説明

工作機械の衝突防止方法

【課題】工作機械の動作中に移動する主軸台のカバーと工具との衝突を確実に、かつオペレータに過度の負担をかけることなく簡単に防止できる工作機械の衝突防止方法を提供する。
【解決手段】主軸方向であるZ軸方向に移動可能な移動主軸と、当該移動主軸を軸支する移動主軸台と、Z軸方向及びZ軸に直交するX軸方向に移動可能な少なくとも一つの刃物台と、当該刃物台に取り付けられた工具タレットとを備える工作機械の衝突防止方法であって、前記移動主軸台と前記刃物台とのZ軸方向の相対距離が予め規定しているZ軸方向の許容値以下であることを検出する第一のステップと、次にその時点で加工位置に割出されている工具のX軸方向の刃先位置が、前記移動主軸台のカバーのX軸方向の長さに基づいて予め規定しているX軸方向の許容値以下であることを検出する第二のステップと、次に前記移動主軸台の移動を停止する第三のステップを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、工作機械によるワーク加工中にZ軸方向に移動する主軸台のカバーと工具とが衝突するのを防止する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
NC工作機械は、加工プログラムのブロックを順次読み込んで、読み込んだブロックに記述されているコマンドや指令値に基づいて工具を移動させることにより、ワークを所望形状に加工している。
例えば、同一主軸軸線上で対向する固定主軸と移動主軸を備え、工具タレットを取り付けた刃物台を主軸軸線の下方に備える2主軸対向旋盤では、固定主軸から移動主軸にワークを受け渡す際に、移動主軸が固定主軸に向かってZ軸方向に前進する。
なお、旋盤においてZ軸は主軸方向、X軸はZ軸と直交する旋削工具の切込み送り方向、Y軸はZ軸及びX軸と直交する方向である。
【0003】
通常、工具タレットは固定主軸と移動主軸の間に位置するため、不用意に移動主軸を前進させると、移動主軸の主軸台を覆うカバー(通常は矩形)と工具タレットに装着した工具とが衝突することがある。
従来、このような衝突を避けるため、一旦刃物台を主軸軸線から下方(X軸方向)のホームポジションに退避させ、更に工具タレットを短い工具を割り出した状態に回転させた後、ワークの受け渡し動作を行うようにプログラムすることがある。
【0004】
また、NC装置に内蔵又は接続したコンピュータに機械本体、ワーク、工具等の立体モデルを登録し、NC装置が検出している工具の位置と、立体モデルの表面(サーフェス)との位置関係を常時チェックすることによって、高速で移動する工具とワークや機械本体との衝突を未然に防止する手段が提案されている(特許文献1及び2参照)。
この衝突防止手段では、仮想空間内において予想される工具の移動軌跡上にあるサンプリング点が立体モデルの外側にあるか内側にあるかをシミュレーションすることにより衝突を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−55407号公報
【特許文献2】特開平8−234821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記各特許文献に開示された手段によれば、工作機械が加工プログラムに従ってテスト加工されているときは、実際の工具が移動する前に、立体モデルを置いた仮想空間内で仮想工具を先回りして移動させることができるので、実空間での衝突が発生する前に仮想空間での衝突を検出して機械を停止させることができる。
しかし、NC工作機械は常に加工プログラムに従って運転されるというわけではなく、実加工に移る前の段階、すなわち段取り時やテスト加工時には、オペレータによる手動操作で動作チェックが行われることが多い。
この場合、オペレータの指示は操作ボタンの操作によってNC装置を介して工作機械に与えられることになるが、NC装置はオペレータが現在行っている操作をいつまで続けるのか、あるいは次にどのような操作を行うのかを事前に把握することができないため、オペレータの操作ミスや判断ミスに起因した衝突は事前に検出できないという問題があった。
【0007】
また、上記特許文献に開示された手段では、オペレータがCADデータなどをコンピュータに入力して立体モデルを登録する必要があるため、データ入力作業が煩雑且つ時間を要するという問題や、オペレータの入力ミスに起因した衝突発生のおそれがあるという問題もあった。
更に、工具タレットをホームポジションに退避させたり、短い工具を割り出す動作を行うと余分な時間がかかるため、加工時間を可能な限り短くしたいという要求に反するという問題があった。
