評価作業を短時間且つ容易に行うことができ、且つ、各溝を加工する際の時間ずれがほとんどないため、より精度のよい変位評価を行うことができる。また、直線状の各溝が棒グラフ状に表現されるため、機械の変位量をアナログ量(各溝の長さ)として直接視認することができる。
【0017】
第2発明の工作機械の変位評価方法によれば、互いに直交する第1直線移動軸と第2直線移動軸と第3直線移動軸とを有する工作機械に対し、前記第1直線移動軸方向の変位と前記第2直線移動軸方向の変位と前記第3直線移動軸方向の変位とを評価する方法であって、互いに直交する第1設置面と第2設置面と第3設置面とを有するワーク設置用治具と、第1溝加工面を有する第1変位評価用ワークと、第2溝加工面を有する第2変位評価用ワークと、第3溝加工面を有する第3変位評価用ワークとを用い、前記第1変位評価用ワークを、前記第1溝加工面が前記第2直線移動軸方向に対して傾斜し、且つ、前記第1溝加工面の一端側の辺が前記第3直線移動軸方向に対して平行な第1状態となる、又は、前記第1溝加工面が前記第3直線移動軸方向に対して傾斜し、且つ、前記第1溝加工面の一端側の辺が前記第2直線移動軸方向に対して平行な第2状態となるように前記第1設置面に設置し、前記第2変位評価用ワークを、前記第2溝加工面が前記第3直線移動軸方向に対して傾斜し、且つ、前記第2溝加工面の一端側の辺が前記第1直線移動軸方向に対して平行な第3状態となる、又は、前記第2溝加工面が前記第1直線移動軸方向に対して傾斜し、且つ、前記第2溝加工面の一端側の辺が前記第3直線移動軸方向に対して平行な第4状態となるように前記第2設置面に設置し、前記第3変位評価用ワークを、前記第3溝加工面が前記第1直線移動軸方向に対して傾斜し、且つ、前記第3溝加工面の一端側の辺が前記第2直線移動軸方向に対して平行な第5状態となる、又は、前記第3溝加工面が前記第2直線移動軸方向に対して傾斜し、且つ、前記第3溝加工面の一端側の辺が前記第1直線移動軸方向に対して平行な第6状態となるように前記第3設置面に設置し、前記第1状態で、工具を前記第1直線移動軸方向には移動させずに前記第2直線移動軸方向に移動させることによって前記第1溝加工面に直線状の溝を形成する第1溝加工を実施し、且つ、この第1溝加工を、前記工具を前記第3直線移動軸方向へ順次移動させるごとに実施して各列の直線状の溝が互いに平行となるようにする、又は、前記第2状態で、工具を前記第1直線移動軸方向には移動させずに前記第3直線移動軸方向に移動させることによって前記第1溝加工面に直線状の溝を形成する第2溝加工を実施し、且つ、この第2溝加工を、前記工具を前記第2直線移動軸方向へ順次移動させるごとに実施して各列の直線状の溝が互いに平行となるようにすること、前記第3状態で、工具を前記第2直線移動軸方向には移動させずに前記第3直線移動軸方向に移動させることによって前記第2溝加工面に直線状の溝を形成する第3溝加工を実施し、且つ、この第3溝加工を、前記工具を前記第1直線移動軸方向へ順次移動させるごとに実施して各列の直線状の溝が互いに平行となるようにする、又は、前記第4状態で、工具を前記第2直線移動軸方向には移動させずに前記第1直線移動軸方向に移動させることによって前記第2溝加工面に直線状の溝を形成する第4溝加工を実施し、且つ、この第4溝加工を、前記工具を前記第3直線移動軸方向へ順次移動させるごとに実施して各列の直線状の溝が互いに平行となるようにすること、前記第5状態で、工具を前記第3直線移動軸方向には移動させずに前記第1直線移動軸方向に移動させることによって前記第3溝加工面に直線状の溝を形成する第5溝加工を実施し、且つ、この第5溝加工を、前記工具を前記第2直線移動軸方向へ順次移動させるごとに実施して各列の直線状の溝が互いに平行となるようにする、又は、前記第6状態で、工具を前記第3直線移動軸方向には移動させずに前記第2直線移動軸方向に移動させることによって前記第3溝加工面に直線状の溝を形成する第6溝加工を実施し、且つ、この第6溝加工を、前記工具を前記第1直線移動軸方向へ順次移動させるごとに実施して各列の直線状の溝が互いに平行となるようにすることを特徴としているため、溝深さ方向の工具位置を変化させる必要がなく、短時間且つ容易に直線状の溝を加工することができる。従って、変位評価作業を短時間且つ容易に行うことができ、且つ、各溝を加工する際の時間ずれがほとんどないため、より精度のよい変位評価を行うことができる。また、直線状の各溝が棒グラフ状に表現されるため、機械の変位量をアナログ量(各溝の長さ)として直接視認することができる。しかも、変位評価用ワークを取り換えることなく、第1直線移動軸方向の変位評価と第2直線移動軸方向の変位評価と第3直線移動軸方向の変位評価とを実施することがでるきため、効率的に変位評価作業を実施することができる。
【0018】
第3発明の工作機械の変位評価方法によれば、第1又は第2発明の工作機械の変位評価方法において、前記変位評価用ワークは側面の一端側から他端側に向かって側面の厚さが徐々に変化していることにより、前記溝加工面が前記第2直線移動軸方向又は前記第3直線移動軸方向に対して傾斜しているものであること、又は、前記第1変位評価用ワークは側面の一端側から他端側に向かって側面の厚さが徐々に変化していることにより、前記第1溝加工面が前記第2直線移動軸方向又は前記第3直線移動軸方向に対して傾斜しているものであり、前記第2変位評価用ワークは側面の一端側から他端側に向かって側面の厚さが徐々に変化していることにより、前記第2溝加工面が前記第3直線移動軸方向又は前記第1直線移動軸方向に対して傾斜しているものであり、前記第3変位評価用ワークは側面の一端側から他端側に向かって側面の厚さが徐々に変化していることにより、前記第3溝加工面が前記第1直線移動軸方向又は前記第2直線移動軸方向に対して傾斜しているものであることを特徴としているため、特に手間のかかる作業を要することなく、第1直線移動軸方向、第2直線移動軸方向又は第3直線移動軸方向に対して変位評価用ワークの溝加工面を傾斜させることができる。