【0008】
この発明は、上記のような問題を解決するためになされたもので、工作機械の動作中に移動する主軸台のカバーと工具との衝突を確実に、かつオペレータに過度の負担をかけることなく簡単に防止できる技術手段を提供することを課題としている。特に段取り時やテスト加工時の衝突を防止できる技術手段を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本出願の請求項1に係る工作機械の衝突防止方法は、主軸方向であるZ軸方向に移動可能な移動主軸と、当該移動主軸を軸支する移動主軸台と、Z軸方向及びZ軸に直交するX軸方向に移動可能な少なくとも一つの刃物台と、当該刃物台に取り付けられた工具タレットとを備える工作機械の衝突防止方法であって、前記移動主軸台と前記刃物台とのZ軸方向の相対距離が予め規定しているZ軸方向の許容値以下であることを検出する第一のステップと、次にその時点で加工位置に割出されている工具のX軸方向の刃先位置が、前記移動主軸台のカバーのX軸方向の長さに基づいて予め規定しているX軸方向の許容値以下であることを検出する第二のステップと、次に前記移動主軸台の移動を停止する第三のステップを備えることを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に係る工作機械の衝突防止方法は、前記第二のステップが、前記工具タレットに装着されている複数の工具のうち、前記加工位置に割出されている工具を挟む位置に装着されている2つの工具各々のX軸方向の刃先位置が、前記X軸方向の許容値以下であることを検出するステップを含むことを特徴とする。
また、請求項3に係る工作機械の衝突防止方法は、前記第二のステップにおいて、工具のX軸方向の刃先位置を、当該工具のオフセット値から算出した工具刃先の旋回径に基づいて算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、立体モデルによるシミレーション等を利用せず、工具の実際のX軸方向の刃先位置に基づいて主軸台のカバーと工具との衝突を回避する。従って、例えば段取り時やテスト加工時にオペレータによる手動操作で動作チェックを行う場合に、オペレータの操作ミスや判断ミスが生じたり、あるいは加工プログラムにプログラムミスがあった場合でも、衝突を確実且つ簡単に回避することができる。
また、加工位置に割出されている工具を挟む位置に装着されている2つの工具についても衝突のおそれがないかチェックするので、衝突検出の精度をより高めることができる。
【0012】
また、工具のX軸方向の刃先位置を、通常のNC工作機械で一般的に使用されている工具のオフセット値、すなわち既存データを利用して算出するので、本発明を実現するために新たなデータを用意する必要がなく、オペレータの作業負担を軽減できる。
また、実加工において、例えば固定主軸とのワークの受け渡しのために移動主軸がZ軸方向に移動する毎に刃物台をホームポジションに退避させたり、工具タレットを回転させて最も短い工具を割り出す動作を行う場合と比較して、本発明では移動主軸のカバーが工具と衝突する可能性がない場合には刃物台を退避させたり、工具タレットを回転させて短い工具を割り出す動作を行わないので、ワークの加工時間を短縮できる。
【0013】
また、本発明では、移動主軸台が刃物台に相当接近した場合、すなわち両者のZ軸方向の相対距離が許容値以下になった場合に初めて第一のステップから第二のステップに移行して、移動主軸台と工具刃先とが衝突する可能性があるかどうか判断する。すなわち、例えば工作機械が2主軸対向旋盤の場合に、固定主軸側に装着されているワークがZ軸方向に長尺なものであって、移動主軸台が刃物台から相当離れた位置で当該ワークの受け渡しができる場合には、たとえ移動主軸台と工具刃先とのX軸方向の距離が近接していたり、あるいは工具刃先の方が移動主軸台よりも主軸に近い位置に存在している場合でも、第二のステップに移行しない。これにより、刃物台が移動しているときに移動主軸が前進したときに、移動主軸台と工具刃先のX軸方向の距離のみに基づいて両者の衝突の可能性を判断する場合と比較して、刃物台のX座標を監視し続けることによってNC装置のCPU負荷が増大する時間が長くなるのを避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】工作機械の要部を模式的に表す図
【図2】図1の移動主軸が前進した状態を示す図
【図3】オフセットテーブルを表す図
【図4】工具のX軸方向の刃先位置の算出方法を説明するための図
【図5】衝突防止手順の一例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の工作機械の衝突防止方法の実施の形態について説明する。
本実施の形態では、工作機械として2つの刃物台を備えた2主軸対向旋盤を例にして説明する。
図1において、1a及び1bは加工領域を区画している隔壁、2aは固定主軸3端に装着した左チャック、2bはZ軸方向に移動可能な移動主軸4端に装着した右チャック、5は隔壁から突出する伸縮自在な移動主軸台のカバー、6は左チャックに把持されたワーク、7a、7bは隔壁1a、1bから突出する伸縮自在な刃物台カバー、8a、8bは刃物台カバー内の刃物台に取り付けられているタレット、9a〜9l、9a´〜9l´(図4参照)は工具タレット8a、8bに装着された工具である。なお、移動主軸4を軸支する移動主軸台はカバー5内に格納されている。また、工作機械の動作を制御するNC装置の図示は省略している。
図2は移動主軸4がZ軸方向に前進した状態を示しており、カバー5がZ軸方向に伸長している。
【0016】
次に、移動主軸台と刃物台とのZ軸方向の相対距離に関する「Z軸方向の許容値Δz」について説明する。
図1に示すように、一般に移動主軸台のZ軸方向の位置は原点位置である後退端位置H1からの距離で規定される。また、刃物台のZ軸方向の位置は刃物台の基準位置(ホームポジション)H2、H2´からの距離で規定され、一般にZ軸方向の原点は刃物台の復帰端(後退端)に設定されている。なお、移動主軸台のZ軸方向の位置及び刃物台のXYZ各軸方向の位置はNC装置によって把握されている。
オペレータは移動主軸台と刃物台のZ軸方向の相対距離が十分に確保されるように配慮した上で、当該相対距離に関するZ軸方向の許容値Δzを規定し、NC装置に登録しておく。
【0017】
次に、移動主軸台のカバーのX軸方向の長さに基づいて規定される「X軸方向の許容値Δx」について説明する。
移動主軸台のカバーは上述の通りその内部に移動主軸台を格納する伸縮自在の部材であり、通常は矩形状(直方体状)に形成されている。従って、カバーのX軸方向の寸法LXはその長手方向(Z軸方向)にわたってほぼ同一の値となる。また、一般的に移動主軸台及びカバーの中心線は主軸軸線Mと一致している。
そこで、オペレータはカバーのX軸方向の長さLxに若干の安全マージンを取った値を「X軸方向の許容値Δx」として規定し、NC装置に登録しておく。なお、旋盤では一般にX方向の距離は直径で指定されている。
【0018】
次に、NC工作機械で一般的に使用されている工具コード及びオフセットテーブルについて説明する。
NC装置は、工具タレットに装着した工具の刃先位置を示すオフセット値を登録したオフセットテーブル(図3参照)を備えている。オフセットテーブルのレコード番号をオフセット番号とも呼んでおり、加工に使用する工具は、工具タレットへの装着位置を示す番号(工具番号)と、オフセット番号とを組み合わせた工具コード(Tコード)で指定するようになっている。
例えば、旋盤で一般的に用いられる工具コードはT○○××と表示され、○○は工具番号、××はオフセット番号で、共に2桁の数字である。加工プログラムでこの工具コードが指定されると、NC装置は工作機械に工具タレットの○○番の装着位置に装着している工具を選択させ、その加工位置をオフセットテーブルのレコード番号(オフセット番号)××に登録されているオフセット値で補正した位置に刃物台を移動させるように指令する。
【0019】
図3に示すオフセットテーブルにおいて、番号はオフセット番号、X、Y、ZはそれぞれX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向のオフセット値である。オフセット値をどのような基準で定めるかは、機械のユーザによっても異なり、一定ではないが、例えば、刃物台が基準位置H2、H2´にあるときの工具の刃先位置P0(X0,Y0,Z0)及びP0’(X0’,Y0’,Z0’)(図1参照)をオフセット値として登録する。なお、オフセットテーブル中のRは刃先半径を示す値であり、TIPは刃先の方向を示す番号である。
例えば加工プログラム中にT0102と記述されているとき、NC装置は、工具タレットの01番の工具装着位置をワークに向けて割出し、オフセットテーブルのレコード番号「02」に登録されているオフセット値を読み取って、それを基準として刃物台を移動させることにより、ワークと工具番号「01」の工具の刃先との相対位置関係を調節する。
【0020】