【0019】
第4発明の工作機械の変位評価方法によれば、第1又は第2発明の工作機械の変位評価方法において、前記変位評価用ワークはワーク傾斜用治具に取り付けて前記変位評価用ワーク全体を傾斜させることにより、前記溝加工面が前記第2直線移動軸方向又は前記第3直線移動軸方向に対して傾斜しているものであること、又は、前記第1変位評価用ワークはワーク傾斜用治具に取り付けて前記第1変位評価用ワーク全体を傾斜させることにより、前記第1溝加工面が前記第2直線移動軸方向又は前記第3直線移動軸方向に対して傾斜しているものであり、前記第2変位評価用ワークはワーク傾斜用治具に取り付けて前記第2変位評価用ワーク全体を傾斜させることにより、前記第2溝加工面が前記第3直線移動軸方向又は前記第1直線移動軸方向に対して傾斜しているものであり、前記第3変位評価用ワークはワーク傾斜用治具に取り付けて前記第3変位評価用ワーク全体を傾斜させることにより、前記第3溝加工面が前記第1直線移動軸方向又は前記第2直線移動軸方向に対して傾斜しているものであることを特徴としているため、特別な形状の変位評価用ワークを用意することなく、容易に変位評価作業を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態例1に係る工作機械の変位評価方法の説明図であり、(a)には変位評価用ワークの側面図を示し、(b)には変位評価用ワークの平面図を示し、(c)には変位評価用ワークの斜視図を示す。
【図2】本発明の実施の形態例1に係る工作機械の変位評価方法による評価結果の説明図であり、(a)には変位評価用ワークの平面図を示し、(b)には変位評価用ワークの側面図を示し、(c)には気温変化を示す。
【図3】本発明の実施の形態例1に係る工作機械の変位評価方法による評価結果から溝長さを算出する方法の説明図であり、(a)には変位評価用ワークの側面図を示し、(b)には変位評価用ワークの平面図を示す。
【図4】本発明の実施の形態例2に係る工作機械の変位評価方法の説明図であり、(a)には変位評価用ワークの側面図を示し、(b)には変位評価用ワークの平面図を示す。
【図5】本発明の実施の形態例3に係る工作機械の変位評価方法の説明図(斜視図)である。
【図6】従来のフルクローズドループのフィードバック制御系のブロック図である。
【図7】従来のセミクローズドループのフィードバック制御系のブロック図である。
【図8】従来の立形マシニングセンタの温度センサによる熱変位補正システムのブロック図である。
【図9】従来の門形マシニングセンタの温度センサによる熱変位補正システムのブロック図である。
【図10】従来のテストバーを用いた変位量の測定方法の説明図である。
【図11】従来の格子状溝による変位量の測定方法の説明図であり、(a)はワークの平面図、(b)は(a)のA部拡大図である。
【図12】従来のワーク上の切削部深さによる変位量の測定方法の説明図である。
【図13】従来の加工深さを一定量ずつ変化させた四角形状の溝をワーク表面に一定のピッチで一列に加工することによる変位量の測定方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0022】
<実施の形態例1>
図1(a),図1(b)及び図1(c)に示すように、本発明の実施の形態例1の工作機械の変位評価方法では、矩形状の溝加工面(表面)61bを有する変位評価用ワーク61を用いる。変位評価用ワーク61は、工作機械(図示省略)のテーブル64上に設置される。工作機械は互いに直交するZ軸(第1直線移動軸)とX軸(第2直線移動軸)とY軸(第3直線移動軸)とを有しており、ここではZ軸方向(第1直線移動軸方向)の変位を評価する場合について説明する。
【0023】
変位評価用ワーク61は平面視が矩形状である一方、側面61aの一端側の辺61a−1側から他端側の辺61a−2に向かって側面61aの厚さが徐々に変化(減少)することにより、溝加工面61bが傾斜している。また、変位評価用ワーク61は、溝加工面61bが、X軸方向に対して傾斜し、且つ、溝加工面61bの一端側の辺61b−1がY軸方向に対して平行な状態となるように設置されている。図示例では側面61aの一端側の辺61a−1と他端側の辺61a−2の厚さの差、即ち溝加工面61bの一端側の辺61b−1と他端側の辺61b−2のZ軸方向位置の差が、24μmとなるように溝加工面61bの傾斜が設定されている。
【0024】
そして、工作機械によってフラットエンドミルである工具62(これに限らず、工具62はボールエンドミルなどでもよい)を、Z軸方向には移動させずに(Z軸方向における溝底の位置は変化させずに)、矢印Bの如くX軸方向に移動させることによって溝加工面61bに直線状の溝63を形成する。即ち、X軸方向に延びた溝63を形成する。また、このような溝加工を、工具62をY軸方向へ順次移動させるごとに(即ち時間経過とともに各時刻T0,T1,T2,T3,T4,T5,T6,T7,T8において)実施することにより、各列の直線状の溝63が互いに平行となるようにする。
【0025】
図2(a)及び図2(b)に示す例では、時刻T0において溝63を加工したときのZ軸方向の熱変位量ΔZを基準(ΔZ=0μm)とすると、例えば時刻T1において溝63を加工したときの熱変位量ΔZは−1.0μmとなっており、時刻T3において溝63を加工したときの熱変位量ΔZは−4.0μmとなっている。即ち、図2(c)に例示するような気温の変化に応じて生じる各時刻T0〜T8の熱変位量ΔZの変化が、各時刻T0〜T8において加工した溝63の長さ(X軸方向の長さ)の変化として表れる。従って、これらの溝63の長さの変化を直接視認することによって熱変位量ΔZの変化を把握することができる。また、工作機械の主軸やサーボモータなどの熱源による熱変位や機械の自重による変位などに対しても、同様に評価することができる。
【0026】
図3(a)及び図3(b)に基づき、溝63の長さとZ軸方向の変位量との関係式について説明する。時刻T0において加工した基準の溝63の長さL1は、下記の(1)式から求められる。Lは変位評価用ワーク61の長さ(X軸方向の長さ)である。そして、時刻T1において加工した溝63の長さL2と、Z軸方向の変位量ΔZとの関係式は、(2)式となる。ΔLはL1とL2の差である。Zは溝加工面61bの一端側の辺61b−1と他端側の辺61b−2のZ軸方向位置の差であり、この差は例えば図1(a)に示すように24μmに設定されている。L,Zは変位評価用ワーク61の形状によって決まる既知の値である。従って、L2を計測すれば、このL2の計測値とL,Zの値とから、(2)式によって変位量ΔZを求めることができる。他の時刻T2〜T8における溝63に関しても、(2)式と同様の関係式となり、当該関係式によって変位量ΔZを求めることができる。
【数1】

【0027】
なお、上記では工具62をX軸方向に移動させてX軸方向に延びた溝63を形成したが、これに限定するものではなく、変位評価用ワーク61の向きを変えることにより、工具62をY軸方向に移動させてY軸方向に延びた溝63を形成してもよい。即ち、図示は省略するが、変位評価用ワーク61を、溝加工面61bがY軸方向に対して傾斜し、且つ、溝加工面61bの一端側の辺61b−1がX軸方向に対して平行な状態となるように設置し、この状態で、工具62をZ軸方向には移動させずにY軸方向に移動させることによって溝加工面61bに直線状の溝63を形成する溝加工を実施し、且つ、この溝加工を、工具62をX軸方向へ順次移動させるごとに実施して各列の直線状の溝63が互いに平行となるようにしてもよい。
【0028】
以上のように、本実施の形態例1の工作機械の変位評価方法によれば、互いに直交するX,Y,Z軸を有する工作機械に対し、例えばZ軸方向の変位を評価する場合、溝加工面61bを有する変位評価用ワーク61を、溝加工面61bがX軸方向に対して傾斜し、且つ、溝加工面61bの一端側の辺61b−1がY軸方向に対して平行な第1状態となる、又は、溝加工面61bがY軸方向に対して傾斜し、且つ、溝加工面61bの一端側の辺61b−1がX軸方向に対して平行な第2状態となるように設置し、前記第1状態で、工具62をZ軸方向には移動させずにX軸方向に移動させることによって溝加工面61bに直線状の溝63を形成する第1溝加工を実施し、且つ、この第1溝加工を、工具62をY軸方向へ順次移動させるごとに実施して各列の直線状の溝63が互いに平行となるようにする、又は、前記第2状態で、工具62をZ軸方向には移動させずにY軸方向に移動させることによって溝加工面61bに直線状の溝63を形成する第2溝加工を実施し、且つ、この第2溝加工を、工具62をX軸方向へ順次移動させるごとに実施して各列の直線状の溝63が互いに平行となるようにすることを特徴としているため、溝深さ方向の工具位置を変化させる必要がなく、短時間且つ容易に直線状の溝63を加工することができる。従って、変位評価作業を短時間且つ容易に行うことができ、且つ、各溝63を加工する際の時間ずれがほとんどないため、より精度のよい変位評価を行うことができる。また、直線状の各溝63が棒グラフ状に表現されるため、機械の変位量をアナログ量(各溝の長さ)として直接視認することができる。
【0029】
また、本実施の形態例1の工作機械の変位評価方法によれば、例えばZ軸方向の変位を評価する場合、変位評価用ワーク61は側面61aの一端側から他端側に向かって側面61aの厚さが徐々に変化していることにより、溝加工面61bがX軸方向又はY軸方向に対して傾斜しているものであることを特徴としているため、特に手間のかかる作業を要することなく、X軸方向又はY軸方向に対して変位評価用ワーク61の溝加工面61bを傾斜させることができる。
【0030】
なお、上記ではZ軸方向の変位評価の例について説明したが、X軸方向の変位やY軸方向の変位についても上記のようなZ軸方向の変位評価方法と同様の方法で評価することができる。詳細な説明は省略するが、X軸方向の変位評価を行う場合にはX軸を第1直線移動軸、Y軸を第2直線移動軸、Z軸を第3直線移動軸と見做せばよく、Y軸方向の変位評価を行う場合にはY軸を第1直線移動軸、Z軸を第2直線移動軸、X軸を第3直線移動軸と見做せばよい。
【0031】
また、工具62は変位評価用ワーク61に対して相対的に移動すればよい。即ち、溝加工などのために工具62をX軸方向、Y軸方向又はZ軸方向に移動させる場合、工具62を実際にX軸方向、Y軸方向又はZ軸方向に移動させる方法に限らず、変位評価用ワーク61をX軸方向、Y軸方向又はZ軸方向に移動させることによって相対的に工具62をX軸方向、Y軸方向又はZ軸方向に移動させる方法であってもよい。
【0032】
<実施の形態例2>
図4(a)及び図4(b)に示すように、本発明の実施の形態例2の工作機械の変位評価方法では、矩形状の溝加工面(表面)71bを有する変位評価用ワーク71を用いる。変位評価用ワーク71は、工作機械(図示省略)のテーブル74上に設置される。工作機械は互いに直交するZ軸(第1直線移動軸)とX軸(第2直線移動軸)とY軸(第3直線移動軸)とを有しており、ここではZ軸方向(第1直線移動軸方向)の変位を評価する場合について説明する。