次に、オフセット値を上記のように定めたときの工具のX軸方向の刃先位置を工具刃先の旋回径に基づいて算出する方法について説明する。
図4に示すように、工具タレットが回転した場合の工具刃先の旋回径は、ホームポジションH2における刃物台の回転中心NのX軸方向の位置X1(主軸Mから回転中心NまでのX軸方向の距離)から工具のX軸方向のオフセット値X0を引いた値(X1−X0)と一致する。
【0021】
つまり、工具刃先は工具タレットの回転に伴い、(X1−X0)を半径とし、刃物台の回転中心Nを中心とする円の円周上を移動することになり、当該円が主軸Mに最も近くなる位置が加工位置に割出された工具のX軸方向の刃先位置となる。
このように、工具コード及びオフセットテーブルというNC工作機械で通常使用している数値データに基づいて工具のX軸方向の刃先位置を算出できる。
【0022】
図5は本発明の方法による衝突防止手順の一例を示すフローチャートである。
移動主軸台が前進するのは、固定主軸に把持されたワーク6を受取に行くときであるが、このとき移動主軸側の加工済ワークはアンロードされており、固定主軸側のワーク6の加工は終了している。従って、この移動主軸台の前進と並行して行われるタレットの動作は、タレットに装着した把持具(ワークハンド。図示していない。)でアンロードした加工済ワークを機外へと搬出する動作を行っているか、ワークから離隔する動作を行っているかである。従って、タレットのX軸方向の移動は、主軸軸線Mから離隔する方向の移動(待避)である。しかし、操作ミスなども考慮して、図5のフローチャートでは、タレットが主軸軸線M側に移動(接近)している場合も想定した(ステップA6参照)手順を示している。また、移動主軸台と刃物台とのZ軸方向の相対距離D1の算出や工具のX軸方向の刃先位置を算出するときは、それに先だって(ステップA2及びA3の前に)、移動主軸台及びタレットのZ軸方向の位置(座標)やタレットのX軸方向の位置を読み込む必要があるが、図5ではこの読み込みステップを省略して示している。
NC装置には予め「Z軸方向の許容値Δz」、「X軸方向の許容値Δx」及び工具タレットに装着した全ての工具についての工具刃先の工具オフセット値が事前に登録されている。
図5の衝突防止手順は、例えば段取り時やテスト加工時において、加工プログラム又はオペレータによる手動操作によって、移動主軸台にZ軸方向の移動(前進)指令が与えられたときに動作を開始(スタート)する。
主軸台が前進を続けていれば(ステップA1でNO)、NC装置は、そのときどきの移動主軸台の位置から移動主軸台と刃物台とのZ軸方向の相対距離D1を算出し、当該相対距離D1がZ軸方向の許容値Δz以下かどうかを判定する(ステップA2)。D1が許容値Δz以下となる前に移動主軸が停止すれば(ステップA1でYES)、正常終了する。
【0023】
そして、当該相対距離D1がZ軸方向の許容値Δz以下になった場合には(ステップA2において「YES」)、その時点で加工位置に割出されている工具に関する工具刃先の旋回径に基づいて、当該工具のX軸方向の刃先位置がX軸方向の許容値Δx以下かどうかを判定する(ステップA3)。
なお、移動主軸台と並行してタレットがZ軸方向に移動している場合、その移動方向が移動主軸側に向かう方向であるか又は固定主軸側に向かう方向であってその移動速度が移動主軸台の移動速度より遅いときは、そのタレットとの相対関係では、移動主軸台の相対前進速度が速いか遅いかの差でしかないので、一旦相対距離D1が許容値Δz以下になった後で許容値Δz以上になることはない。また、タレットが移動主軸台と同方向に移動主軸台より速い速度で移動しているときは、相対距離D1が時間の経過と共に大きくなるので、許容値Δz以下になることはなく、移動主軸台が停止したときにステップA1で分岐して正常終了となる。
ステップA3の判定において、加工位置に割出されている工具(主軸軸線M側を向いている工具)の刃先位置がX軸方向の許容値Δx以下になった場合には(ステップA3において「YES」)、移動主軸台の移動を停止し(ステップA6)、アラームを鳴らし(ステップA7)、異常終了となる。
また、加工位置に割出されている工具のX軸方向の刃先位置が許容値Δx以下でない場合は(ステップA3において「NO」)、当該工具を前後から挟む位置に装着されている2つの工具9b、9lのうちいずれか一方(例えば上側9b)の工具に関する工具刃先の旋回径に基づき、X軸方向の刃先位置が、許容値Δx以下かどうかを判定する(ステップA4)。
【0024】