【0033】
変位評価用ワーク71は単なる矩形の板状(直方体状)のものである。即ち、変位評価用ワーク71は平面視が矩形状であり、且つ、側面71aも一端側の辺71a−1側から他端側の辺71a−2まで一定の厚さのものである。そして、変位評価用ワーク71はテーブル74上に設けられたワーク傾斜用治具75に取り付けて(変位評価用ワーク71の一端部をワーク傾斜用治具75上に設置して)、変位評価用ワーク71全体を傾斜させることにより、溝加工面71bがX軸方向に対して傾斜している。図示例では、溝加工面71bの一端側の辺71b−1と他端側の辺71b−2のZ軸方向位置の差が24μmとなるように溝加工面71bの傾斜が設定されている。
【0034】
そして、工作機械によってフラットエンドミルである工具72(これに限らず、工具72はボールエンドミルなどでもよい)を、Z軸方向には移動させずに(Z軸方向における溝底の位置は変化させずに)、矢印Cの如くX軸方向に移動させることによって溝加工面71bに直線状の溝73を形成する。即ち、X軸方向に延びた溝73を形成する。また、このような溝加工を、工具72をY軸方向へ順次移動させるごとに(即ち時間経過とともに各時刻T0,T1,T2,T3,T4,T5,T6,T7,T8において)実施することにより、各列の直線状の溝73が互いに平行となるようにする。このとき、気温の変化に応じて生じる各時刻T0〜T8の熱変位量ΔZの変化が、各時刻T0〜T8において加工した溝73の長さ(X軸方向の長さ)の変化として表れるため、これらの溝73の長さの変化を直接視認することによって熱変位量ΔZの変化を把握することができる。また、工作機械の主軸やサーボモータなどの熱源による熱変位や機械の自重による変位などに対しても、同様に評価することができる。
【0035】
なお、上記では工具72をX軸方向に移動させてX軸方向に延びた溝73を形成したが、これに限定するものではなく、変位評価用ワーク71の向きを変えることにより、工具72をY軸方向に移動させてY軸方向に延びた溝73を形成してもよい。即ち、図示は省略するが、変位評価用ワーク71を、溝加工面71bがY軸方向に対して傾斜し、且つ、溝加工面71bの一端側の辺71b−1がX軸方向に対して平行な状態となるように設置し、この状態で、工具72をZ軸方向には移動させずにY軸方向に移動させることによって溝加工面71bに直線状の溝73を形成する溝加工を実施し、且つ、この溝加工を、工具72をX軸方向へ順次移動させるごとに実施して各列の直線状の溝73が互いに平行となるようにしてもよい。
【0036】
以上のように、本実施の形態例2の工作機械の変位評価方法によれば、互いに直交するX,Y,Z軸を有する工作機械に対し、例えばZ軸方向の変位を評価する場合、溝加工面71bを有する変位評価用ワーク71を、溝加工面71bがX軸方向に対して傾斜し、且つ、溝加工面71bの一端側の辺71b−1がY軸方向に対して平行な第1状態となる、又は、溝加工面71bがY軸方向に対して傾斜し、且つ、溝加工面71bの一端側の辺71b−1がX軸方向に対して平行な第2状態となるように設置し、前記第1状態で、工具72をZ軸方向には移動させずにX軸方向に移動させることによって溝加工面71bに直線状の溝73を形成する第1溝加工を実施し、且つ、この第1溝加工を、工具72をY軸方向へ順次移動させるごとに実施して各列の直線状の溝73が互いに平行となるようにする、又は、前記第2状態で、工具72をZ軸方向には移動させずにY軸方向に移動させることによって溝加工面71bに直線状の溝73を形成する第2溝加工を実施し、且つ、この第2溝加工を、工具72をX軸方向へ順次移動させるごとに実施して各列の直線状の溝73が互いに平行となるようにすることを特徴としているため、溝深さ方向の工具位置を変化させる必要がなく、短時間且つ容易に直線状の溝73を加工することができる。従って、変位評価作業を短時間且つ容易に行うことができ、且つ、各溝73を加工する際の時間ずれがほとんどないため、より精度のよい変位評価を行うことができる。また、直線状の各溝73が棒グラフ状に表現されるため、機械の変位量をアナログ量(各溝の長さ)として直接視認することができる。
【0037】
また、本実施の形態例2の工作機械の変位評価方法によれば、例えばZ軸方向の変位を評価する場合、変位評価用ワーク71はワーク傾斜用治具75に取り付けて変位評価用ワーク71全体を傾斜させることにより、溝加工面71bがX軸方向又はY軸方向に対して傾斜しているものであることを特徴としているため、特別な形状の変位評価用ワークを用意することなく、容易に変位評価作業を実施することができる。
【0038】
なお、上記ではZ軸方向の変位評価の例について説明したが、X軸方向の変位やY軸方向の変位についても上記のようなZ軸方向の変位評価方法と同様の方法で評価することができる。詳細な説明は省略するが、X軸方向の変位評価を行う場合にはX軸を第1直線移動軸、Y軸を第2直線移動軸、Z軸を第3直線移動軸と見做せばよく、Y軸方向の変位評価を行う場合にはY軸を第1直線移動軸、Z軸を第2直線移動軸、X軸を第3直線移動軸と見做せばよい。
【0039】
また、工具72は変位評価用ワーク71に対して相対的に移動すればよい。即ち、溝加工などのために工具72をX軸方向、Y軸方向又はZ軸方向に移動させる場合、工具72を実際にX軸方向、Y軸方向又はZ軸方向に移動させる方法に限らず、変位評価用ワーク71をX軸方向、Y軸方向又はZ軸方向に移動させることによって相対的に工具72をX軸方向、Y軸方向又はZ軸方向に移動させる方法であってもよい。
【0040】
<実施の形態例3>
図5に示すように、本発明の実施の形態例3の工作機械の変位評価方法では、ワーク設置用治具としてのイケール81と、矩形状の溝加工面101b(第1溝加工面)を有する変位評価用ワーク101(第1変位評価用ワーク)と、矩形状の溝加工面201b(第2溝加工面)を有する変位評価用ワーク201(第2変位評価用ワーク)と、矩形状の溝加工面301b(第3溝加工面)を有する変位評価用ワーク301(第3変位評価用ワーク)とを用いる。
【0041】
イケール81は、工作機械(図示省略)のテーブル83上に設置される。工作機械は互いに直交するZ軸(第1直線移動軸)とX軸(第2直線移動軸)とY軸(第3直線移動軸)とを有しており、本実施の形態例3ではZ軸方向(第1直線移動軸方向)の変位評価と、X軸方向(第2直線移動軸方向)の変位評価と、Y軸方向(第3直線移動軸方向)の変位評価とを行う。
【0042】
イケール81は立方体状のものであり、互いに直交する第1設置面81aと、第2設置面81bと、第3設置面81cとを有している。変位評価用ワーク101,201,301は、何れも上記実施の形態例1の変位評価用ワーク61(図1(a),図1(b),図1(b)参照)と同様の形状のものである。
【0043】
即ち、変位評価用ワーク101は平面視が矩形状である一方、側面101aの一端側の辺101a−1側から他端側の辺101a−2に向かって側面101aの厚さが徐々に変化(減少)することにより、溝加工面101bが傾斜している。また、変位評価用ワーク101は、溝加工面101bが、X軸方向に対して傾斜し、且つ、溝加工面101bの一端側の辺101b−1がY軸方向に対して平行な状態となるように設置されている。
変位評価用ワーク201は平面視が矩形状である一方、側面201aの一端側の辺201a−1側から他端側の辺201a−2に向かって側面201aの厚さが徐々に変化(減少)することにより、溝加工面201bが傾斜している。また、変位評価用ワーク201は、溝加工面201bが、Z軸方向に対して傾斜し、且つ、溝加工面201bの一端側の辺201b−1がY軸方向に対して平行な状態となるように設置されている。
変位評価用ワーク301は平面視が矩形状である一方、側面301aの一端側の辺301a−1側から他端側の辺301a−2に向かって側面301aの厚さが徐々に変化(減少)することにより、溝加工面301bが傾斜している。また、変位評価用ワーク301は、溝加工面301bが、Z軸方向に対して傾斜し、且つ、溝加工面301bの一端側の辺301b−1がX軸方向に対して平行な状態となるように設置されている。
【0044】
そして、変位評価用ワーク101に対しては、工作機械によってフラットエンドミルである工具82(これに限らず、工具82はボールエンドミルなどでもよい)を、Z軸方向には移動させずに(Z軸方向における溝底の位置は変化させずに)、矢印Dの如くX軸方向に移動させることによって溝加工面101bに直線状の溝103を形成する。即ち、X軸方向に延びた溝103を形成する。また、このような溝加工を、工具82をY軸方向へ順次移動させるごとに(即ち時間経過とともに各時刻T0,T1,T2,T3,T4,T5,T6,T7において)実施することにより、各列の直線状の溝103が互いに平行となるようにする。このとき、気温の変化に応じて生じる各時刻T0〜T7の熱変位量ΔZの変化が、各時刻T0〜T7において加工した溝103の長さ(X軸方向の長さ)の変化として表れるため、これらの溝103の長さの変化を直接視認することによって熱変位量ΔZの変化を把握することができる。また、工作機械の主軸やサーボモータなどの熱源による熱変位や機械の自重による変位などに対しても、同様に評価することができる。
【0045】
また、変位評価用ワーク201に対しては、工具82を、X軸方向には移動させずに(X軸方向における溝底の位置は変化させずに)、矢印Eの如くZ軸方向に移動させることによって溝加工面201bに直線状の溝203を形成する。即ち、Z軸方向に延びた溝203を形成する。また、このような溝加工を、工具82をY軸方向へ順次移動させるごとに(即ち時間経過とともに各時刻T0,T1,T2,T3,T4,T5,T6,T7において)実施することにより、各列の直線状の溝203が互いに平行となるようにする。このとき、気温の変化に応じて生じる各時刻T0〜T7の熱変位量ΔXの変化が、各時刻T0〜T7において加工した溝203の長さ(Z軸方向の長さ)の変化として表れるため、これらの溝203の長さの変化を直接視認することによって熱変位量ΔXの変化を把握することができる。また、工作機械の主軸やサーボモータなどの熱源による熱変位や機械の自重による変位などに対しても、同様に評価することができる。
【0046】
また、変位評価用ワーク301に対しては、工具82を、Y軸方向には移動させずに(Y軸方向における溝底の位置は変化させずに)、矢印Fの如くZ軸方向に移動させることによって溝加工面301bに直線状の溝303を形成する。即ち、Z軸方向に延びた溝303を形成する。また、このような溝加工を、工具82をX軸方向へ順次移動させるごとに(即ち時間経過とともに各時刻T0,T1,T2,T3,T4,T5,T6,T7において)実施することにより、各列の直線状の溝303が互いに平行となるようにする。このとき、気温の変化に応じて生じる各時刻T0〜T7の熱変位量ΔYの変化が、各時刻T0〜T7において加工した溝303の長さ(Z軸方向の長さ)の変化として表れるため、これらの溝303の長さの変化を直接視認することによって熱変位量ΔYの変化を把握することができる。また、工作機械の主軸やサーボモータなどの熱源による熱変位や機械の自重による変位などに対しても、同様に評価することができる。
【0047】