具体的には、図4に示すように、例えば工具タレット8bに12個の工具9a〜9lが装着されている場合には、隣り合う工具同士(例えば9aと9b)が成す角θは360°/12=30°になる。
したがって、加工位置に割出されている工具9aを挟む位置に装着されている工具9b及び9lのうち上側の工具9bの旋回径RbにCOSθ(θ=30度)を掛けることで、当該工具9bのX軸方向の刃先位置を算出できる。
そして、当該工具のX軸方向の刃先位置が許容値Δx以下の場合(ステップA4において「YES」)、移動主軸台の移動を停止し、アラームを鳴らして終了する。
また、許容値Δx以下でない場合(ステップA4において「NO」)、他方の工具(例えば下側9l)のX軸方向の刃先位置が許容値Δx以下かどうかを判定する(ステップA5)。そして、許容値Δx以下の場合(ステップA5において「YES」)、移動主軸台の移動を停止し、アラームを鳴らして終了する。
また、許容値ΔX以下でない場合(ステップA5において「NO」)であれば、タレットが停止しているか主軸軸線Mから離れる方向に移動しているときは、移動主軸台が工具に衝突するおそれはない。そこでタレットが主軸軸線Mに接近する方向に移動している場合のみ(ステップA6で「YES」)、ステップA3に戻ってタレットの新しいX座標についてステップA3〜A5の判定を繰り返し、そうでない場合は(ステップA6で「NO」)、正常終了する。なお、本実施の形態のように刃物台を2つ備える場合には各刃物台について上記手順が実行される。
なお、タレットが移動主軸と並行する特別の動作(例えば前記したワーク搬出動作)を行っていないときは、工具のX軸方向の刃先位置がX軸方向の許容値Δx以下になった場合、異常停止するのではなく、当該刃先位置がX軸方向の許容値Δxより大きくなる位置まで刃物台をX方向に退避させることにしてもよい。また、その時点で割り出されている工具よりも短い工具がワーク側を向くように工具タレットを回転させることにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0025】
工作機械の動作中に移動する主軸台のカバーと工具との衝突を確実に、かつオペレータに過度の負担をかけることなく簡単に防止できる技術手段に関するものであり、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0026】
1 隔壁
2 チャック
3 固定主軸
4 移動主軸
5 移動主軸台のカバー
6 ワーク
7 刃物台カバー
8 タレット
9 工具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸方向であるZ軸方向に移動可能な移動主軸と、当該移動主軸を軸支する移動主軸台と、Z軸方向及びZ軸に直交するX軸方向に移動可能な少なくとも一つの刃物台と、当該刃物台に取り付けられた工具タレットとを備える工作機械の衝突防止方法であって、
前記移動主軸台と前記刃物台とのZ軸方向の相対距離が予め規定しているZ軸方向の許容値以下であることを検出する第一のステップと、次にその時点で加工位置に割出されている工具のX軸方向の刃先位置が、前記移動主軸台のカバーのX軸方向の長さに基づいて予め規定しているX軸方向の許容値以下であることを検出する第二のステップと、次に前記移動主軸台の移動を停止する第三のステップを備えることを特徴とする工作機械の衝突防止方法。
【請求項2】
前記第二のステップが、前記工具タレットに装着されている複数の工具のうち、前記加工位置に割出されている工具を挟む位置に装着されている2つの工具各々のX軸方向の刃先位置が、前記X軸方向の許容値以下であることを検出するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の工作機械の衝突防止方法。
【請求項3】
前記第二のステップにおいて、工具のX軸方向の刃先位置を、当該工具のオフセット値から算出した工具刃先の旋回径に基づいて算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の工作機械の衝突防止方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−65180(P2013−65180A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203113(P2011−203113)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000212566)中村留精密工業株式会社 (120)
【Fターム(参考)】