なお、上記では変位評価用ワーク101に対しては工具82をX軸方向に移動させてX軸方向に延びた溝103を形成し、変位評価用ワーク201に対しては工具82をZ軸方向に移動させてZ軸方向に延びた溝203を形成し、変位評価用ワーク301に対しては工具82をZ軸方向に移動させてZ軸方向に延びた溝303を形成したが、これらに限定するものではなく、変位評価用ワーク101,201,203の向きを変えることにより、変位評価用ワーク101に対しては工具82をY軸方向に移動させてY軸方向に延びた溝103を形成し、変位評価用ワーク201に対しては工具82をY軸方向に移動させてY軸方向に延びた溝203を形成し、変位評価用ワーク301に対しては工具82をX軸方向に移動させてX軸方向に延びた溝303を形成してもよい。
【0048】
即ち、図示は省略するが、変位評価用ワーク101を、溝加工面101bがY軸方向に対して傾斜し、且つ、溝加工面101bの一端側の辺101b−1がX軸方向に対して平行な状態となるように設置し、この状態で、工具82をZ軸方向には移動させずにY軸方向に移動させることによって溝加工面101bに直線状の溝103を形成する溝加工を実施し、且つ、この溝加工を、工具82をX軸方向へ順次移動させるごとに実施して各列の直線状の溝103が互いに平行となるようにしてもよい。
また、変位評価用ワーク201を、溝加工面201bがY軸方向に対して傾斜し、且つ、溝加工面201bの一端側の辺201b−1がZ軸方向に対して平行な状態となるように設置し、この状態で、工具82をX軸方向には移動させずにY軸方向に移動させることによって溝加工面201bに直線状の溝203を形成する溝加工を実施し、且つ、この溝加工を、工具82をZ軸方向へ順次移動させるごとに実施して各列の直線状の溝203が互いに平行となるようにしてもよい。
また、変位評価用ワーク301を、溝加工面301bがX軸方向に対して傾斜し、且つ、溝加工面301bの一端側の辺301b−1がZ軸方向に対して平行な状態となるように設置し、この状態で、工具82をY軸方向には移動させずにX軸方向に移動させることによって溝加工面301bに直線状の溝303を形成する溝加工を実施し、且つ、この溝加工を、工具82をZ軸方向へ順次移動させるごとに実施して各列の直線状の溝303が互いに平行となるようにしてもよい。
【0049】
また、図示は省略するが、変位評価用ワーク101,201,301は、図5に示すような形状のものに限定するものではく、上記実施の形態例2の変位評価用ワーク71と同様に単なる矩形の板状(直方体状)のものを用い、ワーク傾斜用治具75(図4(a)参照)に取り付けて(変位評価用ワーク101,201,301の一端部をワーク傾斜用治具75上に設置して)、変位評価用ワーク101,201,301全体を傾斜させることにより、溝加工面101b,201b,301bがX軸方向、Y軸方向又はZ軸方向に対して傾斜するようにしてもよい。
【0050】
以上のように、本実施の形態例3の工作機械の変位評価方法によれば、互いに直交するX,Y,Z軸を有する工作機械に対し、Z軸方向の変位とX軸方向の変位とY軸方向の変位とを評価する方法であって、互いに直交する第1設置面81aと第2設置面81bと第3設置面81cとを有するイケール81と、溝加工面101bを有する変位評価用ワーク101と、溝加工面201bを有する変位評価用ワーク201と、溝加工面301bを有する変位評価用ワーク301とを用い、変位評価用ワーク101を、溝加工面101bがX軸方向に対して傾斜し、且つ、溝加工面101bの一端側の辺101b−1がY軸方向に対して平行な第1状態となる、又は、溝加工面101bがY軸方向に対して傾斜し、且つ、溝加工面101bの一端側の辺101b−1がX軸方向に対して平行な第2状態となるように第1設置面81aに設置し、変位評価用ワーク201を、溝加工面201bがY軸方向に対して傾斜し、且つ、溝加工面201bの一端側の辺201b−1がZ軸方向に対して平行な第3状態となる、又は、溝加工面201bがZ軸方向に対して傾斜し、且つ、溝加工面201bの一端側の辺201b−1がY軸方向に対して平行な第4状態となるように第2設置面81bに設置し、変位評価用ワーク301を、溝加工面301bがZ軸方向に対して傾斜し、且つ、溝加工面301bの一端側の辺301b−1がX軸方向に対して平行な第5状態となる、又は、溝加工面301bがX軸方向に対して傾斜し、且つ、溝加工面301bの一端側の辺301b−1がZ軸方向に対して平行な第6状態となるように第3設置面81cに設置し、前記第1状態で、工具82をZ軸方向には移動させずにX軸方向に移動させることによって溝加工面101bに直線状の溝103を形成する第1溝加工を実施し、且つ、この第1溝加工を、工具82をY軸方向へ順次移動させるごとに実施して各列の直線状の溝103が互いに平行となるようにする、又は、前記第2状態で、工具82をZ軸方向には移動させずにY軸方向に移動させることによって溝加工面101bに直線状の溝103を形成する第2溝加工を実施し、且つ、この第2溝加工を、工具82をX軸方向へ順次移動させるごとに実施して各列の直線状の溝103が互いに平行となるようにすること、前記第3状態で、工具82をX軸方向には移動させずにY軸方向に移動させることによって溝加工面201bに直線状の溝203を形成する第3溝加工を実施し、且つ、この第3溝加工を、工具82をZ軸方向へ順次移動させるごとに実施して各列の直線状の溝203が互いに平行となるようにする、又は、前記第4状態で、工具82をX軸方向には移動させずにZ軸方向に移動させることによって溝加工面201bに直線状の溝203を形成する第4溝加工を実施し、且つ、この第4溝加工を、工具82をY軸方向へ順次移動させるごとに実施して各列の直線状の溝203が互いに平行となるようにすること、前記第5状態で、工具82をY軸方向には移動させずにZ軸方向に移動させることによって溝加工面301bに直線状の溝303を形成する第5溝加工を実施し、且つ、この第5溝加工を、工具82をX軸方向へ順次移動させるごとに実施して各列の直線状の溝303が互いに平行となるようにする、又は、前記第6状態で、工具82をY軸方向には移動させずにX軸方向に移動させることによって溝加工面301bに直線状の溝303を形成する第6溝加工を実施し、且つ、この第6溝加工を、工具82をZ軸方向へ順次移動させるごとに実施して各列の直線状の溝303が互いに平行となるようにすることを特徴としているため、溝深さ方向の工具位置を変化させる必要がなく、短時間且つ容易に直線状の溝103,203,303を加工することができる。従って、変位評価作業を短時間且つ容易に行うことができ、且つ、各溝103,203,303を加工する際の時間ずれがほとんどないため、より精度のよい変位評価を行うことができる。また、直線状の各溝103,203,303が棒グラフ状に表現されるため、機械の変位量をアナログ量(各溝の長さ)として直接視認することができる。しかも、変位評価用ワークを取り換えることなく、Z軸方向の変位評価とX軸方向の変位評価とY軸方向の変位評価とを実施することがでるきため、効率的に変位評価作業を実施することができる。
【0051】
また、本実施の形態例3の工作機械の変位評価方法においても、変位評価用ワーク101,201,301の形状に関しては、上記実施の形態例1又は2の場合と同様の効果が得られる。
【0052】
なお、工具82は変位評価用ワーク101,201,301に対して相対的に移動すればよい。即ち、溝加工などのために工具82をX軸方向、Y軸方向又はZ軸方向に移動させる場合、工具82を実際にX軸方向、Y軸方向又はZ軸方向に移動させる方法に限らず、変位評価用ワーク101,102,103をX軸方向、Y軸方向又はZ軸方向に移動させることによって相対的に工具82をX軸方向、Y軸方向又はZ軸方向に移動させるものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は工作機械の変位評価方法に関するものであり、立形マシニングセンタや門形マシニングセンタなどの各種の工作機械における機械変位の評価に適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
61 変位評価用ワーク
61a 側面
61a−1 一端側の辺
61a−2 他端側の辺
61b 溝加工面
61b−1 一端側の辺
61b−2 他端側の辺
62 工具
63 溝
64 テーブル
71 変位評価用ワーク
71a 側面
71a−1 一端側の辺
71a−2 他端側の辺
71b 溝加工面
71b−1 一端側の辺
71b−2 他端側の辺
72 工具
73 溝
74 テーブル
75 ワーク傾斜用治具
81 イケール
81a 第1設置面
81b 第2設置面
81c 第3設置面
82 工具
83 テーブル
101 変位評価用ワーク
101a 側面
101a−1 一端側の辺
101a−2 他端側の辺
101b 溝加工面
101b−1 一端側の辺
101b−2 他端側の辺
103 溝
201 変位評価用ワーク
201a 側面
201a−1 一端側の辺
201a−2 他端側の辺
201b 溝加工面
201b−1 一端側の辺
201b−2 他端側の辺
203 溝
301 変位評価用ワーク
301a 側面
301a−1 一端側の辺
301a−2 他端側の辺
301b 溝加工面
301b−1 一端側の辺
301b−2 他端側の辺
303 溝


【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交する第1直線移動軸と第2直線移動軸と第3直線移動軸とを有する工作機械に対し、前記第1直線移動軸方向の変位を評価する方法であって、
溝加工面を有する変位評価用ワークを、前記溝加工面が前記第2直線移動軸方向に対して傾斜し、且つ、前記溝加工面の一端側の辺が前記第3直線移動軸方向に対して平行な第1状態となる、又は、前記溝加工面が前記第3直線移動軸方向に対して傾斜し、且つ、前記溝加工面の一端側の辺が前記第2直線移動軸方向に対して平行な第2状態となるように設置し、
前記第1状態で、工具を前記第1直線移動軸方向には移動させずに前記第2直線移動軸方向に移動させることによって前記溝加工面に直線状の溝を形成する第1溝加工を実施し、且つ、この第1溝加工を、前記工具を前記第3直線移動軸方向へ順次移動させるごとに実施して各列の直線状の溝が互いに平行となるようにする、又は、前記第2状態で、工具を前記第1直線移動軸方向には移動させずに前記第3直線移動軸方向に移動させることによって前記溝加工面に直線状の溝を形成する第2溝加工を実施し、且つ、この第2溝加工を、前記工具を前記第2直線移動軸方向へ順次移動させるごとに実施して各列の直線状の溝が互いに平行となるようにすることを特徴とする工作機械の変位評価方法。
【請求項2】
互いに直交する第1直線移動軸と第2直線移動軸と第3直線移動軸とを有する工作機械に対し、前記第1直線移動軸方向の変位と前記第2直線移動軸方向の変位と前記第3直線移動軸方向の変位とを評価する方法であって、
互いに直交する第1設置面と第2設置面と第3設置面とを有するワーク設置用治具と、第1溝加工面を有する第1変位評価用ワークと、第2溝加工面を有する第2変位評価用ワークと、第3溝加工面を有する第3変位評価用ワークとを用い、
前記第1変位評価用ワークを、前記第1溝加工面が前記第2直線移動軸方向に対して傾斜し、且つ、前記第1溝加工面の一端側の辺が前記第3直線移動軸方向に対して平行な第1状態となる、又は、前記第1溝加工面が前記第3直線移動軸方向に対して傾斜し、且つ、前記第1溝加工面の一端側の辺が前記第2直線移動軸方向に対して平行な第2状態となるように前記第1設置面に設置し、
前記第2変位評価用ワークを、前記第2溝加工面が前記第3直線移動軸方向に対して傾斜し、且つ、前記第2溝加工面の一端側の辺が前記第1直線移動軸方向に対して平行な第3状態となる、又は、前記第2溝加工面が前記第1直線移動軸方向に対して傾斜し、且つ、前記第2溝加工面の一端側の辺が前記第3直線移動軸方向に対して平行な第4状態となるように前記第2設置面に設置し、
前記第3変位評価用ワークを、前記第3溝加工面が前記第1直線移動軸方向に対して傾斜し、且つ、前記第3溝加工面の一端側の辺が前記第2直線移動軸方向に対して平行な第5状態となる、又は、前記第3溝加工面が前記第2直線移動軸方向に対して傾斜し、且つ、前記第3溝加工面の一端側の辺が前記第1直線移動軸方向に対して平行な第6状態となるように前記第3設置面に設置し、
前記第1状態で、工具を前記第1直線移動軸方向には移動させずに前記第2直線移動軸方向に移動させることによって前記第1溝加工面に直線状の溝を形成する第1溝加工を実施し、且つ、この第1溝加工を、前記工具を前記第3直線移動軸方向へ順次移動させるごとに実施して各列の直線状の溝が互いに平行となるようにする、又は、前記第2状態で、工具を前記第1直線移動軸方向には移動させずに前記第3直線移動軸方向に移動させることによって前記第1溝加工面に直線状の溝を形成する第2溝加工を実施し、且つ、この第2溝加工を、前記工具を前記第2直線移動軸方向へ順次移動させるごとに実施して各列の直線状の溝が互いに平行となるようにすること、
前記第3状態で、工具を前記第2直線移動軸方向には移動させずに前記第3直線移動軸方向に移動させることによって前記第2溝加工面に直線状の溝を形成する第3溝加工を実施し、且つ、この第3溝加工を、前記工具を前記第1直線移動軸方向へ順次移動させるごとに実施して各列の直線状の溝が互いに平行となるようにする、又は、前記第4状態で、工具を前記第2直線移動軸方向には移動させずに前記第1直線移動軸方向に移動させることによって前記第2溝加工面に直線状の溝を形成する第4溝加工を実施し、且つ、この第4溝加工を、前記工具を前記第3直線移動軸方向へ順次移動させるごとに実施して各列の直線状の溝が互いに平行となるようにすること、
前記第5状態で、工具を前記第3直線移動軸方向には移動させずに前記第1直線移動軸方向に移動させることによって前記第3溝加工面に直線状の溝を形成する第5溝加工を実施し、且つ、この第5溝加工を、前記工具を前記第2直線移動軸方向へ順次移動させるごとに実施して各列の直線状の溝が互いに平行となるようにする、又は、前記第6状態で、工具を前記第3直線移動軸方向には移動させずに前記第2直線移動軸方向に移動させることによって前記第3溝加工面に直線状の溝を形成する第6溝加工を実施し、且つ、この第6溝加工を、前記工具を前記第1直線移動軸方向へ順次移動させるごとに実施して各列の直線状の溝が互いに平行となるようにすること、
を特徴とする工作機械の変位評価方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載する工作機械の変位評価方法において、
前記変位評価用ワークは側面の一端側から他端側に向かって側面の厚さが徐々に変化していることにより、前記溝加工面が前記第2直線移動軸方向又は前記第3直線移動軸方向に対して傾斜しているものであること、
又は、前記第1変位評価用ワークは側面の一端側から他端側に向かって側面の厚さが徐々に変化していることにより、前記第1溝加工面が前記第2直線移動軸方向又は前記第3直線移動軸方向に対して傾斜しているものであり、前記第2変位評価用ワークは側面の一端側から他端側に向かって側面の厚さが徐々に変化していることにより、前記第2溝加工面が前記第3直線移動軸方向又は前記第1直線移動軸方向に対して傾斜しているものであり、前記第3変位評価用ワークは側面の一端側から他端側に向かって側面の厚さが徐々に変化していることにより、前記第3溝加工面が前記第1直線移動軸方向又は前記第2直線移動軸方向に対して傾斜しているものであること、
を特徴とする工作機械の変位評価方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載する工作機械の変位評価方法において、
前記変位評価用ワークはワーク傾斜用治具に取り付けて前記変位評価用ワーク全体を傾斜させることにより、前記溝加工面が前記第2直線移動軸方向又は前記第3直線移動軸方向に対して傾斜しているものであること、
又は、前記第1変位評価用ワークはワーク傾斜用治具に取り付けて前記第1変位評価用ワーク全体を傾斜させることにより、前記第1溝加工面が前記第2直線移動軸方向又は前記第3直線移動軸方向に対して傾斜しているものであり、前記第2変位評価用ワークはワーク傾斜用治具に取り付けて前記第2変位評価用ワーク全体を傾斜させることにより、前記第2溝加工面が前記第3直線移動軸方向又は前記第1直線移動軸方向に対して傾斜しているものであり、前記第3変位評価用ワークはワーク傾斜用治具に取り付けて前記第3変位評価用ワーク全体を傾斜させることにより、前記第3溝加工面が前記第1直線移動軸方向又は前記第2直線移動軸方向に対して傾斜しているものであること、
を特徴とする工作機械の変位評価方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−86325(P2012−86325A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236423(P2010−236423)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】